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主文 一原判決を次のとおり変更する。「(一) 第一審被告は第一審原告に対し 1 金三九万三、六一六円及び内金一九万〇、二五〇円に対する昭和三三年四月二日以降、内金九万七、〇〇〇円に対する昭和三五年七月二八日以降各完済にいたるまで年六分の割合による金員を支払え。2 三井造船株式会社株式一、〇〇〇株、明治製糖株式五〇〇株、神戸製鋼株式会社株式五〇〇株を引渡せ。第一審被告の第一審原告に対する右各株式引渡についての強制執行が功を奏しないときは、該部分について三井造船株式会社株式一株につき金八五円明治製糖株式会社株式一株につき金七五円、神戸製鋼株式会社株式一株につき金三八円の各割合による金員及びこれに対する右強制執行不奏功の日の翌日から各完済にいたるまで年六分の割合による金員を支払え。(二) 第一審原告のその余の請求を棄却する。」二第一審被告の本件控訴を棄却する。三訴訟費用は第一、二審を通じてこれを五分しその三を第一審原告の、その余を第一審被告の各負担とする。四この判決は第一審原告勝訴の部分に限り仮りに執行することができる。事実 第一審原告は、昭和三八年(ネ)第一、八一七号事件(以下第一、八一七号事件という。)について、「(一)原判決中第一審原告敗訴の部分を取消す。(二)第一審被告は第一審原告に対し、金一〇〇万三、五一六円及び内金八〇万〇、一五〇円に対する昭和三三年四月二日以降、内金九万七、〇〇〇円に対する昭和三五年七月二八日以降それぞれ完済にいたるまで年六分の割合による金員を支払え。(三)第一審被告は第一審原告に対し、三井造船株式会社株式一、〇〇〇株、明治製糖株式会社株式五〇〇株、神戸製鋼株式会社株式五〇 七月二八日以降それぞれ完済にいたるまで年六分の割合による金員を支払え。(三)第一審被告は第一審原告に対し、三井造船株式会社株式一、〇〇〇株、明治製糖株式会社株式五〇〇株、神戸製鋼株式会社株式五〇〇株を引渡せ。 二八日以降それぞれ完済にいたるまで年六分の割合による金員を支払え。(三)第一審被告は第一審原告に対し、三井造船株式会社株式一、〇〇〇株、明治製糖株式会社株式五〇〇株、神戸製鋼株式会社株式五〇 七月二八日以降それぞれ完済にいたるまで年六分の割合による金員を支払え。(三)第一審被告は第一審原告に対し、三井造船株式会社株式一、〇〇〇株、明治製糖株式会社株式五〇〇株、神戸製鋼株式会社株式五〇〇株を引渡せ。もし右引渡について強制執行が奏功しないときは、三井造船株式会社株式一株について金八五円、明治製糖株式会社株式一株について金七五円、神戸製鋼株式会社株式一株について金三八円の各割合による金員及びこれに対する昭和三六年六月三〇日以降各完済にいたるまで年六分の割合による金員を支払え。(四)訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を、昭和三八年(ネ)第一、五六〇号事件(以下第一、五六〇号事件という。)について控訴棄却の判決を求め、第一審被告訴訟代理人は第一、五六〇号事件について、「(一)原判決中第一審被告敗訴の部分を取消す。(二)第一審原告の請求を棄却する。(三)訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。」との判決を、第一、八一七号事件について控訴並びに第一審原告の当審における拡張請求をいずれも棄却するとの判決を求めた。当事者双方の主張並びに証拠の関係は、次に附加訂正するのほか原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。一第一審原告の主張(一) 第一審原告は、原審において第一審被告に対する売買証拠金返還債権と利益金債権の合計額を金八八万三、八〇〇円と主張して右金員の支払を求めたが、右は原判決事実摘示第一請求の原因の二末尾部分(原判決三枚目表六行目以下の括弧内)記載のとおり、金四、八〇〇円の委託手数料を重複して控除した金額であつて、正しくは金八八万人、六〇〇円とすべきであるから、当審においてその差額金四、八〇〇円及びこれに対する本件訴状が第一審被告に送達された日の翌日である昭和三三年 託手数料を重複して控除した金額であつて、正しくは金八八万人、六〇〇円とすべきであるから、当審においてその差額金四、八〇〇円及びこれに対する本件訴状が第一審被告に送達された日の翌日である昭和三三年四月二日以降完済にいたるまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を拡張請求する。 るから、当審においてその差額金四、八〇〇円及びこれに対する本件訴状が第一審被告に送達された日の翌日である昭和三三年 託手数料を重複して控除した金額であつて、正しくは金八八万人、六〇〇円とすべきであるから、当審においてその差額金四、八〇〇円及びこれに対する本件訴状が第一審被告に送達された日の翌日である昭和三三年四月二日以降完済にいたるまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を拡張請求する。(二) 第一審原告の第一審被告に対する従来の請求中、第一審原告が三井造船株式会社株式一、〇〇〇株、明治製糖株式会社及び神戸製鋼株式会社株式各五〇〇株を第一審被告によつて無断で売却されたことにより蒙つた得べかりし利益の喪失額の賠償請求の内容を次のように訂正主張し、第一審被告に対し右損害賠償として次の(1)(2)の合計額金二〇万三、三六六円及び(2)の金九万七、〇〇〇円に対する昭和三五年七月二八日(最終の権利落の日の翌日)以降完済にいたるまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。(1) 金一〇万六、三六六円原判決株式関係第一表の第一旧株式関係に記載された三井造船株式会社旧株式一、〇〇〇株、明治製糖株式会社及び神戸製鋼株式会社旧株式各五〇〇株に対する昭和三三年三月期から同三六年三月期までの配当金から税金を控除した金額合計金五万五、三五〇円と昭和三六年九月期から同四〇年三月期までの前同金額合計金五万一、〇一六円との合算額(2) 金九万七、〇〇〇円前記第一表の第二増資新株式関係に記載された新株割当を受けられなかつたことによる左記(イ)ないし(ニ)の損害金合計額(イ) 金五万九、〇〇〇円三井造船株式会社の新株落の日たる昭和三四年一二月一五日における株価一株一〇四円、割当一、〇〇〇株の総額一〇万四、〇〇〇円から第一審原告が新株引受によつてこれを取得するに要する払込金四万五、〇〇〇円を差引いた額(ロ) 金一万五、五〇〇円明治 五日における株価一株一〇四円、割当一、〇〇〇株の総額一〇万四、〇〇〇円から第一審原告が新株引受によつてこれを取得するに要する払込金四万五、〇〇〇円を差引いた額(ロ) 金一万五、五〇〇円明治製糖株式会社の新株落の日たる昭和三五年七月二七日における株価一株三一〇円、割当(無償)五〇株の総額(ハ) 金一万、一、五〇〇円神戸製鋼株式会社の第一回新株落の日たる昭和三四年七月一一日における株価一株八六円、割当二五〇株の総額二万一、五〇〇円から第一審原告が新株引受によつてこれを取得するために要する払込金一万円を差引いた額(ニ) 金一万一、〇〇〇円神戸製鋼株式会社の第二回新株落の日たる昭和三五年六月七日における割当五〇〇株(旧株五〇〇株、第一回新株割当の二五〇株の合計七五〇株に対する割当株数で一株の価格七二円)の価格三万六、〇〇〇円から第一審原告が新株引受によつてこれを取得するために要する払込金二万五、〇〇〇円を差引いた額(三) 当審における口頭弁論終結の日である昭和四四年三月五日現在における三井造船株式会社の株価は一株八五円、明治製糖株式会社の株価は一株七五円、神戸製鋼株式会社の株価は一株三八円であるから、第一審原告主張の各株式引渡についての強制執行不奏功のときはその部分について右価格の割合による金員及びこれに対する昭和三六年六月三〇日以降完済にいたるまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。 額(三) 当審における口頭弁論終結の日である昭和四四年三月五日現在における三井造船株式会社の株価は一株八五円、明治製糖株式会社の株価は一株七五円、神戸製鋼株式会社の株価は一株三八円であるから、第一審原告主張の各株式引渡についての強制執行不奏功のときはその部分について右価格の割合による金員及びこれに対する昭和三六年六月三〇日以降完済にいたるまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。二第一審被告の主張(一) 第一審原告主張の前記(一)、(二)の各計算関係及び当審における口頭弁論終結の日である昭和四四年三月五日現在における第一審原告主張の各株式の価格がその主張のとおりであることはいずれも認めるが、第一審原告に第一審被告の責に基づく損害が生じたとの点は否認する。(二) 第一審原告は、本件売買 年三月五日現在における第一審原告主張の各株式の価格がその主張のとおりであることはいずれも認めるが、第一審原告に第一審被告の責に基づく損害が生じたとの点は否認する。(二) 第一審原告は、本件売買取引を委託した訴外Aとは特別な個人的信頼関係にあつて、同訴外人は第一審原告の右取引における代理人であつたから、該取引においてAの行為により第一審原告が損害を受けたとしても、その損失は第一審原告自らが負担すべきものであつて第一審被告にその賠償義務はない。三証拠関係(省略) 理由 一第一審原告が、東京繊維商品取引所及び東京穀物商品取引所の商品仲買人であつた三愛商事株式会社(以下三愛商事という。)に対し、原判決別紙取引委託一覧表記載のとおり、右両取引所における先物売買取引を委託し、その証拠金として原判決別紙預託一覧表記載のとおりの委託証拠金及び証拠金充用有価証券を預託したこと、三愛商事が右取引委託一覧表中売玉の部四口と買玉の部のうち(2)、(10)、(11)の三口の取引(原判決別紙取引明細表中(1)、(2)、(11)、(12)に該当)を委託の趣旨に従つて成立させたこと、第一審被告が昭和三六年六月六日三愛商事を吸収合併して、その権利義務を承継したことはいずれも当事者間に争いがなく、三愛商事が前橋市に出張所、渋川市に連絡所を設置し、その使用人であつた訴外A、同B等によつて同方面の業務を遂行していたことは第一審被告の明らかに争わないところであるからこれを自白したものとみなす。二各成立に争いのない甲第一号証、乙第一号証の一、同第四号証、原審並びに当審証人Aの証言によつて成立の真正を認め得る甲第二九号証、当審証人Aの証言によつて成立の真正を認め得る乙第五号証、原審証人B、原審並びに当審証人A、同Cの各証言と本件口頭弁論の 設置し、その使用人であつた訴外A、同B等によつて同方面の業務を遂行していたことは第一審被告の明らかに争わないところであるからこれを自白したものとみなす。二各成立に争いのない甲第一号証、乙第一号証の一、同第四号証、原審並びに当審証人Aの証言によつて成立の真正を認め得る甲第二九号証、当審証人Aの証言によつて成立の真正を認め得る乙第五号証、原審証人B、原審並びに当審証人A、同Cの各証言と本件口頭弁論の 四号証、原審並びに当審証人Aの証言によつて成立の真正を認め得る甲第二九号証、当審証人Aの証言によつて成立の真正を認め得る乙第五号証、原審証人B、原審並びに当審証人A、同Cの各証言と本件口頭弁論の全趣旨を総合すれば、「三愛商事前橋出張所所員のA及びBは、第一審原告から委託を受けた前記取引委託一覧表の取引のうち人絹糸の買付玉(1)及び(3)ないし(9)につき、木店を経由して取引市場において買付ける通例の手続を採らず、所員自らが相手方となり、取引所の相場価格をもつて取引を成立させ、いわゆる呑行為類似の行為をしたこと、昭和三二年八月七日第一審原告から右買付玉のうち(1)(八月限の人絹糸五枚で原判決別紙取引明細表(3)に該当)の成行による売付(転売)処分の委託を受けたAは、人絹糸の値下りにより、第一審原告の買付玉について売買差損金の生ずることを予知していたので、その際同人に対し、人絹糸の取引によつて生ずる損失を、小豆の取引による利益によつて填補できるようにするから、あらたに証拠金を一〇万ないし二〇万円差し入れて小豆の取引を自分に一任されたいと勧誘し、右同日第一審原告から試みに小豆一、二枚の取引を委託する旨の依頼を受けたが、Aにおいて第一審原告の人絹糸取引による損失填補をいそぐのあまり、同人から委託を受けた右八月限の人絹糸のみならず、委託を受けていないその余の人絹糸の建玉全部(前記取引委託一覧表買玉の部(3)ないし(9))についてその売付処分(前記取引明細表(4)ないし(10)を取引市場を通さず、自ら相手方となつて成立せしめ、小豆については前記当事者聞に争いのない右取引明細表(11)、(12)の売付並びに買付処分を取引市場において成立せしめたほか、同年八月二〇日右明細表(13)の売付処分を取引市場において成立せしめたこと、ところが右同日三愛商事 に争いのない右取引明細表(11)、(12)の売付並びに買付処分を取引市場において成立せしめたほか、同年八月二〇日右明細表(13)の売付処分を取引市場において成立せしめたこと、ところが右同日三愛商事渋川連絡所においてAから人絹糸の買付玉全部を売却した旨聞知した第一審原告は、同人の委託の趣旨に反する右の措置についてAを難詰し、小豆の取引によりさらに利益をあげるように努めるとのAの再三の勧誘をも拒絶し、以後三愛商事に対する清算取引の委託を解約する旨をAに申入れたこと、そこでAは前記明細表(13)の小豆の売建玉を、同年八月二二日取引市場において買付取引を手仕舞つたが、第一審原告から清算取引を解約する旨の申出を受けていたのにもかかわらずその後も同人から委託を受けたように装い、三愛商事前橋出張所備付の第一審原告の取引口座を利用し、一部については取引市場を通じ、一部については自ら取引の相手方となつて第一審原告名義で前記明細表(14)ないし(33)の取引を成立せしめたこと、昭和三二年一〇月中旬顧客からの報告により前橋出張所における不正行為を探知した三愛商事は事実調査をした結果判明した第一審原告に関する前記明細表中の取引を含むその他の委託者についてのすべての呑行為類似行為による取引につき、―もつともひとり第一審原告に関しては取引内容について同人の承諾を得られないまま―東京繊維商品取引所及び東京穀物商品取引所並びに仲買人協会の指示に基づき、同月一八日及び同年一一月八日の二回にわたり右両取引所に売買の付出をなし、当該の取引税並びに取引所に対する手数料を支払い、該処置につき、監督官庁たる通産省の承認を得たことをそれぞれ認めることができ、原審証人B、同D、原審並びに当審証人Aの各証言中右認定に反する供述部分はにわかに採用することができない。 同人の承諾を得られないまま―東京繊維商品取引所及び東京穀物商品取引所並びに仲買人協会の指示に基づき、同月一八日及び同年一一月八日の二回にわたり右両取引所に売買の付出をなし、当該の取引税並びに取引所に対する手数料を支払い、該処置につき、監督官庁たる通産省の承認を得たことをそれぞれ認めることができ、原審証人B、同D、原審並びに当審証人Aの各証言中右認定に反する供述部分はにわかに採用することができない。第一審被告は前記 置につき、監督官庁たる通産省の承認を得たことをそれぞれ認めることができ、原審証人B、同D、原審並びに当審証人Aの各証言中右認定に反する供述部分はにわかに採用することができない。第一審被告は前記取引明細表中(3)ないし(10)の人絹糸の売付処分は第一審原告が東京繊維商品取引所の受託契約準則に定められた追証拠金納入についての三愛商事の請求に応じなかつたため、三愛商事において右準則の定めるところに従い、第一審原告の委託建玉の処分として行なつたものであると主張するけれども、仮りに第一審被告が主張する昭和三二年八月七日現在、第一審原告が三愛商事に対し委託追証拠金を納入しなければ三愛商事において第一審原告の委託建玉を処分し得べき立場にあつたとしても、第一審原告が三愛商事からの委託追証拠金納入の請求に応じなかつたとの事実については、当審証人Aの供述と対比して到底採用し得ない前掲乙第五号証の記載のほかにこれを認めるに足る資料がないばかりか、却つて右証人の証言と原審並びに当審における第一審原告本人尋問の結果によれば、三愛商事は第一審原告に対し委託追証拠金の納入を請求した事実のないことが認められるから、委託追証拠金納入の請求をしないでなされた建三の処分は適法なものというを得ず、従つて第一審被告の右主張は採用できない。三よつて前記取引委託一覧表中買玉の部のうち(1)、(3)ないし(9)の八口(前記取引明細表中(3)ないし(10)の買建玉)及び右明細表中(13)ないし(33)の各取引の効力が第一審原告に及ぶか否かについて判断する。<要旨第一>(一) 商品取引所法第九四条並びに昭和三二年当時の東京繊維商品取引所受託契約準則第七条は、商品市場に</要旨第一>おける売買取引の委託を受けた商品仲買人が商品市場において売付もしくは買付をしないで自己がその相手 引所法第九四条並びに昭和三二年当時の東京繊維商品取引所受託契約準則第七条は、商品市場に</要旨第一>おける売買取引の委託を受けた商品仲買人が商品市場において売付もしくは買付をしないで自己がその相手方となつて売買を成立せしめるいわゆる呑行為を禁止している。 所受託契約準則第七条は、商品市場に</要旨第一>おける売買取引の委託を受けた商品仲買人が商品市場において売付もしくは買付をしないで自己がその相手 引所法第九四条並びに昭和三二年当時の東京繊維商品取引所受託契約準則第七条は、商品市場に</要旨第一>おける売買取引の委託を受けた商品仲買人が商品市場において売付もしくは買付をしないで自己がその相手方となつて売買を成立せしめるいわゆる呑行為を禁止している。ところで前記取引委託一覧表中買玉の部の(1)、(3)ないし(9)の八口(前記取引明細表中(3)ないし(10)の買玉)の取引について、第一審原告の委託を受けた三愛商事の出張所員A及びBが呑行為類似の行為をなしたことはさきに認定したとおりであるところ、もとより右行為は、取引所の仲買人たる三愛商事自らが取引の相手方となつて売買を成立せしめたものではなく、三愛商事の職員が取引の相手方となつて売買を成立せしめた点において商品取引所法第九四条並びに前記準則第七条にいう呑行為と異なるところがあるけれども、右法条が呑行為を禁止しているゆえんのものは、委託者の委託による売買が取引所で行なわれず、仲買人自らが相手方となつて売買を成立せしめるにおいては、取引市場における公正な相場価格の形成を妨げ、ひいては委託者を害するおそれがあり、また仲買人が納税義務者であるところの取引税並びに仲買人が取引所に対して取引数量に応じて納入すべき定率会費の支払を免れる結果となることを抑止しようとするにあるから、本件における前記<要旨第二>の呑行為類似行為もまた禁止の対象となることはみやすいところである。しかしながら呑行為及び呑行為</要旨第二>類似行為(以下両者を含めて呑行為等という。)がなされた場合における取引税あるいは定率会費の支払の免脱から生ずる問題は、専ら仲買人と取引所あるいは徴税権者たる国との間に関して生ずる問題であつて、しかもその問題は当時は媒介付出によつて是正される途もなかつたわけではないから、取引税及び定率会 払の免脱から生ずる問題は、専ら仲買人と取引所あるいは徴税権者たる国との間に関して生ずる問題であつて、しかもその問題は当時は媒介付出によつて是正される途もなかつたわけではないから、取引税及び定率会費の支払が免脱されることから直ちに呑行為等の私法上の効力を否定することは相当でないし、委託者にとつては成立した売買取引が呑行為等によるものであつたとしてもそれが委託の趣旨に沿らものである限り、取引所を通してなされたものか否かは必ずしも重要な関心事ではなく、成立した取引がたまたま呑行為等であつたとの理由で常にその効力を否定されるとすれば、委託の趣旨に従つた取引であつても、それにより委託者が損失を蒙つた場合には、ともすれば委託者は取引成立当時自らの覚知しなかつた呑行為等の事実を主張して取引の効力を否定し、自己の委託の結果に基づき生じた損失の負担を免れ得ることとなりかねず、かくては委託者を不当に利せしむることとなり、却つて公正を害する結果となること必定であるから、委託者の覚知しない呑行為等によつて成立した売買取引は、委託者と仲買人との間においては一応有効に成立し(呑行為類似行為の場合は代理法理の適用による。 ともすれば委託者は取引成立当時自らの覚知しなかつた呑行為等の事実を主張して取引の効力を否定し、自己の委託の結果に基づき生じた損失の負担を免れ得ることとなりかねず、かくては委託者を不当に利せしむることとなり、却つて公正を害する結果となること必定であるから、委託者の覚知しない呑行為等によつて成立した売買取引は、委託者と仲買人との間においては一応有効に成立し(呑行為類似行為の場合は代理法理の適用による。)、ただ、右が取引所においてなされたとした場合に比し委託者の経済的利益を害することが明らかな場合にのみその効力を否定すべきものと解するのが相当である。ところで本件口頭弁論の全趣旨によれば、前記取引委託一覧表中買玉の部の(1)、(3)ないし(9)の八口(前記取引明細表中(3)ないし(10)の買玉)の取引は、いずれも第一審原告の成行注文であつて、成立した取引の価格は取引所における当時の市場価格によるものであることが認められるから、右各取引が前記呑行為類似行為によつてなされたこと自体によつて第一審原告の経済的利益がそこなわれたものということはできず、そ の価格は取引所における当時の市場価格によるものであることが認められるから、右各取引が前記呑行為類似行為によつてなされたこと自体によつて第一審原告の経済的利益がそこなわれたものということはできず、それ故三愛商事が右呑行為類似行為による取引を後日取引所に付出したとの前認定の事実を考慮するまでもなく、右各取引は第一審原告に対しその効力を及ぼすものといわなくてはならない。(二) しかして前記取引明細表(4)ないし(10)の売建玉についてはさきに認定したように三愛商事の職員Aが第一審原告の人絹糸取引による損失を小豆の取引による利益で填補せんとするに急なるのあまり、第一審原告の委託なくして独断で売付処分をしたものであるから、その処分の効力が第一審原告に及ぶいわれのないことは明らかであるが、かかる場合もとの売買委託契約は第一審原告主張の如く限月の経過により当然解除となるものではなく、買建玉の存する以上、委託者は清算取引の趣旨に従い、期限到来前ならば売付(転売)委託をなすことを得べく(この場合建玉が受託者により既にほしいままに処分された結果、現実に反対売買が不能となるときは委託時の市場価格を基準として損害の有無及びその多寡を定め受託者に損害賠償の請求をなし得るかような委託のない場合にあつては、東京繊維商品取引所の会員たる仲買人らの取扱として限月の納会値段をもつて建玉の手仕舞をなし決済をする慣行であるから、第一審原告が限月までに反対売買の委託をなした事実を認め得る資料のない前記取引明細表(4)ないし(10)の買建玉の手仕舞について単価は当裁判所の東京繊維商品取引所に対する照会の回答によつて明らかである右明細表(4)ないし(10)の買付玉の限月たる昭和三二年九月の納会日午前一一時の右取引所における取引価格(納会値段)たる一万七、八五〇円であるという をもつて建玉の手仕舞をなし決済をする慣行であるから、第一審原告が限月までに反対売買の委託をなした事実を認め得る資料のない前記取引明細表(4)ないし(10)の買建玉の手仕舞について単価は当裁判所の東京繊維商品取引所に対する照会の回答によつて明らかである右明細表(4)ないし(10)の買付玉の限月たる昭和三二年九月の納会日午前一一時の右取引所における取引価格(納会値段)たる一万七、八五〇円であるという 品取引所に対する照会の回答によつて明らかである右明細表(4)ないし(10)の買付玉の限月たる昭和三二年九月の納会日午前一一時の右取引所における取引価格(納会値段)たる一万七、八五〇円であるというべく、これが第一審原告の手仕舞処分として同人に効力を及ぼす価格であるといわなければならない。(三) 次に前記取引明細表(13)の小豆の売建玉は、原審証人Aの証言によれば、Aにおいてさきに認定したように第一審原告から人絹糸の損失を埋め合せるために小豆一、二枚程度の取引を任せる旨委託され、その趣旨に則つて成立させたものであり、その反対売買たる昭和三二年八月二二日の買付処分は、同月二〇日の第一審原告からの清算取引解約の申出により同人の当時の建玉を手仕舞うためになされたことが認められるから、右売付及び買付の両取引はいずれも第一審原告に対してその効力を生ずるものというべきである。(四) 最後に前記取引明細表(14)ないし(33)の各売買取引は第一審原告の委託がないのにAにおいて第一審原告の取引口座を利用してほしいままになしたものであること前認定のとおりであるから、右各取引による損益を第一審原告に帰属せしめるに由ないことは多言を俟たない。四以上説示したところに従えば、その損益が第一審原告に帰属せしめらるべき売買取引及びその損益金額は別紙損益明細表記載のとおりであつて、第一審原告の得た利益金の合計額は金四万一、七二〇円、その損失は合計金七一万四、三五〇円となり、右利益金から証拠金に振替えられたこと当事者間に争いのない金三万四、九二〇円を第一審原告が既に支払を受けたものとして差引いた残額金六、八〇〇円と、第一審被告が、第一審原告のためにAから三愛商事に差し入れられたことを自認する金一万〇、八〇〇円とを右損失金七一万四、三五〇円から控除した差額金六 払を受けたものとして差引いた残額金六、八〇〇円と、第一審被告が、第一審原告のためにAから三愛商事に差し入れられたことを自認する金一万〇、八〇〇円とを右損失金七一万四、三五〇円から控除した差額金六九万六、七五〇円が本件売買取引によつて蒙つた第一審原告の損失であるというべく従つて第一審原告は三愛商事に対し右同額の金員を支払うべき義務がある。 、八〇〇円とを右損失金七一万四、三五〇円から控除した差額金六 払を受けたものとして差引いた残額金六、八〇〇円と、第一審被告が、第一審原告のためにAから三愛商事に差し入れられたことを自認する金一万〇、八〇〇円とを右損失金七一万四、三五〇円から控除した差額金六九万六、七五〇円が本件売買取引によつて蒙つた第一審原告の損失であるというべく従つて第一審原告は三愛商事に対し右同額の金員を支払うべき義務がある。しかして第一審原告が三愛商事に対し原判決別紙預託一覧表記載の現金八八万七、〇〇〇円及び各株式を委託証拠金並びに委託証拠金充用証券として三愛商事に預託したことは当事者間に争いがなく、第一審被告が主張する右委託証拠金並びにその充用証券をもつてする第一審原告の三愛商事に対する右債務の弁済の充当は金六九万六、七五〇円の限度において正当であるというべきところ、右金額は第一審原告が三愛商事に預託した委託証拠金八八万七、〇〇円をもつて優にまかなえることが明らかである。<要旨第三>ところで商品の清算取引において商品仲買人が委託者から預託を受けた委託証拠金充用証券は委託証拠金</要旨第三>とともに委託者の商品仲買人に対する委託取引によつて生ずる債務の担保をなすものであつて、商品仲買人は委託証拠金及びその充用証券を共通の担保として委託者から債務の弁済を受けるまで留保し、もし委託者による債務の弁済がなされないときは証拠金及び充用証券をもつてその弁済に充当し得るものではあるけれども、本来委託証拠金充用証券は現金たる委託証拠金に代るものとして商品仲買人に預託されるものであるとはいえ、その価値は不断に変動するのみならず、委託者は通例現金に比し、特定の証券上に排他的な権利意識を有するものであつて、さればこそ自ら証券を換価することなく証券自体を仲買人に預託するのであるから、委託者の委託取引上の債務の弁済充当に際しては、商品仲買 現金に比し、特定の証券上に排他的な権利意識を有するものであつて、さればこそ自ら証券を換価することなく証券自体を仲買人に預託するのであるから、委託者の委託取引上の債務の弁済充当に際しては、商品仲買人はまず証拠金及びその他の金銭を弁済に充当し、なお不足額のある場合にはじめて証拠金充用証券をもつて弁済に充当するのを適切とし、委託証拠金その他の金銭によつて満足を受け得るにもかかわらず、それをさしおいて証拠金充用証券をもつて債務の弁済に充当することは妥当でなく、従つてかかる措置は結局これを許さないと解するのを相当とし、かく解することこそ最も条理にかなうものであるのみならず委託者の証拠金並びに証拠金充用証券の預託の趣旨にも適合するゆえんであるというべきであり、このことは委託者が、商品仲買人に対し証拠金充用証券を預託するに際し、仲買人が当該証券を処分することを同意書が差し入れられ、しかも当該証券に裏書または譲渡証書が付せられる実情のもとにおいてもなお別異に解すべきではない。 は結局これを許さないと解するのを相当とし、かく解することこそ最も条理にかなうものであるのみならず委託者の証拠金並びに証拠金充用証券の預託の趣旨にも適合するゆえんであるというべきであり、このことは委託者が、商品仲買人に対し証拠金充用証券を預託するに際し、仲買人が当該証券を処分することを同意書が差し入れられ、しかも当該証券に裏書または譲渡証書が付せられる実情のもとにおいてもなお別異に解すべきではない。そうすると三愛商事に対する第一審原告の委託取引上の債務が同人の預託した委託証拠金をもつて優にまかなうことができ、しかも委託証拠金充用証券の売却を正当視し得る特段の事情の認められない本件においては、三愛商事は第一審原告に対し同人の委託証拠金八八万七、〇〇〇円から、同人の委託取引上生じた三愛商事に対する債務金六九万六、七五〇円を控除した残金一九万〇、二五〇円とともに第一審原告から預託を受けた前記各株式を清算取引の終了による決済後遅滞なく返還する義務あるものというべく、併せて右の返還義務を遅滞したことによつて通常生ずべき損害を第一審原告に賠償する義務あるものといわなければならない。(第一審被告は、三愛商事は第一審原告に対し同人の清算取引の終了により委託証拠金及びその充用証券と損失 遅滞したことによつて通常生ずべき損害を第一審原告に賠償する義務あるものといわなければならない。(第一審被告は、三愛商事は第一審原告に対し同人の清算取引の終了により委託証拠金及びその充用証券と損失金との相殺勘定を行ない、差金一万三、九四三円を第一審原告に返還したと主張するが、右差金が第一審原告に返還されたことについては、にわかに採用し得ない原審証人Cの供述を除いて他にこれを認めるに足る証拠はないから右主張は採用できないし、また第一審被告は、第一審原告はAを代理人として三愛商事に対し本件売買取引の委託をなしたからAの行為によつて第一審原告が損害を蒙つたとしてもその責は第一審原告自らが負らべきであると主張するが、第一審原告がAを代理人として右取引の委託をなしたとの事実を認めるに足る資料は全くないばかりか、Aが三愛商事の職員であつて三愛商事のために第一審原告から本件売買取引の委託を受けたことは前段認定のところから明らかであるから第一審被告の右主張も採用できない。)そこで次に三愛商事の株式引渡の遅滞によつて第一審原告に生じた損害の額について按ずるに、三愛商事が原判決別紙預託一覧表中有価証券の部記載の各株式のうち片倉工業株式会社及びカーリツト株式会社の各株式五〇〇株を既に第一審原告に返還したこと及び日鉄鉱業株式会社の株式五〇〇株が清算済であることは当事者間に争いがないが、三愛商事が第一審原告から預託を受けた三井造船株式会社の株式一、〇〇〇株、明治製糖株式会社及び神戸製鋼株式会社の各株式五〇〇株を昭和三三年三月二〇日他に売却したことは当事者間に争いがなく、その結果は第一審原告において計算関係につき当事者間に争いのない同原告主張の如き合計金二〇万三、三六六円の得べかりし利益を喪失したことになるから、第一審被告は第一審原告に対し右同上金額の損害を 事者間に争いがないが、三愛商事が第一審原告から預託を受けた三井造船株式会社の株式一、〇〇〇株、明治製糖株式会社及び神戸製鋼株式会社の各株式五〇〇株を昭和三三年三月二〇日他に売却したことは当事者間に争いがなく、その結果は第一審原告において計算関係につき当事者間に争いのない同原告主張の如き合計金二〇万三、三六六円の得べかりし利益を喪失したことになるから、第一審被告は第一審原告に対し右同上金額の損害を く、その結果は第一審原告において計算関係につき当事者間に争いのない同原告主張の如き合計金二〇万三、三六六円の得べかりし利益を喪失したことになるから、第一審被告は第一審原告に対し右同上金額の損害を賠償すべき義務がある。五そうすると結局第一審被告は第一審原告に対し前記委託証拠金残金一九万〇、二五〇円と右株式売却による損害金二〇万三、三六六円の合計金三九万三、六一六円及び内金一九万〇、二五〇円に対する履行期後である本件訴状が第一審被告に送達された日の翌日であること記録上明らかな昭和三三年四月二日以降、内金九万七、〇〇〇円(原判決別紙株式関係第一表の第二増資新株式関係の新株割当を受けられなかつたことによる損害金)に対する最終の権利落の日の翌日である昭和三五年七月二八日以降各完済にいたるまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務並びに代替履行として三井造船株式会社株式一〇〇〇株、明治製糖株式会社及び神戸製鋼株式会社株式各五〇〇株を引渡す義務あるものというべく、さらに当審における口頭弁論終結の日である昭和四四年三月五日における右各株式の単価は三井造船株式会社の株式八五円、明治製糖株式会社の株式七五円、神戸製鋼株式会社の株式三八円であることは当事者間に争いがないから第一審被告の第一審原告に対する右各株式引渡の強制執行が不能のときはその不能部分につき、これに右各株式の単価を乗じた金額と同金額に対する執行不能の日の翌日から完済にいたるまで同上年六分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、第一審原告の本訴請求は右の限度において正当である。六なお第一審原告は予備的にA、Bらの詐欺による不法行為の主張をするけれどもA及びBが真実売買取引を履行する意思がないのにあたかもこれあるものの如く装つて第一審原告を欺罔して本件売買取引を委託させ 六なお第一審原告は予備的にA、Bらの詐欺による不法行為の主張をするけれどもA及びBが真実売買取引を履行する意思がないのにあたかもこれあるものの如く装つて第一審原告を欺罔して本件売買取引を委託させたことを認めるに足る資料はないから右主張は採用できない。 不法行為の主張をするけれどもA及びBが真実売買取引を履行する意思がないのにあたかもこれあるものの如く装つて第一審原告を欺罔して本件売買取引を委託させ 六なお第一審原告は予備的にA、Bらの詐欺による不法行為の主張をするけれどもA及びBが真実売買取引を履行する意思がないのにあたかもこれあるものの如く装つて第一審原告を欺罔して本件売買取引を委託させたことを認めるに足る資料はないから右主張は採用できない。七よつて第一審原告の本訴請求中前叙正当である部分を認容し、その余の部分を棄却すべく、第一審原告の控訴は一部その理由があるから原判決を主文のとおり変更し、第一審被告の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第九二条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用して主文のとおり判決する。(裁判長裁判官古山宏裁判官川添萬夫裁判官右田堯雄)
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