平成29(行ウ)466 税理士登録拒否処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年8月30日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文12,636 文字)

平成30年8月30日判決言渡平成29年(行ウ)第466号税理士登録拒否処分取消等請求事件主文 1 本件訴えのうち被告に対して税理士名簿への登録の義務付けを求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告が原告に対して平成27年9月17日付けでした原告の平成27年5月29日付け税理士登録申請についての税理士登録拒否処分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,原告の同日付け申請に基づき,原告を税理士名簿に登録せよ。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対して平成27年5月29日付けで税理士名簿への登録を申請した(以下,この申請を「本件申請」という。)ものの,本件申請から3か月を経過しても本件申請に対して何らの処分がされなかったことから,国税庁長官に対して同年9月17日付けで審査請求書を提出し(同月24日受付(乙1の1)),これにより被告が本件申請に係る登録を拒否したものとみなされた(以下,この登録の拒否を「本件処分」という。)ため,原告には登録拒否事由はなく本件処分は違法であると主張して,その取消しを求めるとともに,被告に対して税理士名簿への登録を義務付けることを求める事案である。 1 税理士法の定めは,別紙1「税理士法の定め」に記載のとおりである。 2 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 原告による脱税行為等ア原告は,平成10年7月10日にA税務署を退職した後,同年8月20 日に税理士名簿に登録され,B税理士会C支部に所属していた者であるが,平成22年5月17日,以下イのとおり脱税を行ったため,そのうちの一部の年度について,所得税法違反(自己脱税)の被疑事実により 日に税理士名簿に登録され,B税理士会C支部に所属していた者であるが,平成22年5月17日,以下イのとおり脱税を行ったため,そのうちの一部の年度について,所得税法違反(自己脱税)の被疑事実により逮捕され,同日,被告に対し,税理士登録抹消届出書を提出した。 イ原告は,税理士登録後,平成15年分から平成19年分までの5年分に係る申告所得税につき,架空の支払手数料を計上し,収入金額と相殺するなどして収入金額の一部を除外し,また,架空の業務委託費を計上するなどして,所得金額2億9312万3092円を過少に申告し,所得税額1億0958万2100円を免れていた(以下,これらの脱税行為をまとめて,「本件非行」という。)(甲1)。 ウ原告は,前記のとおり平成22年5月17日に逮捕され,同年6月4日,本件非行のうち平成17年分及び平成18年分の所得税の脱税行為につき起訴された。福岡地方裁判所は,平成22年10月5日,所得税法違反の罪により原告を懲役1年6月(執行猶予3年)及び罰金1300万円に処するとの判決の宣告をし,同判決は同月20日に確定した。(以下,一連の事件のことを「本件刑事事件」という。)本件刑事事件については,逮捕時に報道がなされたほか,上記判決については全国紙で取り上げられた(甲1)。 (2) 滞納税額及び原告の納税状況等ア原告の本件非行による国税滞納額は別紙2の「本税」欄記載のとおりであり,県税滞納額は別紙3,市税滞納額は別紙4のとおりである。 また,原告は,別紙2の「加算税」欄及び「延滞税」欄に各記載のとおり,本件非行につき,加算税及び延滞税を課された。 イ原告は,別紙5記載のとおり国税を納付し,本税については平成24年中に完納し,現在,加算税と延滞税を毎月納付している。なお,加算税と延滞税 り,本件非行につき,加算税及び延滞税を課された。 イ原告は,別紙5記載のとおり国税を納付し,本税については平成24年中に完納し,現在,加算税と延滞税を毎月納付している。なお,加算税と延滞税の残額は,平成29年12月7日時点では,合計5247万109 2円であった(甲6の6)。 また,原告は,別紙6及び7記載のとおり,県税及び市税を納付し,県税については平成23年5月19日までに,市税については平成24年3月26日までに完納した。 (3) 本件訴訟に至る経緯等ア原告は,平成26年1月8日,被告に対し,税理士登録申請をしたが,同年4月1日にこれを取り下げた。 イ原告は,平成27年5月29日付けで,税理士登録申請書を,B税理士会を経由して被告に提出した(本件申請)。 被告は,税理士法24条7号の登録拒否事由に該当するものと認め,同年8月27日付けで,原告に対し,税理士登録拒否予告通知書を送付した(甲2,乙1の6)。同通知書には,同号該当の理由として,相当額の税金の滞納がある者に税理士資格を認めるのは国民感情に照らし適当でないこと,本件非行の社会的影響の大きさ,税理士及び税理士会全体の信用を著しく損なったこと,積極的に納税する姿勢が見られないことなどが記載されていた(甲2)。 もっとも,本件申請から3か月が経過しても本件申請に対する処分がなされなかったことから,原告は,国税庁長官に対して,平成27年9月17日付け審査請求書を提出し(同月24日受付(乙1の1)),これにより,本件申請は拒否されたものとみなされた(本件処分)。 ウ国税庁長官は,平成29年5月25日,原告の審査請求を棄却する旨の裁決を行い,原告は,同月29日に裁決書を受領した。 エ原告は,平成29年10月7日,本件訴えを みなされた(本件処分)。 ウ国税庁長官は,平成29年5月25日,原告の審査請求を棄却する旨の裁決を行い,原告は,同月29日に裁決書を受領した。 エ原告は,平成29年10月7日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点(1) 本件処分の適法性(具体的には,原告につき税理士法24条6号ロないし7号所定の登録拒否事由があるか否か) (2) 義務付けの訴えの適法性(本案前の争点) 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)(本件処分の適法性)に対する当事者の主張(被告の主張)ア税理士が過去に犯罪を行い刑に処せられた場合には,その後一定の期間が経過したとしても,その登録申請については,当該犯罪の性質,重大性,情状に加え,犯罪後の就業状態や生活状況,反省の態度からみて,職業的自覚が十分に改善され,さらには,非行行為の社会的影響とその沈静化の程度等も勘案し,そのような者に再度資格を付与して業務を行わせることにより税理士制度に対する社会一般の信頼が損なわれるおそれが解消されているといえるかなどの点を慎重に検討すべきである。とりわけ,当該犯罪が税理士業務の根幹である税法に関する法律違反行為であった場合には,その社会的影響は極めて大きく,安易に税理士としての業務の再開を認めた場合には国民からの租税制度と税理士制度に対する重大な不信を招くおそれが大きいことから,税理士法24条6号ロにおいて極めて厳格に審査すべきである。また,包括的な登録拒否事由である同条7号該当性判断においても,原告が同条6号ロに該当する本件においては,同号ロの場合と同様の厳格な審査がなされなければならない。 イ原告が税理士法24条6号ロ及び7号に該当すること(ア) まず,本件非行は,元国税職員の税理士が起こした事件として, おいては,同号ロの場合と同様の厳格な審査がなされなければならない。 イ原告が税理士法24条6号ロ及び7号に該当すること(ア) まず,本件非行は,元国税職員の税理士が起こした事件として,全国紙で取り上げられるなど社会的影響が甚大であり,国税局及び税理士に対する社会的信用を著しく傷つけた深刻かつ悪質な非行である。 そして,非行の程度が著しく,不正行為の継続性が見られる本件においては,本件非行に対する反省や謹慎状況を判断する期間としては,少なくとも仮装隠蔽行為を行っていた期間に相当する期間において,法令を遵守する姿勢を継続しているか否かをみるべきであるところ,本件刑 事事件の判決確定の日から本件申請までの期間は,原告が不正を行っていた期間である5年間にすら満たず,本件非行から十分な期間が経過したとはいえない。 (イ) 原告には多額の滞納税額があるところ(平成29年12月7日時点でも,5247万1092円といまだ極めて高額である。),当該滞納税額は,税理士に対する信用を失墜させ,社会的評価を大きく傷つけた本件非行に際して所得を不正に隠蔽していたことに起因するものである。 このような者に税理士としての業務を行わせることは,税理士の職責に照らして疑問があり,社会一般の信頼の確保の観点からも適当でない。 (ウ) 原告は,何ら積極的に反省の弁を述べることはせず,高額の納税をしていることが原告の反省の態度を示していると繰り返し主張するのみである上,その根拠として当初提出した資料は原告作成の表のみであって,現実の納税額を示す客観的資料は,本件訴訟において裁判所に指示されて初めて提出されたものである。このように,原告からは真摯な反省の態度をうかがうことはできなかった。 原告は平成26年に退職金額1 納税額を示す客観的資料は,本件訴訟において裁判所に指示されて初めて提出されたものである。このように,原告からは真摯な反省の態度をうかがうことはできなかった。 原告は平成26年に退職金額1500万円を得ているが,原告の納付状況をみても積極的な納付をしたとは認められず,妻名義の住宅ローンの返済をしている理由等についての詳細な説明もなく,原告が精一杯の滞納している税の支払の努力をしていたか否かの判断をすることはできなかった。 そもそも,原告が完納したと主張する国税の本税,県税,市税は,いずれも脱税をしたことにより納付を免れていたものであり,本来納付すべき税額であるから,本税のみを完納したことをもって,直ちに税理士としての適格性に欠けるところはないと評価することはできない。むしろ,脱税に対する制裁である重加算税を極めて大きな金額で滞納しているのであるから,反省以前に,そもそも脱税者への制裁として課された 義務を果たしていないと評価すべきであり,少なくとも,これらを完納しない限り,税理士としての適格性を判断すべき状況にはならない。 なお,原告は,本件訴訟において,執行猶予期間の満了をもって社会的な禊ぎが終わったなどと主張するが,本件非行が長期間にわたり多額の脱税をしてきたものであることからすると,このような主張をすること自体,原告において,本件非行につき真摯な反省をしておらず,法令を軽視する身勝手な考えを改めていないことを示すものである。 (エ) 本件非行は,原告が逮捕されたときのみならず,有罪判決を受けたときにも,元税務職員である税理士が犯した事件として多数報道されており,本件非行の社会的影響は相当に大きいものであったと推認され,現状において,その影響が完全に沈静化したと判断することはできない。 にも,元税務職員である税理士が犯した事件として多数報道されており,本件非行の社会的影響は相当に大きいものであったと推認され,現状において,その影響が完全に沈静化したと判断することはできない。 (オ) 以上のとおり,原告は,税理士として適正な納税義務の実現を図るべき地位にあったにもかかわらず,職務で得た知識を悪用して行った本件非行について,真摯に反省して税法を軽視する態度を改めているか疑問である上に,本件非行を起因とする前記のような多額の滞納税額を有しており,そのような原告に税理士としての業務を行わせることは,税理士が他人の財産権と密接な関連を有する業務を行い,納税義務者の信頼に応えて適正な納税義務の実現を図ることを職責としていることに照らして問題であり,税理士に対する社会一般の信頼の確保の点からも適当でないといわざるを得ない。 そうすると,原告は,税理士法24条6号ロ及び同条7号の登録拒否事由に該当すると認められるから,本件処分は適法である。 (原告の主張)ア原告は,預貯金や証券の売却代金,当時役員を務めていた会社からの退職金を担保とした借入金等を原資として,平成24年までに国税の本税,県税,市税を完納し(その合計額は1億7000万円を超える。),その 後も,毎月の収入の中から25万円から30万円程度を国税の加算税,延滞税の納付に充てている。本件申請の時点での国税の納税額は1億3680万円余りである。上記のような分割納付については,税務当局と協議の上,事実上承諾してもらったスケジュールに沿って納付しているのであり,そのスケジュールをきちんと遵守している。このように,原告は,積極的に納税をする態度を示しているのであり,原告が短期間で高額の納税をしたことは,原告の反省の態度を顕著に示すものである。 ,そのスケジュールをきちんと遵守している。このように,原告は,積極的に納税をする態度を示しているのであり,原告が短期間で高額の納税をしたことは,原告の反省の態度を顕著に示すものである。 被告は,いずれも本来納付すべき税額であり,完納したことをもって税理士の適格性に欠けるところはないとはいえないなどと主張するが,この主張を前提とすれば,「積極的に納税する姿勢」が認められるということは有り得ないことになる。このように,認められる可能性がない「積極的に納税する姿勢」の欠如を登録拒否の理由とすることは,原告に不可能を強いるものであり,合理性がない。 なお,被告の指摘する妻名義の住宅ローンの返済については,当該住宅ローンは,もともと原告が借り入れたもので妻名義のものではなく,自分のローンの返済をしているにすぎないから,問題視する理由はない。また,被告は,原告が退職金を受領したなどと指摘するが,原告に対し退職金を支給した会社は原告が設立し,取締役を務めていた会社であって,原告の納税資金を捻出するために,同社が原告を被保険者とする生命保険を担保に金員を借り入れ,原告が,これを同社から借り入れて滞納していた本税を納付し,平成26年に同社の取締役を退任した際,退職金をもって同社からの借入れに充てたものであるから,実質的には,退職金は納税に充てられたものといえる。 イ原告は,平成22年10月5日に執行猶予付きの有罪判決を受けたが,執行猶予期間は満了しており,社会的に禊ぎは終わっている。また,同判決について報道がなされた後は,本件非行が新聞等によって報道されたこ とはなく,社会的影響が沈静化していないという被告の主張は理由がない。 ウ登録拒否処分は,税理士となる資格を有し,欠格事由もない者について,税理士としての活動の 等によって報道されたこ とはなく,社会的影響が沈静化していないという被告の主張は理由がない。 ウ登録拒否処分は,税理士となる資格を有し,欠格事由もない者について,税理士としての活動の道を認めない処分であり,職業選択の自由に対する重大な制約であるから,合理性が要求されるところ,被告の主張する本件処分の理由は,以上で述べたとおり,その根拠となる事実が不明であったり,論理性を欠いたりするものであり,合理的理由がないことが明らかであるから,本件処分は違法であり,取り消されるべきである。 (2) 争点(2)(義務付けの訴えの適法性)に対する当事者の主張(被告の主張)上記(1)(被告の主張)で述べたとおり,本件処分に何ら違法な点はなく,本件処分の取消請求は理由がないから,本件訴えのうち被告に対して税理士名簿への登録の義務付けを求める部分は,不適法な訴えである。 (原告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件処分の適法性)について(1) 税理士法は,1条において,税理士は,税務に関する専門家として,独立した公正な立場において,申告納税制度の理念に沿って,納税義務者の信頼に応え,租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とすると定めている。これは,税理士が,他人の求めに応じて,租税に関し,税務代理,税務書類の作成,税務相談等を行うことを業とするものであるところ(同法2条),これらの業務は国家及び国民の適正な税務に重要な役割を果たすものであることから,納税義務の適正な実現を図るため,税理士に対して業務遂行上の責務を課し,併せて,社会一般の税理士に対する信頼を担保しようとする趣旨であると解される。 そして,同法が,税理士となるための要件として,所定の資格を取得する 税理士に対して業務遂行上の責務を課し,併せて,社会一般の税理士に対する信頼を担保しようとする趣旨であると解される。 そして,同法が,税理士となるための要件として,所定の資格を取得する こと(3条)及び欠格事由のないこと(4条)に加え,被告の備える税理士名簿への登録を受けなければならない旨を定め(18条,19条1項),被告は,24条各号のいずれかに該当する者であると認めたときは,税理士名簿への登録を拒否しなければならない旨定めている(22条1項)のは,上記の責務が遵守されるかどうかは,個々の税理士の能力,人格,職業的な自覚等に負うところが大きいため,上記の責務に違反して税理士に対する社会一般の信頼を損なうおそれのある者をあらかじめ排除することによって,社会一般の税理士に対する信頼の確保を十全のものとしようとしたところにあると解される。 以上のような同法の定めやその趣旨を踏まえると,同法24条6号ロ所定の登録拒否事由の有無を判断するに当たっては,当該申請者についての適格性に関わる諸事情を総合的に考慮する必要があるというべきであり,具体的には,過去の非行の内容,性質,重大性(なお,本件のように非行のうち一部の行為が刑事罰の対象となった場合でも,登録拒否事由の有無の判断に当たっては,当該一部の行為のみではなく非行全体について考慮するのが相当である。)に加えて,当該非行に対する刑事処分等の処分後の就業状態や生活状況,反省の態度等からみて職業的自覚が十分に改善されているか否か,当該申請人に再び税理士の業務を行わせることにより,税理士制度に対する社会一般の信頼を損なうおそれがあるか否かという観点から判断を行うのが相当である。 また,同条7号所定の登録拒否事由に関しても,かつて税法違反その他非違行為を行った者については, 制度に対する社会一般の信頼を損なうおそれがあるか否かという観点から判断を行うのが相当である。 また,同条7号所定の登録拒否事由に関しても,かつて税法違反その他非違行為を行った者については,以上で述べた点に照らし,同様の観点から同号該当性を判断するのが相当である。 (2) 原告は,本件刑事事件において,所得税法違反の罪により懲役刑と罰金刑を併科されたものであるところ,本件処分時において,懲役刑については執行猶予期間満了により刑の言渡しの効果が失われているが,罰金刑の言渡し の効果は残存している。そして,弁論の全趣旨によれば,本件申請時,税理士法4条5号所定の期間は経過していたものと認められる。したがって,原告は,同号に該当していた者であり,同法24条6号ロにいう「第4条第4号から第11号までのいずれかに該当していた者が当該各号に規定する日から当該各号に規定する年数を経過して登録の申請をしたとき」に該当する。 そこで以下,原告が,「税理士業務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者」(同法24条6号柱書)に当たるか否かを検討することとする。 アまず,本件非行は,元国税職員であり税理士である原告が,納税義務の適正な実現を図るという税理士の使命に反し,その知識経験を悪用して,5年間もの長期間にわたり合計2億9300万円余りもの所得を隠蔽したという非常に悪質かつ重大な非行であって,税理士に対する社会一般の信用を著しく毀損するものである。 また,原告は,本件申請時において,国税の本税,県税及び市税については完納していたものの,加算税や延滞税については極めて多額の滞納税額(本件処分から2年以上経過した平成29年12月7日の時点においても,滞納税額は5200万円余りであった。)を有しており,しかも,当該滞納税 いたものの,加算税や延滞税については極めて多額の滞納税額(本件処分から2年以上経過した平成29年12月7日の時点においても,滞納税額は5200万円余りであった。)を有しており,しかも,当該滞納税額は自己脱税という税法違反に起因するものである。このような原告に,税理士として再びその業務を行うことを認めることは,税理士が,他人の財産権と密接に関連する業務を行い,納税義務者の信頼に応えて適正な納税義務の実現を図るという職責を負っていることに照らし不適当といわざるを得ず,税理士制度そのものに対する社会一般の信頼を大きく損なうおそれが大きいということができる。 原告は,本件非行による社会的影響は沈静化したなどと主張するが,本件非行は,前記のとおり税理士に対する社会一般の信用を著しく毀損する非常に悪質かつ重大なものであり,その社会的影響は大きかったものと推認され,実際,判決時には全国紙で報道がなされていることを考慮すると, 本件刑事事件の判決時から本件処分時までに約5年が経過していたものの,いまだ本件非行による影響が完全に払拭されていたとはいい難く,自己脱税をしたことに起因して課された加算税や延滞税をいまだ極めて多額に滞納している原告が再び税理士として業務をすることとなれば,再び社会の注目を集め,その結果,税理士制度に対する社会一般の信頼を損なうこととなるおそれはあったと認められる。 イ一方で,原告が本件申請時において国税の本税,県税及び市税を完納していたことは,本件非行に対する原告の一定の反省を示す事情と評価できなくもない。もっとも,そもそもこれらは本来納付すべき税額であって,その支払を不正に免れていたにすぎないことからすれば,これらを完納したことは,原告に特に有利に働く事情とまではいい難い。 むしろ,原告は, っとも,そもそもこれらは本来納付すべき税額であって,その支払を不正に免れていたにすぎないことからすれば,これらを完納したことは,原告に特に有利に働く事情とまではいい難い。 むしろ,原告は,本件処分に対する審査請求の手続内において,税の滞納の事実は登録拒否事由に当たらない,税理士の滞納が一般的に税理士制度に対する社会一般の信頼を損なうものであるとの結論はおそらく誤りであるなどと主張し(乙1の1,1の3,1の7,1の13),本件訴訟においても滞納の事実は登録拒否事由に当たらないとの主張をしている。このような原告の態度からは,自己脱税に起因する極めて多額の滞納税額のある者に税理士としての業務を再び行わせることにより生じ得る,税理士制度に対する社会一般の信頼の低下という悪影響を過小評価する姿勢が見て取れ,本件非行の重大性や税理士業務の重要性,税理士に対する信頼確保の必要性についての理解の欠如がうかがわれるのであって,本件処分時はもとより,現時点においても,原告については,本件非行に対する反省が深まりを欠いており,税理士としての職業的自覚の改善もいまだ十分でないものといわざるを得ない。 ウ以上のとおり,本件非行は,元国税職員であり税理士である原告が,その知識経験を悪用し,長期間にわたり多額の所得隠しを行ったという非常 に悪質かつ重大な事案であって,その社会的影響も完全に払拭されたということはできず,本件非行に起因する極めて多額の滞納税額のある原告に税理士としての業務を行うことを認めることは,税理士制度に対する社会一般の信頼を損なうおそれが大きい上,原告の職業的自覚の改善もいまだ十分でないと認められるのであって,これらの事情に照らせば,原告については,「税理士業務を行わせることがその適性を欠くおそれがある者」(税理士法 なうおそれが大きい上,原告の職業的自覚の改善もいまだ十分でないと認められるのであって,これらの事情に照らせば,原告については,「税理士業務を行わせることがその適性を欠くおそれがある者」(税理士法24条6号ロ)に該当するというべきである。 (3) また,上記(2)において述べたところによれば,原告については,「税理士の信用又は品位を害するおそれがある者その他税理士の職責に照らし税理士としての適格性を欠く者」(同条7号)にも当たるといえる。 (4) したがって,原告については,税理士法24条6号ロ及び7号の登録拒否事由に該当するものと認められるから,本件処分は適法であり,本件処分の取消請求は理由がない。 2 争点(2)(義務付けの訴えの適法性)についていわゆる申請型の義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6号ニ)は,法令に基づく申請を却下し又は棄却する旨の処分がされた場合においては,当該処分が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在でなければ提起することができないところ(同法37条の3第1項2号),前記のとおり,本件処分は適法であり,本件処分の取消請求は理由がない。 したがって,本件訴えのうち,被告に対して税理士名簿への登録の義務付けを求める部分は,不適法な訴えであり,却下を免れない。 第4 結論よって,本件訴えのうち,被告に対して税理士名簿への登録の義務付けを求める部分は不適法であるからこれを却下し,その余の原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官林 俊之 裁判官小川弘持 裁判官三貫納 有子(別紙2省略)(別紙3省略)(別紙4省略)(別紙5省 裁判長裁判官林 俊之 裁判官小川弘持 裁判官三貫納 有子(別紙2省略)(別紙3省略)(別紙4省略)(別紙5省略)(別紙6省略)(別紙7省略) (別紙1)税理士法の定め 1 3条(税理士の資格)(平成26年法律第10号による改正前)(1) 1項次の各号の一に該当する者は,税理士となる資格を有する。ただし,第1号又は第2号に該当する者については,租税に関する事務又は会計に関する事務で政令で定めるものに従事した期間が通算して2年以上あることを必要とする。 1号税理士試験に合格した者2号第6条に定める試験科目の全部について,第7条又は第8条の規定により税理士試験を免除された者3号弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。)4号公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。)(2) (2項省略) 2 4条(欠格条項)(平成29年法律第2号及び第4号による改正前)次の各号のいずれかに該当する者は,前条の規定にかかわらず,税理士となる資格を有しない。 (1) (1号ないし3号省略)(2) 4号国税若しくは地方税に関する法令又はこの法律の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で,その刑の執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しないもの(3) 5号国税若しくは地方税に関する法令若しくはこの法律の規定により罰金の刑に処せられた者又は国税犯則取締法(中略)若しくは関税法(中略)の規定により通告処分(中略)を受けた者で,それぞれその刑の執行を終わり,若 しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履 れた者又は国税犯則取締法(中略)若しくは関税法(中略)の規定により通告処分(中略)を受けた者で,それぞれその刑の執行を終わり,若 しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過しないもの(4) (6号以下省略) 3 18条(登録)税理士となる資格を有する者が,税理士となるには,税理士名簿に,財務省令で定めるところにより,氏名,生年月日,事務所の名称及び所在地その他の事項の登録を受けなければならない。 4 19条(税理士名簿)(1) 1項税理士名簿は,日本税理士会連合会に備える。 (2) 2項税理士名簿の登録は,日本税理士会連合会が行う。 (3) (3項省略) 5 21条(登録の申請)(1) 1項第18条の規定による登録を受けようとする者は,同条に規定する事項その他の財務省令で定める事項を記載した登録申請書を,第3条第1項各号のいずれかに該当する者であることを証する書面を添付の上,財務省令で定める税理士会を経由して,日本税理士会連合会に提出しなければならない。 (2) (2項省略) 6 22条(登録に関する決定)(1) 1項日本税理士会連合会は,前条第1項の規定による登録申請書を受理した場合においては,当該申請者が税理士となる資格を有し,かつ,第24条各号のいずれにも該当しない者であると認めたときは税理士名簿に登録し,当該申請者が税理士となる資格を有せず,又は同条各号のいずれかに該当する者 であると認めたときは登録を拒否しなければならない。この場合において,次条第1項の規定による通知に係る者につき登録をしようとするとき,又は登録を拒否しようとするときは,第49条の16に規定する資格審査会の議決に基づ は登録を拒否しなければならない。この場合において,次条第1項の規定による通知に係る者につき登録をしようとするとき,又は登録を拒否しようとするときは,第49条の16に規定する資格審査会の議決に基づいてしなければならない。 (2) (2項以下省略) 7 24条(登録拒否事由)次の各号のいずれかに該当する者は,税理士の登録を受けることができない。 (1) (1号ないし5号省略)(2) 6号次のイ又はロのいずれかに該当し,税理士業務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者イ心身に故障があるとき。 ロ第4条第4号から第11号までのいずれかに該当していた者が当該各号に規定する日から当該各号に規定する年数を経過して登録の申請をしたとき。 (3) 7号税理士の信用又は品位を害するおそれがある者その他税理士の職責に照らし税理士としての適格性を欠く者 8 24条の2(登録を拒否された場合等の審査請求)(平成26年法律第69号による改正前)(1) (1項省略)(2) 2項第21条第1項の規定による登録申請書を提出した者は,当該申請書を提出した日から3月を経過しても当該申請に対してなんらの処分がされない場合には,当該登録を拒否されたものとして,国税庁長官に対して前項の審査請求をすることができる。この場合においては,審査請求があった日に日本 税理士会連合会が第22条第1項の規定により当該登録を拒否したものとみなす。 (3) (3項以下省略) 以上

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