令和7(ネ)10042 特許権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年9月25日 知的財産高等裁判所 2部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和5(ワ)70449
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令和7年9月25日判決言渡令和7年(ネ)第10042号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70449号)口頭弁論終結日令和7年7月24日判決 控訴人 X 控訴人株式会社ストローグ 上記両名訴訟代理人弁護士赤尾直人上記両名補佐人弁理士 岩崎孝治氏原康宏伊藤昌哉 被控訴人株式会社タツミ 同訴訟代理人弁護士細貝巌同訴訟代理人弁理士吉井雅栄 主文 1 控訴人らの本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由(注)本判決で用いる略語の定義は、別に本文中で定めるもののほか、次のとおりである。 原告X :控訴人(1審原告)X 原告会社 :控訴人(1審原告)株式会社ストローグ原告ら :原告X及び原告会社被告 :被控訴人(1審被告)株式会社タツミ本件特許 :原告Xを特許権者とする特許第5634732号(発明の名称締結金物)。本件特許に係る特許権は「本件特許権」という。 本件発明 :本件特許の特許請求の範囲・請求項1に係る発明本件明細書:本件特許に係る明細書及び図面(甲1)被告各製品:原判決別紙「物件目録」記載の締結金物甲5発明 :意匠登録第1179101号公報(甲5)に記載された発明 範囲・請求項1に係る発明本件明細書:本件特許に係る明細書及び図面(甲1)被告各製品:原判決別紙「物件目録」記載の締結金物甲5発明 :意匠登録第1179101号公報(甲5)に記載された発明第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被告は、被告各製品の製造及び販売を行ってはならない。 3 被告は、現在所有している被告各製品を廃棄し、かつ被告各製品の製造設備を除去せよ。 4 被告は、原告会社に対し、456万6400円及びこれに対する令和5年8 月30日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告らが、被告各製品を製造、販売する被告に対し、被告各製品が、本件発明又はこれを訂正した発明の技術的範囲に属すると主張して、①本件特許 権を有する原告Xが特許法100条1項及び2項に基づき被告各製品の製造及び販売の差止め並びに被告各製品の廃棄及び被告各製品の製造設備の除去を、②原告Xから本件発明の独占的通常実施権の許諾を受けたとする原告会社が不法行為に基づき損害賠償金456万6400円(損害期間:令和2年7月1日から令和5年6月30日)及び遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。 原審が、本件発明は甲5発明と実質的に同じ構成を備えているから、新規性欠 如の無効理由を有し、原告らは本件発明に係る本件特許権を行使することができず、訂正請求は未だ確定していないから、訂正後の発明に係る請求はその前提を欠くとして、原告らの請求をいずれも棄却したところ、原告らがこれを不服として控訴した。 1 前提事実 原判決4頁24行目末尾に行を改めて次のように加えるほか、原判決の「事実及び理由」中、第2の2(原判決2頁18行目から4頁24行目 ろ、原告らがこれを不服として控訴した。 1 前提事実 原判決4頁24行目末尾に行を改めて次のように加えるほか、原判決の「事実及び理由」中、第2の2(原判決2頁18行目から4頁24行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する(以下、引用文中の「別紙」は「原判決別紙」と読み替える。)。 「⑹ 無効審判事件の経緯 ア被告は、令和5年12月15日、本件特許の請求項1から6までの各発明につき、甲5発明に基づく新規性欠如又は進歩性欠如の無効事由を有するとして、無効審判を請求した(無効2023-800081号)(乙11)。 イ原告Xは、令和6年3月22日、本件特許の請求項1の記載を別紙 「クレーム対比表」の「訂正請求①」欄のとおり訂正することを含む訂正請求をした(甲12)。 ウ特許庁は、原判決言渡し後である令和7年3月27日付で、審決の予告をした。その内容は、前記イの訂正請求を認め、本件特許の請求項1、4及び5に係る発明についての特許を無効とする、本件特許の請求項2、 3及び6に係る発明についての本件審判請求は成り立たないとするものであった(乙11)。 エ原告Xは、同年5月30日、本件特許の請求項1の記載を別紙「クレーム対比表」の「訂正請求②」欄のとおり訂正することを含む訂正請求(甲17、以下「訂正請求②」といい、訂正後の本件特許の請求項1記 載の発明を「本件訂正発明②」という。)をした。これにより、前記イ の訂正請求は、取り下げたものとみなされた(特許法134条の2第6項)。」 2 「争点」及び「争点に関する当事者の主張」後記3のとおり当審における当事者の追加的・補足的主張を加えるほか、原判決の「事実及び理由」中、第2の3及び第3(原判決4頁25行目から11 頁23 「争点」及び「争点に関する当事者の主張」後記3のとおり当審における当事者の追加的・補足的主張を加えるほか、原判決の「事実及び理由」中、第2の3及び第3(原判決4頁25行目から11 頁23行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する(なお、原審が判断した争点は争点3(甲5に基づく新規性欠如)のみであり、当審が判断した争点も同様である。)。 3 当審における当事者の追加的・補足的主張(甲5に基づく新規性欠如(争点3)について) (原告らの主張)⑴ 本件発明についてア本件発明の「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させる」という要件(構成要件D)及び「破壊の遅延」という基本的技術思想は、本件明細書の段落【0009】【0011】【0014】及び【図10】【図12】 の記載(以下、特に断らない限り、【 】は本件明細書の段落番号を、【図 】は本件明細書の図を、それぞれ示すものとする。)から、「前孔(19)及びピン孔(36)またはピン溝(34)の位置が同一位置であって、しかも前面部(11)と後縁部(31)とが分離せず一体化している構成」(以下「同一位置構成」という。)との対比を前提としており、 原判決のように、本件発明の構成から枝状部を除外する構成(以下「除外構成」という。)との対比に立脚しているのではない。したがって、この点において原判決には前提に誤りがある(原告らの主張する各構成の対比は、次の対比図面のとおりである。)。 イ原判決は、短期許容耐力(何らの破壊も生じることなく耐えることのできる荷重の上限値)に関する原告らの主張を本件明細書に基づいていないという根拠の下に排斥しているから、本件発明が短期許容耐力の向上と無関係であるという前提に立 らの破壊も生じることなく耐えることのできる荷重の上限値)に関する原告らの主張を本件明細書に基づいていないという根拠の下に排斥しているから、本件発明が短期許容耐力の向上と無関係であるという前提に立脚している。短期許容耐力の向上は、本件発明 の構成要件ではないが、本件明細書においては、【図8】に示す荷重試験において【図9】記載の算定を行ったうえで、【図10】にて本件発明に立脚した上側のデータ(本件発明の実施形態に該当)と同一位置構成に立脚した下側のデータとの対比によって、短期許容耐力の向上を明瞭に証明 している(【0047】)。 したがって、短期許容耐力の向上を伴う構成は本件発明に包摂されており、短期許容耐力の向上が本件発明の構成とは無関係であるという原判決の前提はもとより成立し得ない。 ウ原判決が前提とする除外構成であれば、本件発明の方が過大な荷重の作 用に対するエネルギーの吸収が大きく、破壊の遅延に至ることは自明であるが、対比すべき構成が同一位置構成である場合、【図8】【図9】【図10】の具体的実験を介して初めて、破壊の遅延を明らかにすることができる。 エ本件明細書【図9】【図10】について (ア) 【図9】に示すように、短期許容耐力の算定については、バラツキ係数=1-(標準偏差/平均値)×定数 という定義の下に、① (2/3)Pmax(最大荷重をいう。以下同じ。)平均値×当該平均値のデータによるバラツキ係数② Py(降伏耐力をいう。以下同じ。)の平均値×当該平均値のデータに基づくバラツキ係数 ③ 前記①と②の数値の小さい方の数値の選択というプロセスを必要不可欠とする。 (イ) 【図10】のデータのように、本発明製品及び対比製品において前記①の数値よりも前記② くバラツキ係数 ③ 前記①と②の数値の小さい方の数値の選択というプロセスを必要不可欠とする。 (イ) 【図10】のデータのように、本発明製品及び対比製品において前記①の数値よりも前記②の数値の方が小さい場合には、本発明製品の短期許容耐力と対比製品の短期許容耐力の何れが大きいかは、前記②の数値 の大小関係によって律せられるが、本発明製品の枝状部の設計如何によっては、前記②の数値において、対比製品の方が本発明製品よりも大きい状態は十分成立し得る。ましてや、本発明製品において前記①の数値が選択され、対比製品において前記②の数値が選択される場合、又は本発明製品において前記②の数値が選択され、対比製品において前記①の 数値が選択される場合には、短期許容耐力につき、本発明製品と対比製品との何れが大きいかについては、尚更決定不可能である。 (ウ) 【図10】のデータによれば、本発明製品及び対比製品におけるPy及び(2/3)Pmaxの標準偏差は、本発明製品の方が圧倒的に小さく、その結果、バラツキ係数は、本発明製品は対比製品に比し、圧倒的に小 さな標準偏差を呈し、かつ明白に大きなバラツキ係数を呈している。 この数値の相違は、枝状部の存否ではなく、【図10】に示す本発明製品及び対比製品の具体的な設計上の相違(下記a、b)に由来しており、かつこのような相違が現実の実験を介して初めて判明している。 a 本発明製品による締結金物の弾性係数(ヤング率)Eが所定の数値 以上であって、かつ結合している部材に対し、過大な荷重が作用した 場合に所定の数値以上の降伏点Pyが発生していることb 枝状部が所定幅を有し、かつ所定以上の長さを備えていることオ以上のとおり、短期許容耐力の向上については、枝状部を採用してい 場合に所定の数値以上の降伏点Pyが発生していることb 枝状部が所定幅を有し、かつ所定以上の長さを備えていることオ以上のとおり、短期許容耐力の向上については、枝状部を採用している本発明製品の方が同一位置構成の場合よりも当然向上する訳ではなく、具体的な設計上の相違によって左右される。 甲5発明においては、【図8】に示す荷重試験に対応する【図9】の方法及び【図10】のデータ処理は何ら開示及び示唆されていない。このような不開示及び不示唆の状況は、本件発明が甲5発明に対し新規性及び進歩性を確保していることを裏付けている。 ⑵ 訂正の対抗主張 ア本件訂正発明②は、「前孔(19)及びピン孔(36)またはピン溝(34)の位置が同一位置であって、しかも前面部(11)と後縁部(31)とが分離せず一体化している構成に比し、支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせ、且つ短期許容耐力を向上させるため」を要件としており、具体的には、 対比すべき構成を同一位置構成に限定したうえで破壊の遅延を遅くさせること、及び短期許容耐力の向上という目的及び効果を要件としている。 イ訂正請求②は、特許請求の範囲の減縮に該当しており、特許法第134条の2第1項の要件を充足している。また、特許請求の範囲に目的効果を記載することは是認されており、本件明細書についても訂正しているから、 サポート要件及び明確性要件に反しない。 ウ甲5発明においては、本件訂正発明②のように同一位置構成と対比することを前提としたうえで、支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせるという構成要件を全く開示していない。 ましてや、甲 置構成と対比することを前提としたうえで、支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせるという構成要件を全く開示していない。 ましてや、甲5発明は、短期許容耐力が向上するような枝状部の具体的 構成を全く開示していない。 したがって、訂正発明②は、甲5発明に対し明白に新規性及び進歩性を確保している。 (被告の主張)⑴ 本件発明について 原判決の認定判断に、原告ら主張の誤りはない。 短期許容耐力の向上についての原告らの主張は、本件発明の構成に対応する主張となっていない。 ⑵ 訂正の対抗主張について訂正請求②は、本件発明1の構成を特定した訂正ではなく、甲5発明から も必然的に得られる作用・効果を追記するものにすぎない。仮に訂正請求②が認められたとしても、本件訂正発明②は、甲5発明と同一であることに変わりはない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、本件発明に係る本件特許は、甲5発明に基づく新規性欠如の無 効事由を有するものであり、原告らの訂正の対抗主張は認められないから、原告らの請求にはいずれも理由がないと判断する。その理由は、後記2のとおり当審における当事者の追加的・補足的主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」、第4(原判決11頁24行目から24頁2行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における当事者の追加的・補足的主張に対する判断⑴ 本件発明についてア原告らは、本件発明の「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させる」という要件(構成要件D)及び「破壊の遅延」という基本的技術思想は、同一位置構成、すなわち「前孔(19)及びピン孔(36)またはピ ア原告らは、本件発明の「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させる」という要件(構成要件D)及び「破壊の遅延」という基本的技術思想は、同一位置構成、すなわち「前孔(19)及びピン孔(36)またはピン溝 (34)の位置が同一位置であって、しかも前面部(11)と後縁部(3 1)とが分離せず一体化している構成」との対比を前提としており、除外構成、すなわち本件発明の構成から枝状部を除外する構成との対比を前提とする原判決は誤っている旨主張する。 本件明細書には、【発明が解決しようとする課題】において「…また締結金物は既に広く普及しており、取り付けのためのボルトやドリフトピン などの配置は定形化されている。そのため新しい締結金物についても、従来の物と互換性を確保できるよう、ピン孔やピン溝の位置は変更しないことが好ましい。」(【0009】)との記載や、せん断試験について「比較のため従来の締結金物でも行った。いずれの締結金物も、凸部やピン孔などの配置や形状は同じである。」(【0047】)との記載があり、締 結金物においては、取付けのためのボルト等の配置は定形化されており、本件発明に係る締結金物と従来の締結金物との間においても同様であることがうかがわれる。その他原告らが指摘する【0011】【0014】及び【図10】【図12】の記載を踏まえると、【課題を解決するための手段】や【発明の効果】の記載が、原告ら主張の「同一位置構成」との対比 を前提としていることが認められる。 前記引用に係る原判決は、これらの本件明細書の記載を摘示した上で(原判決「事実及び理由」第4の1)、当該記載に基づいて本件発明の技術的意義を判示したものであるから、「枝状部の構成を備えない(従来の)締結金物」(原判決20頁25~26 明細書の記載を摘示した上で(原判決「事実及び理由」第4の1)、当該記載に基づいて本件発明の技術的意義を判示したものであるから、「枝状部の構成を備えない(従来の)締結金物」(原判決20頁25~26行目、21頁18行目、22頁15 行目)との表現は、本件明細書に記載された従来の締結金物(原告ら主張の「同一位置構成」の従来の締結金物)の趣旨であると解するのが自然である。そもそも「枝状部の構成を備えない従来の締結金物」という表現は、それ自体では、従来の締結金物が枝状部の構成を備えていないことを述べているにすぎない。当該表現をもって、原告らが主張するような本件明細 書にも記載のない「除外構成」を特定したものと解することは無理がある というべきであるから、原告らの前記主張はおよそ採用することができない。 イ原告らは、原判決が短期許容耐力に関する原告らの主張を本件明細書に基づいていないという根拠により排斥したことを理由に、原判決は、短期許容耐力の向上と本件発明とは無関係であるとの前提に立っている旨主張 する。しかし、原判決が、本件明細書に基づかない原告らの主張を排斥したというだけで、短期許容耐力の向上と本件発明とは無関係であるという前提に立っているなどと認めることはできないから、そもそも原告らの主張は論理の飛躍があり、採用することはできない。 仮に、この点を措くとしても、原告らも自認するとおり、短期許容耐力 の向上は、本件発明の構成要件には含まれていない。本件明細書には、過大な荷重が作用した際、枝状部が塑性変形することでエネルギーを吸収し、部材の破壊をできるだけ遅くするという本件発明に係る締結金物の特徴(【0042】)を確認するため行った、せん断試験の方法と内容が開示されている(【0043】【0044 することでエネルギーを吸収し、部材の破壊をできるだけ遅くするという本件発明に係る締結金物の特徴(【0042】)を確認するため行った、せん断試験の方法と内容が開示されている(【0043】【0044】【図9】【図10】)。しかし、 その中では、本件発明に係る締結金物の短期許容耐力が、その算出方法とともに示され、従来の締結金物に比べ、短期許容耐力が向上しているとの結果が記載されているだけであり(【0047】)、「帯状に延びる複数の枝状部(23、25、27)を介して一体化していること」(構成要件D、以下「枝状部の構成」という。)という点を超えて、原告ら主張に係 る破壊の遅延や短期許容耐力に相違をもたらすような「具体的な設計上の相違」について言及したり、又は示唆したりするような記載はない。すなわち、本件明細書には、「枝状部の構成」以外の具体的な設計上の相違についての記載はない。 そうすると、本件明細書の記載を考慮しても、「枝状部の構成」を有す る本件発明の効果の一つとして「短期許容耐力の向上」が認められるとい うにとどまる。仮に、「枝状部の構成」が短期許容耐力向上の必要十分条件ではなく、せん断試験についての本件明細書の記載を厳密に分析することにより、原告らが主張するような他の必要条件が導き出せるとしても、そのような条件に係る構成は、特許請求の範囲に記載されておらず、本件発明を構成すると認めることはできない。 ウ以上によれば、原告らが主張するような技術的思想が本件明細書に記載されていないことを理由に原告らの主張を排斥した原判決の認定に誤りはなく、原告らの主張はいずれも採用することができない。 ⑵ 訂正の対抗主張についてア原告らは、訂正請求②による訂正後の本件訂正発明②は、「前孔( に原告らの主張を排斥した原判決の認定に誤りはなく、原告らの主張はいずれも採用することができない。 ⑵ 訂正の対抗主張についてア原告らは、訂正請求②による訂正後の本件訂正発明②は、「前孔(19) 及びピン孔(36)またはピン溝(34)の位置が同一位置であって、しかも前面部(11)と後縁部(31)とが分離せず一体化している構成に比し、支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせ、且つ短期許容耐力を向上させるため」を要件としており、この要件を有しない甲5発明と対比して新規性を有す る旨主張する。 イまず、本件訂正発明②の構成のうち、「前孔(19)及びピン孔(36)またはピン溝(34)の位置が同一位置であって、しかも前面部(11)と後縁部(31)とが分離せず一体化している構成に比し、」との部分についてみると、この部分自体は、原告らのいう「同一位置構成」を有する 従来の締結金物と比較することを述べたもので、これに続く「支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせ、且つ短期許容耐力を向上させるため」との部分を修飾する文言であり、本件訂正発明②の構成を直接的に特定するものではない。訂正前の本件発明についても、前記⑴アのとおり、このような「同一 位置構成」を有する従来の締結金物を前提として、これと比較した本件発 明に係る締結金物の構成とその効果が開示されているのであるから、当該部分は、本件発明の構成と異なる構成を何ら特定するものではない。 ウ次に、「支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせ(るため)」との部分については、本件明細書において、本件発明の課 ら特定するものではない。 ウ次に、「支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせ(るため)」との部分については、本件明細書において、本件発明の課題及び作用・効果として記載されてい るものであって(【0010】、【0023】、【0033】、【0047】)、本件明細書には、上記の作用・効果を得るために必要な構成として、「枝状部の構成」以上の構成は開示されていないこと、したがって、「枝状部の構成」により果たそうとする目的ないし作用・効果を示すものにすぎず、発明の構成を限定する意味を持たないことは、前記引用に係る 原判決「事実及び理由」中の第4の2⑵ア(19頁18行目から21頁10行目まで)に記載の、構成要件Dの「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」の意義と同様である。 エまた、「短期許容耐力を向上させるため」との部分についても、本件明細書において、本件発明の作用・効果として記載されているものであって、 本件明細書には、上記の作用・効果を得るために必要な構成として、「枝状部の構成」以上の構成は開示されていないことは、前記⑴イのとおりであるから、「枝状部の構成」により果たそうとする作用・効果を示すものにすぎず、発明の構成を限定する意味を持たない。 仮に、現実に短期許容耐力を向上させるには、「枝状部の構成」のほか に原告らが主張する具体的な設計(条件)が必要となるとしても、「短期許容耐力を向上させるため」との文言をもって、「枝状部の構成」以外の具体的な設計(条件)を特定するものと認めることはできない。 オなお、原告Xは、訂正請求②において、本件明細書の段落【0011】の「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため、帯状に延びる複数 条件)を特定するものと認めることはできない。 オなお、原告Xは、訂正請求②において、本件明細書の段落【0011】の「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため、帯状に延びる複数 の枝状部」を「過大な荷重が作用した際に塑性変形を誘発させると共に、 前孔及びピン孔またはピン溝の位置が同一位置であって、しかも前面部と後縁部とが分離せず一体化している構成に比し、支持部材及び/又は結合部材におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせ、且つ短期許容耐力を向上させるため、帯状に延びる複数の枝状部」とする訂正、及び段落【0023】の「部材のヒビ割れが成長する前に塑性変形していき」 を「支持部材及び/又は結合部材のヒビ割れが成長する前に塑性変形していき」と、「部材の破壊をできるだけ遅くすることができる。」を「前孔及びピン孔またはピン溝が同一位置であって、しかも前面部と後縁部とが分離せず一体化している構成に比し、部材の破壊をできるだけ遅くすることができる。」とする訂正を請求しているが(甲17)、仮にこれらの訂 正が認められるとしても、以上の認定は変わらない。 カ以上によれば、仮に訂正請求②による訂正が認められるとしても、訂正後の本件訂正発明②は、本件発明と実質的な構成上の差異を有するものではないから、甲5発明と実質的に同一の構成を有する発明であることに変わりはない。 したがって、原告ら主張の訂正の対抗主張は、認められない。 3 結論よって、原告らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、原告らの本件控訴は理由がないから、いずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 り、原告らの本件控訴は理由がないから、いずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 清水響 裁判官菊池絵理 裁判官頼晋一 (別紙)クレーム対比表本件発明訂正請求①(R6/3/22付甲12)訂正請求②(R7/5/30付甲17)A支持部材(51)の側面に結合部材(61)の端面を丁字状に締結するための締結金物であって、同左同左B支持部材(51)の側面に接触し且つボルト(41)や釘(45)等で支持部材(51)に固定される前面部(11)と、結合部材(61)の端部に加工されたスリット(62)に差し込まれ且つドリフトピン(47)等の棒材で結合部材(61)に固定される後縁部(31)と、を有し、該前面部(11)と該後縁部(31)は離れて配置され、同左同左C前記前面部(11)には、ボルト(41)や釘(45)等を挿通するための前孔(19)を設け、前記後縁部(31)には、ドリフトピン(47)等を挿通するためのピン孔(36)またはドリフトピン(47)等を受け止めるピン溝(34)を設け、同左同左D前記前面部(11)と前記後縁部(31)は、過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため、帯状に延びる複数の枝状部(23、25、27)を介して一体化していることを特徴とする締結金物。 前記前面部(11)と前記後縁部(31)は (31)は、過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため、帯状に延びる複数の枝状部(23、25、27)を介して一体化していることを特徴とする締結金物。 前記前面部(11)と前記後縁部(31)は、過大な荷重が作用した際に塑性変形を誘発させると共に、支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせるため、帯状に延びる複数の枝状部(23、25、27)を介して一体化していることを特徴とする締結金物。 前記前面部(11)と前記後縁部(31)は、過大な荷重が作用した際に塑性変形を誘発させると共に、前孔(19)及びピン孔(36)またはピン溝(34)の位置が同一位置であって、しかも前面部(11)と後縁部(31)とが分離せず一体化している構成に比し、支持部材(51)及び/又は結合部材(61)におけるヒビ割れの成長によって生ずる破壊を遅くさせ、且つ短期許容耐力を向上させるため、帯状に延びる複数の枝状部(23、25、27)を介して一体化していることを特徴とする締結金物。

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