平成25年12月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(行ケ)第10009号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年11月21日判決原告日本精工株式会社訴訟代理人弁護士増井和夫同橋口尚幸同齋 藤 誠二郎訴訟代理人弁理士井上義雄同伊藤隆治被告株式会社山田製作所訴訟代理人弁理士岩堀邦男同大 沼 加寿子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2011-800169号事件について平成24年12月3日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(1) 原告は,発明の名称を「車両用ステアリング装置」とする特許第4613402号(平成12年8月24日出願。国内優先権主張日:同年2月15日,同年4月4日。平成22年10月29日設定登録。請求項の数6。以下「本件特許」という。)に係る特許権者である(甲24の1)。 (2) 被告は,平成23年9月13日,本件特許に係る発明の全てである請求項1ないし6について特許無効審判を請求し,特許庁に無効2011-800169号事件として係属した。特許庁は,平成24年3月1 (2) 被告は,平成23年9月13日,本件特許に係る発明の全てである請求項1ないし6について特許無効審判を請求し,特許庁に無効2011-800169号事件として係属した。特許庁は,平成24年3月13日,「特許第4613402号の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をした。 原告は,これを不服として知的財産高等裁判所に上記審決の取消しを求める訴え(平成24年(行ケ)第10141号)を提起したところ,同裁判所は,平成24年6月20日,平成23年法律第63号による改正前の特許法181条2項により,同審決を取り消す旨の決定をし,同決定は確定した。 (3) 上記決定確定後の無効審判請求事件(無効2011-800169号事件)において,被告は,平成24年7月9日付けで訂正請求(甲37,以下「本件訂正」という。)をしたところ,特許庁は,同年12月3日,本件訂正を認めた上,「特許第4613402号の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同月13日,その謄本が原告に送達された。 (4) 原告は,平成25年1月11日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲請求項1ないし6の記載は次のとおりである(以下,これらの請求項に係る発明を,順に「本件発明1」ないし「本件発明6」といい,併せて「本件発明」という。また,本件発明に係る明細書(甲37)を図面(甲24の1)を含め「本件明細書」という。)。 【請求項1】ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウ グシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向 に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,前記車体側ブラケット及び前記対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において, を具備し,しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする車両用ステアリング装置。 【請求項2】ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合し,車体側に回動自在に支持されたロアー側のアウ ターコラムと,それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,前記車体側ブラケット及び前記対向厚肉突出部を貫通する締付け用のボルトと,該ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって前記一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,車幅方向に配置され,該 に設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトのチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする車両用ステアリング装置。 【請求項3】ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記イ ンナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,それぞれ,前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向 コラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする車両用ステアリング装置。 【請求項4】ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと, それぞれ,前記アウターコラムに径方向外方に向けて設けられ,前記アウターコラムに軸方向に連なり,前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら ケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であり,前記クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に押圧接触していることを特徴とする車両用ステアリング装置。 【請求項5】前記クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に周方向で断続的に押圧接触していることを特徴とする請求項4に記載の車両用ステアリング装置。 【請求項6】ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のインナーコラムと,前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,それぞれ,前記アウターコラムに一体に形成され,前記アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して前記インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材と,前記車体側ブラケットを介してこれら一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能に,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するために前記アウターコラムに設けられた支持部と,車幅方向に配置され,該支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持するチルト中心ボルトと,を具備し,しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であり,前記鋳物はアルミ鋳物,マグネシウム系鋳物および鉄系鋳物の何れかであること を特徴とする車両用ステアリング装置。 3 本件審決の理由の要旨(1 部と共に一体に形成された鋳物であり,前記鋳物はアルミ鋳物,マグネシウム系鋳物および鉄系鋳物の何れかであること を特徴とする車両用ステアリング装置。 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,要するに,本件発明は,後記アの引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。),後記イ及びウの引用例2及び3の各記載事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許は,同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである,というものである。 ア引用例1:特開昭62-74767号公報(甲1)イ引用例2:実公昭38-24519号公報(甲3)ウ引用例3:特開平8-225079号公報(甲4)エ引用例4:特開2000-38146号公報(甲5)オ周知例1:特公昭45-39291号公報(甲6)カ周知例2:実公昭46-35777号公報(甲7)キ周知例3:実公昭60-36513号公報(甲8)ク周知例4:特開平6-211137号公報(甲9)ケ周知例5:「鋳造品ハンドブック」日本鋳物協会,平成4年発行(甲10)コ周知例6:「鋳造工学」中江秀雄,平成7年発行(甲11)サ周知例7:「金属の百科事典」佐藤純一ほか,平成11年発行(甲12)シ周知例8:「鋳物五千年の足跡」石野亨,平成6年発行(甲13)ス周知例9:「機械工学便覧」日本機械学会,昭和62年発行(甲14)セ周知例10:「アルミニウムハンドブック(第5版)」軽金属協会,平成6年発行(甲15)ソ周知例11:「アルミニウム合金鋳物の実体強さ」軽金属協会,昭和61年発行(甲16) 発行(甲14)セ周知例10:「アルミニウムハンドブック(第5版)」軽金属協会,平成6年発行(甲15)ソ周知例11:「アルミニウム合金鋳物の実体強さ」軽金属協会,昭和61年発行(甲16)タ周知例12:実公平3-27898号公報(甲17) チ周知例13:実開平4-110672号公報(甲18)ツ周知例14:特開2000-43738号公報(甲19)テ周知例15:実公昭48-33845号公報(甲20)ト周知例16:実願昭57-13310号(実開昭58-116476号)のマイクロフィルム(甲21)ナ周知例17:実公平7-38044号公報(甲22)(2) 本件審決が認定した引用発明並びに本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 ア引用発明「ステアリングシャフトを枢動及び伸縮抜差し軸方向移動により連続的に調整のできる固定装置を備えた乗り物のステアリングコラムであって,ステアリングコラム60の外側筒体はロアー側のコラムケーシング61と,これに伸縮式に取付けたアッパー側の摺動筒体62よりなり,ステアリングシャフト65は,コラムケーシング61内に回転ベアリング67により回転できるよう取付けた底部分66と,摺動筒体62内にベアリング69により自由に回転できるように取付けられたトップ部分68を有し,ステアリングコラムを支持する中間支持片材75は,2つの対称形の要素75a,75bが折りたたみ板材より作られ,要素75bはコラムケーシング61の貫通する半円形開口の全長にわたりコラムケーシング61に溶接され,中間支持片材75の要素75aはコラムケーシング61が貫通できる半円形開口の半分にほぼ等しい距離にわたりコラムケーシング61に溶接され,この要素75aの部分76はクランプジヨーを形 61に溶接され,中間支持片材75の要素75aはコラムケーシング61が貫通できる半円形開口の半分にほぼ等しい距離にわたりコラムケーシング61に溶接され,この要素75aの部分76はクランプジヨーを形成し,中間支持片材75は,乗り物のボデーなどの固定部分に堅固に取付けるための固定装置72の,一端で互いにつなげられU字型構造体を形成する2つのほぼ平行状のフランジ17a及び17bよりなる固定された支持片材14内に取付けられて,中間支持片材75の2つの要素75a及び75bはフランジ17a及び17bに摺 接する面を備え,また,2つの要素75a及び75bのうちの一方(要素75a)のみ,摺動筒体62を押圧,保持する面を備え,フランジ17a及び17bの間隔は摺動筒体62の外径寸法よりも広く,フランジ17a及び17bには案内開口20が設けられ,タイロッド21がその両端で案内開口20内に遊隙嵌合しており,中間支持片材75の要素75a,75bにはタイロッド21が通過できる開口が設けられており,ハンドル13の操作でクランプを行うと,クランプ力はフランジ17a及び17bに伝わり,それにより支持片材14の弾性変形の結果フランジ17a及び17bは互いに近接するように動き,中間支持片材75がフランジ17a及び17bの間にクランプされ,中間支持片材75はその2つの要素75a及び75bを近づけ合うように働くクランプ圧を受け,支持片75の部分76だけが要素75aの残り部分につながった部分の弾性変形により動き,ジヨー76が摺動筒体62をクランプして,コラムケーシング61を固定装置72の固定した支持片材14内に固定し同時に摺動筒体62を中間支持片材75及びコラムケーシング61に対し固定するものであり,フランジ17a及び17bを互いに近づけたり離したりするよう 1を固定装置72の固定した支持片材14内に固定し同時に摺動筒体62を中間支持片材75及びコラムケーシング61に対し固定するものであり,フランジ17a及び17bを互いに近づけたり離したりするように動かすことによりステアリングシャフトの枢動及び伸縮抜差し軸方向移動が連続的に調整可能とされ,ステアリングコラムの高さはコラムが車のボデーに取付けられる水平軸線の周りの枢動により調整ができ,コラムの外側筒体は底部で孔のある2つの取付け突縁部3と一体になっており,該2つの取付け突縁部3の孔とエラストマー製の2つの弾性スペーサの中心孔とに通したねじによりコラムをボデーに取付けるフレキシブルな取付構成により,コラムは僅かに枢動し軸線の周りに調整が可能となって,傾斜を一定範囲内で調整することができるステアリングコラム。」イ一致点「ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するアッパー側のイン ナーコラムと,前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したロアー側のアウターコラムと,前記インナーコラムを押圧,保持する面を一方に備え,前記インナーコラムの外径寸法よりも広い間隔を有する車体側ブラケットに摺接する面を備えた一対のクランプ部材と,前記車体側ブラケット及び一対のクランプ部材を貫通する締付け用のボルトと,一対のクランプ部材を変形させ,互いに近接するように移動させて,インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け保持するための締付手段と,前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と,該支持部に形成された構造によりステアリングシャフトを 部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と,該支持部に形成された構造によりステアリングシャフトを車体側に傾動中心としてチルト回動自在に支持する取付構成と,を具備し,しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置。」ウ相違点(ア) 相違点1本件発明1では,一対のクランプ部材が,それぞれ,アウターコラムに一体に形成され,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備え,前記包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えており,締付け用のボルトが,前記対向厚肉突出部を貫通しているのに対し,引用発明では,中間支持片材75を形成する2つの要素75a,75bは,支持 片材14のフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,固定装置72によりその一方が動くことによって互いに近接して摺動筒体62を押圧,保持するものの,両方の部材で包持するものではなく,したがって,包持面を備えた包持部及び該包持部に連なる対向厚肉突出部を備えておらず,さらに,タイロッド21は,前記2つの要素75a,75bを貫通してはいるものの,対向厚肉突出部を貫通する構成とはなっていない点。 (イ) 相違点2本件発明1では,ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって一対のクランプ部材を変形させるのに対し する構成とはなっていない点。 (イ) 相違点2本件発明1では,ボルト上に設けられ互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって一対のクランプ部材を変形させるのに対し,引用発明では,中間支持片材75を変形させるための機構として,互いに面接触する2つのカム部材を用いていない点。 (ウ) 相違点3本件発明1では,支持部が,ステアリングシャフトを,互いに対向する一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケットに支持するためのものであり,車幅方向に配置され,前記支持部に形成された筒状開口部と前記車体側ロアーブラケットに挿通されるチルト中心ボルトを具備し,該チルト中心ボルトを傾動中心としてステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するのに対し,引用発明では,支持部(取付け突縁部3)の構造はチルト回動の中心をなす構成を有するものの,一対の板部材で構成された車体側ロアーブラケット,筒状開口部及びチルト中心ボルトを備えるものではない点。 (エ) 相違点4本件発明1では,アウターコラムは一対のクランプ部材と支持部と共に一体に形成された鋳物であるのに対し,引用発明では,中間支持片材75をコラムケーシング61に溶接により接合しており,また,取付け突縁部3については単にコラム1の外側筒体1a(コラムケーシング61)と一体になっているとされているのみであって,全体として一体に形 成された鋳物ではない点。 (3) 本件審決が認定した引用発明と本件発明2との相違点は,次のとおりである。 ア本件発明1を本件発明2と読み替えるほかは,相違点2ないし4と同じ。 イ相違点1-2本件発明2では,一対のクランプ部材が,それぞれ,アウターコラムに一体に形成され,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続して 2と読み替えるほかは,相違点2ないし4と同じ。 イ相違点1-2本件発明2では,一対のクランプ部材が,それぞれ,アウターコラムに一体に形成され,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えており,締付け用のボルトが,前記対向厚肉突出部を貫通しているのに対し,引用発明では,中間支持片材75を形成する2つの要素75a,75bは,支持片材14のフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,固定装置72によりその一方が動くことによって互いに近接して摺動筒体62を押圧,保持するものの,両方の部材で包持するものではなく,したがって,包持面を備えた包持部及び該包持部に連なる対向厚肉突出部を備えておらず,さらに,タイロッド21は,前記2つの要素75a,75bを貫通してはいるものの,対向厚肉突出部を貫通する構成とはなっていない点。 (4) 本件審決が認定した引用発明と本件発明3との相違点は,次のとおりである。 ア本件発明1を本件発明3と読み替えるほかは,相違点3及び4と同じ。 イ相違点1-3本件発明3では,一対のクランプ部材が,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えているのに対し,引用発明では,中間支持片材75を形成する2つの要素75a,75bは,支持 片材14のフランジ17a及び17bに摺接する ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えているのに対し,引用発明では,中間支持片材75を形成する2つの要素75a,75bは,支持 片材14のフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,固定装置72によりその一方が動くことによって互いに近接して摺動筒体62を押圧,保持するものの,両方の部材で包持するものではなく,したがって,包持面を備えた包持部及び該包持部に連なる対向厚肉突出部を備えていない点。 (5) 本件審決が認定した引用発明と本件発明4との相違点は,次のとおりである。 ア本件発明1を本件発明4と読み替えるほかは,相違点3及び4と同じ。 イ相違点1-4本件発明4では,一対のクランプ部材が,アウターコラムに軸方向に連なり,インナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成し,該対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備えた対向厚肉突出部を備えているのに対し,引用発明では,中間支持片材75を形成する2つの要素75a,75bは,支持片材14のフランジ17a及び17bに摺接する面を備え,固定装置72によりその一方が動くことによって互いに近接して摺動筒体62を押圧,保持するものの,両方の部材で包持するものではなく,したがって,包持面を備えた包持部及び該包持部に連なる対向厚肉突出部を備えていない点。 ウ相違点5本件発明4では,クランプ部材の包持面がインナーコラム外周面に押圧接触しているのに対し,引用発明では,クランプ部材の保持面がインナーコラム外周面に押圧接触しているものの,あくまで保持面であって包持面ではない点。 (6) 本件審決が認定した引用発明と本件発明5との相違点は,次のとおりである。 ア本件発明1を の保持面がインナーコラム外周面に押圧接触しているものの,あくまで保持面であって包持面ではない点。 (6) 本件審決が認定した引用発明と本件発明5との相違点は,次のとおりである。 ア本件発明1を本件発明5と読み替えるほかは,相違点1,3及び4と同じ。 イ相違点6本件発明5では,クランプ部材の包持面は前記インナーコラム外周面に周方向で 断続的に押圧接触しているのに対し,引用発明では,クランプ部材の保持面がインナーコラム外周面に周方向で連続的に押圧接触しており,また,あくまで保持面であって包持面ではない点。 (7) 本件審決が認定した引用発明と本件発明6との相違点は,次のとおりである。 ア本件発明1を本件発明6と読み替えるほかは,相違点1,3及び4と同じ。 イ相違点7本件発明6は鋳物としてアルミ鋳物,マグネシウム系鋳物及び鉄系鋳物の何れかであるのに対し,引用発明は同構成を有しない点。 4 取消事由(1) 本件発明1の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由1)(2) 本件発明2ないし6の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由2)第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件発明1の容易想到性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 相違点1について本件審決は,相違点1に係る本件発明1の構成のうち,「一対のクランプ部材が,それぞれ,アウターコラムに一体形成され,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成している」構成(以下「包持部構成」という。)は,引用例2(甲3)に開示されているから,引用発明に引用例2の記載事項を適用することにより,当業者が容易に想到すること する面で軸方向に延びる隙間を形成している」構成(以下「包持部構成」という。)は,引用例2(甲3)に開示されているから,引用発明に引用例2の記載事項を適用することにより,当業者が容易に想到することができたものであり,また,相違点1に係る本件発明1の構成のうち,「対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備え,包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えており,締付け用のボルトが,前記対向厚肉突出部を貫通している」構成(以下「対向厚肉突出部構成」という。)についても,周知例 2ないし4(甲7ないし9)に開示された周知の構成を考慮すると,引用発明に引用例2の記載事項を適用する際に対向厚肉突出部構成とすることは,当業者にとって困難ではないとして,引用発明について,相違点1に係る本件発明1の構成とすることは,引用例2の記載事項及び周知技術を参酌することにより,当業者が容易になし得たものであると判断した。 しかし,次のとおり,本件審決の上記判断は誤りである。 ア包持部構成について(ア) 引用発明と引用例2の構成の相違(阻害事由1)本件審決の判断は,引用発明について,引用例2に開示された「支持筒2に一対の締付鍔4,4を備えた部位が摺動筒7を包持する包持面を有している」トラクターのハンドルの伸縮装置の構造を適用すれば,本件発明1の包持部構成に容易に想到し得るというものである。 しかし,引用例2に記載されたトラクターのハンドルの伸縮装置は,摺動筒7と支持筒2が入れ子構造とされ,摺動伸縮し得る構造とはなっているものの,当該ハンドルは,ダッシュボードから単純に突き出しているだけであって,ステアリング装置全体の角度を変更するチルト調整はできない構造となっている。 他方,引用発明のステアリングコラムは,車体側ブラケットを介して固定 ,ダッシュボードから単純に突き出しているだけであって,ステアリング装置全体の角度を変更するチルト調整はできない構造となっている。 他方,引用発明のステアリングコラムは,車体側ブラケットを介して固定され,チルト調整及びテレスコピック調整が1つの締付手段により同時に固定されるステアリング装置である。このような構造を有する引用発明のステアリング装置に,引用例2に記載されたトラクターのハンドルのようにダッシュボードに固定して取り付けられる構成を組み合わせると,引用発明のチルト調整機能が失われてしまうから,その組合せには阻害事由がある。 (イ) 後知恵的・事後分析的な判断本件審決は,引用発明のステアリングコラムは車体側ブラケットを介して固定されているのに対し,引用例2に記載されたトラクターのハンドルは,車体側ブラケットを介さずに固定されており,構造が全く異なるため,引用発明に引用例2に記 載されたトラクターのハンドルを組み合わせることは困難であるとの原告の主張について,引用例2に記載された締付鍔4,4を引用発明に一対のクランプ部材として適用し,固定装置72のフランジ17a,17bとともに用いるとの組合せを行うものであるから,引用例2に記載されたトラクターのハンドル自体が車体側ブラケットを介しない締め付けであるとの主張は採用することができないと判断した。 しかし,公知技術を組み合わせて本件発明1に想到することが容易か否かは,本件出願に係る優先権主張日当時の当業者の立場で行わなければならない。本件発明1の構成を知らない当業者が引用例2に接した場合,前者は,車体側ブラケットを介してステアリングコラムが締付手段で保持され,それによってチルトとテレスコピックの調整を同時に行うことができるという構成であるのに対して,後者は,車体側ブラケット 場合,前者は,車体側ブラケットを介してステアリングコラムが締付手段で保持され,それによってチルトとテレスコピックの調整を同時に行うことができるという構成であるのに対して,後者は,車体側ブラケットなど存在せず,ただダッシュボードから真っ直ぐ突き出すように固定されたハンドルであって,チルト調整もできない構成なのであるから,前者に後者を組み合わせることは困難であると判断するのは明らかである。 本件審決の上記判断は,本件発明1の構成を知った後で,引用発明との相違点を埋めるために,引用例2から引用発明に欠けている構成だけを合目的的に抽出して,これを組み合わせたものであり,かかる事後分析的,後知恵的な判断は,進歩性の判断として誤りである。 (ウ) 鋳物形成の困難性(阻害事由2)本件発明1は,アウターコラムのクランプ部材及び支持部を鋳物で一体形成した構造に特徴があるところ,引用例2に記載された締付鍔4,4のように,筒状の部材から細長い板状部が伸びている形状の部材は,鋳物で一体形成することが技術的に困難である。したがって,引用発明に引用例2の記載事項を組み合わせて,相違点1に係る本件発明1の構成に想到することには,阻害事由がある。 (エ) 具体的な適用態様の想到困難性引用発明は,その全体がユニバーサルジョイント5の軸線を中心にチルト回動可能となっており,また,コラムケーシング61と摺動筒体62とが,摺動可能な入 れ子構造となっているため,テレスコピック調整も可能となっている。そして,ハンドル13及びそれにつながる締付装置により,支持片材14の外側から内側に締付力を作動させることで,車両側の支持片材14に対して中間支持片材75を固定してステアリング装置のチルト位置を固定し,同時に中間支持片材75が外側から押圧されることで,そのクラン の外側から内側に締付力を作動させることで,車両側の支持片材14に対して中間支持片材75を固定してステアリング装置のチルト位置を固定し,同時に中間支持片材75が外側から押圧されることで,そのクランプジョー76が「爪を立てる」ようにしてコラムケーシング61の内側の摺動筒体62を固定して,テレスコピック位置を固定する構造となっている。 他方,引用例2に記載されたトラクターのハンドルは,ダッシュボードから真っ直ぐ突き出していて,その周辺には何の構造も存在しないという極めて単純な構造である。引用例2に記載された単純な構造のステアリングを,どのようにして,複雑な構造をした引用発明の構成と組み合わせれば,本件発明1の包持部構成に想到し得るというのか,その具体的な適用態様について本件審決は何も説明しておらず,当業者にとっても,容易に想到し得るものではない。 (オ) 引用例2の記載事項から本件発明1の包持部構成に想到する困難性引用例2の締付鍔4,4と本件発明1のクランプ部材とは,抽象的にみれば,包持部構成について共通しているといえなくもない。しかし,一見してわかるように,具体的な形状は全く異なっている。特に,「アウターコラムに一体に形成され」という要件については,引用例2の締付鍔4,4は,単に外軸の一部がそのまま外側に延長されただけのものであり,「アウターコラムに一体に形成」された「クランプ部材」であるといい得るものか否か疑問である。したがって,引用例2の締付鍔4,4から,本件発明1のクランプ部材が容易に想到し得るとした本件審決の判断は誤りである。 (カ) 組合せ動機の欠如引用例2に記載されたトラクターのハンドルは,摺動筒7と支持筒2とが入れ子構造になっているため,摺動伸縮し得る構造のハンドルであるが,入れ子構造により摺動伸縮し得る構 (カ) 組合せ動機の欠如引用例2に記載されたトラクターのハンドルは,摺動筒7と支持筒2とが入れ子構造になっているため,摺動伸縮し得る構造のハンドルであるが,入れ子構造により摺動伸縮し得る構造は,引用発明においても既に採用されている。したがって, 引用発明に引用例2に記載された構造を組み合わせる動機付けは存在しない。 また,ステアリングホイールの上下方向のこじりに対する高い剛性という本件発明1の作用効果は,引用例1や引用例2に全く開示がない。したがって,このような作用効果を得るために引用例2の構造を利用するということは,引用例1や引用例2に接した当業者が,容易に想到し得ることではない。 イ対向厚肉突出部構成について(ア) 本件審決は,周知例2(甲7)の「クランプ11」,周知例3(甲8)の「アッパサポート2」及び周知例4(甲9)の「クランプブロック82」を挙げて,対向厚肉突出部構成について,ステアリングコラムをクランプする一対のクランプ部材において,包持部よりも肉厚で突出し,ボルトが貫通する対向厚肉突出部を備えたものが周知であることを考慮すると,引用発明に引用例2記載の構造を適用する際に,一対のクランプ部材の互いに対向する面の背側の面を,摺動筒体62の外径寸法よりも広い間隔を有するフランジ17a及び17bに摺接させるために,包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備え,当該対向厚肉突出部にタイロッド21を貫通する構成とすることは当業者にとって困難ではないと判断した。 しかし,前記のとおり,引用発明に引用例2に記載された事項を組み合わせることには阻害事由があるから,本件審決の上記判断は,引用発明に引用例2の記載の構造を適用するという前提において誤っている。 (イ) また,周知例2ないし4によれば,包持部よりも肉厚で突 組み合わせることには阻害事由があるから,本件審決の上記判断は,引用発明に引用例2の記載の構造を適用するという前提において誤っている。 (イ) また,周知例2ないし4によれば,包持部よりも肉厚で突出し,ボルトが貫通する対向厚肉突出部を備えたものが周知であるとした本件審決の判断は,引用文献の具体的な記載から離れて,抽象化,一般化ないし上位概念化をした判断,あるいは,特定の公知文献に記載されている公知技術について,主張,立証を尽くすことなく,当業者の技術常識ないし周知技術であるかのように扱った判断であって,誤りである。 さらに,本件審決が周知であると認定したのは,対向厚肉突出部構成のうち,「包持部よりも肉厚で突出し,ボルトが貫通する対向厚肉突出部」という点だけであり, 同構成のうち,「対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備え」との構成が周知であるとは認定していない。実際,周知例2(甲7)には車体側ブラケットが開示されておらず,周知例2のクランプ11は,「対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面」を備えているものではない。 したがって,本件審決の上記判断は誤りである。 (2) 相違点2について本件審決は,ステアリングコラムをクランプする締付機構として,カムロック機構を使用することは,周知例15ないし17(甲20ないし22)に記載された周知技術であるから,引用発明において,相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たものであると判断した。 しかし,次のとおり,本件審決の上記判断は誤りである。 ア相違点2の作用効果の看過本件審決は,単に,ステアリングコラムをクランプする機構としてカムロック機構を用いた周知例があることのみから,容易想到性を結論付けている。 しかし,本件発明1は,クラン 相違点2の作用効果の看過本件審決は,単に,ステアリングコラムをクランプする機構としてカムロック機構を用いた周知例があることのみから,容易想到性を結論付けている。 しかし,本件発明1は,クランプ機構としてカムロック機構を採用し,クランプ力を設計者が適宜設定することにより,鋳物という割れやすい素材でクランプ部材を構成することがより安全かつ容易にできるようになったものである。本件審決の上記判断は,本件発明1のかかる重要な作用効果を見落としており,誤りである。 イ動機付けの欠如後記(3)アのとおり,引用例3(甲4)において,鋳物で構成することが開示されているのは,弾性変形する部材が存在しないアウターコラムについてである。カムロック機構の特徴は,設計者がクランプ力をあらかじめ設定し得る点にあるところ,割れやすい鋳物で構成されている部分が弾性変形しない部分のみとされている引用例3に記載された構成では,クランプ力についてそのような「気を配る」必要はないから,引用例3の記載に接した当業者は,引用例3のクランプ機構をカムロック機構に置き換えることを動機付けられることはない。 (3) 相違点4について本件審決は,引用例3(甲4)には,自動車のステアリングコラムにおいて,アウターコラムに対し,昇降ブラケット等の周辺部材を従来溶接により接合していたのを,寸法精度の手間を省くために,アウターコラムに当該周辺部材を含めて全体を鋳物で一体形成したことが記載されているから,引用発明(甲1)において,コラムケーシング61に対して中間支持片材75の2つの要素75a,75bを溶接により接合することに代えて,コラムケーシング61とこれらの部材とを鋳物で一体形成し,また,取付け突縁部3については,単にコラム1の外側筒体1aと一体になっているとされてい 要素75a,75bを溶接により接合することに代えて,コラムケーシング61とこれらの部材とを鋳物で一体形成し,また,取付け突縁部3については,単にコラム1の外側筒体1aと一体になっているとされているのを,同じく鋳物で一体成型することとして,相違点4に係る本件発明1の構成とすることは,引用例3の記載事項を参酌することにより,当業者が容易になし得たことであると判断した。 しかし,次のとおり,本件審決の上記判断は誤りである。 ア弾性変形する部材を鋳物で一体形成する困難性(阻害事由1)引用例3には,アウターコラム5aに昇降ブラケット8aと取付ブラケット9aとシリンダブラケット10aとが鋳物で一体形成されることが記載されているが(段落【0012】),引用例3のアウターコラムと本件発明1のアウターコラムでは,構造及び機能に異なる点があるから,引用例3のアウターコラムが鋳物で一体形成されているからといって,本件発明1のアウターコラムも,鋳物で一体形成することが容易に想到できるということにはならない。 すなわち,本件発明1において,アウターコラムと鋳物で一体に形成されているクランプ部材は,締付手段の押圧力により弾性変形する部材として形成されているが,一方,引用例3のアウターコラムは,昇降ブラケット8a,取付ブラケット9a及びシリンダブラケット10aが一体形成されているものの,これらの各部材はいずれも弾性変形する部材ではない。 一般的に,鋳物という素材は,変形させると割れやすい素材として知られており,弾性変形するような部材には適していないと考えられているから,自動車のフレー ムやステアリングに使用する部材としては,一般的ではないというのが当業者の技術常識であった。そして,引用例3では,チルト調整及びテレスコピック調整の方法として,クラン から,自動車のフレー ムやステアリングに使用する部材としては,一般的ではないというのが当業者の技術常識であった。そして,引用例3では,チルト調整及びテレスコピック調整の方法として,クランプ部材の締付けによる固定という構成は全く開示されていないから,引用例3に接した当業者は,引用例3のアウターコラムのような,弾性変形する部材が存在しない部材について鋳物で一体形成することが開示されているとしても,このような鋳物の一体形成を,本件発明1のアウターコラムのような,弾性変形するクランプ部材を有する部材に適用することを,想到し得るはずがない。 したがって,引用発明や本件発明1のような,弾性変形するクランプ部材について,引用例3に記載された鋳物の一体形成を適用することには,阻害事由があったというべきである。 イ事後分析的・後知恵的な判断本件審決は,引用例3には一体形成する周辺部材が変形可能であることは開示も示唆もなく,引用例3の鋳物一体形成の構成を引用発明に適用することには阻害事由があるとの原告の主張について,引用例3には,アウターコラムに対して周辺部材を従来溶接によって接合していたのを寸法精度の確保の手間を省くためにアウターコラム及び周辺部材を全体として鋳物で一体形成するとの技術的思想が明示されているから,かかる思想に基づく技術を取り出して,他の関連する発明に適用しようとすることの動機付けになり得るものであると判断した。 しかし,本件審決は,鋳物により一体形成される部分がクランプ部材を含むか否かという具体的な構成の相違を無視し,「寸法精度の確保の手間を省くためにアウターコラム及び周辺部材を鋳物一体形成する」という引用例3の発明思想の部分だけを都合よく取り出したものであり,本件発明1と引用発明との相違点を埋めるために,引用例3か 度の確保の手間を省くためにアウターコラム及び周辺部材を鋳物一体形成する」という引用例3の発明思想の部分だけを都合よく取り出したものであり,本件発明1と引用発明との相違点を埋めるために,引用例3から都合のよい要素だけを抽象的に取り出して組み合わせるという,事後分析的・後知恵的な判断をしたものにほかならず,進歩性の判断として誤りである。 ウ引用発明の構成を鋳物で一体形成する困難性(阻害事由2) また,本件審決の上記判断は,引用発明の中間支持片75や取付け突縁部3のような,板状の複雑な形状をした部材を,溶接ではなく鋳物で形成することは,技術的に困難である点を見落としたものである。引用例1に接した当業者であれば,これらの部材をコラムケーシング61と鋳物で一体形成することが,技術的に困難であると容易に理解できるため,そのような構成に想到することはあり得ない。この点でも,引用発明に引用例3の「鋳物による一体形成」という構成を組み合わせることには,阻害事由があるといえる。 (4) 相違点3及び4の作用効果の看過ア本件審決は,相違点3について,当業者が適宜なし得る設計変更の範疇であると判断した。 しかし,引用発明のチルト機構は,エラストマー製の弾性スペーサの中心孔にねじを通して,ボデーにコラムを取り付けるというものであり,エラストマー製の弾性スペーサの弾性によってチルト回動が可能となっているものである。この構造は,本件発明1のアウターコラムに一体形成された支持部の筒状開口部にチルト中心ボルトを備えた構造とは,全く異なる。本件発明1において,支持部に形成されたチルト回動機構は,その回動の軸がステアリングコラム本体と精密に調整されなければ,ステアリングコラム全体がスムーズにチルト回転しないものである。本件発明1のように,チルト回動 て,支持部に形成されたチルト回動機構は,その回動の軸がステアリングコラム本体と精密に調整されなければ,ステアリングコラム全体がスムーズにチルト回転しないものである。本件発明1のように,チルト回動機構の軸を形成する支持部を,アウターコラムと鋳物で一体形成した場合には,引用発明のチルト回動機構のように,別部材として形成され,後からコラム本体に取り付ける製造法を用いた場合に比して,チルト回動機構の回転軸の位置を精密に決めることがはるかに容易になる。本件審決の上記判断は,本件発明1のアウターコラムと一体形成されたチルト回動機構のかかる作用効果を看過したものであり,誤りである。 イ被告の主張について被告は,アウターコラムと鋳物で一体形成した場合,チルト回動機構の回転軸の位置を精密に決めることが,はるかに容易になるという想定での効果は,原告が出 願した引用例4(甲5)においても,鋳物(アルミ合金鋳造品)によってチルト回転機構と減速ギアカバーとが一体化されている技術内容として開示されているから,本件審決は,本件発明1のかかる作用効果を看過したものではないと主張する。 しかし,引用例4において,チルト調整が行われるクランプ部のあるアッパコラム7と,チルト回動部が形成された減速ギヤカバー12とは,別の部材である。引用発明や,引用例4の実施例のように,チルト回動部(ピボット)が,クランプ部と別部材で構成されていると,両部材を組み合わせる際に精密な位置調整を行わなければならなくなり,組み立て作業に手間がかかり,製造コストの増大につながる。 これに対し,本件発明1のように,チルト回動機構の軸を形成する支持部を,アウターコラムと鋳物で一体形成した場合,チルト回動機構の回転軸とクランプ部材の位置を精密に決めることができ,組み立て作業における位置調整 ,本件発明1のように,チルト回動機構の軸を形成する支持部を,アウターコラムと鋳物で一体形成した場合,チルト回動機構の回転軸とクランプ部材の位置を精密に決めることができ,組み立て作業における位置調整の手間を省くことができる。このように,引用例4に記載された構成では,本件発明1のような作用効果を得ることはできないのである。 以上のとおり,被告の主張は,引用例4の構成と本件発明1の構成の相違を無視したものであって,失当である。 〔被告の主張〕(1) 相違点1についてア包持部構成について(ア) 引用発明と引用例2の構成の相違(阻害事由1)について原告は,引用発明のステアリング装置に,引用例2(甲3)に記載された「摺動伸縮するハンドル」構成を組み合わせると,引用発明のチルト調整機能が失われるから,その適用には阻害事由がある旨主張する。 しかし,引用例2には,インナーコラムを包み込んで包持する構成が記載されており,この包持する部位についての引用例2の記載を,引用発明において,摺動筒体62を押圧,保持するための構造として適用することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。ここでは,引用発明に,引用例2に記載された「一対の締 付鍔4,4を備えた部位が摺動筒7を包持する包持面を有する構成」のみを組み合わせているのであって,引用発明のチルト調整機能が失われことはなく,その適用に阻害要因は存在しない。 (イ) 後知恵的・事後分析的な判断について原告は,相違点1に係る本件審決の判断は,本件発明1の構成を知った後で,引用発明との相違点を埋めるために,引用例2から引用発明に欠けている構成だけを合目的的に抽出して組み合わせた,事後分析的,後知恵的な判断であると主張する。 しかし,本件審決は,引用発明の構成に対して,引用例2に記 違点を埋めるために,引用例2から引用発明に欠けている構成だけを合目的的に抽出して組み合わせた,事後分析的,後知恵的な判断であると主張する。 しかし,本件審決は,引用発明の構成に対して,引用例2に記載された,「一対の締付鍔4,4を備えた部位が摺動筒7を包持する包持面を有する構成」のみを適用しているのであって,上位概念化したものを適用しているのではない。本件審決の上記判断は,後知恵的・事後分析的なものではなく,進歩性の判断として妥当である。 (ウ) 鋳物形成の困難性(阻害事由2)について原告は,引用例2の締付鍔4,4のように,筒状の部材から細長い板状部が伸びている形状の部材は,鋳物で一体形成することは技術的に困難であるから,引用発明に引用例2を組み合わせて,相違点1に係る本件発明1の構成に想到することには,阻害事由があると主張する。 しかし,鋳物は,製造される金属材の材質によっては,割れにくく,弾性変形する部材にも使用できるものである。細長い板状部であっても,十分な強度を持って一体形成することができるものであり,技術的に困難ではなく,その組み合わせに阻害事由は存在しない。 (エ) 具体的な適用態様の想到困難性について原告は,本件審決は引用例2に記載された単純な構造のステアリングを,どのようにして,複雑な構造をした引用発明の構成と組み合わせれば,本件発明1の包持部構成に想到し得るというのか,その具体的な適用態様について何も説明していないなどと主張する。 しかし,引用発明において,摺動筒体62を押圧,保持するための構造として引用例2記載の構造を適用するというのは,どこにどの部位をということではなく,技術思想として捉えるものであるから,引用発明に「支持筒2に一対の締付鍔4,4'を備えた部位が摺動筒7を包持する包持面を有 用例2記載の構造を適用するというのは,どこにどの部位をということではなく,技術思想として捉えるものであるから,引用発明に「支持筒2に一対の締付鍔4,4'を備えた部位が摺動筒7を包持する包持面を有している」点を適用するということのみで,必要かつ十分である。 イ対向厚肉突出部構成について(ア) 原告は,本件審決は周知例2ないし4(甲7ないし9)の具体的な記載を一切検討することなく,周知技術の認定を行っており,かかる判断は,特定の引用文献の具体的な記載から離れて,抽象化,一般化ないし上位概念化をする判断,主張,立証を尽くすことなく,当業者の技術常識ないし周知技術であるかのように扱う判断にほかならず,許されないと主張する。 しかし,周知例2ないし4では,いずれも抽象概念のクランプではなく,具体的な技術内容が指摘されており,本件審決の周知技術の認定に誤りはない。 (イ) 原告は,本件審決は対向厚肉突出部構成のうち「対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備え」との部分については周知と認定していないと主張する。 しかし,周知例3(甲8)には,アッパーサポート2の対向する外側に2枚のブラッケト5,5に摺接する面を備えた技術内容が記載され,また,周知例4(甲9)にも,クランプブロック82の対向する外側に車両の固定部材に連結されている第三のブラケット手段80に摺接する面を備えた技術内容が記載されている。 (2) 相違点2についてア相違点2の作用効果の看過について原告は,相違点2に係る本件審決の判断は,クランプ機構としてカムロック機構を採用し,クランプ力を設計者が適宜設定することにより,鋳物という割れやすい素材でクランプ部材を構成することがより安全かつ容易にできるようになったという本件発明1の作用効果を看過したものである旨主張 を採用し,クランプ力を設計者が適宜設定することにより,鋳物という割れやすい素材でクランプ部材を構成することがより安全かつ容易にできるようになったという本件発明1の作用効果を看過したものである旨主張する。 しかし,「鋳物」は,選択される金属材の材質によっては,弾性変形するクランプ部材を有する部材に適当することも当然に可能なのであって,クランプ機構としてカムロック機構を採用した構成は,単なる設計変更として周知技術を適用したものにすぎない。 イ動機付けの欠如について原告は,割れやすい鋳物で構成されている部分が弾性変形しない部分のみの引用例3(甲4)の構成において,引用例3のクランプ機構をカムロック機構に置き換えることを,当業者は動機付けられないと主張する。 しかし,「鋳物」という技術用語では,その材質は特定されないのであるから,「鋳物」を割れやすいと一義に断定することはできない。「鋳物」は,選択される金属材の材質によっては,弾性変形するクランプ部材を有する部材に適用して使用できるものであるから,クランプ機構としてカムロック機構を採用した構成は,周知技術を適用した単なる技術変更にすぎない。 したがって,当業者は当然に動機付けできる。 (3) 相違点4について原告は,一般的に鋳物という素材は,変形させると割れやすい素材として知られており,弾性変形するような部材には適していないと考えられているなどと主張する。 しかし,「鋳物」は,鋳造法によって製造された金属品であり,鋳造法によれば,金属の材質は問わず,全て「鋳物」という技術用語内に包含される。「鋳物」という技術用語では,その材質は一切特定されないから,原告が主張するような,割れやすい素材や弾性変形するような部材には適していないなどの材質的要素が入る余地はない。「鋳物」は に包含される。「鋳物」という技術用語では,その材質は一切特定されないから,原告が主張するような,割れやすい素材や弾性変形するような部材には適していないなどの材質的要素が入る余地はない。「鋳物」は,製造される金属材の材質によっては,割れやすい素材になることもあるし,逆に,割れにくい素材になることもあるのである。 したがって,選択される金属材の材質によっては,弾性変形するクランプ部材を有する部材に適用し,使用することは当然に可能であり,クランプ部材に鋳物を適 用することに,阻害要因は存在しない。 (4) 相違点3及び4の作用効果の看過について原告は,本件審決には,本件発明1のように,チルト回動機構の軸を形成する支持部を,アウターコラムと鋳物で一体形成した場合,チルト回動機構の回転軸の位置を精密に決めることが,はるかに容易になるという相違点3及び4による作用効果を看過した誤りがあると主張する。 しかし,チルト回動機構の軸を形成する支持部を,アウターコラムと鋳物で一体形成した場合,チルト回動機構の回転軸の位置を精密に決めることが,はるかに容易になるとの作用効果は,本件出願時において,明細書に記載されたものではなく,これを認めることはできない。 また,アウターコラムと鋳物で一体形成した場合,チルト回動機構の回転軸の位置を精密に決めることが,はるかに容易になるという想定での効果は,原告が出願した引用例4(甲5)にも,鋳物(アルミ合金鋳造品)によりチルト回転機構と減速ギアカバーとが一体化されている技術内容が開示されている。つまり,引用例4に開示された技術でも,チルト回動機構の回転軸の位置を精密に決めることが,相違点4に係る本件発明1の構成と同様に,はるかに容易になるべきものであるから,本件審決がかかる作用効果を看過したものとはいえ に開示された技術でも,チルト回動機構の回転軸の位置を精密に決めることが,相違点4に係る本件発明1の構成と同様に,はるかに容易になるべきものであるから,本件審決がかかる作用効果を看過したものとはいえない。 さらに,仮に,原告が主張する上記作用効果が認められるとしても,かかる効果は,鋳物で一体形成した場合の構成から当然生じた作用効果であり,純粋にチルト回動機構による作用効果であるとはいえない。 以上のとおり,本件審決には,相違点3及び4の作用効果の看過はない。 2 取消事由2(本件発明2ないし6の容易想到性に係る判断の誤り)ついて〔原告の主張〕(1) 本件発明2について本件審決は,本件発明2と引用発明の相違点は,相違点1ないし4と実質的に同じであり,各相違点についての進歩性判断も同じであるとして,本件発明2は,引 用発明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。 しかし,前記のとおり,相違点1ないし4に係る本件審決の判断は誤りであるから,本件発明2についての本件審決の判断も,取り消されるべきである。 (2) 本件発明3について本件審決は,本件発明3と引用発明の相違点は,相違点1,3及び4と実質的に同じであり,各相違点についての進歩性判断も同じであるとして,本件発明3は,引用発明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。 しかし,前記のとおり,相違点1,3及び4に係る本件審決の判断は誤りであるから,本件発明3についての本件審決の判断も,取り消されるべきである。 (3) 本件発明4について本件審決は,本件発明4と引用発明の相違点は,相違点1,3及び4と実質的に同じであり,各相違点に から,本件発明3についての本件審決の判断も,取り消されるべきである。 (3) 本件発明4について本件審決は,本件発明4と引用発明の相違点は,相違点1,3及び4と実質的に同じであり,各相違点についての進歩性判断も同じであるとして,本件発明4は,引用発明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。 しかし,前記のとおり,相違点1,3及び4に係る本件審決の判断は誤りであるから,本件発明4についての本件審決の判断も,取り消されるべきである。 (4) 本件発明5について本件審決は,相違点1,3及び4に係る検討を援用して,本件発明5は,引用発明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。 しかし,前記のとおり,相違点1,3及び4についての本件審決の判断は誤りであるから,本件発明5についての本件審決の判断も,取り消されるべきである。 (5) 本件発明6について本件審決は,相違点1,3及び4に係る検討を援用して,本件発明6は,引用発 明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。 しかし,前記のとおり,相違点1,3及び4に係る本件審決の判断は誤りであるから,本件発明6についての本件審決の判断も,取り消されるべきである。 〔被告の主張〕(1) 本件発明2について本件発明2と引用発明との相違点は,相違点1ないし4と実質的に同じであり,各相違点についての進歩性の判断も同じである。すなわち,本件発明2は,引用発明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 本件発明3につ 違点についての進歩性の判断も同じである。すなわち,本件発明2は,引用発明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 本件発明3について本件発明3は,実質的に本件発明1と同等である。したがって,本件発明1が進歩性を欠如している以上,本件発明3も進歩性を欠如しているのは当然であり,本件審決の判断に誤りはない。 (3) 本件発明4について本件発明4は,本件発明3に「クランプ部材の前記包持面は前記インナーコラム外周面に押圧接触していること」を付加した構成であり,実質的に本件発明3と同等発明である。 したがって,本件発明4は,引用発明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件審決の判断に誤りはない。 (4) 本件発明5について本件発明5は,本件発明4の従属項であり,実質的に本件発明4と同等である。 したがって,本件発明5は,実質的に本件発明1と同等であって,進歩性を欠くものであるから,本件審決の判断に誤りはない。 (5) 本件発明6について 本件発明6は,請求項1ないし3の従属項である。本件発明6も,実質的に本件発明1と同等であって,進歩性を欠くものであるから,本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明について(1) 本件発明は,前記第2の2記載のとおりであるところ,本件明細書(甲24の1,37)には,本件発明について,概略,次のような記載がある。 ア発明の属する技術分野本件発明は,運転者の運転姿勢に応じて,ステアリングシャフトの傾斜角度及び/若しくはステアリングシャフトの軸方向位置を調整できる車両用ステアリング装置に関するものである(段落【0001】)。 本件発明は,運転者の運転姿勢に応じて,ステアリングシャフトの傾斜角度及び/若しくはステアリングシャフトの軸方向位置を調整できる車両用ステアリング装置に関するものである(段落【0001】)。 イ従来の技術車両用ステアリング装置には,運転者の運転姿勢に応じて,ステアリングホイールの傾斜角度を調整できるとともに,ステアリングホイールの軸方向位置を調整できるチルト・テレスコピック式のステアリング装置がある(段落【0002】)。 例えば,特開平11-278283号公報に開示されたチルト・テレスコピック式のステアリング装置では,ロアー側のアウターコラムに,アッパー側のインナーコラムが摺動自在に挿入して嵌合してある。このアッパー側のインナーコラムには,テレスコ調整用溝を有するディスタンスブラケットが取り付けてあり,このディスタンスブラケットは,チルト調整用溝を有する車体側ブラケットの内側に摺接するように構成してある(段落【0003】)。 ウ発明が解決しようとする課題上記公報に開示されたチルト・テレスコピック式のステアリング装置では,ロアー側のアウターコラムに,アッパー側のインナーコラムを摺動自在に嵌合し,両コラムの剛性を高くしている(段落【0006】)。 しかし,アッパー側のインナーコラムは,ロアー側のアウターコラムに対して必 ずしも直接的にクランプしていないため,ステアリングホイールに曲げ荷重が作用した場合(すなわち,ステアリングホイールが上下方向にこじられた場合),アッパー側のインナーコラムは,若干揺動するように動くことがあり,両コラムの剛性は,必ずしも高いとはいえなかった(段落【0007】)。 本件発明は,このような事情に鑑みてなされたものであって,ステアリングコラムの剛性を著しく高くしたチルト及び/若しくはテレスコ 両コラムの剛性は,必ずしも高いとはいえなかった(段落【0007】)。 本件発明は,このような事情に鑑みてなされたものであって,ステアリングコラムの剛性を著しく高くしたチルト及び/若しくはテレスコピック位置が調整自在な車両用ステアリング装置を提供することを目的とする(段落【0009】)。 エ課題を解決するための手段上記の目的を達成するため,請求項1の発明に係る車両用ステアリング装置は,ステアリングシャフトの一方の端部側を回転自在に支持するインナーコラムと,前記ステアリングシャフトの他方の端部側を回転自在に支持すると共に,前記インナーコラムを摺動自在に嵌合したアウターコラムと,このアウターコラムに一体に形成され,車体側ブラケットに摺接する面と前記インナーコラムを包持する包持面とをそれぞれ備えた一対のクランプ部材と,これら一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて,前記インナーコラムをこれら一対のクランプ部材により締め付け包持するための締付手段と,前記一対のクランプ部材よりも車両前方側で前記アウターコラムに設けられ,ステアリングシャフトをチルト回動可能にするために前記アウターコラムに設けられた支持部と,該支持部に形成された筒状開口部に挿通されステアリングシャフトを車体側にチルト回動自在に支持するボルトと,を具備し,しかして前記締付手段の締め付けを解除してステアリングシャフトを軸方向に移動して,ステアリングシャフトのテレスコピック位置及びチルト位置が調整自在である車両用ステアリング装置において,前記アウターコラムは前記一対のクランプ部材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする(段落【0010】)。 オ発明の実施の形態(第1の実施の形態) 別紙1の図1は,本件発明の第1実施の形態に係るチルト 材と前記支持部と共に一体に形成された鋳物であることを特徴とする(段落【0010】)。 オ発明の実施の形態(第1の実施の形態) 別紙1の図1は,本件発明の第1実施の形態に係るチルト・テレスコピック式の車両用ステアリング装置の平面図である。図2は,図1に示したステアリング装置の縦断面図である。図3は,図2のA-A線に沿った横断面図である。図4は,図2のB-B線に沿った横断面図である。図5(a)は,ロアー側のアウターコラムの平面図であり,図5(b)は,このアウターコラムの側面図であり,図5(c)は,図5(b)のC-C線に沿った横断面図である(段落【0015】)図1及び図2に示すように,ステアリングシャフトは,車両後方側端部でステアリングホイール(図示なし)を固設支持するアッパーシャフト1と,これにスプライン嵌合したロアーシャフト2とから伸縮自在に構成してあり,ステアリングコラムは,アッパーシャフト1を上端部で玉軸受31を介して回転自在に支持するアッパー側のインナーコラム3と,ロアーシャフト2を下端部で玉軸受33を介して回転自在に支持すると共にアッパー側のインナーコラム3に嵌合したロアー側のアウターコラム4とから摺動自在に構成してある。アッパーシャフト1には該アッパーシャフトがインナーコラム3に潜り込まないように潜り込み防止用のCーリング35が設けてあり,またロアーシャフト2にも該ロアーシャフト2がアウターコラム4に潜り込まないように潜り込み防止用Cーリング37が設けてある(段落【0016】)。 このロアー側のアウターコラム4の周囲には,図3及び図4にも示すように,チルト調整用溝5を有するブラケット6が設けてある。ブラケット6は車両後方側に車体に接続されるフランジ部6a有し全体として下向きに逆U字形状をしており,対向側 周囲には,図3及び図4にも示すように,チルト調整用溝5を有するブラケット6が設けてある。ブラケット6は車両後方側に車体に接続されるフランジ部6a有し全体として下向きに逆U字形状をしており,対向側板部6b,6cを一体に形成している(段落【0017】)。 図4に示すように,車体側ブラケット6のロアー側には,別体のロアーブラケット7が車体側ブラケット6を包持するように設けてある。ロアーブラケット7は車体に連結される上板部7aとブラケット6の対向側板部6b,6cを接触挟持する下向きの対向側板部7b,7cを形成している。ブラケット6の対向側板部6b,6cの内側に両側端が摺接するように,筒状部8がアウターコラム4の前方端に一 体的に形成してある。これらロアーブラケット7の対向側板部7b,7c,ブラケット6の対向側板部6b,6c及び筒状部8には,スペーサ筒9を介して,チルト中心ボルト10aが通挿してあり,ナット10bにより締め付けられている。これにより,ロアー側のアウターコラム4は,このチルト中心ボルト10aを中心として傾動できるようになっている。なお,図2に示すように,ロアーブラケット7には,二次衝突のコラプス時にチルト中心ボルト10が離脱するための離脱用オープンスリット11が形成してある(段落【0018】)。 ロアー側のアウターコラム4はアッパーシャフト1とロアーシャフト2との嵌合部をほぼ覆う位置まで後方に延びており,さらにこの嵌合部よりも後方側にはある長さ範囲にわたりアウタージャケット部4aを一体に有している。アウタージャケット部4aには上方部中央に軸方向のすり割り1が形成してあり,アッパー側のインナーコラム3を包持してクランプするための一対のクランプ部材12a,12bを形成している。クランプ部材12a,12bはそれぞれインナーコラ 方部中央に軸方向のすり割り1が形成してあり,アッパー側のインナーコラム3を包持してクランプするための一対のクランプ部材12a,12bを形成している。クランプ部材12a,12bはそれぞれインナーコラム3の外周面に適合する形状の内周面と車体側ブラケット6の内側に摺接する外側面とを有している。尚,クランプ部材12a,12bの内周面はインナーコラム3の外周面に円周方向180度以上に亘り摺接することが望ましい。また図14に示すように円周方向少なくとも3方向から摺接するようにしても良い。クランプ部材12a,12bには,締付ボルト13が通挿してある。この締付ボルト13のネジ部には,締付ナット14及びロックナット15が螺合してある(段落【0019】)。 この締付ボルト13の頭部側には,操作レバー16が取り付けてあると共に,カムロック機構が設けてある。このカムロック機構は,操作レバー16と一体的に回転する第1カム部材17と,この第1カム部材17の回転に伴って,第1カム部材17の山部または谷部に係合しながら軸方向に移動してロックまたはロック解除する非回転の第2カム部材18とから構成してある。なお,第1カム部材17の突起17aが操作レバーに嵌合してあることにより,第1カム部材17は操作レバー16と一体的に回転できるように構成してあると共に,第2カム部材18の突起18 aがチルト調整用溝5に嵌合してあることにより,第2カム部材18は常時非回転に構成してある。また,ブラケット6のフランジ部6aには,二次衝突のコラプス時の離脱用カプセル19a,19bが設けてある。すなわち,ブラケット6は離脱用カプセル19a,19bを介して車体に連結される(段落【0020】)。 以上のように構成してあるため,車両衝突時には,アウターコラム4,インナーコラム3,ロアーシャ 。すなわち,ブラケット6は離脱用カプセル19a,19bを介して車体に連結される(段落【0020】)。 以上のように構成してあるため,車両衝突時には,アウターコラム4,インナーコラム3,ロアーシャフト2及びアッパーシャフト1から成るステアリングシャフト組立体はブラケット6とともにロアーブラケット7に対して,車両前方に移動する(段落【0021】)。 チルト・テレスコピックの解除時には,操作レバー16を所定方向に揺動すると,第1カム部材17が同時に回転して,第2カム部材18の山部から谷部に係合し,第2カム部材18が図3の左方に移動して,車体側ブラケット6のアウターコラム4への摺接固定を解除する(段落【0022】)。 これにより,チルト調整の場合には,締付ボルト13をチルト調整用溝5に沿って移動し,チルト中心ボルト10を中心として,アウターコラム4及びインナーコラム3を傾動し,ステアリングホイール(図示略)の傾斜角度を所望に調整することができる(段落【0023】)。 テレスコピック調整の場合には,ロアー側のアウターコラム4に対して,アッパー側のインナーコラム3を軸方向に摺動し,ステアリングホイール(図示略)の軸方向位置を所望に調整することができる。なお,アウターコラム4の外周下側の突出部に半径方向内向きのストッパボルト43が設けてある。ストッパボルト43に対向してインナーコラム3には所定長の長溝3bが形成してあり,この長溝3bにストッパボルト43の内端が係合しており,テレスコ位置調整用ストッパ及び回り止め部材となっている(段落【0024】)。 チルト・テレスコピックの締付時には,操作レバー16を逆方向に揺動すると,第1カム部材17が同時に回転して,第2カム部材18の谷部から山部に係合し,第2カム部材18が図3の右方に移動して,締付ボルト チルト・テレスコピックの締付時には,操作レバー16を逆方向に揺動すると,第1カム部材17が同時に回転して,第2カム部材18の谷部から山部に係合し,第2カム部材18が図3の右方に移動して,締付ボルト13により,車体側ブラケ ット6がアウターコラム4を押圧する(段落【0025】)。 これにより,これら一対のクランプ部材12a,12bは,互いに近接するように移動して,アッパー側のインナーコラム3を包持するようにクランプする。このように,アッパー側のインナーコラム3をロアー側のアウターコラム4により直接的にクランプするように構成していることから,ステアリングホイール(図示略)に曲げ荷重が作用した場合(即ち,ステアリングホイール(図示略)が上下方向にこじられた場合)であっても,アッパー側のインナーコラム3は,若干揺動するように動くことがなく,両コラム3,4の剛性を著しく高くすることができる(段落【0026】)。 次に,図6に,第1実施の形態の変形例を示す。図6(a)は,第1実施の形態に係るロアー側のアウターコラムの断面図であり,図6(b)は,第1実施の形態の変形例に係るロアー側のアウターコラムの断面図であり,図6(c)は,本変形例に係るロアー側のアウターコラムの作用を示す断面図である(段落【0027】)。 図6(a)に示すように,上述した第1実施の形態において,一対のクランプ部材12a,12bの間の「すり割り」を形成した箇所では,その隙間が大きすぎ,アウターコラム4とインナーコラム3との間の隙間が大きい場合,クランプ時に,一対のクランプ部材12a,12bが傾斜するといったおそれがある(段落【0028】)。 これに対処するため,図6(b)(c)に示すように,一対のクランプ部材12a,12bの間の「すり割り」を形成した箇所に,それぞれ 12a,12bが傾斜するといったおそれがある(段落【0028】)。 これに対処するため,図6(b)(c)に示すように,一対のクランプ部材12a,12bの間の「すり割り」を形成した箇所に,それぞれ,一対の突起12c,12dを設けている。これにより,クランプ時には,一対の突起12c,12dが互いに当接することから,一対のクランプ部材12a,12bを平行に維持することができ,充分な保持力を得ることができる。図14に示す第1実施の形態の第2変形例においては,クランプ部材12a,12bの内周側ほぼ等角配置の3カ所においてインナーコラム3の外周に摺接している。なお,アウターコラム4は図18のようにすり割り1を図5よりも前方へ長く伸ばしても良い。また,アウターコラム4 は鋳物,例えばアルミ鋳物,亜鉛鋳物,マグネシウム系鋳物,鉄系鋳物で作っても良い(段落【0029】)。 カ発明の効果本件発明によれば,アウターコラムに一体又は別体の,一対のクランプ部材がインナーコラム又はアウターコラムを包持するように設けてあり,しかも,締付手段により,これら一対のクランプ部材を互いに近接するように移動させて,インナーコラム又はアウターコラムをこれら一対のクランプ部材により包持してクランプするように構成している。このように,インナーコラムをアウターコラムにより直接的にクランプするように構成していることから,ステアリングホイールに曲げ荷重が作用した場合(すなわち,ステアリングホイールが上下方向にこじられた場合)であっても,インナーコラムは,若干揺動するように動くことがなく,両コラムの剛性を著しく高くすることができる(段落【0050】)。 (2) 以上の記載からすると,従来のチルト・テレスコピック式のステアリング装置には,ロアー側のアウターコラムにアッパー とがなく,両コラムの剛性を著しく高くすることができる(段落【0050】)。 (2) 以上の記載からすると,従来のチルト・テレスコピック式のステアリング装置には,ロアー側のアウターコラムにアッパー側のインナーコラムを摺動自在に嵌合したものがあるが,アッパー側のインナーコラムは,ロアー側のアウターコラムに対して必ずしも直接的にクランプされていなかったため,ステアリングホイールに曲げ荷重が作用した場合(ステアリングホイールが上下方向にこじられた場合)には,アッパー側のインナーコラムが若干揺動するように動くことがあり,両コラムの剛性は必ずしも高いものではなかったことから,本件発明は,ステアリングコラムの剛性を著しく高くしたチルト及びテレスコピック位置が調整自在な車両用ステアリング装置を提供することを目的とし,特許請求の範囲請求項1ないし6記載のとおり,アウターコラムに一体に形成された一対のクランプ部材によりインナーコラムを包持してクランプする構成とすることによって,ステアリングホイールに曲げ荷重が作用した場合であっても,インナーコラムが若干揺動するように動くことがなく,両コラムの剛性が著しく高くなるとの作用効果を奏するというものである。 2 引用発明について(1) 引用発明は,前記第2の3(2)ア記載のとおりであるところ,引用例1(甲1)には,引用発明について,概略,次のような記載がある。 ア技術分野本発明は,枢動及び若しくは軸方向移動により調整の可能な乗り物のステアリングコラムなどの筒状部品のための固定装置に係る(3頁右上欄16行~19行)。 イ発明の目的及び構成本発明の目的は,枢動及び若しくは伸縮抜差し軸方向移動により連続的に調整のできる筒状部品特に乗り物のステアリングコラムのための固定装置にして,乗り物のボ 6行~19行)。 イ発明の目的及び構成本発明の目的は,枢動及び若しくは伸縮抜差し軸方向移動により連続的に調整のできる筒状部品特に乗り物のステアリングコラムのための固定装置にして,乗り物のボデーなどの固定部分に堅固に取付けるための装置を設け,かつ,2つのほぼ平行状の側方フランジよりなる支持片材を包含し,2つのほぼ平行状の側方フランジは一端で互いにつなげられU字型構造体を形成し,このフランジを互いに近づけたり離したりするように動かすことによりこれを調整可能にし,筒状部品が貫通する中間支持片材のクランプにより筒状部品の固定を,側方フランジを横切る方向に貫通し,かつ,両端に2つの支承ストップを側方フランジの外側その両側に位置して設けたタイロッドにより確保し,また1つのストップに当接し対応フランジの外面に当接する少なくとも1つのハンドル操作のクランプ装置によりフランジを互いに横方向に近づけたり若しくは弾性戻し具により引き離すことができるように筒状部品の固定を確保し,ドライバのかける力には全く無関係な効率を有し,実際上操作簡単にして摩耗その他作動中の機械的応力に対して極めて高い抵抗力をもつような固定装置を提案することである(4頁右上欄1行~左下欄4行)。 ウ実施例別紙2の第10図は,ステアリングシャフトの枢動軸線に合致せる軸線55を中心とする枢動及び伸縮移動の両方により調整実施が可能なように組立てたステアリングコラム60を示す。コラム60の外側筒体はコラムケーシング61と,コラムケーシング61内のリング状ジヨイント63及び64により伸縮式に取付けた調整 筒体62よりなっている。同様にステアリングシャフト65は伸縮式に取付けられ,コラムケーシング61内に回転ベアリング67により回転できるよう取付けた底部分66と,この底部分66 付けた調整 筒体62よりなっている。同様にステアリングシャフト65は伸縮式に取付けられ,コラムケーシング61内に回転ベアリング67により回転できるよう取付けた底部分66と,この底部分66内の軸方向に摺動できるよう取付けられ,かつベアリング69により自由に回転でき摺動筒体62に対して平行移動のできないように取付けられたトップ部分68を有している(8頁左上欄5行~右上欄1行)。 枢動又は伸縮移動により若しくはこの2つの動きの組合せによる調整後のステアリングコラムの固定は本発明の固定装置72により保証される。中間支持片材75は,別紙2の第11図及び第11a図に示されている。実際上2つの対称形の要素75aと75bが折りたたみ板材より作られ,コラムケーシング61に対応する内部通路を残すよう切断されて設けられている。要素75bはコラムケーシングの貫通する半円形開口の全長にわたりコラムケーシング61に溶接されている。支持片材75の部分75aは,コラムケーシング61が貫通できる半円形開口の半分にほぼ等しい距離にわたりコラムケーシング61に溶接されている。この要素75aの左方部分76は,コラムケーシング61には溶接されてはおらず,コラムケーシング61を貫通する開口の組77を貫通するクランプジヨーを形成している。中間支持片材75は,支持片25と同じように,装置72の固定支持片内に取付けられている。したがって,この中間支持片材75はその2つの部分75a及び75bを近づけ合うように働くクランプ圧を受ける。しかし,支持片75の部分76だけが要素75aの残り部分につながった部分の弾性変形により動くことができる。したがって,ジヨー76がコラムケーシング61の開口77を貫通して摺動筒体62をクランプできる。支持片75をこの固定した支持片内にクランプするこ 部分につながった部分の弾性変形により動くことができる。したがって,ジヨー76がコラムケーシング61の開口77を貫通して摺動筒体62をクランプできる。支持片75をこの固定した支持片内にクランプすることにより,コラムケーシング61を装置72の固定した支持片内に固定し,同時に摺動筒体62を支持片75及びコラムケーシング61に対し固定する両方の工程を行うことができる(8頁右上欄12行~右下欄5行)。 (2) 以上の記載からすると,引用発明は,枢動及び軸方向移動により調整の可能な乗り物のステアリングコラムなどの筒状部品のための固定装置に関して,操作を 簡単にして摩耗その他作動中の機械的応力に対してきわめて高い抵抗力をもつような固定装置を提案することを目的としたものであって,前記第2の3(2)ア記載の引用発明の構成とすることにより,上記作用効果を奏するというものである。 3 その他の文献について(1) 引用例2についてア乗用トラクターにおけるハンドルの伸縮装置に関する引用例2(甲3)には,概略,次のような記載がある。 (ア) この考案は,摺動筒の一端をハンドル取付部に取付けるとともに,その他端を締付部を備えた支持筒に伸縮自在に嵌装してなる乗用トラクターにおけるハンドルの伸縮装置に関するものであり,支持筒の一部に備えた締付部の簡単な操作により運転者に適合したハンドルの伸縮を行うことを目的とする(1頁左欄6行~14行)。 別紙3の第1図の1はトラクターのボンネットを示し,2はボネト1(判決注:「ボンネット1」の誤記と認める。)よりその一部が外部に突出するように設けた支持筒で,その一部には締付部3が装着されており,第3図に示すように,締付金具の締付鍔4,4’のほぼ中央に穿孔された螺孔には螺杆5が挿通されている。第2図において,7は が外部に突出するように設けた支持筒で,その一部には締付部3が装着されており,第3図に示すように,締付金具の締付鍔4,4’のほぼ中央に穿孔された螺孔には螺杆5が挿通されている。第2図において,7は摺動筒で,その一端はハンドル取付部10に取付けられ,他端は支持筒2に伸縮自在に嵌挿されて締付部3にて締付固着されている(1頁左欄15行~26行)。 この装置は,操縦席11に搭乗する運転者の体長に応じて,支持筒2の一部に備えた締付部3のレバー6を適当に回動して,締付部3の緊締を解き,しかるのち摺動筒7を支持筒2の内面に沿って上方あるいは下方に摺動伸縮させて,適当な位置を定めた後,締付部3のレバー6を回動締付してなるものである(1頁右欄1行~8行)。 (イ) また,別紙3の第2図及び第3図には,一対の締付鍔4,4’を備えた締付部3が支持筒2に装着され,軸方向に連続して摺動筒7を包持する包持面を形成 していることが図示されている。 イ以上からすると,引用例2には,摺動筒の一端をハンドル取付部に取付けるとともに,その他端を締付部を備えた支持筒に伸縮自在に嵌装してなる乗用トラクターにおけるハンドルの伸縮装置において,一対の締付鍔4,4’を備えた締付部3を支持筒2に装着し,軸方向に連続して摺動筒7を包持する包持面を形成するとの技術事項が記載されている。 (2) 引用例3についてア衝撃吸収式ステアリングコラムに関する引用例3(甲4)には,概略,次のような記載がある。 (ア) 産業上の利用分野この発明に係る衝撃吸収式ステアリングコラムは,自動車の操舵装置を構成するステアリングシャフトを回転自在に支持するために利用する。また,衝突時には衝撃エネルギを吸収しつつ全長を縮めることで,ステアリングホイールに衝突した運転者の身体に加わる衝撃を 車の操舵装置を構成するステアリングシャフトを回転自在に支持するために利用する。また,衝突時には衝撃エネルギを吸収しつつ全長を縮めることで,ステアリングホイールに衝突した運転者の身体に加わる衝撃を緩和する(段落【0001】)。 (イ) 発明が解決しようとする課題従来のエネルギ吸収式ステアリングコラムの場合,衝突事故の際における運転者の保護の面からは特に問題ないが,部品点数が多く,部品製作,部品管理,組立作業がいずれも面倒になり,製作費がかさむことが避けられない。特に,複数の部品同士を溶接あるいはボルト付け等により結合固定するため,必要な寸法精度を確保しようとすると,組立作業が相当に面倒になり,製作費を高くしてしまう。本発明の衝撃吸収式ステアリングコラムは,この様な事情に鑑みて発明したものである(段落【0008】)。 (ウ) 課題を解決するための手段本発明の衝撃吸収式ステアリングコラムにおいては,アウターコラムとブラケットとが非鉄材料により一体形成されている。アウターコラムとブラケットとを一体に造るための非鉄材料としては,アルミニウム合金,マグネシウム合金等の非鉄金 属が好ましく利用できる(段落【0010】)。 (エ) 作用本発明の衝撃吸収式ステアリングコラムの場合には,アウターコラムの外周面にブラケットを後から結合固定する手間が不要になり,部品製作,部品管理,組立作業を何れも簡略化して,製作費の低減を図れる(段落【0011】)。 (オ) 実施例図1ないし5は,本発明の第一実施例として,チルト機構を備えたステアリングコラムに本発明を適用した場合を示している。なお,本発明の特徴は,ステアリングコラム4aを構成するアウターコラム5aに昇降ブラケット8aと取付ブラケット9aとシリンダブラケット10aとを一体に形成した ラムに本発明を適用した場合を示している。なお,本発明の特徴は,ステアリングコラム4aを構成するアウターコラム5aに昇降ブラケット8aと取付ブラケット9aとシリンダブラケット10aとを一体に形成した点にある。 上記昇降ブラケット8aは,例えば非鉄金属をダイキャスト成形することにより,全体を円筒状に形成している(段落【0012】【0013】)。 (カ) 図10及び11は,本発明の第三実施例として,前記チルト機構に加えて,ステアリングホイールの前後位置を調節するためのテレスコピック機構を備えたステアリングコラムに本発明を適用した場合を示している。本実施例の場合も,昇降ブラケット8a及びシリンダブラケット10aをアウターコラム5aと一体に形成することで,製作費の低廉化を図っている(段落【0024】【0029】)。 イ以上のとおり,引用例3には,従来のエネルギ吸収式ステアリングコラムには,部品点数が多く,部品製作,部品管理,組立作業がいずれも面倒になり,製作費がかさむことが避けられず,特に,複数の部品同士を溶接あるいはボルト付け等により結合固定するため,必要な寸法精度を確保しようとすると,組立作業が相当に面倒になり,製作費を高くしてしまうとの課題があったことから,かかる課題を解決するため,ステアリングコラム4aを構成するアウターコラム5aに昇降ブラケット8aと取付ブラケット9aとシリンダブラケット10aとを一体に形成することや,昇降ブラケット8aは,例えば非鉄金属をダイキャスト成形することにより形成することが開示されており,「自動車のステアリングコラムにおいて,アウタ ーコラムに対し,昇降ブラケット等の周辺部材を従来溶接により接合していたのを,寸法精度確保の手間を省くために,アウターコラムに周辺部材を含めて全体を鋳物で一体形成する」 ムにおいて,アウタ ーコラムに対し,昇降ブラケット等の周辺部材を従来溶接により接合していたのを,寸法精度確保の手間を省くために,アウターコラムに周辺部材を含めて全体を鋳物で一体形成する」との技術事項が記載されている。 (3) 周知例2についてアテレスコピック式ステアリングコラムのストッパー装置に関する周知例2(甲7)には,概略,次のような記載がある。 (ア) この考案は,自動車のテレスコピック式ステアリングコラムのストッパー装置に関するものである(第1欄17行~19行)。 コラムジャケット6が挿通されたコラムガイド8は,ボルトナット9により車体に固定される。10はコラムガイド8の外周に設けたクランク型の溝(スリット)で,このクランク型溝10は軸方向の溝10a,10bと溝10a,10bを連結する円周方向の溝10cとよりなる。11はコラムガイド8の後端に固着した環状クランプで,このクランプ11は,割溝12を有し,クランク型溝10の溝10bと一致している。13はクランプ11を結合する締付けねじで,この締付けねじを回転することによってクランプ11を締付けコラムガイド8の径を縮小してコラムジャケット6を緊締し,コラム1を固定する(第1欄末行~第2欄12行)。 (イ) また,別紙6の第2図には,クランプ11は,コラムジャケット6を包持する包持面を備え,また,当該包持面を備えた包持部よりも肉厚で突出し,締付けねじ13が貫通する対向厚肉突出部を備えることが図示されている。 イ以上のとおり,周知例2には,自動車のテレスコピック式ステアリングコラムにおいて,コラムジャケット6を挿通したコラムガイド8の後端にコラムジャケット6を締め付け保持するために固着されたクランプ11が,コラムジャケット6を包持する包持面を備えた包持部よりも肉厚で突 ラムにおいて,コラムジャケット6を挿通したコラムガイド8の後端にコラムジャケット6を締め付け保持するために固着されたクランプ11が,コラムジャケット6を包持する包持面を備えた包持部よりも肉厚で突出し,クランプ11を締付ける締付けねじ13が貫通する対向厚肉突出部を備えた構成が記載されている。 (4) 周知例3についてアテイルトステアリング機構に関する周知例3(甲8)には,概略,次のよう な記載がある。 (ア) 本考案は,自動車の操舵装置であるテイルトステアリング機構に関するものである。本考案の目的は,ステアリングホイールの前後,上下位置の調整操作を簡単にするとともに,テイルトステアリング機構を構成する一部品のコラムサポートをコラムとの嵌合部のクリアランス調整可能とし,コラム下部の自在継手部分を包囲するダストカバーのリテーナの機能を持たせ,させに合成樹脂材によって形成することにより金属接触異音の発生を防止し,かつ,円滑な摺動が得られるようにしたことである(第1欄下から4行~第2欄7行)。 別紙7の第1図の1は,ステアリングコラムであり,操舵機構に前後並びに上下方向に移動自在に自在継手及びスプライン機構で連結されている。コラム1の上方位置にアッパーサポート2を,下方位置にロアサポート3をそれぞれ嵌装する(第3欄4行~10行)。 アッパーサポート2,ロアサポート3の両側は,キャブに固設した一対のブラケット5と対接している。すなわち,一対のブラケット5の間に前記アッパーサポート2,ロアサポート3が挟まれた状態となっている。ブラケット5の前記アッパーサポート2の両側との対接位置には前後方向に長いガイド穴6が,また,ロアサポート3の両側との対接位置にはボトル挿通穴7がそれぞれ開設している。そして,前記ガイド穴6とアッパーサポート の前記アッパーサポート2の両側との対接位置には前後方向に長いガイド穴6が,また,ロアサポート3の両側との対接位置にはボトル挿通穴7がそれぞれ開設している。そして,前記ガイド穴6とアッパーサポート2に空けられているボルト穴2bには,回り止め頭部9を有するボルト8を挿通し,操作ノブ10によって締付固定するようにしている(第3欄37行~第4欄5行)。 本考案は,操作ノブ10を締付けることによって,アッパーサポート2はコラム1の外周を強固に締付け,前後,上下方向の移動を規制し完全にステアリングホイール位置をロックする。また,操作ノブ10を緩めると,アッパーサポート2によるコラム1の締付けが解除され上下方向の調整が自由に得られるとともに,ブラケット5のガイド穴6に沿って前後方向の調整も自由に得られる。この前後方向の調整移動はロアサポート3のボルト11を中心にして行われる(第4欄14行~24 行)。 (イ) また,別紙7の第1図及び第2図には,アッパーサポート2は,ステアリングコラム1を包持する包持面を備え,また,当該包持面を備えた包持部よりも肉厚で突出し,ボルト8が貫通する対向厚肉突出部を備えることが図示されている。 イ以上のとおり,周知例3には,自動車のステアリング装置において,ガイド穴6が形成された一対のブラケット5に挟まれ,ガイド穴6に沿って移動可能に設けられたアッパサポート2が,ステアリングコラム1を包持する包持面を備えた包持部よりも肉厚で突出し,ボルト8が貫通する対向厚肉突出部を備えた構成が記載されている。 (5) 周知例4についてア車両のステアリングコラム装置に関する周知例4(甲9)には,概略,次のような記載がある。 (ア) この発明は,自動車のステアリングコラムに関するものである(段落【0001】)。 ス ついてア車両のステアリングコラム装置に関する周知例4(甲9)には,概略,次のような記載がある。 (ア) この発明は,自動車のステアリングコラムに関するものである(段落【0001】)。 ステアリングコラム10は,ステアリングシャフト14を同軸状に包囲するジャケット12を有している(段落(【0013】)。 第三のブラケット手段80は,車両の固定部材に一端で固定的に連結され,ジャケット12に対して可能に構成されて,ジャケット12が第一の端部20をドライバの体の大きさ及び運転位置の好みに応じて調整できるようにしている(段落【0025】)。 第三のブラケット手段は,スチール又はプラスチック製のクランプブロック82を有している。クランプブロック82は,ほぼ立方体形状を有しており,第一の前後方向に延びるボア84を有している。ボア84は,ジャケット12に取付けを可能にする大きさに形成される(段落【0026】)。 クランプブロック82がステアリングコラムジャケット12を中心に配置されると,別紙8の図8に示すように第二の横断方向ボア90がステアリングコラムジャ ケット12の上面に形成された横断方向スロット116に整列する。クランプブロック82は,クランプブロック82を通ってジャケット12の孔118に延びる突起又はハンガ86によって,ステアリングコラムジャケット12に軸支される。調整ボルト112はクランプブロック82を通って,外ネジ114がクランプブロックの一方の側壁から外向きに突出するように延びている。調整ナット120は,内ネジを形成したボアを一端に隣接して有しており,このボアが調整ボルト112の外ネジ114と係合する。調整ネジ120は,六角面122と外ネジを形成した端部124を有している。取付プレート100のアーム106,108のス を一端に隣接して有しており,このボアが調整ボルト112の外ネジ114と係合する。調整ネジ120は,六角面122と外ネジを形成した端部124を有している。取付プレート100のアーム106,108のスロット110は,調整ナット120の六角面122に摺動可能に係合して,摺動可能にクランプブロック82と取付プレート100を相互結合させる(段落【0033】)。 別紙8の図2に示すように,レバ130は,図2に実線で示す第一の上側位置と図2に仮想線で示す第二の下側ロック位置間のいかなる角度位置にも動作可能である。時計回り方向のロック位置に付勢されている間,レバ130は調整ナット120を調整ボルト112上で回転して,アーム110を取付プレート100に押圧し(判決注:「取付プレート100のアーム106,108を押圧し」の誤記と認める。),クランプブロック82の上側部94,96をステアリングコラムジャケット12に対して固定状態で固定的に接合させる。これによって,ジャケット12が固定状態でロックされる。レバ130を反時計回り第一の位置に向かってに回動すると,調整ナット120に作用している力が解除され,ステアリングコラムジャケット12が,図2に仮想線で示す最下調整位置に向かって多数の角度位置のいずれかの位置に第一の端部20を中心とし回動可能となる。図2の実線位置と仮想線位置の間のいずれかのジャケット12の角度位置において,レバー130は第二のロック位置に向かって回動することができ,ジャケット12を選択された角度位置に保持して,ドライバの好み及び/又は体の大きさに応じた所望位置にステアリングコラム装置10が位置することとなる(段落【0035】)。 (イ) また,別紙8の図8には,クランプブロック82が,アーム106,10 8に摺接する面を備えるととも た所望位置にステアリングコラム装置10が位置することとなる(段落【0035】)。 (イ) また,別紙8の図8には,クランプブロック82が,アーム106,10 8に摺接する面を備えるとともに,ステアリングコラムジャケット12を包持する包持面を備え,また,当該包持面を備えた包持部よりも肉厚で突出し,調整ボルト112が貫通する対向厚肉突出部を備えることが図示されている。 イ以上のとおり,周知例4には,自動車用ステアリングコラム装置において,スロット110が形成された一対のアーム106,108に挟まれ,スロット110に沿って移動可能に設けられたクランプブロック82が,ステアリングコラムジャケット12を包持する包持面を備えた包持部よりも肉厚で突出し,調整ボルト112が貫通する対向厚肉突出部を備えた構成が記載されている。 4 取消事由1(本件発明1の容易想到性に係る判断の誤り)について(1) 相違点1についてア容易想到性について(ア) 前記3(1)イのとおり,引用例2(甲3)には,乗用トラクターにおけるハンドルの伸縮装置において,一対の締付鍔4,4’を備えた締付部3を支持筒2に装着し,軸方向に連続して摺動筒7を包持する包持面を形成するとの技術事項が記載されている。そして,引用例2に記載された「乗用トラクターにおけるハンドル」,「支持筒2」,「一対の締付鍔4,4’を備えた部位」及び「摺動筒7」は,その構成及び機能からみて,本件発明1の「乗り物のステアリング」,「アウターコラム」,「一対のクランプ部材」及び「インナーコラム」にそれぞれ相当するものである。 したがって,引用例2に記載された上記技術事項は,相違点1に係る本件発明1の構成のうち,「一対のクランプ部材が,それぞれ,アウターコラムに一体に形成され,アウターコラムに軸方向 当するものである。 したがって,引用例2に記載された上記技術事項は,相違点1に係る本件発明1の構成のうち,「一対のクランプ部材が,それぞれ,アウターコラムに一体に形成され,アウターコラムに軸方向に連なり,軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面を備えた包持部を形成して対をなし,それぞれ,該包持部に連なり互いに対向する面で軸方向に延びる隙間を形成するとの構成」(包持部構成)に相当するものである。また,前記3(3)ないし(5)のとおり,ステアリングコラムにおいて,包持面を備えた包持部でコラムを締め付け保持するという構成自体は,周知例2ないし4(甲7ないし9)にも記載されている。 さらに,前記3(3)ないし(5)のとおり,周知例2(甲7)には,包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えており,締め付け用ボトルが,当該対向厚肉突出部を貫通している一対のクランプ部材が記載され,また,周知例3(甲8)及び4(甲9)には,いずれも,対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備え,かつ,コラムを包持する包持面を備えた包持部よりも肉厚で突出し,ボルトが貫通する対向厚肉突出部を備えた一対のクランプ部材が記載されている。したがって,本件出願に係る優先権主張日当時,車両のステアリングコラムの技術分野では,「一対のクランプ部材が,対向する面の背側に車体側ブラケットに摺接する面を備え,包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えており,締め付け用ボトルが,当該対向厚肉突出部を貫通しているとの構成」(対向厚肉突出部構成)は,周知の技術であったということができる。 (イ) 以上を前提として,相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性について検討する。 まず,一般に,関連する技術分野に置換可能又は付加可能な技術手段があるときに,その技 ということができる。 (イ) 以上を前提として,相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性について検討する。 まず,一般に,関連する技術分野に置換可能又は付加可能な技術手段があるときに,その技術手段の適用を試みることは,当業者が通常発揮すべき創作能力の範囲内の事項である。また,部品製作や組立作業の容易性の観点から,同種の装置に関して,より簡易な構造を希求することも,当業者において一般的に有する課題である。そして,引用例2(甲3)に記載された「一対の締付鍔4,4’を備えた締付部3を支持筒2に装着され,軸方向に連続して摺動筒7を包持する包持面を形成する」との構成は,引用発明(甲1)のステアリングクラムに関する「ステアリングコラムを支持する中間支持片材75は,2つの対称形の要素75a,75bが折りたたみ板材より作られ,要素75bはコラムケーシング61の貫通する半円形開口の全長にわたりコラムケーシング61に溶接され,中間支持片材75の要素75aはコラムケーシング61が貫通できる半円形開口の半分にほぼ等しい距離にわたりコラムケーシング61に溶接され,この要素75aの部分76はクランプジヨーを形成し」あるいは「ハンドル13の操作でクランプを行うと,クランプ力はフラン ジ17a及び17bに伝わり,それにより支持片材14の弾性変形の結果フランジ17a及び17bは互いに近接するように動き,中間支持片材75がフランジ17a及び17bの間にクランプされ,中間支持片材75はその2つの要素75a及び75bを近づけ合うように働くクランプ圧を受け,支持片75の部分76だけが要素75aの残り部分につながった部分の弾性変形により動き,ジヨー76が摺動筒体62をクランプして,コラムケーシング61を固定装置72の固定した支持片材14内に固定し同時に摺動筒体62 分76だけが要素75aの残り部分につながった部分の弾性変形により動き,ジヨー76が摺動筒体62をクランプして,コラムケーシング61を固定装置72の固定した支持片材14内に固定し同時に摺動筒体62を中間支持片材75及びコラムケーシング61に対し固定する」等の構成に比して,より簡易な構造であることは明らかである。 したがって,引用例2に接した当業者であれば,引用発明について,引用例2に記載された上記技術事項を適用することは,容易に想到し得るものであるということができる。 また,前記のとおり,本件出願に係る優先権主張日当時,車両のステアリングコラムの技術分野において,コラムを締め付け保持する一対のクランプ部材としては,コラムを包持する包持面を備えた包持部よりも肉厚で突出し,ボルトが貫通する対向厚肉突出部を備えたものとする構成は周知であったから,引用発明に引用例2に記載された上記技術事項を適用するに当たり,この周知技術を考慮して,引用発明の摺動筒体62(インナーコラム)を締め付け保持するための構造として,一対のクランプ部材の互いに対向する面の背側の面を,摺動筒体62の外径寸法よりも広い間隔を有するフランジ17a及び17bに摺接させるとともに,包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた構成とし,当該対向肉厚突出部にタイロッド21(締付け用ボルト)を貫通する構成とすることも,当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。 したがって,相違点1に係る本件発明1の構成は,当業者であれば,引用発明,引用例2の記載事項及び周知技術により,容易に想到することができたものである。 イ原告の主張について(ア) 原告は,引用発明に引用例2のようにダッシュボードに固定して取り付け られるハンドル伸縮装置の構成を組み合わせると ,容易に想到することができたものである。 イ原告の主張について(ア) 原告は,引用発明に引用例2のようにダッシュボードに固定して取り付け られるハンドル伸縮装置の構成を組み合わせると,引用発明のチルト調整機能が失われてしまうから,その組合せには阻害事由があると主張する。 しかしながら,相違点1に係る本件発明1の容易想到性の判断に当たり,引用発明のクランプ部材について,引用例2に記載された「一対の締付鍔4,4’を備えた締付部3を支持筒2に装着し,軸方向に連続して摺動筒7を包持する包持面を形成する」との技術事項の適用することは,引用発明のチルト機能自体を当然に失わせるものではないから,上記技術事項の適用に阻害事由があるということにはならない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (イ) 原告は,本件審決の判断は,本件発明1の構成を知った後で,引用発明との相違点を埋めるために,引用例2から引用発明に欠けている構成だけを合目的的に抽出して組み合わせるというものであり,このような事後分析的,後知恵的な判断は,進歩性の判断として誤りである旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,引用例1及び2に接した当業者であれば,乗り物のステアリングコラムの固定装置(クランプ部材)について,より簡易な構成を試行するため,引用発明に引用例2に記載された上記技術事項を適用することは,容易に想到することができるというべきであり,この点に関する本件審決の判断が事後分析的,後知恵的なものであるということはできない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (ウ) 原告は,引用例2に記載された締付鍔4,4のように,筒状の部材から細長い板状部が伸びている形状の部材は,鋳物で一体形成することが技術的に困難であるから,引 張は,採用することができない。 (ウ) 原告は,引用例2に記載された締付鍔4,4のように,筒状の部材から細長い板状部が伸びている形状の部材は,鋳物で一体形成することが技術的に困難であるから,引用発明に引用例2の記載事項を組み合わせて,相違点1に係る本件発明1の構成に想到することには,阻害事由があると主張する。 しかしながら,引用発明に適用されるのは,引用例2に記載された「一対の締付鍔4,4’を備えた締付部3を支持筒2に装着し,軸方向に連続して摺動筒7を包持する包持面を形成する」との技術事項(技術思想)であって,引用発明のクラン プ部材として,引用例2の締付鍔4,4’をそのまま代替させることを意味するものではない。そして,前記のとおり,引用発明に引用例2記載された上記技術事項を適用するに当たり,「コラムを締め付け保持する一対のクランプ部材としては,コラムを包持する包持面を備えた包持部よりも肉厚で突出し,ボルトが貫通する対向厚肉突出部を備えたものとする」という周知技術を考慮して,引用発明の摺動筒体62(インナーコラム)を締め付け保持するための構造として,一対のクランプ部材の互いに対向する面の背側の面を,摺動筒体62の外径寸法よりも広い間隔を有するフランジ17a及び17bに摺接させるとともに,包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部を備えた構成とし,当該対向肉厚突出部にタイロッド21(締付け用ボルト)を貫通する構成とすることも,当業者であれば容易に想到することができたものであるから,引用例2に記載された締付鍔4,4が細長い板状の形状であるからといって,これが引用発明に引用例2の記載事項を適用することの阻害事由となるものではない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (エ) 原告は,引用例2に記載されたトラ あるからといって,これが引用発明に引用例2の記載事項を適用することの阻害事由となるものではない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (エ) 原告は,引用例2に記載されたトラクターのハンドルは,摺動筒7と支持筒2とが入れ子構造になっているため,摺動伸縮し得る構造のハンドルであるが,入れ子構造により摺動伸縮し得る構造は,引用発明においても既に採用されているから,引用発明に引用例2に記載された構造を組み合わせる動機付けは存在しないと主張する。 しかしながら,入れ子構造により摺動伸縮し得る構造のステアリング車両用ステアリング装置としては,引用発明と引用例2に記載されたハンドルの伸縮装置だけでなく,本件発明1も共通して備える構成である。本件発明1と引用発明との相違点1は,クランプ部材における構成の相違であるから,引用発明と引用例2に記載されたハンドルの伸縮装置が,ともに入れ子構造により摺動伸縮し得る構造を採用しているからといって,クランプ部材の構成に関して,引用発明に引用例2に記載された前記技術事項を組み合わせる動機付けが存在しないということにはならない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (オ) 原告は,ステアリングホイールの上下方向のこじりに対する高い剛性という本件発明1の作用効果は,引用例1及び2に全く開示がないから,このような作用効果を得るために引用例2の構造を利用するということは,引用例1や引用例2に接した当業者が,容易に想到し得ることではないと主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件発明1は,インナーコラムを一対のクランプ部材で包持してクランプすることにより,ステアリングホイールが上下方向にこじられた場合であっても,インナーコラムが揺動するように動くことがなく,コラムの 本件発明1は,インナーコラムを一対のクランプ部材で包持してクランプすることにより,ステアリングホイールが上下方向にこじられた場合であっても,インナーコラムが揺動するように動くことがなく,コラムの剛性を著しく高くすることができるというものであるが(段落【0050】),包持面でコラムを包持するという構成自体は,引用例2だけでなく,周知例2ないし4にも記載されているものであり,クランプ部材の構成としては,本件発明1のみに特有のものではない。 したがって,当業者であれば,ステアリングホイールの上下方向のこじりに対する高い剛性という作用効果を念頭に措くことがなくても,適宜選択し得る構成の一つであるということができる。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (2) 相違点2についてアまず,証拠(甲20ないし22)によれば,本件出願に係る優先権主張日前当時,ステアリングコラムをクランプする一対のクランプ部材を締め付けるための機構として,一対のクランプ部材を貫通するボルト上に設けられ,互いに面接触した第1カム部材及び第2カム部材を相対回転させることによって一対のクランプ部材を変形させることは,周知の技術であったことが認められる(周知例15(甲20)「第2欄20行~第3欄13行,第2図,第4図」,周知例16(甲21)「6頁15行~12頁12行,第5図」,周知例17(甲22)「第5欄25行~第6欄40行第1図,第3図」)。 一般に,関連する技術分野に置換可能又は付加可能な技術手段があるときに,そ の技術手段の適用を試みることは,当業者が通常発揮すべき創作能力の範囲内の事項である。 そうすると,引用発明について,この周知技術を適用して,相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることであったとい ,当業者が通常発揮すべき創作能力の範囲内の事項である。 そうすると,引用発明について,この周知技術を適用して,相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることであったということができる。 イ原告の主張について原告は,相違点2に係る本件審決の判断は,締付力の調整が可能なカムロック機構の採用によって,鋳物という割れやすい素材でクランプ部材を構成することがより安全かつ容易にとなったという重要な作用効果を考慮していないとか,引用例3にはカムロック機構を採用する動機付けが認められないなどと主張する。 しかしながら,前記のとおり,クランプ機構としてカムロック機構を採用する構成は,周知の技術であるから,当業者において適宜選択し得る代替的な手段にすぎない。 したがって,クランプ機構としてカムロック機構を採用することに,格別の動機付けを要するものではないし,クランプ部材の材質を考慮して,クランプ力をあらかじめ設定することができるカムロック機構を採用することも,当業者であれば,容易に想到することができるものである。 よって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。 (3) 相違点4についてア一般的に,製品の製造に用いる材料の選択は,求められる強度や性質,部材の機能,製造の容易性やコストなどを考慮して,当業者が適宜に選択すべき事項であるところ,各部材間の寸法精度を確保する手間を省くため,複数の部材を一体構成とすることは,製造分野における一般的な課題として認識されており,その解決のため,複雑な形状の部材であっても一体形成が可能であることを特徴とする鋳造法を用いることは,種々の技術分野において,本件出願に係る優先権主張日前から広く行われている周知慣用の技術である(甲11)。 そして,前記3(2)イ 体形成が可能であることを特徴とする鋳造法を用いることは,種々の技術分野において,本件出願に係る優先権主張日前から広く行われている周知慣用の技術である(甲11)。 そして,前記3(2)イのとおり,引用例3(甲4)には,「自動車のステアリングコラムにおいて,アウターコラムに対し,昇降ブラケット等の周辺部材を従来溶接により接合していたのを,寸法精度確保の手間を省くために,アウターコラムに当該周辺部材を含めて全体を鋳物で一体形成する」との技術事項が記載されているから,引用例3に接した当業者であれば,引用発明について,引用例3記載の上記技術事項を考慮して,コラムケーシング61に対して中間支持片材75の2つの要素75a,75b(一対のクランプ部材)を溶接により接合することに代えて,コラムケーシング61とこれらの部材とを鋳物で一体形成し,また,取付け突縁部3(支持部)も鋳物で一体成形することとして,相違点4に係る本件発明1の構成とすることは,容易に想到し得ることである。 イ原告の主張について(ア) 原告は,鋳物は変形させると割れやすい素材と理解されており,弾性変形する部材に使用し得る素材であるとは,一般的には理解されていないから,このような鋳物の一体形成を,本件発明1のアウターコラムのような,弾性変形するクランプ部材を有する部材に適用することは想到し得えないなどと主張する。 しかしながら,「鋳物」とは,鋳造法によって製造された金属品であり,鋳造法により製造される金属であれば,その材質は問わず,全て「鋳物」という技術用語に包含されるものである(甲10,11)。そして,鋳造法によっても,アルミ合金鋳物等のように割れにくい材質も製造できるのであるから(甲13,14,乙11。 なお,本件明細書(段落【0029】)にも,アウターコラム4は,ア る(甲10,11)。そして,鋳造法によっても,アルミ合金鋳物等のように割れにくい材質も製造できるのであるから(甲13,14,乙11。 なお,本件明細書(段落【0029】)にも,アウターコラム4は,アルミ鋳物等で作ってよいとの記載がある。),「鋳物」は割れやすいという性質を一義的に導き出すことはできない。また,車両用ステアリングのクランプ部材における締め付け変形は,比較的小規模なものにとどまると考えられるから,「鋳物」の素材として選択される金属材の材質によっては,弾性変形するクランプ部材を有する部材に適用し,これを使用することもできるというべきである。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 なお,ステアリングホイール心金に関する甲30(特開昭62-178469号公報)には,「ダイカスト金属がその機械的性質として伸びが小さいことから,ステアリングシャフトへの装着後におけるリング部心金に衝撃力が作用した際,そのダイカスト金属を使用している部位で脆性破壊が生じ易く,その部位で割れるおそれがあった。」(2頁左上欄6行~10行)と,ステアリングホイールに関する甲31(特開平7-137639号公報)には,「鋳物材料は曲がるというよりも脆い傾向にあることが知られている。さらに,鋳物はよくひび割れするので,通常,鋳造工程はステアリングホイールの製造に適さないと考えられている。」(段落【0003】)と,自動車の車体フレーム構造に関する甲32(特開平11-208508号公報)には,「ダイキャスト成型部材は,高剛性な反面,靱性には乏しいので,これに押し出し成型部材を単純に溶接結合しただけであると,車両衝突時の衝撃荷重でダイキャスト成型部材が割れてしまい,アルミニウム材の優れた特質の一つである変形時の衝撃エネルギ吸収特性が損なわれ で,これに押し出し成型部材を単純に溶接結合しただけであると,車両衝突時の衝撃荷重でダイキャスト成型部材が割れてしまい,アルミニウム材の優れた特質の一つである変形時の衝撃エネルギ吸収特性が損なわれるという不都合がある。」(段落【0003】)とそれぞれ記載されている。 しかしながら,前記のとおり,鋳造法によっても,アルミ合金鋳物等のように割れにくい材質も製造できるのであるから,「鋳物」の素材として選択される金属材の材質によっては,弾性変形するクランプ部材を有する部材に適用し,これを使用することも,当業者であれば優に認識し得るところであり,甲30ないし32の上記各記載から,直ちに,弾性変形するクランプ部材に「鋳物」を適用することが困難であるということにはならない。 (イ) 原告は,引用発明の中間支持片75や取付け突縁部3のような,板状の複雑な形状をした部材を,溶接ではなく鋳物で形成することは,技術的に困難であるから,引用発明に引用例3の「鋳物による一体形成」という構成を組み合わせることには,阻害事由があると主張する。 しかしながら,前記のとおり,複雑な形状の部材であっても一体形成が可能であることを特徴とする鋳造法を用いることは,種々の技術分野において,本件出願に 係る優先権主張日前から広く行われている周知慣用の技術である。そして,前記のとおり,引用例3にも,板状の形状である昇降ブラケット8a,取付ブラケット9a,シリンダブラケット10aを一体に形成することが記載されているから,引用発明の中間支持片75や取付け突縁部3を鋳物でコラムケーシングと一体に形成することも,技術的に困難とはいえず,引用発明に引用例3の「鋳物による一体形成」という構成を組み合わせることに阻害事由があるということはできない。 したがって,原告の上記主張は, シングと一体に形成することも,技術的に困難とはいえず,引用発明に引用例3の「鋳物による一体形成」という構成を組み合わせることに阻害事由があるということはできない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (ウ) 原告は,本件審決の判断は,引用例3から,「寸法精度の確保の手間を省くためにアウターコラム周辺部材を鋳物一体形成する」という発明思想のみを,事後分析的・後知恵的に組み合わせたもので,誤りである旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,各部材間の寸法精度を確保する手間を省くため,複数の部材を一体構成とすることは,製造分野における一般的な課題として認識されており,その解決のため,複雑な形状の部材であっても一体形成が可能であることを特徴とする鋳造法を用いることは,周知慣用の技術であるから,引用発明について,引用例3に記載された「自動車のステアリングコラムにおいて,アウターコラムに対し,昇降ブラケット等の周辺部材を従来溶接により接合していたのを,寸法精度確保の手間を省くために,アウターコラムに当該周辺部材を含めて全体を鋳物で一体形成する」との技術事項を適用することは,当業者であれば,容易に想到し得るというべきであって,この点に関する本件審決の判断が事後分析的・後知恵的なものであるということはできない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (4) 相違点3及び4による作用効果の看過について原告は,相違点3に係る本件審決の判断は,チルト回転機構の軸を形成する支持部をアウターコラムと一体形成したことにより,引用発明に比して,チルト回転機構の回転軸の位置を精密に決めることがはるかに容易になるという作用効果を看過したものである旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,チルト回動機構が形成されて 用発明に比して,チルト回転機構の回転軸の位置を精密に決めることがはるかに容易になるという作用効果を看過したものである旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,チルト回動機構が形成されている支持部をアウターコラムに鋳物で一体形成することは,当業者が容易に想到し得ることであり,「チルト回動の中心点を精密に調整できる」という作用効果は,支持部をアウターコラムに鋳物で一体形成した場合の構成から当然に得られる作用効果であるにすぎない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 なお,電動パワーステアリング装置に関する引用例4(甲5)には,「ステアリングコラム1は,アッパブラケット3を介して車体側メンバ5に固定された鋼管製のアッパコラム7と,ロアブラケット9を介して車体側メンバ5に固定されたアルミ合金鋳造品の減速ギヤカバー12及び減速ギヤボックス11とから構成されている。」(段落【0009】),別紙5の「図2及び3に示したように,ロアブラケット9は,減速ギヤカバー12のチルトピボット部31を挟持するべく下方が開いたほぼコ字形状となっており,軸部材たるフランジボルト33とフランジナット37とによって減速ギヤカバー12と回動自在に連結されている。」(段落【0011】)との記載があり,減速カバー12と回転支持部であるチルトピボット部31とがアルミ合金鋳造品として一体に形成されることが示されているところ,これらの記載は,実質的には減速カバー12等によって構成されるステアリングコラム1と回動支持部であるチルトピボット部31とが一体に形成されることを示すものであるから,原告が主張する上記のような作用効果は,引用例4に記載された構成からも同様に生ずるものであって,これを格別顕著な作用効果であるということはできない。 (5) 小括 れることを示すものであるから,原告が主張する上記のような作用効果は,引用例4に記載された構成からも同様に生ずるものであって,これを格別顕著な作用効果であるということはできない。 (5) 小括以上によれば,本件発明1は,引用発明,引用例2及び3の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,取消事由1は理由がない。 5 取消事由2(本件発明2ないし6の容易想到性に係る判断の誤り)について(1) 本件発明2について相違点1-2に係る本件発明2の構成は,相違点1に係る本件発明1の「包持部 よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部」との構成から,「包持部よりも肉厚で突出した」との事項を外したものであり,相違点1-2は,実質的に相違点1に含まれるものである。 そうすると,本件発明2と引用発明との相違点は,実質的に相違点1ないし4と同じであるから,本件発明2は,本件発明1と同様に,引用発明,引用例2及び3の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 本件発明3について相違点1-3に係る本件発明3の構成は,相違点1に係る本件発明1の「包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部」との構成から,「包持部よりも肉厚で突出した」との事項を外し,かつ,相違点1に係る本件発明1の「一対のクランプ部材がアウターコラムに一体に形成される」との構成及び「締付け用のボルトが対向厚肉突出部を貫通している」との構成を含まないものであるから,相違点1-3は,実質的に相違点1に含まれるものである。 そうすると,本件発明3と引用発明との相違点は,実質的に相違点1,3及び4と同じであるから,本件発明3は,本件発明1と同様に,引用発明,引用例2及び3の記載事項及び周知技術に基づいて当業者 ある。 そうすると,本件発明3と引用発明との相違点は,実質的に相違点1,3及び4と同じであるから,本件発明3は,本件発明1と同様に,引用発明,引用例2及び3の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 本件発明4について相違点1-4に係る本件発明4の構成は,相違点1に係る本件発明1の「軸方向に連続してインナーコラムを包持する包持面」との構成から「軸方向に連続して」との事項を,「包持部よりも肉厚で突出した対向厚肉突出部」との構成から「包持部よりも肉厚で突出した」との事項をそれぞれ外すとともに,本件発明1の「一対のクランプ部材がアウターコラムに一体に形成される」との構成及び「締付け用のボルトが対向厚肉突出部を貫通している」との構成を含まないものであるから,相違点1-4は,実質的に相違点1に含まれるものである。 また,相違点5は,クランプ部材のインナーコラム外周面に押圧接触する面が,保持面か包持面かの文言上の相違であって,実質的に相違点1に含まれるものである。 そうすると,本件発明4と引用発明との相違点は,実質的に相違点1,3及び4と同じであるから,本件発明4は,本件発明1と同様に,引用発明,引用例2及び3の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 本件発明5について相違点6のうち,本件発明5では,クランプ部材の包持面はインナーコラム外周面に周方向で断続的に押圧接触しているのに対し,引用発明では,クランプ部材の保持面がインナーコラム外周面に周方向で断続的に押圧接触している点についてみると,クランプ部材をインナーコラム外周面に周方向で連続的に押圧接触させるか,断続的に押圧接触させるかという選択は,要求される寸法精度や剛性等を勘案し 面に周方向で断続的に押圧接触している点についてみると,クランプ部材をインナーコラム外周面に周方向で連続的に押圧接触させるか,断続的に押圧接触させるかという選択は,要求される寸法精度や剛性等を勘案して当業者が設計上適宜なし得る事項であるから,クランプ部材をインナーコラム外周面に周方向で断続的に押圧接触させるという本件発明1の構成は,当業者であれば,容易に想到することができたものということができる。 また,相違点6のうち,本件発明1の上記構成に対し,引用発明では,あくまで保持面であって包持面ではない点は,実質的に相違点1に含まれるものである。 そして,相違点1,3及び4に係る本件発明1の構成が容易に想到することができるものであることは,前記4のとおりであるから,本件発明5も,本件発明1と同様に,引用発明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 本件発明6について相違点1,3及び4に係る構成が当業者であれば容易に想到し得るものであることは,前記4で説示したとおりである。 また,引用例3には,アルミ鋳物又はマグネシウム系鋳物が記載されているから, 引用発明において相違点7に係る本件発明6の構成とすることは,引用例3の記載事項を参酌することにより当業者が容易になし得たことである。 したがって,本件発明6も,本件発明1と同様に,引用発明,引用例2及び3の記載事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6) 小活以上によれば,取消事由2も理由はない。 6 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし も理由はない。 6 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官富田善範 裁判官大鷹一郎 裁判官齋藤巌 別紙1本件明細書の図面(甲24の1) 図1: 図2: 図3: 図4: 図5: 図6: 別紙2引用例(甲1)の図面 第1図: 第2図: 第3図: 第10図: 第11a図,第11図: 第12図: 別紙3引用例2(甲3)の図面 第1図: 第2図: 第3図: 別紙4引用例3(甲4)の図面 図1: 図4: 図10 図11 別紙5引用例4(甲5)の図面 図1: 図2: 図3 別紙6周知例2(甲7)の図面 第2図: 別紙7周知例3(甲8)の図面 第1図: 図2: 別紙8周知例4(甲9)の図面 図2 図8:
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