【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被上告人B1に対する損害金請求部分につき本件を東京高等裁判所に差 し戻す。 被上告人B1のその余の控訴及び被上告人B2興業株式会社の控訴
主文 原判決を破棄する。 被上告人B1に対する損害金請求部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。 被上告人B1のその余の控訴及び被上告人B2興業株式会社の控訴を棄却する。 前項の部分に関する原審及び当審の訴訟費用は被上告人らの負担とする。 理由 上告代理人吉村駿一の上告理由について一原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。 1 一審判決添付物件目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)は、もとDの所有であり、その地上には同人の子Eが建物(以下「旧建物」という。)を建築所有していたところ、昭和四五年四月二八日D及びEは、株式会社Fが株式会社G銀行に対して負担する債務を担保するため、それぞれ本件土地及び旧建物を共同担保の目的として元本極度額を三〇〇万円とする順位一番の本件根抵当権を設定し、同年五月一三日その旨の登記を経由した。 2 Dは、昭和四五年六月一四日死亡し、相続によりEが本件土地の所有権を取得し、同年一〇月二一日その旨の登記を経由した後、同四九年三月二三日本件根抵当権の被担保債権の範囲を変更するとともに元本極度額を一五〇〇万円に増額し、さらに同五〇年一月二四日元本極度額を二四〇〇万円に増額して、それぞれその旨の登記を経由した。 3 Eは、昭和五〇年六月旧建物を取壊し、旧建物とは別に同四五年に本件土地上に建築していた平家建建物を増築して二階建事務所兼倉庫とした後、本件土地につき同五二年四月二〇日に二番根抵当権を、同五三年四月六日に三番根抵当権を、- 1 -同年九月三〇日に四番抵当権をそれぞれ設定してその旨の登記を経由した。 4 上告人は、本件土地の競売手続において、昭和五七年一〇月一日競落許可決定を得、同年一一月一五日代金を納入して本 - 1 -同年九月三〇日に四番抵当権をそれぞれ設定してその旨の登記を経由した。 4 上告人は、本件土地の競売手続において、昭和五七年一〇月一日競落許可決定を得、同年一一月一五日代金を納入して本件土地の所有権を取得した。 5 右競売手続中の昭和五四年一〇月二九日右事務所兼倉庫建物の一部が焼失したため、Eは、右建物残部を取壊して同五五年一月一〇日本件土地を被上告人B1に賃貸し、同被上告人は、同年六月三〇日前記物件目録(二)記載の建物(以下「本件建物」という。)を建築して本件土地を占有し、被上告人B2興業株式会社は、被上告人B1から本件建物の一部につき利用権の設定を受けて、その敷地部分を占有している。 二原審は、右事実関係のもとにおいて、上告人の被上告人B1に対する本件土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求及び本件土地の不法占有に基づく損害金請求並びに被上告人B2興業株式会社に対する本件土地所有権に基づく建物退去土地明渡請求につき、1 土地の一番根抵当権設定当時土地と地上建物が同一人の所有でなかった以上、土地と地上建物を同一人が所有するに至って後に一番根抵当権の極度額が増額され、その後に土地が競売されたとしても、法定地上権は成立しないが、2 土地の一番根抵当権設定当時土地と地上建物が同一人の所有でなかったとしても、土地と地上建物を同一人が所有するに至って後に土地に二番抵当権が設定され、二番抵当権を標準とすると法定地上権成立の要件が充足されている場合には、右一番根抵当権に基づいて土地が競売されたときであっても法定地上権が成立するものと解すべきであるから、上告人の本件土地競落とともに本件土地に法定地上権が成立したと判断して、上告人の被上告人らに対する明渡請求全部と被上告人B1に対する損害金請求の一部を認容した一審判決を取消し、上告人の被 であるから、上告人の本件土地競落とともに本件土地に法定地上権が成立したと判断して、上告人の被上告人らに対する明渡請求全部と被上告人B1に対する損害金請求の一部を認容した一審判決を取消し、上告人の被上告人らに対する請求をいずれも棄却した。 三しかしながら、右1の判断は正当であるが、右2の判断は首肯することがで- 2 -きない。その理由は次のとおりである。 すなわち、土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。けだし、民法三八八条は、同一人の所有に属する土地及びその地上建物のいずれか又は双方に設定された抵当権が実行され、土地と建物の所有者を異にするに至った場合、土地について建物のための用益権がないことにより建物の維持存続が不可能となることによる社会経済上の損失を防止するため、地上建物のために地上権が設定されたものとみなすことにより地上建物の存続を図ろうとするものであるが、土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていない場合には、一番抵当権者は、法定地上権の負担のないものとして、土地の担保価値を把握するのであるから、後に土地と地上建物が同一人に帰属し、後順位抵当権が設定されたことによって法定地上権が成立するものとすると、一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるからである。なお、原判決引用の判例(大審院昭和一三年(オ)第二一八七号同一四年七月二六日判決・民集一八巻七 て法定地上権が成立するものとすると、一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるからである。なお、原判決引用の判例(大審院昭和一三年(オ)第二一八七号同一四年七月二六日判決・民集一八巻七七二頁、最高裁昭和五三年(オ)第五三三号同年九月二九日第二小法廷判決・民集三二巻六号一二一〇頁)は、いずれも建物について設定された抵当権が実行された場合に、建物競落人が法定地上権を取得することを認めたものであり、建物についてはこのように解したとしても一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることにはならないから、土地の場合をこれと同視することはできない。 これを本件についてみると、本件根抵当権設定当時においては、本件土地と旧建物は所有者を異にしていたのであるから、いずれにしても本件土地の抵当権の実行- 3 -により上告人が競落した本件土地について法定地上権は成立しないものというべきである。したがって、本件土地に法定地上権が成立するとした原判決には、民法三八八条の解釈適用を誤った違法があり、被上告人らにおいて他に上告人に対抗し得る土地の用益権の主張立証をしていない本件において、この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、この点に関する論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。 四以上によれば、上告人の請求のうち、被上告人B1に対し建物収去土地明渡を求める部分及び被上告人B2興業株式会社に対し建物退去土地明渡を求める部分はいずれも理由があり、これを認容した一審判決は正当であるから、右部分に関する被上告人らの控訴をいずれも棄却すべきであり、被上告人B1に対し損害金の支払いを求める部分については、さらに審理をつくさせる必要があるので、これを原審に差し戻すべきである。よって、民訴法四〇七条一項、四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条 告人B1に対し損害金の支払いを求める部分については、さらに審理をつくさせる必要があるので、これを原審に差し戻すべきである。よって、民訴法四〇七条一項、四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官島谷六郎裁判官藤島昭裁判官香川保一裁判官奧野久之裁判官草場良八- 4 -
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