主文 1 本件控訴を棄却する。 2 本件附帯控訴に基づき原判決を以下のとおり変更する。 (1) 原判決主文一,3,4の被控訴人の各敗訴部分を取り消す。 (2) 控訴人の請求のうち,訴訟承継前の被控訴人が控訴人に対して平成6年2月25日付けでした平成3年2月1日から平成4年1月31日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額3億6027万9500円を超える部分の取消を求める部分及び平成3年2月1日から平成4年1月31日までの事業年度の法人臨時特別税に係る更正のうち法人臨時特別税額857万3500円を超える部分の取消を求める部分をいずれも棄却する。 3 控訴費用,附帯控訴費用はいずれも控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判1控訴人(1) 原判決中,控訴人の敗訴部分を取り消す。 (2) 訴訟承継前の被控訴人が控訴人に対して平成6年2月25日付けでした法人税に係る次の各処分(ただし,イ及びエは原判決により一部取消後のもの)を取り消す。 ア昭和63年2月1日から平成元年1月3日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額4089万0700円を超える部分及び重加算税賦課決定イ平成元年2月1日から平成2年1月31日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額1億2136万7900円を超える部分及び重加算税賦課決定ウ平成2年2月1日から平成3年1月31日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額1億2115万7800円を超える部分及び重加算税賦課決定エ平成3年2月1日から平成4年1月31日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額3億6027万9500円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額6000円を超える部分オ平成4年2月1日から平成5年1月31日までの事業年度の法人税に係 の法人税に係る更正のうち法人税額3億6027万9500円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額6000円を超える部分オ平成4年2月1日から平成5年1月31日までの事業年度の法人税に係る更正のうち法人税額1億5797万6700円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額2万2000円を超える部分(3) 訴訟承継前の被控訴人が控訴人に対して平成6年2月25日付でした平成3年2月1日から平成4年1月31日までの事業年度の法人臨時特別税に係る更正(ただし,原判決による一部取消後のもの)のうち法人臨時特別税額857万3500円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額1000円を超える部分を取り消す。 (4) 訴訟承継前の被控訴人が控訴人に対して平成6年2月25日付でした平成4年2月1日から平成5年1月31日までの事業年度の法人臨時特別税に係る更正(ただし,原判決による一部取消後のもの)のうち法人特別税額390万6000円を超える部分及び重加算税賦課決定のうち重加算税額1000円を超える部分を取り消す。 (5) 訴訟承継前の被控訴人が控訴人に対して平成6年2月25日付けでした消費税に係る次の各処分(ただし,アは原判決による一部取消後のもの)を取り消す。 ア平成元年2月1日から平成2年1月31日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額1万2000円を超える部分イ平成2年2月1日から平成3年1月31日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額6000円を超える部分ウ平成3年2月1日から平成4年1月31日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額1万円を超える部分エ平成4年2月1日から平成5年1月31日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算 平成4年1月31日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額1万円を超える部分エ平成4年2月1日から平成5年1月31日までの課税期間の消費税に係る重加算税賦課決定のうち重加算税額75万2000円を超える部分(6) 訴訟費用は第1,2審を通じ被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文同旨。 第2 事案の概要(以下,承継前の被控訴人も含めて「被控訴人」という。)1(1)ア本件は,名古屋市内でパチンコ店及びゲームセンターを経営している青色申告法人である控訴人が,被控訴人のした①平成元年1月期から平成5年1月期までの法人税,②平成4年1月期の法人臨時特別税,③平成5年1月期の法人特別税,④平成2年1月期から平成5年1月期までの消費税に関する各更正,各重加算税賦課決定の一部取消を求めた(ただし,消費税については重加算税賦課決定のみについて。)事案である。 イ原審では以下の4点が争点であった。 (ア) 控訴人が平成2年1月期に赤池ゲームの売上除外をしたか(争点①)。 (イ) 被控訴人が「たとえ,同期に赤池ゲームの売上除外がなくても,『アキューリース明和取り分』の売上除外が存在した。」旨主張して,更正理由を差し替えることが許されるか(争点②)。 (ウ) 切本件売上除外等にかかる売上金がaに横領されたものであっても,所得に変動を来さないか(争点③)。 (エ) 本件各重加算税賦課決定に違法はないか(争点④)(2) 原判決は、ア争点①について「赤池ゲームの売上は赤池大都会の売上の一部として申告がなされており,売上除外がなされているとはいえない。」旨判示し,イ争点②について「青色申告に対する更正処分の取消訴訟おいても,少なくとも被処分者に格別の不利益を与えない場合には,処分理由の差し替えが許されるべきである。被控訴人の『アキュー い。」旨判示し,イ争点②について「青色申告に対する更正処分の取消訴訟おいても,少なくとも被処分者に格別の不利益を与えない場合には,処分理由の差し替えが許されるべきである。被控訴人の『アキューリース明和取り分』における平成2年1月期の売上除外は,控訴人が本件訴訟で提出した書証から判明したものであり,控訴人も同事実を認めているから,被控訴人に追加主張の提出を許しても,格別の不利益を与えることにはならず,処分理由の差し替えが許されるべきである。」旨判示し,ウ争点③について「ア本件売上除外等にかかる売上金のすべてがaにより横領されたとは認めがたい。イ仮に,これらが横領されたものであっても,控訴人は損害額に相当する損害賠償請求権を取得しているので所得に変動はなく,債務者の無資力その他の事由から,同請求権が実現不可能であることが明白であるといえない限り,損金の発生を認めることはできない。ところで,aの不正経理は,本件各事業年度経過後の平成5年10月に行われた税務調査の際発覚したものであるうえ,控訴人は発覚後3年を経過した平成8年10月12日になって横領による損害の賠償を求める別件民事訴訟を提起したに過ぎない。そして,aは,平成9年7月17日に合計約1120万円の着服横領による刑事裁判で実刑判決を受けたものである。そうすると,aに対する損害賠償請求権が取得当初から明白に実現不能の状態にあったとか,本件各事業年度間に実現不能が明白になったとは認められない。 ウ以上によれば,仮に本件売上除外等に係る売上金がすべてaにより横領されたものであっても,本件各事業年度に横領による損失に対応した損害賠償請求権を益金に計上すべきであるから,本件各事業年度の所得金額に変動は認められず,本件各更正は適法というべきである。」旨判示し,エ争点④について「国 件各事業年度に横領による損失に対応した損害賠償請求権を益金に計上すべきであるから,本件各事業年度の所得金額に変動は認められず,本件各更正は適法というべきである。」旨判示し,エ争点④について「国税通則法68条に規定する重加算税は納税義務違反が課税要件事実の隠ぺい又は仮装という不正な方法により行われた場合に,違反者対して課される行政上の措置であり,故意に納税義務違反を犯したことに対する制裁としての刑罰ではない。したがって,従業員を自己の手足として経済活動を行っている法人においては,隠ぺい・仮装行為が代表者の知らない間に従業員により行われた場合であっても,原則として,法人自身がこれらの行為をおこなったものとして重加算税を賦課することができる。aは,決算や確定申告に関わる帳簿・資料の作成を任された主要な経理職員であって,その隠ぺい・仮装行為は長期間にわたり行われ,これによる本件売上除外等の額も多額に上り,容易に発見できるものであったにもかかわらず,控訴人はaに対して経理処理を任せきり,何らの管理・監督もしないまま放置してきたのであるから,控訴人に対して重加算税を賦課することは適法である。」旨判示し,オさらに「①平成2年1月期の法人税に係る本件更正は赤池ゲーム分として『アキューリース明和取り分』の売上除外金額を超えて所得金額に加算している限度で違法である。そうすると,同期の所得金額が159万3301円減少し,これに応じて同期の法人税額や重加算税額がいずれも一部違法になるばかりでなく,同期に納付を要する消費税額やこれに対する重加算税も一部違法となる。②このように平成2年1月期の所得金額が減少して平成3年1月期の未納事業税が減少するため同期の所得金額が増加し,その結果,平成4年1月期の未納事業税額が増加することとなり,同期の所得金額の減少を 。②このように平成2年1月期の所得金額が減少して平成3年1月期の未納事業税が減少するため同期の所得金額が増加し,その結果,平成4年1月期の未納事業税額が増加することとなり,同期の所得金額の減少を招き,同期の法人税額や法人臨時特別税が減少することになる。」旨判示し,平成2年1月期に関しては収入除外の過大額につき法人税・消費税の各更正処分,重加算税の各一部取消を行うとともに,平成4年1月期の法人税及び法人臨時特別税について一部取消をした。 (3) 控訴人が原判決を不服として本件控訴に及び,被控訴人も本件附帯控訴に及んだ。 2 前提事実,争点等は原判決の事実及び理由,第二記載のとおりであるからこれを引用する。 3 控訴人の控訴理由(1) 原判決が,aが捜査段階で自白している1億9589万4515円の横領さえ認めず,横領金額を不明としたことが不当であること。 ア(ア) 原判決は「①aの前任者には現金を持ち出している旨の風評があり,aが経理事務一切を引き継いだ平成2年1月時点で帳簿上の現金額と現金残高との間には5ないし6000万円の齟齬があったこと,②aは平成4年11月2日ごろ,現金管理をbに引き継いでおり,その後は現金持ち出しの機会がなかったと考えられるのに,同月5日から18日までの間に合計金188万8500円の使途不明金が発生していることなどを理由に,aが売上金の一部を横領したことが明らかではあるものの,その全額を横領したものとまで推認することは困難である。」旨判示する。 (イ) しかし,民事裁判で使途不明金全額(2億9105万7495円)の支払いを認める判決が出ているほか,a自身,警察・検察の取り調べにおいて1億9589万4515円を横領したことを自白しており,自白に至る経緯や供述内容には不自然・不合理な点がなく,十分信用できるものである を認める判決が出ているほか,a自身,警察・検察の取り調べにおいて1億9589万4515円を横領したことを自白しており,自白に至る経緯や供述内容には不自然・不合理な点がなく,十分信用できるものであるから,少なくともaが捜査段階で自白している1億9589万4515円について横領していることが明らかである。 (ウ) また,平成4年11月2日以降に発生した188万8500円の使途不明金についても,証人bの証言等からaがこのころ帳簿を管理していたことが明らかであり,aの手により帳簿の改ざん等がなされ,bに帳簿が引き継がれた平成5年2月16日以降には使途不明金が発生していない点等からすれば,これらをaが横領したことが明らかであり,原判決の前記ア(ア)②の判示は誤りである。 (エ) 控訴人には,昭和62年2月以降平成2年5月までの間に1億1651万5115円の使途不明金が存在する。aの捜査段階における自白調書では自らが横領をするまで4000万円の使途不明金しかなかったというのであるから,7000万円を超える差額が発生しており,この間横領できたのはaのみであるから,同金額もaが横領したとみて間違いがない。bの証言からも明らかなとおり,aはcが控訴人を退職するに当たり上司から不足金を問われて極めて少額の不明金しか報告していない。仮に,同時点でaが横領に全く関与していなかったのであればcを庇う必要はなく,a自身も横領していたため,このような言動に出たと見るのが相当である。そうすると,少なくとも,cが退社した平成2年2月から同年5月までの使途不明金1228万4585円はaが横領したものである。 (オ) 以上(イ)ないし(エ)によると,本件各事業年度中にaが少なくとも2億1006万7600円の横領をしたことが明らかである。 イ原判決は上記のとおり,横領金額が不 円はaが横領したものである。 (オ) 以上(イ)ないし(エ)によると,本件各事業年度中にaが少なくとも2億1006万7600円の横領をしたことが明らかである。 イ原判決は上記のとおり,横領金額が不明だとするが,控訴人は原審で民事判決書(甲4)を提出していたのであり,通常の実務の取り扱いからみて,これと異なる認定がなされることなどあり得ないものと考えていた。仮に,民事判決と異なる認定がなされるのなら,刑事記録の提出を促す等釈明権を行使すべきであり,釈明権を行使せず横領金額を不明としたことは違法である。 (2) 仮にaの横領が本件各事業年度の損金に当たらない場合でも,横領金額が明示されるべきことア原判決は,aが一定金額を横領した可能性があると認めながら,当該年度に損金処理することを認めないとの理由から具体的な横領金額を判示しなかった。 イしかし,税務上,横領の場合には,その年度はともかく損金扱いが認められるのに対し,使途不明金のままでは損金処理が認められず,納税者にとって,それが単なる使途不明金なのか,損金処理の許される横領金額であるのか,その差は重大である。 ウ原処分で使途不明金とされ,本件訴訟においても,被控訴人が横領の事実やその金額を争っている以上,本件訴訟後,控訴人が損金処理をしょうとしても,税務当局がこれを認めないことが明らかである。そして,その段階になって行政訴訟を再提起するよう要求することは国民の負担を考えない非常識極まりない対応である。 エそうすると,理由中の判断であっても,横領の事実さらには金額について判示されることが必要である。 (3) aの横領金額について,いずれも本件各事業年度において損金として扱われるべきことア原判決はaの横領のため損害を受けても,それと同時に損害賠償請求権を取得するので所得金額に増減 要である。 (3) aの横領金額について,いずれも本件各事業年度において損金として扱われるべきことア原判決はaの横領のため損害を受けても,それと同時に損害賠償請求権を取得するので所得金額に増減を生じず,損害賠償請求権が実現不可能となった時点で初めて損金とされるべきであるとの考えをとっている。 イしかし,このような考えは,不法行為等の被害者が損害発生により直ちに損害賠償請求権の存在を認識できるとは限らない点や,仮にこれを認識していてもその存否や範囲に争いのあることが多く実際には権利行使できない点,さらには,加害者は概ね無資力であって損害賠償請求権が履行されることは稀である点等を無視した,実体とかけ離れた取り扱いであるといわざるを得ない。 ウそのため,国税庁長官は,昭和55年5月15日付通達(法基通2-1-37)において「他の者から支払いを受ける損害賠償金(債務の履行遅滞を含む。)の額は,その支払いを受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが,法人がその損害賠償金の額について実際に支払いを受けた日の属する事業年度の益金に算入している場合には,これを認める。(注)当該損害賠償金の請求の基因となった損害にかかる損失の額については,保険金又は共済金により補填される部分の金額を除き,その損害の発生した日が属する事業年度の損金の額に算入することができる。」こととした(以下「基本通達」という。)。 エ基本通達では「他の者」と限定し,会社の役員及び幹部職員が不法行為者である場合にはケースバイケースで判断することとされているが,会社役員等の場合には責任の有無,損害賠償能力,支払い方法等について複雑な問題が含まれる場合が多いことに配慮したものであって,役員や幹部職員とはいえない純然たる従業員が「他の者」に該当することは ,会社役員等の場合には責任の有無,損害賠償能力,支払い方法等について複雑な問題が含まれる場合が多いことに配慮したものであって,役員や幹部職員とはいえない純然たる従業員が「他の者」に該当することは明らかである。 オ aは単なる事務員に過ぎず,上記「他の者」に他ならないから,ウの通達が該当する場合であり,控訴人がaに対する損害賠償金について現実に支払いを受けた時点で収益計上することにしている以上,このような取り扱いは税務上是認された扱いであるから,損害賠償の基因となった本件横領行為に係る損失について,その損害が発生した時点で損金算入することに何ら問題はない。 カしたがって,本件各事業年度で損金処理を認めなかった原判決には誤りがある。 (4) 控訴人に対し重加算税の賦課を認めたことが誤りであることア原判決は「従業員を自己の手足として経済活動を行っている法人においては,隠ぺい・仮装行為が代表者の知らない間に従業員によって行われた場合であっても,原則として法人自身がこれらの行為を行ったものとして重加算税を賦課することができる。」旨判示したうえ,「aは決算や確定申告に関わる帳簿・資料の作成を任されていた主要な経理職員であった。」旨認定している。 イしかし,隠ぺい・仮装が重加算税の要件とされている点からすると,少なくとも,行為者が行為時に法人にとって,国税の課税標準等・税額等の計算の基礎となるべき事項であることを認識し,自己の隠ぺい.仮装行為によって,法人の負担すべき国税の額を減少させることになるとの認識を持っている場合,即ち,隠ぺい・仮装行為が代表者の行為と同一視できる場合でなければならない。 ウ aの控訴人内での役割は,集金された現金とその種別を記載した金種票を照合して上司に報告し,その指示のもと銀行に預託し,その結果を帳簿に記載することで の行為と同一視できる場合でなければならない。 ウ aの控訴人内での役割は,集金された現金とその種別を記載した金種票を照合して上司に報告し,その指示のもと銀行に預託し,その結果を帳簿に記載することであり,組織上何らの決裁権限もなく,補助職員として機械的な伝票・入出金事務等を行っていたに過ぎない。したがって,原判決がaを主要な経理職員としたことには重大な事実誤認がある。 エ(ア) ところで,被控訴人は「aが多額の現金を事実上保管して,出納簿等の帳簿を作成し,決済の原資料を作成していたことから,aが控訴人の現金管理や,帳簿の作成などの経理処理において,極めて重要な職務を果たしており,控訴人の主要な経理職員である。」旨主張する。 (イ) しかし,多額の現金を事実上保管し,これを記帳する作業は銀行等の多数の事務職員が日常的に行っているところであり,このような事務を担当しているからといって,主要な経理職員であるなどとは到底いえない。 (ウ) そして,経理上の権限がe課長にあり,aが一介の事務職員に過ぎないことは証拠上明らかであり,被控訴人も認めているところである。控訴人の経営者と特段の親族関係もなく,上司の指示に従って事務手続きを処理するのみのaの行為を控訴人の経理処理・帳簿処理そのものであるとする被控訴人の主張は暴論といわざるを得ない。 オ(ア) aが帳簿の改ざん等に及んだのは,横領という犯罪行為を行いこれを隠ぺいするためであって,これを納税者である控訴人が隠ぺい・仮装行為に及んだと評価することが相当でないことはいうまでもない。 (イ) 実質的にみても,横領者が当該納税者本人の場合には兎も角,使用人の横領のため被害を被っている納税者に対し,さらに,重加算税を課してその被害を拡大することが社会通念に反する著しく不当な結論であることは明らかであって,国 者が当該納税者本人の場合には兎も角,使用人の横領のため被害を被っている納税者に対し,さらに,重加算税を課してその被害を拡大することが社会通念に反する著しく不当な結論であることは明らかであって,国民の納税感情を著しく阻害するものである。 (ウ)a 被控訴人は「①納税者が法人の場合には自己の手足として従業員を使用して経済的利益を享受している以上,これに伴う不利益も甘受すべきである。②このような場合,重加算税を賦課しなければまじめな納税者の不公平感を助長する。」旨主張する。 b しかし,本件は,不法行為等のように被害者の救済が問題となる事案ではなく,重加算税という行政罰が問題となっているのであるから,上記①のような立論をして重加算税を課することが衡平・妥当とはいえない。 c また,上記②の主張についても客観的資料に基づかない単なる決めつけであるというほかない。 カ(ア) そもそも,課税実務において,一事務員が横領行為に及んだ場合に重加算税まで賦課される扱いがなされることは通常ありえない。 (イ) 本件で重加算勢税が賦課されたのは、原処分の段階ではaの横領が明らかになっておらず,使途不明金として処理されたことにある。仮に,税務調査の段階で正しく事実関係が把握され,横領の事実が認定されていたなら,他の税務実務との均衡上も,控訴人に対して重加算税が賦課されることはなかったはずである。 (ウ) 現時点ではaの横領が明らかになっているのであるから,重加算税の賦課決定は取り消されるべきである。 4 被控訴人の附帯控訴の理由(1) 原判決は,控訴人の平成4年1月期の所得金額を認定するに当たり,未納事業税として15万7000円を認め,これを同期の損金として所得金額から控除したうえ,法人税及び法人臨時特別税の一部取消をした。しかし,以下のとおり,未納事業税の認 所得金額を認定するに当たり,未納事業税として15万7000円を認め,これを同期の損金として所得金額から控除したうえ,法人税及び法人臨時特別税の一部取消をした。しかし,以下のとおり,未納事業税の認定には誤りがあるから,これを前提とした原判決の判断部分は取り消されなければならない。 (2)ア法人税法で各事業年度の損金として認められるのは原則として,当該期末までに債務の確定しているものに限られる。 イ事業税については,申告に伴うそれは申告時に,更正または決定があった場合には当該時点で債務が確定することになる。 ウもっとも,課税実務においては,事業税の額は原則として法人税法上の所得金額を基に計算されることになっているから,連続する複数の事業年度の法人税の更正等がなされる場合には,例外的に,更正等に伴い納付すべき事業税額を見積もり,これを損金に算入する扱いがされている。 (3)ア本件では,平成元年1月期から平成5年1月期までの連続した5期分の法人税の更正がなされたことから,平成2年1月期から平成5年1月期の各期において,直前期の所得金額を基に見積もった各期の未納事業税の金額を更正の際に認容しているのである。 イところが,原判決は,前記1(2)オのとおり,平成2年1月期の法人税の一部取消により翌期の未納事業税が減少するとして,平成3年1月期に更正処分を超える所得金額を認定したうえ,これを基に平成4年1月期の未納事業税が増加し,その結果,同期の所得金額が減少するとしている。 ウしかし,原判決が認定した平成3年1月期の所得金額は同期の更正処分が適法であるとの根拠を示すものであるに過ぎず,更正処分の所得金額そのものを変動させるものではない。したがって,平成4年1月期の未納事業税額を増加させることもあり得ない。 エそうすると,平成4年1月期の所 あるとの根拠を示すものであるに過ぎず,更正処分の所得金額そのものを変動させるものではない。したがって,平成4年1月期の未納事業税額を増加させることもあり得ない。 エそうすると,平成4年1月期の所得金額は更正処分どおりで変動はなく,更正処分にかかる法人税や法人臨時特別税にも誤りはないので,これらを一部取り消した原判決には明らかな誤りがあるから是正されなければならない。 第3 当裁判所の判断 1 平成2年1月期に赤池ゲームの収入除外が認められない点,本件訴訟の経緯等に照らすと処分理由の差替えが認められるべきである点等は原判決の事実及び理由,第三,一,二(59頁3行目冒頭から同66頁7行目文末まで)に記載されているとおりであるからこれを引用する。 2(1) 本件では,上記赤池ゲームの収入除外以外に金額面の争いはなく,収入除外や架空仕入れはaが横領行為を隠ぺいするため行われたものか,あるいは,これに重加算税を課することが相当かという点が争点であるで,aの控訴人での職務内容等が検討されなければならない。 (2) そして,証拠によれば以下の事実が認められる。 ア aは他の会社で経理課職員として稼働した後,昭和51年10月古村産業株式会社(以下「古村産業」という。)に入社し,子会社である控訴人の経理を担当するようになった(甲3,24の1,乙16)。 イ昭和63年5月にb(旧姓○○)が採用され,控訴人の経理を担当するようになった時点では,上司としてeやcが存在したものの,現実にはa一人で控訴人の帳簿類を作成し,これをチェックする者がいないという状況にあった(甲24の1,証人b)。 ウ bが控訴人の経理に関わるようになり,aがゲームセンター部門の,bがパチンコ部門の各経理担当者となったが,bに経理の知識がなかったため,aがパチンコ部門の経理も指導してい 24の1,証人b)。 ウ bが控訴人の経理に関わるようになり,aがゲームセンター部門の,bがパチンコ部門の各経理担当者となったが,bに経理の知識がなかったため,aがパチンコ部門の経理も指導していた(証人b)。 エその後,c係長が平成2年1月に退職し,それまで同人が担当していた職務までaが行うこととなり,aは出納簿や当座預金調整表,科目別明細表等の控訴人の重要な会計帳簿を作成するだけでなく,8億7110万2535円(ただし,平成2年6月以降平成5年1月までの分)を超えるゲームセンター(主としてモンテカルロ,オリンピア,ヒルトン分)からの集金の確認作業を一人で行うようになった(甲7の25ないし27,同24,25,乙17,18,23,証人b)。 オそして,e課長等はaを信頼していたため,同人が作成した帳簿等について,現金と照合する等,その正確性の検証をすることはなかった。 3 使途不明金のほとんどをaが横領したとみるべきこと(1) 上記2でみたとおり,aは控訴人の会計帳簿を事実上一人で作成するとともに,巨額の現金を扱っていた。 (2) しかも,aは刑事事件で横領罪により実刑判決を受け,その際の起訴金額は1120万円に止まったものの,捜査段階等では1億9000万円を超える横領を自白している。 (3)アところで,控訴人がaの横領による旨主張しているのは,①平成元年1月期のゲームセンターの売上除外1484万2200円。②平成2年1月期の売上除外435万4200円(なお,前記処分理由の差替後のもの。)。③平成3年1月期のゲームセンター収入の除外額153万4700円(ただし,所得金額に算入されるのは消費税を控除した後の149万円)。④平成4年1月期のゲームセンター収入の除外額349万3680円(ただし,所得金額に算入されるのは消費税を控除した後の 4700円(ただし,所得金額に算入されるのは消費税を控除した後の149万円)。④平成4年1月期のゲームセンター収入の除外額349万3680円(ただし,所得金額に算入されるのは消費税を控除した後の339万1923円)。⑤平成5年1月期の(A)ゲームセンターの売上除外4004万4600円(ただし,所得金額に算入されるのは消費税を控除した後の3887万8253円)(B)パチンコ収入の除外額6400万円(ただし,所得金額に算入されるのは消費税を控除した後の6213万5923円)。 (C)仕入れの架空計上額1億5400万円(ただし,所得金額に算入されるのは消費税を控除した後の1億4951万4564円)である。 イこれらはいずれも総勘定元帳における収入の圧縮や架空計上によりなされたもので,総勘定元帳の作成自体は外注されていたものの,その基礎となるべき出納簿の記帳をしていたのはaであり,これを実質的にチェックする者もいなかったから,これら収入の圧縮を行ったのがaであることは明らかである。 ウしかも,aは民事裁判で,横領による損害賠償として2億9105万7495円の支払いを命じられている(甲4)ほか,前記のとおり刑事事件においても1億9000万円余の横領を認めている。aが実刑の危険を冒して偽りの自白をするとは通常考えられないから,その犯行が継続的かつ長期にわたっているため,横領金額や期間等の正確性には疑問があるが,同自白は大筋において信用できるものと解され,aは継続的に横領を行いその金額は巨額なものとなっていたものと認められる。 エそうすると,aが収入の圧縮等を行ったのは,証人bの証言等から,当時,現金の管理をしていたc係長の依頼により同人の横領行為を隠ぺいするため収入の圧縮等がなされた疑いの強い前記ア①・②の売上除外分を除き,自己の横領行為の発 縮等を行ったのは,証人bの証言等から,当時,現金の管理をしていたc係長の依頼により同人の横領行為を隠ぺいするため収入の圧縮等がなされた疑いの強い前記ア①・②の売上除外分を除き,自己の横領行為の発覚を妨げるためであったと認められる。 4 本件各更正に違法がないこと(1) 上記3のとおり,aの収入の圧縮等は,自己もしくはc係長の横領行為を隠ぺいするため行われたものと認められる。 (2)ア控訴人は「このような場合,損失と同時に損害賠償請求権が発生しており,所得に変動を生じないものとして扱うことは実体とかけ離れており,許されない。」旨主張する。 イしかし,法人税法22条4項は「当該事業年度の収益及び費用は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算するものとする。」旨規定しているから,法人税法は,原則として発生主義のうち権利確定主義を採っているものと解される。そうすると,横領により損失が発生したとしてもこれと同額の損害賠償請求権を取得することになるため,原則として所得額に変動を生じないことになる。 ウ法人税法が上記のように権利確定主義を採用しているのは,主として,企業会計の原則と整合性保つことにあるものと解される。また,課税当局が損害賠償債権の存否や,その回収の有無を個別に確定することなど困難であるから,当該債権が該当事業年度に回収不能であることが確定していない限り,これを所得に含めるという権利確定主義は,徴税技術という観点からも優れている。 エ aの不正経理が発覚したのは,平成5年10月に行われた被控訴人の税務調査の結果であり,横領金を高級商品の購入等に費消し,その回収が困難であることが客観的に明らかになったのは,その後の民事裁判や警察・検察の捜査の結果等からである。そうすると,aに対する損害賠償請求権が本件各事業年度において回 高級商品の購入等に費消し,その回収が困難であることが客観的に明らかになったのは,その後の民事裁判や警察・検察の捜査の結果等からである。そうすると,aに対する損害賠償請求権が本件各事業年度において回収不能であることが明らかであったとはいえないから,aに対する損害賠償請求権は所得に加算されなければならない。 (3)アところで,控訴人は「権利確定主義は著しく実態から遊離しており,この基準によることが妥当でない場合も多いため基本通達が設けられたのであり,本件においても基本通達の適用が認められるべきである。」旨主張する。 イ確かに,基本通達は権利確定主義によることが妥当でない場合も多く,このような場合に会計原則や徴税の便宜のみを強調することは相当でないため,その例外を認めたものである。 ウしかし,基本通達には例外を認める前提として「他の者から支払いを受ける損害賠償請求権」という限定が付されている。このような限定を付したのは,たとえば,本件のような横領行為の隠ぺい等のために収入の圧縮や架空計上等が行われた場合,外形的には法人自身がなした脱税行為と識別がつかないため,このような場合に例外的扱いを認めると徴税事務に著しい支障を生じるためであると解される。 エ前記のとおり,aは控訴人の重要な経理帳簿の作成をほぼ全てを任され,これをチェックする者はおらず,法人内部での権限とは別に,その経理処理が法人の処理と受け取られても致し方のない状況にあった。したがって,aが「他の者」に該当するとみることは困難であり,法人税法の原則が権利確定主義である以上,このような場合は埒外であるとして基本通達の適用を認めなかったことが不当であるとはいえない。 (4) そうすると,ゲームセンターの売上除外,パチンコ収入の除外,架空仕入れの計上等はいずれもaもしくはc係長の横領 合は埒外であるとして基本通達の適用を認めなかったことが不当であるとはいえない。 (4) そうすると,ゲームセンターの売上除外,パチンコ収入の除外,架空仕入れの計上等はいずれもaもしくはc係長の横領行為を隠ぺいするため行われたものであるが,法人税法の原則である権利確定主義に従い,本件各事業年度に横領に伴う損害に対応した損害賠償請求権を益金に計上すべきことになり,所得金額に変動をきたさないから本件各更正は適法である。 5 本件各重加算税賦課決定が適法であること(1) 国税通則法68条1項は「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し,その隠ぺい又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは,当該納税者に対し,過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え,重加算税を課する。」旨規定している。 (2) 同条の趣旨は,加算税を課すべき過少申告行為が課税要件事実の隠ぺい・仮装という手段で行われた場合に,違反者に行政上の制裁として重加算税を賦課することにより,申告納税制度の適正円滑な運営を図ろうとする法技術上の制度であるから,納税者において仮装・隠ぺいした事実に基づき申告するという認識を要さず,結果として過少申告の事実があれば足りるものと解される(最高裁昭和62年5月8日税務訴訟資料158号592頁等参照)。 (3) 控訴人は上記4(3)エで述べたとおり,aに重要な経理帳簿の作成等を任せきり,納税の際にもaが作成した経理帳簿等に基づき作成された総勘定元帳や決算書類等で申告を行ったところ,これら経理帳簿等に虚偽の記載が存在したため,客観的にみて,控訴人が仮装・隠ぺいの事実に基づく申告をなしたことになったのであるから,重加算税麟の要件を満たしており,本件各重加算 で申告を行ったところ,これら経理帳簿等に虚偽の記載が存在したため,客観的にみて,控訴人が仮装・隠ぺいの事実に基づく申告をなしたことになったのであるから,重加算税麟の要件を満たしており,本件各重加算税賦課決定に違法はない。 (4)ア控訴人は「aが横領行為の発覚を妨げるため行った経理操作を理由に,犯罪被害者である控訴人に対し,重加算税賦課決定をするのは実質的にみて不当であり,憲法にも違反する。」旨主張する。 イ重加算税賦課の目的は上記(2)で述べたところにあり,控訴人の内部的な問題から,結果的に控訴人が仮装・隠ぺいを手段とした過少申告を犯して適正な徴税を妨げている以上,これに重加算税を課して申告納税制度の円滑・適正な運営を図ることにも合理性があり,このような立法政策を採ることが,憲法に違反するとはいえないし,また,実質的にも不当であるとはいえない。 6 本件附帯控訴に理由があること(1) 原判決は,赤池ゲームの収入除外は認められず,アキューリース明和関係で理由の差し替えを認めても,なお原処分より所得の減少を生じるとして平成2年1月期の法人税の一部取消を行い,これにより翌期の未納事業税が減少するとして,平成3年1月期に更正処分を超える所得金額を認定したうえ,これを前提に平成4年1月期の未納事業税が増加するため同期の所得金額が減少するとして,同期の法人税,法人臨時特別税に係る更正のうちいずれも差引納付すべき税額の一部を取り消した。 (2) しかし,平成3年1月期の所得金額が更正処分を超える金額と認定されたからといって,更正処分が理由のあるものとなるだけで,所得金額そのものが増加するわけではないので,これと連動して決められる平成4年1月期の未納事業税額が増加することはない。 (3) そうすると,平成4年1月期の所得金額にも変動はなく,同期につ だけで,所得金額そのものが増加するわけではないので,これと連動して決められる平成4年1月期の未納事業税額が増加することはない。 (3) そうすると,平成4年1月期の所得金額にも変動はなく,同期についてなされた更正処分にも誤りはない。したがって,同期の法人税及び法人臨時特別税の一部取り消しをした原判決の当該部分の判断には誤りがあり,本件附帯控訴には理由があることになる。7 結論以上のとおり,本件控訴には理由がないが本件附帯控訴には理由があり,これと一部異なる原判決を変更することとする。 よって,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第12民事部裁判長裁判官井筒宏成裁判官古川正孝裁判官和田真
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