平成27(わ)161 不正競争防止法違反,商標法違反,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反

裁判年月日・裁判所
平成27年9月8日 神戸地方裁判所
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判決文本文7,336 文字)

平成27年9月8日宣告平成27年(わ)第161号,第218号,第467号 主文 被告人を懲役2年及び罰金200万円に処する。 罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 この裁判が確定した日から5年間懲役刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1 不正の利益を得る目的で,法定の除外事由がないのに,平成26年4月18日から同月19日までの間に,2回にわたり,肩書住所地の自宅で,マイクロソフトコーポレーションがその製品であるソフトウェア「MicrosoftOfficeProfessionalPlus 2013」について,ソフトウェアのライセンス取得者以外の者によるソフトウェアのプログラムの実行を制限するために用いているライセンス認証システムの効果を妨げることにより,ソフトウェアのプログラムの実行を可能とする機能を有するプログラムであるA及びBを,東京都千代田区a町b丁目c番d号eビル内に設置されたC株式会社が管理するサーバコンピュータの記憶装置に記憶・蔵置させた上,同年6月7日,前記各プログラムの蔵置先URL情報を記録した圧縮ファイルDの蔵置先URLを,インターネットオークションの落札者であるEに通知し,同人が前記各プログラムを取得し得る状態にして提供して,営業上用いられている技術的制限手段により制限されているプログラムの実行を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供し,不正競争を行った。(平成27年2月27日付け公訴事実)第2 他人になりすまして特定事業者との間 術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有するプログラムを電気通信回線を通じて提供し,不正競争を行った。(平成27年2月27日付け公訴事実)第2 他人になりすまして特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供 を受けることを目的として,平成26年7月6日から同月15日までの間に,岡山県倉敷市f町gh番地iで,姉であるFから,株式会社G銀行H支店に開設された同人(口座番号1145674)及びその2人の子(口座番号1145682,1145690)各名義の総合口座通帳3通及びキャッシュカード3枚を譲り受けた。 (平成27年6月5日付け公訴事実)第3 商標の使用に何ら権限がないのに,平成26年7月27日,同市jk番地l店で,インターネットに接続されたパーソナルコンピュータから,前記サーバコンピュータに接続し,その記憶装置内に,株式会社ジャストシステムが電子計算機用プログラムを指定商品として商標登録を受けている「一太郎」の標準文字からなる商標(商標登録番号第5039245号)に類似する商標を,「一太郎2014 徹スーパープレミアム(ダウンロード版)」と称する電子計算機用プログラムに関する販売広告を内容とする情報とともに記憶・蔵置させ,これをインターネットサイト上に掲載した上,同日から同月30日までの間,Iら同サイトを利用する者にインターネット回線を通じて提供して閲覧させて,株式会社ジャストシステムの商標権を侵害する行為とみなされる行為を行った。 (平成27年3月19日付け公訴事実)(証拠関係)省略(弁護人の主張に対する判断) 1 第1(不正競争防止法違反)について 弁護人の主張被告人は,前記認定したとおりの行為に及んだことは認めるが,不正の利益を得る目的もなかったし,これが違法である 張に対する判断) 1 第1(不正競争防止法違反)について 弁護人の主張被告人は,前記認定したとおりの行為に及んだことは認めるが,不正の利益を得る目的もなかったし,これが違法であるとも思っていなかった旨主張・供述し,弁護人もこれに基づき,被告人が提供したものは,不正競争防止法2条1項11号の規制対象となっていない技術的制限手段を回避するプログラムを実行する「情報」ないし「ノウハウ」の域を出るものではなく,仮に被告人の 行為が同条項にいう「提供」に該当するとしても,被告人は,自らの行為の違法性を基礎付ける事実を認識できなかったから故意が認められず,いずれにせよ無罪であると主張する(なお,弁護人は,弁論要旨では全く主張しなかったが,当初は公訴棄却も主張していた。)。 検討ア公訴棄却の申立てこの主張は,被告人に不正競争防止法違反罪が成立しないことを前提とすると解されるが,後述のとおり,その前提は誤りであり,その他いろいろと主張する点を踏まえても,本件公訴提起に手続違反は認められず,採用できない。 イ提供行為の有無関係証拠によると,以下の事実が認められ,被告人もこれを争うものではない。すなわち,被告人は,①インターネットオークションサイトで,JやK等複数の登録名を使用して取引していたが,Jの登録名を使って,Lと称する商品を商品単価800円等として出品した際,②その登録名に割り当てられた記憶領域に,マイクロソフトコーポレーション(以下「マイクロソフト社」という。)が無償で提供し,試用期間が制限されているライセンス未認証の状態のソフトウェア「MicrosoftOfficeProfessionalPlus 2013」(以下「オフィス2013」という。)の「評価版」の認証システムを妨 限されているライセンス未認証の状態のソフトウェア「MicrosoftOfficeProfessionalPlus 2013」(以下「オフィス2013」という。)の「評価版」の認証システムを妨げて利用制限を外し,「ライセンス認証された製品」として使用することを可能とするBないしAという名称のプログラム(以下,まとめて「認証回避プログラム」ともいう。)の取得方法や使用方法等について掲載した「マニュアル」という名称のファイルを含むDという名称の圧縮ファイルを記憶・蔵置させるとともに,Kに割り当てられた記憶領域に上記認証回避プログラムを記憶・蔵置させ,認証回避プログラムや上記圧縮ファイルについて,他のインターネット利用者が閲覧,取得することができるように「公開」の設定をし た上で,③上記商品の落札者に対し,上記圧縮ファイルの蔵置先URLを通知し,④その結果,落札者が,同URLにインターネット接続して,上記圧縮ファイル内の「マニュアル」という名称のファイルを閲覧し,その記載に従ってKのURLにインターネット接続して認証回避プログラムをダウンロードすれば,オフィス2013評価版の認証システムを妨げ,利用制限を外すことが可能になった,というのである。 そうすると,被告人は,①ないし③のとおり,単に落札者に認証回避プログラムの蔵置先URLを通知しただけでなく(③),自ら認証回避プログラムを自分が使用する登録名に割り当てられた記憶領域に記憶・蔵置させ,これを他のインターネット利用者が閲覧,取得できるように設定しているから(①,②),一連の行為が情報ないしノウハウの提供にとどまらないことは明らかであって,不正競争防止法2条1項11号にいうプログラムの提供に該当する行為に及んだと認めるのが相当である。弁護人の主張は,一連の行為の 連の行為が情報ないしノウハウの提供にとどまらないことは明らかであって,不正競争防止法2条1項11号にいうプログラムの提供に該当する行為に及んだと認めるのが相当である。弁護人の主張は,一連の行為のうち③の部分だけを都合良く取り出しているが,その前提自体が誤りであり,失当というほかなく,その他いろいろと主張する点を逐一検討しても結論は変わらない。 ウ不正利益目的の有無等不正競争防止法21条2項4号にいう「不正の利益を得る目的」とは,公序良俗又は信義則に反する形で不当な利益を上げる目的というが,前記のとおり,被告人は,800円という対価を設定して認証回避プログラムの蔵置先URL等を掲載したファイルをインターネットオークションサイトに出品し,その落札者に認証回避プログラムの蔵置先URLを通知してマイクロソフト社が無償で提供していたオフィス2013評価版を正規版として使用できる状態にしていたものであるから,マイクロソフト社の対価回収機会を阻害する公序良俗又は信義則に反する形で不当な収益を上げる目的を有していたと認めるのが相当である。これに対し,被告人は,インターネットで調べ た論文を読んだり,ゲームソフト等のコピーガード機能を外す効力を有する装置が量販店で普通に販売されているのを見たりしたので自分の行為が適法であると思っていたと述べるが,独自の見解というほかなく,単なる法の不知と変わるものではなく,認定したとおりの行為を意識的に行っている以上,違法性の意識に欠けるところもない(被告人自身も,利用していたインターネットオークションサイトからたびたび出品規制をかけられただけでなく,落札者から,被告人のやっていることが違法であると指摘されたことがあることを認めている。)。 2 第2(犯罪による収益の移転防止に関する法律 ションサイトからたびたび出品規制をかけられただけでなく,落札者から,被告人のやっていることが違法であると指摘されたことがあることを認めている。)。 2 第2(犯罪による収益の移転防止に関する法律〔以下「犯罪収益移転防止法」という。〕違反)について 弁護人の主張被告人は,通帳3通及びキャッシュカード3枚(以下,まとめて「本件通帳等」という。)については,姉から譲り受けたのではなく,借りただけである旨供述し,弁護人も,これに基づき,被告人は,自分だけが使用する目的ではなく,姉と共同で使用する目的を有していたから,犯罪収益移転防止法27条1項にいう「他人になりすまして特定事業者…との間における預貯金契約…に係る役務の提供を受ける…目的」が認められず,無罪であると主張する。 検討同条項にいう前記の目的とは,正当な権限がないのに他人名義の口座を利用する目的をいうが,姉の警察官調書等関係証拠によれば,被告人は,平成26年6月か7月頃,姉に対し,自分の仕事関係で使うと称して口座の開設を依頼し,姉から,本件通帳等に関する姉とその2人の子供を名義人とする3つの銀行口座(以下「本件各口座」という。)に関する本件通帳等を受け取っているところ,3つの口座の入金先の大半が,被告人が利用していたインターネットオークションサイト関係であり,特に姉とその長男名義の2つの口座については,ほとんどが被告人が第1,第3の犯行で販売していたものに類するパソコ ンソフトの取引に関する入金である上,姉の口座については,サイトの登録名を姉から友人に変えながら,長男の口座については,友人から妻,更には再び友人に変えながらそれぞれ使用されているが,姉らが,本件各口座でインターネットオークションに出品するなどしていた形跡は全くうかがえない。そ 人に変えながら,長男の口座については,友人から妻,更には再び友人に変えながらそれぞれ使用されているが,姉らが,本件各口座でインターネットオークションに出品するなどしていた形跡は全くうかがえない。そして,被告人は,当時,インターネットオークションで生計を立てていたと述べ,利用していたサイトからたびたび出品規制をかけられ,登録名を削除されるため,友人に頼んで名義を借りたもので,友人がこのオークションサイトに商品を出品したことは一度もなく,その名義は自分だけが使用していたと述べている。 そうすると,被告人は,本件各口座を,自分がインターネットオークションで取引するために,使用していたと認めるのが相当であり,これに反する被告人の供述は,客観的な前記取引状況等と整合せず,採用できない。 3 第3(商標法違反)について 弁護人の主張被告人は,前記認定したとおりの行為に及んだことは認めるが,それが商標法違反になるとは知らなかったと主張・供述し,弁護人は,商標の類似性は,具体的な取引状況に基づいて商品の出所の誤認混同を生じるおそれの有無によって決すべきであるとして,被告人は,①中古品販売のインターネットオークションサイトに,製品そのものではなく,ダウンロードするためのマニュアルを廉価で出品しただけであるから,株式会社ジャストシステム(以下「ジャストシステム」という。)が販売元であると出所の誤認を惹起させたとはいえず,商標の類似性が否定されるとか,商品を説明ないし特定するため,商品名のタイトルとして「一太郎2014 徹スーパープレミアム(ダウンロード版)」と記載しただけで出所の誤認を惹起したとはいえないから,いずれにせよ商標法78条の2が構成要件要素とする同法37条1号にいう「登録商標に類似する商標の使用」には該当しない,②仮に該当 ンロード版)」と記載しただけで出所の誤認を惹起したとはいえないから,いずれにせよ商標法78条の2が構成要件要素とする同法37条1号にいう「登録商標に類似する商標の使用」には該当しない,②仮に該当するとしても,被告人は自分の行為が商標法に違反することを気付くことができる状況になかったから故 意が認められず,いずれにせよ無罪であると主張する。 検討ア類似商標の使用の有無(弁護人の主張①)関係各証拠によれば,被告人がインターネットオークションサイト上に掲載したのは,「一太郎2014 徹スーパープレミアム(ATOK2014搭載)」という標章(以下「本件標章」という。)が付された商品であり,その出品画面には,商品の説明として,ジャストシステムのホームページ上に記載されていたMのパッケージ画像や商品の落札価格,及びダウンロード版である旨の記載がされている。 商標の類似性は,弁護人が指摘するとおり,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第3小法廷判決民集22巻2号399頁参照),上記のとおり,本件標章は,その外観上,ジャストシステムが商標権を有する「一太郎」と同一であり,出品画面に掲載されている商品の画像も,同社のホームページ上のパッケージ画像と同一であるから,そのような外観等が与える印象からすると,被告人が出品した商品がジャストシステムが販売する商品と誤認混同を生ずるおそれがあることは明らかであり,商標の類似性が認められるというべきである。 そして,そもそも誤認混同を生じるおそれの対象は取引の相手方ではなく,商品の出所であるから,これを混同する点で弁護人の主張は誤っている。また,被告人は中古品であ められるというべきである。 そして,そもそも誤認混同を生じるおそれの対象は取引の相手方ではなく,商品の出所であるから,これを混同する点で弁護人の主張は誤っている。また,被告人は中古品であることを明記して出品していたわけではないから主張の前提に誤りがある上,不正競争防止法違反について検討したとおり,被告人が出品したものがマニュアルにとどまらないことは明らかであり,廉価で出品されたからといって直ちに出所の誤認混同のおそれがなくなるともいえない。したがって,弁護人の主張はいずれにせよ採用できず,その他,いろいろと主張する点を逐一検討しても結論は変わらない。 イ商標法違反の認識の有無(弁護人の主張②)被告人は,犯罪事実のとおりの行為を意識的に行っている以上,行為の違法性を容易に認識することができたと認められ,それを阻却する特段の事情は証拠上一切うかがえないから,違法性の意識を含め故意に欠けるところはないというべきである。被告人は,単に情報提供していただけで,名前を使うぐらい大丈夫だと思っていたと供述するが,独自の見解というほかなく,単なる法の不知にすぎない。 (法令の適用)省略(量刑の理由)不正競争防止法違反,商標法違反の各犯行は,いずれも各被害会社の営業利益を害する悪質な行為であるが,被告人は,インターネットオークションサイトから出品制限をかけられて商品を出品できなくなったにもかかわらず,これを回避するために友人や妻の名義を借用しただけでなく犯罪収益移転防止法違反の犯行にまで及んでいたもので,このような自己の利益を追求するために職業的,常習的にこれらの犯行に執着していた態度は厳しく非難すべきである。ところが,被告人は,いずれについても違法であることが明白であるのに,犯罪になるとは思わなかっ ような自己の利益を追求するために職業的,常習的にこれらの犯行に執着していた態度は厳しく非難すべきである。ところが,被告人は,いずれについても違法であることが明白であるのに,犯罪になるとは思わなかったとうそぶくなど不合理な弁解に固執し,反省の態度を示そうとしない。そうすると,この際,再犯を防止するために厳しく反省を迫るには短期間でも矯正施設に収容すべきであるとも考えられる。 しかし,いずれの犯行についても,被告人は,個人的に行っていたもので組織的犯行ではなく,得られた利益もその限度にとどまっている。また,被告人の法廷での不遜な態度についても,前科前歴がなく,今回が初めての正式裁判であることからそのような言動に出たとも考えられる。そこで,懲役刑については,今回までは,猶予期間を最長の5年間として,刑の執行を猶予するのが相当であるが,罰金刑については,得た利益の大きさだけでなく,いずれも職業的犯行であること等からす ると,各犯行が経済的に割に合わないことを十分自覚させるために主文程度の額を併科する必要があるというべきである。 (求刑懲役2年,罰金200万円)平成27年9月8日神戸地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官平島正道 裁判官西野牧子 裁判官熊野祐介

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