【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 当審における未決勾留日数中二二〇日を本刑に算入する。 理 由 一 被告人本人の上告趣意について 所論のうち、憲法二九
主文 本件上告を棄却する。 当審における未決勾留日数中二二〇日を本刑に算入する。 理由 一被告人本人の上告趣意について所論のうち、憲法二九条一項、三七条三項違反をいう点は、刑訴法一八一条一項が憲法の右各条項に違反するものでないこと、刑事訴訟費用等に関する法律二条三号の規定が憲法三七条三項に違反するものでないこと、並びに、原判決が第一審及び原審における訴訟費用の全部を被告人に負担させたことが憲法の右各条項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二四年新(れ)第二五〇号同二五年六月七日大法廷判決・刑集四巻六号九六六頁)の趣旨に徴し明らかであるから、いずれも理由がなく、最高裁昭和二九年(あ)第二〇七二号同年一一月四日第一小法廷決定・刑集八巻一一号一六六五頁及び昭和二八年(あ)第三〇一三号同三〇年一一月三〇日第二小法廷決定・刑集九巻一二号二五六二頁を引用して判例違反をいう点は、差戻後の第一審裁判所がした所論取調留保の措置はいわゆる破棄判決の拘束力に抵触するものではないから、所論は前提を欠き、最高裁昭和二五年(あ)第三〇九五号同三〇年八月二六日第二小法廷判決・刑集九巻九号二〇四九頁、東京高裁昭和二九年(う)第二〇四九号同三〇年九月一日判決・東高時報六巻九号三〇〇頁、名古屋高裁昭和三九年(う)第一六六号同年八月一九日判決・高刑集一七巻五号五三四頁及び東京高裁昭和四七年(う)第三〇四六号同四八年三月二八日判決・高刑集二六巻一号一〇〇頁を引用して判例違反をいう点は、差戻後の第一審裁判所は証拠能力のない証拠を取調べたものではないから、所論は前提を欠き、最高裁昭和三七年(あ)第二三五四号同三九年一一月二四日第三小法廷決定・刑集一八巻九号六三九頁を引用して判例違反をいう点は、原判決が所論のい 力のない証拠を取調べたものではないから、所論は前提を欠き、最高裁昭和三七年(あ)第二三五四号同三九年一一月二四日第三小法廷決定・刑集一八巻九号六三九頁を引用して判例違反をいう点は、原判決が所論のいうような法律判断を示し- 1 -たものでないことは判文上明らかであるから、所論は前提を欠き、判例違反をいうその余の点は、所論引用の各判例はすべて事案を異にし本件に適切でなく、その余は、違憲をいう点を含め、その実質はすべて単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。 二弁護人山崎正美の上告趣意について所論のうち、憲法二九条一項、三七条三項違反をいう点の理由のないこと、並びに、最高裁昭和二五年(あ)第三〇九五号同三〇年八月二六日第二小法廷判決・刑集九巻九号二〇四九頁、東京高裁昭和二九年(う)第二〇四九号同三〇年九月一日判決・東高時報六巻九号三〇〇頁、名古屋高裁昭和三九年(う)第一六六号同年八月一九日判決・高刑集一七巻五号五三四頁及び東京高裁昭和四七年(う)第三〇四六号同四八年三月二八日判決・高刑集二六巻一号一〇〇頁を引用して判例違反をいう点がその前提を欠くことは、いずれも前叙のとおりであり、判例違反をいうその余の点は、所論引用の各判例はすべて事案を異にし本件に適切でなく、その余は、違憲をいう点を含め、その実質はすべて単なる法令違反、量刑不当、事実誤認の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。 よつて、同法四〇八条、刑法二一条により、主文のとおり判決する。 この判決は、裁判官伊藤正己の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。 裁判官伊藤正己の補足意見は、次のとおりである。 被告人本人、弁護人山崎正美の各上告趣意のうちに憲法二九条一項、三七条三項違反 藤正己の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。 裁判官伊藤正己の補足意見は、次のとおりである。 被告人本人、弁護人山崎正美の各上告趣意のうちに憲法二九条一項、三七条三項違反をいう主張があるが、それが理由のないことは法廷意見の示すとおりである。 しかし、本件では、刑事事件における訴訟費用の負担について考慮すべき問題が提起されており、憲法にかかわる点を含めて、刑訴法一八一条一項、刑事訴訟費用等に関する法律(以下「刑事訴訟費用法」という。)二条三号の各規定の解釈適用に- 2 -関して考えてみるべきところがあると思われるので、以下の二点について私の見解を述べておくこととしたい。 一刑を言い渡した被告人に国選弁護人に要した費用の負担を命ずること、また、右負担を命ずる根拠である刑訴法一八一条一項及び刑事訴訟費用法二条三号の各規定が、憲法三七条三項の保障する弁護人依頼権とくに同項後段によつて国選弁護人を附してもらう権利を侵すものではないか。この点については、当裁判所はすでに、憲法三七条三項は、すべての被告人に弁護人を依頼する権利のあること、自ら依頼できないときは国が弁護人を附することを規定したものであつて、弁護人の報酬等の費用を国が負担することまでも保障しているものではない旨を判示しており(最高裁昭和二四年新(れ)第二五〇号同二五年六月七日大法廷判決・刑集四巻六号九六六頁)、いかに被告人にとつて弁護人の援助を受ける権利が重要な人権の一つであるとしても、国選弁護人の費用を被告人に負担させることが憲法に反するとは解しえないから、右の判例は正当として是認することができる。ただ、この判例が、弁護人の報酬等の費用を何びとに負担せしめるかは憲法の関知するところでなく、法律をもつて適当に規定しうるものと解すべきであるとしている点には、疑 例は正当として是認することができる。ただ、この判例が、弁護人の報酬等の費用を何びとに負担せしめるかは憲法の関知するところでなく、法律をもつて適当に規定しうるものと解すべきであるとしている点には、疑問がないわけではない。憲法の保障する弁護人の援助を受ける権利を実質上著しく損うような場合には、違憲とされることがありうるのであり、貧困な被告人が報酬等の費用の負担を命じられることを慮つて国選弁護人の附されることを避けることは考えられなくはないから、もし立法がこのような配慮をすることなしに右の費用の全部を被告人に負担せしめるとすれば弁護人依頼権の保障を実質的に害するとされることがあろう。しかし、刑訴法一八一条一項は刑の言渡しを受けた被告人につねに費用の全部を負担させるものとしておらず、また右の判例ののちに付加れた同項但書は貧困者に対して費用を負担させないものとしており、さらに同法五〇〇条が負担を命じられた者にその裁判の執行免除の申立を許しているから、右にあげた違憲の- 3 -問題は解消しているものとみてよく、刑訴法一八一条一項及び刑事訴訟費用法二条三号の各規定、並びに、原判決が本件の国選弁護人の費用の負担を被告人に命じたことが憲法三七条三項に反するものということはできない。 二右のとおり、違憲の主張は容れることができないが、それでは、訴訟費用の負担の裁判はすべて裁判所の裁量に委ねられており、その決するところに当不当の問題はあるとしても、違法かどうかの問題は存しないといえるか。私は、刑訴法一八一条一項但書に当たる場合のほかにも、刑を言い渡した被告人に対し、同条項本文により訴訟費用を負担させることが違法となる場合がないとはいえないと考える(東京高裁昭和二六年(う)第五五〇二号同二七年二月七日判決・高刑集五巻三号三二八頁参照)。問題は、どのよう 対し、同条項本文により訴訟費用を負担させることが違法となる場合がないとはいえないと考える(東京高裁昭和二六年(う)第五五〇二号同二七年二月七日判決・高刑集五巻三号三二八頁参照)。問題は、どのような場合に違法となるか、その判断基準をどこに求めるかである。刑を言い渡した被告人に対し、訴訟費用は被告人の不法な行為に基因するとして安易にその全部を負担せしめることは適当ではない。いかに被告人に不法性があるとしても審理に全く不要と認められる費用までも負担させるべきではあるまい。他方、訴訟費用が犯罪の結果として生じたものであつて、被告人の責に帰すべき事由によるものと推定されるから、負担の可否を被告人の責の有無に絡めて厳密に検討することを裁判所に要求することはできないし、それは実務上も適切とはいえないであろう。私見によれば、抽象的な基準としては、当該の事件の審理上必要と認められる処分のために要した費用であつて、審理の経過とその結果からみて被告人に負担させるのが相当と考えられる費用は、被告人に負担させるというのが刑訴法一八一条一項の趣旨にかなうものと考えられる。そして、この基準に該当するかどうかの判断ほ、審判に当たつた裁判所が最も適切になしうるものであるから、その決定は、当該裁判所の広い裁量権に委ねられているものというべきであり、総合的に判断してこの裁量権を逸脱したと認められる場合に負担を命じたときに、それが違法となると考えられる。 - 4 -所論は、控訴審が第一審判決に瑕疵があると認めてこれを破棄し、刑の言渡しをしたときは、控訴審の訴訟費用が生じたことにつき被告人に責められるべき事由がなかつたのであるから、その費用を被告人に負担させることは許されないと解すべきであるのに、原判決は第一審判決を破棄しながら控訴審の国選弁護人に要した費用を被告人に負 つき被告人に責められるべき事由がなかつたのであるから、その費用を被告人に負担させることは許されないと解すべきであるのに、原判決は第一審判決を破棄しながら控訴審の国選弁護人に要した費用を被告人に負担させているのであつて、原判決には誤りがあると主張している。 しかし、本件において、原判決は、第一審判決が算入した未決勾留日数が過少であるとの被告人側の控訴趣意を容れて量刑不当により第一審判決を破棄し、あらためて被告人に対し刑の言渡しをしたものであつて、そのために要した原審の訴訟費用は通常の訴訟に伴い生じたものというべきであり、しかも、原審において被告人側は控訴理由として右の点の他に事実誤認、法令適用の誤り及び本刑についての量刑不当を主張して審理を受けており、右の訴訟費用は被告人にとつて必要なものであつたということができるので、前述した基準に照らし、原判決が右の費用を被告人に負担させたことが裁量権を逸脱したものでないことは明らかであるから、違法とはいえない。 昭和六三年九月一三日最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官安岡滿彦裁判官伊藤正己裁判官坂上壽夫裁判官貞家克己- 5 -
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