平成26(行コ)488 不動産取得税還付不許可決定処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成27年9月2日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文7,389 文字)

平成27年9月2日判決言渡平成26年(行コ)第488号不動産取得税還付不許可決定処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成25年(行ウ)第705号) 主文 1 原判決を取り消す。 2 処分行政庁が控訴人に対して平成24年8月9日付けでした,別紙1土地目録記載の不動産の取得に係る不動産取得税を還付しない旨の処分(24税セ還第128号)を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文と同旨第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は,別紙1土地目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を取得した控訴人が,東京都立川都税事務所長(以下「本件課税庁」という。)による平成23年5月11日付け不動産取得税賦課処分(以下「本件賦課処分」という。)に基づき,本件土地に係る不動産取得税(7926万6100円。以下「本件不動産取得税」という。)を納付した後,本件土地上に建築された別紙2建物目録記載1ないし6の各建物(以下,併せて「本件各建物」といい,個別には「A棟」,「B棟」などという。)は,地方税法73条の24第1項1号及び東京都都税条例(昭和25年東京都条例第56号。以下「本件条例」という。)48条1項を適用されるべき特例適用住宅に当たり,本件不動産取得税が減額されるべきであるとして,同法73条の27第1項及び本件条例48条の4に基づき,本件不動産取得税の還付を求める旨の申告(以下「本件申告」という。)をしたところ,処分行政庁から,本件不動産取得税を還付しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,処分行政庁が所属する東京都を被告として,本件処分の取消しを求める事案である。 原判決は,控訴人の請求を棄却したので,これを不服とする 付しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,処分行政庁が所属する東京都を被告として,本件処分の取消しを求める事案である。 原判決は,控訴人の請求を棄却したので,これを不服とする控訴人が,原判決を取り消し,本件処分を取り消すことを求めて,控訴した。 2 関係法令等の定め,前提事実及び争点並びに争点に関する当事者の主張(1) 関係法令等の定め,前提事実及び争点並びに争点に関する当事者の主張は,下記(2)のとおり原判決を補正し,下記(3)のとおり控訴人の当審における補充主張を摘示するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1ないし3(原判決7頁2行目の「2」は「3」の誤記と認める。)及び「第3 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 原判決の補正ア 4頁2行目の「遵守すること」を「遵守することを」に改める。 イ 6頁15行目の「原告に対し,」の次に「本件条例48条の4の規定に該当しないとして」を加える。 ウ同25行目の「審査請求をしたが,」から同26行目末尾までを以下のとおり改める。 「審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。本件審査請求において,控訴人は,本件処分の理由が抽象的であるので具体的に説明するよう求めた。これに対し,処分行政庁は,本件施行令附則6条の17第2項にいう「居住の用に供するために独立的に区画された部分が100以上ある共同住宅等」は,1棟ごとに把握されるべきであるから,本件各建物はいずれも上記の戸数要件を満たさないとの弁明をした(やむを得ない事情要件については双方いずれからも主張がなかった。)。[甲14ないし16]東京都知事は,平成25年5月16日,本件審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし (やむを得ない事情要件については双方いずれからも主張がなかった。)。[甲14ないし16]東京都知事は,平成25年5月16日,本件審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。本件裁決の理由の骨子は,共同住宅等において,戸数要件は1棟の建物ごとに判断すべきであるところ,本件各建物はいずれも100戸未満であって戸数要件を満たしていないから,本件減額規定は適用されないというものである。なお,本件裁決も,やむを得ない事情要件の充足の有無については具体的に判断していない。[甲17]」エ 7頁2行目の「2」を「3」に改める。 オ同11行目,同12行目及び9頁1行目の各「共同住宅」を,いずれも「共同住宅等」に改める。 カ 10頁15行目の「ことも」を「こと」に改める。 (3) 当審における控訴人の補充主張ア本件各建物のうち,D棟とE棟は,構造上及び利用上の一体性が認められる。 すなわち,D棟及びE棟は,両棟のみの共用エントランスを有しており,また,この共用エントランスは,E棟との一体性及び外気遮断性を備え,建物の一部となっている。そして,D棟又はE棟に出入りするためには,上記共用エントランスによるしかない(非常用出入口等,日常的に使用されることを予定していないものを除く。)。 イ D棟は71戸,E棟は69戸あり,その合計は140戸である。 本件土地の地積は25750.23㎡(①)であり,本件各建物の1階の床面積の合計は4454.32㎡(②),D棟とE棟の床面積の合計は1403.67㎡(③)である。したがって,D棟及びE棟の敷地に相当する8114.571㎡(=①×③÷②)の取得に係る不動産取得税については,本件減額規定に基づき不動産取得税の還付が認められるべきである。 第3 当裁判所の判断 って,D棟及びE棟の敷地に相当する8114.571㎡(=①×③÷②)の取得に係る不動産取得税については,本件減額規定に基づき不動産取得税の還付が認められるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件各建物が戸数要件を満たした特例適用住宅に該当しないとして本件不動産取得税の還付をしない本件処分は誤っており,本件処分は取り消すべきと判断する。その理由は,下記のとおりである。 2 本件各建物の一体性について(1) 原判決が説示しているとおり,本件各建物は不動産登記簿上6棟の建物として登記されていること,本件各建築確認及び本件各完了検査も本件各建物ごとに行われていること,本件各建物は構造上独立しており,共用階段や廊下等によって物理的に結合されていないこと,建築基準法86条1項の一団地認定は,区域内の各建築物が同一敷地内にあるとみなす制度であり,各建築物の一体性を認めるものでないことからは,本件各建物が一体であるとは認められない。 なお,本件各建物の敷地の外部から,内部に入るための共通のエントランスがあるとしても,本件各建物にはそれぞれ独立した(他の建物を通過することなく利用できる)出入口がある以上,構造上はもちろん,利用上の一体性を認めさせるものではない。共通の管理員室や福利施設(コンシェルジュカウンター,ミニショップ,ゲストルーム等)があり,それらが本件各建物の共同住宅等としての利便性や魅力を増すものであるとしても,利用上不可欠なものとはいえず,一体性を認めさせるものではない。 (2) 控訴人は,当審において,少なくともD棟とE棟は一体である旨主張する。 しかし,D棟には,控訴人の主張する共用エントランスのほか,D棟の一部を構成する独立した出入口があると認められる(甲30)。したがって,D棟とE棟は, ともD棟とE棟は一体である旨主張する。 しかし,D棟には,控訴人の主張する共用エントランスのほか,D棟の一部を構成する独立した出入口があると認められる(甲30)。したがって,D棟とE棟は,建物の出入りに関して,構造上はもちろん,利用上も一体の建物とはいえない。 (3) 以上のとおりであるから,本件各建物は,一体の建物(1棟の建物)であるとはいえない。 3 本件減額規定の戸数要件の解釈について(1) 本件施行令附則6条の17第2項によれば,戸数要件は,地方税法附則10条の2第2項の規定により読み替えて適用される同法73条の24第1項1号に規定する「特例適用住宅」(本件条例48条1項1号の「特例適用住宅」と同じ。)について問題となるものである。 地方税法73条の24第1項1号は,土地を取得した日から2年以内に当該土地の上に「特例適用住宅」が新築された場合には,当該土地の取得に対して課する不動産取得税を減額する旨を定めている。この特例適用住宅とは,本件施行令39条の2の3第1項各号に定める住宅をいい,同項は,住宅(「人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分で,政令で定めるもの」をいう〔地方税法73条4号〕。)を,①共同住宅等以外の住宅と,②共同住宅等(「共同住宅,寄宿舎その他これらに類する多数の人の居住の用に供する住宅」をいう〔本件施行令37条の16第1号,地方税法73条の14第1項〕。)とに区分した上で,それぞれについて,特例適用住宅に該当するための要件を定めており,後者については,本件施行令39条の2の3第1項2号によれば,「居住の用に供するために独立的に区画された一の部分のいずれかの床面積が,50㎡(当該独立区画部分が貸家の用に供されるものである場合にあっては,40㎡)以上240㎡以下の 2の3第1項2号によれば,「居住の用に供するために独立的に区画された一の部分のいずれかの床面積が,50㎡(当該独立区画部分が貸家の用に供されるものである場合にあっては,40㎡)以上240㎡以下の住宅」とされている。 また,地方税法附則10条の2第2項及び本件施行令附則6条の17第2項は,当該土地の取得が平成16年4月1日から平成26年3月31日までに行われた場合で,独立区画部分が100以上ある共同住宅等であるときは,当該土地を取得してから特例適用住宅の新築までの期間(以下「新築期間」という。)を2年以内から3年以内に伸長し,さらに,同期間が3年を超えると見込まれることについてやむを得ない事情があると道府県知事が認めた場合は,更に4年以内に伸長している。 (2) そこで,共同住宅等である特例適用住宅について,法令の規定上,それが1棟であることが要件とされているか否かについて検討する。 この点,特例適用住宅の新築に係る不動産取得税還付の制度は,その要件に照らすと,土地を取得してから一定の期間内に,一定範囲の床面積(ただし,居住の用に供せられる部分)を有する建物を新築した場合に,徴収済みの不動産取得税のうち所定の金額を還付するというものであり,これは,居住の用に供せられる部分の床面積に着目して,一定の居住性を備えた住宅を数多く建築させて,その供給を促進することを目的とするものと解される。 そのような制度趣旨に鑑みると,その土地の上に建築される共同住宅等について,1棟で独立区画部分を100以上有する場合と,複数棟で合計100以上有する場合とで違いがあるとはいえない。 また,前記地方税法附則10条の2第2項により,共同住宅等である特例適用住宅に限って新築期間が伸長されているのは,一定規模以上の共同住宅等を建設する場合には, 場合とで違いがあるとはいえない。 また,前記地方税法附則10条の2第2項により,共同住宅等である特例適用住宅に限って新築期間が伸長されているのは,一定規模以上の共同住宅等を建設する場合には,費用の調達や工期の観点から時間がかかることに加え,行政機関に対する各種申請手続や近隣住民との調整などにも時間を要することが通常であることを考慮したものであると認められる。そして,共同住宅等が1棟である場合に加え,複数棟を建築する場合も,戸数が多く大規模な開発となれば,行政上の規制を満たすための調査や行政機関との調整事務等が増大し,また,関係する近隣住民の数が増えて説明等が難航することは珍しくない。そうすると,複数棟を建築する場合であっても,新築期間を伸長する必要があるというべきである。 以上からは,不動産取得税を軽減することによって一定の居住性を備えた住宅の供給を促進するという本件減額規定の趣旨等を考慮すると,取得した土地上に建築される共同住宅等が1棟である場合と2棟以上である場合とで違いはないのであり,この規定は,取得した土地上に1棟の共同住宅等が建築される通常の場合を想定して定められているものであるが,2棟以上の共同住宅等が建築される場合に適用されることを排除するものではなく,むしろ,そのような場合にも同様に適用されるべきものであると解される。本件減額規定は,共同住宅等である特例適用住宅について,それが1棟でなければならないとするものではなく,複数の棟の共同住宅等で合計100以上の独立区画部分がある場合にも適用されると解するのが相当である。 (3) 被控訴人は,文理上,本件減額規定は1棟の共同住宅等で100以上の独立区画部分がある場合にのみ適用される旨主張する。 この点,共同住宅等以外の住宅については,地方税法73条の ある。 (3) 被控訴人は,文理上,本件減額規定は1棟の共同住宅等で100以上の独立区画部分がある場合にのみ適用される旨主張する。 この点,共同住宅等以外の住宅については,地方税法73条の14(不動産取得税の課税標準の特例)第2項及び本件施行令39条の3(法73条の24第1項の規定の適用に関し必要な事項)が,共同住宅等以外の住宅の建築後1年以内に当該住宅と一構となるべき住宅を新築した場合に,これらの前後の住宅の建築をもって1戸の住宅の建築とみなしていることから,建物が1戸であることを前提としていることが明らかである。しかし,共同住宅等についてそれが1棟であるべきことは法令の文言上明示されていない。 そもそも,床面積の要件が充足されているか否かの判断において,共同住宅等以外の住宅については,当然に1戸であるとの判断が前提となるが,共同住宅等については,独立区画部分であるとの判断が前提となるのであって,それに加えて,共同住宅等が1棟であることは,床面積の要件の判断に本質的なものとはいえない。 なお,建物の完成に関して,建物として構造上独立したものが完成したか否かの観点から判断すべきであるから,「共同住宅等以外の住宅」については1戸を単位にするのと同様,「共同住宅等」については「1棟ごと」に判断することになるとしても,そのことは,本件減額規定における100以上の独立区画部分を有する共同住宅等を「1棟」に限定する理由にはならない。 また,固定資産税にいう家屋が,不動産登記法における「家屋」と同義であるとしても,本件減額規定はそれらと制度趣旨が異なるものであるから,不動産登記法における「家屋」と同義に解する必要はない。前記のとおり,本件減額規定は,戸数要件については,共同住宅等の「独立区画部分」を単位としていること はそれらと制度趣旨が異なるものであるから,不動産登記法における「家屋」と同義に解する必要はない。前記のとおり,本件減額規定は,戸数要件については,共同住宅等の「独立区画部分」を単位としていることが明らかであって,更に「1棟」であることが要件となっているとは解されない。 以上のとおりであるから,被控訴人の上記主張は理由がない。 (4) 被控訴人は,本件減額規定において,共同住宅等が1棟であることを要件としないと,複数の建物のどれを対象とするか,敷地の範囲をどうするか,建築時期をいつとするかが問題となり,実務上混乱が生じるおそれがあると主張する。 しかし,複数の建物のうちどれを対象とすべきか,また,敷地の範囲をどうするかについては,建築計画の内容,建物及び敷地の位置関係,建ぺい率及び容積率等から判断することができると解される。なお,敷地の範囲の判断は,新築する共同住宅等が1棟であっても問題となり得るものである。 また,建築時期の認定については,独立区画部分の合計数が累計で100以上となる最終の建物の完成時期を基準とすることなどで的確に判断することが可能であり,それが困難であるとは必ずしもいえない。 これらの点について,複数の建物を対象とする場合に,1棟に限定した場合にはなかった判断をすることになり,これまでになかった多少の困難が生じるおそれがあるとしても,そのことをもって,法令上明文の規定もないのに,本件減額規定を,その制度趣旨に反して制限的に適用することが正当化されるものではない。 したがって,前記の被控訴人の主張も理由がない。 4 結論以上のとおり,処分行政庁は,戸数要件について,法令上明文の規定がないのに,本件減額規定の制度趣旨に反する制限的な解釈に基づいて本件処分をしたものであるから,本件 張も理由がない。 4 結論以上のとおり,処分行政庁は,戸数要件について,法令上明文の規定がないのに,本件減額規定の制度趣旨に反する制限的な解釈に基づいて本件処分をしたものであるから,本件処分は違法として取り消されるべきである。 なお,本件訴訟においては,やむを得ない事情要件についても双方が主張立証をしているものの,前記前提事実によれば,本件処分は戸数要件を満たさないとの理由でされたものであり,本件裁決でもやむを得ない事情要件について実質的な判断はされていないものと認められる。そうすると,行政庁の第1次判断権の尊重の観点から,その充足の有無について当裁判所が判断することは相当でない。また,やむを得ない事情要件を充足しないとする余地が仮にあるとしても,それを理由に本件処分を維持することは違法な理由の差替えとして許されない。したがって,やむを得ない事情要件を満たすか否かについては判断をしない。 第4 以上によれば,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消して本件処分を取り消すこととし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第12民事部 裁判長裁判官杉原則彦 裁判官高瀬順久 裁判官朝倉佳秀

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