【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理 由 上告人Aの代理人小谷勝重、同前田亀千代名義の上告理由第一点について。 本件
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由 上告人Aの代理人小谷勝重、同前田亀千代名義の上告理由第一点について。 本件記録によると、第一審の昭和三一年一一月七日の口頭弁論期日において、上告人Aの代理人が出頭し、被上告人B1、同B2両名代理人において同日付準備書面を陳述していることが認められるところ、右準備書面の記載によると、民法九六条による強迫・詐欺を理由として取り消す旨の主張事実の記載があるから、右期日において、被上告人B1、同B2が強迫を理由として本件売買契約を取り消す旨の意思表示をしたとの原判決の判断は、正当として是認することができる。 原判決には、所論のような違法はなく、所論は採用しがたい。 同第二点について。 原判示の経緯のもとに、F研究所の整理に際し昭和二五年八月末頃、上告人Aが、Gに対し、Hが金三五万円の家屋買収費を受領しながら、本件不動産をH個人名義に取得登記した行為は事業資金を横領したものであると難詰し、Hを刑事訴追する意向のあることをほのめかして、Hが本件不動産の登記名義を同上告人に変更することを承知しないならば、Hの事業の内幕を世間に暴露する趣旨のことを申し向けて、右Gをして上告人Aの意向をHに伝達せしめる一方、同上告人は、Hに対し、原判示のように本件不動産の所有名義を同上告人名義に移すときには、居住を許し、生活をも援助し、事業の整理にも協力しようと申し向けて、事態の発展を危惧していたHをして事業の内幕とくに製造薬品の効能のないこと、さらにGとの内縁関係を世間に暴露されては大学教授たる右Gの社会的生命を絶つことになると畏怖させ、本件不動産を同上告人に譲渡することを承諾せしめ、同上告人において登記手続に- 1 -必要なHの委任状、印鑑 の内縁関係を世間に暴露されては大学教授たる右Gの社会的生命を絶つことになると畏怖させ、本件不動産を同上告人に譲渡することを承諾せしめ、同上告人において登記手続に- 1 -必要なHの委任状、印鑑証明書等の交付をうけて所有権移転請求権保全の仮登記手続をし、その後、H死亡後にした調停不調後Hより交付を受けていた前記書類を利用して所有権移転の本登記手続をした趣旨の原判決の認定した事実は、その挙示の証拠関係のもとに、是認しえないわけでもない。そして、右認定した事実関係のもとにおいては上告人AのHに対する前記所為は強迫行為に該当する旨判示する原判決の判断は、当審も正当として肯認しうる。 原判決には所論のような違法があると断じがたい。所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨・選択、事実の認定を非難するか、または、原審の認定しない事実を前提として、原判決を非難するものであつて、採用しがたい。 同第三点について。 かりに所論の主張が所有権の取得原因として予備的に主張されていたとしても、原判決の判文によると、所論のような事実の認められないことを判示しているものと了知することができるから、原判決には、所論のような違法があるとはいえない。 所論は採用しがたい。 上告人A代理人花房節男の上告理由第一点の一、二、四および第二点、第五点について。上告人A代理人D、同E名義の上告理由第一点および第二点において判断してとおり、原判決には所論のような違法はない。 所論は、採用しがたい。 同第一点の三について。 所論のような売買代金をどうしてえたかという点は、本件訴訟の請求原因においては、いわゆる間接事実にすぎず、当事者の主張を要しないでも裁判所はその存否を判断しうることはすでに当裁判所の判例とするところである(当裁判所第一小法廷判決、昭和二四年(オ) 件訴訟の請求原因においては、いわゆる間接事実にすぎず、当事者の主張を要しないでも裁判所はその存否を判断しうることはすでに当裁判所の判例とするところである(当裁判所第一小法廷判決、昭和二四年(オ)第九三号昭和二七年一二月二五日民集六巻一二号一二四〇頁参照)。 - 2 -それゆえ、原審が、被上告人らにおいて否認する前記間接事実を肯定して判断したことは違法とはいえない(論旨引用の判例は本件に適切でない。)。 所論は、採用しがたい。 同第三点について。 所論の売買の成立については、原判決は、その挙示の証拠関係のもとにおいては認めがたい旨を判示していることは、その判文上から十分了知することができる。 原判決には、所論のような違法なく、所論は採用しがたい。 同第四点について。 原判決が、その挙示の証拠関係のもとにおいて認定した事実関係によれば、上告人Aのした強迫行為は具体的なものであることは明らかであり、所論のごとく具体性を欠くものとはいえない(強迫行為の判示については、かならずしも、具体的日時、場所を判示するを要せず、強迫行為の体様を示し、かつ、これを特定しうれば足りるものと解するのが相当であり、原判決の判分がこれにあたることは明らかである。)。 原判決には、所論のような違法はなく、所論は独自の見解として、排斥を免れない。 同第六点について。 原審が、被上告人B1らの売買予約の取消が昭和三一年一一月七日の口頭弁論期日になされた旨判示したことは違法といえないことは、上告人A代理人D、同E名義の上告理由第一点において判示したとおりであり、上告審においては、時効の援用のような主張を攻撃防御方法としてあらたに提出しえないから、上告人らにおいて消滅時効を援用しうることを前提とする部分の所論は失当である。 つぎに、所論は、昭和三一年一一月七 審においては、時効の援用のような主張を攻撃防御方法としてあらたに提出しえないから、上告人らにおいて消滅時効を援用しうることを前提とする部分の所論は失当である。 つぎに、所論は、昭和三一年一一月七日の口頭弁論期日に取消の意思表示を認めるならば、上告人らに対し時効援用の機会を与えるべきでありこれを認めなかつた- 3 -原判決は、審理不尽の違法があるという。 しかし、本件記録によれば、昭和三一年一一月七日の準備書面には、昭和二九年一月一九日に本件売買契約を取り消す旨の記載とともに右取消の意思表示について争があるときには本件訴状が相手方に送達した日をもつて取消の意思表示をする趣旨の記載のあること、右口頭弁論期日に至るまでは、被上告人らは本件各登記が違法になされて無効であるとのみ主張しており、わずかに昭和三〇年三月一〇日口頭措置論期日において本件各登記の原因たる基本契約は詐欺によるものであつて無効である旨主張を訂正したにすぎないことが認められる。 以上の訴訟の経過に徴すれば、前記準備書面が陳述された時である昭和三一年一一月七日の口頭弁論期日をもつて、本件売買契約について強迫を理由として取消の意思表示がされたものと認めるのが相当であつて(上告人A代理人D、同E明義の上告理由第一点に対する判示参照)、その結果、上告人Aにおいて消滅時効を援用しなかつたとしてもやむをえないものであり、これをもつて原判決に所論のような違法があると断じがい。 所論は、採用しがたい。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官奥野健一裁判官山田作之助裁判 する。 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官奥野健一裁判官山田作之助裁判官草鹿浅之介裁判官城戸芳彦裁判官石田和外- 4 -
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