平成7(行ウ)7 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成12年7月14日 名古屋地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文54,116 文字)

主文 一被告鹿島建設株式会社、被告株式会社奥村組、被告株式会社加賀田組、被告株式会社石田組及び被告日産建設株式会社は、名古屋市に対して、連帯して、金九億円及びこれに対する被告鹿島建設株式会社及び被告株式会社石田組は平成七年四月二日から、被告株式会社奥村組、被告株式会社加賀田組及び被告日産建設株式会社は平成七年四月四日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二被告P2及び被告P3は、名古屋市に対して、連帯して、金一億円及びこれに対する被告P2は平成七年四月三日から、被告P3は平成七年四月二日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 三原告らの被告P1に対する請求を棄却する。 四原告ら、被告鹿島建設株式会社、被告株式会社奥村組、被告株式会社加賀田組、被告株式会社石田組、被告日産建設株式会社、被告P2及び被告P3に生じた訴訟費用は、右被告らの負担とし、被告P1に生じた訴訟費用及び参加人名古屋市長に生じた参加費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第一請求主文第一、第二項同旨の判決並びに「被告P1は、名古屋市に対し、金一億円及びこれに対する平成七年四月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。」との判決第二事案の概要一本件は、名古屋市が、被告鹿島建設株式会社(以下「被告鹿島建設」という。)ほかに対して発注した、ごみ焼却場「新南陽工場」新築請負契約に関し、指名競争入札の予定価格に違法な上乗せがあった、そうでないとしても、談合があったから、右契約の締結及び代金の支払が違法であり、契約は無効であるとして、名古屋市の住民である原告らが、地方自治法(以下「法」という。)二四二条の二第一項四号により、名古屋市に代位して、不法行為に基づく損害賠償ないしは不当利得返還を求める住民訴訟であ 無効であるとして、名古屋市の住民である原告らが、地方自治法(以下「法」という。)二四二条の二第一項四号により、名古屋市に代位して、不法行為に基づく損害賠償ないしは不当利得返還を求める住民訴訟である。 二争いのない事実等(証拠により容易に認定できる事実については、末尾に適宜証拠を示す。) 1 当事者(一) 原告らは、名古屋市の住民である。 (二) 被告P1は、昭和六〇年から平成九年まで名古屋市長であったものである。 (三) 被告P2は、平成元年四月から平成五年三月三一日まで名古屋市建築局営繕部長、同年四月一日から平成六年三月三一日まで建築局次長であったものである。 (四) 被告P3は、昭和五〇年から名古屋市議会議員であったものである。 2 新南陽工場に係る工事の概要(一) 名古屋市は、ごみ処理施設として、名古屋市α一〇一番地内に、一日の処理能力一五〇〇トン、建築物の総面積約五万平方メートルのごみ焼却場「新南陽工場」(以下「新南陽工場」という。)を建設した。 (二) 新南陽工場建設に係る工事は、敷地の掘削工事を中心とする第一期工事と建物本体の建築工事である第二期工事(以下「本件工事」という。)に分けて進められた。 本件工事は、「名古屋市新南陽工場新築工事」という名称で、工期は平成五年七月二日から平成八年一二月二七日、工事概要は、工場棟新築(鉄骨鉄筋コンクリート造地下二階地上六階建延べ床面積五万〇三一六・三九平方メートル)、斜路新築(鉄骨造平家建面積四八一・一六平方メートル)、計量棟新築(鉄骨造平家建床面積一七四・五〇平方メートル)、煙突新設(鉄筋コンクリート造高さ九六・三メートル)であった。本件工事について、平成五年六月三日、指名競争入札が実施され、二一〇億円で、被告鹿島建設を幹事会社とする、被告株式会社奥村組(以下「被告奥村組」とい 筋コンクリート造高さ九六・三メートル)であった。本件工事について、平成五年六月三日、指名競争入札が実施され、二一〇億円で、被告鹿島建設を幹事会社とする、被告株式会社奥村組(以下「被告奥村組」という。)、取下前の相被告更生会社日本国土開発株式会社(以下「訴外日本国土開発」という。)、被告株式会社加賀田組(以下「被告加賀田組」という。)、被告株式会社石田組(以下「被告石田組」という。)からなる特別共同企業体(以下「鹿島建設JV」という。)が落札し、同年七月二日、鹿島建設JVと名古屋市との間で請負代金二一六億三〇〇〇万円(消費税を含む。)で請負契約が締結された(丙二、以下「本件契約」という。)。 なお、本件契約を締結する権限を本来的に有する者は、被告P1であったが、名古屋市の助役以下代決規程四条の別表第一によりP4建築局長が代決した(丙一)。 右工事のうち、地業工事、土工事等について、被告日産建設株式会社(以下「被告日産建設」という。)が鹿島建設JⅤから下請けをした。 3 請負代金の支払名古屋市は、鹿島建設JVに対し、本件契約に基づき、平成五年八月から、平成九年二月四日の一五億六二七二万七〇〇〇円の最終支払まで、合計二一六億一三四一万七〇〇〇円(設計変更により、契約金額より一六五八万三〇〇〇円減額している。)を支払った(甲一〇三)。 なお、契約代金の部分払いについての支出負担行為及び支出命令をする権限を本来的に有していたのは、被告P1であったが、助役以下代決規程四条の別表第一により、右各支払の支出負担行為は、環境事業局長が、支出命令は、環境事業局総務課長がそれぞれ代決した(丙一)。 4 監査請求原告らは、名古屋市監査委員に対し、平成六年一二月二一日、本件工事に関し被告らの行為により名古屋市が受けた損害の填補を求めて監査請求した。 事業局総務課長がそれぞれ代決した(丙一)。 4 監査請求原告らは、名古屋市監査委員に対し、平成六年一二月二一日、本件工事に関し被告らの行為により名古屋市が受けた損害の填補を求めて監査請求した。 名古屋市監査委員は、平成七年二月三日、原告らの主張する本件工事請負代金に九億円が上乗せされた事実が認められないとして、原告らの監査請求を棄却した。 二請求の概要(一) 原告らは、本件工事の請負契約は、次のような、違法な指名競争入札に基づいて契約されたものであると主張する。 被告P1、被告P3、被告P2、被告日産建設は、被告日産建設が、一期工事で生じた水銀問題を処理するために要した補償金等を、本件工事の請負工事代金から捻出して被告日産建設に領得させようと共謀し、被告日産建設を下請けとして使用し、下請代金に上乗せして九億円を支払うことを承諾した被告鹿島建設を落札予定業者とすることとした。そこで、被告P2ら名古屋市の職員において補償金等分に見合う九億円分を水増した二一三億五〇〇〇万円を予定価格とした上、被告P2が被告鹿島建設に対して入札価格を二一○億円とするよう指示した。被告鹿島建設は、本件工事の指名業者との間で鹿島建設JVを落札予定業者とするよう各社の入札金額を指示して談合を行った。その結果、平成五年六月三日に行われた本件工事の入札において、鹿島建設JVは被告P2から指示された二一〇億円(消費税を除く)で落札した。 (二) 原告らは、本件工事に関する指名競争入札には、第一に、名古屋市の予定価格に九億円の上乗せが意図的に行われた違法があり、第二に、談合と予定価格の漏洩が行われた違法があり、違法な指名競争入札に基づいて締結された本件契約は無効であるし、被告らは共同不法行為により名古屋市に損害を与えたとして、被告P1に対しては、違法な契約の締結と代 予定価格の漏洩が行われた違法があり、違法な指名競争入札に基づいて締結された本件契約は無効であるし、被告らは共同不法行為により名古屋市に損害を与えたとして、被告P1に対しては、違法な契約の締結と代金の支出について法二四二条の二第一項四号前段の当該職員としての損害賠償請求を、その余の被告に対しては、同号後段の相手方としての不当利得返還請求及び不法行為による損害賠償請求を求めるものである。 三争点及び争点に対する当事者の主張 1 監査請求を経ているか(本案前の主張)(被告日産建設の主張)原告らが監査請求で主張したのは、本件工事の請負契約金額に九億円が違法に上乗せされているので、その賠償又は不当利得金の返還を求めるというものであり、本件工事の入札に際して談合があったため、請負契約自体が無効であるとする訴えは、監査請求の対象となった事実とは全く異なるから適法な監査請求を経ていない。 (参加人の主張)原告らが監査請求で主張したのは、本件工事が有効であることを前提として、請負契約金額に九億円が違法に上乗せされているので、その賠償又は不当利得金の返還を求めるというものであり、請負契約自体が無効であるとする訴えは、監査請求の対象となった事実とは全く異なるから適法な監査請求を経ていない。 (原告らの主張)原告らは、監査請求で、本件契約の締結及び代金の支払の違法を主張して、損害の填補を求めたものであり、本件訴えの対象と同一である。 2 予定価格に九億円が上乗せされたか(原告らの主張)水銀問題に伴う九億円の補償費等の補填を巡って、まず被告日産建設と被告P3との間で、これを名古屋市に負担させることを謀議し、それに基づいて、本件工事の建築局担当責任者であった被告P2に働きかけがなされ、順次共謀の上、当時建築局長であったP5(以下「P5建築局長」と P3との間で、これを名古屋市に負担させることを謀議し、それに基づいて、本件工事の建築局担当責任者であった被告P2に働きかけがなされ、順次共謀の上、当時建築局長であったP5(以下「P5建築局長」という。)と被告P2との間で、被告日産建設が負担した補償費を名古屋市において面倒を見るとの方針が立てられ、被告P1の承認の下、被告日産建設を本件工事の下請けに入れ、工事代金に九億円を上乗せすることになった。 九億円を上乗せするために、杭工事の内容が、現場打ち杭工事から積算を水増ししやすい既製杭工事に変更され、杭の単価等が市価より高額に積算された。予定価格に九億円が上乗せされたことは、水銀問題に対する名古屋市の対応について協議がされている時期に、杭工事の変更がなされたこと、積算作業を担当していた建築局営繕部特殊建設事務所(以下「特建事務所」という。)のP6(以下「P6特建事務所長」という。)や同事務所の工務第二係長で積算担当者であったP7(以下「P7係長」という。)は、P5建築局長、被告P2と共に水銀問題に当初から関与していて、事情をよく知っていたこと、杭工事が変更されたという後に発表された環境影響評価においても現場打ち杭工事であると記載されていることから、明らかである。 (被告ら及び参加人の主張)名古屋市が行った本件工事の積算は適正であり、その結果を基に算定された予定価格も適正であって、工事費への九億円の上乗せなどはない。 3 談合の有無と本件契約の効力(原告らの主張)(一) 地方公共団体契約の締結について、公正を担保し、有利な契約を締結することを目的として規定された法二三四条、法施行令一六七条の四に違反して締結された契約は私法上も無効というべきである。刑法九六条の三において談合した者については、罰金刑にとどまらず、自由刑である懲役刑ま とを目的として規定された法二三四条、法施行令一六七条の四に違反して締結された契約は私法上も無効というべきである。刑法九六条の三において談合した者については、罰金刑にとどまらず、自由刑である懲役刑まで科すのも、談合行為を厳しく取り締まり、防止しようとするものであり、談合行為は、自由で公正な競争による経済活動を阻害するものとして公序良俗に反し無効である。 本件談合は、業者間の談合にとどまらない悪質なケースである。すなわち、建築局長を補佐し、所管職員を指揮監督する立場にあり、入札の執行予定、予定価格の決定、仮契約の締結、契約議案の議決について建築局長の決裁に先立ち決裁を行った建築局次長である被告P2自らが談合に積極的に関与し、予定価格を若干下回る金額で入札するよう価格まで指示していたのであるから、談合行為の違法性は極めて大きい。したがって、本件契約を無効と解すべきである。 本件は、最高裁第三小法廷昭和六二年五月一九日判決にいう当該契約の効力を無効としなければ、法及び法施行令の規定の趣旨を没却する結果となる事案そのものである。名古屋市自体は、本件談合により少なくとも九億円という甚大な経済的損失を被った被害者そのものであり、右判例により取引の安全が考慮されるべきとされている相手方ではない。 (二) 被告P1が、本件談合の事実を知らず、適法な指名競争入札手続がなされているものと誤信して本件契約を締結したとするならば、被告P1には、請負契約の相手方が適法な競争入札者であると誤信した点で錯誤が生じているというべきであり、また、本件契約の前提事情ないし動機において錯誤が生じているともいえる。そして、右前提事情ないし動機は、本件契約に先立ち表示されていた。右錯誤は、意思表示の内容の主要な部分であり、この点の錯誤がなかったならば、法に違反する談合に加担す いて錯誤が生じているともいえる。そして、右前提事情ないし動機は、本件契約に先立ち表示されていた。右錯誤は、意思表示の内容の主要な部分であり、この点の錯誤がなかったならば、法に違反する談合に加担する意思表示となるから本件契約の締結を被告P1はしなかったであろうし、その意思表示をしないことが一般取引の通念に照らして正当と認められる。したがって、本件契約は、民法九五条本文により無効である。 (三) 本件契約は、契約締結につき代決権限を有するP4建築局長が、権限を濫用して、被告P2と共謀して、被告日産建設に九億円という多額の不当な利益を得させる目的で、談合の事実を承知していながら、仮契約の締結等の決裁を行ったものである。本件契約の相手方である被告鹿島建設においては、名古屋支店副支店長のP8(以下「P8副支店長」という。)らが被告P2らと共謀して談合行為を行っていたから、P9支店長(以下「P9支店長」という。)は当然被告P1の代表権限濫用の事実を知っていたものと推定すべきである。したがって、本件契約は、民法九三条但書の類推適用により、無効である。 (被告らの主張)談合の事実はない。 (参加人の主張)(一) 業者間談合というものは、通常、落札価格をつり上げて、自らの利益を確保する目的で、入札に参加する企業が話し合いで落札予定業者を決定する行為であるが、本件においては、鹿島建設JVが落札する目的で(自らの利益を最大限にする目的はない)、被告P2に指示されて、被告鹿島建設が入札参加企業に入札価格を指示したという特異なものである。 本件契約が、法及び同法施行令の規定に違反したとしても、無効と解すべきではない。 前掲最高裁判決によれば、契約の制限に関する法令の規定に違反して締結された契約も原則として有効であり、違反することが「何人の目にも明らかであ 行令の規定に違反したとしても、無効と解すべきではない。 前掲最高裁判決によれば、契約の制限に関する法令の規定に違反して締結された契約も原則として有効であり、違反することが「何人の目にも明らかである場合」や契約の相手方において「知り又は知り得べかりし場合」といった「特別の場合」に限り、私法上無効になるものである。 本件は、鹿島建設JVが、法及び法施行令の規定あるいはその規定の趣旨に違反したものであるが、このような事案についても同判決の趣旨が当然生かされるべきであり、鹿島建設JVとの契約の相手方たる名古屋市の利益・取引の安全の保護を考慮すべきものである。 本件においては、談合や被告P2の行った入札予定価格の漏洩等は秘密裏に行われ、名古屋市(名古屋市長や建築局長)は同事情を全く知らなかったばかりか、知り得る状態にもなかったから、名古屋市の契約の相手方において違法行為が行われていたとしても「何人の目にも明らか」であったとは到底いえない。また、被告P2が右談合を知っており入札予定価格を漏洩したという事実があったとしても、それは同被告が名古屋市の意思に反して実行したものであり、名古屋市が組織的に行ったものではないから、「当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合」であったとは到底いえない。したがって、本件は同判決のいう「特別な場合」には当たらないことは明白である。 さらに、本件契約が無効であると解するならば、契約の相手方たる名古屋市において不測の損害を被ることになる。すなわち、本件契約が無効となれば、本件工事による建屋等に係る所有権及び使用権の帰属が問題となり、そのため、新南陽工場が使用できなくなる事態が危惧される。名古屋市は新南陽工場において、名古屋市で発生する可燃ごみの約半分を焼却することを計画していたから、新南陽工場が 及び使用権の帰属が問題となり、そのため、新南陽工場が使用できなくなる事態が危惧される。名古屋市は新南陽工場において、名古屋市で発生する可燃ごみの約半分を焼却することを計画していたから、新南陽工場が使用不能となれば、「埋立処分量の減量及び減容」及び「衛生的処理」のために名古屋市が従来から行ってきた「ごみの全量焼却」体制は不可能となる。新南陽工場が使用不能になれば、多額な金銭的損害が生じることはもちろん、名古屋市のごみ処理行政が破綻し、ひいては市民生活に計り知れない悪影響を与えることになる。 (二) 本件契約については、名古屋市と鹿島建設JVとがいずれも希望したとおりの内容について契約を締結しているものであり、表意者と相手の内心的効果意思には何ら異なるところはなく、要素の錯誤は存しない。 (三) 名古屋市すなわち契約締結権者たる建築局長としては、適正な入札を行う意思を有し、その意思に基づき適法に入札を行い、落札者を決定し、契約を締結したものであり、当該契約を有効に成立させる意思を真実有していたものである。名古屋市は心裡留保していないのであり、民法第九三条但書の適用はない。 4 損害があるか(原告らの主張)(一) 談合及び予定価格の漏洩という不法行為により、指名競争入札が行われた場合は、正常な競争入札がなされた場合に比べて、落札価格が高くなることは明白である。本件談合及び予定価格の漏洩という不法行為により、名古屋市は、談合が行われず正常な競争入札が実施されたと仮定した場合の価格である想定落札価格と実際の落札価格との差額相当額の損害を被ったものである。 本件契約は無効であり、不当利得の関係では、支払われた代金全額を損害とすることもできるが、契約の目的物の引渡しを受けていることも考慮し、前記の想定落札価格と実際の落札価格との差額相当額を損害と主 本件契約は無効であり、不当利得の関係では、支払われた代金全額を損害とすることもできるが、契約の目的物の引渡しを受けていることも考慮し、前記の想定落札価格と実際の落札価格との差額相当額を損害と主張する。 (二) 想定落札価格については、その性質上、その額について立証することは、困難である。よって、民事訴訟法二四八条の適用により損害の認定を行うべきであり、名古屋市の損害は九億円以上である。 (被告ら及び参加人の主張)本件契約は、適正な積算結果に基づき決定された予定価格の範囲内において契約が締結されており、名古屋市の契約の相手方である鹿島建設JVは契約書等の内容にしたがって誠実に工事を施工し、名古屋市は目的物の引渡しを受け、請負代金の支払を行ったのであるから、名古屋市に損害はない。 (被告P1を除く被告ら)(一) 民事訴訟法二四八条は、損害があることが要件であるが、名古屋市に損害はないから、同条の適用はない。 (二) 被告鹿島建設は、上乗せすることを約束した九億円を、企業努力をして請負代金の中から捻出したものであり、名古屋市には損害はない。 (三) 本件工事については、指名を受けた業者の内、受注の意欲を有していた者は、鹿島建設JV以外には一社もなく、指名競争入札制度が予定している受注のための競争は存在しなかった。本件工事の入札に当たり、被告P2から入札額について教示がなかったとしても、被告鹿島建設としては、二三八億円と見積もっていたから、同金額を基準として、鹿島建設JVは入札していたことになる。また、他の業者は間違っても落札しないように被告鹿島建設に入札額を問い合わせたはずである。二三八億円で入札しても予定価格内に収まらなかったから、入札が繰り返し行われることになるが、そうすれば、入札額は徐々に減額されて予定価格に極めて近い数字で落札 建設に入札額を問い合わせたはずである。二三八億円で入札しても予定価格内に収まらなかったから、入札が繰り返し行われることになるが、そうすれば、入札額は徐々に減額されて予定価格に極めて近い数字で落札されることになったはずである。このように、本件工事については、競争を排除するための談合はなく、逆に受注回避のための談合があったのであるから、被告P2の教示がなかったとすれば形成された入札価格は二一三億五〇〇〇万円ないしはそれをわずかに下回る金額であったと認定されるべきである。よって、名古屋市に損害はない。 5 被告P1の責任について(原告らの主張)本件工事は、総額八〇〇億円を超える巨大公共事業の一環であり、請負代金二一〇億円を超える規模の契約発注であるから、被告P2は、被告P1と、本件談合及び落札価格指示についてあらかじめ協議し、その同意を取り付けた上で行為に及んだ。 そうでないとしても、被告P1は、水銀問題について被告日産建設から補償要求がなされている事実を知っている上、入札に先立って市議会において本件工事の入札を巡る談合疑惑が指摘されたのであるから、本件工事の入札において談合が行われる可能性を予見できたにもかかわらず、何らの措置を講じなかった。被告P1には過失がある。 被告P1は、本件談合と予定価格の漏洩があったことを、遅くとも被告P2らが起訴された平成七年一〇月二七日までには知ったにもかかわらず、その後も残代金を支払い続けた責任がある。 (被告P1の主張)被告P1が、水銀問題について報告を受けた機会は、二回あるが、いずれの場合も、検査の結果水銀は検出されず、業者間の問題であると報告を受けており、被告日産建設から補償要求があったことは一切報告されていないから、報告を端緒として、ことさら部下を指揮監督すべき必要はなかった。 ま 査の結果水銀は検出されず、業者間の問題であると報告を受けており、被告日産建設から補償要求があったことは一切報告されていないから、報告を端緒として、ことさら部下を指揮監督すべき必要はなかった。 また、被告P1について、談合に関して責任があるとすれば、談合の存在を察知し、部下に契約締結手続を止めさせるべきであると判断すべき特段の事情があることが必要であるが、本件工事に関して報告を受けたのは、平成四年一二月が最後であり、談合の存在については知る由もなかった。本件契約時に談合が行われたと疑うべき事情はなかった。 支出命令を代決した環境事業局総務課長は、本件契約は直ちに無効と解すべきではなく、有効であれば、設計どおり工事が完了した以上、契約上代金支払義務があること、本件工事の積算は適正に行われており、契約の目的物も引き渡されているので、残代金を支払っても名古屋市に損害はないこと、支払をしなければ、目的物の引渡しを受けられない事態も予想され、その場合の影響は計り知れないことを、熟慮検討した上、残代金の支払命令を発したものであり、被告P1において、環境事業局総務課長に対する指揮監督を怠った事実はない。 第三当裁判所の判断一事実経過前記争いのない事実等に加え、以下の各項の冒頭に括弧書きで表す証拠及び該当個所で適宜示す証拠並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実を認めることができる。 1 一期工事の概要(甲三、一〇、七四)(一) 一期工事は、「名古屋市新南陽工場新築掘削その他工事」という名称で、平成三年一一月五日、指名競争入札が行われ、被告日産建設を幹事会社とし、白石建設株式会社、西武建設株式会社、株式会社小島組からなる特別共同企業体(以下「日産建設JV」という。)が、三七億五〇〇〇万円で落札した。 そして、日産建設JVと名古屋市との間で、工 事会社とし、白石建設株式会社、西武建設株式会社、株式会社小島組からなる特別共同企業体(以下「日産建設JV」という。)が、三七億五〇〇〇万円で落札した。 そして、日産建設JVと名古屋市との間で、工期を同年一二月四日から平成五年二月二七日、請負金額を三八億五七四五万三〇〇〇円(消費税を含む。)とする請負契約が締結された。工事の内容は、掘削工事、既設建物取壊し工事、樹木移植及び伐採工事である。 一期工事は、日産建設JVから、同年二月二七日に工事完了届が出され、完了した。 (二) 新南陽工場の敷地はもともとごみ捨て場であったので、掘削により排出される物をごみとして岐阜県多治見市にある名古屋市が管理する愛岐処分場に持ち込む計画であった。そこで、平成二年一一月二九日、名古屋市の環境事業局において、新南陽工場の敷地内の二地点から分析試料を採取し、財団法人東海技術センターで調査をしてもらったところ、水銀は検出されないとの分析結果が得られていた。 ところが、平成四年一月ころ、多治見市議会議員らから、搬入する残土に有害物質が混じっている疑いがあるとして、ごみの持ち込みに反対する意見が出された。 そこで、多治見市議会議員立会いのもと、同月二三日、新南陽工場の敷地内の四地点及びダンプトラック積載物から分析試料を採取して、財団法人東海技術センター及び財団法人日本気象協会東海本部に、水銀含有の有無について分析調査を依頼した。その結果、同年三月下旬ころ、水銀等の有害物質が検出されないという結果が出て、多治見市の了解が得られ、同年四月から、掘削工事を開始することができるようになった。 2 水銀問題の発生(甲一、三、四、七)(一) 日産建設JVは、株式会社東海土木工業(平成五年九月三日村上技建株式会社に社名を変更。以下「東海土木」という。)に対して、ソイルセメント ようになった。 2 水銀問題の発生(甲一、三、四、七)(一) 日産建設JVは、株式会社東海土木工業(平成五年九月三日村上技建株式会社に社名を変更。以下「東海土木」という。)に対して、ソイルセメント柱列壁工事により発生した汚泥の処理を委託していたところ、平成四年六月一七日、東海土木から、日産建設JVに対し、処理の委託を受けた汚泥から水銀が検出されたとの連絡があった。 東海土木の言い分によると、同年五月一三日から、新南陽工場の現場から汚泥を搬入し、同社飛島プラントにて脱水処理を開始したところ、同月二五日、プラントの循環槽の中の微生物が全滅し、同月二八日には、水槽内の金魚や亀が死亡した、そこで、医療法人宏潤会大同病院環境測定センターに、新南陽工場の現場から搬入された汚泥の分析を依頼したところ、同年六月一六日、全水銀が一リットル当たり三三・一ミリグラム含まれるとの分析結果が出たというものであった。 右分析結果の一リットル当たり三三・一ミリグラム含有されるという値は、廃棄物処理法(及び水質汚濁防止法)上の基準である一リットル当たり〇・〇〇五ミリグラムの六六二〇倍であり、環境基本法を受け、平成六年二月二一日付けで発せられた「土壌の汚染に係る環境基準(環境庁告示第四六号)」である一リットル当たり〇・〇〇〇五ミリグラムの六万六二〇〇倍である。 なお、ソイルセメント柱列壁工法とは、ソイルセメント(液状となったセメント(セメントミルク)と土砂が混合したもの)により柱列壁を形成する工法であり、日産建設JVが一期工事で行った工事は、まず、施工部をロックオーガーという掘削機で直径一〇〇〇ミリメートルの円柱状に掘削して、掘削により空洞となった部分を土砂で置き換えた上、再度、直径六〇〇ミリメートルのオーガーにより、周囲に土砂が残るように中心部を掘削し、同時にセ う掘削機で直径一〇〇〇ミリメートルの円柱状に掘削して、掘削により空洞となった部分を土砂で置き換えた上、再度、直径六〇〇ミリメートルのオーガーにより、周囲に土砂が残るように中心部を掘削し、同時にセメントミルクを注入し、土砂と撹拌しながら予定の深さまで掘り進み、その後、中心にH鋼を挿入するというものであり、東海土木が処理した汚泥とは、H鋼挿入時に溢れ出たソイルセメントである(甲一〇)。 (二) 日産建設JV担当者は、東海土木の検査結果を確かめるため、東海土木立会いのもと、平成四年六月一九日、七月九日、同月一六日の三回にわたり、新南陽工場内の九地点で分析試料を採取して水銀含有の調査を行った(分析機関は株式会社東海分析化学研究所)が、全水銀は検出されなかった。 一方、東海土木は、同年六月二〇日、同月二四日、同月二五日に、飛島プラント内でサンプルを採取し、医療法人宏潤会大同病院環境測定センターに分析を依頼したところ、七月三日、同月二〇日付けの各分析報告書には異常値が見られた。 なお、水銀問題が新聞報道された後の平成六年二月四日に、名古屋市環境事業局が、新南陽工場地内の五地点(ソイルセメント固化物と置換土)で分析試料を採取して行った水銀含有の調査(分析機関は財団法人東海技術センター)によると、溶出試験では、西側中央及び北側中央置換土のみ定量限界一リットル当たり〇・〇〇〇五ミリグラムを超える〇・〇〇〇六ミリグラムが検出されたが、その他の地点では検出されなかった。 (三) 平成四年七月一三日には、東海土木から、被告日産建設に対して、休業補償を含めて総額一〇億一五二九万九八四〇円の損害の見積書が提出され、東海土木と日産建設JVとの間で、対策の協議と補償交渉が始まった。被告日産建設側は、名古屋支店営業部次長兼南陽総括事務所長であるP10(以下「被告日産 億一五二九万九八四〇円の損害の見積書が提出され、東海土木と日産建設JVとの間で、対策の協議と補償交渉が始まった。被告日産建設側は、名古屋支店営業部次長兼南陽総括事務所長であるP10(以下「被告日産建設のP10」という。)と日産建設JVの現場所長であったP11(以下「P11現場所長」という。)が、交渉に当たった。 同月一四日、被告日産建設は、右見積書の中に入っていた事項の一つである、残りの汚泥の処理については日産建設JVが引き受けるので、補償対象としない旨の提案をし、了承され、その後は、補償額について交渉が重ねられたが、なかなかまとまらず、平成五年一月初旬になって、日産建設JVと東海土木との間で四億円の営業補償を支払うという内容で合意が成立した。 3 水銀問題に関する被告日産建設と名古屋市の交渉(甲二、二七、二九、三二、五五、七六)(一) 平成四年六月二二日ころ、被告日産建設のP10とP11現場所長から、P6特建事務所長及びP7係長に報告があった。報告内容は、東海土木がソイルセメント柱列壁工事により発生する建設汚泥から高濃度の水銀を検出したと言ってきたが、報告が曖昧なため日産建設JVとしても分析試料を採取し検査しているので今しばらく待ってほしいというものであり、これに対し、P6特建事務所長は、「名古屋市が関与することではない。元請けと下請けの業者間の問題である。」と言って相手にしなかった。 (二) P6特建事務所長は、同月二三日、日産建設JVから右のような報告があったことを環境事業局のP37主幹に報告した。 P6特建事務所長は、同日、被告P2に対して、「日産建設から、日産建設の下請けに入っている東海土木という産廃の処理業者が工事現場から出た汚泥を運び込んだ処分場で水銀が出たと連絡があった。それで日産建設の方でも調査している。」と報告 に対して、「日産建設から、日産建設の下請けに入っている東海土木という産廃の処理業者が工事現場から出た汚泥を運び込んだ処分場で水銀が出たと連絡があった。それで日産建設の方でも調査している。」と報告した。 被告P2は、現場から水銀が検出されないという前提で多治見市に掘削したごみの受け入れを了承してもらっていたので、本当に水銀が出たらやっかいなことになると思い、P5建築局長に報告したが、水銀が本当に出たか分からないので、被告日産建設の調査結果を待つことになった。 同日、被告P3が、被告P2に、電話で、「水銀が出たらしいな。えらいことだな。」と言ってきた。 なお、被告P2と被告P3とは、被告P2が建築局営繕課長のころから、被告P3が業者の指名を頼みに来たり、設計業者名を聞き出しに来たりし、被告P2がこれに便宜を図っていた関係にあり、一緒に飲みに行ったり、ゴルフをするような親しい間柄であった。被告P3と被告日産建設のP10も仲がよく、被告P2は被告P3からP10を紹介され、同様に親しい間柄となった。 (三) 同年七月上旬ころ、被告日産建設のP11現場所長からP7係長に、口頭で、日産建設JVの試料分析結果によると水銀の含有量は基準値以下であったと報告があり、右報告は、P6特建事務所長を経て被告P2に伝えられた。 (四) 同月一三日ころ、被告日産建設のP10とP11現場所長が、P6特建事務所長及びP7係長に対し、被告日産建設の結果では水銀が出なかったが、東海土木から補償を求められていることを報告した。これに対して、P6特建事務所長は、被告日産建設のP10に対し、「東海土木の言い分には確実な証拠がない。日産建設の試験でも水銀が出ていないことから名古屋市が関与する問題ではない。元請けと下請けの問題である。」と言って、右報告を無視する態度を示した。同 0に対し、「東海土木の言い分には確実な証拠がない。日産建設の試験でも水銀が出ていないことから名古屋市が関与する問題ではない。元請けと下請けの問題である。」と言って、右報告を無視する態度を示した。同月一四日、P6特建事務所長は被告P2に対し、右事情を報告した。 (五) 同月一三日ころ、被告日産建設のP10は、被告P3に、東海土木から一〇億円の要求を受けており、東海土木は記者会見で発表すると言っているが、下請けの手配も済んでおり、工事が遅れると困る、一〇億円を被告日産建設が対応することはできないので、被告P3から名古屋市の担当の方に話してほしい、P6特建事務所長では相手にならないのでその上司に働きかけしてほしいと依頼した。被告P3は名古屋市に働きかけることを約束した。 (六) 同月一五日ころ、被告P3は、同人の事務所に、環境事業局のP37主幹、被告P2を呼び付けたが、その場には被告日産建設のP10とP11現場所長が同席した。被告日産建設のP10が、東海土木が提出した計量証明書を見せて、「水銀が六六万倍も出たらしい。こんなことが表に出たら大変でしょうね。多治見も騒ぐでしょうし。東海土木から休業補償ということで一〇億円要求されている。」と言い、被告P3も、「これは大変なことだ。補償ということになったら名古屋市の方で何とかしてもらえるように正式に報告書を作って持って行かなければいかんわな。」と言った。被告P2は、その場では、「民間どおしで話し合ってもらえませんか。」という返事をするにとどめた。 (七) 同月一六日、被告P2は、P6特建事務所長に報告資料を作成させ、右資料を基にこれまでの経過をP5建築局長に報告した。被告P2とP5建築局長との間で今後の対応を相談した結果、この問題で名古屋市が前面に出ることはまずいので、元請けの被告日産建設と下請けの 成させ、右資料を基にこれまでの経過をP5建築局長に報告した。被告P2とP5建築局長との間で今後の対応を相談した結果、この問題で名古屋市が前面に出ることはまずいので、元請けの被告日産建設と下請けの東海土木との間で解決させるようにしようということになった。 そして、被告P2から、被告日産建設のP10に対し、被告日産建設、東海土木及び名古屋市で話し合いをしたいという申し出には応じられないと返事し、「今、名古屋市が表に出るわけにはいかんので、何とか業者間で話をつけてほしい。」と頼んだ。 (八) 同月一七日、被告P3から、被告日産建設に来るように言われて、P6特建事務所長は、P37主幹と共に被告日産建設に赴いたところ、被告日産建設のP10が同席し、被告P3から、東海土木が弁護士を立てて一〇億円を要求している、東海土木としては水銀が出たことを県に報告しなければならないが、公になっては業者も名古屋市も県も困るだろう、名古屋市の方で何とかしてやってほしいと言われた。P6特建事務所長は、名古屋市の検査では水銀は出ていないので、名古屋市が対処する問題ではないとしつつ、上司に相談すると言った。 (九) 次いで、同月一八日ころ、被告P2が、被告P3から、被告日産建設に来るように言われて行ったところ、被告P3、被告日産建設のP10と被告日産建設名古屋支店長であるP31がいて、「東海土木に対する補償金の一〇億円を何とか名古屋市の方で面倒見てもらえないか。本件工事に日産建設を入れてもらえたらそこで調整する。」と頼まれ、同月二〇日に建築局長に提出する予定の報告書の原文を見せられた。被告P2は検討してみると回答して、その場を離れた。 (一〇) 同月二〇日、被告日産建設のP31名古屋支店長及びP10がP5建築局長及び被告P2に対し、水銀問題の顛末を内容とする報告書を提出 せられた。被告P2は検討してみると回答して、その場を離れた。 (一〇) 同月二〇日、被告日産建設のP31名古屋支店長及びP10がP5建築局長及び被告P2に対し、水銀問題の顛末を内容とする報告書を提出した。その内容は、本件工事で発生した汚泥の中から水銀等の物質が検出されたと汚泥処理業者から報告を受けたこと、被告日産建設の検査では基準値内で問題がないこと、しかし、処理業者の検査で水銀が基準値の六六万倍も検出されたことから、処理業者がプラントの運転を休止していること、休業補償等として高額の請求を受けているので対応を相談したいという内容であった。その場で、P10が、補償金一〇億円の補填を名古屋市の方で何とか面倒見てくれないかと言ったが、P5建築局長は、「何とか元請けと下請けの間の問題として処理してほしい。」と回答した。なお、右報告書は正式の受理ではなく一時預かりであったが、被告P2は、この原本又はそのコピーを、事件が発覚したのち、P4建築局長と相談して処分している。 同日、建築局長室において、P5建築局長、P12次長、被告P2、P32総務課長、P6特建事務所長、P7係長らが集まって、対応策について話し合いがなされた。その結果、「名古屋市として一番困るのは水銀の件が公になることだ。とにかく業者間で話し合ってもらい、日産建設にうまく解決してもらうしかない。」という結論になった。 被告P2は、P6特建事務所長に対し、助役及び市長に経過を説明するための資料作成を指示した。そして、被告P2とP5建築局長は助役に説明した後、被告P1に説明に行った。P5建築局長が、資料に基づいて経過を説明し、「この問題は元請けと下請けの間で解決させようと思っています。この件についてはP3先生にも中に入ってもらっています。」と報告した。これに対し、被告P1は「この件が表 が、資料に基づいて経過を説明し、「この問題は元請けと下請けの間で解決させようと思っています。この件についてはP3先生にも中に入ってもらっています。」と報告した。これに対し、被告P1は「この件が表沙汰にならないように処理してくれ。」と言った(なお、被告P2は、本人尋問において右のような発言はなかったと主張するが、信用できない。)。 (二) 同月二二日、被告P2、P12次長及びP6特建事務所長が名古屋市の顧問弁護士に対応を相談したところ、この問題は元請けと下請けの間で解決させればよい、名古屋市はとりあえずその様子を見ていればよいということであったので、成り行きを見守ることとした。被告P2はその結果をP5建築局長に報告した。 4 補償金九億円の上乗せ方法の決定(甲二七、二九、三三、七六)(一) その後、被告P2は、被告日産建設のP10から、東海土木との補償交渉の進展状況を聞いていたが、P10や被告P3から、補償の件を名古屋市で面倒を見てくれるように何度も頼まれたため、できることなら何とかしたいと思うようになった。そこで、P5建築局長に対し、水銀のことが公になると大変なので、補償の件の面倒を見る必要があると話したが、P5建築局長は、その必要性については認めながら、名古屋市が今後発注する工事について被告日産建設を指名に入れるなどの方法で被告日産建設に利益を上げさせて補填を行うという方法はどうかという程度であった。 被告P2はそのような内容では解決しないであろうと考えていたが、平成四年八月ころ、被告P3の誘いで被告日産建設のP10と名古屋市内の料理屋で飲食を共にした際に、「日産建設は名古屋市の仕事をこれからも取れるんだから、補償の補填のこともそういう中で何とかしていくというのはどうだろうか。」と話したところ、P10は、「そんなきれいごとではだめだ を共にした際に、「日産建設は名古屋市の仕事をこれからも取れるんだから、補償の補填のこともそういう中で何とかしていくというのはどうだろうか。」と話したところ、P10は、「そんなきれいごとではだめだ。」と拒否した。その場で、被告P3が「新南陽にもう一度入れてやれんか。」と本件工事の受注者に被告日産建設を入れることを提案をしたが、被告P2は、「一期工事と本件工事の両方に入れると談合を疑われるから、そのようなことはできない。」と拒否した。 (二) 同年九月か一〇月ころ、被告P3の誘いで被告P2が被告P3、被告日産建設のP10と名古屋市内の料理屋で飲食を共にした際に、被告P3が「日産建設を新南陽の下請けに入れて、その下請代金で補填するしかないじゃないか。」、「二期の下請けに入れるよう本命業者(業界では、落札予定業者を本命業者と言っていた。)に頼んでもらえないか。補償の問題を処理できるように下請代金に上乗せをするように本命業者に頼んでもらえないか。」と言い、被告日産建設のP10も「それならうちの方もいいですよ。P2さん、それでお願いしますよ。」と言い、頭を下げて頼んだ。被告P2は、落札予定業者にこのような上乗せの条件を呑ませた上、その業者に落札させることができるのは、自分しかなく、補償金の面倒を見るには、そのようなやり方しかないのだと思い、そのような方向にもっていくことを約束した。被告P2は、補償金が一〇億円くらいになってしまったとしても、本件工事は二〇〇億円を超える工事であるので、落札した業者がそのくらいの金額を捻出することはそれほど無理なことではないだろうと思っていた。また、名古屋市の工事単価はあまり変動させず、実際の市場価格が低くなっていても、すぐ、それに合わせて単価を決めるようにはしていなかったため、市場価格が、名古屋市の単価よりだいぶ だろうと思っていた。また、名古屋市の工事単価はあまり変動させず、実際の市場価格が低くなっていても、すぐ、それに合わせて単価を決めるようにはしていなかったため、市場価格が、名古屋市の単価よりだいぶ低めであったので、下請代金に一〇億円の上乗せをしたとしても元請業者が赤字になることはないだろうと考えていた。被告P3も同様の考えであった。 (三) そのころ、被告P2は、P5建築局長に、被告日産建設の補填の件は、本件工事の下請けに日産建設を入れて、下請代金で補填するしかありませんので、そういうことで話がつきましたと報告した。P5建築局長も「それしかないわなあ。」と言った。 (四) 同年一二月四日、被告日産建設のP10が被告P2の所に来て、被告日産建設と東海土木の交渉結果の説明をし、休業補償は六億六七一六万円ほどになったが、被告日産建設が直接汚泥を処理した費用二〇〇〇万円と東海土木に補償金を払うための経費が含まれていないので面倒を見てほしいと頼んだ。 そのころ、被告P3と被告日産建設のP10は、東海土木に対する補償の外に、被告日産建設が残りの汚泥を運んだ費用や支払のために下請業者などをくぐらせるための経費を含めると全部で九億円かかることを考慮し、下請代金へ上乗せしてもらう額を九億円とすることに決めた。 (五) 同月中旬ころ、東海土木から委任を受けた弁護士が被告P1に面談を求める電話を架けてきたことから、P5建築局長が被告P1に水銀の件の経過報告をすることになった。P5建築局長は、被告P2が作成した資料を基に被告P1に報告したが、その内容は、最終的に同月一七日、被告日産建設から解決した旨の報告を受けたというものであり、被告日産建設を本件工事の下請けに入れ、補償金を上乗せすることは伏せられた。 (六) 同月末ころから平成五年一月ころまでの間に、被告P 七日、被告日産建設から解決した旨の報告を受けたというものであり、被告日産建設を本件工事の下請けに入れ、補償金を上乗せすることは伏せられた。 (六) 同月末ころから平成五年一月ころまでの間に、被告P3と被告日産建設のP10、被告P2が料理屋で飲食を共にした際、上乗せ額をいくらとするかについて詰めがなされた。被告P2は、被告P3らから九億円を主張されて、八億円くらいにならないかと言ってはみたが、被告日産建設のP10から「日産建設から補償費用ということで直接東海土木に払うわけにはいかないので、間に信用のある会社を入れる必要がある。そうなると税金も掛かるし、いろいろな経費も掛かるので上乗せ分は九億円と言うことになるのです。」と説明され了承した。 5 本件工事の落札予定業者の調整(甲二七、三〇、三三、三五、三六、四一、四二、四八、五五、七四、七八、八三)(一) 本件工事の本命業者、すなわち受注が確実視されていた者は株式会社大林組(以下「大林組」という。)であった。被告P2も、旧南陽工場の施工が大林組であったことから、大林組が落札予定業者となることを予想し、一期工事の入札の際には、「新南陽の下の工事は大林組は遠慮してください。その代わり、建築には間違いなく入れますので。」と、大林組の営業部第一部長P13に申し向けていた。 大林組は、確実に受注できるとの思惑で、後記のとおり、名古屋市から設計業務の委託を受けた株式会社大建設計名古屋事務所(以下「大建設計」という。)を抱き込んで、構造設計を任されることになり、本件工事に関する情報を手に入れていたほか、戸田建設株式会社(以下「戸田建設」という。)、訴外日本国土開発、被告加賀田組、被告石田組との間で共同企業体を組むことも決めていた。 (二) 平成五年二月ころ、被告P2は、大林組の名古屋支店長であるP16 設株式会社(以下「戸田建設」という。)、訴外日本国土開発、被告加賀田組、被告石田組との間で共同企業体を組むことも決めていた。 (二) 平成五年二月ころ、被告P2は、大林組の名古屋支店長であるP16(以下「P16支店長」という。)を呼び、被告日産建設が下請けのトラブルで九億円位の損害を被り、補填問題が生じたこと、名古屋市としては表向きの金を出すことができないので、被告日産建設を下請けに入れて下請代金に九億円上乗せしてやってほしいと依頼した。P16支店長はこれを承諾した。 (三) 同年三月一五日、名古屋市議会建設環境委員会で、P14議員が、本件工事について談合の疑惑がある、大林組が本命業者に決まっている旨の発言をした(ただし、議事録中の「大林組」との部分は削除された。)。そして、P14議員に続いて被告P3が大林組と戸田建設がJVを組むことになっていると発言した。 (四) 同年四月、P5建築局長が退職して、P4建築局長に変わり、被告P2は営繕部長から建築部次長に昇任した。 (五) 名古屋市長選挙が同月二五日行われたが、その翌日の二六日、被告P2とP4建築局長は、P15議員から、本件工事について談合のうわさどおりに、大林組が落札者になるようなことのないように釘を刺された。そこで、被告P2とP4建築局長は、同月二七日に予定されていた本件工事の指名審査会を延期とし、大林組と調整して、戸田建設を外し、被告奥村組をJVに入れることとし、P15議員の了解を得ようとした。 しかしながら、同日面会したP15議員は、「大林組が入って契約したら絶対許さない。」と言い、P4建築局長らの考えを一蹴した。 P4建築局長、被告P2は、協議の結果、本件工事の指名から大林組と戸田建設を外すこととし、同月三〇日に予定している指名審査会を延期することとした。被告P2は、P4建 4建築局長らの考えを一蹴した。 P4建築局長、被告P2は、協議の結果、本件工事の指名から大林組と戸田建設を外すこととし、同月三〇日に予定している指名審査会を延期することとした。被告P2は、P4建築局長に「既に業界の調整がついているので、しばらく時間が掛かるが、業界の方は、私が何とかします。」と言い、P4建築局長は、これを了承し、被告P2に任せることとした。 (六) 落札予定業者であり九億円の上乗せを承諾していた大林組を指名業者から外すこととしたため、被告P2は、被告日産建設の下請代金に九億円を上乗せしてくれる業者を探さざるを得なくなった。 本件工事は二〇〇億円を超える大工事であるので、JVの幹事会社となれるのは、大手五社である大林組、清水建設、大成建設、被告鹿島建設、竹中工務店のみであったが、清水建設は市立大学病院、大成建設は国際会議場の受注者とすることが決まっていたし、被告鹿島建設は大江破砕工場の落札予定業者であったので、同月二八日、被告P2は、竹中工務店に連絡を取ったが、被告P3が被告鹿島建設の名を挙げたので、被告P2は、被告鹿島建設に依頼することに決めた。 被告P3は、同日、P8副支店長に電話し、落札予定業者の大林組が降りたので、本件工事を受注してほしいと伝え、了解してもらった。被告P3は、被告日産建設のP10にもこの話をした。P10は査定に厳格である被告鹿島建設が共同企業体の幹事会社となることに難色を示したが、被告P3が名古屋市の意向であることを告げると納得した。 (七) 連休後の五月六日ころ、被告P2は、大林組のP16支店長に、市議会での談合疑惑があるので本件工事の指名に入れられなくなったと告げた。P16支店長は、「何とかなりませんか。」と言ったが、被告P2は、被告鹿島建設に依頼したことを話した。P16支店長は、「役所が 議会での談合疑惑があるので本件工事の指名に入れられなくなったと告げた。P16支店長は、「何とかなりませんか。」と言ったが、被告P2は、被告鹿島建設に依頼したことを話した。P16支店長は、「役所がそう言われるのなら仕方ありません。 身から出た錆ですから。」と言って、了承した。 (八) 被告P2は、同月七日ころ、被告P3に言われたとおり、被告鹿島建設のP8副支店長に電話を入れ、本件工事を大林組に代わって受注してほしいと申し入れた。P8副支店長は被告P3から電話で聞いていたため、本件工事を受注する意思があることを伝え、被告P2から示された被告日産建設を下請けとして使い、下請代金に九億円を上乗せする条件を承諾した。P8副支店長は、部下である営業部長であるP17(以下「P17営業部長」という。)を呼び、被告P2と被告P3から、被告日産建設を下請けにすること及び九億円を下請代金に上乗せすることを条件として、本件工事を受注するよう頼まれたので担当として頑張るように指示した。 (九) 同日、被告P2は、建築局長室で、P4建築局長に対し、「業界の調整もつきました。大林組も納得しています。大林組と戸田建設については、国際展示場の方の指名に入れておきますので、談合疑惑で外したことにはならないと思います。」と説明し、P4建築局長は、被告P2によって業界の調整がなされたことを知った。 同月一〇日、指名審査会が開かれ、五〇社が特別共同企業体構成員選定通知(予備指名通知)を受けた。指名審査会のメンバーは、P4建築局長、被告P2、P18建築局総務課長、P19建築局用度係長、P10建築局営繕部長、P20建築局営繕課長、P21建築局営繕課工務第二係長、P6特建事務所長、P7係長であった。指名審査会において、被告P2から、談合の問題があるので、新南陽工場から大林組、戸田 、P10建築局営繕部長、P20建築局営繕課長、P21建築局営繕課工務第二係長、P6特建事務所長、P7係長であった。指名審査会において、被告P2から、談合の問題があるので、新南陽工場から大林組、戸田建設を外し、その代わり、国際展示場の方に大林組と戸田建設を入れたとの説明がなされた。 (一〇) 被告鹿島建設のP8副支店長は、営業部次長のP22(以下「P22営業部次長」という。)から、大林組が指名から外れたことを聞いて、本件工事を受注することになった、工事受注条件として被告日産建設を下請けに使うこと、その下請代金に九億円の上乗せをするよう言われているので、見積課に九億円を上乗せした見積りを作るようにP22営業部次長に指示した。 同月一一日、被告鹿島建設の業界担当営業部長のP23(以下「P23営業部長」という。)が、P8副支店長に、被告奥村組と訴外日本国土開発がJVを組みたいと言ってきていると報告に来た。 そこで、P8副支店長は、P23営業部長とP9支店長とで、本件工事の受注について会議を開き、これまで受注に努力してきた大江破砕場を諦め、本件工事を進めることでP9支店長の了解を得た。JVの選出はP23営業部長に任された。なお、P8副支店長は、被告日産建設の下請け及び九億円の上乗せはP9支店長には伏せておくつもりであったので、その席上、話をしなかった。 同日、P23営業部長から、大林組は工事の規模が二四〇億円規模と言っていたこと、JVのメンバーが、被告奥村組、被告加賀田組、被告石田組と訴外日本国土開発になったことの報告を受けたP8副支店長は、P22営業部次長に「大林は二四〇億円位の規模だと言っているらしい。」と伝えた。 (二) 同月一三日、本指名があり、JV一〇組が指名された。被告鹿島建設は、被告奥村組、被告加賀田組、被告石田組及び訴外日本国土 部次長に「大林は二四〇億円位の規模だと言っているらしい。」と伝えた。 (二) 同月一三日、本指名があり、JV一〇組が指名された。被告鹿島建設は、被告奥村組、被告加賀田組、被告石田組及び訴外日本国土開発と特別共同企業体協定書を締結してJVを組み、特別共同企業体指名競争入札参加資格申請書(JV申請書)を建築局に提出し、指名競争入札執行通知(本指名通知)を受け、建築局から工事の設計図面を受け取った。 被告鹿島建設は、これまで受注予定でなかったため、下準備がなく入札が六月三日と決まっていたので、P8副支店長はP22営業部次長に見積課で大至急積算するように指示した。 6 予定価格の漏洩と指名競争入札(甲二七、三〇、三五、三六、四一、四二、五五)(一) 平成五年五月二六日ころ、被告P2は、名古屋市内の料理屋「鶴八」で、被告日産建設のP10、被告P3と飲食を共にした。被告P3は、被告P2に「P2さん、言わなくても分かっていると思うけど、間違いなく鹿島建設が取れるように頼むよ。鹿島建設が勉強に行ったら、確実に取れるように金額を教えてやってくれよ。頼むよ。それからくどいようだけど、日産建設を下請けに入れてもらうことと、九億円上乗せしてもらうことも念押しで頼んでおいてくれよ。」と言い、被告日産建設のP10も「迷惑を掛けますが、P2さん頼みますよ。」と言った。被告P2は「分かりました。任せておいてください。」と答えた。 (二) 被告P2は、被告鹿島建設が予定価格を聞きにくるいわゆる「ボーリング」あるいは「勉強」に来た際に、予定価格を教えることを考えていたが、積算は特建事務所で作成することになっていたので、直接には積算額が分からなかった。 しかも、営繕部長の所までは執行伺いと共に予算調書も付けて決裁に上がるので、以前は積算額を知り得たが、建築部次長となった被 特建事務所で作成することになっていたので、直接には積算額が分からなかった。 しかも、営繕部長の所までは執行伺いと共に予算調書も付けて決裁に上がるので、以前は積算額を知り得たが、建築部次長となった被告P2には執行伺いのみで予算調書は回ってこないため、積算金額を知ることができなくなった。そこで、被告P2は本件工事の積算額を知りたいと思い、五月下旬ころ、P6特建事務所長に「積算ができたらすぐ教えてほしい。」と頼んでおいた。 (三) 被告鹿島建設では、同月二七日ころ、P22営業部次長がP8副支店長に正確な内訳はできていないが積算は二三八億円くらいになると口頭で報告した。P8副支店長はP17営業部長に対し、被告P2の所に行って探りをしてくるように指示した。 同月二八日ころ、被告鹿島建設のP17営業部長が被告P2の所に勉強に来た。 P17営業部長は、「二三八億ではどうでしょうか。」と探りを入れてきた。被告P2は、積算ができていなかったので正確には分からなかったが、予算が二四〇億円であることから、税抜きで二三八億円では高すぎると思い、「高すぎます。うちの積算は来週には上がると思うので、もう一度来てください。」と言った。 被告鹿島建設では、P8副支店長がP17営業部長からの報告を受け、P22営業部次長に、「P2が高すぎると言っているので、至急もう一度見積りをやり直してくれ。」と指示した。その日のうちにP22営業部次長は二二〇億円という見積りを行い、P8副支店長に報告した。 (四) 同月三一日ころ、P6特建事務所長が積算額が書かれた設計書の頭を被告P2に見せた。鉛筆で金額が手書きされていて、上四桁は「二一三五」であった。 被告P2は予定価格が二一三億五〇〇〇万円と分かった。 被告P2は、被告鹿島建設に確実に落札できる金額を教えてやろうと思っていたが、二一 鉛筆で金額が手書きされていて、上四桁は「二一三五」であった。 被告P2は予定価格が二一三億五〇〇〇万円と分かった。 被告P2は、被告鹿島建設に確実に落札できる金額を教えてやろうと思っていたが、二一三億円では近すぎるので、二一〇億円を被告鹿島建設に教えることにした。 (五) 同年六月一日午前中、被告鹿島建設のP8副支店長とP17営業部長が被告P2を訪問し、勉強に来た。P8副支店長は二二〇億円でどうかと聞いてきたが、被告P2は「とにかく時間がないので、私の言う金額でお願いできますか。二一〇で入れてください。一発で落としてくださいよ。」と言った。P8副支店長が「間違いなく落ちますね。」と確認すると、被告P2は、「落ちます。それと前にお願いしていた日産建設の下請けの件と九億円の上乗せの件はよろしくお願いしますよ。」と確認したので、P8副支店長は、「はい分かりました。間違いなくそのようにさせていただきます。」と答えた。 (六) 被告鹿島建設は、同日午後三時からJV会議を開催することにしており、JV会議では、見積課から見積結果が二三八億円であったことの報告があり、会議が終了後、P8副支店長とP23営業部長、そしてJV各社の業界担当者が残った席で、P8副支店長が二一〇億円で入札に参加することを述べ四社の業界担当チーフの了承を得た。P23営業部長がP8副支店長に二一○億円で大丈夫かと聞いたが、P8副支店長は「堅い数字だから一発で落ちるで大丈夫。業界の方はよろしく頼みますよ。」と答えた。 (七) 同月二日、被告鹿島建設名古屋支店の業界担当営業部次長であるP24は、上司であるP23営業部長から、各JV幹事会社に応札金額の案内をするように命じられた。応札金額の案内とは、落札予定業者が確実に工事を落札できるように、各JV幹事会社に入札予定額より高い金額を指示し 、上司であるP23営業部長から、各JV幹事会社に応札金額の案内をするように命じられた。応札金額の案内とは、落札予定業者が確実に工事を落札できるように、各JV幹事会社に入札予定額より高い金額を指示してその金額で応札してもらうように指示することをいう。具体的には、P23営業部長が「うちが二一〇億円で落とすので、それに五パーセントから一〇パーセントを載せた金額で札を入れるように各社を案内してくれ。」と指示した。P24次長は、P23営業部長の指示に従い、JV各幹事会社(業界担当サブ)である清水建設名古屋支店(甲四七)、フジタ名古屋支店、前田建設工業中部支店(甲四四)、間組名古屋支店、大成建設名古屋支店(甲四六)、錢高組名古屋支店(甲四五)、鴻池組名古屋支店(甲四三)、佐藤工業名古屋支店、三井建設名古屋支店の各担当者に二二〇億円から二四〇億円の数字を案内した。 (八) 同月三日、鹿島建設JVは二一〇億円で入札し、他の九JVはいずれも二二〇億円を超える金額で入札したため、鹿島建設JVが一回で落札した(丙一八の一ないし一〇)。 落札後、P8副支店長は本件工事の施工段階の責任者であるP33建築部長に本件工事を引き継いだが、その際、下請けで被告日産建設を使うこと、下請代金に九億円を上乗せすることを伝えた。 7 本件契約の締結(一) 平成五年六月四日、名古屋市と鹿島建設JVは、本件工事の仮契約を締結した(丙二)。 (二) 同年七月二日、名古屋市議会で議決があり、右(一)の仮契約が本契約となった。 8 鹿島建設JVと被告日産建設の下請契約(甲七九、八〇)(一) 被告鹿島建設では、愛知南営業所長のP25(以下「P25営業所長」という。)とJV現場工事事務所長のP34(以下「P34事務所長」という。)が、実行予算の見積りを立て、下請業者への発注条件等を検討し 被告鹿島建設では、愛知南営業所長のP25(以下「P25営業所長」という。)とJV現場工事事務所長のP34(以下「P34事務所長」という。)が、実行予算の見積りを立て、下請業者への発注条件等を検討したが、被告日産建設に対しては、同社がゼネコンであり、本支店経費などが地元業者以上に掛かるので、被告鹿島建設の本来の下請けで行うことができる工事は発注しないこととし、被告日産建設には土工事と杭工事のみ下請けさせること、税務調査のことを考え、九億円の上乗せは、架空工事ではなく、査定を甘くしてその中に入れることを決めた。 (二) 平成五年八月初めころ、被告日産建設は、見積書を持ってきたが、被告鹿島建設が見積りを依頼した杭工事及び土工事のほか、構台工事とコンクリート工事まで見積りし、約五三億円であった。 これに対して、同月中旬ころ、被告鹿島建設は、コンクリート工事を除き、三六億円を提示した。しかるに、同年九月初めころ、被告日産建設は、九億円を含まないで四二億五〇〇〇万円とする「御見積書」を提出し、被告鹿島建設の査定には応じられないとの姿勢を示した。その後、被告鹿島建設がP25営業所長、P34事務所長とP33建築部長、被告日産建設がP10、P11現場所長とP35次長らで協議の場を持ったがなかなか結論は出ず、平成六年一月終わりころになって、上乗せ九億円を加えた四七億円で決着した。 (三) 鹿島建設JVと被告日産建設との下請契約は、鹿島建設JVの「注文書(控)」及びこれに対する被告日産建設の「注文請書」により成立したが契約金額は合計四八億四一〇〇万円(消費税一億四一〇〇万円を含む。)であった(甲二〇)。鹿島建設JVは、注文書の契約金額の中に上乗せ金額九億円を配分して潜り込ませた。具体的には、①杭地業工事契約金額二七億八五四〇万円中に五億円、②SMW工事( 四一〇〇万円を含む。)であった(甲二〇)。鹿島建設JVは、注文書の契約金額の中に上乗せ金額九億円を配分して潜り込ませた。具体的には、①杭地業工事契約金額二七億八五四〇万円中に五億円、②SMW工事(土止め壁工事)契約金額六億〇四四〇万円中に二億三〇〇〇万円、③グラウト工事(硬化剤注入工事)契約金額一億二八六〇万円中に三〇〇〇万円、④アースアンカー工事(地中固定工事)契約金額二億六九二〇万円中に四〇〇〇万円、⑤乗り入れ構台工事(トラック通路橋梁工事)契約金額二億九四五〇万円中に三〇〇〇万円、⑥土工事契約金額四億五六〇〇万円中に七〇〇〇万円を、それぞれ配分し、合計九億円を上乗せした。 P34事務所長の試算による杭地業工事の査定は、コンクリートパイルの材料費が一〇億五四〇二万四四六〇円、それに相応する工費一〇億七五七七万三〇〇〇円、必要経費一億五五六〇万円で、以上合計二二億八五三九万七四六〇円(一万円未満切り上げすると二二億八五四〇万円)であったが、前記のとおり、杭地業工事契約金額は二七億八五四〇万円であり、五億円の差額がある。なお、被告日産建設が持ってきた見積書によると、杭材料費は一〇億二〇〇〇万円とP34事務所長の査定額一〇億七五五七万三〇〇〇円より低額である。 9 被告日産建設の下請契約における上乗せ(甲四〇、九二)被告日産建設は、杭地業工事を実際には中部コンクリートパイルに施工させ、その費用は二〇億二〇〇〇万円であった。ところで、被告日産建設としては、東海土木に支払うべき補償金などを松岡興産株式会社(以下「松岡興産」という。)を通じて支払うつもりであったが、松岡興産は生コン会社であり、同社を外注先とすることは困難であったので、太洋基礎工業株式会社(以下「太洋基礎工業」という。)をトンネル会社とすることとし、太洋基礎工業に対し二七億 うつもりであったが、松岡興産は生コン会社であり、同社を外注先とすることは困難であったので、太洋基礎工業株式会社(以下「太洋基礎工業」という。)をトンネル会社とすることとし、太洋基礎工業に対し二七億七〇〇〇万円の杭工事を発注したかのように装い、太洋基礎工業に、被告日産建設から架空発注を受けた右工事代金のうち、七億五〇〇〇万円を実際に受け取らせた。そして、太洋基礎工業から松岡興産に七億円を流し、松岡興産から東海土木に四億円を流し、松岡興産に残る三億円のうち、二億円は松岡興産の運転資金等に使用するのを認め、残る一億円については、被告日産建設のP10が必要なときにはいつでも引き出せる金として、松岡興産に保管してもらうこととした。 10 事件の発覚と刑事処分(一) 本件疑惑は、平成六年一月一七日付けの「赤旗」紙(甲九の二)に「汚泥から(基準値の)六六万倍の水銀」との見出しで記事が掲載されたのをきっかけに名古屋市議会で問題となり、同年三月二五日に法一〇〇条による調査特別委員会(いわゆる「百条委員会」)が設置された(甲九の一七、一八)。 (二) 本件に関し、P8副支店長が競売入札妨害の罪により、平成八年二月二〇日、懲役一〇か月、執行猶予二年の判決を受けた(甲二四)。 (三) 本件に関し、被告P2、被告P3及び被告日産建設のP10が、平成七年一〇月二八日、競売入札妨害の罪により起訴され(甲三七)、上乗せ分九億円のうちからP10から被告P3に供与された額面一五〇〇万円の約束手形に関して、被告P3が斡旋収賄、被告日産建設のP10が斡旋贈賄で同年一二月一三日、起訴された(甲三九)。 被告P2は、平成八年七月一六日、本件その他一件の競争入札妨害の罪により、懲役一年六か月、執行猶予三年の判決を受けた(甲八八)。 被告P3及び被告日産建設のP10は、同年九月一九 れた(甲三九)。 被告P2は、平成八年七月一六日、本件その他一件の競争入札妨害の罪により、懲役一年六か月、執行猶予三年の判決を受けた(甲八八)。 被告P3及び被告日産建設のP10は、同年九月一九日、前記起訴事実及びその他一件の競争入札妨害の罪により、それぞれ懲役二年六か月、うち被告日産建設のP10のみ五年間の執行猶予、被告P3のみ五〇〇万円の追徴を受けた(甲八九)。 二監査請求を経ているか原告らは、監査請求において、九億円の上乗せによる違法を主張していたが、本件訴訟においては、これに加え、談合による違法も主張している。 ところで、訴訟の対象としている財務会計行為が、監査請求の対象とされていれば、監査請求を経ているものと解すべきところ、本件訴訟において原告らが違法な財務会計行為であると主張しているのは、本件契約の締結及び代金の支払行為であり、監査請求の対象とした財務会計行為と同一である。 原告らの請求は、監査請求を経ているものであるから、適法である。 三原告らは、本件契約の違法原因として、本件工事の工事費用の積算に当たり九億円が上積みされ、これに基づいて予定価格が決定されたと主張する。 1 そこで、名古屋市の行った積算について、判断する。証拠(甲一四、一七、七四、丙一九、三一、証人P6、同P7、被告P2本人)によると、次の事実が認められる。 (一) 清掃工場の建設については、通常、炉の種類が決定され、これに従って炉を納める建物の設計が可能となる関係にあるが、新南陽工場については、ごみ処理事情から平成九年に操業開始できることが絶対条件であったにもかかわらず、平成元年暮れの段階でも炉が選定されておらず、炉の決定を待っていては、平成九年に間に合わない状況であった。そこで、名古屋市は、まず、一期工事として掘削工事を進め、その工事期間中に たにもかかわらず、平成元年暮れの段階でも炉が選定されておらず、炉の決定を待っていては、平成九年に間に合わない状況であった。そこで、名古屋市は、まず、一期工事として掘削工事を進め、その工事期間中に、炉を選定し、建物の基本設計と実施設計を終わることとした。 平成二年八月一日、建築局は、環境事業局の依頼に基づいて、大建設計との間で掘削の設計委託契約を締結したが、大建設計との間では、掘削工事の設計が終わり次第、建物建築の基本設計をしてもらうことにしていた。 (二) 新南陽工場の建設工事に関しては、平成三年二月の名古屋市議会で、総額六九四億八六〇〇万円とすることの承認がなされたが(甲一六)、右予算要求のため見積りがなされた平成二年九月ころは、付近住民の反対もあり、本件工事現場でのボーリングができず、隣接する旧南陽工場の敷地でしかボーリングできていなかったため、名古屋市の清掃工場で当時一番新しかった富田工場を参考にして右見積りがなされ、基礎杭についても富田工場が場所打ちコンクリート杭で施工されていたことから、新南陽工場についても場所打ちコンクリート杭で施工するとされていた。 (三) 平成元年から、環境事業局によって、環境影響評価が進められ、平成三年八月、「名古屋市新南陽工場建設事業に係る環境影響評価書」(丙二○)にまとめられたが、右環境影響評価は、予測条件を建築物の設置面積一万五〇〇〇平方メートル、平均荷重度二〇・七トン、全荷重三一万〇五〇〇トンとしており、建築物の基礎形式としては杭基礎とし、杭の種類は場所打ちコンクリート杭を採用し、その杭径は一・〇から二・四メートル、杭頭位置はほとんどがGLマイナス二〇メートルで、一部がマイナス二五メートル、杭先位置がGLマイナス七三メートルとなるとされていた。 右環境影響評価は、平成二年一一月から同年一二 ら二・四メートル、杭頭位置はほとんどがGLマイナス二〇メートルで、一部がマイナス二五メートル、杭先位置がGLマイナス七三メートルとなるとされていた。 右環境影響評価は、平成二年一一月から同年一二月にかけて行われた地質調査に基づくものであるが、本件工場敷地内の四点のボーリングの結果、地表から約三〇メートルと六〇メートルの位置に堅固な地層があることが判明していた(甲一五)。 (四) 平成三年四月から、大建設計が本体工事の基本設計に取りかかったが、同年一一月ころ、基本設計を基に、総事業費の概算を算出したところ、一〇〇〇億円近くの金額になってしまった。 そこで、検討した結果、地下部分の工事に費用が多く掛かっていることから、費用を抑えるために、建物全体を上げることとなり、基本設計がやり直された。 (五) 平成四年四月三日、大建設計は名古屋市との業務委託契約を締結し、実施設計に入った。名古屋市からは、業務委託概要書、実施設計委託仕様書、実施設計委託・成果品作成要領、地盤調査委託仕様書、測量委託仕様書、計画図、建築工事特記仕様書用紙、建築工事共通仕様書、環境影響評価書を提供した。 大建設計は、必要とする場所の物理試験や力学試験が不足していたことから、同月一五日から同月二五日ころにかけて、一般的な地盤調査を行うと共に、土質調査を含め、三〇メートル層の下の粘土層の物理試験や力学試験などの調査をした(甲一五)。その結果、既製杭を使用して建物荷重を深度三〇メートルの地層に均等に伝達するなら、その下に位置する熱田層下部粘土層の圧密沈下は許容範囲内であり、一軸圧縮の強さの値も大きいことが判明した。同年六月以降に環境事業局からローディングデータの資料が出てきたので、杭の本数や積載荷重などが決まり、構造計算が行われた。なお、実施設計を行うに当たり、大建設計の担当 強さの値も大きいことが判明した。同年六月以降に環境事業局からローディングデータの資料が出てきたので、杭の本数や積載荷重などが決まり、構造計算が行われた。なお、実施設計を行うに当たり、大建設計の担当者とP7係長と担当者は、月二回程度定例会を設けていたほか、必要な都度、随時打ち合わせを行っていた。また、環境事業局及び川崎重工業を加えた全体会議が月一回程度行われていた。 (六) 同年七月初めの定期協議の席で、大建設計の担当者から地盤調査の結果報告があり、既製杭の使用について検討した結果として、次のとおりの報告があった。 本件工場の建物敷地はごみ層の除去のため既に七メートル以上掘削しており、海水面から四メートルほど低くなっている。杭径が一・五ないし二メートルの場所打ち杭を使用すると地盤に大きな穴を開けることとなるため、地下水の噴出が予想され、そのままでは施工できない。 大型の杭である場所打ち杭を固定するためには、堅固な層ではなくてはならないが、深度三〇メートルの地層はその点で厚みがなく、場所打ち杭を打設すると杭が地層を貫通してしまう。 杭径六〇〇ミリないし八〇〇ミリの既製杭を用いて深度三〇メートルの支持層に建物荷重を分散して伝達すれば、貫通の危険もなく、支持層の下の洪積層の圧密沈下も許容範囲内であり、建物に過大な障害はない。既製杭を打設するとき、中堀工法(中堀拡大根固め工法)にすれば、水の噴出も防ぐことができ、現状のままで施工が可能で、環境影響評価にも特に悪影響は及ぼさない。 会議後、P7係長と担当者が集まって使用する杭を詳細に検討した結果、場所打ち杭で施工しようとすると、既に掘削した敷地を一旦名古屋港の水面まで埋め戻さなければならないこと、支持層を杭が貫通する危険を回避するためには深度六〇メートルの地層まで打設する必要があることから 所打ち杭で施工しようとすると、既に掘削した敷地を一旦名古屋港の水面まで埋め戻さなければならないこと、支持層を杭が貫通する危険を回避するためには深度六〇メートルの地層まで打設する必要があることから、地盤に開ける穴を深くし、長い杭を使用しなければならないので、費用も掛かり、工期も延長せざるを得ないことから、既製杭を用いるべきであるという結論に達した。 P7係長がP6特建事務所長に、右結論を報告するとP6特建事務所長も同意見であった。そこで、同年七月下旬の環境事業局の職員も含めた全体会議で既製杭の採用を指示した。 (七) 実施設計は、同年一〇月末ころ提出された。 名古屋市が大建設計から設計図や数量調書を受け取り、環境事業局が設計による概算額を参考に予算額を財務課と折衝して確保することとなった。そこで、右実施設計の結果完成した設計図に基づき、特建事務所が、総工事費を積算してみると、約八三〇億円と試算された。予算折衝の結果、八一五億円で査定を受けた。 なお、同年一二月下旬ころ、被告P2は、被告P3が収入役のP36を接待した場に呼ばれ、少しでも多くの予算査定をしてもらえるようにお願いをした。その結果、予算査定は八一〇億円となり、平成五年二月の市議会で承認された。 当初計画の六九四億八六〇〇万円が八一〇億円に変更され、土木建築設備工事は二二五億九四〇〇万円から三〇九億九六九一万六〇〇〇円に八四億〇二九一万六〇〇〇円増額になった(甲一六)。 その内訳は、(1) 全体荷重によるものが三四億八〇〇〇万円掘削土量(マイナス六億円)・コンクリート量(マイナス二億円)の減少による減額にもかかわらず、公害防止設備の増強による荷重増(二六万トンから三二万トンへ)による杭工事費の増額(場所打ち杭三二二本から既製杭三二五〇本へ、一七億円の増加)及び鉄骨量の増加 億円)の減少による減額にもかかわらず、公害防止設備の増強による荷重増(二六万トンから三二万トンへ)による杭工事費の増額(場所打ち杭三二二本から既製杭三二五〇本へ、一七億円の増加)及び鉄骨量の増加(五二六〇トンから八三〇〇トンヘ、一七億円の増加)等による。 (2) 建築容積の増によるものが一三億八〇〇〇万円(3) 建築用地の狭隘によるものが一一億五〇〇〇万円、その他四億三三〇〇万円、物価上昇一九億六〇〇〇万円である。 (八) 積算作業(丙一〇、一二の一と二、一三、一四の一と二、二八)その後、特建事務所は、数量合わせやミスがないか、設計図を点検し、平成五年二月から積算作業に入ったが、主に四月と五月に集中して作業を行い、同年五月末日ころ終了した。 (1) 新南陽工場の建設は、厚生省の国庫補助対象事業であることから、工事費の積算は厚生省の補助基準である「環境衛生施設整備等国庫補助事業に係る歩掛表」(丙八、以下「厚生省補助基準」という。)に従う必要があったが、右厚生省補助基準は、主として水道工事を想定して作成されており、直接工事費については記載のないものがあったが、記載のない場合には、国又は都道府県で定めた基準を使用することとされていた(丙一五)。本件工事の直接工事費については、厚生省補助基準に記載のない工事に該当するため、建設省の所掌する営繕工事の請負工事費を積算する場合に基準となる「建設省建築工事積算基準」(丙九、以下「建設省積算基準」という。)に基づいて積算作業がなされ、共通費については厚生省補助基準によって積算がされた。 (2) 直接工事費は、建設省積算基準に基づき、設計図書を用いて工事ごとに必要な材料、手間などの数量を求め、これに単価を乗じて得た額を積み上げて算出されるが、単価については、単位面積当たり、あるいは単位体積当たり等の は、建設省積算基準に基づき、設計図書を用いて工事ごとに必要な材料、手間などの数量を求め、これに単価を乗じて得た額を積み上げて算出されるが、単価については、単位面積当たり、あるいは単位体積当たり等の材料費及び労務費を含んだ「複合単価」によることとされている。そして、名古屋市建築局は、毎年度、複合単価を算出しており、「建築工事費標準単価表」(甲五〇、以下「単価表」という。)として、冊子にまとめられていた。なお、杭、鉄筋、コンクリート及び鉄骨の四材料の材料費については、主要資材単価表(丙四)として毎月単価が決定されていた。 また、規格外の材料を使用する場合には、財団法人建設物価調査会が編集発行している「建設物価」(丙五)と財団法人経済調査会が編集発行している「積算資料」(丙六)の月刊誌に該当単価があるかを調査し、記載がない場合には、専門業者のカタログ及び定価表に記載の単価、専門業者等の見積書の単価及び取引単価、類似工事における実例単価その他によるものとされたが、業者見積りによる場合は、原則として三者以上の見積りの最低価額の八〇パーセントを標準とするとされていた。 大建設計が名古屋市から委託を受けた業務の中には、業者見積りをとることも含まれていたので、大建設計は、平成五年三月、旭化成建材株式会社、ヨーコン株式会社、東海コンクリート商事株式会社、三谷セキサン株式会社、大同コンクリート販売株式会社、日コン販売株式会社の六社を選定し、実施設計に基づき必要となる杭工事の全数量(単価表に記載のあるものも含まれている。)を示して、これについての見積りを依頼したところ、六社の見積りは三〇億一三〇〇万円から三〇億七〇〇〇万円の範囲内であった(丙七の一ないし六)。 そこで、積算担当者は、規格外の杭径八〇〇ミリ(八八〇本)と杭径七〇〇ミリ(二七八本)の材 したところ、六社の見積りは三〇億一三〇〇万円から三〇億七〇〇〇万円の範囲内であった(丙七の一ないし六)。 そこで、積算担当者は、規格外の杭径八〇〇ミリ(八八〇本)と杭径七〇〇ミリ(二七八本)の材料費と打ち手間のうち打設費、溶接費と、杭径六〇〇ミリのうち杭長二六ないし二八メートルのもの一二八五本の上杭の材料費について、前記業者見積額の八〇パーセントの額とし、杭径八〇〇ミリ(八八〇本)と杭径七〇〇ミリ(二七八本)の根固め液費、杭径六〇〇ミリのうち、前記杭長二六ないし二八メートルのもの一二八五本の上杭の鋼管巻杭の材料費以外及びその他の材料費及び打ち手間を単価表によって、積算した。 (3) 共通費は、厚生省補助基準によると、共通仮設費、現場経費、一般管理費からなる。 共通仮設費は、運搬費、準備費、仮設費、役務費、技術管理費、営繕損料、労務者輸送費、安全費等からなり、それぞれの費目は、厚生省補助基準に定められた積算方式、積算基準により算出された。 現場経費は、直接工事費と共通仮設費の合計額である純工事費に厚生省補助基準に定められた現場管理費率を乗じて算出された。 厚生省補助基準によると、一般管理費は、直接工事費と間接工事費(共通仮設費と現場管理費の合計額)の合計額に一般管理費率を乗じて算出されることになっており、本件工事に適用すべき一般管理費率は最高の一一・五パーセントであり、二二億六七〇〇万円弱となっていた。しかし、工事金額が多くなるからといって、同様の割合で一般管理費の額が大きくなるとすることについて疑問があり、特建事務所の積算担当者は、建設省基準によって積算される工事費総額二一三億五五〇〇万円から、以上の方法により積算された直接工事費と間接工事費の合計額(工事原価と言われる。)と建設省基準によって積算される工事費総額二一三億五五〇〇万 基準によって積算される工事費総額二一三億五五〇〇万円から、以上の方法により積算された直接工事費と間接工事費の合計額(工事原価と言われる。)と建設省基準によって積算される工事費総額二一三億五五〇〇万円との差額の工事原価に対する割合である八・三二パーセントをもって、一般管理費率とし、これを適用して一般管理費を一六億四〇〇〇万円強と算出し、工事総額を二一三億五三〇九万五〇〇○円と積算した。 (4)積算結果は、別紙1の「積算一覧表」の「市の積算額」記載のとおり、合計二一三億五三〇九万五〇〇〇円で、工場棟の新築が二〇三億九八九四万四〇〇〇円、斜路新築が一億七五九四万五〇〇〇円、煙突新築が七億三八八五万四〇〇〇円、計量棟新築が三九三五万二〇〇〇円であった。 (九) 名古屋市は、平成五年七月、「名古屋市新南陽工場建設事業の一部計画変更に係る環境影響評価書」(丙二一)を作成した。主な計画変更の内容として、敷地面積が約六・六ヘクタールであったものが六・八ヘクタールになったこと、建築面積が工場棟約一万五〇〇〇平方メートルが、洗車場の屋内移設、蒸気コンデンサー室の二重壁により一万九七〇〇平方メートルに、工場棟建屋が地下部約二〇メートル地上部約二二メートルであったものが、地下部約八・五メートル、地上部北側建屋高さ約三四メートルとなったほか、使用開始予定時期が平成七年度中から平成八年度中になるなどであった。 計画変更の理由としては、平成三年八月の環境影響評価手続終了後、工場棟の建設について具体的な検討を行った結果、地下掘削工事(掘削深度平均約二〇メートル)を実施することが技術的に不可能となったことが挙げられている。予測欄の予測条件として、建築物の概要として、設置面積一万五〇〇〇平方メートル、平均荷重度一四・〇トン、全荷重二一万トン、建築物の基礎形式としては杭基 とが技術的に不可能となったことが挙げられている。予測欄の予測条件として、建築物の概要として、設置面積一万五〇〇〇平方メートル、平均荷重度一四・〇トン、全荷重二一万トン、建築物の基礎形式としては杭基礎とし、杭の種類は場所打ちコンクリート杭を採用するものとする。杭径一・〇から二・四メートル、杭頭位置はほとんどがGLマイナス八・五メートルで、一部がマイナス二二メートル、杭先位置がGLマイナス三六メートルであった。 右内容は、依然として場所打ちコンクリート杭を採用するものとされているが、環境事業局の環境影響評価を担当した者と建築局との間で、十分な連絡が行われていなかったため誤りであったとして、平成六年三月八日付で訂正されている(丙二二ないし二六)。 2 以上によれば、名古屋市の行った本件工事の積算は、厚生省補助基準に則り、適正に行われているということができる。 原告らは、積算において九億円が工事費に上乗せされたと主張し、その根拠として、当初予定されていた現場打ち杭工事から、水増しがし易い既製杭工事に変更となった、変更の時期が水銀問題について被告日産建設から名古屋市に対して補償の申し入れがなされた時期に一致し、補償要求について対応したP6特建事務所長やP7係長のもとで、その後の積算事務が行われたと主張する。 (一) なるほど、当初の環境影響評価報告書には、施工方法として現場打ち杭工事を行う旨の記載があるが、前項1(一)、(二)のとおり、本件工事においては、当初の段階で、ごみ償却設備の仕様が定まっておらず、したがって建物の全体荷重が決まらなかった上、地質の状況も十分に調査できなかったという事情があり、全体荷重や地質状況が判明した後に、杭工事の方法を決めることとされていたのであり、環境影響評価報告書の前記記載は、これらの事情が分からない段階におい の状況も十分に調査できなかったという事情があり、全体荷重や地質状況が判明した後に、杭工事の方法を決めることとされていたのであり、環境影響評価報告書の前記記載は、これらの事情が分からない段階において、やむなく最近に建造された他のごみ焼却場と同様の工事方法をとるものとして記載されたものに過ぎず、これをもって、現場打ち杭工事から既製杭工事に工事が変更されたということはできない。 (二) 杭工事の方法を決める段階において、現場打ち杭工事による場合と既製杭工事によることの長短について検討されたことはあるが、前記1(五)、(六)のとおり、地下の支持層の状況や工事の難易性とを検討した結果、既製杭工事の方法が採用されたものであり、決定理由は合理的なものである。 (三) 既製杭工事に決定された時期は、前項1(六)のとおり、平成四年七月下旬であり、前記第三の一3によれば、そのころ、被告日産建設から水銀問題について名古屋市に報告があり、補償についても善処してほしいとの要求がなされていた。そして、右交渉について対応したP6特建事務所長やP7係長のもとで積算が行われている。しかし、前記第三の一3、4で認定した事実によれば、P6特建事務所長やP7係長は、ソイルセメントの汚泥から水銀が出るはずはないと確信し、被告日産建設の補償要求を相手にする必要はないと思っていたのであり、被告P2や当時の建築局長も同様の認識であり、本件工事の工事費から補償金を支払わせることは、早くてもその後の同年九月以降のことである。よって、水銀問題の補償要求と既製杭工事の採用とは関係がないといわざるを得ない。 (四) 以上によれば、既製杭工事の採用と九億円の補償を関連づけることはできないことが明らかであるが、原告らは、既製杭の採用の結果、積算過程において九億円を上乗せできたとして、次のとおり主 ない。 (四) 以上によれば、既製杭工事の採用と九億円の補償を関連づけることはできないことが明らかであるが、原告らは、既製杭の採用の結果、積算過程において九億円を上乗せできたとして、次のとおり主張する。 (1) 業者見積りのうち、単価表に記載のある六〇〇ミリの杭の材料費については、いずれの杭も単価表の一・五九倍であった。これから推論すると、七〇〇ミリ、八〇〇ミリの杭の材料費等の業者見積額の八〇パーセントの額で積算されたものについては、業者見積額を一・五九で除した額が相当な市価であるから、これと積算額との差額分が水増しされたものであり、その額は三億七〇〇〇万円強になる。 (2) 杭の打設費も、名古屋市による積算が六〇〇ミリについて一メートル当たり五四七〇円であるところ、各社とも七五〇〇円であり、一・三七倍になっている。杭の打設費についても業者見積額を一・三七で除した額と積算額との差額分である八六〇〇万円強が水増しされたことになる。 (3) このように、杭工事関係で四億近く水増しされており、他の工事分と合わせれば九億円は容易に水増しできたはずである。また、全体荷重が三二万トンとされ、一一万トン水増しされており、一〇〇トンの支持力がある六〇〇ミリの杭に換算すると一一〇〇本増やされた。これにより、材料費だけで三億二〇〇〇万円強、打設費を合計すると五億二〇〇〇万円強となる。 なるほど、前記業者見積りにおいては、六社からとったにもかかわらず、杭工事に関する材料費、打設費などの工事費、根固め費(セメント代)などほとんどの項目において、すべて同一であり、積算に当たり複数の業者から見積りを取り、できるだけ正確な市価を把握したいとの趣旨に反するものとなっている。被告らは、業者見積りが同一価格になるのは、協同組合方式による出荷であるからと主張するが、前記 に当たり複数の業者から見積りを取り、できるだけ正確な市価を把握したいとの趣旨に反するものとなっている。被告らは、業者見積りが同一価格になるのは、協同組合方式による出荷であるからと主張するが、前記業者見積りによれば、材料費のみならず、打設費や溶接費なども単価は同一であり、被告らの主張するような事情のみで説明できない。 そして、原告らの指摘するように、単価表に記載のある六〇〇ミリの杭の材料費については、いずれの杭も単価表の一・五九倍であり(丙四、七の一ないし六)、杭の打設費も、名古屋市による積算の一・三七倍になっている。 しかしながら、業者見積りによって積算された杭の材料費について、原告らの試算方法に倣って、名古屋市の積算額(丙一三、一四の一と二)から業者見積額を一・五九で除した金額を差し引いたとしても、別紙2の「杭材料費の積算の差額」のとおり、一億七〇〇〇万円弱にしかならない。よって、打設費の差額と合計しても二億五〇〇〇万円にしかならない。 原告らは、他の工事で水増しされていると主張するが、その証拠はない。 なお、全体荷重が水増しされたことにより杭工事の工事費用に水増しがされたとの原告らの主張は、全体荷重についてそのような操作がされた事実が認められない上、変更された内容により実際に杭工事がなされている以上、その変更された内容に従った積算に水増しがあったといわない限り、水増しがあったとはいえず、主張自体失当である。 以上のとおり、原告らが主張の根拠として挙げる事実は、いずれも採用のできるものではない。結局、九億円を上乗せした積算によって予定価格が決定された事実は、これを認めるに足る証拠がなく、原告らの主張は理由がない。 四談合の有無と契約の効力 1 前記第三の一で認定した事実によれば、鹿島建設JVが、本件工事の契約者を決めるための 価格が決定された事実は、これを認めるに足る証拠がなく、原告らの主張は理由がない。 四談合の有無と契約の効力 1 前記第三の一で認定した事実によれば、鹿島建設JVが、本件工事の契約者を決めるための指名競争入札の落札者となった経過は、次のとおりに要約することができる。 (一) 名古屋市の当時のP5建築局長及び次長である被告P2は、被告P3、被告日産建設の働きかけに応じて、公金によって支払われる本件工事代金の中から、被告日産建設に九億円を取得させるために、被告日産建設を本件工事の下請けに入れ、下請工事代金に九億円を上乗せして支払わせることを共謀し、(二) 被告P2、被告P3において、被告鹿島建設に対して、被告日産建設を下請けとし、下請代金とは別に九億円を支払うことの条件があることを告げた上落札予定業者になるように働きかけ、被告鹿島建設は、前記条件の履行を約束して、落札予定業者になることを承諾し、(三) P4建築局長と共に、被告P2は、指名審査会において、落札予定業者と目されていた大林組を指名から外すことを主導し、被告鹿島建設が落札できる条件を作り出し、(四) 被告奥村組、同石田組、同加賀田組、訴外日本国土開発は、落札予定業者が被告鹿島建設になったことを知った上、被告鹿島建設とJVを組むこととし、(五) 被告P2は、予定価格を知りうる立場にないにもかかわらず、部下に命じて予定価格が二一三億円であることを報告させた上、被告鹿島建設に二一〇億円で入札するように指示して、予定価格を漏洩し、(六) 被告鹿島建設において、指名された他のJVの担当者に対して、各社が入札すべき金額を個々に指示し、(七) (六)で指示した内容どおりの入札が行われ、予定どおり、鹿島建設JVが落札者となった。 以上の事実経過によると、被告日産建設に対する九億円の支払を 、各社が入札すべき金額を個々に指示し、(七) (六)で指示した内容どおりの入札が行われ、予定どおり、鹿島建設JVが落札者となった。 以上の事実経過によると、被告日産建設に対する九億円の支払をするための方法として、被告P1を除く被告らの共謀によって、予定価格の漏洩と、落札予定業者及び入札額について談合行為がなされ、談合された指名競争入札の結果に基づいて本件契約が締結されたものである。 2 談合行為は、競争入札の公正を害すべき行為として、刑法九六条の三により処罰されるべきものとされている上、ことがらの性質上地方公共団体に財政的な不利益を及ぼすおそれが極めて大きな行為であり、民法七〇九条の不法行為に該当する。すなわち、請負契約においては、競争を排除して落札予定業者と落札価格を決めようとして談合行為がなされるところ、落札予定業者と決まった者が、最も有利な価格で落札しようとすることは、利潤追求を目的とする私企業である限り、当然のことであり、その結果、発注者側が、予定価格の範囲内で、競争によって、より経済的に工事を完成させようとする利益が害されることになるのである。 談合行為の結果、地方公共団体に損害を与えた者は、契約の有効、無効に関係なく、不法行為による損害賠償の責を追うべきであり、右1で認定したとおり、本件工事に係る入札において談合行為を行った被告P1を除く被告ら(前記認定の事実によれば、会社である被告らについては、会社ぐるみで談合行為が行われたと認められるが、そうでないとしても、その従業員が職務の執行について不法行為をしたから、使用者として民法七一五条により責任を負う。)は、共同不法行為者として、名古屋市が被った損害を賠償する義務がある。 3 本件工事の契約者を決めるための指名競争入札は、右1の認定のとおり、業者間において落札予定業者 法七一五条により責任を負う。)は、共同不法行為者として、名古屋市が被った損害を賠償する義務がある。 3 本件工事の契約者を決めるための指名競争入札は、右1の認定のとおり、業者間において落札予定業者と入札金額を談合して決めたというにとどまらず、発注者側で、落札予定業者を指定し、予定価格を漏洩して入札金額を指示するなど、落札までの筋書きを作り、そのまま実行させたという特色があり、指名競争入札の形式をとっているものの、指名競争入札の実質を全く有していない点で法二三四条、及び法施行令一六七条の一二、同条の一三に明らかに違反するものである。また、入札の執行及び落札者の決定について代決権限を有し、本件において落札者の決定をなしたP4建築局長(丙一)は、談合があったことを知っていたのであるから、同建築局長としては、法施行令一六七条の一三、同条の一〇第一項により、「その者(被告鹿島建設)と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当であると認め」、被告鹿島建設を落札者とすべきではなかったところ、これに反したものである。 なお、本件契約が締結された経緯からすると、本件契約は、実質は随意契約そのものにほかならないとも評価できるところ、本件は随意契約が認められない場合であることが明らかである点において、契約の締結に関する制限を定めた法二三四条にも違反することは明らかである。 以上のとおり、本件契約は、地方公共団体の締結する契約の公正性と経済性を確保するための契約の締結の制限に関する法令の規定に反するものであり、財務会計法上違法である。 4 右3のとおり、本件契約の締結行為には、財務会計上の違法があるところ、地方公共団体の契約の締結の制限に関する法令の規定は、一般的抽象的な見地から契約の公正と経済性を確保することが可能であ ある。 4 右3のとおり、本件契約の締結行為には、財務会計上の違法があるところ、地方公共団体の契約の締結の制限に関する法令の規定は、一般的抽象的な見地から契約の公正と経済性を確保することが可能であるとして、もっぱら手続的な側面から契約方法に制約を加えているものにすぎないから、かかる法令の規定に反したということのみで、直ちに、当該契約を私法上無効であるということはできないが、財務会計法規に反した事実が、何人の目にも明らかである場合や、契約の相手方において、当該契約が許されないことを知り、又は知り得べかりし場合など、当該契約を無効としなければ、契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情の認められる場合には、私法上無効というべきである(前掲最高裁判決)。 そして、当該契約を無効としなければ、契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情があるかについては、違反の内容と程度、その動機のほか、当該契約により地方公共団体が被った財政的損害の内容と程度が考慮されるべきである。 これを本件について見るに、前記認定によれば、契約の相手方である鹿島建設JVを構成する被告鹿島建設、被告奥村組、被告石田組、被告加賀田組、訴外日本国土開発は、本件談合があったことについて知っていたから、前記特段の事情として考慮すべき事実が一応存するということができる。 この点に関して、参加人は、談合行為をした者は被告鹿島建設ら、本件契約の請負者である鹿島建設JVであり、その相手方である名古屋市は、当該契約が許されないことを知らなかったし、知り得たという事情もないと主張し、前記特段の事情がないことは明らかであると主張する。しかしながら、契約の相手方の知、不知を問題にするのは、財務会計行為の違法が地方公共団体側にある事実であり、契約の相 得たという事情もないと主張し、前記特段の事情がないことは明らかであると主張する。しかしながら、契約の相手方の知、不知を問題にするのは、財務会計行為の違法が地方公共団体側にある事実であり、契約の相手方に分からない場合があることを前提として、取引の安全を考慮して判断の要素としたものであるから、契約の相手方は、地方公共団体の相手方であり、地方公共団体は含まれない。 そこで、本件において前記特段の事情が認められるかについて、さらに検討するに、本件契約に係る指名競争入札は、業者間において落札予定業者と入札金額を談合して決めたというにとどまらず、発注者側で、落札予定業者を指定し、入札金額を指示するなど、落札までの筋書きを作り、そのまま実行させたという点で、指名競争入札の実質を全く有していないものであり、契約の締結の制限に関する法規の重大な違反であり、その目的も、名古屋市において負担すべき理由のない九億円を、公金をもって支払われる本件工事代金の中から支払わせようというものであり、違法性が極めて高い。そして、後記認定のとおり、本件談合により、名古屋市は競争がなされた場合に想定される落札価格との差額相当分の支払を余儀なくされ、損害を被ったものと認められる。 これらの事情を総合すると、本件は、当該契約を無効としなければ、契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情の認められる場合に該当するというべきであり、本件契約は無効である。 参加人は、違法行為の実行者である被告P2は、本件契約の締結について権限はなく、名古屋市に隠れて、名古屋市の利益に反する行為を部下の職員が行ったような場合にまで、名古屋市の締結した契約が、無効になるというのは、名古屋市の利益を没却するものであると主張する。しかしながら、被告P2のみならず、契約の締結に関す に反する行為を部下の職員が行ったような場合にまで、名古屋市の締結した契約が、無効になるというのは、名古屋市の利益を没却するものであると主張する。しかしながら、被告P2のみならず、契約の締結に関する代決権限を有していたP5建築局長は、被告日産建設に九億円を得させるために同被告を本件工事の下請けに入れることを承知していたのであり、下請けに入れるために談合行為がなされることを知っていたといわれてもやむをえないし、P4建築局長は、被告P2が、被告鹿島建設を落札予定業者とする工作をすることを容認し、談合が整ったことを知った上、指名競争入札の手続を進め、鹿島建設JVを落札者とし、契約を締結したものである。このように、本件契約について契約締結の代決権限を有する者が、談合行為と全く無関係であったわけではない。 本件契約に関する談合行為を主導したのは被告P2であるところ、被告P2は、建築局の次長として、建築局長を補佐する地位にあり、本件契約についても、指名競争審査会の委員として被告鹿島建設の指名など重要な手続を取り仕切ったものである。のみならず、本件のような特異な談合が可能となったのは、建築局の経歴が永く、実力者として目されていて、業界にも通じていた被告P2が、建築局次長という局長に次ぐ地位にあり、部下に対してのみならず、建築局長に対しても影響力を与えることができ、実質的に本件契約に関する方針を決定し、手続を進めることができたためであるというほかない。このような被告P2の地位と役割に鑑みれば、被告P2の行為を発注者側の行為と見るのが相当であり、参加人の右主張は、採用できない。 次に、参加人は、本件契約が無効となった場合には、工事の目的物の帰属につき法的に問題が生ずるほか、新南陽工場の引渡しが遅れることによりごみ処理行政が混乱するとして、当該契約を は、採用できない。 次に、参加人は、本件契約が無効となった場合には、工事の目的物の帰属につき法的に問題が生ずるほか、新南陽工場の引渡しが遅れることによりごみ処理行政が混乱するとして、当該契約を無効とする場合の影響をも考慮すべきであると主張するところ、このような事情も、特段の事情の有無の判断において、当該契約により地方公共団体が被った損害の内容と程度の評価に影響を及ぼす事情として考慮されるべきではあるが、鹿島建設JVに対しては、当該契約が無効であるといわれても、原因行為をなした鹿島建設JVにおいて甘受すべきことをはっきりさせた上で、工事の目的物の帰属問題やその引渡しについて交渉し、引渡しの遅延による影響を少なくするように努力するのが第一であり、参加人の右主張は、無効とした場合の影響を過大視するものであって、これをもって特段の事情を否定するに足りるものではない。 五損害について 1 被告らは、本件契約金額は、名古屋市が定めた予定価格以下であり、予定価格以下の金額であれば契約することができたものであるから、名古屋市に損害はないと主張する。 しかしながら、予定価格は、契約できる金額の上限に過ぎず、最小費用で最大効果を上げるべく、予定価格の範囲内で、業者に競争させて、より安価な代金で契約を締結することを目的として競争入札制度を予定しているのであるから、正当な競争がなされればより少ない金額で発注できたと予想される場合であれば、その金額を超える金額相当分の損害を被ったというべきである。 よって、予定価格以内で契約されていることのみを理由として、損害がないとの被告らの主張は、採用できない。 2 正当に指名競争入札がなされた場合においては、指名された業者は、それぞれ自社の持つ施工に関するノウハウを基に損益分析をして、他社より低い金額で入札しよう がないとの被告らの主張は、採用できない。 2 正当に指名競争入札がなされた場合においては、指名された業者は、それぞれ自社の持つ施工に関するノウハウを基に損益分析をして、他社より低い金額で入札しようとするものであり、その結果として、落札価格が形成されることになる。 一方、談合行為がなされた場合は、競争がないから、落札予定業者の関心は、より高額で落札できるために、発注者の予定価格にどれだけ近い入札ができるかに注がれることになる。そこで、落札予定業者となった者は、地方公共団体の担当部署に日参して「その工事については当社が一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします。」とアピールして自社が落札予定業者であることを示すと共に、予定価格の探りを入れに行く。いわゆる「ボーリング」あるいは「勉強」といわれるもので、地方公共団体の担当者は、ボーリングの際、予定価格や落札予定価格をそのまま教えることはなく、落札予定業者がいくらぐらいでいかがですかと問いかけると、「それ位じゃないですか。」と言ったり「ちょっと高い。」などと言って答えることもあった(甲二七、二九、三一)。本件においては、予定価格二一三億五〇〇〇万円のところ、ボーリングを受けた被告P2が、被告鹿島建設に対して、端的に、確実に落札できる金額として、二一〇億円で入札することを指示したものである。 このようにして、談合は、競争により落札価格が下落することを防ぎ、予定価格に近い価格で落札して、より多く利益を得ようとするものであるから、談合行為により、発注者は、談合の結果契約せざるを得なかった金額と競争によって形成されたであろうと想定される落札金額との差額相当分の損害を被るということになる。 3 被告鹿島建設らは、本件においては、落札予定業者が鹿島建設JVと決まっており、他の業者は落札する意思がなかったので されたであろうと想定される落札金額との差額相当分の損害を被るということになる。 3 被告鹿島建設らは、本件においては、落札予定業者が鹿島建設JVと決まっており、他の業者は落札する意思がなかったのであるから、実質的に自由競争が働かない状態であり、予定価格の漏洩がなかったとしても、何回かの入札後に、鹿島建設JVが予定価格付近で落札することになったから、名古屋市に損害が生ずることはないと主張する。 しかし、右主張は、落札予定業者が鹿島建設JVと決まっていたことを前提とする点において、既に採用できないものである。なぜなら、落札予定業者が鹿島建設JVと決まった段階から本件談合行為は始まっているのであり、被告P2の予定価格の漏洩とその後における他の指名業者に対する入札額の依頼によって、談合行為が完成したにすぎないから、自由競争が全く働く余地がなかったとして、談合行為を正当化することはできないのである。本件においては、落札予定業者と目されていた大林組が指名から外された段階において、いずれの業者にとっても落札可能の状態となったはずであり、自由競争が働く余地がなかったということはできない。 被告らは、鹿島建設JVを除いて、指名された業者は落札する意思がなかったと主張するが、談合による不法行為に基づく損害とは、談合のない正常な指名競争入札を前提に判断すべきものであり、仮に、他の業者が落札する意思がないとしたならば、指名を受けることを辞退し、あるいは入札すべきではなかったのであり、談合をし、指名入札に参加した以上、落札する意思がなかったから、いずれにしても予定価格に近い高額な金額で落札されたとして、談合の結果を正当化するようなことは許されない。 4 被告らは、被告鹿島建設が入札した二一〇億円は、同被告が見積もった結果に基づく適正な額であり、被告日産建設 価格に近い高額な金額で落札されたとして、談合の結果を正当化するようなことは許されない。 4 被告らは、被告鹿島建設が入札した二一〇億円は、同被告が見積もった結果に基づく適正な額であり、被告日産建設に対する上乗せ分の九億円は、被告鹿島建設が取得すべき利益の中から捻出したものであると主張する。 受注者が得られるべき正当な利益は、競争を前提とする想定落札価格によって得られる利益額であるから、右主張は、現実に落札した二一〇億円が適正額であり、想定落札価格と一致するとの趣旨でなければ意味がない。よって、被告らの右主張を、本件落札価格の二一○億円が、適正に見積もった額であり、競争を前提として想定される落札価格と一致すると主張するものとして、以下検討する。 (一) 被告鹿島建設が本件工事費について見積もった内容は、別紙1の「積算一覧表」の「鹿島見積り」欄記載のとおりである(乙ロ七)。名古屋市が積算した結果は、同表の「市の積算額」欄記載のとおりであり(丙一〇、一四の一と二)、大林組の平成四年一二月の見積内容は、同表の「大林組見積り1」欄、大林組の平成五年五月七日の見積内容は、同表の「大林組、見積り2」欄にそれぞれ記載したとおりである(甲八四)。 (二) 大林組の見積り(甲八三、八四、証人P13)大林組は、旧南陽工場の施工業者であり、業界では当初から本命業者視され、大林組も受注する意思で動いていた。 中部圏においては、落札予定業者となるためには、設計事務所を抱き込み、設計の相談に乗るなどして便宜を図り、工事に関する情報を多く持つことが有利になると考えられていた。そのため、本来ならば設計業者が発注者との契約に基づいて行う設計の一部を分担したり、設計業者を接待して情報を入手することが行われていた。 本件工事に関しては、大建設計が意匠設計を行い、構造設計 た。そのため、本来ならば設計業者が発注者との契約に基づいて行う設計の一部を分担したり、設計業者を接待して情報を入手することが行われていた。 本件工事に関しては、大建設計が意匠設計を行い、構造設計を大林組が分担することになった。その結果、本来、指名競争入札の指名を受け、発注者である地方公共団体から、設計図書等を受領した後でなければ、工事費の見積りはできないはずであるところ、大林組は、本件工事について指名のあった平成五年五月一〇日よりはるか以前の平成四年一二月四日に厚さ一〇センチメートルにも及ぶ詳細な見積書を作成し、二四三億六八五七万四九三七円(但し、管理棟工事、外構工事、取り壊しその他の工事分一三億七二九七万七一〇〇円及び設計料一億二五〇〇万円を含む。)の見積りを出すことができた。その後、大林組は、物価変動等を考慮して、最終見積りとして平成五年五月七日付けで二〇九億三三八〇万六〇〇〇円(同前)との見積りを出したが、建築工事部の担当の話では、バブル経済崩壊の影響から、材料費の値下がり等もあって最終的には一九〇億円から二〇〇億円の範囲で上がる工事であるということであったので、営業担当者としては二〇〇億円以上で落札できれば最良であると判断していた。少なくとも、営業担当者は、被告日産建設に対して九億円を上乗せして支払うべきことを知っていたものと思われるから、「二〇〇億円以上で落札できれば最良」というのは、「九億円を支払うことを前提としても、二〇〇億円以上で落札できれば最良」との意味と解することができる。 なお、大林組は、最終見積りを出したという平成五年五月七日の前日に、P16支店長が指名から外されることを被告P2から告知されているが、六日には見積作業もほぼ完了していたと思われ、その当時、建築工事部の担当者や営業担当者が、前記のような思惑を抱 年五月七日の前日に、P16支店長が指名から外されることを被告P2から告知されているが、六日には見積作業もほぼ完了していたと思われ、その当時、建築工事部の担当者や営業担当者が、前記のような思惑を抱いていたとしても、不自然ではない。 (三) 被告鹿島建設の見積り(乙ロ四、五、七)(1) 被告鹿島建設においては、名古屋支店の見積課長のP26が、同年五月一三日ころ、P22営業部次長から、図面、設計書、特記仕様書等を渡され、同年六月三日の入札のため、早めに見積りをするように依頼された。P26見積課長は、統括責任者となり、P27を担当者として、一三名ほどの見積課員を総動員するような体制で積算日程を組んだ。 「工事指名報告書」には概算として、見積り前に二〇〇億円と記載した。 見積りは同年五月二七日ころ二三八億円くらいであることが分かり、同月三一日に見積総覧を付けた元見積書ができた。P22営業部次長から、二三八億では高すぎるのでいくらまで絞り込めるかと聞かれたP26見積課長は利益を○パーセントとすれば見積金額が二二二億八〇〇〇万円程度となることから、二二〇億円くらいならどうにかなると答えた事実が認められる。 (2) ところで、前記一で認定したとおり、被告鹿島建設のP8副支店長は、同月一〇日、大林組が指名から外れたことを確認した後、P22営業部次長に対して、被告日産建設を下請けに使うこと、その下請代金に九億円の上乗せをするよう言われていることをうち明けた上、P22営業部次長に、見積課に九億円を上乗せした見積りを作るように指示しているほか、同月一一日、P23営業部長は、P8副支店長に、大林組は工事の規模が二四〇億円規模と言っていたと報告している。 このような事実経過からすると、被告鹿島建設の見積額二三八億円は、大林組の見積りに影響されたことがうかがわれる 長は、P8副支店長に、大林組は工事の規模が二四〇億円規模と言っていたと報告している。 このような事実経過からすると、被告鹿島建設の見積額二三八億円は、大林組の見積りに影響されたことがうかがわれるし、右二三八億円には上乗せ分の九億円が含まれていると思われる。 (3) この点に関して、前記P26見積課長とP27は、乙ロ四ないし六号証において、被告P2から入札額を二一〇億円とするように指示された当日である六月一日若しくは翌二日に、P22営業部次長から「札は二一〇億円で行くので、見積りを直してほしい。それと原価に工事費として九億円を入れておいてほしい。」と言われ、九億円の意味が分からないまま先行工事費という名目をつけて九億円を工費の中に入れて、二一〇億円の見積りをしたと供述しており、これによれば、二三八億円の見積りには九億円が一切考慮されていないということになる。 そこで、被告鹿島建設の二三八億円の見積りの内容を精査してみるに、別紙3の「工事費内訳比較」によると、名古屋市の積算においては、地業工事が二二億三五三四万円強、内工場棟新築工事分のみでは二〇億七五七九万円強となっているのに対して、被告鹿島建設の見積りでは、地業工事が三三億五四〇二万円強、内工場棟新築工事分のみでは三一億三九三三万円強となっており、一〇億円以上多い。そして、別紙3の「工場棟新築工事の地業工事(一部)の比較」のとおり、地業工事のうち、杭材料費などは、名古屋市の積算結果とさほど違わないのに、杭打費(名古屋市の場合の杭打費と根固め費の合計額に相当すると思われる。)が五億円、残土処分が四億円も多い。杭打ち費や残土処分がこのように大きな違いとして表れることは不自然であり、九億円を上乗せするために操作がなされたものという疑いが強い。 以上の検討結果からすると、前記P26見積課長 が四億円も多い。杭打ち費や残土処分がこのように大きな違いとして表れることは不自然であり、九億円を上乗せするために操作がなされたものという疑いが強い。 以上の検討結果からすると、前記P26見積課長やP27の供述は措信できず、二三八億円の見積りには上乗せ分の九億円が含まれているのである。 (4) 別紙1の「積算一覧表」によると、本件工事の直接工事費は、名古屋市の積算が一七九億七六〇〇万円強、大林組の見積りが一五八億七八〇○万円強(同表記載の「その他の工事」である管理棟や外構工事などが除外されるとすれば一四五億円となる。)、一四七億一七〇〇万円弱(同表記載の「その他の工事」が除外されるとすれば一三三億円となる。)であるのに対して、被告鹿島建設の積算が提出用で一八四億円(修正見積りでは一七一億円)と最も大きく、(3)のとおり、地業工事の工事費が名古屋市の積算と比べて一一億円多いことを考慮し、これを差し引いても一七三億円(修正見積りでは一六〇億円)になる。 名古屋市の積算が市価より若干高めに積算される傾向にあること、実際、大林組の見積りは名古屋市の積算より二〇億円ないし三二億円低いことと比べても、被告鹿島建設の直接工事費の見積りの精度は粗いというほかない。 (5) 被告鹿島建設は、共通仮設費を一八億九〇〇〇万円と見積もっているが、名古屋市の積算は五億六七〇〇万円強にすぎない。」前記(4)のとおり、直接工事費は、名古屋市と被告鹿島建設では、地業工事費の違いを考慮すれば、さほど差がないところ、共通仮設費が、このように三倍以上、一三億円以上も差が生ずるのは、不自然である。 (6) 名古屋市の積算額と大林組、被告鹿島建設の見積額に大きく差が出るのは、共通費の額であり、大林組は八三億と六〇億、被告鹿島建設は提出用で五四億円(修正見積りでは六六億円)と見積 不自然である。 (6) 名古屋市の積算額と大林組、被告鹿島建設の見積額に大きく差が出るのは、共通費の額であり、大林組は八三億と六〇億、被告鹿島建設は提出用で五四億円(修正見積りでは六六億円)と見積もっているのに対して、名古屋市は三三億七〇〇〇万円強と積算している。証人P13は、大林組の共通費には、名古屋市の積算では直接工事費に入れられる費用が含まれていると主張するが、仮にそのようなことがあるとしても、これによってすべて説明の付くような違いではない。 共通仮設費を除いた現場管理費と一般管理費が、利益相当分になるところ、被告鹿島建設はこれを四七億七〇〇〇万円強と見積もっており、名古屋市が積算した二八億円を大きく超えている。 (7) 以上検討した結果によると、被告鹿島建設の二三八億円の見積りについては、全般的に粗いという印象を拭えない上、右見積りによれば、直接工事費は、上乗せ分の九億円を含めて地業工事費が一一億円も名古屋市の積算より高いことを考慮すれば、一六〇億円程度で上がることになるし、共通仮設費も名古屋市の積算である五億六七〇〇万円程度で上がるはずである。そうすると、現場管理費、一般管理費として名古屋市が積算した二八億円を加えても二〇〇億円程度で収まることになる。 結局、二三八億円の見積りをもって、被告鹿島建設が、実際に工事を実施した場合の損益分析をするためになした見積りであり、その結果として二三八億円が通常の利益を確保しうる限界に近い額として算定されたというような結論を導くことはできない。 (四) 結局、本件落札価格の二一〇億円が適正な利益のみを見込んだ価格であると認めるに足る証拠はない。 かえって、前項(三)の(7)のとおり、被告鹿島建設の見積りによっても、名古屋市の積算した利益相当分程度を見込むのであれば、二〇〇億円程度で収ま のみを見込んだ価格であると認めるに足る証拠はない。 かえって、前項(三)の(7)のとおり、被告鹿島建設の見積りによっても、名古屋市の積算した利益相当分程度を見込むのであれば、二〇〇億円程度で収まったことになる。 そして、前記(二)によれば、大林組は、平成五年五月七日当時、一九〇億円から二〇〇億円の範囲で上がる工事であり、営業担当としては、被告日産建設に九億円を上乗せして支払うことを前提としても、二〇〇億円以上で落札できれば最良との判断をしていたものであり、大林組が前施工者で、他の業者に比べて有利に工事を進めることができることを考慮しても、二〇〇億円以下でも十分に利益が得られると見ていたことがうかがわれる。大林組のこのような判断は、平成五年五月七日の見積結果からも読みとることが可能である。すなわち、右見積結果においては、本件工事の直接工事費は一五〇億円以下で上がると見積もられているのであって、これに加算すべき共通費(共通仮設費、現場管理費、一般管理費)も、名古屋市の積算金額である三三億円程度を大きく超えるものではなかったというべきであるから、一九〇億円から二〇〇億円程度に納まることになるのである。このように、大林組は、仮に二〇〇億円で落札し、被告日産建設に九億円を上乗せして支払ったとしても、利益が確保されたと評価できるとしているのであり、これより一〇億円も高い二一〇億円で落札した被告鹿島建設が、自分の利益を割いて被告日産建設に九億円を上乗せして支払ったといっても、右主張を採用することはできない。 5 請負工事契約で談合行為がなされた場合、通常、現実の落札価格は、適正な競争がなさるときの想定落札価格より高くなるところ、前記第三の五3、4によれば、本件工事においても、適正な競争が行われていれば現実の落札価格二一〇億円より低い金額で落札 常、現実の落札価格は、適正な競争がなさるときの想定落札価格より高くなるところ、前記第三の五3、4によれば、本件工事においても、適正な競争が行われていれば現実の落札価格二一〇億円より低い金額で落札されたものと想定することができ、名古屋市は、右差額相当の損害を被ったというべきである。 なお、第三の四4のとおり、本件工事は無効であるから、本件工事代金全額を受領している鹿島建設JV、すなわち、被告鹿島建設、被告奥村組、被告石田組、被告加賀田組、訴外日本国土開発は、受領した代金を返還する義務がある。 しかしながら、名古屋市は、鹿島建設JVから、完成した目的物の引渡しを受けているから、鹿島建設JVは、工事の完成に対する正当な対価について、損益相殺することができるところ、正当な対価は、談合がなく適正な競争がなされた場合の価格と同一であるというべきであるから、結局、不当利得として返還を求めることができる金額も、右想定落札価格との差額ということになる。 ところで、談合がなく適正な競争がなされた場合の想定落札価格の額を、立証することは、損害の性質上極めて困難であると認められるから、民訴法二四八条により、裁判所において、相当な損害額を算定することとする。 原告らは、談合が成立しなかったケースでは、予定価格の二〇パーセントで落札されているという実態があると主張するが、同じ公共工事の請負契約であっても、工事の種類や規模、工事方法の特殊性、入札当時の経済情勢や競争者の数、地域性などが、複雑に絡み合って落札価格が形成されるので、右調査結果をもって、直ちに本件工事において競争がなされた場合の想定落札価格であると認めることはできない。 前記第三の五4(二)によれば、大林組は、被告P2らによって指名から外されたが、大建設計から依頼されて構造設計業務を分担し、受注す て競争がなされた場合の想定落札価格であると認めることはできない。 前記第三の五4(二)によれば、大林組は、被告P2らによって指名から外されたが、大建設計から依頼されて構造設計業務を分担し、受注する意思で見積りをしていたものであり、大林組は、被告日産建設に対する九億円の上乗せを前提としても二〇〇億円で落札できれば最良であると考えていたのであり、九億円の上乗せがなければ、さらに入札額を低くした可能性があることが認められる。また、鹿島建設JVは、談合がなければ被告日産建設を下請けにする必要はなく、他の業者を下請けに使ったとすれば、上乗せの九億円を除いた費用で工事を完成することができたはずである。 右の事情を総合すると、本件工事について適正な競争がなされた場合の想定落札価格と現実の落札価格の差額は、九億円を下回ることはないものと認められる。 六被告らの責任について(一) 前記第三の四、五によれば、被告P1を除く被告らは、違法な談合行為により名古屋市に九億円の損害を被らせた者であり、共同不法行為者として、名古屋市に対して、被告P2、同P3については、原告らの請求の範囲内である一億円を限度として、その余の被告らは九億円を、連帯して支払う義務がある。 また、被告鹿島建設、同奥村組、同石田組、同加賀田組は、不当利得返還義務としても、右九億円を返還する義務がある。 (二) 原告らは、被告P1につき、本件契約の締結及び代金の支払に関して、法二四二条の二第一項四号前段の当該職員としての責任があると主張するところ、前記争いのない事実等のとおり、被告P1は、本件契約の締結及び部分払に関する債務負担行為及びその支払命令に関して本来的権限者であったから、当該職員に該当するが、本件契約の締結についてはP4建築局長が、部分払に関する債務負担行為については環境事業 約の締結及び部分払に関する債務負担行為及びその支払命令に関して本来的権限者であったから、当該職員に該当するが、本件契約の締結についてはP4建築局長が、部分払に関する債務負担行為については環境事業局長が、その支出命令については、環境事業局総務課長が、代決権限を与えられて、それぞれ行為をしたものであるから、被告P1については、これら代決権者に対する指導監督上の過失がある場合にのみ責任を負うものである。 前記第三の四のとおり、P4建築局長がなした本件契約の締結行為には、財務会計上の違法がある。 原告らは、被告P1が、談合の事実を知っていたと主張するが、前記第三の一によれば、被告P1は、水銀問題が表面化した時期に二度、P5建築局長から説明を受けたが、「表沙汰にならないように」と言うのみで、二度目には、問題は被告日産建設と東海土木間で解決したものと説明を受けたのであるから、談合に加担したものとは認められない。また、市議会において談合疑惑が指摘されたからといって、被告P1において、本件談合が行われる可能性を予見できたともいえない。被告P1において、建築局の職員により、本件のような談合行為が進められていたことを知り得たという事情を認めるに足る証拠はない。 原告らは、被告P1は、本件談合と予定価格の漏洩があったことを、遅くとも被告P2らが起訴された平成七年一〇月二七日までには知ったにもかかわらず、その後も残代金を支払い続けたので、責任があると主張する。 前記第三の四4によれば、本件契約は無効であるから、名古屋市には残代金の支払義務はなく、その支払は財務会計上違法ということになるが、地方公共団体の契約の締結の制限に関する法令に反した場合、直ちに、当該契約が私法上無効となるものではなく、無効となる場合は特段の事情が認められる場合に限られると解され 務会計上違法ということになるが、地方公共団体の契約の締結の制限に関する法令に反した場合、直ちに、当該契約が私法上無効となるものではなく、無効となる場合は特段の事情が認められる場合に限られると解されており、実際にも、談合を理由として請負契約が無効とされた事例は稀であったから(公知の事実)、談合があったことが判明していたからといって、直ちに、その後の代金の支払につき、代決した職員に故意若しくは重過失があったとはいえないし、本来的に権原を有する者として部下の指揮監督を怠った過失があるとはいえない。また、訴訟において、結果的に、無効と判断されたからといって、その一事をもって、談合の事実が判明した後の残代金の支払につき指揮監督に過失があったともいえない。 本訴における被告P1及び参加人の主張など弁論の全趣旨によると、被告P1及び環境事業局長や環境事業局総務課長は、本件契約は直ちに無効と解すべきではないと判断し、有効であれば、設計どおり工事が完了した以上、契約上代金支払義務があるとして、残代金を支払ったこと、また、本件工事の積算は適正に行われており、契約の目的物も引き渡されているので、残代金を支払っても名古屋市に損害はないとも判断していたこと、更に、残代金の支払いをしなければ、目的物の引渡しを受けられない事態も予想され、その場合の影響は計り知れないことを熟慮検討して、残代金を支払ったものと認められる。 談合による契約の効力に関する考え方が前記のようなものであったこと、無効とされた事例が稀であったことを考慮すると、本件において環境事業局長や環境事業局総務課長が、右認定のように判断して、支払いのための行為をしたことをもって、重過失があるということはできないし、被告P1に指揮監督上の過失があったともいえない。 以上のとおり、被告P1には、財務会計 務課長が、右認定のように判断して、支払いのための行為をしたことをもって、重過失があるということはできないし、被告P1に指揮監督上の過失があったともいえない。 以上のとおり、被告P1には、財務会計職員の指揮監督につき故意過失がなく、同被告には損害賠償責任はない。 七以上によれば、原告らの被告P1に対する請求は理由がないので、棄却するが、その余の被告に対する請求はいずれも理由があるから認容することとし、主文のとおり判決する。なお、仮執行宣言については、相当でないのでこれを付さない。 名古屋地方裁判所民事第九部裁判長裁判官野田武明裁判官佐藤哲治及び裁判官達野ゆきは転補につき、署名押印することができない。 裁判長裁判官野田武明

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