平成21(ワ)6505 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年1月22日 東京地方裁判所
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判決文本文12,621 文字)

- 1 -平成22年1月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第6505号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成21年11月25日判決東京都文京区<以下略>原告株式会社フロンティアエンジニアリング同訴訟代理人弁護士岸巖同奥村毅同三竿径彦同訴訟代理人弁理士須藤阿佐子同須藤晃伸東京都品川区<以下略>被告ニチモウ株式会社埼玉県吉川市<以下略>被告株式会社タツノ上記両名訴訟代理人弁護士小林幸夫同坂田洋一同訴訟代理人弁理士玉利房枝同補佐人弁理士伊藤高英主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告らは,原告に対し,各自5156万9200円及びこれに対する平成21年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 -第2事案の概要 本件は,ジュール加熱(電気抵抗のある対象物に電流を流すことにより発生する電気抵抗熱を利用した加熱方法)を使用する連続加熱装置である別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という)を製造,譲渡した被告らに。 対し,原告が,被告製品は原告の有する後記2(2)の特許権(以下,この特許権を「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許,本件特許に」係る特許請求の範囲の請求項1記載の発明を「本件特許発明」という。)を侵害すると主張して,本件特許権侵害の不法行為による損害賠償請求権(民法709条,特許法102条1項)に基づき,損害賠償金5156万9200円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年3月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 法102条1項)に基づき,損害賠償金5156万9200円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年3月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 被告らは,被告製品が本件特許発明の構成要件を充足することを争い,抗弁として,特許法104条の3の権利行使の制限(新規性欠如)を主張する。 前提となる事実( ) 当事者 ア原告は,機械装置の設計,製作などを目的とする株式会社である。(争いのない事実)イ被告ニチモウ株式会社( 以下「被告ニチモウ」という。) は,食品加工機械の製造,販売などを目的とする株式会社である。(争いのない事実)ウ被告株式会社タツノ(以下「被告タツノ」という。)は,食品の自動製造機器に関する設計製作施工及び斡旋などを目的とする株式会社である(争,,。 いのない事実)( ) 本件特許権 原告は,次の特許の特許権者である。 ア登録番号特許第1823846号イ発明の名称流動性を有する食品材料の連続加熱装置- 3 -ウ出願日平成元年11月30日エ登録日平成6年2月10日オ特許請求の範囲「,, 流動性を有する食品材料について管路内を連続的に搬送させつつその管路内でジュール加熱により連続加熱する装置において,前記管路の少なくとも一部が,それぞれ少なくとも内面を電気絶縁性とした上流側絶縁管体と下流側絶縁管体とによつて形成され,かつ前記上流側絶縁管体と下流側絶縁管体との間に,中空円筒状をなす第1の電極体と,中空円筒状をなしかつ少なくとも内面を電気絶縁性としたスペーサ管体と,中空円筒状をなす第2の電極体とが直列状に配設され,しかも隣り合う前記各管体と前記各電極体とは,管体の内周面と電極体の内周面との間で実質的に段差が つ少なくとも内面を電気絶縁性としたスペーサ管体と,中空円筒状をなす第2の電極体とが直列状に配設され,しかも隣り合う前記各管体と前記各電極体とは,管体の内周面と電極体の内周面との間で実質的に段差がない状態で接していることを特徴とする,流動性を有する食品材料の連続加熱装置」。 (以下,本件特許発明に係る明細書及び図面を「本件明細書」といい,その特許公報〔甲6〕を別紙として添付する。)(争いのない事実)( ) 構成要件の分説 本件特許発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」のようにいう。)。 【】,,A流動性を有する食品材料について管路内を連続的に搬送させつつその管路内でジュール加熱により連続加熱する装置において,【B】前記管路の少なくとも一部が,それぞれ少なくとも内面を電気絶縁性とした上流側絶縁管体と下流側絶縁管体とによつて形成され,【C】かつ前記上流側絶縁管体と下流側絶縁管体との間に,中空円筒状をなす第1の電極体と,中空円筒状をなしかつ少なくとも内面を電気絶縁性としたスペーサ管体と,中空円筒状をなす第2の電極体とが直列状に- 4 -配設され,【D】しかも隣り合う前記各管体と前記各電極体とは,管体の内周面と電極体の内周面との間で実質的に段差がない状態で接していることを特徴とする,【E】流動性を有する食品材料の連続加熱装置。 (争いのない事実)( ) 被告らの行為 ,,,被告ニチモウは平成20年2月ころ社団法人海洋水産システム協会から魚肉など水産資源を活用して船上で燃料化することなどを目的とする「バイオマス燃料自給型漁船漁業創出事業」に用いる実験装置である被告製品の製作を受注し,その製造を被告タツノに発注した。 被告タツノは,平成21年2月ころ,被告装置を完成させ,こ ことなどを目的とする「バイオマス燃料自給型漁船漁業創出事業」に用いる実験装置である被告製品の製作を受注し,その製造を被告タツノに発注した。 被告タツノは,平成21年2月ころ,被告装置を完成させ,これを被告ニチモウに納品し,被告ニチモウは,被告装置を社団法人海洋水産システム協会に納品した。 (争いのない事実,乙1の1・2,弁論の全趣旨)( ) 構成要件の充足 ,「」「」被告製品は構成要件Dのうち実質的に段差がない状態で接しているとの点を除き,本件特許発明の構成要件をいずれも充足する。(争いのない事実)( ) 特許無効の主張に関する事実 本件特許出願前に頒布された刊行物である特公昭43-24939号公報(乙6。以下「乙6刊行物」という。)には,次の記載がある。 ①「特許請求の範囲2項〕乳濁材の流れを収納する導管と,この導管の一〔端に連結しこの導管中に乳濁材を流動させる圧送装置と,上記導管内を流動する乳濁材全体に電気エネルギーを供給するため上記導管に沿って縦方向に離間させた電極とを具えこの電極を上記導管に沿って離間する複数個- 5 -の圏域に配置し,任意の一圏域における連続する電極間の距離をほとんど,,均一とし乳濁材の流動方向の引続く圏域において電極間の距離を増加し一圏域における最終の電極と次の圏域の最初の電極との間の距離を均一に一層大として上記各圏域を離間させ,更に上記電極に接続する電気エネルギー供給装置と,この乳濁材の流れの方向に対し最終の圏域の末端の導管内に取付けた温度感応装置と,この温度感応装置とエネルギー供給装置との間に接続しエネルギー供給装置の出力を所要温度と検出温度との偏差に応じ調整する制御装置とを具えたことを特徴とする自己保持性の粘稠度を有する棒状製品を形成する食品乳濁材の熱処理装置」。 給装置との間に接続しエネルギー供給装置の出力を所要温度と検出温度との偏差に応じ調整する制御装置とを具えたことを特徴とする自己保持性の粘稠度を有する棒状製品を形成する食品乳濁材の熱処理装置」。 ②「1頁右欄下から13行目~同下から10行目・・・本発明の第1の〔〕目的は,ソーセージ乳濁材を導管を通し連続流動させる間にソーセージ乳濁材を加熱する方法ならびに装置を得んとするにある」。 ③「1頁右欄下から2行目~2頁左欄3行目〕尚本発明の他の目的は,導〔管を流動するソーセージ乳濁材の温度を複数個のほぼ均等の抵抗の圏域を通過させ乳濁材に電気抵抗加熱を加えることによりその凝固点以上の温度まで上昇させる良好な方法及び装置を得んとするにある」。 ④「2頁左欄14行目~同17行目〕各圏内の複数個の加熱区分の乳濁材〔にはほぼ均等量の熱を導入する。加熱は複数個の圏に於て乳濁材自体を電気回路の負荷として使用し電気抵抗加熱により達成するを可とする」。 ⑤「2頁左欄下から7行目~同下から5行目・・・本発明は魚と家禽肉〔〕若くは野菜或は上記物質の混合物から調製した他の食品乳濁材にも適用しうる事当然である」。 ⑥「2頁左欄下から2行目~2頁右欄上から3行目〕導管はその内径25〔. (1)を可とするが約508(2)近い大さにすることもできcmin.cminる。508以上の直径にすると,原料の中心部を凝固温度まで加熱し.cmた場合に,表面が過熱され易い」。 - 6 -⑦「2頁右欄5行目~同9行目・・・肉の乳濁材自体の抵抗を利用して〔〕電気抵抗加熱を施し,電力を熱エネルギーに変換させて行うを可とする。 即ち複数個の加熱区分の夫々の内の乳濁材に等量の電力を加えてほぼ等量の熱を発生する」。 ⑧「4頁左欄4行目~同11行目〕導 〔〕電気抵抗加熱を施し,電力を熱エネルギーに変換させて行うを可とする。 即ち複数個の加熱区分の夫々の内の乳濁材に等量の電力を加えてほぼ等量の熱を発生する」。 ⑧「4頁左欄4行目~同11行目〕導管10は非導電性物質特にテトラフ〔ルオルエチレン重合体のプラスチック例えば商品名テフンで構成する。導管10は複数個の加熱区分22を具え,この加熱区分を複数個の電極継手24で接合する。電極継手は第2図に示す如く特に不銹鋼を可とする導電性金属で製造し,比較的厚い中心肩部26と両側へ突出する1対の短いスリーブ28,30を具える」。 ⑨「4頁左欄15行目~同19行目〕電極継手24の肩部26に内側突縁〔を設け,導管10の内径に等しい直径(この例に於ては254)の円口.cmを画成するようにする。かくして導管10と電極継手24に均等な寸法の円滑な内側導管が構成される」。 ⑩「図1〕〔(10:導管12:乳濁材供給管14:正転ポンプ16:電動機18:ホツパ20:排出端22:加熱区分24:電極継手36:電力供給源38:滞留区間46:発電機48:可飽和リアクトル50:逆比例増幅器)」- 7 -⑪「図2〕〔(22:加熱区分24:電極継手26:中心肩部28:スリーブ30:スリーブ32:ポリビニルクロライド〔プラスチック〕)」( ) 訂正審判請求 ア本件弁論準備手続は,平成21年10月21日の第3回弁論準備手続期日において終結し,同日,本件訴訟の最終口頭弁論期日が平成21年11月25日と指定された。(顕著な事実)イ原告は,上記弁論準備手続終結後の平成21年11月11日,本件特許発明を次のとおりに訂正(下線は訂正部分を示す。)する旨を求める訂正審判請求をした(以下,上記訂正に係る発明を「本件訂正発明」という 原告は,上記弁論準備手続終結後の平成21年11月11日,本件特許発明を次のとおりに訂正(下線は訂正部分を示す。)する旨を求める訂正審判請求をした(以下,上記訂正に係る発明を「本件訂正発明」という。(甲2。)6,27)【A】流動性を有する食品材料について,管路内を連続的に搬送させつつ,その管路内でジュール加熱により連続加熱する装置において,【B】前記管路の少なくとも一部が,それぞれ少なくとも内面を電気絶縁性としかつ端部につば部が設けられた上流側絶縁管体と下流側絶縁管体とによって形成され,【C】かつ前記上流側絶縁管体のつば部と下流側絶縁管体のつば部との間に,中空円筒状をなす第1の電極体と,中空円筒状をなしかつ少なくとも内面を電気絶縁性としたスペーサ管体と,中空円筒状をなす第2の電極体とが直列に配設されると共に,- 8 -【C1】前記つば部を挾んで固定する連結固定具により前記電極体が取り付け・取り外し容易に連結固定され,【D】しかも隣り合う前記各管体と前記各電極体とは,管体の内周面と電極体の内周面との間で実質的に段差がない状態で接していることを特徴とする,【E】流動性を有する食品材料の連続加熱装置。 ウ原告は本件最終口頭弁論期日に,平成21年11月19日付け原告準備書(),,面(3)同月20日提出及び被告受領をもって上記イの訂正に基づいて被告製品の構成に関する主張を変更するとともに,被告製品が本件訂正発明の構成要件を充足すること,訂正により本件特許発明の無効理由が解消された旨を主張する攻撃方法(対抗主張)を提出した。(顕著な事実) 争点 (構成要件の充足)( ) 構成要件Dの「管体と電極体に)実質的に段差がない状態」の充足 (( ) 構成要件Dの「管体と電極体とが)接している」の充足 ((新規性欠 顕著な事実) 争点 (構成要件の充足)( ) 構成要件Dの「管体と電極体に)実質的に段差がない状態」の充足 (( ) 構成要件Dの「管体と電極体とが)接している」の充足 ((新規性欠如)( ) 構成要件Cの「電極体が)円筒状をなす」の開示 (( ) 構成要件Dの「管体と電極体とが)内周面・・・で接する」の開示 ((5) 対抗主張(訂正審判請求)(損害)( ) 損害の額(特許法102条1項) 争点に関する当事者の主張(構成要件の充足)について( ) 争点( )(「管体と電極体に)実質的に段差がない状態」の充足)につき (ア原告(ア) 後記イ(ア)の被告の主張にある電極体端部の面取り部分は,それ以外の電極体内周面と対比して明らかに光沢を帯びているから,使用中にスパークが- 9 -発生して生じた損傷部分を削り取った結果にすぎない。 (イ) 仮に絶縁管体の内周面と電極体の内周面との間の段差が意図的に設けられたものであるとしても「段差」とは絶縁管体の内周面と電極体の内周面と,の差を意味するところ,被告製品の絶縁管体の内周面と電極体の内周面の寸法は等しいのであるから「段差」は存在しない。 ,(ウ) 仮に電極体と絶縁管体のつなぎ目部分における電極体端部の形状を考慮するとしても,そこに存するのは面取りにより生じたわずかな凹みにすぎず,「段差」とはいえない。 (エ) 仮に上記凹みを「段差」と呼ぶとしても,電極体と絶縁管体のつなぎ目部分に何らかの凹凸が生じることは避けられず,本件特許発明もそのわずかな凹凸の存在をあらかじめ想定しているからこそ「実質的に』段差がない状『態」としているのであり,上記凹みは「実質的」な「段差」とはいえない。 イ被告ら(ア) 被告製品においては,隣り合う絶縁管体と電極体とは, あらかじめ想定しているからこそ「実質的に』段差がない状『態」としているのであり,上記凹みは「実質的」な「段差」とはいえない。 イ被告ら(ア) 被告製品においては,隣り合う絶縁管体と電極体とは,前記絶縁管体の端部と対向する前記電極体の端部の内周面部が管端部に向けて拡径するテーパ状に形成され,かつ,前記絶縁管体と前記電極体の対向する端部の間には前記テーパ状の最大内径より大きな内周面を有する特殊ガスケット(内径寸法が特殊との意)が介在されており,前記テーパ状内周面部分は前記電極体の円筒状内周面より内径が漸増するように拡大し,かつ,特殊ガスケットの内周面部分は前記各電極体のテーパ状内周面の最大内周部より内径が一段拡がった位置にあるため,前記絶縁管体の内周面と前記電極体の内周面との間に段差が設けられている(下記図面参照)。 - 10 -なお,電極体端部の面取り部分以外が黒色を帯びているのは,被告製品製造に当たって電極体の外側にスリーブを焼嵌め圧入接合する際,電極体に高熱を加えたため変色が生じたことによるものであり,一方,面取り部分が光沢を帯びているのは,変色後の電極体を切削し電極体の鋼材の金属色が露出したことによるものである。現に,本訴に先立って平成21年2月6日に実施された証拠保全手続(仙台地方裁判所石巻支部平成21年(モ)第2号)の検証調書添付写真(9頁)にもこの面取りは明確に撮影されている。 (イ) 本件特許発明は「構成要件D・・・隣り合う前記各管体と前記各電極,〔〕体とは,管体の内周面と電極体の内周面との間で実質的に段差がない状態で接している・・・」とされているのであって,管体の内周面と電極体の内周面の接し方を特徴とするのであるから,電極体端部の面取りを無視し,面取りがなされていない部分の内周面の寸法を対比すれば足りるというも している・・・」とされているのであって,管体の内周面と電極体の内周面の接し方を特徴とするのであるから,電極体端部の面取りを無視し,面取りがなされていない部分の内周面の寸法を対比すれば足りるというものではない。 (ウ) 被告製品の電極体の端部の内周面の寸法は,絶縁管体の端部の内周面の寸法よりも明らかに大であり,両者の間には明らかに「段差」が存在する。 (エ) 凹部がわずかであるか否かという原告の主観的な基準によって「実質的」- 11 -な「段差」があるか否かが決せられるものではない。 ( ) 争点( )(「管体と電極体とが)接している」の充足)につき (ア原告(ア) 電極体と絶縁管体とのつなぎ目部分にシール材(ガスケット)を介在させて隙間をふさぎ,流体の漏出を防止することは必要不可欠であり,本件特許発明も,このようなガスケットの介在により生じるわずかな隙間を想定している。 ,,(イ) 被告製品のガスケットの厚みは押圧しない状態で2程度であるからmmEPDM製の軟質ガスケットであることを考慮すれば,フェルールクランプにより15から1程度にまで押圧されるものと推測される。した.mmmmがって,その程度の隙間があっても,被告製品の電極体と絶縁管体とは「実質的に「接している」といえる。 」イ被告ら(ア) シール材(ガスケット)が必要不可欠の構成であるというならば,シール材(ガスケット)又はその介在によって形成される隙間について本件明細書でこれを開示すべきであるが,それにもかかわらず,本件明細書にはこれについて全く言及していない。したがって,シール材(ガスケット)の存在は開示されていない。 (イ) 「構成要件D〕実質的に段差がない状態で接している」とあるのは「実〔,」「」,「」質的に段差がない状態 ていない。したがって,シール材(ガスケット)の存在は開示されていない。 (イ) 「構成要件D〕実質的に段差がない状態で接している」とあるのは「実〔,」「」,「」質的に段差がない状態で接しているとの意であり段差がない状態で「実質的に「接している」との意ではない。したがって,本件特許発明」は「段差」の有無について実質的な判断をすることを許容しているが「接,,している」か否かについて実質的な判断をすることを許容してはいない。被告製品の絶縁管体と電極体は明らかに離れており,接していると解する余地はない。 (新規性欠如)について- 12 -( ) 争点( )(構成要件Cの「電極体が)円筒状をなす」の開示)につき (ア被告ら乙6刊行物の上流側にある電極継手24と下流側にある電極継手24は,いずれも円筒状をなしている(下記Fig2’は,図2を図1に対応させて整えた図面である。)。 電極体の作用は,管内の流動物に通電してジュール加熱をするところにあるが,後記イの内側突縁における内周面のみが管内の流動物と接触し,管内の流動物に通電する作用をするのであるから「電極体」とは,電極継手2,4の内側突縁が形成された部分(肩部)であり,これは明らかに円筒状をなしている。 ,,「()」したがって乙6刊行物には構成要件Cの電極体が円筒状をなすことが開示されている。 イ原告乙6刊行物の電極継手24は,肩部26に設けられた内側突縁(以下「内側突縁」という。)が大きく内側にせり出しており,その突縁が内周面の大半を占めているから,その形状は円筒状ではない(下記Fig2は,図2の電極継手24を着色強調した上で内側突縁を指し示す図面である。)。 - 13 -したがって,本件特許発明は,第1及び第2の電極体が「円筒 めているから,その形状は円筒状ではない(下記Fig2は,図2の電極継手24を着色強調した上で内側突縁を指し示す図面である。)。 - 13 -したがって,本件特許発明は,第1及び第2の電極体が「円筒状をなす」点で,乙6刊行物記載の発明と相違する。 ( ) 争点( )(構成要件Dの「管体と電極体とが)内周面・・・で接する」の開 (示)につきア被告ら乙6刊行物の加熱区分22と電極継手24は,均等な寸法の内側導管を構成し,それぞれの内周面が互いに接している。 したがって,乙6刊行物には構成要件Dに該当する事項はすべて開示されている。 イ原告乙6刊行物の内側突縁の内周面は加熱区分22の内周面に接しているものの,内側突縁以外の部分の内周面(スリーブ28,スリーブ30の内周面)については,ポリビニルクロライド32を介して加熱区分22の外周面と接している。 ,,「,したがって本件特許発明は隣り合う前記各管体と前記各電極体とは管体の内周面と電極体の内周面との間で実質的に段差がない状態で接している」点で,乙6刊行物記載の発明と相違する。 ( ) 争点( )(対抗主張〔訂正審判請求)につき 〕ア原告本件訂正発明は,乙6刊行物記載の発明と相違するから無効理由がなく,- 14 -かつ,被告製品は訂正発明の技術的範囲に属する。 イ被告ら原告の上記攻撃方法は民事訴訟法157条の時機に後れた攻撃防御方法であるから,却下されるべきである。 (損害)について(6) 争点(6)(損害の額〔特許法102条1項〕)につきア原告(ア) 譲渡数量被告製品は1台製造,譲渡された。 (イ) 利益額原告が被告製品を譲渡すれば1台当たり4688万9200円の利益を得られた。 (ウ) 算定原告は,上記4688万9200円を自己が受けた損害の 数量被告製品は1台製造,譲渡された。 (イ) 利益額原告が被告製品を譲渡すれば1台当たり4688万9200円の利益を得られた。 (ウ) 算定原告は,上記4688万9200円を自己が受けた損害の額として,その賠償を請求することができる。 (エ) 弁護士費用及び弁理士費用468万円が相当である。 イ被告ら(ア) 譲渡数量原告の主張(ア)は認める。 (イ) 利益額原告の主張(イ)は知らない。 (ウ) 算定原告の主張(ウ)は争う。 (エ) 弁護士費用及び弁理士費用原告の主張(エ)は争う。 - 15 -第3当裁判所の判断 本件事案にかんがみ,特許法104条の3の権利行使の制限(新規性欠如)の抗弁(争点(3),(4))から検討することとする。 (1) 乙6刊行物の開示乙6刊行物には,前記第2の2( )の記載があり,これによれば,乙6刊行 物には,少なくとも次の構成を有する加熱処理装置が開示されていると認められる。 「乳濁材の流れを収納する導管10と,この導管の一端に連結しこの導管中に乳濁材を流動させる圧送装置と,上記導管内を流動する乳濁材全体に電気エネルギーを供給するため上記導管に沿って縦方向に離間させた電極とを具え,非導電性物質から構成される導管が具える複数個の加熱区分22と電極である複数個の電極継手24の肩部26に設けた内側突縁は均等な内径寸法の円滑な内側導管を構成し,この電極を上記導管に沿って離間する複数個の圏域に配置し,任意の一圏域における連続する電極間の距離をほとんど均一とし,乳濁材の流動方向の引続く圏域において電極間の距離を増加し,一圏域における最終の電極と次の圏域の最初の電極との間の距離を均一に一層大として上記各圏域を離間させ,更に上記電極に接続する電気エネルギー供給装置と,この乳濁材の流れの方向に対し最終の圏 を増加し,一圏域における最終の電極と次の圏域の最初の電極との間の距離を均一に一層大として上記各圏域を離間させ,更に上記電極に接続する電気エネルギー供給装置と,この乳濁材の流れの方向に対し最終の圏域の末端の導管内に取付けた温度感応装置と,この温度感応装置とエネルギー供給装置との間に接続しエネルギー供給装置の出力を所要温度と検出温度との偏差に応じ調整する制御装置とを具えたことを特徴とする自己保持性の粘稠度を有する棒状製品を形成する食品乳濁材の電気抵抗加熱処理装置(以下「乙6装置」とい。」う)。 ( ) 乙6装置と本件特許発明との対比 原告は,本件特許発明は,①構成要件Cの第1及び第2の電極体が「円筒状をなす」点で,②構成要件Dの「隣り合う前記各管体と前記各電極体とは,管- 16 -体の内周面と電極体の内周面との間で実質的に段差がない状態で接している」点で,乙6装置と相違すると主張する(なお,乙6装置が本件特許発明のその余の構成を備えていることは,原告は争っていない。 。),,そこで乙6装置と本件特許発明の上記争いのある点の構成の開示について以下,検討することとする。 ( ) 争点( )(構成要件Cの「電極体が)円筒状をなす」の開示)及び争点(4)(構 (成要件Dの「管体と電極体とが)内周面・・・で接する」の開示)について(本件特許発明は「構成要件A・・・食品材料について・・・管路内で,〔〕,ジュール加熱により連続加熱する装置」に関する発明であり「構成要件B〕,〔前記管路の少なくとも一部が・・・内面を電気絶縁性とし「構成要件C〕,」〔・・・中空円筒状をなす第1の電極体と,中空円筒状をなしかつ少なくとも内面を電気絶縁性としたスペーサ管体と,中空円筒状をなす第2の電極体とが直列状に配設され「構成要件D・ し「構成要件C〕,」〔・・・中空円筒状をなす第1の電極体と,中空円筒状をなしかつ少なくとも内面を電気絶縁性としたスペーサ管体と,中空円筒状をなす第2の電極体とが直列状に配設され「構成要件D・・・隣り合う前記各管体と前記各電極体と」〔〕は,管体の内周面と電極体の内周面との間で実質的に段差がない状態で接していることを特徴とする」ものである。そして,上記構成にあるとおり,食品材料が管路内を流動し管路内周面で加熱されその管路に段差がないとする以上,上記にいう「円筒状」は,管路の内周面の形状をいうことが明らかである。また,乙6装置においては,電極継手24のどこからどこまでを本件特許発明の「電極体」に相当するとするかはともかく,その通電を行っている内側突縁の管路内周面側が円筒状でその内周面側が加熱区分22の内周面と接していることは乙6刊行物の図2からだけでも容易に看取することができる。 したがって乙6装置は本件特許発明の電極体が円筒状をなす管,,「()」「(体と電極体とが)内周面で・・・接する」との点を開示していることが明らかである。 なお,原告は,乙6装置の電極継手24に内側突縁やスリーブがあることにより,本件特許発明と乙6刊行物記載の発明とは,①電極体やスペーサ管体の- 17 -取付け,さらにはその取外しが容易であるとの効果,及び②電極体の洗浄が容易であるとの効果を奏するために必要な構成で相違する旨を主張するが,その主張は本件特許発明の特許請求の範囲の記載に基づかないものであるのみならず,本件明細書に「3頁左欄39行目~同45行目・・・各電極体やスペ〔〕ーサ管体は,管路中途に直列に配設すれば良いだけであるから,電極体やスペーサ管体の取付けが容易であるとともにその構造も単純であり,またそのため電極体の洗浄も容 同45行目・・・各電極体やスペ〔〕ーサ管体は,管路中途に直列に配設すれば良いだけであるから,電極体やスペーサ管体の取付けが容易であるとともにその構造も単純であり,またそのため電極体の洗浄も容易で,微生物の繁殖を招くことがなく,したがって殺菌のための過熱にも最適である」とあるとおり,上記①,②の効果は電極体とスペーママサ管体とを直列に配置したことにより生じる効果をいうか又はそもそも本件明細書に開示されていない効果をいうものにすぎず,電極体の外側をも含めた全体的形状までもが円筒状であって初めて奏し得る効果をいうものではなく,乙6装置の電極継手24に内側突縁やスリーブがあって内側突縁の外側も含めた全体的形状が円筒状でないことと上記効果とは何らかかわりのないことである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 争点( )(対抗主張〔訂正審判請求)について 〕原告は,第2の2( )の経緯により平成21年11月19日付け原告準備書 面(3)をもって,本件訂正発明には無効理由がなく,かつ,被告製品は訂正,,,,発明の技術的範囲に属すると主張しこれに対し被告は原告の上記主張は時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきであると主張する。 そこで検討するに,原告は,既に第1回口頭弁論期日において被告らから乙6刊行物記載の発明が本件特許発明と同一の発明であるとして乙6刊行物を提示されたのに対して,両発明が同一ではないとの主張を終始維持し続けていたにもかかわらず(主張を変更することを妨げる事情は何ら認められない。),弁論準備手続終結後になって訂正審判請求をした上で,最終口頭弁論期日に,この訂正により乙6刊行物記載の発明には本件特許発明と相違点が生じ無効理由- 18 -がない旨の上記主張に及んだものである。 弁論準備手続終結後になって訂正審判請求をした上で,最終口頭弁論期日に,この訂正により乙6刊行物記載の発明には本件特許発明と相違点が生じ無効理由- 18 -がない旨の上記主張に及んだものである。そして,このことについてやむを得ないとみられる合理的な説明を何らしていない。したがって,原告の上記主張は,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものというほかなく,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。 よって,原告の上記主張は,民事訴訟法157条により,これを却下する。 まとめ以上のとおりであるから,本件特許発明は,乙6刊行物記載の発明であり,新規性を欠く発明であるから,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。 したがって,特許法104条の3により,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない。 結論 よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから,棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官岡本岳裁判官中村恭裁判官- 19 -坂本康博

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