【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人藤上清の上告理由について 一 被上告人の請求は、本件建物の賃貸人で
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人藤上清の上告理由について一被上告人の請求は、本件建物の賃貸人であった亡D(被上告人はその相続人である。)が、昭和六三年四月一二日、その賃借人である上告人に対してした賃料増額の意思表示(以下「本件増額請求」という。)による同年五月二〇日以降の賃料(月額)の確認を求めるものであるが、原審は、(一) 本件増額請求に係る昭和六三年五月二〇日の時点における本件建物の賃料は五三万四七〇〇円が相当である、(二) しかし、建物の賃貸人が借家法七条一項の規定に基づき賃料の増額を請求するには、現行の賃料が改定された時から相当の期間を経過していることが要件となるところ、本件における相当期間は二年と解するのが相当であるから、本件建物の賃料が現行の賃料に改定された昭和六一年一〇月一日から二年を経過する前にされた本件増額請求はその効力を生じない、(三) ただし、被上告人の賃料増額の意思表示は、本件訴訟の追行によって維持されているので、現行の賃料に改定された時期から二年を経過した昭和六三年一〇月一日の時点において、その効力を生ずるものと解するのが相当である、(四) 昭和六三年五月二〇日から同年一〇月一日までの間の諸物価及び土地価格の上昇を考慮しても、前記(一)の五三万四七〇〇円に修正を加える必要はない、(五) 昭和六三年一〇月一日の時点における本件建物の賃料は五三万四七〇〇円が相当である、として、被上告人の請求を昭和六三年一〇月一日以降の本件建物の賃料が五三万四七〇〇円であることの確認を求める限度で認容している。 二本件増額請求に係る昭和六三年五月二〇日の時点における本件建物の賃料は- 1 -五三万四七〇〇円が相当であるとした 件建物の賃料が五三万四七〇〇円であることの確認を求める限度で認容している。 二本件増額請求に係る昭和六三年五月二〇日の時点における本件建物の賃料は- 1 -五三万四七〇〇円が相当であるとした原審の前記認定判断及び措置は、原判決挙示の証拠関係及び記録に照らして、正当として是認することができ、所論中右認定判断及び措置の違法をいう論旨は採用することができない。 三所論は、さらに、被上告人の賃料増額請求は、本件建物の賃料が現行の賃料に改められた時から五年を経過するまで認められるべきではない、として、その時から二年を経過した時点で賃料増額請求の効力を認めた原審の前記判断の違法をいうが、次のとおり、論旨は採用することができない。 1 建物の賃貸人が借家法七条一項の規定に基づいてした賃料の増額請求が認められるには、建物の賃料が土地又は建物に対する公租公課その他の負担の増減、土地又は建物の価格の高低、比隣の建物の賃料に比較して不相当となれば足りるものであって、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過しているか否かは、賃料が不相当となったか否かを判断する一つの事情にすぎない。したがって、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過していないことを理由として、その間に賃料が不相当となっているにもかかわらず、賃料の増額請求を否定することは、同条の趣旨に反するものといわなければならない。 2 これを本件についてみると、原審は、本件増額請求に係る昭和六三年五月二〇日の時点における賃料は五三万四七〇〇円が相当であると認めながら、現行の賃料が定められた昭和六一年一〇月一日から右の時点まで二年を経過していないことのみを理由に、被上告人の右の時点における賃料の増額請求を否定しているものであって、右の判断には借家法七条一項の解釈適用を誤った違法があるといわ 一年一〇月一日から右の時点まで二年を経過していないことのみを理由に、被上告人の右の時点における賃料の増額請求を否定しているものであって、右の判断には借家法七条一項の解釈適用を誤った違法があるといわなければならない。なお、原審は、被上告人が本件訴訟を追行していることによって被上告人の賃料増額の意思表示が維持されている、と判断して、昭和六一年一〇月一日から二年を経過した昭和六三年一〇月一日の時点で賃料増額請求の効力を生じたことを理由に、被上告人の請求を前記のとおり一部認容しているのであるが、右の判- 2 -断を是認し得ないことは当裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである(最高裁昭和四三年(オ)第一二七〇号同四四年四月一五日第三小法廷判決・裁判集民事九五号九七頁、最高裁昭和五〇年(オ)一〇四二号同五二年二月二二日第三小法廷判決・裁判集民事一二〇号一〇七頁参照)。 3 そうすると、被上告人の請求は、昭和六三年五月二〇日以降の本件建物の賃料が五三万四七〇〇円であることの確認を求める限度で認容すべきところ、被上告人から上告がない本件において、右と異なる原判決を上告人に不利益に変更することは許されない。論旨は、結局、原判決の結論に影響しない部分の違法をいうに帰し、採用することができない。 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官木崎良平裁判官藤島昭裁判官大西勝也- 3 - 裁判官大西勝也
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