令和7年5月29日判決言渡 令和6年(行ケ)第10108号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和7年4月17日判決 原告スタシャーインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁理士柳田征史塚田晴美 被告特許庁長官同指定代理人渡邉久美前畑さおり富永亘山根まり子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 原告のため、この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2023-19811号事件について令和6年8月6日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に顕著である。) (1) 原告は、令和4年3月1日、優先権主張(2021年9月2日、アメリカ合衆国)を伴い、意匠に係る物品を「包装用容器」とする意匠の物品の部分について意匠登録出願(意願2022-4078。意匠の形態について別紙第1参照。以下、この出願に係る意匠を「本願意匠」といい、当該部分を「本願部分」という。)したところ、令和4年9月30日付けで拒絶理由の通知を受けた。 (2) 原告は、令和5年1月19日、本願を、その出願前に頒布された刊行物に記載された「収納容器」の意匠(意匠登録第1660736号。令和2年5月12日登録。意匠権者は原告。意匠の形態について別紙第2参照)に基づき、意見書を提出した。 は、令和5年1月19日、本願を、その出願前に頒布された刊行物に記載された「収納容器」の意匠(意匠登録第1660736号。令和2年 5月12日登録。意匠権者は原告。意匠の形態について別紙第2参照。以下「本件登録意匠」という。)を本意匠とする関連意匠の意匠登録出願に変更する旨の手続補正(本意匠の表示の追加)をしたところ、令和5年4月12日付けで、本願意匠と本意匠は類似しないとの理由で、当該手続補正は認められないとの拒絶理由の通知を受けた。 (3) これに対し、原告は、本願について関連意匠への変更を撤回するため、令和5年7月14日、願書の「本意匠の表示」の欄を削除する手続補正をしたところ、同年8月14日に拒絶査定を受けた。 (4) 原告は、令和5年11月22日、拒絶査定不服審判を請求したところ、特許庁は、同請求を不服2023-19811号事件として審理した。原告 は、同年12月27日、本願を再び本件登録意匠を本意匠とする関連意匠の意匠登録出願に変更するための手続補正(願書の「本意匠の表示」の欄を追加)をし、本願を、本件登録意匠を本意匠とする関連意匠の意匠登録出願に変更したところ、特許庁は、令和6年8月6日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同月2 1日原告に送達された(付加期間90日)。 (5) 原告は、令和6年12月18日、本件審決の取消しを求める本件訴えを提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決は、本願意匠は、本件登録意匠を本意匠とする関連意匠(意匠法10条1項)として登録を受けることができず、引用意匠である本件登録意 匠は、本願意匠の新規性等の判断の基礎となる意匠から除外されず、本願意匠は、引用意匠に類似するから、意匠法3条 意匠(意匠法10条1項)として登録を受けることができず、引用意匠である本件登録意 匠は、本願意匠の新規性等の判断の基礎となる意匠から除外されず、本願意匠は、引用意匠に類似するから、意匠法3条1項3号により、意匠登録を受けることができないとした。その判断の要旨は、次のとおりである。 (1) 本願意匠と本意匠である本件登録意匠は、意匠に係る物品が一致する。 しかし、本願部分は、包装用容器の正面視上端から約5分の2の範囲に おける、収納物を出し入れするための取り出し口周辺のフランジ部であるのに対し、本意匠は、収納容器全体であるから、両者は用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲においていずれも一致しない。 そうすると、本願意匠と本意匠は、意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲が大きく異なるため、意匠登録を 受けようとする部分の形状等を検討するまでもなく、本願意匠と本意匠は類似するとは認めることができない。 よって、本願意匠は、本件登録意匠を本意匠とする関連意匠として登録を受けることができない。 (2) 本願意匠の物品は「包装用容器」であり、引用意匠である本件登録意匠 の物品は「収納容器」であるから、本願意匠と引用意匠に係る物品は一致する。 また、本願部分と、引用意匠のうち本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)は、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が一致する。 そして、両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、部分 全体として総合的に観察した場合、共通点は、両部分の基調を形成し、需要 者に共通の印象を与えるものであるのに対し、相違点が両部分の類否判断に与える影響は極めて小さく、共通点が与える共通の印象を覆すには至らないから、両部分の 通点は、両部分の基調を形成し、需要 者に共通の印象を与えるものであるのに対し、相違点が両部分の類否判断に与える影響は極めて小さく、共通点が与える共通の印象を覆すには至らないから、両部分の形状等は類似する。 そうすると、本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が同一であって、その形状等に おいても類似する。よって、本願意匠と引用意匠は類似する。 3 取消事由本願意匠と本意匠の類否(意匠法10条1項)の判断の誤り第3 取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張 本件審決は、本願意匠と本意匠としての本件登録意匠の対比について、物品が一致するものの、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が大きく異なるため、類似するとは認められないとしたにもかかわらず、本願意匠と引用意匠としての本件登録意匠の対比については、両者の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が同一であって、その形状等においても類似するから、本願意匠 と引用意匠は類似するとして、矛盾する結論を出している。前者においては、本件登録意匠の全体に着目し、後者においては本件登録意匠のフランジ部分だけに着目しており、類否判断の対象である意匠の着目する範囲を途中で変えるのは不可解である。審査過程においても、1回目の拒絶通知では本件登録意匠と類似すると判断したにもかかわらず、2回目の拒絶通知では類似しないとし て関連意匠の登録をさせないことは、関連意匠制度の趣旨に反する。 よって、本件審決は不適法であって、取り消されるべきである。 2 被告の主張一方が部分意匠であって、他方が全体意匠である場合は、本願意匠と引用意匠が類似するか(新規性等)を判断する場合と、関連意匠としての本願意匠が 本意匠と 消されるべきである。 2 被告の主張一方が部分意匠であって、他方が全体意匠である場合は、本願意匠と引用意匠が類似するか(新規性等)を判断する場合と、関連意匠としての本願意匠が 本意匠と類似するかを判断する場合では、対比する範囲が異なり、それによっ て判断が相違することがあることは、法が予定するところである。 すなわち、本願意匠と、公知意匠としての引用意匠を対比する場合は、その新規性(意匠法3条1項)を判断すべき「本願意匠」の意匠登録を受けようとする部分と、「引用意匠」の本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分とを対比し、その類否を判断する。他方、本意匠とその関連意匠(意 匠法10条)を対比する場合は、本意匠は物品全体として把握し、関連意匠は意匠登録を受けようとする部分として把握した上で、両者を対比し、その類否を判断することになる。 以上を踏まえ、本件審決は、本願意匠は、本意匠に類似しないことから、意匠法10条2項の規定の適用を受けることができず、引用意匠には類似するか ら、同法3条1項3号に掲げる意匠に該当し、意匠登録を受けることができないとしたのであり、本件審決の認定・判断は正当である。 第4 当裁判所の判断 1 本願意匠の本願部分は、別紙第1の実線で表された部分であり、意匠に係る物品である包装用容器の一部であるいわゆるフランジ部分であるところ、 本意匠(本件登録意匠)は、別紙第2のとおり、意匠に係る物品である収納容器全体であるから、両者はその「用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲」並びに形状等において大きく異なるものである。そうすると、本願意匠は、本意匠と類似するものであるとはいえず、関連意匠として意匠法10条1項による登録を受けることはできない。 2 次に、引用意匠 に形状等において大きく異なるものである。そうすると、本願意匠は、本意匠と類似するものであるとはいえず、関連意匠として意匠法10条1項による登録を受けることはできない。 2 次に、引用意匠である本件登録意匠は、本願意匠が関連意匠として登録を受けられない以上、意匠法10条2項の適用を受けることができず、本件登録意匠が同法3条1項1号又は2号に該当するに至らなかったものとみなすことはできない。 そして、本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、「包装用容器」と「収 納容器」であって、用途・機能が共通する。また、本願部分と引用部分は、 いずれも物品の左右側面における物品外辺の上部約3分の1の位置から物品上端部にかけて設けられたフランジ部であって、主として当該フランジ部上端部、側面視におけるフランジ部、フランジ部下端の隆起後の極端な凹み等において共通の特徴的態様を有するから、形状において類似するものといえる。 そうすると、本願意匠は、引用意匠(引用部分)と類似するといえ、同法3条1項3号により、意匠登録を受けることはできない。 3 これに対し、原告は、本願意匠と本意匠の対比における類否の判断と、本願意匠と引用意匠の対比における類否の判断が異なることが不当であると主張する。 しかし、全体意匠である本意匠と、その関連意匠として部分意匠を対比する場合には、本意匠全体と、意匠登録を受けようとする部分とを対比することになるのに対し、本願意匠と公知意匠としての引用意匠を対比する場合は、既に公知となっている引用意匠のうちの一部にでも同一又は類似の部分が含まれている場合には、新規性の欠如(意匠法3条1項1号~3号)を認めるのが相当 であるから、本願意匠と引用意匠の一部(引用部分)を対比することになる。 この ちの一部にでも同一又は類似の部分が含まれている場合には、新規性の欠如(意匠法3条1項1号~3号)を認めるのが相当 であるから、本願意匠と引用意匠の一部(引用部分)を対比することになる。 このように、一方(本願意匠)が部分意匠であって、他方(引用意匠ないし本意匠)が全体意匠である場合には、本意匠と関連意匠としての本願意匠が類似するかを判断するときと、本願意匠と引用意匠が類似するか(新規性等)を判断するときとで、対比する範囲が異なり、それによって判断が相違することが あることは何ら不当なことではない。 よって、原告の上記主張は、採用することができない。 4 以上のとおり、本件審決につき、原告主張の取消事由は採用することができず、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 増田稔 裁判官 本吉弘行 裁判官 岩井直幸 申し訳ありませんが、整形するテキストが提供されていません。整形したいテキストをお送りください。
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