平成26年1月31日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成25年(行ウ)第467号特許料納付書却下処分取消請求事件(以下「甲事件」という。) 平成25年(行ウ)第468号特許料納付書却下処分取消請求事件(以下「乙事件」という。) 平成25年(行ウ)第469号特許料納付書却下処分取消請求事件(以下「丙事件」という。) 口頭弁論終結日平成25年12月18日判決 原告独立行政法人理化学研究所 同訴訟代理人弁護士宮嶋学 同髙田泰彦 同柏延之 同大野浩之 被告国 処分行政庁特許庁長官 指定代理人中野康典 同工藤昭博 同駒井利徳 同上田智子 同古閑裕人 同 上田智子 同 古閑裕人 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用はいずれも原告の負担とする。 - 2 - 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 甲事件特許番号第3421184号の特許権に係る第9年分特許料納付書について,特許庁長官がした平成24年5月21日付け手続却下処分を取り消す。 2 乙事件特許番号第3421193号の特許権に係る第9年分特許料納付書について,特許庁長官がした平成24年5月21日付け手続却下処分を取り消す。 3 丙事件特許番号第3421194号の特許権に係る第9年分特許料納付書について,特許庁長官がした平成24年5月21日付け手続却下処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,特許第3421184号(甲事件),特許第3421193号(乙事件),特許第3421194号(丙事件)の各特許権(以下併せて「本件各特許権」という。)を有しており,いずれも第8年分までの特許料が支払われていたが,それらの第9年分の特許料を追納することができる期間は平成23年10月18日までであったところ,原告は,代理人弁理士を通じ,同年11月21日付けで,特許庁長官に対し,本件各特許権につき,それぞれ第9年分の特許料及び割増特許料を納付する旨の特許料納付書(以下「本件各納付書」という。)を提出したところ,平成24年5月21日付けで,それぞれにつき手続却下の処分(以下「本件各処分」という。)を受けたため,同年7月30日,特許庁長官に対し,本件各処分 (以下「本件各納付書」という。)を提出したところ,平成24年5月21日付けで,それぞれにつき手続却下の処分(以下「本件各処分」という。)を受けたため,同年7月30日,特許庁長官に対し,本件各処分について,それぞれ異議申立てをしたが,平成25年1月29日に,同異議申立てがそれぞれ棄却されたので,被告に対し,本件各処分の取消しを求めた事案である。 2 前提事実(証拠の摘示のない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者 - 3 -原告は,独立行政法人である。 (2) 本件各特許権原告は,以下のアないしウの各特許の特許権者であった。〔甲ないし丙事件各甲1,2〕ア特許番号:第3421184号発明の名称:波長可変レーザーにおける波長選択方法および波長可変レーザーにおける波長選択可能なレーザー発振装置出願日:平成7年12月19日登録日:平成15年4月18日イ特許番号:第3421193号発明の名称:波長可変レーザーにおける波長選択可能なレーザー発振装置出願日:平成8年4月30日登録日:平成15年4月18日ウ特許番号:第3421194号発明の名称:波長可変レーザーにおける波長選択可能なレーザー発振装置出願日:平成8年4月30日登録日:平成15年4月18日(3) 特許庁における手続の経緯本件各特許権については,いずれも第8年分までの特許料が支払われており,第9年分の特許料の納付期間は平成23年4月18日までであり,特許法1 18日(3) 特許庁における手続の経緯本件各特許権については,いずれも第8年分までの特許料が支払われており,第9年分の特許料の納付期間は平成23年4月18日までであり,特許法112条1項の規定による特許料の追納をすることができる期間(以下,特許法112条1項による特許料の追納をすることができる期間を「追納期間」という。)は同年10月18日までであった。 原告は,特許庁長官に対し,同年11月21日付けで,特定非常災害の被 - 4 -害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(以下「特別措置法」という。)3条3項の規定による追納期間の延長の措置の適用を申し出て,第9年分の特許料及び割増特許料を納付する旨の本件各納付書を代理人弁理士を通じて提出した。〔甲ないし丙事件各甲3〕特許庁長官は,本件各納付書に係る手続について,それぞれ,権利消滅後の年分に係わる特許料の納付であり法令に定める要件を満たしていないなどとする,平成24年3月13日付け却下理由通知書(以下「本件各通知書」という。)を,代理人弁理士宛てでいずれも同月27日に発送した。 (4) 本件各通知書の記載本件各通知書の却下理由に相当する部分の記載は,いずれも以下のとおりである。〔甲ないし丙事件各甲4〕「しかしながら,特許料の納付の管理体制について,特許権者自ら行うか,代理人に管理を委ねるか,また,コンピュータを利用した特許管理システムによるか,コンピュータシステムに頼らず人手による管理にするか等は,いずれも特許権者の自己責任の下に行われるものです。そして,コンピュータの利用による特許管理システム上の不具合及びデータ入力不備等によって特許料納付期間を徒過したとしても,また,平成23年3月11日 ずれも特許権者の自己責任の下に行われるものです。そして,コンピュータの利用による特許管理システム上の不具合及びデータ入力不備等によって特許料納付期間を徒過したとしても,また,平成23年3月11日の東日本大震災及びその後の電力制限等の影響で特許関連業務に混乱が生じたとしても,そのような状況下で本権の納付手続以外の特許関連業務の手続が可能であったのであれば,特許法第112条の2第1項の規定による適用について当該事情は,年金管理業務をシステム対応としたこと及び東日本大震災等の混乱時に本権に対する納付手続の点検,確認作業ができなかったことは,特許権者側のいわば内部事情とも言うものであって,これをもって特許料の追納期間を徒過せざるを得なかった事由があるとすることはできません。また,『特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律』の適用 - 5 -は,平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響により,本来の期間内に所定の手続ができなかった者について,平成23年8月31日を限度として手続期間の延長を行いましたが,依然として手続を行うことができない者がいることから,『特に大きな被害を受けた者で,発災から今回の措置を求める申出を行うまでの間に特許庁長官への手続を行うことができなかった者』を対象として一部の手続(特許法第112条の2の規定による特許料及び割増特許料の追納による特許権の回復も含む。)について,延長措置が継続されました。本件の特許料納付の依頼を受けた特許法律事務所(代理人)は,東日本大震災の週明けから執務を開始していることから,『特に大きな被害を受けた者で,発災から今回の措置を求める申出を行うまでの間に特許庁長官への手続を行うことができなかった者』に該当しないため,本件納付手続については同 ら執務を開始していることから,『特に大きな被害を受けた者で,発災から今回の措置を求める申出を行うまでの間に特許庁長官への手続を行うことができなかった者』に該当しないため,本件納付手続については同法の適用を受けることはできません。」(5) 本件各処分等これに対し代理人弁理士は,平成24年4月24日付け弁明書を提出したが,特許庁長官は,同年5月21日付けで,本件各通知書記載の理由で手続きを却下する本件各処分をした。〔甲ないし丙事件各甲4,5〕原告は,代理人弁理士らを通じ,同年7月30日,特許庁長官に対し,本件各処分について,それぞれ行政不服審査法に基づく異議申立てをし,これらは併合審理されたが,特許庁長官は,平成25年1月29日,各異議申立てを棄却する決定(以下「本件異議決定」という。)をし,同月30日,同決定は代理人弁理士らに送達された。〔甲ないし丙事件各甲6であるが,これらは同一のものである。〕 3 本件の争点本件の争点は,本件各却下処分につき取消事由があるかであるが,具体的には,本件各特許権に係る第9年分の特許料及び割増特許料を追納期間内に追 - 6 -納することができなかったことにつき,原告に平成23年法律第63号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があるか,である。 第3 争点に関する当事者の主張〔原告の主張〕 1 改正前特許法112条の2第1項にいう「その責めに帰することができない理由」の意義(1) 改正前特許法112条の2は,平成6年法律第116号の改正により新設された規定であるところ,その改正以前は,特許料の納付について,追納期間も徒過してしまった場合は事情の如何を問わず 義(1) 改正前特許法112条の2は,平成6年法律第116号の改正により新設された規定であるところ,その改正以前は,特許料の納付について,追納期間も徒過してしまった場合は事情の如何を問わず特許権の回復は認められていなかった。しかし,パリ条約5条の2第2項において,「同盟国は,料金の不納により効力を失つた特許の回復について定めることができる。」と規定され,諸外国においても同規定に沿った特許権の回復を認める制度が設けられており,わが国においても同様の制度を設けるべきであるとの要望が国内外から寄せられていたことに鑑み,改正前特許法112条の2の規定が導入されるに至ったものである。 (2) 諸外国の具体例としては,以下のようなものが挙げられる。 ア米国米国特許法施行規則1.378(a)項では,特許料納付の遅延が避けられないものであったこと,又は,故意によるものではなかった場合に,割増特許料の支払を条件として,特許料の遅延納付が認められる旨が規定されている。そして,同1.378(b)項は,上記「特許料納付の遅延が避けられないものであったこと」の立証として,特許料が適時に支払われることを確保するために相当の注意(reasonablecare)を払っていたことを立証することを要求している。 イ英国 - 7 -英国特許法28条(3)では,特許料の追納期間の徒過が故意によるものではなかった場合,割増特許料の支払を条件として,特許権の回復を認める旨が規定されている。 ウ特許法条約(PatentLawTreaty)特許法条約12条(1)は,特許料納付期間の不遵守が,状況に応じた相当の注意(duecare)を払ったにもかか 。 ウ特許法条約(PatentLawTreaty)特許法条約12条(1)は,特許料納付期間の不遵守が,状況に応じた相当の注意(duecare)を払ったにもかかわらず生じた場合,又は締約国の選択により,その遅延が故意によるものではないことが認められる場合,特許権を回復する旨を規定している。 (3) 上記のとおり,改正前特許法112条の2の規定は,特許権の回復の制度についての国際的調和を求める国内外からの要望に応えて立法されたものであることから,同条第1項の「その責めに帰することができない理由」も,諸外国の例に倣い,「相当の注意」が払われたにもかかわらず,特許料の追納期間が経過するまでに特許料を納付することができなかった場合を意味するものと解すべきである。 本件異議決定においては,知的財産高等裁判所平成22年(行コ)第10002号事件・平成22年9月22日判決(以下「平成22年知財高裁判決」という。)を引用して,「その責めに帰することができない理由」とは,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を払ってもなお追納期間内に納付をすることができなかった場合を意味すると解される旨が説示されている。しかし,同判決は,同判決以前の裁判例が「その責めに帰することができない理由」を「天変地変,あるいはこれに準ずる社会的に重大な事象の発生により,通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払っても,なお追納期間内に特許料等を納付することができなかったような場合」などと極めて厳格に解していたことと立場を異にし,より緩やかな解釈を示したものである。むしろ,同判決は,「その責めに帰することができない理由」の解釈につき,原告の上記主張と同旨を意味するものと - 8 -解すべきである。 にし,より緩やかな解釈を示したものである。むしろ,同判決は,「その責めに帰することができない理由」の解釈につき,原告の上記主張と同旨を意味するものと - 8 -解すべきである。 2 本件各納付書に係る手続の経緯等(1) 原告は,本件各納付書に係る特許料納付手続をする以前から,東京都千代田区に所在する本件訴訟の原告代理人事務所(以下「本件特許事務所」という。)に特許料納付手続を依頼していたところ,原告は,平成23年3月17日,本件各特許権の第9年分の特許料納付(以下「本件各納付手続」という。)を含む特許料納付を指示する「年金納付回答書」と題する書面(以下「本件納付指示書」という。なお,同指示書は甲ないし丙事件の各甲7であるが,同一のものであり,本件納付指示書は一通である。)をファクシミリ送信し,本件特許事務所は,同日,これを受領した。 しかし,本件特許事務所が本件納付指示書を受領した日である平成23年3月17日(木曜日)は,折しも同月11日(金曜日)に発生した東日本大震災の6日後であり,かつこの大震災後の本件特許事務所における週明けの執務開始日から数えると僅か4日目であった。大震災当日には本件特許事務所が入居するビルが築40年を超えるため,同じ震度5強でもそれ以上の揺れを体感し,書類の散乱やキャビネット類倒壊の危険性にも見舞われ,現に本件特許事務所のサーバのデータの一部が消失し,出張中や休暇中の職員の安否確認に追われるなど定常業務を中断せざるを得ない状況となり,本件各納付手続を担当する事務職員及びその上司を含め,交通手段が途絶えたことによる帰宅難民が多数発生した。また同月14日(月曜日)から実施された大震災による福島第一原子力発電所の事故に伴う首都圏における計画停電等の影響により,本件特許事務所 を含め,交通手段が途絶えたことによる帰宅難民が多数発生した。また同月14日(月曜日)から実施された大震災による福島第一原子力発電所の事故に伴う首都圏における計画停電等の影響により,本件特許事務所の職員には交通手段の著しい乱れによる一部の出勤不能状態が続き,加えて通信手段の著しい乱れによる依頼者との連絡が一様に取れない状態が続く中にあって,各種期限に対する応答業務が著しく混乱する状況にあった。本件特許事務所における本件各納付手続の事務担当者は,上述した大震災後の混乱する状況下にあって,当時は辛うじて出勤 - 9 -はできたものの,大震災に伴う特許料納付の期限管理の対応から思うように各依頼者との連絡が取れない中,期限照会,連絡業務及び納付手続に奔走する日が続いていた。 本件特許事務所では,大震災当日はもとより,その翌週の平成23年3月14日(月曜日)以降においては,当時の余震や計画停電等に対する緊急の災害対策を講じ,依頼者との連絡を密に取りながら速やかな期限応答手続の前倒し処理を推進し,かつ対特許庁手続の締切り時間は17時とし,一方,事件管理等システム管理上でのセキュリティを維持するため,ホスト及びサーバは執務時間外の稼働を取り止め,執務時間内においても予測不能な突発的停電に伴う緊急停止を考慮しながら日々の業務量に応じて,極力執務時間内での業務終了に合わせて稼働を手動で停止する態勢に切り換え,同年3月末まで実施した。 (2) 本件納付指示書を受領した平成23年3月17日(木曜日)の当日は,上記執務態勢による緊急災害対策の実施中であり,納付手続の事務担当者は連日の余震や自宅地域の計画停電の実行可否に加え,交通事情が著しく混乱するなどの不安に駆られる中で辛うじて出勤し,ホストやサーバの稼働時間が制約される不 害対策の実施中であり,納付手続の事務担当者は連日の余震や自宅地域の計画停電の実行可否に加え,交通事情が著しく混乱するなどの不安に駆られる中で辛うじて出勤し,ホストやサーバの稼働時間が制約される不安定な執務態勢の下,切迫する納付期限の未回答分に関する依頼者との照会,対応業務に追われながらも,依頼者からの回答情報をデータ入力し,担当業務の一環である納付手続の業務に専念していた。 そして,本件納付指示書の受領当日の平成23年3月17日には,同日に納付予定の他の事件とともに,本件各特許権についても第9年分特許料納付手続を行うべく,同年4月18日の納付期限に対して回答情報をデータ入力したが,本件各特許権については適切なデータ入力ではなかったために,納付書データが出力されていなかったことに対して,処理した事務担当者本人のみならず,その上司までもが,点検で気付かないまま,第9年分特許料納付は手続されることなく,その結果,適切にデータ入力されていれば第10年 - 10 -分に更新していたであろう特許料データの期限情報はシステム更新されなかった。しかも,適切に回答情報をデータ入力していればその後に出力されるべき特許料領収書の送付状及び納付報告を兼ねた請求書が出力されていないことについて,混乱の最中,データ入力後に本件納付指示書が他の書類と紛れてしまったために,最終確認の作業である本件納付指示書との突合せ作業もすることができず,常態であれば段階的な点検,確認作業で適切でないデータ入力の発見が可能であったにもかかわらず,特許料納付のルーチン業務が完結していないことに気付くことができなかった。 上記異常事態に気付かないまま,本件特許事務所が原告に対し同年11月4日に送付した特許料納付期限通知書に,本件各特許権にかかる ルーチン業務が完結していないことに気付くことができなかった。 上記異常事態に気付かないまま,本件特許事務所が原告に対し同年11月4日に送付した特許料納付期限通知書に,本件各特許権にかかる第10年分の納付期限が記載されていないことが判明した。 このように,本件特許事務所が本件各特許権の第9年分の本件納付指示書を受領した同年3月17日は,東日本大震災のわずか6日後の混乱の最中であったため,原告の責めに帰することのできない執務環境の物理的,心理的混乱状態が生じており,結果として,本件各特許権の第9年分の特許料納付を期限内にすることができなかった。 3 本件において,「その責めに帰することができない理由」があること上記の通り,本件各特許権に係る第9年分の特許料及び割増特許料を追納期間内に追納することができなかった理由は,本件納付指示書を受領した平成23年3月17日が,東日本大震災の6日後であり,執務日基準であれば4営業日後であり,大震災の揺れ自体が引き起こした混乱に加え,直後の福島第一原子力発電所の事故による放射能被爆の恐れ,水道水の放射能汚染,計画停電,交通機関の麻痺等,尋常ではない物理的・心理的執務環境下にあったことから,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を払っても回避できない不適切なデータ入力が生じ,かつ本件納付指示書が他の書類と紛れてしまったために,その結果,通常であれば機能する幾重ものチェック体制が機能しなかっ - 11 -たためである。 したがって,本件各特許権の特許料納付について,「相当の注意」が払われたことは明らかであり,本件において改正前特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があることは明らかである。 4 本件各処分及び本件異議決定におけ 「相当の注意」が払われたことは明らかであり,本件において改正前特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があることは明らかである。 4 本件各処分及び本件異議決定における判断について本件各処分は,本件納付指示書を受領した平成23年3月17日が東日本大震災の6日後で特許関連業務に混乱が生じたとしても,「そのような状況下で本特許権の納付手続以外の特許関連業務の手続が可能であったのであれば,」通常期待される注意を尽くしたものとはいえない旨を説示する。 しかし,他の特許関連業務の手続が可能であったことをもって,「その責めに帰することができない理由」があったとはいえないとされるのであれば,「その責めに帰することができない理由」があるといえる場合とは,特許関連業務の手続がおよそ不可能であった場合に限定されることとなってしまう。このような解釈は,上記の「その責めに帰することができない理由」の意義と相容れず,改正前特許法112条の2第1項の解釈を誤ったものである。 また,本件異議決定は,東日本大震災の発生により心理的・物理的混乱があったとしても,「特許権の存否を左右する重要な書類である納付回答書については,より慎重に取り扱うべきであったにもかかわらず,これを紛失してしまったのであるから」,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を払っていたということはできない旨を説示する。 しかし,上記説示を前提とすると,特許料納付に係る事務作業は全て特許権の存否を左右する重要な作業であるからより慎重に取り扱うべきものとなり,その過程における手違いは,たとえ東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故といった未曾有の災害の発生による心理的・物理的混乱の下で生じたものであっても,全て「その責めに帰することができない理由」に該当し 過程における手違いは,たとえ東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故といった未曾有の災害の発生による心理的・物理的混乱の下で生じたものであっても,全て「その責めに帰することができない理由」に該当しないことになってしまう。このような解釈も上記「その責めに帰することができない理 - 12 -由」の意義と相容れず,改正前特許法112条の2第1項の解釈を誤ったものである。 さらに,本件異議決定は,特許庁が平成24年3月に作成し公表した「期間徒過後の手続に関する救済規定に係るガイドライン」(以下「救済ガイドライン」という。甲ないし丙事件各甲8)は,平成23年法律第63号により改正された特許法112条の2(以下「改正特許法112条の2」という。)に基づくものであり,本件には適用されない旨を説示する。 しかし,改正前特許法112条の2に基づく救済を認めた裁判例はこれまで1件もないため,具体的にどのような事実関係の下であれば同条に基づく救済が認められるのかを示す裁判例が存在しないところ,改正前特許法112条の2及び改正特許法112条の2は,いずれも特許権の回復の制度の国際的調和を企図して立法されたものであるから,改正前特許法112条の2に関し具体的当てはめをするにあたり,改正特許法112条の2に係る救済ガイドラインを参照することは妥当なものというべきである。 また,本件各処分及び本件異議決定は,特別措置法3条3項に基づく,本件各特許権の特許料追納手続に係る期間の延長を求める原告の主張は採用できない旨を説示する。 しかし,既に詳述した本件各納付手続に関する状況からすれば,同法に基づく本件各特許権の特許料追納手続に係る期間の延長は認められるべきである。 5 被告の主張に対する反論被告は,仮に本件特許事務所にお 詳述した本件各納付手続に関する状況からすれば,同法に基づく本件各特許権の特許料追納手続に係る期間の延長は認められるべきである。 5 被告の主張に対する反論被告は,仮に本件特許事務所において東日本大震災による何らかの影響があったとしても,その影響が,本件特許事務所において本件各特許権に係る第9年分の特許料が納付されていないことに気付いた平成23年11月4日まで継続したとは到底認められず,また,その点をおくとしても,原告が本件各納付書を特許庁長官に提出したのは,未納付に気付いてから14日以上経過した同月21日であるから,原告の本件各特許権に係る第9年分の特許料等の追納は - 13 -認められないと主張する。 しかし,原告が本件各特許権に係る第9年分の特許料が未納付であることに気がついたのは同月11日であり,未納付に気付いてから14日以内である同月21日に本件各納付書を提出しているため,被告の上記主張は誤りである。 また,改正前特許法112条の2第1項の「その理由がなくなつた日」とは,「特許料等の追納手続をすることができなかった理由がなくなった日」を意味し,これを言い換えると,「特許料等の追納手続をすることができない状態から脱した日」を意味するものである。このような解釈は,改正前特許法112条の2第1項の「その理由がなくなつた日」との文言に従ったものであるから妥当なものである。また,このように解釈しないと,尋常ではない物理的・心理的執務環境下において不適切な手続処理がされ,実際には特許料納付がされていないにもかかわらず,特許権者としては特許料納付がされていると考えていた本件のような事案において,事実上救済を否定することになりかねず妥当性を欠くことにもなる。さらに,改正特許法112条の2第1項において もかかわらず,特許権者としては特許料納付がされていると考えていた本件のような事案において,事実上救済を否定することになりかねず妥当性を欠くことにもなる。さらに,改正特許法112条の2第1項においても「その理由がなくなつた日」との文言が用いられているところ,救済ガイドラインの3.2(甲8,19頁~20頁)において,当該文言は,「手続をすることができなかった理由がなくなった日」,さらに具体的にいえば,「当該手続をすることができない状態から脱した日」と解釈すべき旨を説明しており,当該特許庁の解釈は同じ文言である改正前特許法112条の2第1項の「その理由がなくなつた日」にも同様に当てはまるというべきである。 この点,改正前特許法112条の2第1項の「その理由がなくなつた日」を「(特許料の未納に気付いて)特許料等の追納手続をすることができない状態から脱した日」と解釈すると,長期にわたり特許権の回復が認められる可能性が残るので妥当でないとの批判も考えられるが,このような弊害が生じないよう,改正前特許法112条の2は,同条の下で特許権の追納が認められる期間を「(特許料の追納)期間の経過後六月以内」に限定しており,また特許法1 - 14 -12条の3により回復した特許権の効力を制限している。また,改正前特許法112条の2第1項の「その理由がなくなつた日」を「(特許料の未納に気付いて)特許料等の追納手続をすることができない状態から脱した日」と解釈しないとすれば,同じ文言で規定される改正特許法112条の2第1項の「その理由がなくなつた日」も同様に解釈され,ひいては,改正特許法112条の2の下でも,特許権者の補助者のミスにより手続がされず,そのミスに気が付かなかった場合に,特許権者の救済がされないことになりかねず,このような解釈が も同様に解釈され,ひいては,改正特許法112条の2の下でも,特許権者の補助者のミスにより手続がされず,そのミスに気が付かなかった場合に,特許権者の救済がされないことになりかねず,このような解釈が改正特許法112条の2の立法趣旨と整合しないことも明らかである。 以上の理由から,改正前特許法112条の2第1項の「その理由がなくなつた日」は,「(特許料の未納に気付いて)特許料等の追納手続をすることができない状態から脱した日」と解釈すべきである。 そして,本件においては,原告が本件各特許権に係る第9年分の特許料が未納付であることに気がついたのは平成23年11月11日であり,未納付に気付いてから14日以内である同月21日に本件各納付書を提出しているため,特許料の追納が「その責めに帰することができない理由」の消滅から14日以内に行われたことは明らかである。 〔被告の主張〕 1 改正前特許法112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」の意義改正前特許法112条の2は,パリ条約5条の2第2項に「同盟国は,料金の不納により効力を失つた特許の回復について定めることができる。」と規定され,諸外国においても,特許料の不納により失効した特許権の回復を認める制度が設けられており,我が国においてもこれを認めるべきとの要望が国内外から寄せられていたこと等の状況に鑑み,特許法112条1項による救済の更なる救済として設けられたものである。 改正前特許法112条の2は,追納期間内に特許料等を納付できなかった理 - 15 -由が特許権者の責めに帰することができないものであること,追納期間の経過後6か月以内であって,かつ,その理由の消滅から14日(在外者にあっては2か月)以内に,納付すべきであった特許料等を追納 -由が特許権者の責めに帰することができないものであること,追納期間の経過後6か月以内であって,かつ,その理由の消滅から14日(在外者にあっては2か月)以内に,納付すべきであった特許料等を追納することを条件に特許権の回復を認めるものであるが,このような条件が付された趣旨は,既に特許法上設けられている拒絶査定不服審判や再審の請求期間を徒過した場合の救済の条件や他の法律との整合性を考慮するとともに,そもそも特許権の管理は特許権者の自己責任の下で行われるべきものであること,失効した特許権の回復を無期限に認めると第三者に過大な監視負担をかけることを考慮したものである。 改正前特許法112条の2第1項にいう「その責めに帰することができない理由」とは,天災地変のような客観的な理由に限る必要はないが,前記改正前特許法112条の2の立法趣旨や同条が特許法112条1項による救済の更なる救済という例外的な規定であることに鑑みれば,「通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合」をいうものと解するのが相当である。 2 改正特許法112条の2について改正特許法112条の2は,特許料の追納期間徒過の救済要件について,「その責めに帰することができない理由」を緩和し,「正当な理由」で足りるとした。また,救済手続による納付が可能な期間を拡大し,「その理由がなくなった日から2月以内でその期間の経過後1年以内」とした(乙2)。 これは,従前,「その責めに帰することができない理由」という回復の要件は,民訴法97条1項の追完の規定に倣って極めて厳格に解されており,平成6年の本規定導入後,これまでに同条の規定により特許権の回復が認められた事例は皆無であ することができない理由」という回復の要件は,民訴法97条1項の追完の規定に倣って極めて厳格に解されており,平成6年の本規定導入後,これまでに同条の規定により特許権の回復が認められた事例は皆無であったことや,国際調和の観点から,我が国の救済は実態において厳格すぎるとの指摘を受けており,このような世界的なすう勢に鑑 - 16 -みて,救済の要件を緩和する必要があったことから,特許法条約12条の規定に整合した制度とすべく,特許料の追納期間徒過の救済要件を「その責めに帰することができない理由」から「正当な理由」に緩和するとともに,救済手続による納付が可能な期間を拡大したものである。 上記のとおり,改正前特許法112条の2は改正されることとなったが,既に消滅したとみなされている特許権についてまで回復を認めることは,法的安定性を害し,適当ではない。そこで,改正特許法112条の2は,改正法の施行の日以後に消滅したものとみなされた特許権について適用され,施行日前に消滅したものとみなされた特許権については,なお従前の例によるとされた(平成23年法律第63号附則2条17項)。 そして,同附則1条において「この法律は,公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」と規定されていたところ,平成23年12月2日に公布された特許法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(政令第369号)によって,「特許法等の一部を改正する法律の施行期日は,平成24年4月1日とする。」と規定された。 したがって,改正特許法112条の2は,平成24年4月1日以後に消滅したとみなされた特許権について適用される。 3 本件各処分の適法性について(1) 本件特許事務所においては,特許庁に対する事務手続のほとんどが管理 112条の2は,平成24年4月1日以後に消滅したとみなされた特許権について適用される。 3 本件各処分の適法性について(1) 本件特許事務所においては,特許庁に対する事務手続のほとんどが管理システムによって管理されており,特許料の納付手続に関しては,年金納付回答書による特許権者からの納付指示を管理システムにデータ入力した後は,管理システムによって管理されることになっていたのであるから,管理システムへのデータ入力は,その後の特許料の納付手続を管理していく上で極めて重要な作業であるというべきである。 したがって,本件特許事務所においては,特許権に関する各種申請期間等のデータ入力後の期間管理のみならず,管理システムへのデータ誤入力 - 17 -を回避するための確認をすることについても,通常の注意力を有する当事者として注意を尽くすことが通常期待されるものであったといえる。そして,このように解したとしても,例えば管理システムへのデータ入力それ自体を年金納付回答書の記載と相違がないか否かを複数人で確認するなどすれば足りることであるから,本件特許事務所に対して過度な注意義務を課するものともいえない。 しかるに,上記のとおり,本件特許事務所においては,原告からの本件各特許権に係る第9年分の特許料の納付指示情報を管理システムに誤ってデータ入力した担当者のみならず,その上司までもが点検でも気付かなかったというのであるが,当該上司がいかなる点検を行ったのか不明ではあるものの,少なくとも,例えば,管理システムへのデータ入力それ自体に誤りがないか否かを複数人で確認していたとの事情は認められず,ほかにデータの誤入力を回避するための確認をしていたとの事情は何ら認められないから,本件特許事務所において,管理システムへのデー れ自体に誤りがないか否かを複数人で確認していたとの事情は認められず,ほかにデータの誤入力を回避するための確認をしていたとの事情は何ら認められないから,本件特許事務所において,管理システムへのデータ誤入力を回避するための確認をすることについて,通常の注意力を有する当事者として通常期待される注意が尽くされていなかったといえる。 また,本件納付指示書が他の書類と紛れてしまったことにより,本件納付指示書との突合せ作業ができず,平成23年11月4日まで,原告の本件各特許権に係る第9年分の特許料が納付されていなかったことに気付かなかったとの点に関しても,重要書類であるはずの本件納付指示書を適切に管理することは,特許事務所としては,極めて当然のことである。 したがって,本件特許事務所において,本件納付指示書の適切な管理を怠ったことは,通常の注意力を有する当事者として通常期待される注意が尽くされていなかったといえる。 以上のとおり,原告が本件各特許権に係る第9年分の特許料等を追納期間内に納付できなかったことについて,「通常の注意力を有する当事者が - 18 -通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由」があるとはいえず,したがって,「その責めに帰することができない理由」があるとは認められない。 (2) なお,本件特許事務所は,原告から本件各特許権に係る第9年分の特許料の納付について委託を受けた者であるが,原告自らの判断に基づき,本件特許事務所に委託して特許料の納付を行わせることとした以上,委託を受けた本件特許事務所にその責めに帰することができない理由があるといえない状況の下で追納期間を徒過した場合には,改正前特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があるとはい 受けた本件特許事務所にその責めに帰することができない理由があるといえない状況の下で追納期間を徒過した場合には,改正前特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があるとはいえないというべきである。 (3) 東日本大震災が本件特許事務所における事務に対してどの程度の影響をどの程度の期間及ぼしたものであったかは不明ではあるが,東日本大震災後も本件特許事務所の業務それ自体は継続して行われており,管理システム自体も稼働していたのであるから,管理システムへのデータ入力を誤ったことについては,人的かつ初歩的な誤りといわざるを得ないのであって,東日本大震災による影響は極めて希薄であったといえる。むしろ,本件特許事務所においては,通常時から,担当者のデータ誤入力があるかもしれないとの想定の下,複数人でデータ入力に誤りがないか否かを確認するなど,データ誤入力を回避するための十分な確認をすべきであったといえる。 さらに,本件納付指示書が他の書類に紛れてしまったことについても,本件特許事務所において,東日本大震災後に受領したものを適切に管理していなかったというにすぎないのであるから,東日本大震災による影響はますます希薄といわざるを得ない。 したがって,原告の上記主張には,何ら理由がないというべきである。 なお,特許料等の追納は,「その責めに帰することができない理由」の消滅から14日以内に行わなければならないところ,仮に本件特許事務所 - 19 -において東日本大震災による何らかの影響があったとしても,その影響が,本件特許事務所において本件各特許権に係る第9年分の特許料が納付されていないことに気付いた平成23年11月4日まで継続したとは到底認められず,また,その点をひとまずおくとしても,原告が本件各納 が,本件特許事務所において本件各特許権に係る第9年分の特許料が納付されていないことに気付いた平成23年11月4日まで継続したとは到底認められず,また,その点をひとまずおくとしても,原告が本件各納付書を特許庁長官に提出したのは,未納付に気付いてから14日以上経過した同月21日であるから,結局,原告の本件各特許権に係る第9年分の特許料等の追納は認められないというべきである。 (4) 救済ガイドラインは,手続期間の徒過を救済することを目的に改正された改正特許法112条の2等の規定の適用に関するガイドラインを示したものであるところ,同改正法の附則2条17項において,改正特許法112条の2第1項の規定の適用について,法律の施行の日前に消滅したもの又は初めから存在しなかったものとみなされた特許権については,なお従前の例による旨が明確に規定されている。 この点,本件各特許権については,特許料等の追納期間内である平成23年10月18日までに法所定の特許料等が納付されなかったため,特許法108条2項本文に規定する期間の経過の時である同年4月18日に遡って消滅したものとみなされており,その施行日である平成24年4月1日以前に既に権利が消滅しているのであるから,改正特許法112条の2が適用される余地はなく,救済ガイドラインが適用される余地はない。 したがって,救済ガイドラインを参考にすべき旨の原告の上記主張は独自の見解であり,失当である。 なお,仮に,本件各特許権に係る第9年分の特許料等の納付について救済ガイドラインが適用されたとしても,直ちに救済されることになるとはいえない。すなわち,改正前よりも要件が緩和された改正特許法112条の2に関する救済ガイドライン12ページにおいてすら,救済が認められない事例として,「期間管理を行うシステ 救済されることになるとはいえない。すなわち,改正前よりも要件が緩和された改正特許法112条の2に関する救済ガイドライン12ページにおいてすら,救済が認められない事例として,「期間管理を行うシステムへのデータの誤入力により誤 - 20 -った期限が告知された場合であって,データの誤入力を回避するための実質的な確認(例えば,二重チェック等)をしていなかったとき。」と例示されていることに鑑みれば,仮に本件各特許権に係る第9年分の特許料等の納付について救済ガイドラインが適用されたとしても,むしろ,救済されることにはならないというべきである。 (5) 特許庁における特別措置法に基づく特別措置については,東日本大震災が特別措置法2条1項に規定する特定非常災害として指定されたことを受けて,特許庁は,同法3条3項の規定に基づく申出を行うことにより,この震災によって影響を受けた手続期間の延長を認めることとし,その旨の案内を東日本大震災の3日後である平成23年3月14日に特許庁のホームページに掲載した(乙4)。 ところで,特別措置法3条3項に基づく期間延長の措置は,保全又は回復を必要とする理由を記載した書面により満了日の延長の申出を行うことが必要である。 しかるに,原告からは,本件各特許権に関して何らの申出もされていないのであるから,特別措置法3条3項が適用される余地はない。 したがって,特別措置法3条3項に基づいて,本件各特許権の特許料の追納手続に係る期間の延長を認めるべきとする原告の上記主張は独自の見解であり,失当である。 第4 当裁判所の判断 1 改正前特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」の意義について特許料は,第4年以後の各年分については,前年以前に納付しなければな 第4 当裁判所の判断 1 改正前特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」の意義について特許料は,第4年以後の各年分については,前年以前に納付しなければならず(特許法108条2項本文),この納付期間内に納付することができないときは,その期間が経過した後であっても,その期間の経過後6月以内にこれを追納することができるが,その場合は,その特許料及びこれと同額の割 - 21 -増特許料を納付しなければならない(同法112条1項,2項)。そして,この6か月の追納期間内に,納付すべきであった特許料及び割増特許料を納付しないときは,その特許権は,本来の納付期間の経過の時にさかのぼって消滅したものとみなされる(同条4項)。他方,上記112条4項の規定により消滅したものとみなされた特許権の原特許権者は,その責めに帰することができない理由により同条1項の規定により特許料を追納することができる期間内に同条4項に規定する特許料及び割増特許料を納付することができなかったときは,その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては,2月)以内でその期間の経過後6月以内に限り,その特許料及び割増特許料を追納することができる(改正前特許法112条の2第1項)。 このように,改正前特許法112条の2は追納期間が経過した後の特許料納付により特許権の回復を認めることとした規定であり,同条1項の定める要件は,拒絶査定不服審判(特許法121条2項)や再審の請求期間(同法173条2項)を徒過した場合の救済条件や他の法律との整合性を考慮するとともに,そもそも特許権の管理は特許権者の自己責任の下で行われるべきものであり,失効した特許権の回復を無制限に認めると第三者に過大な監視負担をかけることとなることを踏まえて立 との整合性を考慮するとともに,そもそも特許権の管理は特許権者の自己責任の下で行われるべきものであり,失効した特許権の回復を無制限に認めると第三者に過大な監視負担をかけることとなることを踏まえて立法されたものと認められるから(乙1),改正前特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」とは,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合をいうものと解するのが相当である。 2 本件に至る経緯前記第2,2で認定した事実並びに証拠(甲ないし丙事件各甲1~8,甲9~13,乙1~4。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,認定事実の末尾に主要な証拠を摘示した。)。 (1) 本件各特許権については,いずれも第8年分までの特許料が支払われてお - 22 -り,第9年分の特許料の納付期間の末日は平成23年4月18日であった。 原告は,本件各特許権を含む特許権の特許料納付につき,本件特許事務所にその手続を委任しており,本件特許事務所は,原告の要望により,1年に4回,年金納付期限通知書を作成してこれを原告に送付していた。1回の年金納付期限通知書について,平均80件ほどの特許料納付期限を通知し,それぞれに対して年金納付回答書と題する書面を原告から受領し,同回答書の指示に基づいて,本件特許事務所において,特許料納付手続を行っていた。 (2) 本件特許事務所では,特許庁に対する手続業務は,コンピュータによる作業に委ねていた。すなわち,本件特許事務所においては,対特許庁手続を実行するオンライン手続のパソコンは,サーバで管理されているネットワーク上の共用端末として配備されたものが利用でき, ュータによる作業に委ねていた。すなわち,本件特許事務所においては,対特許庁手続を実行するオンライン手続のパソコンは,サーバで管理されているネットワーク上の共用端末として配備されたものが利用でき,24時間稼働可能な環境となっている一方,対特許庁手続の書誌情報をデータ入出力するパソコンについては,システムを管理するホストコンピュータに接続され,各自に配備されたホスト端末を使用することとしている。ホスト端末は,バッチ処理によるシステム更新との関係で,定常では午前5時過ぎから午後9時までの限定的な稼働態勢となっている。この執務環境における特許料納付に関する手続業務は,特許権の情報を上記ホスト端末でデータ入力することにより特許料データが構築され,期限情報も設定され,当年分の期限日に間に合うように依頼者宛てに定期的に期限の通知である年金納付期限通知書を送付し,依頼者が通知書に同封される年金納付回答書の所定欄に権利継続の要否等(回答情報)を記入し,本件特許事務所に送付する。 そして,本件特許事務所が,依頼者より権利継続の指示を受けたときは,その回答情報を適切にデータ入力することにより,オンライン手続用の特許料納付書データが出力され,共用端末によるオンライン手続での特許料納付後に,当該特許料納付書データに基づき,期限情報が自動的に次年分 - 23 -に更新されるようにシステムが管理されている。 そして,この年金納付システムの管理上,納付手続の当日には,納付書データに基づき,特許庁から納付手続完了後に事件毎に発行され,本件特許事務所に送付される特許料領収書につき,予め,これを依頼者毎に送付するための送付状を出力しておき,この送付状を保管することとしていた。 仮に,所定期間内に特許料の領収書が受領できていないときには,特許庁に に送付される特許料領収書につき,予め,これを依頼者毎に送付するための送付状を出力しておき,この送付状を保管することとしていた。 仮に,所定期間内に特許料の領収書が受領できていないときには,特許庁に照会する態勢をとっていた。さらに,納付手続の翌日には,納付書データに基づき,特許料納付報告書を兼ねた手続費用の請求書が自動的に出力され,これと,依頼者から送られていた年金納付回答書(本件においては本件納付指示書)との突合せ作業による最終確認を行い,依頼者に対して納付の報告をすることとなる。仮に,上記回答書を受領した後にこれを紛失するなどして,何らの回答情報もデータ入力されなかった場合は,納付期限日,追納期限日の当日に,システムから注意喚起の警告が出力され,それぞれの期限日までには事前に依頼者に照会し,回答若しくは指示を受けて,期限についての応答処理をする態勢をとっていた。 (3) 原告は,本件特許事務所から,本件各特許権についての第9年分の特許料の納付期限は平成23年4月18日であるとする通知を受けたことから,本件各特許権につき権利を存続させることとして,同年3月17日午前10時06分,本件特許事務所宛てに,本件各特許権の第9年分の特許料につき,各納付を指示する旨が記載された本件納付指示書をファクシミリ送信した。本件特許事務所においては,これを受領した上で,同日付けの事務所の受信印が押された。なお,本件納付指示書には,同年4月4日が納付期限の特許権1件については放棄するが,同月4日納付期限の特許権1件,同月6日納付期限の特許権1件,同月7日納付期限の特許権1件及び同月12日納付期限の特許権2件については,いずれも継続することとして各特許料の納付を指示する旨の記載もあるが,これらの記載は,同年3 - 24 -月17日まで 期限の特許権1件及び同月12日納付期限の特許権2件については,いずれも継続することとして各特許料の納付を指示する旨の記載もあるが,これらの記載は,同年3 - 24 -月17日までに既に本件代理人事務所に指示済みのものであり,これらについては適切に処理されている。〔甲ないし丙事件各甲3,2頁,同甲7〕(4) 本件特許事務所において本件納付指示書を受領した平成23年3月17日は木曜日で,同月11日金曜日に発生した東日本大震災の6日後であり,本件特許事務所の震災後の執務開始日である同月14日月曜日から数えると4日目であった。同月14日以降,本件特許事務所においては,大震災の余震や,計画停電等に対する緊急の災害対策を講じつつ,依頼者との連絡を取るととともに期限応答手続の処理を行い,依頼者からの回答情報をデータ入力し,担当業務の一環として特許料等の納付手続の業務を行っていた。 本件納付指示書に関しても,同月17日に納付予定とされていたその他の事件とともに,本件各特許権について第9年分の特許料納付手続を行うべく,同年4月18日の納付期限に対する回答情報をデータ入力したが,この本件各特許権についてのデータ入力が適切なデータ入力ではなかったため,本件特許事務所のコンピュータのデータ処理上,納付期限の異常な応答処理として扱われた。 通常,データ入力がされない場合には,納付期限日,追納期限日の当日に,システムから注意喚起の警告が出力されるが,上記のとおりの納付期限の異常な応答処理として扱われるデータ入力内容であったため,これら警告がされなかった。これにより,本件各特許権については,納付期限につき適切なデータ入力がされていれば,出力されたはずである納付書データが出力されず,これにつきデータ入力を行った事務担当 め,これら警告がされなかった。これにより,本件各特許権については,納付期限につき適切なデータ入力がされていれば,出力されたはずである納付書データが出力されず,これにつきデータ入力を行った事務担当者本人も,その上司に当たる職員も,気付くことはなかった。このようにして,本件各特許権について,第9年分の特許料納付が手続されないまま,時間が経過した。 一方,上記データ入力がされた後,本件納付指示書は,納付手続がされた - 25 -他の特許料納付指示書及び特許料納付リストとは別の書類と一緒に整理された上で,データ入力担当者の上司に当たる本件特許事務所の職員に提出された。〔甲9〕これにより,適切なデータ入力がされていればその後に出力されるはずであった特許料領収書の送付状及び納付報告を兼ねた請求書が出力されていないことについて,本件納付指示書との上記担当上司による最終確認作業である突合せ作業もされなかった。〔甲3,甲9〕本件特許事務所は,本件各特許権につき,第9年分の特許料が納付されていないことに気付かないまま,原告に対し,同年11月4日に原告からの依頼に基づく特許権について,年金納付期限通知書を送付した。その後,原告において,そこに本件各特許権にかかる第10年分の納付期限が記載されていないことに気付き,同月8日,本件特許事務所にその旨を通知した。これを受けて本件特許事務所において調査した結果,本件各特許権につき,原告から納付の依頼のあった第9年分の特許料納付がされていないことが判明し,本件納付指示書についても,他の受領書類に紛れていたものが発見された。 このように,追納期間の末日である同年10月18日までに特許料及び割増特許料が納付されなかったことから,本件各特許権については,いずれも ても,他の受領書類に紛れていたものが発見された。 このように,追納期間の末日である同年10月18日までに特許料及び割増特許料が納付されなかったことから,本件各特許権については,いずれも,第9年分の特許料の納付期間の末日である同年4月18日の経過のときに遡って消滅したものとみなされた。 (5) 原告は,特許庁長官に対し,平成23年11月21日付けで,特別措置法3条3項の規定による申出として,本件各特許権の第9年分の特許料及び割増特許料を納付する旨の本件各納付書を本件特許事務所の代理人弁理士を通じて提出した。〔甲ないし丙事件各甲3〕特許庁長官は,本件各納付書に係る手続について,それぞれ,権利消滅後の年分に係わる特許料の納付であり法令に定める要件を満たしていないた - 26 -め却下すべきものとし,その理由を上記第2,2(4)記載のとおりとする平成24年3月13日付け本件各通知書を,代理人弁理士宛て同月27日に発送した。これに対し,代理人弁理士は,同年4月24日付け弁明書を提出したが,特許庁長官は,同年5月21日付けで,本件各通知書記載の理由で手続きを却下する本件各処分をした。〔甲ないし丙事件各甲4,5〕原告は,代理人弁理士らを通じ,同年7月30日,特許庁長官に対し,本件各処分について,それぞれ行政不服審査法に基づく異議申立てをしたが,特許庁長官は,併合審理の上,平成25年1月29日,各異議申立てを棄却する本件異議決定をし,同月30日,同決定は代理人弁理士らに送達された。〔甲ないし丙事件各甲6〕 3 上記認定によれば,本件各特許権につき,第9年分の特許料が納付期間内及び追納期限までに適正に納付されなかった原因は,本件特許事務所において,原告から,平成23年3月17日に本件納付指示書を受 3 上記認定によれば,本件各特許権につき,第9年分の特許料が納付期間内及び追納期限までに適正に納付されなかった原因は,本件特許事務所において,原告から,平成23年3月17日に本件納付指示書を受領し,同日付け受信の手続印を押して受信の事実を確認した上で,本件特許事務所の担当者による回答情報をホスト端末において入力したが,具体的にどのような適切でないデータの入力がされたかは明確ではないものの,適切でないデータ入力の結果,本件特許事務所のコンピュータ上,本件各特許権につき,各納付期限の異常な応答処理と扱われる内容であったために,本件各特許権についての第9年分の特許料の納付に係るオンライン手続での特許料納付や,納付手続の当日に納付書データに基づき出力される依頼者に送付するための送付状,請求書等の出力もされなかったことにあると認められる。 そして,適切なデータ入力がされたか否かについての最終確認であるはずの本件納付指示書との適切な突合せがされなかった原因も,本件納付指示書自体が,本来整理されるべき書類群とは別の書類と共に整理されて紛れてしまったまま同年11月に至り,原告から本件各特許権についての第10年分の特許料の納付に関する記載がないことの指摘を受けて捜索し発見されるまで, - 27 -本件特許事務所において,突合せに必要な書類として分類整理されていなかったことによるものである。 以上によれば,原告提出証拠(甲10ないし13)のとおりの計画停電や放射性物質の影響等も含めた東日本大震災による混乱の続く状況下でのことであるとはいえ,本件各特許権の第9年分の特許料等不納付に係る上記一連の不手際は,本件各特許権の特許料の納付期限のデータ入力が適切でなかったことに加え,本件納付指示書自体が他の書類と紛れてしまって適切 あるとはいえ,本件各特許権の第9年分の特許料等不納付に係る上記一連の不手際は,本件各特許権の特許料の納付期限のデータ入力が適切でなかったことに加え,本件納付指示書自体が他の書類と紛れてしまって適切な管理がされなかったという,本件特許事務所における手続上の単純な人的な過誤によるものといわざるを得ない。 そうすると,本件において,本件各特許権の特許料等の納付ができなかったことは,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合に当たるということはできない。 よって,本件各特許権に係る第9年分の特許料等を追納期間内に納付することができなかったことについて,原告に,改正前特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があったと認めることはできない。 4 本件各処分の適法性について前記のとおり,本件各特許権については,第9年分の特許料の納付期間は平成23年4月18日までであり,その追納期限は同年10月18日であるところ,原告は,上記追納期限までに第9年分の特許料及び割増特許料を納付しておらず,原告が本件特許事務所を通じ,本件各納付書を提出したのは,追納期限が経過した後である同年11月21日であったものである。 そうすると,原告が本件各納付書を提出したのは,特許料等の追納期限が経過した後であるから,特許法112条4項により,本件各特許権は,同年4月18日の経過の時に遡って消滅したものとみなされる。 - 28 -したがって,原告の本件各納付書の提出による特許料等の納付が,改正前特許法112条の2第1項の要件を充たす追納と認められない限り,原告が本件各納付書の提出による特許料の納付によって特許権を回 8 -したがって,原告の本件各納付書の提出による特許料等の納付が,改正前特許法112条の2第1項の要件を充たす追納と認められない限り,原告が本件各納付書の提出による特許料の納付によって特許権を回復することはできないこととなる。 特許庁長官は,原告に改正前特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があるとは認められないことを理由として,本件各納付書を却下する旨の本件各処分をしたものであるところ,同項所定の「その責めに帰することができない理由」があったとはいえないことは,上記のとおりであるから,本件各処分を取り消すべき違法はない。 5 原告の主張に対する判断(1) 原告は,改正前特許法112条の2の規定は,特許権の回復の制度についての国際的調和を求める国内外からの要望に応えて立法されたものであることから,同条第1項の「その責めに帰することができない理由」も,諸外国の例に倣い,「相当の注意」が払われたにもかかわらず,特許料の追納期間が経過するまでに特許料を納付することができなかった場合を意味するものと解すべきであると主張する。 しかし,パリ条約5条の2第2項の規定に照らしても,そもそも特許権の回復についてどのような要件の下でこれを容認するかは各締結国の立法政策に委ねられているものと解されるのであって,これに,前記認定の改正前特許法112条の立法理由に鑑みれば,「その責めに帰することができない理由」という規定の下において,これを文言の通常有する意味から乖離した解釈をすることは適切ではない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (2) 原告は,本件各処分の理由として,本件納付指示書を受領した平成23年3月17日において本件各特許権の納付手続以外の特許関連業務の手続が可能であ 告の上記主張は採用することができない。 (2) 原告は,本件各処分の理由として,本件納付指示書を受領した平成23年3月17日において本件各特許権の納付手続以外の特許関連業務の手続が可能であったのであれば,通常期待される注意を尽くしたものとはいえな - 29 -い旨説示されていることに関し,このように解すると「その責めに帰することができない理由」があるといえるためには,特許関連業務の手続がおよそ不可能であった場合に限定されることとなってしまうから,上記説示は改正前特許法112条の2第1項の解釈を誤ったものである旨主張する。 しかし,前記認定事実によれば,本件特許事務所において,平成23年3月17日に本件納付指示書を受領して,これに基づく本件各特許権の第9年分の納付期限に関するデータの入力及び本件納付指示書の管理状況等を含め考えた場合,その責めに帰することができない理由があるといえないことは上記検討のとおりであり,必ずしも,本件特許事務所において,その頃その他特許関連業務の手続が可能であったことをもって,その責めに帰することができない理由があるといえないとするものではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 原告は,本件各処分及び本件異議決定の理由として,本件納付指示書の紛失につき通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を払っていたということはできないと説示していることに関し,これを前提とすると,特許料納付に係る事務作業は全て特許権の存否を左右する重要な作業であるからより慎重に取り扱うべきものとなり,その過程における手違いは,たとえ東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故といった未曾有の災害の発生による心理的・物理的混乱の下で生じたものであっても,すべて「その責めに に取り扱うべきものとなり,その過程における手違いは,たとえ東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故といった未曾有の災害の発生による心理的・物理的混乱の下で生じたものであっても,すべて「その責めに帰することができない理由」に該当しないことになってしまうから,上記説示は改正前特許法112条の2第1項の解釈を誤るものである旨主張する。 しかし,上記認定事実のとおり,本件各特許権の第9年分の納付期限に関するデータの入力,及びその後の本件納付指示書の管理状況を含めて考えた場合に,その責めに帰することができない理由があるとはいえないということであって,本件納付指示書の一時的な逸失のみをもって,その責め - 30 -に帰することができない理由があるといえないとするものではないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 原告は,本件各特許権に係る第9年分の特許料納付に係る事情については,改正特許法112条の2に係る救済ガイドラインに示された適用範囲内のものであるから,これによれば改正前特許法112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」がある旨主張する。 しかし,そもそも特許庁作成に係る救済ガイドライン自体法規範性を持たないものであるばかりか,改正特許法112条の2は,被告が主張するとおり,従前,「その責めに帰することができない理由」という回復の要件が実態において厳格すぎるとの指摘を受けており,世界的なすう勢に鑑みて,救済の要件を緩和する必要があったことから,特許法条約12条の規定に整合した制度とすべく,特許料の追納期間徒過の救済要件を「その責めに帰することができない理由」から「正当な理由」に緩和するとともに,救済手続による納付が可能な期間を拡大したもので 条約12条の規定に整合した制度とすべく,特許料の追納期間徒過の救済要件を「その責めに帰することができない理由」から「正当な理由」に緩和するとともに,救済手続による納付が可能な期間を拡大したものであるが,同条は,改正法の施行の日以後に消滅したものとみなされた特許権についてのみ適用され,施行日前に消滅したものとみなされた特許権については,なお従前の例によるとされた(平成23年法律第63号附則2条17項)ものであるところ,上記救済ガイドラインは,このような経緯で改正された改正特許法112条の2に関するものであるから,この趣旨を改正前特許法112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」の解釈に当たって参酌することが適切でないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (5) 原告は,本件各特許権についての本件各納付手続に関する状況からすれば,特別措置法3条3項に基づく,本件各特許権の特許料追納手続に係る期間の延長が認められるべきである旨主張する。 - 31 -しかし,特別措置法3条1項は,「次に掲げる権利利益(以下「特定権利利益」という。)に係る法律,政令…の施行に関する事務を所管する国の行政機関(…)の長(…)は,特定非常災害の被害者の特定権利利益であってその存続期間が満了前であるものを保全し,又は当該特定権利利益であってその存続期間が既に満了したものを回復させるため必要があると認めるときは,特定非常災害発生日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日(以下「延長期日」という。)を限度として,これらの特定権利利益に係る満了日を延長する措置をとることができる。 一法令に基づく行政庁の処分(特定非常災害発生日以前に行ったものに限る。)により付 「延長期日」という。)を限度として,これらの特定権利利益に係る満了日を延長する措置をとることができる。 一法令に基づく行政庁の処分(特定非常災害発生日以前に行ったものに限る。)により付与された権利その他の利益であって,その存続期間が特定非常災害発生日以後に満了するもの…」と,同条3項は,「第一項の規定による延長の措置のほか,同項第一号の行政庁又は同項第二号の行政機関(次項において「行政庁等」という。)は,特定非常災害の被害者であって,その特定権利利益について保全又は回復を必要とする理由を記載した書面により満了日の延長の申出を行ったものについて,延長期日までの期日を指定してその満了日を延長することができる。」とし,平成23年3月14日に特許庁が同庁のウエブサイト上に掲載した「東北地方太平洋沖地震により影響を受けた手続の取り扱いについて(第1報)」によれば,特別措置法3条3項の適用に当たり,「…東北地方太平洋沖地震により所定期間内に手続ができなくなった方は,手続が可能となってから14日以内に手続をして下さい。」とし(乙4),その手続の終了期限はいったん平成23年8月31日とされた。そして,特別措置法3条4項は,「延長期日が定められた後,第一項又は前項の規定による満了日の延長の措置を延長期日の翌日以後においても特に継続して実施する必要があると認められるときは,第一項の国の行政機関の長又は行政庁等は,同項又は前項の例に準じ,特定権利利益の根拠となる法令の条項ごとに新たに政令で定め - 32 -る日を限度として,当該特定権利利益に係る満了日を更に延長する措置をとることができる。」としているところ,これを受けて,東日本大震災の被害者の特許法第十七条の三の規定による願書に添付した要約書の補正等についての権利利益に係る 利利益に係る満了日を更に延長する措置をとることができる。」としているところ,これを受けて,東日本大震災の被害者の特許法第十七条の三の規定による願書に添付した要約書の補正等についての権利利益に係る満了日の延長に関する政令(平成23年8月26日政令第265号)16号により,特別措置法3条4項の規定に基づき,東日本大震災の被害者であって特に被害が大きく期間内に手続ができない場合について,特許料及び割増特許料の追納に関しても平成24年3月31日が限度とされたものである。 上記認定事実によれば,本件特許事務所は,東日本大震災後の週明けから執務を開始していることを理由として,特別措置法の適用を認めなかった本件各処分に誤りはないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (6) 原告は,改正前特許法112条の2の「その理由がなくなつた日」とは,「特許料等の追納手続をすることができない状態から脱した日」を意味するところ,原告が本件各特許権に係る第9年分の特許料が未納付であることに気付いたのは平成23年11月11日であり,未納付に気付いてから14日以内である平成23年11月21日に本件各納付書を提出しているから,違法ではない旨主張する。 しかし,その前提として,原告には,改正前特許法112条の2第1項にいう「その責めに帰することができない理由」が認められないことは上記のとおりであるから,そもそも原告の上記主張は前提を欠き,採用することができない。 6 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 - 33 - 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 主文 も理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 足立拓人
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