【DRY-RUN】主 文 被告人A、同B、同Cの本件控訴は、孰れもこれを棄却する。 原判決中、被告人Dに関する部分を破棄し、同被告人を懲役十二年に処 する。 押収してある証第十二号の
主文 被告人A、同B、同Cの本件控訴は、孰れもこれを棄却する。 原判決中、被告人Dに関する部分を破棄し、同被告人を懲役十二年に処する。 押収してある証第十二号のパール一挺は、これを没収する。 当審における訴訟費用中、国選弁護人笠原章に支給した分は、被告人Aの負担とし、その余は、被告人Dの負担とし、原審における訴訟費用中、鑑定人E、証人Eに支給した分は、被告人Dの負担とし、原審鑑定人Fに支給した分は、被告人Dと原審相被告人G、同A、同Bとの連帯負担とする。 理由 被告人Aの弁護人三輪勝治の控訴趣意は、本件記録添附の同人の控訴趣意書を引用するが、その要旨は、原判決の量刑は、不当であると謂うにある。 よつて案ずるに、被告人Aは、原判決当時は、満二十歳に達しない少年で、前科もないものであるが、原判決第四、第五に関係がないだけて、多数回に亘り、窃盗、強盗未遂、汽車顛覆未遂、強盗予備等の極めて悪質な犯罪を犯して居り、主謀者ではないが単純な附和雷同的な役割を演じたものでもなく、その動機も、遊興費を得んがためであつて、右の諸点と被告人の一身上の諸事情とを綜合するときは、原審の量刑は、相当で、論旨は、全く理由がない。よつて刑事訴訟法第三百九十六条により、被告人Aの本件控訴を棄却し当審における訴訟費用中、国選弁護人笠原章に支給した分は、同法第百八十一条により、同被告人に負坦させる。 被告人Bの弁護人野田底司の控訴趣意は、本件記録中の同人の控訴趣意書を引用する。 第一点の事実誤認の論旨について、原判決が被告人Bの犯行の動機として「被告人等は度重なる遊興費に困つたところより悪事を企てるようになつた。」と認定していることは所論の通りで、この点は、被告人Bの司法警察員に対する供述調書(昭 、原判決が被告人Bの犯行の動機として「被告人等は度重なる遊興費に困つたところより悪事を企てるようになつた。」と認定していることは所論の通りで、この点は、被告人Bの司法警察員に対する供述調書(昭和二十六年三月二十七日附)によれば、原判決第二の窃盗については、飲食遊興の金を得ようとして窃盗に参加し、得たる金は、飲食費に費消していることが認められ、相被告人Aの検察官に対する第一回供述調書(原判決第六の証拠)によれば、被告人Bは、被告人A等と大垣の遊廓や岐阜の遊廓で遊んでいたもので、こんな関係から、本件各被告人と知合になり、犯罪を犯すに至つた事情が窺えるから、原判決認定の動機は、判決に影響を及ぼすこと明らかな誤認でなく、論旨は、全く理由がない。 同第二点について、原判決第六の犯罪事実を見るに、被告人Bは他の被告人等と共謀の上、人の現在する列車を脱線顛覆させ、その混乱に乗じ、旅客の金品又は貨車積載の荷物を奪取しようと企て、原判示の東海道線の軌条の継目板を外し、軌条の下に長さ約二米の杉丸木の先端を差込み、その上端に力を加えて、軌条を移転させ、継目に約五十粍の食い違いを生ぜしめ、これが原状に復するのを妨げるため杉丸木を挿入しておいたが、汽車が顛覆せず、その目的を遂げなかつた旨を認定し、汽車顛覆未遂罪と強盗予備罪に該当すると解しているものであつて、右汽車顛覆を図つて、その実行行為を為したことが同時に強盗の準備行為となり同予備罪に該当する趣旨であることが明らかであるから、強盗予備罪につそ、その犯罪事実を示さない違法もなく、所論のような理由不備は存しない。更に論旨は、右の行為は強盗予備でなく、それより重い強盗未遂であるとするが、かかる主張は、被告人のみの控訴において、被告人のため不利益な主張を為したことになり、不適法である。被告人等が汽車を顛覆 。更に論旨は、右の行為は強盗予備でなく、それより重い強盗未遂であるとするが、かかる主張は、被告人のみの控訴において、被告人のため不利益な主張を為したことになり、不適法である。被告人等が汽車を顛覆させ、その混乱に乗じ、旅客に暴行脅迫を加え、その反抗を抑圧して、金品を強取しようと計画し、前記の通り軌道に妨害行為をほどこしたことは、汽車顛覆罪の実行の着手と解することはできるが、強盗行為の実行の着手と解することはできない。強盗は、人に対し、暴行脅迫を加え、その反抗を抑圧して、財物を奪取するに在つて、その実行の着手は、暴行脅迫の遂行意思が外形行為により、認めらるる程度に達して居ることが必要で、それに至るまでの準備的な行為は、着手と解することができないのであるが、汽車脱線又は顛覆は、強盗罪の暴行脅迫の一段階となることもあるが、まだ脱線又は顛覆に至つて居らず、これを企てこわが実行に着手したばかりであつて、被害者が特定しているわけではなく、客観的には、誰が強盗の被害者になり、暴行脅迫を受けるのか不明であつて、被告人等の内心の意図を除外して客観的に見るときは、強盗の実行の着手があつたものとは考えられない。強盗の実行の着手は、被告人等の意思のみに基いて判断するのでなく、外形の行為により、客観的に見て、強盗の遂行的意思が明らかになつたときに着手があつたと認められるので本件のように軌条に障碍をほどこしえだけで、既に強盗の実行の着手があつたと見るのは誤りで、原審のように強盗の予備と見るのが正当である。被告人等が原判示第六の通り軌条に作為を為したことは、原審鑑定人Fの鑑定書の記載によれば、列車の脱線顛覆の危険があることが十分に認められ、且つ専門家の知識をまたず、通常人の考えでも右の危険があることが推測できる程度のものであるから、原審が汽車顛覆の未遂罪と解したの 定書の記載によれば、列車の脱線顛覆の危険があることが十分に認められ、且つ専門家の知識をまたず、通常人の考えでも右の危険があることが推測できる程度のものであるから、原審が汽車顛覆の未遂罪と解したのは、正当で、論旨は何れ本理由がない。 同第三点についてよつて本件記録に基いて案ずるに、被告人Bは、原判決第二の窃盗と第六の汽車顛覆未遂、強盗予備に関係があり、共犯者から誘われた事情はあるが、これを拒絶し得なかつた事情にあつたわけでもなく、窃盗によつて得た金は、飲食遊興に費消して居り、又汽車顛覆と云う最も危険な犯罪に参加しているので、その責任は軽くなく被告人の一身上の諸事情及び所論の総ての事情を斟酌しても、原審の量刑は、重すぎるとは思料せられない。論旨は、理由がない。よつて刑事訴訟法第三百九十六条により、被告人Bの本件控訴を棄却する。 被告人Cの弁護人渋谷正俊の控訴趣意は、本件記録中の同人の控訴趣意書を引用するが、その要旨は、原判決の量刑は、不当であると謂うにある。 よつて案ずるに、被告人Cは原判決第一、第八の窃盗、第三の強盗未遂、第七の強盗予備に関係し、その犯罪の回数も多く、犯罪の態様も悪質で、得たる金は遊興に費消しているが、犯罪の主謀者ではなく、これ等の点と被告人Cの一身上の諸事情とを綜合するときは、原審の量刑は相当で、論旨は理由がない。よつて刑事訴訟法第三百九十六条により、本件控訴を棄却する。 被告人Dの弁護人渋谷正俊の控訴趣意は、本件記録中の同人の控訴趣意書を引用する。 よつて先づ職権により、被告人Dに対する本件起訴が適法であるかどうかについて案ずるに、被告人Dは、原判決当時は勿論、起訴当時において本満二十歳に達しない少年であつたから、起訴するには少年法第二十条により、家庭裁判所が刑事処分を相当と認め、検察官に送致決定を為したも ついて案ずるに、被告人Dは、原判決当時は勿論、起訴当時において本満二十歳に達しない少年であつたから、起訴するには少年法第二十条により、家庭裁判所が刑事処分を相当と認め、検察官に送致決定を為したものであることを要するが、本件記録中の昭和二十六年三月三十一日附岐阜家庭裁判所大垣支部の決定謄本によれば、原判決第五の汽車顛覆未遂及び強盗予備の事実については、右送致決定が為されていないことが明らかである。其後右第五事実追起訴に至るまて右の決定はされていない。然れども、該決定謄本によれば、被告人Dの前記原判決第五の事実を除きその余の犯罪事実は総て記載せられていることが認められる。よつて少年の犯罪について刑事処分を相当として検察官に送致する旨の決定があつたときは、右決定に記載されていない犯罪事実についても起訴し得<要旨>るか否かが問題となる。そもそも少年を刑事処分に附するを相当とするか否かを決定するについては、その個</要旨>々の犯罪事実のみを観察して為されたものでなく、犯罪を犯した少年の一身上の諸事情即ち少年の生活環境、智能程度、家庭の監護の状況、少年の将来等を考慮して、保護処分よりも刑事処分が相当であると思料せられた場合に検察官に送致せられるもので、従つて家庭裁判所が犯罪少年に対し刑事処分を為すを相当として検察官に送致したときは、右送致決定に記載せられている犯罪事実は勿論、記載せられていない犯罪が発覚したときには、その犯罪についても起訴し得るものと解するのが少年の処遇方法から考えて最も適切な解釈と思料する。若し犯罪事実を中心として送致決定が為されたもので、右決定に触れていない犯罪については起訴し得ないと解するならば、右犯罪については、更に家庭裁判所で、保護処分を相当とするか刑事処分を相当とするかについて調査しなければならないこととなるが、この ので、右決定に触れていない犯罪については起訴し得ないと解するならば、右犯罪については、更に家庭裁判所で、保護処分を相当とするか刑事処分を相当とするかについて調査しなければならないこととなるが、この調査は家庭裁判所が少年の一身上の諸事情を主として調査するのであるから、前の調査と重複することになり無用の手続に帰着することになるし、又仮りにこの調査で家庭裁判所が保護処分に附そうとしても前に刑事処分を相当として検察官に送致しているため、二途に出ずることが不可能になり、少年のため、不利益にこそなれ、何等の利益ももたらさない。以上のような事情から考えて、家庭裁判所が刑事処分を相当として少年を検察官に送致する場合には、少年の犯罪を目的としたと云うよりも、犯罪を犯した少年個人を目的として送致したものと解すべきで、従つて、該決定に記載もれの犯罪又は右決定後に発覚した犯罪については、改めて家庭裁判所の送致決定なくても、検察官は適法に起訴し得るものと解すべきである。果して然らば、本件においては、原判決第五の事実については、家庭裁判所が検察官に送致する旨の決定をしていなくても、右事実を起訴したのは適法である。 弁護人の論旨第一点の要旨は、被告人Dは、本件犯行当時、心神耗弱者であつたのに、原審がこれを否定したのは、事実の誤認又は法律の適用を誤つた違法があると謂うにある。よつて原審鑑定人Eの鑑定書の記載によれば、被告人Dは、昭和二十六年八月八日の鑑定当時においては、精神薄弱の状態にあつて、その程度は十二歳位の尋常児童の程度にあり、犯行時においても右と大差なき状態にあつたものと推定すとあり、当審鑑定人Hの鑑定書の記載によれば被告人Dの犯行時及び現在の精神状態は、極めて緩徐ではあるが慢性進行性の人格荒廃過程が存在していて、そのため本件が惹起されたと思料せられ、同被 ものと推定すとあり、当審鑑定人Hの鑑定書の記載によれば被告人Dの犯行時及び現在の精神状態は、極めて緩徐ではあるが慢性進行性の人格荒廃過程が存在していて、そのため本件が惹起されたと思料せられ、同被告人は既に精神分裂病に罹患しているとの旨の記載があるところから考えて、被告人Dは、本件犯行当時心神耗弱の状況にあつたことが認められる。従つてこれを否定した原判決は、事実誤認があつたことになり、この誤認は、判決に影響すること明らかであるから、原判決中、被告人Dに関する部分は、爾余の論点についての判断をなすまでもなく、破棄を免れない。論旨は理由がある。 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十二条により、原判決中被告人Dに関する部分を破棄し、同法第四百条但書により次の通り判決する。 犯罪事実並に証拠の標目は、原判決を引用するが、当裁判所としては、右の証拠標目に更に原判決第五の事実の証拠として、当審検証調書及び当審鑑定人Fの鑑定書の記載を附加する。 法律に照すに、被告人Dの原判示第一、第二、第八の窃盗の点は刑法第二百三十五条第六十条に、原判示第四の強盗致傷の点は、同法第二百四十条前段第六十条に、原判示第五、第六の汽車顛覆未遂の点は、同法第百二十八条第百二十六条第一項第六十条に、原判示第五、第六、第七の強盗予備の点は、同法第二百三十七条第六十条に該当するところ、原判示第五、第六の各汽車顛覆未遂と各強盗予備とは、何れも、一個の行為で数個の罪名に融れる場合に該当するので、同法第五十四条第一項前段第十条により、重い汽車顛覆未遂罪の刑に従うべきものであるが、被告人Dは、本件犯行当時心神耗弱者であったから、前記強盗致傷罪については、所定刑中無期懲役刑を選択して、同法第三十九条第二項第六十八条第二号により、各汽車顛覆未遂罪については、所定刑中、有期懲役刑を選 Dは、本件犯行当時心神耗弱者であったから、前記強盗致傷罪については、所定刑中無期懲役刑を選択して、同法第三十九条第二項第六十八条第二号により、各汽車顛覆未遂罪については、所定刑中、有期懲役刑を選択し、これと窃盗及び原判示第七の強盗予備の各刑につき、同法第三十九条第二項第六十八条第三号により、何れも法定の減軽を為し、以上は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条第十条により、前記強盗致傷罪の刑に同底第十四条の制限内で法定の加重を為し、その刑期範囲内で、被告人Dを懲役十二年に処し、押収してある証第十二号のパール一挺は、原判決第五の犯罪の用に供したもので、犯人以外の者に属しないので同法第十九条第一項第二号第二項により、これを没収し、原審並に当審における訴訟費用の負担については、刑事訴訟法第百八十一条第百八十二条を適用して主文の通り負担させる。 よつて主文の通り判決する。 (裁判長判事高城運七判事高橋嘉平判事赤間鎮雄)
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