主文 1 被告は,原告Aに対し,金5万円及びこれに対する平成15年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,金320万円及びこれに対する平成15年6月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決の第1項及び第2項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 原告らの請求主文第1,第2項と同旨第2 事案の概要 1 請求原因(1) 被告は,不動産売買の仲介等を業とする株式会社であり,神戸市a区b町c-deビル1階に不動産部の営業所を置き,不動産部部長C及び同従業員Dらを使用して,不動産売買の仲介等の業務を行っていたものである。 (2) 原告Aは,平成15年1月19日ころ,C及びDに案内された神戸市f区g町h丁目i番j号kマンションm号館n号室(以下「本件マンション」という。)を,同夫婦の住居として購入することとした者であり,原告Bは,原告Aの義父(原告Aの妻の父)である。 (3) Cの不法行為ア上記のとおり本件マンションの購入を決意した原告Aは,同年1月23日,原告B宅に本件マンション購入の申込証拠金を取りに来たDに対し,義母(原告Bの妻)であるEを介して,本件マンションの申込証拠金として5万円を支払った。 イまた,その際,Dは,Eを介し,原告らに,住宅ローンを組むために必要であるので原告Aのローンに関する個人情報の開示を受けて知らせるよう求めた。 そこで,原告らは,同年2月10日ころ,原告Aのローンに関する個人情報を被告の不動産部宛てに郵送したところ,同年3月20日ころになって 個人情報の開示を受けて知らせるよう求めた。 そこで,原告らは,同年2月10日ころ,原告Aのローンに関する個人情報を被告の不動産部宛てに郵送したところ,同年3月20日ころになって,Cから,原告Aにおいて他に信販会社から借入をしているので,住宅ローンを組むのが難しい,住宅ローンを組むためには320万円が必要であると言われたため,原告Bにおいて320万円を調達し,同年4月10日,前記被告不動産部の営業所において,住宅ローンを通すための委任状等と共にCに320万円を交付した。 ウところが,その後,被告において支払ってくれているはずの信販会社から請求書が送られて来たため,原告らにおいて調査したところ,Cにおいて,本件マンションの申込証拠金5万円を着服費消していたばかりか,320万円についても,前記のとおり住宅ローンを組むために他の借入を返済しておく必要があるとの虚言を弄して,原告Bにこれを出させて着服費消したものであったことが判明した。 (4) 被告の責任被告は,Cを被告の不動産部部長として使用していたものであり,かつ,Cの不法行為は,上記のとおり,被告の不動産売買仲介業務の過程でなされたものであり,被告の事業の執行につきなされたものであるから,被告は,民法715条により,原告らが被った損害を賠償する責任がある。 また,仮に,被告がCの使用者であると認められないとしても,被告は,Cが被告の不動産部の名称で営業することを許諾していたものであり,Cの不法行為はその取引上の行為としてなされたものであるから,商法23条の名板貸しによる責任があり,原告らが被った損害を賠償する責任がある。 (5) よって,原告らは,被告に対し,民法715条ないし商法23条に基づき,原告Aについ れたものであるから,商法23条の名板貸しによる責任があり,原告らが被った損害を賠償する責任がある。 (5) よって,原告らは,被告に対し,民法715条ないし商法23条に基づき,原告Aについては5万円,原告Bについては320万円及びこれらに対する不法行為後であることが明らかな平成15年6月11日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める。 2 請求原因に対する被告の認否及び主張(認否)(1) 請求原因(1)の事実のうち,被告が不動産売買の仲介等を業とする株式会社であることは認めるが,その余の事実は否認する。 Cは,被告代表者Fの娘婿であるが,被告の従業員として雇用したことはなく,Cが被告に顧客を紹介し,当該顧客との間に建物リフォーム工事請負契約などが成立した場合には,被告がCに報酬を支払うという取引関係があったに過ぎない。原告らが主張する神戸市a区b町c-deビル1階所在の被告不動産部の営業所も,Cが被告に無断で開設したものであり,また,Cの被告不動産部部長等の肩書もCが勝手に称していたもので,DもCが独自に雇用していたものである。 のみならず,被告は,Cが平成14年12月に被告に無断で被告名義で不動産売買の仲介を行い,顧客から預かった売買代金を着服する事件を惹起させたことから,これを警察署に届け出るとともに,平成15年1月7日にはCに対し,被告に出入りすることを禁止するともに,今後一切被告の名義を使用しないよう通告し,Cとの一切の取引関係を断ち切っている。 (2) 同(2),(3)の事実は知らない。 (3) 同(4)の事実は否認ないし争う。既に述べたとおり,被告はCの使用者ではないし,Cに被告の商号使用を許諾したこともないから,被告に使用者責 (2) 同(2),(3)の事実は知らない。 (3) 同(4)の事実は否認ないし争う。既に述べたとおり,被告はCの使用者ではないし,Cに被告の商号使用を許諾したこともないから,被告に使用者責任,名板貸責任はない。のみならず,被告に使用者責任ないし名板貸責任が生ずるには,その行為が外形的に被告の事業の執行につきなされたものと認められ,あるいは外形的に被告の取引行為と認められることが必要であるが,信販会社への債務弁済手続は不動産仲介業者が行う性質の行為ではないから,この点に関するCの原告Bに対する不法行為は,被告の事業の執行につきなされたものとはいえないし,また,被告の取引行為としての外形があったものともいえないから,この点からも,被告には原告Bに対する使用者責任及び名板貸責任はない。 (主張)仮に,信販会社への弁済手続に関するCの原告Bに対する不法行為が,外形的には,被告の事業の執行につきなされたもの,あるいは被告の取引行為と認められるとしても,上記のとおり,そもそも信販会社への債務弁済といったことは不動産仲介業者が行う性質の行為ではないから,原告Bが,これを被告の取引行為に属しあるいは事業の執行の範囲内に属すると信じたことには重大な過失がある。したがって,被告には,原告Bに対する使用者責任,名板貸責任はない。 第3 当裁判所の判断 1 事実経過等(1) 請求原因(1)の事実について請求原因(1)の事実のうち,被告が不動産売買の仲介等を業とする株式会社であることは,当事者間に争いがないが,被告は,C及びDらが被告の従業員であることを争う。 しかし,Cが被告代表者であるFの娘婿であること,被告は,Cから不動産取引の顧客の紹介を受けており,それによって請負契約等が締結できた場 ,C及びDらが被告の従業員であることを争う。 しかし,Cが被告代表者であるFの娘婿であること,被告は,Cから不動産取引の顧客の紹介を受けており,それによって請負契約等が締結できた場合には,Cに報酬を支払うといった関係にあったことはいずれも被告において自認するところであり,また,同事実,証拠(甲1~3,6,9の1~6,10,11,証人E,被告代表者本人〔ただし,一部〕)及び弁論の全趣旨を総合すると,神戸市a区b町c-deビル1階を被告の不動産部営業所として賃借したのはCであるが,これを紹介したのはFにほかならず,Fは,Cが,同ビル1階を被告の不動産部営業所として使用し,被告不動産部部長を称して,同不動産部の従業員を称するDとともに不動産仲介業を行うことを容認していたばかりか,これが成約に至ったときは,被告の取引としていたことが認められる。 そうすると,被告とC及びDとの間には,純然たる雇用関係は認められないとしても,被告代表者であるFは,義理の息子であるC及びCが使用するDを,実質的には被告の従業員として,その指揮監督の下に被告の不動産仲介業の業務に当たらせていたものと認めるのが相当である。 なお,被告は,Cが,平成14年12月に被告に無断で被告名義で不動産売買の仲介を行い,顧客から預かった売買代金を着服する事件を惹起させたことから,これを警察署に届け出るとともに,平成15年1月7日にはCに対し,被告に出入りすることを禁止するともに,今後一切被告の名義を使用しないよう通告し,Cとの一切の取引関係を断ち切ったと主張するところ,証拠(被告代表者本人)中にはこれに沿うかのような部分がある。 しかし,証拠(甲11,証人E,被告代表者本人〔ただし,一部〕)及び弁論の全趣旨によれば, を断ち切ったと主張するところ,証拠(被告代表者本人)中にはこれに沿うかのような部分がある。 しかし,証拠(甲11,証人E,被告代表者本人〔ただし,一部〕)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成15年1月7日以降はCとの関係を断ち切ったとはいうものの,Cは,その後の同年4月10日ころにおいても,従前と同様に神戸市a区b町c-deビル1階を被告の不動産部営業所として不動産仲介業務を行っていたもので,被告においても,そのようなCの営業活動を辞めさせるため,同営業所を引き払わせる等の具体的な措置はいまだ講じていなかったことが認められることからすれば,被告がC及びDを実質的には従業員としてその指揮監督下に置いていた関係は,平成15年4月10日ころにおいても継続していたものと認められる。 (2) 請求原因(2),(3)の事実について請求原因(2),(3)の事実は,証拠(甲2~6,11,12,証人E)及び弁論の全趣旨によってこれが認められる。 2 被告の責任(請求原因(4))について前記1で認定の事実によれば,被告は,C及びDを実質的には従業員としてその指揮監督の下に使用していたものと認められる。 そして,Cは,前記1で認定のとおり,被告の不動産仲介業務として,原告Aから本件マンション購入の申込証拠金名下に5万円を支出させてこれを個人で着服費消し,原告Aに同額の損害を与える不法行為をなすとともに,本件マンション購入のための住宅ローンを組むには,信販会社からの他の借入を返済しておかなければならないとの詐言を弄して原告Bを欺き,320万円を交付させて,これを個人で着服費消し,原告Bに同額の損害を与える不法行為を行ったものであるところ,それら不法行為は,被告の事業の執行につきなされたもの らないとの詐言を弄して原告Bを欺き,320万円を交付させて,これを個人で着服費消し,原告Bに同額の損害を与える不法行為を行ったものであるところ,それら不法行為は,被告の事業の執行につきなされたものにほかならないから,被告は,Cの使用者として,民法715条に基づき,Cが原告らに被らせた上記損害を賠償する責任があるものと認められる。 なお,被告は,原告Bに対する使用者責任につき,信販会社への債務弁済手続は不動産仲介業者が行う性質の行為ではないから,Cの原告Bに対する不法行為は,被告の事業の執行につきなされたものとはいえないと主張するところ,確かに,信販会社への債務弁済手続それ自体は,不動産仲介業務とは無関係ではあるが,本件においては,不動産仲介の一連の業務の中で,その購入のため住宅ローンを組むにはその返済をしておくことが必要であるとしてなされたものであることからすれば,外形的には不動産仲介業務の遂行に密接な関連があるものとして,被告の事業の執行につきなされたものと認めるのが相当であって,被告の前記主張は理由がない。また,被告は,仮に,Cの行為が被告の事業の執行につきなされたものと認められるとしても,前記したとおり,そもそも信販会社への債務弁済といったことは不動産仲介業者が行う性質の行為ではないから,原告Bが,これを被告の事業の執行の範囲内に属するものと信じたことには重大な過失があるので,原告Bに対しては使用者責任はないとも主張するが,原告Bないしその妻のEが,若干の不審を抱きつつも不動産仲介業者であるCの言を信じて320万円を交付するに至った(甲11,証人E)については,やや軽率な面があったとも思われるが,原告BないしEが不動産取引について素人であったことにも照らせば無理からぬところであって,重過失があったとまでは認められな に至った(甲11,証人E)については,やや軽率な面があったとも思われるが,原告BないしEが不動産取引について素人であったことにも照らせば無理からぬところであって,重過失があったとまでは認められないから,原告Bの重過失を理由とする無責の主張は理由がない。 3 以上によれば,原告らの被告に対する請求は,いずれも理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判官上田昭典
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