○ 主文一被告が原告株式会社日拓プロモーションに対して昭和六三年七月二九日付けでした、昭和六一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち、翌期へ繰り越す欠損金額二億一〇一〇万三七五一円を超える部分を取り消す。 二被告が原告日拓エンタープライズ株式会社に対して昭和六三年七月二九日付けでした、昭和六一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち、欠損金額二九一万三〇二三円、翌期へ繰り越す欠損金額二九一万三〇二三円をそれぞれ超える部分を取り消す。 三被告が原告日拓ランド株式会社に対して昭和六三年七月二九日付けでした、昭和六一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち、所得金額七八万六三一五円を超える部分を取り消す。 四被告が原告日拓デベロップメント株式会社に対して昭和六三年七月二九日付けでした、昭和六一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち、所得金額一億五九七六万二二〇五円、法人税額六二一二万〇七〇〇円を超える部分を取り消す。 五訴訟費用は被告の負担とする。 ○ 事実及び理由第一原告らの請求の趣旨一原告株式会社日拓プロモーション主文第一項及び第五項と同旨二原告日拓エンタープライズ株式会社主文第二項及び第五項と同旨三原告日拓ランド株式会社主文第三項及び第五項と同旨四原吉日拓デベロップメント株式会社主文第四項及び第五項と同旨第二事案の概要本件は、代表取締役(ただし、原告らの一部については、取締役)の就学中の子女らを取締役として登記していた原告らが、この子女らに役員報酬を支給したとして、この額を損金に算入して法人税の申告をしたところ、被告から、この報酬は右代表取締役に支払われたものであり、かつ、右代表取締役についての報酬の支 していた原告らが、この子女らに役員報酬を支給したとして、この額を損金に算入して法人税の申告をしたところ、被告から、この報酬は右代表取締役に支払われたものであり、かつ、右代表取締役についての報酬の支給限度を超える過大なものであるとして損金算入を否定され、更正を受けたため、この更正の取消しを求めて提訴した事案である。 一当事者間に争いのない事実等 1 原告らの概要(一) 原告株式会社日拓プロモーション(以下「原告プロモーション」という。)は、昭和六一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度(以下、原告らについて「本件事業年度」という。)から現在にかけてAを代表取締役とし、衣料品、服飾品、日用品雑貨、生鮮食品等の製造、卸、販売等を目的とする株式会社であり、原告日拓エンタープライズ株式会社(以下「原告エンタープライズ」という。)の一〇〇パーセント子会社である。そして、Aの三男であるB、Aの四男であるC及びAの長女であるD(B及びCと併せて、以下「Bら」という。)が、原告プロモーションの取締役として登記されている。 (二) 原告エンタープライズは、本件事業年度においてAを代表取締役とし、飲食店の経営、酒類、清涼飲料水及び煙草の販売、風俗営業の経営等を目的とする株式会社である。本件事業年度における同原告の持株割合は、Aが四・五五パーセント、Bらが五三・〇七パーセントである。そして、Bらが、同原告の取締役として登記されている。 (三) 原告日拓ランド株式会社(以下「原告ランド」という。)は、本件事業年度において、Aの妻であるEを代表取締役、Aを取締役とし、建築の設計及び施工、土地測量、家屋調査及び土地建物の鑑定評価等を目的とする株式会社であり、本件事業年度末現在において、その株主は原告エンタープライズ、A、E、Aの長男であるF、Aの次男である し、建築の設計及び施工、土地測量、家屋調査及び土地建物の鑑定評価等を目的とする株式会社であり、本件事業年度末現在において、その株主は原告エンタープライズ、A、E、Aの長男であるF、Aの次男であるG、B及びCによって構成されている。このうちAの持株割合は、本件事業年度直前である昭和六〇年一二月三一日現在で七・八九パーセント、B及びCの持株割合は二一・六四パーセントである。そして、Bらが、原告ランドの取締役として登記されている。 (四) 原告日拓デベロップメント株式会社(以下「原告デベロップメント」という。)は、本件事業年度から現在にかけてAを代表取締役とし、不動産の売買・賃貸並びに管理、遊技場の経営等を目的とする株式会社であり、原告エンタープライズの一〇〇パーセント子会社である。また、原告デベロップメントの取締役として、Bらが登記されている。 2 Bらの身上関係等(一) Bは、昭和四四年一二月一七日生まれで、後記のとおり原告らの取締役に選任されたとされる昭和六一年六月ないし七月当時は一六歳であり、米国コネチカット州所在のオックスフォード・アカデミーに昭和六〇年七月から在学していた。 なお、同人が本件事業年度中に日本に帰国したのは、昭和六一年一月一日から六日まで、同年七月二六日から八月二三日まで及び同年一二月一七日から三一日までである。 (二) Cは、昭和四五年一〇月二四日生まれで、後記のとおり原告らの取締役に選任されたとする昭和六一年六月ないし七月当時は一五歳であり、右オックスフォード・アカデミーに昭和六一年四月から在学していた。同人は、昭和六一年四月一日に日本を出国し、その後本件事業年度中に日本に帰国したのは、同年一二月一七日から三一日までである。 (三) Dは、昭和四七年一一月七日生まれで、後記のとおり原告らの取締役に選任されたとす 年四月一日に日本を出国し、その後本件事業年度中に日本に帰国したのは、同年一二月一七日から三一日までである。 (三) Dは、昭和四七年一一月七日生まれで、後記のとおり原告らの取締役に選任されたとする昭和六一年六月ないし七月当時は一三歳であり、世田谷区立深沢中学校に在学していた。 3 原告らの法人税の申告及びこれに対する更正等(一) 原告プロモーション関係(1) 原告プロモーションの本件事業年度における法人税の申告、これに対する更正及び不服申立て等の経緯は、別表1のとおりである。すなわち、同原告は、昭和六一年七月一八日に開催された臨時株主総会においてBらが取締役に選任され、同月二一日に開催された取締役会でBらに対する役員報酬の月額をそれぞれ一〇万円として同年八月から支給することが決議されたとして、Bらに対する役員報酬合計一五〇万円(原告らが本件事業年度においてBらに対して支給したとする各役員報酬を、以下「本件役員報酬」という。)を本件事業年度の損金の額に算入して、同年度の法人税の青色申告書に所得金額を〇円(繰越欠損金の当期控除額一億九〇五一万七九〇八円)、納付すべき税額を〇円、翌期へ繰り越す欠損金額を二億一八二二万五四二二円と記載して、法定申告期限までに申告した。 (2) これに対し、被告は、昭和六三年七月二九日付けで、翌期へ繰り越す欠損金額を二億〇八六〇万三七五一円(所得金額〇円、繰越欠損金の当期控除額金二億〇〇一三万九五七九円)とする更正をした。なお、右更正に附記された更正理由のうち、原告プロモーションが争っている本件役員報酬に係る加算項目については、「役員報酬のうち当期の損金として認められない金額一五〇万円B、C、Dの三名に対する報酬は、実質的にAに対する報酬と認められるので、同人の役員報酬に加算した結果、その支給限度を超える一 ついては、「役員報酬のうち当期の損金として認められない金額一五〇万円B、C、Dの三名に対する報酬は、実質的にAに対する報酬と認められるので、同人の役員報酬に加算した結果、その支給限度を超える一五〇万円を過大役員報酬として当期の益金の額に算入しました。 」と記載されていた。 (3) 原告プロモーションは、昭和六三年九月二八日、国税不服審判所長に対し、右更正について審査請求をしたが、右請求は平成二年四月六日付けで棄却され、その裁決書謄本は同月一七日同原告に送達された。 (二) 原告エンタープライズ関係(1) 原告エンタープライズの本件事業年度における法人税の申告、これに対する更正及び不服申立て等の経緯は、別表2のとおりである。すなわち、同原告は、昭和六一年七月一八日に開催された臨時株主総会においてBらが取締役に選任され、同月二一日に開催された取締役会でBらに対する役員報酬の月額をそれぞれ二〇万円として同年八月から支給することが決議されたとして、Bらに対する本件役員報酬合計三〇〇万円を本件事業年度の損金の額に算入して、同年度の法人税の青色申告書に欠損金の額を六二三二万九二六四円、法人税額を〇円、翌期へ繰り越す欠損金額を六二三二万九二六四円と記載して、法定申告期限までに申告した。 (2) これに対し、被告は、昭和六三年七月二九日付けで、所得金額を金八万六九七七円、翌期へ繰り越す欠損金額を〇円とする更正をした。なお、右更正に附記された更正理由のうち、原告エンタープライズが争っている本件役員報酬三〇〇万円を含む役員報酬に係る加算項目については、「過大な役員報酬の額八七〇万円取締役Aに対して支給した役員報酬の額に、同人の報酬と認められた(1)及び(2)を加算した結果、その支給限度額を超える八七〇万円を過大報酬として所得金額に加算しました。 な役員報酬の額八七〇万円取締役Aに対して支給した役員報酬の額に、同人の報酬と認められた(1)及び(2)を加算した結果、その支給限度額を超える八七〇万円を過大報酬として所得金額に加算しました。 (1) 社宅費のうち、オパス青葉台の賃借に係る支払五七〇万円は、取締役A個人が負担すべき費用ですから、同人に対する報酬となります。 (2) B、C、Dの三名に対する報酬は、実質的にAに対する報酬と認められます。」と記載されていた。 (3) 原告エンタープライズは、昭和六三年九月二八日、国税不服審判所長に対し、右更正について審査請求をしたが、右請求は平成二年四月六日付けで棄却され、その裁決書謄本は同月一七日同原告に送達された。 (三) 原告ランド関係(1) 原告ランドの本件事業年度における法人税の申告、これに対する更正及び不服申立て等の経緯は、別表3のとおりである。すなわち、同原告は、昭和六一年七月三〇日に開催された臨時株主総会においてBらが取締役に選任されたとし、同月三一日に開催された取締役会でBらに対する役員報酬の月額をそれぞれ一〇万円として同年八月から支給することが決議されたとして、Bらに対する役員報酬合計一五〇万円を本件事業年度の損金の額に算入して、同年度の法人税の青色申告書に、所得金額を〇円(繰越欠損金の当期控除額二六九九万八六〇五円)、翌期へ繰り越す欠損金額を四二万九三〇六円、法人税額を〇円と記載して、法定申告期限までに申告した。 (2) これに対し、被告は、昭和六三年七月二九日付けで、所得金額を金二二八万六三一五円(繰越欠損金の当期控除額二七四二万七九一一円)、翌期へ繰り越す欠損金の額〇円とする更正をした。なお、右更正に付記された更正理由のうち、原告ランドが争っている本件役員報酬に係る加算項目については、「過大役員報酬一五〇万円 七四二万七九一一円)、翌期へ繰り越す欠損金の額〇円とする更正をした。なお、右更正に付記された更正理由のうち、原告ランドが争っている本件役員報酬に係る加算項目については、「過大役員報酬一五〇万円B、C、Dの三名に対する報酬は、実質的にAに対する報酬と認められますので、同人の役員報酬に加算した結果、その支給限度を超える一五〇万円を過大役員報酬として所得金額に加算します。」と記載されていた。 (3) 原告ランドは、昭和六三年九月二八日、国税不服審判所長に対し、右更正について審査請求をしたが、右請求は平成二年四月六日付けで棄却され、その裁決書謄本は同月一七日同原告に送達された。 (四) 原告デベロップメント関係(1) 原告デベロップメントの本件事業年度における法人税の申告、これに対する更正及び不服申立て等の経緯は、別表4のとおりである。すなわち、同原告は、昭和六一年六月七日に開催された臨時株主総会においてBらが取締役に選任されたとし、これに先立つ同月三日に開催された取締役会で右Bらに対する役員報酬の月額をそれぞれ二〇万円とすることが決議されたとして、右Bらに対する役員報酬合計三〇〇万円を本件事業年度の損金の額に算入して、同年度の法人税の青色申告書に所得金額を一億二〇六四万四三九七円、納付すべき税額を四五一八万二六〇〇円と記載して、法定申告期限までに申告した。 (2) これに対し、被告は、昭和六三年七月二九日付けで、所得金額を一億六二七六万二二〇五円、法人税額を六三四一万九七〇〇円とする更正(同日付けで原告らに対してされた以上の各更正を、以下、「本件各更正」という。)及び過少申告加算税を三七万〇五〇〇円、重加算税を三二四万六〇〇〇円とする賦課決定をした。なお、右更正に付記された更正理由のうち、原告デベロップメントが争っている本件役員報酬に 件各更正」という。)及び過少申告加算税を三七万〇五〇〇円、重加算税を三二四万六〇〇〇円とする賦課決定をした。なお、右更正に付記された更正理由のうち、原告デベロップメントが争っている本件役員報酬に係る加算項目については、「過大な役員報酬の額三〇〇万円B、C、Dの三名に対する報酬は、実質的にAに対する報酬と認められますので、同人の役員報酬に加算した結果、その支給限度を超える三〇〇万円を過大役員報酬として所得金額に加算しました。」と記載されていた(本件各更正に附記された以上の各更正理由(ただし、原告エンタープライズについては、そのうち、本件役員報酬に係る部分)を、以下「本件附記理由」という。)。 (3) 原告デベロップメントは、昭和六三年九月二八日、国税不服審判所長に対し、右更正及び過少申告加算税賦課決定について審査請求をしたが、右請求は平成二年四月六日付けで棄却され、その裁決書謄本は同月一七日同原告に送達された。 4 原告らに対する課税根拠のうち、当事者間で争いのない部分本件各更正については、課税実体面においては、後記のとおり、専ら本件役員報酬の損金算入の可否のみが争点となっており、本件各更正の根拠のうち、この点を除く部分については原告も本件訴訟においてこれを争っていない。すなわち、本件役員報酬の損金算入を除いて計算した本件事業年度における原告らの所得金額等が次のとおりとなることについては、いずれも当事者間に争いがない。 (一) 原告プロモーション関係所得金額 〇円(繰越欠損金の当期控除額二億〇〇一三万九五七九円)翌期へ繰り越す欠損金額二億〇八六〇万三七五一円(二) 原告エンタープライズ関係所得金額 二億〇〇一三万九五七九円)翌期へ繰り越す欠損金額二億〇八六〇万三七五一円(二) 原告エンタープライズ関係所得金額八万六九七七円翌期へ繰り越す欠損金額 〇円法人税額 〇円(三) 原告ランド関係所得金額二二八万六三一五円(繰越欠損金の当期控除額二七四二万七九一一円)法人税額 〇円(四) 原告デベロップメント関係所得金額一億六二七六万二二〇五円法人税額六三四一万九七〇〇円二本件の争点本件の争点は、専ら、原告らがBらに支給したと主張する本件役員報酬に係るものである。すなわち、更正及び本件訴訟の手続面においては、本件役員報酬の損金算入を否認した理由である本件附記理由が法人税法一三〇条二項の要求する理由附記として十分か否か、本件附記理由と異なる後記3(一)(1)の主張を本訴において提出することが許されるか否かが争われており、更正の実体面においては、本件役員報酬が私法上Bらに支払われたものかAに支払われたものか、仮にこれが私法上はBらに支払われたものとしても、これを法人税法一三二条一項に規定する同族会社等の行為又は計算の否認によりAに支払われたものとすることができるか否か、Aに支払われたものとして、これが過大役員報酬に当たるか否かが争われている。 右各争点の具体的内容は、以下のとおりである。 1 本件附記理由の適否について(一) 被告の主張青色申告に係る法人税について更正を行う場合に して、これが過大役員報酬に当たるか否かが争われている。 右各争点の具体的内容は、以下のとおりである。 1 本件附記理由の適否について(一) 被告の主張青色申告に係る法人税について更正を行う場合には、更正通知書に更正の理由を附記しなければならない(法人税法一三〇条二項)が、それは、青色申告に係る所得の計算については、その帳簿の記載をたやすく無視して更正されることがないことを納税者に保障した趣旨にかんがみ、更正処分庁の恣意を抑制するとともに、更正の相手方に不服申立ての便宜を与えるという趣旨に出たものである。 しかるに、本件においては、被告は、原告らの本件役員報酬の支給に関する帳簿書類の記載自体を否認したものではなく、Bらに対して支給したとされる右役員報酬がAに帰属するものであるか否かという点に関する原告らの法的な評価あるいは判断を修正したにすぎないものである。かように、帳簿書類の記載を否認することなしに更正をする場合には、その附記理由としては、更正の根拠を、更正処分庁の恣意の抑制と相手方の不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示すれば足り、その判断の根拠とする資料を摘示していなくても、法の要求するところを満たしているものというべきである。 本件附記理由においては、その根拠となる資料の摘示はされていないが、(1)Bらに対する本件役員報酬は実質的にAに対する報酬と認められること、(2)Bらの報酬をAの報酬に加算したこと、(3)その結果Aの報酬の額が同人の支給限度額を超えることとなること、(4)右超過額を過大な役員報酬の額として所得金額に加算したこと並びに(5)更正をすべき項目及び金額が明らかであって、被告の恣意の抑制と原告らの不服申立ての便宜については何ら欠けるところはない。 その上、後記3(一)(1)のとおりB として所得金額に加算したこと並びに(5)更正をすべき項目及び金額が明らかであって、被告の恣意の抑制と原告らの不服申立ての便宜については何ら欠けるところはない。 その上、後記3(一)(1)のとおりBらが原告らの取締役に就任した事実がないことは、むしろ原告らにおいて熟知している事柄であるから、本件程度の附記理由であっても、その趣旨は容易に知りうるところである。なお、その根拠を示す資料の摘示についていえば、被告において右資料を収集し得る相手方としては、その直接の当事者である原告ら又はA若しくはBら以外には考え難いところ、このような者に協力を求め、その資料を収集することは著しく困難であり、右のように原告らが附記理由の趣旨を当然熟知していることからしても、被告に対してそこまでの資料を収集、提示することを要求するのは相当でないというべきである。 また、仮に、Bらが原告らの取締役に就任した事実があったとしても、被告が問題としているのは前記のとおり本件報酬請求権の帰属という評価の面のみであるところ、これを裏付ける資料は、Bらが原告らの取締役に就任した事実がない場合におけるものと多くの部分で重複するものであって、この場合と同様、その資料の収集及び提示を課税庁に義務付けることは相当でないというべきである。 したがって、本件附記理由は、法人税法一三〇条二項の要求する理由附記として何ら欠けるところはない。 (二) 原告らの主張本件附記理由は、本件報酬をBらに支給したとの原告らの帳簿の記載を否認し、これをAに支給したと認定するものであるところ、青色申告における帳簿書類の記載を否認して更正をする場合において、更正通知書に附記すべき理由としては、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、そのような更正をした根拠を、帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示する 記載を否認して更正をする場合において、更正通知書に附記すべき理由としては、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、そのような更正をした根拠を、帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することにより具体的に明示することを要するものと解されているところである。しかるに、本件附記理由の記載では、単にBらに対する報酬が実質的にAに対する報酬と認められるとしているのみであり、更正に係る勘定科目とその金額の特定はなされているものの、その報酬の受給者がAであるとする理由について、右帳簿の記載以上に信憑力のある資料を摘示して具体的に明示することをしていないから、本件各更正には法人税法一三〇条二項の要求するところを満たさない違法がある。のみならず、本件附記理由においては、これをAに対する役員報酬に加算した場合、何故に支給限度を超える過大な役員報酬となるかについても、何ら具体的説明がなされておらず、この点でも本件各更正は違法というべきである。 2 処分理由の差し替えの可否について(一) 被告の主張更正の附記理由と更正の取消訴訟における主張との間に基本的な課税要件事実の同一性があれば、処分理由の差し替えがあったとしても、更正の相手方に更正を争うにつき格別の不利益を与えるものでないから、青色申告における理由附記制度の趣旨・目的にかんがみれば、当該訴訟において、被告処分庁が、更正の適法性に関し、附記理由と異なる右のような新たな主張をすることは許されるものと解される。 本件訴訟において、被告は、Bらが原告らの取締役の地位になかった旨の主張(後記3(一)(1))をしたが、本件附記理由においても、被告の右主張においても、本件役員報酬は実質的にはAに対して支払われたと認めるべきこと、否認すべき勘定科目が役員報酬であること、否認金額が原告プロモーション及び原 )をしたが、本件附記理由においても、被告の右主張においても、本件役員報酬は実質的にはAに対して支払われたと認めるべきこと、否認すべき勘定科目が役員報酬であること、否認金額が原告プロモーション及び原告ランドについてはそれぞれ一五〇万円、原告エンタープライズ及び原告デベロップメントについてはそれぞれ三〇〇万円であること、右金額がいずれもAの過大役員報酬であることを主張している点には変わりはなく、ただ本件役員報酬が実質的にAに対して支払われたと認めるべき根拠が異なるというにすぎないのであるから、右両者の間には基本的な課税要件事実の同一性があるといえる。 したがって、仮に、Bらが原告らの取締役の地位になかったとの被告の右主張が、本件附記理由と異なる主張であって、その提出が処分理由の差し替えに当たるとしても、本件においては、被告が右主張をすることは許されるものというべきである。 (二) 原告らの主張更正の理由附記制度の趣旨にかんがみ、被告が、本件において本件各更正の理由を差し替え、Bらが原告らの取締役の地位になかったとの主張をすることは許されない。 3 本件役員報酬の私法上の受給者について(一) 被告の主張(1) Bらが取締役に選任されたと原告らが主張する前記の各株主総会は現実には開催されていないから、その選任決議はいずれも不存在である。仮にこれが開催された事実があったとしても、原告エンタープライズの株主総会については、その発行済株式総数の五三・〇七パーセントを有するBらが出席していなかったのであるから、定足数(商法二三九条一項)を欠き、その選任決議は無効である。また、原告らはいずれの株主総会にもBらは出席していないから、Bらが取締役就任の承諾の意思表示をした事実もない。したがって、いずれにせよ、Bらは、原告らの取締役に就任していないことと は無効である。また、原告らはいずれの株主総会にもBらは出席していないから、Bらが取締役就任の承諾の意思表示をした事実もない。したがって、いずれにせよ、Bらは、原告らの取締役に就任していないこととなる。 (2) 仮に、Bらが取締役に就任した事実があったとしても、会社と取締役との関係は委任に関する規定に従う(商法二五四条三項)ところ、取締役の報酬は、取締役がその職務執行の対価として受ける給付であり、本件におけるBらのように、その就任当初から取締役としての職務執行をなし得ないことが明らかな名目上の取締役である場合には、有償委任の明示又は黙示の特約(民法六四八条一項)はないというべきである。仮に、右特約があったとしても、当該取締役が具体的に職務執行をするまでは、会社には取締役に対する報酬の支払債務は生じないものというべきであるところ、Bらはその当時いずれも就学中であり、かつ、B及びCが日本に帰国していた期間が前記のとおりごく短期間であることからすれば、Bらは取締役としての職務執行に従事したことは全くないと認められるから、原告らにはBらに対する報酬支払債務は発生していない。 (3) したがって、いずれにせよ、本件役員報酬はBらに支給されたものではないこととなる。 そして、Aは、当時原告プロモーション及び原告デベロップメントの一〇〇パーセント親会社である原告エンタープライズの代表者であるほか、原告ランドについても実質的経営権を有しており(なお、Bら名義の原告エンタープライズ及び原告ランドの株式の取得も、Aが自らのために行ったものというベきである。)、原告らを実質的に支配、管理しているものであること、本件役員報酬が振り込まれたBら名義の普通預金口座は、実質的にAに帰属するものと認められることからすれば、本件役員報酬はAに支払われたものと認められる。 を実質的に支配、管理しているものであること、本件役員報酬が振り込まれたBら名義の普通預金口座は、実質的にAに帰属するものと認められることからすれば、本件役員報酬はAに支払われたものと認められる。 (二) 原告らの主張(1) 我が国の株式会社においては、株主総会の手続について商法のすべての規定が形式的に遵守されているとは限らず、むしろそうでない場合がほとんどであるが、そのような場合においても、株主の数が限定されている小規模会社においては、株主の総意は存在しているのであって、決議は有効になされているものということができる。原告エンタープライズ及び原告ランドにおいては、株主であるBら(ただし、原告ランドについてはB及びC)は前記の株主総会に出席してはいなかったが、その決議は、Bらを含む株主の真意に基づくものであって有効というべきである。特定の時間において、商法の要求する株式数を所有する株主が特定の場所に集合しなければ、株主総会が存在するものとは認められないということを前提として、原告エンタープライズ及び原告ランドの株主総会が不存在であり、決議が無効であるとの被告の主張(前記(一)の(1))は、我が国の株式会社の実態からかけ離れた認識を前提とした極端な形式論であって、失当である。 そして、前記一の1の(二)及び(三)のとおり、本件事業年度ないしその直前において、Bらは、原告プロモーション及び原告デベロップメントの一〇〇パーセント親会社である原告エンタープライズの発行済株式の五三・〇七パーセントを有し、B及びCは、原告ランドの発行済株式の二一・六四パーセントを有する大株主である。一方、Aは、原告エンタープライズの発行済株式の四・五五パーセント、原告ランドの発行済株式の七・八九パーセントを有していたにすぎない。このように、Bらは、原告らの経営を セントを有する大株主である。一方、Aは、原告エンタープライズの発行済株式の四・五五パーセント、原告ランドの発行済株式の七・八九パーセントを有していたにすぎない。このように、Bらは、原告らの経営を左右できる権利と意思を有しており、この立場において、原告らの取締役として事業に参画したいとの強い意向に基づき、各株主総会において非常勤の取締役に選任され、自らの意思でその就任を承諾し、取締役となったものである。 (2) 右のようにBらが取締役に就任すれば、それだけで原告らにはBらに対する報酬支払債務が発生するのであって、原告らが職務執行をしない限り右債務は発生しないという被告の主張は失当である。 のみならず、Bらは、単なる名目的取締役ではなく、取締役として経営について意見を述べる能力を有しており、就学中あるいは海外留学中であっても、非常勤の取締役として、原告らの取締役会の議決権を行使するという職務を実行し、また、金融機関及び取引先等に対する対外的信用上の職務を全うしている。 したがって、いずれにせよ、原告らにはBらに対する報酬支払債務が発生しており、本件役員報酬は、正しくBらに支払われている。 (3) なお、株式会社の意思決定は株主が行うものであり、前記の原告エンタープライズ及び原告ランドの株主構成からすれば、Aが原告エンタープライズの代表者であったからといって、原告らの実質的支配者であるということはできない。また、本件役員報酬が振り込まれたBら名義の普通預金口座が実質的にAに帰属しているということもない。したがって、本件役員報酬額が、Aに支払われたとみることもできない。 4 行為計算の否認の可否について(一) 被告の主張原告らのような同族会社が、通常の経済人としてとるであろう行為をとらないで、経済的実質的見地において、ことさらに不自然、不合理 こともできない。 4 行為計算の否認の可否について(一) 被告の主張原告らのような同族会社が、通常の経済人としてとるであろう行為をとらないで、経済的実質的見地において、ことさらに不自然、不合理な行為をとり、その結果不当に法人税負担の減少を来すような場合には、たとえその行為、計算が実在し、私法上有効であっても、実質課税の原則及び租税負担公平の見地から、法人税の課税所得金額の計算上はこれを否認して、通常とられるであろう行為に置き換えて、課税所得の金額の計算をすることができる(法人税法一三二条一項)。しかるに、通常の経済人としての企業にあっては、Bらのように就学中ないし米国に留学中で、実際上取締役の業務遂行を期待できない者を取締役に選任して報酬を与えるようなことは行わないところであって、かかる行為は、経済的実質的見地において、経済人の行為としては全く不合理かつ不自然なものというべきであり、このようなことが可能であったのは、ひとえに、原告ら各社が実質的にはBらの父であるAが支配、管理する同族会社であったからである。そして、その結果法人税の不当な減少を招くことは明らかであるから、たとえ私法上は本件役員報酬がBらに支払われたものであっても、法人税の課税に当たってはこれを否認し、原告らを実質的に支配、管理しているAに対する報酬と認定すべきである。 (二) 原告らの主張被告の右主張は争う。 5 役員報酬の過大性の有無について(一) 被告の主張以上のとおり、本件役員報酬は、Aに支払われたものというべきである。 そして、法人がその役員に支給した報酬額のうち、その支給限度額を超える部分の判断は、当該報酬の額が各役員ごとに定められている場合には、役員全体ではなく各役員ごとになされるべきところ、本件事業年度における原告らの役員報酬は、次の(1)ないし中の その支給限度額を超える部分の判断は、当該報酬の額が各役員ごとに定められている場合には、役員全体ではなく各役員ごとになされるべきところ、本件事業年度における原告らの役員報酬は、次の(1)ないし中のとおり定められた。 (1) 原告プロモーション昭和六一年二月二四日の株主総会において、取締役の報酬年額の総額が六〇〇〇万円と定められるとともに、各取締役の具体的な報酬金額の決定を取締役会に一任する旨決議され、取締役会において、Aに係る役員報酬年額が三〇〇万円と定められた。 (2) 原告エンタープライズ昭和六一年二月二〇日の株主総会において、取締役の報酬の総額が年二億五〇〇〇万円以内と定められるとともに、各取締役の具体的な報酬金額の決定を取締役会に一任する旨決議され、取締役会において、Aに係る役員報酬年額が三七五万円と定められた。 (3) 原告ランド昭和六一年二月二四日の株主総会において、取締役の報酬の総額が年六〇〇〇万円以内と定められるとともに、各取締役の具体的な報酬金額の決走を取締役会に一任する旨決議され、取締役会において、Aに係る役員報酬年額が〇円と定められた。 (4) 原告デベロップメント昭和六一年二月二七日の株主総会において、取締役の報酬の総額が年一〇〇〇万円以内と定められるとともに、各取締役の具体的な報酬金額の決定を取締役会に一任する旨決議され、取締役会において、Aに係る役員報酬年額が〇円と定められた。 右のAに係る各役員報酬年額が法人税法施行令六九条二号にいう「当該限度額」となるところ、本件事業年度においては、既に、原告プロモーションにおいては三〇〇万円、原告エンタープライズにおいては四五〇〇万円がAの役員報酬として支給されているのであるから、前記のとおり同人に支給したものと認められる本件役員報酬(原告プロモーション及び原告デベロ ては三〇〇万円、原告エンタープライズにおいては四五〇〇万円がAの役員報酬として支給されているのであるから、前記のとおり同人に支給したものと認められる本件役員報酬(原告プロモーション及び原告デベロップメントについては一五〇万円、原告エンタープライズ及び原告ランドについては三〇〇万円)は、法人税法三四条及び同法施行令六九条二号により、その全額が支給限度額を超えることとなり、同法施行令六九条により、少なくともこの額は、過大役員報酬として本件事業年度の損金の額に算入することができないものである。 (二) 原告らの主張原告らにおける役員報酬は、株主総会において役員全員につき年間支給総額が定められており、本件役員報酬もその範囲内であるから、仮に、本件役員報酬がAに支払われたものであるとしても、過大役員報酬には当たらない。 第三争点に対する判断一本件附記理由の適否について 1 青色申告に係る法人税について更正を行う場合には、更正通知書に更正の理由を附記しなければならない(法人税法一三〇条二項)が、それは、法が青色申告制度を採用して、青色申告に係る所得の計算については、それが法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障した趣旨にかんがみ、更正処分庁の判断の慎重性、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという趣旨に出たものと解される。そして、青色申告における帳簿書類の記載を否認して更正をする場合においては、附記理由において、単に更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、そのような更正をした根拠を、帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することにより具体的に明示することを要するものというべきである。また、行為計算の否 更正に係る勘定科目とその金額を示すだけではなく、そのような更正をした根拠を、帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することにより具体的に明示することを要するものというべきである。また、行為計算の否認(法人税法一三二条一項)のように、帳簿記載を否認することなく、ただその法的評価を納税者と異にして更正する場合は、右の反対資料の明示は不要であるが、そのような評価判断に至った過程自体については、やはり、更正処分庁の恣意の抑制及び相手方の不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨に適う程度に具体的に説明する必要があるものと解すべきである。 ところで、被告は、本件訴訟において、本件役員報酬がAに支払われたとする理由について、本件役員報酬の私法上の受給者がAであること(前記第二の二の3の(一))と、行為計算の否認により右報酬がAに支払われたものとみるべきであること(同4の(一))の双方の主張をしている。しかるに、本件附記理由は、その記載に照らし、右のいずれの趣旨であるのか必ずしも判然としないけれども、右附記理由は、いずれも、単に、Bらに支給したとされる本件役員報酬が実質的にAに対する報酬と認められるとするのみであって、反対資料を摘示していないのみならず、なにゆえかような判断に至ったのかという判断過程の具体的説明も全くしていないのであって、本件附記理由の趣旨を右のいずれに解するにしても、更正処分庁の恣意の抑制及び相手方の不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨に照らし、法の要求する程度を満たさず、不十分なものといわざるを得ない。 2 これに対し、被告は、Bらが原告らの取締役に就任した事実がないことは、むしろ原告らにおいて熟知している事柄であるから、本件附記理由においてこれを示す必要がない旨主張するけれども、更正の根拠は更正の相手方において附記理由の記載 告らの取締役に就任した事実がないことは、むしろ原告らにおいて熟知している事柄であるから、本件附記理由においてこれを示す必要がない旨主張するけれども、更正の根拠は更正の相手方において附記理由の記載自体から具体的に了知しうるものでなければならないと解すべきであって、処分の相手方においてこれを知っているか否か、あるいは推知しろるか否かとは関わりのないものというべきであるから、被告のこの主張は失当である。 なお、被告は、本件附記理由は、原告らの本件役員報酬の支給に関する帳簿書類の記載自体を否認したものではなく、Bらに対して支給したとされる右役員報酬がAに帰属するものであるか否かという点に関する原告らの法的な評価あるいは判断を修正したにすぎないものであるから、本件附記理由においては反対資料の摘示を要せず、右附記理由は法の要求を満たす十分なものであると主張する。右主張の趣旨は必ずしも明らかではないが、要するに、右附記理由が本件役員報酬の私法上の受給者がAであること(前記第二の二の3の(一))をいうものであると解した場合であっても、右私法上の受給者が誰かということは法的な評価あるいは判断の問題であり、帳簿記載にかかわるものではないとの趣旨と解される。しかし、かような附記理由は、単に勘定科目と額のみならず、その支払先に係る帳簿記載(法人税法施行規則五四条、別表二〇)をも否認することにほかならないから、被告の右主張が右のような趣旨であるならば、この主張も失当である。 二本件各更正の違法部分について以上のとおりであるところ、本件においては、本件附記理由についての右のような不備が、本件各更正についての附記理由全体を違法ならしめるという事情は見当たらないから、本件各更正は、本件役員報酬につき損金算入を否定した部分に係る限度で違法ということとなり、この額を損 右のような不備が、本件各更正についての附記理由全体を違法ならしめるという事情は見当たらないから、本件各更正は、本件役員報酬につき損金算入を否定した部分に係る限度で違法ということとなり、この額を損金に算入すべきものとして、前記の争いのない所得金額から控除して計算すると、所得金額、法人税額等は原告らの請求の趣旨のとおりとなる。 三結論したがって、その余の争点について判断するまでもなく、原告らの本件請求は、いずれもすべて認容すべきこととなる。 (裁判官秋山壽延原啓一郎近田正晴)別表1ないし4(省略)
▼ クリックして全文を表示