平成27年9月8日判決言渡平成26年(行ウ)第410号固定資産税評価額審査決定取消訴訟請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求東京都固定資産評価審査委員会が平成26年2月17日に原告に対してした東京都葛飾区α ×番地所在の家屋(家屋番号○)に係る平成24年度固定資産課税台帳の登録価格についての審査の申出を棄却する旨の決定を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,東京都葛飾区α ×番地所在の家屋(家屋番号○)(以下「本件家屋」という。)の所有者である原告が,東京都知事によって決定され固定資産課税台帳に登録された本件家屋の基準年度である平成24年度の価格(以下「平成24年度価格」という。)を不服として,東京都固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会からこれを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)を受けたため,被告に対し,上記価格の算定の基礎となった資料が不存在である以上,本件家屋は非課税とされるべきである旨主張し,本件決定の全部の取消しを求める事案である。 2 関係法令等の定め(1) 地方税法(昭和25年法律第226号)ア家屋に係る固定資産税の課税標準について(ア) 地方税法341条は,5号で固定資産税における「価格」とは適正な時価をいう旨,6号で「基準年度」とは昭和31年度及び昭和33年度並びに昭和33年度から起算して3年度又は3の倍数の年度を経過したごとの年度をいう旨,7号で「第二年度」とは基準年度の翌年度をいう旨,8号で「第三年度」とは第二年度の翌年度(中略)をいう旨それぞれ定めている。 (イ) 同法349条は,1項で,家屋に対して課する固定資産税の課税標準は,当該家屋の基準年度に係る賦課期日(当該年 旨,8号で「第三年度」とは第二年度の翌年度(中略)をいう旨それぞれ定めている。 (イ) 同法349条は,1項で,家屋に対して課する固定資産税の課税標準は,当該家屋の基準年度に係る賦課期日(当該年度の初日の属する年の1月1日。同法359条)における価格で家屋課税台帳等に登録されたものとする旨定めており,2項及び3項で,第二年度及び第三年度における家屋の固定資産税の課税標準は,原則として,いずれも当該家屋の基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格で家屋課税台帳等に登録されたものとする旨それぞれ定めている。 (ウ) 同法388条1項は,総務大臣は,固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め,これを告示しなければならない旨定め,同法403条1項は,市町村長(同法734条1項の規定により東京都の特別区の存する区域においては東京都知事。以下同じ)は,同法388条1項の固定資産評価基準によって,固定資産の価格を決定しなければならない旨定めている。 イ固定資産の価格に関する不服審査等について(ア) 同法432条1項本文は,固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格(以下「登録価格」という。)について不服がある場合においては,固定資産課税台帳に登録した価格等の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後60日まで若しくは都道府県知事の勧告を受けて固定資産課税台帳に登録された価格を修正した場合の公示の日から同日後60日(同法420条の更正に基づく納税通知書の交付を受けた者にあっては,当該納税通知書の交付を受けた日後60日)までの間において,又は同法417条1項の通知を受けた日から60日以内に,文書をもって,固定資産 420条の更正に基づく納税通知書の交付を受けた者にあっては,当該納税通知書の交付を受けた日後60日)までの間において,又は同法417条1項の通知を受けた日から60日以内に,文書をもって,固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる旨定めている。 (イ) 同法432条1項ただし書は,第二年度及び第三年度における家屋の価格については,当該家屋について同法349条2項1号に掲げる事情(地目の変換,家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情)があるため,基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格によることが不適当であるなどの事情を申し立てる場合を除いては,審査の申出をすることができない旨定めている。 (ウ) 同法434条1項は,固定資産税の納税者は,固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは,その取消しの訴えを提起することができると定めており,同条2項は,同法432条1項の規定により固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができる事項について不服がある固定資産税の納税者は,上記審査の申出又は上記取消しの訴えによることによってのみ争うことができる旨定めている。 (2) 平成24年度に適用される固定資産評価基準平成24年度において適用される固定資産評価基準(平成24年総務省告示第286号による改正前の昭和38年自治省告示158号。以下「平成24年度評価基準」という。)の第2章(家屋)は,固定資産である家屋の評価について次のように定めている。 ア通則(第1節)(ア) 家屋の評価(第1節一)家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(非木造家屋)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法による。 (イ) 評点数の付設( 木造家屋及び木造家屋以外の家屋(非木造家屋)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法による。 (イ) 評点数の付設(第1節二)各個の家屋の評点数は,当該家屋の再建築費評点数を基礎とし,これに家屋の損耗の状況による減点を行って付設する。この場合において,家屋の状況に応じ必要があるものについては,さらに家屋の需給事情による減点を行う。 イ木造家屋(第2節)(ア) 評点数の算出方法(第2節一)a 木造家屋の評点数は,当該家屋の再建築費評点数を基礎としてこれに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設し,次の算式によって求める。この場合において,当該木造家屋について需給事情による減点を行う必要があると認めるときは,当該木造家屋の評点数は,次の算式によって求めた評点数に需給事情による減点補正率を乗じて求める。 〔算式〕評点数=再建築費評点数×経過年数に応ずる減点補正率(経過年数に応ずる減点補正率によることが天災,火災その他の事由により当該木造家屋の状況からみて適当でないと認められる場合,評点数=(部分別再建築費評点数×損耗の程度に応ずる減点補正率)の合計)b 市町村長は,当該市町村に所在する木造家屋の状況に応じ,「二部分別による再建築費評点数の算出方法」又は「三比準による再建築費評点数の算出方法」のいずれかにより再建築費評点数を求める。ただし,在来分の木造家屋に係る再建築費評点数は「四在来分の木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法」により求める。 なお,上記の「在来分の木造家屋」とは,平成24年度において新たに課税の対象となる木造家屋以外の木造家屋のことである。 (イ) 在来分の木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法(第2節四) なお,上記の「在来分の木造家屋」とは,平成24年度において新たに課税の対象となる木造家屋以外の木造家屋のことである。 (イ) 在来分の木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法(第2節四)在来分の木造家屋に係る再建築費評点数は,次の算式によって求める。(以下省略)〔算式〕再建築費評点数=基準年度の前年度における再建築費評点数×再建築費評点補正率a 基準年度の前年度における再建築費評点数は,前基準年度に適用した固定資産評価基準第2章第1節,第2節及び第4節一によって求めたものをいう。 b 再建築費評点補正率は,基準年度の賦課期日の属する年の2年前の7月現在の東京都(特別区の区域)における物価水準により算定した工事原価に相当する費用の前基準年度の賦課期日の属する年の2年前の7月現在の当該費用に対する割合を基礎として定めたものである。 ウ経過措置(第4節)(ア) 固定資産税に係る平成24年度における在来分の家屋の評価に係る再建築費評点補正率は,次のとおりとする。 第2節四に定める再建築費評点補正率(木造家屋) 0.99(以下省略)(第4節一)(イ) 固定資産税に係る平成24年度から平成26年度までの各年度における家屋の評価に限り,評点1点当たりの価額は,1円に「物価水準による補正率」と「設計管理費等による補正率」とを相乗した率を乗じて得た額を基礎として市町村長が定める。 (以下省略)(第4節二)なお,平成24年度から平成26年度までの各年度について,東京都の特別区においては,木造家屋の評点1点当たりの価額は1.05円と定められている。(弁論の全趣旨)(ウ) 固定資産税に係る平成24年度における在来分の家屋の評価に限り,次に掲げるいずれかの低い価額によってその価額を求める。ただし,平成24年1月1 1.05円と定められている。(弁論の全趣旨)(ウ) 固定資産税に係る平成24年度における在来分の家屋の評価に限り,次に掲げるいずれかの低い価額によってその価額を求める。ただし,平成24年1月1日において地方税法349条2項1号に掲げる事情(損壊その他これに類する特別の事情を除く。)がある家屋で,当該事情が平成23年1月2日以降に生じたものについては次のaによってその価額を求める。 (第4節三)a 第1節から本節二までによって求めた家屋の価額(以下「本則評価額」という。)b 当該家屋の平成23年度の価額(平成23年度の家屋課税台帳等に価格として登録されたものをいう。)なお,以上の定めにより,本則評価額より前年度の価額が低いため,前年度の価額により当該年度の価額を求めることを「据置措置」という。 3 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 本件家屋本件家屋は,昭和9年に新築された床面積42.97㎡(13. 00坪)の部分(以下「新築部分」という。)及び昭和34年に増築された床面積81.81㎡(24.75坪)の部分(以下「増築部分」という。)からなる木造家屋(木造トタン張りスレート瓦トタン葺2階建)であるところ,原告は,平成24年1月1日現在,本件家屋を所有していた。(乙1,5,弁論の全趣旨)(2) 本件家屋の平成24年度家屋課税台帳への登録東京都知事は,平成24年3月31日,本件家屋について平成24年度の固定資産税の課税標準価格(平成24年度価格)を64万5000円と決定し,家屋課税台帳に登録した。この平成24年度価格は,次のアないしオのとおり算出されたものである。(乙1,弁論の全趣旨)ア平成24年度の在来分の家屋に係る単位当た 格)を64万5000円と決定し,家屋課税台帳に登録した。この平成24年度価格は,次のアないしオのとおり算出されたものである。(乙1,弁論の全趣旨)ア平成24年度の在来分の家屋に係る単位当たり再建築費評点数本件家屋は,平成24年1月1日現在所在する在来分の木造家屋であるところ,本件家屋の平成23年度の単位当たり再建築費評点に,平成24年度(基準年度)の再建築費評点補正率である0.99を乗じ,次のとおり,本件家屋の平成24年度の単位当たり再建築費評点を求めた。 (ア) 新築部分平成23年度の単位当たり再建築費評点である4万8600点に,平成24年度の再建築費評点補正率0.99を乗じ,同年度の単位当たり再建築費評点を4万8100点と算出した(100点未満切り捨て)。 (イ) 増築部分平成23年度の単位当たり再建築費評点である5万2800点に,平成24年度の再建築費評点補正率0.99を乗じ,同年度の単位当たり再建築費評点を5万2200点と算出した(100点未満切り捨て)。 イ経年減点補正率の適用等による総評点の算出上記アの平成24年度の単位当たり再建築費評点に損耗の状況による減点補正率を乗じ(1点未満切り捨て),これに床面積を乗じ(1点未満切り捨て),総評点を算出した。損耗の状況による減点補正率は,本件家屋が住宅として使用されていることから,平成24年度評価基準の「木造家屋経年減点補正率基準表」から建物の用途に応じ「1 専用住宅,共同住宅,寄宿舎及び併用住宅用建物」に該当する経年減点補正率を選択した。 (ア) 新築部分経年減点補正率は0.20である(「1 専用住宅,共同住宅,寄宿舎及び併用住宅用建物」の延べ床面積1.0㎡当たり再建築費評点数別区分の「47,000点以上74,000点未満」の経過 新築部分経年減点補正率は0.20である(「1 専用住宅,共同住宅,寄宿舎及び併用住宅用建物」の延べ床面積1.0㎡当たり再建築費評点数別区分の「47,000点以上74,000点未満」の経過年数20年以上に対応する補正率)。また,床面積は42.97㎡である。 4万8100点×0.20=9620点(1点未満切り捨て)9620点×42.97㎡=41万3371点(1点未満切り捨て)(イ) 増築部分経年減点補正率は0.20である(「1 専用住宅,共同住宅,寄宿舎及び併用住宅用建物」の延べ床面積1.0㎡当たり再建築費評点数別区分の「47,000点以上74,000点未満」の経過年数20年以上に対応する補正率)。また,床面積は81.81㎡である。 5万2200点×0.20=1万0440点(1点未満切り捨て)1万0440点×81.81㎡=85万4096点(1点未満切り捨て)ウ本則評価額の算出上記イの総評点に評点1点当たりの価額である1.05円(前記2(2)(イ))を乗じ(100円未満切り捨て),本則評価額を算出した。 (ア) 新築部分41万3371点×1.05円=43万4000円(100円未満切り捨て)(イ) 増築部分85万4096点×1.05円=89万6800円(100円未満切り捨て)エ据置措置の適用据置措置の適用により,上記ウの本則評価額と前年度(平成23年度)の評価額とを比較し,低い方の価額である前年度の価額をもって本件家屋の平成24年度価格とした。 (ア) 新築部分本則評価額(43万4000円)は,平成23年度評価額(7万2000円)を超えるから,平成24年度価格を7万2000円とした。 (イ) 増築部分本則評価額(89万6800円)は,平成23年度評価額(57万 万4000円)は,平成23年度評価額(7万2000円)を超えるから,平成24年度価格を7万2000円とした。 (イ) 増築部分本則評価額(89万6800円)は,平成23年度評価額(57万3000円)を超えるから,平成24年度価格を57万3000円とした。 オ新築部分と増築部分の評価額の合算本件家屋について据置措置を適用した後の平成24年度価格を64万5000円(=上記エ(ア)+上記エ(イ))と算出した。 (3) 審査の申出等ア原告は,本件家屋の平成24年度価格を不服とし,同年7月30日,東京都固定資産評価審査委員会に対し,地方税法432条1項に基づき審査の申出をした。不服の理由は,原告が葛飾都税事務所に確認した結果,本件家屋に係る平成24年度価格の根拠となる資料が不存在であることが判明したとして,課税価格の根拠が確認できない以上,本件家屋は非課税とするのが妥当であるなどというものであった。(乙1,弁論の全趣旨)イ東京都固定資産評価審査委員会は,平成26年2月17日,上記アの審査の申出を棄却する旨の決定(本件決定)をした。 (4) 本件訴訟の提起原告は,平成26年8月27日,被告に対し,本件決定の取消しを求める本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著な事実) 4 争点本件の争点は,本件家屋の平成24年度価格の当否であり,具体的には,本件家屋の当初評価額(新築部分につき昭和9年,増築部分につき昭和34年)を明らかにする課税資料が不存在であることをもって,本件家屋を非課税とすべきか否かである。 5 争点についての当事者の主張(原告の主張)原告は,本件家屋の課税評価額について,昭和59年度から平成26年度まで毎年度長期間にわたり不変に64万5000円とされてきたことを疑問に感じ,葛飾都税事 いての当事者の主張(原告の主張)原告は,本件家屋の課税評価額について,昭和59年度から平成26年度まで毎年度長期間にわたり不変に64万5000円とされてきたことを疑問に感じ,葛飾都税事務所の担当者に対し,上記の課税評価額の根拠説明を求めたところ,同担当者から,本件家屋が古く資料が不存在であり説明は不可能であると断言された。 原告は,根拠のない上記の課税評価額により本件家屋に課税すべきでないと考えて,東京都固定資産評価審査委員会に対し審査の申出をした。この審査手続において,葛飾都税事務所は,再建築費評価額を算出し説明したが,原告の指摘している課税評価額(64万5000円)についての説明をしていない。また,東京都固定資産評価審査委員会も,原告の指摘している課税評価額には触れることなく,原告の申出を棄却決定し,原告の求めている課税評価額の中身・内容の根拠説明をしていない。 したがって,本件家屋は無税とすべきであり,本件決定は違法である。 (被告の主張)ア原告は,本件家屋の建築時等における評価に係る資料がないことをもって,課税するのは不当であると主張するようである。 しかし,固定資産税の納税者は,固定資産課税台帳登録価格に不服がある場合は,上記2(1)イ記載の地方税法の規定する手続によってしか争うことができないとされている。地方税法は,固定資産税の賦課処分の前提問題である固定資産課税台帳登録価格を早期に確定させることにより,固定資産税に係る法的安定性を重視しているということができる。これを前提として本件を検討すると,本件家屋について,平成23年度の価格はすでに確定しているものであり,本件家屋の現行の据置価格は平成6年度から継続していることに鑑みると,長期の期間が経過した後になって,当時の価格の根拠を示さ ,本件家屋について,平成23年度の価格はすでに確定しているものであり,本件家屋の現行の据置価格は平成6年度から継続していることに鑑みると,長期の期間が経過した後になって,当時の価格の根拠を示さなければ現在の価格が不当であるというのでは,地方税法が実現しようとした法的安定性を害するというべきである。 とすれば,本件家屋について,建築当初の評価の根拠資料が保存されておらず,それを基にした説明が現在できないとしても,これをもって現在の評価が違法であるとか,固定資産税の課税をすべきでないと主張することはできないというべきである。 イなお,本件家屋の価格については,現行の固定資産評価基準が適用された昭和39年度以降,平成24年度までの各年度において,前年度の再建築費評点数に所定の再建築費評点補正率及び経年減点補正率を乗じて単位当たり評点を算出し,これに延べ床面積を乗じるなどして総評点を算出し,評点1点当たりの価額を乗じて本則評価額を算出し,据置措置を適用して,別紙のとおり決定されてきている。そして,昭和39年度の価格は,当時の時価を上回るものではないと考えられる。 また,昭和39年度より前の税制を勘案して本件家屋の当初評価額を推測したとしても,当時の適正な時価を超えるものであったとは考えられない。 第3 当裁判所の判断 1 争点について(1) 昭和39年度以降における評価(固定資産評価基準適合性)についてア証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,① 本件家屋の登録価格に関しては,昭和54年度以降の各基準年度につき,本則評価額と登録価格に関する資料が残存しており,昭和54年度から平成24年度までの間の各基準年度においては,別紙のとおり,いずれも据置措置を適用して登録価格を決定していることが認められ,また,② 昭和5 額と登録価格に関する資料が残存しており,昭和54年度から平成24年度までの間の各基準年度においては,別紙のとおり,いずれも据置措置を適用して登録価格を決定していることが認められ,また,② 昭和54年度より前の年度の分については,資料が残存していないが,現行の固定資産評価基準(昭和38年自治省告示158号)が施行された昭和39年度から昭和51年度までの間について,各基準年度において本件家屋に適用すべき乗率及び経年減点補正率をもとに逆算して試算してみると,各基準年度の本則評価額と登録価格は,別紙のとおりであり,いずれも据置措置を適用して登録価格が決定されていることが推認される。 なお,証拠(乙7)によれば,上記のとおり昭和39年に現行の固定資産評価基準が施行された際,昭和38年1月1日までに建築された家屋についても,同基準により評価が行われることとされたが,新しく求めた評価額が従前の基準によって評価し市町村長が決定した当該家屋の価額を超えるものについては,従来の基準に基づいた価額を昭和39年度の価額とするという,いわゆる据置措置が設けられ,以後の各基準年度においても,据置措置の制度が継続されていることが認められる。 イところで,上記2(1)のとおり,地方税法432条1項本文は,固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格(登録価格)について不服がある場合においては,所定の期間内に固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる旨定め,同法434条は,同委員会の決定に不服があるときは,その取消しの訴えを提起することができ,登録価格についての不服は,審査の申出又は取消しの訴えによることによってのみ争うことができることとし,家屋については,第二年度及び第三年度の 不服があるときは,その取消しの訴えを提起することができ,登録価格についての不服は,審査の申出又は取消しの訴えによることによってのみ争うことができることとし,家屋については,第二年度及び第三年度の固定資産税の課税標準は,原則として当該家屋の基準年度の価格とするものとし(同法349条2項,3項),第二年度及び第三年度における家屋の価格に不服がある場合には,基準年度の価格によることが不適当となる特段の事情を主張する場合に限り,所定の期間内に審査の申出ができるとしている(同法432条1項ただし書)。 このように,地方税法が,固定資産税の課税標準である登録価格について不服があるときは,原則として基準年度の価格について所定の期間内に固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をすべきものとし,第二年度及び第三年度における価格については審査の申出をすることができる場合を限定し,これらの審査の申出による方法及び固定資産評価委員会の決定に対する取消訴訟によらなければ価格を争うことができないこととしているのは,固定資産税の賦課処分の前提問題となる課税標準である登録価格を早期に確定させることにより,固定資産税に関連する事項についての法的安定性を確保する趣旨であると解される。 そして,前示のとおり,固定資産評価基準は,在来分の木造家屋について,基準年度の前年度における再建築費評点数に再建築費評点補正率を乗じるなどして当該基準年度の再建築費評点数を求め,これを基礎として本則評価額を算出し,この本則評価額と当該前年度の登録価格とを比較し,いずれかの低い額をもって当該基準年度の価額とするものとしており,当該基準年度より前の年度において算定された再建築費評点等を前提として当該基準年度の価額を定めるという仕組みを採用している一方,地方税法においては をもって当該基準年度の価額とするものとしており,当該基準年度より前の年度において算定された再建築費評点等を前提として当該基準年度の価額を定めるという仕組みを採用している一方,地方税法においては,上記のとおり,登録価格に対する審査の申出をすることができる場合を限定し,登録価格を早期に確定させることにしていることに鑑みると,在来分の木造家屋について,累次にわたり,ある基準年度の登録価格が,本則評価額とその前年度の登録価格との比較により決定されている場合,納税者は,当該基準年度の登録価格を争う訴訟において,当該前年度までに行われた再建築費評点数等の算定等がその当時の固定資産評価基準に従ったもの(適合したもの)ではなかったことを主張立証して,当該基準年度の登録価格を争うことができるものの,その主張立証が奏功しない限りは,当該前年度までに行われた再建築費評点数等の算定等がその当時の固定資産評価基準に従ったもの(適合したもの)であることが推認されると解することが相当である。 ウこれを本件についてみると,上記アのとおり,本件家屋については,現行の固定資産評価基準が適用された昭和39年度から平成24年度までの間,各基準年度における価格は,いずれも据置制度が適用されて決定されていることが認められるところ,原告は,平成24年度の登録価格を争うに当たり,本件家屋の建築時等における評価に係る資料がないことを主張するのみであり,平成24年度より前の基準年度に行われた固定資産評価基準による価格の算出が各年度における固定資産評価基準に従ったもの(適合したもの)ではなかったことについて,具体的に主張立証していない。 そうすると,昭和39年度から平成24年度より前の基準年度に行われた固定資産評価基準による価格の決定が各年度における固定資産評価基準 )ではなかったことについて,具体的に主張立証していない。 そうすると,昭和39年度から平成24年度より前の基準年度に行われた固定資産評価基準による価格の決定が各年度における固定資産評価基準に従ったもの(適合したもの)であることが推認されるというべきである。 エなお,上記のアのとおり,本件家屋については,昭和39年度に改めて現行の固定資産評価基準により評価が行われた可能性があるところ,念のため,同年度において本件家屋に付された単位(坪)当たり再建築費評点(新築部分が3万5800点,増築部分が3万8600点)の相当性について検討してみると,以下のとおりである。 証拠(乙4,5)及び弁論の全趣旨によれば,被告が作成した「家屋単位当たり評点比準表」(昭和41年度)によれば,当時,本件家屋と同じ2階建ての専用住宅に係る標準家屋の単位(坪)当たり再建築費評点は,一番低いもので1級2万5000点,一番高いもので11級12万2000点とされており,1級が「バラックより多少程度がよいが全体的に施工の程度が悪いもの」,2級3万0000点が「造作に多少手が加えられているもの施工の程度がやや悪いもの」,3級3万5000点が「造作は一通り揃っているもの」,4級4万2000点が「普通小住宅として一応まとまっているもの」,5級4万9000点が「普通住宅としては一般的なもの」,6級5万5000点が「外装,内装共に施工の程度がよいもの」,7級6万6000点が「中級住宅として一般的なもの」,8級7万5000点が「住宅としては上級なもの外装,内装共に施工の程度がよいもの」などとされていることが認められる。 上記の比準表の内容に照らせば,本件家屋の上記の再建築費評点は,5級の「普通住宅としては一般的な」標準家屋よりもかなり低く評価され,また, 程度がよいもの」などとされていることが認められる。 上記の比準表の内容に照らせば,本件家屋の上記の再建築費評点は,5級の「普通住宅としては一般的な」標準家屋よりもかなり低く評価され,また,4級の標準家屋(普通小住宅として一応まとまっているもの)よりも低く評価されているものとなるところ,本件家屋の現況(乙5)からしても,本件家屋に対する上記のような評点の付設が不当であったとまでは断じることはできない。そして,他に,本件家屋の昭和39年度の単位(坪)当たり再建築費評点の付設が,固定資産評価基準に適合するものではなかったことをうかがわせるに足りる証拠はない。 (2) 昭和38年度以前における評価についてア証拠(乙6,7)によれば,① 本件家屋の昭和9年新築部分が建築された当時,建物については,「地方税ニ関スル法律」(大正15年法律第24号)に基づき,府県税として家屋税(又は建物税)が賦課されていたところ,この家屋税は,評定賃貸価格を課税標準として,住宅・倉庫・工場その他の建物に賦課するものであったこと,② 昭和15年,家屋税法(昭和15年法律第108号)が制定され,家屋税は,国税として昭和17年度から賃貸価格の1.75%を賦課することとされ,家屋台帳に課税標準となる賃貸価格を登載することとされたこと,③ 昭和22年,家屋税が国税から地方税へと委譲され,課税標準は,それまでどおり家屋台帳に登録された賃貸価格とし,国において決定されることになったこと,④ 昭和24年8月26日のシャウプ勧告を受けて,市町村税として固定資産税が創設され,その課税標準が「適正な時価」とされたが,昭和25年度においては,すべての家屋の時価を評価することが期間的に困難であったことなどから,過渡的な便法として家屋台帳に登録されていた賃貸価格の ,その課税標準が「適正な時価」とされたが,昭和25年度においては,すべての家屋の時価を評価することが期間的に困難であったことなどから,過渡的な便法として家屋台帳に登録されていた賃貸価格の900倍に一率に法定して課税標準とされたこと,⑤ 昭和26年,地方財政委員会から市町村に対して土地及び家屋の評価基準が作成され,固定資産税創設後初めて実地調査により時価評価が行われ,具体的には,各市町村において標準家屋を設定して当該家屋の標準再建築価額を算定し,これに比準して個々の家屋の再建築価額を求め,個々の家屋の損耗度等を考慮して評価額を算出する再建築価額方法が採用されたこと,⑥ 昭和27年,評価の均衡化及び評価方法の実務的適合性が検討された結果,家屋について評点式評価方法が採用され,再建築価額を基準とし,これに損耗度,立地条件等自然的経済的条件を考慮して,評価額を求めるものとされたこと,⑦ 昭和30年,基準年度の制度が導入され,土地及び家屋については,昭和31年度及び昭和33年度並びに昭和33年度以降3年度ずつ経過する年度毎に評価替えが行われることになったこと,⑧ 昭和39年以降,現行の固定資産評価基準が導入され,家屋の評価は自治大臣の定める同基準によって行われなければならないとされたことが認められる。 イ本件家屋は,前提事実(1)のとおり,昭和9年に新築され,昭和34年に増築されたところ,上記アのような法制度の変遷の中において,本件家屋に係る賃貸価格や再建築価額が具体的にどのように算定され,課税標準がどのように決定されたかについては,本件記録上,不明というほかない。 しかしながら,上記(1)のとおり,本件家屋については,昭和39年度についても,固定資産評価基準による価格の決定が同基準に従ったもの(適合したもの)であることが推 記録上,不明というほかない。 しかしながら,上記(1)のとおり,本件家屋については,昭和39年度についても,固定資産評価基準による価格の決定が同基準に従ったもの(適合したもの)であることが推認されるのであり,それにより,同年度における本則評価額のみならず,据置措置により適用されることになった登録価格についても,固定資産評価基準に適合するものであることが推認されることとなる。そして,昭和38年以前における課税標準の具体的な決定過程が不明であることそれ自体は,上記の推認を直ちに覆すものとはいえず,他に上記推認を覆すに足りる事情を認めるに足りる証拠はない。 (3) 小括以上のとおりであるから,本件家屋については,その建築時等の評価に係る資料がないけれども,固定資産評価基準に適合しない評価がされたことがあると認めることはできない。したがって,原告のこの点に関する主張は採用することができない。 2 本件処分の適法性(1) 上記1を前提とすれば,本件家屋の平成24年度の登録価格の決定は,固定資産評価基準に適合するものであり,当該価格は,同基準によって決定されるべき価格を上回るものとはいえない。 また,本件家屋につき,一般的な合理性を有すると認められる固定資産評価基準の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があるとは認められない(本件家屋の建築時等の評価に係る資料がないことが,上記の特別の事情に当たらないことは明らかである。)。 したがって,固定資産課税台帳に登録された本件家屋の平成24年度価格は,適正な時価(地方税法341条1号)を上回るものでないと推認される。 (2) 以上によれば,原告が,本件家屋の平成24年度価格を不服として東京都固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をし 価格は,適正な時価(地方税法341条1号)を上回るものでないと推認される。 (2) 以上によれば,原告が,本件家屋の平成24年度価格を不服として東京都固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたのに対し,同委員会がこれを棄却する本件決定をしたことは,適法と認められる。 3 結論よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官工藤哲郎 裁判官和久一彦
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