平成年月日判決言渡 平成年(行ウ)第号懲戒処分取消請求事件 口頭弁論終結日平成年月日 判決主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第請求 α大学総長が平成年月日原告に対してした別紙記載の懲戒処分を取り消す 第事案の概要 本件は、α大学大学院医学研究科で講師を務める原告が自己の研究室に所属する女性大学院生(以下「A」という。)に対してセクシュアル・ハラスメントをしたことを理由として、平成年月日付けでα大学総長が原告に対してした戒告処分(以下「本件処分」という。)につき、事実誤認、処分手続上の違法の違法事由があるとして、原告がその取消しを求める事案である。 争いのない事実等 ( )当事者等 ア原告は、α大学大学院医学研究科機能構築医学専攻病態外科講座(医学部附属病院第外科以下第外科という)講師を務める昭和年生まれの男性で平成年月当時、Aが所属していた第外科移植研究室(以下「移植研究室」という。)のリーダーとして、Aの指導に当たっていた者である。 イα大学総長は平成年月日の本件処分当時原告の任命権者であった。その後、平成年月日に施行された国立大学法人法に基づき、平成年月日、国立大学法人が設立された。これに伴い、国立大学の行政庁を当事者とする訴訟につき、国立大学の行政庁の地位を国立大学法人が承継することとなったことから、本訴についても被告がα大学総長の地位を承継した(当裁判所に顕著)。 ウAはα大学大学院医学 当事者とする訴訟 につき,国立大学の行政庁の地位を国立大学法人が承継することとなったことから,本訴についても被告がα大学総長の地位を承継した(当裁判所に顕著)。 ウAはα大学大学院医学研究科の大学院生である昭和○○年生まれの女性で平成,,年月当時,医師経験年程度の循環器を専門とする内科医であり,前記アのとおり移 植研究室に所属して原告の指導を受けていた者である。 ( )本件処分に至る経緯 アAは「α大学におけるセクシュアル・ハラスメントの防止・対策等に関する, 規程」に基づいてセクシュアル・ハラスメントの防止・対策委員会に対し,平成年月日付け「セクシュアル・ハラスメントの事例に対しての申立書」(以下「本件セクハ ラ申立書」という。)を提出した。 イα大学総長は,上記申立書を平成年月日に受け付け,同年月日,セクシ ュアル・ハラスメント対策専門委員会(以下「本件専門委員会」という。)を設置した。 本件専門委員会は設置後事実関係の調査・検討を始め同年月日から同年,,,月日までの間,A,原告,証人らから事情聴取をした上,同月日「セクシュアル・ ,ハラスメント対策専門委員会調査報告書」を取りまとめ,同日,セクシュアル・ハラスメ- 2 -ント防止・対策委員会の委員長に提出して報告した。 ウα大学評議会(正式な名称は審査評議会である。)は,同月日,原告に対し,教育 公務員特例法に基づく審査を行うことを決定し,その旨通知した。併せて,平成年月日に原告に陳述の機会を与えることを決定したことも通知した。 エα大学総長は,平成年月日,原告を本件処分とすることを決定し,同日,原 告に対して 知した。併せて,平成年月日に原告に陳述の機会を与えることを決定したことも通知した。 エα大学総長は,平成年月日,原告を本件処分とすることを決定し,同日,原 告に対してその旨通知した。 オ上記各組織の関係及び手続の一般的な流れは,別紙のとおりである。 ( )本件処分に係る処分説明書の記載内容 本件処分に係る処分説明書には,処分の理由として次のとおりの記載がある(なお,当事者名については前記表記に従って読み替える。)。 「.原告は,本学大学院医学研究科機能構築医学専攻病態外科学講座(医学部附属病院第 二外科)講師である。平成年月同研究科博士課程に入学したAさんは,医学部附属病 院第二外科移植研究室の所属である原告の研究指導を受けることとなった。原告がAさんの実質的な研究指導教官として移植免疫に関する研究指導をしていた。 ①平成年月上旬,原告とAさんは,それぞれ米国で開催された別の学会に参加 した。その帰途,原告とAさんは,サンフランシスコで合流して,I社のロボット外科技術を見学し,同年月日,同市内のホテルニッコーに宿泊した。原告とAさんは,夕 食後,同ホテル内で飲酒し,原告は,Aさんを抱き,ダンスをし,キスをした。原告の行為は,Aさんの意に反したものであり,Aさんに不快感を与えた。 ②平成年月日,原告は,Aさんに差出人名不記で「僕の友人が君を愛して ,いる,たまにキスをしてやってくれたら喜ぶ」などと,性的関心を露骨に表現した英文のEメールを送った。また,これと前後して,原告は,Aさんに差出人名不記のクリスマス・カードを送ったことにより,Aさんに不気味さと不快感を与えた。 平成年月日,原告は,Aさんを夕食に誘った。Aさんは,今後,原告か 。また,これと前後して,原告は,Aさんに差出人名不記のクリスマス・カードを送ったことにより,Aさんに不気味さと不快感を与えた。 平成年月日,原告は,Aさんを夕食に誘った。Aさんは,今後,原告か らの誘いは受けられない旨を伝えるために,原告のこの誘いを受けた。その席で,Aさんは,EメールをAさんの夫が知り怒っていることを原告に伝えた。原告は,Eメールやクリスマス・カードの差出人が原告であることを認め,原告の言動について謝罪した。 ③原告とAさんの信頼関係が失われたことにより,Aさんは,初期の研究課題である移植免疫に関する研究の遂行が困難となり,平成年月中旬,研究課題を変更して, 移植研究室から他の研究室(臨床検査部門中央検査室)へ一時的に移った。しかし,Aさんは,移植免疫研究の継続を望んでおり,このような研究環境の劣化によってAさんは,学習権が侵害され,精神的被害及び研究上の被害を受けた。 以上,原告のこれら行動は,セクシュアル・ハラスメント行為であり,Aさんに不快感と不安感を与え,研究環境の劣化をもたらし,また,教官と大学院生との間の研究指導上の信頼関係を著しく損なわせ,教官としてあるまじき行為である。 原告の地位利用による上記の行為は,国民全体の奉仕者たる国家公務員,とりわけ教 育公務員としてふさわしくない非行に該当し,官職全体の信頼を失墜させるものである。 よって,国家公務員法第条第項第号,第号及び第号の規定に基づき,原 告を懲戒処分として,戒告する」。 ( )不利益処分審査請求と人事院の判定 - 3 -原告は,人事院総裁に対し,平成年月日,本件処分を不服として,国家公務 員法条及び人事院規則-の規定に基づき審査請求を申し立てたが,人事院総裁 と人事院の判定 - 3 -原告は,人事院総裁に対し,平成年月日,本件処分を不服として,国家公務 員法条及び人事院規則-の規定に基づき審査請求を申し立てたが,人事院総裁人 事官B,人事官C及び同Dは,上記審査請求に対し,平成年月日付けで,本件処 分を承認する旨の判定をした。 争点 本件の争点は,本件処分の違法性であり,原告は,本件処分の違法事由として,( )本件 処分には事実誤認がある,( )本件処分には,処分手続上の違法があると主張する(( )に ついては,ア代理人の出席を認めなかった違法,イ参考人からの事情聴取をしなかった違法,ウ審理不尽の違法,エ処分事由説明書の記載不備の違法,オ処分理由として母体保護への配慮違反を挙げた違法の点を主張している。)。 争点に関する当事者の主張 (原告の主張)( )本件処分には,以下のとおり,事実誤認がある。 アセクシュアル・ハラスメントの概念について(ア)これまでの裁判例や雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律,人事院規則-において,セクシュアル・ハラスメントとは「相手の意に ,反する」性的言動と解されており,性的言動があったとしても,それが相手の意に反しない場合には,それはセクシュアル・ハラスメントではなく,性的言動の行為者が法的責任を問われることはないというべきである。 (イ)本件処分において処分理由とされた原告の行為は,イ以下に述べるとおり,いずれもAの意に反するものではなく,セクシュアル・ハラスメントに該当しない。 イ平成年月日のサンフランシスコホテルニッコー(以下「ホテルニッコー」と いう。)での出来事及びその前後の原告とAの関係について なく,セクシュアル・ハラスメントに該当しない。 イ平成年月日のサンフランシスコホテルニッコー(以下「ホテルニッコー」と いう。)での出来事及びその前後の原告とAの関係について(ア)平成年月日までの原告とAの関係 aAは,他の病院への勤務や海外留学等を経て,平成年月に移植研究室に復帰し たが,その後同年月日のホテルニッコーにおける出来事までの間,原告とAの関係 は良好であった。 bすなわち,Aは,原告と各種の学会に参加する際,原告を自己の運転する車に同乗するよう誘い,二人で学会会場へ行ったことがあり,また,Aの希望に応じて,Aが学会で発表するための発表抄録を原告が作成してやったりすることもあった。 cまた,ホテルニッコーにおける出来事は,原告とAがロボット手術の見学に行った際,,,,に起こったものであるがAは当初独自にロボット手術見学の計画を立てていたのに原告のロボット手術見学予定に合わせて一緒に見学するため,あえて自己の計画を変更した(Aは,自分の参加する学会のついでにロボット手術を見学したかのように供述しているが,Aがロボット手術見学前に参加した学会において,Aは単に共同演者とされていたにすぎず,必ずしも参加しなければならないようなものではなかったことからすると,むしろ,原告と一緒にロボット手術を見学することこそが主目的であったと思われる。)。 (イ)平成年月日のホテルニッコーにおける原告及びAの言動について a同日,原告,A及び丸紅社のE(ロボット手術見学のエージェント。)の人は,ロボ ット手術の見学を終え,ホテルニッコーに帰り,Aの友人も加わって人で同ホテル内の - 4 -レストラン「ANZU」で会食した。 会食 社のE(ロボット手術見学のエージェント。)の人は,ロボ ット手術の見学を終え,ホテルニッコーに帰り,Aの友人も加わって人で同ホテル内の - 4 -レストラン「ANZU」で会食した。 会食は午後時ころ解散し,原告,A,Eの人はそれぞれホテルの自室に戻った。 b原告は,自室に戻ってしばらくしてから,その日の見学や移植の研究についてAと話をしたいと思い,Aの部屋に電話をかけたところ,Aも原告と同様の気持ちである旨述べて,原告の部屋に行くと言って電話を切った(なお当時,上記Aの友人がAの部屋にいたようであるが,原告はそれを知らなかった。)。 cAは,原告の部屋に来るや,ミニバーのお酒を飲もうということになり,原告は部屋の外にある製氷機から氷を取ってきて,Aと共にミニバーのボトルを出して飲み始め,その日のロボット手術の見学に関することやAが参加したアトランタでの学会について話をした。Aは,出席者から発表内容について質問を受けたがうまく英語で答えることができなかった日本人発表者のことなどを話題にした。 dそのうち,Aは,原告の部屋に備付けのCDプレーヤーがあることに気付き,Aの部屋にはないと驚いた様子で何曲かの音楽CDをかけた。その中にはダンスミュージックがあり,スローな曲になったとき,原告がAにダンスを踊りたいと申し出たところ,Aも了解したので,二人でダンスをし始めた。 当初はお互いに軽く抱き合うように踊っていたが,その後,原告はAの腰の周りに両手を回し,Aは原告の首の周りに両手を回して踊るようになった。その後,どちらともなくほおを合わせ互いにキスすることになった。 eしかし,原告は,それ以上Aと親密にするのは好ましくないと考え「この辺でやめ,とこう」と言い,Aもこれに賛成した。その後,Aは,自分の部屋に戻ったが,原告と を合わせ互いにキスすることになった。 eしかし,原告は,それ以上Aと親密にするのは好ましくないと考え「この辺でやめ,とこう」と言い,Aもこれに賛成した。その後,Aは,自分の部屋に戻ったが,原告と。 別れ際,ドアのところでもう一度キスをした。 fこのように,Aは,午後時過ぎに,友人が自室にいたにもかかわらず,自らの意 思で原告の部屋に来て,二人で飲酒をして語らい,ダンスをし,抱擁しながらキスをしたのであって,原告の部屋にいた時間がAにとって楽しい時間であったことはうかがわれ るが,およそ不快感を持つようなものであったとは認められない。また,Aが原告の部屋を出る際,原告に求めてキスをしていることは,Aが原告に好意を寄せていたことを示すものである。 (ウ)平成年月日以降の原告とAの関係について aホテルニッコーでの出来事の翌日以降も,以下のとおり,原告とAの関係は良好であった。 bすなわち,平成年月日,原告とA,Eの人は一緒に朝食をと ったが,Aは楽しそうな様子であったし,飛行場内で一緒に買物をし,帰りの飛行機内でも並んで座り,名古屋空港に到着後は,レストランで二人で食事をした。また,名古屋空港からのバス内では,Aは夫に電話をかけたが,その電話内容(連絡が遅れたことをとがめられたとの内容)を原告に話した。 cその後も,原告とAは,Aが運転する車で一緒に研究会に出掛けたり,新聞記者のFの取材に応じて一緒に飲食したりするなどした(その際の二次会で行ったクラブでは,ホステスが原告とAについて「二人はただならぬ関係だ」と話していた。)。 。 そして,このFとの飲食後,Aは,α大学医学部附属病院駐車場に駐車してあった原告の車内で,原告の右手を自己の胸に誘導し,キスをした上,原告に対して いて「二人はただならぬ関係だ」と話していた。)。 。 そして,このFとの飲食後,Aは,α大学医学部附属病院駐車場に駐車してあった原告の車内で,原告の右手を自己の胸に誘導し,キスをした上,原告に対して「今度先生と会う- 5 -時は先生と寝たい」などと言った。原告が答えに窮して「では今度一緒に食事に行こ。 ,う」と言ってその場を取り繕ったところ,Aは「ふぐが食べたい」と答えた。その後。 。 原告はAを自宅まで送ったが,自宅前でAは両手に荷物を持ったままの原告に抱きつき,キスをした。 dまた,Aは,同年月になっても,原告に対して深夜にEメールで論文の指導を仰 ,「。」いだり飲食後にα大学附属病院駐車場で原告に対して今日はだんなが出張でいないと原告を誘うような態度をとったり,原告の誕生日にわざわざケーキを買ってきて祝ってくれるなどした。一方,原告も,Aのために学会の発表抄録を書いてやったりした。 e同年月日,原告は,Aがクリスマスカードの差出人が分からないとの話をして いたのを耳にして,Aのアルバイト先であるG病院に電話をかけ,同月日のクリスマ スカードとEメールを出したのは原告であることを伝え,もしAがその内容に不快な思いをしたのであればごめんなさいと謝った。これに対し,Aは「ああ,あれはいいんです。 そんなことはありません」と明るく答え,嫌悪感や不快感を持ったなどとは一切言わな。 かった。そもそも,Aは上記クリスマスカードとEメールが原告の出したものであることを知っていたのである。 また,この電話の際,前記のふぐを食べに行く約束が話題になり,Aは「楽しみにしている」と話していた。 。 f同年月日ころ,原告とAは,名古屋市a区にある「かも銀」でふぐを食べた。 Aは,楽しそうにビール二,三本に を食べに行く約束が話題になり,Aは「楽しみにしている」と話していた。 。 f同年月日ころ,原告とAは,名古屋市a区にある「かも銀」でふぐを食べた。 Aは,楽しそうにビール二,三本に加え,ひれ酒を杯ほど飲んだ。 g平成年に入ってからも,原告とAは,実験のデータについて打合せをしたり,原 告がAの学会発表の準備を手伝ったりした。 そして,同年月日,原告とAは,スイスの国際学会に向けて出発するため名古 屋空港で落ち合ったが,雪の影響で飛行機が欠航となってしまった。 すると,Aは,原告と一緒にスイスに行きたいと切望する余り,旅行代理店のネバーランド社のHに回も電話し,代替の航空便を探すよう,強く求めた。しかし,それが困難で あることを知ると,電話でHをしっ責した。 h同年月日ころ,原告は,Aに対し,外科学会の発表に向けての進行具合につい て尋ね,また,患者に対する診療上の問題について注意をした。 i同年月日ころ,原告は,Aが原告の外科学会発表用の抄録がねつ造である旨を 流布していることを聞いたため,Aを呼び,その真偽をただした。なお,Aは,そのときの気持ちを他者にあてたEメールで「深夜の敗戦処理みたいなオペで,馬鹿殿様の御乱行で,大変です。いやはや,全く」と表現している。 。 (エ)以上のとおり,原告とAの関係は,ホテルニッコーでの出来事以前からその後を通じて極めて良好なものであり,上記の事実関係からすれば,むしろAは原告に対して恋愛的感情をもっていたことがうかがわれるのである。 ウ処分説明書記載の各事実について(ア)まず,前記( )の処分説明書の記載のうち,①記載の行為(以下,処分説明1 ,,,,書記載の処分理由は前記処分説明書の記載に従ってそれぞれ処 分説明書記載の各事実について(ア)まず,前記( )の処分説明書の記載のうち,①記載の行為(以下,処分説明1 ,,,,書記載の処分理由は前記処分説明書の記載に従ってそれぞれ処分理由①処分理由②処分理由③と表記する。)は,むしろAが求めて行ったことであり「Aの意思に反した,ものであり,Aに不快感を与えた」との認定は事実誤認である。処分理由①の原告の行為- 6 -が,Aに不快感を与えるようなものではなかったことは,Aが原告の部屋を出る際にキスをしていることからも明らかである。 (イ)また,処分理由②前段の行為については,原告が処分説明書記載のようなEメールやクリスマスカードを送付したのは事実であるが,Aは,上記Eメール,クリス,「」マスカードを当初より原告から送付されたものと承知しており知人にうれしい戸惑いの感情を示すなどしているのであって,原告に対しても「ああ,あれはいいんです」と。 明るく答えており,Eメールやクリスマスカードを送ったことが,Aに「不気味さと不快感を与えた」ようなことはない。 (ウ)さらに,処分理由③については,Aが平成年月中旬に研究課題を変 更して移植研究室から他の研究室(臨床検査部門中央検査室)へ一時的に移ったのは,同人の強い希望によるものであったのであり,同人が「移植免疫研究の継続を望んで」いたという事実はなく,研究環境の劣化によって,同人の「学習権が侵害され,精神的被害及び研究上の被害を受けた」というようなことも全くない。 エ本件セクハラ申立書等に記載されたAの供述等の信用性について(ア)本件処分の理由において認定された事実は,Aの供述にその基礎をおくものと考えられるが,Aの供述は,ホテルニッコーにおいて原告の部屋に行ったか否か,という重要な点において変遷している について(ア)本件処分の理由において認定された事実は,Aの供述にその基礎をおくものと考えられるが,Aの供述は,ホテルニッコーにおいて原告の部屋に行ったか否か,という重要な点において変遷している。 (イ)また,Aは,原告とラウンジで飲酒した旨供述するが,Aのいう「階と階の 間にあるラウンジ」は存在しないし,エレベーター内で原告が「ゴージャスな体だね」。 と言ってAの体に触り,抱きついたという点も,エレベーターのスピードを考えれば,原告がそのような言動をとることは不可能といわざるを得ない。 (ウ)また,Eメールやクリスマスカードの件についても,原告がクリスマスカードを送ったのは回だけであるのに,数回にわたって送られたかのように供述し,既に筆跡か ら原告が送ったものであると認識しながら「差出人が不明で気味が悪かった」と供述,。 するなどしている。 (エ)以上のほか,Aの供述及び法廷における証言は,重要な部分について変遷に変遷を重ねている上,客観的事実に反する不自然,不合理なものであって,信用できるものではない。 オ原告とAの信頼関係が破たんした原因についてα大学総長は,処分理由①,②の事実を前提として,原告とAの間の信頼関係が失われたと認定しているが,そもそもα大学総長が認定したようなセクシュアル・ハラスメント行為はなかったのである。 仮に,原告とAの信頼関係が破たんしたというのであれば,その原因は,専らAにあった。すなわち,前記イ(ウ)i記載のとおり,平成年月ころ,Aが原告の外科学会 発表用の抄録がねつ造である旨を流布したのに対し,原告がAにその真偽をただして注意したことから,Aは大きなショックを受け,その後,自ら異動先として臨床検査部門中央検査室を見つけてきて,同年月中旬,研究課題を変更して移植研究室 を流布したのに対し,原告がAにその真偽をただして注意したことから,Aは大きなショックを受け,その後,自ら異動先として臨床検査部門中央検査室を見つけてきて,同年月中旬,研究課題を変更して移植研究室から臨床検査部門 中央検査室へ移ったのである。 ( )本件処分には,以下のとおり,処分手続上の違法がある。 ア代理人の出席を認めなかった違法- 7 - (ア)α大学教員の教育公務員特例法に基づく審査規程(以下「審査規程」という。)条は「(審査評議会)委員会は,必要があると認めるときは,審査を受ける者又はその代,理人の出頭を求めて調査を行なうことができる」と規定し,現に本件における審査と並。 行ないし遅れて始まったα大学文学研究科における同種事件(以下「文学研究科事件」という。)においては,審査評議会委員会に弁護士である代理人が出席して本人を補佐したとのことである。 しかし,本件の審査においては,原告はα大学担当者から審査評議会での陳述についての説明を受けた際,同人に対し弁護士の代理人を選任していることを告げ,代理人の出席を希望する旨述べていたのに,審査評議会はそれを当初から認めなかった。このように文学研究科事件と扱いが異なったことについては,α大学全学の評議会において問題とされたようである。 (イ)審査評議会が,原告に対し,審査評議会委員会や審査評議会にその代理人の出席を,,認めなかったのは上記のとおり文学研究科事件との比較において不平等な取扱いでありまた,審査規程条の趣旨に反するものであって,本件処分は,その手続に重大な瑕疵が ある。 イ参考人からの聴取をしなかった違法原告は,クリスマスカードとEメールの件について医学部所属J,K及びLの人か ら,また,母体の保護への配慮を欠いたという件について上記Jからそれぞ ある。 イ参考人からの聴取をしなかった違法原告は,クリスマスカードとEメールの件について医学部所属J,K及びLの人か ら,また,母体の保護への配慮を欠いたという件について上記Jからそれぞれ聴取してくれるよう請求している。しかし,α大学総長は,審査評議会や同委員会に上記の者らから,,。 の事情聴取を命ずることもまた自ら聴取するということもなく本件処分を行っているこれは,Aについて,その請求に基づき参考人聴取をしていることと比較して,明らかに不平等な取扱いである。 本件処分は,上記のような不公正な取扱いを経てなされたものであり,公務員の懲戒につき公正を求める国家公務員法条項に違反するものである。 ウ本件処分には審理不尽の違法がある。 (ア)本件処分の経過を概観すると,事実調査を行ったのは本件専門委員会の委員のみである。 そして,本件専門委員会の委員は,審査評議会の構成員ではなく,事実関係などを具体的に審査した者と処分の実質的判断者が異なることから,本件処分の手続は,それ自体直接主義の精神に反するものである。 (イ)加えて,本件専門委員会の委員らは,当初からAの主張する事実が真実であるとの先入観を持って,ずさんな調査をしており(ホテルニッコーでの出来事以降の原告とAの関係の調査すら十分になされていない。),α大学総長は,この本件専門委員会のずさん,,。 な調査結果を前提として自ら裏付け調査をすることなく本件処分を決定したのである(ウ)このように,本件処分には,審理不尽の違法があり,憲法条及び条の趣旨に 反し,国家公務員法条項に反するものである。 エ本件処分は,処分の理由としての記載要件を満たしておらず,違法である。 (ア)ホテルニッコーでの出来事につき,α大学総長が認定した事実は 反し,国家公務員法条項に反するものである。 エ本件処分は,処分の理由としての記載要件を満たしておらず,違法である。 (ア)ホテルニッコーでの出来事につき,α大学総長が認定した事実は「原告とAさん,は,夕食後,同ホテル内で飲酒し,原告は,Aさんを抱き,ダンスをし,キスをした。原告の行為は,Aさんの意思に反したものであり,Aさんに不快感を与えた」というもの。 - 8 -である。 しかし,上記の原告の行為があったとしても,それが当然にAに不快感を与えたとの認定に結びつくものではない。 すなわち,飲酒,抱擁,ダンス,キスという行為がなされた場所,各行為に至る経緯,行為の状況などの客観的事実の摘示がないと,それがAの意に反したものか否か,Aに不快感を与えたか否かの判断はできないのである。 (イ)α大学総長は,原告とAがそれぞれ主張する事実のうち一致する範囲で抽象化した事実を認定しているが,その結果,本件処分の対象となった原告の行為の認定と,それがAの主観に与えた影響の認定がかい離してしまっているのである。 結局,α大学総長のした上記の事実認定は,処分対象事実として不備があり,国家公務員法条項に反するものである。 オ処分事由として「母体保護(安全配慮違反)」を挙げたことの違法(ア)α大学評議会は,審査事由説明書の「事件の概要」において「平成年月, 中旬,Aが切迫早産の診断を受けた後,外部の病院の当直勤務の交替措置を願い出た際,原告はそれを聞き入れず母胎の保護(安全)への配慮を欠いた」旨指摘している。 その後,審査評議会委員会調査報告書の同委員会の補足説明として「本件事案,は,Aが原告からセクシュアル・ハラスメントを受け,そのことによって生じた精神的被害及び研究上の被害の救済と原告に対する処分を求める 審査評議会委員会調査報告書の同委員会の補足説明として「本件事案,は,Aが原告からセクシュアル・ハラスメントを受け,そのことによって生じた精神的被害及び研究上の被害の救済と原告に対する処分を求めるAの申立てによって提起された。 本件事案は,具体的なセクシュアル・ハラスメント行為及びそれに起因する指導教官と大学院生との間の信頼関係の喪失が,妊娠中のAの大学外の関連病院への勤務や母体の安全確保の適切な対応を欠いたことから生じている「本件事案の妊娠中の女性の健康及び。」,安全保持には原告の配慮義務の欠けるところもあるが,原告の職務不履行として問責することはできないと判断した。…(中略)…本件事案の申立てに当たっての重要な要因となっている妊娠中の女性の健康及び安全保持に関する一連の事項を,原告の職務不履行として問責する規則,制度上の根拠は存在しない「しかし,本件事案の申立ての大きな理由。」,は,妊娠中のAの安全確保及び研究環境の保全に対する適切な対応が組織的にも,また個,。 ,人的にもなされずAが深刻な精神的かつ肉体的な苦痛を被ったことにあるしたがって医学研究科及び医学部附属病院において,母体保護や関連病院への医師(大学院生)派遣に関する規則の整備と,それを実効あるものにする制度の確立が緊急の課題である」旨記。 載されている。 さらに,α大学評議会の平成年月日付け審査決定書(以下「本件審査決定書」 という。)においては「原告とAの信頼関係が失われたことにより,Aは,初期の研究,課題である移植免疫に関する研究の遂行が困難となり,平成年月中旬,研究課題を 変更して,移植研究室から他の研究室(臨床検査部門中央検査室)へ一時的に移った。しかし,Aは,移植免疫研究の継続を望んでおり,このような研究環境の劣化によっ り,平成年月中旬,研究課題を 変更して,移植研究室から他の研究室(臨床検査部門中央検査室)へ一時的に移った。しかし,Aは,移植免疫研究の継続を望んでおり,このような研究環境の劣化によってAは,学習権が侵害され,精神的被害及び研究上の被害を受けた」旨記載して,上記審査評議。 会委員会の補足説明を実質的に踏まえた事実認定をした。 (イ)上記のとおり,α大学評議会は,当初からAに対する母体保護への配慮を欠いたことを問題視しており,このことが,本件処分の実質的な処分事由となっていることがうかがわれる。 - 9 -しかしながら,そもそも,原告がAに対し,母体保護への配慮を欠いたという事実自体存在しないし,仮にそのような事実が存在したとしても,それはα大学医学部自体の問題であって,原告にその責任を負わせることはできないものである。 したがって,α大学総長が母体の保護への配慮を欠いたことを一つの処分事由としていることは,審査の対象とすべきではない事項を審査の対象としたものであり,その内容の真否を問うまでもなく,本件処分は明らかに違法である。 ( )以上のとおり,α大学総長の行った本件処分には,処分の結果に影響を与えること が明らかな事実誤認が複数存在している上,処分手続も違法なものであるから,直ちに取り消されなければならない。 (被告の主張)( )事実誤認との主張について アセクシュアル・ハラスメントの概念について(ア)原告は,本件処分理由たる事実が,Aの意思に反するものであったか,という点を問題としており,生理的嫌悪感を生じさせるような態様であったか,Aに強制を強いるような態様であったかを問題としているようである。 (イ)しかし,人事院規則-(セクシュアル・ハラスメントの防止等)及び「人事院 規則-の運 ような態様であったか,Aに強制を強いるような態様であったかを問題としているようである。 (イ)しかし,人事院規則-(セクシュアル・ハラスメントの防止等)及び「人事院 規則-の運用について」と題する通知の規定からすれば,ある行為がセクシュアル ・ハラスメントに該当するか否かの判断においては,当該行為が「不快にさせる性的な言動」であったか否かが問題とされなければならず,その「不快」も,単なる生理的嫌悪感ではなく,職場環境あるいは職場の人間関係を害するおそれとの関係でとらえる必要がある。 (ウ)したがって,本件においても,原告の言動がセクシュアル・ハラスメントに当たるか否かは,指導教官と大学院生の指導関係の特殊性を前提として,単にAのその瞬間にお,,ける生理的な反応や受け止め方の問題にとどめることなくその後の原告とAの指導関係すなわちAの研究環境への影響をも考慮して,Aに不快感を与えるものであったか否かを問題とすべきである。 (エ)α大学総長は,上記規則等の正当な理解にのっとり,かつ,大学院における教育指導関係の特殊性を前提に,処分事由に挙げられた原告の行為は,セクシュアル・ハラスメントに該当すると同時に,信用失墜行為,国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行に該当すると判断して,本件処分をしたものである。 イ処分事実について本件においてα大学総長が認定した処分説明書記載の事実は,懲戒権者には刑事処分等において認められる強制的証拠収集手段がないという現実的制約を踏まえて,Aの供述及び原告の弁解を含む供述内容その他の証拠から,包括的に認められる事実を処分事実として認定したものである。 そして,ウ以下に述べるとおり,本件処分理由には,原告が主張するような事実誤認はない。 ウ処分理由①について(ア)原告は の証拠から,包括的に認められる事実を処分事実として認定したものである。 そして,ウ以下に述べるとおり,本件処分理由には,原告が主張するような事実誤認はない。 ウ処分理由①について(ア)原告は,平成年月日,ホテルニッコーにおいて,以下の行為をしたこと を認めている。 - 10 -a夕食終了後各々自室に帰った午後時ころ,原告は,Aに対して「その日のロボ 。」,。 ット手術の見学や移植の研究について話をしたいと電話をかけ原告の部屋に誘ったb原告は,Aが部屋に来るころには,男女間の期待のような気持ちを抱いていた。 c原告の部屋で二人で飲酒しつつ,AがCDに関心を示したことから,原告がCDをかけた。 dスローテンポのダンスミュージックになったとき,原告はAにダンスをするよう働きかけた。そして,原告は,ダンスをしながら,Aの腰に手を回し,キスをした。 (イ)上記(ア)の原告の一連の行為は,その時間帯や誘引の方法,ダンスからキスに至るまでの行為を原告が誘導していることなどみると,原告が指導教官として,大学院生と性的接触に至ってはならないとの自覚を欠いて行ったものというほかない。 そして,上記行為に関して,原告は,Aの意に反するものではなかった旨主張し,その根拠として,Aが原告の部屋を出る際に原告にキスをしてきたことを挙げるが,これは,人事院公平審理において突然主張されたことであり,それまでの原告の陳述書等には全く述べられていない事柄である。原告にとって最も印象に残るはずの事実が,人事院公平審理の段階で初めて主張されたのは極めて不自然であり,弁解のための根拠なき主張といわざるを得ない。 また,原告がホテルニッコーの部屋において上記の行為でとどまったのは,Aが原告の行為を迷惑かつ不快に思いつつ,機をみて原告の れたのは極めて不自然であり,弁解のための根拠なき主張といわざるを得ない。 また,原告がホテルニッコーの部屋において上記の行為でとどまったのは,Aが原告の行為を迷惑かつ不快に思いつつ,機をみて原告の行為がこれ以上進まないように押しとどめたゆえとみるのが相当である。 ,,,,(ウ)そして原告はホテルニッコーでの出来事の翌日以降も飛行場で買物をしたり飛行機内で並んで座ったなどとして,原告とAが良好な関係にあったと主張するが,これは,大学院生が指導教官に自分の感情をそのまま表現できる立場にないことを失念した主張にすぎない。 Aは,名古屋到着後,自分の発表予定のある研究会に直行しているが,原告にはその話を全くしていない。また,原告とAは,後日の予定を尋ね合うこともなく,二人きりで再会する約束をすることもなく別れている。このことは,ホテルニッコーでの出来事によっても,原告とAの個人的親密さが深まっていないことを裏付けるものである。 エ処分理由②について,(ア)クリスマスカードとEメールを送ったこと自体は原告も認めているところ(ただし。,クリスマスカードがAのメールボックスに入れられたのは複数回であると認められる)「」,「」クリスマスカードは発信者Yとして匿名で出されEメールはオビ・ワン・ケノビなる変名で発信されたものである。 そして,原告は,Aはこれらが原告からのものであることを知っており,不快感を抱くようなことはなかった旨主張するが,Aは,クリスマスカードがだれから来たものか分から,,,,ず困惑して周囲の人々に示し既存文書と照合した結果原告からのものと知るに至りEメールについては,その内容から,原告からのものであると気付いたが,いずれに対しても,返信やお礼の言葉を述べるなど好意的な気持ちを示すような対応を し既存文書と照合した結果原告からのものと知るに至りEメールについては,その内容から,原告からのものであると気付いたが,いずれに対しても,返信やお礼の言葉を述べるなど好意的な気持ちを示すような対応を何ら行っていない。 (イ)そもそも,ある特定の女性に向けて,続けて匿名や変名の文書が送付され,Eメールで「僕の友人が君を愛している「彼をストーカーと呼ばないで「キスをしてやれ」,」,- 11 -ば幸せな気持ちになる」などと性的視点を有する文言が送信されれば,当該女性は,その名あて人とされたこと自体をもって,不気味さや不快感を持つに至ることは当然であり,Aが原告に対して不気味さや不快感を持つに至ったことはごく自然のことである。 これに対して,原告は,Aが原告に対して恋愛的感情を持っており,原告を性的関係に誘うなどしたと主張するが,Aはこれを全面的に否認している。 この点,原告が個人のアドレスでAに親密な感情を示すEメールを送ったのは,本件におけるEメール(平成年月日送信)が初めてであり,同年月日のホテルニッ コーでの出来事以降,か月もの間,原告及びAのいずれもお互いに個人的親密感情を示 ,,,すようなEメールを送ったことはなかったのでありまたサンフランシスコから帰国後 原告とAが二人きりになったのは,同年月日にFと共に飲食した帰途及び同年月日に他の研修医Mと共に飲食をした帰途の回にすぎないこと(上記月日には, 原告の方がA及びMの家に泊まりたいなどと言った事実が認められる。),Aから原告を誘う行為があったのであれば,クリスマスカードやEメールに対してAが無反応であったのは不自然であることなどからすると,原告が上記Eメールを送信したのは,サンフランシ 実が認められる。),Aから原告を誘う行為があったのであれば,クリスマスカードやEメールに対してAが無反応であったのは不自然であることなどからすると,原告が上記Eメールを送信したのは,サンフランシスコから帰国後,原告の意に反してAとの個人的で親密な関係が進行しなかったため,Aとの距離を縮めることを意図した一方的なものであると理解するのが相当である。 現に,Mは,AがクリスマスカードやEメールについて「気味が悪い」と言っていたこ。 と「ストーカーみたいですごく怖い「私とX先生を二人にしないでくれ」と強く言,。」,。 われたこと「二人でしかいない時に誘ってくる」と言われたことを証言しているが,,。 原告はこれに合理的な反論ができないでいる。 さらに,Aは,同年月日には,大学でのセクシュアル・ハラスメント被害救済のた めの団体キャンパスセクハラネットワークに相談のEメールを送信したり翌日のか「」,「も銀」での食事に当たり,原告と食事をしなくても済むよう動物実験に従事し,それでもポケットベルを鳴らしてしつこく原告が呼び出すことから,Mに午後時になったらポ ケットベルを鳴らすよう依頼した上で出掛けたり,平成年月日に予定されていた ,。 スイスでの学会への同行の際にも原告とは別の飛行機を希望するなどしているのである(ウ)上記のようなクリスマスカード及びEメールに対するAの対応や原告に対する態度からすれば,Aが原告に対して恋愛的感情を有していたなどということはなく,AがクリスマスカードやEメールによって不気味さや不快感を抱いたとの認定に誤りはない。 オ処分理由③について処分理由①,②記載の原告の行為により,原告とAの間の信頼関係は失われ,それを背景として,平成年月日,原告からのしっ責を受 不気味さや不快感を抱いたとの認定に誤りはない。 オ処分理由③について処分理由①,②記載の原告の行為により,原告とAの間の信頼関係は失われ,それを背景として,平成年月日,原告からのしっ責を受け,Aは原告の下での研究生活に耐 えられなくなった。 そして,Aは,代理人弁護士を通じて,第外科を統括するN教授に良好な研究環境を回 復してもらうための対処を求め,研究室を変わるに至ったのである。 この事実は,処分理由①,②の帰結としての重要な情状事実であり,本件処分に際して考慮されている。 カAの供述の信用性について,,,原告はAの供述には変遷や客観的事実に反する部分があり信用できないと主張するが飲酒した場所やエレベーターのスピードに関する原告の指摘は必ずしも合理的なものでは- 12 -なく,これをもってAの主張を虚偽ということはできない。 ( )処分手続上の違法性について ア原告は,原告が代理人の同席を求めたにもかかわらず審査評議会がこれを認めなかったことを本件処分の手続上の違法事由として主張するが,以下のとおり,上記原告の主張は認められない。 (ア)そもそも,原告がその主張の根拠とする審査規程条は,審査評議会委員会の設 置及び権限に関する規定であって,その文言から明らかなように,同委員会が事実関係の調査を行うに当たって,必要な場合に代理人から事情聴取をすることができる旨を定めたものにすぎないのであり,審査対象者が審査評議会で陳述をするに当たって代理人を同席させる権利があることを定めたものではない。そして,審査規程上,審査対象者に対し,審査評議会あるいは審査評議会委員会における陳述時に代理人ないし弁護士を同席させる権利を認める規定は存在しない。 このように,審査規程が審査対象者に上記のような権利を認める規 程上,審査対象者に対し,審査評議会あるいは審査評議会委員会における陳述時に代理人ないし弁護士を同席させる権利を認める規定は存在しない。 このように,審査規程が審査対象者に上記のような権利を認める規定をおいていないことは,何ら法令に違反するものではない。すなわち,審査規程は,教育公務員特例法に基づき定律されたものであるところ,同法は,審査対象者に「本人の陳述の機会」を与えることを保障しているのみで,代理人ないし弁護士による弁護の機会まで保障しているものではないのである。 したがって,審査評議会ないし審査評議会委員会が代理人の出席を認めなかった手続違背があるとの原告の主張が,代理人ないし弁護士を出席させる権利を侵害されたという趣旨であれば,主張自体失当といわざるを得ない。 (イ)なお,原告は,文学研究科事件においては弁護士の同席が認められたのと比して不均衡な取扱いである旨主張するが,審査評議会は,文学研究科事件においても,原告に交付したのと全く同様の様式による陳述通知書を審査対象者に交付しており,その際,審査対象者から弁護士の出席に関する申出があったので「参考人」としてならば同行させ意,見を聴取することができる旨を説明したものである。その結果,文学研究科事件の審査対象者は,陳述の日に参考人として弁護士を同行したのであり,審査評議会は,当該弁護士から意見を聴取することが合理的と認め,意見聴取を行ったにすぎない(この参考人からの聴取は,教育公務員特例法条項を根拠とするものである。)。 これに対し,原告は,文学研究科事件の場合と異なり,一度も弁護士の同席に関する申出をしなかった。すなわち,審査事由説明書が原告に交付された際,審査評議会は原告に対して,陳述請求書の書き方や参考人について説明したが,原告からは弁護士を選任しているとの説明 弁護士の同席に関する申出をしなかった。すなわち,審査事由説明書が原告に交付された際,審査評議会は原告に対して,陳述請求書の書き方や参考人について説明したが,原告からは弁護士を選任しているとの説明も,弁護士を同席させたい旨の申出も一切なく,また,原告が陳述請求書を提出した際や審査評議会が原告に陳述通知書を交付した際にも,原告は代理人弁護士の同席を申し出ることはなかった。 したがって,そもそも「原告が代理人弁護士の同席を求めたにもかかわらずそれを認めなかった」との原告の主張事実自体が存在しないのである。 イ(ア)次に,原告は,原告が求めた参考人からの聴取を行わなかったことを本件処分の,,,手続上の違法事由として主張するが参考人からの聴取については教育公務員特例法は聴聞手続をするか否かはもとより,具体的な聴聞方法も各大学の裁量にゆだねており,α大学においては,審査対象者が,陳述請求書を提出するに当たり,併せて参考人の聴取を- 13 -求めることができるとの取扱いをしている。 そして,陳述を請求した審査対象者へ審査日時等を通知する陳述通知書において,参考人からの聴取について具体的な注意事項を記載している。すなわち,同書面には,通知事項として,陳述の機会は回限りとし,参考人の陳述及び質疑応答の時間を含めて時 間以内とすること,陳述の日時までに陳述書を提出すること,同日時に正当な理由なく出頭せず,又は出頭しても陳述をしない場合及び同日までに陳述書を提出しない場合には,陳述の請求を取り下げたものとみなすことが記載されており,審査対象者が参考人の聴取を希望する場合には,陳述請求書に参考人の聴取希望を記載して提出するだけでなく,審査対象者の責任において陳述の日時に参考人を同行する扱いになっていた。 (イ)本件において,平成年月日に の聴取を希望する場合には,陳述請求書に参考人の聴取希望を記載して提出するだけでなく,審査対象者の責任において陳述の日時に参考人を同行する扱いになっていた。 (イ)本件において,平成年月日に原告が提出した陳述請求書には,参考人とし て人の氏名が記載されていたが,同請求書提出の際,原告は,α大学担当者に対し,参 考人は同行しないが,書面を提出すると言った。 上記陳述請求書の提出を受けて,審査評議会は陳述の日時場所等を決定し,同月日,原 告に陳述通知書を交付した。これにより,原告は,参考人の聴取を希望するならば,陳述の日に参考人を同行すべきであり,あるいは同日までに参考人の書面を提出することができることを十分に認識していた。 しかし,原告は,陳述の日である平成年月日までに原告が聴取を求めた参考人の 書面を一切提出せず,また,当日参考人を同行することもなかった。 (ウ)以上より,原告は,参考人聴取の機会を自ら放棄したも同然であり,審査評議会に責められるべき点はない。 また,審査評議会及び審査評議会委員会としては,参考人の書面も提出されず,参考人から聴取を希望する事項について説明もない状況では,原告が聴取を求めた参考人が審査において必要な参考人であるか否かについての判断材料を欠いていたものであるから,審査評議会及び審査評議会委員会が自ら積極的に参考人からの聴取を行わなかったことをもって不公正であるということはできない。 (エ)なお,原告は,Aからの事情聴取及びA側の参考人(関係者)からの聴取に多くの時間を費やしたことと比して原告側の参考人からの聴取を行わなかったのは不平等な取扱いである旨主張するが,原告がその根拠とする乙は,本件専門委員会が参考人(関係者) から聴取した際の書面であって,審査評議 したことと比して原告側の参考人からの聴取を行わなかったのは不平等な取扱いである旨主張するが,原告がその根拠とする乙は,本件専門委員会が参考人(関係者) から聴取した際の書面であって,審査評議会あるいは審査評議会委員会がA側の参考人から事情聴取したものではない。原告の主張は,いまだ審理が行われるか否か不明の段階である専門委員会における事情聴取と,処分手続である審査評議会あるいは審査評議会委員会における審理を混同するものである。 ウ審理不尽との主張について(ア)α大学総長は,本件処分を行うため,審査評議会内に審査評議会委員会を設置して事前審査のための調査をしている。同委員会における審査は,事前審査として適正な方法にて行えば足りることであり,適正手続の内容はその裁量にゆだねられているところである。 同委員会の審査調査経過は,乙にまとめられているところ,同委員会が検討した資料 の中には,原告の陳述書や不服申立書,審査評議会における原告の陳述が含まれている。 また,セクシュアル・ハラスメント対策専門委員会調査報告書には,原告の主張がまと- 14 -められており,審査評議会委員会は,本件専門委員会の担当委員から,再三にわたり聴取等によりその内容の確認措置を重ねている。 (イ)原告は,Aが本件専門委員会の委員に述べた事実が真実か否かの裏付け調査をするべきであったとし,また,上記報告書やその関係者からの聴き取りでは直接主義の精神に反して不当であると主張するが,本件専門委員会による調査が客観的にみて十分なものと評価し得るときに,その調査を前提にして検討することに何の不当性もない。本件において,本件専門委員会は詳細な調査を重ねており,これに信頼を置くことに何ら問題はないというべきである。 原告は,本件専門委員会が先入観をもって調査したと主張す 検討することに何の不当性もない。本件において,本件専門委員会は詳細な調査を重ねており,これに信頼を置くことに何ら問題はないというべきである。 原告は,本件専門委員会が先入観をもって調査したと主張するが,これは原告の主張を前提としてなされた一方的な主張にすぎず,本件専門委員会の調査に不備はない。 (ウ)以上より,本件処分が審理不尽により違法である旨の原告の主張は理由がない。 エ処分の理由が記載要件を満たしていないとの主張について処分説明書における記載は,被処分者においていかなる事由で処分されたかを知り得る程度に記載すれば足り,事実の認定経過を記載する必要はない。 本件における処分説明書の記載は,原告においていかなる事由で処分されたかを知るに十分であり,原告の主張は当たらない。 オ処分事由として母体保護への配慮を欠いたことを挙げたことが違法である旨の主張について(ア)原告は,①審査事由説明書の「事件の概要」欄の記載や②審査評議会委員会報告書の「補足説明」の記載から,原告の処分事由として母体保護への配慮を欠いたことが挙げられており,本件審査決定書は,上記①,②を踏まえたもので,実質的に母体保護への配慮を欠いたことが処分事由の一つとなっていることがうかがわれる旨主張する。 (イ)しかし,①については,そもそも審査の対象となる事実が記載されているものにすぎず,α大学総長が本件処分に当たり母体保護への配慮を欠いたことを処分事由として認定したことを意味するものではない。また,②については,審査評議会委員会報告書は,同種事案の再発防止の観点から,事案の背景に大学の制度上の不備等が認められる場合に,補足説明として上記問題点を指摘し,今後の大学運営に資することをも目的とするものであり,本件における補足説明も,原告の処分事実そのものとしてではなく,事案の に大学の制度上の不備等が認められる場合に,補足説明として上記問題点を指摘し,今後の大学運営に資することをも目的とするものであり,本件における補足説明も,原告の処分事実そのものとしてではなく,事案の背景として,大学が管理運営上の問題点を改善する必要があるとの観点から記載されているものである(現に,補足説明の中では,原告の職務不履行として問責することはできない旨明記されている。)。 そして,本件審査決定書には,原告が母体保護への配慮を欠いた旨の記載は一切なく,本件処分が,これを処分事由の一つとしていないことは明らかである。 カ以上のほか,α大学総長は教育公務員特例法が定める諸手続をすべて行い,α大学評議会の審査の結果を経て本件処分を行ったものであり,その処分手続は適法である。 ( )まとめ ア以上のとおり,本件処分には原告が指摘するような事実誤認はなく,処分手続上も適法なものである。 イそして,α大学総長は,大学院における指導体制の特殊性等の諸般の事情を考慮した上で,本件処分を決したものであるところ,本件処分たる戒告処分は,懲戒処分の中で最- 15 -も軽い処分であり,職員の責任を確認しその将来を戒める処分であって,人事院公平委員会が判定の結論を示すに当たり「以上のとおり,請求者(原告)は指導教官としてAを指,導,教育する立場にありながら,Aに対し,抱きつき,キスをしようとするなどのセクハラを行ったものであって,その責任は極めて重大であり,厳正な処分をもって臨むべきであるが,不利益処分に関する審査請求制度の趣旨にかんがみ,本件処分は承認する」と。 述べていることも考慮すれば,本件処分は相当であり,α大学総長の裁量権を逸脱,濫用したものとは到底認められないものである。 ウ結局,本件処分は適法であり,本件請求には理由がない。 第当 る」と。 述べていることも考慮すれば,本件処分は相当であり,α大学総長の裁量権を逸脱,濫用したものとは到底認められないものである。 ウ結局,本件処分は適法であり,本件請求には理由がない。 第当裁判所の判断 前提となる事実等 前記争いのない事実等,甲,証人A,原告本人及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によ れば,次の事実が認められ,前掲証拠のうち同認定に反する部分は採用しない。 ( )Aが移植研究を志すようになった動機等 アAが臓器移植に興味を持つようになった契機は,大学在学中,スコットランドに留,。 ,,,学した際臓器移植を手がける医師に出会ったことであるその後Aは大学を卒業し名古屋第二赤十字病院で研修を受けたが,その際,移植医であるO医師の薫陶を受け,移植内科医を目指す決意を固めた。 ,,,イAは藤田保健衛生大学附属病院及び西尾市民病院勤務を経た後平成年月 心臓移植の術後管理について学ぶため,米国のスタンフォード大学に留学した。Aは,同年月,一時帰国し,現在の夫と結婚した(甲)。 帰国後,Aは,自らの進路に関して,臨床医として移植医療に従事する前に,移植研究に携わりたいと考えた。そこで,Aは,平成年月,移植研究に先進的かつ積極 的なα大学の大学院に入学し,移植研究室に所属することになった。 ( )平成年月日までの経緯等 ア原告は,平成年月日,三重県b市で行われた東海外科学会に参加した際, 同学会で発表を予定していたAが自分の車に同乗するよう申し出たため,同学会への行き帰りにAの車に同乗した。 イAは,平成年月中旬ころスイスで開催される予定の移植免疫の国際学会に参 加したいと希望していたが,原告 Aが自分の車に同乗するよう申し出たため,同学会への行き帰りにAの車に同乗した。 イAは,平成年月中旬ころスイスで開催される予定の移植免疫の国際学会に参 加したいと希望していたが,原告が同学会において発表する予定であることを知り,平成年月ころ,原告に対し,同学会への参加を希望している旨告げた。 原告は,上記のAの希望をいれ,Aと共にスイスの国際学会に参加し,抄録を発表することにした。 ウ原告は,上記ア,イの際,Aが原告に示した態度等から,Aが原告に対して,特別な好意を寄せてくれていると思い込んだ。 ( )平成年月日のホテルニッコーにおける原告及びAの言動 ア原告及びAは,平成年月上旬,同じ飛行機で渡米し(甲,),原告はダラ スで開催された肝臓学会に,Aはアトランタで開催された循環器病学会にそれぞれ参加した。 イ原告及びAは,上記各学会の終了後,同月日に,サンフランシスコで合流し, 丸紅のEの案内でIntutive社におけるロボット手術の見学をした後,人でホテ - 16 -ルニッコーに帰り,Aの友人であるPも交えて,同ホテル内のレストラン「ANZU」で会食した。 午後時ないし時ころ会食を終えると,原告,A及びEは,それぞれホテルの 自室(原告の部屋は階にある号室であり,Aの部屋は階にある号室であっ 1914 0708た。甲の及び)に戻ったが,その際,Aは,久々に会ったPと旧交を温めるため, Pを自室に連れていった。 ウ原告は,前記( )のとおりAが自分に特別な好意を寄せてくれていると感じていた こともあって,更にAと親密な関係になりたいと思い,Aを誘うことを思い立った。 そこで,原告は,自室に戻 ていった。 ウ原告は,前記( )のとおりAが自分に特別な好意を寄せてくれていると感じていた こともあって,更にAと親密な関係になりたいと思い,Aを誘うことを思い立った。 そこで,原告は,自室に戻った後しばらくしてから,Aの部屋に電話をかけ「ロ,ボット手術の見学や学会について話をしましょう」などと言って,Aに自室に来るよう。 誘った。その際,原告は,Pが会食後帰宅したと思い込んでいたため,PがAの部屋にいることは知らなかった。 これに対し,Aは,Pと旧交を温める機会が失われてしまうことを残念に思いながらも,指導教官である原告の勧誘をむげに断れば,原告が気分を害するのではないかと考え,原告の部屋に行くことを承諾した。 エAが原告の部屋に入ると,原告及びAは,室内のミニバーにあったウィスキーのボトルを取り出し,飲酒をしつつ(甲の),会話をした。その際,Aが原告の部屋に備 え付けられていたCDプレーヤーに関心を示したため,原告は,CDを再生した。 オ再生中の音楽がスローテンポの曲になった際,原告は,Aに対し,ダンスをしようと誘いかけ,Aの腰に手を回し,キスをした。 しかるに,Aが原告に対し,やんわりとではあるが拒絶するような態度を示したため,原告は,キス以上の行為に及ぶことを断念した。もっとも,原告は,Aが原告の誘いに応じてホテルの部屋に来たことなどから,以前にも増して,Aが原告に対し恋愛感情を抱いているものと思った。 カ原告,AとEは,翌月日,人でホテルニッコーのレストランで朝食を取っ た後,原告とAは,Eに空港まで送ってもらい,名古屋空港まで共に行動した(甲)。 ( )平成年月日以降の原告及びAの言動等 ア平成年月日,原告及びAは,原告と従前から面識があった読売新 で送ってもらい,名古屋空港まで共に行動した(甲)。 ( )平成年月日以降の原告及びAの言動等 ア平成年月日,原告及びAは,原告と従前から面識があった読売新聞記者 であるFからの取材依頼に応じ,人で居酒屋等において飲食した。会食後,原告及びA は,タクシーに同乗して,原告の車が駐車してあるα大学の駐車場まで行った。そして,原告が原告の車(赤いボルボ)でAを自宅マンションまで送っていくということになり,原告及びAは,同駐車場において原告の車に乗り換えた。 しかし,Aは,自宅マンションの位置を原告に知られたくないと思ったため,マンションから少し離れた場所で,原告の車から降りた。 イ同年月日,原告が参加した肝移植手術の後,原告は,A及び研修医であるM を食事に誘い,人で「味仙」において飲食した。 会食後,Aが,Aの車でMを自宅まで送った後,原告をα大学まで送り届けることになった。 その後,Mの自宅前に到着した際,原告がMの自宅に泊まりたいという趣旨の発言,,,。 をし車から降りるといった行動をとったためMは困惑のため返答に窮してしまった- 17 -そこで,Mの困惑する様子を見かねたAは「大学か家までお送りしますから,帰りまし,ょう」などと原告をやんわりとたしなめたところ,原告もAの言葉に従い,再びAの車。 に乗り込んだ(乙)。 その後,Aの車中において,原告が今度はAの自宅に泊まりたいなどと言い出したが,Aは,原告の発言を受け流した(乙)。 なお,後日,Aは,Mに対し,原告のAに対する上記発言等について,愚痴をこぼした(乙)。 ウ平成年月日以降,クリスマスカードが交付されるまでの間,Aが原告と 二人きりになった機 ,Aは,Mに対し,原告のAに対する上記発言等について,愚痴をこぼした(乙)。 ウ平成年月日以降,クリスマスカードが交付されるまでの間,Aが原告と 二人きりになった機会は,前記ア,イの各会食後の帰宅途中だけであった。 ( )原告のAに対するクリスマスカードの交付等 ア原告は,平成年月上旬ころ,Aとの親密さを深める意図で,研究室にあるA のメールボックスに,Aあてのクリスマスカードを入れておいた。原告は,Aが自分に恋愛感情を抱いていると思っていたため,Aを楽しませるつもりで,上記クリスマスカードにあえて差出人たる原告の氏名等を記載しなかった。また,原告は,暗に自分がクリスマスカードの差出人であることをほのめかすために,クリスマスカードの文面に「lef,tinSanFrancisco「FreerideinredVo」,lvo「fugudinner」などといった文言を織り込んだ。なお,原告とA」,との間では,ふぐを食べるという話があった。 イAは,上記クリスマスカードの内容を読み,上記文言の内容等から原告が差出人であることをうすうす察したが,原告が差出人名を書かなかったことや文面の内容が原告とAとの間の親密さを殊更に強調するようなものであったことから,不快感を覚えるとともに,困惑した。 そこで,Aは「気味悪いから見てくれない」などと言いながら,Mや,研修医,。 のQなどに,上記クリスマスカードを見せた(乙)。 なお,その後,Aは,原告に対し,上記クリスマスカードに対する返信をしなかったし,お礼の言葉を述べるなど感謝,好意を示す言動も一切しなかった。 ( )原告のAに対するEメールの送付等 ア原告は,平成年月日午前零時分,Aとの親密さを深める意図で, 返信をしなかったし,お礼の言葉を述べるなど感謝,好意を示す言動も一切しなかった。 ( )原告のAに対するEメールの送付等 ア原告は,平成年月日午前零時分,Aとの親密さを深める意図で,Aに 対し,Eメールを送信した。原告は,上記Eメールを送信する際,やはりAを楽しませるつもりで,差出人名を,映画「スター・ウォーズ」の登場人物である「Obi-Wan-Kenobi(オビワンケノビ)」とした。また,上記Eメールの差出人が暗に原告であることをほのめかすために「Ipresumethatyouwantto,knowwhosentaChristmascardtoyouth. 。」eotherday(先日クリスマスカードをだれが送ったか知りたいでしょう)や「noSpanish(スペイン語はどうか勘弁してくれ。)」などといった文章や文言を文中に織り込んだ(なお,上記Eメールの内容は,差出人である「Obi-Wan-Kenobi」が,三人称視点で,原告について述べるという体裁を取っている。)。ま,,「「」。」た上記Eメールの文中にはheLOVESyou(君のこと愛してるよ)や「Tokisshimonceinawhilewillsurelymakehimhappy(たまにキスぐらいすれば喜ぶと思う。)」などといっ- 18 -た文言も記載されていた(甲の,乙)。 イAは上記Eメールの文面を読み上記の文章や文言などを手掛かりに原告がO,,,「」,。 bi-Wan-Kenobiという変名を用いて上記Eメールを送信したと推察したしかし,Aは,原告が上記Eメールを送信した意図とは裏腹に,その文面から原告の自己陶酔的性格を感 ,,「」,。 bi-Wan-Kenobiという変名を用いて上記Eメールを送信したと推察したしかし,Aは,原告が上記Eメールを送信した意図とは裏腹に,その文面から原告の自己陶酔的性格を感じるなどして,ますます不快感を募らせるとともに,指導教官である原告がAに性的な関心を抱いているのではないかと感じて,大きな困惑を覚えた。 ウAは,上記Eメールを夫あてに転送したり,M,Q等に見せたりした。しかし,Aは,原告に対して,上記Eメールに対する返信メールを送信するなどの行動は一切とらなかった。 ( )キャンパスセクハラネットワークに対する相談等 アAは,α大学構内に張ってあったキャンパスセクハラネットワークという団体の張り紙を見て,同団体の存在やその代表者の連絡先等を知った。 イAは,前記クリスマスカードの交付及びEメールの送信以前に,原告から会食するよう誘われており,平成年月日「かも銀」において原告と会食することになっ ていた。 しかし,Aは,上記会食が間近に迫っていたこともあり,原告の言動に対する対処等につき苦慮していたことから,同月日,上記キャンパスセクハラネットワークの代 表者であるRに対し「実際に相談したいことがあって,真面目に困っています「自,。」,分より立場が上の人からの嫌がらせのために,どのように対応したらと考えると大学を辞めようかと思ってしまうほどです「助けて下さい」などと現在の窮状を訴え,相談。」,。 をこう旨のEメールを送信した(乙)。 ( )「かも銀」での会食に関する原告及びAの言動等 アAは,原告との会食に行かない口実として,会食予定であった平成年月日の午後から動物実験の予定を入れた。 しかし,Aは,原告の言動によって困惑していること 告及びAの言動等 アAは,原告との会食に行かない口実として,会食予定であった平成年月日の午後から動物実験の予定を入れた。 しかし,Aは,原告の言動によって困惑していることを,原告に対し明確に告げた方がよいと考え直し,原告との会食に臨むことにした。もっとも,Aは,早々に会食の席から立ち去る口実を設けるため,Mに対し,午後時ころを見計らって,Aが携帯して いるポケットベルを鳴らしてくれるよう頼んでおいた(乙)。 イその後,Aは,動物実験を中座し,午後時ころ,原告と共に研究室を出て「かも 銀」に向かった「かも銀」において,Aが,原告に対し,Aに対して前記Eメールを送。 信したのは原告だと思っていること,前記Eメールの内容をAの夫が知って怒っていること及びAが原告の言動により困惑していることを告げたところ,原告は,前記クリスマスカードや前記Eメールを送ったのが自分であることを認めたため,Aは,原告に対し,今後,Eメールを送信するなど異性としての関心に基づくような言動を一切差し控えるよう申し入れた。これ以降,原告のAに対する性的なアプローチはなくなった。 ウMは,Aに依頼された時刻である午後時の約分後に,Aのポケットベルを鳴 らした。 もっとも,後日,Mは,Aから,ポケットベルが鳴ったのは,Aが帰宅した後であったことを聴かされた(乙)。 ( )スイスでの国際学会に関する原告とAの言動等 - 19 -ア前記( )のとおり,原告及びAは,平成年月中旬に開催予定のスイスにおける 移植免疫の国際学会に参加することになっていた。 イ原告は,出発日(平成年月日)の約か月前ころ,従前から航空券の手配等 を依頼してきた旅行代理店ネバーランドツーリス 移植免疫の国際学会に参加することになっていた。 イ原告は,出発日(平成年月日)の約か月前ころ,従前から航空券の手配等 を依頼してきた旅行代理店ネバーランドツーリストのHに,上記国際学会に参加するための航空便の予約,航空券の手配を依頼した。 その後,Aは,Hに対し,原告の予約した航空便とは異なる航空会社の航空便を予約したい旨の希望を告げた上,航空券の手配を依頼した。しかし,Hが手を尽くしてみたものの,別の航空便の予約を取ることができず,結局,Aは,原告と同じ航空便でスイスに行くことになった(乙)。 また,Aは,スイスで原告が宿泊を予定しているホテルとは異なったホテルを予約した。 ウスイスへの出発当日である平成年月日,原告とAは名古屋空港で合流した が,大雪の影響で搭乗予定の航空便が欠航となってしまった。 Aは,その日のうちに出発しなければ,自分が関心を持っている治験薬に関する発表に間に合わなくなると考え,前記国際学会に参加することを断念した。 そこで,Aは,航空便のキャンセル料に関する問い合わせのため,名古屋空港から携帯電話でHに架電したところ,Hから,翌日出発の代替便による出発が可能であるとして,キャンセル料の負担を求められた。Aは,数回にわたりHに架電し,キャンセル料の負担について交渉したが,Hと交渉を継続してもらちがあかないと思い,上司と電話を代わるよう申し入れ,Hの上司と交渉を続けた(乙)。 エAがスイスの国際学会に参加することを断念したことから,結局,原告もスイスに渡航することを取りやめた。 ()原告のAに対するしっ責 原告は,Aが,他の医師に対して,原告が外科学会で発表予定の実験の抄録をねつ造している趣旨の発言等をしていることを聴いた。 そこで,原告は することを取りやめた。 ()原告のAに対するしっ責 原告は,Aが,他の医師に対して,原告が外科学会で発表予定の実験の抄録をねつ造している趣旨の発言等をしていることを聴いた。 そこで,原告は,平成年月中旬ころ,Aを研究室に呼び出し,しっ責した。A は,同年月日から同月日まで研究室を休んだ(甲)。 ()Aの研究室の変更に至る経緯等 アAは,これ以上原告の下で移植に関する研究を継続することが困難であると考え,平成年月ころ,今後の対処方等について,S弁護士に相談した(甲)。 ,,,,イS弁護士は同年月日ころAの代理人として第外科のN教授と面談し Aから聴取した原告の言動や原告とAとの関係等について説明した上,Aの研究環境の整備等に力添えをしてくれるよう申し入れた。 その後,N教授は,原告と面談し,S弁護士が説明した事実関係について確認したところ,Aの主張する事実関係と原告の言い分とのかい離が大きかったため,Aがこれ以上原告の下で研究を行っていくことは不可能であると判断した。 また,N教授は,Aと面談したところ,A本人からも自由に実験ができるような環境を整備してほしい旨の希望を聴かされた。 そこで,N教授は,Aの希望等も勘案した上,臨床検査部門中央検査室のT助教授の指導の下で研究を続けることがAの研究環境にとってよかれと考えたため,同助教授の- 20 -下を訪れ,Aの指導を依頼した(乙,)。しかし,Aは,既に同助教授の下を訪れ, 研究内容等について尋ねるなどしていた(乙)。 ウAは,出産のため休みを取った後である平成年月ころ,第外科所属のまま 臨床検査部門中央検査室のT助教授の指導の下で研究を再開した(乙 について尋ねるなどしていた(乙)。 ウAは,出産のため休みを取った後である平成年月ころ,第外科所属のまま 臨床検査部門中央検査室のT助教授の指導の下で研究を再開した(乙)。 争点について ( )本件処分には事実誤認があり,違法である旨の原告の主張について ア処分理由①について(ア)前記で認定したとおり,平成年月日以前において,Aは,原告に 対して,大学院生の指導教官に対する一般的な言動,態度を超えて,特別な好意又は異性に対する関心の現れと認められるような言動,態度を格別示していたとは認められない。 また,平成年月日以降,原告がAに対しクリスマスカードを交付する までの間,Aが原告に対し個人的に接触を図るなど原告との親密さを深める積極的な行動をとったという事実も特段認めらない。 さらに,原告がAに対して差出人名の記載されていないクリスマスカードを交付したり,変名を用いてEメールを送信した際,Aは,むしろ,原告に対して不快感を覚えたり,原告がAに対し性的な関心を抱いていると感じて困惑した事実を認めることができる。 上記の事実経緯のほか,Aがキャンパスセクハラネットワークの代表者に原告の言動に対する対処方について相談した事実及び「かも銀」における原告との会食に行かな いため又は早々に切り上げるため口実を設けようとした事実等を併せ考慮すれば前記,,( )の際,Aが原告に対して異性としての関心や特別な好意を寄せていたと認めることは できず,まして,恋愛感情を抱いていたなどとは到底認めることができない。 そして,上記のとおり,Aが原告に対して特別な好意を寄せていたとは認められない以上,前記( )のとおり,原告がAの腰に手を回したり,キスをするなどの行 を抱いていたなどとは到底認めることができない。 そして,上記のとおり,Aが原告に対して特別な好意を寄せていたとは認められない以上,前記( )のとおり,原告がAの腰に手を回したり,キスをするなどの行為に1及んだ際,Aは,少なくとも原告の同行為に対する不快感を感じるとともに,指導教官である原告が同行為に及んだことに困惑を覚えたものと推認することができる。 (イ)これに対して,原告は,平成年月日の前後を通じて原告とAとの関 係が極めて良好であり,Aは原告に対して恋愛感情を持っていたとして,原告のAに対する行為は,Aの意に反するものではなかったと主張する。 しかし,原告が,原告とAとの関係が極めて良好であった根拠として列挙する事,。 実についてはこれらの事実を認めるに足りる的確な証拠はないものといわざるを得ないしかも,前記(ア)のとおり,Aは原告に対して異性としての関心や特別な好意を抱いていたとは認めることができず,前記で認定した事実からすれば,平成年月日以 降,原告とAとの人間関係は,むしろ悪化していったということができる。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ)以上によれば,処分理由①について,事実誤認があるとは認められない。 イ処分理由②について(ア)前記( )及び( )で認定したとおり,原告がAに対して,差出人の記載のないクリ1 スマスカードを交付したこと及びAに対する性的関心を示す内容(「heLOVESyou」や「Tokisshimonceinawhile」などといった- 21 -文言)を含んだEメールを送信したことにより,Aは,不快感を感じるとともに,困惑を覚えたものと認められる。 また,前記( )で認定したとおり,Aは,原告 awhile」などといった- 21 -文言)を含んだEメールを送信したことにより,Aは,不快感を感じるとともに,困惑を覚えたものと認められる。 また,前記( )で認定したとおり,Aは,原告の言動によって困惑していることを1原告に対し明確に告げた方がよいと考え原告の誘いに応じて平成年月日か,,,「 も銀」で会食し,その席上,原告に対し,原告がAに対して上記Eメールを送信したことをAの夫が知ったこと等を告げ,今後,異性としての関心に基づくような言動を一切差し控えるよう申し入れたと認めることができる。 (イ)これに対し,原告は,Aが,上記クリスマスカード及び上記Eメールの差出人が原告であることを当初から承知しており,知人に「うれしい戸惑い」の感情を示すなどしていたことから,Aに不気味さと不快感を与えたようなことはない旨主張する。 しかしながら,原告の上記主張は,Aが原告に対し,特別な好意や恋愛感情を寄せていたことを前提とするものであるところ,前記( )のとおり,Aが,原告に対し,特別な 好意を寄せたり,恋愛感情を抱いていたと認めることはできず,その前提を欠くものといわざるを得ない。また,前記( )及び( )で認定したとおり,Aが上記クリスマスカード1 ,,及び上記Eメールを閲読した際その内容から差出人が原告であることを推察したものの確信には至らなかったことから,M,Q等の知人らに対し,上記クリスマスカード及び上記Eメールの内容を示しているのであり「うれしい戸惑い」の感情を示すなどしていた,とは到底認めることができない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ)以上によれば,処分理由②についても,事実誤認があると認めることはできない。 ウ処分理由③について(ア) とは到底認めることができない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ)以上によれば,処分理由②についても,事実誤認があると認めることはできない。 ウ処分理由③について(ア)前記アのとおり,Aは,平成年月日,原告がAに対し,ダンスをし ようと誘いかけ,Aの腰に手を回し,キスをした際,不快感を感じたこと,前記( )及1び( )のとおり,原告からのクリスマスカード及びEメールによって,ますます不快感を 募らせたこと,前記( )のとおり,キャンパスセクハラネットワークの代表者に対し,1現在の窮状を訴え,相談をこうEメールを送信したことなどに照らせば,平成年月 日に端を発した原告のAに対する性的関心に基づくような言動によって,Aが原告に 対し,次第に嫌悪感,不信感を募らせていったと認めることができる。 このことは,前記( )のとおり,Aが,原告との会食の際,会食に行かない又1は会食の席から早々に立ち去るよう口実を設けたこと,前記( )のとおり,Aが原告と1国際学会に参加しようとした際,殊更に原告が予約した航空便とは異なる航空便を予約しようと試みたことによっても裏付けられる。 1 また,前記()のとおり,Aが原告からしっ責を受けるに至った平成年月中旬ころには,原告とAとの間の信頼関係は,もはや修復不可能な程度に破たんしたものと推認することができる。 そして,原告とAとの間の信頼関係が失われたことによって,前記()のとお1り,Aは,これ以上原告の下で移植に関する研究を継続することが困難であると考え,S弁護士に今後の対処方について相談したものであり,Aは,初期の研究課題である移植免疫に関する研究の遂行を断念せざるを得ない状況に これ以上原告の下で移植に関する研究を継続することが困難であると考え,S弁護士に今後の対処方について相談したものであり,Aは,初期の研究課題である移植免疫に関する研究の遂行を断念せざるを得ない状況に至ったものと認めることができる。 - 22 - しかし,前記認定事実のとおり,原告のAに対する性的アプローチは,平成年月日の「かも銀」における食事の際にAが原告に対して異性としての関心に基づ くような言動を差し控えるよう申し入れた以降,一切されていないのである。その後,確かにAが,平成年月のスイスでの国際学会の際,原告とは別の飛行機を手配しよう と試みたり,原告とは別のホテルを予約したことは事実であるが,これは,平成年月日のサンフランシスコでの一件があったため,Aが原告の行動に不安を覚えたこと によるものであると推認されるところ,それを超えて,この事実によって原告とAとの関。 ,,係が破たんしていたとまで推認することはできないまた証拠(甲のからまで 甲のからまで,甲のからまで,甲のからまで)によれば,Aが,平 成年月から平成年月までに知人等に送信したEメールに,特にAと原告との 関係が破たんしていることをうかがわせるような内容のものはないし,他に,原告とAと,。 の関係が平成年月日以降破たんしていたと認めるに足りる的確な証拠はない 前記認定事実によれば,原告とAとの信頼関係が破たんした原因は,Aが,他の医師に対して,原告が外科学会で発表予定の実験の抄録をねつ造したという趣旨の発言をし,原告がこれについてAをしっ責したことがきっかけとなっていることが推認され,処 関係が破たんした原因は,Aが,他の医師に対して,原告が外科学会で発表予定の実験の抄録をねつ造したという趣旨の発言をし,原告がこれについてAをしっ責したことがきっかけとなっていることが推認され,処分理由①や処分理由②の行為が,原告とAとの信頼関係が破たんしたことの原因となっているとは認めることができない。 したがって,処分理由①や処分理由②の行為が,原告とAとの信頼関係が失われたことの原因となり,これによりAが研究環境の劣化によって学習権を侵害され,精神的被害及び研究上の被害を受けたとした本件処分の認定には事実誤認があるといわざるを得ない。 (イ)しかし,公務員につき,国家公務員法に定められた懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきであり,懲戒権者が,その裁量権の行使としてした懲戒処分は,それが社会通念上著しく妥当性を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないというべきであり,裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては,懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきである(最高裁判所昭和年月日第小法廷判決民集 巻号頁参照)。 1101本件についてみるに,原告はAの指導教官としてAを指導,教育する立場にある者であること,処分理由①及び処分理由②の行為は,Aの意思に反する性的な言動であってセクシュアル・ハラスメント行為に当たることは明らかであること,本件処分は戒告であり懲戒処分の中では最も軽いものであることなどに照らせば,原告が,平成年月 意思に反する性的な言動であってセクシュアル・ハラスメント行為に当たることは明らかであること,本件処分は戒告であり懲戒処分の中では最も軽いものであることなどに照らせば,原告が,平成年月 日以降Aに対する性的なアプローチをやめており,処分理由③の事実があったとは認 められないことを考慮してもなお,本件処分が社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権を濫用したと認めることはできない。 エこれに対して,原告は,本件処分の理由において認定された事実はAの供述に依拠しているところ,Aの供述及び証言は重要な部分について変遷に変遷を重ねている上,客観的事実に反する不自然,不合理なものであって,信用できるものではないと主張する。 - 23 -この点,ホテルニッコーでの原告及びAの言動に関するAの供述及び証言には変遷が認められるが,同証言によれば,Aが供述及び証言を変遷させた理由は,本件専門委員会の委員等に,Aが原告の部屋を訪れたこと自体が軽率であったとの印象を与えるのではないかと懸念したからであると認められ,供述及び証言の変遷についてはAの考えによるそれなりの理由があったということができるから,変遷があるからといって不自然,不合理なものとまで認めることはできない。 また,Aの供述及び証言には,誇張があると思われる部分や,自己に都合良く修正したと思われる部分が多々存在するものの,Aが原告に対して異性としての関心や特別な好意を抱いていたと認められないことは前記説示のとおりであって,原告がその存在を肯定している外形的事実を勘案すれば,前記認定事実の限度でこれを信用することができるというべきである。 オ以上によれば,本件処分には事実誤認があるから違法である旨の原告の主張は,理由がない。 ( )本件処分には処分手続上の違法がある旨の原告の主張につい れを信用することができるというべきである。 オ以上によれば,本件処分には事実誤認があるから違法である旨の原告の主張は,理由がない。 ( )本件処分には処分手続上の違法がある旨の原告の主張について ア代理人を出席させなかったことが違法である旨の主張について,「,,(ア)証拠(乙)によれば審査規程条項は委員会は必要があると認めるときは 審査を受ける者又はその代理人の出頭を求めて調査を行なうことができる」と規定して。 いると認められるが,その規定ぶりや同規程条の表題が「(委員会の設置及び権限)」と されていることに照らせば,同条項は審査評議会委員会の権限を定めた規定と解するの が相当であり,審査対象者に対し,審査評議会又は審査評議会委員会において,代理人を同席させる権利を保障する規定と解することはできない。また,審査規程には,他に審査対象者に代理人を同席させる権利を保障する規定も存しない。 したがって,審査評議会委員会が,審査対象者の代理人の出頭を認めるか否かは,専ら同委員会の判断にゆだねられており,同委員会が代理人の出席を認めないという取扱いをしたところで,審査規程条項に反するということにはならない。 よって,原告が,手続上の違法事由を根拠づける規定として審査規程条項を掲げ ること自体が,そもそも誤りであるといわざるを得ない。 (イ)証拠(乙)によれば,文学研究科事件において,審査対象者が審査事由説明書の 交付を受けた際,同審査対象者から弁護士の出席に関する申出があったため「参考人」,としてならば同行させ意見聴取をすることができる旨説明したところ,同審査対象者は,審査評議会における陳述の日に参考人として弁護士を同行したことから,審査評議会も弁,,護士から意見を聴取 人」,としてならば同行させ意見聴取をすることができる旨説明したところ,同審査対象者は,審査評議会における陳述の日に参考人として弁護士を同行したことから,審査評議会も弁,,護士から意見を聴取することが合理的であると認め教育公務員特例法条項に基づき 意見聴取を行ったと認めることができる。他方,証拠(乙,)によれば,原告が審査 事由説明書の交付を受けた際,弁護士を代理人に選任している旨の説明や弁護士を同席させたい旨の申出も一切しなかったし,また,陳述請求書を提出した際及び陳述通知書の交付を受けた際にも,代理人たる弁護士の同席を申し出たことはなかったと認められる。 これらの事実に照らせば,審査評議会又は審査評議会委員会が,原告につき,代理人の出席を認めないという取扱いをしたからといって,文学研究科事件との比較において不平等な取扱いをしたとは到底認められない。 (ウ)以上によれば,審査評議会委員会や審査評議会に代理人の出席を認めなかったこと- 24 -が違法である旨の原告の主張は理由がない。 イ原告が請求した参考人から事情聴取をしなかったことが違法である旨の主張について(ア)証拠(乙,)によれば,原告が平成年月日付けの陳述請求書をα大学 総務部人事課長室に持参した際,同陳述請求書の「参考人の要否」欄にJ,K及びL〈〉の人につき参考人として聴取してほしい旨の記載があったため,α大学総務部人事課職 ,,,,員であるUが原告に対し陳述当日に参考人を同行するか否か確認したところ原告は「参考人を同行しないけれども,参考人からは書面を出してもらう」旨の回答をしたと。 認められる。 ,,,,,また証拠(乙)によればα大学評議会は原告の上記陳述請求書を受けて 「参考人を同行しないけれども,参考人からは書面を出してもらう」旨の回答をしたと。 認められる。 ,,,,,また証拠(乙)によればα大学評議会は原告の上記陳述請求書を受けて 平成年月日,原告に対し陳述通知書を交付したと認められるところ,同通知書の 「(通知事項)」欄には「.陳述の機会は,回限りとし,参考人の陳述及び質疑応答の,3 時間を含めて時間以内とする。.陳述は,平成年月日(火)とし,(略)陳述書 は,同日までに提出すること」という記載が「(教示)」欄には「.通知事項のに。 ,,1 定める日時に正当な理由なく出頭せず,又は出頭しても陳述をしない場合及び同日までに陳述書を提出しない場合には,陳述の請求を取り下げたものとみなす」との記載がある。 ことから,原告は,参考人の聴取を希望する場合,陳述の日に参考人を同行するか,陳述の日までに参考人の陳述書を提出する機会があることを認識することができたものと推認することができる。 しかしながら,証拠(乙)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,参考人の陳述書 を提出しなかったし,また,陳述の日である平成年月日に,参考人を同行しなか ったと認めることができる。 このように,原告は,陳述の日に参考人を同行するか,陳述の日までに参考人の陳述書を提出する機会があることを認識し得たにもかかわらず,自ら参考人の陳述書の提出又は参考人の同行をしなかったものであって,原告が参考人からの聴取を請求したにもかかわらず,審査評議会が参考人の聴取をしなかったとする原告の主張は,採用することができない。 (イ)また,原告は,審査評議会がAの請求に基づき参考人聴取をしていることと比較して,不平等な取扱いである旨主張するが 評議会が参考人の聴取をしなかったとする原告の主張は,採用することができない。 (イ)また,原告は,審査評議会がAの請求に基づき参考人聴取をしていることと比較して,不平等な取扱いである旨主張するが,審査評議会がAの請求に基づき参考人の聴取をしたと認めるに足りる証拠はない。 (ウ)したがって,審査評議会の不公正な取扱いが国家公務員法条項に違反する 旨の原告の主張は理由がない。 ウ本件処分には審理不尽の違法がある旨の主張について(ア)証拠(乙,証人V,同W)によれば「α大学におけるセクシュアル・ハラスメ ,ントの防止・対策等に関する規程」条項によって,本件専門委員会は「セクシュア ,」「」ル・ハラスメントに起因する苦情の申立てに係る事実関係の調査を専門的に検討する旨規定されており,セクシュアル・ハラスメントに起因する苦情の申立てに関する事実関係について調査する権限及び職責を有していたものであり「α大学セクシュアル・ハラ,スメントの防止・対策等に関するガイドライン」において,①本件専門委員会が,事実関係に関する調査結果をセクシュアル・ハラスメント防止・対策委員会に報告し,②報告を受けたセクシュアル・ハラスメント防止・対策委員会が,審議の上,その結果をα大学総- 25 -長に報告し,③α大学総長は,セクシュアル・ハラスメント防止・対策委員会の報告に基づいて,適切な是正措置をとったり,加害者に対する処分の検討が必要であると考える場合には,その手続の開始を適切な学内機関に対し要請するというセクシュアル・ハラスメントに起因する苦情の申立てに対応するための体制が構築されていたと認められる。 このようなセクシュアル・ハラスメントに起因する苦情の申立てに対応するための体制に照らせば,セクシュアル・ハラスメントに起因 トに起因する苦情の申立てに対応するための体制が構築されていたと認められる。 このようなセクシュアル・ハラスメントに起因する苦情の申立てに対応するための体制に照らせば,セクシュアル・ハラスメントに起因する苦情の申立てについての事実関係の調査は,専ら本件専門委員会にゆだねられていたというべきであり,また,本件処分に至る判断過程において必ずしも直接主義が要請されているとも解されないことから,本件処分の手続自体が直接主義の精神に反する旨の原告の主張は,失当である。 また,本件専門委員会の委員らが,当初からAの主張する事実が真実であるとの先入観を持って,ずさんな調査をしたと認めるに足りる的確な証拠もない。 (イ)したがって,本件処分には,審理不尽の違法があり,憲法条及び条の趣旨 に反し,国家公務員法条項に反する旨の原告の主張は理由がない。 エ本件処分は,処分理由の記載に不備があり違法である旨の主張について(ア)国家公務員法条項は「職員に対し,その意に反して,降給し,降任し,休 ,職し,免職し,その他これに対しいちじるしく不利益な処分を行い,又は懲戒処分を行わうとするときは,その処分を行う者は,その職員に対し,その処分の際,処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない」と規定しているところ,懲戒処分が公務員と。 しての身分の喪失を含む重大な不利益処分であることに照らせば,処分説明書には,少なくとも処分の根拠となる法条及びこれに該当する事実(非違行為)の記載を要することはいうまでもない。そして,非違行為は,行為主体(被処分者),行為の時期,態様及び方法等を記載して明示されるべきであり,その記載の程度は,できる限り非違行為の存在したことを客観的に保障するに足りるものであって,懲戒権者の選択した処分の種類及び 体(被処分者),行為の時期,態様及び方法等を記載して明示されるべきであり,その記載の程度は,できる限り非違行為の存在したことを客観的に保障するに足りるものであって,懲戒権者の選択した処分の種類及び程度を合理的に理由付けるものであれば足りると解するのが相当である。 (イ)前記争いのない事実等( )のとおり,本件処分の処分説明書(甲の)において ,,「,,はホテルニッコーでの出来事に関して①平成年月上旬同人(前記のとおり 以下原告と読み替える。)とAさんは,それぞれ米国で開催された別の学会に参加した。 その帰途,原告とAさんは,サンフランシスコで合流して,I社のロボット外科技術を見学し,同年月日,同市内のホテルニッコーに宿泊した。原告とAさんは,夕食後, 同ホテル内で飲酒し,原告は,Aさんを抱き,ダンスをし,キスをした。原告の行為は,Aさんの意に反したものであり,Aさんに不快感を与えた」と記載されているところ,。 その記載内容に照らせば,非違行為の存在したことを客観的に保障するに足りるものであって,懲戒権者であるα大学総長が選択した処分の種類及び程度を合理的に理由付ける程度の記載であると認めることができる。 ,,,,,,原告は飲酒抱擁ダンスキスという行為がなされた場所各行為に至る経緯行為の状況などの客観的事実の摘示がないと,それがAの意に反したものか否か,Aに不快感を与えたか否かの判断はできない旨主張するが,上記のとおり,処分説明書の記載の程度は,非違行為の存在したことを客観的に保障するに足りるものであって,懲戒権者の選択した処分の種類及び程度を合理的に理由付けるもので足りるのであり,細部にわたる認定事実や事実認定の経過を記載することまで要求されているものではなく,原告 に保障するに足りるものであって,懲戒権者の選択した処分の種類及び程度を合理的に理由付けるもので足りるのであり,細部にわたる認定事実や事実認定の経過を記載することまで要求されているものではなく,原告の主張- 26 -は理由がない。 (ウ)したがって,α大学総長のした事実認定は処分対象事実として不備があり,国家公務員法条項に反する旨の原告の主張は採用することができない。 オ処分理由として母体保護への配慮違反を挙げたことが違法である旨の主張について(ア)証拠(乙,)によれば,α大学評議会が平成年月日原告に対し交付し た審査事由説明書には「別紙記載の事由」として「○平成年月中旬,Aが切迫,, 早産の診断を受けた後,当人(原告を指す。)は,Aが外部の病院の当直勤務の交替措置を願い出た際,それを聞き入れず母胎の保護(安全)への配慮を欠いた」との記載があると。 認められる。しかし,前記争いのない事実等及び証拠(乙)によれば,上記審査事由説明 書は,α大学大学院医学研究科教授会の申立てを受けたα大学評議会が,教育公務員特例法の規定に基づく審査を行うことを決定し,原告に陳述の機会を与えるために,原告に交付されたものであり,α大学評議会の事実認定の結果を記載したものではないと認めることができる。 (イ)証拠(乙)によれば,審査評議会委員会は,審査評議会委員会調査報告書におい ,「」,「」て審査評議会委員会の審理結果の項とは別に審査評議会委員会の補足説明 の項を設け,その中で「本件事案は,具体的なセクシュアル・ハラスメント行為及びそれに起因する指導教官と大学院生との間の信頼関係のそう失が,妊娠中のAさんの大学外の関連病院への勤務や母体の安全確保への適切な対応を欠い 中で「本件事案は,具体的なセクシュアル・ハラスメント行為及びそれに起因する指導教官と大学院生との間の信頼関係のそう失が,妊娠中のAさんの大学外の関連病院への勤務や母体の安全確保への適切な対応を欠いたことから生じている」との。 記載をしたと認められる。他方,審査評議会委員会は,上記「審査評議会委員会の補 足説明」の項において「本件事案の妊娠中の女性の健康及び安全保持には同人(原告を,指す。以下同様。)の配慮義務の欠けるところもあるが,同人の職務不履行として問責することはできないと判断した」との記載をし,母体に対する配慮に関しては,原告を問。 責できないことを明らかにしており,更に「しかし,本件事案の申立の大きな理由は,,妊娠中のAさんの安全確保及び研究環境の保全に対する適切な対応が組織的にも,また個人的にもなされず,Aさんが深刻な精神的かつ肉体的な苦痛を被ったことにある。したがって,医学研究科及び医学部附属病院において,母体保護や関連病院への医師(大学院生),。」,派遣に関する規則の整備とそれを実効あるものにする制度の確立が緊急の課題である「本委員会は,以上のような母体保護に関わる制度整備の重要性に鑑み,ここに補足説明を記した」と記載し,補足説明をした理由が母体保護の制度整備の重要性を指摘するこ。 とにある旨を明らかにしている。 上記のような審査評議会委員会調査報告書の体裁及び記載内容に照らせば,審査評議会委員会は,原告のAに対する言動を問題視する趣旨ではなく,母体保護に関するα大学医学研究科及び医学部附属病院の体制・制度上の問題点及び課題について指摘する趣旨で同調査報告書に補足説明を記載したものと認められる。 (ウ)さらに証拠(乙)によれば本件審査決定書にはα大学評議会が認定した事,,,「 実」の中に,原告 課題について指摘する趣旨で同調査報告書に補足説明を記載したものと認められる。 (ウ)さらに証拠(乙)によれば本件審査決定書にはα大学評議会が認定した事,,,「 実」の中に,原告においてAに対する母体保護への配慮を欠いた旨の記載は存しないと認められる。また,本件審査決定書の「事実」には「.同人(原告を指す。)とAさんと,4の信頼関係が失われたことにより,Aさんは,初期の研究課題である移植免疫に関する研究の遂行が困難となり,平成年月中旬,研究課題を変更して,移植研究室から他の 研究室(臨床検査部門中央検査室)へ一時的に移った。しかし,Aさんは,移植免疫研究の- 27 -継続を望んでおり,このような研究環境の劣化によってAさんは,学習権が侵害され,精神的被害及び研究上の被害を受けた」という記載があること自体は認められるものの,。 前記(イ)で説示した補足説明の趣旨に照らせば,かかる記載をもって,α大学評議会が,審査評議会委員会の補足説明を実質的に踏まえた事実認定をしたと認めることはできない。 (エ)よって,原告においてAに対する母体保護の配慮を欠いたことが本件処分の実質的な処分事由となっているとは到底認めることができず,これを理由として本件処分が違法であるとする原告の主張は理由がない。 カ以上によれば,本件処分には処分手続上の違法がある旨の原告の主張も理由がない。 結論 よって,本件処分は適法であると認められ,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第部 裁判長裁判官橋本昌純裁判官上村考由裁判官鈴木基之 別紙,,,国家公務員法第条第項第号第号及び第号の規定により懲戒処分として 戒告する。 別 裁判長 裁判官橋本昌純 裁判官上村考由 裁判官鈴木基之 主文 別紙により、国家公務員法第条第項第号第号及び第号の規定により懲戒処分として戒告する。 別紙掲載省略
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