平成24(ワ)32409等 損害賠償本訴,著作権確認等反訴請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年8月29日 東京地方裁判所
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判決文本文13,878 文字)

言渡平成25年8月29日交付平成25年8月29日裁判所書記官 - 1 -平成24年(ワ)第32409号,平成25年(ワ)第5163号損害賠償本訴,著作権確認等反訴請求事件口頭弁論の終結の日平成25年7月18日判決東京都日野市<以下略>原告・反訴被告 A1(以下「原告」という。)東京都港区<以下略>被告・反訴原告株式会社ポニーキャニオン(以下「被告」という。)同訴訟代理人弁護士内藤篤星知矩主文 1 被告は,原告に対し,23万5935円及びこれに対する平成24年3月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 別紙映像動画目録(1)及び(2)の素材番号欄記載の各映像動画について,被告が著作権を有することを確認する。 3 原告は,被告に対し,別紙映像動画目録(1)及び(2)の素材番号欄記載の各映像動画を収録した映像素材(原版)を引き渡せ。 4 原告は,被告に対し,153万6465円及びこれに対- 2 -する平成25年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の損害賠償請求を棄却し,原告のその余の請求に係る訴えを却下する。 6 被告のその余の請求を棄却する。 7 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,これを10分し,その9を原告の負担 の余の損害賠償請求を棄却し,原告のその余の請求に係る訴えを却下する。 6 被告のその余の請求を棄却する。 7 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 8 この判決は,第1項及び第4項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由第1 請求 1 本訴(1) 被告は,その販売する「virtualtrip 花 Flowers 四季の山野草と高山植物」とのタイトルのDVD及びBlu-rayから風景の映像動画(「春」,「夏」,「秋」,「冬」及び「高山植物」との字幕が付されたものを除く。)を全て即刻削除せよ。(2) 被告は,原告に対し,225万円及びこれに対する平成24年3月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴(1) 主文第2,第3項と同旨(2) 原告は,被告に対し,153万6465円及びこれに対する平成24年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。- 3 -第2 事案の概要本件は,本訴において,原告が,被告に対し,被告がその販売するDVD商品等に原告に無断で原告の撮影した風景の映像動画を複製して頒布したとして,著作権法112条に基づき,DVD商品等からの映像の削除を求めるとともに,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金225万円及びこれに対する平成24年3月21日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,反訴において,被告が,原告に対し,原告が契約の条項に違反したことを理由に,原告との間の製作委嘱契約を解除したとして,上記契約に基づき,原告の撮影した山野草の映像動画について,被 害金の支払を求め,反訴において,被告が,原告に対し,原告が契約の条項に違反したことを理由に,原告との間の製作委嘱契約を解除したとして,上記契約に基づき,原告の撮影した山野草の映像動画について,被告が著作権を有することの確認,これらを収録した映像素材(原版)の引渡し並びに原告に対する既払金合計153万6465円及びこれに対する同年6月12日(解除の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)(1) 原告は,フリーのカメラマンであり,被告は,音楽,教養,文芸,スポーツ,映画,娯楽等の各種パッケージソフト(CD,DVD等)並びにデジタルコンテンツの企画,製作及び販売を業とする株式会社である。(2) 原告と被告は,平成21年11月1日付で,原告が被告の委嘱に基づき「VirtualTrip 山野草(仮題)」に使用する録音録画物の製作業務を行い,被告が原告に一時金150万円及び印税を支払うことを内容とする契約(以下「本件契約」という。)を締結した。これにつき作成された製作委嘱契約書- 4 -(甲2,乙8)は,被告を甲,原告を乙とし,別紙目録を「【原版】VirtualTrip山野草(仮題)に使用する録音録画物撮影期間:2009 年11 月~2010 年9月(予定) 備考:①カラー・ステレオ ②春夏秋冬,各々の季節の山野草を収録」として,次のような記載がある。ア 1条(目的)「乙は,甲に対し,別紙目録記載の録音録画物(複製,頒布,上映,放送,公衆送信等に適する未編集の録音録画物,以下,原版という)の製作業務(撮影業務(音声の収録を含む)をいう,また,必要な関連業 「乙は,甲に対し,別紙目録記載の録音録画物(複製,頒布,上映,放送,公衆送信等に適する未編集の録音録画物,以下,原版という)の製作業務(撮影業務(音声の収録を含む)をいう,また,必要な関連業務を含む,以下,本件業務という)を甲の委嘱に基づき行うことを承諾し,甲はこれらに関する対価を乙に支払うことを約諾した。」(1項)「前項に基づき製作された原版(全ての収録素材を含む)及び原版を製作する過程で生じた中間成果物(以下,併せて,本件成果物という)に関する所有権並びに著作権法上の一切の権利(著作隣接権,並びに著作権法第27条,28条の権利を含む),産業財産権及びその他一切の権利は甲に帰属するものとする。」(2項)イ 2条(対価)「甲は,本契約の一切の対価として下記の金員(一時金及び印税,以下,本対価という)を支払うものとする。尚,本対価には,乙に対する報酬金の他,本件成果物の撮影費(撮影機材費,撮影素材費,交通費等の経費等を含む),本件成果物製作に関与した者(乙以外のムービーカメラマン等を含む)に対する一切の報酬を含むものとする。(1)一時金として,金1,500,000円(源泉税込,消費税別)を- 5 -以下の通り,現金振込をもって乙の指定する銀行口座宛に支払うものとする。【支払い】平成21年12月末日迄に:金750,000円(消費税別)甲の原版受領後10営業日以内に:金750,000円(消費税別)(省略)(2) (省略)」ウ 9条(解約)「前条に定める原版の検収が完了する前において,甲,乙のいずれかが次に定める各項のいずれかに該当する事由が生じた場合は,当該行為者の相手方は相当の催 (省略)」ウ 9条(解約)「前条に定める原版の検収が完了する前において,甲,乙のいずれかが次に定める各項のいずれかに該当する事由が生じた場合は,当該行為者の相手方は相当の催告期間を定めて是正を求めた後,当該行為者がその催告期間内に解約事由を是正することができないときは,本契約を解約することができるものとする。(省略)(1)ないし(9) (省略)(10)その他,甲,乙のいずれかが本契約に定める各条項のいずれかに違反した場合。」エ 10条(解約の効果)「甲が,前条の解約により本契約を終了させたときは,乙はそれまでに甲より受領した金員を甲に返還しなければならない。」(1項)「甲は,本契約を解約した場合においても,本契約によって取得した著作権,及び乙がそれまで取得した本件成果物の素材の所有権はすべて甲に独占的に帰属するものとする。」(2項)- 6 -(甲2,乙8)(3) 被告は,原告に対し,本件契約に関して合計153万6465円を支払った。平成21年12月28日 71万2500円平成22年 6月21日 45万2381円7月15日 22万6191円平成23年11月10日 14万5393円(乙17の1ないし4)(4) 原告は,ソニーPCL株式会社が運営する「高画質ビデオ素材ライブラリー」に別紙映像動画目録(1)の素材番号欄記載の各映像動画(以下「本件映像動画1」という。)を提供して,上記ライブラリーにおいてこれらを販売し,また,株式会社アマナイメージズが運営する動画素材販売ウェブサイトにおいて,同目録(2)の素材番号欄記載の各映像動画(以下「本件映像動画2」と 。)を提供して,上記ライブラリーにおいてこれらを販売し,また,株式会社アマナイメージズが運営する動画素材販売ウェブサイトにおいて,同目録(2)の素材番号欄記載の各映像動画(以下「本件映像動画2」という。)を販売した。 (5) 被告は,平成24年3月21日,原告の撮影した映像動画を収録した「virtualtrip 花 Flowers 四季の山野草と高山植物」とのタイトルのDVD及びBlu-ray(以下「本件作品」という。)を発売した。本件作品は,「春」,「夏」,「高山植物」,「秋」及び「冬」の五つのブロックからなり,それぞれのブロックについて,最初に風景の映像動画1点(「春」,「夏」,「秋」,及び「冬」との字幕が付されたもの並びに「高山植物」との字幕が付された別紙映像動画目録(2)の番号17の納品ファイル名欄記載の「2010_08_06_IMG. 2543 ハクサンイチゲ」)を収録し,これに続いて山野草の映像動画を収録し- 7 -たほか,山野草の映像動画の間に風景の映像動画(以下「本件風景映像動画」という。)を収録している。本件作品に収録された山野草の映像動画等は,点数で448点,尺数で58分4秒であり,本件風景映像動画は,点数で52点,尺数で9分8秒である。甲1,7,乙12の14の2,18(6) 被告は,平成24年5月23日に被告に到達した書面(乙19の1)により,被告に対し,本件映像動画1が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たることを理由に,10日以内に,ソニーPCL株式会社が運営する「高画質ビデオ素材ライブラリー」への掲載と販売を中止して,原告に引き渡すよう催告した。(乙19の1,2)(7) 被告は,平成24年6月12日に被告に到達した書面(乙15)により,被告に対し,本 素材ライブラリー」への掲載と販売を中止して,原告に引き渡すよう催告した。(乙19の1,2)(7) 被告は,平成24年6月12日に被告に到達した書面(乙15)により,被告に対し,本件契約を解除する旨の意思表示をした。(乙15,16) 2 争点争点は,(1) 本訴について,①原告が本件作品に本件風景映像動画を複製して頒布することを許諾したか否か,②原告の受けた損害の額であり,(2) 反訴について,①本件映像動画1及び2が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たるか否か,②被告のした解除が効力を生じたか否かである。 3 争点についての当事者の主張(1) 本訴ア原告が本件作品に本件風景映像動画を複製して頒布することを許諾した- 8 -か否かについて(ア) 被告被告担当者は,原告に対し,本件作品は,「春」,「夏」,「秋」,「冬」及び「高山植物」の五つのブロックからなる予定で,ブロックの間やブロック中の山野草の映像動画の間に区切りを入れる必要があり,いわゆる「扉」として何点かの風景の映像動画を収録したいと話をし,原告はこれを承諾して本件契約を締結した。このことは,被告における社内決裁用の平成21年12月8日作成の稟議書(乙2)に,「総点数約400種類に及び植物を春夏秋冬毎に収録。日本の四季の風景とともに映し出すリラクセーション目的の映像コンテンツ。」と記載されていることからも明らかである。そして,原告は,被告担当者が平成22年9月30日に電子メールでした風景の映像動画の納品の催促やその後に電話でした風景の映像動画が春夏秋冬各1点では足りないとの連絡に対し,風景の映像動画が契約外であるとの言動をしていないし,被告担当者に対し,サンプルととも でした風景の映像動画の納品の催促やその後に電話でした風景の映像動画が春夏秋冬各1点では足りないとの連絡に対し,風景の映像動画が契約外であるとの言動をしていないし,被告担当者に対し,サンプルとともに「『山野草』の季節の扉候補に風景の中から抜粋して頂いてもいいかと思います」との電子メールを送付しているのである。したがって,原告は,本件作品に本件風景映像動画を複製して頒布することを許諾した。(イ) 原告原告は,平成22年2月10日の電子メールで被告担当者に報酬の支払方法の変更を求めたところ,その後,被告担当者から扉向けに5点の- 9 -風景の映像動画の納品を依頼された。原告が実景のみの風景の映像動画の納品を依頼されたのは,後にも先にもこの時だけである。被告の稟議書(乙2)には,風景を織り交ぜるとの趣旨の記述があるが,これは被告の内部資料であって,原告の知るところではなく,原告にはその趣旨が一切伝えられていない。また,被告担当者の平成22年9月30日の電子メールは,扉向けの5点の風景の映像動画の納品の催促であり,原告の「『山野草』の季節の扉候補に風景の中から抜粋して頂いてもいいかと思います」との電子メールは,扉向けの5点に対する候補追加の自発的提案にすぎない。したがって,原告は,本件作品に本件風景映像動画を複製して頒布することを許諾していない。イ原告の受けた損害の額について(ア) 原告原告は,本件風景映像動画の著作権行使の適正使用料金を受けることができたところ,主な映像ライブラリーにおいて,著作権フリーのHD動画の一般市場相場は単価9000円ないし4万8000円であり,無許諾など不正使用の場合には,違約条項として,通常料金の を受けることができたところ,主な映像ライブラリーにおいて,著作権フリーのHD動画の一般市場相場は単価9000円ないし4万8000円であり,無許諾など不正使用の場合には,違約条項として,通常料金の5倍ないし10倍とするか,1点当たり10万円を追加するのが慣例であるから,本件風景映像動画50点の最下限の追加の使用料金は,次のとおり,225万円になり,著作権法114条3項に従い,これが原告が受けた損害の額となる。 円 ×  ×  点 =  円- 10 -(イ) 被告本件の事実関係において,主な映像ライブラリーにおける使用料金相当額を基準とする損害額の算定はあり得ない。本件作品については,明確な利用料金が規定されているから,損害額は,本件契約における対価の規定を基に算定するのが相当である。本件作品に収録した映像動画は,総点数が500点,総尺数が67分12秒であり,そのうちの本件風景映像動画は,点数が52点,尺数が9分8秒であるところ,本件契約の2条によれば,本件風景映像動画以外の映像動画の著作権譲渡の対価を含む一切の対価は150万円であるから,本件風景映像動画の対価は,多くみても,次のとおり,17万4107円又は23万5936円にとどまる。(点数) 1,500,000 円 ×( 52 点/448 点 )= 174,107 円(尺数) 1,500,000 円 ×( 9 分8 秒/58 分4 秒 )= 235,936 円(2) 反訴ア本件映像動画1及び2が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たるか否かについて(ア) 被告原告は,本件契約に基づき,被告に対し別紙映像動画目録(1 2) 反訴ア本件映像動画1及び2が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たるか否かについて(ア) 被告原告は,本件契約に基づき,被告に対し別紙映像動画目録(1)及び(2)の納品ファイル名欄記載の各映像動画(以下「本件納品映像動画」という。)を納品したが,本件映像動画1及び2は,本件納品映像動画の撮影と同一の機会に撮影の角度や画角を変えて撮影したものであるから,本件契約の1条2項にいう「原版」か,そうでなくても「原版を製作す- 11 -る過程で生じた中間成果物」に当たる。(イ) 原告本件映像動画1及び2は,本件納品映像動画と同一の機会に撮影の角度や画角を変えて撮影したものであるが,本件契約は,原告に全ての裁量が委ねられているところ,原告は,長年にわたってキャリアを重ねた自然写真家で,花や風景の撮影を日常業務としているのであり,本件契約の業務もその日常の中で遂行されたものであるから,どれが個人的な創作活動としての撮影で,どれが本件契約のための制作活動としての撮影であるかが明確でなく,どの映像動画が本件契約の成果物かを特定することは困難であって,本件映像動画1及び2には,本件契約の1条2項にいう「原版」や「原版を製作する過程で生じた中間成果物」という概念が当てはまらない。イ被告のした解除が効力を生じたか否かについて(ア) 被告原告は,本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たる本件映像動画1について,自らが著作権者であると主張して,これを販売するとともに被告に対する引渡しを拒んだのであり,これは,本件契約の9条10号にいう「本契約に定める各条項のいずれかに違反した場合」に当たる。(イ) 原告本件契約の17条 するとともに被告に対する引渡しを拒んだのであり,これは,本件契約の9条10号にいう「本契約に定める各条項のいずれかに違反した場合」に当たる。(イ) 原告本件契約の17条には,「本契約書に定めなき事項或いは本契約書各条項の解釈に疑義の生じた場合には,甲乙は信義誠実の原則に基づき協議の上解決するものとする。」とあるから,本件映像動画1が本件契約の- 12 -1条2項にいう本件成果物に当たるか否かについて疑義があるのに,一方的な解釈をして,協議をすることなく解除するのは間違いである。原告は,平成24年7月19日,争いを避けるために,ソニーPCL株式会社が運営する「高画質ビデオ素材ライブラリー」から本件映像動画1を削除したし,その他の山野草の映像動画も発表先から撤去しているのであり,また,原告の撮影した映像動画が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たることが確定したときには,これを原告に引き渡す用意がある。第3 当裁判所の判断 1 本訴について(1) 原告は,著作権法112条2項に基づき,侵害の停止又は予防に必要な措置として,本件作品からの本件風景映像動画の削除を請求する。ところで,同項によれば,この請求は,独立してすることはできず,侵害の停止又は予防の請求に附帯してしなければならないが,原告は,複製,頒布の停止又は予防を請求していない。そうであるから,独立してした上記請求に係る訴えは,不適法である。 (2) 原告が本件作品に本件風景映像動画を複製して頒布することを許諾したか否かについて,判断する。ア被告は,被告担当者が原告に対し,何点かの風景の映像動画を収録したいと話をし,原告はこれを承諾して本件契約を締結したと主張し,甲8(被告担当者の原告宛の平成24年 かについて,判断する。ア被告は,被告担当者が原告に対し,何点かの風景の映像動画を収録したいと話をし,原告はこれを承諾して本件契約を締結したと主張し,甲8(被告担当者の原告宛の平成24年5月22日付電子メール)及び乙1(被告担当者の陳述書)には,これに沿うような内容の記載がある。- 13 -イしかしながら,被告担当者は,甲8では,「春・夏・秋・冬・高山植物と章を分けて構成し,その各季節を象徴させる所謂『扉』として風景の映像を使用する旨のお話を差し上げました。しかしながら,風景の映像を,その所謂『扉』として4点だけ使用するようなお話は一切しておりません」としているのに対し,乙1では,「それぞれのブロックの間や,あるいは同じブロックの中でも映像と映像との間にちょっとした区切りをつける際に,いわゆる『扉』として,風景映像として何点か入れたいという話をしました」としているのであって,「扉」の語を,原告による本件支払督促申立ての前に作成された前者ではブロック(章)の区切りとし,上記申立ての後に作成された後者ではそのほかに映像と映像との間のちょっとした区切りをも含めているのであって,異なる意味で使用している。そして,証拠(乙2)によれば,被告における社内決裁用の平成21年12月8日作成の「『VirtualTrip 山野草(仮題)』ビデオグラム原版製作の件」との稟議書(乙2)には,備考として,「総点数約400種類に及び植物を春夏秋冬毎に収録。日本の四季の風景とともに映し出すリラクセーション目的の映像コンテンツ。」と記載されていることが認められるから,被告は,本件作品に風景の映像動画をも収録することを予定していたことが窺われるが,製作委嘱契約書(甲2,乙8)は,原告が製作する録音録画物を「【原版】Virtu 記載されていることが認められるから,被告は,本件作品に風景の映像動画をも収録することを予定していたことが窺われるが,製作委嘱契約書(甲2,乙8)は,原告が製作する録音録画物を「【原版】VirtualTrip 山野草(仮題)に使用する録音録画物撮影期間:2009 年11 月~2010 年9 月(予定) 備考:①カラー・ステレオ②春夏秋冬,各々の季節の山野草を収録」としているだけで,風景の映像動画を含むような記載は格別していない。 - 14 -また,前記前提事実に,証拠(甲4①,8,乙3ないし5,17の1ないし4)及び弁論の全趣旨を総合すれば,(ア) 原告は,被告担当者に対し,かねてから本件作品とは別の企画を提案しており,その参考作品として,平成22年2月10日の電子メール(乙3)に「奥入瀬渓流の冬景色」,同月15日の電子メール(乙4)に奥入瀬以外の「冬景色」をそれぞれ添付して送付し,さらに,同年3月1日の電子メール(乙5)で,「奥入瀬の四季」,「渓流(水景)」,「四季の自然風景」のテーマを提案するとともにその参考作品を添付して送付した,(イ) 原告は,平成22年2月10日の電子メール(乙3)で,被告が原版を受領した後に支払われる一時金残金75万円を前倒しで支払ってもらうよう被告担当者に依頼し,これを受けて,被告は,同年6月21日に45万2381円,同年7月15日に22万6191円を原告に支払った,(ウ) 原告は,その際,被告担当者から,本件作品の各々の季節を象徴する「扉」として使用するために,4点の風景の映像動画の納品を求められてこれを承諾し,被告担当者の同年9月30日の電子メールによる催促を受けて,風景の映像動画4点を納品した,(エ) 原告は,同年10月18日の電子メール(甲4①)で,提案している別の企画に を求められてこれを承諾し,被告担当者の同年9月30日の電子メールによる催促を受けて,風景の映像動画4点を納品した,(エ) 原告は,同年10月18日の電子メール(甲4①)で,提案している別の企画について四季一通りそろったとして,「『山野草』の季節の扉候補に風景の中から抜粋して頂いてもいいかと思います」と付記して,参考作品を添付して送付した,以上の事実が認められる。これらの事実によれば,原告は,「扉」について,各々の季節を意味するものと理解し,これに4点の風景の映像動画を使用することを承諾したものということができる。- 15 -ウ上記イの事情に鑑みれば,被告の上記主張に沿う甲8及び乙1はたやすく採用することができず,他に原告が各々の季節の「扉」に使用するものを除き風景の映像動画を収録することを承諾して本件契約を締結したことを認めるに足りる証拠はない。なお,甲8には,「サンプルとして送付いただいたDVD-Rに含まれる映像素材も,『VirtualTrip 山野草』に使用したい旨をA1様にご相談したところ,A1様からは『どうぞ,お任せします』と快諾をいただきました」との記載があるが,乙1にはこれに沿う記載がなく,また,上記イのとおり,原告は,各々の季節の「扉」に4点の風景の映像動画を収録することを承諾していたにとどまるから,原告がこれを超えて風景の映像動画を使用することを承諾するとは考え難いのであって,甲8の上記部分をもって,原告が「扉」に使用するものを除き風景の映像動画を収録することを承諾したと認めることもできない。エそうすると,被告は,本件作品に本件風景映像動画を収録することによって,原告の本件風景映像動画に対する著作権(複製権及び頒布権)を侵害するものと認められる。 (3) そこで,原告の受けた損害 そうすると,被告は,本件作品に本件風景映像動画を収録することによって,原告の本件風景映像動画に対する著作権(複製権及び頒布権)を侵害するものと認められる。 (3) そこで,原告の受けた損害についてみる。ア原告は,本件風景映像動画の著作権行使の適正使用料金を受けることができたとして,主な映像ライブラリーにおける著作権フリーのHD動画の一般市場相場にその4倍の違約料金を加算した,1点当たり4万5000円の損害を受けたと主張する。本件契約は,原告が,被告に対し製作した録音録画物の著作権等を譲渡してその自由な利用を許諾し,被告から対価として150万円の支払を受- 16 -けるというものである。本件作品には,原告が製作した山野草の映像動画が448点収録されているから,原告は,山野草の映像動画1点に対し3348円(円未満切捨て)の支払を受けたものということができる。そして,原告が本件作品に本件風景映像動画を収録することを許諾する場合もこれと同様の条件によるものと考えられる。そうであれば,原告が本件作品に本件風景映像動画を収録することを許諾する場合に,主な映像ライブラリーにおける著作権フリーのHD動画の一般市場相場の使用料金を受けることができたということはできず,さらにその4倍の違約料金を加算した額の使用料金を受けることができたということもできない。イ前記アに判示したように,原告は,本件作品に本件風景映像動画を収録することを許諾する場合に,本件契約と同様の条件ですると考えられる。 そして,これを点数でみるとすれば,原告は,1点当たり3348円として52点の合計17万4096円の支払を受けることになるが,それぞれの映像動画には長短があることに鑑みると,尺数によって算定するのが相当であり,これによれば, れば,原告は,1点当たり3348円として52点の合計17万4096円の支払を受けることになるが,それぞれの映像動画には長短があることに鑑みると,尺数によって算定するのが相当であり,これによれば,原告は,9分8秒分に相当する23万5935円(円未満切捨て)の支払を受けることができたと認められる。ウそうすると,原告は,本件風景映像動画の著作権の行使について23万5935円を受けることができたのであり,これを自己が受けた損害の額として,その賠償を請求することができる。(4) したがって,本訴については,本件風景映像動画の削除請求に係る訴えは不適法であり,損害賠償請求は23万5935円及びこれに対する不法行為の日である平成24年3月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合- 17 -による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 2 反訴について(1) 本件映像動画1及び2が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たるか否かについて判断する。ア本件映像動画1及び2は,これに対応する本件納品映像動画の撮影と同一の機会に撮影の角度や画角を変えて撮影したものであるから,本件納品映像動画と同様に,本件契約に基づいて製作された原版に当たるものと認められる(仮に本件納品映像動画のみが原版に当たるものとしても,本件映像動画1及び2はその原版を製作する過程で生じた中間成果物に当たる。)。イ原告は,花や風景の撮影を日常業務とし,本件契約の業務もその日常の中で遂行されたのであるから,どれが個人的な創作活動としての撮影で,どれが本件契約のための制作活動としての撮影であるかが明確でなく,どの映像動画が本件契約の成果物かを特定することが困難であるとして,本件映像動画1及び2は本件契約の1条2項にいう本件成 ての撮影で,どれが本件契約のための制作活動としての撮影であるかが明確でなく,どの映像動画が本件契約の成果物かを特定することが困難であるとして,本件映像動画1及び2は本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たらないと主張する。しかしながら,たとえ原告が花や風景の撮影を日常業務としているとしても,本件契約に基づく録音録画物の製作として撮影をした以上,これと同一の機会に撮影の角度や画角を変えて撮影したものは,本件契約に基づき制作した録音録画物に当たるといわなければならない(なお,原告は,原告が個人の日常的製作活動の成果である花の映像動画を本件契約に基づく作品として納品していることは事実であり,このことは原告が納品した- 18 -「夏」の一部と「秋」の大半の作品が本件契約前に撮影したものであることから明らかであるというが,仮にそうであるとしても,このことは,上記の判断を左右しない。)。原告の上記主張は,独自の見解であって,到底採用することができない。(2) そこで,被告のした解除が効力を生じたか否かについて判断する。本件映像動画1は,上記(1)に判示したように,本件契約に基づいて製作された原版であるか,又は少なくても原版を製作する過程で生じた中間成果物であるから,その著作権は,本件契約の1条2項により,被告に帰属する。 しかるに,原告は,ソニーPCL株式会社が運営する「高画質ビデオ素材ライブラリー」において本件映像動画1を販売したというのであるから,原告は本件契約の1条2項に違反したものである。そうであるから,被告のした解除は有効であり,これにより,本件契約は終了したといわなければならない。原告は,本件映像動画1が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たるか否かについて疑義があるの るから,被告のした解除は有効であり,これにより,本件契約は終了したといわなければならない。原告は,本件映像動画1が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たるか否かについて疑義があるのに,一方的な解釈をして,協議をすることなく解除するのは間違いであると主張するが,原告は,独自の見解に立って,本件映像動画1が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たることを否定するにすぎず,これをもって,本件契約上の解除権の行使が制限されることはない。原告の上記主張は,採用することができない。また,原告は,平成24年7月19日にソニーPCL株式会社が運営する「高画質ビデオ素材ライブラリー」から本件映像動画1を削除したし,原告の撮影した映像動画が本件契約の1条2項にいう本件成果物に当たることが- 19 -確定したときにはこれを原告に引き渡す用意があると主張するが,本件契約は,被告のした解除により平成24年6月24日に終了したのであるから,原告の上記主張の事実が認められたとしても,このことをもって,解除の効果が覆ることはない。原告の上記主張は,採用の限りでない。(3) 本件契約は,被告のした解除により終了したが,本件契約の10条は,原告がそれまでに被告から受領した金員を被告に返還しなければならないと規定するとともに,本件契約によって取得した著作権等については被告に独占的に帰属すると規定する。 したがって,反訴については,被告が本件映像動画1及び2の著作権を有することの確認請求及びこれらを収録した映像素材(原版)の引渡請求は理由があり,既払金返還請求は,期限の定めのない債務として請求により遅滞に陥るのであるから,153万6465円及びこれに対する平成25年5月24日付「訴えの変更申立書」の送達により原告に請求した日 理由があり,既払金返還請求は,期限の定めのない債務として請求により遅滞に陥るのであるから,153万6465円及びこれに対する平成25年5月24日付「訴えの変更申立書」の送達により原告に請求した日の翌日であることが記録上明らかな同月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 3 結論よって,本訴において,損害賠償請求は,23万5935円及びこれに対する平成24年3月21日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は失当であるからこれを棄却し,その余の請求に係る訴えは,不適法であるからこれを却下することとし,反訴において,被告が本件映像動画1及び2の著作権を有することの確認請求及びこれらを収録した映像素材(原版)の引渡請求は,いずれも理由があるか- 20 -らこれを認容し,既払金返還請求は,153万6465円及びこれに対する平成25年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は失当であるからこれを棄却し,なお,仮執行の免脱の宣言は,相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第47部裁判長裁判官高野輝久裁判官志賀勝裁判官藤田壮 申し訳ありませんが、整形するテキストが提供されていないようです。もう一度テキストを送信してください。

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