- 1 - 主文 被告人を罰金100万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、沖縄県巡査として、沖縄警察署地域課警ら用無線自動車第一係に所属し、警ら等の地域警察活動の職務に従事していたものであるが、令和4年1月27日午前1時10分頃、沖縄県沖縄市AB丁目付近所在のC十字路で発生した自動二輪車等による暴走事案対応のため、相勤者と共に警ら用自動車に乗車し、同所に臨 場中、同市AB丁目D番E号F店駐車場にい集する集団及び自動二輪車等を発見し、周囲の事情等から合理的に判断して上記暴走事案について何らかの事情を知っている者と認め、同人らに職務質問を行うため、同店駐車場に同警ら用自動車を進入させたところ、同人らが上記自動二輪車等に乗車して同店駐車場から退去したことから、上記警ら用自動車から降車し、単独で、日頃から暴走族の逃走経路として把握 していた同市AB丁目G番H号Iアパート先路上まで移動し、その頃から同日午前1時16分頃までの間、引き続き、同所において、暴走族警戒のため、右手に警棒を持って警ら中、幅員約3.3mないし3.9mの同路上を国道329号方面から被告人がちょ立する同市JK丁目方面に向かい進行してくる被害者(当時L歳)運転の第二種原動機付自転車を前方約16m先に発見し、職務質問を行うに当たり、 同車を停止させようとしたにもかかわらず、同車が停止することなく時速約25kmないし30km程度で進行してきたため、被告人の身体や同警棒が同車や被害者の身体に接触した場合には、同人に傷害を負わせる危険があったのであるから、警察官として同車及び被害者との接触を避けるべき業務上の注意義務が m程度で進行してきたため、被告人の身体や同警棒が同車や被害者の身体に接触した場合には、同人に傷害を負わせる危険があったのであるから、警察官として同車及び被害者との接触を避けるべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、漫然、同警棒を持った右手を同車で走行中の同人の前方に差し出した過失 により、同警棒を同人の右目付近に衝突させ、よって、同人に右眼失明の後遺症を- 2 - 伴う右眼球破裂、全治まで約2か月間を要する右頬骨骨折、右眼窩底骨折、右前頭葉脳挫傷等の傷害を負わせた。 なお、被害者が運転するバイクの速度につき争いがあるが、関係証拠によれば、同車は、本件衝突後も停車せず、道なりに沿って進行し、本件衝突地点から約13. 6m先の丁字路を右折して現場を離れたこと、その右折前後の速度は時速約25kmであったことが認められ、同車が本件衝突の際や右折を開始するに当たり一定程度減速した可能性が否定できないことを踏まえ、本件衝突前における同車の速度を時速約25kmないし30km程度と認定した。 (法令の適用) 罰条刑法211条前段刑種の選択罰金刑を選択労役場留置刑法18条(5000円を1日に換算)(量刑の理由)沖縄県警においては、夜間における職務質問時には、事故防止のため、夜光チョ ッキや警笛等の装備資機材を活用し、車両の進路上から一歩後退して停車の合図を送るなど遵守すべき事項が警察本部長通達等で定められている。被告人は、研修等によりこれらを熟知していたにもかからわず、パトカーを降車後、同パトカーに積載されていた上記装備資機材等を用いることなく本件現場付近で警戒活動を行い、被害者が運転するバイクを発見するや、両手を挙げて「おい、止まれ」と声を発し にもかからわず、パトカーを降車後、同パトカーに積載されていた上記装備資機材等を用いることなく本件現場付近で警戒活動を行い、被害者が運転するバイクを発見するや、両手を挙げて「おい、止まれ」と声を発し ただけでその進路上に入った上で、判示のとおりバイクで進行してくる被害者の前方に警棒を持った右手を差し出した過失により、同警棒を同人の右目付近に衝突させた。とっさの出来事とはいえ、被告人の上記過失はそれ自体がバイクの運転者に対する重大な傷害結果を生じさせる蓋然性が高い危険なものである上に、警察官に課せられた基本的な注意義務に反する重大なものである。また、そもそも被告人が 通達等で定められた装備資機材を正しく活用しないまま警戒活動にあたったことも- 3 - 本件に相当程度寄与したといえるのであり、この点も被告人に対する非難を高める事情といえる。 本件による傷害結果は重大である。特に、右眼を失明したことで、人と目を合わせて話すことや写真を撮られることを怖いと思うようになり、また、距離感が分からず、車両の運転やスポーツなど普通の人が普通にできることもできなくなってし まった旨述べる被害者の心痛は計り知れない。被害者やその母親が強い処罰感情を抱くのも至極当然のことと理解できる。 以上の本件過失や結果の重大性に照らすと、本件につき自由刑を選択することも十分考えられるところである。 しかしながら、現場の状況及び被告人の供述を前提とする事故発生状況からする と、被告人が本来必要とされている装備資機材を用いていなかったことを踏まえても、被害者が、進路前方にいる被告人を、自身に対する職務質問を行うため停止を求めている警察官と認識し、停止又は徐行するなどの衝突回避等の措置をとれた可能性は否定できない。このことは、被告人の犯情を検討 、被害者が、進路前方にいる被告人を、自身に対する職務質問を行うため停止を求めている警察官と認識し、停止又は徐行するなどの衝突回避等の措置をとれた可能性は否定できない。このことは、被告人の犯情を検討するに際し、本件衝突の要因が被告人の過失だけにあるとして非難することはできないという意味で、相応の 重みを持つ事情として考慮せざるを得ない。 以上に検討した犯情に照らせば、本件は罰金刑の選択が許容される事案というべきであり、被告人が事実を認めて被害者らに対する謝罪の言葉を述べるほか、損害賠償金として100万円を供託するなど反省の態度を示しているといった一般情状を踏まえても、その所定金額の上限をもって臨むのが相当と判断した。 (求刑・罰金100万円)令和5年12月25日那覇地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官佐藤哲郎 - 4 - 裁判官安原和臣 裁判官池田翔平
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