令和5(わ)149 傷害、現住建造物等放火被告事件

裁判年月日・裁判所
令和5年9月15日 札幌地方裁判所
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判決文本文2,181 文字)

- 1 - 主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中110日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人は、令和4年9月9日早朝、北海道登別市a町b丁目c番地dA会社B駅南側歩道上において、C(当時75歳)に対し、その足又は腰付近を両手でつかんで押し、Cを転倒させるなどの暴行を加え、よって、Cに全治約3か月間を要する左足関節脱臼骨折の傷害を負わせた。 第2 被告人は、Cが現に住居に使用する同市e町f丁目g番地h所在の二軒長屋(木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建、床面積約62.1平方メートル)に放火して自殺しようと考え、同年12月19日午後8時5分頃、同二軒長屋南東側被告人方居室において、同室内に設置されたスチールラックに吊るされていたライター在中のビニール袋にライターで点火して火を放ち、その火を同室の壁及び天井等に燃え移らせ、よって、同二軒長屋の一部を焼損(焼損床面積約30.01平方メートル)した。 なお、被告人は、判示第2の犯行当時、残遺型統合失調症の影響により心神耗弱の状態であった。 (証拠の標目)省略(法令の適用)罰条判示第1の所為刑法204条判示第2の所為刑法108条刑種の選択判示第1の罪につき懲役刑、判示第2の罪につき有期懲役刑を選択 - 2 -法律上の減軽判示第2の罪につき刑法39条2項、68条3号併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に法定の加重をする。ただし、短期は判示第2の罪の刑のそれによる。)未決勾留日数算入刑法21条(110日を算入) 罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に法定の加重をする。ただし、短期は判示第2の罪の刑のそれによる。)未決勾留日数算入刑法21条(110日を算入)刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用(不負担) 刑事訴訟法181条1項ただし書(責任能力についての補足説明)D医師の公判廷における供述によれば、被告人は、中等度の残遺型統合失調症にり患しており、その症状として被害関係妄想を有し、問題解決能力などが著しく低下していたことが認められる。 そして、本件放火の際の被告人の行動についてみると、被告人は、周囲に燃え広がるよう火を当てる場所を考えて火を点け、煙の色が濃くなると死ぬのが怖くなり家の外に避難するなど、周囲の状況を適切に認識して被告人なりに考えた行動をとることができている。他方、本件放火に至る経緯についてみると、被告人は、隣人であるCから嘘つき呼ばわりされているなどといったトラブルや被害妄想のほか、通帳を何度もなくしているのは別の地球が存在するからだなどといった妄想を有していたところに、問題解決能力の著しい低下により、日常生活を営む上で生じる様々なストレスを溜め込んで耐えられなくなり、ついには、全て無くなればいいと考え放火している。そうすると、本件放火は被告人の残遺型統合失調症の問題解決能力の著しい低下等によって引き起こされたものといえる。 以上の理由から、当裁判所は、当事者が主張するとおり、被告人が、本件放火の当時、残遺型統合失調症の影響により心神耗弱の状態にあったと判断した。 (量刑の理由)量刑判断の中心となる本件放火についてみると、被告人が火を放ったのはライター在中のビニール袋であり、居室には雑誌や灯油の入ったポリタンクなどといった - 3 -燃えやすいものが多 刑の理由)量刑判断の中心となる本件放火についてみると、被告人が火を放ったのはライター在中のビニール袋であり、居室には雑誌や灯油の入ったポリタンクなどといった - 3 -燃えやすいものが多数存在していたのであるから、被告人の行為は隣人であるCの生命、財産等を害する危険の高いものであり、被告人もその危険性を十分理解して犯行に及んでいたといえる。また、二軒長屋が一部焼損し、Cは引越しを余儀なくされたのであるから、被告人がCに損害の補填をしていることなどの事情を考慮しても、結果は重い。 もっとも、前記に述べたとおり、本件放火に至る経緯には、被告人の残遺型統合失調症による問題解決能力の著しい低下等が影響していることに加え、被告人には社会的、医療的なサポートが十分に与えられていなかったことも本件犯行に影響していると考えられ、これらの点は被告人に相当程度有利に考慮すべきである。 そして、本件傷害についてみると、長年にわたる被告人とCとのトラブルやCの被告人に対する言動に照らせば、被告人だけでなく、Cもけんかをするつもりだった可能性を否定できず、この点に関するCの公判供述には疑問がある。加えて、傷害結果は重いものの、偶発的な側面もあることからすれば、被告人ばかりを非難することはできない。 以上の事情を考慮し、被告人に対しては主文の刑を科した上でその執行を猶予するのが相当であると判断した。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑-懲役4年、弁護人の科刑意見-保護観察を付けない執行猶予付き判決)令和5年9月19日札幌地方裁判所刑事第2部裁判長裁判官井下田英樹裁判官新宅孝昭裁判官滝嶌秀輝 所刑事第2部裁判長裁判官井下田英樹裁判官新宅孝昭裁判官滝嶌秀輝

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