主文 一原判決中第1審被告敗訴部分を取り消す。 同部分につき第1審原告の請求を棄却する。 二第1審原告の本件控訴を棄却する。 三訴訟費用は、第1、2審とも第1審原告の負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一第1審原告 1 原判決中第1審原告敗訴部分を取り消す。 2 第1審被告が第1審原告に対してした原判決添付別紙1の一覧表中最下段以外の「公開・非公開決定」欄記載の各一部非公開決定のうちの各非公開部分(ただし、いずれも平成11年10月26日付けの公開決定後になお非公開の部分)を取り消す。 二第1審被告主文第一と同旨第二事案の概要等一事案の概要、前提となる事実及び争点についての当事者の主張は、原判決3頁21行目の「内部機関」を「機関内部」に、同11頁16行目の「公有地拡大法」を「公有地の拡大の推進に関する法律(以下「公有地拡大法」という。)」にそれぞれ改め、同13頁14行目の「(以下「答申価格」という。)は、」の次に「地方財政法第4条第1項の趣旨から、」を加え、第1審原告及び第1審被告の当審における補充主張を次項及び第三項のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の第2ないし第4に記載のとおりであるから、これを引用する。 なお、本判決においても、原則として原判決と同じ略語を使用することとする。 二第1審原告の当審における主張 1 「所有者の意向」について(一) 本件の場合には、売主と買主との意思が合致して売買契約が成立するに至っているのであるから、もともといすゞ自動車に売却意思があったことが世間に知られたとしても、同社に「明らかに不利益を与える」ことはないし、同社との「信頼関係を損なう」こともあり得ない。 (二) 第三者が本件土地に関心を示したこと、あるいは本件土地にどの程度の値を付けたかと られたとしても、同社に「明らかに不利益を与える」ことはないし、同社との「信頼関係を損なう」こともあり得ない。 (二) 第三者が本件土地に関心を示したこと、あるいは本件土地にどの程度の値を付けたかということも、少なくとも売却処分の終了後の時点においては、あえて秘密にされなければならない事実とはいえないから、これらの情報を公開したとしても、いすゞ自動車に「明らかに不利益を与える」ことはないし、同社との「信頼関係を損なう」ことによって爾後の用地買収事務に支障を来すこともあり得ない。 2 「未だ検討中の事業内容を記載した部分」について(一) 第26回調整会議資料(甲12)、第35回調整会議資料(甲13)及び第37回調整会議資料(甲14)について公開部分と非公開部分を対比すると、本件土地を利用しての事業内容が「『鶴見川タウンリバー構想』の実現」あるいは「市民利用施設・福祉施設等の建設」という程度の抽象的なものであれば公開されるのに対し、多少とも具体的なアイディアが記載された部分は非公開にされるという関係にあることが認められる。このことから、第1審被告の発想の原点は、完成した施設と計画との齟齬が、抽象的な表現の場合には見えにくいが、具体的な内容を出すと見えやすいので、後者の場合を回避したい、というもののように思われる。換言すると、第1審被告が非公開に固執する実質的理由は、一旦公表した計画が実現されなかった場合には、関係部局の鼎の軽重が問われるおそれがある、という低次元のものであるといっても過言ではなく、かかる実質的理由では非公開事由に該当しないことはいうまでもない。 (二) 第1審被告の主張や原判決の説示に従えば、公開になじむ情報とは、大多数の市民が一義的な解釈をすることができる内容でなければならない、ということになるが、公文書の内容を誤解するかど でもない。 (二) 第1審被告の主張や原判決の説示に従えば、公開になじむ情報とは、大多数の市民が一義的な解釈をすることができる内容でなければならない、ということになるが、公文書の内容を誤解するかどうかは個々の市民の責任の問題であって、そのこと自体が行政機関にとって支障となることはあり得ないから、市民が誤解するかも知れないことを理由に情報の公開を拒否することは許されない。 (三) 本件情報の公開により事業計画が未確定であると判断した市民が、本件土地の利用のあり方等について種々の要望や意見を市当局に寄せることも想定されるが、民主主義社会においては、多様な意見が出ることはそれ自体正常なことであり、これをもって「混乱」と呼ぶのは当たらない。むしろ、市当局が市民の知らないところで最終決定をした上、もはや市民が意見を述べても何の影響も与えない段階に至って初めて情報を提供することにより、既成事実を受け入れさせることが「混乱」のない正しい行政のあり方である、というような発想こそ民主主義の理念に反する。このことは、中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)第50条第2項にも明記されている。 そして、市民の要望、意見等に対する行政側の対応が不適切・不統一なものとなるかどうかは、ひとえに行政側の対応能力にかかっており、統一的対応のあり方について関係部局間で申合わせさえしておけば、不適切・不統一な対応は発生し得ないし、市民の間に無用な誤解と混乱が生じることもない。行政側がその程度の負担を求められることは、「審議・検討への支障」に該当しない。 (四) 市あるいは公社が土地を購入することに関する主権者・納税者としての市民の関心は、当該土地の利用目的それ自体のみならず、購入決定に当たっての判断基準の厳密さにも当然寄せられること、また、地方財政法第4条第1項に「 社が土地を購入することに関する主権者・納税者としての市民の関心は、当該土地の利用目的それ自体のみならず、購入決定に当たっての判断基準の厳密さにも当然寄せられること、また、地方財政法第4条第1項に「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない」と規定されていることなどに鑑みると、本件土地の取得目的又は利用目的の確定性がどの程度であれ、その関係情報はすべて公開されなければならない。 3 本件答申価格について(一) 本件答申価格は、本件土地の売主であるいすゞ自動車が多少の関心を寄せるものであることは格別、今後の用地買収事務一般にことさら影響を及ぼすものではあり得ない。 (二) 横浜市の職員である原審証人aは、平成4年以降に経験した同市の用地買収事務において、答申価格と成約価格が乖離したという事例はない旨証言している。 また、横浜地方裁判所平成11年(行ウ)第21号事件について同裁判所が平成12年11月29日に言い渡した判決において、川崎市の用地買収事務においては、答申価格と成約価格は常に一致する運用であることが認定されている。 さらに、第1審被告を当事者とする同裁判所平成11年(行ウ)第4号事件において提出された横浜市下水道局総務部用地課係長b作成の陳述書(甲28)には、同人の場合、鑑定価格そのものを正面からぶつける方式により用地交渉を行っている旨記載されており、地権者に対して鑑定評価額を提示していたことが明らかである。 上記のような事実は、行政側が用地買収交渉において答申価格までは譲歩を余儀なくされていること、したがって、答申価格を伏せたまま駆け引きをする余地がなくなっていることを窺わせるが、このような駆け引きの余地がなくなるなどという事情は、用地買収事務の目的を損なう」とか同事 儀なくされていること、したがって、答申価格を伏せたまま駆け引きをする余地がなくなっていることを窺わせるが、このような駆け引きの余地がなくなるなどという事情は、用地買収事務の目的を損なう」とか同事務に「著しい支障を生ずる」などと評価すべき問題ではないことを物語っている。 (三) 第1審被告を当事者とする横浜地方裁判所平成11年1月25日言渡しの判決についての控訴審判決の確定後、第1審被告は、横浜市ないし公社が買収した土地の所在地及び取得価格を公開する方針に転じたが、その後に用地取得事務に何らかの支障が生じたというようなことについては、第1審被告から全く主張されていない。 そして、本件土地については、いすゞ自動車の買取り希望価格が1平方メートル当たり(以下同じ。)38万円(甲15の3)、実際の成約価格が33万円(甲16の1、17)であったことは公開されていたところ、第1審被告が公社に取得を依頼した際の取得予定価格が37万円(甲15の2)であったことも、第1審原告の本訴提起後に公開された。 そうであるとするならば、答申価格と成約価格との乖離をあえて秘匿しなければならない理由はない。 (四) そもそも地方公共団体が取得する土地の価格は、公金の重要な使途の一つである。出張旅費や食料費など比較的少額の公金支出さえ、その支出が適正であるか否かは納税者が関心を寄せるのが当然の情報であり、その知る権利を十分尊重すべき最も基本的な情報に属するのであるから、これと比べて通常はるかに巨額な地方公共団体による土地購入代金額ないしそれに係る鑑定価格や答申価格が、納税者の知るべき基本的な情報であることは疑いがない。 三第1審被告の当審における主張 1 「所有者の意向」及び「未だ検討中の事業内容を記載した部分」について第1審原告の当審における主張は争う。 2 の知るべき基本的な情報であることは疑いがない。 三第1審被告の当審における主張 1 「所有者の意向」及び「未だ検討中の事業内容を記載した部分」について第1審原告の当審における主張は争う。 2 本件答申価格について(一) 本件のような地権者の公有地拡大法第5条の買取希望の申出に基づく市の任意買収事業は、強制収用という最終的な手段が予定されていない点において、限りなく私人間の契約に近いものといえるが、「最小の経費で最大の効果を上げる」ことを規定した地方財政法第4条等の財政会計法規や住民監査請求等の規定が間接的な形でその補償の適正を規制している。そして、地権者は、所有地を可能な限り有利な条件で売却すべく、十分な情報収集を行いながら市の担当者と折衝を重ねた上、価格を上限まで引き上げたとの充実感を抱くことにより成約に至るのであって、地権者が売却の意向を示す要因としては感情面における変化が大きく、合理的・経済的なメリットはその決定的な誘因とはならない。このような任意買収事業の特色及び実情に照らすと、次の(二)及び(三)が結論付けられる。 (二) 地権者が、情報公開によって答申価格を知り、主観的には上限と考えていた成約価格と答申価格との間に乖離があることを知った場合には、合意に至るまでに築かれた信頼関係が破壊されるおそれがあり、これはいすゞ自動車のような著名な営利法人の場合であっても同様である。 (三) また、地権者は、できるだけ有利な条件で売却しようとするから、答申価格が公開され、答申価格と成約価格との乖離の存在が明らかになった場合には、将来売却を予定している地権者は、自己に有利な条件での売却を図るべく、まず答申価格の公開を求め、それを明らかにしない以上、その後の買収交渉に一切応じないといった事態の発生が容易に予想されるから、答申価格の事後公 定している地権者は、自己に有利な条件での売却を図るべく、まず答申価格の公開を求め、それを明らかにしない以上、その後の買収交渉に一切応じないといった事態の発生が容易に予想されるから、答申価格の事後公開が必然的にその事前公開に結びつくおそれが極めて強い。そして、答申価格の事前公開が進めば、市はいわゆる一発回答方式により価格交渉をせざるを得なくなるが、このような方式を採用した場合には、地権者に漠然とした不安感や不満感を抱かせることになり、その結果、その後の用地交渉の円滑な遂行に著しい支障が生じる。 第三当裁判所の判断一 「所有者の意向」について当裁判所も、第26回調整会議資料及びA´土地取得方針決裁書中非公開とされた「所有者の意向」は、旧条例第9条第1項第2号にいう「法人等に関する情報であって、公開することにより、当該法人等に明らかに不利益を与えると認められるもの」及び第6号にいう「事務事業に関する情報であって、公開することにより、将来の同種の事務事業の円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるもの」に該当するから、本件決定のうち同情報の非公開決定の取消しを求める第1審原告の請求は理由がないものと判断する。その理由は、原判決16頁20行目の「いすゞ自動車と」から同21行目の「実名入りで」までを「資料作成時点でのいすゞ自動車の土地に関する意向が」に改め、第1審原告の当審における主張に対する判断を次のとおり加えるほかは、原判決が争点についての判断1(原判決16頁3行目から19頁14行目まで)に説示しているとおりであるから(ただし、原判決18頁5行目の「迷惑はこと」を「迷惑なこと」に改める。)、これを引用する。 1 第1審原告は、本件の場合には、売主と買主との意思が合致して売買契約が成立するに至っているのであるから、地権者であるいすゞ自動車の 目の「迷惑はこと」を「迷惑なこと」に改める。)、これを引用する。 1 第1審原告は、本件の場合には、売主と買主との意思が合致して売買契約が成立するに至っているのであるから、地権者であるいすゞ自動車の売却意思が世間に知られたとしても、同社に「明らかに不利益を与える」ことはないし、同社との「信頼関係を損なう」こともあり得ないと主張するが、上記係争情報中には、いすゞ自動車と第三者との間で行われた当該土地の売買交渉の経緯が第三者の実名入りで記載されているというのであり、かかる情報は、みだりに公にされたくない企業活動に関する情報で、これを公開しないことが社会通念上是認されるものというべきであって、仮にこれが公開された場合には、いすゞ自動車と第1審被告との信頼関係が損なわれるとともに、将来の同種の用地買収事務事業の円滑な執行に支障を及ぼすことが明らかである。そして、このことは売買契約が成立しているか否かによって左右されるものではないから、第1審原告の主張は採用することができない。 2 また、第1審原告は、第三者が本件土地に関心を示したこと、あるいは本件土地にどの程度の値を付けたかということも、少なくとも売却処分の終了後の時点においては、あえて秘密にされなければならない事実とはいえないと主張するが、上記のような企業活動に関する情報は、みだりに公にされたくないものであって、これを公開しないことが社会通念上是認されるものというべきである。第1審原告の主張は採用することができない。 二 「未だ検討中の事業内容を記載した部分」について当裁判所も、第35回及び第37回各調整会議資料中非公開とされた「未だ検討中の事業内容を記載した部分」は、旧条例第9条第1項第5号にいう「市の機関内部における審議、検討、調査研究等に関する情報であって、公開することにより、当該 回各調整会議資料中非公開とされた「未だ検討中の事業内容を記載した部分」は、旧条例第9条第1項第5号にいう「市の機関内部における審議、検討、調査研究等に関する情報であって、公開することにより、当該審議、検討、調査研究等に支障が生ずると認められるもの」及び第6号にいう「事務事業に関する情報であって、公開することにより、当該事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるもの」に該当するから、本件決定のうち同情報の非公開決定の取消しを求める第1審原告の請求は理由がないものと判断する。その理由は、第1審原告の当審における主張に対する判断を次のとおり加えるほかは、原判決が争点についての判断2(原判決19頁15行目から22頁16行目まで)に説示しているとおりであるから、これを引用する。 1 第1審原告は、第1審被告が上記係争情報を非公開にすることに固執する実質的理由は、一旦公表した計画が実現されなかった場合には、関係部局の鼎の軽重が問われるおそれがある、というものであり、かかる実質的理由では非公開事由に該当しないと主張するが、独自の見解を前提とするものであり、採用することができない。2 第1審原告は、公文書の内容を誤解するかどうかは個々の市民の責任の問題であって、そのこと自体が行政機関にとって支障となることはあり得ないから、市民が誤解するかも知れないことを理由に公開を拒否することは許されないと主張する。 しかしながら、証拠(乙7、証人c)によれば、上記係争情報は、公表できる計画案の段階にまで至っていない未成熟な検討段階の情報であり、これが公開された場合には、市民に誤解を与え、無用の混乱を招く可能性が高く、ひいては市の行政に対する信頼が失われるおそれがある上、事業の利害得失に絡む意見調整に支障を来し、更には、周辺土地の投機目的によ 公開された場合には、市民に誤解を与え、無用の混乱を招く可能性が高く、ひいては市の行政に対する信頼が失われるおそれがある上、事業の利害得失に絡む意見調整に支障を来し、更には、周辺土地の投機目的による先行的売買等の事態を惹起するなどして、特定の者に利益を与える可能性が高いことが認められるから、上記情報は、その公開により、審議、検討、調査研究等に支障が生じ、かつ、事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずるものというべきである。 したがって、第1審原告の前記主張は、採用することができない。 3 第1審原告は、市民から多様な意見が出た場合に、統一的対応のあり方について関係部局間で申合わせさえしておけば、不適切・不統一な対応は発生し得ないし、無用な誤解と混乱が生ずることもないと主張するが、上記のような未成熟な検討段階にある情報について、多様な利害関係ないし利害意識を有する市民からの様々な意見に対して適切かつ統一的対応をするための措置を講じることは、言うべくして、容易なことではないと考えられるから、第1審原告の主張は、採用することができない。 4 第1審原告は、市あるいは公社が土地を購入することに関する主権者・納税者としての市民の関心、地方財政法第4条第1項の規定の趣旨などに鑑みると、本件土地の取得目的又は利用目的の確定性がどの程度であれ、その関係情報はすべて公開されなければならないと主張する。 たしかに、市あるいは公社が土地を購入することについて、市民が納税者として第1審原告主張のような関心を持つことは当然のことであり、地方公共団体の経費支出について、地方財政法に第1審原告主張のような規定が設けられているけれども、そのことから直ちに、上記のような未成熟の検討段階にある情報を公開すべきものとすることにはならないのであって、かかる情報が公開さ いて、地方財政法に第1審原告主張のような規定が設けられているけれども、そのことから直ちに、上記のような未成熟の検討段階にある情報を公開すべきものとすることにはならないのであって、かかる情報が公開されることによって上記認定のような弊害の発生が予測される以上、それを非公開とすることはやむを得ないところといわなければならない。 したがって、第1審原告の前記主張は、採用することができない。三本件答申価格について 1 上記係争情報の趣旨及び性質については、原判決が争点についての判断3の(1)(原判決22頁18行目から23頁7行目まで)に説示しているとおりである。 すなわち、本件答申価格は、内訳書、買取価格説明書及び評価回答書中に記載されている情報であり、内訳書、買取価格説明書及び評価回答書は、市がB土地を購入することについてされた平成8年3月5日付け第1審被告決裁文書の別紙のうちの文書の一部及びその添付書類の一部である(甲16の1ないし8)。横浜市においては、公有財産を取得する場合における当該財産の価格の決定に際しては、あらかじめ評価審議会に諮問するものとされ(横浜市公有財産規則第15条)、評価審議会は、諮問に応じて購入すべき財産の価格を評価して答申する。本件答申価格は、このようにして答申された価格である。 2 そして、当裁判所も、内訳書、買取価格説明書及び評価回答書中非公開とされた本件答申価格は、旧条例第9条第1項第7号所定の非公開事由には該当しないものと判断する。その理由は、原判決が争点についての判断3の(3)(原判決26頁8行目から21行目まで)に説示しているとおりであるから、これを引用する。 3 しかしながら、当裁判所は、本件答申価格は旧条例第9条第1項第6号所定の非公開事由のある情報に該当するものと判断する。その理由は、次のとおりであ )に説示しているとおりであるから、これを引用する。 3 しかしながら、当裁判所は、本件答申価格は旧条例第9条第1項第6号所定の非公開事由のある情報に該当するものと判断する。その理由は、次のとおりである。 証拠(甲28、乙5、8、証人a)及び弁論の全趣旨によれば、①横浜市が公共用地を取得する場合には、「横浜市の公共用地取得に伴う損失補償基準規程」の定める「正常な取引価格」をもって取得するものとされていること、②他方、横浜市が地方自治法第238条に規定する公有財産を取得する場合には、市長の諮問により、評価審議会がその価格を評定するものとされており、その評定価格すなわち「答申価格」は、上記損失補償基準規程に基づき「正常な取引価格」をもって用地を取得するための拠り所となるものであり、用地取得担当者が、この「答申価格」を踏まえて、過大補償、過小補償にならないよう地権者との折衝に臨み、一連の交渉過程を経て合意に達した場合には、その合意価格すなわち成約価格をもって買収契約が成立するに至ること、③本件のような地権者の公有地拡大法第5条の買取希望の申出に基づく市の任意買収事業は、強制収用という最終的な手段が予定されていない点において、限りなく私人間の契約に近いものといえるところ、答申価格は実際の用地取得価格の上限を画すものであり、答申価格と成約価格との間には乖離があり得ること、④実際の用地取得交渉においては、用地取得担当者が地権者との度重なる折衝を通じて信頼関係の醸成に努め、その信頼関係に基づいて交渉を進めるが、「答申価格」を開示することはしていないこと、⑤実際の用地取得交渉の現場では、地権者は、用地取得が完了した後の成約価格でさえそれが公開されることに神経質になっているのが実情であり、成約価格に加えて答申価格までもが公開され、その結果両者の間に乖離 実際の用地取得交渉の現場では、地権者は、用地取得が完了した後の成約価格でさえそれが公開されることに神経質になっているのが実情であり、成約価格に加えて答申価格までもが公開され、その結果両者の間に乖離があることが明らかになった場合には、当該地権者との信頼関係が損なわれることが十分予想されること、⑥その結果、横浜市が当該地権者との間で別の土地につき用地取得交渉を行う必要が生じた場合、当該地権者が、横浜市への用地売却につき極めて非協力的な態度をとることが容易に予想され、用地売却を拒否するまでには至らなくても、売却価格のつり上げを目論んで、横浜市に対し、答申価格を明らかにすることを要求し、それが得られるまでは用地交渉に応じないというような態度に出ることも予想されること、⑦また、同様の影響は、今後横浜市が行う他の用地取得事業にも及ぶことが予想されるところであり、情報公開によって答申価格と成約価格との間に乖離があることを知った地権者が、横浜市に対し、答申価格を明らかにすることを要求し、それが受け入れられない限り用地交渉に応じないという態度に出ることも予想され、殊にその用地が道路、河川整備事業等に必要な用地である場合には、用地に代替性がなく、その取得が必要不可欠であることから、一層深刻な影響が生じることになり、かくては、当該用地取得交渉が著しく難航し、円滑な用地取得事業の執行に重大な支障が生じるおそれがあること、以上の事実が認められる。 そうすると、上記係争情報すなわち本件答申価格は、旧条例第9条第1項第6号にいう、「市が行う契約、交渉に関する情報」であって、「公開することにより、関係当事者間の信頼関係が損なわれると認められるもの」及び「将来の同種の事務事業の円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるもの」に該当するものと認めるのが相当である。本件 、「公開することにより、関係当事者間の信頼関係が損なわれると認められるもの」及び「将来の同種の事務事業の円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるもの」に該当するものと認めるのが相当である。本件土地の売主であるいすゞ自動車が著名な営利法人であること、本件答申価格の公開がいわゆる事後公開であることは、上記判断を左右するものではない。 これに対し、第1審原告は、本件土地については、いすゞ自動車の買取希望価格、成約価格及び第1審被告が公社に取得を依頼した際の取得予定価格が公開されているのであるから、答申価格と成約価格との乖離をあえて秘匿しなければならない理由はないと主張するが、上記のような用地取得事業における答申価格の意義、用地取得の実務における答申価格と成約価格との関係、答申価格の公開が用地取得事業の実務に及ぼす影響等に鑑みると、本件答申価格を上記買取希望価格、成約価格及び取得予定価格と同列に論ずることはできないというべきであるから、第1審原告の主張は、採用することができない。 また、第1審原告は、横浜市の職員である原審証人aの証言、川崎市の用地買収事務の事例及び横浜市下水道局総務部用地課係長bの陳述書(甲28)を援用し、行政側は用地買収交渉において答申価格までの譲歩を余儀なくされており、答申価格を伏せたまま駆け引きをする余地がなくなっているとして、答申価格が公開されたとしても、用地買収事務の目的を損ない、同事務に著しい支障を生ずるなどということはないと主張する。しかしながら、原審証人aの証言内容は、第1審原告の主張するようなものではなく、むしろ全体として第1審被告の主張に沿うものであるし、上記bの陳述内容も、同人独自の交渉の仕方について述べたものにすぎず、横浜市の用地買収事務全体の傾向について述べたものとは認められない。横浜市の むしろ全体として第1審被告の主張に沿うものであるし、上記bの陳述内容も、同人独自の交渉の仕方について述べたものにすぎず、横浜市の用地買収事務全体の傾向について述べたものとは認められない。横浜市の用地買収交渉において、答申価格までの譲歩を余儀なくされており、答申価格を伏せたまま駆け引きをする余地がなくなっているのが実態であることを認めるに足りる証拠はない。したがって、第1審原告の前記主張は、採用することができない。 さらに、第1審原告は、①横浜市においては、大規模な土地を取得する場合には議会の議決を要することとされていること、②地方公共団体の公金支出については納税者の知る権利が十分尊重されるべき最も基本的な情報に属することなどから、本件答申価格が納税者の知るべき基本的な情報であることは明らかであると主張するが、①の点は、大規模な土地の取得が市の財政等に重大な影響を及ぼすとの見地から採用されている制度であると解されるから、直接本件における前記判断を動かすに足りる事情であるとはいい難いし、②の点についても、納税者の知る権利を尊重すべきことは当然であるとしても、その観点からすれば、成約価格すなわち取得価格が公開されることこそが重要であって、答申価格までもが開示されなければ納税者の知る権利が害されるということはできず、その意味において、答申価格が第1審原告のいうような公益性の高い情報であると解することはできない。したがって、第1審原告の上記主張は、採用することができない。 4 以上のとおりであるから、本件決定のうち本件答申価格を非公開とした部分の取消しを求める第1審原告の請求は、理由がないものというほかはない。 第四結論よって、原判決中第1審原告の請求を一部認容した部分は不当であるから、これを取り消して、同部分につき第1審原告の請求を棄却 しを求める第1審原告の請求は、理由がないものというほかはない。 第四結論よって、原判決中第1審原告の請求を一部認容した部分は不当であるから、これを取り消して、同部分につき第1審原告の請求を棄却し、原判決中第1審原告のその余の請求を棄却した部分は相当であって、第1審原告の本件控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第67条第2項、第61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第5民事部裁判長裁判官魚住庸夫裁判官飯田敏彦裁判官菅野博之
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