平成17(行コ)149等 運転免許更新処分取消請求控訴事件,同附帯控訴事件(原審・千葉地方裁判所平成15年(行ウ)第14号)

裁判年月日・裁判所
平成17年12月26日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文13,288 文字)

主文 原判決を取り消す。 被控訴人の請求(当審での新請求を含む。)を棄却する。 訴訟費用は,1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴の趣旨(1)原判決を取り消す。 (2)本案前の申立て被控訴人の訴えを却下する。 (3)本案に対する申立て被控訴人の請求を棄却する。 被控訴人の控訴の趣旨に対する答弁(1)本案前の答弁控訴人の本件控訴を却下する。 (2)本案に対する答弁控訴人の本件控訴を棄却する。 被控訴人が当審で追加した新請求の趣旨控訴人は,被控訴人に対し,有効期間の終期を平成20年2月20日とする自動車運転免許証を交付せよ。 控訴人の上記請求に対する答弁(1)本案前の答弁被控訴人の本件新請求に係る訴えを却下する。 (2)本案に対する答弁被控訴人の本件新請求を棄却する。 第2事案の概要 事案の要旨被控訴人は,運転免許証(以下「免許証」という。)の有効期間満了に伴い,控訴人に対し,免許証の有効期間の更新(以下では「免許証の更新」ということがある。)を申請したが,控訴人は,更新前5年間に被控訴人に道路交通法(以下「法」という。)の規定に違反する行為(安全運転義務違反)があったことから,被控訴人が法92条の2第1項の表の備考一の4に定める違反運転者等に該当するとして,被控訴人に対し,更新後の免許証の有効期間を3年(更新前の免許証の有効期間満了日後の被控訴人の3回目の誕生日から起算して1月を経過する日(平成18年2月20日)まで)とする,免許証の有効期間の更新をした。 本件は,被控訴人が,控訴人による上記免許証の有効期間の更新につき,更新後の免許証の有効期間を3年とした処分は,有効期間を5年(平成20年2月20日まで)とする更新を受ける 有効期間の更新をした。 本件は,被控訴人が,控訴人による上記免許証の有効期間の更新につき,更新後の免許証の有効期間を3年とした処分は,有効期間を5年(平成20年2月20日まで)とする更新を受けることのできる被控訴人の法的地位を侵害する違法な行政処分であると主張して,その取消しを求めている事案である。 原審は,被控訴人には更新後の免許証の有効期間を5年とすることを求める申請権があることを前提に,控訴人が平成15年2月17日被控訴人に対してした自動車等運転免許証の有効期間の更新は,有効期間とされるべき5年に満たない2年(平成18年2月21日から平成20年2月20日まで)の期間については,更新申請の一部申請拒否処分であるとした上で,控訴人は,その部分の更新を拒否するにつき,被控訴人に対し何らの理由提示も行わなかったから,上記一部拒否処分は行政手続法8条1項本文に規定する理由提示義務に違反する違法な処分であり,取消しを免れないとして,これを取り消して被控訴人の請求を認容したので,控訴人が控訴した。 被控訴人は,本件控訴につき,控訴人が控訴提起後50日以内に控訴理由書の提出をしなかったから不適法であるとして,その却下を求めるとともに,附帯控訴して,当審で新たに,控訴人に対し,有効期間の終期を平成20年2月 20日とする自動車運転免許証を交付することを求める旨の行政事件訴訟法37条の3の義務付けの訴え(新請求)を追加した。 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1ないし3項(原判決2頁19行目から21頁20行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決3頁11行目の「旧法施行令別表第1の1」の次に「及び2」を加える。 (2)同13頁1 いし3項(原判決2頁19行目から21頁20行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決3頁11行目の「旧法施行令別表第1の1」の次に「及び2」を加える。 (2)同13頁10行目の「判例時報1433号」を「判例時報1453号」に改める。 被控訴人の当審における申立て等(1)本案前の申立て控訴人は,平成17年5月9日に本件控訴を提起したが,控訴理由書の提出が遅れ,同年7月11日になって控訴理由書を提出した。しかし,民訴規則182条によれば,控訴理由書は控訴提起後50日以内に提出することが義務付けられており,提出期限までに控訴理由書の提出がなされなかった本件控訴は,同条項に反する不適法な控訴として却下されるべきである。 (2)当審における新たな請求更新後の被控訴人の免許証の有効期間を3年とする本件更新には上記のような違法事由があるから取り消されるべきであるところ,本件更新に係る免許証の効力は平成17年12月11日の経過をもって失われるので,本件更新処分の取消しを求めるとともに,控訴人に対し,有効期間の終期を平成20年2月20日(5年)とする運転免許証の交付をするよう求める。 上記申立て等に対する控訴人の反論(1)被控訴人の本案前の答弁に対する反論控訴理由書については,上告理由書とは異なり,控訴提起後50日以内に 書面の提出のなかったこと自体を控訴却下事由とする規定は存在せず(民訴法315条1項,316条1項2号参照),被控訴人の主張には理由がない。 (2)当審における新たな請求に対する反論運転免許証の有効期間の区分は,継続して免許を受けている期間,更新日等における年齢及び法令違反の状況に応じて,自動的に3年,4年又は5年とされるのであり(法92条の2第1項,同法施行令33条の7),更新申請者に 効期間の区分は,継続して免許を受けている期間,更新日等における年齢及び法令違反の状況に応じて,自動的に3年,4年又は5年とされるのであり(法92条の2第1項,同法施行令33条の7),更新申請者に更新後の免許証の有効期間を5年とする申請権が付与されていると解する余地はない。また,有効期間が申請者の意思にかからしめることとされていないことも文理上明らかである。したがって,本件は,行政事件訴訟法3条6項2号が規定する「行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請がされた場合」には該当しない。 また,上記のとおり,法92条の2第1項,同法施行令33条の7によると,被控訴人については,過去の法令違反の状況からして,更新後の免許証の有効期間は3年(有効期間の終期は平成18年2月20日)となり,有効期間を5年とする余地はないから,行政事件訴訟法3条6項2号が規定する「行政庁がその処分をすべきである」ときにも該当しない。 以上のとおり,被控訴人の新請求は,上記行政事件訴訟法の規定する義務付け訴訟のいずれの類型にも該当せず,不適法である。 また,仮に,そうでないとしても,更新後の免許証の有効期間を3年とする本件更新手続に誤りはなく,被控訴人の新請求は理由がないから棄却されるべきである。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,控訴人の本件控訴は適法であり,また,被控訴人の本件請求及び当審における新請求に係る訴えはいずれも適法であると考えるが,被控訴人の本件請求及び新請求はいずれも理由がないので棄却すべきものと判断する。 その理由は,次のとおりである。 本件控訴の適法性被控訴人は,控訴理由書が控訴提起後50日を経過した平成17年7月11日になって提出された本件控訴は,民訴規則182条に違反する不適法な控訴として却下されるべきであると主張する。 本件控訴の適法性被控訴人は,控訴理由書が控訴提起後50日を経過した平成17年7月11日になって提出された本件控訴は,民訴規則182条に違反する不適法な控訴として却下されるべきであると主張する。 しかしながら,控訴理由書については,上告理由書に関する民訴法315条1項,316条1項2号のように,控訴提起後50日以内に控訴理由書の提出のなかったこと自体を控訴却下の事由とする規定はないので,控訴理由書が上記期間経過後に提出されたことによって,控訴が不適法になると解することはできない。 被控訴人の上記主張は採用できない。 運転免許更新処分取消請求について(1)被控訴人の本件請求は,本件更新に係る被控訴人の免許証の有効期間を3年とした控訴人の行為(本件更新処分)が取消訴訟の対象となる行政処分に当たるとの前提に立った上で,控訴人の本件更新処分は,①行政手続法2条4号の不利益処分に該当するのに,同法12条ないし14条に定める手続がとられておらず,あるいは同法2条3号の申請に対する処分に該当するのに,同法5条及び8条に定める手続がとられておらず違法であり,②前回更新時に考慮した本件違反行為を再度考慮して,被控訴人を違反運転者と認定して本件更新に係る免許証の有効期間を3年としたことが一事不再理の原則に違反し違法であり,③法施行令改正附則2条に違反し違法であり(前回更新時講習と同一の講習を本件更新時に再度受講させることの不当性),④前回更新時に本件違反行為に対応する更新時講習を受講し,その後本件更新時まで違反行為のない被控訴人を「一般運転者」とせずに本件更新をする等,法の趣旨を逸脱した違法があるので,取り消されるべきであるというものである。 (2)本件更新に係る被控訴人の免許証の有効期間を3年とする控訴人の行為 の行政処分性ア取 ずに本件更新をする等,法の趣旨を逸脱した違法があるので,取り消されるべきであるというものである。 (2)本件更新に係る被控訴人の免許証の有効期間を3年とする控訴人の行為 の行政処分性ア取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法3条2項)とは,公権力の主体たる国又は公共団体がその行為によって,直接国民の権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解される(最高裁判所昭和28年(オ)第123号同30年3月4日第二小法廷判決・民集9巻3号229頁参照)。 イところで,平成13年改正後の法においては,違反運転者等に該当する者の更新後の免許証の有効期間は3年とされているのに対し,更新日の年齢が70歳未満の者の場合,優良運転者及び一般運転者に該当する者の更新後の免許証の有効期間は5年とされており(法92条の2第1項),違反運転者等と比較して優良運転者及び一般運転者の更新後の免許証の有効期間が2年間延長されているなど更新手続の負担が軽減されている。このような優良運転者及び一般運転者に与えられている地位ないし利益は,公安委員会が法の規定によって付与しているものと解されるから,その地位ないし利益が公安委員会の違法・不当な処分によって侵害された場合(例えば,更新を受けようとする者の過去の違反行為の内容や評価を誤って違反運転者等と認定したり,年齢を誤認して70歳以上と認定して更新手続をした場合など)には,その者は,当該更新において公安委員会がした運転免許更新処分の取消しを求める取消訴訟を提起して,その地位ないし利益の回復を求めることができると解すべきである。 この点に関して,被控訴人は,原審において,更新後の免許証の有効期間を3年とする更新処分のうち,有効期間を を求める取消訴訟を提起して,その地位ないし利益の回復を求めることができると解すべきである。 この点に関して,被控訴人は,原審において,更新後の免許証の有効期間を3年とする更新処分のうち,有効期間を3年とする部分のみの取消しを求める趣旨の主張をしているが,有効期間の区分指定自体が行政処分であると解することはできないし,また,本件更新処分が取り消されれば,判決の拘束力によって,有効期間を5年とする免許証の更新を受けること ができると解されるから,被控訴人の主張の本旨は,更新後の免許証の有効期間を5年として更新処分を受けることのできる地位ないし利益があるのに,更新後の免許証の有効期間を3年とする更新処分を受けた結果,被控訴人の上記地位ないし利益が侵害されているので,その被侵害利益の回復を図りたいという点にあると解すべきである。したがって,被控訴人の取消しを求める行政処分の対象は,有効期間を3年とする本件更新処分そのものであると解するのが相当である。 なお,控訴人は,更新後の免許証の有効期間の区分については,法文上一義的に規定されていて,控訴人に裁量の余地がないから,有効期間の区分指定自体は行政処分たり得ず,被控訴人の訴えは不適法である旨の主張をするが,本件においては,上記のとおり有効期間を3年とする免許証更新処分自体が違法,不当かどうかが審理の対象になっていると解すべきであるので,控訴人の主張は採用できない。 (3)訴えの利益の有無(争点(2))控訴人は,更新後の免許証の有効期間は,原則として3年であり,5年とされる場合は,更新を受ける者が享受できる恩典にすぎないから,更新後の免許証の有効期間を3年とする控訴人の行為が行政処分に当たるとしても,その処分は,被控訴人に一方的に利益のみを付与する処分であって,被控訴人の法律上の利益を侵害 受できる恩典にすぎないから,更新後の免許証の有効期間を3年とする控訴人の行為が行政処分に当たるとしても,その処分は,被控訴人に一方的に利益のみを付与する処分であって,被控訴人の法律上の利益を侵害するものではないから,訴えの利益を欠くと主張する。 しかしながら,被控訴人の本件請求は,更新後の免許証の有効期間を3年とする免許証更新処分を受けたことによって,本来有していた有効期間を5年とする更新処分を受けることのできる地位ないし利益を侵害されたので,その回復のために,有効期間を3年とする上記処分の取消しを求めるというものであるから,被控訴人の本件請求に訴えの利益のあることは明らかであり,控訴人の上記主張は採用できない。 (4)行政手続法違反の有無(争点(3)ア)ア被控訴人は,本件更新における免許証の有効期間を3年とする免許証更新処分は,行政手続法2条4号の不利益処分に該当するのに,同法12条ないし14条に定める手続がとられておらず,違法であると主張する。 しかし,同法2条4号の「不利益処分」とは,行政庁が特定の者を相手方として,直接に,その権利を制限したり義務を課したりするために行う処分をいうものと解されるところ,自動車の運転免許制度のように,道路の安全等を確保するという目的のために,原則として禁止されている自動車の運転行為を,一定の要件を備えた者一般に対し解除して許すという性質の処分については,運転免許証の取得あるいはその更新手続に一定の基準が設けられ,そのために何らかの制限や制約を受ける者があるとしても,それが,特定の者を名あて人として,直接に義務を課し,又はその権利を制限する処分に該当するとはいえないから,そのような制約等が同条項にいう「不利益処分」であると解することはできない。 また,仮に,本件更新が,行政手続法2条4号の て,直接に義務を課し,又はその権利を制限する処分に該当するとはいえないから,そのような制約等が同条項にいう「不利益処分」であると解することはできない。 また,仮に,本件更新が,行政手続法2条4号の「行政庁が,法令に基づき,特定の者を名あて人として,直接に,これに義務を課し,又はその権利を制限する処分」に該当するものであるとしても,自動車の運転免許証の有効期間の更新を受けようとする者は,公安委員会に更新申請書を提出することになっており(法101条1項),不利益処分の除外事由とされている同条4号ロの「申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分」に該当することが明らかであるから,同条4号の「不利益処分」には当たらないというべきである。 したがって,いずれにしても,被控訴人の上記主張は採用できない。 イ被控訴人は,上記免許証更新処分は行政手続法2条3号の「申請」に対する処分に該当するのに,同法5条及び8条に定める手続がとられておら ず,違法であるとも主張する。 (ア)行政手続法2条3号にいう「申請」とは,法令に基づき行政庁の許可,認可,免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって,当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすることが法令上義務付けられているものをいうと解される。法101条5項によれば,公安委員会は,適性検査の結果等から判断して,運転免許証の有効期間の更新を受けようとする者が自動車等を運転することが支障がないと認めたときは,当該免許証の更新をしなければならないと定められているから,運転免許証の有効期間の更新は,利益の付与を求める者に対して行政庁が諾否の応答をすることが法律上義務付けられているものであって,行政手続法上の「申請」に該当するものとい らないと定められているから,運転免許証の有効期間の更新は,利益の付与を求める者に対して行政庁が諾否の応答をすることが法律上義務付けられているものであって,行政手続法上の「申請」に該当するものということができる。 (イ)行政手続法5条違反の主張について被控訴人の主張は必ずしも明らかではないが,控訴人が免許証の更新手続を行うに際して,被控訴人から意見聴取を行わなかったことが同条項に反し,手続の公正を侵害するものであると主張するものと解される。 しかしながら,同法5条には,申請者の意見聴取を行うことを義務付ける規定はないから,同条項違反をいう被控訴人の主張は失当であるといわざるを得ない。 また,上記の点を別としても,免許証の有効期間についての更新手続は,法92条の2,法施行令33条の7によって,更新後の免許証の有効期間の区分等が具体的かつ一義的に明記されており,更新申請手続の過程において手続の公正・透明性が損なわれることはないといえるから,行政庁が上記区分のほかに新たな基準を設置する義務があると解することはできない。したがって,上記更新手続について,控訴人が,行政手続法5条にいう審査基準等を設けていないとしても,同条項違反の問題は生じないというべきである。 いずれにしても,被控訴人の上記主張は採用できない。 (ウ)行政手続法8条違反の主張について被控訴人は,本件更新に際し,違反運転者等に区分され,更新後の免許証の有効期間を3年とする更新処分を受けたが,その際,被控訴人に対して,どの基準のどの項目を満たさないために一般運転者に該当しないのかについて,明確な理由を示されなかったことが,同法8条に違反すると主張する。 まず,更新後の運転免許証の有効期間を5年ではなく,3年とする更新処分が,同法8条1項の「申請により求められた許認可等を かについて,明確な理由を示されなかったことが,同法8条に違反すると主張する。 まず,更新後の運転免許証の有効期間を5年ではなく,3年とする更新処分が,同法8条1項の「申請により求められた許認可等を拒否する処分」に該当するかが問題となるが,法101条5項は,公安委員会は,適性検査の結果から判断して,申請者が自動車の運転に支障がないと認めたときは,その者について当該免許証の更新をしなければならないと定めており,かつ,更新後の運転免許証の有効期間を3年とするか5年とするかについては,法92条の2,法施行令33条の7が,その区分等を一義的に明確に定めているのであるから,これらの規定に照らせば,公安委員会が裁量により有効期間の区分を決定して更新を行う余地はない。また,上記のような免許証の更新制度の構造に照らせば,申請者が更新後の運転免許証の有効期間を5年とする具体的な更新申請権を有しているものと解することもできない。したがって,公安委員会による免許証の有効期間を3年とする更新処分は,これを5年とする更新処分の内容についての一部拒否処分であると解することはできず,行政手続法8条の定める「申請により求められた許認可等を拒否する処分」には該当しないと解すべきである。そうすると,本件更新について,控訴人には同条の理由提示義務はないことになる。 なお,仮に,本件更新が同条の定める「申請により求められた許認可等を拒否する処分」に該当するとしても,行政庁の恣意を抑制するとい う同条項の趣旨に照らせば,運転免許証の更新後の有効期間の定めについては,上記説示のとおり,法92条の2,法施行令33条の7によって,その区分等が具体的かつ一義的に明記されており,申請段階における手続の公正・透明性が損なわれるおそれがないと考えられるので,同条ただし書に該当し,理 おり,法92条の2,法施行令33条の7によって,その区分等が具体的かつ一義的に明記されており,申請段階における手続の公正・透明性が損なわれるおそれがないと考えられるので,同条ただし書に該当し,理由提示義務はないと解される。 被控訴人の上記主張は,いずれにしても採用することができない。 ウ以上のとおりであるから,更新後の免許証の有効期間を3年とする本件更新処分には,被控訴人の主張するような行政手続法違反の瑕疵があるということはできない。 (5)一事不再理の原則違反の有無(争点(3)イ)被控訴人は,控訴人が,本件更新に際し,前回更新と同様に本件違反行為を考慮して,被控訴人を違反運転者等に区分して,更新後の運転免許証の有効期間を3年とする更新処分を行ったことが,同一の違反行為を2回にわたって不利益評価して処分をしたことになり,憲法39条の定める一事不再理原則に反し,違法であると主張する。 確かに,控訴人は,被控訴人に対し,平成12年1月17日ころ,本件違反行為による累積点数が4点であったことにより,被控訴人が旧法92条の2第1項所定の「優良運転者以外の者」に該当するとして,更新後の運転免許証の有効期間を被控訴人の誕生日である平成15年1月20日までの3年とする前回更新をした後,同年2月17日ころ,更新前の免許証の有効期間満了日の直前の被控訴人の誕生日(平成14年1月20日)より40日前の日より前5年間において,本件違反行為により累積点数が4点であったとの根拠で,被控訴人が違反運転者等に該当するとして,更新後の免許証の有効期間を更新前の免許の有効期間満了後の被控訴人の3回目の誕生日から起算して1月を経過する日である平成18年2月20日までの3年とする本件更新をしており(先に引用した原判決摘示の前提事実(7)イ),被控訴人は, 1回の 期間満了後の被控訴人の3回目の誕生日から起算して1月を経過する日である平成18年2月20日までの3年とする本件更新をしており(先に引用した原判決摘示の前提事実(7)イ),被控訴人は, 1回の違反行為を前回更新と本件更新の2回にわたって考慮されて,更新後の免許証の有効期間について不利益な取扱いを受けたということができる。 しかし,憲法39条の定める一事不再理の原則は,同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われないとする刑事上の責任に関する原則であり,刑罰権の発動とはいえない行政手続である運転免許証の更新に直接適用されるものではない。 また,運転免許証を取得した者について,道路交通法違反行為の有無や違反内容に対応した累積点数に基づき,「違反運転者等」,「優良運転者及び一般運転者」といった区分をし,更新後の免許証の有効期間につき,優良運転者及び一般運転者を5年,違反運転者等を3年という差異を設けることは,道路交通法違反等の行為を道路交通法上の危険性の徴表と見て,このような違反行為をした者について更新後の免許証の有効期間を短くし,これによって道路交通法規に対する遵法精神を喚起するとともに,講習の回数を増やしたり内容を強化し,道路における交通の安全に資するという行政目的の実現を図るための適正合理的な制度ということができる。このような運転免許証の更新制度の中で1回の違反行為をその後の2度にわたる更新に当たって不利益に考慮することがあるとしても,上記の行政目的に照らせば,それが直ちに不合理,不当な取扱いであるとまではいえず,それが立法裁量を逸脱した違法・不当な手続であるということもできない。 したがって,被控訴人の同一の違反行為を2回にわたって不利益に評価して本件更新処分が行われたものであるとしても,憲法39条の定める一事不再理の法理を及ぼ 違法・不当な手続であるということもできない。 したがって,被控訴人の同一の違反行為を2回にわたって不利益に評価して本件更新処分が行われたものであるとしても,憲法39条の定める一事不再理の法理を及ぼして,その効力を否定しなければならないと解することはできず,被控訴人の上記主張を採用することはできない。 なお,被控訴人は,違反運転者等と区分されて,前回更新時と本件更新時の2回にわたって違反運転者に対応する講習を受けさせたことが一事不再理の原則に反し不当であるとも主張するが,仮に更新時講習を2回受講させら れたことが違法であるとしても,そのことが本件更新処分の効力に影響するとは言い難いから,この点に関する被控訴人の主張は上記判断を左右するものとはいえない。 (6)法施行令改正附則2条違反の有無(争点(3)ウ)被控訴人の主張の趣旨は必ずしも明らかではないが,前回更新時に行われた更新時講習は法施行令改正附則2条により,平成13年改正後も効力を有するものであるから,本件更新において,本件違反行為を理由に再度本件更新時講習を受講させることが不当であり,このような講習を義務づけている本件更新処分自体が違法であって取り消されるべきである旨を主張しているものと理解することができる。 しかし,更新時講習は,自動車の運転者に定期的に安全教育を行い,その安全意識を維持し,高めることを目的とするものであるから,更新の都度,更新時講習を受けるべきことが定められているのであって(法101条の3第1項,108条の2第1項11号),前回更新時の講習と本件更新時講習とは別個の講習であり,法施行令改正附則2条の規定が前回更新時講習を受講した者について本件更新時講習を免除する趣旨を含むと解することはできない。したがって,被控訴人の上記主張は失当であり,採用することはでき の講習であり,法施行令改正附則2条の規定が前回更新時講習を受講した者について本件更新時講習を免除する趣旨を含むと解することはできない。したがって,被控訴人の上記主張は失当であり,採用することはできない。 (7)法の趣旨の逸脱の有無(争点(3)エ)被控訴人は,更新前5年間に法違反行為をしたが累積点数が3点未満の者については,「一般運転者」として更新後の免許証の有効期間を5年とする更新を受けられるのに対し,前回更新時後何ら違反行為をしていない被控訴人が「一般運転者」とされずに,「違反運転者等」として区分され,更新後の免許証の有効期間を3年とする更新しか受けられないのは,控訴人が法の解釈適用を誤ったものであり,違法であると主張する。 しかしながら,法92条の2及び法施行令33条の7は,優良運転者,一 般運転者及び違反運転者等を一義的に区分しており,控訴人が裁量によって被控訴人を「一般運転者」に区分する余地はないから,控訴人に区分についての裁量権があることを前提とする被控訴人の主張は理由がない。 なお,被控訴人が主張する違反者相互間の不平等は,法及び法施行令が,累積点数4点以上の違反を重大な違反行為ととらえ,道路交通法規に対する遵法精神を喚起する必要性が高いと考えたことの結果であり,このような内容を定めた法及び法施行令の規定には相応の合理性が認められるから,これが立法裁量を逸脱した不当なものであるということはできない。 (8)そうすると,本件更新に係る被控訴人の免許証の有効期間を3年とした本件更新処分は,取消訴訟の対象となる行政処分に該当するが,当該処分には被控訴人の主張するような違法・不当事由は存在しないから,その取消しを求める被控訴人の請求は理由がないというべきである。 被控訴人の当審における新たな請求について(1)控訴人は ,当該処分には被控訴人の主張するような違法・不当事由は存在しないから,その取消しを求める被控訴人の請求は理由がないというべきである。 被控訴人の当審における新たな請求について(1)控訴人は,被控訴人の当審での新請求につき,被控訴人には更新後の免許証の有効期間を5年とする申請権が付与されていると解することができないから,被控訴人の請求は,行政事件訴訟法3条6項2号が規定する「行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請がされた場合」に該当せず,また,被控訴人の過去の法令違反の状況からすると,更新後の免許証の有効期間は3年(有効期間の終期は平成18年2月20日)となり,有効期間を5年とする更新の余地はないから,同条項の「行政庁が一定の処分をすべきである」ときにも該当せず,結局,被控訴人の上記請求は,行政事件訴訟法の規定する義務付け訴訟のいずれの類型にも該当しない不適法な訴えとして却下されるべきであると主張する。 しかしながら,被控訴人の当審における新請求は,本件更新申請に対して,更新後の被控訴人の免許証の有効期間を3年として更新をした控訴人の本件更新処分には,法92条の2,法施行令33条の7の定める更新後の免許証 の有効期間の区分指定を誤った違法事由があり,取り消されるべきものであって,控訴人としては,本来,本件更新後の有効期間の終期を平成20年2月20日(5年)とする運転免許証を交付すべき義務があるから,その交付を求めるというものである。このように行政庁が本来なすべき正当な処分をせずに誤った処分をしたことを理由として,本来なされるべき処分をするように求める申立ては,行政事件訴訟法3条6項2号の規定する「行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請がされた場合において,当該行政庁がその処分をすべきであるにかかわら れるべき処分をするように求める申立ては,行政事件訴訟法3条6項2号の規定する「行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請がされた場合において,当該行政庁がその処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき」という要件を充たすものと解するのが相当である。 また,控訴人は,被控訴人の過去の法令違反の状況から有効期間を5年とする更新の余地がないから,同号の「行政庁が一定の処分をすべきである」ときにも該当しないと主張するが,有効期間を5年とする更新が認められるかどうかは,被控訴人の求める義務付け訴訟の実体要件であるから,これを訴訟要件であるように主張する控訴人の主張は失当である。 結局,被控訴人の新請求の却下を求める控訴人の申立ては理由がなく採用できない。 (2)そこで,次に,被控訴人の新請求に理由があるかどうかについて検討するに,上記3において認定説示したとおり,本件更新に係る被控訴人の免許証の有効期間を3年とした控訴人の本件更新処分には,被控訴人の主張するような違法・不当な事由は認められず,その取消しを求める被控訴人の請求は理由がないものである。したがって,本件における被控訴人の新請求は,行政事件訴訟法37条の3第1項ないし3項に定める訴えに係る請求に理由があると認められるとの要件を充たさないことになるから(同法37条の3第5項),これを認容する余地はないというべきである。 したがって,被控訴人の新請求も理由がない。 以上によれば,被控訴人の本件請求は理由がなく,これを認容した原判決は 失当であるから,これを取り消して,被控訴人の請求を棄却することとし,当審で追加された被控訴人の新請求も理由がないから棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官赤塚信雄裁判官小林崇 の請求を棄却することとし,当審で追加された被控訴人の新請求も理由がないから棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官赤塚信雄裁判官小林崇裁判官佐藤陽一

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