平成18(行ウ)25 岐阜県庁裏金損害賠償履行請求等住民訴訟事件

裁判年月日・裁判所
平成21年9月2日 岐阜地方裁判所 却下
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判決文本文22,045 文字)

- 1 -平成21年9月2日判決言渡平成18年(行ウ)第25号岐阜県庁裏金損害賠償履行請求等住民訴訟事件主文 本件訴えをいずれも却下する。 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実 第1当事者の求めた裁判 原告ら(1)被告は,Aを除く別紙2相手方目録(以下掲載省略)記載の相手方らに対して,連帯して,80億8502万1897円及びうち45億6960万1000円に対する平成18年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 (2)被告が,Aを除く別紙2相手方目録記載の相手方らに対して,連帯して,80億8502万1897円及びうち45億6960万1000円に対する平成18年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求することを怠ることは違法であることを確認する。 (3)被告は,Aに対して,53億4269万7859円及びうち28億7238円に対する平成18年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 被告(1)主文同旨(2)原告らの請求をいずれも棄却する。 第2事案の概要本件は,岐阜県の住民である原告らが,岐阜県の執行機関である被告に対して,①岐阜県では,昭和61年から平成15年にかけて,Aを除く別紙2相手- 2 -方目録記載の岐阜県職員又は元職員(以下「相手方職員ら」という。)による予算執行の適正を確保する義務の違反行為があって,総額45億6960万1000円の裏金が作られ,相手方職員らには不法行為による損害賠償義務があるところ,被告は同損害賠償請求を怠っているなどとして,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,相手方職員らに対し損害賠償請求をすることを求め,②同3号に基づき,被告が上記損害賠償請求 被告は同損害賠償請求を怠っているなどとして,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,相手方職員らに対し損害賠償請求をすることを求め,②同3号に基づき,被告が上記損害賠償請求権の行使を怠っている事実の違法確認を求め,③岐阜県知事であったA(以下「相手方A」という。)には,不正経理を認識しつつ岐阜県警察本部及び岐阜県公安委員会についての調査を行わないなどの違法な財務会計行為があり,不法行為による損害賠償義務があるとして,同4号に基づき相手方Aに対し損害賠償請求をすることを求めた住民訴訟である。 争いのない事実(1)原告らは,岐阜県の住民である。 (2)被告は,岐阜県知事である。 (3)別紙3相手方役職目録の氏名欄に記載の者は,同目録「期間」欄及び「年度」欄記載の又は年度に,各役職名の職にあった。 原告の主張(1)岐阜県庁における裏金作りア新聞報道を契機として,岐阜県庁における不正な経理による資金作り(以下「裏金作り」という。)が平成18年7月5日に発覚した。岐阜県では,資金調査チーム(以下「調査チーム」という。)を設けて調査を開始するとともに,弁護士3名によるプール資金問題検討委員会(以下「検討委員会」という。)を設けて調査結果の検討を行った。 イ検討委員会がまとめた「不正資金問題に関する報告書」(以下「報告書」という。)等に記載された裏金作りの概要は次のとおりである。 (ア)平成6年度(情報公開条例施行直前)以前の裏金作りの経緯- 3 -a平成6年度以前の全庁的な裏金作り平成6度以前は,岐阜県組織のほぼ全体にわたり裏金作りが行われていた。 (a)平成6年度の総所属数①知事部局等が264所属(本庁86,現地機関178)②教育委員会が115所属(本庁11,現地機関19,県立学校85 織のほぼ全体にわたり裏金作りが行われていた。 (a)平成6年度の総所属数①知事部局等が264所属(本庁86,現地機関178)②教育委員会が115所属(本庁11,現地機関19,県立学校85)(b)平成6年度に裏金作りをしていた所属数(金額不明等の回答により推計される所属を含む。)①知事部局等が186所属(本庁73,現地機関113)②教育委員会が58所属(本庁9,現地機関16,県立学校33)上記のとおり裏金作りをしていた所属は,知事部局等においては約7割を超え(約70.4%。裏金作りをしていなかった旨の回答をした所属は,予算や職員数等の規模が小さく,裏金作りが困難なところが多い。),教育委員会においては,現地機関や県立学校を含めると,裏金作りをしていた所属の割合は約50.4%であるが,本庁のみでは81.8%,旅費等の予算が少なく裏金作りが困難であった県立学校を除外すると,裏金作りが行われていた所属は8割を超える(約83.3%強)。 以上のように,平成6年度及びそれ以前においては,全庁的に組織ぐるみで裏金作りが行われていた。 b裏金作りが行われ始めた時期裏金作りの開始時期は定かではないが相当以前から行われていたと考えられ,アンケート調査及び検討委員会が行ったヒアリングの結果によれば,遅くとも昭和40年代の初めころには既に裏金作り- 4 -がなされていたことがうかがわれる。但し,裏金作りが,このころ既に県組織の全体にわたって行われていたのか,裏金の総額等については不明確であり,正確な調査は困難である。 c裏金作りが行われた背景裏金作りが行われた要因としては,①正規の予算には計上できないが,当時の県の各所属の業務を遂行していくために必要と考えられていた費用(たとえば官官接待費用,土産代,予算措置が講ぜられなかっ た背景裏金作りが行われた要因としては,①正規の予算には計上できないが,当時の県の各所属の業務を遂行していくために必要と考えられていた費用(たとえば官官接待費用,土産代,予算措置が講ぜられなかった備品等の購入費用等)をねん出する必要性があったこと(裏金作りはこのような費用に充てるための必要悪という意識があったと考えられる。),②いわゆる予算使い切り主義の予算執行が行われていたため,予算を年度内に使い切る必要があったこと(予算を全額使わず,これを余して返還することになれば,次年度の予算が減らされる可能性が高く,また,その担当者の予算見積りの甘さを指摘される可能性もあった。)等が考えられる。 また,たとえば,現地機関の方が旅費の予算が多く,裏金作りが容易で,他方,本庁の主管課の方がこのような裏金作りが困難な場合,本庁主管課の庶務係から頼まれて現地機関の庶務係が不正な経理による資金を作って,これを本庁主管課に回すようなことをしていた部署もあった。 d裏金作りを行った担当者裏金作りは,各所属の庶務係等を中心として行われてきた。各所属の庶務係に配属された職員は,やむを得ず,職務として前任者から裏金作りを引き継いでいた。庶務係長(総務係長)又は庶務係長のいない所属における通称「庶務主任」が,裏金を管理することが多く,裏金作り自体は,人数の少ない部署等では,庶務係長や庶務主任自ら行うこともあり,庶務係長や庶務主任の命を受けて,庶務- 5 -係の実際の担当者(旅費請求の担当者,食料費の担当者等)が行うこともあった。 e所属長ないし幹部職員平成6年度以前においては,所属長をはじめとする幹部職員は,当然に前記のような裏金作りを知りながら,その費消について指示又は黙認していた。 (イ)平成7年度以降の裏金作りの状況a平成7年度ないし平成 年度以前においては,所属長をはじめとする幹部職員は,当然に前記のような裏金作りを知りながら,その費消について指示又は黙認していた。 (イ)平成7年度以降の裏金作りの状況a平成7年度ないし平成9年度平成7年度から情報公開条例が施行されたことにより,裏金作りは相当程度制限された。相当数の所属が,平成7年度の夏以降に,裏金作りをやめていったが,変わらず裏金作りをしていた所属もあった。(本庁より現地機関の方がより遅くまで裏金作りが行われた傾向がある。)また,裏金作りの大半が架空の旅費請求という手法によっていたところ,平成9年6月1日から旅費請求の場合の請求受領代理人制度を改め,旅行者本人の銀行口座振込の方式に変更されたために,架空の旅費を請求するのが難しくなり,平成9年度には裏金作りは激減した。 b平成10年度ないし平成12年度平成10年度は,衛生専門学校,高冷地農業試験場,中山間地農業試験場,農業総合研究センター及び伊自良青少年の家の5所属,平成11年度は,このうち衛生専門学校を除く4所属,平成12年度は,農業技術研究所1所属のみで新たに裏金作りがなされたと認められた。 c平成13年度以降平成13年度及び平成16年度以降には,新たに裏金作りがなさ- 6 -れたものは発見することができず,平成14年度及び平成15年度では,地方労働委員会事務局の1所属のみで新たに裏金作りがなされたと認められた。 (ウ)裏金の総額a平成7年度に作られた裏金の総額(推計額)平成7年度の1年間に作られた裏金の総額は,次のとおり,約4億6526万円と推計できる。 (a)知事部局等の各所属の金額総務部1880万円企画部1566万7000円民生部2322万2000円衛生環境部1772万2000円商工労働部1235万円農政部 と推計できる。 (a)知事部局等の各所属の金額総務部1880万円企画部1566万7000円民生部2322万2000円衛生環境部1772万2000円商工労働部1235万円農政部2208万9000円林政部1069万4000円土木部2980万円現地機関2億6484万1000円開発企業局660万円出納事務局500万円議会事務局40万円人事委員会事務局120万円監査委員事務局100万円地方労働委員会事務局20万円合計4億2958万5000円(≒4億3000万円)(b)教育委員会の各所属の金額- 7 -本庁事務局1785万円現地機関878万円県立学校904万円合計3567万円≒3600万円(c)総合計4億6525万5000円(≒4億6600万円)b平成8年度に作られた裏金の総額(推計額)(a)知事部局等1億9145万5000円(b)教育委員会1292万3000円合計2億0437万8000円c平成9年度に作られた裏金の総額(推計額)(a)知事部局等6210万3000円(b)教育委員会730万3000円合計6940万6000円d平成10年度に作られた裏金の総額(推計額)(a)知事部局等1227万2000円(b)教育委員会50万円合計1277万2000円e平成11年度に作られた裏金の総額前記のとおり,平成11年度に新たに裏金作りが行われたのは,以下の5所属のみであり,その合計額は689万円である。 (内訳)(但し,(a)ないし(c)は返還済みである。)(a)衛生専門学校51万6000円(b)高冷地農業試験場295万9000円(c)中山間地農業試験場161万3000円(d)農業総合研究センター )ないし(c)は返還済みである。)(a)衛生専門学校51万6000円(b)高冷地農業試験場295万9000円(c)中山間地農業試験場161万3000円(d)農業総合研究センター160万2000円- 8 -(e)伊自良青少年の家20万円合計689万円f平成12年度に作られた裏金の総額平成12年度に新たに裏金作りが行われたのは,以下の4所属のみであり,その合計額は558万2000円である。 (内訳)(但し,(a)及び(b)は返還済みである。)(a)高冷地農業試験場367万9000円(b)中山間地農業試験場74万2000円(c)農業総合研究センター96万1000円(d)伊自良青少年の家20万円合計558万2000円g平成13年度に作られた裏金の総額平成13年度に新たに裏金作りが行われたのは農業技術研究所1所属のみであり,金額は約12万3000円である。 h平成14年度以降平成14年度以降は,地方労働委員会事務局1所属の架空の旅費請求によるもののみであり,各年度の内訳は次のとおりである。 平成14年度0円平成15年度約5万8000円平成16年度約1万2000円(エ)裏金作りの手法a総論旅費,食糧費,消耗品費,燃料費,印刷製本費,日々雇用の職員の賃金,会議室の使用料,タクシーの賃借料,修繕費及び講師謝金等の架空請求による裏金作りが行われ,現地機関等では,農産物等の売却代金を正規の収入として掲げず保管するといった手法も見ら- 9 -れた。大半は旅費によるものであり,次が相当少なくなって食糧費によるものである。 b旅費による裏金作りの方法(架空請求)について(a)平成9年5月末までに行われた方法当時の精算払旅費は,すべての出張について請求受領代理人に対し,現 当少なくなって食糧費によるものである。 b旅費による裏金作りの方法(架空請求)について(a)平成9年5月末までに行われた方法当時の精算払旅費は,すべての出張について請求受領代理人に対し,現金で一括払いされていた。 所属の職員全員が,年度初めに,その所属の庶務係長等を請求受領代理人とする旨の届出をし,旅費請求の担当庶務係員が,毎月その所属の職員全員の精算払旅費請求(合算請求書)をする際,現実の出張旅費に架空の旅費を加えて請求すると,請求受領代理人に対して請求額が現金で一括して支払われ,請求受領代理人が出張旅費を職員に支払い,残額(裏金)を保管する。 この手続きのためには,所属長名の旅行命令書及び旅行者の旅費請求書を作成する必要がある(出張の場合,通常は「出張伺い」という書面を旅行者が作成していたが,必要な添付書類とされておらず任意の書類という扱いだったため架空の請求の場合には「出張伺い」は作成されていなかった。)が,多くの場合は,旅費請求をする時期に全職員の私印が庶務係等へ集められ,庶務係員が,まず,所属長名の旅行命令書を作成し,さらに,職員の私印と職員名の入ったゴム印を使って旅行者の架空の旅費請求書を作成し,支出金調書を作成して旅行命令書に記載された職員に代わり,旅費を現金で受け取っていた。 旅費の担当者が架空の旅費請求書を作成するにあたり,職員の休暇,実際の出張と日程が重複しないよう留意して作成する必要があり,その所属の職員の出勤簿も架空の旅費請求と矛盾しないように,旅費請求の担当者が職員の私印を使用して作成していた。 - 10 -(b)平成9年6月1日以降に行われた方法平成9年6月1日からは旅費支払方法が改められ,請求受領代理人方式を廃止し,旅行者本人への口座振替になったため,前記(a)のような方法による裏金作りは -(b)平成9年6月1日以降に行われた方法平成9年6月1日からは旅費支払方法が改められ,請求受領代理人方式を廃止し,旅行者本人への口座振替になったため,前記(a)のような方法による裏金作りは困難となり,旅費の架空請求による裏金作りは激減した。 しかし,極めてまれだが,口座振替になった後も架空の旅費請求をした例があり,所属長らが,所属の職員の協力を求めた上で,各職員の旅費振込用の口座の通帳を預かり,職員に記名押印させた払出請求書で架空の請求分の金額を引き出したり,実際の旅費と架空請求分の旅費が各職員の口座に振り込まれた後,指示された返納額(架空請求分)を返納させる等の方法で行っていた。 このような方法により裏金作りをしたのは,既に処分,返還済みの衛生専門学校のほか,畜産課(約10万円)及び岐阜家畜保健衛生所(約40万円。但し,平成9年4,5月の従来の方法による裏金作りの分を含む金額である。)がある。但し,畜産課及び岐阜家畜保健衛生所については,平成9年度までである。 また,平成14年度及び平成15年度に地方労働委員会事務局が行った方法は,自家用車で出張した分について,公共交通機関で出張したかのような旅行命令書を作成し,個人の口座に振り込まれた旅費のうち,交通費分を資金として集めるという方法であった。 (c)食糧費による裏金作りの方法について正規の食糧費は,平成6年度に細分化されるまでは,祝賀会,記念式典等の飲食,来客用飲食,会議用コーヒー及び情報交流会経費等であった。時間外勤務手当は,平成8年2月に実績支給されるようになったが,それまでは実績支給されていなかったため,正規の- 11 -予算から支出できない職員の残業用弁当や会議用コーヒー,各種交流会経費等に充てる資金をねん出し,併せて正規の予算の使い切りのため,食糧費によ までは実績支給されていなかったため,正規の- 11 -予算から支出できない職員の残業用弁当や会議用コーヒー,各種交流会経費等に充てる資金をねん出し,併せて正規の予算の使い切りのため,食糧費による裏金作りが行われた。(なお,平成7年2月に時間外勤務手当が実績支給されるようになったことから,職員の残業用弁当の支払いはなくなった。)その方法は,庶務担当者が,あらかじめ,いろいろな飲食店(レストラン,食堂,弁当屋,料理屋及び料亭等)から白紙の請求書用紙(飲食店の記名押印があるもの。)をもらっておき,正規の予算で支払われる架空の会議,来客用飲食及び情報交流会等の経費として,架空の請求書を作成(全く架空の場合もあり,人数や金額を水増しする方法もあった。)し,これによって支払いの決済(支出金調書の作成)をとり,それぞれの飲食店に支払っていた。実際には飲食を行っていないため,その支払代金は,飲食店に対する預かり金(貸分)となり,その後,正規の予算では支出できない同店での飲食(対外的な懇談会の経費及び幹部ら職員間の飲食費)のために使われるなどしていた。また,飲食店から各所属へ現金を持ち戻させていた例もあった。 また,世間で官官接待が問題とされた平成7年8月に,出納長を総括責任者とする岐阜県対外交流予算管理委員会が設置され,食糧費の総点検を行い,平成10年4月1日からは,食糧費について,式典費,対外交流費,会議費及び給食費等に細分化されたが,その後も食糧費による裏金作りはなくなっていない。 (d)消耗品費,燃料費,印刷製本費,修繕費及び役務費(切手代)による裏金作りの方法について基本的には前記(c)と同様,業者から白紙の請求書(納品書,領収書)をもらっておき,架空の請求書及び納品書を作成して支出- 12 -金調書を作成し,支払証によって現 による裏金作りの方法について基本的には前記(c)と同様,業者から白紙の請求書(納品書,領収書)をもらっておき,架空の請求書及び納品書を作成して支出- 12 -金調書を作成し,支払証によって現金を受領して,実際の費用分のみを業者に支払い,残額を裏金として保管する場合と,業者への口座振込の場合には業者への預かり金としたり,場合によっては業者から現金を持ち戻させていたこともあった。 平成10年度及び平成11年度に裏金作りをした伊自良青少年の家は,燃料費(暖房等に使用するボイラーの燃料であるA重油)につき,上記のような水増しをした請求書により,現金払いを受けて裏金を作っていた。 検討委員会は,上記(c),(d)記載の食糧費,印刷製本費及び消耗品費等の預かり金があったと思われる飲食店,事務用品店,印刷会社及びタクシー会社等13軒に対して無記名回答の照会をしたところ,10軒が回答をし,このうち,かつて預かり金があったが平成7,8年ごろ又は平成12年ごろにはなくなったとの回答が4軒,その余は預かり金は過去も現在もないという回答である。万一,現在も預かり金が残っていれば,その返還を求める必要があるため当該調査は実施されたが,現在も残っている先はないと考えられる。なお,上記のように,半数以上が預かり金は存在しなかった旨回答しているが,この調査につき業者が正直に述べないことは想定済みであり,かつては相当広い範囲で預かり金が存在したと思われる。 (e)外郭団体等への預かり金について上記(c),(d)記載の食糧費,消耗品費及び燃料費等による預かり金は,平成9年度までは,民間業者だけでなく,外郭団体や県と密接な関係のある団体に対しても存在した。但し,検討委員会の調査によれば,平成9年度までに預かり金が存在した外郭団体等は3団体(財団法人岐阜県市 平成9年度までは,民間業者だけでなく,外郭団体や県と密接な関係のある団体に対しても存在した。但し,検討委員会の調査によれば,平成9年度までに預かり金が存在した外郭団体等は3団体(財団法人岐阜県市町村行政情報センター,財団法- 13 -人岐阜県建設研究センター,財団法人岐阜県職員互助会)であり,パンチ委託料,設計等委託料及び消耗品代等の架空請求分を預かり金としたが,予算使い切り主義から行われたため,預かり金を持ち戻させたような事情はなく,これを業務以外の目的で使用されたこともなく,翌年度以降に預かり金となった分について業務委託するような方法をとっていたため,裏金作りというよりは,不適切な経理処理がなされたという評価ができる。 (f)農産物等の売却代金試験研究実施に伴って生じた生産物(野菜等の農産物)を販売した代金は,正規には県収入に払い込むべきところ,これとは別に農協等を通じて出荷し,その売上金を別口座に入金して裏金作りをするという方法である。高冷地農業試験場,中山間地農業試験場及び農業総合研究センター等はこの方法を行っていた。 (オ)裏金は,各所属の庶務係長又は庶務主任らが,現金又は預金で管理し,総括課長補佐(本庁)や総務課長(現地機関)の承認を得て,費消された。裏金の費消は,業務に関連するものもあるが,職員間における飲食や餞別代にも費消されている。 (カ)各所属で保管されていた裏金は,平成10年度から進められた岐阜県庁の組織再編を契機に,職員組合の銀行口座に移し変えて隠ぺいが図られ,今回の発覚に至った。 (2)裏金作りに対する責任ア裏金作りとは何か裏金作りとは,旅費,食糧費などの架空請求を主な方法とする不正な経理(多くは架空請求による不正な支出であるが,一部に収入に上げるべきものを上げないなどの方法によるものもあ 責任ア裏金作りとは何か裏金作りとは,旅費,食糧費などの架空請求を主な方法とする不正な経理(多くは架空請求による不正な支出であるが,一部に収入に上げるべきものを上げないなどの方法によるものもあるので,支出と収入を含む意味で不正経理と表現する。)による資金作りということができる。 - 14 -裏金作りは,その用途が問題なのではなく,岐阜県における予算が適正に執行されていない状態となることが問題なのであるから,裏金作りに関わった職員だけでなく,以下に挙げた,予算執行の適正確保に責任を負うべき者らもまた裏金作りの責任を負うべきである。 イ知事(ア)知事部局等に対して知事には,普通地方公共団体における予算の作成とその執行,会計の監督などの財務権限が集中している(法147条,149条)ため,当然に,予算執行の適正が確保されるよう注意,監督すべき義務がある。 (イ)委員会等に対して執行機関の多元主義から,知事は,教育委員会などの独立行政委員会に対して指揮監督権限を有しないが,予算執行の調査権(法221条)に基づいて調査を行い,必要な措置を講ずることができるため,予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべき義務があるといえる。 ウ副知事副知事は,知事を補佐し,職員の担任する事務を監督するなどの職務を行う(法167条)ため,知事が負うのと同様に,予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべき義務があり,当然,この中に,個々の職員が裏金作りを行わないように注意,監督する義務も含まれる。 エ出納長出納長は,現金の出納及び保管を行うなど,普通地方公共団体の会計事務をつかさどり(法170条),予算支出に関する命令機関と支出機関が分離されていることを表すため,支出の面から,予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべき義務を負う。 通地方公共団体の会計事務をつかさどり(法170条),予算支出に関する命令機関と支出機関が分離されていることを表すため,支出の面から,予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべき義務を負う。 オ監査委員監査委員は,普通地方公共団体の財務に関する事務の執行などを監査す- 15 -る(法199条)ため,監査に伴う当然の義務として,予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべき義務がある。 (3)履行請求の相手方の責任(不法行為責任)ア相手方B(以下「相手方B」という。)(ア)裏金作りの認識相手方Bは,知事時代には「岐阜県には裏金はない。」と表明し続けていたが,裏金作りが発覚した後の平成18年8月8日,自ら設定した会見において,「知事就任当時,裏金作りは半ば公然の秘密となっていた。十分承知していた。」旨を発言しており,副知事時代から裏金作りが行われていることを認識していたといえる。 また,平成18年度に三重県や愛知県等の近県で裏金作りが次々と明らかになり,実態解明が進んでいたころ,当時副知事であった相手方C(以下「相手方C」という。)が,問題が表明化する前に知事がイニシアティブをとって総点検すれば,知事のために苦労してきた職員から批判が起きたり職員の動揺や相互不信などが生じて県庁全体が混乱すると考え,相手方Bに対して,知事の出張旅費の一部に裏金が使われているとの一例を挙げて庁内事情を説明し,事態の推移を見守ることを進言した結果,相手方Bはこれを了承し,しばらく様子を見ることにした。 その後,平成9年12月に裏金問題に関して全国市民オンブズマン連絡会議が行った全国調査に対して,岐阜県は自主調査は行わない旨回答し,さらに,平成9年2月にイベント実行委員会,平成12年6月に衛生専門学校,平成13年3月に中山間地農業試験場による オンブズマン連絡会議が行った全国調査に対して,岐阜県は自主調査は行わない旨回答し,さらに,平成9年2月にイベント実行委員会,平成12年6月に衛生専門学校,平成13年3月に中山間地農業試験場による裏金作りがそれぞれ発覚した際にも,全庁調査を実施しなかった。 相手方Bは,前述した期間,副知事及び知事の職にあっただけでなく,これに先立つ昭和52年から2年間,岐阜県企画部長の職にあった。 - 16 -これらを総合すれば,相手方Bは,少なくとも副知事に就任したときから一貫して,裏金作りを知りつくしていたということができる。 (イ)注意義務違反及び不法行為責任相手方Bは知事,副知事として,予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべきもっとも重い注意義務を負っているところ,これを怠り,裏金作りを放置し,容認し,何の調査もしなかったため,報告書指摘のように,岐阜県庁において全庁規模で裏金作りが行われ,その結果,後述の損害を岐阜県に生じさせた。 したがって,相手方Bは,不法行為による損害賠償義務を負い,法242条の2第1項第4号後段の履行請求の相手方となる。なお,知事には,同243条の2の適用はなく(最高裁昭和61年2月27日判決),民法上の不法行為責任の問題となる。よって,同236条の適用もなく,除斥期間である過去20年分の損害を賠償すべきである。 イ相手方D他の副知事ら(以下「副知事ら」という。)(ア)裏金作りの認識副知事らのうち,相手方Cは,相手方Bに対して,裏金問題が表明化する前に知事がイニシアティブをとって総点検すれば,知事のために苦労してきた職員から批判が起きたり職員の動揺や相互不信などが生じて県庁全体が混乱すると考え,相手方Bに対して,知事の出張旅費の一部に裏金が使われているとの一例を挙げて庁内事情を説明し,事態の推移を 労してきた職員から批判が起きたり職員の動揺や相互不信などが生じて県庁全体が混乱すると考え,相手方Bに対して,知事の出張旅費の一部に裏金が使われているとの一例を挙げて庁内事情を説明し,事態の推移を見守ることを進言しており,これは裏金作りが行われていることを十分に認識していたものに他ならない。 また,相手方Cは,職員の移動や退任の際に多額のせん別が行われていることや予算にはない宴席が多いこと等から,裏金の存在に気づいた旨述べるため,他の副知事らも当然気づいてしかるべきであり,加えて,副知事らのうち自治省あるいは総務省出身の者は,自身が多- 17 -額のせん別を受け取っており,副知事らのうち一般職職員出身の者は,自身が裏金作りに関与した経験を有するのであるから,相手方Cを除く副知事全員もまた,裏金作りを認識していたというべきである。 (イ)注意義務違反及び不法行為責任副知事らは,前述したように予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべき注意義務を負うところ,これを怠り,裏金作りを放置し,容認し,何の調査もしなかったため,報告書指摘のように岐阜県庁において全庁規模で裏金作りが行われ,その結果,後述の損害を岐阜県に生じさせた。 したがって,副知事らは,不法行為による損害賠償義務を負い,法242条の2第1項第4号後段の履行請求の相手方となる。なお,副知事に同243条の2の適用があるか問題となるが,副知事は同条に規定されている「職員」とは性格を異にし,同条列挙の行為を行う者でもない。よって,同条の適用はなく,民法上の不法行為責任の問題となると解するべきである。その結果,法236条の適用もなく,除斥期間である過去20年分の損害を賠償すべきである。 ウ相手方Eほかの元出納長ら(以下「出納長ら」という。)(ア)裏金作りの認識出納長らは元 するべきである。その結果,法236条の適用もなく,除斥期間である過去20年分の損害を賠償すべきである。 ウ相手方Eほかの元出納長ら(以下「出納長ら」という。)(ア)裏金作りの認識出納長らは元岐阜県の一般職職員であり,裏金作りに関与してきた者たちであるから,岐阜県庁において全庁的に裏金作りが行われていることを知りつくしていた。 (イ)注意義務違反及び不法行為責任出納長らは,前述したように予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべき注意義務を負うところ,これを怠り,裏金作りを放置し,容認し,何の調査もしなかったため,報告書指摘のように,岐阜県庁において全庁規模で裏金作りが行われ,その結果,後述の損害を岐阜- 18 -県に生じさせた。 したがって,出納長らは,不法行為による損害賠償義務を負い,法242条の2第1項第4号後段の履行請求の相手方となる。なお,出納長には同243条の2の適用があるが,同条は民法上の不法行為責任の特別規定であり,行為が列挙されていることから,これは限定して解釈されるべきであり,裏金作りに関する責任は,個々の行為についてではなく,出納長が負う予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべき義務を根拠とするものであるから,同条は適用されないと解すべきである。よって,出納長に対しても民法上の不法行為責任の問題となると解すべきであり,その結果,同236条の適用もなく,除斥期間である過去20年分の損害を賠償すべきである。 エ相手方監査委員ら(以下「監査委員ら」という。)監査委員らは,前述したように予算執行の適正が確保されるように注意,監督すべき注意義務を負うところ,これを怠り,裏金作りを放置し,容認し,何の調査もしなかったため,報告書指摘のように,岐阜県庁において全庁規模で裏金作りが行われ,その結果,後述の されるように注意,監督すべき注意義務を負うところ,これを怠り,裏金作りを放置し,容認し,何の調査もしなかったため,報告書指摘のように,岐阜県庁において全庁規模で裏金作りが行われ,その結果,後述の損害を岐阜県に生じさせた。なお,監査委員は,不正経理の有無を監査することが本来的な職務であり,裏金作りを発見し得なかったことそれ自体が問題であって,裏金作りの認識の有無は問題とならない。 したがって,監査委員らは,不法行為による損害賠償義務を負い,法242条の2第1項第4号後段の履行請求の相手方となる。なお,監査委員に同243条の2の適用があるか問題となるが,監査委員は同条に規定されている「職員」とは性格を異にし,同条列挙の行為を行う者でもない。 よって,同条の適用はなく,民法上の不法行為責任の問題となると解するべきである。その結果,法236条の適用もなく,除斥期間である過去20年分の損害を賠償すべきである。 - 19 -オ相手方A(以下「相手方A」という。)相手方Aは,岐阜県知事の職にあり,岐阜県の財産の管理権限を有する。この財産の管理権限の中には,岐阜県が被った損害については,これをその相手方に対して請求し,回復すべき義務が含まれ,これを怠るときには,違法な財務会計行為として,自身が損害を賠償すべきことになる。 ところで,相手方Aは,知事部局等及び教育委員会について,平成4年度分より前の裏金作りを不問にし,相手方職員らに対して損害賠償請求をしないことを表明している。また,岐阜県公安委員会及び岐阜県警察本部(以下「公安委員会及び県警本部」という。)については調査すら行っていない。これは,岐阜県の損害の回復を違法に怠るものである。そこで,知事部局等及び教育委員会については昭和61年度から平成3年度までの6年分について,公安委員会及び県警本 )については調査すら行っていない。これは,岐阜県の損害の回復を違法に怠るものである。そこで,知事部局等及び教育委員会については昭和61年度から平成3年度までの6年分について,公安委員会及び県警本部については過去20年間の全額について,賠償の義務を負う。 したがって,相手方Aは法242条の2第1項第4号前段の履行請求の相手方となる。 カ相手方職員らの連帯責任相手方職員らの行為は,共同不法行為に該当するので,その損害賠償義務は不真正連帯債務となる。 (4)怠る事実の違法確認被告は,相手方職員らに対して損害賠償請求すべき義務があるにもかかわらず,これを行わず,財産の管理を怠っている。 (5)損害ア過去20年分の裏金が対象(ア)岐阜県は,平成18年7月5日の発覚以来,調査チームの内部調査及び検討委員会の検討などを経て,裏金作りの実態を覚知することができたもので,この経過をもって損害及び加害者を知った。 - 20 -その結果,民法の不法行為に関する除斥期間である20年間を損害賠償請求の対象期間とすべきこととなる。したがって,昭和61年度分からの裏金が損害となる。 (イ)相手方B以外の相手方職員らについては,就任期間外のものがあるが,就任以前の分は,裏金作りの調査,点検をせずに損害賠償請求を怠ったという意味において,賠償すべき損害の範囲に含まれると解すべきであり,退任後の分は,裏金作りの調査,点検を怠ったために,裏金作りが継続されたという意味において,賠償すべき損害の範囲に含まれると解すべきである。結局,相手方職員ら全員について,過去20年分の裏金が損害賠償の範囲に含まれることになる。 イ裏金の金額(ア)知事部局等及び教育委員会a平成6年度以前の裏金の額報告書によれば,平成6年度に作られた裏金は知事部局等で4億3 0年分の裏金が損害賠償の範囲に含まれることになる。 イ裏金の金額(ア)知事部局等及び教育委員会a平成6年度以前の裏金の額報告書によれば,平成6年度に作られた裏金は知事部局等で4億3000万円,教育委員会で3600万円,合計4億6600万円とされ,それが,情報公開条例の施行された平成7年度は知事部局等で1億9145万5000円,教育委員会で1292万3000円,合計2億0437万8000円になり,以降減少していったとされる。 ところで,裏金作りは昭和40年代から行われるようになり,それが全庁的に広がっていったものとされている。 そうすると,全庁的に広がった裏金作りが,平成6年度までは継続して行われており,情報公開条例の施行という外在的要因で減少に転じたにすぎないとみるべきである。したがって,少なくとも昭和61年度から平成6年度までは同額の裏金作りが行われていたとみるのが相当である。 - 21 -昭和61年度から平成6年度の9年間の合計年間4億6600万円×9=41億9400万円b平成7年度以降の裏金の額報告書による金額が相当である。 平成7年度から平成17年度の11年間の合計2億9922万1000円c上記の合計44億9322万1000円(イ)公安委員会及び県警本部調査チーム及び検討委員会は,公安委員会及び県警本部についての調査を行っていないが,全国各地の警察本部に関する裏金作りの実態を考慮すると,岐阜県においても公安委員会及び県警本部について裏金作りが行われていたものとみるべきであり,その裏金額は,知事部局等及び教育委員会と同程度とみるべきである。 そこで,公安委員会及び県警本部の裏金作りを,教育委員会の裏金作りから次のとおり推定する。 報告書41頁によれば,教育委員会の平成4年度から平成6年度の裏金率は全 委員会と同程度とみるべきである。 そこで,公安委員会及び県警本部の裏金作りを,教育委員会の裏金作りから次のとおり推定する。 報告書41頁によれば,教育委員会の平成4年度から平成6年度の裏金率は全体の7.7%,平成7年度は6.3%,平成8年度は10.5%であるから,これを7%とみなし,平成18年度における岐阜県全体の予算に占める教育委員会の割合は約25%であり,警察費は約6%であるから,1.7%(≒6÷25×7)を公安委員会及び県警本部の裏金の基本率とみなす。その結果,公安委員会及び県警本部の過去20年分の裏金の推計額は,次のとおりとなる。 44億9322万1000円×1.7%≒7638万円(ウ)遅延損害金上記は不法行為に基づく損害であるので,発生の時から年5分の遅延損害金が発生する。裏金作りは,単年度ごとに行われていることや,予算消- 22 -化のためにも行われていることから,各年度の末日までには行われたものと推測することができるため,当該年度の末日(3月31日)を遅延損害金の起算日とすると,別紙4損害目録(以下掲載省略)①,同②のとおり計算される。 (エ)裏金及び遅延損害金の合計a裏金の合計知事部局等及び教育委員会合計44億9322万1000円公安委員会及び県警本部合計7638万円合計45億6960万1000円b遅延損害金を含めた合計知事部局等及び教育委員会合計79億4987万4038円公安委員会及び県警本部合計1億3514万7859円合計80億8502万1897円ウ相手方Aに対する請求額(ア)知事部局等及び教育委員会別紙4損害目録①のとおり,昭和61年度から平成3年度の6年間分の裏金の額は27億9600万円(=4億6600万円×6),遅延損害金を含む合計は52億0755万0000円 知事部局等及び教育委員会別紙4損害目録①のとおり,昭和61年度から平成3年度の6年間分の裏金の額は27億9600万円(=4億6600万円×6),遅延損害金を含む合計は52億0755万0000円となる。 (イ)公安委員会及び県警本部別紙4損害目録②のとおり,裏金の額は7638万円,遅延損害金を含む合計は1億3514万7859円となる。 (ウ)合計裏金の合計は28億7238万円,遅延損害金を含む合計は53億4269万7859円となる。 (6)監査請求原告らは,平成18年9月29日又は同年10月25日に,岐阜県監査委- 23 -員に対し,法242条1項にもとづいて,本件訴えと同旨の住民監査請求(以下「本件住民監査請求」という。)を行った。 岐阜県監査委員は,平成18年11月7日付けをもって本件住民監査請求を却下する旨の通知を行った。 (7)被告の本案前の主張に対する反論ア(ア)住民監査請求は,地方公共団体の執行機関又は職員について,財務会計上の不正な行為等があることを住民が新聞記事その他何らかの情報により察知し,それが法的な観点から見て違法又は不当の疑いがあると考える場合に,そのような事実があるかどうかについて,監査委員に監査を求める制度であり,住民監査請求の段階において,監査対象の詳細な特定等を厳格に求めることは,住民に過重な負担を課し,住民監査請求の制度をないがしろにするものであって妥当でなく,監査委員の職権の発動を促すに足りる程度の記載があれば足りると解すべきである。 最高裁第三小法廷平成2年6月5日判決には,住民監査請求制度について解釈上の誤りがあり,変更されるべきものである。 (イ)仮に,上記最高裁第三小法廷判決に解釈上の誤りがないとしても,次のとおり,本件住民監査請求は,その監査対象が特定されているといえる。 について解釈上の誤りがあり,変更されるべきものである。 (イ)仮に,上記最高裁第三小法廷判決に解釈上の誤りがないとしても,次のとおり,本件住民監査請求は,その監査対象が特定されているといえる。 a財務会計上の行為又は怠る事実(以下「財務会計行為等」という。)が複数である場合で,当該行為等の性質,目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合には,当該行為等の一つ一つを個別的,具体的に摘示することまでは必要でないところ(前記最高裁判決参照),本件では,原告らは,長年にわたり岐阜県庁において全庁的,組織的に行われた裏金作りを問題としており,一体とみてその違法又は不当性を判断するのが相当な場合といえる。 - 24 -原告らは,住民監査請求書及びこれに添付された証する書面により,対象となる一連の公金の支出について,組織的な裏金作りという特定の目的,期間,裏金作りの手法をもって特定をしているのであり,これらの一連,一体の公金の支出のみが監査請求の対象となっており,それ以外の公金の支出については監査請求の対象となっていないことは明白である。b本件住民監査請求は,裏金作りのための個々の不正資金のねん出行為を財務会計行為とする構成のほか,岐阜県が相手方らに対して有する不法行為に基づく損害賠償請求権を行使を怠っているという構成でもなされている。 当該不法行為とは,相手方らが岐阜県庁の全体についての裏金作りを調査(以下「全庁調査」という。)すべき義務に反しこれを行わなかったことをいい,この不作為により,裏金作りのための個々の不正資金のねん出行為を行った者に対する損害賠償請求権が時効消滅したり,時間の経過により証拠が散逸し立証不能になるなどして,当該損害賠償請求権の行使が事実上不可能になるなどして,当該損害賠 の個々の不正資金のねん出行為を行った者に対する損害賠償請求権が時効消滅したり,時間の経過により証拠が散逸し立証不能になるなどして,当該損害賠償請求権の行使が事実上不可能になるなどして,当該損害賠償請求権の合計額相当分の損害が生じたものである。 これらの不法行為内容等については,本件住民監査請求の請求書及び同請求書に添付された本件報告書等の記載を総合すれば明らかであるから,本件住民監査請求の監査対象は特定されているといえる。 イ(ア)相手方Bの在任当時には相手方Bに対する損害賠償請求権の行使を期待することは不可能であり,相手方Bの退任後,検討委員会の報告がなされた平成18年9月1日時点において裏金作りが明確になり,同損害賠償請求権の行使が可能になったと考えるべきであるから,本件住民監査請求は請求期間内になされたものといえる。 (イ)また,仮に相手方B在任時においても権利行使が可能であったとし- 25 -ても,裏金作りは,県庁全体にわたり,組織的,計画的,継続的になされたもので,極めて巧妙な手口で行われ,隠蔽工作まで行われたのであるから,住民が相当な注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかったのであるから,本件住民監査請求が請求期間内になされなかったことには法242条2項但書の正当理由があるというべきである。 被告の主張(1)本件住民監査請求は,いずれも対象となる財務会計行為等が他の事項と区別して特定認識できるほどに個別具体的に摘示されておらず,その監査対象が特定されていない。 また,本件住民監査請求の対象となる財務会計行為等は,その性質,目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合には当たらない。 したがって,本件住民 定されていない。 また,本件住民監査請求の対象となる財務会計行為等は,その性質,目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合には当たらない。 したがって,本件住民監査請求は,その監査対象が特定されているといえず不適法であり,本件訴えは,適法な住民監査請求を経ておらず不適法である。 (2)ア本件住民監査請求では,前記のとおり,原告らの監査請求対象が不特定であるから,そもそも,法242条の2第2項の「当該行為」の具体的内容,時点等が明らかではないが,仮に,本件報告書に記載された最も直近の不正資金作出行為から起算しても,平成15年度の行為であって,本件住民監査請求時点で既に1年以上が経過しており,法定の請求期間を徒過していることが明らかである。 イ仮に,本件住民監査請求の対象が怠る事実である場合であっても,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とするものである場合には,当該行為が違法とされて初めて当該- 26 -請求権が発生するのであるから,監査委員は当該行為が違法であるか否かを判断しなければ当該怠る事実の監査を遂げることができないという関係にあり,これを客観的,実質的にみれば,当該行為を対象とする監査を求める趣旨を含むものとみざるを得ず,当該行為のあった日又は終わった日を基準として法242条の2第2項を適用すべきであるから,やはり,この場合も前記アのとおり,本件住民監査請求は,法定の請求期間を徒過してなされたものとなる。 ウしたがって,本件住民間請求は,法定の請求期間経過後になされた不適法なものであり,本件訴えは,適法な住民監査請求を経ておらず不適法である。 第3当裁判所の判断 本件住 なされたものとなる。 ウしたがって,本件住民間請求は,法定の請求期間経過後になされた不適法なものであり,本件訴えは,適法な住民監査請求を経ておらず不適法である。 第3当裁判所の判断 本件住民監査請求の内容は,別紙5「岐阜県庁ぐるみの裏金事件に関する住民監査請求書」(乙5の1)(掲載省略)及び別紙6「第二次岐阜県庁ぐるみの裏金事件に関する住民監査請求書」(乙6)(掲載省略)のとおりである。 請求の趣旨1,2項にかかる請求と本件住民監査請求について怠る事実を対象としてされた監査請求であっても,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とするものである場合には,当該行為が違法とされて初めて当該請求権が発生するのであるから,監査委員は当該行為が違法であるか否かを判断しなければ当該怠る事実の監査を遂げることができないという関係にあり,これを客観的,実質的にみれば,当該行為を対象とする監査を求める趣旨を含むものとみざるを得ない(最高裁昭和62年2月20日第二小法廷判決参照)。 また,法242条1項は,普通地方公共団体の住民に対し,当該地方公共団体の執行機関又は職員による一定の具体的な財務会計行為等に限って,その監- 27 -査と非違の防止,是正の措置とを監査委員に請求する権能を認めたものであって,それ以上に,一定の期間にわたる財務会計行為等を包括して,これを具体的に特定することなく,監査委員に監査を求めるなどの権能までを認めたものではないと解するのが相当である。 そうとすれば,監査請求の対象となる財務会計行為等の特定の程度は,監査委員の職権の発動を促すに足りる程度では不十分であり,他の事項から区別して特定認識できるように個別的,具 と解するのが相当である。 そうとすれば,監査請求の対象となる財務会計行為等の特定の程度は,監査委員の職権の発動を促すに足りる程度では不十分であり,他の事項から区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示することを要し,また,財務会計行為等が複数である場合には,当該財務会計行為等の性質,目的等に照らし,これらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除き,各財務会計行為等を他の財務会計行為等と区別し,特定して認識できるように個別的,具体的に摘示しなければならず,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合しても,監査請求の対象が上記の程度に具体的に摘示されていないと認められるときは,当該監査請求は,請求の特定を欠くものとして不適法というべきである(最高裁第三小法廷平成2年6月5日判決,同第一小法廷平成16年11月25日判決,同第三小法廷平成16年12月7日判決参照)。 これを本件についてみるに,本件住民監査請求のうち請求の趣旨1,2項に関する部分は,相手方職員らによる予算執行の適正を確保する義務の違反行為があって,総額45億6960万1000円の裏金が作られ,同職員らには不法行為による損害賠償義務があるところ,被告は同損害賠償請求を怠っているというもので,怠る事実の相手方に対する請求権を対象とするものであるが,つまるところ,特定の個々の支出が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とする趣旨を含むものであると解される。 そうとすると,個々の不正支出を個別的,具体的に摘示していない本件監査請求は,請求の特定を欠くといわざるを得ない。 - 28 -この点,原告らは,本件住民監査請求では,長年 むものであると解される。 そうとすると,個々の不正支出を個別的,具体的に摘示していない本件監査請求は,請求の特定を欠くといわざるを得ない。 - 28 -この点,原告らは,本件住民監査請求では,長年にわたり岐阜県庁において全庁的,組織的に行われた裏金作りを問題としており,各不正支出を一体とみてその違法性を判断するのが相当な場合に当たるため,本件住民監査請求の対象となる財務会計行為等は,対象となる一連の公金の支出について,組織的な裏金作りという特定の目的,期間,裏金作りの手法をもって特定をしているので,特定に欠けるところはない旨主張するが,裏金作りとは,諸経費の架空請求など不正経理による不正資金作出をいい,仮にある所属における旅費の架空請求という程度の特定がされているとしても,旅費の支出には適法な支出も混在するのであるから,監査委員が具体的に監査を行い,その違法性を判断するためには,個々の支出ごとに判断するほかなく,一口に裏金作りといっても,その費消目的も様々であるから,同一目的に向けた一連の不正支出とも認められない。 したがって,裏金作りに係る各不正支出は,一体とみてその違法性を判断すべき例外的な場合には当たらない。 以上によれば,本件住民監査請求のうち請求の趣旨1,2項に関する部分は,請求の特定を欠くものとして不適法であり,本件訴えのうち請求の趣旨1,2項に関する部分は,適法な住民監査請求を経ていないということができる。 請求の趣旨3項にかかる請求と本件住民監査請求について請求の趣旨3項にかかる請求は,岐阜県知事であった相手方Aには,不正経理を認識しつつ岐阜県警察本部及び岐阜県公安委員会についての調査を行わないなどの違法な財務会計行為があり,不法行為による損害賠償義務があるというもので,不正経理を認識しつつ岐阜県警察本部及び岐阜 経理を認識しつつ岐阜県警察本部及び岐阜県公安委員会についての調査を行わないなどの違法な財務会計行為があり,不法行為による損害賠償義務があるというもので,不正経理を認識しつつ岐阜県警察本部及び岐阜県公安委員会についての調査を行わないことなどをもって財務会計行為であり,相手方Aがその当該職員であることを前提とするものであるが,そもそも,不正経理を認識しつつ岐阜県警察本部及び岐阜県公安委員会についての調査を行わないことなどは- 29 -財務会計行為ではなく,財産の管理を怠る事実(不法行為による損害賠償請求権の行使を怠るもの)であると解されるから,その請求自体,前提を誤ったものである。 その上に,原告らは,本件住民監査請求において,不正支出を特定して,不正経理による損害賠償の内容を特定するなどしておらず(乙5の1,6),相手方Aの財産の管理を怠る事実の内容を具体的に特定していないといわざるを得ない。 したがって,本件訴えのうち請求の趣旨3項に関する部分は,適法な住民監査請求を経ていないということができる。 以上によれば,本件訴えは,不適法であるからこれを却下すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部裁判長裁判官内田計一裁判官永山倫代裁判官山本菜有子

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