主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告が,被告のⅢ級成果区分③の地位にあることを確認する。 2 被告は,原告に対し,別紙請求額一覧表の請求額(円)欄記載の各金員及びこれらに対する起算日(支給日)欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の従業員である原告が,原告の処遇について平成14年6月にⅢ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤に降級し(以下「本件降級」という),同15年6月にⅡ級成果区分⑤からⅡ級成果区分④に成果区分の見直しがされた(以下「本件成果区分の見直し」という)のはいずれも違法であるとして,被告に対し,原告の処遇が依然としてⅢ級成果区分③であることの確認を求めるとともに,Ⅲ級成果区分③であるとしたら支払われたであろう賃金,賞与と現実に支払われた賃金,賞与との差額(賃金については平成14年7月分から同16年5月分までの間,賞与については同14年12月分,同15年6月分,同年12月分,同16年6月分)及びこれらに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠等で認定した事実は当該証拠等を文末に掲記する)(1) 被告は,昭和52年12月,富士電機株式会社(以下「富士電機」という)と富士通株式会社(以下「富士通」という)が出資して設立された資本金12億円の株式会社であり,制御用電子計算機システムの製造及び販売等を業としている。被告には,会社設立から平成13年2月末日までの間は,いわゆる正社員と呼ばれる期間の定めなく雇用された労働者(以下「社員」という)はおらず,富士電機及び富士通からの出向社員が被告の仕事に従事しており,就業規則もそれぞれの会社の就業規則が,それぞれの会社の出向社員に適用され る期間の定めなく雇用された労働者(以下「社員」という)はおらず,富士電機及び富士通からの出向社員が被告の仕事に従事しており,就業規則もそれぞれの会社の就業規則が,それぞれの会社の出向社員に適用されるという,変則的な二重の労務管理が行なわれていた。被告は,前記変則的な二重の労務管理を解消するために,平成13年3月1日,富士電機,富士通から被告に出向していた社員を,社員の同意の下,出向元会社を退社させて被告に転籍させ,被告の制定した就業規則の下で勤務させることにした。(証人P1【1,3頁】,弁論の全趣旨)(2) 原告は,富士電機の社員であり,平成10年ころから,被告に出向していたが,同13年3月1日,富士電機を退社し,被告に転籍した。 (3) 富士電機及び被告はいずれもユニオンショップ制を採っている。このため,原告は,被告に転籍前は富士電機労働組合(以下「FD労組」という)の組合員であり,被告に転籍後も同社の従業員で組織されたエフ・エフ・シー労働組合(以下「FUN」という)が結成されるまでの間は従前どおりFD労組の組合員であり,FUNが結成された平成13年6月29日以降は,FUNの組合員となっている。(証人P1【11頁】,弁論の全趣旨)(4) 被告は,平成13年3月1日,就業規則1条記載の被告従業員のうち,一般社員(従業員のうち,幹部社員,嘱託,定期社員を除いた者)の処遇に関し,一般社員処遇規程(以下「本件処遇規程」という)を制定したが,その内容は,概略,次のとおりである(甲10,乙2の1及び2)。 ア一般社員の処遇体系をⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4つの等級で構成する。 イ等級とは,業務上,各人が担う職責の重さであり,職責とは,ビジネス遂行上,各人が担う果たすべき課題を意味する。 ウ各等級の職責の重さは,次のとおりとする。 Ⅰ級初任格付けⅡ級上司の する。 イ等級とは,業務上,各人が担う職責の重さであり,職責とは,ビジネス遂行上,各人が担う果たすべき課題を意味する。 ウ各等級の職責の重さは,次のとおりとする。 Ⅰ級初任格付けⅡ級上司の指示に基づき,主として定められた要領・規定・前例に従い業務を進めることに加え,簡単な応用業務を遂行できるレベル。 Ⅲ級上司の一般的な管理のもとに,専門的・応用的な知識,技術に基づき,担当する範囲の業務を一部例外的な処理も含め自ら企画・立案し進めることができるレベル。また,担当範囲の責任者として,プロジェクト管理等事業運営にかかわる事項の管理を行なう。 Ⅳ級上司の包括的管理のもとに,高度な専門的・応用的な知識,技術に基づき,広範囲かつ例外的な処理も含めた業務を自ら企画・立案して進めることができるレベル。また,グループの責任者として,グループ全体の損益管理等事業運営に重大な影響を及ぼす事項の管理を行なうと共に,部下の指導・育成にあたる。 エ評価は,上期・下期の年2回実施し,半期ごとに単独で行い,前期・翌期に左右されない。 オ Ⅰ・Ⅱ級は,業務遂行状況に基づく相対評価とし,評価単位は等級ごととする。評価ランク・評価ポイント・相対評価の分布は,次のとおりである。 評価ランク評価ポイント分布E 3 10%F 2 20%G 1 50%H 0 20%カ Ⅲ・Ⅳ級は,目標管理制度の評価による絶対評価とする。評価ランク・評価ポイント・定義(絶対評価の基準)は,次のとおりである。 評価ランク評価ポイント定義(絶対評価の基準)SS 4 目標を大幅に上回る成果S 3 目標を上回る成果A 2 目標達成 。 評価ランク評価ポイント定義(絶対評価の基準)SS 4 目標を大幅に上回る成果S 3 目標を上回る成果A 2 目標達成B 1 目標未達C 0 目標を大幅に未達キ Ⅱ~Ⅳ級においては,それぞれ①,②,③,④,⑤の成果区分を設定する。 ク処遇の見直しは,昇級・降級・復級及び成果区分の見直しとし,毎年6月1日付けで行なう。 ケ昇級とは,上位等級への見直しを意味し,次の基準によって行なう。 (ア) Ⅰ級→Ⅱ級入社2年目に自動的に昇級(イ) Ⅱ級→Ⅲ級直近2年4期の評価ポイント合計が4点以上であることその他(ウ) Ⅲ級→Ⅳ級直近2年4期の評価ポイント合計が10点以上であることその他コ降級とは,下位等級への見直しを意味し,次の基準によって行なう。 各級共通直近2年4期の評価ポイント合計が2点以下であることサ復級とは,前年度の降級から上位等級への昇級を意味し,次の基準によって行なう。この基準を達成しない場合は,翌年度以降通常の取扱いに移行する。 (ア) Ⅱ級→Ⅲ級降級後1年2期の評価が上期・下期ともF以上であること(イ) Ⅲ級→Ⅳ級降級後1年2期の評価が上期・下期ともS以上であることシ成果区分の見直しは,年1回行い,前年度上期・下期の評価により次のとおり決定する。 ページ(1)(ア) Ⅱ級(相対評価)評価の組合せ成果区分E/E 区分⑤E/F,F/F,E/G 区分④F/G,E/H,G/G,F/H 区分③G/H,H/H 区分②(イ) Ⅲ,Ⅳ級(絶対評価)評価の組合せ G 区分④F/G,E/H,G/G,F/H 区分③G/H,H/H 区分②(イ) Ⅲ,Ⅳ級(絶対評価)評価の組合せ成果区分SS/SS 区分⑤SS/S,S/S,SS/A 区分④S/A,SS/B,A/A,S/B,SS/C 区分③A/B,S/C,B/B,A/C 区分②B/C,C/C 区分①ス Ⅲ・Ⅳ級への昇級の場合は,上位等級の成果区分①に格付ける。 セ Ⅱ・Ⅲ級への降級の場合は,下位等級の成果区分⑤に格付ける。 ソ決定した当年度成果区分が前年度成果区分と比較し,2区分以上ダウンする場合は,1区分ダウンにとどめる。 (5) 被告は,平成13年4月1日,就業規則50条,本件処遇規程を受けて,賃金規程を制定したが,その内容は,概略,次の通りである(甲91,乙1,3)。 第3条(賃金の体系)賃金体系は次の通りとする。 1.Ⅳ・Ⅲ級(CREATE勤務者)成果累積給,成果給,生計手当,CREATE勤務手当2.Ⅳ・Ⅲ級(CREATE勤務者以外)成果累積給,成果給,生計手当,時間外勤務手当3.Ⅱ・Ⅰ級成果累積給,成果給,不就業手当,生計手当,時間外勤務手当第14条(成果累積給)成果累積給は所定労働日にかかわりなく下記算式により支給するものとし,準欠勤・フレックス準欠勤についてはその時間分を控除する。但し,Ⅳ級,Ⅲ級に対しては定額とする。 成果累積給-成果累積給/月平均所定労働日数×休暇欠勤日数第15条(成果給)1.Ⅳ級,Ⅲ級に対し,別表第1(略)の賃率表に定める額を定額により支給する。 2.Ⅱ級,Ⅰ級に対し,別表第1(略)の賃率表に定める額を所定労働日にかかわり 労働日数×休暇欠勤日数第15条(成果給)1.Ⅳ級,Ⅲ級に対し,別表第1(略)の賃率表に定める額を定額により支給する。 2.Ⅱ級,Ⅰ級に対し,別表第1(略)の賃率表に定める額を所定労働日にかかわりなく下記算式により支給するものとし,準欠勤,フレックス準欠勤についてはその時間分を控除する。 成果給-成果給/月平均所定労働日数×休暇欠勤日数(6) 以上のとおり,被告においては,社員の処遇体系は,職責の重さ,すなわちビジネス遂行上,各人が担う果たすべき課題に応じて,Ⅰ級からⅣ級までの等級に区分され,また,Ⅰ級を除くそれぞれの等級が①から⑤までの5段階の成果区分に分けられており,等級及び成果区分に応じて成果給の額が定められ,等級に応じて成果累積給が定められる内容となっている(甲10,乙2の1及び2,同3,弁論の全趣旨)。 (7) 原告は,被告に転籍し,Ⅲ級成果区分③(月額給与30万1450円)に格付けられた。 (8) 被告は,平成14年6月4日,FUNとの間で,窓口協議の場において,本件処遇規程によれば,降級は直近2年4期の評価ポイント合計が2点以下と規定されているが,同14年度に限り,①1年2期の評価ポイントの合計が1点以下の者を降級対象とし,②対象者のうち,所属長が,現等級(平成13年度等級)の等級定義に照らした目標設定が不可能と判断した者とすること,③被告において降級対象者に対して十分な説明とその後の動機付けがされることが合意された(以下「本件労使合意」という)(乙11,12,13の1及び2,同33,証人P1【1頁】)。 (9) 被告の原告に対する平成13年上期・下期の評価はいずれもC(目標を大幅に未達,評価ポイント0)であった。 (10) 原告の上司であったP2総務部長は,平成14年6月24日,原告に対し,前記(8)の同年度の降級基準(1年2期の 年上期・下期の評価はいずれもC(目標を大幅に未達,評価ポイント0)であった。 (10) 原告の上司であったP2総務部長は,平成14年6月24日,原告に対し,前記(8)の同年度の降級基準(1年2期の評価ポイントの合計が1点以下の者を降級対象とする)を説明し,原告が降級対象者であり,同年6月1日付けで,Ⅲ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤に降級させる旨伝えた。 (11) 被告の原告に対する平成14年上期・下期の評価はいずれもG(評価ポイント1)の成績であり,復級に必要な評価ポイントの合計に達しなかった。原告の平成14年上期・下期の評価であれば,Ⅱ級成果区分③に格付けされるべきところ,被告は,本件処遇規程7条(2)④ⅳ(前記(4)ソ)に従い,原告を,同15年6月1日付けで,Ⅱ級成果区分⑤からⅡ級成果区分④へ,本件成果区分の見直しをした。 (12) 被告は,原告に対し,平成14年7月1日以降はⅡ級成果区分⑤の地位にあることを前提に,また,同15年6月1日以降はⅡ級成果区分④の地位にあることを前提に,賃金,賞与を支払っている。 (13) 原告は,平成14年度の降級は2年4期の成績で評価すべきところ,被告は,1年2期(同13年上期・下期)の成績で原告を降級させたもので違法であり,したがって,その後行われた同15年6月の本件成果区分の見直しも違法であるとして,被告に対し,依然としてⅢ級成果区分③の地位にあることの確認を求めるとともに,差額の賃金,賞与の支払を求めている。 2 争点(1) 本件労使合意の効力,意味等【被告の主張】ア労働協約・労使慣行(ア) 富士電機とFD労組との間には,労使で合意した事項は,書面化すると否とを問わず,これを労働協約の一部とするという長年の労使慣行が存在していた。被告とFUNは,この慣行を承継した。 (イ) したがって,本件労使合意 D労組との間には,労使で合意した事項は,書面化すると否とを問わず,これを労働協約の一部とするという長年の労使慣行が存在していた。被告とFUNは,この慣行を承継した。 (イ) したがって,本件労使合意は,口頭でされたものであるが,上記労使慣行により労働協約としての効力を有しており,FUNの組合員である原告は当該労働協約に拘束される。 (ウ) 仮に労働協約としての効力を有するためには,合意内容を書面化することが必要だとすれば,被告は,平成15年8月18日,FUNとの間で,本件労使合意を確認書という形で書面化しており,本件労使合意が口頭でされたとの瑕疵は,前記確認書により治癒している。 イ民法上の合意(代理)(ア) FUNは,原告を含む組合員全員から,昇級・降級に関する事項につき,包括的な交渉・妥結権限を与えられている。 (イ) FUNは,前記(ア)の権限に基づき,被告との間で,本件労使合意をしたのであるから,代理の法理により,その法律効果は,原告に帰属する。 ページ(2)ウ原告と被告との間の個別合意(明示的合意)(ア) 原告の上司であったP2総務部長は,平成14年6月24日,原告に対し,本件労使合意の内容(同年度は1年2期の評価ポイントの合計が1点以下の者を降級対象とする)を説明し,原告が降級対象者であり,同年6月1日付けで,Ⅲ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤に降級させる旨伝えた。原告は,P2総務部長の前記説明に納得し,本件降級に対し,異議を述べなかった。 (イ) 原告は,P2総務部長の説明後約半年間は,被告に対し,本件降級に異議があるとの意思表示をしたことはなく,Ⅱ級成果区分⑤の賃金を異議なく受領していた。 (ウ) したがって,原告は,平成14年6月24日,被告との間で,同年度の降級は,本件労使合意と同一の基準に従って行うことについて,個別的に合 とはなく,Ⅱ級成果区分⑤の賃金を異議なく受領していた。 (ウ) したがって,原告は,平成14年6月24日,被告との間で,同年度の降級は,本件労使合意と同一の基準に従って行うことについて,個別的に合意したというべきである。 エ原告と被告との間の個別合意(黙示的合意)(ア) 原告らが被告に転籍するに当たっては労働条件に関し未解決の問題が山積していたところ,被告は,平成13年3月1日ころ,原告を含む被告に転籍した従業員との間で,前記未解決の問題に関しては,転籍後に労使協議を行うなかで合意し,前記転籍者は,これらの労使合意を個々の労働条件として受け入れることを黙示的に合意した。 (イ) 被告とFUNは,前記黙示の合意の範囲内において,平成14年度の降級基準について本件労使合意をしたのであるから,本件労使合意は,原告を拘束する。 オ一般的労務指揮権(ア) 本件処遇規程には,平成14年度の昇給・降級基準が記載されていなかった。 (イ) そこで,被告は,労働条件に関する労働契約の空白の部分につき,包括的に有する労務指揮権に基づき,原告に対し人事権を発動し,降級を指示したのであり,かかる指示は有効である。 カ本件処遇規程の解釈(被告の答弁書第2Ⅱ6,9Ⅰ(1),第2準備書面第1,3(2)①,第4準備書面第1,3(5)5等)(ア) 前記オ(ア)と同一であるので,当該部分を引用する。 (イ) 前記のとおり,本件処遇規程には平成14年度の降級基準が記載されておらず,記載が欠落していたので,被告は,同年度については1年2期評価ポイントの合計が1点以下の者を降級対象とする旨解釈することにし,FUNも本件労使合意で,かかる解釈を承認した。 【原告の主張】ア労働協約・労使慣行に対し(ア) 【被告の主張】アの(ア)ないし(ウ)はいずれも争う。 (イ) 被告とFUNとの間 釈することにし,FUNも本件労使合意で,かかる解釈を承認した。 【原告の主張】ア労働協約・労使慣行に対し(ア) 【被告の主張】アの(ア)ないし(ウ)はいずれも争う。 (イ) 被告とFUNとの間で,書面化されない労使合意が労働協約として有効であるとの労使慣行はないし,仮にそのような労使慣行があるとしたら,労働組合法14条に違反するものであり,無効である。労働協約は,合意内容が書面化されてはじめて組合員を拘束する効力を有するのであり,口頭の合意は労働協約としては効力がない。なお,本件労使合意から1年以上経過後に,合意内容を書面化しても,瑕疵は治癒されない。 (ウ) 本件労使合意は,平成14年6月4日になってされたものを,同月1日に遡って効果を遡及させるものであり,無効である。 イ民法上の合意(代理)に対し(ア) 【被告の主張】イの(ア)(イ)はいずれも争う。 (イ) 原告は,FUNに対し,昇級・降級に関する事項につき包括的な交渉・妥結権限を与えていないし,平成14年度の降級に関する本件労使合意はFUNの組合規約に従った手続ではないので,原告を拘束する効力はない。 ウ原告と被告との間の個別合意(明示的合意)に対し(ア) 【被告の主張】ウの(ア)ないし(ウ)はいずれも争う。 (イ) 原告は,平成14年6月24日,P2総務部長に対し,降級は直近2年4期の評価ポイントの合計で決まるはずであると直ちに抗議しており,個別的合意が成立していないことは明らかである。 エ原告と被告との間の個別合意(黙示的合意)に対し(ア) 【被告の主張】エの(ア)(イ)はいずれも争う。 (イ) 転籍に当たっての未解決の労働条件中に平成14年度の降級基準は入っていない。本件処遇規程により,降級は,直近2年4期の評価ポイントの合計によって行うことが決まっていたからである。 (ウ) 。 (イ) 転籍に当たっての未解決の労働条件中に平成14年度の降級基準は入っていない。本件処遇規程により,降級は,直近2年4期の評価ポイントの合計によって行うことが決まっていたからである。 (ウ) 本件労使合意は,FUNの組合規約に違反する合意であり,このような組合規約違反の合意に,組合員である原告が拘束されるいわれはない。 オ一般的労務指揮権に対し(ア) 【被告の主張】オの(ア)(イ)はいずれも争う。 (イ) 本件処遇規程には,平成14年度の昇給・降級基準が記載されている。すなわち,直近2年4期の評価ポイントの合計で決めることが明記されている。 (ウ) 労務指揮権だけで,賃金減額を伴う隆級基準を決定することはできないはずである。 カ本件処遇規程の解釈に対し(ア)【被告の主張】カの(ア)(イ)はいずれも争う。 (イ) 本件処遇規程には,平成14年度の昇給・降級基準は直近2年4期の評価ポイントの合計で決めることが明記されており,被告の本件処遇規程の解釈は誤っている。 (2) 被告の原告に対する平成13年上期・下期の評価は相当か。 【被告の主張】ア原告は,平成13年6月,Ⅲ級成果区分③に格付けされた。当該格付けは,原告が在籍していた富士電機の基準による原告の平成13年度の賃金を被告の同年度の賃金に読み替えた結果,Ⅲ級成果区分③に格付けされたものである。 イ被告のⅢ級職の社員は,目標管理制度の適用を受け,その評価は,絶対評価がされる。 ウ目標管理制度の下にあるⅢ級職の社員は,各年度の上期,下期において,同人が所属する部門の目標にそって,所属長と打ち合わせを行い,役割分担と担当業務の課題を決める。当該社員は,次いで,目標評価シートの「成果評価の対象となる目標」欄に,いくつかの個別業務目標とそれらのウエイト(%)及び各月の予定を記入し,また,「目標設定 行い,役割分担と担当業務の課題を決める。当該社員は,次いで,目標評価シートの「成果評価の対象となる目標」欄に,いくつかの個別業務目標とそれらのウエイト(%)及び各月の予定を記入し,また,「目標設定にあたって」欄に,目標達成に向けた取組等を具体的に記入し,これを所属長に提出する。当該社員は,所属長とすり合わせをし,目標の修正などを行って,目標評価シートの「評価」欄以外を完成させる。そして,当該社員が,完成した目標評価シートの原本を所持し,所属長は,その写しを所持する。Ⅲ級職の社員が目標評価シートを作成し,これを被告に提出する時期は,上期が5月末日ころ,下期が11月末日ころである。 エ Ⅲ級職の社員は,各期が終了すると,目標評価シートに,個別業務目標ごとの達成度の自己評価,評価時において見直された各個別業務のウエイトを記入し,また,目標外の成果,能力開発,行動の規範,総合評価等の各本人欄に自己評価を記入し,かつ,それぞれの欄に自己評価(SS,S,A,B,Cのうちのいずれか)を記入して所属長に提出する。所属長は,これらに,所属長としてのコメントを記入し,かつ,各欄の所属長評価とともに,総合評価を決めて記入する。所属長は,当該目標評価シートを人事部に上げ,最終的には全社的に評価の調整を行い,社長に報告をして最終的な評価の確定がされる。 オところで,原告は,平成13年上期の目標評価シートを上期期間中に提出せず,上期が終了した後に提出した。こページ(3)のため,原告の提出した平成13年上期の目標評価シートは,目標自体が達成度にあわせて「あとづけ」で設定されており,仕事のウエイトも自己の都合のいいように設定されていた。しかも,原告の設定した個別業務目標のうち,環境ISO活動の立案・実施,α地区の再配置の実施は,Ⅲ級職レベルには程遠い低レベルの目標設定であった ,仕事のウエイトも自己の都合のいいように設定されていた。しかも,原告の設定した個別業務目標のうち,環境ISO活動の立案・実施,α地区の再配置の実施は,Ⅲ級職レベルには程遠い低レベルの目標設定であったこと等から,被告は,原告の平成13年上期の成績をCと評価した。 カ原告の上司であるP2総務部長は,原告に対し,平成13年上期の評価がC評価となったこと及びその理由を説明したところ,原告は,異議を述べなかった。 キ原告は,平成13年下期には,期初に,被告に対し,目標評価シートを提出した。当該目標評価シートには,原告の設定した個別業務目標及びウエイトとして,安全衛生規程及び要綱の完成(25%),新しい会社案内の作成(25%),オフィスの整理整頓の推進(25%),α地区環境ISOの推進(25%)と記載されていた。 ク被告は,前記原告の個別業務目標について,①安全衛生規程は作成したが,安全衛生要綱は完成することができず,仕事をそのまま放置した,②新しい会社案内は平成13年12月に完成する予定であったのが,同14年3月までかかった,③オフィスの整理整頓の推進は期待した効果が上がらず,廃却倉庫をあふれさせるという失態をおかした,④α地区環境ISOは目標を達したと判定した。そして,被告は,原告の平成13年下期の評価は,総じていえば,最後まで責任をとらない,仕事がうまくいかなければ逃げるといった傾向があり,企画立案ができていないだけでなく,自らの主体的な動きができていないとして,Cと評価した。 ケ原告の上司であるP2総務部長は,原告に対し,平成13年下期の評価がCとなったこと及びその理由を説明したが,原告は,これに異議を述べなかった。 【原告の主張】ア 【被告の主張】のうちアないしエは認める。同オのうち,原告が平成13年上期の目標評価シートを同年上期終了後に提出 こと及びその理由を説明したが,原告は,これに異議を述べなかった。 【原告の主張】ア 【被告の主張】のうちアないしエは認める。同オのうち,原告が平成13年上期の目標評価シートを同年上期終了後に提出したこと,被告が原告の同年上期の成績をCと評価したことは認めるが,その余は否認する。同カは争う。同キは認める。同クのうち,被告が原告の平成13年下期の成績をCと評価したことは認めるが,その余は否認する。同ケは争う。 イ原告が,平成13年上期の目標評価シートを提出するのが遅れたのは,部の目標設定がなかったか,あるいは設定が遅かったことによるものであり,原告に責任はない。また,原告の提出した平成13年上期の目標評価シートはあとづけのものではない。なぜなら,環境ISOについては期初に富士電機に提出して承認されているし,α地区の再配置予算も事前に決まっていたからである。 ウ原告が平成13年上期に行った仕事は,概略,次のとおりである。 (ア) 環境ISOについて原告は,幹部社員であるP3担当課長(以下「P3課長」という)の仕事を肩代わりして行っており,幹部社員に近い仕事をしている。しかも,原告は,被告の子会社である株式会社FFCシステムズの環境ISOの支援もしている。 (イ) α地区の再配置について原告は,平成13年上期に,旧産業ソリューション部の設備,備品をα地区(日野市)から本社(渋谷区)に移動する仕事に従事している。当該仕事では,原告が業者との窓口となって手配を進め,移動当日には原告が1人で業者を指揮しており,Ⅲ級職の役割を果たしている。 (ウ) α地区動力費について原告は,平成13年上期に,動力費の按分等について,富士電機と交渉しており,按分を含む動力費のチェックはⅢ級職相当の仕事である。 (エ) 以上のとおり,原告は,平成13年上期,Ⅲ級職とし 費について原告は,平成13年上期に,動力費の按分等について,富士電機と交渉しており,按分を含む動力費のチェックはⅢ級職相当の仕事である。 (エ) 以上のとおり,原告は,平成13年上期,Ⅲ級職としての目標を達成しており,評価はA(目標達成)とすべきである。 エ原告が平成13年下期に行った仕事は,概略,次のとおりである。 (ア) 安全衛生規程及び要綱について原告は,要綱案を所属長に提出したが,所属長であるP2総務部長はこれを放置した。原告は,所属長から要綱案の見直しを指示されておらず,要綱を作成していないとの被告の評価は不当である。 (イ) 新しい会社案内の作成について新しい会社案内の納期は幹部社員の方針転換で延期されたが,延期された納期までには作成しており,何ら問題はない。 (ウ) オフィスの整理整頓について原告は,平成13年下期に,倉庫の不要品1200箱を処分し,事務所スペースも83㎡確保という成果を出している。被告は,廃却倉庫が一時あふれたことを問題とするが,何ら実害はなかった。 (エ) α地区環境ISOについて原告は,平成13年下期,紙リサイクル率計算方法の改善,化学物質の環境影響評価等の工夫をしている。原告は,富士電機による監査時には,推進員であるP3課長に代わり,すべての質問に答えている。 (オ) 以上のとおり,原告は,平成13年下期,Ⅲ級職としての目標を達成しており,評価はA(目標達成)とすべきである。 (3) 被告の原告に対する平成14年上期・下期の評価は相当か。 【被告の主張】ア Ⅱ級職の社員には,目標管理制度の適用はなく,業務遂行状況に基づく相対評価がされるところ,原告は,平成14年6月1日付け(通知を受けたのは同月24日)で,Ⅲ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤に降級するとの本件降級処分を受けた。 イ原告の平成14年 務遂行状況に基づく相対評価がされるところ,原告は,平成14年6月1日付け(通知を受けたのは同月24日)で,Ⅲ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤に降級するとの本件降級処分を受けた。 イ原告の平成14年上期の仕事振りは,相変わらずきめ細かな指示をしなければ仕事が進んでいかない状況であり,事業統括部全体で他のⅡ級職の社員と比較して,特に原告が秀でているとはいえなかった。そこで,被告は,原告の平成14年上期の成績を,Ⅱ級職としての標準評価であるGと評価した。 ウ原告の平成14年下期の仕事振りは,同年上期と変化がなく,相変わらずきめ細かい指示をしなければ仕事が進んでいかない状況であり,事業統括部全体で他のⅡ級職の社員と比較して,原告が特に秀でているとはいえなかった。そこで,被告は,原告の平成14年下期の成績を,Ⅱ級職としての標準評価であるGと評価した。 エ以上のとおり,原告は,平成14年上期・下期ともGの評価しか受けていないので,本来であれば,前年度G/Gの評価を受けた者の格付けであるⅡ級成果区分③にダウンすべきところ,「決定した当年度成果区分が前年度成果区分と比較し2区分以上ダウンする場合は,1区分ダウンにとどめる。」という本件処遇規程7条2項④ⅳの規定により,同15年6月1日付けで,Ⅱ級成果区分④にとどまった。 【原告の主張】ア 【被告の主張】アは認める。同イのうち,被告が原告の平成14年上期の評価をⅡ級職としての標準評価であるGと評価したことは認めるが,その余は否認する。同ウのうち,被告が原告の平成14年下期の評価をⅡ級職としての標準評価であるGと評価したことは認めるが,その余は否認する。同エのうち,本件処遇規程7条2項④ⅳの内容が被告主張のとおりであること,被告は,平成15年6月1日付けで,原告をⅡ級成果区分④に格付けしたことは認めるが,その余は ことは認めるが,その余は否認する。同エのうち,本件処遇規程7条2項④ⅳの内容が被告主張のとおりであること,被告は,平成15年6月1日付けで,原告をⅡ級成果区分④に格付けしたことは認めるが,その余は争う。 イ平成14年上期の評価についてページ(4)原告は,平成14年上期について,目標評価シートを作成した。P2総務部長は,当該目標評価シートに記載された4項目の個別業務目標について,ABBAと評価している。のみならず,原告は,平成14年7月,P4担当課長(幹部社員,以下「P4課長」という)から部門推進員の役目を引き継ぎ,サーベイランス(査察)に合格している。 以上のとおり,原告は,平成14年上期,Ⅲ級職以上の仕事をしていたことは明らかである。 ウ平成14年下期の評価について(ア) 原告は,平成14年下期の期初ころ(同年10月),新宿地区での環境ISO取得の担当となり,準備を開始し,同15年9月,予定より3か月早く環境ISOを取得した。 (イ) 原告は,平成14年下期においても,α地区の部門推進員の役目を続け,富士電機による監査に合格している。 (ウ) 原告は,平成14年下期,ISO14001取得済みの会社を訪問し,取得のための取材を行った。 (エ) 以上のとおり,原告は,平成14年下期,Ⅲ級職以上の職責を果たしている。 エ被告は,原告に対する平成14年6月のⅢ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤への本件降級処分が正しいという前提で,同15年6月の本件成果区分の見直し(Ⅱ級成果区分⑤からⅡ級成果区分④への成果区分の見直し)を行っている。しかし,そもそも,被告の原告に対する平成14年6月の本件降級処分が違法である以上,同15年6月の本件成果区分の見直しも違法となる。なぜなら,被告の処遇制度は,前年度の処遇をもとに処遇の見直しを行う仕組みとなっているからで 原告に対する平成14年6月の本件降級処分が違法である以上,同15年6月の本件成果区分の見直しも違法となる。なぜなら,被告の処遇制度は,前年度の処遇をもとに処遇の見直しを行う仕組みとなっているからである。したがって,被告の原告に対する平成14年上期・下期の評価は,本来はⅢ級職に相応しいか否かで評価を行うべきである。 第3 争点に対する判断 1 本件労使合意の効力,意味等(争点(1))(1) 労働協約・労働慣行の成否ア本件労使合意は,被告とFUNとの間の口頭の合意によりなされている(争いのない事実等(8))。被告は,被告(使用者)とFUN(労働組合)との間の口頭でなされた合意も,労働協約として有効であると主張するので,以下,この点について判断する。 イ労働組合法14条によれば,使用者と労働組合との間で労働条件その他の合意が成立しても,合意内容が書面に記載されていない以上,労働協約として組合員に対し効力が及ばないとされており,これは,確定した判例法理でもある(最小3判平13年3月13日民集55巻2号395頁,都南自動車教習所事件)。したがって,本件労使合意は,口頭のものである以上,労働協約としての効力はないと解するのが相当である。 ウこの点に関し,被告は,富士電機とFD労組との間には,労使で合意した事項は,書面化すると否とを問わず,これを労働協約の一部とするという長年の労使慣行が存在しており,被告とFUNは,この慣行を承継しており,したがって,本件労使合意も前記労使慣行により労働協約としての効力を有すると主張する。 確かに,証拠(乙5,7,18,19)によれば,①富士電機とFD労組との間で締結された平成12年4月1日付けの労働協約106条には,「協議会において協議決定した事項中,会社組合双方が必要と認めたものは成文化し,別段の定めをしない限りこ によれば,①富士電機とFD労組との間で締結された平成12年4月1日付けの労働協約106条には,「協議会において協議決定した事項中,会社組合双方が必要と認めたものは成文化し,別段の定めをしない限りこの協約の有効期間満了の日まで有効とする」と規定していること,②被告とFUNとの間で締結された同13年7月1日付け労働協約80条及び改訂された同14年11月1日付け労働協約80条にも前記①と同様の規定が存在することが認められる。 しかし,前記労働協約の文言も,成文化しない労使合意が有効であるとまでは記載しておらず,仮に成文化しない労使合意を有効とする労使慣行があるとすれば,かかる労使慣行は労働組合法14条に反する慣行であり,かかる慣行に法的拘束力を認めることは公序に反し,許されないと解するのが相当である。のみならず,本件全証拠を検討するも,被告とFUNとの間には,口頭の労使合意に,労働協約の効力,取りわけ組合員を拘束するまでの規範的効力のある労働協約が成立したと取り扱う労使慣行が成立していたと認めるに足りる的確な証拠は存在しない。 以上によれば,口頭の労使合意も労働協約として有効とする労使慣行の存在を前提とする被告の主張は,その余の点を判断するまでもなく理由がない。 エなお,被告は,平成15年8月18日,FUNとの間で,本件労使合意を確認書という形で書面化しており,本件労使合意が口頭でなされたとの瑕疵は治癒していると主張する。 確かに,証拠(乙20,33,証人P1【1頁】)によれば,被告は,平成15年8月18日,FUNとの間で,本件労使合意を確認書という形で書面化していることが認められる。しかし,本件労使合意は平成14年6月4日のものであり,しかも,本件労使合意の内容は既に原告を含む被告社員に対し同年6月24日に適用されている本件にあっては,その後約 書面化していることが認められる。しかし,本件労使合意は平成14年6月4日のものであり,しかも,本件労使合意の内容は既に原告を含む被告社員に対し同年6月24日に適用されている本件にあっては,その後約1年以上経過後に合意内容が書面化されたとしても,その瑕疵は治癒するものではない。なぜなら,本件労使合意が労働協約として有効であるためには,当該合意を適用する前に書面化しておく必要があるからであり,当該合意を適用後に書面化しても,当該書面は法的には何らの意味がないからである。したがって,本件労使合意が口頭でなされたとの瑕疵が治癒しているとの被告の主張は,その余の点を判断するまでもなく理由がない。 オ小括以上によれば,本件労使合意を労働協約,労使慣行として原告に効力を及ぼそうとする被告の主張は理由がないというべきである。 (2) 民法上の合意(代理)の成否ア被告は,本件労使合意が労働協約としての効力がないとしても,合意が成立している以上,代理の法理により,その法律効果は原告に帰属すると主張する。 イ本件労使合意の当事者が原告であればともかく,本件労使合意の一方当事者は,あくまでも組合員ではなく,労働組合(FUN)である。そうだとすると,本件労使合意に,民法上の代理を観念する余地はないというべきである。よって,被告の民法上の合意(代理)の主張は,その余の点を判断するまでもなく理由がない。 (3) 原告と被告との間の個別合意(明示的,黙示的合意)の成否ア被告は,原告との間で平成14年度の降級基準について本件労使合意と同一内容の明示的あるいは黙示的な個別合意が成立したと主張する。 イしかし,証拠(甲69,71,証人P2【14,15頁】,原告本人【4頁】)によれば,P2総務部長は,平成14年6月24日,原告に対し,本件降級を告げたところ,原告は,即座に, 成立したと主張する。 イしかし,証拠(甲69,71,証人P2【14,15頁】,原告本人【4頁】)によれば,P2総務部長は,平成14年6月24日,原告に対し,本件降級を告げたところ,原告は,即座に,P2総務部長に対し,同年度の降級は直近2年4期の評価ポイントの合計で決まるところ,本件降級は同13年上期・下期の1年2期の評価ポイントの合計で決めたものであり,これには従えないとして異議を述べたことが認められる。 ウ前記イによれば,原告は被告のP2総務部長に対し本件労使合意に従えない旨異議を述べており,そうだとすると,原告と被告との間に個別合意が成立する余地はないというべきである。よって,個別合意(明示的,黙示的)が成立しているとの被告の主張は,その余の点を判断するまでもなく理由がない。 (4) 一般的労働指揮権の成否被告は,一般的労務指揮権に基づき,原告に対し人事権を発動し,平成14年6月に降級を指示したのであり,かかる指示は有効であると主張する。 使用者である被告が,社員である原告に対し,一般的労務指揮権を有していることに異論を差し挟む余地はない。しかし,だからといって,一般的労務指揮権から,賃金減額を伴う平成14年度降級基準(1年2期で判断する)を導き出すことは困難というべきであり,この点の被告の主張は,その余の点を判断するまでもなく理由がない。 ページ(5)(5) 本件処遇規程の解釈の成否ア被告は,本件処遇規程には,平成14年度の昇給・降級基準が記載されていなかったため,被告は,同年度については同13年上期・下期の1年2期の評価ポイントの合計が1点以下の者を降級対象とする旨解釈することにし,FUNも本件労使合意で,かかる解釈を承認したと主張するので,以下,この点について判断する。 イ認定事実等前記争いのない事実等,証拠(甲10,12 1点以下の者を降級対象とする旨解釈することにし,FUNも本件労使合意で,かかる解釈を承認したと主張するので,以下,この点について判断する。 イ認定事実等前記争いのない事実等,証拠(甲10,12,50,69,乙2の1及び2,同3,8ないし12,13の1及び2,同14,15,23,25,31の2,同33,証人P1,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 被告は,昭和52年12月,富士電機と富士通が出資して設立された会社であり,会社設立から平成13年2月末日までの間は,いわゆる正社員と呼ばれる期間の定めなく雇用された社員はおらず,富士電機及び富士通からの出向社員が被告の仕事に従事しており,就業規則もそれぞれの会社の就業規則が,それぞれの会社の出向社員に適用されるという,変則的な二重の労務管理が行なわれていた。被告は,前記変則的な二重の労務管理を解消するために,平成13年3月1日,富士電機,富士通から被告に出向していた社員について,社員の同意の下,出向元会社を退社させて被告に転籍させ,被告の制定した就業規則の下で勤務させることにした。(争いのない事実等(1))(イ) 被告は,平成13年3月1日の転籍に先立ち,同12年12月6日,FD労組及び富士通労働組合に対し,転籍後の労働条件に関し,「あたらしい労働条件について」という冊子を交付し,これに基づいて説明した。説明の概要は,概ね次のとおりである。被告は,労働条件について,「成果主義を基本とした制度とし,年功的な要素は極力少なくする。社員一人一人の自主性を尊重する。わかりやすいシンプルでかつオープンな制度とする。」ことを基本とすると説明した。また,被告は,一般社員の処遇に関し,職責の重さに従いⅠ級からⅣ級の等級に区分し,成果と報酬との関連を強めるため各等級ごとに成果に応じ①か ルでかつオープンな制度とする。」ことを基本とすると説明した。また,被告は,一般社員の処遇に関し,職責の重さに従いⅠ級からⅣ級の等級に区分し,成果と報酬との関連を強めるため各等級ごとに成果に応じ①から⑤までの区分を設定すること,昇級・降級は直近2年4期の評価ポイントの合計で決めることなどを説明した。(甲12,50,69,乙23,33,証人P1【1頁】,原告本人【1頁】)(ウ) 原告は,富士電機に入社し,平成10年ころから,被告に出向していた。原告は,被告の前記(イ)の説明を聞いた後,同13年3月1日,富士電機を退社し,被告に転籍した。なお,富士電機及び被告はいずれもユニオンショップ制を採っている。(争いのない事実等(2)(3),甲50,69,原告本人【1,2頁】,弁論の全趣旨)(エ) 被告は,平成13年3月1日,前記(イ)の説明に従い,原告ら一般社員の処遇に関し,本件処遇規程を制定したが,その内容は,前記争いのない事実等(4)記載のとおりであるが,本件降級,本件成果区分の見直しとの関係で,関連する部分を抜粋すると,次のとおりである(争いのない事実等(4))。 a 一般社員の処遇体系をⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4つの等級で構成するが,等級とは,業務上,各人が担う職責の重さであり,職責とは,ビジネス遂行上,各人が担う果たすべき課題を意味する。 b 各等級の職責の重さは,次のとおりとする。 Ⅱ級上司の指示に基づき,主として定められた要領・規定・前例に従い業務を進めることに加え,簡単な応用業務を遂行できるレベル。 Ⅲ級上司の一般的な管理のもとに,専門的・応用的な知識,技術に基づき,担当する範囲の業務を一部例外的な処理も含め自ら企画・立案し進めることができるレベル。また,担当範囲の責任者として,プロジェクト管理等事業運営にかかわる事項の管理を行なう。 c 評価は, 術に基づき,担当する範囲の業務を一部例外的な処理も含め自ら企画・立案し進めることができるレベル。また,担当範囲の責任者として,プロジェクト管理等事業運営にかかわる事項の管理を行なう。 c 評価は,上期・下期の年2回実施し,半期ごとに単独で行い,前期・翌期に左右されない。 d Ⅱ級は,業務遂行状況に基づく相対評価とするが,評価ランク・評価ポイント・相対評価の分布は次のとおりである。 評価ランク評価ポイント分布E 3 10%F 2 20%G 1 50%H 0 20%e Ⅲ級は,目標管理制度の評価による絶対評価とするが,評価ランク・評価ポイント・定義(絶対評価の基準)は,次のとおりである。 評価ランク評価ポイント定義(絶対評価の基準)SS 4 目標を大幅に上回る成果S 3 目標を上回る成果A 2 目標達成B 1 目標未達C 0 目標を大幅に未達f Ⅱ,Ⅲ級においては,それぞれ①,②,③,④,⑤の成果区分を設定する。 g 処遇の見直しは,昇級・降級・復級及び成果区分の見直しとし,毎年6月1日付けで行なう。 h 降級とは,下位等級への見直しを意味し,次の基準によって行なう。 各級共通直近2年4期の評価ポイント合計が2点以下であることⅰ 成果区分の見直しは,年1回行い,前年度上・下期の評価により次のとおり決定する。 Ⅱ級(相対評価)評価の組合せ成果区分E/E 区分⑤E/F,F/F,E/G 区分④F/G,E/H,G/G,F/H 区分③G/H,H/H 区分② 成果区分E/E 区分⑤E/F,F/F,E/G 区分④F/G,E/H,G/G,F/H 区分③G/H,H/H 区分②j Ⅲ級からⅡ級への降級の場合は,下位等級の成果区分⑤に格付ける。 k 決定した当年度成果区分が前年度成果区分と比較し,2区分以上ダウンする場合は,1区分ダウンにとどめる。 (オ) 被告は,平成13年4月1日,就業規則50条及び本件処遇規程を受けて,賃金規程を制定したが,その内容は,前記争いのない事実等(5)記載のとおりであり,一般社員の賃金は,成果累積給,成果給等から構成されており,いわゆる成果主義の処遇体系を採っている(争いのない事実等(5))。 (カ) 前記(エ)(オ)のとおり,被告においては,社員の処遇体系は,職責の重さ,すなわちビジネス遂行上,各人が担う果たすべき課題に応じて,Ⅰ級からⅣ級までの等級に区分され,また,Ⅰ級を除くそれぞれの等級が①から⑤までの5段階の成果区分に分けられており,等級及び成果区分に応じて成果給の額が定められ,等級に応じて成果累積給が定められる,いわゆる成果主義の処遇体系が採られている(争いのない事実等(6),甲10,乙2の1及び2,同3)。 (キ) ところで,本件処遇規程によれば,前記(エ)のとおり被告社員の昇級・降級は直近2年4期の評価ポイント合計に基づき行うことになっていたところ,平成14年度の昇級・降級(同年6月1日付けで見直し)については,被告社員はいずれも同13年3月1日に富士電機,富士通から転籍してきた社員ばかりであり,同年上期・下期の評価ポページ(6)イントしかなかったため,被告における直近2年4期の評価ポイントの合計を得ることができなかった。しかも,本件処遇規程等には,平成14年度の昇級・降級措置について ,同年上期・下期の評価ポページ(6)イントしかなかったため,被告における直近2年4期の評価ポイントの合計を得ることができなかった。しかも,本件処遇規程等には,平成14年度の昇級・降級措置についての特別の定め等が設けられていなかったため,労使共に,同年度の昇級・降級をどうすべきかという問題に直面した。(乙8,弁論の全趣旨)(ク) 以上のように,被告において社員の1年2期分の評価ポイントしか持っていない場合の本件処遇規程の昇級・降級基準である直近2年4期の評価ポイントの合計をどのように解釈するかについては,次のような解釈が可能である。第1の解釈方法は,直近2年4期と規定されているが,直近2年4期の被告での評価ポイントがない以上,平成14年度の昇級・降級はすることができないと解する方法である。第2の解釈方法は,直近2年4期と規定されている以上,平成12年度の富士電機,富士通の評価と同13年度の被告の評価とを併せて,同14年度の昇級・降級を行うと解する方法である。第3の解釈の方法は,被告での評価は平成13年上期・下期の1年2期分しかないので,同14年度は,当該評価を2倍したもので,昇級・降級を行う方法(換言すれば,2年4期の評価ポイントの半分の評価ポイントで昇級・降級を考えるという方法)である。 第1の解釈方法を採り,昇級・降級を1年間停滞させることは,被告が社員の転籍時に掲げた処遇制度設計のコンセプトの一つである成果主義の処遇体系を採ったことに矛盾する考え方であり,被告,FUNとも,そのような解釈を採ることには消極であった。被告は,当初,第2の解釈方法によって,平成14年度の昇級・降級を行おうと考えていた。しかし,富士電機及び富士通の評価基準が複雑であるとともに,両社間での評価態度の違いも大きく,第2の解釈方法を採ることは公平性の観点から問題があ よって,平成14年度の昇級・降級を行おうと考えていた。しかし,富士電機及び富士通の評価基準が複雑であるとともに,両社間での評価態度の違いも大きく,第2の解釈方法を採ることは公平性の観点から問題があることが判明し,被告,FUNとも,第2の解釈方法は採れないと判断した。そこで,成果主義の処遇体系を採る被告の処遇制度のもと,社員のモチベイションを維持するためには,平成14年度の昇級・降級を実施すべきであり,その場合,2年4期の評価ポイントの半分を基準に,被告での1年2期の評価ポイントで昇級・降級を決めるという第3の解釈方法が最も難点が少なく,労使双方とも,第3の解釈方法を採ることを本件労使合意で相互に確認したが,その経緯のあらましは,次のとおりである。(乙8,12,33,証人P1【20,21頁】)aFUNは,平成14年2月,被告に対し,同年度の春闘における賃金に関する要求事項の一つとして,「昇級条件となる2000年度評価の読み替え方法について」明確化せよとの要求を出した。FUNは,平成14年3月5日開催された第1回春季労使協議会において,被告との間で,本件を含めた転籍時の労働条件に関する懸案事項につき,窓口協議又は拡大窓口協議の場で協議することを合意した。被告は,平成14年3月15日,同月19日,同月22日及び同月27日に開催された拡大窓口協議の場において,FUNに対し,①被告の評価制度と親会社の評価制度とではその親会社間も含め評価体系・評価態度が異なっていること,②富士通では相対評価の分布が複数あり,被告における評価分布と異なっていること,③公平性の確保という観点から,過去の親会社の評価を被告の評価と読み替えることには問題があること,④平成14年度に限り,1年2期の評価ポイントにより対応したいと提案し,FUNもこれを了承し,昇級については,平成 保という観点から,過去の親会社の評価を被告の評価と読み替えることには問題があること,④平成14年度に限り,1年2期の評価ポイントにより対応したいと提案し,FUNもこれを了承し,昇級については,平成13年上期・下期の1年2期の評価ポイントの合計,換言すると,前記第3の解釈方法により決めることに合意した。(乙8ないし10,12,33,証人P1【20,24,25頁】)b 成果主義を採る被告の処遇体系のもとでは,被告としては,昇級と降級は表と裏の関係,いわば一体の関係にあることから,降級についても平成13年上期・下期の1年2期の評価ポイントで行うことについてFUNの了解がとれたものと考えていた。しかし,間もなく,FUNは,昇級のみ合意し,降級については,別途協議するとの認識でいることが判明した。そこで,被告は,平成14年4月23日,FUNに対し,再度降級に関する提案を行なった。その内容は,昇級と同じく,平成14年度は,同13年上期・下期の1年2期分の評価ポイントに基づいて降級を行うというもの,換言すれば,前記第3の解釈方法を採るというものであった。被告とFUNは窓口協議を重ね,平成14年6月4日,同年度の降級は同13年上期・下期の1年2期分の評価ポイントの合計に基づき決定すること,すなわち,前記第3の解釈方法で降級者を決定することを,本件労使合意で相互に確認した。相互に確認した内容をもう少し詳しく述べると,次のとおりである。(乙11,12,13の1及び2,同31の2,同33,証人P1【23,25,26,41頁】)① 1年2期分の評価ポイントが1点以下の者を対象とする。 ② 対象者のうち,所属長が,現等級(平成13年度等級)の等級定義に照らした目標設定が不可能と判断した者とすること③ 降級対象者に対して十分な説明とその後の動機付けがされること(ケ) 象とする。 ② 対象者のうち,所属長が,現等級(平成13年度等級)の等級定義に照らした目標設定が不可能と判断した者とすること③ 降級対象者に対して十分な説明とその後の動機付けがされること(ケ) 被告は,前記基準に基づき,平成13年上期・下期の1年2期の評価ポイントの合計が1点以下の社員17名を選び,そのうち11名について,所属長の判断で降級させた。ちなみに,原告の平成13年上期・下期の成績はいずれもCで評価ポイントの合計が0点とされており,また,富士電機での同12年上期・下期の成績もいずれもCで評価ポイントの合計が0点とされていた。このため,被告は,前記第3の解釈方法を採った場合は勿論のこと,第2の解釈方法(平成12年度は親会社の評価を使用する)を採った場合も,降級の対象者になる。なお,原告を除く10名の降級者は,被告の降級処分に何ら異議を述べず,これに従った。(乙13の1及び2,同14,15,25,31の2,証人P1【43頁】,弁論の全趣旨)ウ当裁判所の判断前記イで認定した事実によれば,①本件処遇規程によれば,被告社員の昇級・降級は直近2年4期の評価ポイントの合計に基づき行うことになっていたところ,平成14年度の昇級・降級(同年6月1日付けで見直し)については,被告社員はいずれも同13年3月1日に富士電機,富士通から転籍してきた社員ばかりであり,同年上期,同下期の1年2期の評価ポイントしかなかったため,被告における直近2年4期の評価ポイントを得ることができなかったこと,②このため,直近2年4期の解釈について,3つの解釈方法が考えられること,③第1の解釈方法である平成14年度の昇級・降級を行わないということは,被告が社員の転籍時に掲げた処遇制度設計のコンセプトの一つである成果主義の処遇体系を採ったことと矛盾すると考えられること,④第2の 第1の解釈方法である平成14年度の昇級・降級を行わないということは,被告が社員の転籍時に掲げた処遇制度設計のコンセプトの一つである成果主義の処遇体系を採ったことと矛盾すると考えられること,④第2の解釈方法である平成12年度分の評価は親会社である富士電機,富士通の評価を使用するという方法は,両社の評価基準が複雑であるとともに,両社間での評価態度の違いも大きく,公平性の観点からみて問題があること,⑤残る解釈方法は,平成14年度の昇級・降級を2年4期の評価ポイントの半分を基準に,被告での同13年上期・下期の評価ポイントの合計で昇級・降級を決めるとの解釈であるところ,当該解釈方法は,成果主義の処遇体系を採る被告の処遇制度に合致すること,最も難点の少ない解釈であること,⑥労使双方とも,平成14年度の昇級・降級は前記第3の解釈方法によるのが相当であると考え,本件労使合意をしたこと,⑦前記第3の解釈方法に従い,被告において平成14年度に降級したのは原告を含め11名であるところ,原告を除く10名は第3の解釈方法による降級を承諾していること,⑧原告は,前記第3の解釈方法では勿論のこと,前記第2の解釈方法を適用しても降級対象者となったことが認められる。 以上によれば,被告においては,本件処遇規程の昇級・降級基準である直近2年4期の解釈が,平成14年度の昇級・降級を決めるに当たって不明確であったということができ,これを前記第3の解釈方法を採り,2年4期の評価ポイントの半分を基準に,被告での同13年上期・下期の1年2期の評価ポイントの合計で昇級・降級を決定するとの解釈を採ることは,成果主義の処遇体系を採る被告のもとでは合理的な解釈であり,何ら不合理ではないというべきである。よって,被告は,平成14年度の昇級・降級を,同13年上期・下期の1年2期の評価ポイントの合計を基 ことは,成果主義の処遇体系を採る被告のもとでは合理的な解釈であり,何ら不合理ではないというべきである。よって,被告は,平成14年度の昇級・降級を,同13年上期・下期の1年2期の評価ポイントの合計を基準に決定することができるというべきである。 なお,原告は,本件処遇規程によれば,平成14年度の降級は同年6月1日で行うべきところ,同月24日に行っていることを捉え,違法であると主張するが,被告は,同月分は降級前のⅢ級成果区分③の給与を支払っており,同年7ページ(7)月分以降になって降級後のⅡ級成果区分⑤に該当する給与,賞与を支払っているのであるから,何ら問題となる点はないというべきである。 2 被告の原告に対する平成13年上期・下期の評価の相当性(争点(2))(1) 前記1によれば,被告は,平成14年度は,同13年上期・下期の1年2期の評価ポイントの合計が1点以下のⅢ級職の社員をⅡ級職に降級させることができるということになる。そして,被告は,原告はⅢ級成果区分③であったところ,平成13年上期・下期の成績がいずれもCと評価ポイントの合計が0点であったため,前記基準に照らし,同14年6月に,Ⅱ級成果区分⑤に降級させたと主張する。被告の主張が成り立つためには,被告が原告につけた平成13年上期・下期の評価であるCが相当でなければならないところ,被告は当該評価は相当であると主張し,原告は不相当であるとして争うので,以下,この点について判断する。 (2) 認定事実等前記争いのない事実等(4),前記1(5)イ(エ),証拠(甲10,53,54,乙2の1及び2,同4,14,21,27,28,29の1及び2,同32,証人P2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,平成13年3月,被告に転籍し,総務部に配属された。総務は,5つある職種 ,21,27,28,29の1及び2,同32,証人P2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,平成13年3月,被告に転籍し,総務部に配属された。総務は,5つある職種グループのうちの事業企画職に属する職種区分であり,全社を束ねる部門として,庶務,広報,事務所管理,設備備品管理等を担う職場支援部門・サービス部門である。(甲10,乙2の1及び2,同32,証人P2【1頁】)イ被告では,すべての職種区分において,等級ごとに求められる役割(職責の重さ)を本件処遇規程2条で定め,また,各職種区分において,等級ごとに求められる役割を等級定義書において定めている。ところで,原告は,平成13年6月1日,Ⅲ級成果区分③に格付けされたが,本件処遇規程2条及び総務等級定義書に記載されているⅢ級職の社員の役割は,次のとおりである。(争いのない事実等(4),前記1(5)イ(エ),甲10,乙2の1及び2,同4)(ア) 本件処遇規程2条(争いのない事実等(4),前記1(5)イ(エ),甲10,乙2の1及び2)Ⅲ級上司の一般的な管理のもとに,専門的・応用的な知識,技術に基づき,担当する範囲の業務を一部例外的な処理も含め自ら企画・立案し進めることができるレベル。また,担当範囲の責任者として,プロジェクト管理等事業運営にかかわる事項の管理を行う。 (イ) 総務等級定義書(乙4)Ⅲ級戦略・総務業務制度の企画立案の際に必要となる①職場ニーズの情報収集,②制度運用状況の把握を行う。 カスタマ・一般的な事例や案件について,③職場への提案や交渉,支援を行う。 ・各総務業務制度の内容を正しく理解し,④職場からの担当する総務事項に対する相談に対応する。 ・⑤社外の取引先や関連する各社と当社の窓口担当として対応を行う。 問題解決・自部 ・各総務業務制度の内容を正しく理解し,④職場からの担当する総務事項に対する相談に対応する。 ・⑤社外の取引先や関連する各社と当社の窓口担当として対応を行う。 問題解決・自部門のみならず,⑥各関連部門と連携して円滑な業務遂行を図る。 ウ被告においては,Ⅲ級職の社員の成績評価に当たっては,目標管理制度が適用となり,その評価は,絶対評価がされる。そして,目標管理制度の下にある社員は,各年度の上期,下期において,同人が所属する部門の目標にそって,所属長と打ち合わせを行い,役割分担と担当業務の課題を決める。次いで,当該社員は,目標評価シートの「成果評価の対象となる目標」欄に,いくつかの個別業務目標とそれらのウエイト(%)及び各自の予定を記入し,また,「目標設定にあたって」欄に,目標達成に向けた取組等を具体的に記入し,これを所属長に提出する。当該社員は,所属長とすり合わせをし,目標の修正などを行って,目標評価シートの「評価」欄以外を完成させる。そして,当該社員が,完成した目標評価シートの原本を所持し,所属長は,その写しを所持する。Ⅲ級職の社員が目標評価シートを作成し,これを被告に提出する時期は,上期が5月末日ころ,下期が11月末日ころである。(争いのない事実等(4),前記1(5)イ(エ),甲10,53,54,乙2の1及び2,同32,証人P2【1頁】)エ Ⅲ級職の社員は,各期が終了すると,目標評価シートに,個別業務目標ごとの達成度の自己評価,評価時において見直された各個別業務目標のウエイトを記入し,また,目標外の成果,能力開発,行動の規範,総合評価等の各本人欄に自己評価を記入し,かつ,それぞれの欄に自己評価(SS-目標を大幅に上回る成果をあげた,S-目標を上回る成果をあげた,A-目標通りの成果をあげた,B-目標を下回る成果にとどまった 合評価等の各本人欄に自己評価を記入し,かつ,それぞれの欄に自己評価(SS-目標を大幅に上回る成果をあげた,S-目標を上回る成果をあげた,A-目標通りの成果をあげた,B-目標を下回る成果にとどまった,C-目標を大きく下回る成果にとどまった,のうちのいずれか)を記入して所属長に提出する。所属長は,これらに,所属長としてのコメントを記入し,かつ,各欄の所属長評価とともに,総合評価を決めて記入する。所属長は,当該目標評価シートを人事部に上げ,最終的には全社的に評価の調整を行い,社長に報告をして最終的な評価の確定がされる。(甲53,54,乙32,証人P2【1頁】)オところで,原告は,P2総務部長が数回提出を求めたのに平成13年上期の目標評価シートを上期期間中は提出せず,提出したのは上期が終了した後であった。原告の提出した平成13年上期の目標評価シートには,原告の設定した個別業務目標及びウエイトとして,①環境ISO活動を立案・実施(50%),②α地区の再配置を実施する(30%),③α地区動力費の内容をチェックし各部に適切に振り当てる(10%),④庶務を迅速に処理し,問題を起こさないこと(10%)が記載され,同時に,個別業務目標ごとの達成度の自己評価について,前記①ないし④について,それぞれAの評価と記載していた。これに対し,第1次評価者であるP2総務部長は,前記①については「目標達成はできたが,ウエイトが50%という点では疑問がある」としてBの評価を,前記②については,「目標設定に甘さがある,再配置規模と予算の間に開きがあると思われる」としてBの評価を,前記③については,「目標設定に問題がある,Ⅱ級相当の職責の目標と思われる」としてCの評価を,前記④については,「目標設定に問題がある,職責レベルとしてはⅡ級相当の目標と思われる」としてCの評価をし,総合 については,「目標設定に問題がある,Ⅱ級相当の職責の目標と思われる」としてCの評価を,前記④については,「目標設定に問題がある,職責レベルとしてはⅡ級相当の目標と思われる」としてCの評価をし,総合評価として,「環境ISOへの取組み姿勢は評価できる。しかし,Ⅲ級職としては目標設定に甘さがあったと思われる。全体的にもっと高いチャレンジングな目標を設定すべきである」としてBの評価をし,当該評価を人事部に上げた。(甲53,乙21,27,29の1及び2,同32,証人P2【25,26頁】,原告本人【39頁】)人事部では,所管役員が,原告の平成13年上期の評価について,次のような判断をした。すなわち,評価ウエイトが最も高い前記①(環境ISO)については,富士電機が企画立案した運動をそのまま推進するだけであり,もともとⅢ級職として相応しい業務ではないこと,その上,実質的な被告での運動推進者は,総務部担当課長であり,原告は同人の指示で動いていた側面があること,原告は総務部のⅢ級職として求められる前記イ(イ)の②の制度運用状況の把握,同④の職場の相談窓口,同⑤の社外的な窓口といった点において主体的に活動しているとはいえないと評価した。 次に評価ウエイトの高い前記②(α地区の再配置)についても,総務部課長補佐が主体的に動いており,原告は総務部のⅢ級職として求められる前記イ(イ)の①ないし⑥の働きを主体的にしていないと評価した。さらに,前記③(α地区動力費),④(庶務)については,そもそもⅢ級職としてのレベルの目標ではないと判定した。その結果,人事部の所管役員は,原告の平成13年上期の成績をCと評価し,これをP2総務部長に伝えた。(乙29の1及び2,同32,証人P2【10,24,25頁】)カ P2総務部長は,原告に対し,前記人事部の所管役員の判断(C評価となったこと 13年上期の成績をCと評価し,これをP2総務部長に伝えた。(乙29の1及び2,同32,証人P2【10,24,25頁】)カ P2総務部長は,原告に対し,前記人事部の所管役員の判断(C評価となったこと)及びその理由を伝えたが,原告から異論はでなかった。被告では社員の評価に関しては,評価に不服の社員は,所属長の上司(原告の場合は事業統括部長)に対し,異議を申し立てることができる制度を設けている(以下「本件異議申立制度」という)が,原告は,平成13年上期の評価について,異議申立てをしなかった。(乙32,証人P2【26,27頁】,原告本人【10頁】)キ原告は,平成13年下期には,期初に,被告に対し,目標評価シートを提出した。原告は,当該目標評価シートページ(8)に,設定した個別業務目標及びウエイトとして,①安全衛生規程及び要綱の完成(25%),②新しい会社案内の作成(25%),③オフィスの整理整頓の推進(25%),④α地区環境ISOの推進(25%)と記載した。原告は,平成13年下期が終了し,当該目標評価シートに,自己の評価として,前記①,②についてはA,③についてはB,④についてはSSと評価し,これを記載し,P2総務部長に提出した。 これに対し,第1次評価者のP2総務部長は,前記①については,規程は完成したが要綱については案が提出されたのみで,その後の進展がないことからBと評価し,前記②については,大幅な修正が入り,折衝力,交渉術については大いに問題が残ったとしてCと評価し,前記③については,各職場への働きかけ,クリーン運動後のフォロー等が物足りないとしてCと評価し,前記④については,評価できるとしてAと評価した。そして,P2総務部長は,総合評価として,「全体として,仕事に取り組む姿勢に物足りなさを感じる。特に,総務部門として要求される折衝力,交渉力 Cと評価し,前記④については,評価できるとしてAと評価した。そして,P2総務部長は,総合評価として,「全体として,仕事に取り組む姿勢に物足りなさを感じる。特に,総務部門として要求される折衝力,交渉力に欠け,仕事の場面,場面において主導権を取れていない」としてCと評価し,当該評価を人事部に上げた。人事部も,原告の平成13年下期の評価について,P2総務部長と同様,Cが相当であると評価した。(甲54,乙14,21,28,32,証人P2【6ないし10頁,17ないし20頁,25頁】)ク P2総務部長は,原告に対し,前記キのとおり,原告の平成13年下期の評価がCであること及びその理由を伝えたが,原告から異論はでなかった。原告は,平成13年下期の評価についても,本件異議申立制度を利用して,事業統括部長に対し,異議の申立てをしなかった。(証人P2【26,27頁】,原告本人【10頁】,弁論の全趣旨)(3) 当裁判所の判断ア前記(2)で認定した事実に照らすと,被告は,原告の平成13年上期・下期の仕事内容がⅢ級職としての内容か否かを,原告の設定した目標に照らし,判定しており,しかも,当該判定に原告も特段の異議を述べていない本件にあっては,被告の原告に対する平成13年上期・下期の評価は相当であったというべきであり,当該判断を覆すに足りる的確な証拠は存在しない。 イそうだとすると,被告が,平成13年上期・下期の成績評価をもとに,原告を平成14年6月に,Ⅲ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤に降級させたのは相当であったというべきである。 3 被告の原告に対する平成14年上期・下期の評価の相当性(争点(3))(1) 被告は,原告は平成14年6月Ⅱ級成果区分⑤に格付けられたところ,同年上期・下期の成績がいずれもGであったために,本件処遇規程に基づき,成果区分の見直しを行い,同1 評価の相当性(争点(3))(1) 被告は,原告は平成14年6月Ⅱ級成果区分⑤に格付けられたところ,同年上期・下期の成績がいずれもGであったために,本件処遇規程に基づき,成果区分の見直しを行い,同15年6月1日に,Ⅱ級成果区分④に格付けたと主張する。前記2で判断したとおり,被告が原告を平成14年6月にⅢ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤に降級させたことは相当であるところ,原告の同年上期・下期の評価が被告の主張どおりGが相当であるならば,被告が原告の成果区分を見直し,Ⅱ級成果区分④に格付けた措置は相当であることになる。そこで,以下,被告の原告に対する平成14年上期・下期の評価(G)は相当であったか否かについて判断する。 (2) 認定事実等前記争いのない事実等(4),前記1(5)イ(エ),証拠(甲20,乙21,32,証人P2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件処遇規程によれば,成果区分の見直しは,前年度上期・下期の評価により,毎年1回,毎年6月1日付けで行うこととされている。そして,Ⅱ級職の社員の成績評価に当たっては,目標管理制度の適用はなく,業務遂行状況に基づく相対評価がされるところ,次の基準で行うとされている。ただし,決定した当年度成果区分が前年度成果区分と比較し,2区分以上ダウンする場合は,1区分ダウンにとどめるとされている。(争いのない事実等(4),前記1(5)イ(エ))(ア) 評価の組合せ成果区分E/E 区分⑤E/F,F/F,E/G 区分④F/G,E/H,G/G,F/H 区分③G/H,H/H 区分②(イ) 評価ランク評価ポイント分布E 3 10%F /G,E/H,G/G,F/H 区分③G/H,H/H 区分②(イ) 評価ランク評価ポイント分布E 3 10%F 2 20%G 1 50%H 0 20%イ前記アのとおり,Ⅱ級職の社員は,相対評価であり,目標評価シートを使用した目標設定は行わないが,平成14年上期は,復級のこともあるので,P2総務部長は,原告と協議し,原告については,目標評価シートを使用し,目標設定をすることにした。P2総務部長は,原告に対し,目標評価シートを作成するのは,目標をきちっと立てることが目的であり,当該目標評価シートに基づき評価を決めるわけではない旨説明した。(乙32,証人P2【12頁】)ウ原告は,前記イの趣旨で平成14年上期の目標評価シートを作成したが,同シートには,個別業務目標及びウエイトとして,①安全衛生管理の推進(25%),②オフィスの整理整頓の推進(15%),③総務部管理社外倉庫の整理とサービス向上(25%),④α事業所の推進員として環境ISOを推進(35%)と記載した。前記目標評価シートの評価基準は,上からSS,S,A,B,Cの順であるところ,P2総務部長は,平成14年上期終了後,前記①④についてはA,②③についてはBに当たると記載した。(甲20,乙21)エ P2総務部長は,①前記ウのとおり,原告にはS以上がなく,Ⅱ級とすれば上位30%以上(評価ランクとすればE,F)に位置しているとはい言い難かったこと,②相変わらずきめ細かな指示をしなければ仕事が進んでいかない状況があり,事業統括部全体で他のⅡ級職者と比較して,特に原告が秀でているとは言えなかったことから,原告の平成14年上期の成績をⅡ級職としての標準 わらずきめ細かな指示をしなければ仕事が進んでいかない状況があり,事業統括部全体で他のⅡ級職者と比較して,特に原告が秀でているとは言えなかったことから,原告の平成14年上期の成績をⅡ級職としての標準評価であるGと評価した。そして,P2総務部長は,原告に対し,平成14年上期の評価を伝えたが,原告から特段の異議は出なかった。(乙32,証人P2【12,13頁】,弁論の全趣旨)この点に関し,原告は,平成14年7月,P4課長(幹部社員)から部門推進員の役目を引き継ぎ,サーベイランス(査察)に合格しており,平成14年上期にⅢ級職以上の仕事をしていたことは明らかであると主張する。確かに,平成14年7月9日に,部門推進員がP4課長から原告に交代したことが認められる(甲21,原告本人【5頁】)。しかし,他方,原告がP4課長から引き継いだ仕事内容は,注意喚起のためのポスターの掲示,担当職場内の巡視,富士電機が決めた環境指針の職場内での周知など環境マネジメントシステムの補助的作業にすぎないことが認められ(乙29の1及び2,同32,証人P2【3ないし5頁】,弁論の全趣旨),そうだとすると,原告がP4課長の職務を一部引き継いだことをもって,前記平成14年上期の原告の評価(G)を左右する事由ということは困難である。 オ平成14年下期,被告の総務部長はP2からP5(以下「P5総務部長」という)に交代した。原告の平成14年下期の仕事振りは,同年上期と特段の変化は見られず,相変わらずきめ細かい指示をしなければ仕事が進んでいかない状況であり,事業統括部全体で他のⅡ級職者と比較して,原告が特に秀でているといえなかった。そこで,P5総務部長は,原告の平成14年下期の成績をⅡ級職としての標準評価であるGと評価し,原告に対し,当該評価を伝えたが,原告からは特段の異議は出なかった。(弁論の 特に秀でているといえなかった。そこで,P5総務部長は,原告の平成14年下期の成績をⅡ級職としての標準評価であるGと評価し,原告に対し,当該評価を伝えたが,原告からは特段の異議は出なかった。(弁論の全趣旨)この点に関し,原告は,平成14年下期の期初ころ(平成14年10月),新宿地区での環境ISO取得の担当となり,準備を開始し,同15年9月,予定より3か月早く取得したことなどから,同14年下期はⅢ級職以上の仕事をしていたことは明らかであると主張する。確かに,原告は平成14年下期,新宿地区での環境ⅠSO取得の担当となり,ページ(9)同15年9月,これを取得したことが認められる(甲32ないし36,51,58,65,66,弁論の全趣旨)が,他方,原告1人の力で新宿地区での環境ISOを取得できたわけではないこと(乙29の1及び2,同32,証人P2【1,2頁】,弁論の全趣旨)等に照らすと,新宿地区の環境ISOの取得をもって,前記平成14年下期の原告の評価を左右する事由ということは困難である。 (3) 当裁判所の判断前記(2)で認定した事実に照らすと,被告が,原告の平成14年上期・下期の仕事内容を相対評価し,事業統括部全体で他のⅡ級職者と比較して,特に原告が秀でているとはいえず,Ⅱ級職としての標準評価であるGと評価したことには,評価権の濫用等違法な点は見い出し難く,当該判断を覆すに足りる的確な証拠は存在しない。 そうだとすると,被告が,平成14年上期・下期の評価をもとに,本件処遇規程に基づき,原告を同年6月に,Ⅱ級成果区分⑤からⅡ級成果区分④に本件成果区分の見直しをしたことは相当であったというべきである。 4 結論以上の検討の結果から明らかなとおり,被告が原告の処遇につき,平成14年6月にⅢ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤に降級させ,同15年6月にⅡ級 直しをしたことは相当であったというべきである。 4 結論以上の検討の結果から明らかなとおり,被告が原告の処遇につき,平成14年6月にⅢ級成果区分③からⅡ級成果区分⑤に降級させ,同15年6月にⅡ級成果区分⑤からⅡ級成果区分④に成果区分の見直しをしたことはいずれも相当であり,これに従った給与,賞与の支払は何ら問題がないということになる。よって,原告の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することにする。 東京地方裁判所民事第36部裁判官難波孝一ページ(10)
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