令和5(わ)625 殺人

裁判年月日・裁判所
令和6年10月7日 熊本地方裁判所
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判決文本文2,000 文字)

令和6年10月7日熊本地方裁判所刑事部宣告令和5年(わ)第625号殺人被告事件 主文 被告人を懲役13年に処する。 未決勾留日数中220日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は、10年近く勤務した勤務先を退職したのを契機として、平成28年頃から実家において両親とともに同居していたが、実父であるA(以下「被害者」という。)と実母は長年不仲で生活スペースを分けて生活しており、被告人は実母とともに主に2階で生活していた。被告人は、被害者が不衛生な生活をしていることや、被害者が実母に対し十分な生活費を渡さないことなどに不満を募らせるとともに、令和5年に実母が病気で死亡したことは被害者に責任があると考えていた。被告人は、実母の死後の被害者による共用スペースの利用方法にも不満があり、それを指摘する意図で被害者の持物の上にごみを乗せるなどしていたところ、令和5年9月17日頃、これに耐え兼ねてこれ以上被告人とは同居できないと考えた被害者から、実家を出るよう告げられるなどしたため、実母の思い入れのある実家を被害者から守りたいなどと考えて同人の殺害を決意するに至った。 被告人は、同月27日午後9時5分頃、熊本市a区bc丁目d番e号被告人方において、殺意をもって、被害者(当時68歳)に対し、その頭部をバールで多数回殴った上、その顔面をコンクリートブロック片で数回殴るなどの暴行を加え、よって、同日午後10時21分頃、同市f区gh丁目i番j号B病院において、同人を頭部挫創による出血性ショックにより死亡させて殺害した。 (量刑の理由) 1 被告人は、帰宅した被害者にその背後から近づきその頭部をバールで多数回殴打し、被害者が動かなくなったと見るや、重さ約3.2キログラムのコンクリー せて殺害した。 (量刑の理由) 1 被告人は、帰宅した被害者にその背後から近づきその頭部をバールで多数回殴打し、被害者が動かなくなったと見るや、重さ約3.2キログラムのコンクリー トブロック片に持ち替えて被害者の顔面を複数回殴打し、頭部や顔面を中心に多数の損傷を生じさせたもので、これだけを見ても、本件は冷酷かつ残忍な犯行というほかない。加えて、被告人は、犯行の数日前から被害者を殺害するために凶器等を準備したり、犯行のシミュレーションを行って計画の修正をしたりした上、上記の執拗な暴行の後には、被害者を観察して呼吸をしていることに気が付くと、被害者の息の根を止めようとガムテープで同人の鼻や口を覆うなどまでしており、計画的であり、確実に殺害を遂げようとする強固な殺意に基づくものであって強い非難を免れない。 被告人は、前記のとおり、実母が病死した原因が被害者にあると考え、実母の死後の被害者の行動にも不満を募らせて、被害者の持物にごみを入れるなど、嫌がらせと評価するほかない被告人の行為に耐え兼ねた被害者から実家を出るよう告げられるなどしたことを契機として犯行に及んだものである。被告人が被害者に対する悪感情を抱き、慕っていた実母の思い入れのある実家を守りたいという心情それ自体は理解できなくはないが、だからといってその解決のために被害者の殺害という手段を選択するというのは、被告人に軽度の広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)の特性があることを踏まえても身勝手であると言わざるを得ず、この点を量刑上考慮するにも限度があるというべきである。 そうすると、本件は、見るべき前科前歴がない者が、家族関係(裁判員量刑検索システムにおける条件は「その他の家族関係」)を動機として、凶器を用いて親1名を殺害し、処断罪と異なる主要な罪がない同種事案の量刑 すると、本件は、見るべき前科前歴がない者が、家族関係(裁判員量刑検索システムにおける条件は「その他の家族関係」)を動機として、凶器を用いて親1名を殺害し、処断罪と異なる主要な罪がない同種事案の量刑傾向において、やや重い部類に位置付けられる。 2 更に一般情状について検討するに、被告人は自首をし、公判廷においても犯行を認めて、被告人しか知り得ない犯行当時の状況や被告人の行動等について自ら進んで述べた上で、被告人の親族らに迷惑をかけたことに対し謝罪の弁を述べている。しかしながら、自首することは犯行前から予定していたことであって自己の行為を悔いて行ったものではない。また被告人は、被害者に対する謝罪の弁を 述べることはなく、かえって原因は被害者にあるかのように述べるなど、被告人が人の命を奪うことそれ自体の重大性を理解して償う気持ちがあるとは評価できない。 3 以上の検討の結果、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑懲役15年)令和6年10月11日熊本地方裁判所刑事部裁判長裁判官中田幹人 裁判官賀嶋敦 裁判官新田紗紀

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