平成29(行ウ)79 債存在確認等請務不求事件,充当処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年5月17日 大阪地方裁判所
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判決文本文23,784 文字)

令和元年5月17日判決言渡平成29年(行ウ)第79号債務不存在確認等請求事件(第1事件)平成29年(行ウ)第196号充当処分取消請求事件(第2事件)主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件⑴ 被告は,原告Aに対し,10万1731円並びに別紙2の各「金額」欄記 載の金員に対する各「還付加算金の割合(年)」欄記載の期間及び割合による金員を支払え。 ⑵ 被告は,原告Bに対し,3154万5500円及びうち3151万2081円に対する平成30年2月1日から,うち3万3419円に対する同月7日から,各支払済みまで年1.6%の割合による金員を支払え。 2 第2事件大阪国税局長が平成28年4月25日付けで原告Aに対してした還付金1万3364円を連帯納付義務に係る相続税に充当する旨の処分を取り消す。 第2 事案の概要亡Cの相続人(子)である原告B(昭和7年▲月▲日生)及び原告A(昭和 10年▲月▲日生)は,同じく相続人(子)である亡D(原告らの弟・昭和21年▲月▲日生。)との間で,亡Cについて開始した相続(以下「本件相続」という。)について,亡Dが,遺産である不動産全てを相続し,その代償として原告らに対して各5000万円の支払義務(以下,「本件各代償債務」といい,同義務に関し原告らが亡Dに対して有する各5000万円の支払請求権を「本件 各代償債権」という。)を負う旨の遺産分割協議(以下「平成6年遺産分割協議」 という。)をした上,各1815万4500円の相続税額に係る相続税を納付したが,大阪国税局長から,本件相続に係る亡Dの相続税(以下「本件亡D相続税」という。)につき原告ら 6年遺産分割協議」 という。)をした上,各1815万4500円の相続税額に係る相続税を納付したが,大阪国税局長から,本件相続に係る亡Dの相続税(以下「本件亡D相続税」という。)につき原告らが本件相続により利益を受けた限度で連帯納付義務を負うとして,その履行を求められた(以下,本件亡D相続税につき平成24年法律第16号附則57条2項において準用する相続税法34条1項に基づき 原告らが連帯納付すべき義務を「本件連帯納付義務」という。)。そこで,原告らは,再度,亡Dとの間で,本件相続について,亡Dが遺産を全て相続し,原告らは何も相続しない旨の遺産分割協議(以下「平成22年遺産分割協議」という。)をしたものの,原告Aは,大阪国税局長から,平成21年分~平成27年分の所得税又は復興特別所得税に係る還付金合計10万1731円(以下「本 件各還付金」という。)につき本件連帯納付義務に係る相続税に充当する旨の各処分(以下「本件各充当処分」という。)を受け,原告Bは,本件連帯納付義務を理由とする普通預金払戻請求権の差押えを受け,合計3154万5500円を徴収されるなどした(以下「本件徴収等」という。)。 本件は,原告らが,本件連帯納付義務を負わず,また,これを負わせること は憲法29条に反するなどと主張して,①原告Aが,被告に対し,本件各充当処分が違法であるとして,(ア)国税通則法(以下「通則法」という。)56条1項に基づく本件各充当処分に係る10万1731円の還付金並びにこれに対する本件各還付金の還付を受けるための各申告書を提出した日の各翌日から支払済みまで通則法58条1項,租税特別措置法95条及び同法93条2項所定の 割合による還付加算金の支払を求めるとともに(第1事件),(イ)本件各充当処分のうち平成27年分に係る の各翌日から支払済みまで通則法58条1項,租税特別措置法95条及び同法93条2項所定の 割合による還付加算金の支払を求めるとともに(第1事件),(イ)本件各充当処分のうち平成27年分に係る充当処分の取消しを求め(第2事件),②原告Bが,被告に対し,本件徴収等のうち,徴収(3151万2081円)は違法であり,納付(3万3419円)は法律上の原因を欠くとして,通則法56条1項に基づく本件徴収等に係る3154万5500円の還付金及びこれに対する 本件徴収等がされた日の翌日から支払済みまで前記の割合による還付加算金の 支払を求める(第1事件)事案である。 なお,原告Bは,第1事件の提訴時点においては,本件徴収等がされておらず,被告に対し,原告Bが本件連帯納付義務を負っていないことの確認を求めていたが,本件徴収等の後,前記②のとおり,訴えを変更した。 1 相続税法の定め ⑴ 平成24年法律第16号による改正後の相続税法34条1項は,①同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者は,その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について,当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として,互いに連帯納付の責めに任ずる(同項本文。以下,当該責任を「連帯納付義務」といい,同項本文の規定 により当該責任を負う者のうち当該納税義務者を除いたものを「連帯納付義務者」という。)が,②前記①の相続税のうち,納税義務者の同法33条等の規定により納付すべき相続税額に係るものについては,同法27条1項の規定による申告書の提出期限から5年を経過する日までに税務署長が当該相続税に係る連帯納付義務者に対し同法34条6項の規定による通知を発して いない場合には,当該連帯納付義務者は,当該納付すべ 規定による申告書の提出期限から5年を経過する日までに税務署長が当該相続税に係る連帯納付義務者に対し同法34条6項の規定による通知を発して いない場合には,当該連帯納付義務者は,当該納付すべき相続税額に係る相続税につき,連帯納付義務を負わない(同条1項ただし書1号)旨を規定する。なお,同項ただし書は,平成24年法律第16号により,同項に加えられたものであり,同条6項は,平成23年法律第82号により,同条に加えられたものである。 ⑵ 平成24年法律第16号附則57条は,同法中の相続税法34条に係る改正規定の施行日(同年4月1日)前に同附則57条1項所定の申告期限等が到来した相続税について,同法34条の規定を適用しないものの,当該相続税のうち,同日において未納となっているものについては,同条1項を準用する(ただし,当該準用に当たり,平成23年6月30日(同年法律第82 号中の同条に同条6項を加える旨の改正規定の施行日)前にあっては,同項 の規定による通知を通則法37条の規定による督促に係る督促状(以下,単に「督促状」という。)と読み替える。)旨規定する。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠(枝番の存するものは特記がない限り全枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 当事者等ア原告ら及び亡Dは,亡Cの子であり,平成6年▲月▲日に開始した本件相続の相続人である。 イ亡Dは,平成24年▲月▲日,死亡した。(甲38)⑵ 平成6年遺産分割協議及びその後の経過 ア原告ら及び亡Dは,平成6年5月24日,本件相続について,遺産分割協議をした(平成6年遺産分割協議)。その内容は,①亡Dが,遺産である不動産全てを相続し,その代償として原告ら 経過 ア原告ら及び亡Dは,平成6年5月24日,本件相続について,遺産分割協議をした(平成6年遺産分割協議)。その内容は,①亡Dが,遺産である不動産全てを相続し,その代償として原告らに対して各5000万円の支払義務(本件各代償債務)を負うものとし,②本件各代償債務に係る履行期及び履行方法を,亡Dが所有する堺市(住所省略)に所在するEゴルフ センターの土地建物(以下「Eゴルフセンター」という。)の売却時又は原告らによる本件相続に係る相続税の納付時のいずれか早く到来した時に一括して支払うものとするというものであった。(乙34)イ原告ら及び亡Dは,相続税の申告書の提出期限及び納期限である平成6年12月12日,八尾税務署長に対し,平成6年遺産分割協議の内容に沿 い,課税価格を,亡Dにつき10億8053万円,原告らにつき各5000万円,納付すべき相続税額を総額3億9466万4800円(亡Dにつき3億5835万5800円,原告らにつき各1815万4500円)とする相続税の申告書を共同して提出し,原告らは,同日,前記各自の納付すべき相続税額に係る相続税(各1815万4500円)を納付したが, 亡Dは,同日,同税務署長に対し,前記納付すべき相続税額の全額につい て延納申請をするとともに,同日までに,原告らに対して本件各代償債務を履行しなかった。(甲8,16,25,弁論の全趣旨)ウ亡Dは,平成16年8月26日付けで,Eゴルフセンターを4億7000万円で売却したが,その売却代金を原告ら以外の債権者に対する債務の弁済に充てるなどし,原告らに対して本件各代償債務を履行しなかった。 (甲9,弁論の全趣旨)⑶ 平成22年遺産分割協議に至る経緯ア原告らは,平成19年の初め頃及び平成21年の 務の弁済に充てるなどし,原告らに対して本件各代償債務を履行しなかった。 (甲9,弁論の全趣旨)⑶ 平成22年遺産分割協議に至る経緯ア原告らは,平成19年の初め頃及び平成21年の初め頃,大阪国税局から,本件連帯納付義務の履行を求める旨記載された書面の送付を受けた。 (甲9~11) イ原告らは,平成22年9月1日,亡Dに対し,本件各代償債務の履行を再三にわたって求めたが履行されず,さらには,本件亡D相続税について連帯納付義務(本件連帯納付義務)が課されるに至ったので,債務不履行を理由に,平成6年遺産分割協議を解除する旨を記載した「解除権行使の通知書」と題する各書面を送付し,当該各書面は,同月2日,亡Dに到達 した。(甲12,13)ウ原告ら及び亡Dは,平成22年9月9日,平成6年遺産分割協議が同月2日付けで債務不履行を理由として解除され,亡Cの遺産が未分割の状態に復したことを確認した上で,遺産分割協議をした(平成22年遺産分割協議)。その内容は,亡Dが遺産を全て相続し,原告らは何ら相続しないと いうものであった。(甲14)⑷ 前訴の経緯及び結果ア原告らは,平成22年10月12日,八尾税務署長に対し,平成22年遺産分割協議により,本件相続について遺産を相続しないこととなったとして,前記⑵イの申告に係る相続税について,更正の請求(以下「本件各 更正請求」という。)をした。(甲40) イ八尾税務署長は,平成23年1月7日付けで,原告らに対し,前記アのとおり原告らが主張する事情は,更正の請求ができる場合には該当しないとして,更正をすべき理由がない旨を通知する処分をした。(甲41)ウ原告らは,前記イの通知処分について不服申立てを経た上で,平成24年9 主張する事情は,更正の請求ができる場合には該当しないとして,更正をすべき理由がない旨を通知する処分をした。(甲41)ウ原告らは,前記イの通知処分について不服申立てを経た上で,平成24年9月6日,大阪地方裁判所に対し,その取消しを求める訴えを提起した が,平成26年2月20日,原告らの請求をいずれも棄却する旨の判決を受け,大阪高等裁判所に対して控訴したが,平成27年3月6日,原告らの控訴をいずれも棄却する旨の判決を受け,最高裁判所に対し,上告及び上告受理申立てをしたが,平成27年5月13日付けで,上告申立てを取り下げ,平成28年12月19日,上告不受理決定を受けた。(甲42,4 3,乙1)⑸ 原告Aに対して本件各充当処分がされた経過等原告Aは,大阪国税局長から,通則法57条1項に基づき,平成21年分~平成27年分の所得税又は復興特別所得税に係る還付金(本件各還付金)に関し,後記ア~キ掲記の各日に各還付金(合計10万1731円)を本件 連帯納付義務に係る相続税に充当する旨の各処分(本件各充当処分)を受けた。なお,原告Aは,平成28年7月16日付けで,後記キの充当処分を不服として,再調査請求をしたが,同年10月12日付けで,大阪国税局長から,当該請求を棄却する旨の決定を受け,同年11月11日,当該決定を不服とする審査請求をしたが,第2事件の訴訟提起(後記⑹)までの間に,裁 決はされていない。(乙4,5,8,11,14,16,弁論の全趣旨)ア平成22年5月20日平成21年分の所得税に係る還付金3800円イ平成23年4月27日平成22年分の所得税に係る還付金6150円ウ平成24年4月24日平成23年分の所得税に係る還付金1万1150円 エ平成25年4月24日平成24年分 イ平成23年4月27日平成22年分の所得税に係る還付金6150円ウ平成24年4月24日平成23年分の所得税に係る還付金1万1150円 エ平成25年4月24日平成24年分の所得税に係る還付金4万415 0円オ平成26年5月16日平成25年分の所得税及び復興特別所得税に係る還付金1万1819円カ平成27年5月27日平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る還付金1万1298円 キ平成28年4月25日平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る還付金1万3364円⑹ 第2事件の訴訟提起原告Aは,平成29年10月25日,前記⑸キの充当処分の取消しを求めて,第2事件の訴訟を提起した。 ⑺ 原告Bに対する徴収等ア原告Bは,平成30年1月31日,大阪国税局長から,本件連帯納付義務を理由とする滞納処分として原告B名義の株式会社F銀行に対する普通預金払戻請求権の差押えを受け,3151万2081円を徴収され,同年2月6日,3万3419円を納付した(当該徴収及び当該納付の合計額は 3154万5500円。本件徴収等)。(乙24~26)イ原告Bは,平成30年4月27日,第1事件における本件連帯納付義務を負わないことの確認を求める訴えを,本件徴収等に係る3154万5500円の還付金及びこれに対する還付加算金の支払を求める訴えに交換的に変更した。 3 争点⑴ 本件相続により受けた利益の有無・価額(争点1)⑵ 原告らに対する督促状発送の有無(争点2)⑶ 原告らによる本件連帯納付義務の履行の有無(争点3)⑷ 原告らに本件連帯納付義務を課すことが憲法29条に反して違憲であるか 否か(争点4) 4 争点に関する当 無(争点2)⑶ 原告らによる本件連帯納付義務の履行の有無(争点3)⑷ 原告らに本件連帯納付義務を課すことが憲法29条に反して違憲であるか 否か(争点4) 4 争点に関する当事者の主張の要旨⑴ 争点1(本件相続により受けた利益の有無・価額)(原告らの主張の要旨)ア原告ら及び亡Dは,平成22年9月9日,平成6年遺産分割協議が亡Dの本件各代償債務の不履行を理由に原告らによって解除され,本件相続に 係る財産が未分割の状態に復したことを確認の上で,再度,遺産分割協議をしたのであるから(平成22年遺産分割協議),平成22年遺産分割協議において,平成6年遺産分割協議が合意解除されたことは明らかである。 イそして,本件亡D相続税については,平成24年法律第16号附則57条2項により,相続税法34条1項が準用されるが,①同条所定の「相続 (中略)により受けた利益の価額」は,連帯納付義務者に係る納付又は徴収の時点において評価すべきものであるところ,原告らは,平成22年遺産分割協議における平成6年遺産分割協議の合意解除によって,本件各代償債権を喪失したから,原告Aに係る本件各充当処分及び原告Bに係る本件徴収等の行われた各時点において,原告らが本件相続により受けた利益 は存しないというべきであり,②仮に,「相続(中略)により受けた利益の価額」を連帯納付義務者に係る納付又は徴収の時点以外の時点において評価するとしても,原告らは,前記のとおり,平成22年遺産分割協議における平成6年遺産分割協議の合意解除によって,本件各代償債権を喪失したから,原告らが本件相続により受けた利益は遡及的に消滅したという べきであるし,また,③そもそも,本件各代償債権は,履行期が将来に到来するものであること,亡Dの って,本件各代償債権を喪失したから,原告らが本件相続により受けた利益は遡及的に消滅したという べきであるし,また,③そもそも,本件各代償債権は,履行期が将来に到来するものであること,亡Dの経済的破綻により一切履行されなかったこと等からすると,実質的にみて無価値なものであったというべきであるから,原告らが本件各代償債権を取得したことをもって,原告らが本件相続により受けた利益は存しないというべきである。 (被告の主張の要旨) ア平成22年遺産分割協議は,原告らに何らの錯誤も誤信等もなく有効に成立した平成6年遺産分割協議による遺産分割について,その後に亡Dの本件各代償債務の不履行があったことから,再度の遺産分割をしたものであって,実質的にみれば,平成6年遺産分割協議を前提に,亡Dに対して本件各代償債権を贈与したものというべきである。 イ仮に,平成22年遺産分割協議により平成6年遺産分割協議が合意解除されたことにより,私法上の法律関係が変動したとしても,確定した納税義務は,更正の請求等,通則法に規定する手続がされた場合にのみ変更されるものであって,当該私法上の法律関係の変動が直ちに確定した納税義務の内容を変更させるものということはできない。そして,相続税法34 条1項の連帯納付義務は,各相続人等の固有の相続税の納付義務の確定という事実に照応して,法律上当然に生ずるものであるところ,原告ら及び亡Dの固有の相続税の納付義務は相続税の申告により確定し,その内容は更正の請求等により変更されていない以上,本件各代償債権(各5000万円)から原告らの固有の相続税各1815万4500円を控除した各3 184万5500円が,原告らが本件相続により受けた利益の価額となる。 ⑵ 争点2(原告らに対する督促 代償債権(各5000万円)から原告らの固有の相続税各1815万4500円を控除した各3 184万5500円が,原告らが本件相続により受けた利益の価額となる。 ⑵ 争点2(原告らに対する督促状発送の有無)(原告らの主張の要旨)原告らに対して,本件連帯納付義務の履行について督促状が発送された事実はなく,平成24年法律第16号附則57条2項において準用する相続税 法34条1項ただし書1号により,本件連帯納付義務を負わない。 原告らに対して督促状が発送されていないことは,①平成24年法律第16号による改正前の相続税法においては,連帯納付義務者に対する督促状や通知の発送が,連帯納付義務を課するための要件として規定されておらず,実務上も,相続人の一人に対してのみ他の相続人に送付すべき書類をまとめ て送付するなどの取扱いがされていたため,他の相続人の相続税の納付状況 が把握できない中で突然連帯納付義務の履行を求められるという不意打ちが生じていたこと(これを是正するために,前記改正により,督促状の発送等が連帯納付義務を課するための条件とされた。),②本件においても,亡Dが,原告らに対して送付されるべき書類を用いて平成12年4月25日付けで原告ら名義で本件連帯納付義務に基づくものとして各30万円を納付して おり(甲16,17の各領収証書からその事実を認めることができる。),原告らに対して送付されるべき書類が亡Dに対して送付されていたこと,③督促状の発送は管理簿等により記録されるところ,本件においては,当該管理簿等が書証として提出されていないことから明らかである。 (被告の主張の要旨) 督促状は,3枚複写の書類の2枚目を切り離す方法で作成され,一番上の書類である滞納処分票に記載された住所及 等が書証として提出されていないことから明らかである。 (被告の主張の要旨) 督促状は,3枚複写の書類の2枚目を切り離す方法で作成され,一番上の書類である滞納処分票に記載された住所及び氏名等がそのまま督促状にも記載されるところ,原告らに係る滞納処分票(乙19,20。以下「本件各滞納処分票」という。)には,それぞれ,原告らの住所及び氏名等が記載されているから,原告らの住所に対し,それぞれ督促状が発送されたことは明らか である(なお,督促状は,通常到達すべきであった時に送達がされたものと推定される。通則法12条2項)。 また,本件各滞納処分票には,「7.7.27 徴収引受」とのスタンプが押されており,徴収が八尾税務署長から大阪国税局長に引き受けられたことが分かるところ,大阪国税局長は,督促状が発せられた事案について引受け をしていたから,このことからも,原告らに対して督促状が発せられた事実が裏付けられている。 なお,督促状発送記録簿の保存期間は,平成24年12月20日に1年から5年に変更され,現在も5年であることから,平成7年当時における同記録簿の保存期間は長くても5年であったと推認され,原告らに係る督促状発 送記録簿は既に廃棄されており,これを書証として提出できないことは何ら 不自然ではない。 ⑶ 争点3(原告らによる本件連帯納付義務の履行の有無)(原告らの主張の要旨)大阪国税局長は,亡Dから,資力を喪失して支払不能に陥るまであらゆる財産を差し押えるなどしてその相続税を徴収しており,その結果として,原 告らが本件各代償債務の履行を受けることができなくなったという経緯からすると,本件各充当処分及び本件徴収等が行われた時点よりも以前(平成22年5月よりも以前)に,本件相続により受 果として,原 告らが本件各代償債務の履行を受けることができなくなったという経緯からすると,本件各充当処分及び本件徴収等が行われた時点よりも以前(平成22年5月よりも以前)に,本件相続により受けた利益の価額に相当する金額につき連帯納付義務を履行したと評価すべきである。 (被告の主張の要旨) 争う。 ⑷ 争点4(原告らに本件連帯納付義務を課すことが憲法29条に反して違憲であるか否か)(原告らの主張の要旨)原告らは,本件各代償債務の履行を一切受けないままに,それぞれ固有の 財産から自己の相続税を支払わざるを得なかったばかりか,本件連帯納付義務を負担させられ,さらに固有の財産から納付を余儀なくされたところ,これは,徴収の規定としての相続により受けた利益の価額に相当する金額の限度で負担を認めている相続税法34条1項の趣旨に反するものであって,連帯納付義務に名を借りた原告らの固有の財産に対する侵奪というほかなく, 原告らに本件連帯納付義務を負わせることは憲法29条に反する。 (被告の主張の要旨)争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認め られる。 ⑴ 本件亡D相続税の納付状況本件亡D相続税については,亡Dの死亡(平成24年▲月▲日)までの間に,別紙3のとおり,納付が行われたが,そのうち,平成12年4月25日の納付(2件)は,原告らの各名義で各30万円(合計60万円)ずつ行わ れたものであって,大阪国税局においては本件連帯納付義務に係る納付と取り扱われた。なお,亡Dは,平成6年12月12日,八尾税務署長に対し,自己の納付すべき相続税額の全額について延納申請をしたが,平成7年6月 って,大阪国税局においては本件連帯納付義務に係る納付と取り扱われた。なお,亡Dは,平成6年12月12日,八尾税務署長に対し,自己の納付すべき相続税額の全額について延納申請をしたが,平成7年6月30日,同申請を取り下げた。(甲16,17,25)⑵ 亡Dの経済状況等 ア亡Dは,平成6年10月3日当時,大阪府G市内において居住し,Eゴルフセンター等を運営するH株式会社及び奈良県I市に当時存した娯楽施設であるJ等を運営するK株式会社の代表取締役に就任していたところ,両社は,同日,合併し,K株式会社が存続した。(甲38,83,84)イ大阪国税局は,本件亡D相続税に関し,平成9年12月10日,亡Dが 所有するEゴルフセンターの土地9筆(甲31,32,75~81)を差し押え,平成13年6月26日,亡Dが所有する自宅の土地建物,事務所等(甲45~48,65~68)及び前記アのJの土地建物(甲51~64)を差し押えた。(甲26,27)ウ亡Dは,前記イのJの土地建物(甲51~64)につき,平成15年7 月29日,奈良地方裁判所葛城支部から,担保不動産競売開始決定を受け,同年~平成16年に,奈良県I市,大阪府G市及び堺市による参加差押えを受けたものの,債権者らとの話合いを経て当該土地建物を任意売却し,その売却代金のうち3232万4100円を本件亡D相続税の納付に充てた(別紙3の平成17年4月20日欄参照)。(甲25,弁論の全趣旨) エ堺市は,平成16年6月25日,前記イのEゴルフセンターの土地の一 部(甲32,75~78)につき参加差押えをするとともに,K株式会社が所有するEゴルフセンターの土地(甲30,73,74)を差し押え,同年7月1日,前記イの自宅の土地建物及び事務所等(甲45~48,65~6 ,75~78)につき参加差押えをするとともに,K株式会社が所有するEゴルフセンターの土地(甲30,73,74)を差し押え,同年7月1日,前記イの自宅の土地建物及び事務所等(甲45~48,65~68)につき参加差押えをした。 オ亡Dは,平成16年9月30日,Eゴルフセンターを4億7000万円 で売却し,当該売却代金のうち1600万円を本件亡D相続税の納付に充て(別紙3の同年10月1日欄参照),その余を債権者(ただし,原告らを除く。)への支払に充てた。(甲9の別紙⑵及び⑶,甲25)カ G市は,亡Dの滞納市税に関し,平成16年11月16日,亡Dが所有する土地建物(甲49,50,69,70)を差し押えるとともに,前記 イの自宅建物及び事務所等(甲45~48)に参加差押えした。 キ前記イの亡Dの所有する大阪府G市内の土地建物の一部(甲46~48)は,平成18年9月19日,堺市,大阪府G市,奈良県I市の参加差押えを経て,大阪地方裁判所により,担保不動産競売開始決定がされ,平成19年6月29日,当該競売により売却されたが,当該売却代金は,抵当権 者に配当され,本件亡D相続税には配当されなかった。(乙36)ク K株式会社及び亡Dは,平成19年1月27日,債権者との間で,同社の債権者に対する借入金の残高の総額が3億4496万6383円であることを確認したが,同社は,同年3月12日,本店所在地を奈良県I市から大阪府G市内の亡Dの住所に移転し,営業活動を停止して廃業し,亡D は,無収入となった。(甲33,36の1・2)ケ亡Dは,平成19年5月8日,大阪府G市に対し,滞納市税221万5900円について,分納する旨の誓約書を提出した。(甲36の3)コ亡Dは,平成19年9月26日,大阪地方裁判所から,前記イの亡Dの自 は,平成19年5月8日,大阪府G市に対し,滞納市税221万5900円について,分納する旨の誓約書を提出した。(甲36の3)コ亡Dは,平成19年9月26日,大阪地方裁判所から,前記イの亡Dの自宅の土地建物(甲65~67)について担保不動産競売開始決定を受け たものの,債権者らとの話合いを経て当該土地建物を任意売却し,当該売 却代金のうち100万円を本件亡D相続税の納付に充てた(別紙3の平成20年3月17日欄参照)。(甲25,弁論の全趣旨)⑶ 原告らが本件各更正請求に至った経過等ア原告らは,平成19年6月19日付けで,大阪国税局長に対し,前記前提事実⑶アのとおり本件連帯納付義務の履行を求められたことに関し,亡 Dから本件各代償債務の履行を一切受けていないにもかかわらず,本件連帯納付義務の履行を求められることに困惑しているとして,寛大な処置を求める旨の嘆願書を提出し,平成20年5月30日付け及び平成21年4月14日付けで,同趣旨の嘆願書を提出した。(甲9~11)イ原告らは,税理士に相談の上,前記前提事実⑶ウ及び⑷アのとおり,平 成22年9月9日に平成22年遺産分割協議をし,同年10月12日付けで,本件各更正請求をした。(甲40) 2 争点1(本件相続により受けた利益の有無・価額)について⑴ まず,平成6年遺産分割協議に係る合意解除の成否を検討する。 ア共同相続人の全員が,既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を 合意により解除した上,改めて遺産分割協議をすることは,法律上,当然には妨げられるものではないと解される(最高裁昭和63年(オ)第115号同平成2年9月27日第一小法廷判決・民集44巻6号995頁参照)。 本件では,前記前提事実⑶イ及びウのとおり,原告らは,亡Dに対し,本 れるものではないと解される(最高裁昭和63年(オ)第115号同平成2年9月27日第一小法廷判決・民集44巻6号995頁参照)。 本件では,前記前提事実⑶イ及びウのとおり,原告らは,亡Dに対し,本件各代償債務の不履行を理由に,平成6年遺産分割協議を解除する旨を 記載した「解除権行使の通知書」と題する各書面をそれぞれ送付し,当該各書面の亡Dへの到達の後,亡Dとの間において,平成6年遺産分割協議が債務不履行を理由として解除され,亡Cの遺産が未分割の状態に復したことを確認した上で,遺産分割協議をしていることが認められるのであって(平成22年遺産分割協議),原告らと亡Dとの間において,明示的に 平成6年遺産分割協議を解除する旨の合意がされたと認めることはできな いものの,平成22年遺産分割協議は,亡Cの遺産が未分割の状態に復していること,すなわち平成6年遺産分割協議が当初から存在しなかったのと同一の状態を作り出した上で,再分割協議を行うものであるということができる。 そうすると,原告ら及び亡Dは,平成22年遺産分割協議において,平 成6年遺産分割協議を黙示的に合意解除し,亡Cの遺産につき再分割協議をしたものと認めることができる。 イこれに対し,被告は,平成22年遺産分割協議は,原告らに何らの錯誤も誤信等もなく有効に成立した平成6年遺産分割協議による遺産分割について,その後に発生した亡Dの本件各代償債務の不履行があったことから, 再度の遺産分割をしたものであって,実質的にみれば,平成6年遺産分割協議を前提に,亡Dに対して本件各代償債権を贈与したものというべきである旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,平成22年遺産分割協議は,亡Cの遺産が未分割の状態に復したことを確認の上でされたものであるから,平成6 して本件各代償債権を贈与したものというべきである旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,平成22年遺産分割協議は,亡Cの遺産が未分割の状態に復したことを確認の上でされたものであるから,平成6 年遺産分割協議の存在を前提としてされたものであるということはできない。そして,原告らは,本件連帯納付義務を免れることを目的として,平成22年遺産分割協議を行ったことを自認しているところ(原告Aの陳述書(甲15)においても同旨の記載がされている。),このような目的を有している場合に,当初の遺産分割協議について合意解除という法形式を 選択することが許されないということもできない。 したがって,被告の前記主張は,採用することができない。 ⑵ そこで,前記⑴のとおり,原告ら及び亡Dが,平成22年遺産分割協議において平成6年遺産分割協議を黙示的に合意解除したことを前提に,相続税法34条所定の「相続(中略)により受けた利益の価額」の有無及び数額を 検討する。 ア相続税法34条1項は,相続人又は受遺者(以下「相続人等」という。)が二人以上ある場合に,各相続人等に対し,自らが負担すべき固有の相続税の納税義務のほかに,他の相続人等の固有の相続税の納税義務について,当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として,連帯納付義務を負担させる旨規定する。この連帯納付義務は,相続税法が, 相続人等が相続又は遺贈により取得した財産を対象として課税する方式を採用することで,課税の観点からは,担税力に応じた,各相続人等の間において公平な負担が図られているものの,これを貫徹すると,一部の相続人等に無資力の者がいる場合,遺産のうち相続税として徴収する部分が少なくなるので,相続税の徴収確保のため,一の相続によって生じた相続税 いて公平な負担が図られているものの,これを貫徹すると,一部の相続人等に無資力の者がいる場合,遺産のうち相続税として徴収する部分が少なくなるので,相続税の徴収確保のため,一の相続によって生じた相続税 については,その受益者が共同して責任を負うべきであるとの観点から,相互に各相続人等に対して課した特別の責任であると解される。このように,連帯納付義務は,相続税法が相続税徴収の確保を図るため,相互に各相続人等に課した特別の責任であるところ,その義務履行の前提条件をなす連帯納付義務の確定は,各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定と いう事実に照応して,法律上当然に生ずるものであるから,連帯納付義務につき格別の確定手続を要するものではないと解するのが相当であるところ(最高裁昭和53年(行ツ)第86号同55年7月1日第三小法廷判決・民集34巻4号535頁参照),各相続人等の固有の相続税の納税義務は,当該相続又は遺贈に係る相続税法27条1項所定の申告,申告に係る更正 処分又は賦課決定(以下,これらを併せて「相続税に係る申告等」という。)がされることにより,確定するものである(通則法16条1項1号,2項1号)。 以上にみたとおり,連帯納付義務が,相続又は遺贈により受けた利益に着目して課される特別の責任であって,相続税に係る申告等により固有の 相続税の納税義務が確定されることに照応して,法律上当然に生ずるとい う法的性格に鑑みると,相続税法34条1項は,「受けた利益の価額」について,相続税に係る申告等がされることにより各相続人等の固有の相続税の納税義務が確定した時点において連帯納付義務者が相続又は遺贈により取得している財産を当該時点における価額を基準として評価して算定することを予定しているものと解するのが相当 各相続人等の固有の相続税の納税義務が確定した時点において連帯納付義務者が相続又は遺贈により取得している財産を当該時点における価額を基準として評価して算定することを予定しているものと解するのが相当である。 イ本件においては,前記前提事実⑵イのとおり,原告ら及び亡Dは,平成6年12月12日,平成6年遺産分割協議の内容に沿い,課税価格を,亡Dにつき10億8053万円,原告らにつき各5000万円,納付すべき相続税の税額を総額3億9466万4800円(亡Dにつき3億5835万5800円,原告らにつき各1815万4500円)とする相続税の申 告書を共同して提出しており,同日,亡Dの固有の相続税(本件亡D相続税)の納税義務が確定している(なお,本件亡D相続税の納税義務は,その後,更正等により変動していないものと認められる(弁論の全趣旨)。)。 そうすると,原告らが本件相続により「受けた利益の価額」は,同日時点において本件亡D相続税に係る連帯納付義務者たる原告らが本件相続に より取得している財産(本件各代償金債権・各5000万円)を同日時点における価額を基準として評価することにより算定されるものというべきであって,前記各5000万円から原告らの固有の相続税各1815万4500円を控除した各3184万5500円が,原告らが本件相続により「受けた利益の価額」となることが認められる。 ウ原告らの主張に対する判断(ア) これに対し,原告らは,①相続税法34条1項所定の「相続(中略)により受けた利益の価額」は,連帯納付義務者に係る納付又は徴収の時点において評価すべきものであるところ,原告らは,平成22年遺産分割協議における平成6年遺産分割協議の合意解除によって,本件各代償 債権を喪失したから,原告Aに係る本 者に係る納付又は徴収の時点において評価すべきものであるところ,原告らは,平成22年遺産分割協議における平成6年遺産分割協議の合意解除によって,本件各代償 債権を喪失したから,原告Aに係る本件各充当処分及び原告Bに係る本 件徴収等の行われた各時点において,原告らが本件相続により受けた利益は存しないというべきであり,②仮に,「相続(中略)により受けた利益の価額」を連帯納付義務者に係る納付又は徴収の時点以外の時点において評価するとしても,原告らは,前記のとおり,平成22年遺産分割協議における平成6年遺産分割協議の合意解除によって,本件各代償 債権を喪失したから,原告らが本件相続により受けた利益は遡及的に消滅したというべきである旨主張する。 しかしながら,前記アで説示したとおり,相続税法34条1項の「受けた利益の価額」は,相続税に係る申告等がされることにより各相続人等の固有の相続税の納税義務が確定した時点において連帯納付義務者が 相続又は遺贈により取得している財産を当該時点における価額を基準として評価して算定されるべきものであるから,前記①の主張は,その前提を誤るものであって失当である。また,前記②の主張については,平成22年遺産分割協議において平成6年遺産分割協議を合意解除し,私法上,原告らが本件相続により遡及的に本件各代償債権を取得していな かったこととなったからといって,このことが,本件亡D相続税に係る連帯納付義務者たる原告らにおいて本件亡D相続税の納税義務が確定した平成6年12月12日の時点で本件各代償債権(各5000万円)を本件相続により取得していた事実を何ら左右するものではないというべきであって,相続税法34条1項やその他の相続税法及び関係法令を精 査しても,平成22年遺産分割協議におけ (各5000万円)を本件相続により取得していた事実を何ら左右するものではないというべきであって,相続税法34条1項やその他の相続税法及び関係法令を精 査しても,平成22年遺産分割協議における平成6年遺産分割協議の合意解除によって原告らが本件相続により受けた利益は遡及的に消滅したと解すべき根拠となるような規定も見当たらない。 したがって,原告らの前記各主張は,いずれも採用することができない。 (イ) また,原告らは,本件各代償債権は,履行期が将来に到来するもので あること,亡Dの経済的破綻により一切履行されなかったこと等からすると,実質的にみて無価値なものであったというべきであるから,原告らが本件各代償債権を取得したことをもって,原告らが本件相続により受けた利益は存しないというべきである旨主張する。 そこで検討すると,原告らは,本件平成6年遺産分割協議により,本 件各代償債権各5000万円を取得し,その履行期及び履行方法は,Eゴルフセンター売却時又は原告らによる本件相続に係る相続税の納付時のいずれか早く到来した時に一括して支払うというものであった(前記前提事実⑵ア)ところ,原告らは,平成6年12月12日,本件相続に係る相続税(各1815万4500円)を納付した(同イ)から,本件 各代償債務の履行期は同日であって,原告らとしては,同日以後,亡Dに対し,本件各代償債務の履行を請求することができた。そして,亡Dは,平成7年6月30日に自己の相続税の延納申請を取り下げた後,別紙3のとおり,平成13年8月3日までの間,ほぼ毎月数十万円から数百万円(平成7年11月9日には1億円)の相続税を継続的に納付して いること(前記認定事実⑴),亡Dが所有する不動産については,平成9年12月10日以後,大阪国税局 間,ほぼ毎月数十万円から数百万円(平成7年11月9日には1億円)の相続税を継続的に納付して いること(前記認定事実⑴),亡Dが所有する不動産については,平成9年12月10日以後,大阪国税局等により差し押えされるなどしているものの,平成15年7月29日までは,公売に付されることも担保不動産開始決定がされることもなかったこと(同⑵)に鑑みると,亡Dは,平成6年12月12日時点から少なくとも平成13年8月3日までの間 は,原告らから本件各代償債務の履行を求められた場合には,原告らに対して一括弁済をすることが困難であったとしても,分割弁済をするに足りる原資を有していたものと考えられる。そうすると,本件各代償債権は,平成6年12月12日時点において,その額面どおり各5000万円の価額であると評価するのが相当であって,実質的にみて無価値なも のであったと評価することはできないというべきである。 なお,前記認定事実⑴及び⑵によれば,平成13年8月3日よりも後の一定時点以後は,亡Dの資力が悪化したと評価し得るものの,前記アで説示したとおり,相続税法34条1項の「受けた利益の価額」は,相続税に係る申告等がされることにより各相続人等の固有の相続税の納税義務が確定した時点(本件連帯納付義務に関しては平成6年12月12 日)における価額を基準として評価して算定されるべきものであるから,原告らが本件相続により受けた利益の価額の評価・算定に当たり,同時点(同日)よりも後に生じた事情たる前記亡Dの資力の悪化を考慮すべきではないことは明らかである。 したがって,原告らの前記主張は,採用することができない。 (3) 以上検討したところによれば,原告らが本件相続により受けた利益の価額は,各3184万5500円となる。 らかである。 したがって,原告らの前記主張は,採用することができない。 (3) 以上検討したところによれば,原告らが本件相続により受けた利益の価額は,各3184万5500円となる。 3 争点2(原告らに対する督促状発送の有無)について⑴ 証拠(甲21,乙19,20)及び弁論の全趣旨によれば,①原告Aに係る本件各滞納処分票(乙19)には,原告Aの氏名及び当時の住所のほか, 督促状発付欄に「7年7月19日(24号)」,平成6年12月12日の欄の摘要欄に「連帯」,徴収決定済額欄に「31,845,500」,収納済額欄に「7.7.27徴収引受」,収納未済額欄に「31,845,500」等の記載がされ,②原告Bに係る本件各滞納処分票(乙20)には,原告Bの氏名及び当時の住所のほか,督促状発付欄に「7年7月19日(23号)」, 平成6年12月12日の欄の摘要欄に「連帯」,徴収決定済額欄に「31,845,500」,収納済額欄に「7.7.27徴収引受」,収納未済額欄に「31,845,500」等の記載がされていることが認められる。このことに加えて,平成7年7月当時大阪国税局に勤務していた職員の陳述書(乙21,31,33)の陳述書には,本件各滞納処分票は,複写式の3枚綴り であり,複写された2枚目の書類をそのまま督促状として利用することとさ れており,大阪国税局が税務署長から徴収事務の引継ぎを受ける場合には,当該徴収に係る国税について督促状が発せられていない限り,当該引継ぎのために送付された書類を当該税務署長に対して返戻する取扱いとされていた旨の記載がされていることも併せ考慮すると,八尾税務署長が,平成7年7月19日,原告らに対し,原告らの当時の住所を送付先として本件連帯納付 義務に係る督促状を発した上で,同 る取扱いとされていた旨の記載がされていることも併せ考慮すると,八尾税務署長が,平成7年7月19日,原告らに対し,原告らの当時の住所を送付先として本件連帯納付 義務に係る督促状を発した上で,同月27日,通則法43条3項に基づき,大阪国税局長に対し,本件連帯納付義務に係る徴収事務の引継ぎをした事実を認めることができる。 ⑵ これに対し,原告らは,①平成24年法律第16号による改正前の相続税法においては,連帯納付義務者に対する督促状や通知の発送が,連帯納付義 務を課するための要件として規定されておらず,実務上も,相続人の一人に対してのみ他の相続人に送付すべき書類をまとめて送付するなどの取扱いがされていたため,他の相続人の相続税の納付状況が把握できない中で突然連帯納付義務の履行を求められるという不意打ちが生じていたこと,②本件においても,亡Dが,原告らに対して送付されるべき書類を用いて平成12年 4月25日付けで原告ら名義で本件連帯納付義務に基づくものとして各30万円を納付しており,原告らに対して送付されるべき書類が亡Dに対して送付されていたこと,③督促状の発送は管理簿等により記録されるところ,本件においては,当該管理簿等が書証として提出されていないことから,原告らに対して,本件連帯納付義務の履行について督促状が発送された事実はな い旨主張し,大阪国税局の元職員の陳述書(甲24)及び原告Aの陳述書(甲15)には,これに沿う記載がある。 そこで,前記①について検討すると,平成24年法律第16号による改正前の相続税法上,連帯納付義務者に対する督促状等の発送が,連帯納付義務を課するための要件として規定されてはいなかったものの,少なくとも本件 においては,本件各滞納処分票に当時の原告らの住所等が記載され,督促 ,連帯納付義務者に対する督促状等の発送が,連帯納付義務を課するための要件として規定されてはいなかったものの,少なくとも本件 においては,本件各滞納処分票に当時の原告らの住所等が記載され,督促状 を発した日の記載がされるなどしていることからすれば,八尾税務署長が本件各滞納処分票と同旨の記載がされた本件連帯納付義務に係る督促状を発していることは明らかであって,原告らの当時の住所を記載した督促状を作成しておきながら,これらを原告らに対して発送しないことは通常考えがたいというべきである。 そして,前記②について検討すると,本件亡D相続税について平成12年4月25日に行われた納付(2件)は,原告らの各名義で各30万円(合計60万円)ずつ行われたものであって,大阪国税局においては本件連帯納付義務に係る納付と取り扱われているところ,当該各30万円の納付をしたのが亡Dであるのか(さらには当該納付に必要な書類が原告らではなく亡Dに 対して送付されたのか)については,当事者間に争いがある。原告らの主張は,当該各納付を行ったのが亡Dであることからすると,当該各納付を行うための書類(甲16,17参照)も大阪国税局から亡Dに送付されたはずであって,当該書類が亡Dに送付されているならば,平成7年に発したとされる督促状も原告らに対してではなく亡Dに対して発送されたはずであるとい うものであると解されるところ,仮に原告らの主張のとおり当該各30万円の納付を行ったのが亡Dであるとしても,(a)亡Dが当該書類を入手する経緯には多様なものが想定されるところであって(例えば,亡Dが,大阪国税局から当該書類を送付された原告らから,原告らに代わって納付を行うよう求められて,当該書類を受領したうえで当該各納付を行うといったことも考え 得 されるところであって(例えば,亡Dが,大阪国税局から当該書類を送付された原告らから,原告らに代わって納付を行うよう求められて,当該書類を受領したうえで当該各納付を行うといったことも考え 得る。),当該書類が大阪国税局から亡Dに対して送付されていたことには必ずしもならないし,また,(b)当該書類が平成12年4月当時に大阪国税局から亡Dに対して送付されていたとしても,それよりも5年も以前の平成7年当時に八尾税務署長から亡Dに対して督促状が発せられたことには必ずしもならないから,原告らの主張をもって,八尾税務署長が平成7年7月19 日に原告らに対して本件連帯納付義務に係る督促状を発したことにつき,疑 いを生じさせるものということはできない。 さらに,前記③について検討すると,証拠(乙28~30)によれば,国税庁長官が平成24年6月21日付けで発出した「標準文書保存期間基準について」と題する指示において,各国税局が保存する郵便物発送関係書類の保存期間は1年とされ,その満了後は廃棄するものとされたこと,文書分類 等の見直しがされた後の文書原簿兼発送簿の保存期間は5年と見直され,その満了後は廃棄するものとされたことが認められ,これらによれば,原告らに対して本件連帯納付義務に係る督促状は発送したことを記録した管理簿等が現在存在しないことが不合理であるということはできず,本件各証拠を精査しても,他に八尾税務署長が平成7年7月19日に原告らに対して本件連 帯納付義務に係る督促状を発したことにつき,疑いを生じさせるような事情も見当たらない。 したがって,原告らの前記各主張は,いずれも採用することができない。 ⑶ 以上検討したところによれば,原告らに対して,本件連帯納付義務に係る督促状が発せられた事実が認め も見当たらない。 したがって,原告らの前記各主張は,いずれも採用することができない。 ⑶ 以上検討したところによれば,原告らに対して,本件連帯納付義務に係る督促状が発せられた事実が認められる。 4 争点3(原告らによる本件連帯納付義務の履行の有無)について原告らは,大阪国税局長は,亡Dから,資力を喪失して支払不能に陥るまであらゆる財産を差し押えるなどしてその相続税を徴収しており,その結果として,原告らが本件各代償債務の履行を受けることができなくなったという経緯からすると,本件各充当処分及び本件徴収等が行われた時点よりも以前(平成 22年5月よりも以前)に,本件相続により受けた利益の価額に相当する金額につき連帯納付義務を履行したと評価すべきである旨主張する。 そこで検討すると,通則法34条1項は,国税の税額に相当する金銭に納付書を添えて納付しなければならない旨を規定し,その委任を受けた通則法施行規則16条1項,同規則別紙第一号書式,同第一号の二書式は,納付書の書式 を定めているところ,大量かつ反復して発生する納税義務に係る円滑な租税行 政の確保の必要性も考慮すると,連帯納付義務者が,連帯納付義務を履行したというためには,当該連帯納付義務に係る相続税の納付に当たり,自己名義で作成された納付書を添えて納付を行わなければならないものと解される。 しかしながら,原告らは,前記時点よりも以前には,本件亡D相続税について,平成12年4月25日に行われた各納付(各30万円)を除けば,自己名 義で作成された納付書を添えて納付を行っていないのであるから,原告らの主張する前記経緯が存するとしても,前記時点よりも以前に本件連帯納付義務を履行したということはできない。なお,連帯納付義務者が,連帯納付義務に係る相 を添えて納付を行っていないのであるから,原告らの主張する前記経緯が存するとしても,前記時点よりも以前に本件連帯納付義務を履行したということはできない。なお,連帯納付義務者が,連帯納付義務に係る相続税の納付に当たり,自己名義で作成された納付書を添えて納付を行っていない場合であっても,①当該納付のために自らの原資を提供し,かつ,②当 該納付に係る収納を行う税務署の職員に対して当該納付が連帯納付義務を履行するものであることを明らかにした場合には,例外的に,自己名義で作成された納付書を添えて納付を行った場合と同様に,連帯納付義務の履行と評価する余地も否定できないものの,①原告らの主張する前記経緯が存するとしても,原告らが本件亡D相続税の納付のために自らの原資を提供したと評価すること はできないし,この点を措くとしても,②本件亡D相続税につき亡D名義で作成された納付書を添えてされた納付が,原告らの本件連帯納付義務を履行するものであることを当該納付に係る収納を行う税務署の職員に対して明らかにした上でされたものであることを裏付ける客観的かつ的確な証拠はないから,当該納付をもって本件連帯納付義務の履行と評価することができないことは明ら かである。 したがって,原告らの前記主張は,採用することができない。 5 争点4(原告らに本件連帯納付義務を課すことが憲法29条に反して違憲であるか否か)について原告らは,原告らが,本件各代償債務の履行を一切受けないままに,それぞ れ固有の財産から自己の相続税を支払わざるを得なかったばかりか,本件連帯 納付義務を負担させられ,更に固有の財産から納付を余儀なくされたところ,これは,徴収の規定としての相続により受けた利益の価額に相当する金額の限度で負担を認めている相続税法34条1項 件連帯 納付義務を負担させられ,更に固有の財産から納付を余儀なくされたところ,これは,徴収の規定としての相続により受けた利益の価額に相当する金額の限度で負担を認めている相続税法34条1項の趣旨に反するものであって,連帯納付義務に名を借りた原告らの固有の財産に対する侵奪というほかなく,原告らに本件連帯納付義務を負わせることは憲法29条に反する旨主張する。 しかしながら,連帯納付義務は,相続税法が,相続人等が相続又は遺贈により取得した財産を対象として課税する方式を採用することで,課税の観点からは,担税力に応じた,各相続人等の間において公平な負担が図られているものの,これを貫徹すると,一部の相続人等に無資力の者がいる場合,遺産のうち相続税として徴収する部分が少なくなるため,相続税の徴収確保のため,相互 に各相続人等に対して課した特別の責任であると解されるところ(前記2⑵ア),相続税法34条1項は,相続又は遺贈により受けた利益の限度でその責めを負うこととして,相続又は遺贈を契機として,相続人等が過度な負担が課されることを防いでいるものと解され,同項には相応の合理性があるものと考えられる。そして,前記2⑵ウ(イ)で説示したとおり,原告らは,平成6年12月12 日以後,亡Dに対し,本件各代償債務の履行を請求することができ,一方,亡Dは,平成6年12月12日時点から少なくとも平成13年8月3日までの間は,原告らから本件各代償債務の履行を求められた場合には,原告らに対して一括弁済をすることが困難であったとしても,分割弁済をするに足りる原資を有していたものと考えられるところであって,原告らが,同月頃までの間に,本 件各代償債務につき,亡Dに対して,現実に履行を求めてその履行を受けることは可能であったにもかかわらず,こ りる原資を有していたものと考えられるところであって,原告らが,同月頃までの間に,本 件各代償債務につき,亡Dに対して,現実に履行を求めてその履行を受けることは可能であったにもかかわらず,これを行わなかったのは,原告らの自らの選択によるものである。しかも,本件においては,原告らは,平成6年12月12日,亡Dと共同して本件相続に係る相続税の申告書を提出しているのであって,原告らとしては,当該提出によって,同日,亡Dの固有の相続税(本件 亡D相続税)の納税義務が確定するとともに,本件連帯納付義務の確定も法律 上当然に生ずることは,当然に認識し得たことである。 そうすると,本件各代償債務の履行を受けることができなかったことによる不利益は,原告らが甘受すべきものであると言わざるを得ず,結果として,原告らの固有の財産により本件連帯納付義務を履行することになったことをもって,憲法29条が保障する財産権の侵害に当たるということはできないという べきであり,原告らに本件連帯納付義務を課すことが憲法29条に反して違憲であるということはできない。 したがって,原告らの前記主張は,採用することができない。 6 小括以上説示したところによれば,原告らは,本件相続により受けた利益の価額 に相当する金額である各3184万5500円につき,その限度で本件連帯納付義務を負うところ(前記2),平成12年4月25日,各30万円を本件連帯納付義務の履行として納付した(前記認定事実⑴)ことにより,本件各充当処分及び本件徴収等の時点において,各3154万5500円の限度で本件連帯納付義務を負っていたというべきである。 そうすると,原告Aが3154万5500円の限度で本件連帯納付義務を負うことを前提としてされた本件各充当処分は,違 154万5500円の限度で本件連帯納付義務を負っていたというべきである。 そうすると,原告Aが3154万5500円の限度で本件連帯納付義務を負うことを前提としてされた本件各充当処分は,違法であるということはできず,また,原告Bが3154万5500円の限度で本件連帯納付義務を負うことを前提としてされた本件徴収等は,違法であるとも,法律上の原因を欠くものであるともいうことはできない。 第4 結論以上によれば,原告らの請求は理由がないから,これらをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官三輪方大 裁判官 黒田吉人 裁判官山﨑岳志(別紙1省略)(別紙2省略)(別紙3省略)

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