平成17(行ウ)13 農地転用届出受理処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年3月7日 岐阜地方裁判所 その他
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判決文本文4,268 文字)

- 1 -平成19年3月7日判決言渡平成17年(行ウ)第13号農地転用届出受理処分取消請求事件口頭弁論終結日平成19年1月10日主文 被告が別紙物件目録記載の土地について平成17年7月12日付け岐阜市農委受理第5-330号をもってした農地法5条1項3号の規定による農地転用届出を受理した処分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求の趣旨主文同旨第2事案の概要本件は,原告が,被告がした主文第1項掲記の農地転用届出受理処分(以下「本件受理処分」という)は,農地所有者たる原告に無断でなされた届出に基,。 づいてなされた等の理由で違法であるとしてその取消しを求めた事案である 争いがない事実(1) 原告は,別紙物件目録記載の土地(以下「本件農地」という)の所有者である。 Aは,原告の長男である。 (2) Aは,平成17年7月6日,岐阜市農業委員会(以下「市農業委員会」という)を訪れ,譲受人をA,譲渡人を原告とする,本件農地に係る農地法5条1項3号の規定による農地転用届出書(以下「本件届出書」という)及び添付書類を提出した(以下「本件届出」という。市農業委員会は,本件届)出書の記載内容や添付書類等についての書類審査をし,同月12日,本件受,,,。 理処分をして同月15日Aに対し農地転用届出受理通知書を交付した(3) 原告は,同年8月5日,市農業委員会を訪れ,本件届出はAが原告に無断- 2 -で行ったものであるとして,本件受理処分の取消しを求めたが,市農業委員会は,取消しの申請には原告及びAの両名の申請が必要であるとして,これを拒絶した。 (4) 原告は,平成17年9月22日,岐阜県に対し,本件受理処分は違法であるとして,その取消しを求める審査請求を行った。 争点 には原告及びAの両名の申請が必要であるとして,これを拒絶した。 (4) 原告は,平成17年9月22日,岐阜県に対し,本件受理処分は違法であるとして,その取消しを求める審査請求を行った。 争点 本件受理処分の違法性 争点に対する当事者の主張(1) 原告の主張ア農地法5条1項3号の規定による農地転用届出をするには,譲渡人(当該農地の所有者)及び譲受人が連署して届出書を提出する必要があるところ,本件届出書は,Aが,譲渡人とされた原告に無断で,原告の署名押印を偽造して作成・提出したものであるから,本件届出は無効であり,これに基づいてなされた本件受理処分は違法である。 イ本件届出は,譲渡人にとって重要な権利に関する申請であるところ,本件届出書の譲渡人及び譲受人の署名は,同一人によってなされたことが明らかであり,その上,本件届出書に記載された原告の住所は,添付書類の「農地法申請・届出・納税猶予等の確認書」に記載された原告の住所と異なっているなど,書類上明らかに疑わしい事情があったのであるから,市農業委員会としては,本件受理処分に先立って原告の意思確認をすべきであったのに,これを行わなかったのであるから,本件受理処分には手続上の瑕疵がある。 ウよって,本件受理処分は違法である。 (2) 被告の主張ア農地法5条1項3号の規定による農地転用届出に関する農業委員会の審査事務は,法律で定められた形式上の要件を満たしているか否かの形式審- 3 -査である。本件においても,市農業委員会は,本件届出について形式審査を十分に行っているのであるから,原告の届出意思確認等の実質審査を行っていないとしても,何ら違法ではない。また,市農業委員会は,本件届出書に記載された原告の住所が,農家基本台帳の住所と異なっていたこと,,,からAに確認しており の届出意思確認等の実質審査を行っていないとしても,何ら違法ではない。また,市農業委員会は,本件届出書に記載された原告の住所が,農家基本台帳の住所と異なっていたこと,,,からAに確認しておりAから住所を変更したという説明がされたため住民情報オンラインシステムにより調査をし,原告が本件届出書記載の住所に転居していることを確認した。そして,本件届出書の譲渡人の氏名欄の記載は,原告の自署でなくとも何ら違法はない。 イ次のような事実からすれば,本件届出に先立ち,原告とAとの間で本件農地を譲渡する合意ができていたとしても不自然ではなく,本件届出は原告の了解のもとで行われたものと考えられる。 ①本件農地の隣地である岐阜市a番bの土地は,原告がAに贈与した土地であり,その地上にはA所有の建物が建っている。 ②Aは,昭和のころに本件農地も原告から贈与されたという主張をしている。 ③原告とAは,平成12年以前は特に仲の悪い状態ではなかった。 ④原告は,本件届出書の原告作成部分がAの偽造に係るものであるとしながら,Aを捜査機関に告訴するなどの措置をとっていない。 ウよって,本件受理処分は適法である。 第3当裁判所の判断 農地法5条1項3号の規定による農地転用届出について,同法施行令1条の17は「法第5条第1項第3号の届出をしようとする者は,農林水産省令で,定めるところにより,農林水産省令で定める事項を記載した届出書を農業委員会に提出しなければならない」と規定し,これを受けて定められた同法施。 行規則6条の3は「令第1条の17第1項の規定により届出書を提出する場,合には,当事者が連署するものとする」と規定している。このことからすれ。 - 4 -ば,上記農地転用届出は,当事者双方の意思に基づいてなされる必要があることが当然の前提とされ 出書を提出する場,合には,当事者が連署するものとする」と規定している。このことからすれ。 - 4 -ば,上記農地転用届出は,当事者双方の意思に基づいてなされる必要があることが当然の前提とされているものであり,当事者の一方又は双方の意思に基づかないでなされた届出は,無効な届出であって,これを受けてなされた当該届出の受理処分は,当然に違法であると解すべきである。 これに対し,被告は,農地転用届出に関する農業委員会の審査事務は形式審査であるから,実質審査を行わなくとも違法ではない旨主張するが,審査の方式いかんにかかわらず,当事者の意思に基づかないでなされた届出は無効であり,これを受理した処分は瑕疵のある処分であって,当然に違法なものであると解すべきである。 そこで,本件届出が原告の意思に基づかないでなされたものであるか否かについて検討する。 (1) 証拠(甲4ないし7,13,17,18,乙1の1ないし1の6,原告本人)及び弁論の全趣旨に争いのない事実を総合すれば,次の各事実が認められる。 アAは,平成17年7月28日,岐阜市役所日光支所を訪れ,原告の登録印鑑の変更申請をしようとしたが,原告本人でないことを理由に拒否された。Aは,同日再度一人の老人を伴い同支所を訪れ,その老人が原告であると紹介するとともに,心臓病で会話ができないと言って,原告名義の病院の診察券を提示し,原告の登録印鑑の変更申請をした。同支所職員は,その診察券で本人確認を行い,その老人が原告であると認め,登録印鑑の変更手続を行った。本件届出書に押捺された原告の印影は,上記印鑑変更手続により変更された後の印影であった。なお,原告は,同年8月5日,登録印鑑を上記変更前の印鑑に復する手続を行った。 イ原告の住民登録上の住所は,同年7月1日付けで,肩書地から「岐阜市c町d 変更手続により変更された後の印影であった。なお,原告は,同年8月5日,登録印鑑を上記変更前の印鑑に復する手続を行った。 イ原告の住民登録上の住所は,同年7月1日付けで,肩書地から「岐阜市c町d丁目e番地」に変更されており,本件届出書には,その変更後の住所が記載されていたが,原告は,実際にはその変更後の住所に居住したこ- 5 -とはなかった。なお,原告は,同年8月4日,錯誤の転居届を理由に,住民登録上の住所を肩書地の住所に復する手続をした。 ウ本件届出書には,譲渡人氏名として,手書きで「B」と記載されている,,。 が譲渡人氏名欄の筆跡と譲受人氏名欄の筆跡とは相互に酷似しているエAは,同年10月28日,岐阜地方法務局に対し,本件農地について,原告の住所変更の登記及び原告からAへの所有権移転登記手続の申請を行ったが,同法務局登記官は,同年11月10日,申請権限を有しない者によって申請がなされたとして,申請を却下する処分をした。 オ原告は,同年8月14日,肩書住所地を訪れてきた不動産業者から,Aが原告から本件農地の贈与を受けると言っている旨聞かされた後,一貫して,本件届出書はAが原告の署名押印を偽造して作成・提出したものであり自分は一切本件届出には関知していない旨主張し,本件農地の転用を認めない立場に立って関係当局に対する各種の働きかけ等(上掲の印鑑・住所を復する手続,岐阜県に対する審査請求,本訴の提起など)を行っている。 (2) 上記認定事実に基づいて判断するに,本件届出には関知していない旨の原告本人の供述は十分信用できるものであり,本件届出書の譲渡人欄の原告の署名押印は,Aによって偽造されたものであって,本件届出は,原告の意思に基づかないでなされた無効なものであると認められる。 (3) これに対し,被告は,第2・3(2)イ① 本件届出書の譲渡人欄の原告の署名押印は,Aによって偽造されたものであって,本件届出は,原告の意思に基づかないでなされた無効なものであると認められる。 (3) これに対し,被告は,第2・3(2)イ①~④の諸事由を挙げて,本件届出は原告の了解のもとで行われたものと考えられる旨主張するが,これらの事由はいずれも上記(2)の認定を覆すに足りるものとは認められない(なお,Aが原告の長男であることからすれば,原告が刑事罰を与えることまでは躊躇したとしてもあながち不自然ではない。その他上記認定を覆すに足りる)証拠はない。 以上の次第であるから,本件届出は無効であって,これに基づいてなされた- 6 -本件受理処分は,その余の点について判断するまでもなく,違法であるから,その取消しを求める原告の請求は理由があるので認容することとして,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部裁判長裁判官西尾進裁判官日比野幹裁判官田中一美(物件目録省略)

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