平成13(ワ)257等 損害賠償等請求事件(通称 神奈川都市交通賃金請求)

裁判年月日・裁判所
平成15年6月5日 横浜地方裁判所
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判決文本文31,901 文字)

- 1 -主文1(第1事件)原告の請求を棄却する。 2(第2事件)原告は,被告に対し,68万4636円及びこれに対する平成11年11月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,第1事件及び第2事件を通じて原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求1(第1事件)被告は,原告に対し,296万4596円及びこれに対する平成13年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2(第2事件)主文第2項と同旨。 第2事案の概要本件は,被告に雇用されてタクシー乗務員としての業務に従事中交通事故に遭って傷害を負った原告が,被告に対し,タクシー乗務に復帰するまでの間の賃金,休業補償等を請求するとともに,被告が原告の就労の申出を違法に拒否して年次有給休暇(以下「年休」という)の取得を余儀なくさせ,年休の権。 利を消滅させたとして不法行為に基づく損害賠償,及び被告が交通事故の相手方との示談交渉をせずに放置しこれに対する原告の損害賠償請求権を時効消滅させたとして雇用契約又は委任契約の債務不履行に基づく損害賠償(慰謝料)を請求するもの(第1事件,並びに被告が原告に対し,労働者災害補償保険)法(以下「労災保険法」という)に基づく休業補償給付が支払われるまでの。 間休業補償給付相当額を立替払いしたとして立替金の返還を求めるもの(第2事件)の2件から成っている。 - 2 - 争いのない事実等( )被告は一般乗用旅客自動車運送業等を営む株式会社であり,原告は昭和 61年1月被告と雇用契約(以下「本件雇用契約」という)を締結してタ。 クシー乗務員として勤務し,後記事故当時,被告川崎第2営業所に配置されていた者である。 ( )被告には,その従業員を組合員とする,神奈川都市交通労働組合(以下 用契約」という)を締結してタ。 クシー乗務員として勤務し,後記事故当時,被告川崎第2営業所に配置されていた者である。 ( )被告には,その従業員を組合員とする,神奈川都市交通労働組合(以下 「一組」という,新都市交通労働組合(以下「二組」という)及び都市。)。 交通労働組合(以下「三組」という)の3つの労働組合があり,原告は三。 組の組合員である(弁論の全趣旨。 )( )原告は,タクシー乗務中の平成7年9月27日午前7時20分ころ,川 崎市<以下略>において,A運転の普通乗用自動車によって原告運転の普通乗用自動車(被告所有のタクシー車)の側面に衝突されるという事故(以下「本件事故」という)に遭い,頸椎捻挫,右肩・左下腿挫傷の傷害を負っ。 た(甲1,弁論の全趣旨。 )( )本件事故による原告の傷害については,平成11年8月31日症状固定 となり,平成12年2月8日川崎南労働基準監督署長から労災保険法施行規則別表第1障害等級表の障害等級14級9号(局部に神経症状を残すもの)の認定を受けた(甲33。 )( )原告は,本件事故後休業し,労災保険法に基づく休業補償給付の支給を 受けたが,平成11年11月4日,川崎南労働基準監督署長から「同年8月31日症状固定と認める。同年9月1日以降の療養,休業補償請求分については,全部不支給とする。同年7月16日から同年8月31日までの休業補償給付請求分については,実際に通院した日のみを療養のため休業する日と認め,その余は不支給とする」旨の同年11月2日付け決定(以下「本件。 不支給決定」という)の通知を受けた(甲2,弁論の全趣旨。これに基。 )づき,原告は,同年7月16日から同年9月15日までの休業補償給付請求- 3 -分につき,同年7月16日から同年8月31日までの実通院日数 いう)の通知を受けた(甲2,弁論の全趣旨。これに基。 )づき,原告は,同年7月16日から同年9月15日までの休業補償給付請求- 3 -分につき,同年7月16日から同年8月31日までの実通院日数21日分合計20万3364円の支給を受けた。 ( )被告は,本件事故後原告に対し疾病休職(以下「休職」という)を命 。 じたが,同年11月25日,同月4日付けで復職(川崎第2営業所勤務)を命じたところ,原告は同年12月27日出勤し,同日から平成12年4月15日まで内勤業務に従事し,同月16日タクシー乗務に復帰した(甲4,10,乙20,弁論の全趣旨。 )( )被告は,原告に対し,労災保険法による休業補償給付の支給の立替えの 趣旨で,平成11年7月16日から同年8月15日までの分として29万9,,000円同月16日から同年9月15日までの分として29万9000円同月16日から同年10月15日までの分として29万円,以上合計88万8000円を支払った(乙10,弁論の全趣旨。 )( )被告の就業規則には,以下の定めがある。 58条(転勤.転職.出向)会社は,業務上必要あるときは,従業員に対し転勤,転職又は出向を命ずることがある。 59条(休職基準)会社は,従業員(試雇,嘱託,臨時雇を除く)が下記の各号の一に該当するときは,休職を命じる。 1.疾病休職業務上の傷病又は業務外の傷病による欠勤が引続き6ケ月以上に及んだとき60条(休職期間)休職期間は下記の通りとする。 1.疾病休職発令の日より1年間。ただし,業務上の疾病の場合治癒と診断された時まで61条(復職)- 4 -会社は,休職を命ぜられた者がそれぞれ下記の各号の一に該当するに至ったときは,復職を命じる。 1.疾病休職の場合休職期間満了前に治癒したことが会社の指定した された時まで61条(復職)- 4 -会社は,休職を命ぜられた者がそれぞれ下記の各号の一に該当するに至ったときは,復職を命じる。 1.疾病休職の場合休職期間満了前に治癒したことが会社の指定した医師により診断されたとき( )被告が一組との間で締結した労働協約(以下「本件協約」という)に 。 は以下の定めがあるが(なお,被告と一組は,平成13年9月14日新しい労働協約を締結したところ,当該協約からは下記96条に相当する条項は削除された,被告と三組との間には労働協約は締結されていない。 。)96条(災害,療養,休業,傷害,打切り,遺族各補償及び葬祭料)会社は従業員の業務上の負傷,疾病,廃疾又は死亡に対し,労働者災害補償保険法により補償する。 前項の場合会社は速かに補償金額の立替支払を行い,本人が保険給付を受けたとき会社に返還するものとする。 97条(業務上の疾病範囲及び判定)前条に定める業務上の疾病の範囲は,労働基準法第75条による業務上の負傷,疾病,廃疾,死亡及び重大な過失の判定並びにこの章に定める規定の適用について疑義又は異議のあるときは行政官庁の判定による。 98条(身体障害の取扱い)会社は前条の身体に障害を生じた従業員を元の職に復帰させることを原則とし,若し復帰させることができないときは組合と協議し適当な業務に配置転換させる。 前項の場合,爾後の昇給,昇格,昇進等についても一般基準に比較して不利益な取扱いをしない。 主な争点(( )ないし( )が第1事件関係,( )が第2事件関係である) 。 ( )賃金,休業手当ないし休業補償請求権の有無 - 5 -( )年休の取得に関する損害賠償請求権の有無 ( )本件事故の示談交渉に関する慰謝料請求権の有無 ( )立替金返還請求権の有無 当事 当ないし休業補償請求権の有無 - 5 -( )年休の取得に関する損害賠償請求権の有無 ( )本件事故の示談交渉に関する慰謝料請求権の有無 ( )立替金返還請求権の有無 当事者の主張の骨子(以下のとおりの主張と善解することができる)。 ( )争点( )(賃金,休業手当ないし休業補償請求権の有無)について (原告)原告は,平成11年7月16日から平成12年4月15日までの期間(このうち,年休を取得した期間として平成11年11月4日から同年12月13日までの期間を除く)について,被告に対し,以下のとおり,本件協約。 98条,民法536条2項,労働基準法26条又は同法76条に基づき,賃金請求権,休業手当請求権又は休業補償請求権を有している。 ア平成11年7月16日から同年8月31日まで(ア)原告は,この期間中就労していないが,被告に対し,本件協約98条若しくは民法536条2項に基づき,本件事故前3か月間の平均賃金である1日当たり1万2105円に基づく賃金請求権を有し,又は労働基準法26条若しくは同法76条に基づき,少なくとも上記平均賃金の60パーセントの割合による休業手当請求権若しくは休業補償請求権を有する。 (イ)その根拠は以下のとおりである。 a本件協約98条(a)本件協約は,被告と一組との間で締結されたものであって,原告が所属する三組との間で締結されたものではない。 しかし,本件協約は,被告の労働者の95パーセント以上を組織する一組との間で締結され,平成13年10月17日には二組との間でも締結された。また,被告は,三組が本件協約と同一の労働協約の締結を求めたのに対し,準用するから締結する必要はない,あ- 6 -るいは整備中である旨述べて締結を拒否し,準用を認めてきたのであるから,本件協約は また,被告は,三組が本件協約と同一の労働協約の締結を求めたのに対し,準用するから締結する必要はない,あ- 6 -るいは整備中である旨述べて締結を拒否し,準用を認めてきたのであるから,本件協約は,三組の構成員である原告に対しても準用される。 (b)本件協約98条は,業務上の負傷によって身体に障害を生じた労働者に対し,賃金において,障害を負わなかった者の一般基準に比較して不利益な取扱いをしないことを定めており,これはすなわち,被告は,業務上の傷病を負った労働者が就労していない場合でも,当該傷病を負う以前と同額の賃金を支払う義務を負うことを意味する。同条は,文言上症状固定の後について定めた規定のようにも見えるが,症状固定の後に賃金に差を設けてはならないという規範は,治療中においてこそより強く要請されるから「もちろん解,釈」により,治療中の労働者についても同条は適用されるというべきである。 (c)原告は,上記期間中いまだ症状固定しておらず療養中のため就労できなかったものであるから,同条に基づき,被告に対し,本件事故前3か月間の平均賃金と同額の賃金請求権を有する。 b民法536条2項(a)事務職就業申入れの拒否原告は上記期間,いまだ療養中であったが,被告に対して事務職,。 への配置転換を申し入れたにもかかわらず被告はこれを拒否した被告は,原告がタクシー乗務員であったことを理由に事務職就業申入れを拒否した旨主張するが,原告は,被告への採用時に,被告から,タクシー乗務員であっても配置転換がある,けがをした場合には事務職の道が開けるとの説明を受け,実際,被告においては,タクシー乗務員が障害を負ったか否かを問わず事務職に配置転換がされることも多々あった。さらに,被告は,就業規則58条及び本- 7 -件協約98条に基づき,原告を 説明を受け,実際,被告においては,タクシー乗務員が障害を負ったか否かを問わず事務職に配置転換がされることも多々あった。さらに,被告は,就業規則58条及び本- 7 -件協約98条に基づき,原告を事務職に配置転換をする義務があったのであるから,原告の事務職就業申入れは債務の本旨に従った履行の提供であり,被告が原告の就労を拒否したのは不当である。 (b)休職命令被告は,本件事故後原告に対し休職命令(就業規則59ないし61条)を発しており,上記期間中はいまだ同命令が有効であったから,原告は就労したくてもできない状態にあったものである。 (c)以上のとおり,被告は上記期間中,原告の就労を不当に拒否していたのであるから,原告は,被告の責に帰すべき事由により就労できなかったものとして,民法536条2項に基づき,本件事故前3か月間の平均賃金と同額の賃金請求権を有する。 c労働基準法26条(a)被告は,原告に対し,平成11年11月27日までは休職命令を出したままの状態であり,その後同年12月27日の内勤開始日まで就労を許可しなかった。 (b)原告は,上記のとおり,労働災害を契機に休業を余儀なくされたのであるから,労働基準法26条にいう「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するというべきであり,被告に対し,同条に基づき平均賃金の60パーセントの割合による休業手当請求権を有する。 d同法76条,,原告は業務上の災害である本件事故により休業したのであるから被告に対し,同法76条に基づき,平均賃金の60パーセントの割合による休業補償請求権を有する。 イ平成11年9月1日から同年11月4日まで(ア)原告は,この期間中も就労していないが,被告に対し,本件協約9- 8 -8条若しくは民法536条2項に基づき,本件事故前3か月間の平 を有する。 イ平成11年9月1日から同年11月4日まで(ア)原告は,この期間中も就労していないが,被告に対し,本件協約9- 8 -8条若しくは民法536条2項に基づき,本件事故前3か月間の平均賃金である1日当たり1万2105円に基づく賃金請求権を有し,又は労働基準法26条若しくは同法76条に基づき,少なくとも上記平均賃金の60パーセントの割合による休業手当請求権若しくは休業補償請求権を有する。 (イ)その根拠は以下のとおりである。 a本件協約98条(a)本件協約が原告に対しても準用されることは,上記ア(イ)a(a)のとおりである。 ,,,(b)原告は同年8月31日症状固定となったが頸部の運動制限肩・手のしびれ感という後遺症が残った。 上記のとおり,本件協約98条は,被告に対し,業務上の負傷によって身体に障害を生じた労働者に対し,労働者が就労していない場合でも,当該傷病を負う以前と同額の賃金を支払うよう義務づけた規定であるから,業務上の負傷によって後遺症が残った原告は,上記期間労働していなくても「業務上の負傷によって身体に障害,を生じた労働者」として,同条に基づき,被告に対し,本件事故前3か月間の平均賃金と同額の賃金請求権を有する。 b民法536条2項(a)事務職就業申入れの拒否原告は上記期間中,被告に対し,事務職への配置転換を申し入れていたにもかかわらず,被告は原告の就労を拒否した。上記ア(イ)b(a)のとおり,原告の事務職就業申入れは債務の本旨に従った履,。 行の提供であるから被告が原告の就労を拒否したのは不当である(b)休職命令上記期間中,被告が本件事故後原告に対して発した休職命令が有- 9 -効であったために,原告が就労したくてもできない状態にあったことは上記ア(イ)b(b)と同様である。 当である(b)休職命令上記期間中,被告が本件事故後原告に対して発した休職命令が有- 9 -効であったために,原告が就労したくてもできない状態にあったことは上記ア(イ)b(b)と同様である。 (c)以上のとおり,被告は上記期間中,原告の就労を不当に拒否していたのであるから,原告は,被告の責に帰すべき事由により就労できなかったものとして,民法536条2項に基づき,本件事故前3か月間の平均賃金と同額の賃金請求権を有する。 c労働基準法26条被告は,原告に対し,平成11年11月27日までは休職命令を出したままの状態であり,その後同年12月27日の内勤開始日まで就労を許可しなかったこと,原告は,同法26条にいう「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する者として,被告に対し,平均賃金の60パーセントの割合による休業手当請求権を有することは,上記ア(イ)cと同様である。 d同法76条,,原告は業務上の災害である本件事故により休業したのであるから被告に対し,同法76条に基づき,平均賃金の60パーセントの割合による休業補償請求権を有する。 なお,平成11年9月1日以降原告に対して労災保険法による休業補償給付は行われていないが,労災保険は,労働基準法上の災害補償責任のための保険であって,労災保険法による保険給付がされなくても労働基準法76条に基づく使用者の責任は残るのであり,労災保険法による保険給付がされなくても労働基準法76条が適用される場面があると考えるべきである。 ウ平成11年12月14日から同月26日まで(ア)原告は,この期間中も就労していないが,被告に対し,本件協約98条若しくは民法536条2項に基づき,本件事故前3か月間の平- 10 -均賃金である1日当たり1万2105円に基づく賃金請求権を有し,又は労働基 期間中も就労していないが,被告に対し,本件協約98条若しくは民法536条2項に基づき,本件事故前3か月間の平- 10 -均賃金である1日当たり1万2105円に基づく賃金請求権を有し,又は労働基準法26条若しくは同法76条に基づき,少なくとも上記平均賃金の60パーセントの割合による休業手当請求権若しくは休業補償請求権を有する。 (イ)その根拠は以下のとおりである。 a本件協約98条上記イ(イ)aに同じ。 b民法536条2項(a)事務職就業申入れの拒否原告は,同年11月16日被告に対し事務職への配置転換を求,,める内容証明郵便を送りその旨申し入れていたにもかかわらず被告は原告の就労を拒否した。上記ア(イ)b(a)のとおり,被告,,は原告を事務職に配置転換する義務を負っていたのであるから原告の内勤申入れは債務の本旨に従った履行の提供であり,被告が原告の就労を拒否したのは不当である。 (b)被告による復職命令の取消し被告は,同月27日,いったんは原告に対し復職命令を発し,原告はこれに応じて乗務しようとしたにもかかわらず,被告はその後,何の理由もなく自らこれを覆し,原告の乗務を拒否したため,原告は自宅待機を余儀なくされた。 (c)以上のとおり,被告は上記期間中,原告の就労を不当に拒否していたのであるから,原告は,被告の責に帰すべき事由により就労できなかったものとして,民法536条2項に基づき,本件事故前3か月間の平均賃金と同額の賃金請求権を有する。 c労働基準法26条上記イ(イ)cに同じ。 - 11 -d同法76条上記イ(イ)dに同じ。 エ平成11年12月27日から平成12年4月15日まで(ア)原告は,平成11年12月20日,ようやく被告から就労を許可され,上記期間中,工場勤務に従事したが,被告に対し,本 記イ(イ)dに同じ。 エ平成11年12月27日から平成12年4月15日まで(ア)原告は,平成11年12月20日,ようやく被告から就労を許可され,上記期間中,工場勤務に従事したが,被告に対し,本件協約98条若しくは民法536条2項に基づき,本件事故前3か月間の平均賃金である1日当たり1万2105円に基づく賃金請求権を有する。 (イ)その根拠は以下のとおりである。 a本件協約98条上記イ(イ)aに同じ。 b民法536条2項被告は,上記ウ(イ)b(b)のとおり,いったんは原告に対し復職命令を発したにもかかわらず,原告がこれに応じて乗務しようとするとこれを拒否したのであるから,原告は,工場勤務を行っていた上記期間中も,被告の責に帰すべき事由により乗務できなかったものである。 よって,原告は,民法536条2項により,乗務によって得ていた従前の賃金額と同額の賃金請求権を失わない。 オ請求金額(賃金請求権について算定)(ア)平成11年7月16日から同年12月26日まで(ただし,同年11月5日から同年12月13日までの間を除く)。 ,,原告の平均賃金は1日当たり1万2105円であったから原告は平成11年7月16日から同年10月15日まで,同月16日から11月4日,同年12月14日から同月26日まで,以上合計123日間について,本件事故がなければ,原告は下記計算式のとおり148万8915円の賃金を得ることができた。 - 12 -1万2105円×123日=148万8915円原告は,この期間の賃金として,被告から合計88万8000円を受領しているから,未払賃金は60万0915円である。 (イ)平成11年12月27日から平成12年4月15日まで平成11年12月27日から平成12年4月15日までの121日間,原告は被告から工場勤務を命 ているから,未払賃金は60万0915円である。 (イ)平成11年12月27日から平成12年4月15日まで平成11年12月27日から平成12年4月15日までの121日間,原告は被告から工場勤務を命じられ,工場において勤務に従事し賃金を受領したが,その額は従前の賃金より少なかった。上記エのとおり,被告は原告に対し,賃金全額を支払うべき義務を負っているから,未払賃金額は以下の計算式のとおり,85万4481円である。 1万2105円×121日-(11万1768円(被告が支払った1月分賃金)+16万6152円(同2月分)+16万6152円(同3月分)+16万6152円(同4月分)=85万4481)円(ウ)よって,原告は,被告に対し,上記合計145万5396円の未払賃金請求権を有する。 (被告)ア本件協約98条に基づく請求について(ア)本件協約は,被告と一組との間の労働協約であり,被告と三組との間に労働協約は締結されていない。また,被告が本件協約を三組との間に準用している事実もない。 よって,本件協約が三組の構成員である原告に適用されるとする原告の主張は前提を欠き,失当である。 (イ)仮に本件協約が原告に適用されるとしても,同協約98条2項は,同条1項の職場復帰を受けての規定であり,同協約96条との対比においても,職場復帰後の取扱いを定めたものであって療養中の労働者の取扱いを定めたものではないことは明らかである。また,症状固定後,職- 13 -場復帰し労務を提供すれば賃金請求権があることは当然であるのに対し,療養中は労務の提供がないのであるから,賃金請求権はなく,療養中と療養後の取扱を区別することには合理的な理由がある。 そして,原告が就労可能になったのは,下記イのとおり平成12年4月16日であるから,それ以前の療養期間について あるから,賃金請求権はなく,療養中と療養後の取扱を区別することには合理的な理由がある。 そして,原告が就労可能になったのは,下記イのとおり平成12年4月16日であるから,それ以前の療養期間について,本件協約98条が原告の賃金請求の根拠となる余地はない。 イ民法536条2項に基づく請求について(ア)事務職就業申入れの拒否とされる点について原告は乗務員として採用されたのであり,事務職就業を申し入れても債務の本旨に従った労務提供の申出と評価することはできない。 被告は,平成11年11月4日本件不支給決定が届いたことを受け,同月25日原告に対し,同月4日付けで被告川崎第2営業所に復帰を命じ,併せて乗務が可能である旨の医師の診断書の提出を求めることとしたが,原告から診断書の提出はなかった。その後,原告は被告に対し,平成12年3月8日付け診断書を提出したが,その内容は運転に適さないというものであり,同月28日付けの診断書は,現状でタクシー乗務ができるかどうか分からないというものであったため,被告は原告に対,,,し添乗員を同乗させての乗務を実施しその結果乗務可能と判断して同年4月16日から乗務に復帰させた。 以上のとおり,原告は平成12年4月15日以前には債務の本旨に従った履行の申出を行っておらず,履行できる状態にもなかったのであるから,被告の受領拒絶を前提とする原告の主張は失当である。 (イ)休職命令について原告は,本件事故に遭遇し被告から休職を命じられた時点では乗務不可能な状態であったのであるから,被告が休職命令を発することに何ら問題はなかった。 - 14 -その後,被告は,本件不支給決定の,原告が同年8月31日付けで症状固定したとする労働基準監督署長の判断を受けて,上記のとおり同年11月4日付けで原告に対し復職を命じたにもかか かった。 - 14 -その後,被告は,本件不支給決定の,原告が同年8月31日付けで症状固定したとする労働基準監督署長の判断を受けて,上記のとおり同年11月4日付けで原告に対し復職を命じたにもかかわらず,原告は乗務が可能であるとの申出も診断書の提出もしなかった。さらに,平成12年3月8日時点でも上記のとおり「乗務は不適」との医師の診断を受けていたのであるから,原告が乗務可能になったのは,同年4月16日以降である。 ウ労働基準法26条に基づく請求について原告の休業は,使用者である被告に責任のないものであるから,被告が原告に対し休業手当を支払う義務はない。 エ同法76条に基づく請求について同法84条により,労災保険法が適用されるべき時には,使用者は労働基準法上の災害補償責任を免れるのであるから,結局,労災保険に加入している事業主はすべて労働基準法上の補償責任を負わないこととなる。したがって,被告は原告に対し同法76条に基づく責任を負うことはない。 オ原告は,平成11年7月16日から平成12年4月15日までの間,乗務員としては就労できない状態であり,平成11年11月4日までは事務職就業の申出さえもなく,同年7月16日から平成11年11月4日まで及び同年12月14日から同月26日までの間は就労しなかったのである,,。 ,からこれらの期間については賃金請求権が発生する余地はないまた被告は,原告が乗務できないことから,恩恵的に,同月27日から平成12年4月15日まで本来原告の業務ではない内勤を命じたが,原告が当該業務に従事した分の賃金は支払われている。したがって,被告には,原告に対する未払賃金は存在しない。 ( )争点( )(年休の取得に関する損害賠償請求権の有無)について (原告)- 15 -ア原告は,平成11 は支払われている。したがって,被告には,原告に対する未払賃金は存在しない。 ( )争点( )(年休の取得に関する損害賠償請求権の有無)について (原告)- 15 -ア原告は,平成11年11月15日,同月5日から同年12月13日まで40日間の年休を申請し年休を取得したが,これは,上記( )のとおり, 被告が原告の就労申入れを拒否し,乗務も事務職就業もさせようとしなかったため,就労できない状態にあったところ,これを被告から無断欠勤といわれ解雇されることを防ぐためであった。 イ原告は,本来ならば取得しなくてもよい年休を取得せざるを得ず,その結果,40日分の年休が消滅したのであるから,原告は,下記の計算式のとおり,50万9200円の損害を被った。 1万2730円(健保日額+1400円)×40日=50万9200円ウ以上のとおり,原告は被告に対し,不法行為に基づき,50万9200円の損害賠償請求権を有する。 (被告)原告は,自ら年休の取得を希望しており,被告は,原告からの年休取得の申請を申請どおり認め,所定の賃金を支払ったのであるから,原告に損害は発生していない。なお,原告が上記期間に取得した年休の日数は34日である。 ( )争点( )(本件事故の示談交渉に関する慰謝料請求権の有無)について (原告)ア被告は,その従業員が業務中に起こした交通事故については,従業員本人による相手方との示談交渉を禁じ,被告が当該従業員から委任を受け,事故の相手方あるいは保険会社との交渉を行うことになっている。従業員による示談交渉禁止及び被告への交渉委任は,被告において制度となっており,被告と従業員との労働契約の内容となっているものである。 本件事故は,相手方であるAの過失によるものであり原告は被害者であったところ,被告は,原告のため への交渉委任は,被告において制度となっており,被告と従業員との労働契約の内容となっているものである。 本件事故は,相手方であるAの過失によるものであり原告は被害者であったところ,被告は,原告のためにAあるいはAの保険会社であるB株式- 16 -会社(以下「B」という)と交渉して,原告のために損害賠償金を獲得。 する義務があるにもかかわらず,本件事故の処理を放置し,平成11年12月3日,Bの担当者から原告の損害賠償請求権が時効消滅したとの告知を受けながら,これを原告に連絡することもしなかった。 A及びBが時効消滅を主張して任意に損害を賠償しないことから,原告は,平成13年2月24日東京地方裁判所に対し,A及びBを被告とする損害賠償請求訴訟(以下「別件訴訟」という)を提起せざるを得なくな。 り,当該訴訟においても消滅時効を主張されるという無用な負担を被っている。 イ原告は,被告の不作為により,A及びBから本件事故により生じた損害賠償請求権の消滅時効を主張されて支払を拒否され,別件訴訟を提起せざるを得なくなるという損害を被ったのであるから,被告に対し,労働契約又は委任契約違反に基づく損害賠償請求権を有するところ,このような負担を被ったことによる慰謝料は100万円を下らない。 ウなお,被告は,物損は被告が交渉し,人身損害は従業員が個人で示談交渉を行うことにしている,事故の責任がどちらにあるかで被告の対応は異なる,あるいは,従業員に対して禁じているのは事故現場での交渉だけでありその後の交渉は禁じていない旨主張するが,いずれも全く事実に反する。 エよって,原告は被告に対し,労働契約又は委任契約違反に基づき100万円の損害賠償請求権を有する。 (被告)ア被告が原告から本件事故に関する示談交渉の委任を受けたことはなく,被告が原告に対し当該 よって,原告は被告に対し,労働契約又は委任契約違反に基づき100万円の損害賠償請求権を有する。 (被告)ア被告が原告から本件事故に関する示談交渉の委任を受けたことはなく,被告が原告に対し当該示談交渉を行う旨述べたこともない。 イ被告は,従業員に対し,交通事故が発生した場合には,現場で独断で示談交渉をしないよう指導しており,事故発生の場合は所属する営業所に連- 17 -絡するよう指導している。 ,,。 営業所では事故の連絡を受けると運転手等から事故状況を確認するこのとき,相手が過失を認めている場合には,営業所の担当者において保険会社に連絡し,被告の被った物損について請求する旨伝える。また,被告の乗務員が受傷している場合は,保険会社から状況について被告に問い合わせがあるので,適宜必要な情報を提供したり,必要書類の記入に協力したりするが,乗務員が被った人身損害の処理については,乗務員自身が判断することであり,被告は関知しない。ただし,乗務員から依頼があれば示談交渉の席に立ち会ったり必要書類を整えたりするし,被告担当者の好意からそのような対応をすることもあるが,あくまでも示談交渉の当事者は乗務員本人である。 他方,被告の乗務員に過失があり,被告に使用者責任が発生する可能性のあるものについては,被告の営業所ではなく本社の事故係が扱うが,この場合でも,被告が取り扱うのは,被告が被った物損及び被告が負担する可能性のある使用者責任についてであり,乗務員が被った人身損害について交渉をすることはない。 なお,被告は「事故発生時の措置」と題する小冊子を被告の乗務員に,配布しているが,これは,事故発生時に被告乗務員が動転し,事故の相手方の要求に対し,乗務員の過失の有無にかかわらず修理代を負担する等安易な約束をし,その結果被告が損害賠償責任を負 被告の乗務員に,配布しているが,これは,事故発生時に被告乗務員が動転し,事故の相手方の要求に対し,乗務員の過失の有無にかかわらず修理代を負担する等安易な約束をし,その結果被告が損害賠償責任を負担しかねない事態が発生していたこと,また,被告が乗務員に対して行った安全講習会の席上,乗務員から,事故の際何をすればいいのか分からないという声があったことから作成したものであり,被告が加害者として使用者責任を負担するような場合を想定して作ったものであって,乗務員が被害者として自身の示談交渉を行うことを禁じたものではない。また,同冊子で注意を喚起しているのは,事故現場における示談交渉のみである。 - 18 -( )争点( )(立替金返還請求権の有無)について (被告)ア原告は,本件事故後休業し,労災保険法により休業補償給付を受給して,,,いたところ同給付は申請からその支給までに相当の時間を要するため被告は原告のために,同給付相当額を立て替えて先に支払い,給付があったときに返還を受けていた。 被告は原告に対し,平成11年7月16日から同年10月15日までの,,,休業補償給付相当額として合計88万8000円を支払ったが原告は休業補償給付として,同年11月2日付けで,同年7月16日から同年8月15日までの分として13万5576円,同月16日から同月31日までの分として6万7788円のみ支給を受け,同年9月1日以降の休業補償給付は支給しないとの決定(本件不支給決定)を受けた。そして,原告は,支給があった上記合計20万3364円のみ被告に返還した。 イ被告は,同年11月25日,原告に対し書面をもって立替金残額68万4636円の返還を求めたが,原告はこれを返還しない。 よって,被告は原告に対し,68万4636円の立替金返還請求権を に返還した。 イ被告は,同年11月25日,原告に対し書面をもって立替金残額68万4636円の返還を求めたが,原告はこれを返還しない。 よって,被告は原告に対し,68万4636円の立替金返還請求権を有する。 (原告)被告が原告に支払った上記88万8000円は立替金ではなく,被告が原告に対して当然支払うべき賃金あるいは休業補償休業手当であったから上,(記( )参照,原告に返還義務はない。 )第3当裁判所の判断 本件事故後の事実経過争いのない事実等,証拠(甲1ないし7,甲8の1ないし3,甲8の5,甲9,10,15,16,甲17の1,2,甲18ないし20,甲33,甲35ないし41,甲46,48,乙1ないし10,乙11の1ないし3,乙12な- 19 -いし16,乙20,22,証人C,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ( )被告は,神奈川県下の大手のタクシー・ハイヤー事業者であって,横浜 市<以下略>所在の本社のほか,川崎,井土ヶ谷,磯子等に営業所を有している。このうち川崎営業所は,ハイヤー乗務員が所属する第1営業所とタクシー乗務員が所属する第2営業所に別れ,原告は後者の配置である。 原告は,昭和61年1月タクシー乗務員として被告に雇用され,その後本件事故時まで一貫してタクシー乗務員として勤務している。なお,原告は,雇用に当たり,乗務員として雇用されたことを前提としてタクシー業務に関する遵守事項を明記した誓約書を作成し,これを被告に差し入れている。 ( )被告には,数十年前に結成された一組及びその後設立された二組が存在 しており,さらに,平成8年4月1日,原告らが中心となって三組が設立された。 一組と被告の間には以前から本件協約が締結されていたが,二組及び三組との間には労働協約が締結されていな れた二組が存在 しており,さらに,平成8年4月1日,原告らが中心となって三組が設立された。 一組と被告の間には以前から本件協約が締結されていたが,二組及び三組との間には労働協約が締結されていなかったところ,被告は,平成13年9月14日,一組との間で新しい労働協約を締結し,同年10月17日,二組との間でも労働協約を締結した。しかし,三組との間では,同組合が労働協約締結を申し入れるものの,その前提として被告と一組とのユニオンショップ協定破棄を求めることなどから交渉がまとまらず,現在に至るまで労働協約の締結に至っていない。 ( )原告は,平成7年9月27日,タクシー乗務中,川崎市<以下略>にお いて,路外から片側2車線の国道に右折進入しようとしたところ,当該国道を右方向から直進してきたA運転自動車によって原告運転の自動車(タクシー車)の右側面に衝突された(本件事故。この事故により,原告は,頸椎)捻挫並びに右肩及び左下腿挫傷の傷害を負ってタクシー乗務をすることができなくなったため,その日から欠勤し,そのまま欠勤が続いたため,被告は- 20 -原告に対し就業規則に基づき休職を命じた。 ( )原告は,本件事故直後,被告川崎第2営業所に連絡した。同営業所の交 通事故担当者は,原告が運転していた被告所有自動車が損傷していたこと,Aが事故原因は原告にある旨主張し,被告が原告の使用者としてAに対し損害賠償責任を負う可能性があったことから,その後,原告と共に,Aの交渉の窓口であるB(A締結の自動車対人損害賠償責任保険契約の保険会社である)と交渉を始めたが,事故発生の責任についての双方の言い分が全く異。 なり,早期解決は望めそうになかった。他方,原告は,本件事故により上記( )の傷害を負い,休業して収入もなかったため,治療費,生活費等を早期 めたが,事故発生の責任についての双方の言い分が全く異。 なり,早期解決は望めそうになかった。他方,原告は,本件事故により上記( )の傷害を負い,休業して収入もなかったため,治療費,生活費等を早期 に得るためにはAとの示談交渉を進めるよりも労災保険法上の手続を行うほうがよいと考え,被告の協力を得て川崎南労働基準監督署長に対し同法による療養給付及び休業補償給付を申請し,支給決定を得た。 原告は,休業補償給付を受給できるようになり当面生活に困らなくなったため,A側との示談交渉に対する熱意をなくしたが,被告の方は,被告自動車の物損について原告よりも先に交渉を進めると,そこでの過失割合の合意が原告の行う人身損害についての交渉に影響を与えるおそれがあること,被告自動車の修理費見積額が9万6542円と比較的軽微だったこと,川崎営業所は自動車修理工場を有しそこで事故車の修理をすることができたこと,事故態様について争いがあり示談交渉の難航が予想されたことから,A側が被告に対する損害賠償請求をしないのであれば,被告もAに物損の賠償請求をしなくてもよいと考えて,被告の物損についてもそれ以上積極的な交渉をしなかった。A側からも,Bが平成10年7月7日,損害は各自負担でどうかとの提案をして以降連絡がなくなった(以上の事情からすると,被告とAとの間には,このころ,それぞれの損害は各自負担とするとの黙示の合意が成立したものと考えられる。 。)( )原告は,上記( )の傷害についてDの医師E(以下「E医師」という) 。 - 21 -から治療を受けて休業を継続し,療養給付及び休業補償給付の受給を続けていたが,川崎南労働基準監督署長は,本件事故後約4年が経過した平成11年11月2日,本件事故による傷病による症状は以前から一定しており,同年8月31日に症 し,療養給付及び休業補償給付の受給を続けていたが,川崎南労働基準監督署長は,本件事故後約4年が経過した平成11年11月2日,本件事故による傷病による症状は以前から一定しており,同年8月31日に症状固定となったと認められるとして,同年9月1日以降の療養給付及び休業補償給付を全部不支給とし,同年7月16日から同年8月31日までの休業補償給付については,実際に通院した21日間分のみ療養のために休業する日と認めて休業補償給付を支給する旨の決定(本件不支給)。 ,。 決定をした同決定は同年11月4日原告及び被告にそれぞれ到達した( )被告は,同決定を受けて,就業規則60条1号ただし書に基づき,原告 に対して復職を命じることにし「川崎第2営業所勤務を命じる」旨,復,。 職を命じる同日付け辞令書を用意し,原告を呼び出したが,原告が呼出しに応じなかったため,当該辞令書を交付することができなかった。 他方,原告は,本件不支給決定を受け取ったが,本件事故による頸部の運動制限や肩及び手のしびれが残っていることを理由に更に休業を続けるつもりでおり,同月6日,被告総務部人事課のF課長(以下「F」という)に。 電話をかけ,本件不支給決定は不当だと思うが,金は必要であるとして,Aとの示談交渉はどうなっているのか等を問い合わせた。Fは,交通事故の対応は各営業所が行っているから本社の人事課では分からない,川崎第2営業,(「」。)所で聞けばよい旨答えたため原告は同営業所のG所長以下Gというに対し,Aとの示談交渉について問い合わせたが,被告は,原告の人身損害についてはそもそも交渉しておらず,被告とAとの関係は損害は各自の負担とすることで解決済みと認識していたため,Gは,別に交渉はしていない等と答えた。原告は,同月8日再びFに電話をかけ,休業 人身損害についてはそもそも交渉しておらず,被告とAとの関係は損害は各自の負担とすることで解決済みと認識していたため,Gは,別に交渉はしていない等と答えた。原告は,同月8日再びFに電話をかけ,休業補償給付が打ち切られても被告が原告に金を払ってくれるのだろう等と尋ねたところ,Fの返答が,今後は就労しなければ賃金は支払えないというものであった。 そこで原告は,被告が原告に対する同月4日付け復職辞令を用意している- 22 -,。 ,ことを知ったこともあって今後の対応をH弁護士に相談した同弁護士は同月16日被告に対し,三組の代理人として「原告の事務職就業につき話,合いの機会を設けてほしい。原告の交通事故の処置についても協力を願いたい」旨の内容証明郵便を送付した。また,原告は,同月15日,現在原告。 が持っている年休40日をすべて使用するので,上記復職命令の日付である同月4日から同年12月15日まで年休を取得したい旨書面を郵送して申し入れたが,被告からの呼出しに対しては応じなかった。 被告は,上記内容証明郵便及び年休取得の申入れを受け取ったが,まず原告本人と会って原告の健康状態について現状を確認し,上記復職辞令を交付する必要があると考え,同月25日に被告本社へ来るよう原告に再度連絡を取った。 ( )原告は,同日三組書記長Iと共に被告本社へ赴き,被告総務部長C及び Fと面談した。 Cは,原告に対し,上記復職辞令書を手交し,原告が今後復職についてどのように考えているのかを尋ねた。これに対し,原告は,頸部の運動制限や手のしびれ感があるので乗務はできない,今後労災保険法の障害補償給付申請をする積もりである,当面は先日通知したとおり年休を使用する等と述べたため,Cが,乗務ができないということであれば職場復帰はできない,乗務するのであれば乗務可 ない,今後労災保険法の障害補償給付申請をする積もりである,当面は先日通知したとおり年休を使用する等と述べたため,Cが,乗務ができないということであれば職場復帰はできない,乗務するのであれば乗務可能である旨の診断書の提出が必要である,就労しない以上被告は賃金を支払わない,年休の取得は,復職辞令の交付が結果的に遅くなったという事情もあるので申請どおり認める,ただし,被告が原告に対して支払った立替金のうち休業補償給付が不支給になった部分を返還してほしいと答えた。 ( )その後被告は,原告の申請どおり,同年11月4日から同年12月15 ,。 ,,日までの年休取得を認め当該年休分の賃金を支払ったなお原告は当初労働日以外の日をも年休指定日として申請していたが,その後,労働日に当- 23 -たらない6日分について年休日としない扱いとすることを求め,被告も,平成12年3月9日付けでそのように改めた。 ( )他方,原告は,同年12月初めころ川崎第2営業所のGに対し,年休が 明けたら職場に復帰したいとの連絡をし,Gに,E医師作成の同年11月12日付け診断書(以下「E診断書①」という)を示した。Gは,休職期間。 中本社預かりになっていた原告が症状固定により同営業所に復帰するということは,当然乗務が可能になったものと考え,E診断書①の記載が「病名,,。 。 ,,頸椎捻挫右肩・左下腿挫傷平成7年9月27日受傷来院安静投薬リハビリにて通院してきました。頸部の運動制限,肩,手のしびれ感が残留するので,事務的の仕事が望ましい」となっており,タクシー乗務が不可。 能であるとは書かれていなかったこと,原告もGに対しタクシー乗務をすることができないとは言わなかったこともあって,原告の年休が終わった同年12月16日から原告を乗務させる り,タクシー乗務が不可。 能であるとは書かれていなかったこと,原告もGに対しタクシー乗務をすることができないとは言わなかったこともあって,原告の年休が終わった同年12月16日から原告を乗務させる用意をしていた。 その後,このことをGから聞いたCは,原告が上記面談の際手がしびれるなどの症状がありタクシーに乗務できる状態ではない旨述べており,乗務可能である旨の診断書の提出を求められているにもかかわらずこれを提出していなかったことから,乗務が可能である旨の医師の診断書を得ないで原告を乗務させるのは危険であると考え,Gに対し,乗務可能である旨の診断書が提出されれば原告を乗務させてもよいが,そうでなければ危険なので乗務させてはならない旨伝えた。 そこで,Gは原告に連絡し,乗務をすることができる旨の診断書の提出を求め,その提出があれば乗務させる旨伝えたが,原告は,乗務が可能である旨の診断書もE診断書①も提出しないまま,乗務開始日とされていた同月16日,所用のため出勤しない旨被告に連絡して欠勤した。 ()原告は,同月27日川崎第2営業所へ出勤したが,乗務の可否を示す診 断書を提出しなかったため,Gは,原告を乗務させることができず,事務職- 24 -として勤務させることも適当でないと考えられたため,一時的な措置として原告に同営業所内の清掃や同営業所にある自動車修理工場での作業(内勤)をさせることにし,当該作業の対価として1か月当たり16万6152円の賃金を原告に支払うこととした。 原告は,当初電車で通勤していたが,その後,自家用車を運転して通勤するようになった。 ()原告は,同月11日ころ,川崎南労働基準監督署長に対し,障害補償給 付の申請をし,同監督署長は,平成12年2月8日,原告の後遺障害が労災保険法施行規則別表第障害等級表の ようになった。 ()原告は,同月11日ころ,川崎南労働基準監督署長に対し,障害補償給 付の申請をし,同監督署長は,平成12年2月8日,原告の後遺障害が労災保険法施行規則別表第障害等級表の14級9号に該当するとして,障害補 償一時金及び特別支給金の支給決定をした。 ()その後,被告は,原告が内勤を続けたまま,乗務の可否について何ら申 出をしないことから,同月29日原告に対し,C名義で「被告としてもこのままの状態を放置することはできないので,乗務可能かどうか意見を聞かせてほしい。健康状態を明らかにすることのできる診断書も併せて提出してほしい。同年3月7日までに回答してほしい」旨の「お尋ね」と題する書面を送付したが,原告がこれに応答しなかったため,同月15日,再度「お尋「ね」について回答を求めているが何らの返事がない。被告としてもこのままの状態を放置することはできないので,一度本社に来ることのできる日を連絡してほしい」旨の書面を送付した。 。 原告は同月8日「病名頸椎捻挫,右肩・左下腿挫傷。症状経過意見,装具固定,安静,投薬,リハビリ。両手3,4指のしびれ感,頸部の運動制限,下肢痛,肩の痛みにて,平成11年11月症状固定となりました。治療方法及び方針リハビリの通院加療により症状が少し改善されているので,引き続き通院加療を要する。就業可否の意見頸部の運動制限,手のしびれ感あり,運転は不適と思います」旨記載されたE医師作成の同日付け診断。 ・意見書(以下「E診断書②」という)を取得し,被告に提出した。 。 - 25 -また,原告は,同月21日,I及びH弁護士と共に被告本社を訪れて被告のJ課長(以下「J」という)と面談し,本件事故の具体的事実関係,A。 及びBとの交渉の状況,原告の事務職就業の件等について質問した。J ,原告は,同月21日,I及びH弁護士と共に被告本社を訪れて被告のJ課長(以下「J」という)と面談し,本件事故の具体的事実関係,A。 及びBとの交渉の状況,原告の事務職就業の件等について質問した。Jは,被告が関与した限りでの交渉状況等を説明したほか(その際,Jは,判明している事実関係から考えて原告がAに対して損害賠償請求訴訟を起こしても無駄になるかもしれないとの見通しを述べた,原告の乗務について,原。)告は長期間通院及び休業を続けており,本人が乗務可能と申告したからといって何の裏付けもなく乗務させると,今後事故等が起きたとき被告が無理矢理乗務させたという話にもなるので,乗務が可能であることが客観的に裏付けられない限りとても乗務させることはできないとの被告の立場を説明した。 ()被告は,E診断書②及び同月21日の上記面談によっても,原告が乗務 可能かどうか判断することができないと考えたため,原告に対し被告の産業医であるα病院で診断を受けるよう求め,原告は,同月27日α病院の医師K(以下「K医師」という)の診断を受け,同医師は,被告の要請により。 原告がタクシーに乗務できるか否かについて検討を行った。 同医師は「現在の状態①自覚症状長時間同じ姿勢をとっていると,頭痛,頸肩痛がある。雨降りの前に左膝,左足関節痛がある,両手のしびれが続いている,両手の握力減弱がある,握力右手27キログラム,左手28キログラム。②他覚症状頸の運動前屈0~60,後屈0~45,回転左旋0~60,右旋0~65,側屈左屈0~45,右屈0~50。左側にやや運動制限あり。③エックス線所見第5,6頸椎変形あり。意見現在の状態でタクシー運転業務ができるかどうかの問題は正直のところ分からない。よく話合いの上,試乗等を続けた上でできるかできないかを や運動制限あり。③エックス線所見第5,6頸椎変形あり。意見現在の状態でタクシー運転業務ができるかどうかの問題は正直のところ分からない。よく話合いの上,試乗等を続けた上でできるかできないかを決定すべきだと思う」旨の同月28日付け診断書(以下「K診断書」という)を作。 。 成し,被告に提出した。 - 26 -()被告は,K診断書を受け,同年4月1日原告を本社に呼び,C及びFが 応対した。原告は,現在の状態では乗務できないので,状態が改善するまで事務職等として勤務したいと繰り返すのみで,いつ乗務することができるかについて何ら申し述べなかったため,Cは,原告の傷害は労働基準監督署長から症状固定と判断されている,それにもかかわらずこれ以上改善すると言い,それがいつになるか分からないのであれば,原告はタクシー乗務員として採用されたのであり,最近の不況で被告の業績もよくなく,事務職のリス,,トラも考えている状況であるから原告を事務職に就けることは考えられず結局原告を雇用しておけないことになると述べた。 被告は,同月3日原告に対し,同月5日から同月15日までの間を試乗期間とし,添乗員同乗により乗務することを命じる旨の書面を交付し,これに,,,。 ,より原告は同月5日7日等3日間タクシー業務の試乗を行ったなお被告は,Lら労働組合の役員等を添乗員として原告に同乗させ,Lら添乗員は,原告の運転に問題はない旨被告に報告した。 この試乗の結果を受け,被告は,同月13日原告に対し「被告は,原告,の健康状態は乗務に耐えられると判断する。ついては,同月16日から通常の乗務に復帰するよう通知する。しかし,原告においてなお乗務することが困難であると考えているならば,乗務を強制することはしないので,その旨被告に申し出るように。なお, 。ついては,同月16日から通常の乗務に復帰するよう通知する。しかし,原告においてなお乗務することが困難であると考えているならば,乗務を強制することはしないので,その旨被告に申し出るように。なお,原告は乗務員として採用されたので,乗務以外の職務を認めることはできず,乗務できない状態で出社しても勤務とは認められない」旨の通知を書面で行った。 。 ()原告は,同月16日タクシー乗務に復帰し,現在もタクシー乗務を続け ている。 以上の事実が認められる。なお,甲第10号証,第41号証,第46号証及び原告本人尋問の結果中上記認定に反する部分は,乙第20号証及び証人Cの証言に照らし,採用することができない。 - 27 - 争点( )(賃金,休業手当ないし休業補償請求権の有無)について ( )本件協約に基づく請求について ア本件協約は被告と一組との間で締結されたものであり,被告と三組の間では労働協約は締結されておらず,三組は被告に対し,労働協約締結を申し入れ,被告もこれに応じて交渉を行っていること,しかし,三組側が労働協約締結の前提として被告に対し一組との間のユニオンショップ協定の破棄などを求め,このため前提問題をめぐって交渉がまとまらず,合意に達せず締結に至っていないことは,上記認定のとおりである。 このような事情の下においては,たとい一組の組合員数が被告従業員中原告主張の多数を占めるという事実があったとしても,本件協約が,一組とは別個の労働組合である三組の組合員である原告に適用されると解することは困難というべきであるが,これをさておくとしても,本件協約98条の規定を,業務上の傷病を負った労働者が就労していない場合でも,被告がその労働者に対して当該傷病を負う以前と同額の賃金を支払う義務を負うものとする趣旨に解することは文言上到 としても,本件協約98条の規定を,業務上の傷病を負った労働者が就労していない場合でも,被告がその労働者に対して当該傷病を負う以前と同額の賃金を支払う義務を負うものとする趣旨に解することは文言上到底できないというべきであるから,この点でも,原告の主張は採用することができない。 なお,証拠(証人C)及び弁論の全趣旨によると,被告においては,本件協約を二組及び三組にも準用するとの言い方をすることもあることが認められるが,ここでいう「準用」とは,本件協約の内容のうち,被告が一組の組合員と二組及び三組の組合員との間で扱いが区々になると不都合なものについて,本件協約と同じ内容を個別の雇用契約の内容とするとの取扱いをすることを指していることが明らかであり,被告が,平成13年10月17日二組との間で労働協約を締結していることに照らしても,本件協約を被告と二組や三組との間に推し及ぼす取扱いが一般的に存在することを認めることはできない。 イよって,本件協約98条に基づく原告の請求はその前提を欠き,その余- 28 -の点について判断するまでもなく失当である。 ( )民法536条2項に基づく請求について ア上記認定事実によれば,原告は,乗務員として採用され,その後本件事故まで一貫して乗務員として稼働していたもので,本件雇用契約上職種が乗務員に限定されていたものということができる。 そして,労働者が雇用契約上その職種を限定されている場合は,雇用契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供とは,原則として当該職種の業務に関してであり,ただ,現実に配置可能な他職種の業務が存在し,会社の経営上もその業務を担当させることに大きな困難がないときは,例外的に他職種の業務への労務提供が債務の本旨に従った履行の提供に当たらないとはいえない場合もあるというべきである。 業務が存在し,会社の経営上もその業務を担当させることに大きな困難がないときは,例外的に他職種の業務への労務提供が債務の本旨に従った履行の提供に当たらないとはいえない場合もあるというべきである。 イそこで,本件において,原告が本件雇用契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供をしたものと評価できるか否かについて検討する。 (ア)平成11年7月16日から同年11月3日まで原告が,この期間中,乗務員としての就労申入れも他の業務の就労申入れもしていないことは上記認定のとおりである。 ,,,もっとも原告は被告から休職を命じられていたが当該休職命令はこの期間中に原告から就労申入れがされたことに対して発令されたものではなく,本件事故後数か月程度の時期に発令されたものが,原告からの就労申入れがないまま効力を有し続けていたものであり,上記認定のとおり,原告は,川崎南労働基準監督署長に対し,平成11年10月15日分まで労災保険法の休業補償給付を申請し続け,同年11月4日に到達した本件不支給決定までは支給決定がされ,E医師の治療を受け続けていたというのであるから,この期間中に,原告からの就労申入れがないにもかかわらず被告に復職命令の可否を検討することを期待することは困難であり,被告が休職命令を継続していたのもやむを得ないとい- 29 -うべきである。 また,上記認定のとおり,原告は,同日以前に復職を申し入れたことはなく,同月6日及び同月8日Fに電話をかけた際にも,復職の意思を全く示さず,原告に障害が残っている限り被告は原告に対し賃金を支払い続けるべきである旨主張しているのであるから,原告には,同月3日までの間,被告からの休職命令の有無を問わず就労する意思がなかったものと認められる。 そうとすれば,この期間中,原告が本件雇用契約に基づく債務の本旨 ある旨主張しているのであるから,原告には,同月3日までの間,被告からの休職命令の有無を問わず就労する意思がなかったものと認められる。 そうとすれば,この期間中,原告が本件雇用契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供をしたということはできない。 (イ)同年12月16日から同月26日までa上記1で認定したとおり,原告は,同年12月初めころ,Gに対し,,て乗務を申し出いったんは同月16日から乗務することになったがその後,被告が,乗務可能である旨の医師の診断書提出を求めたにもかかわらず,同日までに原告が診断書を提出しなかったため,被告は原告の乗務を許可しなかったものである。 ところで,タクシー乗務は一人乗務員の安全のみならず,乗客や,道路を通行する一般車両及び一般人の安全にかかわる仕事であるから,被告としては,健康上の理由により安全運転ができない者を乗務させることは到底できないというべきところ,原告の休職は本件事故直後から4年以上の長期にわたっていた上,原告は同年11月25日Cらに対して,頸部の運動制限や手のしびれ感等を理由に乗務することができる状態ではないと訴えていたのであるから,乗務が可能であるとの診断書の提出がなければ乗務させられないとして,診断書を提出しない原告の乗務を拒んだ被告の態度には理由があると考えられる。 このような事情の下で,原告が本件雇用契約に基づく債務の本旨に- 30 -従った履行を提供したといえるためには,タクシー乗務の意思を示すだけでは足りず,乗務が可能であることを客観的に裏付ける資料を併。 ,,せて提出することも求められるというべきであるところが原告は乗務が可能である旨の診断書をこの期間内に提出しなかったのであるから,債務の本旨に従った履行の提供をしたものということはできない。 bまた,原告は ることも求められるというべきであるところが原告は乗務が可能である旨の診断書をこの期間内に提出しなかったのであるから,債務の本旨に従った履行の提供をしたものということはできない。 bまた,原告は,同月16日付けのH弁護士から被告にあてた内容証明郵便や同月25日のCらとの面談の中で,事務職に就きたい旨申し入れたのに対し,被告はこれを認めなかったものである。 しかし,上記のとおり原告は本件雇用契約上職種が乗務員に限定されているのであるから,それ以外の職種である事務職への就労申入れは原則として債務の本旨に従った履行の提供と評価することはできない。また,証拠(乙20,証人C)及び弁論の全趣旨によると,この当時原告を事務職に配置転換する業務上の必要性はなく,また,被告からの再三の求めにもかかわらず原告が事故の健康状態を示す医師の診断書を提出しないため,乗務員として乗務できないのか否かが被告に不明であり,事務職への配置転換を検討する前提がなかったことが認められるから,このような事情の下では,原告が事務職としての就労を希望したことが,債務の本旨に従った履行の提供であると評価できる特段の事情があるということはできない。 (ウ)同年12月27日から平成12年4月15日までaこの期間中,原告が川崎第2営業所内にある工場等での内勤業務に従事していたのであるが,原告は本件雇用契約上職種を乗務員に限定されているのであるから,上記工場等勤務は,平成11年12月27日川崎第2営業所に出勤した原告から乗務が可能である旨の医師の診断書の提出がなかったため,原告を乗務させることができず,一時的- 31 -な措置として命じたものであることは,上記認定のとおりである。 また,被告は,原告が「運転は不適」との内容のE診断書②を提出した後,更に被告の産業医であるK医師 せることができず,一時的- 31 -な措置として命じたものであることは,上記認定のとおりである。 また,被告は,原告が「運転は不適」との内容のE診断書②を提出した後,更に被告の産業医であるK医師の診断と添乗員を同乗させた試乗を求めたが,原告はこのころまでに川崎第2営業所の工場まで自家用車を自ら運転して通勤するようになっていたこと,原告が本件雇用契約上乗務員として職種が限定されている以上,原告が本当に乗務できない状態であるのかどうかを明らかにしなければ原告の今後の処遇を決めることができないとした被告の判断が不当であるとはいえないことを合わせ考えると,被告が原告に対し,K医師の診察と試乗を要求したことには正当な理由があるというべきであるから,原告がE診断書②を提出したことをもって債務の本旨に従った履行の提供ということはできない。 bそうとすれば,結局,この期間中,原告が本件雇用契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供をしたということはできない。 また,被告は原告に対し,現実に従事した工場等勤務の対価として1か月当たり16万6152円の賃金を支払ったことは上記認定のとおりであり,当該業務の対価としてそれ以上の賃金請求権の発生を根拠づける事実についての主張及び立証はない。 (エ)以上のとおりであるから,民法536条2項に基づく原告の本件賃金請求は,その余の点について判断するまでもなく失当である。 ( )労働基準法26条に基づく請求について 同法26条は,使用者の責に帰すべき事由による休業の場合,使用者に,当該休業期間中の休業手当を労働者に支払うことを命じているが,本件原告は,平成11年7月16日から同年11月3日まで及び同年12月16日から同月26日までの間,自らの意思で就労しなかっことは上記認定のとおりであるから,使用者の責に帰 払うことを命じているが,本件原告は,平成11年7月16日から同年11月3日まで及び同年12月16日から同月26日までの間,自らの意思で就労しなかっことは上記認定のとおりであるから,使用者の責に帰すべき事由による休業ということはできない。 - 32 -以上のとおりであるから,同法26条に基づく原告の本件賃金請求は,その余の点について判断するまでもなく失当である。 ( )同法76条に基づく請求について 労働基準法76条1項は,労働者が業務上負傷し,その療養のため労働することができないときは,使用者は労働者の療養中休業補償を行わなければならない旨定めている。 ところで,労災保険法に基づく労働者災害補償保険制度は,労働基準法による災害補償制度から直接派生したものではなく,両者は労働者の業務上の災害に対する使用者の補償責任の法理を共通の基盤とし,並行して機能する独立の制度であることに照らせば,労働者が,労働基準法76条に定める災害補償と同一の事由において労災保険法12条の8第1項2号所定の休業補償給付を受ける場合については,たとえその支給額が労働基準法76条所定の補償額に達しないときであっても,使用者は同法84条1項により,同法76条に基づく災害補償義務の全部を免れると解される。 そうすると,原告が本件事故により労災保険法の休業補償給付を現実に受給していることは上記認定のとおりであるから,被告は,同法84条1項により,本件事故を原因とする労働基準法76条に基づく休業補償手当の支払義務を免れたというべきである。 したがって,同法76条に基づく原告の請求には理由がない。 争点( )(年休の取得に関する損害賠償請求権の有無)について ( )上記1で認定した事実によれば,原告及び被告は,平成11年11月4 日本件不支給決定をそれぞれ受け取 求には理由がない。 争点( )(年休の取得に関する損害賠償請求権の有無)について ( )上記1で認定した事実によれば,原告及び被告は,平成11年11月4 日本件不支給決定をそれぞれ受け取り,被告は,就業規則60条1号に基づきすぐに原告に対する同日付け復職辞令を用意したが,原告が被告からの再三の呼出しにも応じなかったため,結局同辞令を原告に交付することができたのは同月25日であり,また,原告は,同月15日ころ,当時有していた40日間分の年休をすべて使用するので,同月4日から同年12月15日ま- 33 -で40日間年休を取得したい旨の書面を被告に対して郵便で送付し,同年11月25日にも同様の希望を述べ,被告は,原告の申請どおりの年休取得を認め,年休取得中所定の賃金を全額支払ったというのである。 ( )上記1認定の事実,証拠(甲2,5,39,乙4,5)及び弁論の全趣 旨によれば,原告は,昭和▲年▲月▲日生まれで平成11年7月16日当時57歳であったこと,本件事故前,頸椎に傷害を負っており制帽をかぶることもできなかった旨主張していたこと,川崎南労働基準監督署長は,本件不支給決定に際し,原告の本件事故により生じた傷害の症状は,症状固定日である同年8月31日のある程度以前から安定しており,平成11年7月16日から同年8月31日までの間の休業は,現実に通院した日のみが療養のために休業した日と認められる旨判断していること,原告が平成11年7月16日から平成12年4月15日までの間にE医師やK医師に訴えていた症状は,頸部の運動制限,手のしびれ感等であり,若干の握力低下及び頸椎の変形を除いては他覚的所見は乏しかったこと,E診断書①と同②を比較すると後者のほうが原告の訴える症状が重いこと,原告は,E診断書②作成後である同年4月初めに問題な 等であり,若干の握力低下及び頸椎の変形を除いては他覚的所見は乏しかったこと,E診断書①と同②を比較すると後者のほうが原告の訴える症状が重いこと,原告は,E診断書②作成後である同年4月初めに問題なく乗務できることが確かめられており,その後現在に至るまで乗務を続けていることが認められる。これらの諸事実にかんがみると,少なくとも,本件事故による傷害に関して症状が固定した平成11年8月31日の後の時期においては,本件事故による傷害の療養のため労働することができなかったとは認めるに足りる立証があったということはできない。 そうすると,原告は平成11年11月4日の時点で客観的に乗務可能な状態であったといえるのであるから,被告の同日付け復職命令の発令により,原告には,同日以降就労義務が生じたというべきであるところ,原告は自らの意思で同日以降同年12月15日まで年休を取得して就労義務を消滅させ,就労することなく所定の賃金を得たものである。なお,原告は当初,上- 34 -記期間中の労働日以外の6日間について年休取得を申請し,これを認められていたが,被告は,原告の申出により,平成12年3月9日付けで当該6日間について年休権を行使しなかった扱いにしたというのであるから,就労義務のない日を年休としたという不適切な取扱いは既に正されている。 ( )以上によれば,年休の取得に関して被告に対して損害賠償請求権を有す るとする原告の主張は理由がないというべきである。 争点( )(本件事故の示談交渉に関する慰謝料請求権の有無)について ( )証拠(甲39,乙14,15,20,証人C)及び弁論の全趣旨による ,,と被告の従業員が乗務中に交通事故を起こした場合の被告の一般的対応は以下のとおりであることが認められる。 ア被告は,乗務員が事故にあった場合 ,15,20,証人C)及び弁論の全趣旨による ,,と被告の従業員が乗務中に交通事故を起こした場合の被告の一般的対応は以下のとおりであることが認められる。 ア被告は,乗務員が事故にあった場合,現場での示談は行わず,所属する営業所に連絡するよう従前から指導している。これは,事故発生直後には乗務員が動転しており,事故の相手方の要求に対し,乗務員の過失の有無にかかわらず相手方の損害を賠償する等の安易な約束をしたり,自己の損害賠償請求権を放棄したりして,被告が結果的に損害賠償責任を負担しなければならなくなったり,求償権を行使できなくなったりする事態を避けるためである。 イ連絡を受けた被告営業所の事故担当者は乗務員等から事情を聴取するが,事故の相手方の対応によってその後の取扱いが異なる。 事故の相手方が,事故原因について自己の過失を認めている場合は,営業所の担当者が相手方の契約している保険会社に連絡し,被告の被った物。 ,,損について請求する旨伝えるまた被告の乗務員が受傷している場合は相手方が契約している保険会社から被告に問い合わせがあるので,適宜必要な情報を提供したり,必要書類の記入に協力したりする。 他方,事故の相手方が,事故原因について被告の乗務員に過失があると主張している場合は,被告に使用者責任が発生する可能性があり,また,- 35 -事故原因について争いになり交渉が困難になることが予想されるので,被告本社の事故係がその後の交渉を担当する。 ウ被告に交渉や示談の権限があるのは,被告が被った物損及び被告が負担する可能性のある使用者責任についてのみであるから,乗務員が被った人。 ,身損害については乗務員自身が独自に交渉することとされているただし,,事故の相手方との関係では被告と当該乗務員の利害は共通しているため両者の示 任についてのみであるから,乗務員が被った人。 ,身損害については乗務員自身が独自に交渉することとされているただし,,事故の相手方との関係では被告と当該乗務員の利害は共通しているため両者の示談交渉を分けることをせず,当該乗務員と被告担当者が事実上一体のようになって相手方と交渉を行い,乗務員の人身損害の交渉に必要な書類を被告が用意し乗務員の主張を代弁するなどして,一括して解決することもある。また,一括して解決しない場合でも,被告と相手方の交渉が先行すると,そこで乗務員の過失の有無,過失割合につき何らかの合意がされた場合,それが乗務員と相手方の交渉に影響し乗務員が不利になる可能性もあるため,それを避けるため,乗務員の人身損害に関して解決してから被告の物損についての交渉を行っている。 ( )ところで,原告は,被告が乗務員に対して乗務中の交通事故に関する示 談交渉を禁じていたから,被告は,本件雇用契約あるいは委任契約に基づいて原告に代わり,Aと本件事故により生じた原告自身の人身損害に関する示談交渉を行う義務を負っていたと主張する。 しかし,上記認定のとおり,被告は乗務員に対し,事故直後で動揺している状態で,被告が有する物損についての損害賠償請求権や事故の相手方に対する求償権を侵害するおそれのある示談を行わないよう,事故現場での示談をせず所属の営業所に連絡するようにとの指導はしていたものの,乗務員自身の人身損害に関する示談交渉そのものを禁じていたと認めるに足りる証拠はない。したがって,原告が乗務中に遭遇した交通事故により生じた原告自身の損害についての示談交渉を,原告に代わり被告が行うことが,本件雇用契約の内容になっていると解する余地はない。また,原告が被告に対し,本- 36 -件交通事故に関する原告自身の示談交渉を個別に委任したと認 ついての示談交渉を,原告に代わり被告が行うことが,本件雇用契約の内容になっていると解する余地はない。また,原告が被告に対し,本- 36 -件交通事故に関する原告自身の示談交渉を個別に委任したと認めるに足りる適確な証拠もない。 そうすると,被告が原告に代わりAと本件事故により生じた原告自身の人身損害に関する示談交渉を行う義務を負っていたということはできないから,原告の本件慰謝料請求は,その余の点について検討するまでもなく失当である。 争点( )(立替金返還請求権の有無)について ( )争いのない事実等,上記1認定の事実,証拠(甲7,乙10,乙11の 1ないし3,乙12,16,20,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告は,その従業員が労働災害により労災保険法による休業補償給付を受給する場合には,同給付を申請してから実際に受給できるまでの間に数,,か月間の時間差があることからその間の従業員の生活が困窮しないよう休業補償給付額を従業員に対して立替払いし,その後当該従業員に対して同給付がされた場合にその分を返済させる制度(以下「本件立替払制度」という)を実施していた。 。 イ原告は,本件事故により傷害を負い,休業補償給付を受けることになったため,本件立替払制度により被告から立替払いを受けるようになった。 被告は原告に対し,業務上の負傷のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目である同月30日から平成11年10月15日分まで立替払いを行った。 また,被告は,原告が休業補償給付を受給後確実に返済を受けられるよう,原告から同給付の受領の委任を受けて,金融機関の被告口座に同給付が振り込まれるようにしたため,同給付がされた分については返済を受けることができた。 ウ原告は,同年7月16日 返済を受けられるよう,原告から同給付の受領の委任を受けて,金融機関の被告口座に同給付が振り込まれるようにしたため,同給付がされた分については返済を受けることができた。 ウ原告は,同年7月16日から同年10月15日分についても休業補償給- 37 -付を申請したため,被告は,同給付が全額されるものと考えて,それまでと同様立替払いを行い,その額は合計88万8000円となったところ,本件不支給決定により,原告の同年7月16日以降の休業補償給付は,合計20万3364円しか支払われず,被告は休業補償給付によって残額68万4636円の返済を受けることができなくなった。 エCは,同年11月25日原告に対し,上記立替金68万4636円を被告に返還するよう求めたが,原告は,返還義務はないと主張して返済を拒んだ。 被告は,原告に対し,平成12年7月24日付け内容証明郵便をもって上記立替金68万4636円を返済するよう求め,同書面は同月25日原告に到達したが,原告はこれを返済せず,現在に至るまで返済を拒否し続けている。 ( )以上認定の事実によれば,原告は,平成11年7月16日から同年10 月15日までの休業補償給付の立替払いとして,被告から合計88万8000円の支払を受けたが,その後本件不支給決定により,上記20万3364円以上の休業補償給付の支給を受けられなくなったのであるから,原告がそれまでに被告から受領していた立替金の残額68万4636円は,法律上の原因なく得た利益として被告に返還しなければならないことは明らかである。 そして,原告は,同年11月4日本件不支給決定を受け取ったときから,自己が上記残額を取得する権利を失いこれを被告に返還しなければならなくなったことを知ったと認められる。 ( )したがって,原告は,被告に対し,不当利得返還義 4日本件不支給決定を受け取ったときから,自己が上記残額を取得する権利を失いこれを被告に返還しなければならなくなったことを知ったと認められる。 ( )したがって,原告は,被告に対し,不当利得返還義務により,立替金残 額68万4636円及びこれに対する原告が自己の利得に法律上の原因がないことにつき悪意となった日の後である同月25日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負うものである。 - 38 -第4 結論 以上のとおり,原告の本訴各請求はいずれも理由がなく,被告の本訴請求はすべて理由がある。 横浜地方裁判所第7民事部裁判長裁判官福岡右武裁判官脇博人裁判官藤原典子

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