平成28(行ウ)20 懲戒処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年8月8日 京都地方裁判所
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判決文本文62,106 文字)

主文 1 京都市長が平成27年12月4日付けで原告に対してした停職3日の懲戒処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要被告の職員である原告は,京都市の児童相談所に勤務していた平成27年3月及び10月,京都市内の児童養護施設で起きたと疑われる被措置児童虐待の不祥 事について,同児童相談所が適切な対応を採っていなかったとの認識を有したことから,これを問題視し,京都市の公益通報処理窓口に対して二度にわたり,いわゆる公益通報を行った。 原告は,同年12月4日,上記の各公益通報の前後の時期に行ったとされる各行為,すなわち,⑴勤務時間中に,上記虐待を受けたとされる児童と●●★の児 童記録データ等を繰り返し閲覧した行為,⑵上記虐待を受けたとされる児童の★の児童記録データを出力して複数枚複写し,そのうちの1枚を自宅へ持ち出した上に無断で廃棄した行為,⑶職場の新年会及び組合交渉の場で,上記虐待を受けたとされる児童の個人情報を含む内容を発言した行為について,地方公務員法29条1項各号所定の事由(以下「懲戒事由」という。)に該当するものとして, 京都市長から,停職3日の懲戒処分(以下「本件懲戒処分」という。)を受けた。 本件は,本件懲戒処分を不服とする原告が,上記の各内部通報の前後の時期に行ったとされる上記各行為は,事実と異なる部分があることに加え,上記被措置児童虐待の不祥事に対する上記児童相談所の対応が不適切であるとの問題意識に基づき行った正当な行為として懲戒事由にそもそも該当しないと主張するほ か,また,仮に懲戒事由に該当するとしても,原告による上記各行為の目的の正 当性や,本件懲戒処分が結論ありき 識に基づき行った正当な行為として懲戒事由にそもそも該当しないと主張するほ か,また,仮に懲戒事由に該当するとしても,原告による上記各行為の目的の正 当性や,本件懲戒処分が結論ありきで行われたこと,他の事例との比較において重きに失すること,手続の適正の欠如などを考慮すれば,京都市長が行った本件懲戒処分には裁量権を逸脱又は濫用した違法があるなどと主張して,本件懲戒処分の取消しを求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び後掲証拠から容易に認めることができる事実) ⑴ 当事者等ア被告は,京都府内の地方公共団体である。被告は,児童福祉法12条1項に基づき,被告の保健福祉局の下で,児童福祉センターの一部署として児童相談所を設置している(以下,被告が設置する上記児童相談所を「京都市児童相談所」という。)。 京都市児童相談所は,電話や来所等による市民からの初めての相談を受け付ける相談課と,相談課が受け付けた相談事例が回付される支援課とで構成される。 イ原告は,平成9年4月1日に事務職員として被告に採用され,その後,保健福祉局児童家庭課を含む複数の部署での勤務を経て,平成24年4月23 日から,保健福祉局児童福祉センター児童相談所支援課に配属となり,京都市児童相談所において勤務していた者である。 ウ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●は,●●●●●●に所在する児童養護施設である。 なお,被告において,京都市内の児童養護施設の指導監督と被措置児童虐 待●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●への対応の主管課は,保健福祉局児童家庭課であった。 ⑵ ●●●の●●●の逮捕等ア ●●●の●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●への対応の主管課は,保健福祉局児童家庭課であった。 ⑵ ●●●の●●●の逮捕等ア ●●●の●●●●●●●●●●●●●★★★★★●●●●●●●●は,● ●●●●●●●日,●●●に入所していた被措置児童(●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●以下「本件児童」という。)を●●●●●●●●日に●●させたものとして,●●●●●●●●●●●●●●の容疑により逮捕された(以下「本件逮捕」という。甲18・1頁)。 イ本件逮捕に先立ち,京都市児童相談所は,●●●●●●●●●●日に,本件児童の★★から「本件児童が★★★★★から★★●●●をされて,●●● ●●●●●●●●●●●●」旨の通告を受けており,これを被措置児童虐待通告として受理した上で(以下「本件虐待通告」という。),平成27年1月28日,保健福祉局児童家庭課に対し,★★★★★●●●●●●●●●●●★★●●●●●●●●●被措置児童虐待事案(以下「本件虐待事案」という。)として報告していた。 また,保健福祉局は,同月30日,京都市長及び同副市長に対し,本件虐待事案に関して,本件児童に対して★★★★★による被措置児童虐待(★★●●)があったとする本件虐待通告がされたことなどを説明する上局報告(以下「本件上局報告」という。)を行っており(乙3),また,京都市児童相談所及び保健福祉局児童家庭課は,同年2月24日,本件虐待事案に関 して警察に相談を行っていた。 ⑶ 本件逮捕がされるまでに,原告が本件児童の関係で行った行為ア本件児童と●●★の個人情報等に係るデータの閲覧原告は,本件逮捕に先立つ平成26年秋頃から,その勤務時間中に,職場の業務用 ⑶ 本件逮捕がされるまでに,原告が本件児童の関係で行った行為ア本件児童と●●★の個人情報等に係るデータの閲覧原告は,本件逮捕に先立つ平成26年秋頃から,その勤務時間中に,職場の業務用パソコンから,京都市児童相談所において支援の対象となっている 児童の情報をデータ管理する児童情報管理システム及びバックアップフォルダ(以下「児童情報管理システム等」と総称することがある。)にアクセスして,児童情報管理システムにより本件児童の個人情報が記載された処遇情報データを閲覧するとともに,バックアップフォルダに保存された本件児童及び●●★の個人情報が記載された児童記録データを繰り返し閲覧した (以下,児童情報管理システム及びバックアップフォルダでデータ管理され た児童の情報を「児童記録データ等」と総称する。)。 原告は,上記閲覧を通じて,①京都市児童相談所が●●●●●●●●●日に,本件児童の★★から,「●●●●●●●●●●●●●●●●●★★★★★●●●●●●●●●●●●●●●」「★★★★★●●●●●●●●●●●●●●●●。」などと電話で相談を受けていたこと,②京都市児童相談所が ●●●●日にも,●★★から,●●●●日の電話で相談のあった●●●●●●●の件について,「★★★★★●●●●●●●●●★★●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」などと電話で相談を受けていたこと(以下,●●●●●●●●●日及び●●●●日に行われた本件児童の★★からの●●●●●●●●●●●●●●●●●相談を「本件相談」という。)を知るに至 った。 イ新年会及び組合交渉の場での本件児童に関する発言原告は,平成27年1月14日,職場外の店舗で開催された京都市児童相談所の職場の新年会(以下「本件新年会」という。)において, た。 イ新年会及び組合交渉の場での本件児童に関する発言原告は,平成27年1月14日,職場外の店舗で開催された京都市児童相談所の職場の新年会(以下「本件新年会」という。)において,飲酒をしながら,支援課の主席児童福祉司であるC(以下「C主席」という。)に対し, 本件虐待事案における京都市児童相談所の対応を問題視する旨の発言をした(ただし,原告が行った具体的な発言内容については,争いがある。)。 また,原告は,平成27年3月10日,被告の職員組合と保健福祉局(児童福祉センター)との間の組合交渉(以下「本件組合交渉」という。)の場において,京都市児童相談所の所長であるD(以下「D所長」という。)に 対し,本件児童に関する話題を出し,本件虐待事案における京都市児童相談所の対応等に関する質問などをした(ただし,原告が行った具体的な発言内容については,争いがある。)。 ウ本件相談に対する京都市児童相談所の対応を問題視した公益通報の実施原告は,平成27年2月2日,職場の回覧文書を見て,同年1月30日に 本件上局報告が行われたことを知った。原告は,本件上局報告の具体的な内 容を知らなかったが,本件組合交渉でのD所長とのやり取りなどを通じて,本件上局報告では,●●●●●●月に本件児童の★★から本件相談があった事実については触れられていないのではないかとの疑いを抱いた。 そこで,原告は,平成27年3月15日,京都市の公益通報処理窓口であるE弁護士(以下「E弁護士」という。)に対し,電子メールで,本件上局 報告について,「京都市児童相談所の不作為を隠ぺいするような情報の取捨選択が行われている可能性が高い。具体的には,●●●●●●●●に断片的情報が寄せられていたにもかかわらず,『●●●●●●●●●●日に 告について,「京都市児童相談所の不作為を隠ぺいするような情報の取捨選択が行われている可能性が高い。具体的には,●●●●●●●●に断片的情報が寄せられていたにもかかわらず,『●●●●●●●●●●日に発覚』と報告されていると思われる」ことなどを指摘した通報を公益通報として行い,同通報は平成27年3月23日に「京都市市長部局等における内部通報 等の処理に関する要綱」(以下「本件要綱」という。乙36)上の内部通報として受理された(以下「1回目の内部通報」という。甲30,甲31・1ないし7頁。なお,1回目の内部通報に対しては,同年6月23日に,京都市児童相談所に不適切な対応はなかった旨の回答がされた〔甲31・8頁〕。)。 原告は,1回目の内部通報に対する上記回答に納得できなかったことから, 平成27年10月9日,E弁護士の法律事務所を訪問して同弁護士と面談し,1回目の内部通報と同様の内容で,公益通報として再度の通報を行い,同通報は同月22日に本件要綱上の内部通報として受理された(以下「2回目の内部通報」といい,1回目の内部通報と併せて「本件各内部通報」と総称することがある。甲31・9ないし11頁。なお,2回目の内部通報に対して も,同年11月26日,1回目の内部通報に対する回答と同趣旨の回答がされた〔甲27・3ないし5頁〕。)。 エ本件児童の★の児童記録データに係る文書ファイルの出力等原告は,遅くとも平成27年11月10日までの間に,職場の業務用パソコンから,バックアップフォルダが保存されたサーバにアクセスし,同バッ クアップフォルダに保存されていた本件児童の★の児童記録データのうち, ●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談内容を含む記載がされた文書ファイルの片面1ページ(乙2〔ただし,黒塗 クアップフォルダに保存されていた本件児童の★の児童記録データのうち, ●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談内容を含む記載がされた文書ファイルの片面1ページ(乙2〔ただし,黒塗りされた状態でないもの〕)を出力し,出力した当該文書を複数枚複写した上で,複写文書のうちの一枚を2回目の内部通報に係る同年10月9日のE弁護士との面談の際に同弁護士に交付し,複写文書のうちの一枚を自宅に持ち出して保管した (ただし,上記の持ち出し行為がされた時期等については争いがある。以下,上記の複数枚の複写文書のうち,原告が自宅に持ち出した一枚を「本件複写記録」という。)。 また,原告は,平成27年11月10日,保健福祉局によって行われた事情聴取において,本件複写記録を自宅に保管していることを問題視されたが, 同日夜に,本件複写記録を自宅のシュレッダーで廃棄した(なお,同シュレッダーの廃棄が無断で行われたものか否かについては争いがある。)。 ⑷ 原告に対する本件懲戒処分京都市長は,平成27年12月4日付けで,原告に対し,原告が地方公務員法29条1項各号の懲戒事由に該当する下記アないしウの非違行為をしたも のとして,同条項に基づき,原告を同月8日から同月10日までの3日間の停職とする懲戒処分をした(本件懲戒処分。甲1)。 ア原告は,平成26年9月以降の勤務期間中,児童情報管理システムにより自己の担当業務に関係のない本件児童の個人情報が記載された処遇情報データを閲覧するとともに,本件児童及び●●★の個人情報が記載された児童 記録データを繰り返し閲覧した(以下「本件対象行為1」という。)。 イ原告は,平成27年1月頃,本件児童の★の児童記録データに係る文書ファイルの片面1ページを出力し,当該出 れた児童 記録データを繰り返し閲覧した(以下「本件対象行為1」という。)。 イ原告は,平成27年1月頃,本件児童の★の児童記録データに係る文書ファイルの片面1ページを出力し,当該出力文書を複数枚複写した上,そのうち1枚(本件複写記録)を自宅に持ち出すとともに,同年11月10日に行われた保健福祉局による事情聴取において,持ち出した本件複写記録の返却 に同意していたにもかかわらず,同日夜に無断で自宅のシュレッダーで本件 複写記録を廃棄した(以下「本件対象行為2」という。)。 ウ原告は,平成27年1月に行われた本件新年会において,本件児童に係る支援の経過を知らない職員が複数出席し,また,店員等も出入りする場であったにもかかわらず,飲酒をしながら,本件児童の個人情報を含んだ内容について発言したほか,同年3月に行われた本件組合交渉において,本件児童 に係る支援の経過を知らない参加者が多数いるにもかかわらず,本件児童の個人情報を含んだ内容について発言した(以下「本件対象行為3」という。)。 ⑸ 本件訴訟に至る経緯原告は,平成28年1月29日,京都市人事委員会に対し,本件懲戒処分を不服として審査請求を行ったが(甲3),同審査請求から3か月を経過しても, 同委員会による裁決はされなかった。 そこで,原告は,同年7月28日,京都地方裁判所に対し,本件訴えを提起した(なお,上記審査請求に関し,京都市人事委員会による裁決はされていない〔弁論の全趣旨〕。)。 2 関連法令等の定め ⑴ 地方公務員法29条(懲戒)1項職員が次の各号の一に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。 1号この法律若しくは第57条に規定する特例を 法29条(懲戒)1項職員が次の各号の一に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。 1号この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれ に基づく条例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合2号職務上の義務に違反し,又は職務を怠つた場合3号全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合35条(職務に専念する義務) 職員は,法律又は条例に特別の定がある場合を除く外,その勤務時間及び 職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い,当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。 ⑵ 京都市職員の懲戒処分に関する指針(以下「本件懲戒指針」という。)被告は,本件懲戒指針(乙25)において,処分基準として懲戒処分の対象となる非違行為を類型化するところ,本件に関する非違行為の類型として,以 下の定めがある。 1 一般服務関係⑷ 勤務態度不良勤務時間中に職務を離脱し,又は私的な行為を行うなどして職務を怠り,又は職務遂行に当たって上司の命令に従わない等により公務の運営に支 障を生じさせた職員は停職,減給又は戒告とする。この場合において,公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は,免職とする。 ⑼ 秘密の漏えい職務上知り得た秘密を漏らし,公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は,免職又は停職とする。 ⒀ 情報セキュリティーポリシー違反ア情報システムの取扱いの不備,情報システムの出力帳票又は電子情報の管理不備等により,非公開情報を漏えいし又は漏えいの危険を生じさせた職員は,最も重い処分を免職とし,最も軽い処分を戒告とする。 ア情報システムの取扱いの不備,情報システムの出力帳票又は電子情報の管理不備等により,非公開情報を漏えいし又は漏えいの危険を生じさせた職員は,最も重い処分を免職とし,最も軽い処分を戒告とする。 ⑶ 電子情報等の保護に関する管理基準(以下「本件管理基準」という。) 被告は,京都市高度情報化推進のための情報システムの適正な利用等に関する規程(以下「京都市高度情報化規程」という。)を基本方針とし,被告の職員等が遵守すべき情報セキュリティ対策に関する具体的なルールとして京都市情報セキュリティ対策基準を定めるところ,同対策基準のうち電子情報等の保護に関して定める本件管理基準(乙27)には,以下の定めがある。 1条(目的) この基準は,別に定めるもののほか電子情報及び入出力帳票(以下「電子情報等」という。)の取扱いに当たり,漏えい,改ざん,滅失,毀損その他の事故を防止するために必要な事項を定める。 4条(重要性の分類)電子情報等は,以下に従って重要性を分類するものとする。 ⑴ 重要性Ⅰアプライバシーに関する情報個人に関して,通常他人に知られたくないと認められる情報7条(電子情報等の持出し) 3 職員は,重要性Ⅰに該当する電子情報等を,庁外に持ち出してはならな い。ただし,職務上必要なときは,情報セキュリティ統括者が定めた場合に該当し,情報セキュリティ担当者が承認したときに限り,持ち出すことができる。 9条(入出力帳票の廃棄)職員は,入出力帳票の廃棄に当たり,情報の漏えい等の事故を防ぐよう適切 に処分しなければならない。 3 争点⑴ 本件各対象行為の有無(争点1)ア本件対象行為1に係る原告の行為の有無(争点1⑴)イ本件対象行為2に係る原告の行 ぐよう適切 に処分しなければならない。 3 争点⑴ 本件各対象行為の有無(争点1)ア本件対象行為1に係る原告の行為の有無(争点1⑴)イ本件対象行為2に係る原告の行為の有無(争点1⑵) ウ本件対象行為3に係る原告の行為の有無(争点1⑶)⑵ 本件各対象行為の懲戒事由該当性(争点2)ア本件対象行為1に係る原告の行為の懲戒事由該当性(争点2⑴)イ本件対象行為2に係る原告の行為の懲戒事由該当性(争点2⑵)ウ本件対象行為3に係る原告の行為の懲戒事由該当性(争点2⑶) ⑶ 本件懲戒処分に裁量権の逸脱又は濫用の違法があるか否か(争点3) 第3 当事者の主張 1 争点1(本件各対象行為の有無)について⑴ 争点1⑴(本件対象行為1に係る原告の行為の有無)について(被告の主張)ア本件対象行為1に係る原告の行為 原告は,平成26年9月以降の勤務時間中,児童情報管理システムにより自己の担当業務に関係のない本件児童の個人情報が記載された処遇情報データを閲覧するとともに,バックアップフォルダに保存された本件児童及び●●★の個人情報が記載された児童記録データを繰り返し閲覧した。 イ原告による児童記録データ等の閲覧は,担当業務とは無関係であったこと これに対して,原告は,児童記録データ等の閲覧の事実は認めつつも,京都市児童相談所における情報共有の重要性等を強調し,上記閲覧が「自己の担当業務に関係のない」との評価を争っている。 確かに,平成26年9月当時,京都市児童相談所では,児童情報管理システム及びバックアップフォルダによって,支援の対象となる児童の情報がシ ステム管理されており,支援課の職員であれば,自分の担当 確かに,平成26年9月当時,京都市児童相談所では,児童情報管理システム及びバックアップフォルダによって,支援の対象となる児童の情報がシ ステム管理されており,支援課の職員であれば,自分の担当外の児童の情報であっても,閲覧,出力することが可能な状況であった。しかしながら,京都市児童相談所において,児童情報管理システム等は自己の担当する児童に係る事務処理を行うことに限定して使用するものとされており,仮にシステム使用上の問題や緊急対応等を想定して担当外の児童の情報についても閲 覧できる状況にあったとしても,職務上の必要性がない場合にまで自由な閲覧が認められていなかった。本件児童が原告の担当する児童ではなかったことは明らかであり,かつ,原告が本件児童及び●●★の児童記録データ等を閲覧するようになったのは,事情聴取の際に自認したように「興味半分」であった(乙7)。 したがって,原告が上記児童記録データ等を閲覧した目的は,自己の担当 業務と関係のない個人的な興味ないし関心に基づくものであったといえる。 (原告の主張)ア被告の主張アに対する認否被告の主張アに記載の事実のうち,「自己の担当業務に関係のない」という評価は争う。その余の事実については認める。 イ原告による児童記録データの閲覧は,京都市児童相談所の職員としての職務の範囲内であったこと原告は,平成26年10月1日に●●●の★★★★★がD所長らから事情聴取を受けている現場を目撃し,●●●で何かまた不祥事が起きているのではないかとの危惧を抱いた。そこで,原告は,その数日後,児童情報管 理システム等により児童記録データ等の閲覧を開始し,この閲覧を通じて,●●●月に本件児童の★★から本件相談があったにもかかわらず,これらの相談が虐待通 そこで,原告は,その数日後,児童情報管 理システム等により児童記録データ等の閲覧を開始し,この閲覧を通じて,●●●月に本件児童の★★から本件相談があったにもかかわらず,これらの相談が虐待通告として受理されていないことを知った。原告は,本件相談を虐待通告として受理しなかった京都市児童相談所の対応を重大な問題であると考え,これ以降,本件児童の情報を注視していくことにした。 ところで,京都市児童相談所においては,職員は,全ての個別の虐待ケースについて情報を共有することが奨励されていた。そこで,原告は,その職責に従って,担当外ケースである本件児童にも関心を持ち,その児童記録データ等の閲覧を行ったものである。したがって,原告による児童記録データ等の閲覧は,京都市児童相談所の職員の職務として行ったものである。 ⑵ 争点1⑵(本件対象行為2に係る原告の行為の有無)について(被告の主張)ア本件対象行為2に係る原告の行為原告は,平成27年1月頃,本件児童の★の児童記録データに係る文書ファイルの片面1ページ(乙2〔ただし,黒塗りされた状態でないもの〕)を 出力し,複数枚複写した上,複写したもののうちの1枚(本件複写記録)を 自宅に持ち出すとともに,同年11月10日に行われた保健福祉局による事情聴取において,持ち出した本件複写記録の返却に同意したにもかかわらず,同日夜に,無断で自宅のシュレッダーで本件複写記録を廃棄した。 イ本件複写記録の自宅への持ち出し時期は平成27年1月頃であること原告は,本件複写記録を自宅に持ち出した時期は,平成27年1月頃では なく,同年10月6日頃であったと主張するが,平成27年1月頃に本件複写記録を持ち出したことを原告は自ら認めていたのであるから(乙9),上記主 録を自宅に持ち出した時期は,平成27年1月頃では なく,同年10月6日頃であったと主張するが,平成27年1月頃に本件複写記録を持ち出したことを原告は自ら認めていたのであるから(乙9),上記主張は理由がない。また,仮に本件複写記録の持ち出し時期が原告主張のとおりだとしても,原告が本件児童の★の児童記録データに係る文書ファイルの片面1ページを出力し,複数枚複写したもののうちの一枚である本件複 写記録を自宅に持ち出したという懲戒事由に問疑すべき基本的な事実に変わりはないのであるから,本件懲戒処分の適否に影響を与えるものではない。 ウ本件複写記録の廃棄を上司が了解していた事実はないこと原告は,平成27年11月10日の事情聴取の際,上司である児童福祉センター総務課長F(以下「F課長」という。)から,本件複写記録を自宅で 廃棄することの了解を得たと主張するが,そのような事実はない。 上記事情聴取において,確かに,原告が本件複写記録を自宅で破棄する旨の発言をしたが,これに対して,F課長は,その意味内容を正しく認識しないまま,「はいはいはいはい。」との合いの手を入れたにすぎない。F課長は,上記事情聴取では,保健福祉局から指示された事項を一人で聴取し,同 時に報告用に記録する必要があったため,聴取事項をもれなく確認し,原告の回答内容を書き留めることに神経を集中させていた。また,F課長は,本件複写記録を返還することは監察担当責任者と原告との間で既に決定事項である旨の申し送りを受けていたため,原告から本件複写記録を自宅で廃棄するという選択肢が提案されることを全く想定していなかった。 しかも,仮に,本件複写記録を自宅で廃棄することについてF課長からの 了解を得たとの認識を原告が有してい 廃棄するという選択肢が提案されることを全く想定していなかった。 しかも,仮に,本件複写記録を自宅で廃棄することについてF課長からの 了解を得たとの認識を原告が有していたのであれば,本件複写記録の廃棄後にこれを問題視して行われた事情聴取の際などに,F課長から了解を得ていた旨を明確に主張するはずであるが,実際には,原告は,本件懲戒処分がされるまで,上記の点について何らの弁明も行っていなかった。 (原告の主張) ア被告の主張アに対する認否等被告の主張アに記載の事実は否認する。原告は,被告が主張する時期に本件複写記録を自宅に持ち出したことはないし(下記イ)本件複写記録の自宅での廃棄は上司であるF課長の了解を得て行ったものである(下記ウ)。 イ原告が本件複写記録を自宅に持ち出した時期は,2回目の内部通報に係る E弁護士との面談を行う平成27年10月上旬頃であったこと原告が平成27年3月15日に行った1回目の内部通報に対しては,同年6月23日に「●●●●●●月の★★からの相談は★★●●を訴えるものではなかった」旨の記載を含む調査結果回答がされた。しかしながら,原告が児童情報管理システム等の閲覧により把握していた●●●●●●月時点で の本件相談の内容は,非常に具体的に本件児童の★★★★★からの★★●●●●●を訴える内容であった。そこで,原告は,E弁護士に対し,2回目の内部通報を行うに当たり,動かぬ証拠となるものを提示する必要があると考え,平成27年10月6日頃,本件児童の★の児童記録データに係る文書ファイルのうち,本件相談の内容が記載された●●●●●●●●●日分を含む 片面1ページを出力し,複数枚複写した上で,そのうちの一枚をE弁護士に交付するものとし,もう一枚(本件複写記録 係る文書ファイルのうち,本件相談の内容が記載された●●●●●●●●●日分を含む 片面1ページを出力し,複数枚複写した上で,そのうちの一枚をE弁護士に交付するものとし,もう一枚(本件複写記録)を自宅に持ち出した。 なお,原告は,本件組合交渉に先立つ時期にも,上記文書ファイルの該当ページを出力したことはあるが,これを職場外に持ち出したことはない。 ウ本件複写記録の廃棄は上司の了解を得て行ったものであること 原告は,平成27年11月10日のF課長との事情聴取に先立ち実施され た監察担当責任者との事情聴取では,本件複写記録の自主的な返却を求められたにすぎず,文書等によって明確な返却指示を受けたわけではなかった。 そして,同日のF課長との事情聴取では,原告が,F課長に対し,本件複写記録を自宅に保管している旨及び自身で廃棄するつもりである旨を伝えたところ,F課長は,「はいはいはいはい。」と回答した。このF課長の発言 は,原告の直前の発言に対して肯定の相づちを打ったものであり,本件複写記録を自宅で廃棄することについて了解されたと受け取るのが通常の日本語であるから,上記の会話で,F課長による本件複写記録の廃棄の了解があったと見るのが社会常識である。 したがって,原告は,上司であるF課長による了解を得て本件複写記録を 自宅のシュレッダーで廃棄したにすぎず,無断で廃棄した事実はない。 ⑶ 争点1⑶(本件対象行為3に係る原告の行為の有無)について(被告の主張)ア本件対象行為3に係る原告の行為原告は,平成27年1月14日,本件新年会において,本件児童に係る支 援の経過を知らない職員が複数出席し,また,店員等も出入りする場であったにもかかわらず,飲酒をしながら,本件児童の個人情報を 原告は,平成27年1月14日,本件新年会において,本件児童に係る支 援の経過を知らない職員が複数出席し,また,店員等も出入りする場であったにもかかわらず,飲酒をしながら,本件児童の個人情報を含んだ内容について発言した。また,原告は,平成27年3月10日,本件組合交渉において,本件児童に係る支援の経過を知らない参加者が多数いるにもかかわらず,本件児童の個人情報を含んだ内容について発言した。 イ本件新年会における具体的状況本件新年会には,京都市児童相談所支援課の相談課長,児童虐待対策第一担当課長,同第二担当課長,C主席のほか,原告を含む係員6名の合計10名が出席しており,このうち,業務上,本件虐待事案を了知していた職員は上記各課長,C主席及び原告のみであり,その余の5名は了知していなかっ た。また,新年会の会場は,店内の個室ではなく,周囲に店員や他の客がい る状態であった。このような状況下で,原告は,C主席に対し,「本件虐待事案が●●月に発覚したのであれば,すぐにでも本人への事実確認面接を実施すべきであり,対応が遅いのではないか。」との趣旨の発言をした。 ウ本件組合交渉における具体的状況本件組合交渉には,当局側の職員はD所長を含む合計9名が出席し,組合 側の職員は原告を含む合計5名が出席しており,このうち,業務上,本件虐待事案を了知していた職員は,D所長や原告を含む合計5名のみであり,その余の職員は了知していなかった。このような状況下で,原告は,本件組合交渉における組合要求とは関係のない事項であったにもかかわらず,突如,本件虐待事案に関する事項を話題に出し,「本件児童は●●●●●●●●● ●●●,●●●●●●●されている。その間もなぜ対応しなかったのか。」などと質 係のない事項であったにもかかわらず,突如,本件虐待事案に関する事項を話題に出し,「本件児童は●●●●●●●●● ●●●,●●●●●●●されている。その間もなぜ対応しなかったのか。」などと質問したため,D所長は,「多くのスタッフの日程調整が必要であり,事実確認は1月末になった。」などと回答した。原告は,その後もなお,手持ちの本件児童の●の児童記録データに係る出力文書を前提に「ここに記録がある。読みましょうか。」と食い下がり,本件虐待事案に係る発言を止め るどころか,さらに詳細な個人情報を述べようとしたことから,当局側の出席職員によって制止された。 (原告の主張)ア被告の主張アに対する認否原告が本件新年会及び本件組合交渉において本件児童の個人情報を含ん だ内容について発言したことは否認し,その余はおおむね認める。 イ本件新年会での原告の発言について原告が本件新年会において本件虐待事案に関する話題として発言した内容は,「●●●の件はどうするのですか。」,「重大な問題を放置する児相は末期的ではないですか。」との発言と,「担当の●●さんは全くやる気が ありませんよね。」との発言だけである。原告は,本件虐待事案に関する児 童養護施設の名前と本件児童の担当職員については名前を出したものの,本件児童については名前や性別も出さず,具体的な事件内容も指摘していなかったのであり,本件児童の個人情報に該当する事実については何ら発言していない。 また,原告が上記の話をした相手は本件児童の担当職員を監督すべき立場 にあったC主席であり,原告が上記の話をしたのも,C主席が原告に話し掛けてきたからである。そして,原告とC主席との会話が聞こえたのは,すぐ近くにいた2名の職員だけ 童の担当職員を監督すべき立場 にあったC主席であり,原告が上記の話をしたのも,C主席が原告に話し掛けてきたからである。そして,原告とC主席との会話が聞こえたのは,すぐ近くにいた2名の職員だけであった(しかも,うち1名の職員は,本件虐待事案について了知していた。)。これ以外の他の職員は,新年会の席上での原告とC主席との上記会話を聞いておらず,まして,同会話の内容が店員や 他の客に聞こえるようなことはなかった。 ウ本件組合交渉での原告の発言について本件組合交渉の当日の参加者は,組合側も当局側も,児童福祉センターの職員であったのであり,同組合交渉での原告の発言は,同じ職場の職員のみがいる場で行われたものであった。そして,本件組合交渉の場における原告 の具体的な発言内容については,同組合交渉での会話の録音データ反訳(甲37)のとおりであり,原告は,必要な範囲で,本件虐待事案に関する京都市児童相談所の対応について問題点を言及したものの,本件児童の名前や性別を出したことも,本件虐待事案の具体的な内容を指摘したこともなかった。 したがって,原告は,本件組合交渉でも,本件児童の個人情報に該当する 事実については,何ら発言していなかった。 2 争点2(本件各対象行為の懲戒事由該当性)について⑴ 争点2⑴(本件対象行為1に係る原告の行為の懲戒事由該当性)について(被告の主張)ア京都市児童相談所において,担当外の児童の情報を閲覧することを奨励し ていた事実はないこと 一般に,児童相談所の運営については,厚生労働省の定める行政通達として,平成2年3月5日児発第133号「児童相談所運営指針について」(以下「児童相談所運営指針」という。甲7)が定められており,同指針では「児童相談所 の運営については,厚生労働省の定める行政通達として,平成2年3月5日児発第133号「児童相談所運営指針について」(以下「児童相談所運営指針」という。甲7)が定められており,同指針では「児童相談所の職員が受け付けた相談は,すべて児童相談所の責任において対応すべき相談である」とされる。ここでいう「児童相談所の責任」とは,担当 外の職員を含めた児童相談所職員全体で対応するとの趣旨ではなく,児童相談所が組織として対応すべきとの趣旨である。京都市児童相談所は,上記の趣旨に則り,援助方針会議(調査,診断,判定等の結果に基づき児童や保護者に対する最も効果的な援助指針を決定する会議)については,担当外の職員の参加を認め,原則として毎週水曜日に定例的に開催している。 このように,京都市児童相談所では,担当外の児童の援助方針会議への参加等を認めるなど,他の担当者の仕事ぶりも参考にすべきとの方針があったことは否定しないが,それは,みだりに担当外の児童情報データ等を閲覧することを許す趣旨ではなく,担当外の児童の情報を閲覧することを奨励するものではなかった。また,京都市児童相談所では,児童情報管理システム等 について,自由な閲覧を認めるものではないとの指導を取り立てて行ってはいなかったが,かかる指導がなくとも,そもそも市の職員であれば,当然に行ってはならない行為であることは明らかである。 イ原告による記録の閲覧は,公益通報とは無関係に行われたものであり,かつ,原告の個人的な関心によるものであったこと 原告は,平成26年10月頃以降,本件逮捕がされた●●●●●●●●日までの間,相当な頻度で,児童情報管理システム及びバックアップフォルダにより管理された本件児童の児童記録データ等を閲覧し,本件児童の家族構成や過去の処分歴の詳細 ,本件逮捕がされた●●●●●●●●日までの間,相当な頻度で,児童情報管理システム及びバックアップフォルダにより管理された本件児童の児童記録データ等を閲覧し,本件児童の家族構成や過去の処分歴の詳細を把握していた。仮に原告が本件児童の問題について京都市児童相談所が適切に対応するかを監視し,適切な対応がされない場 合には公益通報等を行う目的を有していたとしても,本件児童の家族構成や 過去の処遇に関する情報は,公益通報を行うのに不必要な情報であった。まして,本件児童の★に関しては,●●●への入所歴もなかったのであるから,●●★の児童記録データを閲覧する必要性は全くなかった。そうであるにもかかわらず,本件児童及び●●★の児童記録データ等の閲覧を繰り返した原告の行為は,およそ正当な行為とはいえない。 さらに,原告は,児童情報管理システム等の閲覧を開始したとする平成26年10月頃以降,本件児童の援助方針会議が同月24日にも開催されていたにもかかわらず,同会議に参加していない。京都市児童相談所においては,担当外の児童であっても,当該児童の援助方針会議に参加でき,同会議で意見を述べることができたのであるから,原告は,本来,同会議に参加して, 本件児童を担当する担当児童福祉司や上司に状況を確認すべきであった。しかるに,原告は,援助方針会議への参加という正規の情報共有の方法を活用せずに,たまたま児童情報管理システム上で担当外の児童記録データを閲覧できる状況にあることを奇貨として,担当外であった本件児童及び●●★の児童記録データ等を繰り返し閲覧したのであるから,かかる行為は,原告の 個人的な興味・関心で行われたものと評価せざるを得ない。 ウ小括以上によれば,勤務時間中に自己の担当業務に関係のない本件児童の児童 り返し閲覧したのであるから,かかる行為は,原告の 個人的な興味・関心で行われたものと評価せざるを得ない。 ウ小括以上によれば,勤務時間中に自己の担当業務に関係のない本件児童の児童記録データ等を閲覧した原告の行為は,地方公務員法35条の職務専念義務に違反するほか,上記行為は公務の運営に支障を生じさせ行政に対する市民 の信頼を失わせるものとして本件懲戒指針第3の1⑷所定の勤務態度不良に当たることから,同法29条1項各号の懲戒事由に該当する。 (原告の主張)ア相談事例の情報は京都市児童相談所の職員全体に共有されるべきこと児童相談所の運営について規定した行政通達である児童相談所運営指針 (甲7)には,「児童相談所の職員が受け付けた相談は,すべて児童相談所 の責任において対応すべき相談である。」との規定がある。これを受け,京都市児童相談所でも,原則週1回のペースで援助方針会議が開催され,そこには原告を含む同児童相談所の職員の多くが参加し,各職員が自己の担当外である相談事例についても情報を共有し,援助方針の検討が行われていた。 そして,京都市児童相談所では,児童情報管理システム及びバックアップ フォルダについて,それぞれ保存された各サーバには職員が使用する業務用パソコンとネットワークで繋がっており,支援課の職員であれば,自分の担当外の児童の情報であっても,閲覧,出力することが可能な状況にあった。 京都市児童相談所が,児童情報管理システム等の閲覧に関して,各職員に対し,自由に閲覧することが認められるものではないとの指導が行われた事実 など存在せず,また,同児童相談所の職員が児童情報管理システム及びバックアップフォルダから担当外の児童の児童記録データ等を閲覧することが禁止されていたことを明 ではないとの指導が行われた事実 など存在せず,また,同児童相談所の職員が児童情報管理システム及びバックアップフォルダから担当外の児童の児童記録データ等を閲覧することが禁止されていたことを明確に示すような根拠規定は何ら存在しない。むしろ,京都市児童相談所においては,職員に対し,他の担当者の仕事ぶりも参考にすべきであるとして,担当外の児童の記録を閲覧することが奨励されていた。 イ原告による児童記録データ等の閲覧は,京都市児童相談所の職員としての職責に従って行われた正当な行為といえること原告が児童情報管理システム等の閲覧を開始したきっかけは,平成26年10月1日に★★★★★がD所長らから事情聴取を受けている場面をたまたま目撃し,●●●で何か問題が起きたのかもしれないとの危惧を抱き,さ らに同園には原告が過去に担当した2名の児童が入所している施設であったことから,その問題が同児童らに関連を有するかもしれないとの危惧を抱いたからである。そして,原告は,その後,本件児童が★★★★★から★★●●を受けている可能性があること及び本件児童の★★から京都市児童相談所に本件相談があったことを知った以上,同児童相談所の職員の職責とし て,京都市児童相談所が本件児童の上記問題について児童福祉法及び児童虐 待の防止等に関する法律(以下「児童虐待防止法」という。)に従って適切な対処を行うか否かを監視し,適切な対処が行われない場合には,職場内ないし監督機関に働き掛けて,被告及び京都市児童相談所が適切な対処を行うよう促す責任があった。 このように,本来,京都市児童相談所の職員の間で共有されるべき本件児 童の情報に関して,原告は,児童記録データ等の閲覧を通じて,本件児童に実際に問題が生じていることを認識したことから,同児 。 このように,本来,京都市児童相談所の職員の間で共有されるべき本件児 童の情報に関して,原告は,児童記録データ等の閲覧を通じて,本件児童に実際に問題が生じていることを認識したことから,同児童相談所の職員としての職責に従って,自己の担当外ケースである本件児童についても関心を持ち,その児童記録データ等の閲覧を行い,京都市児童相談所が適切な対応をしているかについて,進捗を確認していたものである。 ウ小括以上によれば,原告による児童記録データ等の閲覧は,地方公務員法35条の職務専念義務に違反するものではなく,又は,京都市児童相談所の職員としての職責に従った正当な行為として違法性が阻却されるのであるから,いずれにせよ,同法29条1項各号のいずれの懲戒事由にも該当しない。 ⑵ 争点2⑵(本件対象行為2に係る原告の行為の懲戒事由該当性)について(被告の主張)ア原告が本件複写記録を自宅へ持ち出した行為は本件管理基準7条3項に違反すること原告が自宅に持ち出して保管していた本件複写記録は,本件児童や●●★ に関する極めて機密性,プライバシー性の高い個人情報を含む文書であった。 そして,本件管理基準7条3項は,重要性Ⅰ(プライバシー情報等の機密を要する情報,すなわち,個人に関して,通常他人に知られたくないと認められる情報)に関して,庁外への持ち出しを禁止するところ,原告による本件複写記録の自宅への持ち出し行為は,同条項に違反することは明らかである。 また,仮に,原告が公益通報の挙証資料とするために本件複写記録を持ち 出したのだとしても,公益通報処理窓口であるE弁護士に本件複写記録と同様の内容の文書を提出したのであれば,原告が本件複写記録を自宅で保管する必要性や相当性は するために本件複写記録を持ち 出したのだとしても,公益通報処理窓口であるE弁護士に本件複写記録と同様の内容の文書を提出したのであれば,原告が本件複写記録を自宅で保管する必要性や相当性は認められない。本件複写記録ほど機密性の高い情報を,何らのセキュリティも保障されていない原告の自宅で数か月も保管することは,個人情報漏えいの危険を生じさせたものといわざるを得ない。 したがって,原告による本件複写記録の自宅への持ち出し行為は,本件管理基準7条3項に違反するものであり,かつ,公益通報のための正当な行為として違法性が阻却されるものでもない。 イ原告が本件複写記録を自宅でシュレッダーにより廃棄した行為は本件管理基準9条に違反すること 本件管理基準9条は,職員に対し,入出力帳票の廃棄にあたり,情報漏えい等の事故を防ぐよう適切に処分することを求める定めであり,被告においては,個人情報に関わる問題事案が発生した際などには,情報セキュリティ対策を徹底することを文書により周知していた。そして,このような周知文書において,個人情報を含む入出力帳票については,廃棄の際,秘密書類の 集団回収等で適切に廃棄することを全職員に確認させ,徹底を求めていた。 秘密書類の集団回収の方法の一つとして,職場に設置された機密文書専用の廃棄ボックスによる回収もこれに当然に含まれるところ,これらにより回収された秘密書類は,溶解処分されることになっている。 そうであるにもかかわらず,原告は,本件複写記録に関して,秘密書類の 集団回収(廃棄ボックス)によらずに自宅でシュレッダーに掛けて廃棄したものである。原告の上記廃棄行為は,被告において,原告が機密性やプライバシーの保護に配慮して適切に廃棄したかどうかを客観的に確認できない事態を ボックス)によらずに自宅でシュレッダーに掛けて廃棄したものである。原告の上記廃棄行為は,被告において,原告が機密性やプライバシーの保護に配慮して適切に廃棄したかどうかを客観的に確認できない事態を招いたのであるから,本件管理基準9条に明らかに違反する。 なお,原告は,前記1⑵の「原告の主張」のとおり,本件複写記録の自宅 での廃棄についてはF課長による了解を得ていたなどと主張するが,F課 長が上記了解をした事実は認められないのであるから,原告による廃棄行為について,その違法性は阻却されない。 ウ小括以上によれば,原告による本件複写記録の自宅への持ち出し行為及び自宅での廃棄行為は,本件管理基準7条3項及び9条に違反するものであり,本 件懲戒指針第3の1⒀ア所定の情報セキュリティーポリシー違反に当たることから,地方公務員法29条1項各号の懲戒事由に該当する。 (原告の主張)ア本件複写記録の自宅への持ち出し行為は公益通報のために行った正当な行為として,違法性が阻却されること 原告が本件複写記録を自宅に持ち出したのは,京都市の公益通報処理窓口であるE弁護士に対し,2回目の内部通報をする際に,証拠として提出するためであった。すなわち,原告が平成27年3月15日に行った1回目の内部通報に対しては,既に,本件児童の★★からの本件相談は★★●●を訴えるものではなかったとして,京都市児童相談所の対応に問題はなかった旨の 回答がされていた。しかしながら,原告が児童情報管理システム等の閲覧を通じて確認していたところでは,本件児童の★★からの本件相談の内容は,非常に具体的に★★●●の危険を訴える内容であった。そこで,原告は,1回目の内部通報に係る調査において,京都市が,本件児童の★★からの本件相談 いたところでは,本件児童の★★からの本件相談の内容は,非常に具体的に★★●●の危険を訴える内容であった。そこで,原告は,1回目の内部通報に係る調査において,京都市が,本件児童の★★からの本件相談の内容をE弁護士に明らかにしていないと考えた。それ故,原告は,E 弁護士に対し,本件相談があったことについての動かぬ証拠となるものを提示する必要があると考え,原告は,本件児童の●の児童記録データに係る文書ファイルの片面1ページを出力し,これを更に複数枚複写して,自宅やE弁護士の法律事務所といった職場外の場所に持ち出すこととした。このように,原告が本件複写記録を持ち出したのは,E弁護士に対して明確な証拠を 提示することで,2回目の内部通報に対する調査を,正しい事実認識に基づ いて行ってもらうためであった。そして,原告がE弁護士に交付する以外に,本件複写記録を自宅に持ち出したのは,出力した文書ファイルに係る該当ページには重要な内容が記録されており,今後,同ページ自体が被告によって証拠隠滅されるおそれもあるとの不安を抱いたからであった。 これに対して,被告は,本件複写記録の持ち出し行為が本件管理基準に違 反すると主張するが,原告による本件複写記録の持ち出し行為によって,京都市には何らの損害も生じていない。また,原告が本件複写記録を自宅に持ち出したのは,公益通報の外部窓口であるE弁護士に根拠を示した通報を行うための正当な行為があった。原告は,●●●●●●月時点での本件相談を京都市児童相談所が児童福祉法及び児童虐待防止法に違反して放置したこ とについて,公益通報外部窓口及び京都市に対して顕在化させるための手段,方法としてのみ,本件複写記録を使用したものである。 イ本件複写記録の自宅での廃棄はF課長の了解を得て て放置したこ とについて,公益通報外部窓口及び京都市に対して顕在化させるための手段,方法としてのみ,本件複写記録を使用したものである。 イ本件複写記録の自宅での廃棄はF課長の了解を得て行われた行為であり,違法性が阻却されること前記1⑵の「原告の主張」のとおり,原告は,上司であるF課長の了解を 得て本件複写記録を自宅のシュレッダーで廃棄したのであるから,当該行為の違法性は阻却されるものである。なお,被告は,原告が本件複写記録をシュレッダーに掛けて廃棄したことも問題であると主張するようであるが,被告において,秘密書類の廃棄について,シュレッダーの使用を禁止し溶解処分すべきことを定めた明確な規定は存在せず,現に,職員が,簡単な秘密書 類については,シュレッダーを用いて廃棄していたこともあった。 ウ小括以上によれば,原告による本件複写記録の自宅への持ち出し行為及び自宅での廃棄行為は,いずれもその違法性が阻却されることから,そもそも地方公務員法29条1項各号のいずれの懲戒事由にも該当しない。 ⑶ 争点2⑶(本件対象行為3に係る原告の行為の懲戒事由該当性)について (被告の主張)ア本件新年会及び本件組合交渉での原告の発言は,いずれも地方公務員法上の「秘密」に該当すること地方公務員法34条及び児童福祉法61条の「秘密」とは,一般的に了知されていない事実であって,それを了知せしめることが一定利益の侵害に なると客観的に考えられるもの,又は,非公知の事実であって,実質的にもそれを秘密として保護するに値するものである。しかるところ,原告が本件新年会及び本件組合交渉で行った本件児童に係る発言の内容は,たとえ本件児童の氏名などの同児童を特定できる情報については言及していなかったとし して保護するに値するものである。しかるところ,原告が本件新年会及び本件組合交渉で行った本件児童に係る発言の内容は,たとえ本件児童の氏名などの同児童を特定できる情報については言及していなかったとしても,原告の発言を聞いた職員は,特定の児童が●●●で★★●●● ●●●●●●●●●●●●●という,それまで知らなかった事実を了知したものである。 したがって,原告の本件新年会及び本件組合交渉での発言内容は,非公知の事実であって,地方公務員法34条等の「秘密」に該当するものであり,当該発言によって具体的に被害者である本件児童の存在が特定されるかど うかは問題ではない。 イ本件新年会及び本件組合交渉での原告の発言は,公務の運営に重大な支障があること本件新年会及び本件組合交渉での原告の発言によって漏えいした秘密は,本件児童の個人情報という,極めて機密性,プライバシー性が高い個人情報 である。京都市児童相談所やその担当職員を信頼して情報を預けている児童やその保護者の立場からしても,同児童相談所の職員であるからといって,みだりに当該児童の情報が外部に流出されることを望んでいないことは当然である。 また,本件組合交渉がされた平成27年3月10日の時点では,同年2月 24日に京都市児童相談所及び保健福祉局児童家庭課が本件虐待事案に関 して警察に相談し,警察からも情報管理を徹底するよう指示されていたところであり,秘密の漏えいによって警察の捜査に支障を生じさせかねないものであった。そして,本来,知り得る立場にない多数の被告の職員等が本件児童の個人情報について知るところになり,更なる情報漏えいの危険性が生じた。さらに,原告の上記発言による情報漏えいによって,警察や市民に対す る関係でも,被告の信頼を失 多数の被告の職員等が本件児童の個人情報について知るところになり,更なる情報漏えいの危険性が生じた。さらに,原告の上記発言による情報漏えいによって,警察や市民に対す る関係でも,被告の信頼を失墜させ,今後の行政運営にも大きな影響を与えたものである。 ウ小括以上によれば,本件新年会及び本件組合交渉での原告の発言は,地方公務員法34条及び児童福祉法61条に違反するものであり,本件懲戒指針第3 の1⑼所定の秘密の漏えいに当たることから,地方公務員法29条1項各号の懲戒事由に該当する。 (原告の主張)ア本件新年会及び本件組合交渉での原告の発言が,そもそも本件児童の個人情報の漏えいに当たらないこと 前記1⑶の「原告の主張」のとおり,本件新年会及び本件組合交渉での原告の発言は,いずれも,本件児童の名前等のプライバシー情報が第三者にわかるような内容ではなかった。また,本件新年会では,原告の発言が店舗にいる他の客に聞こえるような状況ではなかったし,本件組合交渉の参加者は,全て京都市児童相談所又は児童福祉センターの職員であった。 そもそも京都市児童相談所においては,児童の相談事例についての情報は,同児童相談所の職員において共有されるべきものであって,京都市児童相談所の職員を相手に本件児童に係る発言したとしても,秘密を漏えいしたことにはならない。 したがって,本件新年会及び本件組合交渉での原告の発言は,いずれも地 方公務員法34条等に違反しておらず,本件懲戒指針第3の1⑼所定の秘密 の漏えいに当たらない。 イ本件新年会及び本件組合交渉での原告の発言は正当な行為であったこと原告が本件新年会及び本件組合交渉において本件児童に関して発言したのは,本件児童の★★によ えいに当たらない。 イ本件新年会及び本件組合交渉での原告の発言は正当な行為であったこと原告が本件新年会及び本件組合交渉において本件児童に関して発言したのは,本件児童の★★による●●●●●●月時点での本件相談の内容が,非常に具体的に本件児童の★★●●●●●を訴える内容であったにもかかわ らず,京都市児童相談所がこれを放置したことが非常に問題であると考え,本件新年会及び本件組合交渉といった場において,これらに関する発言をすることで,上司や組合交渉担当者に対して原告が有する上記の問題意識を指摘し,組織内での自浄作用が適正に発揮されることを期待したからである。 したがって,本件新年会及び本件組合交渉での原告での発言は,正当な行 為として違法性が阻却される。 ウ小括以上によれば,本件新年会及び本件組合交渉での原告での発言は,そもそも地方公務員法34条及び児童福祉法61条の秘密を漏えいしたものではないし,仮に秘密を漏えいしたものだとしても,正当な行為として違法性が 阻却されるから,いずれにせよ,地方公務員法29条1項各号のいずれの懲戒事由にも該当しない。 3 争点3(本件懲戒処分に裁量権の逸脱又は濫用の違法があるか否か)について(原告の主張)公務員に対する懲戒処分については,「懲戒事由に該当すると認められる行為 の原因,動機,性質,結果,影響等のほか,当該公務員の右行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか」という観点から,懲戒処分が社会観念上著しく妥当性を欠き,裁量権を付与した目的を逸脱した場合には,裁量権の濫用 慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか」という観点から,懲戒処分が社会観念上著しく妥当性を欠き,裁量権を付与した目的を逸脱した場合には,裁量権の濫用として 違法となる。そして,停職や減給などの重い懲戒処分を行う場合には,「規律や 秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要」し,そのような相当性を欠く場合には,懲戒処分は違法となる。 この判断においては,平等取扱い原則(地方公務員法13条),公正の原則(同法27条1項),不利益取扱いの禁止(同法56条)の観点を十分に考慮した判 断が求められるから,比例原則に反する場合や,適正手続の違反がある場合には,相当性を欠くものとして懲戒処分は違法となるのであって,結局のところ,公務員に対する懲戒処分の適否の判断は,労働契約関係における懲戒処分の適否の判断と大きく異なるところはないと解すべきである。 そして,本件では,以下に指摘する⑴ないし⑷の各事情があることからすれば, 本件懲戒処分は,裁量権を逸脱又は濫用した違法なものというべきである。 ⑴ 本件懲戒処分が社会的相当性を欠くこと仮に原告の各行為が懲戒事由に該当するとしても,原告がこれらの行為を行ったのは,ひとえに本件児童の★★からの本件相談が京都市児童相談所において虐待通告として扱われないまま放置されたことの不当性に対し,非常に強い 危機意識,問題意識を有していたからであり,正当な目的,理由から行われた行為として,当該行為の違法性は減殺される。そうであるにもかかわらず,原告に対して本件懲戒処分を行うことは,社会的相当性を欠くものといえる。 ア本件 ていたからであり,正当な目的,理由から行われた行為として,当該行為の違法性は減殺される。そうであるにもかかわらず,原告に対して本件懲戒処分を行うことは,社会的相当性を欠くものといえる。 ア本件対象行為1について原告が,児童情報管理システム及びバックアップフォルダの閲覧を開始し たのは,★★★★★に対するD所長らの事情聴取を見て,原告が過去に担当して●●●に入所した児童に危害が及んでいないかを心配したからである。 その後,原告は,上記閲覧を通じて,京都市児童相談所に本件相談があったことを知った以上,同児童相談所の職員の職責として,京都市児童相談所が児童福祉法及び児童虐待防止法に従って本件児童に対して適切な対処を行 っているかを監視し,適切な対処が行われていない場合には,職場内ないし 監督機関に働き掛けて,京都市児童相談所が適切な対処を行うよう促す責任があった。本件相談の内容は,★★★★★に関して刑事責任が問われる事態となり得る重大な問題であったにもかかわらず,京都市児童相談所の★★★★★に対する姿勢が及び腰であるとの印象を受けていた原告は,事実が隠ぺいされる危惧を抱いた。そこで原告は,京都市児童相談所が本件児童の問題 に適切に対応しているかについて,直ちにD所長らに報告せずに,児童記録データ等の閲覧を繰り返しながら独自に見守っていたものである。 以上によれば,原告による本件児童の児童データ等の閲覧は,京都市児童相談所の職員としての職責に基づいて行われた行為であって,正当な目的や理由がある以上,これを理由に懲戒処分を行うことは社会的相当性を欠く。 イ本件対象行為2について一般的に,公益通報事案では,公益通報に対して適切な対処が行われず,それどころか,組織内で事実の隠蔽や証拠の隠滅が行われる事 分を行うことは社会的相当性を欠く。 イ本件対象行為2について一般的に,公益通報事案では,公益通報に対して適切な対処が行われず,それどころか,組織内で事実の隠蔽や証拠の隠滅が行われる事案も多い。このため,独力で公益通報を行おうとする者にとって,公益通報の根拠となる資料を自らの手元に置いておくことは,自身の主張の正当性を事後的に明ら かにする手段を担保するために必要な行為である。原告が本件複写記録を自宅に持ち出したのも,原告が2回目の内部通報を行った時点では,同通報が正式に公益通報として受理されたかが不明であったからであり,E弁護士に渡した資料と同じ内容の本件複写記録を控えとして保管しておくのは当然のことであった。そして,原告が本件複写記録を自宅に持ち出したからとい って,被告や本件児童に何らの損害も発生していない。そうすると,原告による本件複写記録の持ち出し行為について,本件懲戒処分を行うことは社会的相当性を欠く。 また,本件複写記録の廃棄については,仮にF課長が本件複写記録の廃棄を内心では了承していなかったとしても,本件複写記録を自身で廃棄するつ もりである旨を伝えた原告に対して,F課長が「はいはいはいはい。」と回 答したものであるから,F課長と原告との上記会話の内容は,客観的に見れば,F課長が本件複写記録の廃棄を了承していたと受け取るのが,通常の日本語である。さらに,保健福祉局の保健福祉部長であるG(以下「G部長」という。)は,本件複写記録の返却に関しては,「返却するのに,文書がいるのであればうちから返却依頼の文書出しますし,自主的に返されるのであ れば,こちらに」と述べたにとどまり,文書等による返却の明確な指示をしたわけではなかった。このように,本件複写記録の廃棄は,少なくともF課 ちから返却依頼の文書出しますし,自主的に返されるのであ れば,こちらに」と述べたにとどまり,文書等による返却の明確な指示をしたわけではなかった。このように,本件複写記録の廃棄は,少なくともF課長から原告に対し廃棄の了承があったと評価するのが相当といえる状況下で行われたものであるから,本件複写記録の廃棄を理由に本件懲戒処分を行うことは社会的相当性を欠くものである。 ウ本件対象行為3について原告は,本件児童に係る児童情報管理システム等の閲覧を通じて,本件相談の内容を把握し,★★★★★による本件児童に対する★★●●がされた疑いがあることを知ったが,直ちに公益通報を行うのではなく,職場内での自浄作用が適正に働くか否かを観察するために行っていた。 しかしながら,原告は,その後,京都市児童相談所において,本件児童に係る調査が行われず放置されている状況を目の当たりにした。そこで,原告は,平成27年1月14日の本件新年会において,上司であるC主席に対し,本件児童に係る調査が放置されている問題を指摘し,さらに,同年3月10日の本件組合交渉においても,D所長に対して,同問題を指摘した。 以上のように,本件対象行為3は,原告が京都市児童相談所の職員としての職責に従い正当な目的に基づいて行った行為であり,そうであるにもかかわらず,これを理由に本件懲戒処分を行うことは,社会的相当性を欠く。 ⑵ 本件懲戒処分は,原告に対し懲戒処分を行うという結論ありきでなされたものであること 平成27年10月21日に京都市会決算特別委員会で行われた総括質疑に おいて,●●●●●●●●議員●●●●●●●●●●●●●●から,本件虐待事案に対する京都市児童相談所の対応の不備を指摘する質疑があり,同質疑での●●議員の「児童 員会で行われた総括質疑に おいて,●●●●●●●●議員●●●●●●●●●●●●●●から,本件虐待事案に対する京都市児童相談所の対応の不備を指摘する質疑があり,同質疑での●●議員の「児童相談所の児童記録そのものを持っている」などの発言から,同議員が本件児童の児童記録等の個人情報を入手していたことが判明した。 コンプライアンス推進室及び保健福祉局は,原告がE弁護士に1回目の内部 通報を行った平成27年3月頃の時点で,原告が本件対象行為1を行ったとする情報を把握していたにもかかわらず,●●議員による上記質疑が行われるまでの半年以上にわたって,本件対象行為1を全く問題としてこなかった。また,京都市児童相談所は,●●議員による上記質疑が行われるまでの半年以上にわたって,本件対象行為3を全く問題としてこなかった。 そうであるにもかかわらず,●●議員による議会質問によって,本件虐待事案に対する京都市児童相談所の対応の不備を指摘する発言があり,そのことが大きく報道され,同児童相談所が本件児童の虐待案件を4か月放置した疑いが世間に認識されるや否や,極めて速やかに調査部会を立ち上げた。そして,同調査部会においては,調査の最初の段階から,原告を特定する形で原告の本件 組合交渉における発言が問題にされるとともに原告の児童記録の持ち出しも問題にされ,平成27年10月29日以降の調査はもっぱら原告の言動のみを対象に行われるようになるなど,一連の聴取は,原告の内部通報用紙の記載を全てあらかじめ把握した上で,F課長があらかじめ予見したストーリーに沿うように行われた。このように,上記調査部会は,原告に対して懲戒処分を行う との目的のもと,結論ありきの調査を行ったものである。 以上によれば,本件懲戒処分は,●●議員の議会質問をきっか に沿うように行われた。このように,上記調査部会は,原告に対して懲戒処分を行う との目的のもと,結論ありきの調査を行ったものである。 以上によれば,本件懲戒処分は,●●議員の議会質問をきっかけに,当初から原告に対し懲戒処分を行うという結論ありきで調査が行われた上でなされた懲戒処分であり,違法である。 ⑶ 本件懲戒処分が,他の事例との均衡を欠き重きに失すること 京都市西京区内で老人デイサービスセンターの開設を予定していた業者に 対し,建設が禁止されている場所だったにもかかわらず,「建設できる」との誤った教示を職員が行ったために,京都市が1215万円の損害賠償を支払うことになった事例について,被告は,誤教示をした職員に対して懲戒処分を行っていない。また,被告は,平成28年4月27日に母子福祉資金貸付金台帳の写しが流出してしまった事例については,個人情報が外部に漏えいしてしま ったにもかかわらず,関係職員に対して懲戒処分を行っていない。 このように,本件とは異なり具体的に1215万円もの経済的損害を京都市に与えた事例や,本件と同様に個人情報の扱いが問題になった事例について,被告はそのような行為を行った職員を懲戒していないにもかかわらず,原告に対してのみ停職という重い本件懲戒処分を行うことは,平等取扱い原則,公正 の原則,比例原則といった基本原則に反するものである。 これに対して,被告は,職場のイントラネットパソコンから自宅のパソコンへの電子メールの送信等により非公開情報が漏えいした事例について,当該職員を停職10日の懲戒処分としたことをもって,原告に対する本件懲戒処分が他事例と均衡がとれている旨を主張する。しかしながら,原告が行った行為の うち,情報漏えいという観点から,原告が非公開情報を外部に流 0日の懲戒処分としたことをもって,原告に対する本件懲戒処分が他事例と均衡がとれている旨を主張する。しかしながら,原告が行った行為の うち,情報漏えいという観点から,原告が非公開情報を外部に流出させたといえる行為は,公益通報の外部窓口であるE弁護士への情報提供のみであり,しかも,この行為は,京都市自身が「公益目的で通報したことを理由に,懲戒処分等の不利益を受けることはありません」と説明するように,そもそも懲戒事由とされるべき行為ではない。したがって,被告の上記主張は理由がない。 ⑷ 本件懲戒処分が,禁反言や信義則に反し手続の適正を欠くこと被告は,京都市の公益通報制度について,通報者の秘密は守られる,外部の通報相談員に通報した場合は被告の職員に名前が伝わることは一切ない,公益目的で通報をしたことを理由に懲戒処分等の不利益な扱いを受けることはない旨の説明をしている。原告が,E弁護士に対して本件各内部通報を行ったの は,被告による上記説明を信じたからである。そうであるにもかかわらず,E 弁護士は,原告の了解を得ることなく,原告の名前を被告に伝えた。 そして,原告は,本件児童の児童記録データ等の閲覧や本件複写記録の持ち出し行為について,職場内で本件児童の★★からの本件相談が放置された問題の存在を顕在化させる目的,及び,本件各公益通報目的という正当な目的で行ったものである。そうであるにもかかわらず,京都市の公益通報処理に係る担 当部署であるコンプライアンス推進室は,原告に対し,原告を責めるだけの調査を行い,本件懲戒処分を強行した。 このように,本件懲戒処分は,通報者の秘密が守られるなどの公益通報制度の趣旨に反して,公益通報処理窓口から京都市に対して通報者名として原告の名前が伝えられ,その上で,担当部 懲戒処分を強行した。 このように,本件懲戒処分は,通報者の秘密が守られるなどの公益通報制度の趣旨に反して,公益通報処理窓口から京都市に対して通報者名として原告の名前が伝えられ,その上で,担当部署であるコンプライアンス推進室が通報者 である原告を責める内容の調査をすることによって,強行されたものである。 したがって,本件懲戒処分は,禁反言,信義則に反し,手続の適正を欠くものであり,違法である。 (被告の主張)公務員に対する懲戒処分は,懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会通念 上著しく妥当を欠き,裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。すなわち,裁判所は,具体的事案において,当然考慮されてしかるべき重要な要素が考慮されていたのかどうか,あるいは考慮されてはならない要素が考慮されていなかったかどうか,その考慮の有無の結果,処分が著しく妥当を欠く結果になっていないかどうか,というような裁量権の著しい不合 理性を示す事情の有無を中心とし,裁量権の逸脱又は濫用の有無を調べる観点から審査を行うべきである。 そして,本件懲戒処分が社会的相当性を逸脱していないかなど,前記3の「原告の主張」において原告が指摘する⑴ないし⑷の各事情が仮にあるとすれば,本件懲戒処分は裁量権の逸脱という問題を生じさせ得るものではあるが,その立証 責任はもとより原告にあるほか,以下で述べるとおり,原告が指摘する上記各事 情は,本件においてはいずれも存在しないものである。 ⑴ 本件懲戒処分が社会的相当性を欠くとの原告主張は理由がないことア本件対象行為1について原告は,児童情報管理システム等を閲覧する前の時点では,●●●で具体的にどのような問題が生じているかを把握してお 会的相当性を欠くとの原告主張は理由がないことア本件対象行為1について原告は,児童情報管理システム等を閲覧する前の時点では,●●●で具体的にどのような問題が生じているかを把握しておらず,自らが過去に担当し ていた児童との関連性の有無も全く明らかでなかった。したがって,原告による児童情報管理システム等の閲覧の当初の時点においては,原告に正当な目的があったとはいえない。 また,原告による本件児童及び●●★の児童記録データ等の継続的な閲覧が,仮に,本件児童に係る本件虐待事案に対して京都市児童相談所が組織と して適切な対応をしているか否かを確認するために行っていた行為であったとしても,もしそうであるならば,むしろ原告としては,上司や本件児童の担当児童福祉司に対して,本件児童の問題についての進捗を確認したり,担当業務外の行為をしているとの疑念を招かれないように本件児童等の児童記録データ等を閲覧することについて事前に了解を得たり,職場内の会議 に参加して意見を述べたりするなどの正当な他の手法を採るべきであった。 そうであるにもかかわらず,原告は,これらの正当な他の手法を用いずに,業務時間中に児童情報管理システム等の閲覧を繰り返したのであるから,本件対象行為1の違法性は,何ら減殺されるものではない。 したがって,本件対象行為1を行った原告に本件懲戒処分を行うことは, 社会的相当性を欠くものとはいえない。 イ本件対象行為2についてまず,本件複写記録の持ち出し行為については,被告は,公益通報の際の資料の控えを保管することまでを否定するものではなく,飽くまで,本件児童のセンシティブな個人情報が記載された本件複写記録を,職場外の,しか もセキュリティの確保されない自宅で保管したことを問題と 料の控えを保管することまでを否定するものではなく,飽くまで,本件児童のセンシティブな個人情報が記載された本件複写記録を,職場外の,しか もセキュリティの確保されない自宅で保管したことを問題とするものであ る。仮に,原告が公益通報の挙証資料とするために本件複写記録を自宅に持ち出したとしても,公益通報処理窓口であるE弁護士に本件複写記録と同様の内容の複写文書を提出したというのであれば,原告が,本件複写記録を自宅で保管する必要性や相当性は認められない。そして,本件複写記録ほど機密性の高い情報を,何らのセキュリティが保障されていない原告の自宅で数 か月も保管することは,個人情報漏えいの危険を生じさせたものといわざるを得ない。したがって,本件複写記録の持ち出し行為が,社会的相当性を有する行為とはいえない。 次に,本件複写記録の廃棄については,原告とF課長との会話内容から客観的に判断しても,F課長から廃棄の了承があったと評価するのは相当でな い。また,G部長は,保健福祉局の庶務を担当する部長級職員であるとともに,同局の監察に関する事務を掌握する監察主幹の職にあり,監察の実施に関して同局の所属職員に必要な指示を行う立場にあるのに対し,F課長は,一所属の課長級職員にすぎないから,F課長が監察主幹であるG部長の指示を了知しながら,同指示に反する行為を独断で了承することは職制上できな いところ,F課長は,G部長が原告に対し本件複写記録の返却を指示したことをあらかじめ了知していた。したがって,F課長が原告に対し,本件複写記録の廃棄を了承することは職制上できない。したがって,F課長と原告との会話状況及び職制上の観点からも,F課長から原告に対し本件複写記録の廃棄の了承があったと評価するのが相当な状況であるとはいえず,原告によ 棄を了承することは職制上できない。したがって,F課長と原告との会話状況及び職制上の観点からも,F課長から原告に対し本件複写記録の廃棄の了承があったと評価するのが相当な状況であるとはいえず,原告によ る本件複写記録の廃棄行為は,何らその違法性が減殺されるものではない。 以上によれば,本件対象行為2を行った原告に本件懲戒処分を行うことは,社会的相当性を欠くものとはいえない。 ウ本件対象行為3について一般に,新年会などの職場での懇親会の場においては,職員間の親睦を深 める中で,業務に関する話題が出ることはあり得るものではあるが,個別の 事案に言及し,児童虐待に関する個人情報を口にすることは許されるものではない。仮に,原告が,本件児童に対する京都市児童相談所の対応について問題提起をしようという目的を有していたとしても,業務時間外の飲酒を伴う本件新年会という場で,本件児童に関する機密性の高い個人情報を含む発言をすることは,不適切な方法であって,何ら正当化されるものではない。 また,一般に,組合交渉は,職場環境や勤務条件の改善といった労働条件について協議する場であり,児童への処遇等の個別事案について議論する場ではない。本件組合交渉においても,本件児童に対する京都市児童相談所の対応について議論がされることは全く予定されていなかったのであり,そのような場で,本件児童に関する機密性の高い個人情報を含む発言をすること もまた,不適切な方法であって,何ら正当化されるものではない。 そもそも,京都市児童相談所においては,業務上の問題の指摘は,援助方針会議に参加して意見を述べたり,担当者や上司に事実確認を行った上で上司に疑問を呈したりするなどの方法により行うべきものである。その上,原告には,これらの会議等を活用 ,業務上の問題の指摘は,援助方針会議に参加して意見を述べたり,担当者や上司に事実確認を行った上で上司に疑問を呈したりするなどの方法により行うべきものである。その上,原告には,これらの会議等を活用する機会は十分にあったにもかかわらず,原 告はこれらの行動を一切とらずに,本件対象行為3に及んだものである。そうすると,本件対象行為3について,違法性を減殺させる事情はない。 以上によれば,本件対象行為3を行った原告に本件懲戒処分を行うことは,社会的相当性を欠くものとはいえない。 ⑵ 本件懲戒処分は,原告に対して懲戒処分を行うという結論ありきでなされた ものではないこと原告の本件各対象行為について,被告がこれを認識した当初の時点で問題にしなかったのは,むしろ,被告において公益通報の趣旨に沿った対応がなされていた結果である。すなわち,原告から本件各内部通報を受けた当時,通報者である原告から提供された資料における情報には,原告の担当業務や京都市児 童相談所における記録等の管理状況,原告が児童記録データ等を閲覧していた 具体的な状況や閲覧の必要性・相当性,及び,本件新年会や本件組合交渉の詳細等は記載されておらず,内部通報に係る情報入手の時期や方法等に関して,一見明白に違法・不当な点があるとは認められなかったことから,通報者側の行為を調査するのは相当でないと判断したものである。 そして,調査部会による調査は,●●議員の京都市会特別決算委員会での質 疑によって,●●議員が,本来であれば入手不可能なはずの本件児童の個人情報を入手していたことが発覚したことから,情報流出の原因を調査する必要が生じたことにより開始されたものであり,原告を処分するために調査を開始したものではない。そして,全対象職員130名を対象とした 報を入手していたことが発覚したことから,情報流出の原因を調査する必要が生じたことにより開始されたものであり,原告を処分するために調査を開始したものではない。そして,全対象職員130名を対象とした上記調査の過程で,原告が平成27年10月29日にE弁護士に内部通報を行ったことを自ら明 らかにし,これ以降,本件各内部通報とは関係のない行為又は公益通報の目的があるとしても正当化されない行為として,原告が本件各対象行為を行っていたことが判明したことから,本件懲戒処分に至ったものである。 以上によれば,本件懲戒処分は,原告に対して懲戒処分を行うという結論ありきでなされたものではないことは明らかである。 ⑶ 本件懲戒処分が他事例との均衡を欠くものではないこと被告は,懲戒処分の要否や量定については,京都市の経済的損害の有無だけで決定しているわけではなく,本件懲戒指針に基づき,行為の態様等から総合的に判断している。確かに,本件各対象行為は,被告が指摘する都市計画局における職員の誤教示の事案のように経済的損害を生じさせたものではないが, 個人情報の中でも,とりわけ機密性やプライバシー性の高い個人情報を漏えいするという市政の信頼を失墜させる重大な非違行為である。 また,原告が指摘する母子福祉資金貸付台帳の流出事案は,プライバシーの観点からは重大な事案であるが,過失による事務処理上の誤りであるとともに,情報漏えいの範囲が1保育所と特定されており,情報流出の影響は限定的であ る。これに対し,本件は,飲酒を伴う場で児童虐待という極めてセンシティブ な内容を原告が自己本位に発言したものであり,店員等外部の者への情報漏えいの範囲も定かでなく,何より情報が漏れることがないことを前提に,市民をはじめとする様々な主体からプ てセンシティブ な内容を原告が自己本位に発言したものであり,店員等外部の者への情報漏えいの範囲も定かでなく,何より情報が漏れることがないことを前提に,市民をはじめとする様々な主体からプライバシーに係る様々な相談や通報が寄せられる京都市児童相談所への信頼や,同児童相談所と本件児童との信頼を損なわせ,適切な支援に支障を来しかねない事態を招いた原告の責任は重大である。 そして,個人情報の漏えいに関する過去の懲戒処分例としては,情報管理を統括する部署の職員であった者が,京都市情報セキュリティ対策基準違反を認識しながら,非公開情報を含む電磁的記録を職場のイントラネットパソコンから自宅のパソコンへ電子メールにより送信し,自宅に設置していた外部記憶装置に保存したところ,後日,何らかの理由により,当該電磁的記録がインター ネットを経由して外部から閲覧できる状態となり上記非公開情報が漏えいした事案について,被告は,当該職員を停職10日の懲戒処分とした。 以上によれば,本件懲戒処分は,対象となる個人情報の機密性の高さや,被告が失った市民からの信用の程度からすれば,むしろ,他事例との均衡が図られたものといえ,停職処分は量定として妥当である。 ⑷ 本件懲戒処分が手続の適正を欠くものではないこと被告としては,原告がE弁護士とのやりとりの中で,コンプライアンス推進室への実名伝達について了承していたものと認識している。現に原告は,1回目の通報後の平成27年9月,自分が公益通報したことを係会議で自ら名乗り出ており,さらにその後に2回目の内部通報を行っている。また,平成27年 11月26日にE弁護士から送付された回答文書(甲27・4頁)を見た時点で,自分の氏名がコンプライアンス推進室に伝わっていることに気付くことができ 目の内部通報を行っている。また,平成27年 11月26日にE弁護士から送付された回答文書(甲27・4頁)を見た時点で,自分の氏名がコンプライアンス推進室に伝わっていることに気付くことができたはずであるが,当時,何ら指摘していない。 そもそも本件懲戒処分は,本件児童に関する個人情報が●●議員に流出した過程を調査する中で,原告が行った不適切な行為として本件各対象行為が発覚 したものであり,原告が本件各内部通報をしたこと自体を懲戒事由としている わけでも,これを端緒としたわけでもなく,原告が本件各内部通報を行ったことは,本件懲戒処分とは無関係である。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2の1の前提事実に加え,証拠(甲1,2,7,12,18,19,2 6ないし28,30ないし43,45ないし47,49,50,55,57,58,60,67,69,乙1ないし22,24,26,29,30,33ないし39,41ないし65〔枝番を含む。〕,69ないし74,証人H,証人D所長,証人F課長,証人I,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ⑴ 原告が京都市児童相談所の支援課に配属となった経緯等原告は,平成9年4月1日に事務職員として被告に採用されて以降,a区b支所の生活保護の担当,保健福祉局地域福祉課,環境局,都市計画局,児童福祉局児童家庭課などの職場での勤務を経て,平成24年4月,被告における庁内FA制度を利用して,保健福祉局児童福祉センター児童相談所支援課に配属 となった。 被告における庁内FA制度とは,意欲と能力のある職員が配属希望の職場を申告し,当該職場の意向と合致すれば同職場に異動できるというものであり,原告は,何年も京都市児童相談所への異動を希望 となった。 被告における庁内FA制度とは,意欲と能力のある職員が配属希望の職場を申告し,当該職場の意向と合致すれば同職場に異動できるというものであり,原告は,何年も京都市児童相談所への異動を希望していたにもかかわらず実現しなかったため,同制度を利用し,同児童相談所支援課への配属が実現した。 ⑵ 京都市児童相談所についてア京都市児童相談所の体制被告は,児童,知的障害者及び発達障害者の福祉の増進を図るため,これらの者の相談,指導,支援等を行う施設として児童福祉センターを運営するところ,被告において,京都市児童相談所は,児童福祉センターの一 部署として設置されている。 京都市児童相談所は,電話や来所等により市民からの初めての相談を受け付ける相談課と,相談課が受け付けた相談事例が回付される支援課とで構成されており,このうち支援課は,心理支援係,地域班(1,2,3班)及び虐待班(4,5班)で構成されていた。 虐待班は,虐待通告に対し,児童の安否確認,必要に応じた一時保護や施 設入所等の措置のほか,通告事実に対する初期調査を実施し,初回虐待判定会議で虐待認定を行っていた。これに対して,地域班は,虐待ケースのほか,養護(被虐待児以外の擁護相談),非行,育成(不登校児等)のケースについて,在宅や施設入所後の地域生活上の支援を担当するものであった。このように,虐待班と地域班とは,虐待ケースについて「初動」と「虐待判定後 の地域生活支援」とを分担しており,児童に係る支援を虐待班から地域班に引き継ぐ関係にあった。 原告は,平成26年当時,京都市児童相談所の支援課のうち,虐待班(4班)に所属していた。 イ京都市児童相談所における職員間の情報共有の在り方 引き継ぐ関係にあった。 原告は,平成26年当時,京都市児童相談所の支援課のうち,虐待班(4班)に所属していた。 イ京都市児童相談所における職員間の情報共有の在り方 一般に,児童相談所の運営については,厚生労働省の定める行政通達として,平成2年3月5日児発第133号「児童相談所運営指針について」(児童相談所運営指針。甲7)が定められており,同指針では「児童相談所の職員が受け付けた相談は,すべて児童相談所の責任において対応すべき相談である」とされる。京都市児童相談所では,児童相談所指針の趣旨に則り,援 助方針会議(調査,診断,判定等の結果に基づき児童や保護者に対する最も効果的な援助指針を決定する会議)を毎週水曜日に定期的に開催し,同会議については,担当外の職員の参加を認め,他の担当者の仕事ぶりも参考にすべきとの方針が採用されていた。 ウ京都市児童相談所における児童情報データの管理の在り方 京都市児童相談所では,平成26年当時,児童情報管理システムとバック アップフォルダの二つにより,支援の対象となっている児童の情報をシステム管理していた(乙26)。児童情報管理システム及びバックアップフォルダが保存された各サーバは,支援課の職員が使用する業務用パソコンとネットワークで繋がっており,支援課の職員であれば,自分の担当外の児童の情報であっても閲覧,出力することが可能な状況にあった。 児童情報管理システムは,相談のあった児童に関わる児童情報,相談情報,虐待情報,処遇情報,児童福祉施設利用者負担金といった基本的な情報について,児童ごとに登録・修正・検索等が行えるようデータベース化したものである。同システムでは,児童の氏名や生年月日,住所や連絡先,家族や親族の氏名,続柄の他,相談受付日 担金といった基本的な情報について,児童ごとに登録・修正・検索等が行えるようデータベース化したものである。同システムでは,児童の氏名や生年月日,住所や連絡先,家族や親族の氏名,続柄の他,相談受付日や相談内容(詳細な記録は登録できず,相 談累計や虐待種別といった簡易な項目)が登録されていたが,詳細な支援の経過までは登録されていなかった。 バックアップフォルダは,支援課の各係(班)ごと及び事業等ごとにフォルダで分類され,各係(班)のフォルダの下層には,児童ごとのフォルダが作成されており,そこには,ワード又はエクセル形式の文書ファイルによっ て,当該児童の児童記録データや関係する会議資料データなどが保存されていた。児童記録データは,文書ファイルに日時や対応内容などの情報を詳細に記録したものであり,随時,当該児童の担当職員が文書ファイルに情報を追記して,上書き保存する仕組みとなっていた。 なお,平成26年当時,京都市児童相談所において,児童情報管理システ ム等にアクセスして担当外の児童の情報を閲覧することを禁止する旨の指導はされておらず,かつ,同閲覧を禁止する根拠規定も存在しなかった。また,児童情報管理システム等によって管理される児童記録データ等について,担当者しか知らないパスワードの設定等もされていなかった。 ⑶ ●●●について ●●●は,●●●●●●●●●●●児童養護施設であり,平成27年10月 時点での入所児童は,男子●●名と女子●●名の合計●●名であった。 ●●●では,平成24年頃以前に,施設内での虐待が繰り返し発生していたこと,経験の浅い職員が多いことなどから,平成24年4月から1年間,学識者や●●●●●●●●●を招いたケース会議などの施設内研修が行われていた。しかしながら,★★ 設内での虐待が繰り返し発生していたこと,経験の浅い職員が多いことなどから,平成24年4月から1年間,学識者や●●●●●●●●●を招いたケース会議などの施設内研修が行われていた。しかしながら,★★★★★が平成25年11月に●●●●●●●として就 任して以降は,●●●での施設内研修は行われていなかった。(甲50)⑷ 原告が児童情報管理システム等の閲覧を開始した経緯ア本件児童は,●●●●●●月,●●●●●●●を理由に,●●●に入所した。なお,原告は,本件児童を担当したことはなく,同児童及び●●★の児童記録データ等を閲覧するまで,本件児童らの存在を知らなかった。 イ京都市児童相談所は,●●●●●●●●●日,本件児童の★★から,電話で,「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●★★★★★●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●★★★★★●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●★★★★★●●●●●●●●●●●●●●●●●」など,●●●●● ●●●★★★★★●●●●●●●●●●●旨の相談を受けた(本件相談のうち,●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談)。 上記相談を受けた心理支援係の係長であったJ(以下「J係長」という。)は,●●●の主任職員に電話で連絡を取り,本件児童が同日は★★★★★●●●●●●●●●●●●●●●●●予定となっていることを確認したこと から,その旨を本件児童の★★に電話で伝えた。しかしながら,同電話で,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●★★●●●●●●●●が判明したことから,J係長は,●●●●●●●●●●,再度,●●●の主任職員に電話で連絡したところ,同主任職員から,理由は不明であるものの●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●★★●●●●●●●●が判明したことから,J係長は,●●●●●●●●●●,再度,●●●の主任職員に電話で連絡したところ,同主任職員から,理由は不明であるものの●●●●●●●はなくなった旨の報告を受けた。 J係長は,上記報告を受け,本件児童の★★に電話で,●●●●●●●● ●●●●●●を連絡するなどした。(以上につき,乙1)ウ京都市児童相談所は,●●●●●●●●●日,本件児童の★★から,電話で,本件児童のことが気になる旨の連絡を受けた。そこで,J係長は,●●●の主任職員に電話で連絡を取り,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を確認し,本件児童の★★にその旨を伝えた(乙41)。 エ京都市児童相談所は,●●●●●●●●●日,本件児童の★★から,●●●●●●●●●●●★★★★★●●●●●●●●●●●●について再び電話で,「★★★★★●●●●●●●●●★★●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●★★★★★●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●」,「★★★★★●●●●●●★★●●●●●●●●●●●●●●●●●●●★★●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」などとの相談があり(本件相談のうち,●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談),また,同電話で,●●●●●●●●あった本件児童の★の●●●●●●●●●●●●の申出があったことから,本件児童の★ の引取りは延期された。(乙2)オ D所長は,●●●●●●●●●日,保健福祉局児童家庭課の子育て支援担当課長であったK(以下「K課長」という。)に対し,本件相談を含む本件児童の★★からの前記イないしエ りは延期された。(乙2)オ D所長は,●●●●●●●●●日,保健福祉局児童家庭課の子育て支援担当課長であったK(以下「K課長」という。)に対し,本件相談を含む本件児童の★★からの前記イないしエの相談について口頭で報告し,本件児童の★★から事情聴取を実施した上で,★★★★★への事情聴取を実施すること を決定した(甲19・2頁)。 カ ●●●●●●●は,平成26年9月11日,京都市児童相談所に来所し,D所長,J係長,K課長及び本件児童の担当児童福祉司であった●●●●●●●●●●●●●●●●●●と面談を行った。 同面談において,●●●●●★★は,●●●●●★★★★★●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と説明し,その 際の状況を隠し撮りしたとするビデオテープを提供した。もっとも,D所長及びK課長が上記ビデオテープの映像をその場で再生して内容を確認したものの,★★★★★●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(甲19・2頁,乙41)。 キ ●●職員は,平成26年9月30日,本件児童と面談を行った。しかしな がら,同面談において,本件児童から,★★★★★●●●★★●●●●●●発言はなかった(甲19・2頁)。 ク D所長,K課長及び保健福祉局児童家庭課の担当係長1名は,平成26年10月1日午後4時頃から午後7時40分頃まで,京都市児童相談所のカウンセリングルームにおいて,★★★★★に対し,本件相談(●●●●●●日 の本件児童との●●の件)を含む内容について事情聴取を行った(甲19・2頁,乙42)。 原告は,同日,京都市児童相談所において,上記の事情聴取の現場をたまたま目撃した。原告は,これをきっかけとして,以前から●●●に対して個 容について事情聴取を行った(甲19・2頁,乙42)。 原告は,同日,京都市児童相談所において,上記の事情聴取の現場をたまたま目撃した。原告は,これをきっかけとして,以前から●●●に対して個人的に不信感を抱いていたことから,また●●●で不祥事が起きたのかと感 じ,●●●で何が起こったのかを調べてみようとの思いを抱くようになった。 ケ原告は,平成26年10月1日頃から,勤務時間中に,職場の業務用パソコンから,児童情報管理システム及びバックアップフォルダにアクセスして,本件児童及び●●★の児童記録データ等を繰り返し閲覧するようになった。 原告は,上記閲覧を通じて,●●●●●●月に本件児童の★★から京都市 児童相談所に対して本件相談があったことを知り,同児童相談所が本件児童の★★から本件相談を受けてから約1か月半が過ぎても虐待通告として受理していないことを問題視し,●●●に入所中の本件児童について関心を持つようになった。このため,原告は,これ以降も,勤務時間中に,職場の業務用パソコンから,児童情報管理システム及びバックアップフォルダにアク セスして,本件児童及び●●★の児童記録データ等の閲覧を繰り返し続けた。 なお,原告は,★★★★★が●●●●●●●●日に逮捕(本件逮捕)されるまで,本件児童に関する援助方針会議に参加したことはなく,また,本件児童を担当する担当児童福祉司や上司に,本件児童に係る支援の状況などを確認したこともなかった。 ⑸ 本件上局報告がされるまでの経緯 ア本件児童は,●●●●●●●●●日,●●●●●●●●●●●●となったが(乙41),●●●●●●日,●●●●●●●を理由に●●●●となったものの,●●●●●●されて●●●●した。しかし,その後の同月23日,本件児童及び ●●●●●日,●●●●●●●●●●●●となったが(乙41),●●●●●●日,●●●●●●●を理由に●●●●となったものの,●●●●●●されて●●●●した。しかし,その後の同月23日,本件児童及び★は,●●●●●●●を理由に●●●●●●となった。 イ本件児童の★★は,●●●●●●●●●●日,京都市児童相談所を訪れ, ●●●●●●●日から●●職員に代わり本件児童の担当児童福祉司となった●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と面談を行った。 本件児童の★★は,上記面談において,●●職員に対し,「本件児童が●●●の★★★★★から★★●●●をされて,●●●●●●●●●●●●●●。 他の子も同様に★★●●●●●●●●●,しないといけない状況であったと 話をしている。」などと発言し,本件児童が●●●に入所していた時に★★★★★から★★●●を受けたことがあった旨の通告がされた(乙1・3枚目)。 また,上記面談において,本件児童の★★から,●●●●●●●●★●●●●●●●旨の申出がされたことから,本件児童の★は●●●●●●●●●し●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ウ京都市児童相談所は,●●●●●●●●日,●●●●●●●,●●●●,●●●●●●●●本件児童の処遇を決定するための判定会議を開催し,同判定会議において,本件児童に対して●●●●●●●●●●●●●●●●●●を行うことを決定した(乙41)。 本件児童は,同日,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●★★●●● ●●●●●●●。 エ京都市児童相談所の支援課のうち,虐待班(4,5班)の職員による職場新年会(本件新年会)が,平成27年1月14日午後6時35分頃から,職場外の店舗において開催された。本件新年会に出席した職員の中には, 都市児童相談所の支援課のうち,虐待班(4,5班)の職員による職場新年会(本件新年会)が,平成27年1月14日午後6時35分頃から,職場外の店舗において開催された。本件新年会に出席した職員の中には,業務上,本件虐待事案を了知していない職員が複数名存在した。 本件新年会には,原告を含む合計12名の職員が参加しており,二つのテ ーブルに分かれて座っていたところ,原告は,C主席を含む合計6名ほどが座るテーブルの席で,飲酒をしながら,C主席に対し,「●●●の件はどうするのですか。」「重大な問題を放置する児相は末期的ではないですか。」などと発言し,本件虐待事案に対する京都市児童相談所の対応について話題に出した。これに対して,C主席がしかるべき対応をするつもりである旨の 回答をすると,原告は,「担当の●●さんは全くやる気がありませんよね。」などと,本件児童の担当児童福祉司であった●●職員を批判する発言をした。 (乙63の1・2)オ京都市児童相談所は,●●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの通告を本件虐待通告として受理した上で,平成27年1月15日,本件虐待通 告に係る判定会議を開催し,本件児童に対する事実確認面接を同月27日に実施することを決定した。そして,同日,京都市児童相談所において,本件児童との間で本件虐待通告に関する事実確認面接が実施され,同面接において,本件児童は,●●●入所中に★★★★★と★★●●をした旨の発言をした(乙3)。 カ保健福祉局は,平成27年1月30日,京都市長及び同副市長に対し,本件上局報告を行い,本件虐待通告に関して,●●●に入所していた本件児童に対して★★★★★による被措置児童虐待(★★●●)があったとする本件虐待通告がされたこと,同日に★★★★★への事実確認を実施し,その結果に 行い,本件虐待通告に関して,●●●に入所していた本件児童に対して★★★★★による被措置児童虐待(★★●●)があったとする本件虐待通告がされたこと,同日に★★★★★への事実確認を実施し,その結果に応じて警察への相談等の対応を行うことなどの説明を行った(乙3)。 保健福祉局は,上記の説明のとおり,同日に★★★★★への事実確認を実 施したが,★★★★★が本件児童への★★●●の事実を認めなかったことから,京都市児童相談所及び保健福祉局児童家庭課は,その後の同年2月24日,本件虐待事案に関して警察に相談を行った。 ⑹ 原告が1回目の内部通報を行うまでの経緯ア原告は,平成27年2月2日,職場での回覧文書を見て,本件上局報告が 行われたことを知った。 イ平成27年3月10日,職員組合と保健福祉局(児童福祉センター)との間で,本件組合交渉が開催された。本件組合交渉には,D所長を含む合計9名が当局側の職員として出席し,原告を含む合計5名が組合側の職員として出席しており,このうち,業務上,本件虐待事案を了知していた職員は,D 所長や原告を含む合計5名のみで,その余の職員は了知していなかった。 原告は,本件組合交渉において,本来予定されていた組合要求とは無関係の事項であったにもかかわらず,突如,D所長に対し,「●●●のね,施設内虐待の件なんですけども,あれ,なんで1月15日から動き出したんですか。」などと発言して本件虐待事案を話題に出し,本件虐待事案に関して京 都市児童相談所が対応を始めた時期などについての質問を行った。 これに対して,D所長が「●●月です。●●日。」と回答すると,原告は,「最初にね,★★が言うてきたのって●月でしょ。」などと,●●●●●●月に本件相談が京都市児童相談所にあった旨を指 問を行った。 これに対して,D所長が「●●月です。●●日。」と回答すると,原告は,「最初にね,★★が言うてきたのって●月でしょ。」などと,●●●●●●月に本件相談が京都市児童相談所にあった旨を指摘する発言をした。そして,D所長が原告の上記発言を否定する旨の発言をすると,原告は,「いや書い てますよ記録に。記録に書いてますよ。」,「いや書いてますよ。●●●●日の記録に。」,「読みましょうか。」などと発言し,バックアップフォルダに保存されていた本件児童の★の児童記録データのうち,本件組合交渉に先立ちあらかじめ出力していた●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談内容を含む記載がされた文書ファイルの片面1ページ(乙2〔ただ し,黒塗りされた状態でないもの〕)の記載内容を読み上げようとしたとこ ろ,第二児童福祉センター所長がこれを遮るように「あのう,それは,その,組合の・・・」などと発言したことから,原告はその読み上げを止めた。 しかしながら,原告は,その後もD所長に対し,「じゃあね,●●●●●日に話を聞いたとして,そのあと●●●●してるじゃないですか。」などと同日以降の本件虐待事案に関する京都市児童相談所の対応について質問を 繰り返し,D所長からの回答に対して,「それは,上局にも全部それで報告してますよね。」,「●月に最初に把握したっていうことではないってことですね。」などと発言した。(以上につき,甲37)ウ原告は,本件上局報告の具体的な内容については知らなかったものの,本件組合交渉でのD所長の発言等を受け,本件上局報告では,●●●●●●月 に本件児童の★★から本件相談があった事実については触れられていないのではないかとの疑いを抱き,これを問題視した。 そこで,原告は,平成27年3月15日,京都 件上局報告では,●●●●●●月 に本件児童の★★から本件相談があった事実については触れられていないのではないかとの疑いを抱き,これを問題視した。 そこで,原告は,平成27年3月15日,京都市の公益通報処理窓口であるE弁護士に対し,電子メールで,本件上局報告について,「京都市児童相談所の不作為を隠ぺいするような情報の取捨選択が行われている可能性が 高い。具体的には,●●●●●●●●に断片的情報が寄せられていたにもかかわらず,『●●●●●●●●●日に発覚』と報告されていると思われる」ことなどを指摘した通報を公益通報として行った。 被告では,本件要綱(乙36)において公益通報者保護法所定の通報対象事実又は同法別表掲記の法律以外の法令違反の事実に係る通報を内部通報 と定め,公益通報者保護法上の公益通報よりも広い範囲で,本件要綱上の内部通報をいわゆる公益通報として処理する仕組みを採るところ,原告が公益通報として行った上記通報は,平成27年3月23日に,公益通報者保護法上の公益通報には該当しないものの,本件要綱上の内部通報として受理された(1回目の内部通報。甲30)。 エ原告は,平成27年6月23日のE弁護士からの電子メールで,1回目の 内部通報に対する調査結果として,「児童相談所は,●●●●●●●月に,初めて当該女子児童の★★から★★●●の相談を受けたのであって,●●●月以降,断片的に★★●●の相談があったにもかかわらず,放置した事実はない。よって,上局に対する報告も,事実を隠蔽したものではない。」など,京都市児童相談所の対応に不適切な対応はなかった旨の回答を得た(甲3 1・8頁)。 ⑺ 原告が2回目の内部通報を行うまでの経緯ア ★★★★★は,●●●●●●●●日,●●●に入所していた 市児童相談所の対応に不適切な対応はなかった旨の回答を得た(甲3 1・8頁)。 ⑺ 原告が2回目の内部通報を行うまでの経緯ア ★★★★★は,●●●●●●●●日,●●●に入所していた本件児童を●●●●●●●●日に●●させたものとして,●●●●●●●●●●●●●●の容疑により逮捕された(本件逮捕。甲18)。 京都市児童相談所は,本件逮捕がされた当日中に,2回にわたり,同児童相談所の職員全員に対し,本件逮捕についての報告説明会を開催した。原告も,上記説明会に参加して★★★★★が逮捕されたことを知った。 原告は,上記説明会の際,「児童相談所として検証しなければならないことがある。」,「児童相談所が事件を知ったのは●●月だと言っているが, ●月には相談を受けていた。」などの発言をしたほか,●●●●●●月当時の本件児童の担当児童福祉司であった●●職員に対し,「なあ,●●さん。」などと同意を求める発言をした(乙47の2)。 イ原告は,1回目の内部通報に対する平成27年6月23日のE弁護士による回答に納得していなかったところ,★★★★★が逮捕されたことや, 京都市児童相談所の内部的な対応に不満を抱いていたことから,もう一度,1回目の内部通報と同様の内容で,京都市の公益通報処理窓口であるE弁護士に対して再度の公益通報を行うことにした。 そこで,原告は,平成27年10月6日,E弁護士に対し,電子メールで,「本年3月に公益通報した者です。前回と同じ件について,改めて公 益通報するため連絡させていただきました。面談による公益通報としたい ので,E先生のご都合の良い日時等をお教えいただけますでしょうか?」などと連絡した(甲31・9頁)。 原告は,この頃,E弁護士との面談の際に ました。面談による公益通報としたい ので,E先生のご都合の良い日時等をお教えいただけますでしょうか?」などと連絡した(甲31・9頁)。 原告は,この頃,E弁護士との面談の際に公益通報の内容について説明するため,職場の業務用パソコンから,バックアップフォルダに保存されたサーバにアクセスし,同バックアップフォルダに保存されていた本件児 童の★の児童記録データのうち,●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談内容を含む記載がされた文書ファイルの片面1ページ(乙2〔ただし,黒塗りされた状態でないもの〕)を出力し,複数枚複写した上で,そのうちの一枚を内部通報の際にE弁護士に交付することとして,そのうちの一枚(本件複写記録)を自宅に持ち出して保管した。 ウ原告は,平成27年10月9日,E弁護士の法律事務所を訪問し,E弁護士に対し,★★★★★による本件児童への★★●●の疑いについては,既に●●●●●●月の時点で京都市児童相談所に本件相談がされていたことを説明した上で,本件児童の★の児童記録データに係る文書ファイルのうち上記相談の内容が記載された該当ページの複写文書(本件複写記録と 同一内容の複写文書),本件上局報告に係る文書資料の一部(甲26・1頁,甲28・10頁)及び教育福祉委員会資料(甲28・8及び9頁)を提出した。 なお,原告による上記通報は,1回目の公益通報と同様,公益通報者保護法上の公益通報には該当しないものの,本件要綱上の内部通報として処理さ れた(2回目の内部通報)。 ⑻ 本件懲戒処分がされるまでの経緯ア平成27年10月21日,京都市会決算特別委員会で行われた総括質疑において,●●●●●●議員から,本件虐待事案に関する京都市児童相談所の対応について質疑が ⑻ 本件懲戒処分がされるまでの経緯ア平成27年10月21日,京都市会決算特別委員会で行われた総括質疑において,●●●●●●議員から,本件虐待事案に関する京都市児童相談所の対応について質疑があり,同質疑において同議員が「児童相談所の児童記録 そのものを持っている」などの発言をしたことから,●●議員が本件児童の 児童記録や同児童の個人情報を入手していたことが判明した(甲57,58,乙13)。 イ保健福祉局は,平成27年10月22日,●●議員の上記質疑での発言内容を受けて,京都市児童相談所の本件児童に係る個人情報が流出している重大な事態であると判断し,「保健福祉局“きょうかん”推進委員会児童福 祉センター児童相談所における個人情報の管理に関する調査部会」を設置し,情報の流出経路を特定するための調査を開始した(乙13)。 ウ原告は,平成27年10月28日,前記イの調査の一環として行われた全職員を対象とした事情聴取において,京都市児童相談所からの「業務上関係のない児童の児童記録を閲覧,出力したことがあるか。」との質問に対して, 「閲覧はしたことがある。」と回答したほか,「本件児童及び★の記録を閲覧,出力,複写したことはあるか。」との質問に対しても,「閲覧したことはあります。このケースには重大な関心がありますから。」と回答した(甲34)。 原告は,同月29日,京都市児童相談所から,前日の事情聴取で回答した 内容を申立書として提出するように指示を受けたことから(甲35),「何をもって『業務上関係ない』というのか分かりませんが,過去に担当していた児童の記録などを閲覧することはあります。」「当該児童の記録と★の記録を閲覧したことはあります。また,★の記録の一部を出力しました。」「出力した★の児童記 いうのか分かりませんが,過去に担当していた児童の記録などを閲覧することはあります。」「当該児童の記録と★の記録を閲覧したことはあります。また,★の記録の一部を出力しました。」「出力した★の児童記録を外部に持ち出し,他人に渡したことはあります。渡し た相手は公益通報の窓口のE弁護士です。」などと記載した申立書(乙15)を提出した。 エ保健福祉局は,平成27年11月2日までに,児童情報管理システム及びバックアップフォルダにより管理する児童記録データ等を閲覧することが可能な全ての職員130名に対して,事情聴取を実施したが(乙13・1頁), 本件児童の児童記録の流出経路を特定することはできなかった。 オ原告は,平成27年11月10日午後2時頃,保健福祉局のG部長ほか2名の職員から,本件児童及び★に係る児童記録データ等の閲覧状況などについて事情聴取を受けた。 原告は,上記事情聴取において,G部長らから,本件児童と●●★の児童記録データ等を閲覧したきっかけについて問われたところ,平成26年9月 の夜に★★★★★が京都市児童相談所に来所してD所長らと話をしているところを見て,不祥事ではないかと思ったことから,興味半分で見たなどと答えた。これを受けたG部長は,興味半分で閲覧したことに間違いないかを原告に確認したところ,「興味半分です,それは,はい。」と原告が答えたことから,適切なことではないと注意した。 また,原告は,同事情聴取において,本件児童の★の児童記録データに関して,時期は覚えていないが,同児童記録データに係る文書ファイルの片面1ページを1部出力した旨を申告し,出力した文書については,複数枚複写して,そのうちの1枚は公益通報に提出し,1枚(本件複写記録)は職場外に持ち出しており,他は機密 録データに係る文書ファイルの片面1ページを1部出力した旨を申告し,出力した文書については,複数枚複写して,そのうちの1枚は公益通報に提出し,1枚(本件複写記録)は職場外に持ち出しており,他は機密文書として廃棄した旨を述べた。これを受けて, G部長らは,原告が本件複写記録を職場外に持ち出していることを把握したことから,原告に対し,本件複写記録を返却するように指示したところ,原告はこれを了承した。(甲38,乙2)カ原告は,平成27年11月10日午後6時頃,F課長から,本件児童及び★の児童記録データ等の閲覧状況などについて事情聴取を受けた。 原告は,上記事情聴取において,F課長から,出力した本件児童の★の児童記録に係る文書を複写した複数枚の複写文書に関して,それぞれの所在等を尋ねられたことから,1部はE弁護士に手渡し,その余については,職場でいつか議論しようと思い2回目の内部通報をした際の書類一式とともに職場に置いていたが,破棄してしまった旨などを回答した。そうしたところ, F課長が「なるほど,4枚は職場で議論しようと思っておいてたけれども, で,今はそしたら1枚だけある?」などと尋ねたことから,原告は,「1部はね,僕は家に持ってますわ。家に持ってますわ。でも,もう帰ってこれ破棄します。これは。」と述べた。F課長は,原告の上記発言を受けて,原告に対して「はいはいはいはい。だからおそらく1枚はワンセットで,公益通報した資料ワンセットで置いてあると?」と確認を求め,原告は「そうです ね。」などと答えたことから,次の話題に移っていった。(甲39・3頁)キ原告は,平成27年11月10日の夜に帰宅すると,自宅に保管していた本件複写記録をシュレッダーで廃棄した。 ク原告は,平成27年11月12日午 次の話題に移っていった。(甲39・3頁)キ原告は,平成27年11月10日の夜に帰宅すると,自宅に保管していた本件複写記録をシュレッダーで廃棄した。 ク原告は,平成27年11月12日午前中に,F課長に対し,顛末書(乙6)を提出した。F課長は,同顛末書に「1枚は自宅に保管していましたが,破 棄しました。」との記載があることを確認し,原告に対し,本件複写記録を廃棄したことに関してG部長らに話をするよう伝えた(乙17)。 G部長らは,同日午後4時頃から,原告に対する事情聴取を行い,本件複写記録を廃棄した理由を確認したり,本件新年会や本件組合交渉における原告の発言内容を確認したりした。G部長が,原告に対し,本件複写記録を原 告が廃棄したことに関して,個人情報の取扱いがあまりにも無責任ではないかなどと問いただしたところ,原告は,個人情報の取扱いが無責任と言われればその通りである旨の発言をした(乙11)。 ケ原告は,平成27年11月13日,コンプライアンス推進室の服務監察係長らとの間で,E弁護士に対して行った本件各内部通報について事情聴取を 受けた(乙7)。同事情聴取において,原告は,原告が同年10月9日にE弁護士に提出した本件上局報告に係る文書には本件児童の個人情報が含まれているため,同文書を保健福祉局に返却するよう指示を受けた。 コ原告は,平成27年11月14日,F課長に対し,2回目の内部通報に際してE弁護士に提出した資料の控えとして自宅で保管していた,本件上局報 告に係る文書資料及び教育福祉委員会資料を,それぞれ返却した。 サ F課長は,平成27年11月17日,原告に対し,本件児童及び★の記録閲覧状況等について事情聴取を行った上で(乙18),同事情聴取における質問に対する回答内容を改 それぞれ返却した。 サ F課長は,平成27年11月17日,原告に対し,本件児童及び★の記録閲覧状況等について事情聴取を行った上で(乙18),同事情聴取における質問に対する回答内容を改めて申立書として作成,提出するよう指示した。 これを受けて,原告は,同月18日,F課長に対し,申立書(乙19)を提出した。 シ F課長は,平成27年11月25日,原告に対し,本件児童及び★の児童記録データ等の閲覧のきっかけ等について事情聴取を行った上で(乙20),同事情聴取において原告が答えた回答の内容について,再度,申立書にまとめて提出するように指示した。これを受けて,原告は,同月26日,申立書(乙21)を提出した。 また,原告は,同日,E弁護士から,電子メールで,2回目の内部通報についての調査結果の報告を受けた。その報告内容は,●●●●日の本件児童の★★からの相談に対する京都市児童相談所の対応について,「●●●●日に★★から上記のとおり電話があったものであるが,当該電話を受けた担当児童福祉司から速やかに上司に報告を行い,組織として情報共有した結果, 新たに★★●●をしようとしているとの訴えではなかったため,●●●●日と同様の相談であると判断した。実際の事実確認としては,前回の公益通報に係る調査報告書に記載のとおり,●●●●日の★★からの電話を受け,同日,●●●●●●●●の事実がないことを速やかに確認し,★★に対してもその旨を報告している。また,その後は,★★★★★による不適切な処遇と いう観点で調査を行うこととし,適切に対応している。」などとして,京都市児童相談所の対応に不適切な点はなかった旨の結論であった(甲27・3ないし5頁)。 ス F課長は,平成27年12月1日,原告に対し,原告による児童記録デー 適切に対応している。」などとして,京都市児童相談所の対応に不適切な点はなかった旨の結論であった(甲27・3ないし5頁)。 ス F課長は,平成27年12月1日,原告に対し,原告による児童記録データ等の閲覧が勤務時間中の行為であったか否かを質問したところ,原告は勤 務時間中の行為であることを認めたため,F課長は,原告に対し,その旨を 書面で提出するよう指示した。原告は,同日,F課長に対し,その旨を記載した申立書(乙22)を提出した。 セ京都市長は,平成27年12月4日,原告が本件各対象行為を行ったものとして,これらはいずれも懲戒事由に該当するものと判断し,原告に対し,地方公務員法29条1項に基づき,本件懲戒処分をした(甲1)。 本件懲戒処分に当たっては,①本件対象行為1については,これまで停職以上の懲戒処分とした処分例は実際に職場を離脱した事案であったことや,本件対象行為1の態様などを踏まえると,戒告処分が相当であるとされ,②本件対象行為2については,非公開情報の漏えいを生じさせる可能性が高い極めて不適切な行為であるが,過去に非公開情報がインターネットを経由し て外部から閲覧できる状態となり拡散した事案で停職処分としていることなどを踏まえると,減給処分が相当であるとされ,③本件対象行為3については,地方公務員法及び児童福祉法上の守秘義務に違反し,市政への信用を大きく失墜させる行為であるが,秘密の漏えい先が児童福祉センター職員であることや,本件対象行為3の態様などを踏まえると,免職処分は重きに失 し,停職処分が相当であるとされ,これら①ないし③の各評価に加え,自宅に持ち出した本件複写記録や漏えいした秘密が,極めて機密性,プライバシー性の高い個人情報であることなどの加重事由等が考慮された上で,停職3 分が相当であるとされ,これら①ないし③の各評価に加え,自宅に持ち出した本件複写記録や漏えいした秘密が,極めて機密性,プライバシー性の高い個人情報であることなどの加重事由等が考慮された上で,停職3日の懲戒処分とすることが決定された(乙24)。 2 争点1⑴(本件対象行為1に係る原告の行為の有無)及び争点2⑴(本件対 象行為1に係る原告の行為の懲戒事由該当性)について⑴ 前記1の認定事実⑷ケのとおり,原告は,平成26年10月1日頃以降,勤務時間中に,職場の業務用パソコンから,児童情報管理システム及びバックアップフォルダにアクセスして,自己の担当児童ではない本件児童及び●●★の児童記録データ等を繰り返し閲覧するようになり,この閲覧を通じて,●●● ●●●月に本件児童の★★から京都市児童相談所に対して本件相談があった ことを知り,同児童相談所が本件相談を受けてから約1か月半を経過しても虐待通告として受理していないことを問題視し,●●●に入所中の本件児童について関心を持つようになり,これ以降も,勤務時間中に,職場の業務用パソコンから,児童情報管理システム等にアクセスして,本件児童及び●●★の児童記録データ等の閲覧を繰り返し続けたことが認められる(以下「本件行為1」 という。)。 ⑵ ところで,京都市児童相談所においては,平成26年当時,支援する児童の情報に関しては,児童情報管理システム及びバックアップフォルダにおいてデータ管理されていたところ,被告において,これらの児童情報管理システム等にアクセスして担当外の児童の情報について閲覧することを禁止することは 指導されておらず,これを禁止する根拠規定も存在していなかった(前記1の認定事実⑵ウ)。この点について,被告は,担当外の児童の情報を閲覧してはならない 報について閲覧することを禁止することは 指導されておらず,これを禁止する根拠規定も存在していなかった(前記1の認定事実⑵ウ)。この点について,被告は,担当外の児童の情報を閲覧してはならないことは職員であれば当然であるなどと主張するが,京都市児童相談所においては,過去の児童情報を取得するために児童情報管理システムやバックアップフォルダを利用することが予定され,現にこれらを利用していた職員が 原告以外にも存在したことがうかがわれることに加え,担当者しか知り得ないパスワードの設定等の措置も講じられていなかったことからすると,同児童相談所の職員において,児童情報管理システム等を担当外の児童の情報について閲覧することが禁止されていたとは認められず,かえって,これらを閲覧することも許容されていたものと認めるのが相当である。 そして,原告が本件行為1に係る閲覧をするきっかけとなったのは,原告が平成26年10月1日に★★★★★がD所長らから事情聴取を受けている現場をたまたま目撃し,自己の職務経験に基づき,また●●●で不祥事が起きたのではないかとの関心を抱いたことによるものであることが認められる(前記1の認定事実⑷ク)。原告が児童情報管理システム等の閲覧を開始した理由が, 京都市児童相談所の職員としての職務上の関心に起因したことからすると,原 告による児童情報管理システムの閲覧行為は,児童情報管理システム等による担当外の児童の情報の閲覧が禁止されていなかった当時の同児童相談所の体制下においては,必ずしも直ちに非難されるべきものではない。また,原告の上記閲覧行為は,同日頃から長期間にわたるもので,かつ,閲覧頻度も相当程度の回数であったことが認められるものの,これによって,原告の担当児童に 関わる業務が疎か るべきものではない。また,原告の上記閲覧行為は,同日頃から長期間にわたるもので,かつ,閲覧頻度も相当程度の回数であったことが認められるものの,これによって,原告の担当児童に 関わる業務が疎かになったことはうかがわれず,かえって,原告の平成26年度の人事評価はいずれの評価項目も優良な評価がされていることからすると(甲45,46),原告の上記閲覧行為により,原告の担当業務に支障が生じるなど,京都市児童相談所の公務が害されることがあったとは認められない。 この点について,被告は,原告の児童情報管理システム等による児童記録デ ータ等の閲覧は,自己の担当外の児童について,私的な興味に基づいて行われたものであり,職務専念義務違反や勤務態度不良に当たるなどと主張する。確かに,原告は,平成27年11月10日に実施されたG部長からの事情聴取の際に,上記閲覧の理由が「興味半分」であった旨の回答をしているものの(前記1の認定事実⑻オ),原告が本件児童の児童情報データ等を閲覧するきっか けとなったのは上記の認定,説示のとおり,原告の京都市児童相談所の職員としての職務上の関心に起因したものであり,このような閲覧のきっかけに照らせば,「興味半分」との発言の趣旨は,必ずしも自己の私的な興味を優先して閲覧をしていたことを意味するものではなく,閲覧当初は本件虐待事案が生じていることを認識していなかったことを前提とした上で,自己の職務上の関心 に基づき,閲覧を開始したことを述べたものと解するのが相当である。したがって,被告の上記主張は採用できない。 ⑶ 以上によれば,本件行為1に関しては,地方公務員法35条の職務専念義務違反や,本件懲戒指針3の1⑷所定の勤務態度不良といった非違行為として評価することはできない。したがって,本件行為1は,地方 ⑶ 以上によれば,本件行為1に関しては,地方公務員法35条の職務専念義務違反や,本件懲戒指針3の1⑷所定の勤務態度不良といった非違行為として評価することはできない。したがって,本件行為1は,地方公務員法29条1項 各号のいずれの懲戒事由にも該当しない。 3 争点1⑵(本件対象行為2に係る原告の行為の有無)及び争点2⑵(本件対象行為2に係る原告の行為の懲戒事由該当性)について⑴ 前記1の認定事実⑺イ及び⑻カのとおり,原告は,平成27年10月上旬頃,E弁護士との面談において2回目の内部通報の内容を説明するため,職場の業務用パソコンから,バックアップフォルダに保存されたサーバにアク セスし,同バックアップフォルダで管理されていた本件児童の★の児童記録データのうち,●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談内容を含む記載がされた文書ファイルの片面1ページ(乙2〔ただし,黒塗りされた状態でないもの〕)を出力し,複数枚複写した上で,そのうちの1枚(本件複写記録)を自宅に持ち出して保管していたことが認められるほか,原告は,平 成27年11月10日の事情聴取の際に,F課長から,自宅で保管していた本件複写記録を返却するよう指示されたにもかかわらず,同日の夜に,自宅で本件複写記録をシュレッダーで廃棄したことが認められる(以下「本件行為2」という。)。 これに対して,原告は,本件複写記録の廃棄はF課長からの了解を得たも のであったと主張する。しかしながら,原告とF課長との平成27年11月10日の事情聴取において,出力した本件児童の★の児童記録を複写した複数枚の複写文書の各所在等を確認する原告とF課長とのやり取りの中で,原告が「一部はね,僕は家に持ってますわ。家に持ってますわ。でも,もう帰ってこれ破棄します 力した本件児童の★の児童記録を複写した複数枚の複写文書の各所在等を確認する原告とF課長とのやり取りの中で,原告が「一部はね,僕は家に持ってますわ。家に持ってますわ。でも,もう帰ってこれ破棄します。これは。」と述べたことに対して,F課長が「はいはいは いはい。」と応答してはいるものの,F課長は,同応答の直後に,「だからおそらく1枚はワンセットで,公益通報した資料ワンセットで置いてあると?」と発言し,複写文書の所在についてのこれまでの原告とのやり取りを確認し内容を整理する趣旨の発言をしていることが認められる(前記1の認定事実⑻カ)。そうすると,F課長の「はいはいはいはい。」との上記応答は,自宅に 保管している本件複写記録を帰宅後に破棄する旨の原告の直前の発言を意識 して,これに応ずる趣旨で発せられた言葉と解することは困難である。現に,原告も,その後に本件懲戒処分をされるまでの間に,本件複写記録の廃棄に関して,F課長の了解を得ていた旨の弁明を述べたことはなかったのであるから(弁論の全趣旨),原告としても,F課長との上記やり取りをもって,自宅での本件複写記録の廃棄についてF課長の了解を得られたとの認識を有するに 至ったものとは認め難い。したがって,原告の上記主張は採用できない。 なお,原告は,本件行為2のうち,本件複写記録を自宅に持ち出した行為については,その持ち出し時期が被告の主張する時期とは異なるなどと主張する。この点については,上記認定のとおり,原告が本件複写記録を自宅に持ち出した時期は,被告が本件懲戒処分当時に認識していた時期(平成27年1 月)とは大きく異なるものの,本件複写記録の自宅への持ち出し行為という,被告が本件懲戒処分の対象とした本件対象行為2と中核的な部分については基本的な事実関係 に認識していた時期(平成27年1 月)とは大きく異なるものの,本件複写記録の自宅への持ち出し行為という,被告が本件懲戒処分の対象とした本件対象行為2と中核的な部分については基本的な事実関係を何ら異にするものではないのであるから,この点をもって直ちに懲戒事由に該当しないということはできない。そこで,以下の⑵では,本件行為2を前提に,その懲戒事由該当性について検討を進めることとする。 ⑵ 本件行為2のうち本件複写記録の自宅への持ち出し行為は,非公開情報である本件複写記録を職場外に持ち出したものであって,本件管理基準7条に違反することは明らかである。また,本件行為2のうち本件複写記録を自宅で廃棄した行為は,F課長らにより,本件複写記録の情報漏えい等の事故を防ぐための適切な処分をするために同記録の返却を指示されていたにもかかわらず,そ の指示に従わず同記録の適切な処分を妨げたものであるから,本件管理基準9条に違反することは明らかである。 これに対して,原告は,本件行為2のうち,本件複写記録の自宅への持ち出し行為については,2回目の内部通報に関して明確な証拠として提示するためであり,かつ,被告による証拠隠滅を危惧して証拠として保全しておくためで あったことからすると,正当な行為として違法性が阻却されるなどと主張する。 しかしながら,原告は,平成27年10月9日のE弁護士との面談において,本件複写記録と同一内容である本件児童の★に係る複写文書を交付したのであるから,2回目の内部通報に関して明確な証拠として提示するという観点からすれば,E弁護士に交付した複写文書と同一内容の本件複写記録を原告の手元に保管しておく必要性は大きく減じたものといえる。次に,被告による証拠 隠滅を危惧して証拠として保全しておく という観点からすれば,E弁護士に交付した複写文書と同一内容の本件複写記録を原告の手元に保管しておく必要性は大きく減じたものといえる。次に,被告による証拠 隠滅を危惧して証拠として保全しておくという観点について検討すると,たとえ仮に原告が証拠の保全のために本件複写記録を手元に保管しておくとしても,敢えて職場の外部である自宅に持ち出して,セキュリティの完備されていない自宅に同記録を保管しておく必要性があったとはいい難い。したがって,本件行為2のうち本件複写記録の自宅への持ち出し行為に関しては,2回目の 内部通報を行う上で不可欠な行為であったとはいえず,また,同内部通報に付随する証拠の保全行為としての意味合いを有していたとしても,必ずしも自宅に持ち出す必要性までは認められないことからすると,その違法性が阻却されるものではない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 また,原告は,本件行為2のうち,本件複写記録の廃棄行為に関しては,F 課長の了解を得ていた以上,その違法性が阻却され,懲戒事由に該当しないなどとも主張するが,前記⑴で認定,説示したとおり,そもそも本件複写記録の廃棄に関してF課長がこれを了解していた事実を認めることができない以上,その違法性が阻却されることはない。したがって,原告の上記主張もまた採用できない。 ⑶ 以上によれば,本件行為2は,被告が定めた京都市高度情報化規程の下での本件管理基準7条及び9条に違反した非違行為と評価すべきものである。したがって,本件行為2は,少なくとも,地方公務員法29条1項1号の懲戒事由に該当するものといえる。 4 争点1⑶(本件対象行為3に係る原告の行為の有無)及び争点2⑶(本件対象 行為3に係る原告の行為の懲戒事由該当性)について 29条1項1号の懲戒事由に該当するものといえる。 4 争点1⑶(本件対象行為3に係る原告の行為の有無)及び争点2⑶(本件対象 行為3に係る原告の行為の懲戒事由該当性)について ⑴ 前記1の認定事実⑸エによれば,原告は,平成27年1月14日に職場外の店舗で開催された本件新年会において,C主席を含む合計6名ほどが座るテーブルの席で,飲酒をしながら,C主席に対し,「●●●の件はどうするのですか。」「重大な問題を放置する児相は末期的ではないですか。」などと発言し,本件虐待事案に対する京都市児童相談所の対応について話題に出し,C主席が しかるべき対応をするつもりである旨の回答をすると,「担当の●●さんは全くやる気がありませんよね。」などと,本件児童の担当児童福祉司であった●●職員を批判する発言をしたことが認められる。 また,前記1の認定事実⑹イによれば,原告は,平成27年3月10日に開催された本件組合交渉において,本来予定されていた組合要求とは無関係であ るにもかかわらず,突如,D所長に対し,「●●●のね,施設内虐待の件なんですけども,あれ,なんで1月15日から動き出したんですか。」などと発言して本件虐待事案を話題に出し,本件虐待事案に関して京都市児童相談所が対応を始めた時期に関する質問などを行い,これに対してD所長が「●●月です。 ●●日。」と回答すると,「最初にね,★★が言うてきたのって●月でしょ。」 と発言し,同発言を否定する旨の発言をするD所長に対し,「いや書いてますよ記録に。記録に書いてますよ。」,「いや書いてますよ。●●●●日の記録に。」,「読みましょうか。」などと発言し,本件組合交渉に先立ちあらかじめ出力していた●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談内容を含む記載がされた文書ファイ や書いてますよ。●●●●日の記録に。」,「読みましょうか。」などと発言し,本件組合交渉に先立ちあらかじめ出力していた●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談内容を含む記載がされた文書ファイルの片面1ページ(乙2〔ただし,黒塗りされた状 態でないもの〕)の記載内容を読み上げようとしたところ,第二児童福祉センター所長によりこれを制止されたほか,その後も,「じゃあね,●●●●●日に話を聞いたとして,そのあと●●●●してるじゃないですか。」などと同日以降の本件虐待事案に関する京都市児童相談所の対応について質問を繰り返したことが認められる(以下,本件新年会及び本件組合交渉での原告の言動と して認定した上記各行為を「本件行為3」という。)。 ⑵ 次に,本件行為3の懲戒事由該当性について検討するに,本件行為3のうち本件新年会での原告の発言は,●●●という本件虐待事案が問題となっている児童養護施設の名前を出して,本件虐待事案に関する京都市児童相談所の対応の不適切さを指摘する旨の意見を述べるものではあったが,本件児童の氏名や本件虐待事案の内容などの本件児童のプライバシーにわたる個人情報 にまで言及したものではない。また,原告の上記発言を聞いていたのは,原告と同テーブルに座っていた被告の職員のみであり,かつ,原告の発言は,本件虐待事案を了知していなかった職員にとっては,その意味内容を理解し得るに足りる具体性ないし識別性を有する情報を含むものではなかったものといえる。さらに,原告が,被告の職員以外の者の出入りがある場所である 職場外の店舗において,本件虐待事案という非常に機密性の高い話題を持ち出したことは軽率な行為であったといわざるを得ないものの,本件新年会が開催された店舗の従業員や他の客にまで原告の上記発言 職場外の店舗において,本件虐待事案という非常に機密性の高い話題を持ち出したことは軽率な行為であったといわざるを得ないものの,本件新年会が開催された店舗の従業員や他の客にまで原告の上記発言が聞こえるなどといった状況であったとは認められず,本件全証拠を検討しても,原告の本件新年会での発言をもって,本件虐待事案に関わる本件児童の個人情報が外部に 漏えいしたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件新年会での原告の発言をもって,秘密の漏えいがあったとはいえない。 また,本件行為3のうち本件組合交渉での原告の発言も,●●●という本件虐待事案が問題となっている児童養護施設の名前を出すほか,施設内虐待という不祥事の概要を明らかにするほか,本件児童の★★から本件相談があ った時期について言及したものではあるものの,本件児童の氏名や,本件児童の★★からの本件相談の具体的な内容などに言及したものではない。また,原告は,本件組合交渉において,前記⑴のとおり,繰り返し本件虐待事案に関わる質問をD所長に対して行っているが,本件組合交渉の参加者のうち本件虐待事案を了知していなかった職員において,原告の上記発言によって本 件虐待事案を了知するに至った者はいない。この点に関して,確かに,原告 がD所長に対してあらかじめ出力していた児童記録データに係る文書を念頭に「いや書いてますよ記録に。記録に書いてますよ。」「読みましょうか。」などと,あらかじめ出力していた●●●●●●●●●日の本件児童の★★からの相談内容を含む記載がされた文書ファイルの片面1ページ(乙2〔ただし,黒塗りされた状態でないもの〕)の記載内容を読み上げようとした行為は, 本件児童の個人情報を外部に明らかにしようとしたものであって,第二児童福祉センター所 ファイルの片面1ページ(乙2〔ただし,黒塗りされた状態でないもの〕)の記載内容を読み上げようとした行為は, 本件児童の個人情報を外部に明らかにしようとしたものであって,第二児童福祉センター所長がこれを制止したことからも明らかなように,個人情報についての問題意識を欠く行為ではあったものの,現実には原告が上記記載内容を読み上げるには至らなかったのであるから,原告の上記言動をもって,秘密の漏えいがあったとまではいえない。 ⑶ 以上によれば,本件行為3に関しては,地方公務員法34条及び児童福祉法61条の秘密の漏えいに当たる非違行為として評価することはできない。したがって,本件行為3は,地方公務員法29条1項各号のいずれの懲戒事由にも該当しない。 5 争点3(本件懲戒処分に裁量権の逸脱又は濫用の違法があるか否か)について ⑴ 以上のとおり,原告において,懲戒事由に該当する非違行為として存在するのは,本件行為2に限られることになる。 ここで,地方公務員につき地方公務員法29条1項各号の懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うとしていかなる処分を選ぶかは,平素から庁内の事情に通暁し,部下職員の指揮監督の衝にあたる懲戒権者 の裁量に任されているものと解すべきである。すなわち,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべき かを決定する裁量権を有しており,裁判所が上記処分の適否を審査するに当た っては,懲戒権者と同一の立場に立って懲戒 すべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべき かを決定する裁量権を有しており,裁判所が上記処分の適否を審査するに当た っては,懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し,その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく,懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を逸脱又は濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである(最高裁昭和47年(行 ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁参照)。 ⑵ そこで,懲戒事由に該当する本件行為2を行った原告に対して停職3日を内容とする本件懲戒処分を行うことが,社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権を逸脱又は濫用した違法があるものといえるか否かについて,以下検討する。 アまず,本件行為2の原因,動機,性質を検討するに,まず,本件行為2のうち本件複写記録の持ち出し行為については,原告は,1回目の内部通報の結果を受けて,その調査結果に個人的に不満を抱いたため,2回目の内部通報を行うこととし,その際にE弁護士に渡す本件児童の★の児童記録に係る複写文書1枚とともに,本件複写記録を自宅に保管したものといえる。この ような経緯を経て行われた本件複写記録の持ち出し行為は,いわゆる公益通報を目的として行った2回目の内部通報に付随する形で行われたものであって,少なくとも原告にとっては,重要な証拠を手元に置いておくという証拠保全ないし自己防衛という重要な目的を有していたものであり,このほかに,本件複写記録に係る個人情報を外部に流出することなどの不当な動機, 目的をもって行われた行為であるとまでは認められ う証拠保全ないし自己防衛という重要な目的を有していたものであり,このほかに,本件複写記録に係る個人情報を外部に流出することなどの不当な動機, 目的をもって行われた行為であるとまでは認められないのであるから,その原因や動機において,強く非難すべき点は見出し難い。 また,本件行為2のうち本件複写記録の自宅での廃棄行為については,F課長からの返却の指示があったにもかかわらず,原告がこれに従わず,安易に本件複写記録を自宅で廃棄したことそれ自体は,今後の情報漏えいの可能 性が万に一つないようにするために持ち出した現物を返却させるという被 告の正当な目的の実現を妨げた点からも,大いに非難されるべきものである。しかしながら,原告は,上記廃棄行為の翌日に自ら自宅で本件複写記録を廃棄したことを申告しているのであって,原告による上記廃棄行為について,証拠隠滅を図るなどの不当な動機や目的があったとは考え難い。そうすると,原告による本件複写記録の自宅での廃棄行為は,非常に軽率な行為と して大いに非難されるべきものではあるが,その動機や目的において,殊更に悪質性が高いものであったとまではいえない。 イ次に,本件行為2の性質,態様についてみると,本件行為2のうち本件複写記録の持ち出し行為については,原告が持ち出した本件児童の個人情報としては,本件複写記録の1枚のみであり,本件全証拠を検討しても,原告に おいて,本件児童の児童情報データ等のうち,他の文書ファイルについて出力や持ち出しを行った事実は認められない。そうすると,原告による本件複写記録の持ち出し行為は,飽くまで,本件虐待事案に対する原告の職務上の関心に起因して行われた性質の行為である。そして,原告は,本件複写記録を自宅で保管していたにすぎず,その保管状況は必 による本件複写記録の持ち出し行為は,飽くまで,本件虐待事案に対する原告の職務上の関心に起因して行われた性質の行為である。そして,原告は,本件複写記録を自宅で保管していたにすぎず,その保管状況は必ずしも明らかではないも のの,自宅で保管していた本件複写記録が外部に流出した事実は認められず,同記録が外部の目に触れる状況ではなかったものと考えられることからすると,必ずしも情報漏えいの危険性の高い不適切な態様での保管状況であったとまではいい難い。 また,本件行為2のうち本件複写記録の自宅での廃棄行為については,本 件複写記録を廃棄したことそれ自体は前記アのとおり大いに非難されてしかるべき行為ではあるものの,その廃棄の態様は,自宅でシュレッダーに掛けて裁断して行ったというものである。そうすると,本件複写記録に記載された情報を外部に容易に認識し得ないような方法で廃棄したものであって,この点については酌むべき事情であるといえる。なお,被告は,原告が本件 複写記録を溶解処分せずにシュレッダーで廃棄したことをも問題視するよ うであるが,京都市児童相談所の職場においても,職員によっては,機密性の高いとされる文書をシュレッダーで廃棄することがあり得る状況であったことがうかがえることからすると,原告が本件複写記録を返却せずに被告の職場での溶解処理ができなかったということ以上に,本件複写記録をシュレッダーで廃棄したことそれ自体に,大きく非難すべき点はない。 ウさらに,本件行為2の結果,影響についてみるに,原告が自宅に持ち出した本件複写記録はシュレッダーで廃棄されており,結果としては,同記録が一般市民の目にする形で外部に流出することのないまま処分されたものである。そして,被告の保健福祉局の調査の結果によっても,● 出した本件複写記録はシュレッダーで廃棄されており,結果としては,同記録が一般市民の目にする形で外部に流出することのないまま処分されたものである。そして,被告の保健福祉局の調査の結果によっても,●●議員による本件児童記録の情報の入手経路は明らかになっておらず,本件全証拠を検討 しても,原告が自宅に持ち出した本件複写記録によって,本件児童の個人情報が●●議員に流出したことを認めるに足りる証拠はない。この点に関して,本件児童からは,原告による本件行為2を含む各行為について京都市児童相談所に対する信頼を損ねるものである旨の強い非難が寄せられていること(乙38)は十分に考慮すべきであるとしても,原告による本件行為2 によって,被告の児童福祉行政に対する信頼が回復不能なほどに大きく損なわれたとまでは認めることはできない。 エ本件行為2の前後における態度を見ると,原告において,京都市児童相談所が取り扱う児童記録データ等が極めて高度なプライバシー情報を含んでいることの畏れや問題意識があるのかについて疑問なしとしないが,原告 は,本件複写記録を廃棄した当初から,本件複写記録を廃棄したことそれ自体の不適切性については,G部長らから指摘を受けると,軽率な行為であったことを素直に認めていたのであり,一定の反省の態度を見て取ることができる。 オさらに,原告の懲戒処分歴等についてみるに,原告にはこれまで懲戒処分 歴は存在せず,かえって,原告は,FA制度で京都市児童相談所支援課に配 属となった平成26年度の人事評価においては,いずれの評価項目も良好な評価を得ており,かつ,日頃の勤務態度についても,児童に対し得て熱心に対応しており,業務面においては特段の問題はないとの評価を得ていたものである。これに加え,原告は,本件 ,いずれの評価項目も良好な評価を得ており,かつ,日頃の勤務態度についても,児童に対し得て熱心に対応しており,業務面においては特段の問題はないとの評価を得ていたものである。これに加え,原告は,本件行為2についても,基本的には,京都市児童相談所の職員としての職責を果たすべきとの自らの有する職業倫理に 基づいて行ったものであるから,大いに軽率な面があったことを踏まえてもなお,上記の原告の懲戒処分歴や勤務態度といった事情は,酌むべき事情として考慮されるべきものといえる。 ⑶ 以上に加え,前記1で認定した事実経緯に照らすと,本件懲戒処分は,原告が主張,供述するような「結論ありきで行われた」あるいは「内部告発に対す る報復」といった不当な目的ないし動機をもってされた処分であるとの評価はできないものの,本件懲戒指針では,情報セキュリティーポリシー違反の非違行為については戒告から免職まで処分量定の幅は広く規定されている中で,過去に非公開情報がインターネットを経由して外部から閲覧できる状態となり当該情報の拡散を招いた職員が停職10日の懲戒処分とされた懲戒事例(乙3 3)との比較において,本件行為2を行った原告に対する懲戒処分として,本件複写記録の情報が拡散するまでには至らなかったにもかかわらず,停職3日とする本件懲戒処分を選択することは,重きに失するものといわざるを得ない。 ⑷ 以上によれば,本件懲戒処分は,社会観念上著しく妥当を欠いて,その裁量 権を逸脱又は濫用した違法がある。 第5 結論以上の次第であり,本件懲戒処分の取消しを求める原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官藤田昌宏 主文 取消しを求める原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 理由 京都地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官藤田昌宏 裁判官上田瞳 裁判官伊藤渉

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