平成16(行ウ)79 行政文書不開示処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年3月28日 名古屋地方裁判所 情報公開
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判決文本文20,003 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 被告名古屋矯正管区長が,原告に対し,(1) 平成16年11月12日付けでした別紙文書目録1記載の行政文書不開示決定処分(名管総発第222号),(2) 平成16年12月10日付けでした別紙文書目録2記載の行政文書不開示決定処分(名管総発第238号)をいずれも取り消す。 2 被告国は,原告に対し,30万円及びこれに対する平成17年1月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下,条文を示す場合には,「法」といい,その法律名を示す場合には「情報公開法」という。)に基づいて,行政文書の開示を請求したところ,被告名古屋矯正管区長(以下「被告矯正管区長」という。)から,当該文書(ただし,一部の文書を除く。)はその存否を答えるだけで,不開示とすべき個人を識別することができる情報が開示されるのと同様の結果が生じることを理由とする不開示決定を受けた(上記一部の文書についても,後に不開示決定がなされている。)ため,その取消しを求めるとともに,被告国に対し,岐阜刑務所長が原告に関する資料を医療法人の代理人に交付したことが違法であると主張して,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料等の支払を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実,証拠ないし弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告は,平成11年2月18日,大阪地方裁判所において,○,○及び○により○の刑の言渡しを受け,平成14年12月 し弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告は,平成11年2月18日,大阪地方裁判所において,○,○及び○により○の刑の言渡しを受け,平成14年12月21日に同判決が確定し,平成○年○月○日,大阪拘置所から岐阜刑務所へ移送され,現在,同所において懲役刑執行中の受刑者である。 イ名古屋矯正管区は,法務省設置法16条2項,法務省組織令65条,66条1項・2項に基づき,岐阜県等の地区について,法務省の所掌事務のうち刑務所等の運営管理に関する事務を分掌しており,被告矯正管区長は,矯正管区組織規則1条に基づき,公文書の保存に関する事務をつかさどっていることから,法2条1項5号所定の「行政機関」に当たる(国家行政組織法8条の2)。 (2) 原告に対する外医治療岐阜刑務所長(以下「所長」という。)は,平成15年7月15日,原告の腰痛等の治療に関して,外医であるP1総合病院(以下「本件病院」といい,同病院を開設する法人を「本件医療法人」という。)整形外科において,原告を受診させた。 (3) 原告による文書開示請求と被告矯正管区長による不開示決定ア原告は,平成16年9月8日及び同年10月27日,法4条1項に基づき,被告矯正管区長に対し,次のとおり,行政文書の開示を請求した(以下,両者の請求を併せて「本件各請求」といい,9月8日の請求の対象となった文書を「本件第1文書」,10月27日の請求のそれを「本件第2文書」という。乙1,2)。 (ア) 本件第1文書① 平成15年3月20日から平成16年9月6日までの診療記録② 検査資料等(甲)平成12年8月10日撮影のMRIフィルム(乙)平成15年 ① 平成15年3月20日から平成16年9月6日までの診療記録② 検査資料等(甲)平成12年8月10日撮影のMRIフィルム(乙)平成15年1月14日撮影のMRIフィルム(丙)平成16年3月24日撮影のMRIフィルム(丁)平成16年4月20日撮影のX線正面フィルム(戊)平成15年3月20日撮影のX線2方向フィルム(己)前記(甲)ないし(丙)の読影検査所見の文書(イ) 本件第2文書① 平成16年9月6日から平成16年10月25日までの診療記録② 検査資料等(甲)平成16年8月24日撮影の2方向X線フィルムのコピーフィルム(乙)平成16年10月6日提出の適切な治療実施願い出の書面(丙)平成16年10月7日撮影の3方向X線撮影のコピーフィルム(丁)前記(丙)に対する読影検査所見書(戊)前記(甲)の読影検査所見書(己)平成16年10月5日の採血検査及びその検査結果イ被告矯正管区長による不開示決定被告矯正管区長は,本件各請求に対し,開示請求に係る当該文書は,その存否を答えるだけで,法5条1号の規定により不開示とすべき個人を識別することができる情報が開示されるのと同様の結果が生じることを理由として,平成16年11月12日付け名管総発第222号をもって別紙文書目録1記載の行政文書(本件第1文書のうち①及び②(丙)を除いたもの)につき不開示決定を行い,同年12月10日付け名管総発第238号をもって別紙文書目録2記載の行政文書(本件第2文書のうち②(乙)及び②(戊)を除いたもの)に 第1文書のうち①及び②(丙)を除いたもの)につき不開示決定を行い,同年12月10日付け名管総発第238号をもって別紙文書目録2記載の行政文書(本件第2文書のうち②(乙)及び②(戊)を除いたもの)につき不開示決定を行い(以下,両不開示決定を併せて「本件各決定」といい,不開示の対象となった文書を「本件各文書」という。乙3,4),いずれも,そのころ,原告に通知された。 また,被告矯正管区長は,同日付け求補正書を原告に送付して,本件第2文書のうち②(乙)について,同月21日までに補正するよう求めた。 ウ原告は,平成16年12月22日,名古屋地方裁判所に対し,本件各決定の取消し等を求めて,本件訴えを提起した。 エその後,被告矯正管区長は,平成17年1月25日付け名管総発15号ないし17号をもって,次のとおり,追加の不開示決定を行い(なお,これらの決定によって,開示請求されたすべて文書について,不開示決定がなされたことになる。乙5ないし7),そのころ,原告に通知された。 (ア) 本件第1文書中の①及び②(丙)理由本件各決定と同じ。 (イ) 本件第2文書中の②(戊)理由本件各決定と同じ(ウ) 本件第2文書中の②(乙)理由文書の特定について相当の期間を定めて補正を求めたが,補正されなかったため。 (4) 原告による刑の執行停止申立てとその結果ア原告は,平成15年8月6日,岐阜地方検察庁検察官に対し,「自由刑執行停止の申立書」と題する書面を提出して,腰痛等の治療のため,自分の選んだ病院にて手術を受けられるよう,刑の執行を一時停止してほしい旨を申し立てた。 イ 方検察庁検察官に対し,「自由刑執行停止の申立書」と題する書面を提出して,腰痛等の治療のため,自分の選んだ病院にて手術を受けられるよう,刑の執行を一時停止してほしい旨を申し立てた。 イ岐阜地方検察庁検察官は,同年10月7日,上記申立ては理由が認められないので,刑の執行を停止しない旨決定し,原告に対し,その旨告知した。 ウ原告は,同月10日,大阪地方裁判所に対し,岐阜地方検察庁検察官のなした自由刑の執行停止申請却下処分に対して異議を申し立てたところ,同裁判所は,平成16年3月15日,原告の刑の執行に関する異議申立てを棄却するとの決定をした。これに対し,原告は,同月19日,大阪高等裁判所に対し,即時抗告を申し立てたが,同裁判所は,同月25日,同抗告を棄却した。さらに,原告は,同月31日,最高裁判所に対して特別抗告を申し立てたが,同裁判所は,同年5月17日,同抗告を棄却した。 (5) 原告による損害賠償請求の訴えの提起ア原告による訴えの提起その1(ア) 原告は,平成16年○月○日,名古屋地方裁判所に対し,国,元岐阜刑務所医務課医師,本件医療法人及び元本件医療法人の医師を被告として,原告が岐阜地方検察庁検察官あてに申し立てた刑の執行停止に関し,被告らが同検察官あてに虚偽の病状等を報告したことは不法行為に当たるとして,損害賠償請求事件(平成16年(ワ)第◇号事件)を提起したところ,同裁判所は,同年○月○日,同事件を岐阜地方裁判所に移送する旨決定し,同事件は同裁判所に係属した(平成16年(ワ)第×号損害賠償請求事件。以下,移送前を通じて「×号事件」という。)。 (イ) 岐阜地方裁判所は,同年10月18日,×号事件の第1回口頭弁論期日を開き,即日,弁論を終結した上,同月28日,国 害賠償請求事件。以下,移送前を通じて「×号事件」という。)。 (イ) 岐阜地方裁判所は,同年10月18日,×号事件の第1回口頭弁論期日を開き,即日,弁論を終結した上,同月28日,国に対する訴えは民事訴訟法第142条により不適法であるとして却下し,本件医療法人等に対する請求は理由がないとして棄却する旨の判決を言い渡した。 (ウ) 原告は,同年○月○日,上記判決のうち,本件医療法人等に関する部分については控訴したが,国に関する部分については控訴せず,同年11月15日,確定した。 イ原告による訴えの提起その2(ア) 原告は,さらに,平成16年○月○日,岐阜地方裁判所に対し,本件医療法人及び本件病院の病院長を被告として,本件医療法人等が原告を直接診断しないで初期の診断等と異なる内容の診断(誤診)を行い,検査所見を岐阜刑務所に交付し,同所の原告に対する弾圧等に加担し,原告に係る検査記録等を原告に交付しなかったなどとして,損害賠償請求事件(平成16年(ワ)第◎号事件。以下「◎号事件」という。)を提起した。 (イ) 本件医療法人等は,岐阜地方裁判所に対し,同年10月13日付け答弁書を提出し,その中で,本件医療法人は,原告との間に診療契約を締結したものではなく,監獄法令による所長からの依頼に基づき,同刑務所医師の補助として原告の診療を行ったものであることから,仮に何らかの損害が生じたとしても,責任を負うことはないこと,×号事件と二重起訴の関係にあること及び既に原告に係る診療記録は全て交付していることから訴えの却下を求める旨を主張した。 (ウ) 本件医療法人等は,同年12月3日ころ,岐阜地方裁判所に対し,準備書面及び以下の書証を提出した。 a 平成16年4月26 から訴えの却下を求める旨を主張した。 (ウ) 本件医療法人等は,同年12月3日ころ,岐阜地方裁判所に対し,準備書面及び以下の書証を提出した。 a 平成16年4月26日付け「訴状」(第×号事件)b 平成16年6月9日付け「訂正及び補正申立書」(第×号事件)c 平成16年10月14日付け「表示変更の申立書」(第×号事件)d 平成16年7月20日付け「第5準備書面」(岐阜地方裁判所平成15年(ワ)第△・▽号事件)e 平成16年9月30日付け「意見書」(同裁判所平成15年(ワ)第△・▽号事件)f 平成16年9月30日付け「意見書」(同裁判所平成16年(モ)第□号文書提出命令申立事件)g 平成15年8月8日付け照会文書h 平成15年8月19日付け回答文書i 平成15年9月2日付け照会文書j 平成15年10月1日付け回答文書k 平成16年3月15日付け「決定(謄本)」(大阪地方裁判所平成15年(む)第1572号)l 平成16年3月25日付け「決定(謄本)」(大阪高等裁判所平成16年(く)第102号)m 平成16年5月17日付け「決定(謄本)」(最高裁判所平成16年(し)第97号)(エ) これに先立ち,所長は,上記dないしmの資料(以下「本件資料」という。)を本件医療法人の代理人に交付していた(以下「本件資料提供行為」という。)。 2 本件の争点(1) 本件各決定は違法か。具体的には,ア仮に,本件各文書が存在していれば,そこに記載された情報は法5条1号の不開示 以下「本件資料提供行為」という。)。 2 本件の争点(1) 本件各決定は違法か。具体的には,ア仮に,本件各文書が存在していれば,そこに記載された情報は法5条1号の不開示情報に該当するか。自己情報であれば,例外的に不開示情報に該当しないか。 イ本件各文書は,その存否を答えるだけで,法5条1号の不開示情報を開示することになるものであるか。 (2) 本件資料提供行為は違法か。 (3) 損害額 3 当事者の主張の要旨(1) 本件各決定は違法か。 (被告矯正管区長)本件各文書に記載された情報は,以下のとおり,その存否を答えるだけで,情報公開法の定める不開示情報を開示することになるから,これを明らかにすることなくなされた本件各決定は,適法である。 ア法5条1号の不開示情報該当性(ア) 本件各文書は,原告の診療記録の他,MRIフィルム,X線フィルム及びこれらの読影所見,治療実施願い出についての書面である。このような情報は,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものであるから,法5条1号に該当する。 (イ) 情報公開法に基づく情報開示請求権は,当該法によって創設された権利であるから,その具体的な内容,範囲等は,根拠法規である情報公開法の定めるところによって規定されるところ,法5条1号本文前段は,個人識別情報を不開示とした上で,個人の権利利益を侵害しないか,又は侵害が受忍限度内にとどまるので不開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示による公益が優越するため開示すべきものを同号ただし書で限定列挙して除外する個人識別情報型を採用した。 したがって,法5条1号本文前段は,特 及び個人の権利利益を侵害しても開示による公益が優越するため開示すべきものを同号ただし書で限定列挙して除外する個人識別情報型を採用した。 したがって,法5条1号本文前段は,特定の個人の権利利益が害されること又はそのおそれがあることを不開示の要件として規定しておらず,その該当性の判断に当たっては,当該情報が個人に関する情報であるか否か,個人を識別できる情報であるか否かによってのみ判断されるのであって,これは開示請求者がだれであるかによって左右されるものではないし,開示によって当該個人の権利利益が害されるか否かを考慮する余地もない。 そうすると,情報公開法は,個人情報の本人開示請求であっても,個人に関する情報であって,特定の個人を識別できる情報であれば,法5条1号本文前段に該当するものとして,不開示とする立法政策を採っていると解すべきである。 このことは,法5条1号ただし書に自己情報の開示が例外事由として定められておらず,本人開示請求を認めるのであれば定められていてしかるべき,本人確認の方法やセンシティブ情報の開示の問題に関する規定等が存在しないこと,情報公開法は,同一の行政情報を不特定多数の者に公開することを情報公開制度の前提としており(法1条参照),個人の権利利益の保護のために,自己情報をその者にだけ開示することを予定していないこと,法5条各号(1号本文前段及び2号ロを除く。)は,当初の要綱案では「開示することにより」一定の支障が生ずるおそれがあることを不開示事由としていたが,その後の立法の過程で,何人にも当該情報を明らかにできない趣旨を明確にするために,「公にすることにより」の文言に改められた経緯があること,情報公開法の立案の基礎となった行政改革委員会の内閣総理大臣に対する平成8年12月16日 にも当該情報を明らかにできない趣旨を明確にするために,「公にすることにより」の文言に改められた経緯があること,情報公開法の立案の基礎となった行政改革委員会の内閣総理大臣に対する平成8年12月16日付け「情報公開法制の確立に関する意見」は,情報公開制度が個人情報保護制度と異なる趣旨,目的を持った制度であることを前提として,個人情報の本人開示が個人情報保護制度の問題であるとして,情報公開制度においては本人開示を否定する立場を取っていることなどからも明らかである。 なお,原告の援用する大阪高等裁判所平成8年9月27日判決及びこれを是認した最高裁判所平成13年12月18日第三小法廷判決・民集55巻7号1603頁は,兵庫県情報公開条例に関するものであって,情報公開法とは条文の文言が異なるから,本件に妥当するものではない。 そうすると,仮に,本件各文書に記載された情報が原告に関する個人情報であるとしても,不開示情報に該当しないと解することはできない。 イ法8条該当性一般に,行政文書の開示請求がされた場合,行政機関の長は,開示請求に係る行政文書が存在していれば,当該文書に法5条各号に定める不開示情報が記録されているか否かを検討した上で,開示決定又は不開示決定を行い,開示請求に係る行政文書が存在していなければ,不存在を理由とする不開示決定を行うことになるが,特定個人の病歴に関する行政文書が開示請求の対象とされた場合のように,開示請求に係る行政文書の存否を明らかにするだけで,法5条各号の不開示情報を開示することとなる場合がある。そのため,法8条は,「開示請求に対し,当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは,行政機関の長は の不開示情報を開示することとなる場合がある。そのため,法8条は,「開示請求に対し,当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは,行政機関の長は,当該行政文書の存在を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる。」と規定し,行政文書の存否自体を明確にしないで拒否処分(いわゆる存否応答拒否)をなし得ることを規定している。 本件各文書は,前記のとおり,原告の診療記録の他,MRIフィルム,X線フィルム及びこれらの読影所見,治療実施願い出についての書面であり,その存否を明らかにすると,原告の病歴のほか,原告が岐阜刑務所において,診療を受けたかどうか,MRIやX線写真等を撮影されたかどうか,治療の願い出をしたかどうかという情報が開示されることになる。 したがって,本件各文書は,法8条の要件を充足する。 (原告)被告矯正管区長の主張は争う。同被告は,本件各文書を不開示とした理由として,個人のプライバシーを侵害するといいながら,後記のとおり,民間人にこれを公開するという矛盾を犯している。本件各決定は,本件各文書を開示すると,行刑当局の原告に対するこれまでの治療行為が医療過誤に当たる事実が判明するため,これを阻止するために行われたもので,違法である。 ア法5条1号非該当性(ア) 法5条1号は,個人のプライバシー保護を目的とした規定であり,行政文書に個人の氏名が記載されている場合に,これを不開示事由としたのも,個人のプライバシー保護のためである。 しかし,公務員である担当医師等の氏名や申請者本人の個人名が記載されていても,一般的に,その開示によって個人のプライバシーを侵害することはな のプライバシー保護のためである。 しかし,公務員である担当医師等の氏名や申請者本人の個人名が記載されていても,一般的に,その開示によって個人のプライバシーを侵害することはない。本件各文書に,個人名が記載されているのは,まさしく個人を特定するために作成された診療記録,X線写真の氏名,MRIフィルムの氏名,病院名,撮影年月日等であるから,これらが公開されたからといって,何人にも不利益が及ぶわけではない。このことは,大阪高等裁判所平成8年9月27日判決において,個人のプライバシーであっても,当該個人が公開を請求した場合に公開を拒むのは違法であるとされていることからも明らかである。 仮に,その個人のプライバシーを侵害することがあったとしても,法6条1号に基づき,当該部分を除いた部分を開示すべきである。 (イ) さらに,本件各文書に記載された情報が法5条1号に該当するとしても,一般的には社会慣例として公開され,また人の健康に関するものであるから,同号ただし書イ及びロに該当する。 イ法8条非該当性被告矯正管区長は,本件各決定は法8条に基づくと主張しているが,本件はこれに該当しない。同被告は,本件各決定において,不開示理由を明示し,本件各文書も明示している。 (2) 本件資料提供行為は違法か。 (原告)ア被告矯正管区長は,本件各決定においては,本件各文書が個人を特定する情報を記載しているとして不開示にしておきながら,同じ名古屋矯正管区の所長は,◎号事件の訴訟代理人に対して,原告の身上等の個人を特定し得る氏名,生年月日,罪名,刑名,刑期等が記載されている本件資料を公然とファックス送信する方法で開示,交付して,原告の人格に不 管区の所長は,◎号事件の訴訟代理人に対して,原告の身上等の個人を特定し得る氏名,生年月日,罪名,刑名,刑期等が記載されている本件資料を公然とファックス送信する方法で開示,交付して,原告の人格に不当な弾圧を加えている。 イ本件資料提供行為は,原告の提起した前掲各訴えにおいて,被告とされた国と本件医療法人等が口裏合わせをするために行われたものであり,国家公務員法100条1項に明白に違反し,民法709条及び法5条1号にも明白に反する。 ウ被告国は,民事訴訟法91条を援用するが,本件医療法人等が事件名や事件番号を知らないのに,訴訟記録を閲覧できるはずがなく,また,当事者でなければ,本件資料そのものを入手することはできない。 仮に,本件資料提供行為が情報提供という趣旨であれば,原告の身上部分を抹消して提供すればよいはずである。 (被告国)原告の主張は争う。 ア国家賠償法1条1項の「違法」とは,公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することをいう(最高裁判所昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁)。したがって,当該公務員の職務行為を同法上違法というには,それによって権利侵害があったというだけではなく,損害賠償を求めている国民との関係で当該公務員が職務上の法的義務を負担し,かつ,当該行為がその職務上の法的義務に違反してされた場合でなければならない(最高裁判所昭和61年2月27日第一小法廷判決・民集40巻1号124頁等)。 イ前記のとおり,所長は,外医治療として,本件病院の整形外科医に原告の診療を行わせたところ,原告は,本件医療法人等を被告とし,×号事件及び◎号事件を提起し,その中で,請求の原因と )。 イ前記のとおり,所長は,外医治療として,本件病院の整形外科医に原告の診療を行わせたところ,原告は,本件医療法人等を被告とし,×号事件及び◎号事件を提起し,その中で,請求の原因として,本件医療法人等が,検察官からの原告の病状等の照会に対して,虚偽の報告を行ったため刑の執行停止申立てが認められなかったと主張した。 ところで,外医治療とは,刑務所長が治療のために特に必要ありと認めるときに,監獄法施行規則第117条に基づいて行うものであるが,この場合,外医治療先の医師は,国の行う治療行為を補助するにすぎないため,治療行為の主体たる国は,補助者である外医治療先に,補助させるために必要な情報を提供することになる。したがって,受刑者が外医治療先による治療行為が不適切であることを理由として訴訟を提起する場合,本来,被告とされるべきは国であるが,外医治療先が訴えられた場合には,応訴する必要が生ずるところ,この応訴行為も,医療行為の補助たる性質を有するから,国としては,外医治療先が訴訟活動を行うに当たり,必要な情報を提供しなければならない。 かかる観点から,所長は,×号事件及び◎事件における本件医療法人等の訴訟活動のため,必要な範囲の情報を提供すべく,本件資料を本件医療法人の代理人に提供したものであり,情報公開法に基づいて本件資料を開示したものではないから,所長による本件資料提供行為に何ら職務上の義務違反行為は存しない。したがって,国家賠償法1条1項にいう「違法」は認められないものである。 ウ原告は,本件資料提供行為は国家公務員法100条1項に違反する旨主張するが,同条にいう「秘密」とは,非公知の事実であって実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいう(最高裁判所昭和5 は,本件資料提供行為は国家公務員法100条1項に違反する旨主張するが,同条にいう「秘密」とは,非公知の事実であって実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいう(最高裁判所昭和53年5月31日第一小法廷決定・刑集32巻3号457頁)ところ,本件資料は,いずれも被告国と原告との間で係属する他の訴訟において,既に証拠として提出されているものであるから,原則としてだれでも閲覧請求でき(民事訴訟法91条1項),当事者以外でも利害関係を疎明して謄写請求もできる(同条3項)。したがって,本件資料は,何人でも接することのできる情報に当たるから,本件資料に示された情報は,到底「非公知」の事実であるとはいえず,実質的にもそれを秘密として保護するに値するものではないから,国家公務員法100条1項にいう「秘密」に該当しない。 したがって,所長の本件資料提供行為は,国家公務員法100条1項に違反するものではなく,手段としても相当であったから,原告の主張は失当である。 (3) 損害額(原告)原告は,本件資料提供行為によって,多大な精神的苦痛を被り,かつ,法による正義の不存在を思うようになった。このような原告の精神的苦痛を慰謝するには,30万円の慰謝料の支払が相当である。 (被告国)原告の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件各決定は違法か)について(1) 法5条1号の不開示情報該当性の有無について法5条1号本文前段は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することが む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」を不開示事由として定めている。 この規定は,プライバシーを保護する趣旨を含むものであるが,プライバシーの具体的内容が必ずしも明確でないことから,より客観的な概念である個人識別情報をもって不開示事由としたものであるところ,「個人に関する情報」には,事業を営む個人の当該事業に関する情報が除外されている(これは2号の定める法人等情報として扱われる。)以外には,文言上何らの限定がないことからすれば,同情報は,個人の人格や私生活に関する情報に限られず,その個人との関連性を有するすべての情報を意味すると解される。したがって,同情報には,条文に例示されている「氏名,生年月日」等,それ自体として個人を識別し得る情報のみならず,個人の病歴等に関する情報など,一般人を基準として,他の情報と照合することにより,特定の個人を識別し得る情報も含まれることが明らかである。 しかるところ,前記前提事実(3)及び弁論の全趣旨によれば,本件各請求に係る請求書においては,本件各文書がだれの診療等に係るものかが明記されていないが,診療記録及びこれに附属するMRIフィルム,X線フィルム,これらの読影所見についての書面及び診療願い出の書面には,通常,診療を受けた者や診療を申し出た者がだれであるか等の情報が含まれており,診療記録に付属するMRIフィルム,X線フィルムについても,撮影対象がだれであるかの記録が付記されているから,本件各文書に記載された情報は,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものとして,法5条 MRIフィルム,X線フィルムについても,撮影対象がだれであるかの記録が付記されているから,本件各文書に記載された情報は,個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるものとして,法5条1号本文所定の個人識別情報に該当することが明らかである。 この点について,原告は,本件各文書に個人のプライバシーを侵害する情報が含まれているとしても,法6条の定める部分開示を行うべきであると主張するが,上記のとおり,法5条1項本文は,個人を識別し得る情報一般を不開示事由としているところ,本件各文書は,その性格上,全体が不可分一体となって特定の者の診療等や願い出に関する情報を示しており,不開示情報とそれ以外の情報を容易に区分できないと認められるから,原告の上記主張は採用できない。 また,原告は,本件各文書に記載された情報が法5条1号に該当するとしても,同号ただし書イ及びロによって開示すべきである旨主張するが,特定人の診療等に関する情報が,法令又は慣行によって公にされているとか,人の生命等を保護するために公にすることが必要であると認めることはできない。 (2) 本人による自己情報の開示請求の可否について次に,請求者本人の自己情報については,個人識別情報に該当しても,開示請求権を肯定できるかについて,検討する。 憲法21条は,国民の表現の自由を保障しているが,その実効性を担保するためには,その基礎となるべき「知る権利」が保障されなければならないと考えられる。しかしながら,憲法上の「知る権利」は,それ自体では抽象的な権利にすぎず,特定の情報ないし文書の開示を請求するためには,これに具体的権利性を付与する実定法上の根拠が必要であると考えられる。そうすると,具体的な情報開示請求権の内容や範 は,それ自体では抽象的な権利にすぎず,特定の情報ないし文書の開示を請求するためには,これに具体的権利性を付与する実定法上の根拠が必要であると考えられる。そうすると,具体的な情報開示請求権の内容や範囲については,当該実定法の目的・趣旨を参考にしながら,その文言に則して判断される必要がある。 しかるところ,法3条は,「何人も,この法律の定めるところにより,行政機関の長(略)に対し,当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる。」と規定し,法5条柱書は,「行政機関の長は,開示請求があったときは,……不開示情報……が記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該行政文書を開示しなければならない。」と定めている。これらによれば,情報公開法は,開示請求の主体について何らの制約を設けず,開示請求の理由,目的又は利害関係の有無を問題としていないこと,法5条1号本文前段が「個人に関する情報(略)であって,……特定の個人を識別できるもの」を不開示事由としており,後段の「特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」と異なった表現を採用していることなどに照らすと,同号本文前段は,不開示の根拠としての個人のプライバシー保護の必要性を直接の判断基準とすることなく,特定の個人を識別することができる情報は原則として不開示とする立場を取っているものというべきである。そうだとすると,情報公開法は,本人による自己情報の開示請求のように,個人のプライバシーを侵害するおそれを想定し難い場合であっても,それが個人識別情報に該当する以上,原則として不開示とする立法態度を取っているといわざるを得ない。 このことは,仮に,本人による自己情報の開示請求を認める趣旨であれば,その対象とさ それが個人識別情報に該当する以上,原則として不開示とする立法態度を取っているといわざるを得ない。 このことは,仮に,本人による自己情報の開示請求を認める趣旨であれば,その対象とされた文書に記載された情報が自己情報に該当するか否かを明らかにする手続が必要となるはずであるが,情報公開法及び同法施行令は,このような手続について何らの手当をしておらず,かえって,上記のとおり,開示請求の主体,理由,目的及び利害関係の有無を問わない制度が採用されていること,法5条各号(1号本文前段及び2号ロを除く。)は,当初の要綱案では「開示することにより」一定の支障が生ずるおそれがあることを不開示事由としていたが,その後の立法の過程で,何人にも当該情報を明らかにできない趣旨を明確にするために,「公にすることにより」の文言に改められた経緯があること,情報公開法の立案の基礎となったのは,行政改革委員会の内閣総理大臣に対する平成8年12月16日付け「情報公開法制の確立に関する意見」であるが,ここでは,情報公開制度は個人情報保護制度とは異なる趣旨,目的を持った制度であることを前提として,個人情報の本人開示については個人情報保護制度の問題であって,情報公開制度においては本人開示を否定する立場が取られていたこと,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成17年4月1日施行)において,自己を本人とする個人情報の開示を請求することが認められていること(12条以下)などからも裏付けられる。 そうすると,自己情報であることを理由として,法5条1号の不開示情報に該当しない旨の原告の主張は採用できない。 (3) 法8条該当性の有無について最後に,本件各請求が法8条の要件を満たすかを検討するに,同条は,「開示請求に対し,当該 示情報に該当しない旨の原告の主張は採用できない。 (3) 法8条該当性の有無について最後に,本件各請求が法8条の要件を満たすかを検討するに,同条は,「開示請求に対し,当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは,行政機関の長は,当該行政文書の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる。」と定めている。これは,特定個人の病歴に関する行政文書の開示が請求された場合のように,開示請求に係る行政文書の存否を明らかにするだけで,法5条各号の不開示情報を開示する結果となる場合には,行政文書の存否自体を明確にしないまま開示拒否処分(いわゆる存否応答拒否処分)をなし得ることを定めたものである。 しかるところ,前記のとおり,本件各請求に係る請求書においては,本件各文書がだれの診療等に係るものかが明記されていないが,原告による本件各請求に至る経緯や,本件各文書の診療日,撮影日,願い出の提出日などが特定され,本件各文書の保有者が被告矯正管区長であることを前提として訴えが提起されていることなどに照らすと,当該情報が原告の診察等に係るものであることは容易に推測することができる。そうすると,本件各請求に対して,当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで,原告が疾病等に罹患し,平成15年から平成16年10月25日まで医療機関によって診療を受けたこと,また,当該撮影日にMRIやX線撮影を要する病状にあったことなどについての情報が開示されることになるから,本件各請求については,法8条の要件を充足すると判断するのが相当である。 (4) 小括よって,本件各処分は,いずれも適法というべきである。 2 争点(2)(本件資料提供行 ら,本件各請求については,法8条の要件を充足すると判断するのが相当である。 (4) 小括よって,本件各処分は,いずれも適法というべきである。 2 争点(2)(本件資料提供行為は違法か)について(1) 前記前提事実(4)及び(5)に弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア原告による刑の執行停止申立てとその結果(ア) 所長は,平成15年7月15日,原告の腰痛等の訴えに関して,今後の治療方針を決定する上で専門医による診察が必要であるとの岐阜刑務所医務課医師の意見を参考にして,外医である本件病院整形外科において,原告を受診させた。 (イ) 上記診察の結果,原告の症状は,○,○と診断され,今後は,薬剤による保存療法又は手術療法が考えられるとの所見が出されたので,担当の整形外科医は,これを所長に報告するとともに,原告に対しても説明したところ,原告は,手術を希望する旨申し述べた。 (ウ) 所長は,上記整形外科医の所見では,原告の腰痛症に対する治療方法として手術療法も考えられるとの見解が示されたが,直ちに手術療法を施すべき緊急性を認めなかったことから,引き続き同所において実施してきた薬剤による保存療法を継続することを決定した。 (エ) 原告は,平成15年8月6日,岐阜地方検察庁検察官に対し,「自由刑執行停止の申立書」と題する書面を提出して,腰痛等の治療のため,刑の執行を一時停止した上で,自分の選んだ病院にて手術を受けさせてほしい旨を申し立てた。 (オ) 上記検察官は,所長あてに,同月8日付け「在監者の病状等について(照会)」と題する文書を送付して(同月11日到達),原告の身上等(氏名,生年月日,裁判及び確定年月日,罪名,入 (オ) 上記検察官は,所長あてに,同月8日付け「在監者の病状等について(照会)」と題する文書を送付して(同月11日到達),原告の身上等(氏名,生年月日,裁判及び確定年月日,罪名,入所年月日,刑終了予定年月日等),現在の病名,病状及び治療状況等について照会をした。 (カ) 所長は,同月19日,以下のとおり,上記検察官あてに,上記照会に対する同日付け回答文書を送付した。 (中略)(キ) 検察官は,さらに,所長あてに,平成15年9月2日付け「在監者の病状等について(照会)」と題する文書を送付して(同月4日到達),外医治療実施の有無,それが有る場合には,診察年月日,病名,病状,手術及び入院加療の要否,現在の病状で刑に服することの可否,治癒見込み,治療内容等の診察結果等について照会した。 (ク) 所長は,同年10月1日,同所医務課医師らが上記整形外科医から聴取してきた意見も参考にして,以下のとおり,検察官あてに,上記照会に対する同日付け回答文書を送付した。 (中略)(ケ) 岐阜地方検察庁検察事務官2名は,平成15年10月7日,岐阜刑務所に来所し,原告に対して,刑の執行停止申立ては理由が認められないので,刑の執行を停止しないとの上記検察官の決定を告知した。 (コ) 原告は,同月10日,大阪地方裁判所に対し,岐阜地方検察庁のなした自由刑の執行停止申請却下処分に対して異議を申し立てたところ,同裁判所は,平成16年3月15日,原告の刑の執行に関する異議申立てを棄却するとの決定をした。これに対し,原告は,同月19日,大阪高等裁判所に対し,即時抗告を申し立てたが,同裁判所は,同月25日,同抗告を棄却した。さらに,原告は,同月31 刑の執行に関する異議申立てを棄却するとの決定をした。これに対し,原告は,同月19日,大阪高等裁判所に対し,即時抗告を申し立てたが,同裁判所は,同月25日,同抗告を棄却した。さらに,原告は,同月31日,最高裁判所に対して特別抗告を申し立てたが,同裁判所は,同年5月17日,同抗告を棄却した。 イ原告による損害賠償請求の訴えの提起その1(ア) 原告は,平成16年○月○日,名古屋地方裁判所に対し,国,元岐阜刑務所医務課医師,本件医療法人及び元本件医療法人の医師を被告として,原告が検察庁あてに申し立てた刑の執行停止に関し,被告らが検察庁あてに虚偽の病状等を報告したことは不法行為に当たるとして,損害賠償請求事件(平成16年(ワ)第◇号事件)を提起したところ,同裁判所は,同年○月○日,同事件を岐阜地方裁判所に移送する旨決定し,同裁判所に×号事件が係属した。 (イ) 平成16年10月18日,×号事件の第1回口頭弁論期日が行われ,同事件の被告らは,各々以下のとおり答弁書を陳述し,岐阜地方裁判所は同期日で弁論を終結した。 a 国は,×号事件の訴えの内容が,原告が岐阜地方裁判所で係属中の別件訴訟(平成15年(ワ)第△・▽号事件等)の訴えの内容と同じであり,二重起訴に当たるから,訴えの却下を求める。 b本件医療法人等は,原告との間に診療契約を締結したものではなく,監獄法令による所長からの依頼に基づき,岐阜刑務所医師の補助として原告の診療を行ったものであることから,仮に何らかの損害が生じたとしても,刑務所医師の補助者が責任を負うことはないので,請求の棄却を求める。 (ウ) 岐阜地方裁判所は,同月28日,国に対する訴えは民事訴訟法第142条により不適法であるから却下し, としても,刑務所医師の補助者が責任を負うことはないので,請求の棄却を求める。 (ウ) 岐阜地方裁判所は,同月28日,国に対する訴えは民事訴訟法第142条により不適法であるから却下し,本件医療法人等に対する訴えは理由がないから棄却する旨の判決を言い渡した。 (エ) 原告は,同年○月○日,上記判決のうち,本件医療法人等に関する部分については控訴したが,国に関する部分については控訴せず,同月15日,確定した。 ウ原告による損害賠償請求の訴えの提起その2(ア) 原告は,さらに,平成16年○月○日,岐阜地方裁判所に対し,本件医療法人及び本件病院の病院長を被告として,本件医療法人等が原告を直接診断しないで初期の診断等と異なる内容の診断(誤診)を行い,検査所見を岐阜刑務所に交付し,同所の原告に対する弾圧等に加担し,原告に係る検査記録等を原告に交付しなかったなどとして,損害賠償を求める◎号事件を提起した。 (イ) 原告は,同年10月16日,岐阜地方裁判所から,本件医療法人等の答弁書(同月13日付け)の送達を受けた。 本件医療法人の代理人弁護士は,その中で,本件医療法人は原告との間に診療契約を締結したものではなく,監獄法令による所長からの依頼に基づき,同刑務所医師の補助として原告の診療を行ったものであることから,仮に何らかの損害が生じたとしても,責任を負うことはないこと,×号事件と二重起訴の関係にあること及び既に原告に係る診療記録は全て交付していることから訴えの却下を求める旨主張した。 (ウ) 原告は,同月19日,岐阜地方裁判所あてに,第1準備書面及び以下の書証を発送した。 a 平成15年9月2日付け照会文書b 平成15年10月1 した。 (ウ) 原告は,同月19日,岐阜地方裁判所あてに,第1準備書面及び以下の書証を発送した。 a 平成15年9月2日付け照会文書b 平成15年10月1日付け回答文書(エ) 原告は,平成16年12月3日,岐阜地方裁判所から,医療法人等の提出に係る準備書面及び前記前提事実(5)イ(ウ)aないしm記載の各書証の送達を受けた。 (オ) これに先立ち,所長は,上記dないしmの本件資料を本件医療法人の訴訟代理人に交付していた。 (2) 上記認定事実によれば,所長は,監獄法施行規則117条に基づき,岐阜刑務所の医師による診療行為を補助させるために,本件病院の整形外科担当医師に原告の診療を依頼したこと,原告は,国及び本件医療法人等を被告として,原告が申し立てた刑の執行停止に関して,検察官に対して虚偽の症状等を報告したことなどを理由に,×号事件を提起したが,同事件においては,国は,二重起訴に当たることを理由に訴えの却下を求めた関係上,本案についての主張立証を行わなかったこと,さらに,原告は,本件医療法人等に対し,誤診を行い,検査所見を岐阜刑務所に交付して原告等に対する弾圧等に加担し,検査記録等を原告に交付しなかったことなどを理由に,◎号事件を提起したこと,原告が,検察官からの照会文書及び所長の回答書を書証として提出したのに対し,本件医療法人の代理人が,所長から本件資料を受け取り,書証として提出したこと,以上のとおり要約することができる。 そこで,本件資料提供行為の適否について判断するに,確かに,個人情報については,個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われることが要請されるというべきであり,行政機関が何らの合理的理由なくして第三者にこれを開示したような場合には について判断するに,確かに,個人情報については,個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われることが要請されるというべきであり,行政機関が何らの合理的理由なくして第三者にこれを開示したような場合には,当該個人に対する不法行為を構成することがあり得るというべきである(個人情報の保護に関する法律3条,平成17年4月1日施行予定の行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律8条参照)。 しかしながら,本件資料の交付先である本件医療法人は,監獄法施行規則117条に基づく国(所長)からの依頼を受け,その補助者として岐阜刑務所の在監者である原告の診療等に従事したものであるから,その者のした行為によって第三者が損害を受けた場合には,国がその責任主体となるべきものであることが明らかである(最高裁判所昭和30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁,同裁判所昭和53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁参照)。したがって,原告は,本来,国を被告として損害賠償請求の訴えを提起すべきものであるが,給付請求に係る訴えの被告適格は,当該給付義務を有すると主張された者が有するため,現実に被告とされた本件医療法人等は,本案について応訴する負担を免れないことになる。そして,仮に本件医療法人等が敗訴した場合には,賠償した金員等について,国が求償に応じなければならない立場に立つことが予想される。そうすると,国は,本件医療法人等を被告とする訴訟において,その事務(受刑者の健康を管理する事務)に属する診療等が適正に行われた事実が立証されることにつき,訴訟当事者に準ずる法的利益を有すると解されるから,現実に被告とされた本件医療法人の訴訟代理人に対して,これらの訴訟遂行のために必要・参考となると考えられた本件資料を提供することは,正当な行為で ,訴訟当事者に準ずる法的利益を有すると解されるから,現実に被告とされた本件医療法人の訴訟代理人に対して,これらの訴訟遂行のために必要・参考となると考えられた本件資料を提供することは,正当な行為であって,何ら違法ではないというべきである。 この点について,原告は,まず,本件資料提供行為が法5条1号に反する旨主張するが,同号は,情報公開法に基づく開示請求がなされた場合の不開示事由を定めた規定であり,訴訟当事者に準ずる立場にある行政機関が,その法的利益を護るべく,保有している情報を任意に第三者に提供する場合を規律するものではないから,同号違反の主張は,その前提を欠くというべきである。さらに,原告は,国家公務員法100条1項に反する旨主張するが,同項前段は,「職員は,職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。」と定めるところ,これは,行政の適正な遂行のために職員の服務義務の一つとして,職員が職務上知り得た秘密を漏らすことを禁止するものである。したがって,たとえ,その情報が一般的には秘密であったとしても,職務の遂行上,情報の提供が必要な場合には,この守秘義務に反することはないと解すべきところ,上記のとおり,本件資料提供行為は,所長の職務の遂行上必要かつ相当な行為であると認められるから,原告の上記主張は採用できない。 3 結論よって,原告の本訴請求は,その余について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官尾 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長 裁判官加藤幸雄 裁判官舟橋恭子 裁判官尾河吉久 別紙文書目録 1 平成12年8月10日撮影のMRIフィルム 2 平成15年1月14日撮影のMRIフィルム 3 平成16年4月20日撮影のX線正面フィルム 4 平成15年3月2日撮影のX線2方向フィルム 5 1,2及び平成16年3月24日撮影のMRIフィルムの読影検査所見の文書 別紙文書目録 1 平成16年9月6日から平成16年10月25日までの診療記録 2 平成16年8月24日撮影の2方向X線フィルムのコピーフィルム 3 平成16年10月7日撮影の3方向X線撮影のコピーフィルム 4 3に対する読影検査所見書 5 平成16年10月5日の採血検査及びその検査結果

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