平成18年7月26日判決言渡平成17年第5832号損害賠償請求事件( )ワ判決主文 被告らは、原告A山a郎に対し、連帯して、3020万2682円及びこれに対する平成15年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは、原告A山b太に対し、連帯して、3020万2682円及びこれに対する平成15年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは、原告C川c子に対し、連帯して、1215万7140円及びこれに対する平成15年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求を棄却する。 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。 この判決は、第1項ないし第3項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告らは、原告A山a郎に対し、連帯して、7409万0387円及びこれに対する平成15年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは、原告A山b太に対し、連帯して、7409万0387円及びこれに対する平成15年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支 払え。 被告らは、原告C川c子に対し、連帯して、3358万3180円及びこれに対する平成15年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要事案の要旨 C川d江は、平成15年10月4日、被告病院において帝王切開により原告A山b太(出生当時の姓はC川である)を出産した後、頻呼吸となるなど容。 態が急変して翌日未明に死亡した。 このことについて、d江の夫、子、実母である原告らは、被告E沢e夫医師が、帝王切開時の術創の縫合不全により出血を招来した過 ある)を出産した後、頻呼吸となるなど容。 態が急変して翌日未明に死亡した。 このことについて、d江の夫、子、実母である原告らは、被告E沢e夫医師が、帝王切開時の術創の縫合不全により出血を招来した過失、腹腔内出血の発見及び治療が遅れた過失、肺塞栓との誤診に基づき誤った治療を行った過失によりC川d江が死亡したものであると主張して、不法行為(被告軽井沢町に対しては使用者責任)に基づき、損害賠償及びこれに対する同人の死亡日(不法行為日)である平成15年10月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 (認定の根拠を()内に示す)前提となる事実。 当事者( )ア原告関係患者( )アC川d江(以下「d江」という)は、昭和46年8月6日生まれの。 女性である(争いのない事実。 )原告ら( )イ原告A山a郎(以下「原告a郎」という)は、d江の夫であり(d。 江と婚姻する際にd江の姓であるC川姓に改姓したが、d江の死亡後である平成16年2月2日に婚姻前の姓であるA山姓に復した、原告A。) 山b太(以下「原告b太」という)は、d江と原告a郎の子である。 (出生時はC川姓であったが、平成16年2月10日にA山姓となった(争いのない事実、甲C1。 。))原告C川c子(以下「原告c子」という)は、d江の母である(争。 いのない事実、甲C1。 )イ被告関係被告軽井沢町は、国保軽井沢病院(以下「被告病院」という)を設置。 運営する地方公共団体であり、被告E沢e夫(以下「被告E沢医師」という)は、d江の診療当時において被告病院産婦人科に勤務し、d江の診。 療を担当した医師である(争いのない事実。 ) 被告病院における診療状況( )アd江の入院に至る経緯d江は、原告b太(胎児)を 、d江の診療当時において被告病院産婦人科に勤務し、d江の診。 療を担当した医師である(争いのない事実。 ) 被告病院における診療状況( )アd江の入院に至る経緯d江は、原告b太(胎児)を妊娠した後、被告病院において運動・食事指導などを受けていたが、ノンストレステスト()により胎児は良好NSTな状態であった。しかし、妊娠41週を経ても陣痛の発来がなく分娩に至らないので、児心音の経過及び胎盤機能の検査をしながら分娩への誘導を図り、妊娠中毒症予防のための食事療法を実施することを目的として、d江は、平成15年9月24日、被告病院に入院した(争いのない事実)。 イd江の出産と死亡平成15年10月4日9時45分(以下、時刻については24時間制で表記する)には子宮口が7ないし8センチメートル((以下、単位。 )cmについては単位記号を用いて表記する)に開大するなどしたが、発作時。 の腰痛が強度で、16時には分娩停止・羊水混濁増強との所見がみられた。 そこで、被告E沢医師は、d江に帝王切開術を実施することを決め、17時17分に手術を開始し、同24分に胎児を娩出した。手術の終了は18時18分で、術中の出血量は1296であった。 ml しかしながら、d江は、手術室から病室へ帰室した後、19時に、血ガス検査の結果、過換気状態と診断され、21時20分には頻呼吸で、心拍数150ないし160台、体動が激しくやや興奮気味で安静を保てない状態となり、22時15分には呼吸停止、22時22分には心停止となり、心臓マッサージ、挿管等がされ、同月5日0時には救急隊が到着してF総合病院に転送となったが、同日2時51分、同病院においてd江の死亡が確認された(争いのない事実)。 争点 帝王切開時の術創の縫合不全により出血を招来した過失の有無 には救急隊が到着してF総合病院に転送となったが、同日2時51分、同病院においてd江の死亡が確認された(争いのない事実)。 争点 帝王切開時の術創の縫合不全により出血を招来した過失の有無( ) 腹腔内出血の発見及び治療が遅れた過失の有無( ) 肺塞栓との誤診に基づき誤った治療を行った過失の有無(判断する必要が( )なかった争点) 損害額( )争点についての当事者の主張 争点1 (帝王切開時の術創の縫合不全により出血を招来した過失の有無)( )( )について(原告らの主張)d江は、帝王切開術後に腹腔内出血があり、肺塞栓症の診断から行った抗凝固・線溶療法による影響も加味され、出血性ショックから心停止に至ったものであるところ、その出血は、帝王切開時の術創を出血源とするものであるから、被告E沢医師の縫合不全に原因がある。したがって、E沢医師には、子宮部の切開創の縫合を十分すべきであるのに、これを怠り、縫合不全による致命的な腹腔内出血を招来した過失があり、これによりd江が腹腔内出血を原因として死亡した。 (被告らの主張)被告E沢医師が行った子宮創縫合は3層縫合であり、うち2層目の縫合は 外側を寄せる縫合であるから、術後合併症として術創部からの出血が生Zじれば子宮腔内にも相当量出血すると予測されるし、一般的にも子宮腔内からの出血増大が帝王切開術後の合併症としての出血所見の臨床所見の一つとされているが、d江には子宮腔からの膣出血の増加は認められなかった。 また、被告E沢医師は、特に縫合の際、問題がなく手術を終了しているし、手術創部からの出血の有無を注意深く確認した際、特に出血等の異常所見はみられなかった。 したがって、被告E沢医師の縫合手技に過失はない。 争点2 (腹腔内出血の発見及び治療が遅れた過 しているし、手術創部からの出血の有無を注意深く確認した際、特に出血等の異常所見はみられなかった。 したがって、被告E沢医師の縫合手技に過失はない。 争点2 (腹腔内出血の発見及び治療が遅れた過失の有無)について( )( )(原告らの主張)d江には、帝王切開術後、明らかな血圧低下、頻脈、尿量の著しい減少がみられ、これらはいずれも腹腔内出血を疑うべき顕著な所見である。また、d江は、帝王切開術中において比較的多量に出血(1296)し、4度mlにわたって昇圧剤エフェドリンを投与しなければならないほど血圧低下傾向があったといえるし、術後にも意識障害を疑わせる不自然な言動もある。 これらの経過に鑑みれば、担当医としては、術後早期からd江が何らかの異常状態にあると疑い、腹腔内出血の可能性も含めてその原因を詳細に検索検討すべき義務があった。 したがって、被告E沢医師には、上記義務を怠り、腹腔内出血を全く疑わず、d江の状態が悪化した後も22時18分ころに別の医師が来棟するまで何ら診断をしなかった過失があり、これによりd江が腹腔内出血を原因として死亡した。 (被告らの主張)一般論として、血圧低下、頻脈及び尿量の減少は腹腔内出血等の術後出血を疑う所見であるし、d江について、腹腔内出血の可能性の含めてその原因を検索検討すべきであることは争わない。しかし、被告E沢医師は術後出血 の可能性を全く疑わなかったわけではないものの、d江については、血圧低下、頻脈及び尿量減少以外は他の術後出血を疑う臨床所見に乏しく、容態が急速に悪化したことから、肺塞栓又は羊水塞栓の可能性の方が高いと判断したものである。 また、d江の出血は、帝王切開術後の出血としては非常に特殊な出血状態であったから、外部の臨床所見からは早期発見が困難な出血であったことを考慮していただき 栓の可能性の方が高いと判断したものである。 また、d江の出血は、帝王切開術後の出血としては非常に特殊な出血状態であったから、外部の臨床所見からは早期発見が困難な出血であったことを考慮していただきたい。 争点3 (肺塞栓との誤診に基づき誤った治療を行った過失の有無)につい( )( )て(原告らの主張)被告E沢医師は、d江の症状悪化後にも、当初は肺塞栓を発症したものと誤診し、抗凝固療法及び線溶療法を行っているが、帝王切開術後の経過からすれば、d江に一貫して悪化傾向が続いたことは明らかであり、突然に肺の血管が詰まるという肺梗塞本来の病態ないし臨床像には必ずしも合致しない。 したがって、被告E沢医師には、根拠に乏しい抗凝固療法及び線溶療法を選択して出血傾向を助長した過失があり、これがd江が腹腔内出血を助長し、同人の死亡に寄与した。 (被告らの主張)被告E沢医師は、上記2 において主張したとおり、腹腔内出血よりは肺梗( )塞又は羊水塞栓の疑いが強いと診断したし、この診断に基づいた治療によりd江の出血傾向を増大させて腹腔内出血を助長したかについては不明である。 争点4 (損害額)について( )( )(原告らの主張)アd江に発生した損害次の損害は、原告a郎及び原告b太が2分の1ずつ相続した。 逸失利益5470万9797円( )ア d江は死亡時32歳であったから、平成14年賃金センサス学歴別平均賃金女子大卒(32歳)の年収額である477万3200円を基礎年収として、67歳まで35年間就労可能であるとし、生活費控除率が30%であるから、その逸失利益は上記のとおりである。 d江本人の死亡慰謝料3000万0000円( )イイ各相続人に固有の損害a治療費5万7140円( )アb葬儀費用547万3024円 あるから、その逸失利益は上記のとおりである。 d江本人の死亡慰謝料3000万0000円( )イイ各相続人に固有の損害a治療費5万7140円( )アb葬儀費用547万3024円原告c子が支出したので、上記a、bは同人の被った損害である。 親族固有の慰謝料各原告につき2500万0000円( )イ原告らは、それぞれd江の夫、子、実母としてd江の死亡により重大な精神的苦痛を被った。原告a郎は、待望の第一子を授かりながら最愛の妻を失い、遺された生後間もない赤子を抱えて生きていかなければならない。原告b太は、自らの出生と同時に実母を失い、実母から愛され慈しまれる記憶を持つこともできずに成長しなければならない。原告c子は、3歳の時から1人で育ててきた一人娘であるd江を奪われ、悲嘆にくれている。これらの事情に加え、原告らは、本件事故後の被告らの対応によっても精神的苦痛を受けた。 以上からすれば、原告らは、それぞれ親族固有の慰謝料請求権を取得し、その額は、少なくとも各人あたり2500万円を下らない。 なお、医療事件においては、交通事故等の場合と異なり、医療に対する患者の信頼を裏切ったという背信的要素が存すること、加害者と被害者の立場に互換性がないこと、医師は専門職として高度の注意義務を負っており、そうであるにもかかわらず基本的注意義務違反をおかした場合には通常人の場合に比してより高度の非難が妥当し得ること等の特殊性が存するから、親族固有の慰謝料も交通事故等の場合に一般的に認め られる慰謝料の水準よりも高額になって然るべきである。 ウ弁護士費用原告a郎:673万5489円原告b太:673万5489円原告c子:305万3016円原告らは、本件訴訟の追行を原告訴訟代理人に委任し、弁護士費用を支払う旨を約したところ、その費 ウ弁護士費用原告a郎:673万5489円原告b太:673万5489円原告c子:305万3016円原告らは、本件訴訟の追行を原告訴訟代理人に委任し、弁護士費用を支払う旨を約したところ、その費用のうち、各人の損害(原告a郎及び同b太についてはそれぞれ6735万4898円、原告c子については3053万0164円)の1割は本件事故と相当因果関係がある。 エ損害合計上記損害の合計は、原告a郎及び同b太についてはそれぞれ7409万0387円、原告c子については3358万3180円である。 (被告らの主張)治療費については認めるが、逸失利益については、d江が原告a郎と共同経営していたペットシッター業の収入について客観的資料がなく、かつ、d江が女子平均賃金の中でも高い水準である大卒女子の賃金に相当する収入を継続的に得ていたともいえないから、賃金センサス女子労働者学歴計全年齢平均の賃金を基礎収入額とすべきである。 その余の損害額の相当性は争う。 第3当裁判所の判断事実認定 証拠によれば、次の事実が認められる(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。以下同じ。 。) 被告病院入院前におけるd江の生活状況等( )アd江の生立ちd江は、昭和46年8月6日、原告c子とG崎g之の長女として出生したが(甲C1、昭和50年、原告c子とG崎g之とが別居生活を送るこ) ととなったことから、それ以後、原告c子が単独でd江を養育することとなった(甲C7〔2。また、原告c子には、d江以外に子はいない(甲〕)C1、10ないし12。 )イd江の婚姻と生活状況d江は、平成13年2月14日、原告a郎と婚姻した(甲C1、C7〔6、C8〔1、原告c子〔3。その後、d江と原告a郎とは、平成〕〕〕) C1、10ないし12。 )イd江の婚姻と生活状況d江は、平成13年2月14日、原告a郎と婚姻した(甲C1、C7〔6、C8〔1、原告c子〔3。その後、d江と原告a郎とは、平成〕〕〕)13年6月8日、東京都調布市から軽井沢町に転居し、同月下旬、商号を「H」としてペットシッター業を開始したが、その一方でd江は夜勤会社や建築会社、原告a郎は夜勤会社においてアルバイトをしていた(甲C7〔6、7、原告c子〔3。 〕〕) d江の妊娠と被告病院への入院に至る経緯( )アd江は、月経が止まり、妊娠の可能性があるとして、平成15年1月20日、被告病院産婦人科を受診し、被告E沢医師から妊娠の診断を受けた(乙A1、A2〔1、2、A3。その後、d江は、同年2月17日から〕)9月17日まで14回にわたり被告病院において被告E沢医師の診察を受け、その際、同医師から超音波検査や生活指導等を受け、血圧の測定もされていたが、その数値は収縮期血圧が112から129、拡張期血圧が62から96であった(乙A4、A6〔2ないし18。 〕)イその間、同年9月11日23時に破水感があったためにd江が被告病院を受診し、入院して経過観察となったが、羊水の漏出もなく、翌12日朝に被告E沢医師が診察したところ、破水がはっきりしないことなどから、自宅待機となり、d江は同病院を退院した(乙A2〔41ないし43。 〕)ウ平成15年9月22日、d江は被告病院においてI野医師の診察を受け、による胎児の反応は良好であるが、子宮口が閉鎖しており、胎児のNST頭の位置が高いことから、同月24日に再診することとなった(乙A2〔48、A4。そこで、d江が同月24日被告病院を再診し、被告E沢〕) 医師の診察を受けたところ、同医師は、既に望ましい分娩時期を過ぎて 高いことから、同月24日に再診することとなった(乙A2〔48、A4。そこで、d江が同月24日被告病院を再診し、被告E沢〕) 医師の診察を受けたところ、同医師は、既に望ましい分娩時期を過ぎて妊娠41週に入り、ただ待っているだけでは正規の分娩が望めないと考え、d江に対して入院して分娩を誘発することを提案し、これにd江が同意したため、同日から被告病院に入院することとなった(甲C8〔3、乙A〕2〔50、A4、A24〔2。 〕〕) 帝王切開術による原告b太の分娩に至る経緯( )アd江が被告病院に入院した後、平成15年10月1日8時から分娩誘発が開始され、陣痛がみられたが、翌2日20時50分には一度陣痛が収まった。なお、同日23時30分当時のd江の血圧は、収縮期血圧120、拡張期血圧62、心拍数は95であった(乙A5〔1、2)。 〕イ同日10月3日16時30分ないし40分ころには破水がみられ(甲C8〔4、乙A2〔65、A5〔2、それ以降には陣痛があったものの、〕〕〕)娩出力不足のため、陣痛微弱の状態が翌4日まで続いた。被告E沢医師は、当時69歳であり、d江の分娩進行が遅々としたまま入院が長期化するにつれ、自らも疲労が重なり、人的物的に充実した病院へ転送することも考えたが、決断には至らなかった(乙A24〔2、6。 〕)ウ同日15時ころ、ようやく、内診によりd江の子宮口が開大していることが確認された(乙A2〔65、66。しかし、同日15時40分には〕)看護師がd江に対していきむように指示しても腰痛が強いためにいきめず、15時50分には「もう死んじゃう! 麻酔して!」とd江が発言する、ようになり、原告a郎も「麻酔して痛みを感じないで産めないか」と看護師に対して尋ねたことから、看護師が被告E沢医師に報告した ず、15時50分には「もう死んじゃう! 麻酔して!」とd江が発言する、ようになり、原告a郎も「麻酔して痛みを感じないで産めないか」と看護師に対して尋ねたことから、看護師が被告E沢医師に報告したところ、同医師が、無痛分娩という方法もあるが腰の痛みをなくして産むのであれば帝王切開になる旨を述べた。これに対して、原告a郎は、d江について帝王切開をして欲しい旨を述べた。そこで、被告E沢医師は、d江の痛みの強さからして分娩停止と判断せざるを得ないと考え、同日16時、d江に ついて帝王切開術を施行することを決定した(甲C8〔4、乙A2〔6。 〕6、A5〔3、A24〔3)〕〕〕エ同月4日17時17分から、被告E沢医師の執刀によりd江について帝王切開術が開始された。被告E沢医師は、手術開始約7分後に胎児を娩出し、胎盤を用手剥離して娩出した後、子宮内をガーゼで清掃し、その後、子宮術創を3層結合(第1層目は単結紮、第2層目は創面が子宮腔に向かうように外側を縫合し、第3層目は腹膜を合わせる方法)で縫合してZ縫合部位を触診したが、縫合不全は認めなかった。他方、術中に針が不足している旨を看護師から指摘されたことから、被告E沢医師は、d江の腹腔内を検索し、術野近傍も確認したが、腹腔内出血はみられず、子宮後壁などに異常はなかった(乙A14、A15、A24〔3)。 〕オ上記帝王切開術は同月4日18時18分に終了し、出血量は1296であった。d江は、同日18時34分には手術室から退室し、ナースmlステーションの隣にあるリカバリールームに入室した(甲C8〔4、。 〕乙A15、A23、A24〔4)〕この間、17時29分に子宮収縮剤メテナリンが投与され、術直前の17時16分に昇圧剤エフェドリンが投与されたものの、術中に4度にわたって収 (甲C8〔4、。 〕乙A15、A23、A24〔4)〕この間、17時29分に子宮収縮剤メテナリンが投与され、術直前の17時16分に昇圧剤エフェドリンが投与されたものの、術中に4度にわたって収縮期血圧が130を下回る事態が生じたことから、17時3、1分、同44分、同57分にもエフェドリンが投与されて血圧が回復し手術室から退室した時のd江のバイタルサインは、収縮期血圧111、拡張期血圧56、心拍数120、99%となっていた(乙A15、SaO2A18。また、帰室前、d江は胸が苦しいと訴えていた(乙A5)〔3。 〕) d江の容態の急変等( )アリカバリールームに入室した後、d江についてモニターが装着され、酸素吸入も開始された。d江は、帝王切開術前に比べてぼんやりした感じが あり、看護師からの問いかけに対してもはきはきとした返答をしなかったほか、やや頻呼吸状態であることが確認された。原告a郎及び同c子も、d江がぐったりし、目玉が上下に動いていたことを記憶している。原告a郎及び同c子は、上記のd江の様子から、d江が疲れていると判断し、そっとしておくために一度被告病院を辞した(甲C8〔5、C9〔6、乙〕〕A5〔3、原告c子〔6、7)〕〕イ19時ころにはd江に頻呼吸がみられ、血液ガス検査の結果、ヘモグロビン12.7、111で過換気状態であると診断されたため(乙A7PO2〔1、J田医師の指示により酸素吸入が中止された。19時15分ころ、〕)d江は、が98%、収縮期血圧98、拡張期血圧58、心拍数13SpO22、尿量10で、うとうとしているが覚醒すると頻呼吸となる状態で、ml看護師の見た限りでは腹痛や腹部膨満はみられなかった(乙A5〔3)。 〕被告E沢医師は、看護師に対し、低血圧及び頻脈があるた 2、尿量10で、うとうとしているが覚醒すると頻呼吸となる状態で、ml看護師の見た限りでは腹痛や腹部膨満はみられなかった(乙A5〔3)。 〕被告E沢医師は、看護師に対し、低血圧及び頻脈があるため、24時ころまでに術後点滴3本を終了させて様子を見ること、その後も尿量が少ないようならソルラクト を追加するよう指示して、19時30Sml分ころ帰宅した(乙A5〔4、A24〔4。 〕〕)ウ19時45分にはが99%、収縮期血圧76、拡張期血圧49、SpO2心拍数144、尿量5ないし15で、黄色水様のものを少量嘔吐してmlおり、20時にはが100%、収縮期血圧80、拡張期血圧43、SpO2心拍数116であった。20時10分には、d江が看護師に対して夫に会いたい旨を申し出たため、看護師が原告a郎に連絡し、同35分に同人が被告病院に来院した(乙A5〔4)。 〕21時20分にはd江の心拍数が150ないし160台であり、頻呼吸状態が改善されないため、21時45分ころ、被告E沢医師に看護師が連絡したところ、同医師は、d江の日常血圧が低いとの認識のもとに、激しい運動の後に起こるのと同様の呼吸促迫、興奮状態が生じているものと判 断し、精神安定剤セルシンの投与を指示した。同時刻においては、心拍数が172となり、拍動は触知できるが体動が激しく血圧測定ができず、看護師が見た限りでは、腹部膨満、腹痛及び創出血はなく、膣出血も少量であった(乙A5〔4、A24〔4)。 〕〕22時5分にはd江の心拍数が160ないし180台となったことから、看護師が内科当番医に状態を報告して診察を依頼するが、主治医から指示を受けるようにと回答された。同10分にはd江の心拍数は180台、呼吸は不規則で回数が減少し、呼びかけても反応がなく、血圧が測 ら、看護師が内科当番医に状態を報告して診察を依頼するが、主治医から指示を受けるようにと回答された。同10分にはd江の心拍数は180台、呼吸は不規則で回数が減少し、呼びかけても反応がなく、血圧が測定できないほか、瞳孔も散大し、対光反射がみられず、顔面蒼白状態となった。そこで、看護師は、同11分に被告E沢医師に対して診察依頼をしたが、同18分にK村医師が来棟するまで、d江に対して医師による診察はされなかった(乙A5〔4、5)。 〕エ22時18分にはd江に対して心臓マッサージが開始されたが、同22分には心停止状態となった。この際d江に腹部膨隆がみられたことをK村医師が確認した。同24分には被告E沢医師が来棟して、挿管等、d江の救命を行ったが、d江の状態は改善しなかった。同時期において、被告E沢医師は、d江の急変の原因が肺梗塞ではないかとの認識を有していた(乙A2〔70、A5〔5、A21。 〕〕)なお、23時07分にされた血液ガス検査の結果は、ヘモグロビン5. 3、24.3となっており、23時19分にされた同検査の結果は、PO2ヘモグロビン5.2、69.4となっていた(乙A7〔2、3。 PO2〕)オ同月5日0時には救急隊が到着し、d江はF総合病院に転送されたが、度病院において、同日2時51分、死亡が確認された(乙A5〔5、乙〕A22。 ) d江の死亡原因( )ア死亡診断書の記載 F総合病院のL原l也医師が作成した死亡診断書によれば、d江の直接死因は腹腔内出血で、同出血は帝王切開による子宮出血によるものであるとされており、解剖の結果、主要所見として「子宮縫合部から腹腔内へ約2000出血していた」と記載されているほか、死亡原因となった障ml害が発生した時は推定で平成15年10月4日17時20分である旨 されており、解剖の結果、主要所見として「子宮縫合部から腹腔内へ約2000出血していた」と記載されているほか、死亡原因となった障ml害が発生した時は推定で平成15年10月4日17時20分である旨、状況が帝王切開術後しばらくして腹部の膨隆、呼吸循環機能の低下が見られたとのことである旨がそれぞれ記載されている(甲A1。 )イ病理解剖所見d江の病理解剖所見によれば、病理学的診断として次のの旨、コメン( )アトとして次のの旨がそれぞれ記載されている(乙A20。 ( )イ)病理学的診断( )ア第1に、d江には腹腔内出血(2000、右子宮広間膜及び子宮ml)背面血腫が見られたこと、その出血源は、明らかな動脈の損傷がなく、帝王切開時の術創であること、出血は子宮漿膜下をほぼ全周に拡がり、子宮背面、右広間膜、右卵巣間膜内に血腫を作っていること、子宮前面では膀胱子宮窩腹膜下から膀胱背側壁内に血腫が及んでいること第2に、d江には右冠動脈スリット状狭窄(1.5×3大)がmm存在し、同狭窄について粥状硬化及び血栓性閉塞がみられないことコメント( )イ第1に、出血源が子宮帝王切開術創に存在する2.5×1大の凝cm固壊死巣のある領域であると考えられること第2に、肉眼的に肺動脈には血栓を認めないこと、染色では全PTAH切片中の1か所のみ、径20程度の小血管内にフィブリン血栓を認μmDICめたものの、呼吸不全やショックの原因になったとは考えにくいがの可能性は否定できないこと第3に、糸球体係蹄毛細血管等、肺以外の臓器の小血管には明らかな 微小フィブリン血栓はみられないこと第4に、横隔膜は右第3肋骨左第4肋骨まで挙上していたこと、胸腔には肉眼的に腹腔内と同様の血液がみられたが、剖検時操作による腹腔からの流入と 管には明らかな 微小フィブリン血栓はみられないこと第4に、横隔膜は右第3肋骨左第4肋骨まで挙上していたこと、胸腔には肉眼的に腹腔内と同様の血液がみられたが、剖検時操作による腹腔からの流入と判断されたこと第5に、冠動脈は右入口部にスリット状の狭窄がある以外に狭窄、閉塞がなかったこと、狭窄の原因は不明だが(先天的)なものcongenitalwavingcが考えられること、心筋にはごく軽いを右室から中隔に認め、(収縮帯壊死)をわずかに右室心尖に認めたが明ontraction-bandnecrosisらかな凝固壊死がなく、梗塞とは断定しがたいこと(ただし死戦期の変化の可能性があること) 損害金の一部支払( )被告軽井沢町及び原告a郎と原告b太の各代理人は、平成16年3月4日、d江が死亡した件について、被告軽井沢町が原告a郎及び原告b太に対して示談金若しくは賠償金の仮払として既払分120万円を含めて300万円の支払義務があること等について合意し(乙C1、これに基づき、被告軽井)沢町は、原告a郎及び原告b太に対し、同年4月9日までに上記金額を支払った(弁論の全趣旨。 )なお、被告軽井沢町は、本訴提起前に和解金6688万円支払う旨の和解案を提示したが、合意には至らなかったし(弁論の全趣旨、当裁判所は本)件口頭弁論終結後に被告らによる謝罪の意思表示と賠償金合計7300万円の支払を内容とする和解を勧告し、被告らはこれを受諾したが、原告らがこ)。 れに応じなかったため、和解成立には至らなかった(記録上明らかな事実争点1 (帝王切開時の術創の縫合不全により出血を招来した過失の有無)に ( )ついて 帝王切開術終了の際には止血をすべきものであり、縫合手技の誤りによっ( )て出血を招来しないように注意すべき義務が医 切開時の術創の縫合不全により出血を招来した過失の有無)に ( )ついて 帝王切開術終了の際には止血をすべきものであり、縫合手技の誤りによっ( )て出血を招来しないように注意すべき義務が医師に課せられることはいうま でもない。 しかしながら、前記15 アのとおりd江の死亡原因は腹腔内出血であり、( )( )その出血は帝王切開術時の術創にあるものの、前記13 エにおいて認定した( )とおり、被告E沢医師は、縫合部位の触診によって縫合不全のないことを確認しており、また、術中において針の不足を指摘されて針の検索をした際、腹腔内出血がみられず、子宮後壁にも異常はみられなかったものであって、これに反する証拠はない。このことからすれば、被告E沢医師に縫合手技上の誤りがあるとは認められず、この点に関する原告の主張には理由がない。 争点2 (腹腔内出血の発見及び治療が遅れた過失の有無)について ( ) 一般に、明らかな血圧低下や頻脈、尿量の著しい減少が腹腔内出血を疑う( )べき所見であることは当事者間において争いがないところ、前記14 アない( )しウの事実からすれば、d江については収縮期/拡張期血圧が術前には120/62であったのに、術後には収縮期血圧が100未満、拡張期血圧も60未満でしかも拡張期血圧について低下傾向を示しており、脈拍数も術後には一貫して100以上の頻脈であるばかりか140台から上昇傾向にあり、尿量も減少していた。 したがって、d江について腹腔内出血を疑うべき所見がみられたということができるほか、d江については術後から意識状態がもうろうとしていることが認められるから、医師には、何らかの異常を疑い、腹腔内出血の可能性も含めてその原因を検索検討すべき注意義務があったものというべきであり、この点は、被告ら は術後から意識状態がもうろうとしていることが認められるから、医師には、何らかの異常を疑い、腹腔内出血の可能性も含めてその原因を検索検討すべき注意義務があったものというべきであり、この点は、被告らも一般論として認めている。 にもかかわらず、前記14 イ及びウにおいて認定した事実からすれば、被( )( )告病院においては、平成15年10月4日19時15分に被告E沢医師から点滴の指示があったのを最後に、22時10分にd江が急変したのち医師が来棟した同日22時18分まで約3時間にわたって医師による診察がされておらず、しかも、21時45分には被告E沢医師に対して看護師から報告が されたにもかかわらず、被告E沢医師は自らd江を診察することなくセルシンの筋肉注射を指示したにとどまったのであるから、被告E沢医師は上記注意義務に違反したものと評価すべきである。また、被告E沢医師の上記指示は、前記認定のとおり、d江の収縮期血圧が80であるとの報告を受けたにもかかわらず、同女の日常血圧が低かったとの認識を前提としてされたものであるし、同医師が帰宅前に点滴の指示をしたにとどまることも同様の認識を前提とするものであると認められるところ、前記12 アで認定した分娩前( )8か月間の血圧測定結果からすると、同女の日常血圧が低かったとは認められず、被告E沢医師は、誤った認識に基づいて血圧低下の事実を軽視し、そのことが上記注意義務違反を招いたと認められる。 これに対して、被告らは、帝王切開術時の術創からの出血経路が非常に特( )殊であったことから、外部の臨床所見から早期発見が困難であったことを挙げ、同事情を考慮されたいと主張し、被告E沢医師による同旨の陳述もみられる(乙A24〔5。しかしながら、前記14 イのとおり、19時ころに〕)( )は 床所見から早期発見が困難であったことを挙げ、同事情を考慮されたいと主張し、被告E沢医師による同旨の陳述もみられる(乙A24〔5。しかしながら、前記14 イのとおり、19時ころに〕)( )は血液ガス検査に伴いヘモグロビン値が測定されており、21時以降もヘモグロビンの測定あるいは容易に測定可能なヘマトクリットを測定すれば、19時30分以降も貧血が進行していることが一目瞭然となったはずであり、出血に対する治療がなされていたはずである。また、被告らは、これ以上には被告らに注意義務違反がないことについての具体的な主張、例えば、19時30分以降も被告E沢医師が在院して病状の原因究明に当たったとして、いかなる検査等が考えられ、その結果がどのようなものと予想されるか、それらの結果を踏まえていかなる措置が可能で、それによって結果に有意な差異が生じた可能性があったか否かなどについての主張をせず、むしろ本訴提起前から相当高額の和解金を提示している。このような事情、被告らの態度ないし弁論の全趣旨にも鑑みると、外部の臨床所見等から早期発見が困難であるとまでは認められず、上記のとおり被告E沢医師にはd江の異常状態に ついて腹腔内出血を含めて検索検討すべき注意義務に反した過失があり、かつ、同過失行為とd江の死亡との間について因果関係も認められるものと判断するほかない。したがって、被告E沢医師、ひいては被告軽井沢町には、上記の過失行為について責任を負うというべきである。 争点4 (損害額)について ( )以上によれば、争点3 について判断するまでもなく、被告らには、d江の異( )常状態について腹腔内出血を含めて検索検討すべき注意義務に反した過失があり、このことについて不法行為責任を負うべきであるから、上記過失行為によって生じたd江の死亡によって通 らには、d江の異( )常状態について腹腔内出血を含めて検索検討すべき注意義務に反した過失があり、このことについて不法行為責任を負うべきであるから、上記過失行為によって生じたd江の死亡によって通常生ずべき損害について判断する。 d江の逸失利益(請求額5470万9797円)4000万5364円( )前記11 アにおいて認定したとおり、d江は昭和46年8月6日生まれの( )女性で、死亡当時32歳であった。そして、前記11 イにおいて認定したと( )おり、d江は、原告a郎とともにペットシッター「H」を経営していたと認められるものの、その収入額を認定すべき客観的証拠はなく、しかも、d江及び原告a郎は上記ペットシッター業のほかにアルバイトをしていたと認められるが、平均賃金を上回る収入が得られる蓋然性があると認めるに足りる証拠も見当たらない。他方、d江の健康状態について特段の問題があるとも認められないから、d江は、本件死亡日に死亡しなければ、67歳までの35年間就労可能であると認められ、かつ、その間に平均賃金程度の収入(賃金センサス平成15年第1巻第1表女性労働者学歴計の年収によるのが相当であり、その額が349万0300円であることは当裁判所に顕著である)が少なくとも得られたものと推認される。 。 したがって、同金額を基礎とし、生活費として3割(d江の年齢、家族構成等の事情を考慮すると、生活費控除率は3割とするのが相当である)を。 控除し、ライプニッツ式計算法により年5分の割合による中間利息を控除して、d江の死亡による逸失利益を算出すると、次の計算式のとおり4000 万5364円となる(1円未満切捨て。そして、同額の2分の1を原告a)郎及び同b太がそれぞれ相続した。 〔計算式〕3,490,300×(1-0.3)×16.3741=4 計算式のとおり4000 万5364円となる(1円未満切捨て。そして、同額の2分の1を原告a)郎及び同b太がそれぞれ相続した。 〔計算式〕3,490,300×(1-0.3)×16.3741=40,005,364 慰謝料(請求額計1億500万円)原告ら各900万円( )アd江は、前記のとおり帝王切開術により原告b太を出産したわずか約9時間後に亡くなっており、母親として第一子を十分に抱くこともできなかったばかりか、開業間もないペットシッター業を営みながら育児に励むという希望に満ちた人性を突然に断たれたものである。他方、原告a郎は、第一子の誕生という夫婦にとって無上の幸福ともいうべき事態であったのに、d江の死亡により一転して生後間もない赤子を母親なしに養育しなければならなくなり、原告b太は、出生直後に実母を失うこととなった。また、原告c子は、前記のとおり一人娘でしかも3歳の時から独力で育ててきたd江を失うこととなったものである。これらのほか、原告c子の本人尋問の結果等、本件の弁論に顕れた一切の事情を考慮すると、d江及び原告ら3名の受けた精神的苦痛はあまりに大きく、d江の死亡慰謝料及び原告らの有する固有の慰謝料については、合計で2700万円とするのが相当であるところ、本件事案の性質に鑑みると、原告らについて慰謝料額に差異を設けることは相当ではないから、原告らの慰謝料額は各人についてそれぞれ900万円とするのが相当である。 イ上記合計金額は、交通事故等による死亡者がd江と年齢及び生活状況等を同じくする女性である場合に通常支払われる慰謝料総額を300万円程度上回るものであるところ、被告らは、医療事件において交通事故等の場合に比して一般的に認められる慰謝料水準より高額の慰謝料が認められるべきとの見解には理由がなく相当でないと主張す 総額を300万円程度上回るものであるところ、被告らは、医療事件において交通事故等の場合に比して一般的に認められる慰謝料水準より高額の慰謝料が認められるべきとの見解には理由がなく相当でないと主張する。 しかし、交通事故においては、事故以前に当事者間に何ら法律関係がないのが通常であるのに対し、医療事故の場合は、患者と医師の間に契約関 係が存在し、患者は医師を信頼して身を委ね、身体に対する侵襲を甘んじて受け入れているのであるから、医師の注意義務違反によって患者の生命身体が損なわれたとき、患者には損害の客観的態様に基づく精神的苦痛に加えて、医師に対する信頼を裏切られたことによる精神的苦痛が生ずるものと考えられる。したがって、医師の注意義務違反の内容と程度及び患者側の受けた損害の内容と程度によっては、患者側の精神的苦痛に対する慰謝料の額が交通事故等の場合よりも高額なものとなる場合もあり得るというべきである。 そして、本件における過失の態様は、前記14 イ及びウ並びに3で認定( )説示したとおり、被告E沢医師は、既に腹腔内出血を疑うべき血圧低下等の所見が現れていたにもかかわらず、d江の日常血圧についての誤った認識に基づいてこれを軽視し、看護師に点滴についての指示をしたのみで、検査の必要性や自己又は他の医師への連絡の要否等も明示せず、経過観察に当たるべき他の医師を確保することもなく帰宅し、その結果、d江は3時間余りも放置されたまま病状が進み最悪の結果を招いたのであるから、同被告が患者の信頼関係に反した程度は高く、それに伴ってd江及び原告らの受けた精神的苦痛も大きいといわざるを得ない。他方、被告E沢医師は、当時69歳という高齢にもかかわらず、11日間に及んだd江の入院期間中一貫して治療に当たり、その努力には多とすべき面もないではないが、前 精神的苦痛も大きいといわざるを得ない。他方、被告E沢医師は、当時69歳という高齢にもかかわらず、11日間に及んだd江の入院期間中一貫して治療に当たり、その努力には多とすべき面もないではないが、前記13 イのとおり、自己の手に余ると判断すればd江を他に転院さ( )せることも可能であったと認められるから、それをしなかった以上、自らd江を治療するに当たって最善の注意義務を求められるのはやむを得ない。 また、上記のとおり本件当時d江の日常血圧について誤った認識を有していたことが注意義務違反を招いたにもかかわらず、本訴に至ってもその認識を改めていないことが窺われることからすると(乙A24〔4、同被〕)告に酌むべき点はなく、上記のように通常より高額の慰謝料を算定するこ とはやむを得ない。 治療費(請求額5万7140円)5万7140円( )d江の治療費が5万7140円であって、これがd江の損害の内容となることについては当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、これをc子が出捐したものと認められる。 葬儀費用(請求額547万3024円)200万円( )d江の葬儀費用については、請求額と同額を原告c子が出捐したものと認められるところ(甲C3ないし6、弁論の全趣旨、本件の弁論に顕れた一)切の事情を考慮し、このうちの200万円の限度でd江の死亡により通常生ずべき損害であると認める。 既払分(損害の控除)( )前記16 のとおり被告軽井沢町から原告a郎及び原告b太に対して300( )万円が既に支払われており、これは原告a郎及び原告b太において均分するのが相当であるから、原告a郎及び原告b太について150万円ずつを控除した結果、原告各自の損害額は、原告A山a郎及び同A山b太が各自2750万2682円、原告C川c子が110 告b太において均分するのが相当であるから、原告a郎及び原告b太について150万円ずつを控除した結果、原告各自の損害額は、原告A山a郎及び同A山b太が各自2750万2682円、原告C川c子が1105万7140円となる。 弁護士費用( )本訴提起時において原告らが請求し得る金額は上記5 の限度である。 ( )他方、本件記録上、原告が原告訴訟代理人に本件訴訟の提起追行を依頼しその報酬として相当額の支払を約していることが明らかであるところ、本件のような事案については、訴訟代理人に依頼して行うことも合理的であると認められるから、弁護士費用もd江の死亡により通常生ずべき損害であるというべきである。そして、本件事案の内容、審理経過、認容額等に照らすと、原告らが被告らに対して請求できる弁護士費用は、その時点で請求可能な額の約1割に相当する額(原告a郎及び原告b太について各270万円、原告c子について110万円)であるとするのが相当である。 損害のまとめ( )以上によると、原告各自の損害額は、原告A山a郎及び同A山b太が各自3020万2682円、原告C川c子が1215万7140円となる。 結論 以上によれば、原告らの請求は原告A山a郎及び同A山b太が各自3020万2682円、原告C川c子が1215万7140円の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁判官金光秀明裁判官萩原孝基
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