1 令和6年5月10日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年第309号 損害賠償請求事件口頭弁論終結日 令和6年2月15日判決主文51 被告神戸市及び被告株式会社A(以下「被告A」という。)は、原告に対し、連帯して、1億4056万5148円及びこれに対する平成29年7月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告神戸市及び被告Aに対するその余の各請求並びに原告の被告株式会社B(以下「被告B」という。)に対する請求をいずれも棄却する。 103 訴訟費用は、原告と被告神戸市との間及び原告と被告Aとの間においては、それぞれ、原告に生じた費用の30分の7を上記各被告の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と被告Bとの間においては、全部原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 15事実及び理由第1 請求被告らは、原告に対し、連帯して、1億9075万1143円及びこれに対する平成29年7月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要201 事案の要旨平成29年7月21日、被告Bから被告Aに派遣され、被告神戸市が管理する神戸市役所本庁舎3号館(以下「本件建物」という。)内に設置された、熱感知機等を含む自動火災報知設備(以下「自火報設備」という。)など消防の用に供する設備等(以下「消防用設備等」という。)の点検業務(以下「本件点検業務」という。)25に従事していた原告が、本件建物の北側に位置する階段の2階と3階の間の踊り2 場に設けられた点検口(以下「本件点検口」という。)からダクトスペース(以下「本件ダクトスペース」という。)に進入した際に、約5.76mの 本件建物の北側に位置する階段の2階と3階の間の踊り2 場に設けられた点検口(以下「本件点検口」という。)からダクトスペース(以下「本件ダクトスペース」という。)に進入した際に、約5.76mの高さから転落するという事故(以下「本件事故」という。)が発生した。 本件は、原告が、次のとおり主張して、被告らに対し、1億9075万1143円及びこれに対する本件事故の日である平成29年7月21日から支払済みまで5平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めている事案である。 ⑴ 被告神戸市に対する請求(以下「本件請求①」という。)本件点検口は、誤って本件ダクトスペースに進入してしまうと転落して重傷を負う危険性があるのに、施錠するなどして開扉できない措置が講じられてお10らず、立入禁止等の標示もなかったのであるから、通常有すべき安全性を欠いたものであるなどとして、これを設置管理していた被告神戸市に対して、国家賠償法(以下「国賠法」という。)2条1項に基づき、前記支払を求めている。 ⑵ 被告Aに対する請求(以下「本件請求②」という。)原告の派遣先である被告Aないしその被用者であり本件点検業務の作業指揮15者であったCは、原告に対して高所から転落する危険性がある本件点検口から本件ダクトスペースに立ち入らないよう指示するなどの注意義務を負っていたが、これを怠ったなどとして、被告Aに対して、不法行為又は使用者責任に基づき、前記支払を求めている。 ⑶ 被告Bに対する請求(以下「本件請求③」という。)20原告の派遣元である被告Bは、事前に原告の作業場所の安全性を確認するなどの注意義務を負っていたが、これを怠ったなどとして、被告Bに対して、不法行為に基 る請求(以下「本件請求③」という。)20原告の派遣元である被告Bは、事前に原告の作業場所の安全性を確認するなどの注意義務を負っていたが、これを怠ったなどとして、被告Bに対して、不法行為に基づき、前記支払を求めている。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲する証拠〔以下、特記しない限り、枝番を含む。〕及び弁論の全趣旨により容易に認定し得る事実)25⑴ 当事者等3 ア 原告は、平成7年8月16日生まれの男性である(本件事故当時21歳)。 イ被告Bは、労働者派遣業等を目的とする株式会社であり、本件事故当時、34名の従業員が在籍していた(甲18・3頁、丙5)。 被告Aは、消防施設工事の設計、施工及びメンテナンス業等を目的とする株式会社である(甲2)。D株式会社(以下「D」という。)は、兵庫県下5における公共事業の受注を主たる目的として本社を神戸市に置く被告Aのグループ会社であり、事実上、同被告の神戸営業所という位置付けにある(甲18・4頁、証人C・1、2頁)。 被告神戸市は、神戸市役所本庁舎1号館、2号館、2号館別館、3号館(本件建物)、4号館及びEM棟(以下、これらの建物を総称して、「本件各建10物」という。)を管理する地方公共団体である(丁1・15頁)。 ウ被告Bは、被告Aとの間で、平成28年3月1日に被告Bが被告Aに労働者を派遣する際の基本契約(労働者派遣基本契約)を締結し(丙1)、同年12月6日、同契約3条1項に基づき、派遣労働者が従事する業務内容を消防用設備点検補助であることなどを内容とする労働者派遣個別契約(丙215の1)を締結し、平成29年3月28日に派遣期間を延長する趣旨の契約を締結した(丙2の2)。 被告神戸市は、消防法の規定により、本件各建物内に設置された熱 容とする労働者派遣個別契約(丙215の1)を締結し、平成29年3月28日に派遣期間を延長する趣旨の契約を締結した(丙2の2)。 被告神戸市は、消防法の規定により、本件各建物内に設置された熱感知器、煙感知器を含む自火報設備、防火・防排煙設備、ガス漏れ火災警報設備、誘導灯設備といった消防用設備等が正常に作動するかどうかを定期的に有20資格者(消防設備士又は消防設備点検資格者)に点検させる義務を負っているところ、平成29年3月下旬頃、本件各建物についての消防用設備等の点検業務(本件点検業務)を含む業務につき入札を行い、Dが受注し(乙1、7・1頁、丁1)、これを被告Aが下請けとして受注した(証人C・2頁)。 エCは、本件事故当時、被告Aの神戸営業所長兼Dの役員であり、消防用設25備点検の資格を有していた。 4 被告神戸市の行財政局総務部庁舎管理課(現在は行財政局庁舎課。以下、単に「庁舎管理課」という。)は、本件各建物の機器等に不備が生じた場合の補修対応等を担当していた部署である(証人E・18頁)。 ⑵ 本件建物の概要(乙1~6、8~11、丁1・58~69頁、丁2)ア 本件建物は、地下1階、地上9階、塔屋3階建ての建物であり(以下、階層5につき、B1階、1階~9階、R1階~R3階のように表記する。)、本件事故後に本件建物に代わって新たに庁舎が建築されたことから、現在は存在しない建物である。 イ 本件建物には、建物構造の中央部及びその北側に階段部(以下「北階段」という。)が設けられ、この北階段の南側にはダクトスペースが、いずれも竪穴10区画として設けられており、R2階とR3階の間を除く各踊り場に設置された各点検口から、その内部を確認することができる。 ウ 北階段は主に神戸市職員及びその関係者が使用して スが、いずれも竪穴10区画として設けられており、R2階とR3階の間を除く各踊り場に設置された各点検口から、その内部を確認することができる。 ウ 北階段は主に神戸市職員及びその関係者が使用している。 ⑶ 本件事故の発生(甲18)原告は、平成29年7月21日、被告Bから被告Aに派遣され、本件点検業務15の補助者として、消防用設備点検の資格を有するCの指揮命令の下で、上階(8階)から順に、本件建物内の執務室、湯沸室、ダクトスペースの天井部などに設置された熱感知器の点検を行っていた(証人C・12頁)。 原告は、同日午後1時30分頃、2階と3階の間の踊り場に設置されている点検口(本件点検口。乙3、6、10、18・7頁)の先のダクトスペース(本件20ダクトスペース)に、本件点検業務において点検すべき消防用設備が設置されているものと誤信又は誤認して、本件点検口の下框を跨いで本件ダクトスペース内に進入したところ、足を踏み入れた先に床がないため、約5.76mの高さから下の階の床面まで転落し、全身を強打して脊髄損傷等の傷害を負った(本件事故)。 25⑷ 本件事故後の治療経過、労災認定(甲19)5 ア 原告は、本件事故日から神戸市立医療センター中央市民病院(以下「神戸市立医療センター」という。)に救急搬送され、その後、同病院に入院して治療を受けるなどした。F病院医師は、上記脊髄(腰髄)損傷により、原告の両下肢機能につき、股、膝、足、趾関節において対麻痺の障害等が残存し、平成31年1月31日をもって症状固定とする旨の診断をした(甲19・15頁)。 5イ 原告は、平成29年9月頃以降、京都上労働基準監督署(以下「京都上労基署」という。)に対し、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく療養補償給付及び休業 9・15頁)。 イ原告は、平成29年9月頃以降、京都上労働基準監督署(以下「京都上労基署」という。)に対し、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく療養補償給付及び休業補償給付の各請求をし、京都上労基署はそれらの支給決定をしていたが、その後原告が平成31年1月31日をもって症状固定となったとして、同年2月以降は上記各給付を行っていない(甲3)。 原告は、令和元年4月26日、京都上労基署に対し、労災保険法に基づく障害補償給付等の請求をしたところ、京都上労基署は、同年6月12日、①原告は本件事故による頚髄の完全損傷による高度の対麻痺が残存しており、これにより常時介護が必要であるから、神経系統の機能障害として第1級の3「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に該当す る、②原告はその他にも下腹神経の機能障害による射精障害を負っており、これは第9級の12「射精障害を残すもの」に該当するが、当該胸腹部臓器の障害については、上記麻痺の範囲と程度により判断される障害等級に加味されていることから、障害等級は神経系統の機能障害の等級で認定することとし、原告の本件事故により残存する後遺障害の障害等級を第1級の3と認定する のが相当であると判断した(甲12、甲19・8~19頁)。 3 争点及びこれに対する当事者の主張争点は、次のとおりであり、これに対する当事者の主張は別紙2のとおりである。 ⑴ 本件点検口の設置又は管理の瑕疵の有無(争点1)【本件請求①関係】⑵ 被告Aの注意義務違反等の有無(争点2)【本件請求②関係】 ⑶ 被告Bの注意義務違反の有無(争点3)【本件請求③関係】 ⑷ 過失相殺の可否等(争点4)⑸ 損害の発生及びその額(争点5)第3 反等の有無(争点2)【本件請求②関係】25⑶ 被告Bの注意義務違反の有無(争点3)【本件請求③関係】6 ⑷ 過失相殺の可否等(争点4)⑸ 損害の発生及びその額(争点5)第3 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実に加え、証拠(後掲する証拠のほか、甲18、34、乙7、丙5、5丁4、5、10、証人E、証人G、証人C、原告本人、被告B代表者)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。上記証拠中、以下の認定に反する部分は採用しない。 ⑴ 本件建物の構造、管理状況等(乙1~11、丁1、2)ア 本件建物(地下1階、地上9階、塔屋3階建て)の北階段の南側に同じく竪10穴区画として設けられたダクトスペースは、各階において南北1.5m、東西7.2mの長方形状の空間となっており、このうち、R(図面上P)1階と9階、9階と8階、8階と7階、7階と6階、6階と5階、5階と4階、4階と3階の間にはそれぞれコンクリート床(スラブ)が設けられ、これに対応する各階下にそれぞれ天井があるようになっているが、R2階とR1階の間、3階15と2階の間及び2階と1階の間には設けられていない。そのため、上記のうち、R1階と9階の間より上及び3階と2階の間より下については吹き抜けとなっており、後者の吹き抜け(3階と2階の間の踊り場床から直下の床まで)は約5.76mの高さがある(別紙概略図1、2、3のとおり)。 イ 点検口は、いずれの階の踊り場にも基本的には同じ仕様で踊り場の床面か20ら約42cmの高さに設置されており、ダクトスペース内部の床設置階に入る際には、踊り場から点検口の下框を跨いで進入するようになっている。これら点検口の扉には取っ手は設置されておらず、扉を最大限まで開いた時の扉の右端と点検口の右端との間は73cmであ 部の床設置階に入る際には、踊り場から点検口の下框を跨いで進入するようになっている。これら点検口の扉には取っ手は設置されておらず、扉を最大限まで開いた時の扉の右端と点検口の右端との間は73cmである(甲18・5、14、15頁)。 また、点検口の扉は、鍵で施錠する仕様となっており、被告神戸市が管理する25マスターキーを用いることで本件各建物の全ての点検口を開閉することがで7 きる。 ただし、本件事故当時は、本件点検口を含め、点検口の扉の錠が破損し、鍵がなくても開閉することができる状態の点検口が何か所かあり、これらの箇所は修理するまでの措置として扉の周囲に養生テープを貼って開扉できないようにしていた。本件点検口についても、本件事故以前には、開扉できないよ5うに扉の周囲にテープが貼られていたものの、本件事故当時には、そのテープが剥がれている状態にあった。 ウ 上記ダクトスペースの床設置階の各階下天井には、3階と4階の間の天井を除き、それぞれ点検対象である熱感知器等の自火報設備が設置されているが、上記アのとおり、1階と2階との間、2階と3階との間(本件点検口)、10R1階とR2階との間には、踊り場には進入のための各点検口が設けられているものの、それらの点検口からダクトスペース内に足を踏み入れようとしてもその先には床がなく(乙2・2枚目参照)、吹き抜けの状態となっていた(甲18・13頁)。 このように、各階段の踊り場から各点検口の外観を見たときに、各階踊り場15の点検口は床の有無にかかわらず全く同じ仕様となっていたため、点検口の下框を跨いでダクトスペース内に足を踏み入れようとしても、そこに床があるのか否かは、各階点検口の外観だけでは判別することはできない。加えて、各ダクトスペース内に照明設備等はなく、ダクトスペース内の 下框を跨いでダクトスペース内に足を踏み入れようとしても、そこに床があるのか否かは、各階点検口の外観だけでは判別することはできない。加えて、各ダクトスペース内に照明設備等はなく、ダクトスペース内の床が単なるコンクリートスラブであることも相まって、その内部は相当に暗く、踊り場内の20明かりが点灯している状況下においても、踊り場から点検口を開いて一瞥する程度ではダクトスペース天井に点検対象となる熱感知器が設置されているか、足を踏み入れる先に床があるかなどを判断することは困難である(甲20の1、甲20の2・4頁、乙3、10)。 ⑵ 原告の派遣状況等25ア 原告は、高校卒業後の平成26年4月にH(2年制)に入学したが、その後8 中退した。 原告は、平成27年に被告Bとの間で雇用契約を締結し、その頃から派遣労働者として稼働するようになり、入社当初は工場勤務等もしていたが、平成28年8月末頃から、専ら被告Aに派遣されて消防用設備等の点検の補助業務に従事するようになり、京阪神の学校等の施設などにおいて相当数の経験を5しており、本件事故当時も、漫画家になるための勉強として、漫画家の下で無給でアシスタント業務を行う傍ら、被告Aに派遣されて同様の業務に従事していた。ただし、原告は、消防用設備点検に関する資格を有していなかった上、また、本件事故前日以前に本件建物についての消防用設備の点検業務を行ったことはなかった(甲30、31、丙4、丁3)。 10イ 被告Aは、労働者派遣個別契約(丙2)に基づき、被告Bに対して、事前に作業場所等が記載された作業発注書(丙3)を送付するなどして、消防用設備等の点検の補助のための派遣労働者の派遣を依頼し、これに対し、被告Bは、派遣する労働者の氏名等を伝えた上で労働者を派遣し、業務終了後には派遣労 された作業発注書(丙3)を送付するなどして、消防用設備等の点検の補助のための派遣労働者の派遣を依頼し、これに対し、被告Bは、派遣する労働者の氏名等を伝えた上で労働者を派遣し、業務終了後には派遣労働者から日報を提出させて、作業時間や作業中に問題がなかったかどうか15を確認していた。 ⑶ 本件建物の点検作業開始に至るまでの経過ア 被告神戸市は、本件点検業務を含む業務の入札に当たって、Dを含む入札参加者に対して仕様書(乙1、丁1・3頁以下)を交付し、その仕様書には点検対象となる消防用設備等の設置場所が表示された本件建物の平面図(丁1・5208~69頁)が添付されていた。 イ Dは、平成29年3月下旬頃、本件点検業務を含む業務を落札し、その頃、これを被告Aに下請けし、同年4月に全体の工程表を提出した。 被告神戸市の庁舎管理課の職員であったEは、上記提出に係る本件点検業務の具体的な作業工程等について、同年5月頃、被告Aの神戸営業所長であ25り、消防用設備点検資格者1種、2種の資格を有するCと初めて打合せを行い9 (丁6、7)、併せてその頃、Cに対して、本件各建物を簡単に見回る程度の現地案内を行ったほか、間仕切り等を最新のものとした各階平面図(乙4)を交付していた。 ⑷ 本件建物の点検作業開始から本件事故の発生までの状況ア 平成29年7月4日から、本件点検業務が開始され、神戸市の担当職員は、5同日に本件各建物の点検口を開けるためのマスターキーをCに交付した。 そして、同月20日から本件建物についての本件点検業務が開始され、その具体的な作業内容としては、上階から下階に向かって順に本件建物内の執務室、湯沸室、ダクトスペースなどに設置されている消防用設備等(非常ベル、発信機、誘導灯、煙感知器、熱感知器)の動作確認を れ、その具体的な作業内容としては、上階から下階に向かって順に本件建物内の執務室、湯沸室、ダクトスペースなどに設置されている消防用設備等(非常ベル、発信機、誘導灯、煙感知器、熱感知器)の動作確認を行うというものであった。 このうち、誘導灯については設置箇所で動作確認を行うが、それ以外の非常ベル、発信機、煙感知器、熱感知器についてはEM棟の防災室にある受信機で動作確認を行っていた。 また、庁舎管理課の職員は、本件点検業務のうち執務室内での作業の際には立ち会っていたが、それ以外のダクトスペース等の共用部分での作業に立ち 会うことはなかった。 イ原告は、平成29年7月20日及び同月21日、Gと共にCの補助者として、本件点検業務に従事した。原告は、各日とも上下の作業服及びスニーカーを着用していただけで、ヘルメットや懐中電灯等は装着していなかった(甲18・7頁)。 本件点検業務において、Cは、非常ベル、発信機、誘導灯、煙感知器の点検を行うとともに、原告やGに対して作業指示を行い、その指示の下、原告は、湯沸室、執務室及びダクトスペース内の天井部に設置された熱感知器に熱試験器(長さ130ないし450cm。伸縮式の熱を発する棒状のもの)を近付け、反応するかを確認する方法で検査するという役割を、Gは、EM棟の防災 室で待機して熱感知器などの消防用設備が正常に作動しているかどうかを確 認するという役割をそれぞれ担っていた。また、Cと原告は、基本的には、同じフロア内(ただし、階段を下りた先の踊り場を含む。)で作業し、執務室については一緒に点検していたが、それ以外の箇所については個々で点検場所に向かって点検を行い、その状況を適宜無線等で確認するという形で作業を進めていた。フロア内での点検する順番は特に決まってお 務室については一緒に点検していたが、それ以外の箇所については個々で点検場所に向かって点検を行い、その状況を適宜無線等で確認するという形で作業を進めていた。フロア内での点検する順番は特に決まっておらず、原告とCは状5況をみながら適宜の順番で点検していたことから、原告が執務室での点検を終えた後に踊り場に設置された点検口に行ってダクトスペース内の熱感知器を点検するということもあった。 ウ 平成29年7月20日及び同月21日のいずれも作業開始前の段階で、Eは、C又はその補助者に対して、点検作業のために必要な設備用のマスターキ10ーを交付し、併せて当日の作業内容を確認し、本件建物内のダクトスペースには一部危険箇所があるから注意するよう声掛けをした。 また、上記各日ともに作業開始前には、C、G及び原告も参加して5分程度のミーティングが行われていたところ、同ミーティングでは本件建物内のダクトスペースには一部吹き抜けの箇所がある旨の口頭での説明がされたが、15これ以外に当日の作業における危険事項が伝えられたことはなく、具体的な吹き抜けの箇所等の説明もなかった(甲18・8頁、乙2、丁9)。併せて、その際、Cは、原告に対して、点検作業を行う上で必要な鍵と、作業工程に従って上階から順に綴りホチキス止めされた、熱感知器の設置位置が記載されている本件建物の各階の平面図(前記⑶イで渡した乙4の図面ではなく、点検20業務仕様書添付のもの。丁1・58~69頁、丁2)を交付していたが、原告に交付された平面図に本件ダクトスペースが危険箇所であることなどを示す書き込みは特にされておらず、Cは、その日の作業が終わるとこれらを回収していた。 エ 平成29年7月20日の時点で、本件建物の最上階から9階(8階と9階と25の間の踊り場を含む。)までの 示す書き込みは特にされておらず、Cは、その日の作業が終わるとこれらを回収していた。 エ 平成29年7月20日の時点で、本件建物の最上階から9階(8階と9階と25の間の踊り場を含む。)までの点検作業が終了しており、翌21日は8階のフ11 ロアから下階に向かって順に点検作業が行われることとなっていた(甲18・5頁)。 同日午前8時55分に前記ウのミーティングを行った後、午前中は8階から5階(4階と5階との間の踊り場を含む。)までの点検作業が行われた。1時間の昼休憩を挟んだ後、午後1時から点検作業が再開され、4階のフロアか5ら順に点検作業が行われることとなったが、再開前に作業内容に係る危険箇所の確認等は行われなかった(甲18・6頁)。 オ 原告は、3階の湯沸室での点検作業を終えた後の平成29年7月21日午後1時30分頃、本件点検口の先に床と熱感知器が設置されているかどうかを十分に確認することなく、これらが設置されているものと誤信又は誤認し、10屈む形で本件点検口から頭を入れ、続いて本件ダクトスペースの天井を見ながら足を入れるようにして、本件点検口の下框を跨いで本件ダクトスペースに進入したところ、高さ約5.76mから転落して全身を強打し、脊髄を損傷するなどの重傷を負った(甲18・6頁)。 ⑸ 本件事故後の経過15ア 原告は、神戸市立医療センターに救急搬送され、その際に救急隊から原告が所持していた本件建物の平面図等がGに渡された。原告は、上記病院に入院して治療を受けるなどしたが、平成31年1月31日をもって症状固定となり、脊髄が損傷したことに伴い両下肢に高度の対麻痺が残存するなどした。また、原告は、本件事故の影響により、少なくとも本件事故当日の記憶を喪失してい20る。 イ 本件事故から2週間後に神戸東労 り、脊髄が損傷したことに伴い両下肢に高度の対麻痺が残存するなどした。また、原告は、本件事故の影響により、少なくとも本件事故当日の記憶を喪失してい る。 イ本件事故から2週間後に神戸東労働基準監督署が本件事故の調査として、本件建物を見分したところ、本件点検口の扉には養生テープが貼られていた痕跡が確認されたほか、本件ダクトスペース内からは養生テープの本体と原告が使用していた熱試験機が発見された(甲18・1、16~20頁)。 ウ被告Aは、京都下労働基準監督署長宛に、平成29年8月1日付けで本件事 故につき労働者死傷病報告と題する書面(甲17・2頁)を、被告Bは、京都上労働基準監督署長宛に、同月4日付けで本件事故につき労働者死傷病報告と題する書面(甲19・25頁)をそれぞれ提出した。 また、被告Aは、神戸市役所宛てに受注者であるDの名義による平成29年8月28日付け事故報告書(乙2)を作成して、提出した。 2 争点1(本件点検口の設置又は管理の瑕疵の有無)に対する判断【本件請求①関係】⑴ 国賠法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、当該営造物の使用に関連して事故が発生し、被害が生じた場合において、当該営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみ られるかどうかは、その事故当時における当該営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきである(最高裁昭和42年(オ)第921号同45年8月20日第一小法廷判決・民集24巻9号1268頁、同昭和53年(オ)第76号同年7月4日第三小法廷判決・民集32巻5号809頁、同平成20年(受)第1418号同22年3月2日第三 小法廷判決・集民233号181頁参照 24巻9号1268頁、同昭和53年(オ)第76号同年7月4日第三小法廷判決・民集32巻5号809頁、同平成20年(受)第1418号同22年3月2日第三15小法廷判決・集民233号181頁参照)。 ⑵ア 前記認定事実のとおり、本件事故は、原告が、本件点検口の先の本件ダクトスペースには床と本件点検業務の対象となる熱感知器が設置されていると誤認又は誤信し、本件点検業務を実施すべく本件点検口から本件ダクトスペース内に進入したために生じたものであるところ、北階段の各踊り場に設置さ20れた点検口は、点検作業員などがダクトスペース内の状況を確認するために設置されるものであるが、本件点検口のように、ダクトスペースの天井に熱感知器等の自火報設備がない箇所については、それらの点検口からダクトスペース内に進入して点検する必要がないため、熱感知器等の自火報設備の点検作業に関する限り、ダクトスペース内への進入は予定されていなかったもの25といえる。 13 しかし、前記認定事実のとおり、北階段の各踊り場に設置された各点検口は、熱感知器等の自火報設備の設置の有無や床の有無によって形状等は特に変わらず、点検口の外観を見たときに、点検口からダクトスペース内に足を踏み入れようとしても、その進入先に床があるのか否かを判別することはできず、混同しやすい外観を呈していた上、ダクトスペース内部は相当に暗く、踊り場の5明かりが点灯している状況下においても、踊り場から点検口を開いて一瞥する程度ではダクトスペース内に点検対象となる熱感知器が設置されているか、進入先に床があるかなどを判断することは困難である。 この点、被告神戸市は、被告AのCに対し、熱感知器の設置位置が記載されている本件建物の各階平面図(乙1、丁1・58~69頁、丁2)を事前に交10 先に床があるかなどを判断することは困難である。 この点、被告神戸市は、被告AのCに対し、熱感知器の設置位置が記載されている本件建物の各階平面図(乙1、丁1・58~69頁、丁2)を事前に交10付しており、原告もCから本件事故当日のミーティングの際にこれを受領し、これを見ながら本件点検業務を行っていたことが認められる。しかし、本件ダクトスペースが吹き抜けの状態であることをその図面だけからは把握することはできない。 また、熱感知器の所在についても、証拠(甲18・12頁、証人C・29、1530頁)及び弁論の全趣旨によれば、本件建物の各階平面図上、各階段の踊り場に設けられた点検口から進入できる各ダクトスペース及び同所天井の熱感知器の存否については、それぞれその下の階の図面上に表示されることが多いというのであるが、設備点検資格者としてそのような図面の一般的な読み方に関する知識があったならば、同平面図において、1階と2階との間、2階20と3階との間(本件点検口)の踊り場に設けられた各点検口の先にあるダクトスペースには点検対象となる熱感知器がないことが示されていることを把握することができるものの、原告のような補助業務を行う者など本件点検業務に関与する全ての作業員がそのような図面の一般的な読み方に関する知識を有するとは限らず、概括的な口頭注意をされただけでは、図面の読み方を誤っ25て本件ダクトスペースに熱感知器が設置されていると誤認する可能性も否定14 できない。加えて、被告神戸市において、そのような資格を有しない作業員が補助的作業に関与することまでも一切禁止していたといった事情も見受けられない。 以上の内容に照らすと、本件事故当時、原告と同じように、地上9階建ての本件建物の上階から順に同じような形状の点検口を通じてダクトス 関与することまでも一切禁止していたといった事情も見受けられない。 以上の内容に照らすと、本件事故当時、原告と同じように、地上9階建ての本件建物の上階から順に同じような形状の点検口を通じてダクトスペース内5の熱感知器の点検を行う作業員が、本件点検口の先の本件ダクトスペースには床と本件点検業務対象となる熱感知器が設置されていると誤信又は誤認し、本件点検業務を実施すべく本件点検口から本件ダクトスペース内に進入して高さ約5.76mという高所から転落し、重大な事故が発生する危険性が客観的に存在したということができる。 10イこのような本件点検口の危険性の内容、程度に照らすと、本件点検口の設置管理者である被告神戸市としては、点検作業員が本件点検口から本件ダクトスペースに進入して転落する事故が発生することのないように、本件点検口の扉を開扉できないようにする、あるいは、本件点検口付近に立入りを禁止するための標示をするなどして、当該事故の発生を未然に防ぐ措置15を講ずることが最低限必要であったものというべきであり、かつ、そのような措置を講ずることは容易であったといえる。 しかるに、被告神戸市において、本件点検口の扉を開扉できないようにしたり、立入禁止の標示をするなど、本件点検口の危険性の内容、程度に即した事故防止措置を講じていたとは認められず、本件点検口は通常有すべき20安全性を欠いていたといわざるを得ない。 なお、被告神戸市は、本件点検口の扉の周囲にテープを貼って扉が開かないような措置を講じていた旨主張する。たしかに、本件事故から2週間後に、本件点検口にテープが貼られていた痕跡が残っていたことは確認されているものの(乙6、認定事実⑸イ)、テープが貼られていたにもかかわら25ず、原告がCに指示を仰ぐことなく、独断でこ ら2週間後に、本件点検口にテープが貼られていた痕跡が残っていたことは確認されているものの(乙6、認定事実⑸イ)、テープが貼られていたにもかかわら25ず、原告がCに指示を仰ぐことなく、独断でこれを剥がして本件ダクトスペ15 ースに進入するとは考え難いこと、Eが本件事故当日を含め本件点検口にテープが貼られているのを見たことがない旨供述していること(証人E・17頁)、本件点検口の付近や本件ダクトスペース内に原告が剥がしたと考えられるテープの残骸が落ちていたとはうかがわれないこと(甲18、証人G・8頁)などからすると、本件事故当時において、本件点検口の周囲にテ5ープが貼られていたと認めることはできず、上記被告神戸市の主張を採用することはできない。 ⑶ア また、被告神戸市は、本件点検業務の業務責任者であるCに対して、①本件建物の点検業務開始前の平成29年5月頃、本件建物の現地案内をし、本件点検口の扉を開けて、床がないことを目視で確認させた上、②本件建物の平面図10を交付して、一部のダクトスペースは吹き抜けの箇所がある旨注意喚起していたのであるから、当然にCから原告のような本件点検業務に関与する作業員に対してこれらを踏まえた指示説明があるものと考えるのが通常であることからすると、本件事故は、設置管理者である被告神戸市において通常の予測の範囲を超える原因(原告の異常な行動、あるいはCの原告に対する指示説明15不足)によって生じたものである旨主張する。 イ ①につき、Eは被告神戸市の主張に沿う供述をするが、本件事故当時において本件点検口の錠が壊れていたことなどからすると(認定事実⑴イ後段)、その約2か月前の本件建物の現地案内の際にも本件点検口の錠は破損していたとみられるところ、EはCを現地案内した際に本件点検口の扉が故障し 点検口の錠が壊れていたことなどからすると(認定事実⑴イ後段)、その約2か月前の本件建物の現地案内の際にも本件点検口の錠は破損していたとみられるところ、EはCを現地案内した際に本件点検口の扉が故障してい20た旨述べていないこと、Cは本件各建物を見回る程度の現地案内はあったが、被告神戸市が主張するような現地案内はなかった旨供述していることに照らすと、この点に関するEの供述を直ちに採用することはできず、他にこれを裏付ける的確な証拠はないから、これを前提とする被告神戸市の主張を採用することはできない。 25②につき、被告神戸市から、Cに対して、ダクトスペースの一部は床が設置16 されていない旨声掛けされ、本件点検業務の作業開始前の段階で、原告に対しても、本件建物の平面図が交付された際、本件建物のダクトスペースには危険個所があるとの口頭での注意喚起がされていたことは認められる(認定事実⑷ウ)。しかし、上記は、被告神戸市において、本件点検口の危険性について、口頭で抽象的かつ概括的な注意喚起がされたにすぎず、少なくとも原告に対5しては本件点検口の正確な箇所を特定して伝達されてはいなかったのであって、前記⑵で説示した本件点検口の危険性の内容、程度に照らすと、作業開始前時点でのこのような声掛けや口頭での抽象的な注意喚起等だけでは、本件点検口の先に床と熱感知器が設置されていると誤認又は誤信した作業員が、本件点検口から本件ダクトスペースに進入して転落する危険性が排除された10と期待することはできないというべきである。 そうすると、本件事故が被告神戸市の通常の予測の範囲を超える原因によって生じたものであるということはできず、これに反する被告神戸市の主張を採用することはできない。 ⑷ 以上によれば、本件点検口は通常有すべき安全性を 故が被告神戸市の通常の予測の範囲を超える原因によって生じたものであるということはできず、これに反する被告神戸市の主張を採用することはできない。 ⑷ 以上によれば、本件点検口は通常有すべき安全性を欠いていたということが15でき、本件点検口に設置又は管理の瑕疵があったということができる。 そして、被告神戸市がこうした措置を適切に講じていれば、本件事故が発生していなかったという高度の蓋然性が認められるから、本件点検口を設置管理する被告神戸市は、国賠法2条1項に基づき、本件事故と相当因果関係のある原告の損害につき賠償義務を負う。 203 争点2(被告Aの注意義務違反等の有無)に対する判断【本件請求②関係】⑴ 本件事故当日、原告は、被告Bから被告Aに派遣され、その指揮監督の下で本件点検口を含む本件建物につき本件点検業務に従事していたと認められるから、被告Aは、本件点検業務の中で原告の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき注意義務を負う。 25⑵ 前記のとおり、本件建物には、本件点検口のように、点検口からダクトスペー17 ス内にコンクリートの床(スラブ)が設置されていない吹き抜けの状態の箇所が存在していたこと、本件建物の平面図だけではどの箇所が吹き抜けになっているか把握することはできず、かつ、原告のような点検業務に関する資格を有しておらず補助業務を行う者においては、本件建物の平面図だけをもって、点検口の先のダクトスペースに本件点検業務対象となる熱感知器が設置されているかも5把握することは困難であることに加え、証拠(証人G・23~25頁)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故が発生した日の作業工程は、時間的な余裕が十分にない中で、踊り場を含む各階の外観・形状が同じような様相を呈している本件建物を、上階(8階)から 人G・23~25頁)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故が発生した日の作業工程は、時間的な余裕が十分にない中で、踊り場を含む各階の外観・形状が同じような様相を呈している本件建物を、上階(8階)から順に矢継ぎ早に点検するというものであったことなどからすれば、本件点検業務において、その補助業務に関与する作業員が、点検口の10先のダクトスペースには床と本件点検業務対象となる熱感知器が設置されているなどと誤信又は誤認し、本件点検業務を実施すべく点検口からダクトスペース内に進入して高所から転落する危険性があり、被告Aにおいて、そのことを認識し得たのであるから、被告Aには、本件点検業務を行う作業員であった原告が誤って本件点検口から本件ダクトスペースに立ち入って転落する事故が発生す15ることのないように、原告に対し、本件点検口などダクトスペースが吹き抜けの状態になっている危険な箇所を特定した上で、同所に関する情報を正確に伝えるべき注意義務があったといえる。 しかるに、前記認定事実によると、被告Aは、原告に対し、本件事故当日の作業開始前に5分程度のミーティングを行い、特に注意事項等が記載されていな20い本件建物の各階平面図を交付するとともに、ダクトスペースの一部は吹き抜けになっている箇所があるから気を付けるよう口頭で抽象的な注意喚起をしたことはあったものの、具体的な吹き抜けの箇所に関する説明等、これを超えた当日の作業における危険事項が伝えられたことはなく、その後も特に作業に係る危険事項等を確認することもなかったのであるから、前記の注意義務に違反し25た過失があるものといわざるを得ない。 18 ⑶ア 被告Aは、本件事故当日の作業開始前の段階で、原告に対して、本件建物の各階平面図を交付した上で、具体的に床が設置されていない箇所を指 25た過失があるものといわざるを得ない。 18 ⑶ア 被告Aは、本件事故当日の作業開始前の段階で、原告に対して、本件建物の各階平面図を交付した上で、具体的に床が設置されていない箇所を指摘し、注意するよう警告した旨主張し、Cもこれに沿う供述をする。 イ しかしながら、本件事故における原告の各種労災申請書等(甲19・13、14、25~28、31、32、38、39、60、61頁)には、本件事故5の原因及び発生状況として、具体的な吹き抜けの箇所が指摘されていなかった旨が記載されていること、被告AがD名義で本件事故後に作成した神戸市役所宛ての事故報告書(乙2、丁9)には、ミーティングの際に床のないダクトスペースの具体的な箇所を指摘したとの記載はないこと、Cや被告神戸市の庁舎管理課の担当者と面接を行うなどの調査を経て作成された本件事故の10災害調査復命書(甲18)においても、本件事故当日のミーティングでは、作業工程の確認が行われたのみで本件ダクトスペースの危険性を含めた注意喚起等は行われていなかったとされている。 以上の事実に照らすと、作業開始前の段階で本件ダクトスペースに床が設置されていないことを具体的に指摘したとするCの供述を直ちに採用するこ15とはできず、他にこれを裏付ける的確な証拠はないから、これを前提とする被告Aの主張を採用することはできない。 ⑷ 以上によれば、被告Aの注意義務違反が認められ、被告Aが原告に対し、本件点検口などダクトスペースが吹き抜けの状態になっている危険な箇所に関する情報を正確に伝えていれば、本件事故が発生していなかったという高度の蓋然20性が認められるから、被告Aは、不法行為に基づき、本件事故と相当因果関係のある原告の損害につき賠償義務を負う(前記被告神戸市の設置管理の瑕疵による 件事故が発生していなかったという高度の蓋然20性が認められるから、被告Aは、不法行為に基づき、本件事故と相当因果関係のある原告の損害につき賠償義務を負う(前記被告神戸市の設置管理の瑕疵による国賠法2条1項の責任と被告Aの注意義務違反による不法行為責任は共同不法行為の関係にある。)。 4 争点3(被告Bの注意義務違反の有無)に対する判断【本件請求③関係】25⑴ 本件では、被告Bが、事前に本件事故現場となった本件建物の詳細図面の提供19 を受けていなかったことにつき争いはないところ、原告は、被告Bには、本件建物の詳細図面の提供を受けるなどして、本件点検口から転落する危険性を把握し、原告に対してそれを踏まえた安全教育を実施すべき注意義務があった旨主張する。 ⑵ 本件で、原告が派遣先で行う業務は、被告神戸市が管理する本件建物において、5熱試験器を熱感知器に近づけて正常に作動するかどうかを確認するというものであり(前提事実⑶、認定事実⑷ア・イ)、高所等の危険な場所で作業することが予定されているものではなく、作業自体も単純な確認にすぎないのであって、通常、生命又は身体に危険が伴うようなものではない。また、消防用設備等の点検に関する資格を有さない原告は、あくまで派遣先である被告Aの有資格者(消10防設備士又は消防設備点検資格者)の補助者の立場として、被告神戸市が管理する本件建物内において、有資格者の指揮の下で上記業務に従事するにすぎないのであって(認定事実⑷イ)、このような事情の下で、派遣元である被告Bにおいて、原告が本件ダクトスペース等の点検箇所ではない危険な場所に進入して転落する可能性を具体的に予期することは困難であったといわざるを得ない。 15以上の内容に加え、本件事故までの間に被告Bから派遣された労働者が消 スペース等の点検箇所ではない危険な場所に進入して転落する可能性を具体的に予期することは困難であったといわざるを得ない。 15以上の内容に加え、本件事故までの間に被告Bから派遣された労働者が消防用設備点検補助に従事する際に生命又は身体に危険が生じたという例はなく(被告B代表者・1頁)、原告も、これまで被告Aの下で問題なく消防用設備点検の補助業務を相当数こなしてきたこと(原告本人・34頁、認定事実⑵ア)などを考慮すれば、派遣元である被告Bにおいて、原告が、点検することが予定さ20れていない箇所(本件ダクトスペース)に進入し、転落することを具体的に予見できたと認めることはできないから、被告Bが本件建物の詳細図面の提供等を受けるなどして、点検箇所でない本件点検口から転落する危険性を把握し、原告に対してそれを踏まえた安全教育を施すべき注意義務を負っていたとはいえず、これを前提とする原告の主張は理由がない。 25よって、被告Bに注意義務違反は認められない。 20 5 争点4(過失相殺の可否等)前記のとおり、本件事故は、原告が本件点検口の先に床と点検対象となる熱感知器が設置されていると誤信又は誤認し、点検を実施すべく本件点検口から本件ダクトスペースに進入したために生じたものと認められるところ、原告は、本件事故当日の作業開始前の段階で、本件建物の平面図が交付されるとともにダクトスペ5ースの一部には吹き抜けの箇所があるから注意するようにと注意喚起を受けていたのであるから、本件点検口に進入するに当たって、足を踏み入れる先のダクトスペース内の状態を慎重に確認してから進入するかどうかを判断すべきであったにもかかわらず、これを怠り、慎重さに欠けたまま安易に本件点検口から本件ダクトスペースに進入したために転落したものであるから スペース内の状態を慎重に確認してから進入するかどうかを判断すべきであったにもかかわらず、これを怠り、慎重さに欠けたまま安易に本件点検口から本件ダクトスペースに進入したために転落したものであるから(認定事実⑷ウ・オ)、本件事10故の発生につき、原告にも一定の過失があったものといわざるを得ない。 上記の原告の過失内容、前記2、3で説示した被告神戸市の設置管理の瑕疵及び被告Aの注意義務違反の内容のほか、本件事故当時において、原告が点検業務に関する資格を有していない一方で、有資格者の補助者として点検業務を相当数こなした経験を有していたことなどの諸般の事情に照らすと、原告の過失割合を1割15とするのが相当である。 6 争点5(損害の発生及びその額)に対する判断⑴ 入院治療費 1670万0444円証拠(甲4~6、19・36頁)及び弁論の全趣旨によれば、原告は本件事故で負傷したことにより、平成29年7月21日から同年8月21日までの間に20神戸市立医療センター、同日から平成30年1月14日及び同年4月26日から同年8月29日までの間にF病院、同日から同年10月22日までの間にI病院にそれぞれ入院して治療を受け(入院実日数358日)、その治療に要した費用は1670万0444円であると認められる。 ⑵ 通院治療費 27万1394円25証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば、原告は本件事故で負傷したことによ21 り、平成30年1月24日から平成31年1月31日までの間(通院実日数16日)、F病院に通院して治療を受け、その治療に要した費用は27万1394円であると認められる。 ⑶ 入院雑費 53万7000円原告は、本件事故により358日の入院治療を受けており(前記⑴)、入院雑5費として53万7000円 治療に要した費用は27万1394円であると認められる。 ⑶ 入院雑費 53万7000円原告は、本件事故により358日の入院治療を受けており(前記⑴)、入院雑5費として53万7000円(日額1500円×358日)の損害を認める。 ⑷ 通院交通費等 12万1130円前記⑴及び⑵のほか、証拠(甲19・38~40頁、甲34、38、原告本人・15頁)及び弁論の全趣旨によれば、原告が、①平成29年8月21日における神戸市立医療センターからF病院への転院、②平成30年1月24日から平成1031年1月31日までの間のF病院への通院に際し、介護タクシーを利用し、その利用料として12万1130円(①につき2万6570円、②につき9万4560円〔往復5910円×通院実日数16日〕)を負担したことが認められるところ、本件事故により原告が下半身不随となり、車椅子生活を余儀なくされていたことなどの事情に照らせば、介護タクシー利用の必要性が認められ、通院交通15費等として上記金額を損害と認める。 ⑸ 付添看護費用 219万6000円前記⑴及び⑵のとおり、原告は神戸市立医療センター等に合計358日間入院し、F病院に合計16日通院しているところ、原告は、本件事故により、第12胸椎離断骨折による腰髄損傷等の重傷を負い、これにより上記期間中、上記傷20害による両下肢対麻痺のため車椅子での移動を余儀なくされるなど日常生活動作が大幅に制限されている状態であったと認められるから(甲19・15頁、甲34、原告本人・15、16頁、弁論の全趣旨)、上記入院期間358日及び上記通院期間16日間について近親者による付添看護が必要であったといえる。 そして、入院付添看護費の日額は6000円、通院付添看護費の日額は300025円とするのが相当である 入院期間358日及び上記通院期間16日間について近親者による付添看護が必要であったといえる。 そして、入院付添看護費の日額は6000円、通院付添看護費の日額は300025円とするのが相当であるから、入院付添看護費用214万8000円(日額6022 00円×358日)、通院付添看護費用4万8000円(日額3000円×16日)を損害と認める。 合計:214万8000円+4万8000円=219万6000円⑹ 将来介護費 5460万1080円ア 原告の障害の程度及び介護の状況5前記前提事実、前記認定事実のほか、証拠(甲18、19〔主に15~24頁〕、甲34、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告の障害の程度及び介護の状況につき、次の事実を認めることができる。 原告は、本件事故後に神戸市立医療センター等で治療を受けるなどしたが、平成31年1月31日をもって症状固定となった。原告は、脊髄損傷に10より両下肢に高度の弛緩性麻痺があり(股、膝、足、趾関節の徒手筋力テストはいずれも0)、立ち上がり、起立位保持、歩行、階段の昇降等を自力で行うことはできない。他にも、原告は、肛門括約筋のトーヌス消失による勃起障害、脊髄損傷に伴う射精障害を負っており、現時点では排便に概ね支障は生じていないが、本件事故により排便反射を支配する神経も損傷してい15る。 原告は、平成30年10月22日にI病院を退院した後、自宅で祖母と父と一緒に生活をしている。原告は、更衣や食事を摂取することは自力で行えるが、家の中でも車椅子を使用しないと移動できず、食事の準備、片付け、清掃、浴槽での入浴、外出等を自力で行うことができないため、同居する祖20母と父から日常的に介助を受けている。また、神経痛が酷い日もあり、ベッドから起き上がるときに できず、食事の準備、片付け、清掃、浴槽での入浴、外出等を自力で行うことができないため、同居する祖20母と父から日常的に介助を受けている。また、神経痛が酷い日もあり、ベッドから起き上がるときにも介助を要することがある。加えて、排尿や排便に概ね支障はないが、急に尿が出てしまうことがあり、ベッドには尿パットを敷いている。 イ 損害額25このような原告の障害の内容、程度及び介護の状況のほか、症状固定時の平23 均余命年数等に照らせば、原告については、症状固定時(平成31年1月31日。当時原告23歳)から56年にわたって、近親者等による日常介護が必要であると認められる。そして、後述する家屋改造や電動リクライニングベッドの使用等により介助の程度が一定程度軽減されると認められる一方で、現時点で原告は主に同居している祖母と父親から介助を受けている状況であるが、5これらの者の年齢や介護の負担を考えると、今後は職業介護人による介助を利用するなど、現在の介護態勢が変動する可能性も大いに考えられることなどを勘案し、将来介護費の日額は8000円とするのが相当であるから、将来介護費は、請求どおり、5460万1080円(日額8000円×365日×18.699〔要介護期間56年のライプニッツ係数〕)と認める。 10⑺ 症状固定日までの車椅子リース費用等 19万2128円証拠(甲21、22、34)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故の負傷により車椅子生活を余儀なくされ、本件事故から症状固定日までの18か月にわたって、月額7000円の車椅子をリースしていたと認められるから、症状固定日までの車椅子リース費用12万6000円(月額7000円×18か15月)を損害と認める。 また、証拠(甲19・31~35頁)及び弁論の全趣 の車椅子をリースしていたと認められるから、症状固定日までの車椅子リース費用12万6000円(月額7000円×18か 月)を損害と認める。 また、証拠(甲19・31~35頁)及び弁論の全趣旨により、胸椎硬性コルセット費用6万6128円を損害と認める。 合計:12万6000円+6万6128円=19万2128円⑻ 将来の装具・器具購入費等 414万3001円 ア車椅子のリース費用 157万0716円前記⑹の認定説示に照らせば、要介護期間56年にわたって、車椅子をリースする必要があると認められ、その費用は次のとおり157万0716円であると認められる(甲21、22、弁論の全趣旨)。 月額7000円×12か月×18.699(56年のライプニッツ係数) イ電動リクライニングベッド等 207万9756円 前記⑹アで掲記した証拠及び認定した事実によれば、原告は、本件事故により両下肢に高度の対麻痺が残存したことから、一人で起き上がるのが困難な状態にあるほか、ベッドに臥したり、車椅子に乗る時間が長く、原告がこの先健康的に日常生活を送っていく上で、電動リクライニングベッド、褥瘡用ベッドマット及び車椅子褥瘡ノンプレッシャークッションを使用する必要がある と認められる。 そして、後掲する証拠及び弁論の全趣旨のほか、症状固定時における原告の平均余命等を踏まえると、電動リクライニングベッド(単価30万8000円、耐用年数8年)を少なくとも7回買い替えて使用する必要性、褥瘡用ベッドマット(単価23万1000円、耐用年数5年)及び車椅子褥瘡ノンプレッ シャークッション(単価3万6300円、耐用年数5年)を少なくとも11回買い替えて使用する必要性があると認められ、その費用は次のとおりであると 00円、耐用年数5年)及び車椅子褥瘡ノンプレッ10シャークッション(単価3万6300円、耐用年数5年)を少なくとも11回買い替えて使用する必要性があると認められ、その費用は次のとおりであると認められる(甲23、27)。 電動リクライニングベッドにつき、単価30万8000円×2.9581(耐用年数8年・買替7回の買替係数)=91万1094円(円未満切り捨て)15褥瘡用ベッドマットにつき、単価23万1000円×4.3721(耐用年数5年・買替11回の買替係数)=100万9955円(円未満切り捨て)車椅子褥瘡ノンプレッシャークッションにつき、単価3万6300円×4. 3721(耐用年数5年・買替11回の買替係数)=15万8707円(円未満切り捨て)20合計:91万1094円+100万9955円+15万8707円=207万9756円ウ トイレ手摺等 49万2529円前記⑹アで掲記した証拠及び認定した事実によれば、原告がトイレや自宅の玄関先を出入りする上で、トイレ手摺や玄関のスロープを設置する必要が25あると認められるほか、入浴の際に転倒する危険性があり、これを防ぐ滑り止25 めマットを使用する必要があると認められる。 そして、後掲する証拠及び弁論の全趣旨のほか、症状固定時における原告の平均余命等を踏まえると、トイレ手摺(単価6万1545円、耐用年数8年)及び玄関スロープ(単価6万4646円、耐用年数8年)を少なくとも7回買い替えて使用する必要性、お風呂滑り止め対策マット(単価2万7274円、5耐用年数5年)を少なくとも11回買い替えて使用する必要性があると認められ、その費用は次のとおりであると認められる(甲24~26)。 トイレ手摺につき、単価6万1545円×2.9581(耐用 5耐用年数5年)を少なくとも11回買い替えて使用する必要性があると認められ、その費用は次のとおりであると認められる(甲24~26)。 トイレ手摺につき、単価6万1545円×2.9581(耐用年数8年・買替7回の買替係数)=18万2056円(円未満切り捨て)玄関スロープにつき、単価6万4646円×2.9581(耐用年数8年・10買替7回の買替係数)=19万1229円(円未満切り捨て)お風呂滑り止め対策マットにつき、単価2万7274円×4.3721(耐用年数5年・買替11回の買替係数)=11万9244円(円未満切り捨て)合計:18万2056円+19万1229円+11万9244円=49万2529円15⑼ 家屋改造費等 30万円原告が不都合なく車椅子でトイレを出入りする上で、トイレを拡張する工事を行う必要があると認められ(甲32、34、原告本人・17~18頁、弁論の全趣旨)、証拠(甲33)を踏まえ、その改修費用は30万円が相当であると認める。 20⑽ 文書費等 12万6750円後掲する証拠及び弁論の全趣旨により、神戸市立医療センターの入院証明書1100円(甲8)、F病院の診療報酬明細等11万6640円(甲9)、I病院の退院証明書等9010円(甲10)を損害と認める。 ⑾ 休業損害 140万円25本件事故前の原告の就労状況等についてみるに、証拠(甲11、19・62頁、26 丙4、原告本人・31、32頁)及び弁論の全趣旨によれば、平成29年4月から同年6月までの間、原告が派遣労働者として合計74.5時間稼働し同期間の通勤手当を除く総収入は11万9801円であったが、原告の稼働状況は必ずしも安定しておらず、平成28年9月から平成29年3月までの間には平均して月80時間以上稼働 して合計74.5時間稼働し同期間の通勤手当を除く総収入は11万9801円であったが、原告の稼働状況は必ずしも安定しておらず、平成28年9月から平成29年3月までの間には平均して月80時間以上稼働していること、原告は派遣労働者として従事する傍ら、漫5画の勉強のために、週に二、三日、漫画のアシスタント業務を無給で行っていたほか、個人でネットブログに漫画や映画等を紹介する記事を投稿し、これにより年に数万円程度の報酬を得ることがあったことが認められる。これらの事実に照らすと、休業損害を算定する上での基礎収入は日額2500円とするのが相当である。 10そして、原告は、本件事故で負傷したことにより、本件事故日から症状固定日までの560日間就労できなかったものと認められるから、休業損害は140万円(日額2500円×休業期間560日)となる。 ⑿ 後遺障害逸失利益 7610万9867円原告が本件事故3か月前に支払を受けていた給与額は、平均して日額130150円程度であったと認められるが(前記⑾)、原告はその当時絵を描く仕事に就きたいと願望を抱き、漫画のアシスタント業務を無給で行っていたこと(原告本人・14頁、弁論の全趣旨)、本件事故当時の原告の年齢や経歴等を踏まえると、本件事故当時の現実収入が低額であったとしても、その後将来に向かう相当期間にわたりそれを上回る収入が得られる蓋然性があったといえ、逸失利益を算20定する上での基礎収入は、令和元年賃金センサス・男女計・高校卒・全年齢平均により、年額430万9000円とするのが相当である。 また、労働能力喪失率については、症状固定時における原告の後遺障害の内容、程度、京都上労基署の判断内容等に照らせば、100%とするのが相当であり、症状固定時である平成31年(当時原告23歳 る。 また、労働能力喪失率については、症状固定時における原告の後遺障害の内容、程度、京都上労基署の判断内容等に照らせば、100%とするのが相当であり、症状固定時である平成31年(当時原告23歳)から就労可能な終期とされる6257歳までの44年間が労働能力喪失期間となる。 27 そうすると、後遺障害逸失利益は7610万9867円(430万9000円〔基礎収入〕×100%〔労働能力喪失率〕×17.663〔労働能力喪失期間44年に対応するライプニッツ係数〕)となる。 ⒀ 傷害慰謝料 311万7333円本件事故による原告の受傷内容、程度に加え、これに伴う治療期間(入院実日5数358日、通院実日数16日)等を踏まえると、傷害慰謝料は311万7333円が相当である。 ⒁ 後遺傷害慰謝料 2800万円原告の後遺障害の内容、程度のほか、21歳という若さにして原告が本件事故により下半身不随等の重い後遺障害を負い、車椅子生活を余儀なくされたこと、10その他一切の事情を考慮すると、後遺障害慰謝料を2800万円と認めるのが相当である。 ⒂ 過失相殺後の損害額前記⑴ないし⒁の損害の合計は1億8781万6127円となるところ、前記5のとおり、本件事故の発生に係る原告の過失割合は1割と認めるのが相当15であるから、過失相殺後の損害額は1億6903万4514円(円未満切り捨て)となる。 ⒃ 損益相殺後掲する証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、口頭弁論終結時において、労災保険法に基づく療養補償給付として合計1713万4705円(甲37の201・2)、休業補償給付(特別支給金は除く。)として合計157万9219円(甲37の1)、障害補償給付(特別支給金は除く。)として合計892万7691円(甲35、3 3万4705円(甲37の201・2)、休業補償給付(特別支給金は除く。)として合計157万9219円(甲37の1)、障害補償給付(特別支給金は除く。)として合計892万7691円(甲35、37の5、甲40)、介護補償給付として432万3910円(甲36、37の4、甲39)、国民年金法に基づく障害基礎年金等として928万2490円(甲19・151頁、甲36、41~43)の支給を受け、又は25支給が確定していることが認められる(別紙既払金一覧表のとおり)。そして、28 このうち、療養補償給付は過失相殺後の治療費、入院雑費、通院交通費等及び付添看護費との間で、休業補償給付、障害補償給付及び障害基礎年金等は過失相殺後の休業損害及び後遺障害逸失利益との間で、介護補償給付は過失相殺後の将来介護費との間で、それぞれ、損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当である。 5上記⑴~⒁のうち、これらの控除することができる各費目の金額をみると、いずれも上記各給付の金額を上回るから、各給付額合計は過失相殺後の各損害額にそれぞれ全て充当される。以上によれば、前記⒂の金額から上記各給付の合計4124万8015円を控除した後の損害額は、1億2778万6499円となる。 10⒄ 弁護士費用本件事件の内容や審理経過、認容額等に照らし、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用の損害額は、1277万8649円と認めるのが相当である。 ⒅ 合計以上より、本件事故により生じた原告の損害額の合計は、1億4056万511548円となる。 第4 結論以上の次第であって、原告の被告らに対する各請求のうち、原告の被告神戸市に対する国賠法2条1項に基づく請求(本件請求①)及び原告の被告Aに対する不法行為に基づく請求(本件請求 。 第4 結論以上の次第であって、原告の被告らに対する各請求のうち、原告の被告神戸市に対する国賠法2条1項に基づく請求(本件請求①)及び原告の被告Aに対する不法行為に基づく請求(本件請求②)は、1億4056万5148円及びこれに対する20本件事故の日である平成29年7月21日から支払済みまで改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容し、その余の部分はいずれも理由がないから、いずれも棄却し(原告の被告Aに対する使用者責任に基づく損害賠償請求は、上記不法行為に基づく請求を上回るものとはいえず、理由がない。)、原告の被告Bに対する請求(本件請求③)25は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 29 神戸地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官 天 野 智 子 5 裁判官 鈴 木 喬 10 裁判官竹内壮太郎は、転補のため署名押印することができない。 15裁判長裁判官 天 野 智 子 30 別紙2争点に対する当事者の主張第1 争点1(本件点検口の設置又は管理の瑕疵の有無)について【本件請求①関係】(原告の主張)5本件点検口の先には床が設置されていないことから、本件点検口から本件ダクトスペースに進入すれば、高所から転落して重傷を負う危険性があったところ、本件点検口は施錠をするなどして物理的に開扉できない措置が講じられていなかった上、立入禁止、落下危険等の標示もなく、通常有すべき安全性を欠いていたのであるから、本件点検口の設置又は管理に瑕疵がある 本件点検口は施錠をするなどして物理的に開扉できない措置が講じられていなかった上、立入禁止、落下危険等の標示もなく、通常有すべき安全性を欠いていたのであるから、本件点検口の設置又は管理に瑕疵がある。 10(被告神戸市の主張)本件ダクトスペースに点検対象となる機器は設置されていないから、点検作業員が本件点検口から本件ダクトスペースに進入することは予定されていなかった上、本件事故当時、本件点検口には扉の周囲にテープが貼られ、容易に進入できないための措置が講じられていた。また、被告神戸市は、事前に受注業者の責任者で15あるCに対して現地案内を行い、本件点検口の先の本件ダクトスペースに床が設置されていないことを確認させるとともに、本件点検口を含め本件建物内には点検口の先に床が設置されていない箇所があるから作業の際には気を付けるよう注意喚起を行っているのであって、被告神戸市としては、当然にCから原告のような本件点検業務に関わる作業員に対してこれらを踏まえた適切な指示説明等がされ20るものと考えていた。 以上のような本件点検口の構造、用法、場所的環境、利用状況等を考慮すると、本件点検口が通常有すべき安全性を欠くとはいえず、本件事故は、被告神戸市が上記措置を講じるなどしていたにもかかわらず、原告が本件点検口に貼付されたテープを剥がして、点検箇所ではない本件ダクトスペースに進入したという、被告神25戸市が予見することのできない原告の異常な行動等に起因して生じたものである。 31 よって、本件点検口の設置又は管理に瑕疵はない。 第2 争点2(被告Aの注意義務違反等の有無)について【本件請求②関係】(原告の主張)本件点検業務の作業指揮者であったCないし被告Aは、原告に対し、本件点検口の先には床が設置されておら 第2 争点2(被告Aの注意義務違反等の有無)について【本件請求②関係】(原告の主張)本件点検業務の作業指揮者であったCないし被告Aは、原告に対し、本件点検口の先には床が設置されておらず転落する危険があることを説明し、本件点検口か5ら本件ダクトスペースに立ち入らないよう指示すべき注意義務を負っていた。 しかるに、被告A及びCは、原告に対して、本件点検口の危険性につき何ら説明せず、本件点検口から本件ダクトスペースに立ち入らないよう指示することもしなかったのであるから、Cないし被告Aには上記注意義務違反が認められる。 (被告Aの主張)10Cは、本件事故当日の作業開始前の段階で、原告に対し、点検すべき熱感知器等が記載されている本件建物の平面図を交付した上で、本件ダクトスペースには点検対象となる機器が設置されていないので入る必要はないが、本件点検口の先の本件ダクトスペースは床がなく、吹き抜けの状態になっているから立ち入らないようにとの注意喚起を行っていたのであり、被告A及びCに注意義務違反はない。 15本件事故は、原告が、Cから本件建物の平面図の交付や上記注意を受けていたにもかかわらず、Cから指示を受けることもなく、単独で点検箇所でない本件ダクトスペースに進入したことに起因するものであり、被告AやCの注意義務違反によって生じたものではないし、このような事故を被告AやCが予見することはできなかった。 20よって、被告A及びCに注意義務違反はない。 第3 争点3(被告Bの注意義務違反の有無)について【本件請求③関係】(原告の主張)被告Bは、本件建物の詳細図面の提供を受けるなどして、本件ダクトスペースが吹き抜けの状態で転落の危険性があることを把握し、原告に対してそれを踏まえ25た安全教育を実 係】(原告の主張)被告Bは、本件建物の詳細図面の提供を受けるなどして、本件ダクトスペースが吹き抜けの状態で転落の危険性があることを把握し、原告に対してそれを踏まえ25た安全教育を実施すべき注意義務があった。 32 しかるに、被告Bは、本件建物の詳細図面の提供を受けておらず、原告に対して本件点検口の危険性等について何ら教育を実施していないのであるから、被告Bには注意義務違反が認められる。 (被告Bの主張)被告Bが事前に本件建物の詳細図面の提供を受けていなかったことについては5認めるが、原告が主張するような注意義務を被告Bが負っていたという点については争う。 第4 争点4(過失相殺の可否等)(被告らの主張)本件事故は、原告の著しい不注意によって生じたものであるから、大幅な過失相10殺がされるべきである。 (原告の主張)争う。 第5 争点5(損害の発生及びその額)(原告の主張)151 入院治療費 1670万0444円⑴ 神戸市立医療センター 479万6626円⑵ F病院 992万2052円⑶ I病院 198万1766円2 通院治療費 27万1394円203 入院雑費 54万円(日額1500円、入院実日数360日分)4 通院交通費等 12万1130円⑴ F病院への通院交通費 9万4560円(往復5910円×通院実日数16日)⑵ 神戸市立医療センターからF病院への転院費用 2万6570円255 付添看護費用 220万8000円33 入院分 216万円(日額6000円、入院実日数360日)通院分 4万8000円(日額3000円、通院実日数16日)6 将来の介護費 5460万1080円日額8000円×365日×18.6 216万円(日額6000円、入院実日数360日)通院分 4万8000円(日額3000円、通院実日数16日)6 将来の介護費 5460万1080円日額8000円×365日×18.699(要介護期間56年のライプニッツ係数)57 症状固定日までの車椅子リース費用等 19万2128円車椅子リース費用 12万6000円(月額7000円×18か月)胸椎硬性コルセット費用 6万6128円8 将来の装具・購入費等 415万8789円⑴ 車椅子のリース費用 157万0716円(月額7000円×12か月×要10介護期間56年)⑵ 電動リクライニングベッド等 209万4082円ア 電動リクライニングベッド 91万1094円単価30万8000円、耐用年数8年の電動リクライニングベッドを7回買い替える必要がある。30万8000円×2.9581(買替係数)15イ 褥瘡用ベッドマット(医療用) 102万2336円単価23万1000円、耐用年数5年の褥瘡用ベッドマットを12回買い替える必要がある。23万1000円×4.4257(買替係数)ウ 車椅子褥瘡ノンプレッシャークッション 16万0652円単価3万6300円、耐用年数5年の車椅子褥瘡ノンプレッシャークッシ20ョンを12回買い替える必要がある。3万6300円×4.4257(買替係数)⑶ トイレ手摺等 49万3991円ア トイレ手摺 18万2056円単価6万1545円、耐用年数8年のトイレ手摺を7回買い替える必要が25ある。6万1545円×2.9581(買替係数)34 イ 玄関スロープ(アルミスロープ) 19万1229円単価6万4646円、耐用年数8年の玄関スロープを7回買い替える必要がある。6万4646円 万1545円×2.9581(買替係数)34 イ 玄関スロープ(アルミスロープ) 19万1229円単価6万4646円、耐用年数8年の玄関スロープを7回買い替える必要がある。6万4646円×2.9581(買替係数)ウ お風呂滑り止め対策マット 12万0706円単価2万7274円、耐用年数5年のお風呂滑り止め対策マットを12回5買い替える必要がある。2万7274円×4.4257(買替係数)9 家屋改造費等 45万円車椅子を利用してトイレ内に出入りできるように改修工事を行う必要があり、その工事費用は45万円を下らない。 10 文書費等 12万6750円10⑴ 神戸市立医療センターの入院証明書 1100円⑵ F病院の診療報酬明細等 11万6640円⑶ I病院の入院証明書等 9010円11 休業損害 470万4000円(日額8400円×休業期間560日)12 後遺障害逸失利益 9745万3836円15年額551万7400円(平成29年賃金センサス・学歴計・年齢計・男性)×労働能力喪失率100%(後遺障害等級第1級)×17.663(労働能力喪失期間44年に対応するライプニッツ係数)13 傷害慰謝料 311万7333円(入院実日数360日、通院実日数16日)14 後遺障害慰謝料 2800万円(後遺障害等級第1級)2015 損益相殺 ▲3880万0552円⑴ 療養補償給付 ▲1628万2370円⑵ 休業補償給付 ▲157万9219円⑶ 介護補償給付 ▲424万6020円⑷ 障害補償給付 ▲776万7355円25⑸ 障害基礎年金等 ▲892万5588円35 16 弁護士費用 1738万4433円17 合計 1億9122万8765円原告は、一 障害補償給付 ▲776万7355円 ⑸ 障害基礎年金等 ▲892万5588円 16 弁護士費用 1738万4433円 17 合計 1億9122万8765円原告は、一部請求として、被告らに対し、1億9075万1143円を請求する。 (被告らの主張)不知、否認ないし争う。 以上 別紙概略図1、2、3【省略】別紙既払金一覧表【省略】
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