平成16年4月12日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成11年(ワ)第6678号損害賠償請求事件(口頭弁論終結日平成16年3月17日)判決大阪市淀川区三津屋南a丁目b番c-d原告 X同訴訟代理人弁護士山田庸男同竹橋正明同李義同岡伸夫同中世古裕之同二宮誠行同小野昌史同西村勇作同中島光孝上記李義訴訟復代理人弁護士三好吉安大阪市北区国分寺2丁目3番19号大協ビル内被告医療法人協和会同代表者理事長 A同訴訟 被告医療法人協和会同代表者理事長 A同訴訟代理人弁護士夏住要一郎同田辺陽一同鈴江勝同田村雅嗣 主文 1 原告の主位的請求を棄却する。 2 被告は,原告に対し,2556万5405円及びこれに対する平成11年7月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の予備的請求を棄却する。 4 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 5 この判決は第2項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求被告は,原告に対し,1億2301万6628円及びこれに対する平成4年9月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告は,原告に対し,1億2301万6628円及びこれに対する平成7年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告が経営する北大阪病院(以下「被告病院」という。)に看護助手として勤務していた原告が,業務に従事中,入院中の患者に噛まれてC型肝炎,劇症肝炎及び敗血症等に罹 第2 事案の概要本件は,被告が経営する北大阪病院(以下「被告病院」という。)に看護助手として勤務していた原告が,業務に従事中,入院中の患者に噛まれてC型肝炎,劇症肝炎及び敗血症等に罹患したとして,被告に対し,安全配慮義務違反を理由として,主位的には民法709条に基づき,予備的に民法415条に基づき,損害賠償及びこれに対する遅延損害金を請求している事案である。 1 争いのない事実等(証拠により認定した事実については各項末尾に当該証拠を示す。)(1) 当事者ア原告(昭和48年11月30日生)は,平成4年3月21日に被告に雇用され,被告病院第2病棟の脳外科及び外科において看護助手として勤務する傍ら,同年4月1日から,B看護専門学校准看護科に通学していた。 イ被告は,被告病院を設置,経営する医療法人である。 (2) 事故の発生平成4年9月17日午前11時頃,被告病院の集中治療室において,脳内出血を発症して救急搬送されてきた男性患者(以下「本件患者」という。)がせん妄状態に陥り,ベッド上で激しく暴れたため,主任看護師の指示により,原告が数人の看護師とともに本件患者の体を押さえつける作業(以下「本件抑制作業」ともいう。)に従事中,いきなり本件患者に左前腕部を噛まれ,出血するという傷害を負った(以下「本件事故」という。)。 (甲14,29)(3) 原告の発病,入院経過等ア平成4年9月19日,本件患者がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染していることが判明したため,原告は,本件患者に噛まれたことを被告病院の上司に申告し,その指示により,被告病院内科で採血検査を受けたところ,HCV検査の結果は陰性と判断され,さらにその3か月後に再検査を受けたが,こ 明したため,原告は,本件患者に噛まれたことを被告病院の上司に申告し,その指示により,被告病院内科で採血検査を受けたところ,HCV検査の結果は陰性と判断され,さらにその3か月後に再検査を受けたが,このときも陰性と判断された。 イ原告は,平成5年3月初旬頃から高熱,倦怠感といった症状が出始め,同月8日に高熱,頭痛等を訴えて被告病院を受診し,同月9日に入院したが,同月10日,第一病院に転院し,そこで劇症肝炎と診断された。そして,原告は,同月11日,転院先の関西医科大学附属病院において,C型肝炎を発症していると診断された。 ウ原告は,平成5年10月19日から平成7年2月14日まで関西医科大学附属病院に入院した際,敗血症を発症していると診断され,以後,発熱,腹痛等の症状を訴えて,複数の医療機関に長期間入通院して治療を受けた。 (甲3の1・2,甲4の1ないし4)エ原告は,平成5年3月9日以降,平成14年2月26日まで別紙入院経過一覧表のとおり入院した。 (別紙入院経過一覧表「証拠」欄記載の証拠)(4) 原告及び本件患者のC型肝炎ウイルスの遺伝子型検査の結果ア平成12年3月,原告及び本件患者の血液を採取し,C型肝炎ウイルスの遺伝子型検査(HCV-RNAタイピング)をした結果,両名のC型肝炎ウイルスの遺伝子型はいずれも2bと判定された。 イ平成14年10月17日,改めて原告及び本件患者の血液を採取し,C型肝炎ウイルスの遺伝子型検査(HCVモニターゲノタイプ)をした結果,両名のC型肝炎ウイルスのゲノタイプがサブタイプのレベルで一致すると判定された。 (5) 労災保険給付等の受給ア労災認定及び労災保険給付(ア) プ)をした結果,両名のC型肝炎ウイルスのゲノタイプがサブタイプのレベルで一致すると判定された。 (5) 労災保険給付等の受給ア労災認定及び労災保険給付(ア) 原告は,淀川労働基準監督署長から,平成6年6月20日,C型肝炎罹患が業務上の災害に起因するものと認定され,平成7年10月4日,支給対象症病をC型肝炎,非特異性大腸炎,深在性真菌炎及び敗血症とする傷病補償年金の給付決定を受けた(支給事由発生年月日は同年9月30日)。 (甲18の1ないし4,甲21の1・2,淀川労働基準監督署に対する各調査嘱託の結果)(イ) 原告は,労災保険から,次のとおりの給付を受けた。 ① 療養補償給付 7136万9422円平成4年9月19日から平成15年11月30日までの支給分② 休業補償給付 231万1548円平成5年7月29日から平成7年9月30日までの支給分③ 傷病補償年金 969万9054円平成7年10月から平成16年1月(平成16年2月支給)までの支給分(甲18の1ないし4,21の1・2,27の1・2,28の1・2,49,淀川労働基準監督署(2回)及び大阪労働局に対する各調査嘱託の結果)イ障害厚生年金 1045万2508円原告は,平成6年10月から平成15年11月までの支給分として障害厚生年金合計1045万2508円の支給を受けた。 (甲26の1・ 1045万2508円原告は,平成6年10月から平成15年11月までの支給分として障害厚生年金合計1045万2508円の支給を受けた。 (甲26の1・2,淀川社会保険事務所に対する調査嘱託の結果) 2 争点(1) 被告の責任(2) 本件事故と原告のC型肝炎,劇症肝炎及び敗血症発症との因果関係(3) 本件事故と相当因果関係のある治療期間(4) 原告の後遺障害の内容・程度(5) 損害額 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(被告の責任)について【原告の主張】被告は,原告の使用者として労働契約上原告が被告の指示の下に労務を提供する過程において,原告の生命及び身体等を危険から保護すべき義務(安全配慮義務)を負っているところ,被告は,以下のとおり,この義務に違反したものであるから,主位的には民法709条,予備的に民法415条により,原告に生じた損害を賠償すべき責任を負う。 ア抑制作業を行わせてはならない義務本件抑制作業は,脳内出血に伴うせん妄状態の患者に対する看護業務そのものであるから,看護師以外の者をしてこれに従事させることはできない(保健師助産師看護師法31条)。また,抑制作業は,看護学校における指導カリキュラムに含まれている事項であり,しかも,本件患者は脳内出血に伴うせん妄状態にあり,被告病院に搬送されたときには既に暴れている状態にあったのであるから,本件患者を抑制するには通常よりも高度な抑制技術が必要であり,場合によっては本件事故のように抑制作業に従事している者が患者に噛みつかれる等の危害を加えられる可能性があった。 したがって,医療法人である被告が看護 も高度な抑制技術が必要であり,場合によっては本件事故のように抑制作業に従事している者が患者に噛みつかれる等の危害を加えられる可能性があった。 したがって,医療法人である被告が看護助手をして看護行為たる抑制作業に従事させたこと自体が病院にあるまじき行為であったのであり,また,原告は,いまだ十分に看護に関する教育を受けていない,看護学校に就学中の看護助手(見習い)であったのであるから,せん妄状態にある本件患者に対する抑制作業を原告に命じたことは危険に対する配慮をきわめて欠いた所為であり,被告に重大な安全配慮義務違反があったといわざるを得ない。 イ抑制作業を行わせるに当たって適切な指示・監督をすべき義務仮に,原告を本件抑制作業に従事させたことが許容されるとしても,脳内出血に伴うせん妄状態にある患者が抑制作業に当たった者に噛みつくなどの行為に及ぶことがあること及び当該患者が肝炎ウイルスのキャリアである場合当該患者に噛みつかれた者が肝炎に罹患することを被告は予見できたというべきである。 したがって,かかる事態を回避するため,被告は,雇い入れ時に,原告に対し,せん妄状態にある患者の抑制作業に従事する場合の方法等を教育すべき義務があったのであり,また,原告を実際にそのような患者の抑制作業に従事させる場合は,かかる事態を回避するための適切な指示・監督をすべき義務があったにもかかわらず,被告はこれを怠ったものである。 特に,原告は医療労働者としては未熟であったのであるから,本件抑制作業に従事させるとしても,①頭部・肩部付近ではなく,腹部・脚部付近の抑制をさせるか,あるいは,②頭部付近の抑制をさせるとしても,効果的に頭部を抑制する技能のある他の看護師等の補助としてのみ作業 制作業に従事させるとしても,①頭部・肩部付近ではなく,腹部・脚部付近の抑制をさせるか,あるいは,②頭部付近の抑制をさせるとしても,効果的に頭部を抑制する技能のある他の看護師等の補助としてのみ作業に従事させる等の配慮をなすべき義務があった。 【被告の主張】ア抑制作業を行わせてはならない義務があったとの点について(ア) せん妄状態にある患者に対する抑制作業は,高度な医学的知識・技術を要せず,看護師でなくとも患者に危害を与えるおそれはないから,看護師の業務である「診療の補助」に当たらない。また,せん妄患者に対する抑制が看護師の業務である「療養上の世話」に当たるとも考えられない。したがって,せん妄患者に対する抑制作業は,看護師の独占業務である「診療の補助」又は「療養上の世話」(保健師助産師看護師法5条)に該当しないから,看護助手である原告を本件抑制作業に従事させたことが同法違反であるとする原告の主張は失当である。 (イ) 仮に,原告を本件抑制作業に従事させたことが同法違反であるとしても,同法の目的は,「保健師,助産師及び看護師の資質を向上し,もって医療及び公衆衛生の普及向上をはかる」(同法1条)もので,看護を看護師の独占業務にしたのは,非看護師が看護業務を行うと医療サービスの低下を招くためであり,看護師等の職場環境の保全を図るのが目的ではないから,同法違反を理由に被告の安全配慮義務違反を論ずるのは失当である。 (ウ) せん妄状態にある患者が手足を激しく振ることはあっても,抑制作業従事者に噛みつくことはほとんどなく,また,人に噛まれたことによりC型肝炎に罹患したという報告は皆無に近いことからすれば,抑制作業中に同作業従事者がC型肝炎患者に噛まれてC型肝炎に罹患することなど予 事者に噛みつくことはほとんどなく,また,人に噛まれたことによりC型肝炎に罹患したという報告は皆無に近いことからすれば,抑制作業中に同作業従事者がC型肝炎患者に噛まれてC型肝炎に罹患することなど予見不可能であったというべきである。したがって,この点についての予見可能性があったことを前提にした原告の主張は失当というべきである。 イ抑制作業を行わせるに当たって適切な指示・監督をすべき義務があったとの点について(ア) 看護学校等において抑制方法について教育はされておらず,抑制のノウハウについて述べた文献も存在しないことからすれば,被告のなすべき抑制方法の教育,適切な指示・監督の具体的な内容は不明というべきであり,被告が負うとされる安全配慮義務の内容は特定されていない。 (イ) せん妄状態にある患者は手足を振ることが多く,頭部・肩部よりも腹部・脚部の方が危険なこともあり,腹部・脚部を抑制するのが安全であるとは一概にいえない。また,抑制の目的は自傷を回避するためであり,頭部を動かしたとしても自傷のおそれは少ないことから,頭部を抑制することは本来行われず,さらに,本件患者は脳内出血を患っており,頭部を抑制することは病状悪化を招くおそれが強く,禁忌とされる。 したがって,本件患者が原告に噛みつき,原告がC型肝炎に罹患することは予見不可能であったのであり,仮に予見できたとしても,本件抑制行為に関して講ずべき安全配慮義務の内容は特定できていないから,被告には回避可能性もなかったというべきである。 (2) 争点(2)(本件事故と原告のC型肝炎,劇症肝炎及び敗血症発症との因果関係)について【原告の主張】原告は,以下のとおり,①本件患者に噛まれたことによりC型肝 (2) 争点(2)(本件事故と原告のC型肝炎,劇症肝炎及び敗血症発症との因果関係)について【原告の主張】原告は,以下のとおり,①本件患者に噛まれたことによりC型肝炎に感染し,②C型肝炎により劇症肝炎を発症し,③劇症肝炎により肝臓の免疫機能障害を来して敗血症を発症したものである。 ア本件事故と原告のC型肝炎発症との因果関係原告は,本件事故前にC型肝炎に罹患したと思われる症状を呈したことは一切なく,C型肝炎ウイルス感染の原因は本件事故以外に考えられない。そして,原告のC型肝炎ウイルスと本件患者のC型肝炎ウイルスの遺伝子型は一致し,かつ,その遺伝子型の存在比率は8%という低率であることからすれば,本件患者に噛みつかれたことにより原告がC型肝炎を発症したことは明らかである。 なお,被告は,原告は劇症肝炎の治療のために使用された血漿によってC型肝炎ウイルスに感染したと主張するが,輸血血液は,平成元年頃からHCVスクリーニングがなされ,さらに平成3年から第2世代HCV抗体のスクリーニングが行われるようになって,C型肝炎ウイルスが輸血血液中に混入することは考えがたくなっており,前記血漿の輸血によって感染した可能性はきわめて低い。また,被告は,咬傷によるC型肝炎罹患は稀有であると主張するが,咬傷によってC型肝炎ウイルスに感染することは医学論文上も確認されているケースであるし,通常,人が人に噛みつくということ自体が稀有なことからすれば,咬傷による感染の報告例が少ないとしても何ら不思議でない。 イ本件事故と原告の劇症肝炎発症との因果関係原告については,C型肝炎ウイルスの感染が確認されているのみで,その他の肝炎ウイルスによる感染は確認されていな 思議でない。 イ本件事故と原告の劇症肝炎発症との因果関係原告については,C型肝炎ウイルスの感染が確認されているのみで,その他の肝炎ウイルスによる感染は確認されていない。原告の劇症肝炎はC型肝炎が劇症化したものというほかない。 ウ本件事故と原告の敗血症発症との因果関係原告は,劇症肝炎を発症したことにより肝臓の免疫機能障害を来し,食事を経口摂取してからしばらくすると必ず敗血症が起こり,高熱を発するようになった。 原告は,劇症肝炎に罹患する以前は通常人と同じように食事をしていたのであって,敗血症がみられるようになったのが劇症肝炎に罹患した後であることからすれば,本件事故により原告が発症したC型肝炎が劇症化して劇症肝炎になったことと原告の敗血症発症及び発熱との間に因果関係があると推認できる。 なお,被告は,原告の成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)が成人T細胞白血病(ATL)を引き起こし,それが原因で肝機能障害が生じた可能性を主張するが,平成7年11月7日に採血された血液の遺伝子検査では,HTLV-1プロウイルスは認められておらず,原告の肝機能障害が同ウイルスを原因とするものとは考えられない。 【被告の主張】ア本件事故と原告のC型肝炎発症との因果関係についてC型肝炎ウイルスの感染力は,そもそも血液を媒介にしても非常に弱いものである上,唾液に含まれるC型肝炎ウイルス量は血液に比べてきわめて少なく,血液又は唾液を介してC型肝炎ウイルスに感染する可能性は低いのであるから,原告が本件患者に噛まれたことによってC型肝炎を発症したとは考えがたいというべきである。原告がC型肝炎を発症したのは,劇症肝炎発症後に行われた血漿交換が原因 ルスに感染する可能性は低いのであるから,原告が本件患者に噛まれたことによってC型肝炎を発症したとは考えがたいというべきである。原告がC型肝炎を発症したのは,劇症肝炎発症後に行われた血漿交換が原因である(したがって,原告の劇症肝炎も,C型肝炎ウイルスによるものではない。)。また,C型肝炎ウイルスに感染する機会は,咬傷以外にも,性交渉,針刺し事故等,多数存在するのであって,原告のC型肝炎罹患を本件事故によるものと断定することはできないというべきである。。 なお,本件患者と原告のC型肝炎ウイルスのゲノタイプがサブタイプのレベルで一致したとの結果が出されているが,ゲノタイプ2bの患者が10個のサブタイプにどのような確率で分布しているかは明らかになっていないことから,同結果をもって,原告のC型肝炎ウイルス感染が本件患者に噛まれたことが原因であると特定することはできない。 イ本件事故と原告の劇症肝炎発症との因果関係について劇症肝炎の原因には,A型肝炎ウィルス,B型肝炎ウィルス,薬剤等が挙げられ,C型肝炎ウィルスによって劇症肝炎に罹患することはほとんどない。そして,原告には平成4年から北野病院の神経内科への通院歴があり,急性肝炎を来すおそれがあるとされる向精神薬を使用していたのであるから,原告の劇症肝炎は向精神薬による可能性があり,原告には自傷行為等の異常行動が認められたことからすれば,劇症肝炎発症前に大量に向精神薬を服用した可能性を否定できない。 したがって,仮に原告が本件患者に噛まれたことによってC型肝炎に罹患したとしても,劇症肝炎は他の原因による可能性が十分あると考えられる。 ウ本件事故と原告の敗血症発症との因果関係について(ア) 原告は,成人T細 とによってC型肝炎に罹患したとしても,劇症肝炎は他の原因による可能性が十分あると考えられる。 ウ本件事故と原告の敗血症発症との因果関係について(ア) 原告は,成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)のキャリアである。HTLV-1がヘルパーT細胞(リンパ球の一種)に感染すると,ヘルパーT細胞が腫瘍化し,成人T細胞白血病(ATL)を引き起こす。HTLV-1に感染されたヘルパーT細胞(ATL細胞)は,全身の諸臓器への浸潤傾向が強く,小腸を含む消化管へも高率に浸潤し,嘔吐,吐き気,腹痛,下痢,腹部膨張,便秘などの症状を呈する。また,免疫応答機能を司るヘルパーT細胞が冒されることにより,免疫機能低下に伴う種々の感染症の原因となる。さらに,多くの場合,ATLにより肝機能障害が起こるという報告もある。原告については,胃,十二指腸,結腸及び小腸のほぼすべてにリンパ球浸潤を伴う慢性炎症所見が認められるが,ATL細胞はリンパ球の一種であることからすれば,原告の諸臓器にATL細胞が浸潤し,嘔吐及び下痢等の症状を来していることが十分に考えられる。また,原告の劇症肝炎及び肝免疫機能低下もATLによる可能性が考えられる。 (イ) 劇症肝炎により肝臓の免疫機能不全を来したという症例報告はなく,肝臓の免疫機能不全により小腸機能不全を来したという報告例もない。したがって,原告の症状については,クッパー細胞等の処理能力を超えて腸内細菌が血液に侵入するという原告の小腸機能自体に問題のある可能性が考えられる。 (ウ) 平成5年6月7日より後の入院は肝機能障害ではなく,不明熱によるもので,発熱の原因となっている腸内細菌による菌血症の原因は特定できていない。原告が転院した大阪大学医学部附属病院では,肝機能と敗血症との関連 年6月7日より後の入院は肝機能障害ではなく,不明熱によるもので,発熱の原因となっている腸内細菌による菌血症の原因は特定できていない。原告が転院した大阪大学医学部附属病院では,肝機能と敗血症との関連は否定的に考えられている。原告にはC型肝炎発症前から不明熱の既往症を有し,C型肝炎と不明熱は全く関連性がないのであるから,少なくとも本件事故により原告がC型肝炎を発症したことと現在の原告の症状との間に因果関係がないことは明らかである。 (3) 争点(3)(本件事故と相当因果関係のある治療期間)について【原告の主張】原告は,平成5年3月9日から平成14年2月26日まで長期にわたって入通院治療を受けたものであるところ,入院の主な原因は,発熱・腹痛であり,このほかにカテーテル入れ替えのための入院もあった。これらは,いずれも劇症肝炎に起因する疾病である。 原告は,胆のう炎や腎臓結石との診断もされているが,一般的に,中心静脈栄養法を行うことによって,胆のうや腎臓に結石が生じやすくなるのであり,したがって,胆のう炎等は,本件事故の治療として行った中心静脈栄養法の副作用であり,本件事故と因果関係のある疾病ということができる。 なお,被告は,原告の精神科における治療を問題視するが,原告は,本件事故により,10代後半から20代の貴重な青春の期間のほとんどを,苦痛を伴う治療に費やしてきた。治療効果も望めない状態が続いていたのであり,このような状態に置かれれば,精神的に疲弊し,精神科の治療を必要とすること(しかも,そのための入院期間は全体の入院治療日数からすると,きわめて短期間であった。)はむしろ当然である。また,原告については,自傷行為の疑いがいわれているが,具体的にいかなる自傷行為があったかも明らか ,そのための入院期間は全体の入院治療日数からすると,きわめて短期間であった。)はむしろ当然である。また,原告については,自傷行為の疑いがいわれているが,具体的にいかなる自傷行為があったかも明らかにされていないし,そもそも原告自ら菌を体内に入れて熱発を招いているとした場合,そのような菌を素人が入手できるか疑問であり,およそ客観的な診断とは言いがたいものである。 【被告の主張】原告は,平成5年3月9日から平成14年2月26日までの入院を全て劇症肝炎に起因するものと主張しているが,①平成8年11月19日から平成10年2月1日までの大阪大学医学部附属病院入院時において反復性菌血症の原因は不明であるとされ,同月2日から6日までの入院時における貧血の原因も不明(自己脱血の可能性あり)とされていること,②平成13年8月28日から同年10月11日までの前記病院における入院は精神疾患によるものと認められること,③同年11月30日から同年12月7日までの西淀病院における入院は尿路感染症によるものと認められること,④同年12月26日から同月30日までの入院の原因となった発熱は自傷行為によるものではないかと疑われていること,⑤原告本人が菌を体の中にいれて発熱を招いている状況を母親が現認していること,⑥大阪大学医学部附属病院精神科でも虚偽性障害という診断のもとに原告は自傷行為等によって自ら反復性菌血症を招いているのではないかと疑われていることからすれば,平成8年2月14日以降の入院が劇症肝炎を原因とするものであるかは非常に疑わしい。 (4) 争点(4)(原告の後遺障害の内容・程度)について【原告の主張】原告の症状は,平成7年9月30日(労災傷病補償年金支給事由発生日),劇症肝炎後免疫不全症及びC型 (4) 争点(4)(原告の後遺障害の内容・程度)について【原告の主張】原告の症状は,平成7年9月30日(労災傷病補償年金支給事由発生日),劇症肝炎後免疫不全症及びC型慢性活動性肝炎の症状を残して症状が固定した。 前記障害は,後遺障害等級第2級第2号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し,随時介護を要するもの」に該当する。 原告は,現在も,劇症肝炎後免疫不全症及びC型慢性活動性肝炎に罹患した状態が継続しており,1週間あたり3日,インターフェロンの投与を受けている。また,C型慢性肝炎は,かなりの確率で肝硬変・肝癌へと移行する可能性がある。 【被告の主張】原告は,慢性肝炎とは認められず,正しくは無症候性キャリアという状況にある。無症候性キャリアとは,C型肝炎ウイルス血症を有しているが,血清トランスアミナーゼが1年以上継続的に正常値を示しているものをいい,患者は,自覚症状がほとんどない状態で,就労制限などあり得ず,予後もきわめて良好である(C型肝炎に感染すると約30%は慢性肝炎になるが,約25%は無症候性キャリアのままであり,その余は軽度の血清ALT異常を示すにすぎない。)。 仮に,原告が慢性肝炎であるとしても,慢性肝炎患者のほとんどは,自覚症状や他覚所見が軽度で経過することが多く,進行は緩徐であって,自覚症状も全身倦怠感,食欲不振といった程度であり,就労制限があるような症状は来さない。 また,原告のように,若年でHCV感染によりキャリアになった者は,進行速度もきわめて遅く,長期間の経過によっても,慢性肝炎の状態にとどまり,肝硬変・肝癌に移行するものはきわめて稀である。 さらに,原告は,現在,インターフェロン療法を受けているとのことであり,これによって,3 期間の経過によっても,慢性肝炎の状態にとどまり,肝硬変・肝癌に移行するものはきわめて稀である。 さらに,原告は,現在,インターフェロン療法を受けているとのことであり,これによって,30ないし40%の確率で肝炎ウイルスが血中から排除されることが期待できる。 (5) 争点(5)(損害額)について【原告の主張】ア治療費 240万1255円原告の治療のため,次の費用を要した。なお,前記のとおり,原告の症状固定日は平成7年9月30日であり,次の治療費には前記症状固定日以降の分が含まれているが,原告は慢性肝炎という不治の病に罹患したものであり,前記症状固定日以降も治療の必要があったものである。 (ア) 北大阪病院 6万6510円(イ) 第一病院 13万8680円(ウ) 関西医科大学附属病院 191万8690円(エ) 牧病院 1万2265円(オ) 水野病院 290円(カ) 南港病院 4万8900円(キ) 大阪府立病院 8040円(ク) 大阪回生病院 20万7880円イ入院雑費 267万1500円原告は,本件事故によるC型肝炎等のために,平成5年3月9日から平成14年2月26日までの間に,合計2055日間入院した。入院雑費は,1日当たり1300円が相当であるから,原告が要した入院雑費は267万1500円となる。 なお,前記 月9日から平成14年2月26日までの間に,合計2055日間入院した。入院雑費は,1日当たり1300円が相当であるから,原告が要した入院雑費は267万1500円となる。 なお,前記症状固定日以降の入院について,その必要性があったことは前記アと同様である。すなわち,劇症肝炎後免疫不全症及びC型慢性活動性肝炎は,症状固定後も治療の必要性があったのであり,原告の入院の主な原因は,発熱・腹痛であるが,劇症肝炎によって肝機能障害が発生し,それが発熱の原因となったものである。 ウ休業損害 570万3500円原告は,本件事故のために平成5年3月9日から入院治療を余儀なくされ,同日から平成7年9月30日(症状固定日)までの2年205日間,現実に就業できなかった。 原告は,その間,平成5年賃金センサス全労働者(18~19歳)の平均賃金である222万6500円の収入が得られたものであるから,これを基礎収入とすると,原告が被った休業損害は570万3500円となる。 (計算式) 2,226,500×(2+205/365)=5,703,500エ逸失利益8724万9360円(ア) 原告は,前記症状固定日後の平成7年10月1日から平成14年2月26日までの間は現実に就業することができず,また,それ以降も前記後遺障害のため,就労可能期間である67歳まで就業は一切不可能である。 (イ) 原告は,看護専門学校で就学中に本件事故にあったものであり,その後看護師の資格を取得している。したがって,原告については,本件事故当時,将来において看護師という有資格者として就業する蓋然性が高く,生涯を通じて全労働者の全年齢 に本件事故にあったものであり,その後看護師の資格を取得している。したがって,原告については,本件事故当時,将来において看護師という有資格者として就業する蓋然性が高く,生涯を通じて全労働者の全年齢平均賃金を得られる蓋然性が高かったのであるから,後遺障害逸失利益の算定の基礎収入としては,平成7年における全労働者の全年齢平均賃金487万9700円を用いるのが相当である。 (ウ) 就労可能年数である46年に対応するライプニッツ係数は17.88006650であるから,原告の後遺障害による逸失利益は次のとおり8724万9360円となる。 (計算式) 4,879,700×1×17.88006650=87,249,360オ入通院慰謝料 478万円本件事故に起因する疾病の治療のために,原告が入院した期間は2055日間であるから,これに対する慰謝料としては478万円が相当である。 カ後遺障害慰謝料 2150万円原告は,本件事故によって,後遺障害等級第2級第2号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し,随時介護を要するもの」に該当する劇症肝炎後免疫不全症及びC型慢性活動性肝炎の後遺障害が残されたのであるから,これに対する慰謝料としては2150万円が相当である。 キ弁護士費用1205万6418円本件については,着手金401万8806円,報酬803万7612円の合計1205万6418円が弁護士費用として相当である。 【被告の主張】損害額については争う。 ア相当な治療期間・入院期間について原告が主張する入院のすべてが劇症肝 が弁護士費用として相当である。 【被告の主張】損害額については争う。 ア相当な治療期間・入院期間について原告が主張する入院のすべてが劇症肝炎を原因とするものであるか疑問であることは,前記(3)【被告の主張】のとおりである。 イ入院雑費について原告は入院雑費を日額1300円で計算しているが,入院雑費は主に入院に伴い必要となる身の回り品の購入に充てられるもので,一旦購入した身の回り品は長期間にわたり使用可能であるから,入院が長期にわたる場合は漸次減額されるべきである。よって,100日目以降につき,100日ごとに1日当たりの入院雑費を100円逓減すべきである。 ウ入通院慰謝料について原告は重症であることを前提に入通院慰謝料を算定するが,原告の場合,一時的に意識障害が存したことがあると認められるものの,これを重症とはいいがたい。 エ後遺障害逸失利益について前記(4)【被告の主張】のとおり,原告の現在の状態は,無症候性キャリアに過ぎず,原告が仮に慢性肝炎に罹患していても,C型肝炎ウイルス感染による就労制限は生じないというべきである。現に,原告は,平成11年4月から平成13年3月2日まで,F看護専門学校に通学しており,平成13年からは友達と遊んだり,ダイビングに行ったりしている。そして,C型肝炎ウイルス感染により肝硬変・肝癌へ進行する割合は原告が主張するほど高くはない。これらの点を考慮すると,原告が主張するような後遺障害逸失利益は生じていないというべきである。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(被告の責任)について(1) 本件事故の状況等について争いのない事実,証 するような後遺障害逸失利益は生じていないというべきである。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(被告の責任)について(1) 本件事故の状況等について争いのない事実,証拠(甲14,29)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,平成4年3月に高校を卒業し,B看護専門学校准看護科に通学することを前提に,同月21日,被告に雇用され,被告病院第2病棟の脳外科及び外科で看護助手として勤務を始めた。 原告の被告病院における勤務時間は,休憩時間等を挟んで,午前8時30分から午後9時まで(土曜日は午後5時まで)であったが,看護専門学校の授業のある日(月水金の週3日)は,午後6時から午後9時までとされていた。 イ平成4年9月17日(木)午前9時頃,被告病院に脳内出血を発症した本件患者が搬送されてきた。同日午前11時頃,被告病院の集中治療室において,せん妄状態に陥っていた本件患者がベッド上で激しく暴れ始めたため,主任看護師は,数人の看護師及び原告に対し,本件患者の身体を押さえつけるという抑制作業を指示した。原告は,本件患者の左肩と左肘関節部を押さえるように指示され,これに従って,本件患者の左肩と左肘関節付近を手で押さえたところ,突然,本件患者が頭を上げて原告の左前腕部に強く噛みつき,原告は,その傷口から出血するという傷害を負った。 ウ原告は,本件事故前に,患者に対する抑制作業に従事した経験はなく,また,前記看護専門学校で抑制の方法,抑制作業に従事するときの注意事項等を学んだこともなかった。 (2) 被告の不法行為責任(主位的請求)について原告は,本件において,主位的に,法人である被告に対して,直接,民法709条の不法行為に基づく損 項等を学んだこともなかった。 (2) 被告の不法行為責任(主位的請求)について原告は,本件において,主位的に,法人である被告に対して,直接,民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求をしている(なお,原告は,本件において被告の使用者責任を請求するものではないと陳述し,また,民法44条に基づく被告の理事の故意または過失について主張・立証もしていない。)。 しかしながら,法人の不法行為責任については,我が国の実定法上,民法44条ないしは同法715条によるほかないと考えられ,法人について同法709条による直接の不法行為責任を認めることは困難であると解される。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の主位的請求は失当である。 (3) 被告の債務不履行責任(予備的請求)についてア使用者は,雇用契約上の付随義務として,労働者が労務提供のため設置された場所,設備若しくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において,その職種,労務内容,労務提供場所等の具体的状況等に応じて,労働者の生命,身体等を危険から保護するように配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている。 そして,原告が勤務していた病院等の医療現場においては,医療機関としての性質上,様々な身体・精神症状を呈する患者を受け入れ,その治療のために種々の医療器具や危険な薬品を使用したり,急患等の緊急事態にも対応する必要があるなど,患者のみならず,診療・看護に従事する職員にも危険が生ずる場合があり,特に,常に病原体による感染の危険にさらされているのであるから,使用者にあっては,管理体制を整え,適切な感染予防処置を講じるなど,被用者が安全に業務に従事できるように配慮すべき義務があると があり,特に,常に病原体による感染の危険にさらされているのであるから,使用者にあっては,管理体制を整え,適切な感染予防処置を講じるなど,被用者が安全に業務に従事できるように配慮すべき義務があるというべきである。 イところで,患者の抑制とは,患者を安全に保護するため,手または抑制材料(帯,ひも,拘束衣等)を用いて,体幹や四肢の一部を支えたり固定したりすることをいい,これは患者の自由を奪い,強制的に行う行為であるから,医学的・看護学的理由から患者の動きを制限する必要性を医師によって判断された場合にのみ行うとされている(甲19)。このように,抑制は,医師の指示に基づき,看護師(ないしはその指示に基づき准看護師)が行うのが原則であるが,医師・看護師等が,これら以外の無資格者に対し,いわばその手足としてその監督・監視のもとで,抑制の補助をさせることまでは一般的に禁止されていないと解される。本件においては,原告は,主任看護師の指示に従い,他の看護師とともに本件患者の身体の一部を押さえるという抑制作業の補助をしたに過ぎないものと認められ,したがって,原告に本件抑制作業の補助をさせたことをもって,保健師助産師看護師法31条1項あるいは同法32条に違反するものとは認められない。 しかしながら,前記のとおり,抑制は,患者の自由を奪う強制的な実力行使であり,その手段・方法を誤ったり,患者が抑制に非協力的で,これに抵抗した場合には,当該患者にのみならず,抑制作業従事者にも危険が生ずるおそれがあり(そうであるからこそ,患者に対しては抑制の必要性を説明し,協力を得る必要があるとされている。甲19),また,錯乱状態に陥って暴れている患者を抑制する場合はもとより,無意識状態にある患者を抑制する場合にも同患者が思わぬ行動に出て,抑制作業 必要性を説明し,協力を得る必要があるとされている。甲19),また,錯乱状態に陥って暴れている患者を抑制する場合はもとより,無意識状態にある患者を抑制する場合にも同患者が思わぬ行動に出て,抑制作業従事者が危害を加えられるおそれもあるというべきである。そして,患者の中には,病原体に感染している者もいるのであるから,抑制作業中に創部に触れて感染する等,抑制作業に従事する職員が病原体に感染するおそれも否定できない。 したがって,使用者としては,このような抑制作業に伴う危険性に配慮し,看護師・准看護師等以外の知識・経験を有しない被用者に抑制作業の補助を命ずるに当たっては,あらかじめ抑制の方法やその際の基本的な注意事項を説明するなどの教育を施し,また,抑制作業に習熟していない無資格者に対しては,重大な感染症に罹患している患者やせん妄状態にあって手足を振るなどして暴れている患者等,その抑制作業に伴う危険が大きい患者に対する抑制作業については,その補助を命ずべきではないと考えられる。 ウ本件においては,前記(1)のとおり,原告は,本件事故当時,看護専門学校に通学する傍ら被告病院に勤務してから約半年しか経過しておらず,それまで抑制作業に従事したこともなく,また,看護専門学校で抑制の方法やその場合の注意事項等を学んだこともなかったのであるから,このような原告に対しては,せん妄状態に陥りベッド上で激しく暴れている本件患者に対する抑制作業の補助を命ずべきではなかったと認められる。そして,被告において,このような患者に対する抑制作業に原告を従事させれば,抑制作業に習熟していない原告が,本件患者から暴行を受けて傷害を負い,それにより何らかの感染症に罹患することもありうることを十分に予見できたと認められる。 エ前記のと 告を従事させれば,抑制作業に習熟していない原告が,本件患者から暴行を受けて傷害を負い,それにより何らかの感染症に罹患することもありうることを十分に予見できたと認められる。 エ前記のとおり認められるところ,被告は,抑制作業中に本件患者が原告に噛みつき,原告がC型肝炎に罹患することは予見不可能であったとして,被告には責任がないと主張する。 しかしながら,抑制作業中に同作業従事者が患者から危害を加えられるおそれがあることは前記のとおりであり,また,医療現場においては,患者だけでなく,医療従事者の病原体感染に特に配慮する必要があるとされ,そのために日常的に発生する汚染事故や感染経路,汚染物質,予防具の使用法などを学習し,感染防止に努める必要があり(甲19),さらに,「患者の看護を行うにあたり,すべての看護婦やその他の医療従事者は,いかなる患者でもHIVやその他の血液により感染する病原体に感染している可能性がある,ということを認識する必要がある。 そのため,あらゆる状況において適切な感染予防処置を講じる必要がある。」(乙10)とされていることなどに照らすと,被告において,被告病院の医療従事者が,患者から危害を加えられ,何らかの病原体に感染することがありうることについての予見可能性があったというべきであり,この点に関する被告の主張は採用できない。 オ以上によれば,被告は,被用者である原告に対する安全配慮義務を怠り,原告をして本件患者に対する抑制作業の補助をさせた結果,本件事故が発生したのであるから,民法415条に基づき,本件事故によって原告が被った損害を賠償すべき責任がある。 2 争点(2)(本件事故と原告のC型肝炎,劇症肝炎及び敗血症発症との因果関係)について(1) 原告の症状及び治療経過 基づき,本件事故によって原告が被った損害を賠償すべき責任がある。 2 争点(2)(本件事故と原告のC型肝炎,劇症肝炎及び敗血症発症との因果関係)について(1) 原告の症状及び治療経過等について争いのない事実,証拠(甲2の1・2,3の1・2,4の1ないし4,5の1ないし5,14ないし17,22,25,29,37ないし43,44の1・2,45の1・2,46ないし48,乙11ないし13,15の1・2,17,20の1ないし4,証人C,同D及び同Eの各供述書,第一病院,関西医科大学附属病院,牧病院,水野病院,南港病院,大阪府立病院,大阪大学医学部附属病院,大阪回生病院,大阪中央病院,東大阪病院,聖徒病院,河村病院,西淀病院,大阪市立総合医療センター,南大阪病院,大阪労働局に対する各調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる(各項末尾に記載した証拠は当該事実を認定するに当たり特に用いた証拠である。)。 ア(ア) 原告は9歳のときに扁桃腺の切除,平成4年6月に左卵巣嚢腫により左卵巣摘出手術を受けたことがあるが,これ以外に本件事故前に観血的手術を受けたことはなく,また,輸血を受けたこともなかった。 (イ) 原告は,不明熱のために,平成元年3月10日から同年5月6日まで大阪市立十三市民病院に入院したことがある。また,15歳の頃から過換気症候群の発作が出て,抑うつの傾向が認められるとして,平成4年に北野病院神経内科を受診している。 (ウ) 原告は,本件発症に至るまでC型肝炎による症状を訴えたり,肝機能の異常を指摘されたことはなく,食事も普通にとれていた。 (甲25,29,乙11ないし13,19)イ原告は,本件抑制作業終了後,噛まれた左 炎による症状を訴えたり,肝機能の異常を指摘されたことはなく,食事も普通にとれていた。 (甲25,29,乙11ないし13,19)イ原告は,本件抑制作業終了後,噛まれた左前腕部の傷口を流水で洗浄し,消毒する応急手当てを受けたが,平成4年9月19日になって,本件患者がC型肝炎ウイルスに感染していることが判明したため,同日,被告の指示に従い,被告病院内科において採血検査を受けたところ,HCV検査の結果は陰性と判断され,その3か月後の同年12月にも再検査を受けたが,このときも陰性であった。 (甲14,29)ウ原告は,平成5年3月6日頃から,全身倦怠感,39℃台の発熱,嘔気及び嘔吐の症状が出るようになり,同月8日,高熱と頭痛を訴えて被告病院で受診したところ,肝機能障害を指摘されて同月9日に被告病院に入院し,同月10日,第一病院に転入院した。被告病院での肝機能検査の結果,原告のGOTは1462(正常値は11-35),GPTは1194(正常値は3-36),LDHは2518(正常値は240-400)であったが,第一病院における肝機能検査結果は,GOTが4899,GPTが3051,LDHが6839とさらに悪化して,意識障害も認められたため,原告は,劇症肝炎と診断され,同月11日午後,関西医科大学附属病院の循環器集中治療室に救急搬送された。 前記搬送時,原告は,肝性昏睡Ⅲ度の状態にあり,関西医科大学附属病院においても,極度の肝機能障害,凝固因子の低下等から,劇症肝炎と診断され,同日夕方から,原告に対して,血漿交換等の集中治療が施されたところ,同月12日から原告の肝機能が改善し始め,同月15日頃には原告の意識障害も改善した。 原告については,その後も夜間に38℃前後 ,原告に対して,血漿交換等の集中治療が施されたところ,同月12日から原告の肝機能が改善し始め,同月15日頃には原告の意識障害も改善した。 原告については,その後も夜間に38℃前後の発熱が見られ,その原因解明のための検査等が行われたが,発熱原因は判明しないまま,同年6月7日,第一病院に転院し,同年7月16日に同病院を退院した。なお,関西医科大学附属病院において,原告は,精神的動揺が激しく,せん妄及び気分の変調等の症状が継続的に認められた(この点については,心療内科または精神科の受診も必要と判断されていた。)。 (甲3の1・2,4の1ないし4,5の1・3・4・5,29,乙11,13)エ原告は,第一病院退院後も発熱が続き,平成5年7月20日頃からは全身の倦怠感を訴えるようになり,同月26日,検査・加療目的で被告病院に入院したところ,入院時の血液検査で肝機能障害が認められたため,点滴,安静等の治療がなされた(診断名はC型慢性肝炎,不明熱[合併症])。同病院においても,40℃に達する発熱の原因を究明するための検査が行われたが,その原因を解明することができなかったため,さらに検査・加療する目的で,原告は,同年10月19日,関西医科大学附属病院に転院した。 (甲3の1・2,5の1ないし5,乙12)オ原告については,関西医科大学附属病院に入院してからも連日40℃前後の発熱が認められ,その高熱は抗生剤投与により一時的に軽快するものの,すぐに再発し,高熱・倦怠感が誘因となって,不眠,けいれん及び意識消失等の精神症状が出現し,発熱が長期化した場合は,精神状態が悪化して,膀胱カテーテルを自ら抜去したり,治療を拒否するなどの振る舞いに及んだほか,自殺を図ろうとしたこともあった。 れん及び意識消失等の精神症状が出現し,発熱が長期化した場合は,精神状態が悪化して,膀胱カテーテルを自ら抜去したり,治療を拒否するなどの振る舞いに及んだほか,自殺を図ろうとしたこともあった。 同病院においても,発熱の原因を究明するため種々の検査が行われたが,注腸,大腸ファイバー及び胃カメラによる検査では異常は認められず,また,発熱時に下痢や腹痛といった消化器症状も認められなかった。しかし,発熱時の原告の静脈血及び中心静脈カテーテルから,腸内に常在する腸球菌,大腸菌,緑膿菌,シトロバクター,モルガネラ及びカンジタ等が検出され,そのうちのいくつかは原告の便培養でも検出された。そして,原告に対する肝シンチグラフィーで網内系機能の低下を推測させる所見が得られたため,同病院医師は,原告の症状を肝臓免疫機能低下による敗血症(細菌が血中に入り全身を循環して増殖し,一種の中毒症状を伴う細菌感染症)及びそれによる発熱と診断した。この診断に基づき,原告に対して内服加療と経腸栄養を主とした食事療法が実施されたところ,原告の症状は軽快し,平成7年2月14日,同病院を退院した。 (甲3の1・2,4の1ないし4,5の3ないし5,25,乙11)カ原告は,関西医科大学附属病院を退院した後も,同病院に通院して治療を受けていたが,同年3月10日頃から,再び発熱の症状を訴えるようになり,同月28日に牧病院に入院し,さらに同月29日に前記附属病院に転院した(入院時に付された診断名は敗血症)。原告は,同病院において,敗血症に対する治療として,絶食,中心静脈栄養及び抗菌剤投与などを受け,これらの治療により敗血症の症状は軽快したが,経口食が開始されると,再び敗血症の症状が現れるため,適宜,抗菌療法等が続けられた。原告は,平成8年2月1 ,絶食,中心静脈栄養及び抗菌剤投与などを受け,これらの治療により敗血症の症状は軽快したが,経口食が開始されると,再び敗血症の症状が現れるため,適宜,抗菌療法等が続けられた。原告は,平成8年2月14日,前記附属病院を退院し,その後も,ときどき同病院に通院して治療を受けていた。 (甲4の1ないし4,5の4・5,乙11)キ原告は,平成8年2月16日から同年3月21日まで水野病院に,同日から同年4月2日まで牧病院にそれぞれ入院したが,同日から敗血症により関西医科大学附属病院に転入院して治療を受け,同年6月14日退院した。しかし,原告は,同月21日から南港病院に入院し,さらに同年7月8日,大阪府立病院に転入院した。 原告は,大阪府立病院において,敗血症,大葉性肺炎及びC型慢性肝炎と診断されて治療を受けたが,腸内細菌,カンジダによる敗血症を頻繁に発症し,食事をすると敗血症の症状が誘発されるため,原告に対しては中心静脈栄養法が施行された。 (甲38,乙11,水野病院・牧病院・南港病院・大阪府立病院に対する各調査嘱託の結果)ク(ア) 原告は,平成8年11月19日,腸内細菌による菌血症(敗血症)の原因を精査し治療を受ける目的で,大阪府立病院から大阪大学医学部附属病院消化器内科に転入院した。原告については,それまでの約2年間にわたり,絶食の上,経管栄養法が施行されていたが,同病院医師の判断により,同月22日に経管栄養ルートが抜去され,徐々に経口による栄養摂取が開始されたところ,原告は,長期間絶食に慣れていたことから,食事を十分に摂取することができず,経口食だけでは栄養不十分と考えられ,同年12月4日,経管栄養法が再開された(経口栄養との併用)。その後,原告は,同月19日頃から3 期間絶食に慣れていたことから,食事を十分に摂取することができず,経口食だけでは栄養不十分と考えられ,同年12月4日,経管栄養法が再開された(経口栄養との併用)。その後,原告は,同月19日頃から38℃以上の発熱を繰り返すようになり,各種抗生剤の投与を受けるなどの治療を受けたが,この後も,発熱等の敗血症の症状の増悪と改善を繰り返した。また,原告は,同病院入院中,2回ほど,MRSA感染で専用の個室に隔離されたこともあった。 (イ) 原告は,同病院入院中の平成9年10月4日,右下腹部痛を訴え,同月5日には腹部全体に疼痛等が認められたため,開腹手術の結果,虫垂炎及びそれに伴う腹膜炎と診断され,虫垂切除,腹腔内洗浄等の治療を受けた。なお,このとき原告の腹腔内を観察したが,特段の異常所見は認められず,敗血症等の原因について確認することはできなかった。 (ウ) 原告は,引き続き同病院に入院して治療を受けていたが,原告については,長期間の入院によりストレスを募らせている様子が窺われた上,退院してからの生活(社会復帰)を考慮する必要があるとして,同年12月中旬から外泊が許可されるようになった。そして,原告については,たびたびの外泊によっても特段の問題は生じていないと判断され,平成10年2月1日,同病院を退院するに至った。なお,原告については,完全経腸栄養は難しいと判断され,退院前の同年1月16日,自分で栄養液等を点滴補給する在宅中心静脈栄養のためのブロビアック式のポートが原告の右鎖骨下に埋め込まれた。 (エ) 同病院においても,繰り返し発症する敗血症の原因ないしは原病巣を発見するため,種々の検査が行われたが,明らかな免疫機能低下を示す所見は認められないとされ,原告の発熱等の原因について,いくつかの可能性が指摘 においても,繰り返し発症する敗血症の原因ないしは原病巣を発見するため,種々の検査が行われたが,明らかな免疫機能低下を示す所見は認められないとされ,原告の発熱等の原因について,いくつかの可能性が指摘されたものの,結局,長期間にわたって感染を繰り返す原因は不明であるとされた。なお,原告のC型慢性肝炎については,同病院入院時に軽度の肝機能異常が認められたものの,比較的落ち着いた状態が続き,退院後も肝機能検査値(AST[GOT],ALT[GTP])は正常範囲内を維持していた。 (オ) 原告は,同病院に入院中,身体状態が安定しているときは,闘病に対し前向きになり,現状を受け入れているように見えるが,病状が悪化したり発熱が続き,治療が予定どおり進まないと,投げやりになったり,情緒不安定となり,抑うつ状態に陥ったり錯乱状態となり,病院内徘徊,無断外出,治療拒否などの問題行動を起こしていた。特に,平成9年5月頃からは,入院が長期化し,治療がうまくいかないとして,投げやりな気持ちが強くなって,問題行動が目立つようになり,検査や治療に対する不満等から自傷行為を図ろうとすることもあったため,同病院では消化器内科等と神経科精神科との共観とされていた。そして,退院させるに当たっては,原告の精神状態がいちばんの問題であり,退院後の精神状態の支えとなるべき人物が不在であり,現状のままでは退院後早期に精神状態の破綻を来すおそれもあるという心配もされていた。 なお,原告は,同病院退院後は看護専門学校に通いたいと考え,そのための勉強もしていたが,一方で,長期間,社会・家庭から離れて入院生活を続けてきたことから(別紙入院経過一覧表1ないし14のとおり,平成5年3月9日から平成10年2月1日までの約4年11か月のうち,約4年9月間入院生活 が,一方で,長期間,社会・家庭から離れて入院生活を続けてきたことから(別紙入院経過一覧表1ないし14のとおり,平成5年3月9日から平成10年2月1日までの約4年11か月のうち,約4年9月間入院生活を続けていた。),うまく社会復帰できるか不安に思う気持ちも強かった。 (カ) 原告については,平成10年1月21日,大阪大学医学部附属病院のC医師により「障害名小腸機能障害」,「経過・現症平成5年劇症肝炎を発症して以降,経口摂取を開始すると反復性の菌血症が惹起され,発熱・下痢を生ずることから,慢性的に栄養状態の不良な状態が続いている。」,「総合所見現時点では,半永久的に中心静脈栄養による管理が必要と考えられ,小腸の機能障害に対する身体障害者認定が必要と思われる。」とする診断書が発行され,原告は,同日,大阪市から「自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される小腸機能障害」があるとして1級の身体障害者手帳の交付を受けた。 (甲2の1・2,29,39,乙11,証人Dの供述書)ケ原告は,平成10年2月2日,急激な貧血が原因で大阪大学医学部附属病院消化器内科に緊急入院した。輸血によって貧血は改善し,同月6日に退院したが,内視鏡検査や腹部CT検査等によっても,貧血について明らかな出血源は特定されなかった。 原告の貧血の原因について,同病院のD医師らは,原告の母親が,自宅で内面が血で塗れたペットボトルを発見したと申告したことや,入院中には貧血の進行がなかったことなどから,原告がブロビアック式中心静脈ルートから自己脱血した可能性が高いと考え,退院の際,原告の母親に対し,原告の様子によく注意するように指示した。 (乙11)コ原告は,前記退院後,在宅で療養していたが, ートから自己脱血した可能性が高いと考え,退院の際,原告の母親に対し,原告の様子によく注意するように指示した。 (乙11)コ原告は,前記退院後,在宅で療養していたが,その後もたびたび発熱等の発症を繰り返し,別紙入院経過一覧表16ないし22のとおり,敗血症及び貧血により,平成10年2月26日から平成11年1月29日まで,大阪回生病院に合計66日間入院して治療を受けるなどしていたが,同年4月6日には,F看護専門学校(准看護科)に入学し,平成13年3月2日に卒業した。 原告は,同校に在学中にも,たびたび発熱,めまい,腹痛,全身倦怠感,体調不良等を訴え(そのため,同校では,補液状況の変化や急変時に備えて,常にベッドを確保し,医師への緊急連絡態勢をとっていた。),別紙入院経過一覧表23ないし30のとおり,反復性敗血症,胆石,胆のう炎,慢性活動性C型肝炎,免疫力低下による炎症性腸疾患等と診断されて,大阪回生病院,南大阪病院及び大阪中央病院に入院して治療を受けた。なお,原告は,平成12年6月16日から同月21日まで大阪中央病院に入院した際に,在宅での中心静脈栄養管理のため,埋め込み式中心静脈栄養用カテーテル留置手術を受けた。 (甲41,42,乙15の1・2,大阪回生病院・南大阪病院・大阪中央病院に対する各調査嘱託の結果)サ原告は,前記看護専門学校卒業後も,たびたび発熱,腹痛などを訴え,別紙入院経過一覧表31ないし33のとおり,反復性敗血症,慢性活動性C型肝炎,急性腹症,敗血症(疑い),不明熱等と診断されて,大阪回生病院,聖徒病院及び大阪中央病院に入院した。 その一方で,原告は,平成13年4月から同年7月初めまで,兵庫県内の看護専門学校に通学し,同年6月には ),不明熱等と診断されて,大阪回生病院,聖徒病院及び大阪中央病院に入院した。 その一方で,原告は,平成13年4月から同年7月初めまで,兵庫県内の看護専門学校に通学し,同年6月には沖縄にダイビングに行くなどしていたが,同年7月に同校を休学し,別紙入院経過一覧表34及び35のとおり,同月9日から同月16日まで及び同月30日から同年8月28日まで,劇症肝炎後肝機能障害,敗血症,脱水及び顆粒球減少症と診断されて,河村メディカルクリニックに入院した。なお,原告は,大阪大学医学部附属病院に入院できなかったことに対する不満から,河村メディカルクリニックにおいて自殺を企図したことがあった。 (甲29,乙20の2,大阪回生病院・聖徒病院・大阪中央病院・河村メディカルクリニックに対する各調査嘱託の結果)シ原告については,その症状が一向に改善しないことなどから,心因性疼痛の疑いが持たれ,平成13年4月23日,大阪大学医学部附属病院神経科精神科に紹介され,原告は,外来で同科の診療を受け始めたが,発熱や腹痛等の症状が頻回に出現したため,第一内科,小児外科等の他科を受診するようになった。しかし,原告については,症状の出現態様等に不自然な点が多く,内科的疾患としては説明困難であるとして,精神科的疾患を疑われ,同年8月28日,精査目的で同病院神経科精神科に入院し,心因性疼痛,虚偽性障害,人格障害,詐病等の精神疾患に罹患している疑いがあると診断された。 また,原告については,同年8月28日,それまで行われていた中心静脈栄養法が中止されて静脈カテーテルが抜去され,経口・経鼻による栄養摂取法に変更された。原告については,これらの方法による栄養摂取でも,発熱等が認められなかったことから,中心静脈栄養法による栄養 静脈栄養法が中止されて静脈カテーテルが抜去され,経口・経鼻による栄養摂取法に変更された。原告については,これらの方法による栄養摂取でも,発熱等が認められなかったことから,中心静脈栄養法による栄養摂取は必要がないと判断され,同病院における経過観察の後,平成13年10月11日に同病院を退院した。 (甲43,乙20の1ないし4,証人E,同D及び同Cの各供述書)ス原告は,前記大阪大学医学部附属病院を退院後,38℃の発熱や左上肢の疼痛を訴え,平成13年10月13日,西淀病院を受診し,左上肢の疼痛については,大阪大学医学部附属病院で筋肉注射をされたものであると申告した。西淀病院医師が診察したところ,左上肢の筋肉注射部位に腫れ及び圧痛が認められ,指も突っ張って動かしにくい状態であったので,左上腕蜂窩織炎の疑いで同日から同月23日まで同病院に入院して手当てを受けた。 原告は,同年11月27日頃から39℃台の発熱が出現し,翌日から左背部痛や嘔吐の症状が出て,自宅前にうずくまっているところを発見され,同月30日,西淀病院に入院した。原告の症状及び同病院における検査結果で,発熱・炎症の病巣は尿路と判断され,治療が施されたところ,熱も治まり,炎症反応も陰性化したが,その後も自力排尿が不可能な状態が続き,1日1回以上の突発的な発熱が出現するなどした。原告については,下痢がない点で非典型的であるものの,腹痛や悪心などの消化器症状があり,病巣は消化管という疑いがあるが,一方,自己排尿がなく,残尿が慢性的に存在することによる反復性の尿路感染症(神経因性膀胱による慢性尿路感染症)が,諸々の引き金によって容易に急性増悪して高熱を呈するという疑いが強いとされた。なお,入院中,原告の肝障害の増悪はなかった。また,原告の健康状態 性の尿路感染症(神経因性膀胱による慢性尿路感染症)が,諸々の引き金によって容易に急性増悪して高熱を呈するという疑いが強いとされた。なお,入院中,原告の肝障害の増悪はなかった。また,原告の健康状態については「28歳だが,身体的には老人のレベルと変わらず,長期入院はADL(日常生活活動度)低下につながる。」(同年12月5日付け入院診療録)と診断されていた。 原告は,同年12月7日に西淀病院を退院後,ダイビングに行ったり,自ら自動車を運転して京都市内に墓参りに行くなどしていた。しかし,原告は,同月26日になって,発熱及び吐き気の症状を訴えて西淀病院を受診し,高熱,血圧低下等が認められたため,敗血症ショックと診断されて入院して治療を受けたところ,次第に熱も下がったので,同月30日に退院した。なお,同病院医師も,大阪大学医学部附属病院神経科精神科医師からの情報で,今回の発熱は自傷行為の一つではないかという疑いを持っていた。 (乙20の1ないし4)セ原告は,その後も発熱等により,平成14年2月8日から同月26日まで,大阪市立総合医療センターに入院するなどしていたが,同年3月18日,大阪大学医学部附属病院において,神経科精神科のE医師と中心静脈栄養法の指導管理担当のC医師の診断を受けた。 E医師は,同日における原告の状態について,身体状態的には,通常の就労が可能であるが,心因性疼痛,虚偽性障害,人格障害及び詐病等の精神疾患が依然として継続している可能性が高く,これらの精神疾患は対人関係や社会適応に否定的影響を及ぼす場合が多いため,原告の就労能力は通常人に比し一定の制限を受けていると判断した。 また,C医師は,原告については,経口摂取がほぼ十分に可能で,血液検査上も著 応に否定的影響を及ぼす場合が多いため,原告の就労能力は通常人に比し一定の制限を受けていると判断した。 また,C医師は,原告については,経口摂取がほぼ十分に可能で,血液検査上も著変が認められず,中心静脈栄養法による栄養摂取は必要ないと判断し,休学していた看護専門学校に原告が復学することも可能と診断した。原告のその当時の就労能力について,同医師は,重労働作業以外であれば就労可能であり,原告の就労能力が通常人より制限されているとすれば,その原因は身体的な面よりも精神的な面が大きいのではないかと判断していた。 (証人E及び同Cの各供述書,大阪市立総合医療センターに対する調査嘱託の結果)ソ原告は,前記大阪市立総合医療センター退院後,自宅で療養しながら,ときどき大阪大学医学部附属病院等に通院していたが,大阪市立十三市民病院において胆石胆のう炎の手術を受ける予定で待機中,敗血症性ショックを来し,平成14年7月16日,同病院に緊急入院した。入院時,異常な免疫低下が認められ,その原因は劇症肝炎後免疫不全症であると考えられ,その手当てを受けるとともに胆石胆のう炎の手術を受け,同年12月12日,同病院を退院した(入院中の診断名は,①劇症肝炎後免疫不全症,②C型慢性活動性肝炎,③胆石胆のう炎)。原告は,入院中,発熱,腹痛,歩行困難(両下肢脱力,腱反射亢進の所見も認められた。),排尿障害等を訴え,原告の精神状態については,自己の病状に対し精神的に不安定であるとして,常に他人の厳重な注意を要するとされていた。 (甲46,大阪労働局に対する調査嘱託の結果)タ原告は,C型慢性肝炎の治療のため,平成15年3月14日から同年4月8日まで大阪府済生会中津病院に入院して,連日,インターフェロンの投 (甲46,大阪労働局に対する調査嘱託の結果)タ原告は,C型慢性肝炎の治療のため,平成15年3月14日から同年4月8日まで大阪府済生会中津病院に入院して,連日,インターフェロンの投与を受け,同病院退院後も,往診によるインターフェロン投与などの治療を受けているほか,同年4月以降も,中川整形外科クリニック,兵庫県立総合リハビリテーション中央病院等に通院して治療を受けている。 (甲47,48,大阪労働局に対する調査嘱託の結果)(2) C型肝炎の病態,感染経路,予後等証拠(甲17,23ないし25,30ないし34,乙1の1・2,2ないし6,21ないし29,31)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア C型肝炎の病態(ア) C型肝炎とは,ウイルス性肝炎のうち,C型肝炎ウイルス(HCV)によって感染,発症するものをいう。C型肝炎は,C型肝炎ウイルス感染後,急性肝炎として発症するが,その潜伏期は,通常,C型肝炎ウイルス感染後30日ないし150日であり,平均で50日程度とされ,発熱,全身倦怠感などの感冒様症状に引き続き,食欲不振,悪心,黄疸などの症状を呈し,その後は他の急性肝炎と比較して慢性化(慢性肝炎に移行)しやすいとされる。ただし,C型急性肝炎では,他の急性肝炎に比較して,発熱,黄疸,倦怠感などの症状は軽いことが多いとされている。 (イ) 急性肝炎の最も重篤な病態が劇症肝炎であり,C型肝炎の劇症肝炎では亜急性型が多く,予後はきわめて不良であるとされる。ただし,C型劇症肝炎の発生頻度はそれほど多くないとされている。 (ウ) HCV抗体陽性者は,全国で230万人存在するといわれているが,その分布状況は年齢が高まるにつれて多くなり る。ただし,C型劇症肝炎の発生頻度はそれほど多くないとされている。 (ウ) HCV抗体陽性者は,全国で230万人存在するといわれているが,その分布状況は年齢が高まるにつれて多くなり,高齢者ほど陽性率が高く,20歳未満の者の陽性率は0.2%程度であるとされる(甲23,32)。 (エ) C型肝炎ウイルスの遺伝子型は,HCV-RNAの塩基配列の相違から,1a,1b,2a,2b,3a,3bの6つのタイプに分類され,我が国においては,1bが約70%,2aが約17ないし20%,2bが約8ないし10%,3aが約1%を占め,1a及び3bは稀であるとされている(甲17,乙4)。 イ C型肝炎の感染経路等(ア) C型肝炎は,主として血液を介して感染し,主な感染経路としては,C型肝炎ウイルスを含有する血液,血液製剤(血漿,血球,フィブリン等)の輸血のほか,医療従事者の針刺事故,滅菌が不十分な医療器具による観血的医療行為(注射,手術等),入れ墨,鍼治療,覚せい剤等の静脈注射の回し打ちなどの経皮感染が挙げられている。このうち,従前は輸血による感染が多かったが,平成元年から供血者血液の第一世代HCV抗体によるスクリーニングが開始されて以降,輸血によるC型肝炎の感染が激減し,その後,さらに精緻なHCV抗体検査が実施されるようになって,輸血及び血液製剤を感染源とするC型肝炎の感染はほとんどなくなったとされる。 (イ) 唾液による感染については,ヒトの唾液中にC型肝炎ウイルスそのものの存在をきわめて強く推認させるC型肝炎ウイルス遺伝子が存在することが確認されており,喧嘩の際にC型肝炎患者に噛まれて感染した例や,チンパンジーにHCV陽性の唾液を注射したところC型肝炎に感染した例も報告されており,C型 認させるC型肝炎ウイルス遺伝子が存在することが確認されており,喧嘩の際にC型肝炎患者に噛まれて感染した例や,チンパンジーにHCV陽性の唾液を注射したところC型肝炎に感染した例も報告されており,C型肝炎ウイルスを含む唾液を介してC型肝炎を発症することもありうるとされているが,血液と比較すると唾液中のC型肝炎ウイルスは低濃度であり,唾液を介した直接的な感染可能性はかなり低いといわれている(甲24,25,35の1・2,乙1の1・2)。 ただし,唾液による感染については,血液が混入しない限り,唾液そのものが感染源になることはないという見解もある(乙3)。 (ウ) 性行為によるC型肝炎感染の可能性も指摘されているが,これによる感染はきわめて稀であるとされている(乙2)。 ウ C型肝炎の予後C型肝炎は,自然に治癒する例もあるが,そのような例は少なく,多くは,発症後,慢性肝炎になり,慢性肝炎に移行後は,自然治癒する例はきわめて稀となり,その症状は徐々に進行し,初感染から20年ないし30年後に肝硬変に進展する確率が高く,肝硬変に至った場合は,肝細胞癌を合併することが多いとされている。ただし,最近の研究で,HCVに感染した者が高率で肝硬変,肝細胞癌へ進展するということはなく,HCVに感染しても肝機能が長期間正常で予後良好な患者も多く認められるとするものもある(乙24,29)。 エ C型肝炎に対する治療法C型慢性肝炎に対する治療法として,C型肝炎ウイルスの肝細胞からの排除を目的とした抗ウイルス療法と,肝細胞の変性,壊死,繊維化の進展阻止を目的とした肝臓用剤投与とがある。このうちの抗ウイルス療法であるインターフェロン(IFN)療法は,その治療効果は,HCVの遺伝子型,治療開始前のHCV ス療法と,肝細胞の変性,壊死,繊維化の進展阻止を目的とした肝臓用剤投与とがある。このうちの抗ウイルス療法であるインターフェロン(IFN)療法は,その治療効果は,HCVの遺伝子型,治療開始前のHCV量等と関連し,良好な成績を上げうる場合もあるが,同療法では約30%の症例にしかウイルス排除を期待できないとされている(乙21,31)。 (3) 本件事故と原告のC型肝炎発症との因果関係についてア争いのない事実等(2)ないし(4)及び前記(1)・(2)の事実,特に,以下の事実を総合すると,原告は,C型肝炎ウイルスに感染していた本件患者に左前腕部を噛みつかれて出血を伴う傷害を負い,その傷口から本件患者の唾液に含まれていたC型肝炎ウイルスが原告の体内に侵入し,その結果,原告がC型肝炎を発症したものと推認することができる。 (ア) 平成12年3月に行われた原告及び本件患者のC型肝炎ウイルスの遺伝子型検査(HCV-RNAタイピング)の結果,両名のC型肝炎ウイルスの遺伝子型がいずれも2bであったところ,この遺伝子型(2b)は我が国においては約8ないし10%の割合で分布しているに過ぎないこと,また,平成14年10月17日に行われたC型肝炎ウイルスの遺伝子型検査(HCVモニターゲノタイプ)で,両名のC型肝炎ウイルスのゲノタイプがサブタイプのレベルで一致したこと(争いのない事実等(4),前記(2)ア(エ))(イ) 喧嘩の際にC型肝炎患者に噛まれて感染した例が報告されているなど,唾液を介してC型肝炎を発症することもありうるとされていること(前記(2)イ(イ))(なお,原告は,本件患者が口中で出血しており,その血液が噛まれた際に原告の体内に入った可能性を指摘するが,本件患者が口中で出血していたことを認めるに足り うるとされていること(前記(2)イ(イ))(なお,原告は,本件患者が口中で出血しており,その血液が噛まれた際に原告の体内に入った可能性を指摘するが,本件患者が口中で出血していたことを認めるに足りる証拠はない。)(ウ) 原告は9歳のときに扁桃腺の切除,平成4年6月に左卵巣摘出手術を受けたことがあるが,これ以外に本件事故前に観血的手術を受けたことはなく,輸血を受けたこともないこと,また,本件発症に至るまでC型肝炎による症状を訴えたり,肝機能の異常を指摘されたことはなかったこと(前記(1)ア(ア)(ウ))なお,原告が本件事故によりC型肝炎ウイルスに感染したとすると,本件発症は約180日後であり,前記C型肝炎ウイルスの通常の潜伏期間からすると,原告の発症は通常の潜伏期間を超えたものといえる。しかしながら,①稀ではあるが,潜伏期間が6ないし9か月という症例も報告されていること(甲33)や,C型肝炎発症の患者については,発症前1ないし6か月間の輸血,注射・手術,針刺事故,鍼治療歴等,血液との接触にかかわる病歴の聴取を行うことの重要性が指摘されていること(甲23),②唾液中のC型肝炎ウイルスの量は血液中のそれよりも少ないことから,被感染者に免疫反応が起こるのに必要なウイルス量に増殖するまで時間を要した可能性があると指摘されていること(甲25)を考慮すると,感染から約6か月後にC型肝炎が発症することも十分あり得ると認められ,前記発症までの期間をもって本件事故との因果関係を否定することはできないというべきである。 イ以上のとおり認定できるところ,被告は,血液を媒介にしてもC型肝炎ウイルスの感染力は弱く,唾液に含まれるC型肝炎ウイルスは血液に比べて非常に少ないのであるから,本件事故により原告がC型肝炎に罹 イ以上のとおり認定できるところ,被告は,血液を媒介にしてもC型肝炎ウイルスの感染力は弱く,唾液に含まれるC型肝炎ウイルスは血液に比べて非常に少ないのであるから,本件事故により原告がC型肝炎に罹患したのではなく,原告がC型肝炎に罹患した原因は劇症肝炎発症後に行われた血漿交換にあると主張する。 しかしながら,①C型肝炎の急性期の場合,HCV抗体陰性,HCV-RNA陽性の反応を示すとされているところ(甲23),原告の血漿交換開始前の血液検査で,HCV抗体陰性,HCV-RNA陽性であったこと(乙11),②平成5年3月11日に原告に対して開始された血漿交換がC型肝炎ウイルス感染の原因であるとすれば,その後に原告が急性肝炎を発症すると考えられるのに,原告については,血漿交換開始後の同月12日から原告の肝機能が著しく改善するなどしたものであって,血漿交換後に急性肝炎を発症したとは認められないこと(前記(1)ウ),③近年は輸血及び血液製剤を感染源とするC型肝炎罹患はほとんどなくなったとされている一方,唾液については,C型肝炎ウイルスの感染媒体となる可能性は少ないとされるにとどまり,C型肝炎患者の唾液を媒介にしてC型肝炎ウイルスに感染することはありうるとされていること(前記(2)イ(ア)(イ))を考慮すると,C型肝炎感染の原因が血漿交換にあるとする被告の主張は採用できない。 なお,被告は,性交渉,針刺し事故等によって原告がC型肝炎に感染した可能性を指摘するが,いずれも一般的可能性を主張するに過ぎないのであって,これを裏付けるに足りる証拠は何ら存せず(なお,性行為による感染可能性はきわめて少ないとされていることは前記(2)イ(ウ)のとおりである。),前記認定を左右するに足りないというべきである。 (4) 本件 るに足りる証拠は何ら存せず(なお,性行為による感染可能性はきわめて少ないとされていることは前記(2)イ(ウ)のとおりである。),前記認定を左右するに足りないというべきである。 (4) 本件事故と原告の劇症肝炎発症との因果関係についてア前記(1)の症状の経過に加え,発生頻度は多くはないものの,C型肝炎が劇症化することがあるとされていること(前記(2)ア(イ)),原告については,平成5年3月11日に関西医科大学附属病院において行われた検査で,A型肝炎及びB型肝炎の罹患は否定されており(乙11),C型肝炎以外に劇症肝炎発症の原因は考えがたいことなどを考慮すると,本件劇症肝炎は,原告が本件事故により感染したC型肝炎が劇症化したものと認めることができる。 イこの点に関して,被告は,原告が服用していた向精神薬が本件劇症肝炎の原因となっている可能性があると主張する。 しかしながら,前記のとおり,原告は,平成4年に北野病院で治療を受け(前記(1)ア(イ)),このときに向精神薬が処方されたことが推認できるが,①薬物性肝障害は,薬物が直接的あるいは間接的に作用して生ずる中毒性肝障害と,生体の特異体質に基づく過敏性反応による薬物アレルギー性肝炎に区別され,後者が薬物性肝障害の大部分を占めるところ(乙14),薬物性アレルギー性肝炎では,臨床的には皮疹や皮膚掻痒,血液検査では好酸球増加や自己抗体を伴うことが多いが,関西医科大学附属病院においては,原告にこれらの所見はいずれも認められなかったこと(甲25,乙14)(なお,原告が本件発症前に大量の向精神薬等の薬物を服用したことを認めるに足りる証拠も存しない。),②同病院の検査で,原告については,ウイルス性肝炎でみられる細胞浸潤や限界板の破壊が認められたが,薬物性肝 原告が本件発症前に大量の向精神薬等の薬物を服用したことを認めるに足りる証拠も存しない。),②同病院の検査で,原告については,ウイルス性肝炎でみられる細胞浸潤や限界板の破壊が認められたが,薬物性肝障害に特徴的な胆汁うっ滞などの所見は認められなかったこと(甲25,乙14),③薬物性肝障害を引き起こす薬剤は,抗生物質が30%と最も多く,次いで中枢神経作用薬23%,化学療法薬14%,循環器作用薬13%,消化器作用薬5%で,これらの薬剤だけで全症例の85%を占めるとされているところ(乙14),原告が劇症肝炎発症後も,向精神薬その他の複数の薬物(特に,敗血症治療のための様々な種類の大量の抗生物質)の服用を続けていたにもかかわらず,再び強い肝機能障害を起こすなどの症状は認められなかったこと(甲25,乙11)などを考慮すると,本件事故前に原告が服用した向精神薬が本件劇症肝炎発症の原因となったと認めることはできず,この点に関する被告の主張は採用できない。 (5) 本件事故と原告の敗血症発症との因果関係についてア前記のとおり,原告は,劇症肝炎発症に引き続いて敗血症の症状を呈するようになったものであり,それ以前には,敗血症と診断されたことも,敗血症を窺わせるような症状を発症したこともなく,食事も普通にとれていたところ,①関西医科大学附属病院において原告の発熱の原因について検査等が行われた際,注腸等で異常は認められず,発熱時に下痢や腹痛といった消化器症状は認められなかったこと,しかし,発熱時の原告の静脈血及び中心静脈カテーテルから,腸内常在菌が検出され,そのうちのいくつかは原告の便培養でも検出され,原告に対する肝シンチグラフィーで網内系機能の低下を推測させる所見が得られたため,肝臓免疫機能低下による敗血症及びそれによる発熱と診断されたこ 検出され,そのうちのいくつかは原告の便培養でも検出され,原告に対する肝シンチグラフィーで網内系機能の低下を推測させる所見が得られたため,肝臓免疫機能低下による敗血症及びそれによる発熱と診断されたこと(前記(1)オ),②大阪大学医学部附属病院において,原告の敗血症(菌血症)について,発熱時に肝臓の逸脱酵素が上昇するとの所見から肝臓も何らかの形で関与していると考えられていたこと(乙11),③その後受診した大阪中央病院において慢性活動性C型肝炎,免疫力低下による炎症性腸疾患と診断され(前記(1)コ),河村メディカルクリニックでも劇症肝炎後肝機能障害,敗血症等と診断されたこと(同サ),さらに,大阪市立十三市民病院において,入院時に異常な免疫力の低下が認められたことから,劇症肝炎後免疫不全症(そのほかにC型慢性活動性肝炎)と診断されたこと(同ソ)などを考慮すると,本件事故により原告がC型肝炎に罹患し,それが劇症肝炎となり,さらにそれが原因となって敗血症を発症したものと推認できる。 イ以上のとおり認められるところ,被告は,①原告の劇症肝炎等は成人T細胞白血病(ATL)による可能性がある,②原告の腸内細菌による敗血症について原告の小腸機能に問題があることによる可能性が考えられる,③原告の発熱はC型肝炎罹患前から既往症として有していた不明熱が原因であり,C型肝炎と不明熱に全く関連性がなく,原告のC型肝炎ウイルス感染と原告の現在の症状との間には因果関係がないなどと主張する。 (ア) 成人T細胞白血病(ATL)との関連性について成人T細胞白血病(ATL)とは,1型ヒトTリンパ球指向性ウイルス(HTLV-1)に感染したヘルパーT細胞が腫瘍化した疾患で,全身の諸臓器への浸潤傾向が強く,多彩な臨床症状を出現させ 成人T細胞白血病(ATL)とは,1型ヒトTリンパ球指向性ウイルス(HTLV-1)に感染したヘルパーT細胞が腫瘍化した疾患で,全身の諸臓器への浸潤傾向が強く,多彩な臨床症状を出現させ,消化管へも高率に浸潤して様々な消化器症状を呈し,また,免疫の要になるヘルパーT細胞が冒されるので,免疫機能の低下に基づく種々の日和見感染症がみられるとされている(乙7)。 原告は,関西医科大学附属病院及び大阪大学医学部附属病院における検査でHTLV-1のキャリアであることが判明し(乙11,17),大阪大学医学部附属病院の医師は,原告が長期間にわたって感染を繰り返すことについて,一つの原因としてHTLV-1感染が何らかの関わりを持っていることも否定できないと思われるとしている(乙11)。 しかしながら,①ATLは,母乳感染等により感染したキャリアが長期の無症状期を経た成人期から老年期に発症する(平均発症年齢は55歳という報告もある。)ものとされている上(乙9),原告はHTLV-1のキャリアに過ぎず,ATLを発症していないこと(甲22,乙11,18),②ATLを発症した場合,消化管等に浸潤病変がみられる症例が多いところ(乙7),原告には小腸造影,内視鏡検査等でこれらの病変は認められていないこと(乙11),③前記医師も,長期間にわたって感染を繰り返す原因の一つとしてHTLV-1感染の関わりの可能性を指摘しているに過ぎす,一方で,原告については肝の逸脱酵素の上昇が認められていることから,肝も何らかの形で関与していると思われるとしていること(乙11),④原告は,発熱の原因について多くの病院で検査を受けているが,他病院でもATLと診断されたことはなく,また,原告の発熱とHTLV-1とを結びつけた診断はなされたこと 思われるとしていること(乙11),④原告は,発熱の原因について多くの病院で検査を受けているが,他病院でもATLと診断されたことはなく,また,原告の発熱とHTLV-1とを結びつけた診断はなされたことがなかったことを考慮すると,原告の発熱あるいは敗血症の原因がATLあるいはHTLV-1であると認めることはできず,被告の前記主張は採用できない。 (イ) 原告の敗血症に小腸機能の問題が存する可能性について原告の腸内細菌による敗血症について,大阪大学医学部附属病院医師は,腸管が過剰に動くことにより腸内細菌が血中に移動していることを強く感じさせるとしていることが認められる(乙11)。 しかしながら,①C型肝炎及びその後に引き続く敗血症発症前に,原告が敗血症ないしはそれを原因とする発熱等の症状を訴えたことはなく,それまでは普通に食事がとれていたこと(前記(1)ア(ウ)),②関西医科大学附属病院で,原告の発熱の原因究明のための検査が行われた際,注腸,大腸ファイバー等で異常は認められず,発熱時に下痢や腹痛といった消化器症状も認められていないこと(前記(1)オ),③大阪大学医学部附属病院でも,原告の敗血症について肝臓が寄与していると考えられるとされていたこと(乙11)などを考慮すると,原告の小腸機能に問題のある可能性があることを理由に,C型肝炎及び劇症肝炎と敗血症との因果関係を否定することはできないというべきである。 (ウ) 原告の本件事故前の発熱との関連性について前記のとおり,原告がC型肝炎に感染した後に発生した発熱の原因は腸内細菌による敗血症(又は菌血症)によるものと認められるところ,前記のとおり,原告は,不明熱のために,平成元年3月10日から同年5月6日ま のとおり,原告がC型肝炎に感染した後に発生した発熱の原因は腸内細菌による敗血症(又は菌血症)によるものと認められるところ,前記のとおり,原告は,不明熱のために,平成元年3月10日から同年5月6日まで大阪市立十三市民病院に入院したことはあったが(前記(1)ア(イ)),その後は,平成5年3月に至るまで発熱が続くなどの症状を呈したことは認められず,平成元年当時の不明熱と本件敗血症による発熱との関連を認めることは困難である。したがって,この点に関する被告の主張も採用できない。 3 争点(3)(本件事故と相当因果関係のある治療期間)について(1) 前記2のとおり,原告は,本件事故によってC型肝炎ウイルスに感染し,それが劇症化したのち,C型慢性肝炎となり,また,劇症肝炎が原因となって敗血症となり,その後,主として,C型慢性肝炎と敗血症による発熱,めまい,腹痛,吐き気,全身倦怠感等の症状が緩解と再発という形で繰り返され,これらの治療(発熱等の原因探求を含む。)のため入院及び通院を繰り返してきたところ,原告については,摂食する度に敗血症が誘発されて発熱するなどしたため,長期にわたって中心静脈栄養法が施行されていたこと,しかし,平成13年8月28日に大阪大学医学部附属病院に入院した際に,静脈栄養摂取は必要ないと診断されてこれが中止され,その後,経口摂取がほぼ十分に可能であることが確認されたこと(前記2(1)シ・セ),原告は,同病院退院後にも,敗血症,不明熱等の診断名で入院しているが,概ね症状が安定してきており,入院の回数も減少し,通院による治療が中心となったことが認められる。 したがって,原告については,中心静脈栄養法が今後必要ないと判断されて大阪大学医学部附属病院を退院した平成13年10月11日の時点で,主としてC型慢性肝炎 となったことが認められる。 したがって,原告については,中心静脈栄養法が今後必要ないと判断されて大阪大学医学部附属病院を退院した平成13年10月11日の時点で,主としてC型慢性肝炎,敗血症の症状を残して症状が固定したものと認めるのが相当である(なお,原告は,症状固定日は傷病補償年金支給事由発生日の平成7年9月30日であると主張するが,労働者災害補償保険法12条の8第3項によれば,傷病補償年金の支給については,症状固定は要件とされておらず,同支給事由発生日をもって症状固定日であるとする理由は存しないというべきである。)。 (2) 前記2(1)の原告の症状及び治療の経過に照らすと,原告の症状が固定した平成13年10月11日までの治療について,本件事故との相当因果関係が認められる(ただし,南大阪病院への平成12年10月26日から同月28日まで入院[別紙入院経過一覧表27]については,もっぱら胆石,胆のう炎の治療のためのものであり,同疾病がC型肝炎ないしは敗血症によるものとも,中心静脈栄養法の副作用とも認めるに足りる証拠はなく,本件事故との相当因果関係は認められないというべきである。)。 また,平成13年10月12日以降平成14年2月26日までの間の入院等については,症状固定後の治療というべきであるが,高熱や貧血等の再発を繰り返すといった症状の内容,程度等を考慮すると,必要が認められる治療であり,本件事故との相当因果関係を認めるべきである。 (3) これに対し,被告は,平成8年2月14日(関西医科大学附属病院退院日)以降における原告の入院が劇症肝炎を理由とするものかは非常に疑わしく,本件事故との相当因果関係が認められないと主張するが,その後の入院又は通院治療は,C型慢性肝炎ないしは劇症肝炎後の敗血症の 院日)以降における原告の入院が劇症肝炎を理由とするものかは非常に疑わしく,本件事故との相当因果関係が認められないと主張するが,その後の入院又は通院治療は,C型慢性肝炎ないしは劇症肝炎後の敗血症の治療(原因検索を含む。)であるか,あるいは以下のとおり本件事故との相当因果関係が認められる治療というべきであるから,この点に関する被告の主張は採用できない。 ア大阪大学医学部附属病院への平成13年8月28日からの入院(別紙入院経過一覧表36)について前記2(1)シのとおり,原告については,敗血症等の症状が一向に改善されないため,精神的疾患の疑いがもたれ,これを精査する目的で大阪大学医学部附属病院神経科精神科に入院し,心因性疼痛,虚偽性障害等の疑いと診断されたものであり,前記2(1)で認定した症状の経過に照らすと,これらの精神的疾患は,本件事故による劇症肝炎発症,その後繰り返し出現した発熱等の敗血症の症状及びそのための多数回かつ長期の入院治療等によってもたらされたものと認められ,したがって,前記入院は,本件事故と相当因果関係のある治療と認められる。 イ大阪大学医学部附属病院への平成10年2月2日からの入院(別紙入院経過一覧表15)及び西淀病院への平成13年12月26日からの入院(同表39)について前記各入院については,入院の原因となった貧血,血圧低下等の症状が原告の自傷行為によるものではないかという疑いがもたれたことや(前記2(1)ケ・ス),原告について大阪大学医学部附属病院神経科精神科で心因性疼痛,虚偽性障害等の疑いと診断されたこと(同シ)を考慮すると,貧血あるいは血圧低下等が原告の自己脱血等によるものであった可能性は否定できないというべきであるが,仮に前記各入院が原告の自傷行為 因性疼痛,虚偽性障害等の疑いと診断されたこと(同シ)を考慮すると,貧血あるいは血圧低下等が原告の自己脱血等によるものであった可能性は否定できないというべきであるが,仮に前記各入院が原告の自傷行為を原因とするものであったとしても,それは原告の前記精神的疾患に起因する(あるいはこれと密接に関連する)ものと認められ,前記各入院と本件事故との因果関係を否定することはできないというべきである。 ウ西淀病院への平成13年11月30日からの入院(別紙入院経過一覧表38)について前記入院の際,原告については,神経因性膀胱による慢性尿路感染症の疑いが強いとされたものであるが(ただし,病巣が消化管である疑いが否定されたわけではない。前記2(1)ス),本件事故前に神経因性膀胱と診断されたことも,これを窺わせる症状があったことも認められないことや,大阪大学医学部附属病院の入院中にも神経因性膀胱の症状が見られていたこと(乙11)を考慮すると,神経因性膀胱は,原告の前記精神的疾患と同様,本件事故に起因するものと認められ,したがって,神経因性膀胱を原因とする前記入院も本件事故と相当因果関係のある治療というべきである。 4 争点(4)(原告の後遺障害の内容・程度)について前記3(1)のとおり,原告は,前記症状固定時において,主としてC型慢性肝炎,敗血症の症状を残して症状が固定したものであるが,その後においても,敗血症に伴う発熱,免疫機能の異常低下等の症状を再発させたり,神経因性膀胱が原因と考えられる慢性尿路感染症を発症するなどして,入院又は通院治療を続けていること(前記2(1)スないしタ),C型肝炎については,慢性肝炎に移行後は自然治癒する例はきわめて稀となり,その症状は徐々に進行して肝硬変に進行する確率が高く,肝硬 して,入院又は通院治療を続けていること(前記2(1)スないしタ),C型肝炎については,慢性肝炎に移行後は自然治癒する例はきわめて稀となり,その症状は徐々に進行して肝硬変に進行する確率が高く,肝硬変に至った場合は,肝細胞癌を合併することが多いとされていること(前記2(2)ウ),原告が受けているインターフェロン(IFN)療法の治療効果は,HCVの遺伝子型,治療開始前のHCV量等と関連し,効果を発揮しない場合が少なからずあること(同エ)が認められる。 一方,原告については,平成14年3月に,大阪大学医学部附属病院のC医師から,経口による栄養摂取がほぼ十分に可能で,血液検査上も著変が認められず,中心静脈栄養法による栄養摂取は必要なく,看護専門学校への復学も可能であると診断され,原告のその当時の就労能力については,重労働作業以外であれば就労可能であるとされたこと,また,同病院神経科精神科のE医師は,原告について,身体状態的には,通常の就労が可能であるが,心因性疼痛等の精神疾患に原告が罹患しており,これらの精神疾患は対人関係や社会適応に否定的影響を及ぼす場合が多いため,原告の就労能力は,通常人に比し,一定の制限を受けていると判断していたことが認められる(前記2(1)セ)。 以上のほか,原告は長期間の入院生活のために身体的には老人のレベルと変わらないと指摘されたことがあること(同ス)などを考慮すると,原告の前記後遺障害は,後遺障害等級表第9級の7の3(「胸腹部臓器の機能に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」)に相当すると認められる。 5 素因減額について(1) 前記のとおり,原告は,本件事故によりC型肝炎ウイルスに感染して以来,長期間の入院等の治療を受けた後,前記のような後遺障害を残して症状 相当すると認められる。 5 素因減額について(1) 前記のとおり,原告は,本件事故によりC型肝炎ウイルスに感染して以来,長期間の入院等の治療を受けた後,前記のような後遺障害を残して症状が固定するに至ったものであるが,原告については,①関西医科大学附属病院や大阪大学医学部附属病院等に入院中,錯乱状態に陥ったり,治療を拒否し,あるいは自殺を図ろうとするなどの問題行動を起こし,入院中は厳重な監視・観察が必要であるとされたり,心療内科又は精神科等によるケアが必要であるとされるなど,その抑うつ傾向,情緒不安定,神経症的ヒステリー(乙11)等の精神的側面が問題視されていたこと(前記2(1)ウ・オ・ク・サ),②平成13年8月ないし10月には,大阪大学医学部附属病院神経科精神科医師から,原告の症状の出現態様等には内科的疾患としては説明困難な不自然な点が多いことから,心因性疼痛,虚偽性障害,人格障害,詐病等の疑いがあると診断されたこと(同シ),③平成14年3月の時点において,大阪大学医学部附属病院のE医師及びC医師から,原告の就労能力に関しては,身体的な面よりも精神的な面が問題であると指摘されていたこと(同セ),④一部の入院については,その不自然な症状経過等から自傷行為(自己脱血)による可能性を指摘されたり,神経因性膀胱が原因と考えられる尿路感染症を発症したこと(同ケ・ス)などを考慮すると,前記の原告の気質,性格傾向といった心因的要因が原告の症状及び治療の遷延化並びに後遺障害として残存する症状の内容・程度に影響を及ぼしていることは否定できないと認められる。 (2) したがって,本件においては,損害の公平な負担を図るため,民法418条を類推適用して,素因減額をするのが相当であると判断するが,前記諸事情に加え,本件については,被告病院に られる。 (2) したがって,本件においては,損害の公平な負担を図るため,民法418条を類推適用して,素因減額をするのが相当であると判断するが,前記諸事情に加え,本件については,被告病院に勤務中,18歳ないし19歳という若さでC型肝炎ウイルスに感染し,それが劇症化して一時は生命も危ぶまれる状態に陥り,そこから回復したものの,治癒することがほとんど期待できず,しかも肝硬変,肝臓癌に進行するおそれの強いC型慢性肝炎となったほか,発熱等の慢性的な敗血症の症状が続き,その原因究明と治療のため入院を繰り返したものの,効果的な治療法が見つからず,入院及び通院が長期化したことなどから,精神的に疲弊し,あるいは将来を悲観して,投げやりな気持ちとなったり,治療に非協力的になったりし,あるいは前記のような精神的疾患の症状を呈するようになったこと等を一概に非難することはできない側面があることを考慮すると,本件においては,原告に生じた損害の全体から20%控除するのが相当である。 6 争点(5)(損害額)について(1) 損害ア治療関係費 7170万6677円(ア) 原告請求分 240万1255円原告は,本件事故による疾病のための治療関係費(文書料等を含む。)として,次のとおり,240万1255円を支払ったことが認められる。 a 被告病院 6万6510円(甲6の1ないし11)b 第一病院 13万8680円(甲7の1ないし9)c 関西医科大学附属病院 191万8690円 いし11)b 第一病院 13万8680円(甲7の1ないし9)c 関西医科大学附属病院 191万8690円(甲8の1ないし74)d 牧病院 1万2265円(甲9の1ないし3)e 水野病院 290円(甲10の1ないし3)f 南港病院 4万8900円(甲11の1ないし8)g 大阪府立病院 8040円(甲12の1ないし8)h 大阪回生病院 20万7880円(甲13の1ないし14。家族寝具費を含む。)(イ) 労災支払分 6930万5422円大阪労働局に対する調査嘱託の結果によれば,原告の本件事故による疾病のための治療関係費のうち,平成14年2月末日までの既払分は次のとおりと認められる。 a 被告病院(平成4年9月から平成5年10月までの入院・外来分)172万1230円b 関西医科大学附属病院(平成5年3月から平成8年5月までの入院・外来分) 3041万5525円c 第一病院(平成5年6月から同年7月までの入院・外来分) 来分) 3041万5525円c 第一病院(平成5年6月から同年7月までの入院・外来分)85万8969円d 水野病院(平成8年2月から同年3月までの入院分)97万3422円e 牧病院(平成8年3月から4月までの入院分)36万3966円f 南港病院(平成8年6月から同年7月までの入院分)62万6762円g 大阪府立病院(平成8年6月から同年11月までの入院・外来分)712万8853円h 大阪大学医学部附属病院(平成8年11月から平成13年12月までの入院・外来分) 2296万8530円i 大阪回生病院(平成10年2月から同年10月までの入院・外来分)418万9694円j 大阪市立総合医療センター(平成14年2月の入院・外来分)5万8471円イ入院雑費266万2400円(ア) 前記3(1)のとおり,原告については,平成13年10月11日に症状が固定したと認められるところ,前記のとおり,それまでの入院期間のうち,南大 入院雑費266万2400円(ア) 前記3(1)のとおり,原告については,平成13年10月11日に症状が固定したと認められるところ,前記のとおり,それまでの入院期間のうち,南大阪病院への入院(別紙入院経過一覧表27)は本件事故と相当因果関係のある疾病の治療のためのものとは認められず,他方,症状固定後ではあるが,西淀病院への平成13年11月30日から同年12月30日までの3回の入院(同37ないし39)及び大阪市立総合医療センターへの入院(同40)は,本件事故による疾病の治療のために必要な入院であったと認めることができるから,本件事故と相当因果関係のある入院日数は合計2048日となる。 (イ) 原告の前記症状の内容・程度,入院回数等を考慮すると,1日当たりの入院雑費の金額は1300円とするのが相当であるから,本件事故と相当因果関係のある入院雑費は合計266万2400円となる。 ウ休業損害1708万9148円(ア) 前記のとおり,①原告は,本件事故による疾病のため,平成5年3月9日から前記症状固定日である平成13年10月11日までの間(8年217日間)に多数回かつ長期間の入院を続けたこと(別紙入院経過一覧表1ないし36),②原告は,前記の期間中就業していなかったが,平成10年2月6日に大阪大学医学部附属病院を退院してからは,発熱等により入院する日数が減り,平成11年4月6日からはF看護専門学校に通学するようになったこと,そして,平成13年3月2日同校を卒業し,同年4月からは同年7月まで看護師の資格を取得するために兵庫県内の看護学校に通学したこと(同一覧表16ないし36,前記2(1)コ・サ),③原告は,平成13年1月以降,C型慢性肝炎,敗血症による症状を繰り返し再発するよう 月まで看護師の資格を取得するために兵庫県内の看護学校に通学したこと(同一覧表16ないし36,前記2(1)コ・サ),③原告は,平成13年1月以降,C型慢性肝炎,敗血症による症状を繰り返し再発するようになり,入院の回数及び日数が増えたこと(同一覧表28ないし36,前記2(1)コ・サ),④原告は,F看護専門学校への通学期間中を含め,自宅療養中は在宅中心静脈栄養法による栄養補給によっており,就労のみならず日常生活にもかなりの制約を受けていたこと(前記2(1)ク(ウ)・コ)が認められる。 (イ) そして,原告は,本件事故当時,被告病院に勤務する傍ら,B看護専門学校准看護科に通学し,平成6年3月に卒業する予定であったから,本件事故による発症がなければ,同年4月以降は准看護師として就労できた蓋然性が高かったものと認められ,したがって,原告は,平成5年3月9日から平成13年10月11日までの間,平均すれば,少なくとも平成5年賃金センサス全労働者(18~19歳)の平均賃金である222万6500円の収入を得ることができたものと認められる。 (ウ) 以上の事実に,原告の前記症状の推移等を併せ考慮すると,原告の本件事故による休業損害については,前記年収額を基礎とし,平成5年3月9日から平成10年2月6日まで(4年335日)は100%労働不能であり,同年2月7日から平成13年10月11日まで(3年247日)は平均して75%労働不能であったとして算定するのが相当である。 したがって,原告の休業損害は,次のとおり,1708万9148円となる。 (計算式)2,226,500×(4+335/365)=10,949,499(円未満切り捨て。以下同じ。)2,226,50 9148円となる。 (計算式)2,226,500×(4+335/365)=10,949,499(円未満切り捨て。以下同じ。)2,226,500×(3+247/365)×0.75=6,139,64910,949,499+6,139,649=17,089,148エ後遺障害に伴う逸失利益 2607万1496円(ア) 前記のとおり,原告は,本件事故に遭わなければ准看護師として稼働することができたと認められるから,原告の後遺障害による逸失利益を算定するに当たっては,平成13年賃金センサス准看護師・企業規模計・全年齢の平均賃金414万8500円を基礎収入として用いるのが相当である。 (イ) 前記の原告の後遺障害の内容・程度,症状固定後の入通院状況等に照らすと,原告については,症状が固定した27歳からの2年間は労働能力の50%を喪失し,その後の67歳までの期間については,平均して,労働能力の35%を喪失しているものとして,逸失利益を算定するのが相当である。 したがって,原告の逸失利益は,次のとおり,2607万1496円となる(計算式)4,148,500×0.5×1.8594=3,856,8604,148,500×0.35×(17.1590-1.8594)=22,214,6363,856,860+22,214,636=26,071,496オ入通院慰謝料 800万円前記の原告の本件C型肝炎,敗血症等の発症の経過,その後の症状及び治療の経過,特に, 26,071,496オ入通院慰謝料 800万円前記の原告の本件C型肝炎,敗血症等の発症の経過,その後の症状及び治療の経過,特に,原告については,本件事故によりC型肝炎に感染し,それが劇症化して一時は生命も危ぶまれる状態に陥ったこと,劇症肝炎の危険な状態から脱した後も,発熱等の症状に悩まされ,しかも,当初はその原因究明や治療法を見つけるため,苦痛を伴う検査を何度も受けたものの,決定的な治療法が見つからず,入院が長期化し,青春時代の大半を病院で生活することを余儀なくされたこと,食事をすると発熱等の症状が出るため,長期間にわたって,中心静脈栄養法によらざるを得ず,食べ物を口にすることができなかったほか,自宅療養中も日常生活に相当の制約を受けていたこと等を総合考慮すると,原告の入通院慰謝料としては800万円が相当である。 カ後遺障害慰謝料 600万円原告の後遺障害の内容・程度,特に,原告は長期間の入院により身体状態も相当低下していたこと,C型慢性肝炎は自然に治癒する例はきわめて稀で,肝硬変・肝臓癌に進行する可能性が高いとされていること,インターフェロン投与の治療を受けているものの,これが効果を発揮しない場合が少なからずあること,敗血症等の症状が再発する可能性も相当程度認められ,C型慢性肝炎及び敗血症等により,疲労を避け,刺激物の摂取を控えるなど,日常生活にも相当の制約があること等を考慮すると,原告の後遺障害慰謝料としては600万円が相当である。 (2) 素因減額原告については,前記のとおり,20%の素因減額を行うのが相当であるから,素因減 00万円が相当である。 (2) 素因減額原告については,前記のとおり,20%の素因減額を行うのが相当であるから,素因減額後の損害額は次のとおりとなる。 ア治療関係費 5736万5341円イ入院雑費212万9920円ウ休業損害・逸失利益 3452万8515円エ入院慰謝料・後遺症慰謝料 1120万円(3) 損害てん補後の残額原告は,争いのない事実等(5)のとおり,労災保険及び障害厚生年金の支給を受けているので,給付の趣旨にしたがって損益相殺すると,残額は次のとおりとなる。 ア治療関係費・入院雑費 0円前記のとおり,原告は,労災保険から療養補償給付の支給を受けており,本件に対応する既払分は6930万5422円(前記(1)ア(イ))であるから,これと同一事由に基づく損害と認められる治療関係費(前項ア)及び入院雑費(同イ)は全額てん補されたことになる。 イ休業損害・逸失利益 1206万5405円前記のとおり,原告は,休業補償給付231万1548円,傷病補償年金969万9054円及び障害厚生年金1045万2508円(合計2246万3110円)の支給を受けているところ,これらは休業損害及び逸失利益の消極損害と同一の事由の関係にあるというべきであるから,前項ウの損害からこれらを控除すると,残額は1206万5405円となる。 ウ入院慰謝料・後遺症慰謝料 1120万円(合計額 きであるから,前項ウの損害からこれらを控除すると,残額は1206万5405円となる。 ウ入院慰謝料・後遺症慰謝料 1120万円(合計額 2326万5405円)(4) 弁護士費用 230万円本件事案の性質上,弁護士費用も被告の安全配慮義務違反と相当因果関係にある損害と認めるのが相当であり,その額は,本件事案の難易,審理の経過,認容額,その他本件に現れた諸般の事情に照らすと,230万円と認めるのが相当である。 (以上合計 2556万5405円) 7 結論以上によれば,原告の本件請求中,不法行為に基づく損害賠償請求(主位的請求)は理由がないので棄却することとし,債務不履行に基づく損害賠償請求(予備的請求)は,2556万5405円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成11年7月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第15民事部裁判長裁判官二本松利忠裁判官田中良武 裁判官比嘉一美は,転補のため,署名押印できない。 裁判長裁判官二本松利忠
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