主文 1 被告は、原告に対し、3766万2240円及びこれに対する令和4年3月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 2 被告は、原告に対し、41万6562円及びこれに対する令和4年 3月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 5 この判決は、第1、2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項同旨 2 被告は、原告に対し、41万6563円及びこれに対する令和4年3月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告に対して令和2年度分及び令和3年度分のふるさと納税の返礼品の発注等に関する業務を委託したところ、被告は令和2年度分の返礼品の一部を発送することができず、当該債務不履行について原告が被告に対して支払った委託料相当の損害が発生し、また、令和3年度分について委託業務の被告による履行は不能であったから原告は契約を解除したと主張して、被 告に対し、令和2年度分の契約について、主位的に債務不履行に基づく損害賠償請求として、予備的に民法656条及び646条に基づく前払費用の返還請求として、3766万2240円及びこれに対する履行期限の翌日である令和4年3月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、令和3年度分の業務委託契約に基づく解除に伴 う違約金として41万6563円及びこれに対する履行期限の翌日である令和 4年3月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実 約金として41万6563円及びこれに対する履行期限の翌日である令和 4年3月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠掲記のない事実は争いがない。)⑴ 原告は、地方自治法上の地方公共団体である。 被告は、各種商品に関する貿易業、売買業、問屋業、代理業並びに仲立業 等を目的とする株式会社である。 ⑵ 原告は、令和2年4月1日、被告との間で、ふるさと納税の返礼品の発注等に関する以下の内容の業務委託契約を締結した(以下、この契約を「令和2年契約」という。)。 委託期間令和2年4月1日から令和3年3月31日まで 委託料通常寄附額の8%、災害支援寄附額の1%(いずれも消費税及び地方消費税を含まない。甲2の1)業務内容 ①返礼品の発注に関すること②返礼品の購入及び発送に関すること③寄附者等からの問合せ、苦情等への対応に関すること等 ⑶ 原告は、令和3年4月1日、被告との間で、ふるさと納税の返礼品の発注等に関する以下の内容の業務委託契約を締結した(以下、この契約を「令和3年契約」という。)。 委託期間令和3年4月1日から令和4年3月31日まで委託料通常寄附額の8%、災害支援寄附額の1%(いずれも消費税及 び地方消費税を含まない。甲2の2)契約保証金免除業務内容 ①返礼品の発注に関すること②返礼品の購入及び発送に関すること③寄附者等からの問合せ、苦情等への対応に関すること等 ⑷ 令和2年契約及び令和3年契約には、以下の各条項がある(甲2の1・ 2)。 ア 1条1項被告は、業務委託料をもって、委託 附者等からの問合せ、苦情等への対応に関すること等 ⑷ 令和2年契約及び令和3年契約には、以下の各条項がある(甲2の1・ 2)。 ア 1条1項被告は、業務委託料をもって、委託期間の末日までに委託業務を完了しなければならない。 (2項略)イ 6条被告は、その責に帰すことができない事由により、履行期限まで に委託業務を完了することができないことが明らかとなったときは、原告に対し遅滞なくその事由を付して履行期限の延長を求めることができる。 ただし、延長日数は原告被告協議して定める。 ウ 9条1項原告は、被告が次の各号のいずれかに該当するときは、この契約を解除することができる。 1号被告の責に帰する事由により履行期限までに委託業務を完了する見込みがないとき。 2号被告がこの契約の条項に違反したとき。 (3号以下略)エ 13条被告は、契約保証金を免除されている場合において、第9条第 1項の規定により原告が契約を解除したときは、それまでに請求された委託料の100分の10に相当する額を違約金として原告が指定する日までに納付しなければならない。 ⑸ 上記委託業務の性質上、返礼品の配送業務については、その完了までに相応の期間を要する場合があることから、原告は、その完了を見越し、被告に 対し、先行して寄付額に応じた委託料を支払っていた。具体的には、被告から送付された請求書に応じて、原告が委託料として支出負担行為・支出命令をしていた。 原告は、被告に対し、令和2年契約に基づく令和2年9月分から令和3年3月分の委託料として、令和2年契約で定めた通常寄附額の8.8%(消費 税及び地方消費税を含む。)の総額1億0916万8752円を支払った (甲5の1の1~甲5 9月分から令和3年3月分の委託料として、令和2年契約で定めた通常寄附額の8.8%(消費 税及び地方消費税を含む。)の総額1億0916万8752円を支払った (甲5の1の1~甲5の7の2)。 また、原告は、被告からの請求に応じ、被告に対し、令和3年契約に基づく令和3年4月分から同年8月分の委託料として総額416万5629円を支払った(甲5の8の1~甲5の12の2)。 ⑹ 被告は、令和2年契約に基づき調達・発送すべき以下の返礼品について、 少なくとも一部につき、調達・発送をしなかった。 令和2年度産さがびより 15kg(以下「さがびより」という。)シャインマスカット約2kg(以下「シャインマスカット」という。)佐賀産和牛・九州産黒毛和牛切り落とし 1.6kg(以下「和牛1.6kg」という。) 佐賀産和牛切り落とし 1.2kg(以下「和牛1.2kg」という。)⑺ 原告は、被告が返礼品提供事業者の管理を十分に行わずに返礼品の提供が遅れていること及び返礼品を提供することができないことが判明したなどとして、令和3年度の委託業務につき履行不能と判断し、被告に対し、令和3年8月31日付けで、令和3年契約を同契約9条1項1号及び2号により解 除する旨の意思表示をした。(甲6)原告と被告は、同日付けで、令和3年契約解除後の事務の引継ぎ等について定めた覚書を締結した。(甲11)⑻ 原告は、被告に対し、令和2年契約の未履行部分に係る委託料相当額の損害賠償金3766万2240円及び令和3年契約の解除に伴う違約金41万 6563円について、令和4年2月28日を期限として支払うよう通知したが、期限までに支払はされなかった。 2 争点⑴ 令和2年契約における解除権の発生⑵ 被告の帰責性がない 金41万 6563円について、令和4年2月28日を期限として支払うよう通知したが、期限までに支払はされなかった。 2 争点⑴ 令和2年契約における解除権の発生⑵ 被告の帰責性がないといえるか ⑶ 令和2年契約に係る損害額 ⑷ 前払費用返還請求の成否(予備的請求関係)⑸ 令和3年契約に係る違約金の発生及びその額 3 争点に関する当事者の主張⑴ 令和2年契約における解除権の発生(争点⑴)(原告の主張) アさがびより、和牛1.6kg及び和牛1.2kgについて被告は、令和2年契約における返礼品の調達・発送を遅滞していたところ、原告は、令和3年6月18日、被告に対し、「今後の令和2年度寄附に係る返礼品については、早急に配送体制等を整備、正確な配送計画により事業を実施すること」を要求した。これは、民法541条の催告に該当 し、その後相当期間内に履行がなかったから、解除権が発生した。 仮に催告がなかったとしても、以下の事情により、解除権が発生した。 被告は、適切な時期に返礼品の調達・発送ができなかったため、「市やその特産品等のPRを通じ、地域の活性化に寄与する」という目的を達成することができないことが明らかであったから、「債務の一部が不能であ る場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき」(民法542条1項3号)に該当した。 また、返礼品は、履行期限を順守しなければ、市を応援してくれた寄付者の期待と信頼に応えることができなくなり、上記の目的達成もできなく なる。このように、履行期限の順守は契約の性質上求められており、また当事者双方が前提としていたにもかかわらず、被告 れた寄付者の期待と信頼に応えることができなくなり、上記の目的達成もできなく なる。このように、履行期限の順守は契約の性質上求められており、また当事者双方が前提としていたにもかかわらず、被告は自ら確約した履行期限を順守できなかったのであり、「契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経 過したとき」(同項4号)に該当した。 イシャインマスカットについてシャインマスカットについては、履行期限が令和3年8月中旬から同年10月までとされていたが、被告は、具体的な調達先を提案することなく、履行期限が経過した。そのため、上記ア同様、民法542条1項3号又は4号により、解除権が発生した。 (被告の主張)解除の前提となる催告は、解除が契約関係を一方的に破棄する重大な行為であるから、不履行をしている債務者にもう一度考え直す機会を与えるものであって、それに見合った内容を伴っていなければならない。しかし、原告の主張する催告は、一般的な依頼書を根拠としており、契約関係を一方的に 破棄する可能性を予期させるものではなく、債務者にもう一度考え直す機会を与えるものとはいい難い。したがって、民法541条の催告には該当しない。 本件で問題となる返礼品はいずれも種類物であるから、それらの商品の発送はおよそ履行不能とはならない。また、令和2年契約の主要な目的は、寄 付者から寄付金を集めて、それを原告の税収とすることにあるところ、被告による商品の発送が遅れたからといって、寄付者から集めた寄付金を返還しなければならないわけではなく、原告の税収が減少するわけでもないから、令和2年契約を それを原告の税収とすることにあるところ、被告による商品の発送が遅れたからといって、寄付者から集めた寄付金を返還しなければならないわけではなく、原告の税収が減少するわけでもないから、令和2年契約をした主要な目的を達成したことは変わりがない。したがって、被告による商品の発送が遅れた状態であっても、令和2年契約をした目的を 達することができなかったとはいえない。また、契約の性質により、一定の期限までに履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合には当たらないし、当事者の意思表示により、一定の期限までに履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合に当たるともいえない。 したがって、令和2年契約において、解除権は発生していない。 ⑵ 被告の帰責性がないといえるか(争点⑵) (被告の主張)被告は、令和3年4月頃、肉に関しては有限会社トミヤフーズから、米に関してはJAから調達できるように具体的に交渉を行っており、原告に対しても、具体的な出荷計画表を示して、業者変更の提案を行ったが、原告は受け入れなかった。 被告は、同年5月にも、米について他の事業者への変更の提案を行った。 肉についても、同時期頃に、業者変更の提案を具体的に行ったが、原告は受け入れなかった。 被告は、同年7月、肉の調達に関し、被告は明治屋産業株式会社と交渉していたが、結局、同月20日に原告が独自に調達業者である株式会社有明・ 潮風ファームを選定したため、明治屋産業株式会社との交渉は打ち切られた。 このように、被告は原告に対し、業者変更の具体的提案を行ったにもかかわらず、原告が受け入れなかったのであるから、被告に調達業者変更に関し裁量権はなく、履行遅滞について、被告の責めに帰すべき事由があるとはいえない 告は原告に対し、業者変更の具体的提案を行ったにもかかわらず、原告が受け入れなかったのであるから、被告に調達業者変更に関し裁量権はなく、履行遅滞について、被告の責めに帰すべき事由があるとはいえない。 (原告の主張)被告が原告に対し、具体的に調達業者の変更提案を行ったことはなかった。 返礼品の調達・発送が遅延している状況下で、仮に、被告から返礼品の調達先として支障のない具体的な調達業者の変更提案がなされていれば、寄付者との間で責めを負うのは被告ではなく原告であるのだから、理由なく拒むこ とはあり得なかったはずである。 履行遅滞について被告に帰責性があるのは明らかである。 ⑶ 令和2年契約に係る損害額(争点⑶)(原告の主張)原告が被告に対して支払った委託料は、履行期限までに委託業務を完了し たことの対価であって、被告が委託業務を履行しなかったり、その履行が不 完全なものであったり、履行期限までに委託業務を完了することができなければ、前払いされていた委託料相当額は支払う必要のない無駄な経費となるから、その全額が債務不履行によって生じた損害となる。 本件では、令和2年9月分から令和3年3月分の委託料として原告が被告に支払ったもののうち、委託料3766万2240円分に係る委託業務を被 告は履行していない。 したがって、令和2年契約に係る損害額は、3766万2240円となる。 (被告の主張)履行に代わる損害賠償は、債務の本旨に従った履行がなされていたのであれば、債権者が得ていたであろう利益(履行利益)の賠償を意味するが、被 告の返礼品の発送が遅れたからといって、寄付者から集めた寄付金を寄付者に返還しなければならないわけではなく、また、原告の税収が減少することにもならないから、 履行利益)の賠償を意味するが、被 告の返礼品の発送が遅れたからといって、寄付者から集めた寄付金を寄付者に返還しなければならないわけではなく、また、原告の税収が減少することにもならないから、原告は既に履行に代わる利益を得ているといえる。 また、原告は、被告が寄付者に発送することができなくなった返礼品を、代わりに寄付者に発送し、その分の商品代金と発送費用の支払を余儀なくさ れている。しかし、他方で、原告は、被告に対し、寄付額の36.5%程度の送料を含んだ商品代金の支払を免れているのであるから、原告が支払を余儀なくされた商品代金と発送費用も、原告の損害となることはない。 よって、令和2年契約に関し、原告に損害が生じたとはいえない。 ⑷ 前払費用返還請求の成否(争点⑷) (原告の主張)原告は、令和2年契約に基づき、被告に対し、令和2年9月分から令和3年3月分の委託料として合計1億0916万8752円を前払いしているところ、被告は、令和2年9月分から令和3年3月分のうち、委託料3766万2240円分に係る委託業務を履行していない。したがって、原告は、被 告に対し、民法656条、646条に基づき、被告が委託業務を履行してい ない部分につき、前払費用である当該委託料の返還を求めることができる。 (被告の主張)民法646条1項の「委任事務を処理するに当たって受け取った金銭」とは、第三者から受け取った金銭が想定されており、委任者から受け取った金銭は含まれないと解すべきである。 仮に、委任者から受領した金銭が含まれるとしても、事務処理のために委任者が実費等を予納し、委任事務終了後に残額を返還する場合等が想定されており、本件のような、委任事務との対価性が認められる委託料といったものは想定さ 領した金銭が含まれるとしても、事務処理のために委任者が実費等を予納し、委任事務終了後に残額を返還する場合等が想定されており、本件のような、委任事務との対価性が認められる委託料といったものは想定されていないと考えられる。 ⑸ 令和3年契約に係る違約金の発生及びその額(争点⑸) (原告の主張)令和3年契約に関し、被告から、令和2年度分からの返礼品の変更を求める返礼品提案書が提出されることはなく、具体的な調達先の変更が示されたこともなかった。そのため、返礼品の品目は令和2年度と重複するものがあり、また、令和2年度と同様、アースグロー株式会社(以下「アースグロー」 という。)や株式会社sagaグル(以下「sagaグル」という。)から調達することになっていたものもあった。しかし、これら2社からの調達に重大な支障が生じていることは明らかであったところ、被告からこれを解消する手段などは何ら講じられなかったので、被告の責めに帰する事由により履行期限までに委託業務を完了する見込みがないことは明らかであった。そ のため、原告は、令和3年契約について令和3年契約9条1項1号、2号により解除した。 実際、配送の履行期限にかかわらず、当事者双方が、上記の事情により令和3年契約を解除することを前提として、解除後の残務整理について当事者双方で覚書を取り交わしていた。 原告は、令和3年4月分から同年8月分の委託料として、被告から合計4 16万5629円の請求を受け、これを被告に対して支払った。令和3年契約においては、原告が令和3年契約9条1項により令和3年契約を解除したときは、それまでに請求された委託料の100分の10に相当する額を違約金として納付することになっていたのであるから、違約金の額は、41万6 原告が令和3年契約9条1項により令和3年契約を解除したときは、それまでに請求された委託料の100分の10に相当する額を違約金として納付することになっていたのであるから、違約金の額は、41万6563円となる。 (被告の主張)原告も認めるとおり、令和3年契約における履行期限間近の寄付への対応や、履行期限を超過する予約への対応が必要であることから、令和3年契約に係る業務の履行期限も令和4年3月31日と厳格に決まっていたものではなかった。そうすると、令和3年8月31日の時点で、令和3年契約9条1 項1号、2号の解除原因があったとはいえない。 違約金の額については否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、証拠(掲記のもののほか、甲19、20、乙8、証人A、証 人B)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 原告は、令和2年9月1日から、和牛1.2kgを返礼品として寄付を募集した(寄付金額1万円)。寄付者に対し、返礼品は、遅くとも入金確認後150日以降に順次発送するとの案内がされており、この返礼品の提供は、返礼品提供事業者であるアースグローが行うこととなっていた。 原告は、同年12月9日から、和牛1.6kgを返礼品として寄付を募集した(寄付金額1万円)。寄付者に対し、返礼品は、令和3年3月下旬以降申込順で順次発送するとの案内がされており、この返礼品の提供もアースグローが行うこととなっていた。 原告は、令和2年12月18日から、従前よりも増量して、さがびよりを 返礼品として寄付を募集した(寄付金額1万円)。寄付者に対し、返礼品は、 令和3年3月下旬以降順次発送するとの案内がされており、この返礼品の提供は、返礼品提供事業者であるsagaグルが行 礼品として寄付を募集した(寄付金額1万円)。寄付者に対し、返礼品は、 令和3年3月下旬以降順次発送するとの案内がされており、この返礼品の提供は、返礼品提供事業者であるsagaグルが行うこととなっていた。 その他、原告は、令和2年にシャインマスカットを返礼品として寄付を募集した(寄付金額1万5000円)。寄付者に対し、返礼品は令和3年8月中旬から同年10月までに順次発送するとの案内がされており、この返礼品 の提供もsagaグルが行うこととなっていた。 ⑵ 原告は、令和3年4月から5月、返礼品であるさがびより、和牛1.2kg及び和牛1.6kgの出荷が遅延していることを把握した。 原告とアースグローは、同年5月13日、返礼品であるさがびより、和牛1.2kg及び和牛1.6kgの出荷遅延について打合せをし、以後の対応 について検討した。(乙2の1)原告と被告は、同月14日、返礼品の出荷遅延について打合せをし、原告は、被告に対し、対応案を考えるよう依頼した。(乙2の2)原告は、同年6月18日、被告に対し、令和2年度寄付に係る返礼品について早急に配送体制等を整備し、正確な配送計画で事業を実施するなど、適 正に業務を遂行するよう求める書面を交付した。(甲16)⑶ 被告は、令和3年6月28日、原告の市長に対し、返礼品であるさがびより、和牛1.2kg及び和牛1.6kgについてそれぞれ以下のとおり記載した確約書を作成し、差し入れた。 アさがびよりについて(甲4の1) (ア)令和3年6月25日時点の処理状況寄附件数 1万9482件既配送済件数 4297件配送予定件数 8155件配送不可能件数 7030件(寄付金の返還1件を含む。) (イ)今後の対応 寄附件数 1万9482件既配送済件数 4297件配送予定件数 8155件配送不可能件数 7030件(寄付金の返還1件を含む。) (イ)今後の対応 上記配送予定件数の返礼品については、令和3年8月15日までに寄付者へ配送し、上記配送不可能件数の返礼品については、原告と別途協議する。 イ和牛1.2kgについて(甲4の2)(ア)令和3年6月25日時点の処理状況 寄附件数 3万3944件既配送済件数 1万8487件配送予定件数 1万3860件配送予定未確定件数 1597件(イ)今後の対応 上記配送予定件数及び配送予定未確定件数の返礼品については、令和3年8月末までに寄付者へ配送する。 ウ和牛1.6kgについて(甲4の3)(ア)令和3年6月25日時点の処理状況寄附件数 3044件 既配送済件数 717件配送予定件数 2327件(イ)今後の対応上記配送予定件数の返礼品については、令和3年7月末までに寄付者へ配送する。 ⑷ 原告は、令和3年7月16日、返礼品の発送遅滞について、市長の記者会見を開くとともに、原告のホームページに公表した。(甲15の2・3、乙8)また、原告は、同月以降、寄付者に対し、返礼品の発送遅滞についてお詫びする旨の電子メールを送信し、書面を送付するなどした。(甲15の2~ 4) ⑸ 原告は、被告による返礼品の調達・発送が遅滞していたことから、返礼品提供事業者以外の業者からも同様の商品の見積もりを取ることとした。しかし、以下のとおり、いずれの見積もりも、地方税法に定める返礼品等の調達に要する費用(寄付金の額の3割以下)を大きく とから、返礼品提供事業者以外の業者からも同様の商品の見積もりを取ることとした。しかし、以下のとおり、いずれの見積もりも、地方税法に定める返礼品等の調達に要する費用(寄付金の額の3割以下)を大きく上回るものであった。 ア原告は、令和3年7月19日、株式会社有明・潮風ファームから以下の 内容の見積書の提出を受けた。(甲13の1、甲14の3)佐賀産和牛切り落とし1.2kg 品代税込5100円、送料税込1000円、合計6100円和牛切り落とし1.6kg(佐賀産800g、九州産800g) 品代税込5500円、送料税込1000円、合計6500円 令和2年産さがびより15kg 品代税込7000円、送料税込1000円、合計8000円令和3年産さがびより15kg 品代税込4275円、送料税込1000円、合計5275円イ原告は、令和3年7月19日、株式会社プライムフードから以下の内容 の見積書の提出を受けた。(甲13の2)佐賀産和牛切り落とし1200g 価格税込5400円和牛切り落とし(佐賀産800g、九州産800g) 価格税込5800円ウ原告は、令和3年8月3日、株式会社JA食糧さがから以下の内容の見 積書の提出を受けた。(甲14の2)令和3年産さがびより5kg×3 納入価格4968円(ただし仮価格。 運賃を含まない。)エ原告は、令和3年7月18日、株式会社カワダ米穀から以下の内容の見積書の提出を受けた。(甲14の4) 令和2年度佐賀県産さがびより15kg 単価税抜7500円 令和3年度佐賀県産さがびより15kg 単価税抜4700円⑹ 令和2年契約に基づき、被告が返礼品を調達・発送すべきもののうち、さがびよりについて1万1915件が、和牛1.2k 令和3年度佐賀県産さがびより15kg 単価税抜4700円⑹ 令和2年契約に基づき、被告が返礼品を調達・発送すべきもののうち、さがびよりについて1万1915件が、和牛1.2kgについて1万3869件が、和牛1.6kgについて1063件が、シャインマスカットについて1万0634件が履行されなかった。(甲3の1~4) これらについて、原告が被告に対して支払った委託料の合計は、3766万2240円である。 ⑺ 原告は、当初の返礼品が調達・発送できなかった寄付者に対しては、法令の範囲内の費用で調達可能な物品を改めて複数示し、その中から返礼品を選択してもらうか、もしくは寄付金を返還するという提案をした。 2 争点に対する判断⑴ 争点⑴(令和2年契約における解除権の発生)についてア上記認定事実⑵のとおり、原告は、令和3年6月18日、被告に対し、令和2年度寄付に係る返礼品について早急に配送体制等を整備し、正確な配送計画で事業を実施するなど、適正に業務を遂行するよう求める書面を 交付したと認められるところ、原告は、これが被告に対する催告(民法541条)に該当すると主張する。 そこで検討するに、本件の経緯に照らせば、令和3年6月18日の時点では、返礼品であるさがびより、和牛1.2kg及び和牛1.6kgについていずれも発送遅滞が明らかになっており、早急に対応が必要であるこ とは、原告も被告も認識していたものと認められる。そのような状況で、原告は、被告に対し、早急に配送体制等を整備し、正確な配送計画で事業を実施するなど、適正に業務を遂行するよう求める書面を交付したのであるから、これは、発送遅滞が明らかになっていた上記各返礼品について、早急な調達・発送を求めたものであると理解するのが通常である 事業を実施するなど、適正に業務を遂行するよう求める書面を交付したのであるから、これは、発送遅滞が明らかになっていた上記各返礼品について、早急な調達・発送を求めたものであると理解するのが通常であると考えら れる。そうすると、これは、原告が被告に対して返礼品の調達・発送とい う債務の履行を求めるものとして、「催告」に該当するものと認めるのが相当である。 この点、被告は、上記書面は一般的な依頼書にとどまり、契約関係を一方的に破棄する可能性を予期させるものではなく、債務者にもう一度考え直す機会を与えるものとはいい難い旨主張する。しかし、原告と被告の当 時の認識状況に照らせば、上記書面を一般的な依頼書にとどまるものと解釈するのは相当ではない。そして、上記書面は、契約に基づく債務の履行を求めるものであるから、被告の主張を踏まえても、催告に該当するとの上記結論は左右されない。 被告は、同月28日に原告に対して確約書を差し入れており、その中で、 配送可能な返礼品については、令和3年7月末、同年8月15日、又は同月末までに配送することを確約しているのであって(上記認定事実⑶)、遅くとも同日の経過をもって、催告後の相当期間が経過したものと認めることができる。 以上によれば、令和2年契約について、配送が未了のさがびより、和牛 1.2kg及び和牛1.6kgについての部分は、解除権が発生したというべきである。 イ仮に催告があったと認められなかったとしても、原告は、民法542条1項3号又は4号により、令和2年契約のうち履行されなかった部分の解除権が発生した旨主張する。 本件についてみるに、原告は、被告に対し、配送が未了のさがびより、和牛1.2kg及び和牛1.6kgについて履行を催告し、それに応じて ち履行されなかった部分の解除権が発生した旨主張する。 本件についてみるに、原告は、被告に対し、配送が未了のさがびより、和牛1.2kg及び和牛1.6kgについて履行を催告し、それに応じて、被告は、返礼品について、さがびよりの一部を除き、令和3年7月末、同年8月15日、又は同月末までに配送することを確約している(上記認定事実⑶)。そして、令和2年契約による委託業務は、ふるさと納税制度の 活用により、原告の取組を応援する寄付者を広く募るとともに、原告やそ の特産品等のPRを通じ、地域の活性化に寄与することを目的とするもの(甲2の1・5頁)と認められる一方で、上記のとおり確約した配送期限が到来する前である令和3年7月中旬の時点で、返礼品の発送遅滞が広く知られるところとなり、原告は、市長の記者会見を開き、また、寄付者に対する個別のお詫び文書を送付するなどしている(上記認定事実⑷)。こ のような事情からすれば、上記のとおり確約した配送期限までに返礼品の配送ができない場合には、令和2年契約をした目的を達することができないものと評価できるというべきである。 また、シャインマスカットについても、令和3年8月中旬から同年10月までに順次発送すると履行期限が定められていたところ(上記認定事実 ⑴)、被告が調達・発送すべきシャインマスカット以外の返礼品について、上記のような状況になっていたことに鑑みれば、シャインマスカットについても、発送ができないまま履行期限を徒過することとなれば、令和2年契約をした目的を達することができないものと評価できるというべきである。 そして、返礼品であるさがびより、和牛1.2kg、和牛1.6kg及びシャインマスカットのいずれについても、十分な履行がされないまま上記の各履 できないものと評価できるというべきである。 そして、返礼品であるさがびより、和牛1.2kg、和牛1.6kg及びシャインマスカットのいずれについても、十分な履行がされないまま上記の各履行期限を経過しているから、履行されていないものについては、いずれも「契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合 において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき」(民法542条1項4号)に該当するものとして、解除権が発生したと認めることができる。 ⑵ 争点⑵(被告の帰責性がないといえるか)について令和2年契約において、受託者である被告は、返礼品の調達及び発送の債 務を負うところ、本件では、この債務を十分に履行することができていない。 そして、その原因は、返礼品提供業者であるアースグロー及びsagaグルが返礼品の調達等に失敗したためであると認められるものの、被告は、上記債務を負う令和2年契約の受託者として、返礼品が適切に調達・発送されるように調整する必要があるのであって、アースグロー及びsagaグルの返礼品調達等の失敗について、被告がその責めを負うものといわざるを得ない。 この点について、被告は、令和2年契約に係る委託業務を実質的に行っていたのはアースグローであるという趣旨の主張をするが、仮にそうであったとしても、令和2年契約の当事者である被告が責めを免れることにはならないというべきである。 また、被告は、原告に対して、返礼品調達業者の変更に関する具体的提案 を行ったにもかかわらず、原告が受け入れなかったから、履行遅滞について被告の帰責性はない旨主張する。この点について、証拠(乙5)によれば、被告が、令和3年 品調達業者の変更に関する具体的提案 を行ったにもかかわらず、原告が受け入れなかったから、履行遅滞について被告の帰責性はない旨主張する。この点について、証拠(乙5)によれば、被告が、令和3年7月頃、返礼品である和牛1.2kg及び和牛1.6kgの調達に関し、明治屋産業株式会社と何らかの協議をしていたことは窺われるものの、原告に対して、受入れ可能な具体的な提案をしたことは認めるに 足りない。その他、いずれの返礼品についても、被告が、調達先変更について、原告において受入れ可能な具体的な提案を行ったことを認めるに足りる的確な証拠はないものといわざるを得ないから、この点に関する被告の主張を採用することはできない。 したがって、被告の帰責性がないとはいえない。 ⑶ 争点⑶(令和2年契約に係る損害額)についてこれまで検討したところによれば、原告は、被告に対し、令和2年契約について「債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる」(民法415条2項柱書)こととなるところ、「履行に代わる損害賠償」とは、債務の本旨に従った履行がされたならば債権者が得たであろう利益を金銭でてん 補することを目的とした損害賠償をいうものと解すべきである。 本件においては、原告が、被告に対して、令和2年契約に基づき業務を委託したにもかかわらず、その業務の最も重要な部分であると認められる返礼品の調達・発送が十分履行されなかったこと、被告の当該債務不履行に関し、原告において市長の会見をはじめとする様々な対応が必要となったこと(上記認定事実⑷)、それにより、令和2年契約の目的である市やその特産品の PR、地域の活性化に悪影響を及ぼしたこと、被告が履行しなかった返礼品の調達については、改めて行うとすると過分の費用が必要とな 認定事実⑷)、それにより、令和2年契約の目的である市やその特産品の PR、地域の活性化に悪影響を及ぼしたこと、被告が履行しなかった返礼品の調達については、改めて行うとすると過分の費用が必要となり、法令の範囲内での調達が困難であったこと(上記認定事実⑸)がいずれも認められる。 また、原告において、最終的には当初の返礼品を調達・発送できないまま、代替品を示すなど他の方法によったことが認められるが(上記認定事実⑺)、 これは、少なくとも一定程度、寄付者の原告に対する期待を裏切り、信頼を損なうものであったといえる。これらの事情によれば、被告により、返礼品の調達・発送以外の業務が履行されたものという余地があることを考慮しても、少なくとも返礼品の調達・発送が不履行となった寄付に係る委託料全額について、原告の損害となると認めることができる。 この点に関し、被告は、返礼品の発送が遅れても寄付者に寄付金を返還しなければならないわけではなく、また、原告の税収が減少することにもならないから、原告は既に履行に代わる利益を得ているといえると主張する。しかし、原告が被告に対して委託料を支払ったにもかかわらず、被告が債務を履行できておらず、原告において対応が必要となったのであるから、寄付金 返還の要否にかかわらず、原告に損害が発生したと認められるというべきである。 また、被告は、原告が支払を余儀なくされた商品代金と発送費用も、いずれにしても支払う必要のあるものであることなどから、原告の損害となることはないと主張するが、原告は、商品代金及び発送費用について損害として 主張するものではないから、この点は原告の主張する損害に対する適切な反 論とはいえない。 以上によれば、令和2年契約に関し、原告は、被告の債務不履行に 費用について損害として 主張するものではないから、この点は原告の主張する損害に対する適切な反 論とはいえない。 以上によれば、令和2年契約に関し、原告は、被告の債務不履行により、その不履行があった寄付に係る委託料である3766万2240円の損害を被ったと認めることができる。 ⑷ 争点⑸(令和3年契約に係る違約金の発生及びその額)について 前記前提事実⑺のとおり、原告は、被告に対し、令和3年8月31日付けで、被告の責めに帰する事由により履行期限までに委託業務を完了する見込みがないとして、令和3年契約9条1項1号、2号により、令和3年契約を解除する旨の意思表示をしたことが認められるが、被告は同号の要件を満たさないとして、この解除の効力を争う。 そこで検討するに、これまで認定説示したとおり、被告は、令和2年契約に基づく返礼品であるさがびより、和牛1.2kg及び和牛1.6kgの調達・発送について、履行すべき当初の期限を経過し、原告から催告を受け、被告自ら履行すべき期限を定めたにもかかわらず、その期限を徒過し、契約解除が可能な状態となったことが認められる。令和3年8月31日の時点で は、さがびより及び和牛1.6kgについては上記のとおりであるし、和牛1.2kgについても、原告による催告後に被告が定めた履行期限の末日に当たるのであって、全部の履行が見込まれない状況にあったといえる。 加えて、令和3年度の原告のふるさと納税についても、返礼品の多くが令和2年度と同様であり、アースグロー及びsagaグルから調達するものが 含まれていたことが認められる。 このような状況に照らせば、令和2年契約に基づく返礼品のみならず、令和3年契約に基づく返礼品についても、被告が履行期限までに調達・発送でき 調達するものが 含まれていたことが認められる。 このような状況に照らせば、令和2年契約に基づく返礼品のみならず、令和3年契約に基づく返礼品についても、被告が履行期限までに調達・発送できる見込みはないものと判断されてもやむを得ないところであり、それは被告の責めに帰すべき事由によるといえる。実際、被告においても、上記原告 の解除に対し、履行可能であるなどと主張して解除を争うことはしておらず、 かえって、契約解除後の事務の引継ぎ等について定めた覚書を締結していること(前記前提事実⑺)が認められるのであって、被告においても令和3年契約に基づく債務の履行ができないと認識していたことが推認されるというべきである。 そうすると、令和3年契約については、その全部を令和3年契約9条1項 1号により解除することができるというべきである。 これにより令和3年契約13条の要件を満たすから、原告は、被告に対し、令和3年契約に基づき被告の請求に応じて原告が支払った委託料416万5629円の100分の10である41万6562円(円未満切捨て。国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律2条1項参照)を、違約金として 請求できることとなる。 第4 結論以上の次第で、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求は主文記載の限度で理由があるから、これを認容すべきであるが、その余の請求は理由がないから、これを棄却すべきである。なお、棄却部分が僅少であること に鑑み、訴訟費用は全部被告の負担とするのが相当である。 よって、主文のとおり判決する。 佐賀地方裁判所武雄支部 裁判官益留龍也 よって、主文のとおり判決する。 佐賀地方裁判所武雄支部 裁判官益留龍也
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