平成28(ワ)274 配転処分無効確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月28日 岡山地方裁判所
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判決文本文39,314 文字)

- 1 -主 文 1 本件訴えのうち,別紙2授業目録記載の授業をする地位にあることの確認を求める部分及び別紙3物件目録記載の研究室を使用する地位にあることの確認を求める部分をいずれも却下する。 2 原告が,平成28年3月24日付けで被告がした,原告に授業を担当させず,幼児教育学科事務のみを担当させる旨の業務命令に従う義務のないことを確認する。 3 原告が,平成28年3月24日付けで被告がした,別紙3物件目録記載の研究室の明渡しを命じる業務命令に従う義務のないことを確認する。 4 被告は,原告に対し,110万円及びこれに対する平成28年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 7 この判決は,第4項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 原告が,被告の開設する岡山短期大学において,別紙2授業目録記載の授業をする地位にあることを確認する。 2 原告が,平成28年3月24日付けで被告がした,原告を授業の職務から外し幼児教育学科事務に職務内容を変更する業務命令に,従う義務のないことを確認する。 3 原告が,別紙3物件目録記載の研究室を使用する地位にあることを確認する。 4 被告は,原告が別紙3物件目録記載の研究室を使用することを妨害してはならない。 - 2 - 5 被告は,原告に対し,550万円及びこれに対する平成28年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 原告が,平成28年2月22日付けで被告がした,別紙3物件目録記載の研究室の明渡しを命じる業務命令に従う義務のないことを確 平成28年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 原告が,平成28年2月22日付けで被告がした,別紙3物件目録記載の研究室の明渡しを命じる業務命令に従う義務のないことを確認する。 7 原告が,平成28年3月24日付けで被告がした,別紙3物件目録記載の研究室の明渡しを命じる業務命令に従う義務のないことを確認する。 第2 事案の概要等 1 本件は,被告の設置する岡山短期大学(以下「本件短大」という。)の准教授である原告が,被告に対し,①別紙2授業目録記載の各授業(以下「本件各授業」という。)をする地位にあることの確認(第1第1項。以下「本件確認の訴え1」という。),及び,②被告が平成28年3月24日付けでした,原告に授業を割り当てず,学科事務のみを担当させる旨の平成28年度の事務分掌に基づく業務命令(以下「本件職務変更命令」という。)に従う義務がないことの確認(第1第2項)を各求め,①別紙3物件目録記載の研究室(以下「本件研究室」という。)を使用する地位にあることの確認(第1第3項。以下「本件確認の訴え2」という。),及び,②被告がした,本件研究室の明渡しを命じる旨の業務命令(以下「本件研究室変更命令」という。)に従う義務がないことの確認(第1第6項及び第7項)を各求めるとともに,③原告が本件研究室を使用することについての妨害予防(第1第4項)を求め,本件職務変更命令は,原告に対するパワーハラスメントであり,被告が,原告に対し,退職強要目的で本件職務変更命令及び本件研究室変更命令を行ったこと並びに隔離・仲間外し・無視等を行ったことなどはいずれも違法であるとして,不法行為に基づき,慰謝料500万円及び弁護士費用相当損害金50万円の合計550万円及び遅延損害金の支払(第1第5項)を求める 並びに隔離・仲間外し・無視等を行ったことなどはいずれも違法であるとして,不法行為に基づき,慰謝料500万円及び弁護士費用相当損害金50万円の合計550万円及び遅延損害金の支払(第1第5項)を求める- 3 -という事案である(金員請求に関し,遅延損害金の始期は,不法行為日後である平成28年5月26日(平成28年5月24日付け訴えの変更申立書送達日の翌日)であり,利率は民法所定の年5分の割合である。)。 2 前提事実当事者等ア原告は,昭和40年1月1日生まれの女性であり,本件短大の専任准教授である。 イ被告は,教育基本法及び学校教育法に従い教育を行うことを目的として本件短大を設置運営する学校法人であり,被告の理事長及び本件短大の学長は,A(以下「A学長」という。)である。 本件短大の概要等ア本件短大は,幼児教育学科(以下「本件学科」という。)を設置する入学定員100名,専任教員14名(教授7名,准教授3名,講師4名)の短期大学である。本件学科の教育目標としては,①21世紀を生きる幼児達が日本国民であるとともに「地球市民」であるよう教育指導するに,ふさわしい資質能力,②外国語によるコミュニケーション能力やコンピュータの活用能力,③幼児教育者としての使命感,幼児の成長及び発達についての精深な理解,幼児に対する教育的愛情,教科などに関する専門的知識,広く豊かな教養,そして,これを基礎とした実践的指導力,④幼児の発達段階に鑑みて,家庭教育と幼稚園教育及び保育所との連携を十分に図ることができる資質能力をそれぞれ有する保育者の養成が掲げられている。 本件短大の学生は,本件学科の教育課程を履修することにより,卒業と同時に,保育士及び幼稚園教諭二種免許状の資格ないし免許を取得することができる(乙5,1 る保育者の養成が掲げられている。 本件短大の学生は,本件学科の教育課程を履修することにより,卒業と同時に,保育士及び幼稚園教諭二種免許状の資格ないし免許を取得することができる(乙5,14)。 イ本件短大においては,学長の下に,教授会,FD(Facultydevelopment)会議(以下「FD会議」という。)等が組織されており,教授,准教授,- 4 -講師の全ての教員が,教育・研究のみならず,全学的な教学マネジメント,アドミッション・オフィス,入学前指導,新入生歓迎行事,私立大学教育研究活性化設備整備事業,自己点検・評価報告,就職指導,生活指導,紀要制作,卒業アルバム制作,シラバス制作,発表会,文部科学省免許更新講習,倉敷市大学連携事業,救命救急講習,学友会事務運営,オープンキャンパス実施,スイーツカフェ開催,行事記録,ボランティア指導,時間割・試験日程作成及び試験監督,学外実習,子育てカレッジ事務局等の学科事務を,本来的な職務としてそれぞれ分担している(甲15,乙17参照)。 原告は,平成11年9月1日,被告との間で大学教員契約を締結し(以下「本件教員契約」という。),本件短大の講師として採用された後,平成19年4月1日,本件学科の専任准教授に任じられたが,いずれの辞令にも科目の限定は付されていなかった(甲2,3)。原告は,これまで,本件短大の本件学科において,一般教養科目の生物学及び専門教育科目の環境(保育内容),教職実践演習,卒業研究(A)(B)(以下,一括して「卒業研究」という。),卒業予備研究等の科目を担当してきた。 原告は,遺伝性疾患である網膜色素変性症(以下「本件疾患」という。)に罹患しているが,同疾患は,長い年月をかけて網膜の視細胞が退行変性し,主に進行性夜盲,視野狭窄,羞明を認め 当してきた。 原告は,遺伝性疾患である網膜色素変性症(以下「本件疾患」という。)に罹患しているが,同疾患は,長い年月をかけて網膜の視細胞が退行変性し,主に進行性夜盲,視野狭窄,羞明を認める病態のものである。 原告は,近年まで,夜盲及び視野狭窄は認められたものの,中心性視力は維持され,文字の判読は可能であった。しかし,原告は,従前,事実上補佐してもらっていた女性事務員が退職する予定となったことに加え,近年,本件疾患が進行し,文字の判読が困難となったため,平成26年度以降,私費によりB(以下「B」という。)を補佐員とし,その後は同人による視覚補助を得て授業活動及び研究活動に従事していた。 被告は,平成28年2月5日開催のFD会議において,本件学科において- 5 -新たに教員を採用し,これまで原告が行ってきた授業を担当させる方針を固め,同月24日開催の教授会の審議を経て,同年3月24日開催の新年度準備会議において,同年度における授業計画及び事務分掌を正式に決定したが,そこでは,原告は授業を担当せず,学科事務のみを担当することとされている。 原告は,平成25年以降,本件研究室を使用していたところ,被告は,上記⑸の決定に伴い,平成28年3月24日頃,原告に対し,研究室を本件研究室からキャリア支援室に変更する旨指示したが,この研究室の変更については,これに先立つ同年2月23日,本件学科のC教授(以下「C教授」という。)からも,電子メールで指示されていた。 3 争点本案前の答弁に係る争点ア本件確認の訴え1につき,確認の利益があるかイ本件確認の訴え2につき,確認の利益があるか本案に係る争点ア原告が本件各授業を担当する地位を有するか(就労請求権の有無)イ本件職務変更命令の適法性 つき,確認の利益があるかイ本件確認の訴え2につき,確認の利益があるか本案に係る争点ア原告が本件各授業を担当する地位を有するか(就労請求権の有無)イ本件職務変更命令の適法性ウ本件研究室変更命令の適法性エ原告が本件研究室を使用する地位を有するかオ原告が本件研究室を排他的に使用する権利を有するかカ被告が本件職務変更命令等をしたことが原告に対する不法行為を構成するか 4 争点に関する当事者の主張本件確認の訴え1につき,確認の利益があるか(争点⑴ア),及び原告が本件各授業を担当する地位を有するか(就労請求権の有無)(争点⑵ア)について- 6 -〔原告〕准教授は,学校教育法92条7項により,学生を教授し,その研究を指導し,又は研究に従事するものとされており,憲法上学問の自由が保障されていることからしても,本件短大の専任准教授である原告には,当然に,授業をする地位が認められる。また,本件教員契約には,原告が本件各授業を担当する旨の合意が含まれていると解されるから,原告の授業をする地位は,本件教員契約に基づくものであるともいえる。 そして,授業をする地位からは,授業計画を自ら立案する権利など様々な権利が派生する。その地位確認は,本件の諸紛争を解決するのに有力かつ適切な方法といえるから,本件確認の訴え1には確認の利益がある。 〔被告〕大学においては,大学の自治の一環として,大学側に教育課程の編成や授業計画の策定に係る広範な裁量権が与えられており,個々の教員に対しては,教授会の審議等を経て策定された授業計画に基づき授業担当を割り当てることになる。また,本件教員契約に原告が本件各授業を担当する旨の合意は含まれていない。したがって,具体的な授業の割り当てを受けていない原告 の審議等を経て策定された授業計画に基づき授業担当を割り当てることになる。また,本件教員契約に原告が本件各授業を担当する旨の合意は含まれていない。したがって,具体的な授業の割り当てを受けていない原告に,一方的に授業を行うことができる実体法上の地位は存在しない。 また,授業をする地位から他の権利が派生することもない。授業をする地位の確認は,単なる債権の確認であり,そのような権利があるのであれば給付請求によって実現されるべきものであるから,確認の利益を欠く。 本件確認の訴え2につき,確認の利益があるか(争点⑴イ),原告が本件研究室を使用する地位を有するか(争点⑵エ),及び原告が本件研究室を排他的に使用する権利を有するか(争点⑵オ)について〔原告〕ア学問の自由を制度的に保障するため,大学設置基準36条1項及び2項は,「大学は,その組織及び規模に応じ,研究室等を備えた校舎を有する- 7 -ものとする」こと,及び「研究室は,専任の教員に対しては必ず備えるものとする」ことを定めている。また,短期大学設置基準28条1項及び3項にも同趣旨の規定が存在する。したがって,本件教員契約には,研究室を提供する旨の合意が含まれているというべきである。被告が,その合意に従い原告に本件研究室を与えたからには,別の研究室を与えて原告が承諾した場合を除き,原告から本件研究室を取り上げることはできない。また,原告は,善意無過失で平穏に本件研究室を占有しているところ,退職勧奨としての業務命令は不法行為というべきであるから,原告は,人格権に基づいて本件研究室の明渡しを拒むことができる。 イなお,被告が原告の本件研究室を使用する地位を認めていない現状下では,仮に,妨害予防が認められたとしても画餅に帰すおそれがあるから,本件確認の訴え2には確認の利 室の明渡しを拒むことができる。 イなお,被告が原告の本件研究室を使用する地位を認めていない現状下では,仮に,妨害予防が認められたとしても画餅に帰すおそれがあるから,本件確認の訴え2には確認の利益がある。 〔被告〕学校教育法施行規則142条2項及びこれに基づく短期大学設置基準28条3項が,短期大学に対し,教育・研究を職務とする専任の教員の研究室を必ず備えることを義務付けているのは,飽くまでも利用者である学生に対し良質な教育役務を提供することに主眼があり,教員の研究の便益に資することを直接の目的とするものではない。むしろ,大学の研究室は,格別の合意や取決めがない限り,専任教員が労働契約上負担する教育・研究債務の履行に必要な範囲で,事実上,使用が許されているにすぎないと解するのが自然である。かかる債務の履行を離れて,一般的に専任教員が研究室を使用する権利などおよそ存在しないというべきである。 本件職務変更命令の適法性(争点⑵イ)について〔原告〕ア本件職務変更命令は,原告の職務内容を変更するものであるから配転命令に該当するところ,大学教員には職種上,教育・研究に職務を限定する- 8 -との職務限定合意が認められるし,本件教員契約上も,原告には上記職務限定合意が認められるから,原告の同意なくされた本件職務変更命令は,無効である。 また,この点を措くとしても,本件職務変更命令は業務命令権を濫用してされたものであるから,無効である。 イ被告は,原告の能力は准教授に本来要求される水準に達しておらず,改善の見込みもなかったと主張する。しかし,被告が実施している学生に対する授業アンケートの結果をみれば,原告の授業が学生から支持されていたことは明らかであり,環境教育に関する研究を継続的に行っていたから,突 みもなかったと主張する。しかし,被告が実施している学生に対する授業アンケートの結果をみれば,原告の授業が学生から支持されていたことは明らかであり,環境教育に関する研究を継続的に行っていたから,突如として授業担当を外される業務上の必要性はない。 被告は,原告が担当していた環境(保育内容)の授業につき,平成26年度以前,原告が動植物の飼育・栽培あるいはこれに関連する授業を組み込まなかったと主張する。確かに,平成25年頃の学科会議において,原告の環境(保育内容)の授業で植物栽培又は動物飼育を行うことができないかが検討されたことはあったが,このときは,原告は視覚障害が進行していたのに,被告の支援が行われていない状況であったことから,授業に組み込むことができなかったのである。しかし,原告は,平成26年4月1日以降,自費で補佐員を雇用することが認められ,視覚補助を得られることとなったから,平成27年度から環境(保育内容)において,ミニトマト栽培及びサツマイモ栽培を取り入れ,成果を上げている。 また,そもそも保育所保育指針及び幼稚園教育要領(以下「保育所保育指針等」という。)は,保育園及び幼稚園の指導方針を定めたものであって,保育士及び幼稚園教諭を育成する教育機関における教育内容を定めたものではない。したがって,保育所保育指針等は,本件短大を含む教育機関に対し植物栽培や動物飼育の実習を行うことを義務付けるも- 9 -のではなく,実際にも実施している大学はまれである。 学生の私語,無断退出,遅刻及び予習の確認やそれらに対する注意などは,被告が視覚補助者を配置するなどの合理的な配慮をすれば解決可能である。なお,原告は,平成25年度に学外の友人に環境(保育内容)の試験の採点を依頼したことがあったが,その後,補佐員を雇用するこ どは,被告が視覚補助者を配置するなどの合理的な配慮をすれば解決可能である。なお,原告は,平成25年度に学外の友人に環境(保育内容)の試験の採点を依頼したことがあったが,その後,補佐員を雇用することで解決しており,原告の試験の採点や成績評価にずさんな点はない。 被告は,平成27年度の卒業研究における学生からの苦情申立て(以下「本件苦情申立て」という。)を本件職務変更命令の理由として指摘する。 しかし,本件苦情申立ての背景には,原告が補佐員に他の授業のための作業に従事してもらい,卒業研究の授業を補佐員なしで行っていたこと,同授業は学生の自主性を重んじていたし,また,原告自身,平成27年度はサツマイモ栽培の準備に時間をとられたことから,卒業研究の研究成果として行う発表会の事前準備が十分にできず,さらに,平成27年度は2年生の相互の人間関係が良好でなかったこともあり,卒業研究の準備がなかなか進まなかったということがある。本件苦情申立てにつき,原告は,平成28年1月,改善すべき点を被告に申告した上,学生に謝罪しており,今後は,補佐員をティーチングアシスタントとすることなどで解決できる。 なお,平成27年度の卒業研究における学生の不満は,被告が一部の学生のみを対象として聞き取り調査を行い,学生の単なる不満を恣意的に切り出したものである。時期的にも,学生個々人が学業や人間関係,就職に不安定要素を抱える時期のものである上,そもそもそれらの不満は,原告の専門分野と関連が薄いから,それらが原告に授業を担当させない理由になるものではない。 ウ本件職務変更命令は,本件短大の専任准教授という地位にある原告に,- 10 -学科事務のみを担当させるものであるが,その扱いは事務職員と同じであり,屈辱的でさえある。本件職務変更命令は,原告に対し精 件職務変更命令は,本件短大の専任准教授という地位にある原告に,- 10 -学科事務のみを担当させるものであるが,その扱いは事務職員と同じであり,屈辱的でさえある。本件職務変更命令は,原告に対し精神的苦痛を与え,教員生命を奪うほどの著しい不利益を与えるものであり,原告を自主退職に追い込もうとする違法な退職勧奨の意図が含まれていることがうかがわれる。 エ平成28年4月1日に施行された,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)8条1項は,「事業者は,その事業を行うに当たり,障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより,障害者の権利利益を侵害してはならない。」と定め,同条2項は,「事業者は,その事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。」と定めている。障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」という。)36条の3も,「事業主は,障害者である労働者について,障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため,その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備,援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし,事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは,この限りではない。」と定めており,事業主に対して合理的配慮の提供をすることに努力を尽くすべきことが義務付けられ 置を講じなければならない。ただし,事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは,この限りではない。」と定めており,事業主に対して合理的配慮の提供をすることに努力を尽くすべきことが義務付けられている。 しかし,被告からは,かかる合理的配慮の提供は全くなされていない。 むしろ,被告は,原告に対し,視覚障害のためできないことを本件職務変- 11 -更命令の理由として並べ立てて,原告の課題をいかに克服すべきかを検討するといった対応を放棄してしまっているが,このような被告の対応は,正に原告の視覚障害を理由とする差別にほかならず,障害者差別解消法の趣旨に逆行するものである。 〔被告〕ア原告は,本件職務変更命令を配転命令と理解するようであるが,本件職務変更命令は,飽くまでも教員が行うべき本来的職務のうち,単に担当授業のみを免じ,研究及び学科事務に集中させるというものに過ぎず,所属部署の変更を伴うものでも,本来的職務とは異質な,別の負担をかけるものでもない。 したがって,本件職務変更命令は配転命令には該当しないし,次のイ以下のとおり,もとより業務命令権の逸脱,濫用も認められない。 イ平成26年度以前の授業の内容本件短大は,保育士及び幼稚園教諭の養成機関として,通達及び実際上,保育所保育指針等の教育指針に準拠した教育を実施することが強く要請されている。原告が主に担当してきた環境(保育内容)は,保育所保育指針等における「環境」の教育的狙いを踏まえた計画・実践を行い,上記狙いを達成するための力となる基礎的知識・技術を獲得することを目標とする科目である。保育所保育指針等には,環境(保育内容)の領域において,「身近な動植物に親しみを持ち,いたわったり,大切にしたり,作物を育てたり,味わうなどして,生命の尊さに気 獲得することを目標とする科目である。保育所保育指針等には,環境(保育内容)の領域において,「身近な動植物に親しみを持ち,いたわったり,大切にしたり,作物を育てたり,味わうなどして,生命の尊さに気付く」(保育所保育指針第三章1(二)ウ(イ)⑦),「身近な動植物に親しみをもって接し,生命の尊さに気付き,いたわったり,大切にしたりする」(幼稚園教育要領第2章「環境」2⑸)とあるから,環境(保育内容)としては,動植物の飼育・栽培あるいはこれに関連する授業を何らかの形で授業計画に組み込むことは必須であり,これを欠落することなどあり得な- 12 -い。しかし,原告は,動植物の飼育・栽培を扱った経験がなく,平成21年度以降,これを全く取り入れることができなかった。すなわち,原告の授業には,保育所保育指針等が「環境」の領域について要求する範囲をカバーできていないという致命的な問題があった(乙10,23,24,28,32,33,35,54,56,57,64)。 また,原告の授業内容は,環境設定の指導や理論的フィードバックが全くなされないまま,単なる「遊び」や「ゲーム」で構成されていたことから,保育理論・幼児教育理論の実践というよりも,文字どおり「幼稚園の授業そのもの」とでもいうべきものであった(乙23,11頁以下)。平成26年度,原告の環境(保育内容)の授業中,受講生の一人が「ストロー笛をピーッと鳴らせて聞かせ,それが鳴らせた人は教室から退出してもよい。」といった演習内容がばかばかしくなり,教室から飛び出したというのは,正しくその一例である(乙64,3頁以下)。 原告は,授業の進行をほとんど学生任せにしていた上,注意・指導を全く行わなかったため,原告の授業においては,雑談,読書,睡眠,無断退出等が横行するなど,いわゆる「学級崩壊」同然の事態 ,3頁以下)。 原告は,授業の進行をほとんど学生任せにしていた上,注意・指導を全く行わなかったため,原告の授業においては,雑談,読書,睡眠,無断退出等が横行するなど,いわゆる「学級崩壊」同然の事態が生じており,原告の授業を参観した他の教員が,異口同音に「授業中に学生が遊んでいても注意できない」「学生の反応の確認ができず授業として成立していない」といった問題点を繰り返し指摘しても(乙25~27,29~32,35),原告の授業が改善されることはなかった。 さらに,原告は,試験の採点も明らかにずさんであり,平成25年7月31日には,被告の個人情報管理責任者の承認を得ることのないまま,定期試験の採点支援を学外の「友人」に依頼することがあり,結果として,学生の答案という極めて機微な個人情報を部外者に開示してしまうという事態まで生じさせていた(甲13,乙59)。 ウ平成27年度の授業の内容- 13 -前記のとおり,原告の授業には,もともと問題なしとしないものがあり,これまで度重なる指摘・指導がされてきたが,見るべき改善がないままであった。 すなわち,平成27年度からは,環境(保育内容)において,「ミニトマトの栽培」や「サツマイモの栽培」がようやく授業計画に組み込まれたものの(乙14,34),原告自身には作物栽培の経験が全くなかったことから,結局,授業内容としては,学生が十分な学習効果を上げるには程遠いものであった(甲17,乙44,58,65)。 また,その他の授業内容についても,それまでと同様,およそ短期大学生向けとは思えない,単なる「遊び」や「ゲーム」に終始し,時には,およそ授業内容と何ら関係のないバスケットボール等をするなど,手抜きといわれても仕方のないものであった(乙38,47,64)。 生向けとは思えない,単なる「遊び」や「ゲーム」に終始し,時には,およそ授業内容と何ら関係のないバスケットボール等をするなど,手抜きといわれても仕方のないものであった(乙38,47,64)。 さらに,原告が学生に対し注意・指導を全く行わないことも相変わらずであり,受講生の中には,授業中に菓子等(時にはカップラーメン)を食べる者さえいる状況であったが,原告は,これを黙認・放置するばかりか,あまつさえ授業中に,自ら学生に菓子を配ったりする有様であった(乙38,40,47,64)。 かかる原告の授業に不満を持った卒業研究の受講生の一人(以下「本件受講生」という。)が,平成27年11月,「毎回,鬼ごっこやかくれんぼなどをして遊ぶばかりで,自分がイメージしていた授業内容とは異なる」といった強い苦情を申し立て(本件苦情申立て),また,本件受講生を含む特定のクラスの学生全員が,平成27年12月18日の授業をボイコットするという事態まで発生した(乙38,47)。 エ被告は,上記のような事態を憂慮した結果,平成28年1月6日に開催された教授会で,上記問題につき協議した上,事実関係を調査することとし,同月8日,本件受講生以外の複数の受講生4人からヒアリングを行っ- 14 -たところ,おおむね本件苦情申立てのとおりの事実関係であることが確認された。また,同月6日及び同月14日の2日にわたり,原告から弁解を聴取するとともに,同月13日には原告から始末書及び反省文が提出されたが,原告の弁解や改善提案によれば,原告の准教授としての資質や授業の質が今後改善される見込みは乏しいものと考えられた。 そこで,被告は,本件学科において新たに教員を採用して,これまで原告が行っていた授業を担当させる方針とした。もっとも,被告は,原告が視覚障 今後改善される見込みは乏しいものと考えられた。 そこで,被告は,本件学科において新たに教員を採用して,これまで原告が行っていた授業を担当させる方針とした。もっとも,被告は,原告が視覚障害者であることから,雇用の確保・労働条件の維持を最優先する必要があると考え,また,かねて原告からは,非常勤講師になるよりは学科事務を担当する方がよいと聞いていたこともあり,もっぱら原告には遂行可能な学科事務を担当させることとし,職位・給与の異動は特に行わないことにした。 オ本件職務変更命令は,上記のような経緯,判断に基づくものであり,業務命令権の行使に何らの逸脱・濫用はない。これをまとめると,次のとおりである。 本件短大は,保育士,幼稚園教員といった専門職を養成する性格の強い学校であるから,その教員は,保育所保育指針等に即した教育課程に沿った内容の授業を行い,一定の水準を確保することが最低限要請されるところ,原告は,視覚障害以前の問題として,動植物の飼育・栽培という保育士や幼稚園教諭にとって必須の事項につき,満足のいく授業を行うことができなかった。まずこの一事をもってしても,原告は,教員としての最低限の教育能力を欠いていると言わざるを得ないし,研究実績は,環境(保育内容)を担当するには不十分である。 また,視覚障害が一定の影響を及ぼしていると考えられる授業内容・運営の点に関してみても,原告は,学生が将来,保育所保育指針等に即した教育・保育をできるようになるための方法論につき十分に教授がで- 15 -きないばかりか,原告のクラスは,結果的に「学級崩壊」同様の状態であった。そして,被告からの再三の指導や指摘によっても何らの改善が見られなかったのであるから,原告が准教授に本来要求される水準の能力を有しておらず,かつ,今後の改善可 果的に「学級崩壊」同様の状態であった。そして,被告からの再三の指導や指摘によっても何らの改善が見られなかったのであるから,原告が准教授に本来要求される水準の能力を有しておらず,かつ,今後の改善可能性が乏しいことは厳然たる事実である。仮に,このまま原告に授業を担当させ続けるとすれば,厚生労働省を始めとする監督官署の調査・指導などが実施され,最悪の場合,授業のやり直しすらあり得たから(乙61,67),原告に授業を担当させないこととした被告の判断は正当である。 原告は,障害者差別解消法及び障害者雇用促進法に基づく合理的配慮に言及するが,そもそも,原告が主に授業を担当していた環境(保育内容)の教育目標や内容は,極めて実践的な性格を有しているから,単なる座学ではあり得ない。かかる授業を効果的に行うためには,教員と学生との双方向的・非言語的コミュニケーションが必要不可欠である。教員には,演習における諸活動を通じ,学生に表れる細やかな表情や,ニュアンスに富んだ行動を注意深く観察しつつ,それぞれの学生の感じ方や理解度を把握し,しかる後に,諸活動の持つ意味合いを理論的にフィードバックするという一連の実践的かつ高度な営みが要求される。そうすると,視覚補助者を付けることによって問題を解消することは不可能又は著しく困難といわざるを得ず,原告の授業にみられる問題は,合理的配慮の提供では解決できない。 本件職務変更命令は,教員が行うべき本来的職務のうち,単に担当授業のみを免じ,研究及び学科事務に集中させるものに過ぎず,原告に対し,教員の本来的職務とは異質の負担を新たにかけるわけではなく,何らの減給を伴うものでもない。原告は,今後も引き続き自由に研究活動を行うことが可能であるし,各種学科事務も大学運営にとって極めて重要でやりがいのある業務といえる の負担を新たにかけるわけではなく,何らの減給を伴うものでもない。原告は,今後も引き続き自由に研究活動を行うことが可能であるし,各種学科事務も大学運営にとって極めて重要でやりがいのある業務といえる。原告の自己実現という観点からして- 16 -も,原告が被る不利益は必要最小限度にとどまるということができるし,退職勧奨を意図したものではない。 本件研究室変更命令の適法性(争点⑵ウ)について〔原告〕ア本件短大には,本件研究室以外にも空き室となっている研究室があるから,研究室の割り当てを変更する理由はない。視覚障害のある原告としては,本件研究室内に存在する資料備品等の位置を全て記憶して授業準備及び研究活動に従事しているから,本件研究室にある資料備品がキャリア支援室に移動され,かつ,別の教授とキャリア支援室を共同使用することとなれば,原告の活動は著しく困難となる。 イ移動先として指示されたキャリア支援室は,廊下側にガラス窓が設置されており,廊下を行き来する学生,教職員から丸見えの状態である。視覚障害のある原告が,廊下に立つ者がガラス窓を通してキャリア支援室内を見ていることを視覚で認識することは困難であるから,原告としては常に外から覗かれているとの意識を抱かざるを得ない。本件研究室変更命令は,単なる研究室の移動などではなく,その実質は,原告から研究室を取り上げることを目的とした命令である。 ウなお,被告は,本件研究室をD講師に割り当てるために本件研究室変更命令を出したと主張するが,C教授からの電子メールによれば,本件研究室はE専任講師(以下「E講師」という。)に割り当てることを予定していたのであるから,被告の主張は後付けの理由というほかない。 〔被告〕ア被告としては,新たに採用したD講師に新たな研究室を提供する 専任講師(以下「E講師」という。)に割り当てることを予定していたのであるから,被告の主張は後付けの理由というほかない。 〔被告〕ア被告としては,新たに採用したD講師に新たな研究室を提供する必要が生じたことから,研究室の配置換えを行うこととし,その結果,D講師には,同人が授業を行うB棟408号室から近い本件研究室を割り当て,原告には,キャリア支援室を割り当てた。D講師に対しては,授業終了後,- 17 -学生からの質問等に適時に対応できる本件研究室を割り当てること,及び原告に対しては,学生の窓口的機能を有し学科事務に至便であるキャリア支援室を割り当てることは,いずれも至極合理的である。 イキャリア支援室は,その構造・機能上,研究室として利用することが十分可能であって,実際,F教授(以下「F教授」という。)は,キャリア支援室を主たる研究室としていたが,そのことで何らの支障もなかった。 しかも,キャリア支援室は,ドアからわずか数歩で避難経路に接続している上,外部からの見通しも良く,他の教員も在室しているなどの特性を有しており,本件研究室変更命令は,視覚障害者である原告に対する合理的配慮という意味でも相当である。 ウそもそも,大学は,その限られた経営の資源を全学的にいかに配分するか,換言すれば,どの教員にいかなる研究室を備えるかについて,施設管理権・業務命令権に基づく広範な裁量権を有していると解される。したがって,研究室の配置換えなどは,教員が通常甘受すべき一般的不利益にとどまるというほかない。 被告が本件職務変更命令等をしたことが原告に対する不法行為を構成するか(争点⑵カ)について〔原告〕ア本件職務変更命令は,原告を授業から外し,主任教授の監督の下で学科事務のみを担当させるものである。本件職務変更命令は,業務 が原告に対する不法行為を構成するか(争点⑵カ)について〔原告〕ア本件職務変更命令は,原告を授業から外し,主任教授の監督の下で学科事務のみを担当させるものである。本件職務変更命令は,業務上の合理性がないのに,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことに該当するから,典型的なパワーハラスメントに該当するものである上,その実質は,違法な退職勧奨といえる。 イ本件研究室変更命令は,そもそも必要性が乏しいものである上,キャリア支援室は,入り口に大きなガラス窓が設置され,室内の様子が廊下から丸見えであり,視覚障害のある原告としては,常に外から覗かれている意- 18 -識を抱かざるを得ない。このような状況に原告を置くことは,原告に対する精神的な攻撃である。原告は,本件研究室内の私物を全て撤去し,キャリア支援室には持ち込まないよう指示されたが,デジタルデータの読み上げソフトをインストールした私物パソコンを持ち込めないと,原告が仕事を遂行することは,ほぼ不可能となる。 ウその他,学科会議においては,学長,教授,准教授,講師の順に着席するのが通常であり,本件職務変更命令以前は,准教授である原告も,本件学科の全体会議において,教授及び准教授が並ぶ中に席を定められていたが,最近では,講師より末席の図書館司書の隣に座るよう指示されている。 また,卒業式のリハーサル及び退職教員への記念品贈呈のセレモニーに原告が参加しようとした際,他の教員が移動介助をしようとしたところ,C教授が「いけない。」と制止したことから,その後,原告は,これまで日常的に行われてきた同僚からの移動介助を受けることができなくなったし,これまでは,新入生オリエンテーション等の行事のときには会場において学科業務に当たっていたのに,平成28年度は研究室 ,これまで日常的に行われてきた同僚からの移動介助を受けることができなくなったし,これまでは,新入生オリエンテーション等の行事のときには会場において学科業務に当たっていたのに,平成28年度は研究室待機を指示された。このように,被告は,原告の行事への参加を拒み,原告が学生や他の教員と接触することを妨害している。なお,原告に対しては,昨年度までは教授会の議事録等が電子メールで配信されていたが,平成28年度は送られてきていないし,形式的な審議が終わって原告が帰った後,原告不在のまま他の教員のみで会議をしている。 エ上記のとおりの被告の行為は,退職強要を目的とした,A学長を中心とする継続的かつ組織的なパワーハラスメントであるから,原告に対する不法行為を構成する。 オ被告は,本件やその保全事件等で,原告が教員としての適格を欠くなどの陳述書を作成するよう教員に指示してこれを作成させ,提出し,原告の裁量の範囲内である点,介助者を適切に配置すれば生じない点,視覚障害- 19 -故に原告が至らない点などを過剰にあげつらって原告の尊厳を傷つけた。 カ原告は,上記不法行為により深刻な精神的苦痛を受けたものであり,この精神的苦痛を慰謝するには少なくとも慰謝料500万円が認められるべきであり,弁護士費用は50万円が相当である。 〔被告〕原告の主張アないしカは,否認ないし争う。本件職務更命令及び本件研究室変更命令に業務命令権の濫用はない。本件研究室変更命令に当たり,被告が撤去を指示した「私物」とは,およそ教育及び研究には必要がないと思われるごみや,がらくたの類のものであって,ノートパソコンではない。 全体会議等の席順は,原告が合理的配慮を要求してきたため,その一環として,原告の席を,できる限り安全で移動しやすい位置としたに過ぎ みや,がらくたの類のものであって,ノートパソコンではない。 全体会議等の席順は,原告が合理的配慮を要求してきたため,その一環として,原告の席を,できる限り安全で移動しやすい位置としたに過ぎない。 新入生オリエンテーション時,原告に対し研究室待機を指示したのは,当日欠席者に対応するためであり,待機を指示されたのは原告だけではない。当日欠席者に対応することは,学科事務の一環である。平成28年度は,個人情報保護の観点から議事録は総務課に備え置くこととし,電子メールでの配信は行わないようにしたため,原告にも配信しなかっただけであり,FD会議後に開催されていたのは,授業・学科事務を担当する教員による専門部会であるから,原告に出席の必要はなかった。 また,訴訟等で提出した陳述書等は,作成した本人がありのままを述べたにすぎず,原告の尊厳を傷つけるものではない。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 原告は,昭和59年4月に日本大学農獣医学部農芸化学科に入学し,同学部卒業後,同大学大学院農学研究科農芸化学専攻博士課程に進学し,平成2年に農学修士を取得した後,臨床検査試薬メーカー研究所勤務,国立遺伝学- 20 -研究所研究生を経て,岡山大学大学院自然科学研究科生物資源科学専攻博士課程に進学し,博士論文「タバコ培養細胞におけるアルミニウム障害ならびに防御機構に関する研究」により,平成11年3月農学博士号を取得した(甲23,65)。 原告は,平成11年8月頃,当時の岡山大学大学院の担当教授から本件短大において生物学の教員を募集している旨の情報を得て,A学長と面談し,同年9月1日,被告との間で,原告が被告の専任講師として勤務する旨の本件教員契約を締結し,同年1 山大学大学院の担当教授から本件短大において生物学の教員を募集している旨の情報を得て,A学長と面談し,同年9月1日,被告との間で,原告が被告の専任講師として勤務する旨の本件教員契約を締結し,同年10月の後期から生物学及び環境保全学の授業を,翌年度前期から環境(保育内容)の授業を担当するものとして,本件短大の講師に任じられた。 原告は,その後,本件短大において,一般教養科目の生物学及び専門教育科目の環境(保育内容),教職実践演習,卒業研究,卒業予備研究等の科目を担当してきた。(甲65,乙94,原告本人)原告は,平成19年4月1日,本件学科の専任准教授に任じられた。 原告は,遺伝性疾患である網膜色素変性症(本件疾患)に罹患しており,近年,本件疾患が進行し,文字の判読が困難となった。そのため,原告は,平成25年7月31日に実施した環境(保育内容)の試験の採点支援を学外の知人に依頼したところ,被告の個人情報管理責任者の承認を得ることなく個人情報を部外者に開示したとして,学内で問題となったことがあった。 A学長は,平成26年1月9日,これまで原告の視覚補助を事実上担当していた女性事務職員が近々離職することとなった等の理由から,原告に対し退職勧奨をしたが,原告が,視覚補助のための補佐員を私費で付けることを提案したため,平成26年度以降も引き続き原告に授業を担当させることとした。その際,A学長は,学生から苦情が出た場合は授業を担当させ続けることはできない旨釘を刺した。(乙54,60)原告は,上記補佐員として,岡山県視覚障害者センターで点訳のボランテ- 21 -ィア活動をしていたBを採用することとした。 Bは,平成23年頃まで東京においてシステム開発,各種ISOマネジメントシステムの構築・運営に関わる仕事を センターで点訳のボランテ- 21 -ィア活動をしていたBを採用することとした。 Bは,平成23年頃まで東京においてシステム開発,各種ISOマネジメントシステムの構築・運営に関わる仕事をしてきたが,退職後,岡山に戻り,岡山県視覚障害者センター等において点訳その他のボランティア活動に従事していた。(甲95,証人B,原告本人)Bは,平成26年3月22日,被告に対し,要旨,次のとおり記載がある誓約書(以下「本件誓約書」という。)を提出した。なお,本件誓約書は,原告がドラフトを起案し,A学長に見せた上,指摘された修正点を踏まえて作成したものであった。(甲12,原告本人,A学長本人)ア出学・帰学時にはM棟受付にて必ず来館記録をし,学内では来館証を身につける。 イ学内では原告准教授の指示に従い,視覚的補助を行うため,やむを得ない事情(トイレ,出・帰学時など)を除き原告准教授から離れて単独での行動はしない。 ウ原告准教授の視覚的補助として学生課題などの対面朗読を行う場合は必ず原告准教授の研究室内で行い,研究室外への持ち出しはもちろん内容の口外も一切行わない。 エ学内へは視覚的補助の道具などの必要最低限の物のみを持ち込むこととし,それ以外の物を持ち込まない。 オ資料の音声化などの作業でパソコンなどの機器を使用する場合は原告准教授が準備する物を使い個人所有の物は一切持ち込んだり使用したりしない。 カ原告准教授が何らかの事情で研究室を一時的に不在にしている時は,研究室にて待機し,勝手な行動はしない。 キ原告准教授の視覚的補助に徹し,学内では教職員や学生との不用意な関わりを慎む。また学生の個人情報に関わることのみならず学内にて知り得- 22 -た情報は全て許可なく学内外で公表および口外しない。 平成 の視覚的補助に徹し,学内では教職員や学生との不用意な関わりを慎む。また学生の個人情報に関わることのみならず学内にて知り得- 22 -た情報は全て許可なく学内外で公表および口外しない。 平成26年度以降,Bが行った原告の視覚補助の内容は,おおむね次のア及びイのとおりであり,Bは,原則として週2日のそれぞれ5時間,本件短大において原告の視覚補助を行っていた。原告は,私費でBを補佐員として雇用するに当たり,毎月約4万5000円を支払っていた(甲10,証人B,原告本人)。 ア研究室における援助文書のレイアウト調整,印刷物の確認,パワーポイントの資料作成,手書き文書,印刷物等の記録内容の確認(テキスト化あるいは代読),年休届等の書類の手書き代行,出席・試験評価作業,評価内容のマークシートへの転記代行,シャトルカード(学生と教員との間の連絡カード)の学生のコメントの読み上げ及びコメントの記入等イ教室における援助原告が点呼する際,学生の出欠状況を確認して座席表に記入すること,プリントの配布及び回収,パワーポイントの操作,板書の消去,シャトルカードの個人別配布,演習における道具の準備及び片付け等平成26年6月28日,教員による授業参観後のミーティングが行われたが,ここで,原告が担当した環境(保育内容)の授業内容につき,保育所保育指針等の内容に即し,動植物の飼育・栽培を盛り込むべきであることが指摘された。そこで,原告は,平成27年度の環境(保育内容)の授業に,ミニトマトとサツマイモの栽培を取り入れた。(乙32,33,35,証人G,同F,同C,原告本人)なお,この点については,平成26年度より前から指摘があり,本件学科内で検討されたことがあったが,その時点では,原告は,動植物の飼育・栽培 2,33,35,証人G,同F,同C,原告本人)なお,この点については,平成26年度より前から指摘があり,本件学科内で検討されたことがあったが,その時点では,原告は,動植物の飼育・栽培を授業に取り入れることは無理である旨回答していた(乙28,原告本人)。 原告の平成27年度における担当授業は,一般教養科目の生物学並びに専- 23 -門教育科目の環境(保育内容)(2年生前期),教職実践演習(2年生後期・オムニバス講義),卒業研究(A)(環境・2年生前期),同(B)(環境・2年生後期)及び卒業予備研究(B)(環境・1年生後期)であったところ(1週間当たり4コマ),それら科目の概要は,次のとおりであった(甲30ないし36(枝番号を含む。),乙11ないし13,43,原告本人)。 ア生物学(教育目標)生物・生命科学に関する基礎知識・教養を身につける。特に保育・幼児教育現場で出会う生物に関する知識や教養を深める。 (学生の学習成果)専門的学習成果として,生物学・生命科学について,①生物体のなりたち(構造としくみ),②生命活動の維持(生活様式),③生命の連続性(進化と適応)からとらえ,基本的用語や特に身近な動植物に関する理解,知識を得ること,生物学・生命科学の知見から科学的・客観的思考力・判断力をつけることを,汎用的学習成果として,生物学に代表される自然科学の内容に触れることにより,論理的思考力・表現力を養うことを目指す。 (授業計画)主に講義により授業を進めるが,内容理解を深めるために適宜VTR利用や模擬体験的演習活動を行う。 全15回の授業のうち,1回目は授業の進め方の説明と生物の定義について,2回目ないし14回目は,生態を構成する化学物質,生物の基本単位・細胞,多細胞生物への成り立ち, や模擬体験的演習活動を行う。 全15回の授業のうち,1回目は授業の進め方の説明と生物の定義について,2回目ないし14回目は,生態を構成する化学物質,生物の基本単位・細胞,多細胞生物への成り立ち,生物の体の構造や生命維持の工夫,細胞を増やす仕組み,次世代を生み出す仕組み,親から受け継いだ情報の使い方,生態系・生物たちのつながりを講義する。15回目は,これまでの復習と試験に対する諸注意を行う。 イ環境(保育内容)- 24 -(教育目標)保育所保育指針等における「環境」の教育的狙いは「周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもってかかわり,それらを生活に取り入れていこうとする力を養う。」であるから,保育所保育指針等に記載されている内容を踏まえた計画・実践を行い,このねらいを達成するための力となる基礎的知識・技術を獲得することを目標とする。 (学生の学習成果)専門的学習成果として,①身近な自然・地域に興味・関心を持ち,豊かな感性や表現力とともに地域への愛着を育む活動を計画・実践するための基本となる手法を獲得すること,②物の性質や数量などを活用して,子どもの好奇心・探求心や主体性・意欲を育む保育活動の計画・実践に関わる基本的な手法を獲得すること,③栽培を通して成長の過程や命の大切さに気づき,責任ある行動を育む保育活動の計画・実践に関わる基本的な手法を会得すること,④主に野外・園外活動における安全管理に関わる基本的な知識・方法を習得することを,汎用的学習成果として,保育者として子どもの手本となるだけでなく,人的環境として子どもの環境の一部であることを自覚し,子どもにとってより良い環境となるよう努める信念・態度を獲得することを目指す。 (授業計画)演習形式での授業であり,自然遊び・科学遊び・室内ゲー 境として子どもの環境の一部であることを自覚し,子どもにとってより良い環境となるよう努める信念・態度を獲得することを目指す。 (授業計画)演習形式での授業であり,自然遊び・科学遊び・室内ゲームの演習により,3~5歳児に対する自然や地域・物的環境を活用した保育活動の手法を,危険予知トレーニングの演習により,安全・安心な活動を行うための環境づくりや準備に対する考え方・方法を学び,植物の栽培活動・記録を通して,幼児期の飼育・栽培活動の計画・運営に関する基礎的知見を得,0~2歳児にとっての環境について講義し,特に人的環境としての保育者の役割を学ぶ。 - 25 -1回目は導入及び保育所保育指針等についての講義,2回目に飼育と栽培Ⅰトマト,3,4回目に身近な自然を用いた遊びⅠ・Ⅱ,5回目に野外・園外での保育活動における安全管理,6回目に「春のお散歩マップ」を作る,7回目に乳幼児期における自然体験,8回目に小テスト実施,8回目ないし10回目に科学遊び実践ⅠないしⅢ(Ⅰはストロー笛,Ⅲはシャボン玉遊び),11回目に小テスト実施と保育活動における科学遊び,12回目に飼育と栽培Ⅱサツマイモ,13,14回目に室内ゲーム実践Ⅰ・Ⅱ,15回目に幼児における環境教育を取り扱う。 ウ教職実践演習(教育目標)教員として求められる4つの事項(①使命感や責任感,教育的愛情等に関する事項,②社会性や対人関係能力に関する事項,③幼児児童生徒理解や学級経営等に関する事項,④教科・保育内容等の指導力に関する事項)について,これまでの授業や教育実習を通した学びを振り返り,幼稚園教諭になる上で自身の課題を自覚し,不足している知識・技能を補い,定着を図ることによって,教職生活を円滑にスタートできる力を身につけることを目標とする。 実習を通した学びを振り返り,幼稚園教諭になる上で自身の課題を自覚し,不足している知識・技能を補い,定着を図ることによって,教職生活を円滑にスタートできる力を身につけることを目標とする。 (学生の学習成果)専門的学習成果として,教育目標に掲げる4つの事項について知識や能力を獲得し,姿勢や意見を形成することを,汎用的学習成果として,保育者としての使命感や社会の一員として求められる倫理観や価値観を獲得し,他者との豊かな人間関係を養うことを目指す。 (授業計画)教員として求められる4つの事項について,グループ討議・模擬実践・事例研究などを通して総合的に学ぶ。また,幼稚園の教育現場との連携を図り,幼稚園教諭による講演・ディスカッションを実施する。4名の教員- 26 -がオムニバス形式で担当するが,ティーム・ティーチングの方式で行う。 また,入学時からの履修カルテに基づき必要に応じて補完的指導を行う。 原告が担当する5回目では,他の3名の教員と合同で,幼稚園教諭による講演とその後のディスカッションを行い,8回目ないし12回目では,他の教員と合同で,昨年度の合同発表会のVTR視聴と「指導計画に基づく学級活動模擬実践媒体の作成」の演習活動とグループ討議を行い,13回目では,他の3名の教員と合同で,合同発表会「模擬実践の講評,自己・相互評価」を行う。 エ卒業予備研究及び卒業研究(授業内容)卒業予備研究(B),卒業研究は,幼児教育学科のなかでも中核となる科目のなかから,主として専任教員が各自の専門分野に関して,演習形式によって開講する。卒業予備研究(B)は1年次後期に開講され,2年次前後期の卒業研究によって完成されるもので,その成果は,2年次後期の研究発表会において発表する。 原告 関して,演習形式によって開講する。卒業予備研究(B)は1年次後期に開講され,2年次前後期の卒業研究によって完成されるもので,その成果は,2年次後期の研究発表会において発表する。 原告の卒業研究は,環境に関するものであり,平成27年度は,卒業研究として,11月に「子供といっしょに発表会」という,幼稚園児を呼んで学生らが作成したゲーム及びクイズで遊ばせるというイベントを行い,13名の学生が,4つのグループに分かれてそれぞれゲームの準備をした。 原告は,平成27年度,環境(保育内容)の授業についてはBの視覚補助を受けたが,卒業研究については,その間,Bに研究室で別の作業に従事してもらうなどし,視覚補助を受けずに授業を行った(甲17,19,乙41,原告本人)。 平成27年11月,卒業研究の学生である本件受講生が,概要「毎回,鬼ごっこやかくれんぼなどをして遊ぶばかりで,自分がイメージしていた授業内容とは異なる」「授業中に,毎回お菓子を食べることもおかしいと感じて- 27 -いる」「お菓子だけでなく,授業中に教室でラーメンを食べていて,教員もそれを注意しない」との本件苦情申立てをした。 本件苦情申立てを受け,C教授らが,同年12月24日,卒業研究を受講していたある学生からヒアリングをしたところ,その概要(以下「本件ヒアリング概要」という。)は,次のとおりであった。 「絶対に毎回お菓子を食べる。いつもゼミは,『遊ぶ』か『お菓子を食べる』。原告先生は毎回,『今日は何がやりたい?』と聞く。外で鬼ごっこをしたり,学校内のあちこちを使ってかくれんぼ,体育館でバスケットボール,ドッジボールなどをした。体育館でもお菓子を食べた。・・・ゼミに入った意味がないと思った。・・・いつも遊ぶばっかりしていて,『子どもといっしょに発 こちを使ってかくれんぼ,体育館でバスケットボール,ドッジボールなどをした。体育館でもお菓子を食べた。・・・ゼミに入った意味がないと思った。・・・いつも遊ぶばっかりしていて,『子どもといっしょに発表会』の前になって急に,11月頃から発表会の準備を始めた。準備に入ると,今度はお菓子だけではなく,3組の子たちが『お腹が空いた』と言って,購買でラーメンを買ってきて,ゼミの教室で食べ始めた。・・・リハーサルの時も,最悪の雰囲気だった。冷戦状態だった。お互いがコソコソ言うだけで何も進まない。空気は最悪。いつも仕切っている3組の学生は,オペレッタのリハーサルや練習があるため,その場にいなかった。これまでの間に準備を何もやってないから,ツケがきた。・・・みんなイライラを原告先生にぶつけるが,学生は納得しない。そんなこともあってか,発表会当日は子どもがあまり来なかった。子どもが来ても,環境設定がちゃんとできてなくて,コーナーのやり方とか,子どもに教えるのをうまく説明できなかった。12月18日(金)4限のゼミは,クリスマス会をすると言われた。 授業に出る意味がないと思ったのでボイコットした。」(乙38)平成28年1月6日,本件短大の教授会において,A学長が,本件苦情申立てにつき,大至急,本件学科として内容を確認するとともに,対応を検討するよう指示したところ,同日,C教授らが原告から事情聴取を行った。 これに対し,原告は,「ラーメンは気がつかなかった。」「教室は飲食厳- 28 -禁なのに,B408で何も食べていなかったかといえば,そのことについては,5限があるのでポリポリお菓子を食べているのを黙認していた。」「学生のペースに任せているのは確かだと思う。今年の学生は確かにスタートダッシュが遅かったので,コーナー遊びの内容については私の方から は,5限があるのでポリポリお菓子を食べているのを黙認していた。」「学生のペースに任せているのは確かだと思う。今年の学生は確かにスタートダッシュが遅かったので,コーナー遊びの内容については私の方から指導した。 去年の学生とはだいぶ違う。去年は前期から話し合いをしていた。10月にかくれんぼとかをしているのは,1年生との関係づくりでやっていたこと。 グループワークに分かれた時に,1年生と2年生が一緒に作業できるようにということで,関係性づくりでかくれんぼとかをやっていたので,そこで環境設定の振り返りをしましょうとか,そういうことは確かにしていなかった。」「(あなたがお菓子を持ってきたのは何回くらいか,という質問に対し)2回か。前期を含めると3回か。畑作りをした時に,学生たちが『こんなに暑い中で畑仕事を頑張ったんだから,先生,何か』と言われたので,それで『お疲れ様』と『実習行ってらっしゃい』でお菓子をあげたのと,後期になってから1回,芝生で遊んだ後に交流会をした。後は,クリスマス会をした時に,『クリスマスプレゼント』と言って私の方から飴をあげたりとかはした。」「楽しい雰囲気をつくろうと思って,特に4月とか10月の人間関係づくりをまずしようとするのが全面に出てしまって,学びの部分が見えないというか隠れてしまっていると思う。」などと説明した。(乙39)C教授らは,平成28年1月8日,卒業研究のその他の受講生4名に対し,「お菓子を食べたか」「ラーメンを食べたか」「担当教員は知っていたか」「担当教員は注意したか」「卒業研究『環境』で学んだこと」についてヒアリングをしたが,各学生の説明を総合すると,概要,本件苦情申立てのとおりであった。ある学生は,ラーメンを食べていたことを担当教員は知っていたかという質問に対し,「原告先生も知っていた。『匂うなぁ アリングをしたが,各学生の説明を総合すると,概要,本件苦情申立てのとおりであった。ある学生は,ラーメンを食べていたことを担当教員は知っていたかという質問に対し,「原告先生も知っていた。『匂うなぁ』と先生も言っていたから。」などと話した。(乙40)原告は,平成28年1月8日の4限の卒業研究の授業において,C教授立- 29 -会いの下,概要,次のとおりの説明をした上で,学生らに対し謝罪した(甲17)。 ア教室内での飲食について注意しなかった,また教員がお菓子を配る場面があったことについて「教室内飲食厳禁」の学則を守るように指導しなかったことは,子ども達のお手本となる保育者を養成する教員として問題ある行動であった。今年度はサツマイモ栽培のための畑作業を手伝ってもらったとの感謝の気持ちから,お菓子を準備したが,飲食する場合は学生ホールなど飲食を許可された場所ですべきであり,そうしなかったことは教員として不適切であった。 イ遊んでばかりで何を学んでいるのか分からないとの点について活動のねらいが伝わっていないのは私の指導の至らなさと痛感している。子ども達の主体性や意欲を育むために「環境(保育内容)」でも話したように「楽しさは学ぶ力」が大切だと思っているので,私が何かやらせるのではなく学生自身がしたいことから活動が発展していくと良いと思っていた。集団遊びによる人との関わり・周囲への興味を育む活動を考える基にしてほしいとの考えがあったからだ。しかし,そのような意図が伝わっていなかったのは私の力不足であったと感じている。その原因として今年度はじめて取り組んだサツマイモ栽培のための畑作業があると思っている。私自身が畑作業が円滑にできるかどうか不安を抱えていて,みんなに対して余裕のなさから活動の意図を十分伝 ている。その原因として今年度はじめて取り組んだサツマイモ栽培のための畑作業があると思っている。私自身が畑作業が円滑にできるかどうか不安を抱えていて,みんなに対して余裕のなさから活動の意図を十分伝えきれていなかった。 ウかくれんぼやバスケットボールで単位評価しているのかという点についてこの質問に対する答えは「いいえ」である。前期は例えば畑作業をした時の報告をしてもらった。後期は子どもといっしょに発表会の計画書や振り返りシートを書いてもらった。これらの報告や記録を中心に評価してい- 30 -る。 原告は,平成28年1月13日,A学長に対し,「私は,平成27年度『卒業研究(A)(B)』において,教室内で飲食している学生に注意をせず,学則遵守の指導を怠りましたことは不適切であったと反省いたします。今後は,学内出入を許可いただいた補佐員による教室内での学生状況把握により,『教室内飲食厳禁』の学則遵守の指導に努めて参ります。」と記載した始末書(甲16。以下「本件始末書」という。)を提出した。 また,原告は,同日付けで,A学長に対し,「(8日の授業で)学生達に話したことを実現させていくために,来年度以降は授業内の学生状況把握を目的に補佐員を同行しての授業運営を行います。また今年度はサツマイモ栽培初年度による心の余裕のなさが授業内容に対する学生不満を生み出したと反省しており,来年度は畑作業について今年度反省を踏まえて早めに計画し,卒業研究の中で畑作業以外の活動を充実させたり,活動意図が学生にわかるやすく伝わる工夫をしていくよう努めます。」と記載した反省文(甲17)を提出した。 A学長は,平成28年1月14日,原告と面談し,要旨,本件始末書には,飲食してはいけないのに飲食したから反省すべきだということが書かれ くよう努めます。」と記載した反省文(甲17)を提出した。 A学長は,平成28年1月14日,原告と面談し,要旨,本件始末書には,飲食してはいけないのに飲食したから反省すべきだということが書かれているが,補助者を付けて2年目で,どうしてこういうことが起きているのか,学生からクレームが出たら終わりだと以前から話していたはずである,授業の中で飲食しながら授業を行ったということは,学則違反というものではなく,教員としての資質の問題ではないのか,などと話し,退職勧奨をした(乙41)。 平成28年2月5日開催のFD会議において,平成28年度の事務分掌案として,新たに教員を採用し,同教員にこれまで原告が行ってきた授業を担当させる方針が確認された。被告は,同月24日開催の教授会の審議を経て,同年3月24日開催の新年度準備会議において,本件学科において新たな教- 31 -員としてD講師を採用し,これまで原告が行ってきた環境(保育内容)及び教職実践演習の授業を担当させることとし,原告には授業を担当させず,学科事務のみを担当させる旨の平成28年度における授業計画及び事務分掌を正式に決定し,その頃,原告に伝達した(本件職務変更命令)。また,被告は,同日,平成28年度における授業計画及び事務分掌に伴い研究室の配置換えを行い,原告については,本件研究室からB棟3階にあるキャリア支援室に移動させることにした(本件研究室変更命令)。なお,原告は,研究室の変更につき,これに先立つ平成28年2月23日,C教授から,電子メールでも指示されていた。 2 本件確認の訴え1につき,確認の利益があるか(争点⑴ア)についてア原告は,学校教育法92条7項により,准教授は,学生を教授し,その研究を指導し,又は研究に従事するものとされている上,憲法上学問の自由が 訴え1につき,確認の利益があるか(争点⑴ア)についてア原告は,学校教育法92条7項により,准教授は,学生を教授し,その研究を指導し,又は研究に従事するものとされている上,憲法上学問の自由が保障されていることからしても,本件短大の専任准教授である原告には当然に授業をする地位が認められるし,本件教員契約にも原告が本件各授業を担当する旨の合意が含まれている旨主張する。 イ前記1⑴ないし⑶によれば,原告は,平成11年3月,岡山大学大学院自然科学研究科生物資源科学専攻博士課程において農学博士号を取得した後,同年9月1日,被告との間で本件教員契約を締結し,本件短大本件学科の講師に任じられたこと,原告は,その後,本件短大本件学科において,生物学,環境(保育内容),卒業研究等の各科目を長年担当し,その間,平成19年4月1日には,本件学科の専任准教授に任じられたことが認められる。 また,証拠(甲9)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件短大の教員となった後,「幼児を対象とした環境教育プログラムに関する研究」「保育者養成課程における体験学習的環境教育の試み」「スクールインタープリターによる校庭での自然体験型環境教育活動⑴⑵」「体験型学習におけ- 32 -る人的環境についての研究」等の研究報告を行うなど,環境教育を実践するための人的環境に関する考察を中心に研究活動を行っており,最近では,障害の有無に関わらず,地域の子ども達が通う保育現場で活用できるユニバーサルデザインの環境教育教材・プログラムの研究を行っていることが認められる。 ウ本件短大は,学校教育法の適用を受ける短期大学であるが,短期大学は,深く専門の学芸を教授研究し,職業又は実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とする大学である(学校教育法108条1項ないし3 本件短大は,学校教育法の適用を受ける短期大学であるが,短期大学は,深く専門の学芸を教授研究し,職業又は実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とする大学である(学校教育法108条1項ないし3項)。 また,准教授は,学生を教授し,その研究を指導し,又は研究に従事するものとされている(同法92条7項)。 エ上記ウのような大学の目的や教員の職務の性質に加え,上記イのとおりの原告の経歴,本件短大における職歴,研究活動等に照らせば,原告が本件短大で教授・指導することは,原告が更に学問的研究を深め,発展させるための重要な要素といえるから,原告が,本件短大において環境等の自己の専門分野等につき学生を教授,指導する利益(以下「本件利益」という。)を有することは否定できない。 しかしながら,大学は,その設置目的を実現し,学問的研究成果を広く社会に提供することが求められるが,本件短大は,保育士及び幼稚園教諭の養成機関と位置付けられており,本件学科の教育目標としても,幼児の発達段階に鑑みて,家庭教育と幼稚園教育及び保育所との連携を十分に図ることができる資質能力を有する保育者の養成が掲げられている。そして,本件短大を設置・運営する被告としては,本件短大において研究・教育に従事する多数の教員による研究,教授・指導等を組織化し,かつ,これらの教員の提供する役務を合目的的に管理・統括することが必要であり,そのため,本件短大においては,教授会が審議して意見を述べ,これに基づき学長が教育課程の編成をする(学則26条)こととされている。 - 33 -このようなことからすれば,原告に大学教員としての研究及び教授・指導の利益が認められるとしても,上記のような組織・目的を有する本件短大においては,自ずから制約があるというべきである。そして,平成28年度に うなことからすれば,原告に大学教員としての研究及び教授・指導の利益が認められるとしても,上記のような組織・目的を有する本件短大においては,自ずから制約があるというべきである。そして,平成28年度については,後述のとおり,原告の職務分担について問題がないとはいえないとしても,上記の手続に従い前記1のとおり決定されたのであるから,上記のような手続を何ら経ていない原告が,当然に本件各授業を担当すべきものとはいえず,したがって,原告は,未だ,本件各授業を担当する具体的な権利,利益を有するものとは認められない。また,本件教員契約においても,原告が担当すべき具体的な授業は何ら定められていないのであるから,これに基づく具体的な権利,利益を有するとも認められない。 以上によれば,平成11年9月,原告が被告との間で本件教員契約を締結して本件短大の教員となった後,長年にわたり生物学,環境(保育内容)等の授業を担当してきたこと等の事情を考慮しても,原告が,本件短大において本件各授業をする具体的な法的権利,地位を有するものとまでは認められない。 よって,原告の上記主張は理由がなく,本件確認の訴え1は,訴えの利益を欠くものとして却下すべきである。 3 本件確認の訴え2につき,確認の利益があるか(争点⑴イ)について原告は,研究室を必ず備えるべきことを定めた大学設置基準等の定めによれば,本件教員契約には,研究室を提供する旨の合意が含まれているというべきであるから,原告としては本件研究室を使用する地位を有すると主張する。 しかしながら,被告に,大学設置基準等の定めにより大学に課せられた研究室の設置義務があるとしても,被告は,施設管理権を有し,上記2⑵のとおり,研究・教育に従事する多数の教員の提供する役務を合目的的に管理し統括する必要がある 設置基準等の定めにより大学に課せられた研究室の設置義務があるとしても,被告は,施設管理権を有し,上記2⑵のとおり,研究・教育に従事する多数の教員の提供する役務を合目的的に管理し統括する必要があることからすれば,大学教員において,研究室の設置を受- 34 -けることができるとしても,ある特定の研究室を排他的に使用する法的権利,地位があるとまでは認められない。 よって,原告の上記主張は理由がなく,本件確認の訴え2は,訴えの利益を欠くものとして却下すべきである。 4 本件職務変更命令の適法性(争点⑵イ)について前記1及び弁論の全趣旨によれば,本件職務変更命令は,教員が行うべき本来的職務のうち,担当授業を免じ,研究及び学科事務に集中させるものであって,原告に対し,教員の本来的職務とは異質の負担を新たにかけるわけでもなく,何ら減給等の不利益を伴うものでもないことが認められる。原告は,本件職務変更命令は配転命令であり,職務限定合意がある原告が同意しない限り効力を有しないと主張するが,このような本件職務変更命令の内容にかんがみると,原告の主張は採用できない。 しかし,前記2のとおり,原告が本件利益を有することは否定できないことによれば,業務上の必要性が存しない場合,不当な動機・目的をもってされた場合等客観的に合理的と認められる理由を欠くときには,本件職務変更命令は権利を濫用するものとして無効になるというべきである。 そこで検討すると,まず,被告は,本件短大は,保育士及び幼稚園教員といった専門職を養成する性格の強い学校であるところ,原告は,視覚障害以前の問題として,動植物の飼育・栽培という保育士や幼稚園教諭にとって必須の事項につき,満足のいく授業を行うことができなかったから,教員としての最低限の教育能力を欠いていると主張 ,原告は,視覚障害以前の問題として,動植物の飼育・栽培という保育士や幼稚園教諭にとって必須の事項につき,満足のいく授業を行うことができなかったから,教員としての最低限の教育能力を欠いていると主張する。 しかし,保育所保育指針等は,飽くまでも保育所及び幼稚園における保育又は教育方針を定めたものであり,保育士等を養成する大学に対し,必ず保育所保育指針等を網羅的に授業に取り入れることまでを要請したものではないと解される。環境(保育内容)の授業において動植物の飼育・栽培を取り入れるべきではないかという点は,平成26年より前から本件学科内で指摘- 35 -があったが,原告は,その時点では,授業に取り入れることは無理であると答えた。しかし,原告は,平成26年6月28日,教員による授業参観後のミーティングにおいて,保育所保育指針等の内容に即し,動植物の飼育・栽培を盛り込むべきであることが改めて指摘され,この時点においては視覚補助が得られていたことから,平成27年度の環境(保育内容)の授業に,ミニトマトとサツマイモの栽培を取り入れたことは前記1⑼で認定したとおりである。被告は,平成27年度の環境(保育内容)で取り入れられたサツマイモ等の栽培が不十分であったと主張し,証人Fは,同年度,環境(保育内容)で収穫したサツマイモは本当に小さくて,こういう小さい芋を作るのは逆に難しいのではないかなどと証言するが,動植物の飼育・栽培は,飽くまでも子どもに「身近な動植物に親しみを持ち,いたわったり,大切にしたり,作物を育てたり,味わうなどして,生命の尊さに気付く」(保育所保育指針第三章1(二)ウ(イ)⑦)ことを涵養させ得る保育者等を養成するために行うものであり,収穫そのものが目的でないと解されるから,その成果は収穫の多寡で計られるものではなく,平成2 く」(保育所保育指針第三章1(二)ウ(イ)⑦)ことを涵養させ得る保育者等を養成するために行うものであり,収穫そのものが目的でないと解されるから,その成果は収穫の多寡で計られるものではなく,平成27年度の環境(保育内容)で取り入れられたミニトマト及びサツマイモの栽培が授業内容として不十分であったとはいえないし,他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。また,被告としては,全学的な教育の質保証の体制を構築していると主張するところ,本件学科のFD会議,教授会等においては,学生の学習成果,教育の方法・実践,学生のニーズの点検・評価と,評価に基づく改善・充実を図るためのPDCAサイクルが実施されており(乙3の3),教員個々が自己点検シートを持ち寄って,授業内容につき問題はないか,FD活動に十分活かせているか等の検討,また,各科目の定期試験問題の相互検討等が行われているところである(乙25,28等)。また,本件学科においては,平成21年度から教員による授業相互参観が行われるようになり,教員相互で授業を参観した上,担当教員に関する項目として,「担当教員は授業の準備を十分にしてい- 36 -たか」「授業の進め方(進度,ペース)は適切であったか」「授業内容は明確であったか」等,また,学生に関する項目として,「学生は積極的に興味や関心をもって授業に参加しているか」「学生は授業中には授業をさまたげるような私語を慎んでいるか」等の項目につき5段階評価を加え,それらを踏まえ,授業参観による教育内容改善の取組として,FD会議等において,教員各自の改善計画につき議論,検討が行われていることが認められる(乙26,27,32,35)。そうすると,仮に,平成27年度の環境(保育内容)で取り入れられたミニトマト及びサツマイモの栽培に何らかの不十分な点があったとして ,検討が行われていることが認められる(乙26,27,32,35)。そうすると,仮に,平成27年度の環境(保育内容)で取り入れられたミニトマト及びサツマイモの栽培に何らかの不十分な点があったとしても,それは,本件学科内で行われているこのような教育内容改善のための各種取組の中で検討を重ね,是正されていくべき事柄であり,直ちに教員として最低限の教育能力を欠くことにはならないというべきである。 ア次に,被告は,原告の授業内容は,環境設定の指導や理論的フィードバックが全くなされず,単なる「遊び」や「ゲーム」で構成されていたことから,保育理論・幼児教育理論の実践というよりも,文字どおり「幼稚園の授業そのもの」とでもいうべきものであったと主張する。 しかし,前記1によれば,原告が授業を担当していた環境(保育内容)は,保育所保育指針等における「環境」の教育的狙いが「周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもってかかわり,それらを生活に取り入れていこうとする力を養う。」であるから,保育所保育指針等に記載されている内容を踏まえた計画・実践を行い,このねらいを達成するための力となる基礎的知識・技術を獲得することを目標とする演習形式での授業であるが,そこでは,自然遊び・科学遊び・室内ゲームの演習により,3~5歳児に対する自然や地域・物的環境を活用した保育活動の手法を,危険予知トレーニングの演習により,安全・安心な活動を行うための環境づくりや準備に対する考え方・方法を学ぶことが期待されているのである。また,卒業研- 37 -究は,幼児教育学科のなかでも中核となる科目のなかから,主として専任教員が各自の専門分野に関し,演習形式によって開講されるものであり,原告の卒業研究は,環境に関するもので,平成27年度は,卒業研究として,11月に「子供といっしょに発 る科目のなかから,主として専任教員が各自の専門分野に関し,演習形式によって開講されるものであり,原告の卒業研究は,環境に関するもので,平成27年度は,卒業研究として,11月に「子供といっしょに発表会」という,幼稚園児を呼び,学生らが作成したゲーム及びクイズで遊ばせるというイベントを行うというものであった。 そうすると,原告の授業が「遊び」や「ゲーム」で構成されていたとしても,直ちにこれが問題ということではなく,仮に,学習効果に乏しい面があったとすれば,それは,環境設定の指導や理論的フィードバッグに不十分な点があったことが理由と考えられるが,そうだとしても,これまで,本件学科のFD会議,教授会等において,この点が正面から指摘され,検討対象となった形跡は見当たらない上,そもそも原告は,平成11年9月,被告との間で本件教員契約を締結して本件短大の教員となった後,長年にわたり生物学,環境(保育内容)等の授業を担当し,平成19年には被告により本件短大の准教授に任じられたものであるから,これは,被告が原告につき准教授としての資質,能力があると判断したことの証左である。 さらに,これまでの教員同士による授業参観の内容や,学科教員会議での検討内容等を踏まえても(乙26ないし28),視覚障害以前に,原告の資質,能力に根本的な問題があることを指摘された形跡や,それをうかがう事情は見当たらないし,本件学科内で実施されている授業アンケートの結果からも(甲62),原告の授業は学生に一定程度支持されていたことが認められるから,原告の授業内容が,単なる遊び等であったとはいえず,学生が学習成果を上げるのに不十分な内容であったとは認められない。 イところで,平成27年11月,卒業研究の学生である本件受講生が,概要,「毎回,鬼ごっこやかくれんぼなどをして遊ぶば とはいえず,学生が学習成果を上げるのに不十分な内容であったとは認められない。 イところで,平成27年11月,卒業研究の学生である本件受講生が,概要,「毎回,鬼ごっこやかくれんぼなどをして遊ぶばかりで,自分がイメージしていた授業内容とは異なる」「授業中に,毎回お菓子を食べること- 38 -もおかしいと感じている」「お菓子だけでなく,授業中に教室でラーメンを食べていて,教員もそれを注意しない」との本件苦情申立てをしたことは前記1⑿のとおりであるところ,証拠(乙38,39,41,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,同年度の卒業研究においては,授業中に,鬼ごっこやかくれんぼ,体育館でバスケットボールやドッジボールをするなど,中には卒業研究の内容とは直接関係が乏しいと思われるゲームをすることがあったこと,その意図を計りかねるなどして,これに不満を持つ学生が複数人いたことがそれぞれ認められる(そして,それらの学生は,12月18日4限のゼミは,クリスマス会をすると言われたが,授業に出る意味がないと思ったので,ボイコットした。)。 しかし,前記1⑿で認定したとおりの本件ヒアリング概要の内容及び原告本人の供述によれば,平成27年度の卒業研究においては受講生間の人間関係に難しい面があったこと(本件ヒアリング概要によれば,当時,卒業研究のメンバーは冷戦状態で,最悪の雰囲気だったという。)を踏まえると,原告は,卒業研究の開始に当たり,まず1年生と2年生との関係づくり,人間関係づくりをしようと考え,授業においてドッジボール等をさせたものと認めることができる。前記1で認定したとおりの卒業研究の内容からしても,学生間の団結力が必要であるといえるから,そのような卒業研究において,原告が,まず人間関係づくりのため学生にドッジボール等をさせること ができる。前記1で認定したとおりの卒業研究の内容からしても,学生間の団結力が必要であるといえるから,そのような卒業研究において,原告が,まず人間関係づくりのため学生にドッジボール等をさせることにはまったく理由がなかったとはいえず,このことから直ちに原告の准教授としての能力,資質に問題があるということはできない。 さらに,被告は,原告の授業においては,雑談,読書,睡眠,無断退出等が横行するなど,いわゆる「学級崩壊」同然の状態が生じており,受講生の中には,授業中に菓子等(時にはカップラーメン)を食べる者さえいる状況であったが,原告は,これを黙認・放置するばかりか,あまつさえ授業中に,- 39 -自ら学生に菓子を配ったりする有様であったと主張し,証拠(乙38,39,41,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,多かれ少なかれ,原告の授業には上記のような実態があったことが認められる。 しかし,授業中の飲食の点については,前記1,のとおり,原告は学生らに対し謝罪し,A学長に対し本件始末書を提出するなどして再発防止を誓っているところであり,改善が見込めないとはいえない。その他の雑談,読書,睡眠,無断退出等の点については,そもそも事理弁識能力が備わっているはずの短大生の上記のような問題行動につき,その全てを原告の責めに帰すことは適切ではない。また,原告は,平成27年度につき,卒業研究については補佐員の視覚補助なしで授業を行い,環境(保育内容)については視覚補助を得て授業を行っていた(前記1⑾)ところ,補佐員のBは,被告に対し本件誓約書を提出していたこともあり,Bが,授業中に授業以外のことをしている学生を直接注意したり,そのような学生がいることを授業中に原告に伝え,指示を仰ぐことは自制していた(証人B)(この点,本件誓約書の内 を提出していたこともあり,Bが,授業中に授業以外のことをしている学生を直接注意したり,そのような学生がいることを授業中に原告に伝え,指示を仰ぐことは自制していた(証人B)(この点,本件誓約書の内容は前記1⑺のとおりであったから,Bが学生に直接注意したり,学生に問題行動があることを原告に伝え,指示を仰ぐことが必ずしも禁じられていたということはできないが,Bが自制していたことは認められるし,Bとしても,ボランティアとして点訳の経験はあったが,これまで視覚補助をした経験はなかったから(前記1⑹),対応にちゅうちょするところがあったであろうことは容易に推察されるところである。)が,平成28年度以降は,私費とはいえ全ての授業につき補佐員の視覚補助を受けて授業を行う意向を示していたのであるから(前記1),今後,原告が卒業研究を含む全授業につき視覚補助を受けるとともに,被告と協議するなどして,有効,適切な視覚補助の在り方に改善すれば,原告の授業の一部にみられた学生の問題行動については対応可能と認められる。証拠(乙32)及び弁論の全趣旨によれば,平成26年度の環境(保育内容)については,教員相互の授業参- 40 -観後のミーティング等において,授業開始直後や終了間際,学生達がざわついて落ち着きがない,授業最初から最後まで緊張感を持てるような指導が必要という指摘や,遅刻や私語に対する注意がない,特に遅刻については理由を聞くなどのその場での指導が重要等の指摘がされており(乙32),また,F教授は,平成26年5月頃,原告に対し,授業中に学生が教室から抜け出して携帯電話を操作しており,教室に戻るよう指導したが,補佐員がどの程度役に立っているのかと思ったなどとのメールを送信していることがそれぞれ認められる(乙29)。しかし,本件学科内で,学生の問題行動 して携帯電話を操作しており,教室に戻るよう指導したが,補佐員がどの程度役に立っているのかと思ったなどとのメールを送信していることがそれぞれ認められる(乙29)。しかし,本件学科内で,学生の問題行動につき,全体としてどのように指導していくか,あるいは,原告に対する視覚補助の在り方をどのように改善すれば,学生の問題行動を防止することができるかといった点について正面から議論,検討された形跡は見当たらず,むしろ,望ましい視覚補助の在り方を本件学科全体で検討,模索することこそが障害者に対する合理的配慮の観点からも望ましいものと解される。 被告は,原告は試験の採点も明かにずさんであるとか,平成25年7月31日には,被告の個人情報管理責任者の承認を経ることのないまま,定期試験の採点支援を学外の「友人」に依頼することがあり,結果として,学生の答案という極めて機微な個人情報を部外者に開示してしまうという事態まで生じさせていたと主張するが,後者の点は解決済みの問題であり,前者の点につき,これを認めるに足りる的確な証拠はない。 以上によれば,被告が本件職務変更命令の必要性として指摘する点は,あったとしても被告が実施している授業内容改善のための各種取組等による授業内容の改善や,補佐員による視覚補助により解決可能なものと考えられ,本件職務変更命令の必要性としては十分とはいえず,本件職務変更命令は,原告の研究発表の自由,教授・指導の機会を完全に奪うもので,しかも,それは平成28年度に限ったものではなく,以後,原告には永続的に授業を担当させないことを前提とするものであるから(乙54,A学長本人,弁論- 41 -の全趣旨),直ちに具体的な法的権利,地位とまでは認められないにせよ,原告が学生を教授,指導する本件利益を有することにかんがみると,原告に著し ものであるから(乙54,A学長本人,弁論- 41 -の全趣旨),直ちに具体的な法的権利,地位とまでは認められないにせよ,原告が学生を教授,指導する本件利益を有することにかんがみると,原告に著しい不利益を与えるもので,客観的に合理的と認められる理由を欠くといわざるを得ない。 そうすると,本件職務変更命令は,権利濫用であり無効と解するのが相当であるから,原告には本件職務変更命令に従う義務はないと認められる。 5 本件研究室変更命令の適法性(争点⑵ウ)について大学教員において,ある特定の研究室を排他的に使用する法的権利,地位があると認められないことは前記3で認定・説示したとおりであるが,本件研究室変更命令がされた経緯及び証拠(乙54,A学長本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件研究室変更命令は,今後,原告には授業担当を免じ,研究及び学科事務に集中させる旨の本件職務変更命令を前提としたものであると認められるところ,同命令は権利濫用であり,無効と解すべきことは前記4で説示したとおりである。 加えて,証人Fの証言によれば,F教授は,従前,キャリア支援室を研究室として使用していたことがあったが,キャリア支援室を使用しながら別の研究室も与えられており,当該別の研究室から備品等を全てキャリア支援室に移すことは不可能であったというのであるから,原告も,キャリア支援室のみを研究室として使用することは困難であると認められる。 以上によれば,本件研究室変更命令は,本件職務変更命令と密接不可分な業務命令として,また,使用困難な研究室への変更として,客観的に合理的と認められる理由を欠くものであって,権利濫用であり無効と解すべきであるから,原告には本件研究室変更命令に従う義務はないと認められる。 なお,本件研究室変更命令は,本件職務 て,客観的に合理的と認められる理由を欠くものであって,権利濫用であり無効と解すべきであるから,原告には本件研究室変更命令に従う義務はないと認められる。 なお,本件研究室変更命令は,本件職務変更命令に伴うものであるから,その発令日は平成28年3月24日付けと認めるのが相当である。 6 原告が本件研究室を排他的に使用する権利を有するか(争点⑵オ)について- 42 -原告は,善意無過失で平穏に本件研究室を占有しているところ,退職勧奨としての業務命令は不法行為であるから,原告は,人格権に基づいて本件研究室の明渡しを拒むことができると主張するが,大学教員において,ある特定の研究室を排他的に使用する法的権利,地位があるとは認められないことは前記3で認定・説示したとおりである上,人格権に基づき原告が本件研究室を排他的に使用する権利が基礎付けられるともいえない。 よって,原告の上記主張は理由がない。 7 被告が本件職務変更命令等をしたことが原告に対する不法行為を構成するか(争点⑵カ)について前記4及び5で認定・説示したとおり,本件職務変更命令及び本件研究室変更命令は,いずれも権利濫用であり無効と解すべきところ,原告は,これにより平成28年度,授業をすることができず,したがって,更に学問的研究を深め,発展させることができず,本件利益が侵害されたのであるから,原告に対する不法行為を構成するというべきである。そして,この不法行為は,本件利益が准教授である原告にとって重要な意義を持つところ,原告に授業を全く担当させないものであるし,前記5のとおり事実上使用が困難と認められる部屋を研究室とするよう命ずるものである。また,被告の報告書(乙54)によれば,被告は,原告に,本件職務変更命令後の担当事務として,本件学科全教員で分担し 前記5のとおり事実上使用が困難と認められる部屋を研究室とするよう命ずるものである。また,被告の報告書(乙54)によれば,被告は,原告に,本件職務変更命令後の担当事務として,本件学科全教員で分担している事務処理の中から手伝いが可能な作業の分担を考えているとしており,また,その作業も,質的判別を伴うものではなく,量的な情報を基にした整理や数値情報の検出などをさせることを意図していたと認められ,そのことを文部科学省に報告するとともに(乙54の証拠説明書参照),対外的にも,平成28年度の被告のパンフレットの教員紹介欄から原告を外すなどしていることが認められる(乙2)。そうすると,本件職務変更命令及び本件研究室変更命令が,本件利益を侵害するものであるというだけでなく,上記のような被告の対応により,原告は精神的苦痛を- 43 -被ったというべきである。これを慰謝するには,慰謝料として100万円の支払を認めるのが相当であり,本件事案の性質,内容,認容額等にかんがみれば,弁護士費用相当損害金としては10万円と認めるのが相当である。 原告は,本件職務変更命令の実質は,違法な退職勧奨であると主張するが,被告は,職位・給与の異動は行わないことにしたことが認められるから,本件職務変更命令の実質が直ちに違法な退職勧奨であったとまでは認められない。 また,原告は,退職強要を目的として,原告に対する隔離,仲間外し,無視等の人間関係からの切り離しがあったと主張するが,いずれもこれを認めるに足りる証拠はない。証拠(甲28,29,81,82,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,本件後,本件学科の会議等において原告の席順が変更されたこと,電子メールでの教授会の議事録等の配信が停止されたこと,新入生オリエンテーション等の学科行事において原告が研究室待機を指示 全趣旨によれば,本件後,本件学科の会議等において原告の席順が変更されたこと,電子メールでの教授会の議事録等の配信が停止されたこと,新入生オリエンテーション等の学科行事において原告が研究室待機を指示されたこと,FD会議後の会議に原告が参加していないことなどが認められるが,それらは,いずれも一応の理由を有するもので,不当な目的によるものと断定することはできない。卒業式のリハーサル及び退職教員への記念品贈呈のセレモニーに原告が参加した際,他の教員が移動介助をしようとしたが,C教授が「いけない。」と制止したことがあった(原告本人,証人C)。しかし,証人Cの供述によれば,その発言は咄嗟に出た個人的なものであったことが認められ,退職強要を目的とする被告による人間関係からの切り離しのためのものであったとはいえない。 さらに,被告は,本件訴訟において,被告の主張と同旨の被告の教員らの陳述書を多数提出している(乙56ないし60,64,65,67)が,その内容は,原告を不当に貶めるものとまでは認められないから,上記各陳述書を提出した行為が,不法行為に当たるとはいえない。 ⑶ したがって,原告の不法行為に基づく損害賠償請求は,110万円の支払- 44 -及びこれに対する不法行為日の後である平成28年5月26日(平成28年5月24日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 第4 結論よって,原告の本件訴えのうち,本件各授業を担当する地位にあることの確認を求める部分及び本件研究室を使用する地位にあることの確認を求める部分は,いずれも不適法であるから却下することとし,本件職務変更命令及び本件研究室変更命令に従う義務のないことの確認請求並びに不法 認を求める部分及び本件研究室を使用する地位にあることの確認を求める部分は,いずれも不適法であるから却下することとし,本件職務変更命令及び本件研究室変更命令に従う義務のないことの確認請求並びに不法行為に基づく損害賠償請求のうち110万円及びこれに対する平成28年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分はいずれも理由があるから,この限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第1民事部裁判長裁判官善元貞彦 裁判官松永晋介 裁判官武田夕子 - 45 -別紙2授業目録 1 一般教養科目生物学 2 専門教育科目 環境(保育内容) 教職実践演習 卒業予備研究(環境) 卒業研究(環境)以上

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