令和3(許)4 再生計画認可決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

裁判年月日・裁判所
令和3年12月22日 最高裁判所第二小法廷 決定 棄却 東京高等裁判所 令和2(ラ)1617
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判決文本文10,738 文字)

- 1 -令和3年(許)第4号,第5号,第6号再生計画認可決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件令和3年12月22日第二小法廷決定 主文 本件各抗告を棄却する。 各抗告費用は各抗告人の負担とする。 理由 第1 令和3年(許)第4号抗告人及び同第6号抗告人の各抗告理由のうち株式会社エーエヌディーとの間の和解契約に関し民事再生法(以下「法」という。)174条2項3号に該当する事由がある旨をいう点並びに同第5号抗告代理人廣田聡,同望月勇志の抗告理由について 1 本件は,医療法人社団冠心会を再生債務者とする再生手続においてされた再生計画認可の決定に対し,再生債権者である各抗告人が法174条2項3号等に該当する事由があると主張して即時抗告をしたところ,原審が上記事由はないとして抗告棄却決定をしたため,各抗告人が上記決定に対して更に抗告をした事件である。 2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。 冠心会は,病院を経営する医療法人である。 東京地方裁判所(以下「本件再生裁判所」という。)は,令和元年8月27日,冠心会につき,再生手続開始の決定をするとともに,その業務及び財産に関し,管財人による管理を命ずる処分をし,A弁護士(以下「本件管財人」という。)を管財人に選任した。 エーエヌディーは,冠心会及び医療法人一成会との間で,医療機器メーカー等から仕入れた医療機器等を冠心会ないし一成会に転売する取引を行っていた。そして,エーエヌディーと冠心会との間では,上記取引に関し,平成30年6月21日付けで,冠心会がエーエヌディーに対する売買代金等5億7770万円余及び遅- 2 -延損害金の債務につき支払義務を負うこと並びに冠心会が一成会 冠心会との間では,上記取引に関し,平成30年6月21日付けで,冠心会がエーエヌディーに対する売買代金等5億7770万円余及び遅- 2 -延損害金の債務につき支払義務を負うこと並びに冠心会が一成会の連帯保証人として一成会のエーエヌディーに対する売買代金等4億2200万円余及び遅延損害金の債務につき支払義務を負うことを認める旨などが記載された執行認諾文言付きの債務承認債務弁済契約等公正証書(以下「本件公正証書」という。)が作成されていた。本件公正証書は,エーエヌディーと冠心会の双方において弁護士を代理人に選任した上で作成されたものであった。 エーエヌディーは,本件再生裁判所に対し,本件公正証書記載の債権のうち売掛金債権5億2027万円余及び遅延損害金債権7198万円余並びに連帯保証債権4億0740万円余及び遅延損害金債権8149万円余につき,執行力ある債務名義のあるものとして債権届出をした(以下,上記債権届出に係る債権を「本件届出債権」という。)。 エーエヌディーは,令和元年7月24日,福岡地方裁判所において再生手続開始の決定を受けていた。本件管財人は,上記の再生裁判所に対し,冠心会のエーエヌディーに対する21億円余の不当利得返還請求権につき債権届出をし,エーエヌディーがその全額を否認したことから,同年11月20日に本件再生裁判所の許可を得た上,上記の届出債権(以下「冠心会届出債権」という。)の額を11億7541万円余と査定することを求める申立て(以下「本件査定申立て」という。)をした。 また,本件管財人は,本件再生裁判所の債権調査において,本件届出債権につき,その全額を否認し,令和2年1月14日に本件再生裁判所の許可を得た上,本件公正証書の執行力の排除を求める請求異議の訴え(以下「本件請求異議訴訟」という。)を提起した。 いて,本件届出債権につき,その全額を否認し,令和2年1月14日に本件再生裁判所の許可を得た上,本件公正証書の執行力の排除を求める請求異議の訴え(以下「本件請求異議訴訟」という。)を提起した。 本件管財人は,エーエヌディーと冠心会及び一成会との間の上記の取引の中には売買契約等の目的物の納入を伴わない架空のものが含まれており,架空取引に係る契約は不存在又は無効であるから,本件届出債権はその全額が存在しないこととなる一方,冠心会はエーエヌディーに対して支払った売買代金等につき不当利得返- 3 -還請求権を有することとなるなどと主張して本件請求異議訴訟の提起及び本件査定申立てをしたものであった。もっとも,本件管財人において,本件公正証書の作成等に関与した冠心会の元理事らから上記の主張を裏付けるための協力は得られておらず,冠心会からエーエヌディーに対する支払と各売買契約等との対応関係も明らかになっていなかった。 本件管財人は,同年3月31日,本件再生裁判所に再生計画案(以下「本件再生計画案」といい,本件再生計画案に係る再生計画を「本件再生計画」という。)を提出した。本件再生裁判所は,同年4月17日,本件再生計画案を決議に付する旨の決定をし,上記決議のための債権者集会の期日を同年7月15日午後3時と定めた。 本件管財人は,同年6月23日,本件再生裁判所の許可を得た上で,エーエヌディーとの間で,要旨次のとおりの和解契約(以下「本件和解契約」という。)を締結した。上記許可は,本件届出債権及び冠心会届出債権が長期にわたり確定しないことは冠心会及びエーエヌディーの各再生手続にとって望ましいものではなく,現金の流出のない形で紛争を早期に終了させることには合理性がある旨の本件管財人の説明を踏まえてされたものであった。 ア本件管財人は,同年7 エーエヌディーの各再生手続にとって望ましいものではなく,現金の流出のない形で紛争を早期に終了させることには合理性がある旨の本件管財人の説明を踏まえてされたものであった。 ア本件管財人は,同年7月3日までに,本件査定申立て及び本件請求異議訴訟を取り下げる。 イ本件管財人が上記の取下げをした場合,エーエヌディーは,同月7日までに本件再生計画案に賛成票を投ずる。 ウエーエヌディーは,本件再生計画の認可の決定が確定したときは,冠心会に対し,本件査定申立てに関する解決金として640万0800円を支払う。 エエーエヌディーと本件管財人は,本件再生計画の定めによる権利変更後に本件届出債権につき冠心会がエーエヌディーに対して弁済すべき額が640万0800円となることを確認し,本件再生計画の認可の決定が確定したときは,上記権利変更後の本件届出債権と上記ウの解決金債権とを対当額で相殺する。 - 4 -オエーエヌディーと本件管財人は,エーエヌディーと冠心会との間に,本件和解契約で定めるもののほか,何らの債権債務がないことを相互に確認する。 本件管財人は,本件和解契約に従い本件査定申立て及び本件請求異議訴訟を取り下げた。 エーエヌディーは,本件和解契約に従い本件再生計画案に賛成票を投じ,上記債権者集会において,本件再生計画案は,議決権者の議決権の総額の約61%の議決権を有する者の同意を得て可決された。エーエヌディーは,上記総額のうち約20%の議決権を有していた。 3 所論は,本件和解契約の締結はエーエヌディーに対して不正な利益を供与するものであり,本件再生計画案の可決は信義則に反する行為に基づいてされたものであるから,法174条2項3号に該当する事由がある旨をいう。 4 そこで検討すると,本件和解契約によれば,冠心会は,本件再生計画の あり,本件再生計画案の可決は信義則に反する行為に基づいてされたものであるから,法174条2項3号に該当する事由がある旨をいう。 4 そこで検討すると,本件和解契約によれば,冠心会は,本件再生計画の認可の決定が確定したときは,エーエヌディーに対する640万円余の解決金債権を新たに取得し,これとの相殺により権利変更後の本件届出債権の全額を消滅させることができることとなる。本件和解契約締結当時,本件届出債権の存在等を裏付けるものとしてエーエヌディーと冠心会の双方が弁護士を代理人に選任して作成された本件公正証書が存在する一方,本件管財人は本件届出債権の不存在及び冠心会届出債権の存在を裏付ける確たる証拠を有しているとはいい難い状況にあった上,エーエヌディーにつき再生手続が開始されており,仮に冠心会届出債権の存在が確定したとしても通常はその少なからぬ部分につき回収不能となることが見込まれたものであり,冠心会の再生手続の進行状況等をも考慮すれば,本件和解契約の締結は,エーエヌディーに一方的に有利なものではなく,冠心会にとっても合理性があるものであったということができる。そして,以上のような本件和解契約の内容,冠心会の置かれていた客観的状況に加え,本件和解契約の締結の経緯等にも照らせば,本件和解契約が専らエーエヌディーの議決権行使に影響を及ぼす意図で締結されたとまではいえない。これらの事情に照らせば,本件和解契約の締結が,エーエヌデ- 5 -ィーに対して不正な利益を供与するものであるとも信義則に反する行為に当たるとも断じ難いというべきであって,本件の事実関係の下において,本件再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとまではいえない。したがって,上記決議について法174条2項3号に該当する事由はないとした原審の判断は,結論において是認し得 係の下において,本件再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとまではいえない。したがって,上記決議について法174条2項3号に該当する事由はないとした原審の判断は,結論において是認し得る。論旨は採用することができない。 第2 令和3年(許)第4号抗告人及び同第6号抗告人のその余の抗告理由について本件の事実関係の下において,所論の点に関する原審の判断は,是認することができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官菅野博之,同草野耕一の補足意見,裁判官三浦守の補足意見がある。 裁判官菅野博之,同草野耕一の補足意見は,次のとおりである。 私達は法廷意見に賛成するものであるが,抗告を棄却することが相当であると考えた趣旨につき思うところを補足して述べておきたい。なお,以下の意見は,本件のように,事業を行っている法人である再生債務者につき裁判所が管財人を選任している場合の再生手続について論じているものである。 1 法は,管財人の選任された再生手続について,再生債務者と再生債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整すること(以下「第1の目的」という。)と再生債務者の事業の再生を図ること(以下「第2の目的」という。)という二つの目的(法1条)を達成するために,一方において,管財人に再生計画案の作成,提出を義務付けるとともに(法2条2号,163条1項),他方において,債権者集会に出席し又は書面等投票をした議決権者の過半数であって,かつ,議決権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有する者の同意が得られることをその再生計画案可決の要件としている(法172条の3第1項)。 そして,管財人は,その権限及び職責に照らし,再生債権の存否やその金額をめぐる交渉や合意,再生債務者の を有する者の同意が得られることをその再生計画案可決の要件としている(法172条の3第1項)。 そして,管財人は,その権限及び職責に照らし,再生債権の存否やその金額をめぐる交渉や合意,再生債務者の債権についての交渉や合意,再生債務者の事業活動- 6 -に関する諸契約,更には,再生債権に対する認否書の作成や再生債権者からの査定の申立てに対する応答,そのほか裁判手続等,種々の活動を行うことになる。また,上記のような法の仕組みや,管財人としては最も合理的と考える再生計画案を作成するはずであることからすると,管財人は,これが可決されるべく,再生債権者の同意を求めるため,事前又は事後に,再生債権者との間で,説明,協議,説得,合意等をする場合があることも予想される。 2 しかしながら,このような法の仕組みや管財人の活動等を経て再生計画案が可決に至る過程は,必ずしも予定調和的なものではない。なぜならば,前述した二つの目的は関連するものではあるものの,第2の目的の達成を最重視するならば,再生計画の認可後において再生債務者が十分な流動資産を保持していることが求められ,そのためには,再生債権を極力限定した上,その免除率を高くする方が好ましいことになる。他方,再生債権者にとってまず最初の関心事は再生債権者に有利な形で第1の目的が達成されることであり,そうである以上,再生債権者の多くは自己の債権を最大限に主張するとともに,再生債務者の流動資産を可能な限り減らして再生債権の免除率を最小化したいと考える要因があるからである。この結果,管財人と再生債権者の間の交渉は,巷間いうところのチキン・ゲーム的状況を呈することがあり,仮に,管財人と再生債権者らの双方がそれぞれの目的の達成に固執した場合には,時間の経過とともに再生債務者の事業価値が劣化し,第1の目的と第2の 間いうところのチキン・ゲーム的状況を呈することがあり,仮に,管財人と再生債権者らの双方がそれぞれの目的の達成に固執した場合には,時間の経過とともに再生債務者の事業価値が劣化し,第1の目的と第2の目的のいずれもが不達成となる危険性が不可避的に存在している。 3 以上のような状況を打開するため,管財人は,時間との競争をしながら,再生債権者その他関係者と適切な協議,交渉,合意等をし,バランスの取れた合理的再生計画案を作成することが求められるわけであり,時機を失することなく第1の目的と第2の目的を同時に達成すべく努めなければならない。 その過程で,管財人が再生債権に対する認否を変更したり,あるいは再生債務者の債権の主張を撤回することなどもあり得ようし,大口の再生債権者から管財人作成の再生計画案に同意する旨の約束を取り付けようとすることもあるであろう。そ- 7 -して,事業の再生では,事業形態等により程度の差はあろうが,時間の経過により,再生債務者の既存の債権の劣化が進むとともに,継続取引や新規取引の困難性が増し,前記のとおり事業価値自体が劣化していくであろうし,再生債権者にとっても早期の解決を求めたいのは明らかであり,時間自体に経済的価値があると言えよう。そのため,管財人の再生債権に対する認否や再生債務者の債権の主張,訴訟活動等も,一方から見ての正しさを求めるだけではなく,管財人の主張立証の奏功する確率,これに要する時間,当該事業の事業価値の状況と変化見込み等々,諸般の事情を勘案しながら,ある時は強く,ある時は譲って交渉し,争いを減らしながら迅速な手続の進行を図らなければならないこととなろう。 そうすると,以上のような交渉等の結果,管財人が,一部の再生債権者との間で,再生債権の存否等に関し一定の合意をしたり,再生債務者の債権の主張等を変 な手続の進行を図らなければならないこととなろう。 そうすると,以上のような交渉等の結果,管財人が,一部の再生債権者との間で,再生債権の存否等に関し一定の合意をしたり,再生債務者の債権の主張等を変更したり,再生計画案に同意する旨の合意を取り付けたり,あるいは,これらの合意等を含む和解契約を締結したとしても,そのことのみから直ちにこれを否定的に解し,信義則に反するとか,法174条2項3号にいう「不正の方法」を取っているなどと判断することは困難と考えられる。 もっとも,このような合意や和解等を無制限に認めることは,再生債権の弁済に充当し得る資金総額を恣意的に減少させたり,あるいは,合意をするか否かは当事者の自由だとは言っても,交渉経過や当該合意と結びついた他の合意等の内容次第では再生債権者の議決権の行使の自由を実質的に侵害するなどの事態をも招きかねない。したがって,これらがすべて適法とは限らないのも論を俟たないところであり,他の再生債権者に不信感や不公平感を抱かせるような合意等については,事案ごとに,それが「不正の方法」に当たるか否かを慎重に検討せざるを得ない場合もあろう。 4 本件の場合は,債権債務の処理と再生計画案に対する同意の約束が結びついている点で問題をはらむものの,管財人に説明等を求め得る立場にあり事案を了知している本件再生裁判所が本件和解契約の締結を許可している(なお,上記許可に- 8 -ついての判断は再生債権者の利益保護の観点にも配慮した上でされたものと考えられるのであって,上記許可に対する不服申立ての制度がないことや,再生計画の認可又は不認可の決定が上記許可をした裁判所によってされ得るものであること等を勘案しても,当審が,本件の判断に当たり,上記許可を相応に斟酌することの妨げとなるものではない。)。その上,法廷意見 画の認可又は不認可の決定が上記許可をした裁判所によってされ得るものであること等を勘案しても,当審が,本件の判断に当たり,上記許可を相応に斟酌することの妨げとなるものではない。)。その上,法廷意見の指摘するように,本件和解契約による債権債務の処理については,エーエヌディーの債権は,双方に弁護士が付された上で作成された公正証書による債務名義があるなど相応な根拠があり,他方で冠心会の債権は,再生手続に係っている上,その立証にもあい路があるというのであるから,いずれも,そう容易に冠心会に有利な解決が得られるとは考え難いところ,相殺処理をして現金の流出のない形で早期に和解するという解決は,事業の再生にとっても他の再生債権者にとっても一定のメリットがあり,それなりの合理的理由が認められるものである。さらに,本件和解契約の合意内容を適切に実現させるため,エーエヌディーに本件再生計画案への同意を約させてその可決を確実化しようという仕組みにも,一定の合理性があることは否定し難い。そうすると,このような本件において,法174条2項3号の不認可事由を肯定するためには,本件和解契約の内容を示すにとどまらず,加えて,例えば,エーエヌディーから本件再生計画案への同意を取り付けたことによって再生債権の弁済に充当し得る資金総額が減少したことが示されるとか,別途,不正の目的が認められるとか,あるいは当該再生債権者の議決権の行使の自由が実質的に侵害されたなど,本件和解契約の締結を「不正の方法」と認めるに足りる的確な事情を抗告人側で主張立証する必要があろう。 本件の記録を見ても,そのような事情を認めるに足りる証拠は見当たらないので,本件各抗告は棄却せざるを得ないと考えた次第である。 裁判官三浦守の補足意見は,次のとおりである。 法廷意見が理由として述べた点につい ても,そのような事情を認めるに足りる証拠は見当たらないので,本件各抗告は棄却せざるを得ないと考えた次第である。 裁判官三浦守の補足意見は,次のとおりである。 法廷意見が理由として述べた点について補足して意見を述べる。 1 再生手続は,経済的に窮境にある債務者について,再生計画を定めること等- 9 -により,債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し,債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする(法1条)。 再生債務者は,再生手続が開始された後も,その業務の遂行及び財産の管理・処分をする権利を有し,自ら再生手続を追行するのが原則であるが,この場合,債権者に対し,公平かつ誠実に,上記権利を行使し,再生手続を追行する義務を負う(法38条2項)。そして,裁判所が,再生債務者の事業の再生のために特に必要があると認め,管理命令を発して管財人を選任した場合,管財人は,再生債務者に代わって,その業務の遂行及び財産の管理・処分を行うとともに,再生手続上の権限を行使し義務を履行する。したがって,管財人は,再生債務者と同様に,債権者に対し,公平かつ誠実に再生手続を追行する義務を負い,これは,管財人の善管注意義務(法78条,60条1項)の内容を構成するものと解される。 再生計画は,全部又は一部の再生債権者の権利の変更を定めるなど,再生手続の中核となるものであるから,再生計画案は,裁判所の決定により決議に付され,議決権者の法定多数の同意を得て可決されることを要するが(法172条の3第1項),その決議については,公平かつ公正な手続が確保されなければならない。 一般に,管財人は,権利関係の調整と事業の再生を図るため,様々な事情を踏まえ,限られた時間の中で,適切な再生計画案を作成しなければならないが,その作成及び決議に至る過程においては,様々な協 ない。 一般に,管財人は,権利関係の調整と事業の再生を図るため,様々な事情を踏まえ,限られた時間の中で,適切な再生計画案を作成しなければならないが,その作成及び決議に至る過程においては,様々な協議や交渉等が必要となる。再生債権者が管財人と和解をした上で再生計画案に同意をすることも想定されるが,このような場合も,議決権の行使は,再生債権者の自由な意思に基づいて公正になされるとともに,再生債権者間の公平が確保される必要がある。このような和解契約において,再生債権者に一定の利益を供与して,その再生計画案への同意を義務とすることについては,管財人の上記善管注意義務を前提に,慎重な検討が必要である。 2 本件和解契約は,本件届出債権について架空取引に係るものが含まれるとの疑い等により,冠心会届出債権の存否を含め,エーエヌディーの事業の再生にも関わる紛争が継続する状況において,本件管財人が本件査定申立て及び本件請求異議- 10 -訴訟を取り下げることを前提に,本件再生計画案への同意及び本件再生計画認可後の相殺処理等を定めている。これが,エーエヌディーにとって,上記紛争全体を適切かつ早期に解決するという点で利益をもたらすことは否定できない。同時に,それは,エーエヌディーが本件届出債権全額に係る議決権(約20%の割合の議決権額に相当する。)を行使することを可能にするものであり,その同意により,本件再生計画案は,約61%の割合の議決権額に係る同意をもって可決された。 このような本件和解契約の内容及び経緯に照らすと,所論には,慎重に検討すべき問題が含まれている。 しかし,本件届出債権及び冠心会届出債権の存否に関する証拠の状況や本件再生計画認可後の相殺処理の定め等に鑑みると,本件和解契約の締結は,エーエヌディーに対して実体的な利益を供与ないし移転する る。 しかし,本件届出債権及び冠心会届出債権の存否に関する証拠の状況や本件再生計画認可後の相殺処理の定め等に鑑みると,本件和解契約の締結は,エーエヌディーに対して実体的な利益を供与ないし移転するものとはいい難いところである。そして,エーエヌディーが上記のような紛争解決に係る利益を得るにしても,冠心会も,同様に,現金流出のない形で紛争を解決するという利益を得ることは否定できず,冠心会の再生手続の進行状況等をも考慮すれば,本件和解契約の締結は,エーエヌディーに一方的に有利なものではなく,冠心会にとっても合理性があったということができる。また,エーエヌディーの同意の定めについても,本件和解契約の締結の経緯等にも照らせば,このような紛争全体の解決に伴うものという見方もでき,これが専らエーエヌディーの議決権の行使に影響を及ぼす意図で締結されたとまではいえない。 こうした本件の具体的な事実関係の下においては,本件管財人の前記善管注意義務を前提にしても,本件和解契約の締結が,エーエヌディーに対して不正な利益を供与するものであるとも信義則に反する行為に当たるとも断ずるには難があり,本件再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったというには躊躇を感じざるを得ない。 したがって,上記決議について法174条2項3号に該当する事由はないとした原審の判断については,その理由の説示に相当とはいい難い部分が含まれるもの- 11 -の,結論において是認し得る。 3 なお,再生手続において,裁判所は,管財人を監督するとともに(法78条,57条1項),管財人が法41条1項各号に掲げる行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができるが,この許可をする場合に再生債権者の意見を聴く旨や,この許可に対して不服申立てをすることができる旨を定める 1条1項各号に掲げる行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができるが,この許可をする場合に再生債権者の意見を聴く旨や,この許可に対して不服申立てをすることができる旨を定める規定はない(営業等の譲渡につき法42条2項,不服申立てにつき法9条参照)。 本件は,本件管財人が債権者に対し公平かつ誠実に再生手続を追行すべき義務との関係で,本件再生裁判所の許可を得た本件和解契約の締結が問題となるものであるが,それは,同時に,本件再生裁判所の監督ないし許可の問題でもある。そして,この許可については,上記のとおり,再生債権者の利益保護に関する仕組みがない上,再生計画認可・不認可の決定に係る手続が,改めて裁判所の審査により少数債権者の保護等を図ろうとするものであること(最高裁平成19年(許)第24号同20年3月13日第一小法廷決定・民集62巻3号860頁参照)にも鑑みると,本件再生裁判所が自ら上記許可をしたこと自体は,本件再生計画認可の決定に当たり,法174条2項3号に該当する事由がないものと判断する理由となるべきものではない。 また,本件において,本件和解契約の内容に加えてどのような事情が主張立証されれば同号に該当する事由があるといい得るかについては,仮定の問題であり,具体的に述べるべきものでもないが,それのみで同号に該当する事由があるといい得るような事情が主張立証された場合に限られないことはいうまでもない。 法廷意見がこれらの点について何ら触れていないのは当然であろう。 (裁判長裁判官岡村和美裁判官菅野博之裁判官三浦守裁判官草野耕一) 裁判官草野耕一

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