- 1 -主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告らは,各自,別紙請求債権目録「原告」欄記載の原告らに対し,同目録「請求額」欄記載の金員及びこれに対する平成24年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要別紙請求債権目録「原告」欄記載の原告ら(ただし,同目録原告番号欄「11」の「A8」,「17」の「A20」,「23」の「A18」を除く。),B,C及びD(以下「地権者原告ら」という。)は,被告らが土地開発事業を行った名古屋市α区β町(住所省略)γ地区に土地を所有し,被告矢作建設との間でその所有する土地について売買又は交換契約を締結した。その際,被告らは,地権者原告らに対し,譲渡所得税が課される旨や,従前の所有地と上記土地開発事業後に取得する土地(替地)との面積の比率(交換比率)が地権者らによって区々である旨を説明すべきであるのにこれらを怠るなどし,その結果,地権者原告らは,譲渡所得税を課されたり,土地の減歩による損害等を被ったとして,原告らは,被告らに対し,共同不法行為に基づく損害賠償とこれに対する不法行為後である平成24年5月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 1 前提事実(争いのない事実並びに関係証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実)⑴ 当事者ア原告ら及び地権者原告ら地権者原告らは,名古屋市(住所省略)(以下「本件開発事業区域」- 2 -という。)に農地等を有していた(争いはない)。後記のように,被告らは,本件開発事業区域内の土地の開発事業(以下「本件開発事業」という。)に関与していたが,本件開発事業当時,本件開発事業区域内の という。)に農地等を有していた(争いはない)。後記のように,被告らは,本件開発事業区域内の土地の開発事業(以下「本件開発事業」という。)に関与していたが,本件開発事業当時,本件開発事業区域内の土地の所有者(以下「本件地権者」という。)は,地権者原告らを含めて合計118名であった(甲11の1,乙A35)。 地権者原告らを含む本件地権者らは,本件開発事業を通じて,本件開発事業区域内に所有していた土地(以下「従前地」という。)を売却したり,従前地に替えて農地又は宅地等を取得した。地権者原告らのうち一部の者(原告A1,原告A6,B,原告A11,原告A12,C,原告A13,原告A14,原告A15,原告A17及びD)は,所有する農地(従前地)の一部を売却し,その余の農地(従前地)に替えて農地又は宅地を取得した。(甲イないしウの各1及び弁論の全趣旨) 地権者原告らのうちBは,平成▲年▲月▲日に死亡し,遺産分割協議により,同年7月1日,原告A8が,Bの本件開発事業に係る被告らに対する損害賠償請求権の全てを相続した(甲ル6)。 地権者原告らのうちCは,平成▲年▲月▲日に死亡し,遺産分割協議により,平成29月3月4日,原告A20が,Cの本件開発事業に係る被告らに対する損害賠償請求権の全てを相続した(原告A20本人p1)。 地権者原告らのうちDは,平成▲年▲月▲日に死亡し,遺産分割協議により,平成30月5月6日,原告A18が,Dの本件開発事業に係る被告らに対する損害賠償請求権の全てを相続した(原告A18本人p1)。 イ被告ら 被告矢作建設は,土木,建築,建設工事の企画,測量,設計,監理,施行及びコンサルティングの請負等を業とする株式会社であり(争いは- 3 -ない),E及びFは,い 1)。 イ被告ら 被告矢作建設は,土木,建築,建設工事の企画,測量,設計,監理,施行及びコンサルティングの請負等を業とする株式会社であり(争いは- 3 -ない),E及びFは,いずれも被告矢作建設の従業員で,本件開発事業を担当していた(証人Ep1,証人Fp1)。 被告環境設計は,土地利用,建設コンサルタント,宅地建物取引等を業とする株式会社であり(争いはない),Gは,本件開発事業当時,被告環境設計の従業員で,本件開発事業を担当していた(証人Gp1)。 被告アラキ開発は,不動産の売買,仲介及びあっせんを業とする株式会社である(争いはない)。 被告Hは,Mの屋号で不動産業を営み,以前から,土地開発事業に関与していたが,本件開発事業区域を見て,土地開発に適していると考え,地権者原告らを含む本件地権者らとの間で,所有する土地(従前地)の売却について交渉するようになった。もっとも,被告H自身が,本件地権者らから従前地を取得するわけではなく,本件地権者らに,従前地を土地開発事業者へ売却するよう交渉すること,本件地権者らの従前地を取得して土地開発を行う業者を見つけることが,被告Hの主たる業務であった。被告Hは,当初,土地開発事業者として被告アラキ開発を予定していたが,土地開発事業の規模が大きくなったことから,アラキ開発では本件開発事業の遂行が困難となり,被告矢作建設が本件開発事業を行うことになった(乙C1,被告アラキ開発代表者p1,被告Hp1〜4,9)。 被告I及びJは,本件開発事業当時,いずれも被告Hの従業員で,被告Hとともに,地権者原告らを含む本件地権者らとの間で従前地の売却交渉を担当していた(以下,被告H,被告I及びJを「被告Hら」という。)。なお,被告Iは,被告Hの子 時,いずれも被告Hの従業員で,被告Hとともに,地権者原告らを含む本件地権者らとの間で従前地の売却交渉を担当していた(以下,被告H,被告I及びJを「被告Hら」という。)。なお,被告Iは,被告Hの子である。(被告Hp2,被告Ip1,2)⑵ 事実経過ア本件開発事業以前の経緯(名古屋市土地区画整理組合の設立と解散)- 4 -名古屋市は,平成2年1月26日,名古屋市α区β町(住所省略)γ地区について,土地区画整理を目的とする名古屋市γ土地区画整理組合(以下「前区画整理組合」といい,上記地区を「前区画整理地区」,上記地区の土地区画整理を「前区画整理」という。)の設立を認可した(甲1の1ないし1の3)。 当時,前区画整理地区を東西に貫く県道δ線の建設が計画されていたが,前区画整理地区の土地所有者らから,道路用地部分の買収は前区画整理組合ではなく名古屋市がすべきであるとの意見が出され,前区画整理を遂行することができなくなった。そのため,名古屋市は,平成10年4月23日,前区画整理組合の設立認可を取り消し,前区画整理組合は,清算手続に移行し,約5000万円の負債を残して,平成25年3月8日,上記清算手続は,名古屋市長の承認により終了した。(甲2,4,甲イ17p1〜3)この間,愛知県及び名古屋市は,上記県道δ線の道路用地を買収し,平成20年4月20日にこれを開通させた(県道ε線。甲3,弁論の全趣旨)。 イ本件開発事業の経緯 被告Hらの活動本件開発事業区域は,前区画整理地区の一部であるところ(甲1の1ないし1の3,乙A13),被告Hは,たまたま通った前区画整理地区を見て,土地開発に適していると考え,平成15年12月頃から,被告I及びJとともに,本件開発事業区域内の土地の所 あるところ(甲1の1ないし1の3,乙A13),被告Hは,たまたま通った前区画整理地区を見て,土地開発に適していると考え,平成15年12月頃から,被告I及びJとともに,本件開発事業区域内の土地の所有者に対し,土地開発についての協力を依頼するようになった(甲5の1,被告Hp1,2,p10,被告Ip1)。 被告Hは,当初,被告アラキ開発を土地開発事業者と予定していたが,事業規模が拡大したことから,被告矢作建設が本件開発事業を行うこと- 5 -になった(乙C1p2,被告Hp1,2)。 そして,被告Hは,本件地権者ら全員の同意を取り付け,地権者原告らを含む本件地権者らは,被告アラキ開発宛ての売渡承諾書又は替地承諾書を提出した(争いはない)。 被告アラキ開発は,平成23年5月頃,本件地権者らに対し,同月14日に説明会を開催する旨を通知し(甲5の8),同日,名古屋市α区β町γ(住所省略)所在のζ内の集会所(以下「本件集会所」という。)で説明会(以下「第1回説明会」という。)が開催された。第1回説明会には,被告矢作建設の担当者,被告環境設計の代表者K,被告アラキ開発の代表者L,被告H及び被告Iが出席し,Lから,今後は被告矢作建設が中心となって開発事業を進める旨の説明がなされた。(証人Ep9,証人Fp19,被告環境設計代表者p17,被告アラキ開発代表者p3,被告Hp17,被告Ip10)第1回説明会では,出席者に対し,「本日お渡しする資料」と題する書面(乙A9)が交付され,そこに記載された「ご所有地の土地登記簿謄本」,「ご所有地の場所をマークした公図集合図」等が出席者に交付されるとともに(乙A9ないし12),上記書面(乙A9)には,「お問合せ先」として,「事業に関する事」は被告矢作建設,「土地に関する事」はM(担 所有地の場所をマークした公図集合図」等が出席者に交付されるとともに(乙A9ないし12),上記書面(乙A9)には,「お問合せ先」として,「事業に関する事」は被告矢作建設,「土地に関する事」はM(担当:被告H),「各種申請に関する事」は被告環境設計と記載されていた。 平成23年9月17日,本件集会所において,説明会(以下「第2回説明会」といい,第1回説明会と併せて「本件各説明会」という。)が開催され,第2回説明会には,被告矢作建設の担当者,被告環境設計の代表者,被告H及び被告Iが出席した(証人Ep9,証人Fp20,被告環境設計代表者p17,被告Hp36,被告Ip10)。第2回説明会では,出席者に対し,「平成23年9月17日(土)-説明会にて」- 6 -と題する書面(乙A15)が交付され,そこには「ご契約予定表」,「契約当日にご準備いただくものチェック表」等が記載され,これらの書類が出席者に交付され,本件地権者らと被告矢作建設との間で契約を締結するための準備がなされた(乙A15ないし18の3,証人Fp6,7)。 本件地権者らは,平成23年10月22日から同月30日にかけて,本件開発事業区域内に所有する土地(従前地)について,被告矢作建設との間で売買等の契約(以下「本件不動産契約」といい,その契約書を「本件不動産契約書」という。)を締結し,地権者原告らも,それぞれの取引内容に応じて,被告矢作建設との間で「不動産契約書」(甲イないしウの各1)を交わした(以下,当該書面を「本件原告ら契約書」といい,これによる契約を「本件原告ら契約」という。)。 本件原告ら契約書を含む本件不動産契約書には,以下の記載がある。 なお,以下のaないしgにおいて,「甲」とあるのは本件原告ら契約の当事者である地権者原告を,「乙」とあるのは被告矢作建設を,「 。)。 本件原告ら契約書を含む本件不動産契約書には,以下の記載がある。 なお,以下のaないしgにおいて,「甲」とあるのは本件原告ら契約の当事者である地権者原告を,「乙」とあるのは被告矢作建設を,「本契約」とあるのは本件原告ら契約を,「本事業」とあるのは本件開発事業をそれぞれ示している。(争いはない)a 本契約の目的(契約条項【共通】第1条)⒜ 「本契約は,甲と乙が協力して本事業を行なうことを目的として締結する。」⒝ 「甲と乙は,本事業の区域内の土地所有者が甲の他別紙一覧表記載のとおりであること,本事業は,乙が甲以外の土地所有者と本契約と同様の契約を締結することにより一体として遂行されるものであること,乙が土地所有者の1人とでも本契約と同様の契約を締結できず,あるいは甲以外の土地所有者の所有する土地の関係で,本事業の遂行が不可能となった場合,本契約は当然に効力を失うもの- 7 -であることを確認する。」b 本契約で行われる法律行為(契約条項【共通】第2条)⒜ 「本契約で行なわれる法律行為は,「甲が所有する物件」(表1)及び「甲が取得する物件」(表2)の形態欄記載のとおりとする。」⒝ 「甲が所有する物件」(表1)には,原告らが本事業区域内に所有する土地ごとに,「甲が取得する物件」(表2)には,原告らが本契約により取得する土地ごとに(ただし,いずれも文筆後),「形態」という欄が設けられ,交換,売買又は寄附と記載されている。 c 甲の行う行為(契約条項【共通】第3条)「甲は「甲が所有する物件」(表1)において,乙の行なう本事業に協力し,乙との間で形態欄記載の法律行為を行なう。」d 乙の行う行為(契約条項【共通】第4条)「乙 共通】第3条)「甲は「甲が所有する物件」(表1)において,乙の行なう本事業に協力し,乙との間で形態欄記載の法律行為を行なう。」d 乙の行う行為(契約条項【共通】第4条)「乙は「甲が所有する物件」(表1)の物件につき,本事業を行ない,甲および甲の他別紙一覧表記載の土地所有者と乙の間で,表1に記載する形態欄記載の法律行為を行なう。」e 乙の契約上の地位の譲渡(契約条項【共通】第5条)⒜ 「乙は,甲と行なう形態欄記載の法律行為を乙の指定する者(以下「丙」という)との間で行なわせることができる。」⒝ 「乙は,前項のため乙の本契約上の地位を「甲が取得する物件」(表2)の所有者欄に記載の者および,その他丙に譲渡することができ,甲はあらかじめこれを承諾する。」⒞ 「また,甲は,乙が「甲が所有する物件」(表2)の所有者欄に記載の者と本契約と同様の契約を締結した場合,「形態」欄記載の法律行為を行なうため当該契約の乙の地位を譲り受けることをあら- 8 -かじめ承諾する。」f 課税文言替地場所を示す図面が記載された頁において,その図面の横に,「私は,左記の換地を取得することを承諾します。なお,課税に関しては従前地を売渡し,換地を取得したものと見做されることがあることを理解し,これを承諾します。」との文章が記載されており(以下,このなお書き部分を「本件課税文言」という。),地権者原告らは,本件課税文言の下に,記載日と自らの住所を記載した上で,署名押印を行っている。 g 媒介者,取引主任者本件不動産契約書には,媒介業者として被告アラキ開発の記名押印がなされ,取引主任者として被告アラキ開発代表者であるLの記名押印がな を行っている。 g 媒介者,取引主任者本件不動産契約書には,媒介業者として被告アラキ開発の記名押印がなされ,取引主任者として被告アラキ開発代表者であるLの記名押印がなされている(甲イないしウの各1)。 a 被告環境設計と被告矢作建設との間の業務委託契約被告環境設計は,平成23年10月4日,本件開発事業につき,被告矢作建設との間で業務委託契約書を交わした。上記業務委託契約書には,以下の記載がある。(乙A35)⒜ 頭書き被告矢作建設(⒜ないし⒟において「甲」という。)と被告環境設計(⒜ないし⒟において「乙」という。)は,名古屋市α区β町(住所省略)γ地内の用地に関して甲の指定する区域(⒜ないし⒟において「当該地」という。)の土地の開発許可申請業務,各種同意取得及び測量・登記申請業務に関して以下のことを取り決める。 ⒝ 目的(第1条)甲は,乙と協力して当該地の開発許可申請業務,各種同意取得及び測量・登記申請業務を行うことを目的とする。 - 9 -⒞ 委託業務(第3条)甲は,①都市計画法に基づく開発許可取得業務,②農地法に基づく農地転用ほか必要な業務,③敷地測量,④登記業務を乙に委託する。 ⒟ 業務報酬とその支払い(第5条)甲は,乙に第3条の委託業務の報酬として,金2億9400万円を支払うものとする。 b 被告アラキ開発と被告矢作建設との間の業務委託契約被告アラキ開発は,平成23年11月28日,本件開発事業につき,被告矢作建設との間で業務委託契約書を交わした。当該業務委託契約書には,以下の記載がある。(甲11の1)⒜ 頭書き被告矢作建設(⒜ないし⒟にお 平成23年11月28日,本件開発事業につき,被告矢作建設との間で業務委託契約書を交わした。当該業務委託契約書には,以下の記載がある。(甲11の1)⒜ 頭書き被告矢作建設(⒜ないし⒟において「甲」という。)と被告アラキ開発(⒜ないし⒟において「乙」という。)は,名古屋市α区β町(住所省略)γ地内で甲の指定する企業(以下「丙」という。)用地に関して甲の指定する区域(⒜ないし⒟において「当該地」という。)の土地の取りまとめ業務に関して以下のことを取り決める。 ⒝ 目的(第1条)甲は,乙と協力して丙の希望する当該地の取りまとめ業務を行うことを目的とする。 ⒞ 委託業務(第2条)甲は,①当該地に関する抵当権,質権,先取特権または賃借権,その他形式を問わず所有権を阻害する一切の負担を受渡し期日までに除外し,完全なる所有権移転ができるよう取りまとめる業務,②当該地の地権者らに対して,土地の売買,生産緑地等の農地,宅地の交換により生じる,交換場所,面積および課税等の説明と承諾を- 10 -得る業務,③その他甲が丙の用地とするために必要と認める業務を乙に委託する。 ⒟ 業務報酬とその支払い(第4条)甲は,乙に第2条の委託業務の報酬として,金2億7510万円を支払うものとする。 地権者原告ら(ただし,B,原告A10,原告A11,原告A12及び原告A14を除く。)と被告矢作建設は,平成24年3月31日から同年4月8日にかけて,本件原告ら契約書【共通】第5条に基づき,確認書を取り交わした(以下「本件確認書」という。)。本件確認書には,本件不動産契約における被告矢作建設の契約上の地位を「不動産の表示」の「登記権利者」欄に記載されてい 約書【共通】第5条に基づき,確認書を取り交わした(以下「本件確認書」という。)。本件確認書には,本件不動産契約における被告矢作建設の契約上の地位を「不動産の表示」の「登記権利者」欄に記載されている第三者「丙」に承継することなどを確認同意する旨が記載されている。(甲イないしヌ,ヲ,ワ,レ,ソ,ネないしウの各2) 本件原告ら契約書において,法律行為の形態欄の記載が「交換」とされているもの(甲イ1,甲ナ1,甲ラ1)について,本件原告ら契約に基づく所有権移転登記がなされるにあたり,地権者原告らが署名押印した登記原因証明情報では「売買」とされているもの(甲42の2ないし42の4,甲43の2ないし43の4,甲44の2ないし44の4,甲45の2ないし45の4,甲46の2ないし46の4,甲47の2ないし47の4)がある(争いはない)。 開発行為許可被告矢作建設は,平成24年4月26日,本件開発事業につき,名古屋市長に対して開発行為許可申請を行ったところ,名古屋市長は,同年5月1日,これを許可した(甲7の1,7の2)。その後,被告矢作建設は,同年10月9日に,名古屋市長に対して開発行為変更許可申請を行い,名古屋市長は,同月22日,これを許可した(甲7の3,7の- 11 -4)。 本件開発事業は,県道ε線の沿線を商業用地とし,その北側を宅地に,さらにその北側を農地とするものである(甲49)。 ウ所得税法上,土地を譲渡したことによる所得(売買だけでなく交換も含む。)に対して課税されるが(同法33条,22条),租税特別措置法により,土地区画整理事業において土地の交換がなされ,一定の要件を満たす場合には,譲渡はなかったものとして扱われる特例(以下「交換特例」という。)がある。 地権者原告らを含む本件地権者ら 措置法により,土地区画整理事業において土地の交換がなされ,一定の要件を満たす場合には,譲渡はなかったものとして扱われる特例(以下「交換特例」という。)がある。 地権者原告らを含む本件地権者らは,被告Hから,本件開発事業においても,交換特例の適用があると聞いていたこともあって,本件不動産契約に係る譲渡所得税等の税金ついて,何らの手続もとっていなかったところ,η税務署やα税務署等は,平成26年11月頃から,順次,地権者原告らを含む本件地権者らに対し,譲渡所得税等を課す旨を連絡し,地権者原告らは,別紙公租公課表「国税」「地方税」「延滞税」「加算税」欄記載の金額を納付するに至った(甲31,甲イないしウの各1,被告Hp39〜41)。 2 争点⑴ 被告矢作建設の注意義務違反ア土地開発業者としての注意義務違反イ譲渡所得課税についての説明義務違反ウ土地交換比率についての説明義務違反エ本件確認書等についての説明義務違反⑵ 被告環境設計の注意義務違反ア土地利用・開発コンサルタントとしての説明義務違反イ本件原告ら契約書の記載と登記原因との違いに係る不動産登記法の真実性確保義務違反及び説明義務違反- 12 -ウ土地交換比率の不公平についての説明義務違反エ譲渡所得課税についての説明義務違反⑶ 被告アラキ開発の注意義務違反ア宅地建物取引業者(以下「宅建業者」という。)としての注意義務違反イ被告矢作建設との業務委託契約に基づき被告矢作建設から委託された地権者原告らに対する説明義務違反ウ本件確認書等についての説明義務違反⑷ 被告H及び被告Iの注意義務違反ア譲渡所得税を課されない旨の誤った説明をした注意義務違反イ実 権者原告らに対する説明義務違反ウ本件確認書等についての説明義務違反⑷ 被告H及び被告Iの注意義務違反ア譲渡所得税を課されない旨の誤った説明をした注意義務違反イ実際の土地交換比率が事前の基準と異なり,本件地権者らによってばらばらであることを秘匿した注意義務違反ウ土地買増に際しての金員詐取についての注意義務違反⑸ 共同不法行為の成否⑹ 因果関係並びに損害の有無及び額 3 争点についての当事者の主張⑴ 被告矢作建設の注意義務違反ア土地開発業者としての注意義務違反(原告らの主張) 土地開発事業において,地権者らは,自らに提示された替地その他の条件が,土地開発事業計画の全体の中でどのような位置を占めるのかを認識し,他の地権者の契約内容と比較考量をするのでなければ,契約締結の可否を判断することはできないが,大手建設会社である被告矢作建設と地権者原告らを含む本件地権者らとの間には,圧倒的な情報格差があった。そのため,被告矢作建設は,契約自由の原則を実質的に確保するために,信義則上,本件開発事業の計画全容を地権者原告らに説明すべき義務を負っていた。 - 13 -このことは,名古屋市住宅都市局建築指導部開発指導課が発行する「開発許可制度のあらまし」(甲6)において,開発行為をしようとする者に対し,「開発行為の内容を十分に説明してください」との記載があることによっても裏付けられている。 しかるに,被告矢作建設は,本件開発事業の内容を説明する会を開催せず,地権者原告らに対して個別に説明する機会も設けなかった。 本件開発事業において,被告H及び被告Iは,地権者原告らに対し,譲渡所得税はかからないとの振る舞いを続けていた。また を開催せず,地権者原告らに対して個別に説明する機会も設けなかった。 本件開発事業において,被告H及び被告Iは,地権者原告らに対し,譲渡所得税はかからないとの振る舞いを続けていた。また,被告H及び被告Iは,本件地権者ら対し,「替地を希望する場合の減歩率は,宅地の場合には従前地の面積の50%,農地の場合には40%,生産緑地の場合は0%であり,従前地がδ線沿いの場合は倍返しである。」(以下「本件替地基準」という。)と説明していたが,本件開発事業によって本件地権者が取得した替地の面積は,本件替地基準と異なり本件地権者ごとに様々で(以下,従前地の面積と本件開発事業により取得した替地の面積との比率を「土地交換比率」という。),交渉によって土地交換比率が本件替地基準と異なるものになる可能性があることを秘匿していた。なお,地権者原告らの土地交換比率は,別紙減歩一覧表「不動産契約による交換率」欄記載のとおりである。 被告矢作建設は,本件地権者らに交付した文書(乙A9)において,「土地に関する事」の問い合わせ先を「M 担当被告H」と指定していることからすれば,被告Hらの上記の言行を知っていたと推認され,本件開発事業において,被告アラキ開発が名義を貸しただけであったと考えられることからすれば,被告Hらの言行により生じた譲渡所得税及び土地交換比率に関する地権者原告らの誤解を解くことができたのは,被告矢作建設のみであった。 このような状況からすれば,被告矢作建設は,地権者原告らに伝えら- 14 -れていた誤った情報を是正する義務を負っていたといえる。しかるに,被告矢作建設は,被告Hらの言行を放置し,これを利用して地権者原告らとの間で本件原告ら契約を締結した。 (被告矢作建設の主張)本件原告ら契約を含む っていたといえる。しかるに,被告矢作建設は,被告Hらの言行を放置し,これを利用して地権者原告らとの間で本件原告ら契約を締結した。 (被告矢作建設の主張)本件原告ら契約を含む本件不動産契約は,被告矢作建設と本件地権者らとの間の個別の契約であり,地権者原告らを含む本件地権者らは,自己が譲渡する土地,替地として譲り受ける土地,支払われる金額を認識した上で,本件不動産契約を締結しているから,これらの事項に加えて,被告矢作建設が本件開発事業の全体計画を説明する義務を負っていたとはいえない。 また,被告矢作建設は,被告Hや被告Iの言行を把握していたわけではないから,これを放置した事実もない。 イ譲渡所得課税についての説明義務違反(原告らの主張) 本件開発事業のような大規模な土地開発事業を施行するに際して,専門的な大手建設会社は,課税関係について調査した上,事前に税務当局と折衝するなどして,土地所有者に対してその結果等を説明する信義則上の義務を負っている。 交換特例の適用が認められるためには,交換の「相手方」が交換地を1年以上所有していたこと等の条件が必要であるところ(甲ナ35),ここでいう「相手方」が従前の土地所有者であれば,上記の条件を満たす可能性があるのに対し,「相手方」が被告矢作建設や被告矢作建設から契約上の地位を譲り受けた第三者である場合,上記の条件を満たさないことは明らかである。したがって,被告矢作建設は,本件不動産契約について交換特例の適用がないことを知っていたか,あるいは,容易に知り得たといえる。しかるに,被告矢作建設は,これらの事実を地権者- 15 -原告らに秘匿した。 また,本件不動産契約について交換特例の適用がないとしても,所得税基本通達 は,容易に知り得たといえる。しかるに,被告矢作建設は,これらの事実を地権者- 15 -原告らに秘匿した。 また,本件不動産契約について交換特例の適用がないとしても,所得税基本通達33-6の6,33-6の7の適用の可能性がある(甲22)。これらの通達は,地権者原告ら一般市民には全く未知の領域であり,通達に該当するかどうかを判断し得るものではない。これに対し,被告矢作建設は,土地開発業者としてこれらの通達について知識,情報を有し,検討するに必要な人材もそろっている。 したがって,被告矢作建設は,地権者原告らのために,上記通達の適用を受けるべく,名古屋市や国税局と折衝,協議を行うべきであった。 しかるに,被告矢作建設は,そのような時間的な余裕はないとの判断のもとに本件不動産契約の締結を急ぎ,上記折衝,協議をせず,地権者原告らへの説明も省略した。 地権者原告らを含む本件地権者らは,本件不動産契約の締結の当日に,初めて本件不動産契約書を目にしたのであり,本件地権者らは,他の本件地権者が締結している契約の内容について全く知らないままであった。 これに対し,被告矢作建設は,本件地権者らとの間の本件不動産契約内容をすべて把握しているから,本件不動産契約の課税関係を調査,検討できるのは被告矢作建設のみである。 以上によれば,被告矢作建設は,本件不動産契約に係る課税関係の調査,検討,税務当局との協議の結果について,正確に地権者原告らに知らせる義務があった。しかるに,被告矢作建設は,これを放擲し,上記義務を怠った。 (被告矢作建設の主張) 原告らは,大規模土地開発事業に際し,専門的な大手建設会社に課税についての調査,説明義務があると主張するが,そのような法的根拠はなく,被告矢作建設に原告らが (被告矢作建設の主張) 原告らは,大規模土地開発事業に際し,専門的な大手建設会社に課税についての調査,説明義務があると主張するが,そのような法的根拠はなく,被告矢作建設に原告らが主張するような説明義務はない。 - 16 - 被告矢作建設は,本件不動産契約を実質的に見た場合,全く交換特例の適用の余地がないとはいえないため,本件不動産契約を締結する前に,税務当局の見解を聞きに行ったが,税務当局からは明確な回答を得られなかった。そこで,被告矢作建設は,弁護士のアドバイスに従って,後日のトラブルを避けるため,本件不動産契約書に本件課税文言を付加して,地権者原告らを含む本件地権者らに対し注意喚起を行った。 したがって,被告矢作建設には,本件不動産契約に係る譲渡所得課税について何ら説明義務違反はない。 原告らは,本件原告ら契約により譲渡所得税が課されるとは思っておらず,課税されることが分かっていれば本件原告ら契約を締結しなかったと主張する。 しかし,地権者原告らの中に,税務署や被告矢作建設へ問い合わせ等をした者は一人もおらず,このことだけでも,上記原告らの主張を採用することはできない。 また,地権者原告らが本件原告ら契約に譲渡所得課税はなされないと思っていた理由は,①被告Hらからその旨の説明を受けたため,②被告環境設計のGからその旨の説明を受けたため,③土地区画整理事業の場合と同じと考えていたため,④交換であるため等,様々である。 しかし,①について,地権者原告らの中には,被告Hを信用できないと述べる者もいて,仮に被告Hらが課税されないという趣旨の発言をしたとしても,地権者原告らがこれをそのまま信じたとは思われない。 ②については,被告環境設計が行 は,被告Hを信用できないと述べる者もいて,仮に被告Hらが課税されないという趣旨の発言をしたとしても,地権者原告らがこれをそのまま信じたとは思われない。 ②については,被告環境設計が行ったのは開発許認可関係及び交換土地の図面の作成等の事務手続であり,このような役割しか担っていなかった被告環境設計のGに対し,地権者原告らが課税について質問したと考えるのは不自然である。仮にそのような質問がされたとしても,Gとしては「分からない」等と答えるだけで,「課税されない」などと答え- 17 -ることはあり得ない。 ③については,本件開発事業が土地区画整理とは異なるもので,前区画整理が失敗して再び土地区画整理組合が設置されたわけではないことは,地権者原告らにも理解し得ることであるから,上記の理由とはならない。 ④については,地権者原告らが税法を勘違いしていたという他なく,地権者原告らが自ら勘違いをしていたことについて,被告矢作建設が責任を負う理由はない。地権者原告らが課税について勘違いしているか,勘違いしている場合何をどのように勘違いしているか分からない以上,被告矢作建設としては,本件不動産契約書に本件課税文言を入れる等,一般的な注意を促す以上にできることは何もない。 ウ土地交換比率についての説明義務違反(原告らの主張)被告矢作建設は,本件地権者らとの折衝を被告Hらに任せていたところ,被告Hらは,地権者原告らを含む本件地権者らに対し,土地交換比率ついて本件替地基準によることを説明し,被告矢作建設の担当者も,第2回説明会において,本件替地基準について説明していた。しかし,本件地権者らのうち,替地を希望した地権者原告らの実際の土地交換比率は,別紙減歩一覧表「不動産契約による交換率」欄 作建設の担当者も,第2回説明会において,本件替地基準について説明していた。しかし,本件地権者らのうち,替地を希望した地権者原告らの実際の土地交換比率は,別紙減歩一覧表「不動産契約による交換率」欄記載のとおり,本件替地基準とは全く異なる不公平なものとなっていた。 本件不動産契約は同時期になされ,一人が欠けたことにより全てが無効になるものであるところ,地権者原告らは,実際の土地交換比率について説明を受けていれば,本件原告ら契約を締結することはなかった。 このような状況において,本件不動産契約の全体を把握していたのは被告矢作建設のみで,被告矢作建設は,被告Hらが本件地権者らから集めた替地承諾書に基づいて本件不動産契約書を作成していたから,地権者原告- 18 -らの土地交換比率が著しく不公平であることを知っていたか,あるいは容易に知り得ることができた。 したがって,被告矢作建設は,地権者原告らに対し,土地交換比率について,事前の説明と実際の交換比率が全く異なる不公平なものとなっていることを説明すべき義務を負っていた。しかるに,被告矢作建設は,上記の点を説明せず,これを怠った。 (被告矢作建設の主張)原告らが主張するように,本件不動産契約により,実際の土地交換比率が,被告Hらによる事前の説明と異なる内容となり,また,本件原告ら契約を含む本件不動産契約は,本件地権者らのうち一人でも欠ければその効力が失われることになっている。 しかし,被告Hらの説明はあくまで基準にすぎず,本件地権者らとの間の本件不動産契約の内容となっているわけではない。地権者原告らを含む本件地権者らの関心事は,替地の対象となる場所や面積,替地の形状や接道状況等であり,他の本件地権者が取得する替地について関心を有していたわけで 契約の内容となっているわけではない。地権者原告らを含む本件地権者らの関心事は,替地の対象となる場所や面積,替地の形状や接道状況等であり,他の本件地権者が取得する替地について関心を有していたわけではない。実際,本件各説明会において,他の本件地権者の替地についての質問は皆無であり,本件地権者間で,その点について確認しあったこともないし,本件不動産契約を締結するにあたり,地権者原告らを含め他の本件地権者との公平性を問題にした本件地権者は,一人もいなかった。 また,本件地権者らが所有していた従前地は,場所,面積,接道状況等が様々であり,複数の土地を所有し,かつ,それらが分散している場合もある。このような状況で,本件地権者らが取得する替地を本件替地基準に従って割り当てることは不可能であり,地権者原告らを含む本件地権者らも,このような状況を理解したうえで,被告Hらとの交渉を通じて取得する替地について了解し,本件不動産契約を締結している。 - 19 -さらに,本件開発事業のような広い区域の開発で,複数の地権者から土地を取得しなければならない場合,上記のような解除条件を付すことは一般的なことであり,このことから,原告らが主張するような説明義務が導かれるものではない。 したがって,被告矢作建設には,土地交換比率についての事前の説明と実際の土地交換比率が全く異なることを説明すべき義務はない。 エ本件確認書等についての説明義務違反(原告らの主張)地権者原告らの従前地の中には,本件原告ら契約書で「交換」とされているにもかかわらず,本件確認書で「登記権利者」とのみ表示され,登記簿上の登記原因が「売買」とされているものが多数ある。不動産登記においては真実性の確保が求められているため,このような登記を不動産登記法は かかわらず,本件確認書で「登記権利者」とのみ表示され,登記簿上の登記原因が「売買」とされているものが多数ある。不動産登記においては真実性の確保が求められているため,このような登記を不動産登記法は許容していないし,本件原告ら契約書と本件確認書は一対になるものであるから,被告矢作建設は,地権者原告らに対し,本件確認書の表示が本件原告ら契約書の記載から変更されたことについて説明すべき義務がある。しかるに,被告矢作建設は,この点について地権者原告らに説明することなく,地権者原告らとの間で本件確認書を取り交わした。 (被告矢作建設の主張)被告矢作建設は,地権者原告らとの間で交わした本件原告ら契約書及び本件確認書の相手方であり,これらの書類について,相手方である被告矢作建設に説明義務があるとする根拠はない。 また,本件確認書は,被告矢作建設の本件不動産契約上の地位が誰に移転するかを本件地権者らに確認してもらうための書面であり,売買か交換かといった点や登記原因を確認するためのものではない。本件確認書や登記原因に交換である旨の記載がなされたとしても,地権者原告らに対する課税に何ら影響を与えるものではないし,被告矢作建設は,地権者原告ら- 20 -を含む本件地権者らに対し,譲渡所得課税がなされる可能性を十分に説明していた。 したがって,被告矢作建設には,本件確認書について,原告らが主張するような説明義務を負っていない。 ⑵ 被告環境設計の注意義務違反ア土地利用・開発コンサルタントとしての説明義務違反(原告らの主張)被告環境設計は,本件開発事業について,被告矢作建設との間で業務委託契約を締結し(乙A35),都市計画法に基づく開発許可取得業務等を受託していた。被告環境設計は, (原告らの主張)被告環境設計は,本件開発事業について,被告矢作建設との間で業務委託契約を締結し(乙A35),都市計画法に基づく開発許可取得業務等を受託していた。被告環境設計は,建設コンサルタントの専門業者として,地権者原告らに対し,本件開発事業の全体を説明する義務ないし被告矢作建設に対して説明会等を開くようアドバイスをする義務がある。しかるに,被告環境設計は,これらを怠った。 (被告環境設計の主張)被告環境設計が行ったのは,開発許認可関係及び交換土地の図面の作成等の事務手続であるから,地権者原告らに対して本件開発事業を説明する義務や被告矢作建設に対して説明会等を開くようアドバイスをする義務を負うものではない。 イ本件原告ら契約書の記載と登記原因との違いに係る不動産登記法の真実性確保義務違反及び説明義務違反(原告らの主張) 被告環境設計は,被告矢作建設との間で登記業務を受託し(乙A35),司法書士の手配も行った上,本件地権者らの従前地について所有権移転登記手続を代行していて,そのため,本件地権者らから本件確認書や委任状,登記原因証明情報の書類を受け取る手続に関与していた。 a 地権者原告らを含む本件地権者らの従前地の中には,本件不動産契- 21 -約書で「交換」とされているにもかかわらず,本件確認書では「登記権利者」とのみ表示され,登記原因が「売買」とされているものがある。不動産登記法は真実性の確保を求めていることから,このような登記を許容するものではなく,被告環境設計の上記登記手続は,不動産登記法上の真実性の確保義務に違反するものである。 b また,地権者原告らは,本件地権者らの土地の一部について,金銭授受がないのに登記上「売買」とされていることを知れば, 計の上記登記手続は,不動産登記法上の真実性の確保義務に違反するものである。 b また,地権者原告らは,本件地権者らの土地の一部について,金銭授受がないのに登記上「売買」とされていることを知れば,課税についての認識も当然変わり,本件原告ら契約の締結の可否について再検討していたはずである。 c したがって,被告環境設計は,本件不動産契約締結の際,本件不動産契約書に記載された登記原因と明確に異なる登記原因証明情報を作成することについて,自ら地権者原告らに説明し,あるいは,自己が手配した司法書士に説明させるべき義務を負っていた。しかるに,被告環境設計は,地権者原告らに課税される疑念を持たれないよう,地権者原告らに対して登記原因が本件不動産契約書の記載と異なることをあえて秘匿して上記の説明をせず,かつ,司法書士にも説明させなかった。 a この点につき,被告環境設計は,地権者原告らが登記原因証明情報に捺印していることを根拠に,登記原因が売買になることを知っていたはずであると主張する。 しかし,登記原因証明情報はA3用紙であるから,この書面を二つ折りにして売買の記載がなされている頁を伏された状態で捺印を求められると,地権者原告らは売買の記載を確認することはできない。また,通常,本件不動産契約と異なる内容の登記が行われることを想定できるものではないし,この点について被告環境設計から説明を受けた地権者原告らもいなかった。 - 22 -したがって,地権者原告らが本件不動産契約に記載された登記原因と実際の登記原因とが異なることを知っていたとはいえない。 b また,被告環境設計は,法務局と協議した結果このような登記をすることになったと主張する。 しかし,法務局は,申請された内容を形式的に判断するのみで,実際の契約と登記原因証明情 とはいえない。 b また,被告環境設計は,法務局と協議した結果このような登記をすることになったと主張する。 しかし,法務局は,申請された内容を形式的に判断するのみで,実際の契約と登記原因証明情報とを整合させるのは司法書士の職務であるから,法務局と協議を行ったとしても,被告環境設計の責任が回避されるものではない。なお,売買代金の支払も行われていないのに,売買と記載された虚偽の登記原因証明情報の作成を法務局が許諾するとは考えられないため,そもそも法務局との協議は存在しないか,仮に行われたとしても,法務局に対して適切な情報が与えられていないことは明らかである。 (被告環境設計の主張)本件不動産契約書に「交換」と記載されているにもかかわらず登記原因が「売買」となる事例が生じたのは,実際の権利関係の移転を全て登記に反映するのが困難であったためで,このような取扱いは,司法書士が法務局と協議した上で行ったものである。また,地権者原告らは,それぞれが登記の内容を確認した上で,共同申請により移転登記の手続を行っているし,地権者原告らが押印した登記原因証明情報にも,登記原因が「売買」と記載されている。さらに,不動産登記において,真実性を確保する義務に違反したことが,直ちに不法行為等の注意義務違反の内容となるものではない。 したがって,被告環境設計が行った登記手続が,不動産登記法上の真実性の確保義務に違反するとか,地権者原告らとの関係で不法行為を構成するものではないし,被告環境設計には,自ら地権者原告らに対し,原告らが主張するような説明をすべき義務やそのような説明を司法書士にさせる- 23 -義務もない。 ウ土地交換比率の不公平についての説明義務違反(原告らの主張)被告環境設計 張するような説明をすべき義務やそのような説明を司法書士にさせる- 23 -義務もない。 ウ土地交換比率の不公平についての説明義務違反(原告らの主張)被告環境設計は,替地図面を含む本件開発事業に係る図面を作成し,地権者原告らの従前地と替地とを比較対照し得る立場にあり,被告環境設計のGも,地権者原告らの土地交換比率が様々であることを認識していた(証人Gp20)。 したがって,被告環境設計には,実際の土地交換比率が,被告Hらの事前の説明(本件替地基準)と全く異なる不公平なものとなっていることを,地権者原告らに対して説明すべき義務がある。しかるに,被告環境設計は,これを秘匿し,本件原告ら契約書の作成を強行した。 (被告環境設計の主張)被告環境設計が行ったのは,開発許認可関係及び交換土地の図面の作成等の事務手続にすぎず,地権者原告らを含む本件地権者らに対して何らかの説明義務を負うものではない。 また,本件地権者らが所有していた従前地は,場所,面積,接道状況等が様々であり,複数の土地を所有し,かつ,それらが分散している場合もある。このような状況で,本件地権者らが取得する替地を本件替地基準に従って公平に割り当てることは不可能であるし,地権者原告らを含む本件地権者らも,このような状況を理解したうえで,被告Hらとの交渉を通じて取得する替地について了解して,本件不動産契約を締結している。 したがって,被告環境設計は,地権者原告らに対し,実際の土地交換比率が本件替地基準と異なっていることについて,説明する義務を負うものではない。 エ譲渡所得課税についての説明義務違反(原告らの主張)- 24 -被告環境設計は,建設コンサルタントの専門業者として,被告矢 て,説明する義務を負うものではない。 エ譲渡所得課税についての説明義務違反(原告らの主張)- 24 -被告環境設計は,建設コンサルタントの専門業者として,被告矢作建設とともに,本件開発事業の許可申請にあたり,名古屋市と折衝を繰り返し,多数の司法書士に委託して,本件地権者らの所有する従前地について所有権移転登記手続を代行していた。また,地権者原告らの中で,被告矢作建設の担当者と直接面識のある者は稀で,被告環境設計の担当者は,被告H及び被告Iとともに,地権者原告らを含む本件地権者らの連絡先となっていた。 したがって,被告環境設計には,地権者原告らに対し,被告矢作建設と同様,譲渡所得課税についての説明義務がある。しかるに,被告環境設計の担当者は,被告Hらの譲渡所得税についての虚偽の説明を黙認し,地権者原告らの誤解をそのままにしたのであるから,上記義務違反がある。 (被告環境設計の主張)被告環境設計は,本件開発事業の許認可関係の手続,替地の図面の作成,登記手続を行ったにすぎず,地権者原告らもそのことを認識していた。被告環境設計の担当者は,地権者原告らから課税についての質問を受けていないし,仮に,受けたとしても「分からない」と答えるだけである。 したがって,被告環境設計には,原告らが主張する説明義務はない。 ⑶ 被告アラキ開発の注意義務違反ア宅建業者としての注意義務違反(原告らの主張) 被告矢作建設と地権者原告らとの間で締結された本件原告ら契約書には,媒介業者として被告アラキ開発が,取引主任者としてアラキ開発の代表取締役で宅地建物取引士の資格を有するLが,それぞれ記名押印しているから,被告アラキ開発は,本件不動産契約における媒 告ら契約書には,媒介業者として被告アラキ開発が,取引主任者としてアラキ開発の代表取締役で宅地建物取引士の資格を有するLが,それぞれ記名押印しているから,被告アラキ開発は,本件不動産契約における媒介業者として,宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という。)に定められた義務を負う。 - 25 -すなわち,被告アラキ開発は,取引主任者をして,①相手方に対して,物件に関する事項や取引条件などの一定の重要事項を説明し,説明書に記名押印する義務(宅建業法35条1項,5項)(以下「重要事項の説明義務」という。)及び②契約が成立したときに,一定の事項を記載した書面に記名押印し,相手方に対して交付する義務(宅建業法37条1項,3項)(以下「書面の交付義務」という。)を負っていた。 ①重要事項の説明義務a 重要事項の説明義務の制度趣旨は,取引の相手方等が売買等の意思決定をする上で重要な判断材料を提供し,相手方等が取引内容を十分に理解した上で契約を締結できるようにし,契約締結後における紛争を未然に防止しようとすることにある。そのため,説明すべき対象者として,「各当事者」と明示されている(宅建業法35条1項)。 したがって,被告アラキ開発は,地権者原告らに対し,本件原告ら契約の締結に際し重要事項の説明義務を負っている。しかるに,被告アラキ開発は,地権者原告らに対し,重要事項についての説明を何ら行わなかったのであり,明らかに宅建業法35条1項,5項に違反している。 b また,宅建業者は,宅建業法35条1項に列挙されていない事項であっても,信義誠実義務(宅建業法31条1項)に基づき,重要事項として説明義務を負う場合があり,重要事項に当たるか否かは,契約当事者の契約の意思決定に重大な影響を及 5条1項に列挙されていない事項であっても,信義誠実義務(宅建業法31条1項)に基づき,重要事項として説明義務を負う場合があり,重要事項に当たるか否かは,契約当事者の契約の意思決定に重大な影響を及ぼすような重要な情報に当たるか否かによって判断される。 本件不動産契約において,譲渡所得税が課税されるかという点及び土地交換比率が公平に設定されているかという点は,契約当事者である本件地権者らにとって,利害に直結し,関心の高い事項であり,被告アラキ開発は,そのことを知り得る状況にあった。また,被告アラ- 26 -キ開発と被告矢作建設との間で交わされた業務委託契約書には,本件地権者らに対して説明をし,承諾を得る事項として「課税」と「面積」が明記され(甲11の1),その対価も2億7510万円と高額であった。これらのことからすれば,一般の個人に過ぎない地権者原告らに対する説明義務は,二者間の単なる売買と比較して高度なものであり,しかも,本件不動産契約を締結するにあたり,被告Hらが地権者原告らを含む本件地権者らに対し,課税や本件替地基準について虚偽の説明を行っていた。 したがって,被告アラキ開発は,虚偽の情報を正し,公平な取引を行うため,その誤った情報を訂正すべき義務,すなわち,譲渡所得税が課される可能性があること,本件替地基準と現実の土地交換比率が異なり,一定の基準に従って公平に設定されていないことを説明する義務を負っていた。しかるに,被告アラキ開発は,上記の説明をせず,これを怠った。 なお,仮に,被告アラキ開発が,譲渡所得課税について判断できなかったとしても,被告アラキ開発は,被告矢作建設から本件不動産契約書を事前に見せられ,本件課税文言に目を通し,課税される可能性があることを理解していたから,その旨を原 譲渡所得課税について判断できなかったとしても,被告アラキ開発は,被告矢作建設から本件不動産契約書を事前に見せられ,本件課税文言に目を通し,課税される可能性があることを理解していたから,その旨を原告らに説明し,誤った情報を訂正すべきであった。 ②書面の交付義務(宅建業法37条1項,3項)被告アラキ開発の代表者で,取引主任者であるLは,本件不動産契約の締結に立ち会っていないから,地権者原告らに対し,書面の交付も説明もしていない。 したがって,被告アラキ開発には,書面の交付義務違反がある。 (被告アラキ開発の主張) 被告アラキ開発は,地権者原告らを含む本件地権者らとの間で媒介契- 27 -約を締結しているわけではないから,地権者原告らに対して,重要事項の説明義務や書面の交付義務を負うものではない。 仮に,被告アラキ開発に,地権者原告らに対する宅建業法上の説明義務が認められたとしても,宅建業法35条1項は,公租公課の負担に関する説明義務を列挙していないから,被告アラキ開発にこの点に関する説明義務はないし,宅建業法37条1項12号も,宅地又は建物そのものにかかる租税を想定した条文であるから,譲渡所得税のような宅地又は建物の譲渡にかかる課税について説明義務はない。 また,本件不動産契約について,譲渡所得税の交換特例が適用されるか否かは,税務署での事前確認でも分からず,単なる宅地建物業者である被告アラキ開発が,税法の細かな制度について確定的な判断をすることはできず,地権者原告らにこの点を説明することもできない。 したがって,被告アラキ開発に,譲渡所得課税に関する説明義務は認められないし,宅建業法37条1項,3項違反の事実もない。 イ被告矢作建設との業務委 原告らにこの点を説明することもできない。 したがって,被告アラキ開発に,譲渡所得課税に関する説明義務は認められないし,宅建業法37条1項,3項違反の事実もない。 イ被告矢作建設との業務委託契約に基づき被告矢作建設から委託された地権者原告らに対する説明義務違反(原告らの主張)被告アラキ開発は,被告矢作建設から,「土地の売買,生産緑地等の農地,宅地の交換により生じる,交換場所,面積および課税等の説明と承諾を得る」業務を受託したから(甲11の1),これらについて説明義務があるところ,地権者原告らに対し,上記の説明を行っていないから,説明義務違反がある。 (被告アラキ開発の主張)被告アラキ開発と被告矢作建設の業務委託契約は,契約当事者間の権利義務を規定するものに過ぎないため,当該契約をもって被告アラキ開発の地権者原告らに対する義務を根拠づけることはできない。 - 28 -また,上記業務委託契約の契約日は,平成23年11月28日であるところ,この時点において,地権者原告らは,すでに被告矢作建設との間で本件原告ら契約を締結し,契約内容や譲渡所得税の課税の可能性を認識していたから,被告アラキ開発が,地権者原告らに対し,新たに説明すべき事項は存在しない。 ウ本件確認書等についての説明義務違反(原告らの主張)地権者原告らを含む本件地権者ら所有の従前地について,本件不動産契約書では「交換」とされているのに,本件確認書では「登記権利者」とのみ記載され,登記に際しては「売買」と記載されているものがある。 被告アラキ開発は,本件不動産契約の媒介業者であるところ,本件不動産契約書と本件確認書は一対になるものであるから,このような重大な変更について,地権者原告らに 「売買」と記載されているものがある。 被告アラキ開発は,本件不動産契約の媒介業者であるところ,本件不動産契約書と本件確認書は一対になるものであるから,このような重大な変更について,地権者原告らに対して説明すべき義務を負っている。しかるに,被告アラキ開発は,これを怠り,上記説明義務に違反した。 (被告アラキ開発の主張)被告アラキ開発と被告矢作建設との業務委託契約は,平成23年11月28日に締結され,本件確認書が交わされたのは,それから約4か月を経過した平成24年3月31日以降であり,しかも,本件確認書は,被告矢作建設と本件地権者らとの間で交わされている。被告アラキ開発は,本件確認書について何ら関与していないから,原告らが主張するような説明義務を負うものではない。 ⑷ 被告H及び被告Iの注意義務違反ア譲渡所得税を課されない旨の誤った説明をした注意義務違反(原告らの主張)被告Hは,これまでの土地開発事業において,地権者が開発後の土地を取得し,従前所有していた土地との交換となるような場合,譲渡所得- 29 -税を課されたことがなかったため,本件開発事業においても,譲渡所得税が課されることはないと強く思い込んでいた(被告Hp28)。また,被告Iは,本件開発事業で初めて土地開発に携わるようになり(被告Ip2),「アラキ開発のL社長」や「父」である被告Hから「開発で替地に課税されたことはない」と聞いていた(被告Ip2)ことから,本件開発事業においても,土地の交換にあたる場合には課税されないとの認識を有していたといえる。 そして,被告H及び被告Iは,上記のような認識のもと,自らあるいは当時被告Hの従業員であったJを介するなどして,本件地権者らに対し,替地を取得して従前地との交換となる場合に といえる。 そして,被告H及び被告Iは,上記のような認識のもと,自らあるいは当時被告Hの従業員であったJを介するなどして,本件地権者らに対し,替地を取得して従前地との交換となる場合には,課税されないとの誤った説明をするとともに,この場合にも課税される可能性があることについて一切説明しなかった。 したがって,被告H及び被告Iには,譲渡所得課税について説明義務違反がある。 被告Hは,本件地権者らに対し,税金については税務署が決めることだからと答えたと主張するが,上記のとおり,課税されることはないと確信していたのであるから,上記のように回答することはあり得ない。 (被告H及び被告Iの主張) 被告Hが譲渡所得税について伝えたのは,地権者原告らのうちの若干名から質問がなされた際,今までかかわった案件では課税されたことがないという経験論を話したにすぎない。地権者原告らも,被告Hが税の専門家でないことを認識していたから,この回答に疑問を持てば,自ら税理士や税務署に確認すべきであった。また,被告IやJが本件地権者らに対し譲渡所得税について説明した事実はない。 本件開発事業において替地を取得し,従前地との交換となった場合,譲渡所得税が課されるか否かは,極めて専門的かつ裁量的判断によるも- 30 -ので,本件原告ら契約を含む本件不動産契約の締結時に,課税の可能性を正確に説明することは不可能であった。だからこそ被告矢作建設は,本件不動産契約書に本件課税文言を加えたのであり,その上で,地権者原告らは,本件原告ら契約書に署名押印している。 したがって,被告H及び被告Iについて,課税に関する説明義務違反は認められない。 地権者原告らの中には,前区画整理のよう 者原告らは,本件原告ら契約書に署名押印している。 したがって,被告H及び被告Iについて,課税に関する説明義務違反は認められない。 地権者原告らの中には,前区画整理のような土地区画整理の場合には譲渡所得税が課されないとの経験,本件原告ら契約は交換であり金銭の授受がないこと,課税について誰からも話がなかったこと等から,譲渡所得税は課されないだろうと思っていた者がおり,これらの者は,被告Hらの説明にかかわらず,本件原告ら契約については譲渡所得税が課されないと認識していたはずである。 また,被告Hらに対し,課税に関する質問をし,譲渡所得税が課されないとの回答を得たと主張する地権者原告らについても,その説明以上に税理士や税務署に確認しに行った者がいないことから,これらの者も,被告Hらに確認する以前より譲渡所得税は課されないとの認識を有していたと考えられる。 したがって,仮に,原告らが主張するような説明を被告Hらがしていたとしても,地権者原告らが,被告Hらの説明によって初めて譲渡所得税が課されないとの認識を有したとは認められない。 本件不動産契約の締結時に被告Iから税金がかからないと言われたと主張する原告A1,原告A4及び原告A2についてa 原告A1及び原告A4原告A1は,本件不動産契約の締結時,被告Iから「もしかかるようだったら私どもの方で負担する」と言われたと主張し(原告A1p15等),原告A4は,本件不動産契約後,被告Iから「固定資産税- 31 -以外のお金を出すことになればこちらが出します」という趣旨のことを言われたと主張する(原告A4p6)。しかし,被告Iにおいて,これらのやり取りの記憶は全くなく(被告Ip5,6),仮にこのようなやり取りがあれ を出すことになればこちらが出します」という趣旨のことを言われたと主張する(原告A4p6)。しかし,被告Iにおいて,これらのやり取りの記憶は全くなく(被告Ip5,6),仮にこのようなやり取りがあれば,被告Iは被告Hらに相談等するはずであるのに,かかる相談があった旨を述べる関係者がいないなど,その供述は他の証拠と矛盾しており,信用できない。 b 原告A2原告A2は,本件不動産契約の翌日か翌々日に,被告Iに電話をしたところ,確約書(甲ロ5の2)が送られてきたと主張する。 しかし,上記確約書が作成されたのは,本件不動産契約時に原告A2が突然確約書を出さない限り署名押印しないと主張し始めたためである。すなわち,被告Iは,原告A2がそのような主張をしたことから,その場で被告Hに電話して相談した。被告Hは,被告Iに,税金は自分で支払うものであるため,確約書に効果はないということを伝えた上で書面を出すと伝えるよう指示した(被告Hp6)。そこで,被告Iは,被告Hの指示どおり原告A2に伝え,後日,上記確約書を作成し,送付した(被告Ip6,7)。したがって,この上記確約書に法的効力はない。 原告A2は,陳述書において,本件不動産契約の場にいたのは,被告環境設計のK,N司法書士他1名であると述べており(甲ロ12p5),その証言においては,あと1名は分からないと代理人に伝えたかもしれないと述べている(原告A2p31)ところ,誰がいたか分からないのに翌日か翌々日には被告Iに電話をしているというのは不自然であるため,原告A2の証言は信用できない。 したがって,上記原告A2の主張を認めることはできない。 イ実際の土地交換比率が事前の基準と異なり,本件地権者らによってばら- 32 るため,原告A2の証言は信用できない。 したがって,上記原告A2の主張を認めることはできない。 イ実際の土地交換比率が事前の基準と異なり,本件地権者らによってばら- 32 -ばらであることを秘匿した注意義務違反(原告らの主張)本件不動産契約は,本件地権者らのうち一人でも契約の締結に至らない場合には,他の本件地権者との契約も全て無効になり,しかも,同時期に行われているものであるため,個別の契約とは異なり,本件地権者ら間の公平が図られなければならない。 被告Hらは,本件地権者らに対する個別の折衝のみならず,本件集会所においても本件替地基準について説明し,地権者原告らは,本件替地基準が一律の定まった基準であると考え,本件原告ら契約を締結している。しかし,実際の土地交換比率は,本件地権者によって様々であり,地権者原告らが,実際の土地交換比率を知っていれば,本件原告ら契約を締結することはなかった。 被告H及び被告Iは,地権者原告らに,実際の土地交換比率が本件替地基準と異なることを説明すべきであるのに,これを秘匿したから,上記注意義務違反がある。 (被告H及び被告Iの主張)被告H及び被告Iは,本件地権者らに本件替地基準を示したが,本件替地基準ですべて買い取り,交換すると約束したことはない。本件不動産契約は,本件地権者らとの一体としての契約ではなく,本件地権者らごとの個別契約であるため,一律の基準で買取りや交換をする義務はない。地権者原告らは,本件原告ら契約書に署名押印している以上,被告H及び被告Iに,原告らが主張するような注意義務違反はない。 ウ土地買増に際しての金員詐取についての注意義務違反(原告らの主張)被告Hは,原告A3, している以上,被告H及び被告Iに,原告らが主張するような注意義務違反はない。 ウ土地買増に際しての金員詐取についての注意義務違反(原告らの主張)被告Hは,原告A3,原告A5,原告A10の3名(以下「原告A3ら3名」という。)から,土地(替地)の買増しとして代金(以下「本件買- 33 -増料」という。)を受領している。 しかし,被告Hは,本件開発事業区域内の土地の所有者ではなく,原告A3ら3名の売主となり得ないため,本件買増料を受領する資格を有しない。また,実際の土地交換比率は,本件地権者によって様々であり,買増料と称する金員を支払うことなく従前の所有地と同様の面積が確保されている本件地権者も存在する。 これにつき,被告Hは,本件替地基準と比較して減歩率が低くなるよう取次ぎをした手数料として本件買増料を受領したなどと主張するが,被告Hは,被告矢作建設のために土地の売買,交換の交渉を行っているから,契約の相手方である地権者原告らから手数料をとることはあり得ず,領収書においても手数料の記載は存在しないし,地権者原告らに対して手数料の支払を求めたこともない。 このように,被告Hは,原告A3ら3名から本件買増料を受領する理由が一切ないにもかかわらず,原告A3ら3名に対して,土地の買増代金が必要であると虚偽の説明をし,本件買増料の支払を余儀なくさせているから,被告Hの行為は詐欺にあたる。 (被告H及び被告Iの主張)被告Hが原告A3ら3名から本件買増料を受領したことは事実である。 本件買増料の実態は,原告A3ら3名が,被告Hに対し,替地として希望する面積を提供することを依頼し,被告Hがこれを受諾するという委任契約類似の無名契約である。すなわち, は事実である。 本件買増料の実態は,原告A3ら3名が,被告Hに対し,替地として希望する面積を提供することを依頼し,被告Hがこれを受諾するという委任契約類似の無名契約である。すなわち,被告Hは,原告A3ら3名の依頼を実現するため,それ以外の本件地権者らと交渉して替地の面積を減らしたり,替地の場所を調整することにより,原告A3ら3名の希望する替地面積を確保し,これをそのまま本件不動産契約に反映させるよう被告矢作建設と交渉し,契約の締結に至らせるというものである。そして,原告A3ら3名は,実際に希望したとおりの面積の土地を取得しているから,被- 34 -告Hは,上記契約に基づいた業務を遂行している。 したがって,被告Hの行為は詐欺にあたるものではなく,本件買増料を返還する理由もない。 ⑸ 共同不法行為の成否(原告らの主張)前記のように,本件不動産契約は,本件地権者らのうち一人でも契約の締結に至らなければ,他の契約も全て無効になることなどから,一体性のあるもので,本件不動産契約の終局的な目的は,本件開発事業区域全体の開発であるから,被告らは,本件開発事業の実現に向け,相互に協力し合う関係にあった。 したがって,本件不動産契約の締結にあたっての被告らの説明義務違反等は,全体として一つの加害行為と評価すべきものであり,不法行為の関連共同性が認められる。 (被告矢作建設及び被告環境設計の主張)共同不法行為が成立するためには,①それぞれの行為が単独で不法行為の要件を備えていること,②行為相互間の客観的関連共同性が必要である。 このうち,被告矢作建設及び被告環境設計について,何ら違法行為は認められないから,上記①の要件を具備しない。 また,②の「行為相互間の客観的関連共同性」が認めら 間の客観的関連共同性が必要である。 このうち,被告矢作建設及び被告環境設計について,何ら違法行為は認められないから,上記①の要件を具備しない。 また,②の「行為相互間の客観的関連共同性」が認められるためには,他の共同不法行為者の行為を認識しているか,認識し得る関係にあることが必要であるが,被告アラキ開発,被告H及び被告I(以下「被告アラキ開発ら」という。)が主張するように,原告らが主張する被告アラキ開発らの行為が違法であるかどうかには疑問があるし,被告矢作建設及び被告環境設計が,被告アラキ開発らの行為を認識したり,認識し得る関係にもなかったから,上記②の要件も具備しない。 したがって,被告矢作建設及び被告環境設計と被告アラキ開発らの行為に- 35 -客観的関連共同性はなく,共同不法行為が成立する余地はない。 (被告アラキ開発の主張)被告らは,それぞれ独立して行動し,その間に関連共同性はない。被告アラキ開発は,地権者原告らを含む本件地権者らと協議をした事実もなく,本件地権者らにも,被告アラキ開発が他の被告らと共同して事業を行っているとの認識もない。 したがって,被告らについて共同不法行為が成立する余地はない。 (被告H及び被告Iの主張)争う。 ⑹ 因果関係並びに損害の有無及び額(原告らの主張)ア被告らの上記共同不法行為がなければ,地権者原告らが本件原告ら契約を締結することはなかったから,地権者原告らが支払った譲渡所得税(別紙公租公課一覧表「公租公課合計額」欄記載の金額)はいずれも損害に当たる。 仮に課税全額を損害と見ることができないとしても,実質的に名古屋市に寄附したにもかかわらず課税された2794.81㎡(地権者原告らが従前所有していた土地 金額)はいずれも損害に当たる。 仮に課税全額を損害と見ることができないとしても,実質的に名古屋市に寄附したにもかかわらず課税された2794.81㎡(地権者原告らが従前所有していた土地の15.9%に相当)及び所得税基本通達の適用により課税を免れた可能性のある11697.34㎡(地権者原告らが替地として新たに取得した土地の総面積。地権者原告らが所有していた従前地の66.4%に相当)については,課税されない可能性を追求できたため,地権者原告らに対する課税のうち,少なくとも本税と地方税の約80%は,被告矢作建設が名古屋市や国税局と折衝,協議を行わなかったことによる損害であるといえる。そして,地権者原告らに対する課税は,その用途にかかわらず公平になされるべきであるから,地権者原告らの各損害額は,(本税+地方税)×0.8+延滞税+加算税により求められる別紙公租公- 36 -課一覧表「2割課税を認めた場合の損害額」記載の金額となる。 イ上述のように,被告らの上記共同不法行為がなければ,地権者原告らが本件原告ら契約に応じることはなかった。本件開発事業区内の土地の減歩については,1坪(3.3㎡)あたり18万9100円と計算すべきところ,従前地の面積から交換により取得した替地の面積を差し引いた土地の面積に1坪(3.3㎡)あたり18万9100円を乗じた金額(別紙請求債権目録の「減歩等による損害」欄記載の金額。ただし,原告A3及び原告A5については「0」と,原告A10については「8,229,343」と読み替える。)はいずれも損害に当たる。 仮に減歩された面積全てを損害と見ることができないとしても,本件開発事業において本来許容し得る減歩率は約20%であり,それを超える減歩には理由がなく,原告らのうち16名の者については,そ 仮に減歩された面積全てを損害と見ることができないとしても,本件開発事業において本来許容し得る減歩率は約20%であり,それを超える減歩には理由がなく,原告らのうち16名の者については,それを超える不必要な減歩を強いられている。そうすると,上記16名の原告らの損害は,(従前地の面積×0.8-交換後の土地の面積)÷3.3×18万9100で求められる金額となるところ,別紙減歩一覧表の「過剰な減歩による損害」欄記載の金額が土地交換比率に関する被告らの上記共同不法行為により生じた損害であると認められる。 ウ原告A3ら3名は,本件買増料として,被告Hにそれぞれ319万4000円(原告A3),255万3000円(原告A5),397万6000円(原告A10)を詐取されているため,これらの金員は,被告Hの不法行為による損害である。 エ原告らは,上記の各損害の賠償を請求するため,訴訟代理人弁護士に依頼して本件訴訟を提起せざるを得なかったから,弁護士費用も損害となる。 弁護士費用としては,原告ら各損害額の10%とするのが相当である。 オ仮にアないしエ記載の各損害が認められないとしても,被告らの共同不法行為は信義誠実の原則に著しく反するものであるため,慰謝料として,- 37 -課税された金額及び減歩による損害金の合計を認めるべきである。 (被告矢作建設及び被告環境設計の主張)いずれも争う。 譲渡所得税及び交換比率の公平性に関する主張以外の原告らの主張は,抽象的な説明義務違反を指摘するだけで,損害とどのような関係に立つのかの説明がなく,主張自体失当である。 (被告アラキ開発,被告H及び被告Iの主張)いずれも争う。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実及び後掲の各証拠によれば,以下の事実を 係に立つのかの説明がなく,主張自体失当である。 (被告アラキ開発,被告H及び被告Iの主張)いずれも争う。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実及び後掲の各証拠によれば,以下の事実を認めることができる。 ⑴ア被告Hは,たまたま通った前区画整理地区を見て,土地開発に適していると考え,平成15年12月頃から,被告I及びJとともに,本件開発事業区域内に土地を所有する地権者原告らを含む本件地権者らに対し,土地開発についての協力を依頼するようになった(前提事実)。 被告Hは,当初,被告アラキ開発を土地開発事業者と予定していたが,事業規模が拡大したことから,平成22年12月頃,Lとともに被告矢作建設に本件開発事業を依頼し,遅くとも平成23年5月頃までに,被告アラキ開発から被告矢作建設に本件開発事業の主体が変更された(前提事実,甲5の8,証人Fp1,2,被告Hp2,被告アラキ開発代表者p2,3)。 イ本件開発事業における被告Hらの業務内容は,本件地権者ら(合計118名)が所有する土地(従前地)について,本件地権者ら全員から土地売却の承諾を得,本件地権者らのうち,替地を希望する者や従前地の面積と同等あるいはそれ以上の面積の取得(土地の買増)を希望する者について(本件開発事業により,原則として,従前地の面積よりも替地の面積が減少(減歩)する。),替地を手配してその了解を得るというものであった。 - 38 -本件地権者らの従前地には,1筆の土地もあれば,数筆の土地もあり,数筆の土地についてもそれらが一団となっているものと本件開発事業区域内に点在しているものがあった。また,本件地権者らの従前地は,宅地,農地,生産緑地等様々で,それに伴い,本件地権者らが求めた替地の地目も様々であった。被告Hは,本件地権者ら全員(118名)との 区域内に点在しているものがあった。また,本件地権者らの従前地は,宅地,農地,生産緑地等様々で,それに伴い,本件地権者らが求めた替地の地目も様々であった。被告Hは,本件地権者ら全員(118名)との間で従前地の売却交渉だけでなく,替地の面積や場所の割振り等もすべて行い,了解を得られた本件地権者らから順次,従前地の売渡承諾書,替地承諾書等を取り付け,さらに,名古屋市との折衝等も行っていた。そして,本件地権者ら全員から従前地の売渡承諾書,替地承諾書等を提出してもらった時点で,本件地権者らと被告矢作建設との間で従前地の売買契約等の各種契約を締結することを予定していた。(乙A24の1ないし24の24,乙A36p3〜6,乙C1,証人Fp6,7,被告Hp2〜4,16,29,弁論の全趣旨)本件地権者らは,本件開発事業を通じて,従前地の売却やこれまで本件開発事業区域内に点在していた従前地をまとめることができた。また,前区画整理において,約5000万円の負債が残り,それが前区画整理組合の組合員の個人的な負担となっていたが,前区画整理組合の清算人であった原告A1は,本件開発事業を通じて上記の負債を解消することを考え,被告Hにその旨を伝えて,上記負債を開発事業者に負担してもらった。もっとも,本件開発事業の内容から,本件地権者らのうち一人でも土地の売却を承諾しなければ,本件開発事業を遂行することはできなかった。(甲イ17p1〜3,乙A24の1ないし24,乙A36p3,乙C1,証人Fp6,原告A1p3,4,被告Hp29)⑵ 被告アラキ開発は,平成23年5月14日,本件集会所において,第1回説明会を開催した。これは,同年7月以降,本件開発事業の事業費の算出等のため,本件開発事業区域内の土地についての測量を予定していたことによ- 39 -るもので 14日,本件集会所において,第1回説明会を開催した。これは,同年7月以降,本件開発事業の事業費の算出等のため,本件開発事業区域内の土地についての測量を予定していたことによ- 39 -るもので,そのための資料(乙A9ないし12)を出席者に配布するとともに,「α区β町計画案」と題する説明図面(乙A13)及び「α区β町開発事業計画案」と題する工程表(乙A14)を展示し,本件開発事業についての説明が行われた。また,第1回説明会において,本件開発事業の主体が被告アラキ開発から被告矢作建設に変更された旨も伝えられるとともに,原告A1から,前区画整理に際して生じた約5000万円の負債の処理についても確認がなされた。(乙A36p2,証人Fp6,証人Kp3,被告アラキ開発代表者p3)第1回説明会で,被告Hは,出席者に対し,替地を取得する場合の土地交換比率(土地の減歩率)について,「取得する替地が農地である場合は40%,宅地である場合は50%」を基準とすることを説明した(証人Ep10,証人Fp3,4)。 ⑶ 第1回説明会の後,被告Hらは,引き続き本件地権者らとの個別交渉を行い,その交渉結果を被告矢作建設及び被告環境設計に報告した。被告矢作建設は,それを受けて本件開発事業の進捗状況を確認し,被告環境設計は,順次,従前地の測量を行って,必要な図面を作成していった。(乙A36p3,証人Ep15,20~22,33,34,証人Fp6,証人Kp2,3,被告Hp32)⑷ また,第1回説明会の後,本件地権者らの一部から,契約の締結を早くしてほしいとの要望が被告Hらに出された。被告矢作建設は,その報告を受け,本件不動産契約の締結を早めることにした。そして,平成23年9月17日,第2回説明会が開催され,出席者に資料(乙A15ないし18の3)が配布 望が被告Hらに出された。被告矢作建設は,その報告を受け,本件不動産契約の締結を早めることにした。そして,平成23年9月17日,第2回説明会が開催され,出席者に資料(乙A15ないし18の3)が配布されるとともに,説明図面(乙A19)及び「α区β町開発事業計画スケジュール」と題する工程表(乙A20)が展示され,本件開発事業についての説明が行われた。第2回説明会の時点で,本件地権者らの約9割が従前地の売却を承諾していた。(乙A36p3,証人Fp7,被告環境設計代表者- 40 -p4,5)第2回説明会で,被告Hは,本件地権者らに対し,土地交換比率について「取得する替地が農地である場合は40%,宅地である場合は50%,生産緑地である場合は0%」と説明していた(証人Ep10,証人Fp7,8)。 なお,被告Hは,本件地権者らとの交渉にあたり,上記以外にも,「従前地がδ線沿いの場合は倍返し」であるなどと説明していた(被告Hp3)。 ⑸ 原告A3ら3名は,被告Hらに,替地の面積の増加を希望した(原告A3p4,原告A5p4,原告A10p6)。そこで,被告Hは,「土地買増分」(本件買増料)として,原告A3から合計319万4000円(平成23年11月26日に95万円,同26年2月26日に224万4000円。 甲ハ6,7,8p3),原告A5から合計255万3000円(平成23年11月27日に76万円,同26年2月23日に179万3000円。甲チ5,6,8p3),原告A10から合計397万6000円(平成23年11月22日に200万円,同26年2月24日に197万6000円。甲カ7,8,10p3)をそれぞれ受領した(乙C1p2,3,被告Hp3,31)。 その結果,原告A3及び原告A5は,減歩されることなく従前地と同様の面積の替地 6年2月24日に197万6000円。甲カ7,8,10p3)をそれぞれ受領した(乙C1p2,3,被告Hp3,31)。 その結果,原告A3及び原告A5は,減歩されることなく従前地と同様の面積の替地を取得し(甲ハ1,甲チ1),原告A10は,希望する70坪の替地を取得した(甲カ1)。もっとも,他方で,本件買増料等の金員を支払うことなく,従前地と同様の面積の替地を取得した者もいた(甲38,被告Hp30〜32)。 地権者原告らが本件開発事業により取得した替地の面積は,別紙減歩一覧表「不動産契約による替地面積(㎡)」欄記載のとおりであり(原告番号11の「A8」を「B」と,同17-1,17-2の「A20」を「C」と読み替える。),これを地権者原告らの従前地の面積と比較した場合の土地交換比率は,同別紙「不動産契約による交換率」欄記載のとおりとなる(甲3- 41 -8,弁論の全趣旨)。 ⑹ 被告Hは,地権者原告らを含む本件地権者らとの交渉にあたり,数名の者から譲渡所得税は課されるのかとの質問を受けたが,自己のこれまでの土地開発の経験で,譲渡所得税を課されたことがなかったため,課税されることはないと回答していた(被告Hp5,41)。 被告矢作建設のFは,本件地権者らのうち替地を取得した者について交換特例の適用があるかもしれないと考え,この点を確認するため,α税務署や監査法人トーマツ(以下「トーマツ」という。)に問い合わせるなどした。 これに対し,α税務署やトーマツから明確な回答がなかったことから,Fは,この点の取扱いをO弁護士に相談したところ,O弁護士から,本件不動産契約書の中に本件課税文言を明記し,本件不動産契約締結の際に,本件課税文言を読み上げて,本件地権者らの署名押印をもらうようにとアドバイスを受けた。(甲31,乙A36p5, ,O弁護士から,本件不動産契約書の中に本件課税文言を明記し,本件不動産契約締結の際に,本件課税文言を読み上げて,本件地権者らの署名押印をもらうようにとアドバイスを受けた。(甲31,乙A36p5,6,Fp32)⑻ 被告矢作建設は,本件地権者らとの契約締結に向けて,各種書類を準備し,平成23年9月末頃,本件不動産契約書のひな形を作成した。このひな形には,本件地権者らとの契約内容に応じて3つのパターンがあり,被告矢作建設は,これらのひな型を,事前に被告H及び被告アラキ開発に送付するとともに(乙A36p4,証人Ep12,被告Hp27,28,被告アラキ開発代表者p4),本件地権者らのうち事前に交付を希望した原告A2及び原告A16に対して送付した(乙A36p4,原告A2p17,18,原告A16p6)。 また,被告矢作建設のFやEらは,本件地権者らとの本件不動産契約の締結に向けて,K,L,被告Hらとの間で,数回の打合せを行うとともに,被告環境設計は,地権者原告らを含む本件地権者らへの連絡,日時の調整等を行っていった(乙A36p5,証人Ep2,11,16,証人Fp10,36,55,56,被告アラキ開発代表者p4,14,被告Ip3,弁論の全- 42 -趣旨)。 ⑼ 被告矢作建設と本件地権者らとの間の本件不動産契約の締結は,別紙契約締結日一覧表記載のとおりの日時,場所で行われた(ただし,原告A11及び原告A12との間の本件不動産契約の締結は,平成23年10月30日,自宅において行われた)。このうち,本件集会所での契約締結日は,平成23年10月26日,28日,29日,30日の4日間で,本件集会所には,あらかじめ複数の机が準備され,来所した本件地権者から順次本件不動産契約の締結手続がなされた。その際,E外の被告矢作建設の従業員, 3年10月26日,28日,29日,30日の4日間で,本件集会所には,あらかじめ複数の机が準備され,来所した本件地権者から順次本件不動産契約の締結手続がなされた。その際,E外の被告矢作建設の従業員,被告環境設計の従業員及び司法書士が応対した。また,本件地権者らのほとんどは,上記従業員らと面識がなかったことから,被告H及び被告Iも,本件集会所に赴いていた。本件集会所以外の場所で本件不動産契約が締結された場合も,被告矢作建設の従業員,被告環境設計の従業員,司法書士,被告H,被告Iが対応していた。(乙A29,37ないし39,乙C1p4,5,乙C2p3,4,証人Ep1,5,6,証人Gp8,11,被告環境設計代表者p9,10,被告Hp3,7,8,被告Ip4〜6)⑽ 原告A2は,平成23年10月23日,当時の単身赴任先である栃木県θで,本件不動産契約を締結した。その際,同所まで赴いたのは,被告環境設計代表者のK,司法書士及び被告Iであった。原告A2は,本件不動産契約を締結した場合,譲渡所得税が課されるのではないかと危惧していたことから,本件不動産契約を締結するにあたり,被告Iに対し,自己に課せられる譲渡所得税を被告Hらが負担することを求めた。そこで,被告Iは,その旨を電話で被告Hに連絡したところ,被告Hは,原告A2が本件不動産契約の締結に応じなければ,本件開発事業が遂行できず,これまでの努力が無駄になると考え,原告A2の要求に応じるよう指示した。被告Iは,そのことを原告A2に伝え,後日,その旨を記載した文書を送付することを約し,原告A2は,本件不動産契約書に署名押印した。そして,被告H及び被告Iは,- 43 -原告A2に対し,「替地にかかる税金を支払うことを確約します」と記載された平成23年10月26日付けの「確約書」(甲ロ5の2)を 動産契約書に署名押印した。そして,被告H及び被告Iは,- 43 -原告A2に対し,「替地にかかる税金を支払うことを確約します」と記載された平成23年10月26日付けの「確約書」(甲ロ5の2)を送付した。 (甲ロ5の1,2,12p5,13p1,乙A38p2,3,乙C1p4,乙C2p2,3,原告A2p10,被告Hp6,7,被告Ip6,7)⑾ η税務署やα税務署等は,平成26年11月頃から,地権者原告らを含む本件地権者らに対し,従前地の譲渡について譲渡所得税を課す旨の連絡をし(甲31),連絡を受けた本件地権者らは,被告Hあるいは被告Iに連絡した。そこで,被告Hは,平成26年12月4日,弁護士である原告A16に連絡の上,面会し,上記課税について訴訟の提起に協力してほしい旨の打診を受けた。しかし,原告A16は,当時,α税務署から課税の連絡を受けていなかったこともあって,これを断り,被告矢作建設に相談するよう述べるにとどまった。被告Hは,連絡を受けた本件地権者らに対し,税金を支払ってはいけないなどと述べるとともに,自ら税務署に赴いて,課税の理由について問いただすなどした。(甲31,甲ナ32,34p11〜13,原告A16p16,17,被告Hp39〜41)⑿ 地権者原告らは,本件不動産契約に係る譲渡所得税として,それぞれ別紙公租公課一覧表の「国税」及び「地方税」欄記載の金額を納付するとともに,同表「延滞税」及び「加算税」欄記載の各金額を納付した(前提事実)。 2 争点⑴(被告矢作建設の注意義務違反)について⑴ 土地開発業者としての注意義務違反についてア原告らは,一般に土地開発事業において,地権者らは,事業計画の全体を知り,他の地権者の契約内容と比較考量するのでなければ,契約締結の可否を判断することができないこと, 意義務違反についてア原告らは,一般に土地開発事業において,地権者らは,事業計画の全体を知り,他の地権者の契約内容と比較考量するのでなければ,契約締結の可否を判断することができないこと,地権者原告らを含む本件地権者らと被告矢作建設との間には情報格差があることをもって,被告矢作建設は,信義則上,本件開発事業の計画全容を地権者原告らに対して説明する義務を負っていたと主張する。 - 44 -前記認定事実にあるように,被告アラキ開発及び被告矢作建設は,平成23年5月14日及び同年9月17日の2回にわたって本件地権者らに対する説明会(本件各説明会)を開催し,第1回説明会において,出席者に資料(乙A11,12)を配布するとともに,「α区β町計画案」と題する説明図面(乙A13),「α区β町開発事業計画案」と題する工程表(乙A14)を展示し,本件開発事業について説明し,第2回説明会においても,「説明図面」(乙A19)及び「α区β町開発事業計画スケジュール」と題する工程表(乙A20)を展示して,本件開発事業について説明している。 ところで,前記前提事実及び認定事実によれば,本件開発事業は,法律に従ってなされる土地区画整理事業等と異なり,本件開発事業区域内に土地を有する本件地権者らと開発事業の主体との間の不動産取引契約を基本とするものである。そして,上記の契約締結までの間に,被告Hらが,本件地権者らと個別に交渉して,従前地の売却について承諾を得,その売却代金を決めるとともに,替地の取得を希望する本件地権者については,替地の地目,位置,面積等について個別の交渉を通じて承諾を得,これらについて本件地権者ら全員の承諾を得た時点で,本件地権者らと本件開発事業の主体である被告矢作建設との間で本件不動産契約を締結するというものであ 位置,面積等について個別の交渉を通じて承諾を得,これらについて本件地権者ら全員の承諾を得た時点で,本件地権者らと本件開発事業の主体である被告矢作建設との間で本件不動産契約を締結するというものである。また,証拠(甲イないしウの各1,甲ホ7,甲リ7,甲ワ8,甲タ4,甲ラ10,証人P,原告A1,原告A2,原告A3,原告A4,原告A5,原告A7,原告A8,原告A9,原告A10,原告A11,原告A20,原告A13,原告A15,原告A16,原告A18,原告A19,被告H)によれば,地権者原告らと被告Hらとの交渉において,地権者原告らが他の本件地権者らの契約内容を意識していた事情はうかがわれないこと,むしろ,証拠(原告A2p21,原告A9p8,9,18~21,原告A11p8~14)によれば,地権者原告らの中には,もっぱら- 45 -従前地と同程度の条件の替地を求めて,被告Hらとの交渉に臨んでいた者がいたことが認められる。してみると,地権者原告らを含む本件地権者らにとって本件不動産契約を締結する上で重要な要素となるのは,従前地の売却価格や替地の内容(地目,位置,面積等)であって,他の本件地権者の従前地の評価や替地の内容等を比較考量した上で本件不動産契約を締結するかどうかを判断するという関係にはなかったと考えられる。 したがって,被告矢作建設に,信義則上,本件開発事業の計画全容を地権者原告らに対して説明する義務があったとは認め難く,地権者原告らを含む本件地権者らへの説明としては,本件各説明会における説明で足りるというべきである。 イ原告らは,被告矢作建設は,被告Hらによる譲渡所得税についての誤った情報(交換特例の適用がある)や土地交換比率に関する誤った情報(本件替地基準による)を認識していたから,地権者原告らに対し,これらの 原告らは,被告矢作建設は,被告Hらによる譲渡所得税についての誤った情報(交換特例の適用がある)や土地交換比率に関する誤った情報(本件替地基準による)を認識していたから,地権者原告らに対し,これらの情報を是正する義務を負っていたと主張する。 しかし,すでに認定判示したように,本件不動産契約を締結するまでの本件地権者らとの交渉は,すべて被告Hらが行っていて,これについて被告矢作建設が関与した事実はないから,被告矢作建設が,被告Hらと本件地権者らとの交渉過程において,課税や土地交換比率の説明内容を認識していたとは考えられず,このことを認めるに足りる証拠もない。 したがって,被告矢作建設に上記の誤った情報を是正する義務があったとは認められない。 ウ以上によれば,被告矢作建設に,土地開発業者としての注意義務違反は認められない。 ⑵ 譲渡所得課税についての説明義務違反についてア原告らは,被告矢作建設は,本件不動産契約について交換特例が適用されないことを知っていたか,容易に知り得,また,所得税基本通達33-- 46 -6の6,33-6の7の存在を知っていたから,地権者原告らに対し,課税関係を調査して,税務当局と交渉し,その結果を知らせる義務があったと主張する。 前記認定事実にあるように,被告矢作建設は,本件不動産契約についても交換特例の適用があるかもしれないと考え,α税務署やトーマツに問い合わせをしたものの,いずれからも明確な回答を得られず,この点の取扱いについてO弁護士に相談し,O弁護士のアドバイスを得て,本件不動産契約書の中に本件課税文言を付加し,本件不動産契約締結の際に,本件地権者らの署名押印をもらっている。そして,本件不動産契約について譲渡所得税を課すかどうかは,税務当局が判断することであるから,被告矢 契約書の中に本件課税文言を付加し,本件不動産契約締結の際に,本件地権者らの署名押印をもらっている。そして,本件不動産契約について譲渡所得税を課すかどうかは,税務当局が判断することであるから,被告矢作建設が交換特例の適用がないことを知っていたとか,容易に知り得たとは到底いえない。また,譲渡所得税が課されるかどうかは,本来,納税者において調査判断すべき事柄であるから,被告矢作建設が所得税基本通達33-6の6,33-6の7の存在を知っていたからといって,そのことから直ちに税務当局と交渉したり,その結果を知らせるべき義務が被告矢作建設に生じるものでもない。 したがって,被告矢作建設に上記原告ら主張の義務を認めることはできない。 イこれにつき,証拠には,本件課税文言について,読まないまま署名押印した(原告A3p6,7,甲ホ7p3,原告A4p5,原告A5p6,原告A8p11,原告A10p5,甲タ4p2,原告A13p4,甲ラ10p3,原告A18p7)旨の,読んだものの,譲渡所得税が課されるとは思わなかった(原告A2p9,10,甲リ7p4,原告A9p16~18,甲ワ8p2,3,原告A11p6,7,原告A20p6,7,原告A15p7,原告A16p8,原告A19p15,16)旨の供述がある。 しかし,証拠(甲イないしウの各1)によれば,本件課税文言はわずか- 47 -4行で,本件課税文言が記載された書面に他の文章は記載されていないこと,地権者原告らはいずれもその直下に署名押印をしていることが認められるから,本件課税文言に対する地権者原告らの対応が上記の供述内容どおりであったとしても,このことをもって,被告矢作建設に上記原告ら主張の義務が課せられているとは認め難い。 ⑶ 土地交換比率についての説明義務違反について の対応が上記の供述内容どおりであったとしても,このことをもって,被告矢作建設に上記原告ら主張の義務が課せられているとは認め難い。 ⑶ 土地交換比率についての説明義務違反について原告らは,被告矢作建設は,実際の土地比率が,被告Hらによって事前に示された本件替地基準と全く異なり不公平なものであることを知っていたか,容易に知り得たから,そのことを地権者原告らに説明すべき義務があると主張する。 前記認定事実にあるように,被告Hは,本件各説明会や個々の本件地権者らとの交渉において,本件替地基準を示していたことが認められる。 しかし,他方,前記認定事実にあるように,本件地権者らの従前地は,地目,面積,場所等様々であり,本件開発事業によって本件地権者らが取得する替地も同様に様々であるから,従前地と替地の面積だけを比較して,本件替地基準と実際の土地交換比率が異なることを理由に,その結果が不公平なものであるとはいえない。 また,すでに認定判示したように,地権者原告らを含む本件地権者らにとって本件不動産契約を締結する上で重要な要素となるのは,従前地の売却価格や替地の内容(地目,位置,面積等)であって,他の本件地権者の従前地の評価や替地の内容等を比較考量した上で本件不動産契約を締結するかどうかを判断するという関係にはなかった。 さらに,被告矢作建設は,被告Hらと本件地権者らとの個別の交渉を通じて,本件地権者らが承諾した内容に従って本件不動産契約書を作成し,本件地権者らとの間で本件不動産契約を締結しているにすぎず,被告Hらと本件地権者らとの交渉過程や交渉内容について何ら関与していない。 - 48 -したがって,被告矢作建設に,実際の土地交換比率が本件替地基準と異なることを地権者原告らに説明すべき義務はない。 ⑷ 権者らとの交渉過程や交渉内容について何ら関与していない。 - 48 -したがって,被告矢作建設に,実際の土地交換比率が本件替地基準と異なることを地権者原告らに説明すべき義務はない。 ⑷ 本件確認書等についての説明義務違反について原告らは,本件確認書で「登記権利者」とのみ記載され,その後,登記簿上の登記原因が「売買」とされているのに対し,本件原告ら契約書に「交換」と記載されていることについて,不動産登記法上の真実性に反するもので,被告矢作建設には,地権者原告らに対し説明義務があると主張する。 前提事実にあるように,地権者原告が作成した本件確認書には「登記権利者」と記載され,登記簿上の登記原因が「売買」となっているのに対し,本件原告ら契約書には「交換」と記載されているものがある。 証拠(証人Fp47)及び本件不動産契約書【共通】第5条によれば,被告矢作建設は,当初から,本件地権者らから取得した従前地を第三者に売却することを予定し,本件確認書も,上記【共通】第5条に従って作成されたものであることが認められるから,本件確認書は,地権者原告らを含む本件地権者らに対し,被告矢作建設の契約上の地位が誰に移転するかを確認してもらうためのものにすぎず,本件不動産契約によって生じた本件地権者らの権利関係に影響を与えるものではない。 また,不動産登記法上の真実性から,直ちに,不動産取引の一方当事者が他方当事者に対する説明義務を負うものでもない。 したがって,被告矢作建設に,地権者原告らに対し,本件確認書の記載と本件原告ら契約書の記載との違いについて説明する義務はないし,本件確認書の記載と登記簿上の登記原因との違いについても説明する義務はない。 3 争点⑵(被告環境設計の注意義務違反)について⑴ 土地利用・開発コンサル の違いについて説明する義務はないし,本件確認書の記載と登記簿上の登記原因との違いについても説明する義務はない。 3 争点⑵(被告環境設計の注意義務違反)について⑴ 土地利用・開発コンサルタントとしての説明義務違反について原告らは,建設コンサルタントの専門業者である被告環境設計には,地権者原告らに対し本件開発事業全体を説明する義務ないし被告矢作建設に説明- 49 -会等を開くようアドバイスをする義務があると主張する。 前提事実にあるように,被告環境設計は,被告矢作建設との間で業務委託契約を締結し,①都市計画法に基づく開発許可取得業務,②農地法に基づく農地転用ほか必要な業務,③敷地測量,④登記業務を委託されているにすぎないから,建設コンサルタントの専門業者であることをもって,地権者原告らを含む本件地権者らに対し,本件開発事業全体を説明したり,被告矢作建設に説明会等を開くようアドバイスをする立場にはない。 また,すでに判示したように,地権者原告らを含む本件地権者らに対する本件開発事業の説明としては,被告アラキ開発及び被告矢作建設が開催した本件各説明会における説明内容で足り,さらに,それ以上の説明を被告環境設計が行わなければならないとする法的根拠もない。 したがって,被告環境設計に,地権者原告らに対する本件開発事業全体を説明する義務ないし被告矢作建設に説明会等を開くようアドバイスをする義務はない。 ⑵ 本件原告ら契約書の記載と登記原因との違いに係る不動産登記法の真実性確保義務違反及び説明義務違反について原告らは,被告環境設計には,本件不動産契約締結の際,本件不動産契約書に記載された登記原因と明らかに異なる登記原因証明情報を作成することについて,不動産登記法上の真実性を確保し について原告らは,被告環境設計には,本件不動産契約締結の際,本件不動産契約書に記載された登記原因と明らかに異なる登記原因証明情報を作成することについて,不動産登記法上の真実性を確保し,地権者原告らに本件原告ら契約の締結を検討させるため,自ら地権者原告らに説明し,あるいは,自己が手配した司法書士に説明させるべき義務があると主張する。 しかし,すでに判示したように,不動産登記法上の真実性から,何らかの説明義務が直ちに導かれるわけではないし,被告環境設計が被告矢作建設から委託された業務の内容からしても,地権者原告らを含む本件地権者らに対する説明義務が認められるものでもない。 したがって,被告環境設計は,地権者原告らに対し,本件不動産契約書に- 50 -記載された登記原因と明らかに異なる登記原因証明情報を作成することについて説明義務を負うものではなく,また,司法書士に説明させる義務を負うものでもない。 ⑶ 土地交換比率の不公平についての説明義務違反について原告らは,被告環境設計が,実際の土地交換比率と本件替地基準との違いを認識していたから,この点について地権者原告らに説明すべきであると主張する。 しかし,すでに判示したように,地権者原告らを含む本件地権者らにとって,他の本件地権者の従前地の評価や替地の内容等は,本件不動産契約を締結するにあたって重要な要素ではなく,被告環境設計が被告矢作建設から委託された業務の内容からしても,地権者原告らを含む本件地権者らに対する説明義務が認められるものでもない。 したがって,被告環境設計は,地権者原告ら対し,実際の土地交換比率と本件替地基準とが異なっていることについて説明すべき義務を負うものではない。 ⑷ 譲渡所得課税についての説 もない。 したがって,被告環境設計は,地権者原告ら対し,実際の土地交換比率と本件替地基準とが異なっていることについて説明すべき義務を負うものではない。 ⑷ 譲渡所得課税についての説明義務違反について原告らは,被告環境設計が,建設コンサルタントの専門業者で,名古屋市との折衝や本件地権者らの従前地の所有権移転登記手続に関与し,本件地権者らの窓口になっていたことをもって,譲渡所得課税について説明すべきであると主張する。 しかし,すでに判示したように,被告矢作建設が交換特例の適用について調査検討し,税務当局やトーマツから明確な回答が得られず,O弁護士の指示で本件不動産契約書に本件課税文言を付加していること,被告環境設計が被告矢作建設から委託された業務の内容等からすれば,被告環境設計に,被告矢作建設が行ったこと以上の説明をすべき義務があるとは認め難いし,被告環境設計が建設コンサルタントの専門業者で,本件地権者らの窓口となっ- 51 -ていることをもって,上記の説明義務が導かれるものでもない。 したがって,被告環境設計は,地権者原告ら対し,譲渡所得税について説明すべき義務を負うものではない。 なお,証拠(原告A18p7)には,被告環境設計のGが,譲渡所得税はかからないとの説明を行った旨の供述がなされているが,すでに判示したような被告環境設計の委託業務の内容に照らせば,上記供述内容の信用性には疑問があり,これを採用することはできない。 4 争点⑶(被告アラキ開発の注意義務違反)について⑴ 宅建業者としての注意義務違反について原告らは,被告アラキ開発は,地権者原告らに対し,宅建業法35条1項,5項に基づき,本件不動産契約書の重要事項について説明する義務を負うとともに,信義誠実 者としての注意義務違反について原告らは,被告アラキ開発は,地権者原告らに対し,宅建業法35条1項,5項に基づき,本件不動産契約書の重要事項について説明する義務を負うとともに,信義誠実義務(宅建業法31条1項)に基づき,宅建業法35条1項に列挙されていない重要事項について説明義務を負い,さらに,宅建業法37条1項,3項に基づき書面の交付義務を負っているにもかかわらず,これを怠ったと主張する。 前提事実にあるように,被告アラキ開発は,被告矢作建設との間で業務委託契約を締結しているだけで,地権者原告らを含む本件地権者らとの間で不動産取引に係る媒介契約等を締結したわけではない。 また,前記前提事実及び前記認定事実によれば,被告アラキ開発は,当初,本件開発事業の主体として予定されていたものの,本件地権者らと本件開発事業の主体との間で契約が締結されるまでは,もっぱら被告Hらが本件地権者らとの交渉を担当し,被告アラキ開発がこれに関与することはなく,しかも,本件集会所での第1回説明会の時点で,本件開発事業の主体は,アラキ開発から被告矢作建設に変更されていた。 したがって,被告アラキ開発は,原告らが主張する上記宅建業法上の義務を負うものではない。 - 52 -⑵ 被告矢作建設との業務委託契約に基づき被告矢作建設から委託された地権者原告らに対する説明義務違反について原告らは,被告アラキ開発は,被告矢作建設との間の業務委託契約で「土地の売買,生産緑地等の農地,宅地の交換により生じる,交換場所,面積および課税等の説明と承諾を得る業務」を受託しているから,これらについて説明する義務を負っていると主張する。 しかし,上記業務委託契約は,被告矢作建設と被告アラキ開発との間で締結されているか よび課税等の説明と承諾を得る業務」を受託しているから,これらについて説明する義務を負っていると主張する。 しかし,上記業務委託契約は,被告矢作建設と被告アラキ開発との間で締結されているから,業務の一部である説明義務も,被告矢作建設に対するもので,上記業務委託契約をもって,直ちに地権者原告らに対する説明義務が生じるものではない。 また,前記前提事実及び前記認定事実によれば,本件地権者らと本件開発事業の主体との間で契約が締結されるまでは,もっぱら被告Hらが本件地権者らとの交渉を担当し,被告アラキ開発がこれに関与することはなく,しかも,本件集会所での第1回説明会の時点で,本件開発事業の主体は,アラキ開発から被告矢作建設に変更されていた。 したがって,被告アラキ開発は,原告らが主張するような説明義務を負っていたとはいえない。 ⑶ 本件確認書等についての説明義務違反について原告らは,不動産契約の媒介業者である被告アラキ開発には,本件不動産契約書と本件確認書の記載が変更されていること(「交換」から「売買」)について,地権者原告らに対する説明義務があると主張する。 しかし,本件不動産契約書は,地権者原告らを含む本件地権者らと被告矢作建設との間のもので,前記認定事実にあるように,本件確認書は,本件不動産契約書【共通】第5条に基づいて作成されたものである。また,被告アラキ開発は,地権者原告らを含む本件地権者らとの間で不動産取引に係る媒介契約等を締結したわけではない。 - 53 -したがって,被告アラキ開発は,地権者原告らに対し,上記の記載の変更について説明する義務を負うものではない。 5 争点⑷(被告H及び被告Iの注意義務違反)について⑴ 譲渡所得税を課されない旨の誤った説明を アラキ開発は,地権者原告らに対し,上記の記載の変更について説明する義務を負うものではない。 5 争点⑷(被告H及び被告Iの注意義務違反)について⑴ 譲渡所得税を課されない旨の誤った説明をした注意義務違反について原告らは,被告H及び被告Iが,地権者原告らに対し,本件不動産契約について交換特例の適用がないのに,交換特例が適用され,譲渡所得税を課されることはないと誤った説明をしたと主張する。 前記前提事実及び前記認定事実によれば,被告Hは,一部の本件地権者らに交換特例の適用があり,譲渡所得税を課されることはないと説明し,その後,地権者原告らは,税務当局から譲渡所得税を課されているため,結果として,被告Hの説明は誤っていたといえる。なお,証拠(原告A1p15,18,原告A2p8,17,甲タ4p1,2,原告A13p2,3,原告A4p6,原告A7p10)には,原告A1,原告A2,原告A12,原告A13,原告A4及び原告A7が被告Iから上記の説明を受けた旨の供述がなされているが,このことを裏付ける客観的な証拠はないから,それらを採用することはできない。 すでに判示したように,本件地権者らが本件不動産契約を締結した時点では,交換特例の適用があるかどうかは明らかではなく,地権者原告らを含む本件地権者らとの交渉を担当していた被告H及び被告Iが,交換特例の適否や譲渡所得課税について正確な説明をすることは不可能であったといわざるを得ない。また,被告Hは,土地開発において譲渡所得税を課されたことがないという自己の経験に基づき,本件開発事業においても譲渡所得税が課されることはないと認識し,上記のような説明をしていたところ,被告H及び被告Iは,不動産取引業者であって税の専門家ではなく,このことは,地権者原告らにとっても明 本件開発事業においても譲渡所得税が課されることはないと認識し,上記のような説明をしていたところ,被告H及び被告Iは,不動産取引業者であって税の専門家ではなく,このことは,地権者原告らにとっても明らかであったから,地権者原告らを含む本件地権者らに対し譲渡所得税等の税金について説明すべき立場にないと認められる。 - 54 -したがって,被告Hの譲渡所得税に関する説明が結果的に誤っていたとしても,そのことについて,被告H及び被告Iに説明義務等の法的義務を認めることはできない。 ⑵ 実際の土地交換比率が事前の基準と異なり,本件地権者らによってばらばらであることを秘匿した注意義務違反について原告らは,被告H及び被告Iには,実際の土地交換比率と被告Hが示した本件替地基準と異なることについて,地権者原告らに説明する義務があると主張する。 本件不動産契約は,本件地権者らのうち一人でも契約の締結に至らない場合には,他の本件地権者らとの契約もすべて無効になるが,すでに判示したように,本件地権者らの従前地は,その地目,面積,場所等様々であり,従前地の面積のみを基準とする本件替地基準どおりに替地を分配することはおよそ不可能なことであり,本件替地基準があくまでも目安であることは,本件地権者らも認識し得るところである。 また,本件不動産契約の締結に当たり,他の本件地権者の従前地の評価や替地の内容等が重要な要素でないことはすでに判示したとおりである。 したがって,被告H及び被告Iに,実際の土地交換比率が本件替地基準と異なることについて,地権者原告らに説明する義務があるとはいえない。 ⑶ 土地買増に際しての金員詐取についての注意義務違反についてア原告らは,被告Hが,原告A3ら3名に対し,本件買 異なることについて,地権者原告らに説明する義務があるとはいえない。 ⑶ 土地買増に際しての金員詐取についての注意義務違反についてア原告らは,被告Hが,原告A3ら3名に対し,本件買増料を受領する理由がないにもかかわらず,土地買増代金が必要であると虚偽の説明をし,本件買増料を支払わせたと主張する。 前記認定事実にあるように,被告Hは,本件地権者らのうち,本件開発事業を通じて替地を希望する者について,替地の地目,面積,場所等を決めていて,被告Hが決定したところに従って,本件地権者らと被告矢作建設との間で本件不動産契約が締結されていたこと,原告A3ら3名は,い- 55 -ずれも替地の面積の増加を希望し,被告Hは,原告A3ら3名が希望する面積の替地を確保していることが認められるから,本件買増料は,被告Hが原告A3ら3名の希望する面積の土地を確保することに対する対価とみることできる。 したがって,被告Hが原告A3ら3名に対して虚偽の説明をしたとはいえず,被告Hについて注意義務違反を認めることはできない。 イこれに対し,原告らは,本件開発事業区域内に土地を有しない被告Hには本件買増料を受領する資格がないし,本件地権者らの中には「買増料」を支払うことなく従前地と同様の面積の替地が確保されている者もいると主張する。 しかし,前記のように,本件買増料は,被告Hが原告A3ら3名の希望する面積の替地を確保したことに対する対価であって,被告Hが従前地の所有者であることを前提とするものではないし,本件地権者らの従前地の地目,面積,場所等は様々であるから,「買増料」を支払うことなく従前地と同様の面積の替地が確保されている本件地権者がいることをもって,被告Hによる本件買増料の受領が違法となるも 件地権者らの従前地の地目,面積,場所等は様々であるから,「買増料」を支払うことなく従前地と同様の面積の替地が確保されている本件地権者がいることをもって,被告Hによる本件買増料の受領が違法となるものでもない。 したがって,上記原告らの主張によっても,前記の判断を覆すものではない。 6 以上によれば,被告らについて,原告らが主張するような説明義務違反等を認めることはできず,争点⑸及び⑹について判断するまでもなく,原告らは,被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償を請求することはできない。 7 よって,原告らの請求はいずれも理由がないので,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部 - 56 - 裁判長裁判官末吉幹和 裁判官村松教隆 裁判官小宮思帆音
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