判決平成14年11月21日神戸地方裁判所平成13年(わ)第1041号,同第1120号,同第1374号強制わいせつ被告事件 主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中270日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 平成13年8月初旬ころの午後7時ころ,神戸市灘区A町a丁目b番c号所在のB温泉浴場内において,入浴中のX(当時17歳)に対して,にわかに劣情をもよおし,強いて同人にわいせつな行為をしようと企て,やにわに,同人の陰茎に手を伸ばし,手指でつかんで弄ぶなどし,第2 同月27日午後8時45分ころ,同市中央区C通d丁目e番f号所在のD湯浴場内において,入浴中のY(当時14歳)を認めるや,にわかに劣情を催し,強いて同人にわいせつな行為をしようと企て, 1 即時同所において,やにわに,Yの陰茎に手を伸ばし,手の平でさすってこれを弄ぶなどし, 2 同日午後9時ころ,Yを同区E通g丁目h番所在のE公園まで誘い出し,同所において,同人のももを手で押さえ,ズボンを引きずりおろすなどの暴行を加えた上,その陰茎を手指でつかんで口淫して弄ぶなどし,第3 同年9月6日ころの午後9時ころ,同区F町i丁目j番k号所在のG温泉浴場内において,同温泉に入浴中のZ(当時14歳)を認めるや,にわかに劣情をもよおし,強いて同人にわいせつな行為をしようと企て,同人の肩に手を回して引き寄せるなどの暴行を加えた上,その陰茎を手指でつかんで弄ぶなどし,もって,強いてわいせつな行為をしたものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,判示第1の被告人のX 引き寄せるなどの暴行を加えた上,その陰茎を手指でつかんで弄ぶなどし,もって,強いてわいせつな行為をしたものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,判示第1の被告人のXに対するわいせつ行為については,Xがこれに同意しており,同第2の事実について,被告人は,D湯でYに対しわいせつ行為をしたことはなく,D公園でのYに対するわいせつ行為については,Yがこれに同意しており,同第3の被告人のZに対するわいせつ行為については,Zがこれに同意していたとして,いずれの事実についても被告人が無罪である旨主張するので,以下,これらの点について補足して説明する。 2 判示第1の事実について(1) Xは,捜査段階の供述調書及び公判廷における証言(以下併せて「X供述等」という。)において,B温泉で被告人から判示のわいせつ行為を受けた状況等について述べているが,その内容は,具体的・詳細であって,格別不自然・不合理な点はない上,一貫しており,かつ,本件まで被告人と面識がなかったXが虚偽の供述等までして被告人を罪に陥れなければならない理由もないことからして十分信用することができる。 ところで,Xは,公判廷における証言の際,弁護人からの反対尋問に対し,B温泉でのわいせつ行為の後,そのまま被告人と別れたのではなく,場所を変えて,更に被告人の車の中で被告人と性行為を行った旨,捜査段階の供述調書やそれまでの公判廷での証言にはなかった事実を供述をしているところ,弁護人は,Xが車の中でも被告人と性行為を行ったのにこの事実を隠していたことによって,X供述等の信用性は否定されるべきであると主張する。しかしながら,Xは,車の中での性行為に対しこれに同意していたとは述べていない上,この事実が捜査段階の供述調書に記載されていない理由についても, ,X供述等の信用性は否定されるべきであると主張する。しかしながら,Xは,車の中での性行為に対しこれに同意していたとは述べていない上,この事実が捜査段階の供述調書に記載されていない理由についても,「途中まで話しましたが,刑事さんの計らいで,そこから先までは,きつかったら,もう風呂場のことだけで,もうそのことだけを裁判でやるから,もうそれ以上のことはいいからって言われました。」として,要するに,その被害内容が裁判で公になることがXにとって酷であることから,あえて供述調書に記載されなかった旨説明しているのであって,その説明は,その被害内容やXの心情等に照らすと合理的で納得しうるものであるから,弁護人の指摘する点をもってX供述等の信用性が否定されるものではない。 (2) これに対し,被告人は,公判廷において,Xに対するわいせつ行為については,Xがこれに同意していた旨供述するところ,その供述内容は,同意の具体的な状況自体曖昧である上,Xと被告人とは本件まで面識がなかったことなどに照らすと不自然であって,前記のX供述等と対比して信用することができない。 (3) よって,このX供述等を含む関係証拠を総合すると,判示第1のXに対する強制わいせつの事実はこれを優に認めることができる。 3 判示第2の事実について(1) Yは,捜査段階の供述調書及び公判廷における証言(以下併せて「Y供述等」という。)において,被告人からD湯で判示のわいせつ行為を受けた状況や,引き続きD公園でも判示のわいせつ行為を受けた状況等について述べているが,その内容は,具体的・詳細であって,格別不自然・不合理な点はない上,基本的部分において一貫しており,かつ,本件まで被告人と面識がなかったYが虚偽の供述等までして被告人を罪に陥れなければならない理由もないことからして十分信用 であって,格別不自然・不合理な点はない上,基本的部分において一貫しており,かつ,本件まで被告人と面識がなかったYが虚偽の供述等までして被告人を罪に陥れなければならない理由もないことからして十分信用することができる。 弁護人は,Yは,当初の供述調書(Yの警察官調書26,27参照)では,D湯におけるわいせつ被害を警察に供述しただけでD公園でのわいせつ被害を供述しておらず,D公園におけるわいせつ被害は,警察が被告人が持っていたカメラを現像しD公園でYが写っている写真(52号証中の資料1の写真番号32,以下「本件写真」という。)を見つけた後に供述を始めたものであるから,D公園におけるわいせつ被害に関するYの供述は信用できない旨主張する。しかしながら,弁護人が指摘する当初の供述調書は,捜査の初期にとられる概略的な調書であることはその記載自体によって明らかであって,そこにD公園におけるわいせつ被害の記載がないからといって,その後のD公園におけるわいせつ被害が記載された供述調書の信用性が格別減殺されるものではない。 次に,弁護人は,本件写真が,D公園において,Yが被告人からわいせつ行為をされた後に取られたものであることを前提に,その写真に写っているYはくつろぎの様子をしているから,D公園におけるわいせつ行為に同意していなかったというY供述等は信用できない旨主張する。しかしながら,Yは本件写真が撮られた時期について,警察官調書ではわいせつ行為の後であると述べていたが,その後の検察官調書及び公判廷ではわいせつ行為の前であると述べ,特に公判廷ではわいせつ行為の前であることで間違いなく,警察官調書の記載については「警察のやつ間違えとんちゃうか。」と述べていることからすると,果たして弁護人が主張する前提そのものが正しいか疑問がある上, 廷ではわいせつ行為の前であることで間違いなく,警察官調書の記載については「警察のやつ間違えとんちゃうか。」と述べていることからすると,果たして弁護人が主張する前提そのものが正しいか疑問がある上,本件写真自体からその前後いずれかにあったわいせつ行為に同意があったか否かを推認することも困難であるといわざるを得ない。 さらに,弁護人は,YはD公園で被告人からわいせつ行為を受けたことを隠すのと,Yの友人で被告人から同様にわいせつ被害にあったZを擁護するために,D湯におけるわいせつ行為というありもしない事実を持ち出したものである旨主張するが,前者は趣旨自体理解しがたく,後者も友人を擁護するために自分にとって恥ずかしい事実である同性からのわいせつ被害を作出するなどというのは,およそ不自然というほかない。 (2) これに対し,被告人は,公判廷において,D湯でYにわいせつ行為をしたことはなく,D公園でのわいせつ行為については,Yがこれに同意していた旨供述するところ,その供述内容は,例えば同意の点についてはYが「うん。」と言ったという程度のものに過ぎず,当時の具体的状況の下でYがわいせつ行為に同意していたとするには甚だ曖昧なものである上,Yと被告人とは本件まで面識がなかったことに照らし不自然であり,さらに,被告人は,捜査段階ではYなる人物自体記憶にないなどと供述し,公判段階では,第1回公判期日でYを知っていることを前提にYに対するわいせつ行為を否定する供述をしていたにもかかわらず,その後,D公園でのわいせつ行為についてその外形的事実だけは認めるに至るなど,その供述が再三変遷していることに照らしても信用性に欠けるものであって,前記のY供述等と対比して信用することができない。 (3) よって,このY供述等を含む関係証拠を総合すると,判示 に至るなど,その供述が再三変遷していることに照らしても信用性に欠けるものであって,前記のY供述等と対比して信用することができない。 (3) よって,このY供述等を含む関係証拠を総合すると,判示第2のYに対する強制わいせつの事実はこれを優に認めることができる。 4 判示第3の事実について(1) Zは,捜査段階の供述調書及び公判廷における証言(以下併せて「Z供述等」という。)において,被告人からG湯で判示のわいせつ行為を受けた状況等について述べているが,その内容は,具体的・詳細であって,格別不自然・不合理な点はない上,基本的部分において一貫しており,かつ,Zが虚偽の供述等までして被告人を罪に陥れなければならない理由もないことからして十分信用することができる。 弁護人は,Zの供述は,わいせつ被害に会った日がいつかについて極めて曖昧であり,特にZの検察官調書(6号証)ではG湯の定休日である9月8日がわいせつ被害に会った日であると供述しており,信用性がない旨主張する。しかしながら,Zにとって銭湯に行くこと自体は日常的なことであるから,わいせつ被害に会った日がいつかについて明確な記憶を欠いたり,多少の食い違いがあったとしても,Zが判示のわいせつ行為を受けたとする核心的部分の信用性に影響を及ぼすものではない。 次に,弁護人は,Zが友人のYに対し述べた被害事実は,判示のようなわいせつ被害ではなく,被告人からつきまとわれているといったストーカー的被害に過ぎないところ,Zが同意もしていないのに判示のわいせつ被害を受けたのであれば,より精神的苦痛の大きいわいせつ被害の方を打ち明けるのが自然であるから,Z供述等は信用できない旨主張する。しかしながら,Zが受けた被害内容は,友人に対してもいいにくい内容のものであることは明らかであ より精神的苦痛の大きいわいせつ被害の方を打ち明けるのが自然であるから,Z供述等は信用できない旨主張する。しかしながら,Zが受けた被害内容は,友人に対してもいいにくい内容のものであることは明らかであって,Zがその点を秘した上で,その後の被告人につきまとわれて困っていることについてのみ述べたとしても何ら不自然とはいえない。 さらに,弁護人は,Zは,G湯でわいせつ行為について同意したが,その後も会うことを求める被告人のしつこさに嫌悪感を抱くようになり,被告人との関係を絶つために,わいせつ行為についても同意がなかったと述べるようになった旨主張するが,このような理由で,自分にとっても恥ずかしい事実である同性からのわいせつ被害を作出し,これに公にしてまで被告人を罪に陥れるというのは,およそ不自然というほかない。 (2) これに対し,被告人は,公判廷において,Zに対するわいせつ行為については,Zがこれに同意していた旨供述するところ,その供述内容は,例えば同意があったとして述べるところは,Zがその場から逃れるために種々述べていると解した方が自然なものであって,当時の具体的状況の下でZがわいせつ行為に同意していたものとはみられない上,被告人は,捜査段階や第1回公判期日では,そもそもZに対するわいせつ行為自体を否定する供述をしていたにもかかわらず,その後,その外形的事実だけは認めるに至るなど,その供述が変遷していることに照らしても信用性に欠けるものであって,前記のZ供述等と対比して信用することができない。 (3) よって,このZ供述等を含む関係証拠を総合すると,判示第3のZに対する強制わいせつの事実はこれを優に認めることができる。 5 以上のとおりであって,弁護人の主張は,いずれも採用することができない。 (法令の適用) 1 罰条 証拠を総合すると,判示第3のZに対する強制わいせつの事実はこれを優に認めることができる。 5 以上のとおりであって,弁護人の主張は,いずれも採用することができない。 (法令の適用) 1 罰条いずれも刑法176条前段 2 併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条により犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重 3 未決勾留日数の算入刑法21条 4 訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,少年に対する強制わいせつ3件の事案である。この各犯行の罪質,動機,態様及び結果等,殊に,被告人は,同性愛者であるところ,自己の性欲を満たすために本件の各犯行に及んだとみられるのであって,この動機・経緯に酌むべき事情が認められないこと,犯行は約1か月の間に重ねて行われており,被告人にはこの種わいせつ事犯の犯罪性向が顕著であること,その態様も,少年を狙った悪質なもので,各被害者には何ら落ち度がないこと,各被害者が受けた精神的・肉体的苦痛は大きい上,同人らが多感な少年期にあることからすれば,同人らの今後に与える悪影響も懸念されること,しかるに,被告人が不合理な弁解に終始していること,以上を併せ考えると,本件の犯情は悪く,被告人の刑事責任は重いといわなければならない。 そうすると,被告人には前科前歴がないこと,その他記録上認められる被告人のために酌むべき諸事情を十分考慮しても,主文程度の刑はやむを得ないものと思料する。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役4年)平成14年11月21日神戸地方裁判所刑事第14係乙裁判官浦島高広 神戸地方裁判所刑事第14係 乙裁判官 浦島高広
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