平成20(行コ)84 建築許可処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第351号)

裁判年月日・裁判所
平成20年8月28日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文5,341 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴人ら(1)原判決を取り消す。 (2)主位的請求ア処分行政庁東京都知事が株式会社AB支社及び株式会社Cに対して平成18年8月29日付けでした建築基準法59条の2第1項に定める許可処分を取り消す。 イ処分行政庁東京都知事は前項の許可処分に係る建築物について建築主に対して建築工事の施工の停止を命ぜよ。 (3)予備的請求ア処分行政庁東京都知事が株式会社AB支社及び株式会社Cに対して平成18年8月29日付けでした建築基準法59条の2第1項に定める許可処分のうち,原判決別紙図面1のアイウエアの各点を順次直線で結んだ線で囲まれた範囲内の部分及び同図面のサシスセサの各点を順次直線で結んだ線で囲まれた範囲内の部分に係る部分を取り消す。 イ処分行政庁東京都知事は前項の許可処分に係る建築物の原判決別紙図面1のアイウエアの各点を順次直線で結んだ線で囲まれた範囲内の部分及び同図面のサシスセサの各点を順次直線で結んだ線で囲まれた範囲内の部分について建築主に対して建築工事の施工の停止を命ぜよ。 被控訴人主文と同旨第2事案の概要 事案の要旨本件は,被控訴人代表者兼処分行政庁東京都知事(以下「都知事」という。)が株式会社AB支社及び株式会社C(以下,両者を併せて「本件建築主ら」という。)に対して本件建築主らが建築を予定する原判決別紙物件目録記載の建築物(以下「本件建築物」という。)について,建築基準法59条の2第1項に定める総合設計許可処分(以下「本件許可処分」という。)をしたところ,本件建築物に係る敷地(以下「本件敷地」という。)の隣地に建築されている建築物(以下「控訴人ら建築物」という。)の一室に居住 1項に定める総合設計許可処分(以下「本件許可処分」という。)をしたところ,本件建築物に係る敷地(以下「本件敷地」という。)の隣地に建築されている建築物(以下「控訴人ら建築物」という。)の一室に居住し,又はこれを所有する控訴人らが,本件建築物は控訴人らの日照,眺望,静謐かつ清浄な居住環境,プライバシー等を侵害するものであるから,本件許可処分は違法である旨主張して,被控訴人に対し,主位的に,本件許可処分の取消し及び都知事が本件建築物について本件建築主らに対して建築工事の施工停止命令をすることの義務付けを求め,予備的に,本件許可処分のうち原判決別紙図面1のアイウエアの各点を順次直線で結んだ線で囲まれた範囲内の部分(以下「本件西端住戸部分」という。)及び同図面のサシスセサの各点を順次直線で結んだ線で囲まれた範囲内の部分(以下「本件駐車場部分」といい,両者を併せて「本件各特定部分」という。)に係る部分の取消し並びに都知事が本件建築物の本件各特定部分について本件建築主らに対して建築工事の施工停止命令をすることの義務付けを求める事案である。 原審は,控訴人らの本件請求を棄却したので,これを不服とする控訴人らが控訴をした。 前提事実は,次のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の2(原判決3頁18行目から6頁19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。但し,原判決4頁2行目の「及び原告D」を削除し,同頁4行目の「3階,5階及び7階」を「3階及び5階」と改める。 争点及びこれに関する当事者の主張の要旨は,原判決「事実及び理由」欄の 「第2事案の概要」の3及び4(原判決6頁20行目から14頁20行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3当裁判所の判断 当裁判所も,控訴人らは,いずれも本 及び理由」欄の 「第2事案の概要」の3及び4(原判決6頁20行目から14頁20行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3当裁判所の判断 当裁判所も,控訴人らは,いずれも本件建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住し,又は居住しようとしている者ということができるから,本件許可処分の全部の取消し及び本件建築物の建築工事の施工停止命令の義務付けを求める原告適格を有するというべきであるが,控訴人らの本件主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,控訴理由にかんがみ次項のとおり付言するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第3争点に対する判断」の1及び2(原判決14頁22行目から28頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。但し,原判決18頁17行目から18行目にかけての「原告Dの住戸に対し,南側につき日の出から午前9時30分ころまで,東側につき日の出から午前10時ころまで,」,同23頁6行目の「,原告Dの住戸につき約4時間30分」をいずれも削除する。 控訴人らの当審における主張について(1)判断手法について控訴人らは,建築基準法59条の2第1項の許可要件のうち,「特定行政庁が交通上,安全上,防火上及び衛生上支障がなく,かつ,その建ぺい率,容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認められること」との要件の有無についての判断は,同項の立法事実及び立法趣旨を踏まえた解釈,適用を前提として判断すべきであり,行政庁の自由な政策判断に任せるべきものではなく,むしろ,行政庁の行政裁量の余地はないと考えるべきである旨主張する。 もとより,上記の要件の判断は行政庁の自由裁量に属するものではなく,行政庁は同 り,行政庁の自由な政策判断に任せるべきものではなく,むしろ,行政庁の行政裁量の余地はないと考えるべきである旨主張する。 もとより,上記の要件の判断は行政庁の自由裁量に属するものではなく,行政庁は同項の規定の趣旨に沿ってその判断をすべきことは当然であり,そ こでは行政庁の専門的,技術的な裁量が合理的な範囲で認められるにすぎない。したがって,裁判所は,同項の規定の趣旨を踏まえて,行政庁のその点の判断が合理的裁量の範囲内のもので適法なものかどうかの司法審査をすることになるものであり,これと同趣旨の見解に基づいて,本件許可処分の司法審査を行った原判決の判断手法に違法な点はない。 (2)本件許可処分の違法性についてア控訴人らは,総合設計の許可にあたって考慮されるべきなのは,建築物の建築基準法上の日影規制への適合ではなく,当該建築物の建築前の周辺住民の日照と当該建築物の建築後の日照とを比較して,重大な日照被害が生じているかどうかであるとし,周辺建物の自己日影部分を除いて日照被害の程度を考えることは許されない旨主張する。 しかし,控訴人らの主張によれば,隣地に建設されている既存のマンションの部屋の間取りいかんによって,当該建物の建築計画が「市街地の環境改善に資するか否か」の判断が左右されることになるが,それは,量的な空間規制により周辺の他の建築物を保護しようとする建築基準法59条の2第1項の規定の趣旨,目的に沿うものではない。控訴人らの上記主張は採用できない。 イ控訴人らは,総合設計制度を利用しない場合の1計画案を例に挙げて,総合設計制度を利用しないのであれば,敷地が有効利用されていても,本件建物の建築による場合ほどひどい日照被害は生じないと主張する。 しかし,本件許可処分は容積率制限のみを緩和するものであるところ,この場合に建築物が周辺の いのであれば,敷地が有効利用されていても,本件建物の建築による場合ほどひどい日照被害は生じないと主張する。 しかし,本件許可処分は容積率制限のみを緩和するものであるところ,この場合に建築物が周辺の特定の場所へ与える日影は,当該建築物の規模だけでなく,形態,配置等といった設計のバリエーションによっても大きく異なるものであり,容積率の制限緩和が直ちに控訴人らの住戸への日照の侵害に結びつくものとはいえないというべきである。 ウ控訴人らは,本件駐車場部分にはスプリンクラーが設置されておらず, 建築基準法59条の2第1項に規定する「防火上の支障がない」との要件に反する旨主張する。 しかし,本件駐車場部分に法令上スプリンクラーの設置が義務付けられていないことは,前記引用に係る原判決判示のとおりである。そして,本件駐車場は,消防法施行令13条に定める防火対象物に当たるから,別の消火設備が設置されることになっている。控訴人らの上記主張は採用できない。 (3)行政の判断形成過程の適否について控訴人らは,処分行政庁は,周辺住民が指摘した本件建物の建築により生ずる種々の問題点について,何らの改善指導も行うことなく,周辺の建築物における日照,通風,採光等を良好に保つなどの快適な居住環境を確保できるようにするという建築基準法59条の2第1項の趣旨を顧みることなく本件許可処分を行ったものであって,本件許可処分には考慮すべき点を考慮しなかった違法があると主張する。 しかし,本件建築主らは,本件建築物の建築により生ずる問題点の指摘を受けて,以下のとおり種々の配慮をしており,弁論の全趣旨によれば,被控訴人は本件建築主らのこうした対応をも考慮に入れて本件許可処分を行ったものと認められる。 すなわち,本件建築主らは,日照被害に関しては,近隣住民の意見を汲み,①控訴 おり,弁論の全趣旨によれば,被控訴人は本件建築主らのこうした対応をも考慮に入れて本件許可処分を行ったものと認められる。 すなわち,本件建築主らは,日照被害に関しては,近隣住民の意見を汲み,①控訴人ら建築物に係る敷地は,建築基準法上,日影規制又は北側斜線制限による保護が及ばない区域であるが,本件敷地の北側の区域のうち,道路境界線からの距離が30m以上の区域の日影規制(用途地域が準工業地域,容積率が200%,高度地区の指定が第3種である〔乙8の4枚目〕ため,冬至において,敷地境界線から5mを超え10m以内の範囲については4時間以上の日影を,10mを超える範囲については2.5時間以上の日影をそれぞれ生じさせないこと(建築基準法別表第4の3項,本件条例別表第1の5 項))を考慮し,上記の北側の区域と同じ日影規制が本件敷地の隣地にもあると想定し,控訴人ら建築物に係る敷地と接する本件敷地の西側については,冬至において,本件建築物による4時間以上の日影を発生させる範囲が敷地境界線から5mの範囲におおむね収まるようにし(乙15),②本件建築物の居住棟部分の西端から5戸までの部分については,控訴人らの住戸が位置する控訴人ら建築物の東端部分と同じ7階建てとするとともに,本件建築物の居住棟部分の西端住戸(本件西端住戸部分)を,他の住戸と比べて北側に2m後退させ(乙14)たほか,控訴人ら建築物と本件建築物の間の敷地境界線からの離隔距離が,控訴人ら建築物では約3mであるのに対し,本件建築物では約6mとする(乙14)など,本件建築物については,控訴人らの住戸に対する日照阻害の程度が著しくならないよう,併せて,眺望阻害も少なくなるよう配慮をしていることが認められる。 また,本件建築主らは,本件駐車場部分による被害に関しても,近隣住民と協議した結果に基づき,① る日照阻害の程度が著しくならないよう,併せて,眺望阻害も少なくなるよう配慮をしていることが認められる。 また,本件建築主らは,本件駐車場部分による被害に関しても,近隣住民と協議した結果に基づき,①本件駐車場部分から本件敷地と控訴人ら建築物に係る敷地の間の境界線までの離隔距離として約6mを確保し(乙14,16),②本件駐車場部分の騒音対策として走路部分に騒音が発生しにくい床仕様を採り入れ(乙16),プライバシー対策及び光害対策として本件駐車場部分にルーバー状の壁を設置する(乙16)などの配慮をしていることが認められる。 そして,本件許可処分が建築基準法59条の2第1項の規定の趣旨に反する違法なものといえないことは,前記引用に係る原判決判示のとおりであって,控訴人らの上記主張は理由がない。 (4)予備的請求について控訴人らは,本件許可処分のうち本件各特定部分に係る部分については,それぞれ独自の違法性が存在しており,したがって,少なくとも,本件許可処分のうち本件各特定部分に係る部分の取消し及び本件各特定部分について の建設工事の施工停止命令の義務付けをを求める請求は認容されるべきである旨主張する。 しかし,本件許可処分が違法といえないことは前記引用に係る原判決判示のとおりであり,そうである以上,本件許可処分の一部に違法がないことは明らかであり,控訴人らの主張は採用できない。 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部裁判長裁判官青柳馨裁判官井上哲男裁判官長久保守夫 裁判官 長久保守夫

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