主文 一原告の請求を棄却する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第一請求被告が平成六年一〇月七日付けで原告に対してした、亡Aの平成三年分の所得税に係る決定及び無申告加算税賦課決定(ただし、いずれも平成七年六月五日付け更正又は変更決定により取り消された部分を除く。)を取り消す。 第二事案の概要本件は、被告が、亡A(平成三年三月二〇日死亡。)から原告に対する遺贈を所得税法五九条一項一号に規定する資産の譲渡とみなし、かつ、右遺贈は包括遺贈であるとして、国税通則法(以下「通則法」という。)五条に基づき、原告に対して平成六年一〇月七日付けでした亡Aの平成三年分の所得税に係る決定(ただし、平成七年六月五日付け更正により取り消された部分を除く。以下「本件決定」という。)及び無申告加算税賦課決定(ただし、平成七年六月五日付け変更決定により取り消された部分を除く。以下「本件賦課決定」といい、本件決定と合わせて、「本件各処分」と総称する。)につき、原告が、所得税法の右規定は本件に適用がないか、亡Aからの遺贈は租税特別措置法(以下「措置法」という。)に規定する非課税事由に該当し、あるいは、右遺贈は特定遺贈であったとして、本件各処分の取消しを求めた事案である。 一関係法令の定め 1 所得税法は、法人に対する遺贈により、譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、その者の譲渡所得の金額の計算については、遺贈の効果が発生した時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなしており(同法五九条一項一号。以下「みなし譲渡所得課税」という。)、同法の規定の適用に当たって、人格のない社団等は法人とみなされている(同法四条)。 2 みなし譲渡所得課税の適用については、民法三四条の規定により 九条一項一号。以下「みなし譲渡所得課税」という。)、同法の規定の適用に当たって、人格のない社団等は法人とみなされている(同法四条)。 2 みなし譲渡所得課税の適用については、民法三四条の規定により設立された法人その他の公益を目的とする事業を営む法人(以下「公益法人等」という。)に対する財産の贈与又は遺贈(以下「贈与等」という。)で、当該贈与等が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについては、当該財産の贈与等がなかったものとみなすこととされており(措置法四〇条一項後段)、右要件として、租税特別措置法施行令(平成四年政令第八七号による改正前のもの。以下「措置令」という。)二五条の一五第二項は、①当該贈与等が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること、②当該贈与等に係る財産が当該贈与等があった日以後二年以内に、当該財産を受けた法人の当該贈与等に係る公益を目的とする事業の用に供され、又は供される見込みであること、③公益法人等に対して財産の贈与等をすることにより、当該贈与者若しくは遺贈者の所得に係る所得税の負担を不当に減少させ、又は当該贈与者若しくは遺贈者の親族その他これらの者と相続税法六四条一項に規定する特別の関係がある者の相続税若しくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められることを挙げている。 なお、以下において、平成五年法律第六八号による改正前の措置法四一条の一六、平成三年法律第一六号附則七条により従前の例によることとされた同法律による改正前の措置法三一条及び三一条の四の各規定は、いずれも「措置法」の下に各条文番号を付して引用する。 3 通則法五条一項は、包括遺贈 年法律第一六号附則七条により従前の例によることとされた同法律による改正前の措置法三一条及び三一条の四の各規定は、いずれも「措置法」の下に各条文番号を付して引用する。 3 通則法五条一項は、包括遺贈があった場合には、包括受遺者は、その包括遺贈者に課されるべき国税を納める義務を承継する旨規定している。 二争いのない事実等 1 当事者等(甲第五号証の一、二、第六号証)(一) 原告は、大正一一年に創立された政党であり、政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律(平成六年法律第一〇六号。平成七年一月一日施行。以下「政党法人格付与法」という。)に基づき、法人格を取得した(平成七年四月一二日登記)が、それ以前は法人格なき社団として、所得税法四条により、同法の規定の適用に当たっては、法人とみなされていたものである。 (二) 亡Aは、戦前の原告の中央幹部であり現在もなお原告内部において原告の歴史上重要な人物の一人として位置付けられているB(昭和九年二月一九日死亡。)の妻であり、別紙物件目録(一)記載の土地、建物及び借地権(以下「本件各不動産」と総称する。)を有し、同目録記載一2の建物をB記念A学習館(以下「学習館」という。)とし、その運営を原告に任せていたものであるが、平成三年三月二〇日死亡した。 (三) Cは、亡Aの妹であり、亡Aの相続人の一人であるが、別紙物件目録(二)記載一の建物(以下「C所有建物」という。)を所有し、そこに居住していたものである。 2 亡Aの遺言書作成(甲第二号証の一ないし三、証人小林亮淳)亡Aは、平成二年一二月二四日、当時、原告中央委員会法規対策部嘱託の立場にあった東京法律事務所所属の弁護士である原告訴訟代理人小林亮淳(以下「小林弁護士」という。)に相談の上、C及び原告に財産を遺贈する旨の内容を含む別紙「 日、当時、原告中央委員会法規対策部嘱託の立場にあった東京法律事務所所属の弁護士である原告訴訟代理人小林亮淳(以下「小林弁護士」という。)に相談の上、C及び原告に財産を遺贈する旨の内容を含む別紙「遺言書」のとおりの遺言書(甲第二号証の二。以下においては、右遺言書を「本件遺言書」と、本件遺言書による亡Aの遺言を「本件遺言」と、本遺言による亡Aの原告に対する財産の遺贈を「本件遺贈」という。)を作成し、小林弁護士に預けた。なお、本件遺言書において、「妹」として表示されているのはCのことであり、「妹名儀の建物」として表示されているのはC所有建物のことである。また、本件遺言書において遺言執行者として指名されているDは、原告の設置する社会科学研究所の責任者の地位にあるものである。 本件遺言書については、平成三年七月二九日、東京家庭裁判所において、検認が行われている(同裁判所平成三年(家)第○○号遺言書検認審判事件)。 3 亡Aの相続人全員による遺産分割協議書の作成(甲第七号証の一ないし三、同号証の五、第八号証の二ないし五、同号証の七ないし九、第九号証の一ないし五、第一〇号証、第一五号証)亡Aの相続人全員(七名)は、平成四年八月二〇日付けで、本件各不動産を含む亡Aの遺産に属するすべての積極財産及び消極財産につき、Cが取得する旨の遺産分割協議書(甲第一五号証。以下「本件遺産分割協議書」という。)を作成し、Cは、本件各不動産のうち、亡A名義の表示登記のみがなされているもの(別紙物件目録(一)記載一1ないし3の各建物)についてはC名義で所有権保存登記を、亡A名義で所有権保存登記あるいは所有権移転登記が経由されているもの(同目録記載一4の建物、同二の各土地)についてはC名義で相続を原因とする所有権移転登記をそれぞれ経由した。 4 原告とCとの間の覚書の作 義で所有権保存登記あるいは所有権移転登記が経由されているもの(同目録記載一4の建物、同二の各土地)についてはC名義で相続を原因とする所有権移転登記をそれぞれ経由した。 4 原告とCとの間の覚書の作成(甲第三号証の一ないし三、第七号証の一ないし三、同号証の五、第八号証の二ないし五、同号証の七ないし九、第九号証の一ないし五、第一〇号証、証人小林)(一) 原告とCは、平成五年九月一六日、亡Aの遺言に基づいた遺産処理のため、次の内容の覚書を締結した(甲第三号証の一。以下「本件覚書」という。)。 なお、本件覚書には、遺言執行者の代理人として、東京法律事務所所属の弁護士永盛敦郎及び同小木和男の記名捺印がなされている。 (1) Cは、亡Aの遺産(その内訳は、本件各不動産、現金七一七万〇一二四円、預金合計二一一万三二〇七円、動産、未収入金合計五四万二〇八三円、債務合計一五三五万八九〇四円。)のうち、別紙物件目録(一)記載二1、2の各土地のうち、別紙図面記載イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、イの各点を順次直線で結んだ範囲内の土地(別紙物件目録(二)記載二の各土地に該当。以下「C取得土地」という。)及び現金四一六万一六〇四円を相続として取得し、亡Aの葬儀費用四一六万一六〇四円を負担する。 (2) 原告は、その余の遺産を取得し、亡Aの債務を負担する。ただし、別紙物件目録(一)記載三の借地権及びその地上建物(同目録記載一1、2の各建物に該当。)については地主の承諾を得ることとし、承諾料は原告の負担とする。 (3) この遺産処理に関して要する費用は原告の負担とする。 (4) 原告はCに対し、この遺産処理に関する解決金として三六〇〇万円及び遺産処理に係る費用の立替金として三〇〇四万五九〇二円の合計六六〇四万五九〇二円を支払うこととし、内金四〇〇〇万円を平成五 。 (4) 原告はCに対し、この遺産処理に関する解決金として三六〇〇万円及び遺産処理に係る費用の立替金として三〇〇四万五九〇二円の合計六六〇四万五九〇二円を支払うこととし、内金四〇〇〇万円を平成五年九月二二日限り、残金二六〇四万五九〇二円を同月末日限り、それぞれCの預金口座に送金して支払う。 (二) 本件覚書に付帯して、平成五年九月一六日付けで、原告は、Cに対し、原告が本件遺贈により遺産を取得したことによりC及び亡Aの相続人にみなし譲渡所得課税による所得税課税がなされた場合には、本件覚書に基づいた相続税の変動も含めて計算した結果の増税分を原告において負担し、かつ、右増税分を原告が負担することによって生ずるCらの一時所得による所得税課税分も原告が負担する旨の念書(甲第三号証の二。以下「本件念書」という。)を作成して、差し入れた。 (三) 原告は、本件覚書に基づき、C取得土地を分筆した上、当時原告は法人格なき社団であり登記名義人となれなかったため、原告の管理部門の責任者であったE名義で、本件各不動産のうちC取得土地を除いた土地、建物につき、真正な登記名義の回復を原因として、所有権移転登記を経由した。 5 本件各処分及びこれに対する不服申立ての経緯(甲第一号証)本件各処分及びこれに対する不服申立ての経緯は、別表1記載のとおりであり、その詳細は次のとおりである。 (一) 被告は、亡Aの原告に対する別表2記載の土地、借地権及び建物(本件各不動産からC取得土地を除いた残りのもの。以下「本件土地等」という。)の遺贈について、亡Aに課税の対象となる資産の譲渡があったものとみなし、これによって亡Aが負担すべきこととなった納税義務を、原告が亡Aから包括遺贈を受け、承継したものと認定し、原告に対し、平成六年一〇月七日、課税総所得金額〇円、課税分離長期一般譲渡 ったものとみなし、これによって亡Aが負担すべきこととなった納税義務を、原告が亡Aから包括遺贈を受け、承継したものと認定し、原告に対し、平成六年一〇月七日、課税総所得金額〇円、課税分離長期一般譲渡所得三億九七三四万五〇〇〇円、課税分離長期軽課譲渡所得二億三一三三万二〇〇〇円、納付すべき所得税額一億三〇〇三万六〇〇〇円とする決定及び右納付すべき税額に係る無申告加算税を一九五〇万四五〇〇円とする賦課決定をした。 (二) 原告は、平成六年一一月一五日、異議申立てをしたが、平成七年二月一四日棄却されたため、同年三月一三日、国税不服審判所長に対して審査請求をした。 (三) 被告は、平成七年六月五日、課税分離長期一般譲渡所得三億七七一九万六〇〇〇円、課税分離長期軽課譲渡所得二億一七九九万七〇〇〇円、納付すべき所得税額一億二二九九万八五〇〇円とする更正(右更正により取り消された部分を除く平成六年一〇月七日付け決定が本件決定である。)及び右納付すべき税額に係る無申告加算税を一八四四万八五〇〇円とする変更決定(右変更決定により取り消された部分を除く平成六年一〇月七日付け無申告加算税賦課決定が本件賦課決定である。)をした。 (四) 国税不服審判所長は、平成八年三月一二日、原告の審査請求を棄却する旨の裁決をしたため、原告は、同年六月一〇日、本件各訴えを提起した。 6 本件各処分における亡Aの平成三年分の所得税額、無申告加算税額算出の根拠(一) 総所得金額三〇七万七九七九円右金額は、平成三年分の不動産所得の金額であり、不動産所得の収入金額三七二万〇五〇〇円から不動産所得の必要経費六四万二五二一円を控除して算出したものである。 (二) 分離課税の長期譲渡所得の金額本件遺言の効力が生じた亡Aの死亡の日を時価評価の基準日とすると、みなし譲渡所得課税の対象となる 所得の必要経費六四万二五二一円を控除して算出したものである。 (二) 分離課税の長期譲渡所得の金額本件遺言の効力が生じた亡Aの死亡の日を時価評価の基準日とすると、みなし譲渡所得課税の対象となる分離課税の長期譲渡所得の金額は、分離長期一般譲渡所得金額(措置法三一条一項)五億八三四一万七五〇四円と分離長期軽課譲渡所得金額(措置法三一条の四第一項)二億一七九九万七三二五円からなり、右各金額算出の経緯は、別表3及び別表4記載のとおりである。 なお、原告は、原告が本件土地等につき移転登記を経由した日を時価評価の基準日とすべきものと主張する。 (三) 納付すべき税額一億二二九九万八五〇〇円右金額は、前記(一)、(二)の所得金額に対して、亡Aが納付すべき税額であり、その算出の経緯は別表5記載のとおりである。 なお、右算出の経緯中の寄付金控除(別表5記載順号⑤)において適用した措置法四一条の一六の規定は、政治資金規正法三二条の二に基づき設けられた規定であり、個人が同法四条四項に規定する政治活動に関する寄付をした場合には、当該寄付に係る支出金のうち政党等に対するもので、同法一二条又は一七条の規定による報告書により報告されたもの等は、所得税法七八条二項に規定する特定寄付金とみなして、同条一項、措置法三一条五項二号により、総所得金額と分離課税の長期譲渡所得金額との合計額の一〇〇分の二五に相当する金額から一万円を控除して算出した金額を所得控除の対象とするものである。 (四) 無申告加算税額の根拠原告は、亡Aの平成三年分の所得税につき、確定申告書を提出していなかったので、被告は、本件決定の結果、新たに納付すべきこととされた所得税額に、通則法一一八条三項、六六条一項を適用して、無申告加算税の額一八四四万八五〇〇円を算定した。 三争点 1 本件土地等 なかったので、被告は、本件決定の結果、新たに納付すべきこととされた所得税額に、通則法一一八条三項、六六条一項を適用して、無申告加算税の額一八四四万八五〇〇円を算定した。 三争点 1 本件土地等の遺贈がみなし譲渡所得課税の対象となるか否か。 (原告)(一) 政党は、主権者である国民の意思を国政に媒介し、反映させるものであって、憲法が定める議会制民主主義に不可欠な、極めて高い公共性を有する存在であり、本件土地等の遺贈が、そのような政党である原告に対する政治献金の性格を持つことは明らかであるところ、次の点からも、現行法制が、個人による政治献金に関する限り、遺贈者側に租税の負担をさせないという基本的な立場をとっていることは明らかであり、みなし譲渡所得課税をするのは違法である。 (1) 政治資金規正法は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性を指摘し(同法一条)、同法は、いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することがないように適切に運用されなければならない(同法二条一項)と規定している。 (2) 政党に対する遺贈については、相続税法一二条一項三号の適用により、相続税の課税価格に算入されず、相続税が課税されないことは明らかであり、同法二一条の三第一項三号は、贈与について、同様の規定をしている。 (3) 政党に対する個人の政治献金については、措置法四一条の一六の規定により、所得税法七八条の寄付金控除の対象とすることを定めている。 (二) 譲渡所得課税とは、本来は、資産の譲渡の機会に実現する当該資産のキャピタル・ゲインに対して課税するものであるが、原告は、亡Aから遺贈された本件土地等については、亡Aの意思を生かし、政党活動に資するために利用するのであって、それらに含まれている未実現のキャピタル・ゲインに対して課税 対して課税するものであるが、原告は、亡Aから遺贈された本件土地等については、亡Aの意思を生かし、政党活動に資するために利用するのであって、それらに含まれている未実現のキャピタル・ゲインに対して課税すべき理由は全くなく、みなし譲渡所得課税の対象にはならないものというべきである。 (被告)(一) 憲法の定める議会制民主主義は、政党の存在を当然に予定しているということはできるが、さらに進んで、課税上、政党がどのように扱われるべきかについては、憲法における政党の位置づけからは、直ちに決定し得ないのであって、立法政策に委ねられた事柄であるといわざるを得ない。 (二) 政治資金規正法の趣旨は、政治活動の公明と公正を確保し、民主政治の健全な発達に寄与するために政治資金の収支を明らかにすることにあるところ、みなし譲渡所得課税は、対価を伴わない資産の移転の場合であっても、資産の値上がりにより、その資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、その資産の所有者に課税することにより、キャピタル・ゲインに対する無限の課税の繰り延べがなされることを防止する観点から設けられたものであるから、本件土地等の遺贈に関し、みなし譲渡所得課税を行うことは、何ら政治資金規正法の趣旨に反するものではないし、当該資産の移転が、現に増加益を私的に実現することを目的としているか否かということによって、みなし譲渡所得課税の可否が決定されるものではなく、この点は、政治資金に拠出する場合であっても同様である。 (三) 措置法四一条の一六の規定は、政治資金規正法三二条の二に基づき設けられたものであるが、すべての政治献金を所得税課税の対象外としているわけではなく、一定の要件を充足した場合に、政党への寄付金を所得税法七八条二項の「特定寄付金」と 治資金規正法三二条の二に基づき設けられたものであるが、すべての政治献金を所得税課税の対象外としているわけではなく、一定の要件を充足した場合に、政党への寄付金を所得税法七八条二項の「特定寄付金」とみなして、一定の限度で寄付金控除を認めているにすぎない。これも、政党への政治献金に対する課税をいかに取り扱うかについての立法政策の現われであり、かかる明文規定の範囲を超えて、遺贈による政治献金を一般的に所得税課税の対象外とすることは許されない。 (四) 原告の指摘する相続税、贈与税の非課税措置は、それぞれ、贈与等を受ける側の非課税措置を規定するものであって、譲渡する側に対する課税であるみなし譲渡所得課税に関してまで非課税の取扱いが認められるべきであるとすることはできない。 2 本件土地等の遺贈がみなし譲渡所得課税の対象となる場合、措置法四〇条一項の規定により非課税となるか否か。 (原告)仮に、本件土地等の遺贈がみなし譲渡所得課税の対象になるとしても、公益法人等に対する財産の遺贈に関するみなし譲渡所得課税の適用については、当該財産の遺贈がなかったものとする措置法四〇条一項が適用されると解すべきであり、政党の行う事業が同条項適用の要件である「公益の増進に著しく寄与すること」を満たすことは、政治資金規正法三条に規定する目的のために政党が行う事業がそれに該当する旨の国税庁通達(「贈与税の非課税財産(公益を目的とする事業の用に供する財産に関する部分)及び公益法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについて」(昭和三九年直審(資)二四)第1、2(1)リ及び相続税法基本通達21の3ー9(2))が認めるところであるから、国税庁長官の承認手続をまつまでもなく、当然に非課税とされるべきものである。 なお、所得税法五九条一項の適用に関しては「法人」の中に「法 続税法基本通達21の3ー9(2))が認めるところであるから、国税庁長官の承認手続をまつまでもなく、当然に非課税とされるべきものである。 なお、所得税法五九条一項の適用に関しては「法人」の中に「法人格なき社団」を含めながら、同条項の適用に関する措置法四〇条においては「法人」の中に「法人格なき社団」を含まないとすることは恣意的であり、失当である。措置法には、「法人格なき社団」の除外を明記した規定はなく、またこれを除外すべき合理的理由もない。また、租税法の通則を定めた基本法たる通則法は、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの(人格のない社団等)は、法人とみなして、この法律を適用する」と規定している(通則法三条)のであるから、個別税法にこれと異なる規定がない限りは、「法人」の概念に「人格のない社団等」が含まれると解するのが自然であり、所得税法四条は、このことを確認する趣旨にほかならない。 (被告)(一) 措置法四〇条一項の文理上、公益法人等には人格のない社団は含まれず、措置法には、所得税法四条、法人税法三条のような人格のない社団を法人とみなす旨の一般的なみなし規定はなく、むしろ、第三章法人税法の特例中の措置法四二条の四第一項に「青色申告書を提出する法人(人格のない社団等を含む。以下この章において同じ。)」というような個別的な規定を置いていることから考えると、措置法における「法人」には、特段の規定がない限り、人格のない社団は含まれないと解すべきである。また、所得税法四条の定義規定を措置法中の所得税法の特例に関する規定にそのまま準用することができないことは、措置法二条において措置法で使用する各用語の意義を各章ごとに規定していることから明らかである。さらに、通則法三条、四条についても、その規定の文言上、適用範囲を通則法に限定 用することができないことは、措置法二条において措置法で使用する各用語の意義を各章ごとに規定していることから明らかである。さらに、通則法三条、四条についても、その規定の文言上、適用範囲を通則法に限定しており、措置法を適用するに際し、右の通則法の各規定を適用することができないことも明らかである。 (二) 租税法律主義(憲法八四条)の派生原則である課税要件法定主義のもとでは、納税義務者、課税標準、徴税の手続はすべて法律に基づいて定められなければならないと同時に法律に基づいて定めるところに委せられていると解すべきであり(最高裁判所大法廷昭和三〇年三月二三日判決・民集九巻三号三三六頁)、納税義務の成立、内容は、もっぱら法律がこれを定めるものであって、課税庁側と納税者側との間の合意又は納税者側の一方的行為によって、これを動かすことはできないというべきである(最高裁判所第一小法延昭和四九年九月二日判決・民集二八巻六号一〇三三頁)ところ、特に、措置法は、それ自体特例措置を定めるための法律であるから、その中でいわば特典として定められた規定の解釈は、形式的に厳密に行われるべきであり、みだりにこれを拡張して解釈し、あるいはその類推適用を認めることは、税負担の公平を基礎とする合法性の原則からも許されないというべきであり、政党の持つ公共性のみを強調して、法人格なき社団であった原告に対する遺贈について、措置法四〇条一項に規定する公益法人等に対する遺贈と同様にみなし譲渡所得課税の適用を否定するような拡張解釈を行うことは許されない。 3 本件遺贈が包括遺贈と解されるか否か(原告が亡Aのみなし譲渡所得課税による所得税納税義務を承継するか否か。)。 (被告)本件遺贈が、包括遺贈か特定遺贈かということを判断するに当たっては、本件遺言書に用いられた文言のほか、諸般の事情か 告が亡Aのみなし譲渡所得課税による所得税納税義務を承継するか否か。)。 (被告)本件遺贈が、包括遺贈か特定遺贈かということを判断するに当たっては、本件遺言書に用いられた文言のほか、諸般の事情から亡Aの意思を解釈して、亡Aが原告に対し相続人と同一の権利義務を付与する趣旨に出たものかを検討した上で決定すべきところ、以上のとおり、亡Aは原告に対して、Cに取得させる財産以外のすべての亡Aの遺産につき、包括的に遺贈する意思であったものというべきであり、原告は、包括受遺者として、亡Aのみなし譲渡所得課税による所得税納税義務を承継している。 (一) 本件遺言書の文言本件遺言書の文面から看取される亡Aの意思は、CにはC所有建物の敷地と公道への通路部分の土地を遺贈し、Cが右各土地を実質的に取得するのに支障がないように配慮することを原告に求め、右各土地を除く亡Aのすべての相続財産を原告に遺贈するとの趣旨であったことは明らかである。 (二) 亡Aの家族状況亡Aの相続人となるべき者は、妹であるCと弟のほかは、兄の子らがいるのみであり、そのうち、Cが亡Aの自宅に隣接するC所有建物に居住しているほかは、それぞれ別の住所に居住し、亡Aとの関係も希薄であったことから、CがC所有建物の敷地と公道までの通路部分を必要とする以外は、亡Aの遺産により、生計を維持、確保しなければならない者も特に見いだせず、また、亡Aが本件遺言書により原告に遺贈した本件土地等は、亡Aの遺産全体の積極財産のほとんどの部分であることを考慮すれば、原告にほとんどの積極財産のみ遺贈し、代襲相続人などに消極財産を負担させることは到底亡Aの意思とは解し得ないのであるから、このことからも、亡Aの意思は、Cに遺贈する土地以外の積極、消極財産のすべてを原告に遺贈するものであったと解することができる。 消極財産を負担させることは到底亡Aの意思とは解し得ないのであるから、このことからも、亡Aの意思は、Cに遺贈する土地以外の積極、消極財産のすべてを原告に遺贈するものであったと解することができる。 (三) 受遺者らの財産取得状況原告とCとは、小林弁護士と同じ法律事務所に所属する遺言執行者代理人の立会いの上、本件覚書を締結しているが、本件覚書の前文には、亡Aの遺言に基づいて、亡Aの遺産処理のために作成するものである旨明確に記載され、その内容として、Cが取得するC取得土地及び現金を除き、亡Aのすべての遺産を原告が取得することが明記されている。このような本件覚書の内容は、原告及びC並びに遺言執行者が、亡Aの意思を、Cに取得させた財産以外の財産については原告に包括的に取得させるものであったと理解していたことを如実に示すものである。 (原告)包括遺贈は遺産の全部又は抽象的な割合で示される部分の遺贈であり、そうでない遺贈は特定遺贈であるところ、亡Aの原告に対する遺贈が、包括遺贈ではなく、特定遺贈であることは、次のとおり明らかであり、原告は、亡Aのみなし譲渡所得課税による所得税の納税義務を承継するものではない。 (一) 本件遺言書の解釈(1) 本件遺言書の趣旨及び作成目的亡Aが本件遺言書を作成した最大の理由は、学習館を引き続いて運営していくために、原告に寄付をして、その運営を任せることにあり、そのことを本件遺言書の前文に明記している。このように、本件遺言書作成の目的は、亡Aの財産の中から原告に寄付するものを特定することにあったのであり、このことは、本件遺贈が特定遺贈であることを端的に示している。 (2)不動産の遺贈について不動産の遺贈に関する本件遺言書の記載は、亡Aの所有していた不動産を、①Cに取得させる土地、②原告に寄付する学習館を含むそ 遺贈が特定遺贈であることを端的に示している。 (2)不動産の遺贈について不動産の遺贈に関する本件遺言書の記載は、亡Aの所有していた不動産を、①Cに取得させる土地、②原告に寄付する学習館を含むそれ以外の不動産という形で明確に区分し、特定したものであって、包括遺贈であることを窺わせるような要素はない。 (3) 不動産以外の財産、債務等について本件遺言書第二項の趣旨は、B関係の資料は原告に寄付をするという意味であって、現金、預貯金、債務等は、亡Aが小林弁護士に対して本件遺言書作成につき相談した際にも全く話が出ておらず、そもそも本件遺言書による遺言の対象となっていないものである。 (4) Cへの配慮を求めている点について亡Aは、本件遺言書第二項のなお書きの部分において、Cが本件遺言書第一項の土地について、実質的に取得できるよう原告に配慮を求めているが、これは、亡Aが原告に不動産とB関係の資料を寄付するに当たり、Cが相続した財産だけでは右土地の相続税が払えず、右土地を処分しなければならないといったことにならないよう原告の配慮を求めた、一種の負担付贈与であり、亡Aが原告に寄付する不動産とB関係の資料以外の財産は、Cら相続人が取得することを当然の前提としたものである。 (二) 亡Aの遺言執行の過程亡A死亡後の遺言執行の過程をみても、次のとおり、当事者は、本件遺贈が特定遺贈であることを前提とした行動をとっている。 (1) 亡Aの現金、預貯金、債務の処理については、本件覚書締結まで、原告は一切関わっておらず、すべてCにおいて処理していた。 (2) 本件覚書は、前記(一)において主張した本件遺言書の内容と矛盾する内容も含むものであるが、本件覚書は、本件遺言書を前提としつつ、遺産分割協議により亡Aの立場を包括的に承継したCに対して受贈者たる原告が 件覚書は、前記(一)において主張した本件遺言書の内容と矛盾する内容も含むものであるが、本件覚書は、本件遺言書を前提としつつ、遺産分割協議により亡Aの立場を包括的に承継したCに対して受贈者たる原告が亡Aの遺言の執行を実現することを求めて交渉した結果、締結されたものであり、たとえその中に亡Aの遺言とは異なる内容が含まれていても、原告に対する特定遺贈という本件遺言書の解釈に何ら影響を与えるものではない。 (3) 本件覚書においては、原告が取得する借地権付き建物について、地主の承諾を得ることとされており、現実に、原告は、平成六年一〇月一三日、地主から借地権譲渡の承諾書を取得し、その際、借地権付き建物二棟のうち一棟の借地権ともう一棟の底地権とを交換するという形で、原告が対価の支払をしているが、仮に、原告が包括遺贈により右借地権付き建物を取得したのであれば、地主の承諾は不要であるから、右条項は、当事者が特定遺贈を前提に本件覚書を作成したことを示すものにほかならない。 (4) 本件覚書においては、原告が解決金や立替金の名目で総額六〇〇〇万円余の負担をしているが、これは、Cとの間で遺言執行の問題を早期に解決するために、原告がCから要求された金額をすべて「呑む」形で解決したことによるものであり、原告に対する特定遺贈という本件遺言書の解釈に何ら影響を与えるものではない。 四証拠証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。 第三争点に対する判断一本件土地等の遺贈が、みなし譲渡所得課税の対象となるか否か(争点1)について 1 所得税法は、資産の譲渡による収入から取得費及び譲渡費用を控除した譲渡利益、すなわち当該資産の保有中の価値増加分(キャピタル・ゲイン)を譲渡所得とし(同法三三条)、その資産の帰属に変動が いて 1 所得税法は、資産の譲渡による収入から取得費及び譲渡費用を控除した譲渡利益、すなわち当該資産の保有中の価値増加分(キャピタル・ゲイン)を譲渡所得とし(同法三三条)、その資産の帰属に変動が生ずるのを機会に、その額を課税標準に算入し、その資産の所有者に課税することとしている(同法二二条二項二号。譲渡所得課税)が、右の譲渡所得課税は、年々蓄積された当該資産の増加益が所有者の支配を離れる機会に一挙に実現したものとみて、その機会にこれを清算して課税する趣旨のものであるから、その課税所得たる譲渡所得の発生には、必ずしも当該資産の譲渡が有償であることを要せず、同法三三条一項にいう「資産の譲渡」とは、有償無償を問わず資産を移転させる一切の行為をいうものと解すべきである(最高裁判所第三小法廷昭和四七年一二月二六日判決・民集二六巻一〇号二〇八三頁、同昭和五〇年五月二七日判決・民集二九巻五号六四一頁)。そして、譲渡所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とされている(同法三六条一項)ところ、資産の帰属に変動を生ずるもののうち現実の収入を生じない贈与等については、右の譲渡による収入すべき金額につき、贈与等の譲渡所得の基因となる資産の移転の事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額をもって、当該資産の譲渡があったものとみなして、譲渡収入金額を擬制することとしたのがみなし譲渡所得課税(同法五九条一項一号)である。もっとも、個人に対する贈与等においては、その資産の取得者に対して取得時の価額に着目して(相続税法一一条の二、二一条の二)、贈与税又は相続税の課税がされるものの、みなし譲渡所得課税の対象とはならず、右にみたキャピタル・ゲインそのものへの課税は当該取得者が当該資産を他に譲渡する段階 て(相続税法一一条の二、二一条の二)、贈与税又は相続税の課税がされるものの、みなし譲渡所得課税の対象とはならず、右にみたキャピタル・ゲインそのものへの課税は当該取得者が当該資産を他に譲渡する段階まで繰り延べられ、右の譲渡の段階で贈与等の時のキャピタル・ゲインを含めた収入が課税対象とされる(所得税法六〇条)。これに対して、法人に対する贈与等においては、譲渡者についてみなし譲渡所得課税が行われ、右のような譲渡所得課税の繰り延べはなく、法人が無償で譲り受けた資産に係る受贈益は益金に算入され(法人税法二二条二項)、後に当該資産を他に譲渡した段階においては、右受贈益に相当する額は当該譲渡収益に係る譲渡原価として損金に算入されることになる。 そして、法人格なき社団は、所得税法においては同法四条により法人とみなされるから、個人から法人格なき社団に対する贈与等はみなし譲渡所得課税の対象となると解すべきことになる(なお、法人格なき社団は、相続税法では同法六六条により個人とみなされるが、同条は法人格なき社団の資産の取得に着目するものであって、右に説示した個人への贈与等の規律に服するものではなく、法人格なき社団が後に当該資産を譲渡した段階では、所得税法においてのみならず、法人税法上も同法三条において法人とみなされているので、法人に対する贈与等におけるみなし譲渡所得課税の趣旨は法人格なき社団に対する贈与等についても妥当することになる。)。 2 本件土地等の遺贈に対するみなし譲渡所得課税の適用の有無本件遺言の効力が発生した平成三年三月二〇日当時、政党法人格付与法は未だ成立しておらず、原告は、法人格なき社団として存在していたところ、所得税法四条により、同法の規定の適用については法人とみなされていたのであるから、個人である亡Aが所得税法の規定の適用上法人とみな だ成立しておらず、原告は、法人格なき社団として存在していたところ、所得税法四条により、同法の規定の適用については法人とみなされていたのであるから、個人である亡Aが所得税法の規定の適用上法人とみなされる原告に対して本件土地等を遺贈した以上、遺贈者である亡Aについて、みなし譲渡所得課税の適用があるものというべきである。 3 この点につき、原告は、亡Aから原告に対する本件土地等の遺贈は、憲法の定める議会制民主主義に不可欠な、極めて高い公共性を有する政党に対する政治献金であるところ、これにみなし譲渡所得課税を適用することは、政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することがないように適切に運用されなければならないとする政治資金規正法の趣旨(同法二条一項)や政党に対する贈与等につき相続税、贈与税を課さないとしている相続税法一二条一項三号、二一条の三第一項三号、政党に対する個人の政治献金につき寄付金控除の対象としている措置法四一条の一六の各規定に示される個人の政党に対する政治献金について当該個人に租税負担をさせないという現行法制の基本的立場に反するものであり、受遺者たる原告により政党活動に利用される本件土地等に含まれている未実現のキャピタル・ゲインに対して課税すべき理由は全くないと主張する。 しかし、政党が課税上どのように扱われるべきものであるかということは、政党の憲法上の位置づけから直ちに結論が導かれる問題ではなく、立法政策に委ねられたものというべきであり、原告が指摘する税法の諸規定をもってしても、原告の主張を基礎付けることはできない。 すなわち、政治資金規正法は、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の ち、政治資金規正法は、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とするものであり(同法一条)、原告が指摘する同法二条は、同法の運用が、政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないように、適切になされなければならない旨を規定したにとどまり、政治資金への拠出について課税問題を生じさせない旨を規定するものではないから、本件土地等の遺贈につき、みなし譲渡所得課税を適用することが、政治資金規正法の趣旨に反するということはできず、原告が指摘する相続税法上の非課税措置は、受遺者、受贈者たる政党の取得した資産に係る相続税、贈与税課税の問題であって、遺贈者、贈与者のもとに存したキャピタル・ゲインに係るみなし譲渡所得課税とはその適用場面を異にするものというべきである。また、措置法四一条の一六の規定は、本件決定においても適用されたものであるが、政治資金への支出金を特定寄付金とみなして、その一定割合(所得税法七八条、措置法三一条五項二号)に相当する額を総所得金額等から控除するものであり、総所得金額等の算出過程におけるみなし譲渡所得課税の適用を排除するものではないから、右規定の存在をもって、右規定が定めている寄付金控除を超えて、個人による政党に対する政治献金の性質を有する遺贈について、みなし譲渡所得課税が許されないとの結論を導くことはできないものというべきである。そして、本件事案において亡Aにはキャピタル・ゲインが実現していないとの原告の主張は、亡Aに現実の収入が生じていないと なし譲渡所得課税が許されないとの結論を導くことはできないものというべきである。そして、本件事案において亡Aにはキャピタル・ゲインが実現していないとの原告の主張は、亡Aに現実の収入が生じていないとの趣旨であれば、かかる事態はみなし譲渡所得課税が当然の前提とするところであり、亡Aの下には譲渡所得の対象となる資産の増加益が存しなかったとの趣旨であれば、本件遺贈当時、本件土地等にはそれまでに蓄積された資産の増加益が含まれ、これが亡Aに帰属していたことは明らかであるから、いずれにせよ採用することはできず、かかるみなし譲渡所得課税が憲法に違反するものでないことは、その趣旨について既に説示したところから明らかである。 したがって、原告の右主張は、いずれも採用することはできない。 二本件土地等の遺贈が、措置法四〇条の規定により非課税となるか否か(争点2)について 1 措置法四〇条は、国等に対して財産を寄付した場合の譲渡所得等の非課税を規定するものであり、その場合の贈与等の相手は国、地方公共団体のほか公益法人等が含まれるが、公益法人等については、国税庁長官の承認が要件とされる。そして、この承認は、公益法人等の公益性を認定するものではなく、当該贈与等の目的の公益性を考慮してされるものであり(同条一項)、後に贈与等のされた財産が公益を目的とする事業の用に供されなくなったときは取消しも予定されているものであり、承認の方式については、措置令二五条の一五第一項が申請書の提出について規定している。 2 原告は、措置法四〇条一項に規定する公益法人等に法人格なき社団を含むと主張する。 しかし、措置法は所得税、法人税、相続税、贈与税及びその他国税についての特例を規定するものであり(措置法一条)、右各国税に関する法律における用語の意義を措置法において統一的に解釈するこ 張する。 しかし、措置法は所得税、法人税、相続税、贈与税及びその他国税についての特例を規定するものであり(措置法一条)、右各国税に関する法律における用語の意義を措置法において統一的に解釈することはできないことから、各国税について必要な定義規定を設けることとし、所得税法の特例を定める第二章における用語の意義については、所得税法二条の定義規定とは独立して、措置法自体において定義規定を設けている(措置法二条一項)のである。したがって、右のような措置法の性格及び措置法における用語の定義の仕方に鑑み、措置法第二章は、所得税法の特例を定めるものではあるが、そこでの用語の意義は、所得税法におけるそれと必然的に一致するというものではなく、措置法の規定に即して解釈すべきものであるそして、措置法四〇条一項が規定する公益法人等は、同条項上、「法人」であることとされており、措置法には、所得税法四条のように、人格のない社団等を法人とみなして措置法を適用する旨の規定は存しないのであるから、措置法四〇条一項の文理に照らして、亡Aから原告に対する本件土地等の遺贈が効力を生じた平成三年三月二〇日当時、未だ、法人格なき社団であった原告が、措置法四〇条一項に規定する公益法人等に該当するものとはいうことはできない。 なお、原告は、通則法三条を根拠として、人格のない社団等を法人とみなして措置法四〇条一項を適用すべきであると主張するが、通則法三条は、通則法の規定の適用に当たって、人格のない社団等を法人とみなす旨規定するものであり、措置法四〇条一項の適用に当たり、人格のない社団等を法人とみなす根拠とすることはできないものというべきである。 3 原告は、原告の政党としての高度な公共性に照らし、本件土地等の遺贈につき、措置法四〇条一項を適用すべき旨を主張する。 しかし、措置法 法人とみなす根拠とすることはできないものというべきである。 3 原告は、原告の政党としての高度な公共性に照らし、本件土地等の遺贈につき、措置法四〇条一項を適用すべき旨を主張する。 しかし、措置法は、本来ならば、所得税法等に基づき課せられる税負担等について、政策的考慮から、その軽減等を図るための特例を規定したものであるから、その適用に当たっては、規定を厳格に適用すべきものということができ、規定の文言から離れた拡張解釈や類推適用をすることは、そのような規定の文言から離れた拡張解釈や類推適用が課税実務上一般的に行われ、かえって、文言どおりに当該規定を適用することが、平等原則あるいは租税法律関係における信義則に違反するといった特段の事情が存しない以上、許されないものというべきであるところ、本件では右特段の事情が存在したという主張も立証もない。 したがって、原告が「法人」ではなかった以上、本件土地等の遺贈につき、措置法四〇条一項を適用する余地はないものというべきであり、このことは、原告が、政党として高度の公共性を有するものであるか否かによって左右されるものではないというべきである。 4 なお、仮に、本件土地等の遺贈につき、措置法四〇条一項の適用の余地があるとしても、本件遺贈につき、措置令二五条の一五第一項に規定する申請書が提出されていないことは当事者間に争いがないのであるから、いずれにしても、措置法四〇条一項の適用はないものというべきである。 この点につき、原告は、政党の行う事業が「公益の増進に著しく寄与すること」は、国税庁通達が認めるところであるので、国税庁長官の承認手続を経るまでもないと主張する。しかし、原告の指摘する通達は、いずれも、相続税法二一条の三第一項三号に規定する贈与税の非課税財産とされるための受贈者の事業の公益性に関するもの で、国税庁長官の承認手続を経るまでもないと主張する。しかし、原告の指摘する通達は、いずれも、相続税法二一条の三第一項三号に規定する贈与税の非課税財産とされるための受贈者の事業の公益性に関するものであるが、既に説示したとおり、国税庁長官の承認は、公益法人等の公益性に関するものではなく、当該贈与等の目的の公益性に関するものであるから、政党が「公益の増進に寄与するところが著しいと認められるものを行う者」に該当することをもって、直ちに、政党に対する遺贈について、国税庁長官の承認が不要となるものではない。 5 以上のとおり、本件土地等の遺贈については、措置法四〇条一項の適用はないものというべきである。 三本件遺贈が包括遺贈と解されるか否か(原告が亡Aのみなし譲渡所得課税による所得税納税義務を承継するか否か。)(争点3)について 1 包括遺贈とは、遺言者が、包括の名義で、その財産の全部又は一部を処分すること(民法九六四条)であり、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する(民法九九〇条)。したがって、法定相続人が存する場合にこの法定相続人と共に共同相続人としての権利義務を負担することとなる相続財産の一部の包括遺贈にあっては、相続分(民法八九九条)に対応する相続財産の割合的一部を指定して、その範囲に属する積極財産のみならず消極財産を包括して遺贈する形式が求められることとなる。ところで、遺言者がその財産の全部についての処分権に基づいて全部の包括遺贈をすることができることに照らせば、その財産の一部を特定遺贈又は分割方法の指定により特定人に取得させることとした上、相続開始により権利の移転を生ずる右特定遺贈又は分割方法の指定に係る特定財産を除く相続財産につき、積極財産のみならず消極財産を包括して、遺贈の対象とすることも可能というべきであり、この場合には 上、相続開始により権利の移転を生ずる右特定遺贈又は分割方法の指定に係る特定財産を除く相続財産につき、積極財産のみならず消極財産を包括して、遺贈の対象とすることも可能というべきであり、この場合には、「財産の一部」についての遺贈であるが、当該財産の範囲で、受遺者は被相続人の権利、義務を包括的に承継することになるから、「特定財産を除く相続財産(全部)」という形で範囲を示された財産の遺贈であっても、それが積極、消極財産を包括して承継させる趣旨のものであるときは、相続分に対応すべき割合が明示されていないとしても、包括遺贈に該当するものと解するのが相当である。 したがって、以下において、右のような包括遺贈の概念を前提として、本件遺贈が包括遺贈の趣旨でなされたものであるか否かにつき検討することとする。 2 本件遺贈が、包括遺贈の趣旨でなされたものであるか否かを検討するに当たっては、本件遺言書の文言その他諸般の事情から、遺贈者である亡Aの意思を解釈すべきところ、以下のとおり、本件遺贈は、包括遺贈の趣旨でなされたものと認めるのが相当である。 (一) 本件遺言書の文言及びその作成の経緯(1) 本件遺言書には、前文として、亡Aが残す学習館を将来永く存続させたいと希望し、そのために学習館の運営を原告に任せたいと考えて本件遺言をする旨が記載され、第一項には、亡A所有土地のうち、C所有建物の敷地とそこから公道までの二メートル幅の通路部分をCに遺贈する旨、第二項第一段落には、原告に対し本件遺贈をする旨、同第二段落には、Cが第一項記載の土地を実質的に取得できるよう原告において十分配慮することを願う旨、第三項には、遺言執行者としてDを指定する旨がそれぞれ記載されているところ、証拠(証人小林)によれば、本件遺言書は、亡Aからの原告に対する申入れに応じて、代々木病院に入 いて十分配慮することを願う旨、第三項には、遺言執行者としてDを指定する旨がそれぞれ記載されているところ、証拠(証人小林)によれば、本件遺言書は、亡Aからの原告に対する申入れに応じて、代々木病院に入院中の亡Aと面談した小林弁護士が、亡Aの意向を踏まえて作成した案文に、亡Aにおいて、右案文では空欄とされていた遺言執行者名を補充して、作成したものであり、その前文は、特に、亡Aの意向を明確にするという趣旨で本件遺言書に盛り込まれたものであること、小林弁護士は、亡Aと最初に一時間程度面談しただけで、その一週間後に二度目に亡Aと面談した際には、亡Aに本件遺言書の案文を示しているが、小林弁護士は、右案文作成に当たり、亡Aから亡A所有の不動産の概要を聴取したのみで、亡Aのその余の積極財産、消極財産の有無及び内容、C以外に誰が相続人となるのか、また相続人となるべき者の数などについては、亡Aから具体的に聴取しておらず、自らも一切調査していなかったこと、本件遺贈の対象となる亡A所有不動産について、小林弁護士あるいは原告において、本件遺言書の案文作成前はもちろんのこと、亡A死亡前には、登記簿謄本等を入手して調査したりしていなかったことが認められる。 (2)右事実関係に照らして検討するに、まず、本件遺言書においては、Cに取得させる財産の範囲は第一項において特定されているものということができるが、原告が取得することとなる財産は、「第一項を除く私の所有のすべての不動産及びB栄太郎記念塩沢学習館に納められている書籍やB栄太郎の手紙などは、すべて」と記載されているのであって、本件遺言書の文言からこれを特定することは困難であるところ、仮に、亡Aにおいて、原告に対し、学習館の運営にとって必要と考える財産のみを特定して原告に遺贈する意思であったとすれば、亡Aから相談を受けた 本件遺言書の文言からこれを特定することは困難であるところ、仮に、亡Aにおいて、原告に対し、学習館の運営にとって必要と考える財産のみを特定して原告に遺贈する意思であったとすれば、亡Aから相談を受けた弁護士であり、かつ、本件遺贈の受遺者である原告の中央委員会法規対策部嘱託の立場にあった小林弁護士としては、少なくとも、原告が取得すべき亡A所有の不動産の特定とその権利関係等の調査を行うものと考えられるところ、小林弁護士あるいは原告において、亡A死亡前には、そのような調査を全く行っていなかったことは前記認定のとおりである。 また、本件遺贈の目的は、特定の財産の移転を超え、学習館の運営を原告に委ねるというものであり、さらに、Cが第一項記載の特定土地を「実質的に」取得できるよう原告の配慮を求めているが、これが法的意味を有しない希望の表明であればいざ知らず、原告が派遣した小林弁護士が作成した案文に盛り込まれた趣旨が、相続に伴う負担、特に相続税の負担によりCの権利取得が困難となることを慮り、その場合には原告に一定の負担を求めた特定財産についての負担付き遺贈であったとすれば、その負担の内容が全く特定していないものというほかない。 右によれば、本件遺言書の文言から、原告に対する特定財産の遺贈を認めることは困難であり、原告に対して「寄付します」を修飾する副詞として「すべて」が用いられていることからすれば、むしろ、本件遺言の趣旨は、Cへ特定財産を遺贈し、その余の財産のすべてを原告に遺贈し、亡Aの相続に関する法律的、経済的あるいは事実上の問題の解決及び学習館の運営という後事一切を原告に託したものと解することができるのであるから、本件遺言書の文言はCが取得する土地を除く相続財産全部についての原告に対する包括遺贈と解することが相当である。 (3) この点につき、小 う後事一切を原告に託したものと解することができるのであるから、本件遺言書の文言はCが取得する土地を除く相続財産全部についての原告に対する包括遺贈と解することが相当である。 (3) この点につき、小林弁護士は、証人尋問において、小林弁護士が亡Aと最初に面談した際に、亡Aから、①学習館を原告において運営していってもらうために原告に寄付をしたい、その関係でその他の不動産を不動産収入等を含めて使ってほしい旨の発言及び②亡Aの現金等残したものとCが持っているもので相続税を払えるかどうか懸念している旨の発言はあったが、不動産及びB関係の資料以外の亡Aの積極財産及び消極財産については亡Aからの発言もなかったので、小林弁護士としては、亡Aは不動産とB関係の資料以外の財産については相続人が取得すると考えており、本件遺贈は特定遺贈の趣旨であると理解して、原告が取得する財産の特定のみを意識して本件遺言書の案文を作成して、亡Aに説明している旨供述する。 しかし、小林弁護士が供述している亡Aの発言のうち、前記①の発言については、亡Aの本件遺言書作成の一番の動機が、学習館の維持にあることは、本件遺言書の前文をみれば明らかであって、本件遺贈の趣旨が包括遺贈であることと矛盾するものではなく、また、本件遺贈の趣旨を特定遺贈と解することの根拠となるものでもない。 次に、前記②の発言については、亡Aとしては、本件遺言書作成の時点において、相続人となるべき者がC以外にも七名いること及び亡Aの財産に消極財産が含まれていることは認識していたものと推認されるところ、仮に、不動産及びB関係の資料以外の財産を相続人らに相続させるとした場合には、積極財産の大半をC及び原告が取得し、その余の相続人が債務を負担することになるが、亡Aがこのような事態を希望したとは考えられず、また、C以外 係の資料以外の財産を相続人らに相続させるとした場合には、積極財産の大半をC及び原告が取得し、その余の相続人が債務を負担することになるが、亡Aがこのような事態を希望したとは考えられず、また、C以外の相続人が相続放棄又は限定承認をすれば(なお、証拠(証人小林)及び本件遺言の執行過程に照らせば、原告及び亡Aは、C以外の相続人が権利主張をしないであろうことを予期していたものと推認される。)、Cの財産取得を確実ならしめるべき原告としては消極財産も承継しなければならないのであるから、右のような客観的状況を認識していた亡Aの合理的意思としては、積極財産、消極財産ともに原告にいったんその処分を委ねるとともに、原告が右積極財産をもってCの支払うべき相続税に充てるなどの原告の配慮を求めることとしたものとも解し得るものである。また、亡Aが積極財産及び消極財産の内容について言及しなかったことも、原告への遺贈対象及び原告が負担すべき内容が十分に特定されていないことに照らせば、単なる財貨の移転(寄付)としてではなく、Bに因む学習館の維持という目的のもとに公党として遺贈を受ける原告が包括的処理に任じたと解する理由とはなっても、本件遺贈が特定遺贈であったことを推認させるものではなく、小林弁護士が亡Aの相続を巡る右の客観的状況に関心を持たなかったとしても、亡Aの意思が特定遺贈であったことの根拠となるものではない。 そして、本件遺贈を特定遺贈の趣旨であると理解し、原告が取得する財産の特定のみを意識して本件遺言書の案文を作成し、その旨を亡Aに説明している旨の小林弁護士の供述については、右案文どおりの記載となっている本件遺言書の文言について検討説示したとおり、原告が取得すべき財産及び負担のあいまいさ、寄付に関する包括的副詞の使用法に照らし、法律的に特定遺贈ということを念 ついては、右案文どおりの記載となっている本件遺言書の文言について検討説示したとおり、原告が取得すべき財産及び負担のあいまいさ、寄付に関する包括的副詞の使用法に照らし、法律的に特定遺贈ということを念頭において作成された文章と解することは困難である。 なお、小林弁護士は、証人尋問において、本件遺言書の案文を作成した当時、みなし譲渡所得課税自体は知っていたが、政党にはかからないものと認識していた旨供述しているが、右のような理解に立てば、本件遺贈の趣旨が特定遺贈であれ包括遺贈であれ、原告に課税問題は生じないことになるから、本件遺言の趣旨について、特に意識して、本件遺言書の案文を作成しなければならないとの問題意識を有していたものとは解し難い。 したがって、前記小林弁護士の供述内容をもって、直ちに、亡Aが特定遺贈の趣旨で本件遺贈をしたものと解すべきものとはいえず、前記認定を覆すものではないというべきである。 (二) 本件覚書締結の経緯及び趣旨(1) 前記のとおり、原告とCとは、小林弁護士の所属する法律事務所の同僚である遺言執行者代理人弁護士も立会いの上、本件覚書を締結し、その際、原告はCに対して本件念書を差し入れているが、証拠(証人小林)によれば、亡Aからの相談を受けて本件遺言書作成に関与した小林弁護士も、原告からの相談に乗り、本件覚書締結に向けての原告とCとの交渉に立ち会っていることが認められる。また、遺言執行者代理人は、本件遺言の趣旨を実現すべく、同僚である小林弁護士から本件遺言書作成当時の亡Aと小林弁護士とのやりとりの内容等、亡Aの意思を推認する材料を収集し、それを遺言執行者代理人という立場から検討して、亡Aの意思を推し量っていたものと推認され、他方、小林弁護士も、本件遺言書作成に当たって、亡Aの相談を受けた弁護士として、可能な限り亡A る材料を収集し、それを遺言執行者代理人という立場から検討して、亡Aの意思を推し量っていたものと推認され、他方、小林弁護士も、本件遺言書作成に当たって、亡Aの相談を受けた弁護士として、可能な限り亡Aの意思が反映された内容の覚書となるよう努力していたものと推認される。しかも、本件覚書は、本件遺言に基づいた亡Aの遺産処理のための覚書であることを明記しているのであるから、その内容は本件遺言の趣旨に背馳するものではないと解されるのであって、Cが取得すべき土地を実質的に取得させるため、又は本件遺言の執行過程における調整として、本件遺言において予定された財産移転と異なる財産の移転が含まれているとしても、原告への遺贈の性質を変更させたものと解すべき事情は認められない。 (2)本件覚書によれば、Cは、亡Aの遺産のうち、C取得土地及びCが負担した亡Aの葬儀費用に相当する現金を取得し、その余の遺産については、亡Aの債務を含め、原告が取得するものとされ、さらに、原告はCに対して、立替金、解決金名目で合計六〇〇〇万円余を支払う旨の内容とされていることは前記のとおりである。そして、証拠(証人小林)及び弁論の全趣旨によれば、本件覚書において原告がCに支払うこととされている解決金、立替金の内容は、Cが処理した亡Aの債務関係、本件遺産分割協議書に基づく本件土地等のCへの所有権移転登記等の費用、Cが支払った相続税などであることが認められ、このことからすれば、相続手続費用のみならず、本件遺言書に明示されていない亡Aの債務関係は原告が承継することが前提とされていたものと解されるのである。また、右証拠によれば、右解決金、立替金の支払については、亡Aの死亡後Cにおいて管理しており、本件覚書において原告が取得することが明記された亡Aの現金、預金相当額と相殺勘定にて、残額のみが支払 る。また、右証拠によれば、右解決金、立替金の支払については、亡Aの死亡後Cにおいて管理しており、本件覚書において原告が取得することが明記された亡Aの現金、預金相当額と相殺勘定にて、残額のみが支払われたことが認められるのであるから、仮に、小林弁護士及び遺言執行者代理人において、亡Aの本件遺言書作成の意思が原告に対する特定財産としての不動産とB関係の資料のみの遺贈の趣旨であると理解していたのであれば、亡Aの現金、預金関係及び亡Aの債務のうち本件土地等に係るもの以外のものは相続人らの協議に委ねれば足りることであり、相続人らの間で亡Aの積極、消極の全相続財産をCが取得する旨の本件遺産分割協議書が既に作成されていたことを前提とすれば、右現金、預金及び債務等を、端的に、Cが取得、負担することとした上で、なお調整すべき点のみ、解決金なり立替金として処理すれば足りたものと考えられるのである。さらに、本件覚書において、原告はCが負担する葬儀費に相当する部分を除く現金三〇〇万八五二〇円、預金二一一万三二〇七円及び動産、未収入金五四万二〇八三円を取得するものとされていることも、原告の主張するように本件遺言が特定遺贈の趣旨であったとすると、Cを含む相続人ら(本件遺産分割協議書によればC)に帰属する右現金、預金及び未収入金を原告がCから贈与を受けた上で、解決金及び立替金の支払に充てたという迂遠な権利移転をしたこととなり、この点も原告がCが取得する土地以外の相続財産を包括的に遺贈された上、Cの権利取得との調整を図ったと解することに整合的であることは明らかである。 なお、本件覚書には、学習館の敷地の賃貸借につき原告において地主の承諾を得ることが記載されているが、借地上の建物を承継した者が法定相続人ではなく公党である原告であったことからすれば、本件遺言の趣旨のいか 、本件覚書には、学習館の敷地の賃貸借につき原告において地主の承諾を得ることが記載されているが、借地上の建物を承継した者が法定相続人ではなく公党である原告であったことからすれば、本件遺言の趣旨のいかんにかかわらず、地主の承諾を得ることとしたことに不自然な点はなく、この点をもって、本件遺贈の趣旨が特定遺贈であったことを推認させるものでもない。 以上の点に照らせば、本件覚書締結に関与した遺言執行者代理人及び小林弁護士は、亡Aが本件遺贈の趣旨を、Cに取得させる土地以外の遺産をすべて原告に遺贈するという趣旨のものとして本件遺言書を作成したと理解していたことが窺われる。 (3) この点につき、原告は、本件覚書は、亡Aからの遺贈につき早期に処理をしたいと考えた原告が、本件遺産分割協議書に基づき亡Aの現金、預金を管理し、その債務を処理し、相続税を納付していたCからの要求を呑んだ結果締結されたものであるから、たとえ本件遺言の内容と一致していない内容が含まれていても、それが本件遺言の解釈に影響を与えるものではないと主張する。 たしかに、本件覚書では、C取得土地の範囲が拡大し、また、本件遺言書には盛り込まれていない原告からCへの解決金、立替金の支払等の内容が盛り込まれている。 しかし、本件覚書におけるCへの解決金及び立替金の支払が本件遺言の趣旨を原告への包括遺贈と解する妨げとならず、むしろ、実質的には原告が包括受遺者であると解することに整合的であることは、既に説示したとおりであり、また、右解決金及び立替金の支払に本件遺言の趣旨を超える部分があることも、これが原告とCとの遺言執行の過程における調整措置であるというのであるから、当該部分が遺言の内容と完全には一致しないことは当然というべきであり、本件覚書におけるC取得土地の範囲が本件遺言におけるそれより拡大 とCとの遺言執行の過程における調整措置であるというのであるから、当該部分が遺言の内容と完全には一致しないことは当然というべきであり、本件覚書におけるC取得土地の範囲が本件遺言におけるそれより拡大している点についても、CにC所有建物の敷地部分を公道への通路部分を確保した上で取得させるという本件遺言の趣旨に実質的に沿うものということができるのであるから、本件覚書の内容を本件遺言と関連ないものと解することは相当でなく、また、本件覚書の内容を本件遺言書の作成に関与した小林弁護士の認識あるいは小林弁護士が理解した亡Aの意思を判断する資料とすることを妨げるものではないのである。 (4)また、本件覚書締結の際に原告からCに差し入れられた本件念書において、本件遺贈により、C及び他の亡Aの相続人らに対し、みなし譲渡所得課税がなされた場合には、原告において、増税分を負担する旨を明記していたことは、みなし譲渡所得課税が亡Aの相続人に課せられることを前提とするものとはいえるが、本件念書がCに向けられたものであることからすれば、原告に課税される場合を記載しないことは当然というべきであるから、本件念書から原告へのみなし譲渡所得課税がないこと、すなわち本件遺贈の趣旨が特定遺贈であることを前提としたものと解することはできない。そして、本件念書の趣旨がC取得土地に関する本件遺言を実質的に執行する趣旨に出るものであれば、同じ機会に作成された本件覚書と本件遺言書との関連性を強めることになるし、さらに、本件念書の趣旨が本件遺言時に想定した相続税のみならず亡Aについて発生する課税関係については実質的に原告が負担するとの趣旨であれば、Cが取得する土地以外の相続財産の包括受遺者たる立場とより整合的と解すべきことになるのである。 (三) 以上のとおり、本件遺言書の文言及びその作成の については実質的に原告が負担するとの趣旨であれば、Cが取得する土地以外の相続財産の包括受遺者たる立場とより整合的と解すべきことになるのである。 (三) 以上のとおり、本件遺言書の文言及びその作成の経緯並びに本件覚書締結の経緯及び趣旨に照らせば、本件遺贈はCが取得する土地以外の相続財産全部を包括して原告に遺贈する趣旨でなされたものと認めることが、最も遺贈者である亡Aの意思に合致しているものというべきである。 3 みなし譲渡所得課税における譲渡所得金額の時価評価の基準時は資産の移転の事由が生じた時であるところ(所得税法五九条)、本件遺言の効力は亡Aの死亡の時に生じ(民法九八五条)、本件遺贈による権利移転の事由もこの時に生ずることになり(同法九九〇条、八九六条)、本件各処分に関するその余の事実関係は当事者間に争いがないから、以上によれば、原告を亡Aの包括受遺者として、亡Aの平成三年分の所得税額及び無申告加算税額につき、前記第二、二、6記載の根拠に基づいてされた本件各処分はいずれも適法である。 第四結論以上の次第で、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第二部裁判長裁判官富越和厚裁判官團藤丈士裁判官水谷里枝子
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