令和2年6月4日判決言渡平成31年(ネ)第10024号商標権侵害行為差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第15776号)口頭弁論終結日令和2年1月30日判決 控訴人モトデザイン株式会社 訴訟代理人弁護士深井俊至 被控訴人株式会社三交クリエイティブ・ライフ 訴訟代理人弁護士岩瀬吉和同城山康文同山内真之同風間凜汰郎同白波瀬悠美子補佐人弁理士北口貴大 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 2⑴ 主位的請求被控訴人は,原判決別紙被告標章目録記載1⑴,1⑵又は2の標章を付し た腕時計を販売し,引き渡し又は販売若しくは引渡しのために展示若しくは所持してはならない。 ⑵ 予備的請求被控訴人は,原判決別紙被告標章目録記載1⑴,1⑵又は2の標章を付した原判決別紙被告商品目録記載の各商品を販売し,引き渡し又は販売若しくは引渡しのために展示若しくは所持してはならない。 3 被控訴人は,控訴人に対し,55万3486円及びこれに対する平成29年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略語は,特に断りのない限り,原判決の例による。) 1 事案の要旨本件は,原判決別紙原告商標権目録記載の商標( 3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略語は,特に断りのない限り,原判決の例による。) 1 事案の要旨本件は,原判決別紙原告商標権目録記載の商標(原告商標)の商標権(原告商標権)を有する控訴人が,原判決別紙被告商品目録記載の商品(被告商品)に付された原判決別紙被告標章目録記載の各標章(被告各標章)が原告商標と類似することから,被控訴人が被告商品を販売等する行為は,原告商標権を侵害すると主張して,被控訴人に対し,商標法36条1項に基づき,被告各標章を付した腕時計(主位的請求)又は被告商品(予備的請求)の販売等の差止めを求めるとともに,民法709条,商標法38条3項に基づき,損害賠償金55万3486円(実施料相当額5万3486円及び弁護士費用50万円の合計額)及びこれに対する不法行為の日以後である平成29年3月1日(被告商品販売終了日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,控訴人の請求のうち,損害賠償金3万1743円(実施料相当額2万6743円及び弁護士費用5000円の合計額)及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の控訴人の請求をいずれも棄却した。 控訴人は,敗訴部分を不服として,本件控訴を提起した。 2 前提事実 原判決4頁11行目冒頭から25行目末尾までを次のとおり改めるほか,原判決「事実及び理由」の第2の2(3頁2行目~4頁25行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 「⑸ 原告商標権に係る商標登録取消審判 アモトローラ・トレードマークは,平成27年1月28日,原告商標について,指定商品の第14類「時計」につき,商標法50条1項所定の商標登録取 。 「⑸ 原告商標権に係る商標登録取消審判 アモトローラ・トレードマークは,平成27年1月28日,原告商標について,指定商品の第14類「時計」につき,商標法50条1項所定の商標登録取消審判(以下「第1次審判」という。)を請求し,同年2月12日,その登録がされた。 特許庁は,第1次審判の請求を取消2015-300058号事件として審理し,平成28年7月19日,控訴人は,第1次審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,時計の機能を有する「東京スカイツリークロック」と称する商品に原告商標を使用していたことが認められるとして,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同審決は,同年11月25日に確定した。 (以上につき,甲5,60)イモトローラ・トレードマークは,平成29年6月8日,原告商標について,指定商品中の第14類「腕時計」につき,商標法50条1項所定の商標登録取消審判(以下「第2次審判」という。)を請求し,同月23日,その登録がされた。 特許庁は,第2次審判の請求を取消2017-300390号事件として審理し,令和元年5月16日,「登録第4995373号商標の指定商品中,第14類「腕時計」についての商標登録を取り消す。」との審決(以下「第2次審決」という。)をした。 第2次審決の理由の要旨は,控訴人は,第2次審判の請求の登録前3年以内の期間(以下「要証期間」という。)内に,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が同審判の請求に係る指定商品につい て,原告商標の使用をしていた事実を証明したものと認められないことなどから,原告商標の登録は,商標法50条1項の規定により,指定商品中,第14類「腕時計」についてその登録を取り消すべきものである,というものである。 控訴人 事実を証明したものと認められないことなどから,原告商標の登録は,商標法50条1項の規定により,指定商品中,第14類「腕時計」についてその登録を取り消すべきものである,というものである。 控訴人は,これを不服として,令和元年6月21日,知的財産高等裁判所に対し,第2次審決の取消しを求める訴訟を提起した(同裁判所令和元年(行ケ)第10094号)。 (以上につき,甲61,218,乙232)」 3 争点原判決「事実及び理由」の第2の3(4頁26行目~5頁5行目)記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 争点に関する当事者の主張以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第3の1ないし5(5頁7行目~31頁10行目)記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,上記記載中,「第一次不使用取消審判」を「第1次審判」と改め,「第二次不使用取消審判」を「第2次審判」と改めるものとする。)。 1 原判決14頁12行目ないし13行目の「(甲30~42)」を「(甲30~48,198~201)」と改める。 2 原判決22頁25行目冒頭から23頁16行目末尾までを次のとおり改める。 「ウ A社との取引について控訴人は,腕時計の販売のため,取引先であるA社(判決注:本件訴訟の経緯にかんがみ,仮名を用いる。)に対し,平成29年5月12日付け電子メール(甲202。以下「A社宛メール」という。)を送信して,文字盤に原告商標が付された腕時計の写真を同メールに添付し,また,同日付けの宅配で上記腕時計をA社に発送することにより(甲203。以下,甲203の伝票を「A社宛宅配伝票」という。),数日以内に同腕時計をA社に 引き渡した旨主張する。 しかしながら,控訴人は,その主張によれば,平成29年1月の時点で,下請先 3。以下,甲203の伝票を「A社宛宅配伝票」という。),数日以内に同腕時計をA社に 引き渡した旨主張する。 しかしながら,控訴人は,その主張によれば,平成29年1月の時点で,下請先から,文字盤に原告商標が付された腕時計を納品されていたのであるから,これを新商品として取り扱ってもらいたいのであれば,実物を顧客に示し,又は提供するのが自然であるところ,ことさらに,その写真を撮影して,A社宛メールに添付して送信したことは不自然である。 また,A社宛メールに添付された写真(甲202)は,腕時計の文字盤を模した紙のようなものに「moto」の文字を表示し,それを実物の腕時計の文字盤に貼り付けたように見えるところ,かかる写真を送ることが,当該商品を新たにA社に取り扱ってもらうことにプラスになるとは考えられない。 さらに,A社宛メールには,当該腕時計の型番,数量,単価及び金額の記載がないため,メールを受け取ったA社としては,当該腕時計を取り扱うか否かを検討することができない。 加えて,A社は,控訴人の元従業員であるA氏(判決注:本件訴訟の経緯にかんがみ,仮名を用いる。)が●●●●●●●に設立した,文房具の仕入れ,販売を業とする会社であって,会社設立以来,腕時計の製造,仕入れ,販売を手掛けたことはなく,控訴人との取引も,これまでに一度もなかったものである。 これらの事情によれば,控訴人とA社との間で,腕時計について商談が行われ,そのサンプルがA社に発送されたとの事実は,認められない。 なお,仮に,控訴人からA社に対して腕時計が発送された事実が認められるとしても,同腕時計は,控訴人からA社に対し無償で提供されたものであって,流通することは予定されていないことからすると,単なる「サンプル」であって,商標法上の「商品」,すなわち,商取 実が認められるとしても,同腕時計は,控訴人からA社に対し無償で提供されたものであって,流通することは予定されていないことからすると,単なる「サンプル」であって,商標法上の「商品」,すなわち,商取引の対象たり得る物品ではなかったものである。」 3 原判決24頁26行目冒頭から28頁18行目末尾までを次のとおり改める。 「〔控訴人の主張〕以下のとおり,控訴人は,第2次審判請求の要証期間内である平成29年2月23日から同年6月23日までの間,原告商標を腕時計に付した商品の広告,譲渡及び引渡し並びに同商品の取引書類での原告商標の使用をすることにより,原告商標を腕時計に使用しているから,指定商品中「腕時計」について審判によって取り消されるべきものとはいえない。 仮に商標登録取消審判が成立したとしても,被告商品は,「卓上時計(置き時計)」としても使用され,また,携帯型の時計である点において「懐中時計」と同じであるから,腕時計を除く「時計」と同一又は類似するものといえ,差止請求が認められることに変わりはない。 ⑴ 控訴人の原告商標の使用行為は商標法2条3項の「使用」に当たることア腕時計の商品化の経緯(ア) デザインの制作依頼被控訴人は,控訴人が平成29年に控訴人の腕時計を商品化したのは専ら訴訟対策を目的としたものであると主張するが,控訴人は,平成23年にデザイナーのEに腕時計のデザインを依頼し(甲112~114,120),過去にも腕時計の販売を検討していたのであり,突如として商品化したものではない。上記Eには置時計のデザインも依頼し,実際に商品化している。控訴人は,置時計の販売が一段落したので,以前から構想していた腕時計の販売に取り組み,その商品化に至ったものであるから,訴訟対策目的 ない。上記Eには置時計のデザインも依頼し,実際に商品化している。控訴人は,置時計の販売が一段落したので,以前から構想していた腕時計の販売に取り組み,その商品化に至ったものであるから,訴訟対策目的などではない。 (イ) 控訴人の腕時計の発注及び納付控訴人は,平成28年12月,台湾の「君園國際有限公司」(以下「君園」という。)に対し,文字盤に原告商標を付した腕時計(後記イのとおり,控訴人のウェブページ(甲62の1,2。以下「原告ウェブページ」 という。)に掲載された4種類の腕時計。以下,総称して「原告腕時計」という。)16個の製造を発注し,平成29年1月10日,その納品を受けた。 そして,控訴人は,台湾の写真撮影業者である中華撮影事業股份有限公司(以下「中華撮影」という。)に対し,広告用の原告腕時計の写真の撮影を依頼し,同月12日,中華撮影から写真19枚の納品を受けた。 その後,控訴人は,上記写真を使用して,後記イのとおり原告腕時計の右側に原告商標を大きく入れるなどして,原告ウェブページ掲載用の画像を作成し,これを原告ウェブページに掲載した。 君園作成の平成28年12月8日付け見積書(甲121)及び君園から控訴人代表者宛の同月9日付け電子メール(甲122)は,君園が控訴人から原告腕時計の発注を受けた際に,控訴人に送ったものであり,上記電子メールには,原告腕時計のデザイン画像が添付されている。そして,君園作成の平成29年1月10日付け見積書(甲123)は,君園が原告腕時計を控訴人に納品した際に控訴人に送ったものであり,納品書兼領収書の役割を果たすものであって,甲121の見積書に対応するものである。 また,中華撮影作成の平成29年1月12日付け納品書(甲126)は,控訴人が中華撮影から原告腕時計の写真の納品を受 品書兼領収書の役割を果たすものであって,甲121の見積書に対応するものである。 また,中華撮影作成の平成29年1月12日付け納品書(甲126)は,控訴人が中華撮影から原告腕時計の写真の納品を受けた際に,控訴人に交付されたものである。そして,原告商標を付した腕時計4本が写っている写真(甲127)は,原告ウェブページ掲載用に作成された画像の写真である。 イ原告ウェブサイトにおける原告商標を付した腕時計の広告(ア) 控訴人は,平成29年1月23日,原告ウェブページに,時計盤に「moto」の欧文字の標章(以下「原告商標」ということがある。)が付された腕時計4本(原告腕時計)の画像(甲62)を掲載した。 また,原告ウェブページには,上記腕時計の画像の右側に,原告商標が大きく記載されるとともに,「moto」は控訴人の登録商標である旨の表示がされているほか,同ウェブページが「moto 時計」のウェブページである旨の表示もされている。 なお,仮に,上記腕時計の画像のみからは,「moto」の文字をはっきり認識できないとしても,同画像の右横に「moto」の欧文字から成る原告商標が大きく表示され,更に「moto」が控訴人の登録商標である旨の記載もされていること,腕時計の文字盤に商標が付される例は極めて多いことにかんがみれば,上記画像の腕時計に付された欧文字が「moto」であることを十分に認識できる。 (イ) 前記(ア)のとおり,控訴人は,要証期間内に,原告ウェブページに,原告腕時計の画像,原告商標及び「moto 時計」のウェブページである旨を表示することにより,腕時計に原告商標が付された広告を電磁的方法により提供した。かかる行為は,原告商標の使用(商標法2条3項8号)に該当する。 なお,原告ウェブページに原告腕時計の商品名 ある旨を表示することにより,腕時計に原告商標が付された広告を電磁的方法により提供した。かかる行為は,原告商標の使用(商標法2条3項8号)に該当する。 なお,原告ウェブページに原告腕時計の商品名等を表示しなかったのは,原告腕時計の画像を原告ウェブページに掲載した平成29年1月23日当時は,原告腕時計の販売や取引先に対する営業活動の開始前だったからである。 しかし,控訴人のウェブサイトの「moto 時計」のウェブページ(原告ウェブページ)に,原告腕時計の画像を大きく,目立つ位置に掲載したのは,原告腕時計の広告のためであり,その後に予定されていた取引先に対する営業活動及び販売に資するためである。そして,広告に商標が付されている以上は,特段の事情がない限り,同一商標を付した商品の販売等が予定されていると推認される。 ウ A社との取引 (ア) 控訴人は,取引先であるA社に対し,原告腕時計の写真及びサンプルを送るので,同商品の販売を検討してほしい旨依頼し,平成29年5月15日頃,原告腕時計1個を譲渡し,これを引き渡した。 A社宛メールは,控訴人の従業員であるF(以下「F」という。)が,控訴人の職務として,原告腕時計の販売のためにA社に送付したものであり,原告腕時計1本の画像が添付されている。 なお,同画像の写真は,中華撮影が撮影したもの(前記ア(イ))ではなく,控訴人代表者又は控訴人従業員が,サンプルとして送付する商品が何であるかをA社に知らせるために,スマートフォンのカメラで撮影したものである。上記写真は,文字盤のガラスに光が少し反射してしまっているが,それは,後記のとおり,Fは,A社宛メールを送信したのと同日に,原告腕時計のサンプル1個をA社宛てに発送していたことから,メールに添付する写真については,サンプ スに光が少し反射してしまっているが,それは,後記のとおり,Fは,A社宛メールを送信したのと同日に,原告腕時計のサンプル1個をA社宛てに発送していたことから,メールに添付する写真については,サンプル送付される商品が何であるかさえA社に分かればよいため,画像の鮮明さや美しさ,光度や光の当たり具合にこだわる必要がなかったからである。 また,A社宛メールに原告腕時計の値段を記載していないのは,同メールがサンプル提供の連絡であって,値段については,商談の際にA社と協議して決めるつもりだったからである。 A社宛宅配伝票は,Fが,控訴人の職務として,原告腕時計1個をA社に発送したときのものであり,伝票の品名欄に「moto 腕手時×1点サンプル」と記載されているものであって,A社は,平成29年5月15日頃,これを受領した。なお,上記品名欄に記載された「腕手時」は「腕時計」の誤記である。 (イ) 前記(ア)のとおり,控訴人は,要証期間内に,腕時計の取引書類(A社宛メール,A社宛宅配伝票)に原告商標を付して頒布ないし電磁的方法により提供し,また,原告商標の付された原告腕時計をA社に譲渡及 び引き渡した。かかる行為は,原告商標の使用(商標法2条3項8号,2号)に該当する。 エヤフーオークションへの出品(ア) 控訴人は,ヤフーオークションに原告腕時計1本を出品し,平成29年5月19日から22日まで,28日から31日まで,同年6月9日から12日まで及び18日から21日までの間,オークションが行われた(甲64の2~5。以下「本件オークション」という。)。 なお,上記出品は,控訴人の従業員であるFが,同人の個人アカウントを用いて行った。Fは,原告腕時計の販売方法の一つとして,最近注目されているヤフーオークションへの出品を行うこ ション」という。)。 なお,上記出品は,控訴人の従業員であるFが,同人の個人アカウントを用いて行った。Fは,原告腕時計の販売方法の一つとして,最近注目されているヤフーオークションへの出品を行うことにしたものの,会社登録は手続に手間がかかり,多くの書類が必要であったため,個人アカウントを用いることにしたものである。また,Fは,個人アカウントを用いる以上,会社名を表示することには差し障りがあると考え,商品説明欄に控訴人の会社名を表示することはしなかった。 甲64の1は,控訴人が上記出品をした際の,ヤフーオークションのウェブページ(以下「ヤフオクウェブページ」という。)である。控訴人は,商品欄に「moto 時計腕時計」と記載して出品しており,同ウェブページの画面には,原告商標を付した原告腕時計の画像とともに,商品欄に「moto 時計腕時計」との表示がされた。また,上記ウェブページの原告腕時計の画像は,画像の下に「大きな画像を見る」と記載されているとおり,パソコンやスマートフォン上で,大きな画像で見ることが可能であった。甲132の写真は,控訴人が上記「大きな画像」として使用したものであり,腕時計の文字盤に「moto」の標章が付されていることを確認できる。 そして,平成29年6月18日から21日までの本件オークションにおいて1件の入札があり,原告腕時計は5000円で落札され,控訴人 は,同月22日,落札者から代金の支払を受けた(甲64の1,6~8)。 なお,落札者に係る情報は,落札者の個人情報であり,控訴人の取引先として控訴人の営業秘密でもあるため,開示しない。 (イ) 前記(ア)のとおり,控訴人は,要証期間内に,①ヤフーオークションに原告腕時計を出品し,ヤフオクウェブページに,原告腕時計の画像を表示することによ 営業秘密でもあるため,開示しない。 (イ) 前記(ア)のとおり,控訴人は,要証期間内に,①ヤフーオークションに原告腕時計を出品し,ヤフオクウェブページに,原告腕時計の画像を表示することにより,腕時計に原告商標が付された広告を電磁的方法により提供し,②上記出品の際の控訴人とヤフー及び控訴人と落札者との間のやりとりに係る取引書類(オークション連絡ないし取引連絡)において,原告腕時計について,商品欄の「moto 時計腕時計」の記載を使用することにより(甲64の1~8,甲119,131),腕時計の取引書類に原告商標を使用し,③原告商標が付された原告腕時計を落札者に譲渡した。 上記①ないし③の行為は,原告商標の使用(商標法2条3項8号,2号)に該当する。」 4 原判決28頁22行目の末尾に,次のとおり加える。 「なお,控訴人の取引先であるB社,C社及びD社の会社名は,控訴人の営業秘密であるため開示しない。」第4 当裁判所の判断当裁判所も,控訴人の請求は,民法709条及び商標法38条3項に基づき,損害賠償金3万1743円(実施料相当額2万6743円及び弁護士費用5000円の合計額)及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があると判断する。その理由は,以下のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第4の1ないし5(31頁12行目~50頁25行目)記載のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決42頁19行目冒頭から49頁17行目末尾までを次のとおり改める。 「4 争点⑷(権利濫用の抗弁の成否)について」 ⑴ 認定事実前記前提事実(引用に係る原判決第2の2)と証拠(甲23,24,62,64,80,196,202~205,乙15,233~236,証人 ついて」 ⑴ 認定事実前記前提事実(引用に係る原判決第2の2)と証拠(甲23,24,62,64,80,196,202~205,乙15,233~236,証人A氏)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア原告ウェブページ(ア) 控訴人は,遅くとも平成29年2月23日から同年6月23日までの間,控訴人のウェブサイト内の「moto 時計」のページ(原告ウェブページ。甲62)の上部に,左側から中央にかけて横一列に並ぶ形で,腕時計4本の画像を掲載し,その右端に原告商標を青字で表示し,同商標の下方に近接して,「『moto』は,モトデザイン株式会社の登録商標(第4995373 号)です。」と表示した。 なお,原告ウェブページには,上記腕時計の商品名,商品番号,値段等の情報は表示されておらず,これらの時計の広告や商品説明,商品を購入するための表示等は存在しない。また,上記腕時計の画像をクリックしても,同商品に係る販売サイトに移動することはない。 一方,上記腕時計の画像等の下方に近接して,「人気商品」として置時計5点の画像が表示され,各商品につき,品名,品番及び値段が表示されている。 (イ) 控訴人は,平成30年3月6日頃,原告ウェブページを更新し,上記置時計の画像等の下方に近接して,「腕時計」として腕時計2点の画像,その品名,品番及び値段を表示し,また,控訴人のウェブサイトの「moto 時計」「時計」のウェブページ(以下,上記更新後の原告ウェブページと併せて「原告更新ウェブページ」と総称する。)に,文字盤に原告商標が付された腕時計6本の写真の画像とともに,各商品の品名,品番,値段,商品サイズ,機能説明等を表示した(甲 196)。 イ A社への連絡A社は,控訴人 る。)に,文字盤に原告商標が付された腕時計6本の写真の画像とともに,各商品の品名,品番,値段,商品サイズ,機能説明等を表示した(甲 196)。 イ A社への連絡A社は,控訴人の従業員であったA氏により●●●●●●●●●●に設立された,文具,事務用品の販売等を業とする株式会社であり,設立以降A氏が代表取締役を務めている(甲204,205,乙233~236,証人A氏)。 控訴人は,平成29年5月12日,「見積及び腕時計サンプル発送致します」との件名のA社宛メール(甲202)を送信した。同メールには,「moto 腕時計について,本日サンプルを送付致しますので,併せてご確認のうえご検討下さい。」,「添付ファイルにて,先に商品写真を送付致します。」などと記載され,文字盤に「moto」の表記があるようにも見える腕時計の画像が添付されていた。 また,控訴人は,同日,A社宛に宅配便を発送し,A社は,同月15日頃にこれを受領した。控訴人が上記発送の際に作成したA社宛宅配伝票(甲203)の「品名」欄には,「moto 腕手時×1点サンプル」と記載されている。 しかし,A社は,その後に控訴人から,販売用の腕時計を購入することはなかった。また,A社と控訴人との間では,これまでに,腕時計に限らず,実際に商品の売買その他の商取引がされたことはなく,A社において,自社の商品として腕時計を販売した実績もない(証人A氏)。 ウヤフーオークションへの出品控訴人の従業員であるFは,同人の個人IDを用い,商品欄に「moto時計腕時計」と記載して,腕時計1本をヤフーオークションに出品し,平成29年5月19日から22日まで,28日から31日まで,同年6月9日から12日まで及び18日から21日までの間,オーク ションが行われた ,腕時計1本をヤフーオークションに出品し,平成29年5月19日から22日まで,28日から31日まで,同年6月9日から12日まで及び18日から21日までの間,オーク ションが行われた(甲64の2~5,甲80)。 上記オークションが行われた際のヤフオクウェブページの画面(甲64の1)には,腕時計の画像とともに,商品欄に「moto 時計腕時計」と表示されている。また,腕時計の画像の下方に近接して,「大きな画像を見る(全1枚)」と表示されており,これをクリックすることにより,パソコンやスマートフォン上で,上記腕時計の大きな画像を見ることが可能であった。 そして,平成29年6月18日から21日までのオークションにおいて1件の入札があり,上記腕時計は5000円で落札され,Fは,同月22日,落札者から代金の支払を受けた(甲64の1,6~8)。 エ控訴人からの原告商標権侵害の警告控訴人は,平成29年2月11日,被控訴人に対し,同月9日付け警告書(甲23)を送付し,被控訴人が取り扱う「moto」の標章が付された腕時計の展示,販売行為は原告商標権を侵害するものである旨警告した。なお,上記腕時計は,モトローラ・モビリティが製造し,被控訴人に販売した商品である。 モトローラ・モビリティは,同年3月21日,控訴人に対し,同月17日付け回答書(乙15)を送付し,控訴人が原告商標を使用して腕時計の販売を行っていることについて疑いがあると考えている旨,控訴人のウェブサイトでは腕時計の画像と共に「moto」の語が使用されているが,当該使用は本件対応のみを目的とする不自然かつ名目的なものに見受けられる旨を主張した。 ⑵ 控訴人による原告商標の使用の事実の有無についてア原告ウェブページについて(ア) 腕 応のみを目的とする不自然かつ名目的なものに見受けられる旨を主張した。 ⑵ 控訴人による原告商標の使用の事実の有無についてア原告ウェブページについて(ア) 腕時計の画像の表示控訴人は,原告ウェブページに,原告商標が付された原告腕時計 4本の画像を掲載した旨主張する。 しかしながら,原告ウェブページの写真である甲62は,そこに表示された4本の腕時計の画像が不鮮明であるため,同画像からは,これらの腕時計の文字盤にいかなる標章が付されているのかを認識することはできず,その他に,原告ウェブページに原告商標を付した腕時計が表示されていることを認めるに足りる証拠はない。 これに対し控訴人は,仮に上記画像のみから「moto」の文字をはっきり認識できないとしても,同画像の右横に原告商標が大きく表示され,更に「moto」が控訴人の登録商標である旨の記載もあること,腕時計の文字盤に商標が付されることは極めて多いことに鑑みれば,画像の文字盤に付された欧文字が「moto」であることを十分に認識できる旨主張する。 しかしながら,そもそも,原告ウェブページに表示された腕時計の画像は不鮮明であって,文字盤に欧文字が付されていると認識することは困難であるし,腕時計の文字盤に常に商標が付されるものであるとも認められない。また,前記⑴ア(ア)で認定した原告ウェブページにおける画像等の配置や全体の構成に照らしても,「moto」が登録商標である旨の説明文は,その上方に近接して表示された原告商標について説明する文章と理解するのが自然であるから,これらの表示から,腕時計の画像に「moto」の標章が付されていることを認識するものではないといえる。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 以上によれば るのが自然であるから,これらの表示から,腕時計の画像に「moto」の標章が付されていることを認識するものではないといえる。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 以上によれば,要証期間内に,原告商標が付された腕時計の画像が原告ウェブページに表示されたと認めることはできない。 (イ) 原告商標の表示a 前記⑴ア(ア)のとおり,原告ウェブページには,腕時計の品名, 品番,値段,商品説明等についての記載や,控訴人の腕時計が将来発売予定であること,個別の商談により購入が可能であることを説明する記載はない。 そして,かかる原告ウェブページの体裁,記載からは,少なくとも平成30年3月6日頃に原告更新ウェブページが作成され,腕時計の品名,品番,値段,商品説明等についての具体的な記載が掲載されるまでの間は,控訴人において,同ウェブページに画像が表示された腕時計が実際に製造され,商品として購入できる実態があったことを推認することはできないというべきである。 以上によれば,原告ウェブページに表示された原告商標や「moto時計」のウェブページである旨の表示は,商品である「腕時計」について使用されたものとは認められない。 b これに対し控訴人は,①原告ウェブページに原告腕時計の商品名等を表示しなかったのは,原告腕時計の画像を原告ウェブページに掲載した当時は,原告腕時計の販売や取引先に対する営業活動の開始前だったからである,②原告ウェブページに掲載された原告腕時計の画像は,控訴人が君園に発注して納品を受けた腕時計につき,中華撮影が広告用に撮影したものを使用して,原告ウェブページ掲載用に作成したものであって,甲121ないし123は君園から受領した原告腕時計の見積書及びデザイン画像,甲126は中華撮影か 計につき,中華撮影が広告用に撮影したものを使用して,原告ウェブページ掲載用に作成したものであって,甲121ないし123は君園から受領した原告腕時計の見積書及びデザイン画像,甲126は中華撮影から受領した原告腕時計の写真の納品書,甲127は原告ウェブページ用に作成した写真である旨主張し,Fの第2次審判における証人尋問録音の反訳(乙226)及び同人の陳述書(甲80。上記反訳と併せて,以下「Fの陳述書等」という。),君園の社長の陳述書(甲194)及び中華撮影の写真家の陳述書(甲195)中には,これに沿う部分がある。 しかしながら,①についていえば,控訴人主張の事情は,原告更新ウェブページが作成されるまでの1 年以上にわたり,原告ウェブページに原告腕時計の品目,品番,商品説明等の一切が表示されていないことの説明になるものではない。また,②も,以下の点に照らせば,採用できるものではない。 すなわち,甲122のデザイン画像は,腕時計本体の写真がやや不鮮明であるのと対照的に,文字盤上の「moto」の文字又は文字盤全体が不自然なほど鮮明で浮き上がっているように見えるものであり,画像データを加工等して作成された画像であることがうかがえる。また,同画像が添付された電子メール(甲122)には本文がなく,これらの画像の作成目的,作成方法等も証拠上明らかでない。 そして,甲121の見積書には,「製品明細」(「ステンレスサファイアガラス日本製ムーブメント手作箱及び説明書」),「注意事項」(「腕時計サンプル製作」),「数量」(合計16個)等の記載があるものの,商品の単価やサンプル製作納期の記載がないなど,不自然な点も少なくなく,「製品明細」に記載されたとおりの製品が製造されたことを示す写真等の客観的な証拠もない。また,控訴人 )等の記載があるものの,商品の単価やサンプル製作納期の記載がないなど,不自然な点も少なくなく,「製品明細」に記載されたとおりの製品が製造されたことを示す写真等の客観的な証拠もない。また,控訴人は,甲123の見積書は,納品書兼領収書の役割を果たすものであって,甲121の見積書に対応するものである旨主張するが,甲123の見積書にも製品の単価等の記載はない。 さらに,甲126の納品書には,中華撮影が控訴人に対して単価400台湾ドルの写真19枚を納入し,控訴人からその代金を受領した旨の記載があるものの,納品する写真の画像等は添付されていないため,これらの証拠からは,納入された写真が原告腕時計のものであるかは明らかでない。 加えて,文字盤に「moto」の標章が付されていることが認識できる4本の腕時計の写真(甲127)も,その作成時期,作成経緯は明らかでなく,これが原告ウェブページ上の腕時計の画像と同一のものであることを裏付ける客観的な証拠はない。 以上によれば,控訴人の上記主張を採用することはできないというべきである。 (ウ) 原告商標の使用の有無前記(ア)及び(イ)によれば,控訴人が,原告ウェブページに腕時計の画像及び原告商標の表示等を表示したことをもって,原告商標の使用(商標法2条3項8号)に該当すると認めることはできない。 イ A社との取引について(ア) 控訴人は,取引先であるA社に対し,原告腕時計の写真及びサンプルを送るので,同商品の販売を検討してほしい旨依頼し,平成29年5月15日頃,原告腕時計を譲渡して,引き渡したものであり,同月12日付のA社宛メールには,原告商標が付された原告腕時計1本の画像が添付されており,伝票の品名欄に「moto 腕手時×1点サンプル 5月15日頃,原告腕時計を譲渡して,引き渡したものであり,同月12日付のA社宛メールには,原告商標が付された原告腕時計1本の画像が添付されており,伝票の品名欄に「moto 腕手時×1点サンプル」と記載されている同日付のA社宛宅配伝票により,A社宛に原告腕時計を発送したものである旨を主張し,A氏の供述,調査嘱託の結果及びFの陳述書等中には,これに沿う部分がある。 しかしながら,A社宛メールに添付された腕時計の写真(甲202)は,文字盤部分の画像が,他の部分(時計のバンド,時計の背景等)と比べて不鮮明であって,文字盤上の「moto」の文字及び針のみが浮き上がるように見えるなど不自然なものであって,文字盤部分について加工が行われたのではないかとの疑いを払拭することができない。また,A社宛宅配伝票(甲203)の品名欄に「moto 腕手時×1点サンプル」の記載があるとの事実は,同宅配便によって原告腕時計が配送されたことを客観的に裏付けるものではない。 加えて,A社の取扱商品,控訴人とA社との取引実績,控訴人とA社代表者との人的関係等,控訴人とA社との関係に関する認定事実(前記⑴イ)に照らすと,控訴人が,控訴人との取引実績も,腕時計の販売実績も全くないA社に対して,腕時計を販売してもらうためのサンプルとして原告商標を付した原告腕時計を譲渡したとの主張には,不自然かつ不合理な点があるといわざるを得ず,せいぜい,控訴人と親しい関係にあるA社(又はA氏個人)に対し,腕時計を参考送付して,商品化の可能性等について意見を求める程度のことがあったにすぎないものと考えられる。 以上によれば,控訴人がA社に対して原告商標を付した原告腕時計の譲渡及び引渡しをした事実を認めることはできないし,仮に控訴人からA社に腕時計が送付された事実があ あったにすぎないものと考えられる。 以上によれば,控訴人がA社に対して原告商標を付した原告腕時計の譲渡及び引渡しをした事実を認めることはできないし,仮に控訴人からA社に腕時計が送付された事実があったとしても,それが「商品」としての腕時計の送付であったと認めることは困難である。 また,上記のとおり,控訴人とA社の間で,原告商標を付した原告腕時計に係る取引がされたものと認めることはできないことから,A社宛メール及びA社宛宅配伝票に「moto」の表記をしたことは,取引書類に原告商標を付したものとはいえない。 したがって,控訴人とA社との連絡に関し,原告商標の使用(商標法2条3項8号)を認めることはできない。 (イ) なお,控訴人は,前記(ア)のA社との取引以外にも,B社,C社及びD社に対して原告腕時計の販売を検討してほしい旨依頼し,原告腕時計のサンプルを送付したり,ギフト・ショーに原告商標を付した原告腕時計を展示し,同腕時計の写真を掲載したカタログを頒布したりしたものであり,これらの事実はいずれも要証期間後の ものではあるが,控訴人が要証期間内に腕時計について原告商標を使用した事実を補強するものである旨主張する。 しかしながら,控訴人の主張する上記事実は,そもそも要証期間後の事実である上,B社,C社及びD社の実在性や控訴人との関係も明らかでないこと等に照らし,これらの事実から,要証期間内の控訴人による原告商標の使用の事実を推認することは到底困難である。 ウヤフーオークションへの出品について(ア) 控訴人は,Fが,控訴人の業務として,Fの個人IDを用いて,ヤフーオークションに原告腕時計1本を出品し,ヤフオクウェブページの画面(甲64の1)に,原告商標を付した原告腕時計の画像が表示された旨,及び,本件オ が,控訴人の業務として,Fの個人IDを用いて,ヤフーオークションに原告腕時計1本を出品し,ヤフオクウェブページの画面(甲64の1)に,原告商標を付した原告腕時計の画像が表示された旨,及び,本件オークションにおいて,原告商標を付した腕時計が5000円で落札され,控訴人から落札者に譲渡された旨主張する。 しかしながら,本件オークションへの出品は,Fが個人のIDを用いて行ったものであるところ,従業員が,その勤務先の販売する商品を,個人のIDを用いて,インターネットオークションを利用して1個のみを販売し,しかも,出品の際の商品説明欄に製造者である会社名の記載すらしないというのは,法人による営業活動としては余りに不自然・不合理である。そして,他にオークションへの出品者が控訴人であったことをうかがわせる証拠も存在しないことからすると(既に検討したとおり,そもそも,本件オークションへの出品当時,控訴人が,商品として原告商標を付した腕時計を販売していた事実自体を認めるに足りる証拠はない。),上記の出品は,Fが個人として行ったものであると認めるほかはない。 そうすると,控訴人が,原告商標の付された原告腕時計の画像を ヤフオクウェブページに表示した事実も,上記腕時計を落札者に譲渡した事実も認めることはできない。また,ヤフー及び控訴人と落札者との間のやりとりに係る書類(オークション連絡ないし取引連絡)において,出品した腕時計について,商品欄に「moto 時計腕時計」と記載したのもF個人であって控訴人ではないことになるから,これも,控訴人による原告商標の使用を裏付ける事実とはいい難い。 (イ) 前記(ア)によれば,Fによるヤフーオークションへの腕時計の出品に関し,原告商標の使用(商標法2条3項2号,8号)を認めること よる原告商標の使用を裏付ける事実とはいい難い。 (イ) 前記(ア)によれば,Fによるヤフーオークションへの腕時計の出品に関し,原告商標の使用(商標法2条3項2号,8号)を認めることはできない。 エ小括前記アないしウのとおり,控訴人が,要証期間内における日本国内での原告商標の使用に該当する旨主張する事実は,いずれも原告商標の使用(商標法2条3項2号又は8号)に該当するものとは認められない。 ⑶ 以上によれば,要証期間内において,原告商標が腕時計について使用されたとは認められず,原告商標の指定商品中「腕時計」は,商標登録取消審判により取り消されるべきものということができ,実際にも,本判決前記第2の2のとおり,第2次審判の請求に基づき,商標登録の取消審判がされている(ただし,審決取消訴訟が係属中)状況にある。 なお,控訴人は,仮に商標登録取消審判が成立したとしても,被告商品は,「卓上時計(置き時計)」としても使用され,また,携帯型の時計である点において「懐中時計」と同じであるから,腕時計を除く「時計」と同一又は類似するものといえ,差止請求が認められることに変わりはない旨主張する。 しかしながら,前記(引用に係る原判決第4の2⑴)のとおり,被告 商品の内容や性質に照らすと,被告商品は,その指定商品の区分としては,第9類の「情報処理用の機械器具」に該当し,第14類の「時計」には該当しないと解するのが相当である。 また,被告商品はスマートウォッチと呼ばれる商品であるところ,前記認定(引用に係る原判決第4の2⑵イ)の被告商品の生産,販売,原材料,品質,用途,需要者等に関する諸事情に照らすと,被告商品が,原告商標の指定商品「時計」のうち,「腕時計」と類似の商品であるということができるのは 原判決第4の2⑵イ)の被告商品の生産,販売,原材料,品質,用途,需要者等に関する諸事情に照らすと,被告商品が,原告商標の指定商品「時計」のうち,「腕時計」と類似の商品であるということができるのは格別,その他の指定商品(「腕時計」を除く「時計」)とも類似の商品であるとは認められない(なお,被告商品のユーザーガイドには,「卓上時計としても使えます」との記載があることは前認定のとおりであるが,これは,卓上に置けば,事実上卓上時計としての機能も果たすということを述べているのにすぎないと認められるから,これによって卓上時計との商品としての類似性が肯定されることになるものではない。)。 したがって,控訴人の上記主張は理由がなく,控訴人による差止請求は,権利の濫用として許されないというべきである。 ⑷ 一方,商標法54条2項により原告商標権の指定商品中「腕時計」が消滅する効果が発生するのは,平成29年6月23日(第2次審判の審判請求登録日)であるところ,控訴人が損害賠償を求めている期間は,平成28年7月から平成29年2月までであるので,損害賠償請求との関係では,権利濫用の抗弁は失当である。」 2 結論以上によれば,控訴人の差止請求,55万3486円及びこれに対する遅延損害金の請求は,3万1743円及びこれに対する平成29年3月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原 判決は相当である。 したがって,本件控訴は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官上田卓哉 裁判官山門優
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