判決平成13年10月29日神戸地方裁判所平成9年(ワ)第1267号不当利得金返還等請求事件 主文 1 被告Aは,原告Bに対し,2413万8800円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Aは,原告Cに対し,896万9800円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告A及び被告保証保険損害調査株式会社は,原告Bに対し,連帯して1120万円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らの被告A及び被告保証保険損害調査株式会社に対するその余の請求をいずれも棄却する。 5 原告Bの被告Dに対する請求を棄却する。 6 訴訟費用は,原告Bに生じた費用の2分の1と被告Aに生じた費用の4分の1と被告保証保険損害調査株式会社に生じた費用の10分の3と被告Dに生じた費用を原告Bの負担とし,原告Cに生じた費用の10分の3と被告Aに生じた費用の17分の1を原告Cの負担とし,原告Bに生じた費用の6分の1と被告保証保険損害調査株式会社に生じた費用の10分の7を被告保証保険損害調査株式会社の負担とし,その余は被告Aの負担とする。 7 この判決は,第1ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告Aは,原告Bに対し,2167万円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告A及び被告保証保険損害調査株式会社は,原告Bに対し,連帯して1600万円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Aは,原告B及び原告Cに対 2 被告A及び被告保証保険損害調査株式会社は,原告Bに対し,連帯して1600万円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Aは,原告B及び原告Cに対し,2562万8000円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告Dは,原告Bに対し,別紙物件目録記載の土地につき別紙登記目録記載1の所有権移転請求権仮登記及び同目録記載2の所有権移転登記の各抹消登記手続をせよ。 第2 事案の概要本件は,原告B及びEが,被告Aに対し,原告及びE所有の各土地上の借地権の整理をそれぞれ依頼したところ,これが非弁活動あるいは暴利行為に該当し,公序良俗に反するなどとして,原告B及びEの承継人である原告Cが,被告らに対し,不当利得の返還,損害の賠償,所有権移転登記等の抹消登記手続等を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア被告保証保険損害調査株式会社(以下「被告会社」という。)は,宅地建物等の取引等を業とする株式会社である。 被告Aは,被告会社の代表取締役であり,宅地建物取引主任者の資格を有する者である。 被告Dは,被告会社の取締役として登記されているものである。 (甲16)イ原告B及び原告Cは,いずれもEの子である。 Eは,平成10年11月22日に死亡し,原告B及び原告Cがその地位を受継した。 (2) 原告Bと被告A,被告会社の関係原告Bは,平成2年ころ,被告Aと知り合い,平成3年9月ころ,原告Bが神戸市灘区a町に所有する数件の貸地について,底地の借地人への売却交渉ないし借地権の借地人からの買取り交渉を被告Aに依頼し,被 原告Bは,平成2年ころ,被告Aと知り合い,平成3年9月ころ,原告Bが神戸市灘区a町に所有する数件の貸地について,底地の借地人への売却交渉ないし借地権の借地人からの買取り交渉を被告Aに依頼し,被告Aは,上記借地人らと交渉した。 (3) 第1事件についてア原告Bは,互いに隣接する神戸市灘区a町b丁目c番d,c番e,c番fの土地を所有していた。 原告Bは,神戸市灘区a町b丁目c番dの土地(以下「a町c番dの土地」という。)をF外3名(以下「Fら」ともいう。)に賃貸しており,Fらは,同土地上に建物を所有してこれを賃貸していた。 原告Bは,神戸市灘区a町b丁目c番d,c番e,c番fの土地を合わせると大きな四角土地となり,賃貸マンションの建設が可能となることから,a町c番dの土地の更地化を希望していた。 原告Bは,被告Aに対し,平成3年ころ,a町c番dの土地上の借地権整理を依頼し,被告AはFらと交渉したが,このときは金銭的に折り合わず,不調に終わった。 イ平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災(以下「震災」という。)により,a町c番dの土地上のFら所有建物5軒のうち,3軒は全壊し,2軒は半壊となった。 そこで,被告Aは,原告Bに対し,同年2月ころ,改めてa町c番dの土地上の借地権を整理することを勧めた。原告Bは,これに応じて,被告Aに対し,平成7年2月8日付け委任状(甲12)を交付して同土地上の借地権の整理を依頼し(以下「第1契約」という。),被告AはFらと交渉を開始した。 ウ被告Aは,原告Bに対し,Fらがa町c番dの土地上に所有する建物の借家人らを立ち退かせ,上記借家人らの居住場所を確保するために近くの更地を使わせてほしいと依頼したので,原告Bは,これに応じ,上記借家人らの居住 原告Bに対し,Fらがa町c番dの土地上に所有する建物の借家人らを立ち退かせ,上記借家人らの居住場所を確保するために近くの更地を使わせてほしいと依頼したので,原告Bは,これに応じ,上記借家人らの居住場所として,原告Bの所有する神戸市灘区a町b丁目c番gの更地(以下「a町c番gの土地」という。)を被告側に貸すことを了承した。 被告Aは,原告Bに対し,平成7年4月ころ,a町c番gの土地について,貸すだけではなく所有権を被告Aに移転するように求め,原告Bはこれを了承した。 エ原告Bと被告Aは,平成7年5月31日付け覚書(甲4,以下「5月31日付け覚書」という。)を作成した。同覚書には,a町c番dの土地に関して下記のとおり記載されている。下記記載の「甲」とは原告Bのことである。 記 2 a町b丁目cの取扱い1) 甲はc-dの借地権を取得する (c-d:F氏借地)2) 甲の負担イ) 甲のc-gの所有権を提供するロ) 2900万円提供する(うち1000万円預け済,今回5月31日に800万円預け済)原告Bは,被告Aに対し,同覚書に基づき,平成7年5月31日までに1000万円,同日に800万円,同年6月10日に1100万円の合計2900万円をそれぞれ支払った。 オ被告Aは,原告Bに対し,平成7年6月初めころ,上記2900万円の授受について,支払金額欄に1400万円と記載した平成7年5月31日付け領収証(甲27)を交付した。同領収証の但書には,「・・・借地権購入,借地・借家6軒分の交渉等,更地化のための手数料,仲介料として」と記載されている。 カ平成7年5月末ころ,a町c番dの土地上の借地権整理が完了した(甲5の1,2 の但書には,「・・・借地権購入,借地・借家6軒分の交渉等,更地化のための手数料,仲介料として」と記載されている。 カ平成7年5月末ころ,a町c番dの土地上の借地権整理が完了した(甲5の1,2)。 キ原告Bと被告Aは,平成7年7月ころ,a町c番gの土地の所有権移転登記手続について話し合い,原告Bが被告会社に対し,売買を原因として移転登記手続をすること及びこれにより原告Bに発生する譲渡所得税の税額を被告Aが負担することを合意した。 原告Bと被告Aは,上記合意に基づき,平成7年8月22日,原告Bが被告会社に対し,a町c番gの土地を1600万円で売却する旨記載された売買契約書(甲28)を作成して,同土地につき被告会社に対して所有権移転登記手続を行い,原告Bは被告会社に対し,1600万円の領収証(乙18)を交付し,被告Aは原告Bに対し,譲渡所得税に充てる費用として300万円の小切手を交付した。 (4) 第2事件についてア原告Bの母であるEは,神戸市灘区h町b丁目i番の土地(以下「h町i番の土地」という。)を所有し,震災までは同土地を合計10名に賃貸していた。 イ h町i番の土地西側に隣接して,被告Dの所有する神戸市灘区h町b丁目j番kの宅地及びGの所有する宅地があり,これら2つの宅地は北側公道に面していなかったことから,被告D及びGの両名は,h町i番の土地内の私道を使用料を支払って通行していた。 ウ平成7年1月17日の震災により,h町i番の土地の借地人所有建物10軒のうち,中央部の1軒を残して9軒が全半壊し,解体撤去された。 そこで,被告Aが,原告Bを通じてEに対し,平成7年3月初旬ころ,h町i番の土地上の借地権を整理することを勧めた。Eは,平成7年3月16日,原告Bを通じて上記勧めに応じ,被告 撤去された。 そこで,被告Aが,原告Bを通じてEに対し,平成7年3月初旬ころ,h町i番の土地上の借地権を整理することを勧めた。Eは,平成7年3月16日,原告Bを通じて上記勧めに応じ,被告Aに対し,平成7年3月16日付け委任状(甲13)を交付して被告Aに同土地上の借地権の整理を依頼し(以下「第2契約」という。),被告Aは同土地上の借地権者との交渉を開始した。 被告Aは,h町i番の土地上の借地権の整理を勧める際,1800万円及び神戸市灘区a町b丁目c番lの土地(以下「a町c番lの土地」という。)の底地の無償譲渡を求めていた。 原告Bと被告Aは,5月31日付け覚書(甲4)を作成した。同覚書には,h町i番の土地に関して下記のとおり記載されている。下記記載の「甲」とは原告BないしEのことであり,「乙」とは被告Aのことであり,「東側部分」とは,h町i番の土地の東北のポイントから16・25メートル西の地点から南に線を引いて同土地を東西に二分したときの東側の部分のことである(以下同部分を「東側部分①」といい,残余の西側の部分を「西側部分①」という。)。 記 1 h町b丁目の取扱い1) 東側部分(巾16.25m)を更地として甲が取得する2) 甲の負担現金1800万円a町b丁目H氏借地の底地を提供上記1)における分筆費用を負担する3) 乙は,甲の代理人として借地権者10名と協議しまとめ,取りきめを実行するエその後,h町i番の土地の借地権の買取交渉が容易に進展しなかったことから,原告Bと被告Aは,同覚書の内容を一部変更した平成7年12月2 して借地権者10名と協議しまとめ,取りきめを実行するエその後,h町i番の土地の借地権の買取交渉が容易に進展しなかったことから,原告Bと被告Aは,同覚書の内容を一部変更した平成7年12月26日付け覚書(甲10,乙2,以下「12月26日付け覚書」という。)を作成した。 オ原告Bは,平成7年12月26日,借地権整理費用2000万円とh町i番の土地の南側擁壁造成工事費用600万円の合計2600万円を被告Aに交付した(甲11)。 カ原告Bは,被告Dに対し,平成8年5月7日,a町c番lの土地の所有権移転登記手続を行った。 なお,原告Bは,被告D宛てに額面1000万円の領収証を交付し(乙9),被告Aは同土地の譲渡所得税に充てるため,300万円を交付した(上記300万円の交付の時期については争いがある。)。 キその後,h町i番の土地の借地人であるI,J,K,L,Mの5名に被告Aを加えた6名と,株式会社Z(以下「Z」という。)及びEの三者間において,平成8年8月8日付けで,借地権の総額を4800万円(被告Aが800万円,Kが450万円,I外3名の借地人が合計3550万円)とする合意書(甲7,以下「8月8日付け合意書」という。)を作成した上,同日,EとZは,被告Aの周旋によりh町i番の土地の西側の87.91坪の土地(以下同部分を「西側部分②」といい,残余の東側の部分を「東側部分②」という。)について,代金7032万8000円とする売買契約を締結した。土地代総額7032万8000円(坪当たり80万円)から上記4800万円を控除した2232万8000円のうち,2000万円を原告Bが受領し,232万8000円を被告Aが受領した(甲8の1ないし3)。 ク原告Bは,平成8年10月23日,被告Aから借地人N,O,P(Pの同居 た2232万8000円のうち,2000万円を原告Bが受領し,232万8000円を被告Aが受領した(甲8の1ないし3)。 ク原告Bは,平成8年10月23日,被告Aから借地人N,O,P(Pの同居人Q)及びRの4軒分の譲渡確認書コピー(甲9の1ないし4),平成8年10月22日付けの額面1800万円の領収証(甲30)並びにh町i番の土地の南側擁壁工事費その他諸経費として,被告会社の発行する原告ら宛ての額面400万円の領収証(甲31)を受領した。 上記額面1800万円の領収証の但書には「h町b丁目i番内借地権者の内,R,P,Q,N4氏借地権代及び代理交渉手数料代を含む代金として」と記載されていたが,借地権者としてOの記載がなかったので,原告Bは,同年11月24日,被告AにOの借地権買取費用を含むことを追記させた。 2 主要な争点(1) 第1事件において被告側が得た利益(争点1)(2) 第2事件において被告側が得た利益(争点2)(3) 第1契約及び第2契約の締結が弁護士法72条に違反し,公序良俗に反するといえるか否か(争点3)。 (4) 弁護士法72条に違反するとして,原告側の被告側に対する金銭給付が不法原因給付に該当するか否か(争点4)。 (5) 第1契約及び第2契約の締結が暴利行為に当たり,公序良俗に反するといえるか否か(争点5)。 (6) 第1契約及び第2契約につき,被告Aが委任契約の終了に基づく清算義務を負うか否か(争点6)。 (7) 第1契約及び第2契約が原告Bの錯誤に基づくか否か(争点7)。 (8) 第1契約及び第2契約は被告Aの詐欺によるものか否か(争点8)。 3 当事者の主張(1) 争点1(第1事件において被告側が得た利益)について(原告らの主張)ア被 (8) 第1契約及び第2契約は被告Aの詐欺によるものか否か(争点8)。 3 当事者の主張(1) 争点1(第1事件において被告側が得た利益)について(原告らの主張)ア被告側が原告側から受領した金員及び土地原告Bは,被告側に対し,第1事件に関して,平成7年5月31日までに1000万円,同日に800万円,同年6月10日に1100万円の合計2900万円をそれぞれ支払った。 原告側は,被告側に対し,a町c番gの土地を無償で譲渡し,同土地について被告会社に対し,平成7年8月22日,所有権移転登記手続をした。被告会社は,すでに同土地を第三者に譲渡しているが,現在の同土地の価額は,1600万円を下らない。 イ被告側の出費被告側は,第1事件に関して,733万円しか出費しなかった。 ウよって,被告側は,第1事件において,2167万円(2900万円-733万円)及び1600万円相当のa町c番gの土地を利得した。 (被告らの主張)ア被告側が原告側から受領した金員及び土地原告らが主張するとおり,被告側は,原告側から2900万円及びa町c番gの土地の無償譲渡を受けた。同土地の時価は,約1000万円相当である。 イ被告側の出費被告側の第1事件における出費が733万円であったことは,否認する。 (2) 争点2(第2事件において被告側が得た利益)について(原告らの主張)ア被告側が原告側から受領した金員及び土地 (ア) 原告側は,被告側に対し,平成7年12月26日,2600万円を支払った。 (イ) h町i番の土地の西側部分②が代金7032万8000円でZに売却された際,借地権者に対して合計4800万円が支払われた ,被告側に対し,平成7年12月26日,2600万円を支払った。 (イ) h町i番の土地の西側部分②が代金7032万8000円でZに売却された際,借地権者に対して合計4800万円が支払われたとされ,残額2232万8000円のうち,原告側が2000万を受領し,被告側が232万8000円を受領した。 もっとも,その際,被告側は,借地権者に対して実際には合計4000万円しか支払っておらず,800万円を利得していた。 (ウ) 原告側は,被告側に対し,平成8年10月23日,900万円(小切手500万円及び現金400万円)を支払った。 (エ) 原告側は,被告側に対し,a町c番lの土地を無償で譲渡し,同土地について被告Dに対し,平成7年8月24日,所有権移転登記請求権仮登記をし,平成8年4月30日,所有権移転登記をした。 イ被告側の出費被告側は,h町i番の土地の借地人に対し,下記の日時に下記の額を支払って借地権を買い取った。 記借地人借地権買受日借地権買受価額P 平成8年8月10日 500万円O 平成8年4月27日 500万円R 平成7年12月29日 500万円N 平成8年10月31日 400万円合計 1900万円被告側は,原告側に対し,仲介報酬として70万円の領収書を交付した。 ウよって,被告側は,第2事件において,下記のとおり2562万8000円及びa町c番 1900万円被告側は,原告側に対し,仲介報酬として70万円の領収書を交付した。 ウよって,被告側は,第2事件において,下記のとおり2562万8000円及びa町c番lの土地を不当に利得した。 記260,000,000+9,000,000+2,328,000+8,000,000-19,000,000-700,000= 25,628,000(被告らの主張)ア被告側が原告側から受領した金員及び土地について(ア)a 被告側は,平成7年12月26日,原告側から,h町i番の土地上の借地権整理のための資金として2000万円を,同土地の南側擁壁工事代金として600万円をそれぞれ受領した。 bh町i番の土地の西側部分②が売却された際,被告側は,代金7032万8000円のうち借地権者へ交付された4000万円及び原告側に交付した2000万円を控除した1032万8000円を受領した。 c 被告側は,h町i番の土地からPらを退去させるための費用として,原告側から500万円を受領した。 (イ) 原告らは,原告側が被告側に対し,a町c番lの土地を無償で譲渡したと主張するが,実際には,被告側が原告側から同土地を1000万円で購入したのである。 確かに,当初は原告らが主張するように無償譲渡の合意がされていたが,5月31日付け覚書が白紙になるとともに,上記合意も白紙となった。もっとも,被告Aは,その後,原告Bに対し,改めて同土地を代金1000万円で買いたい旨伝え,原告Bは,これを了承したのである。そして,被告Aは,平成7年8月22日,S司法書士事務所において,原告 た。もっとも,被告Aは,その後,原告Bに対し,改めて同土地を代金1000万円で買いたい旨伝え,原告Bは,これを了承したのである。そして,被告Aは,平成7年8月22日,S司法書士事務所において,原告Bに対し,上記売買代金の支払として,現金700万円及び300万円の被告A名義の借用書(返済期限平成8年4月30日)を交付し,原告Bから平成8年4月30日付け領収証(乙9)を受領した。そして,被告Aは,平成8年2月2日,原告Bに対し,同借用書と引換えに額面300万円の小切手を交付した。 イ被告側の出費(ア) 被告側は,h町i番の土地の借地権者に対し,2016万円を支払った(乙13の1ないし乙16)(イ) 被告側は,h町i番の土地の南側擁壁工事代として600万円を支出した。 (ウ) 被告側は,h町i番の土地からP及びNらを退去させるため,平成8年10月,同人らに対して合計500万円を支払った。 (エ) 被告側は,h町i番の土地の借地権者らと28回にわたり会合を開いて交渉を重ねており,そのために諸経費を要した。 ウよって,被告側が第2事件において受領した報酬の額は,下記のとおりの1016万8000円から前項■の諸経費を除いた額である。 記26,000,000+10,328,000+5,000,000-20,160,000-6,000,000-5,000,000= 10,168,000(3) 争点3(第1契約及び第2契約の締結が弁護士法72条に違反し,公序良俗に反するといえるか否か。)について(原告らの主張)ア被告Aが原告B及びEから受託して行った行為は,原告B及びEと借地人及び 契約及び第2契約の締結が弁護士法72条に違反し,公序良俗に反するといえるか否か。)について(原告らの主張)ア被告Aが原告B及びEから受託して行った行為は,原告B及びEと借地人及び借家人間の賃貸借契約を解消することを目的としたものであって,弁護士法72条により禁じられる非弁活動に該当するものである。 イ弁護士法72条の「法律事件」とは,法律上の権利義務に関し争いや疑義があり,又は,新たな権利義務関係の発生する案件をいうものとされる。本件における被告Aの行為は,震災により生じた地主と借地人,借家人間の権利義務に関する争いや疑義に介入したものである。 仮に被告が主張するように,同条の要件として「事件性」が必要であるとしても,大震災後に被災地においては多くの借地借家紛争が頻発したことは公知のところであり,それは,借地上建物の全半壊などを契機として借地借家関係の解消を求める地主側と,借地借家法や罹災都市借地借家臨時処理法などの適用を主張して立退きを拒む借地借家人との法的紛争として現実化していた。本件の第1,第2事件ともに,かかる潜在的な法的紛争状態が存在するのであるから,法律上の紛争の発生が十分予想される事態のもとに被告Aは借地権整理を行ったということができ,「事件性」の認められる事案と考えられる。 ウ弁護士法72条は高度の公益的規定と解されており,これに違反する行為は,公の秩序に反するものとして無効である(民法90条)。したがって,第1契約及び第2契約は,いずれも無効であり,被告A,被告会社及び被告Dは,その取得した金銭ないし土地所有権を原告側に返還する義務を負う。 (被告らの主張)被告Aの行為は弁護士法72条の構成要件該当性を欠き,したがって,原告らの契約無効の主張は失当である。 した金銭ないし土地所有権を原告側に返還する義務を負う。 (被告らの主張)被告Aの行為は弁護士法72条の構成要件該当性を欠き,したがって,原告らの契約無効の主張は失当である。 同条にいう「その他一般の法律事件」とは実定法上「事件」と表現されている案件及びこれと同視しうる程度に法律関係に問題があって「事件」と表現され得る案件でなければならない。すなわち,同条に列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に関して争いがあり,あるいは疑義を有するものであること,いいかえれば,「事件」というにふさわしい程度に争いが成熟したものであることを要する。 本件においては,そもそも原告らと借地人との間になんらの紛争もなかったことはもちろん,法律上の権利義務に関しても特に争いがあったわけではないから,被告Aが行った借地権売買交渉,借家人との立退交渉は法律事件に関するものではなく,法律事件性の要件を欠く。 「報酬」とは,法律事務取扱のための主として精神的労力に対する対価をいうところ,被告Aの行った立退交渉は,高度な法律知識等の精神的労力を要するものではなく,むしろ,宅建業者として借地権者のところへ見舞金や手土産等を持参して足繁く通い,説明会を開くなどして友好関係を築くなど肉体的労力により行われるものであるから,これに対する報酬は同条にいう「報酬」にあたらない。 (4) 争点4(弁護士法72条に違反するとして,原告側の被告側に対する金銭給付が不法原因給付に該当するか否か。)について(被告らの主張)仮に被告Aの行為が弁護士法72条に違反するとしても,原告らの給付は不法原因給付(民法708条)として返還請求は認められない。 原告らが被告Aの借地権整理により更地を取得してお 主張)仮に被告Aの行為が弁護士法72条に違反するとしても,原告らの給付は不法原因給付(民法708条)として返還請求は認められない。 原告らが被告Aの借地権整理により更地を取得しておきながら,今になって無効を主張し,被告Aにタダ働きをさせるという結果を導こうとするのは,いかにも衡平に反する。 (原告らの主張)民法708条但書は,「不法ノ原因ガ受益者ニ付テノミ存シタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と規定しており,公序良俗違反による無効の原因行為による給付には,これが適用されると解されている。実質的に考えても,公序良俗に反する無効な行為を行った者に無効な行為に基づく給付を保持させる結果を認めることは,公序良俗違反の行為を間接的に助長することになり,容認できない。 (5) 争点5(第1契約及び第2契約の締結が暴利行為に当たり,公序良俗に反するといえるか否か。)について(原告らの主張)ア第1事件について(ア) a町c番dの土地の時価(更地価格)は,第1契約締結当時の平成7年度の路線価によれば,下記のとおり約1億0869万円であった(乙5,乙6,甲25)。なお,財産評価基本通達15項の奥行価格補正等の減額要素を加味していない。 記335,000円/㎡(路線価)× 0.85(調整率)×381.72㎡(地積)= 108,694,770円原告Bが借地権整理により得るであろう経済的利益は,前記更地価格に借地権割合0.6を乗じた約6521万円となる(乙5,甲46)。 そして,a町c番dの土地上の借地権整理に要した費用は,被告AがFらに支払った733万円のみであるから,差引き約 更地価格に借地権割合0.6を乗じた約6521万円となる(乙5,甲46)。 そして,a町c番dの土地上の借地権整理に要した費用は,被告AがFらに支払った733万円のみであるから,差引き約5788万円が原告Bが得たはずの経済的利益である。 (イ) これに対し,被告Aが前記借地権整理により取得したことが判明した利得は,原告Bより受け取った2900万円から前記費用を差し引いた2167万円とa町c番gの土地(時価1600万円相当)の合計3767万円相当であり,実に,被告Aは,原告Bの得べかりし経済的利益の約65パーセントを利得している。 (ウ) 大阪弁護士会の報酬規定(甲46)によれば,報酬計算の基礎となる借地権価格を前記のように約6521万円とした場合の着手金は,訴訟事件の場合で約264万円(3パーセント+69万円),同じく訴訟事件の報酬金は前記の5788万円を得られた利益と考えた場合に約485万円(6パーセント+138万円)であって,合わせて約749万円である。 しかも,示談交渉事件の場合は,なお3分の2の金額に減ずることができるとされているので(甲46,大阪弁護士会報酬規定17条1項),a町c番dの土地上の借地権整理を被告Aではなく弁護士が適法に受任した場合に認められる適正な標準的報酬金(着手金を含む。)は,約499万円である。 (エ) すなわち,被告Aは,本件借地権の整理によって多額の金員等を自ら取得しようとしている事実を原告Bには全く説明しないまま,請負契約名下に適正な弁護士報酬の約7.5倍に当たる3767万円相当の報酬を取得したと主張して利得しているのであって,その暴利性は明らかである。 イ第2事件について(ア) h町i番の土地の時価(更地価格)は,第2契約締結当時の平成7年 767万円相当の報酬を取得したと主張して利得しているのであって,その暴利性は明らかである。 イ第2事件について(ア) h町i番の土地の時価(更地価格)は,第2契約締結当時の平成7年度の震災後の路線価格によれば,下記のとおり約1億3154万円であった(乙4,乙6,甲18の1)。なお,h町i番の土地の路線価には,27万2000円/㎡(公道沿いの土地)と20万8000円/㎡(私道に面する土地)の2種類があるので(乙4),借地ごとに評価は異なるが,とりあえず前者の路線価格を基準とした。 記272,000円/㎡(路線価)×0.75(調整率)×644.82㎡(地積)= 131,543,280円同土地の借地権価格は,前記更地価格に借地権割合0.6を乗じた約7892万円である(乙4)。 Eは,借地の全部ではなく東側部分①の巾16.25メートルの借地のみを更地にすることを被告Aに依頼したので,借地全体の約6割が更地化の対象であり(甲15の1によれば,借地全体の間口ないし巾は26.224メートルである。),Eが借地権整理により得るであろう経済的利益は,借地権価格の6割相当に当たる約4735万円となる(甲46)。 そして,実際に更地化できた面積は,このうちの286.29平方メートルであるから(甲10),これに相当する経済的利益は下記のとおり約3504万円である。 記272,000円/㎡(路線価) ×0.75(調整率)×0.6(借地権割合)×286.29㎡(地積)= ,000円/㎡(路線価) ×0.75(調整率)×0.6(借地権割合)×286.29㎡(地積)= 35,041,896円(イ) そして,東側部分②の借地権整理に要した真の費用は,N外4名の借地人に対して支払った1900万円(Oへの支払が560万円とした場合は1960万円)であるから,差引き約1604万円(又は約1544万円)がEが得たはずの経済的利益である。 (ウ) なお,このほか,Eは,被告会社の仲介でZに対してh町i番の土地の西側部分②を2232万8000円で売却した(甲8の1)。 これに対し,被告Aが前記借地権整理により取得したことが判明した利得は,原告Bより受け取った3500万円から前記借地権整理に要した費用1900万円(又は1960万円)を控除した1600万円(又は1540万円)と,前記のZへの土地売却によりEが西側部分②の底地代金として取得すべきものを被告Aが架空の借地権名義で取得した800万円(甲7)及び西側部分②の売却代金のうち被告AがEに引き渡さなかった232万8000円の合計2632万8000円(又は2572万8000円)並びにa町c番lの底地所有権(1000万円相当)の合わせて3632万8000円(又は3572万8000円)相当であり,実に,被告Aは,Eの得べかりし経済的利益の約2.26倍(又は約2.31倍)の金額を利得している。 また,西側部分②の底地売却に伴い,Eが被告会社に対して仲介報酬を旧建設省の告示に定める上限の3パーセントプラス6万円すなわち約73万円を支払うとすると,これは実際に要した費用として前記(イ)の利益から差し引かねばならない。そうすると,Eの得たはずの利益は約 を旧建設省の告示に定める上限の3パーセントプラス6万円すなわち約73万円を支払うとすると,これは実際に要した費用として前記(イ)の利益から差し引かねばならない。そうすると,Eの得たはずの利益は約1531万円(又は約1471万円)となり,被告Aは,Eの得べかりし利益の約2.37倍(又は約2.43倍)もの金額を利得している。 (エ) 大阪弁護士会の報酬規定(甲46)によれば,報酬計算の基礎となる借地権価格を前記(ア)のように約4735万円とした場合の着手金は,訴訟事件の場合約211万円(3パーセント+69万円)であり,同じく訴訟事件の場合の報酬金は,前記(イ)の1604万円(又は1544万円)を得られた利益と考えた場合約178万円(又は約172万円)(10パーセント+18万円)であって,合わせて約389万円(又は約383万円)である。 しかも,示談交渉事件の場合には,なお3分の2の金額に減ずることができるとされているので(甲46,大阪弁護士会報酬規定17条1項),h町i番の土地の借地権整理を弁護士が適法に受任した場合の適正な標準的報酬金(着手金を含む。)は,約259万円(又は約255万円)である。 (オ) すなわち,被告Aは,本件借地権の整理によって,多額の金員等を自ら取得しようとしている事実をE(原告Bが代行)に全く説明しないまま,請負契約名下に適正な弁護士報酬のおよそ14倍もの報酬を取得したと主張して利得しているのであって,その暴利性は明らかである。 ウ以上のとおり,第1契約及び第2契約の締結は暴利行為に該当し,上記各契約は,公序良俗に反して無効であるから,被告A,被告会社及び被告Dは,その取得した金銭ないし土地所有権を原告側に返還する義務を負う。 (被告らの主張)ア被告Aの行為は, 上記各契約は,公序良俗に反して無効であるから,被告A,被告会社及び被告Dは,その取得した金銭ないし土地所有権を原告側に返還する義務を負う。 (被告らの主張)ア被告Aの行為は,弁護士業務ではない。弁護士法72条違反に該当しなければ,その契約は弁護士業務とは異質のものであって,異質の契約につき弁護士報酬規定を持ち出すこと自体失当である。 また,暴利行為性を認めた裁判例においても,単に弁護士報酬規定に反するから暴利行為であると短絡的に結論づけているのではなく,暴利行為の要件,すなわち,①他人の急迫,軽卒,無経験に乗じて,②不当な利得を取得したという要件を吟味した上で,具体的事案において報酬契約が公序良俗に反するとしている。 本件において,原告Bは,財産関係に非常に細かい配慮をする人物であり(乙22の1,2,乙30ないし41),費用対効果を考えて本件の請負代金の出捐を決定したのであり,実際に以下のイ,ウのとおり第1事件,第2事件において相当の利益を上げている。また,被告Aの労力は,およそ平成7年初旬からほぼ2年にもわたって費やされたことから,いずれにしても上記要件を満たさず,暴利行為にはあたらない。 イ第1事件についてa町c番dの土地の時価(更地価格)は,1坪当たり少なくとも140万円であるから,更地価格は少なくとも1億6194万円以上であり,借地権価格は,9700万円以上である。 そうすると,a町c番dの土地の借地権整理を2900万円及びa町c番gの土地(時価1000万円相当)の提供で実現したのであるから,原告Bとしては,5800万円相当の利益を上げたことになる。実際,原告Bは,この結果に満足していた。 ウ第2事件について原告Bは,第2事件において,14 現したのであるから,原告Bとしては,5800万円相当の利益を上げたことになる。実際,原告Bは,この結果に満足していた。 ウ第2事件について原告Bは,第2事件において,1449万7600円の利益を上げた。 (6) 争点6(第1契約及び第2契約につき,被告Aが委任契約の終了に基づく清算義務を負うか否か。)について(原告らの主張)ア第1事件について原告Bの支払った金員及びa町c番gの土地は,借地権整理を委託した委託契約の費用として交付したものであるから,上記委託契約の終了により,原告Aは,上記費用から借地人に支払った金額を控除した2167万円について清算する義務がある。 また,a町c番gの土地は,第三者へ譲渡されたことから,被告A及び被告会社は,同土地の返還に代えて,同土地の価額相当である1600万円を賠償する義務がある。 イ第2事件について第1事件同様,被告Aは,Eに対し,Eの支払った金員及びa町c番lの土地につき清算義務がある。 したがって,被告Aは,Eに対し,委託事務終了に伴う清算義務の履行として,費用として受け取った金員のうち,未使用の剰余1762万8000円及びa町c番lの土地の所有権を原告側に返還する義務がある。 さらに,被告Aは,Eがh町i番の土地の西側部分②をZに売却した代金のうち,借地権対価の名目で受け取った800万円について返還する義務がある。 本件の事情を知る被告Dは,上記の被告Aの清算義務の発生によりa町c番lの土地の底地所有権について遡及的に所有権を欠くに至ったので,原告Bに対しa町c番lの土地を返還する義務があり,同土地の所有権移転登記及び仮登記の抹消登記手続義務がある。 (被告らの主張) 地の底地所有権について遡及的に所有権を欠くに至ったので,原告Bに対しa町c番lの土地を返還する義務があり,同土地の所有権移転登記及び仮登記の抹消登記手続義務がある。 (被告らの主張)ア以下の事情からすると,第1契約及び第2契約は,委任契約ではなく,被告Aが借地権整理をした上で,更地工事をして原告側に引き渡すという仕事の完成を目的としたものであるから,請負契約である。 (ア) 被告Aは,借地権買取費用について,原告Bに報告する必要を感じていなかった。 (イ) 被告Aは,更地工事代金やその他諸費用も,上記請負契約代金の中から支出した。 (ウ) 第1事件において,原告Bがすでに受け取っていた更新料200万円につきFらに返還する必要が生じたが,被告Aは,原告Bに出費を求めることをせず,請負代金の中から原告Bを通じてFらに上記金員を支払った。 (エ) 被告Aが原告Bから委任状(甲12)の交付を受けたのは,賃借人から賃借権の譲渡を受けるのに賃貸人の同意が必要であることに加えて,被告Aの交渉が地主である原告Bの認証のもとに行われているということを借地人に示し,交渉をスムーズに運ぶためであった。 イ仮に原告らの主張するように本件契約を委任の観点から捉えるにしても,報酬と費用を区別せず受任者に交付しているのであるから,請負委任混合型の無名契約であり,原告主張の精算義務等は生じない。 (7) 争点7(第1契約及び第2契約が原告Bの錯誤に基づくか否か。)について(原告らの主張)ア第1事件について原告Bは,被告Aが借地権買取費用に充当するため,1600万円相当のa町c番gの土地を無償で被告会社に譲渡することを求めたので,これに応じて被告会社に所有権を移転したが,仮にこ 件について原告Bは,被告Aが借地権買取費用に充当するため,1600万円相当のa町c番gの土地を無償で被告会社に譲渡することを求めたので,これに応じて被告会社に所有権を移転したが,仮にこれが原告Bと被告A間の報酬契約に基づくものとしても,被告Aは,実際には建売住宅を建築して第三者に分譲したにすぎず,被告Aに対する報酬契約(代物弁済契約)及び被告会社に対するa町c番gの土地の所有権移転の意思表示には重大な錯誤があり無効である。 また,a町c番dの土地の借地権買取価格は,実際には733万円であり,これを基準とした場合の仲介手数料は,旧建設省の告示による28万円が限度であるところ,原告Bは,被告Aの,借地権買取の価格は2900万円であるとの報告を受けて,平成7年8月22日付け報酬契約(代物弁済契約)の履行として被告会社への所有権移転登記手続を行ったものであって,報酬合意の基礎となる買取金額について重大な錯誤があったから,原告Bと被告Aとの報酬契約及び被告会社への所有権移転の合意は,要素の錯誤により無効である。 イ第2事件についてE(原告Bが代行)は,被告Aの申出を受けて2600万円(最終的には3500万円)及び原告B所有のa町c番lの土地を使って借地権の買取りを行うとの認識のもと,原告Bにおいて1000万円相当のa町c番lの土地を被告D名義に移転したものであるが,仮にこれがEと被告A間の報酬契約(代物弁済契約)に基づくものとしても,実際の買取代金は1900万円にすぎなかった。 そして,h町i番の土地の借地権買取価格は,実際には,1900万円であり,これを基準とした場合の仲介手数料は,旧建設省の告示による63万円が限度であるが,E及び原告Bは,被告Aから借地権買取価格に比して不当に高額な報酬請求を受 権買取価格は,実際には,1900万円であり,これを基準とした場合の仲介手数料は,旧建設省の告示による63万円が限度であるが,E及び原告Bは,被告Aから借地権買取価格に比して不当に高額な報酬請求を受けたことを知らず,Eと被告Aとの間でa町c番lの土地の所有権を被告Dへ無償譲渡する旨の報酬契約(代物弁済契約)を行い,平成8年4月30日,その履行として所有権移転登記を行ったのであって,報酬合意の基礎となる買取金額について重大な錯誤があったから,Eと被告Aとの報酬契約及び原告Bと被告Dの所有権移転の合意は,要素の錯誤により無効である。 (被告らの主張)前記((5)(被告らの主張)イ,ウ)のとおり,原告らは本件借地権整理により,自らの手を煩わせることなく第1事件において5800万円,第2事件において1449万7600円もの利益を確保した。なお,第1事件においてa町c番dの土地を更地化できたということは,周囲の原告B所有地と合わせて大きな四角土地を確保できたことになり,5800万円にとどまらない利益が生じている。 また,従前,原告Bは,a町c番dの土地の借地人であったTに対し,同土地を2分してそのうちの半分の底地所有権をTに譲渡する代わりに反対側の半分の借地権の返還を自ら交渉したこともあり,このときは,借地権割合を5対5として,借地権料として5割出捐すること及び原告Bの支出において土地上の建物を撤去することを容認している。 加えて,原告Bは,節税を始めとして金銭及び所有財産に非常に細かい配慮をする人柄である。 これらのことからすると,原告Bは,被告Aに借地権整理を申し込むにあたって,十分に費用対効果を考えて,自己の出捐を決定したはずであるから,そもそも表示と内心に食い違いがないばかりか,要素の錯誤ともならない。 ことからすると,原告Bは,被告Aに借地権整理を申し込むにあたって,十分に費用対効果を考えて,自己の出捐を決定したはずであるから,そもそも表示と内心に食い違いがないばかりか,要素の錯誤ともならない。 (8) 争点8(第1契約及び第2契約は被告Aの詐欺によるものか否か。)について(原告らの主張)ア第1事件について被告Aは,報酬決定に当たり借家人の居住用であると申し向け,あるいは借地権買取価格につき,虚偽の報告をし,原告Bは被告Aに欺罔された結果として,a町c番gの土地の代物弁済が報酬として相当であるとの誤信のもとに,被告会社に対し,a町c番gの土地の所有権移転を行ったものであるから,原告Bは,本訴において被告Aに対し,詐欺に基づく意思表示として原告Bと被告A間の報酬契約を取り消す。 イ第2事件について被告Aは,E及び原告Bに対し,借地権買取見込み価格が2600万円(最終的には3500万円)であるとの虚偽の説明をし,原告Bは,被告Aに欺罔された結果として,a町c番lの土地の代物弁済が報酬として相当であるとの誤信のもとに,被告Dに対し,a町c番lの土地の所有権移転を行ったものである。 よって,原告Bは,平成9年9月19日の本件口頭弁論期日において,被告Aに対し,民法96条1項に基づいて,Eと被告A間の報酬契約及び原告Bの被告Dに対する所有権移転の意思表示を取り消すとの意思表示をした。 (被告らの主張)錯誤がない以上,詐欺も成立しない。また欺罔行為もない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(第1事件において被告側が得た利益)について(1) 被告側が原告側から受領した金員及び土地アまず,原告Bが,被告Aに対し,平成7年5月31日までに100 所の判断 1 争点1(第1事件において被告側が得た利益)について(1) 被告側が原告側から受領した金員及び土地アまず,原告Bが,被告Aに対し,平成7年5月31日までに1000万円,同日に800万円,同年6月10日に1100万円の合計2900万円をそれぞれ支払ったことは,当事者間に争いがない。 イまた,平成7年8月22日,原告Bが被告会社に対し,a町c番gの土地を1600万円で売却する旨記載された売買契約書(甲28)を作成して,同土地につき被告会社に対して所有権移転登記手続を行い,原告Bは被告会社に対して1600万円の領収証(乙18)を交付したこと,同土地の譲渡が無償で行われたことは,当事者間に争いがない。 そして,上記各証拠(甲28,乙18)に同土地の売買代金が1600万円である旨が記載されていることや,U税理士が同土地の価額を1600万円と評価していたこと(甲42,原告B本人)からすると,同土地の上記譲渡時における価額は1600万円であったと認めるのが相当である。 (2) 被告側の出費証拠(甲3,42,乙1,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告Aは,a町c番dの土地の賃借人の1人であったFに対し,平成7年5月ころ,同土地の借地権解消の対価533万円と同土地の賃貸借契約更新料の返還分200万円の合計733万円を支払ったことが認められる。 被告Aは,このほか,Fに対し,同土地の賃借人4名に対する裏金として,各150万円,合計600万円を支払った旨供述するが,上記733万円以外は受け取っていない旨のF作成の報告書(平成九年七月一八日付)(甲3)及び上記733万円のほかに150万円を受け取ったかどうかは覚えていない旨の陳述書(F)(乙1)がある 述するが,上記733万円以外は受け取っていない旨のF作成の報告書(平成九年七月一八日付)(甲3)及び上記733万円のほかに150万円を受け取ったかどうかは覚えていない旨の陳述書(F)(乙1)があることからすると,被告Aの上記供述は,他にこれを裏付ける的確な証拠がない本件においては,これを採用することができない。 (3) 被告側が得た利益以上によれば,被告側は,上記受領額2900万円と上記出費額733万円の差額である2167万円の利益と1600万円相当のa町c番gの土地を得たと認められる。 2 争点2(第2事件において被告側が得た利益)について(1) 被告側が原告側から受領した金員及び土地ア(ア) 前記争いのない事実等によれば,原告Bは,平成7年12月26日,借地権整理費用2000万円とh町i番の土地の南側擁壁造成工事費用600万円の合計2600万円を被告Aに交付したというのである。 また,前記争いのない事実等によれば,h町i番の土地の西側部分②の売却代金総額7032万8000円から借地権の総額4800万円を控除した2232万8000円のうち,2000万円を原告Bが受領し,232万8000円を被告Aが受領したというのであるところ,8月8日付け合意書(甲7)において,借地権の総額4800万円のうち,800万円が被告Aの権利分とされていたことから,結局,被告Aが借地権者に対して交付した金額は4000万円であり,被告Aが1032万8000円を受領したものであることは,当事者間に争いがない。 さらに,平成8年10月23日,被告Aが原告Bから500万円を受領したことは,当事者間に争いがない。 (イ) 原告Bは,平成8年9月26日,被告Aから,N い。 さらに,平成8年10月23日,被告Aが原告Bから500万円を受領したことは,当事者間に争いがない。 (イ) 原告Bは,平成8年9月26日,被告Aから,Nに200万円を渡したが,あと400万円を支払わないといけないなどと言われたため,同年10月22日,銀行から700万円の預金を引き出し,そのうち300万円を外貨預金にしたうえ,その余の400万円は,同月23日,護国神社の裏の路上に止めた被告Aの乗用車の助手席で被告Aに渡し,その後,被告AからNに418万円を支払ったと聞いた旨供述する。 そして,証拠(甲37の1,2,甲38,41の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,同月22日,原告Bが700万円の預金を引き出したこと(甲38),400万円を被告Aに渡したとされる同月23日の約1週間後である同月31日,被告AがNに対して400万円を支払い,金額418万円の領収書が作成されたこと(甲41の2),原告Bが被告Aから説明を受けた日である平成8年9月26日の会談メモ(甲37の1)及び会談メモ再録(甲37の2)において,Nに対する「既渡し」が「200」,「未渡し」が「400」である旨の記載がされるとともに,上記「400」が「418」に書き換えられていることが認められる。 また,被告Aは,本件とは関係ないと留保しつつも,400万円の授受があったようにも思う旨供述している。 以上によれば,原告Bの上記供述は,不自然な点はなく,客観的証拠とも符合し,信用することができるところ,これによれば,被告Aが原告Bから400万円を受領したと認めることができ,これを覆すに足りる的確な証拠はない。 (ウ) 以上の受領額の合計は,4532万8000円 ることができるところ,これによれば,被告Aが原告Bから400万円を受領したと認めることができ,これを覆すに足りる的確な証拠はない。 (ウ) 以上の受領額の合計は,4532万8000円である。 イ(ア) また,原告Bが,平成8年5月7日,被告Dに対してa町c番lの土地の所有権移転登記手続を行ったことは,当事者間に争いがない(その日付が前記のとおりであることは,証拠(甲32の1)により明らかである。)。 (イ)a 原告Bは,被告Aに対し,5月31日付け覚書(甲4)に基づき,a町c番lの土地の底地を無償で譲渡した旨供述するところ,前記争いのない事実等によれば,被告Aは,h町i番の土地上の借地権の整理を勧める際,1800万円及びa町c番lの土地の底地の無償譲渡を求めていたというのであり,5月31日付け覚書(甲4)には,「甲(原告B)の負担」として「a町b丁目H氏借地の底地を提供」と記載されていることや,前記争いのない事実等記載のとおり,被告Aがa町c番lの土地の譲渡所得税に充てるため,原告Bに300万円を交付したこと(有償譲渡であれば,被告Aが原告Bに対して譲渡所得税分を交付する必要はないはずである。)からすると,原告Bの上記供述は信用することができる。 したがって,原告Bは,被告Aに対し,5月31日付け覚書(甲4)に基づき,a町c番lの土地の底地を無償で譲渡したと認められる。 そして,不動産売買予約契約書(乙8)に同土地の売買代金が1000万円である旨が記載されていること,U税理士が同土地の価額を1000万円と評価していたこと(甲42,原告B本人)からすると,同土地の上記譲渡時における価額は1000万円であったと認めるのが相当である。 ていること,U税理士が同土地の価額を1000万円と評価していたこと(甲42,原告B本人)からすると,同土地の上記譲渡時における価額は1000万円であったと認めるのが相当である。 b これに対し,被告らは,平成7年6月ころ,新社会党のV市議会議員が借地権整理の交渉に参加したことにより,借地権算定の基礎事情に大きな変更が生じたため,V議員の主張が厳しいものであったことと相まって,同年7月中旬ころ,原告Bと被告Aとの間で,5月31日付け覚書(甲4)は白紙に戻され,新たな条件として,12月26日付け覚書(乙2)が作成されて,被告Aは原告Bから現金1800万円及びa町c番lの土地の交付を受けないこととなったが,被告Aは,被告Dとの間で,h町i番の土地の西側に隣接する同人所有の宅地をa町c番lの土地の底地及び1800万円と交換する約束をしていたので,原告Bとの間で,a町c番lの土地を代金1000万円で譲り受ける旨の合意をし,これに基づき,同土地を代金1000万円で譲り受けたと主張する。そこで,5月31日付け覚書(甲4)と12月26日付け覚書(乙2)とを対比しつつ,検討する。 (a) 前記争いのない事実等によれば,5月31日付け覚書(甲4)には,h町i番の土地に関して,下記のとおり記載されている。なお,下記記載の「甲」とは原告BないしEのことであり,「乙」とは被告Aのことである。 記 1 h町b丁目の取扱い1) 東側部分(巾16.25m)を更地として甲が取得する2) 甲の負担現金1800万円a町b丁目H氏借地の底地を提供上 を更地として甲が取得する2) 甲の負担現金1800万円a町b丁目H氏借地の底地を提供上記1)における分筆費用を負担する3) 乙は,甲の代理人として借地権者10名と協議しまとめ,取りきめを実行する上記1)は原告Bの被告Aに対する依頼の内容,目的を,上記2)はこれに対する原告Bの負担の内容を,上記3)は上記1)を実現するために被告Aにおいてすべきことをそれぞれ記載したものと解するのが自然かつ合理的であるというべきである。 この点,被告らは,被告Aが原告Bからh町i番の土地の西側部分①(土地全体の38パーセント)の提供を受ける旨の合意があったと主張するが,上記1)においては同土地の西側部分について何も言及されていないから,上記1)の記載から上記のような合意があったということはできない。仮に上記のような合意があったとすれば,上記2)において原告Bの負担として明示されるはずであるし,原告Bの負担に関する合意が上記2)ではなく,上記1)から導かれるというのはきわめて不自然である。したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 (b) 前記争いのない事実等によれば,その後,h町i番の土地の借地権の買取交渉が容易に進展しなかったことから,原告Bと被告Aは,5月31日付け覚書(甲4)の内容を一部変更した12月26日付け覚書(甲10,乙2)を作成したというのである。 同覚書には,「1 処理の態様」として,Wの家屋の西側壁面の線を延長して土地を二分し,その東側部分はEの所有として,Wの借地部分を除く部分を更地と したというのである。 同覚書には,「1 処理の態様」として,Wの家屋の西側壁面の線を延長して土地を二分し,その東側部分はEの所有として,Wの借地部分を除く部分を更地とすること,その西側部分は被告会社及びGの各土地を併せて住戸7戸を建設し,I,J,K,L,Mの5氏及び乙(被告会社)が各1戸を所有すること,甲(原告B)が西側底地を売却し,これを上記各氏の共有土地とすること,R,P,N,Oの4氏より借地権を買い上げること,R,Oが転出し,P,Nが原告B又は被告会社が提供する住居を賃借することなどが記載されている。 また,「2.処理の具体的手段」として,「A,Bの二方法があり,なるべく早く甲(原告B)に於て撰(選)択,決定する。」との記載があり,「A」と「B」のいずれについても,冒頭に「甲(原告B)は乙(被告会社)に2600万円預ける。」との記載がある。 以上によれば,上記「1 処理の態様」は,5月31日付け覚書(甲4)の1),3)に対応するものとして,その後の交渉経緯をふまえてh町i番の土地の東西の境界線を変更するとともに,同土地全体の借地権等の権利関係を今後どのように整理するかを具体的に記載したものであり,上記「2.処理の具体的手段」は,同覚書の2)に対応するものとして,上記の借地権等の権利関係の整理に対する原告Bの負担に関する条件(現金1800万円の負担)を変更する旨を記載したものであると解するのが自然かつ合理的である。すなわち,12月26日付け覚書(甲10,乙2)は,5月31日付け覚書(甲4)の内容を変更,具体化する趣旨のものであり,5月31日付け覚書(甲4)が白紙に戻されたとみることはできない。 この点,被告らは,上記 乙2)は,5月31日付け覚書(甲4)の内容を変更,具体化する趣旨のものであり,5月31日付け覚書(甲4)が白紙に戻されたとみることはできない。 この点,被告らは,上記「1 処理の態様」の記載からみて,原告Bが本件借地権整理の出捐として,同土地の西側部分を出捐することになっていたのは明らかであると主張するが,同部分を被告会社の単独所有とするのではなく,「甲(原告B)は西側底地は売却,上記各氏(借地権者ら)の共有土地となる」と記載されていることからすると,これは原告B(E)が同部分の底地を借地権者らに売却する趣旨であると解するのが自然である(8月8日付け合意書(甲7)においては,被告Aも借地権者とされている。)。また,前記争いのない事実等によれば,Eは,Zに対し,h町i番の土地の西側部分②を売却したというのであり,その代金の一部である4000万円が借地権者らに支払われたことは当事者間に争いがないところ,これらの借地権者ら(I,J,K,L,M)は,借地権を買い上げられることとなった借地権者ら(R,P,N,O)とは異なるから,同西側部分②が借地権買上げ(同土地の東側部分の更地化)の費用に充てられたということはできない。したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 また,被告らは,12月26日付け覚書(乙2)の「2.処理の具体的手段」の「A」(借地権整理を継続する場合)には,「甲(原告B)は乙(被告会社)に2600万円預ける。」,「西側土地の底地売却代金として乙(被告会社)は甲(原告B)に2000万円を渡す。」と記載されているところ,上記2600万円の内訳は,2000万円が被告会社に対する運転資金としての貸付金であり,600万円が擁壁代であることは,同覚書と同時に作成された平成 )に2000万円を渡す。」と記載されているところ,上記2600万円の内訳は,2000万円が被告会社に対する運転資金としての貸付金であり,600万円が擁壁代であることは,同覚書と同時に作成された平成7年12月26日付け預り証(甲11)に「平成八年秋頃にこの内貳阡萬を返却し,完了する。」,「(600万円は)預りでなく支拂い金である。」との記載があることからも裏付けられていると主張する。しかしながら,同覚書には2000万円が運転資金としての貸付金であることが明示されているわけではないし,同覚書において本件の借地権整理と直接関係のない貸付金に関する約定がされているというのは不自然である。前記争いのない事実等によれば,5月31日付け覚書(甲4)において,第1事件に関して,「預け済」という文言が「支払済み」の意で用いられていることは明らかであるから,「甲(原告B)は乙(被告会社)に2600万円預ける」という記載は,原告Bが本件の借地権整理に対する負担として2600万円を支払うという趣旨であると解することに差し支えはなく,この記載から貸付金の約定があったということはできない。12月26日付け覚書(乙2)には,「これ(西側土地の底地売却代金として被告会社が原告Bに2000万円を渡すこと)により預り金2600万円は返却したものとする。」との記載が挿入されており,その筆跡と原告Bの印章の印影からみて,原告Bがこれを記載したものと認められるものの,原告Bは,同覚書(乙2)は被告Aが口頭で説明したことをそのとおり写したものであると供述し,また,被告A作成の預り証(甲11)の記載内容の意味を理解していないことからすると,原告Bが被告Aとの間で2000万円を運転資金として貸し付ける旨の合意をしたとはいえない。そして,「西側土地の底地売却代金として乙(被告会社)は甲 )の記載内容の意味を理解していないことからすると,原告Bが被告Aとの間で2000万円を運転資金として貸し付ける旨の合意をしたとはいえない。そして,「西側土地の底地売却代金として乙(被告会社)は甲(原告B)に2000万円を渡す。」との記載は,その売却代金2000万円が原告B(所有者であるE)に帰属することを前提としたものであるのに(これが被告Aに帰属すべきものであるとすれば,原告Bに2000万円を渡す必要はないはずである。),これを原告Bに渡すことによって貸付金を含む預り金2600万円が返済されたことになるというのはきわめて不合理である。したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 さらに,被告らは,同覚書(乙2)の「2.処理の具体的手段」の「B」(借地権整理を断念した場合)には,h町i番の土地の底地を被告会社に売却することが定められているところ,a町c番lの土地が借地権整理のために拠出されたものであるとすれば,借地権整理を断念した場合にこれが返却されることが記載されるはずであるのに,その点については一切触れられず,ただ2600万円全額の返還と底地代金5300万円の支払の記載しかないと主張する。しかしながら,a町c番lの土地の返還について記載がないのは,前記のとおり,同覚書(乙2)は原告Bにおいて被告Aが口頭で説明したことをそのとおり写したものであることからすると,被告Aが原告Bに対してその点を説明しなかったからであると考えられる。5月31日付け覚書(甲4)に基づき,平成7年8月24日,同土地につき被告Dを権利者とする所有権移転請求権仮登記がされたこと(甲32の1)からすると,その後,被告A及び原告Bが12月26日付け覚書(乙2)を作成する際に同土地の負担やその返還について意識していなかったとして 権利者とする所有権移転請求権仮登記がされたこと(甲32の1)からすると,その後,被告A及び原告Bが12月26日付け覚書(乙2)を作成する際に同土地の負担やその返還について意識していなかったとしても,必ずしも不自然とはいえない。したがって,同覚書(乙2)に同土地の返還について記載がないからといって,直ちに同土地の無償譲渡という条件が白紙に戻されたということはできない。 (c) 被告Dは,S司法書士事務所において,被告Aが原告Bに対し,a町c番lの土地の代金として,現金1000万円が入っていると思われる封筒を渡すのを見た旨供述する。 しかしながら,被告Dは,S司法書士は被告Aと原告Bとの間の現金の授受に立ち会っていないと供述するところ,被告Aと原告Bが司法書士事務所に出向きながら,司法書士がいないところで現金の授受をするというのはきわめて不自然であるから,被告Dの現金の授受に関する上記供述は,信用することができない。 もっとも,同土地については,被告Dに対し,平成7年8月24日,同月22日売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記が,平成8年5月7日,同年4月30日売買を原因とする所有権移転登記がそれぞれされており(甲32の1),不動産売買予約契約書(乙8)及び被告D宛ての額面1000万円の領収証(乙9)が作成されている。しかしながら,前記争いのない事実等によれば,a町c番gの土地が無償譲渡された第1事件において,原告Bと被告Aは,原告Bが被告会社に対して売買を原因として所有権移転登記手続をする旨の合意に基づき,平成7年8月22日,原告Bが被告会社に対し,同土地を1600万円で売却する旨記載された売買契約書(甲28)を作成して,同土地につき被告会社に対して所有権移転登記手続を行い,原告Bは の合意に基づき,平成7年8月22日,原告Bが被告会社に対し,同土地を1600万円で売却する旨記載された売買契約書(甲28)を作成して,同土地につき被告会社に対して所有権移転登記手続を行い,原告Bは被告会社に対して1600万円の領収証(乙18)を交付したというのであるから,第2事件において作成された上記契約書(乙8)及び上記領収証(乙9)も,第1事件と同様に,売買を仮装して所有権移転登記手続をするためのものであったと考えられ,これらの証拠は,被告Aが原告Bからa町c番lの土地を代金1000万円で譲り受けたことを裏付けるものとはいえない。 そうすると,被告Aは,原告Bに対し,同土地の代金として,現金700万円を渡した旨供述し,これと符合する陳述書(乙28)の記載があるものの,これを裏付ける的確な証拠がないことに帰するから,被告Aの上記供述及び上記陳述書の記載はいずれも信用することができない。 その他,本件において,被告Aが原告Bとの間で同土地を代金1000万円で譲り受ける旨の合意をしたことをうかがわせる的確な証拠はない。 (d) 以上によれば,原告Bが被告Aに対して5月31日付け覚書(甲4)に基づきa町c番lの土地の底地を無償で譲渡した旨の上記認定を覆すに足りる証拠はないから,被告らの上記主張は採用することができない。 (2) 被告側の出費ア(ア) 証拠(甲9の3,乙13の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,被告Aは,h町i番の土地の借地権者であったPの代理人X及びPの同居人であったQに対し,平成8年8月10日,借地権買取りの費用として,各250万円,合計500万円を支払ったと認められる。 証拠(甲9の2,甲39の1ない Pの代理人X及びPの同居人であったQに対し,平成8年8月10日,借地権買取りの費用として,各250万円,合計500万円を支払ったと認められる。 証拠(甲9の2,甲39の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,被告Aは,Oに対し,同年4月27日,借地権買取りの費用として,560万円を支払ったと認められる。 証拠(甲9の4,甲40の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,被告Aは,Rに対し,平成7年12月29日,借地権買取りの費用として,500万円を支払ったと認められる。 証拠(甲9の1,甲41の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,被告Aは,Nに対し,平成8年10月31日,借地権買取りの費用として,400万円を支払ったと認められる。 以上の出費額の合計は,1960万円である。 (イ) これに対し,被告らは,h町i番の土地の借地権者らに対し,合計2016万円を支払った(乙13の1,2,乙14の1,2,乙15,16)と主張する。 しかしながら,O,R及びNは,被告Aから言われて実際に受け取った額に仲介手数料を上乗せした額の領収証(乙14の1,乙15,16)を被告Aに渡した旨述べており(甲39ないし41の各3),被告Aも,Nに対して400万円を支払って,418万円の領収証を受け取った旨供述していること,前記のとおり,土地の無償譲渡の際に領収証が交付されたことからすると,領収証(乙14の1,乙15,16)記載の金額が現実に支払われたと認めることはできない。 したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 イ被告らは,h町i番の土地の南側擁壁工事代として600万円を支出したと主張し,これ ことはできない。 したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 イ被告らは,h町i番の土地の南側擁壁工事代として600万円を支出したと主張し,これに沿う被告Aの供述がある。 しかしながら,被告Aの上記供述は,当然存在すべきはずの見積書,明細書,領収証など,これを裏付ける客観的な証拠がないから,にわかに信用することができない。 したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。 ウ被告らは,h町i番の土地からP及びNらを退去させるため,平成8年10月,同人らに対して合計500万円を支払ったと主張するが,被告Aが同人らに対して前記アの金員の支払とは別に合計500万円を支払ったことを裏付ける的確な証拠がないから,被告らの上記主張は採用することができない。 エ被告らは,h町i番の土地の借地権者らと28回にわたり会合を開いて交渉を重ねており,そのために諸経費を要したと主張するが,その諸経費の明細や必要性が具体的に明らかでなく,その出捐のあったことや被告らの出費額を確定することができないから,本件において,被告ら主張の諸経費を考慮することはできない。 (3) 被告側が得た利益以上によれば,被告側は,前記(1)の受領額合計4532万8000円と前記(2)の出費額合計1960万円の差額である2572万8000円のうち,原告らの主張する2562万8000円の利益と1000万円相当のa町c番lの土地を得たと認められる。 3 争点3(第1契約及び第2契約の締結が弁護士法72条に違反し,公序良俗に反するといえるか否か。)について(1) 弁護士法72条本文は,弁護士でない者が,報酬を得る目的で,かつ,業として,他人の 第1契約及び第2契約の締結が弁護士法72条に違反し,公序良俗に反するといえるか否か。)について(1) 弁護士法72条本文は,弁護士でない者が,報酬を得る目的で,かつ,業として,他人の法律事件に関して法律事務を取り扱うことを禁止するものである。弁護士は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし,ひろく法律事務を行うことをその職務とするものであって,そのために同法には厳格な資格要件が設けられ,かつ,その職務の誠実適正な執行のため必要な規律に服すべきものとされるなど,諸般の措置が講ぜられているのであるが,世上には,このような資格もなく,なんらの規律にも服しない者が,みずからの利益のため,みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく,これを放置するときは,当事者その他の関係人らの利益をそこね,法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ,ひいては法律秩序を害することになるので,同条は,かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられる(最高裁判所昭和44年(あ)第1124号同46年7月14日大法廷判決・刑集25巻5号690頁参照)。同条のこのような公益的性格にかんがみると,同条によって禁止される行為を行うことを内容とする契約は,公序良俗に反するものとして,民法90条により無効であると解すべきである。 (2)アこれを本件についてみると,弁論の全趣旨によれば,被告Aが弁護士でないことは明らかである。 イ次に,弁護士法72条本文の規定にいわゆる「その他一般の法律事件」とは,同条例示の事件以外の,権利義務に関し争いがあり,もしくは権利義務に関し疑義があり,又は新たな権利義務関係を発生する案件をさし,上記規定にいわゆる「その他の法律事務」とは,同条例示の事務以外の,法律上の効果を発生変更する事項の処 に関し争いがあり,もしくは権利義務に関し疑義があり,又は新たな権利義務関係を発生する案件をさし,上記規定にいわゆる「その他の法律事務」とは,同条例示の事務以外の,法律上の効果を発生変更する事項の処理をさすものと解すべきである(東京高等裁判所昭和39年(う)第126号同年9月29日判決・高刑集17巻6号597頁参照)。 前記争いのない事実等によれば,第1契約及び第2契約は,いずれも土地上の借地権を整理することを内容とするものである。これまでに述べたところによれば,土地上の借地権整理とは,借地権者らの借地権を買い取って,借地権者らを立ち退かせ,土地を更地にすることを意味することは明らかである。そして,このような行為を行えば,借地権者らは土地の所有者に対して立退料(借地権代)を請求することができ,土地の所有者は借地権者らに対して土地の明渡しを請求することができるから,土地上の借地権整理は,新たな権利義務関係を発生する案件に関するものであるというべきである。また,このような行為を行うことにより,借地権が消滅し,立退料請求権や土地明渡請求権が発生するから,土地上の借地権整理は,法律上の効果を発生変更する事項の処理にあたるものというべきである。 これに対し,被告らは,本件においては,そもそも原告らと借地人との間になんらの紛争もなかったことはもちろん,法律上の権利義務に関しても特に争いがあったわけではないから,被告Aが行った借地権売買交渉,借家人との立退交渉は法律事件に関するものではないと主張する。 しかしながら,前記説示のとおり,新たな権利義務関係を発生する案件であれば,権利義務に関して争いがなくても,「その他一般の法律事件」にあたるものと解すべきであるから,被告らの上記主張は理由がない。 かしながら,前記説示のとおり,新たな権利義務関係を発生する案件であれば,権利義務に関して争いがなくても,「その他一般の法律事件」にあたるものと解すべきであるから,被告らの上記主張は理由がない。 ウさらに,被告A本人尋問の結果によれば,被告Aは,第1契約及び第2契約締結の際,原告Bから土地上の借地権整理に対する負担として受領した現金及び土地の価額から借地権買取費用等の諸経費を控除した残額を自己の利益とする意思であったと認められるから,被告Aに「報酬を得る目的」があったものというべきである。 これに対し,被告らは,「報酬」とは,法律事務取扱いのための主として精神的労力に対する対価をいうところ,被告Aの行った立退交渉は,高度な法律知識等の精神的労力を要するものではなく,むしろ,宅建業者として借地権者のところへ見舞金や手土産等を持参して足繁く通い,説明会を開くなどして友好関係を築くなど肉体的労力により行われるものであるから,これに対する報酬は同条にいう「報酬」にあたらないと主張する。 しかしながら,被告Aが借地権者らとの立退交渉の際に,肉体的労力のみならず,精神的労力をも要したことは,容易に推認することができるから,被告らの上記主張は理由がない。 エそして,上記の「業として」とは,反復的に又は反復の意思をもって法律事務を取り扱い,それが業務性を帯びるにいたった場合をさすと解すべきである(上記最高裁判所判決参照)。 前記争いのない事実等によれば,被告Aは,本件の前にも,原告Bの依頼により,本件と同様に借地権の借地権者からの買取り等の交渉をしたことがあったというのであるから,被告Aが第1契約及び第2契約に基づいて土地上の借地権整理を行えば,反復的に法律事務を取り扱い, の依頼により,本件と同様に借地権の借地権者からの買取り等の交渉をしたことがあったというのであるから,被告Aが第1契約及び第2契約に基づいて土地上の借地権整理を行えば,反復的に法律事務を取り扱い,それが業務性を帯びるにいたることは明らかである。 (3) 以上によれば,第1契約及び第2契約は,いずれも弁護士でない者が,報酬を得る目的で,かつ,業として,他人の法律事件に関して法律事務を取り扱うことを内容とするものであり,弁護士法72条本文によって禁止される行為を行うことを内容とする契約であるから,公序良俗に反するものとして,民法90条により無効であるというべきである。 4 争点4(弁護士法72条に違反するとして,原告側の被告側に対する金銭給付が不法原因給付に該当するか否か。)について(1) 前記3のとおり,第1契約及び第2契約は,いずれも公序良俗に反するものとして無効であるから,これらの契約に基づく前記1,2の給付は,いずれも民法708条本文にいわゆる不法原因給付にあたるべきものである(a町c番lの土地については,更に後述する。)。 (2)アこの点,原告らは,公序良俗違反による無効の原因行為による給付には民法708条ただし書が適用されると主張する。 しかしながら,原告Bは,みずからの意思で公序良俗に反する第1契約及び第2契約を締結したものであるから,原告Bにも少なからず不法性が認められ,「不法ノ原因カ受益者ニ付テノミ存シタルトキ」(同条ただし書)にはあたらないものというべきである。 イもっとも,民法708条本文は,信義誠実の原則の一適用として,みずから反社会的な行為をした者に対しては,その行為の結果の復旧を訴求することを許さない趣旨を規定したものと解されるところ,その適用については,同 ,民法708条本文は,信義誠実の原則の一適用として,みずから反社会的な行為をした者に対しては,その行為の結果の復旧を訴求することを許さない趣旨を規定したものと解されるところ,その適用については,同条ただし書の規定と相まって,信義則上十分の考慮を要するものというべきである。 そこで,公序良俗に反する行為を誘起した責任が主として受益者にあり,給付者における不法の程度に比し,受益者における不法の程度が著しく大きいものと評価できるときには,同条本文は適用されないものと解すべきである(最高裁判所昭和42年(オ)第790号同44年9月26日第二小法廷判決・民集23巻9号1727頁,最高裁判所昭和27年(オ)第13号同29年8月31日第三小法廷判決・民集8巻8号1557頁参照)。 これを本件についてみると,前記争いのない事実等によれば,被告Aが原告らに対して土地上の借地権整理を勧めたというものの,原告Bが自己の利益追求のため,自発的に被告Aに対して土地上の借地権整理を依頼したことによって,公序良俗に反する第1契約及び第2契約が締結されたのであるから,この結果を誘起した責任が専ら又は主として受益者である被告Aにあるとか,給付者である原告Bにおける不法の程度に比し,受益者である被告Aにおける不法の程度が著しく大きいものとまで評価することはできない(なお,第2契約は,原告BがEを代理して締結したものであるが,給付者と受益者の不法の程度の比較においては,Eの代理人である原告Bの不法の程度を考慮するのが相当である。)。 (3)アそうすると,本件においては,民法708条本文が適用されるかのごとくであるが,給付者における不法の程度に比し,受益者における不法の程度が著しく大きいものとはいえない場合であっても,受益者における アそうすると,本件においては,民法708条本文が適用されるかのごとくであるが,給付者における不法の程度に比し,受益者における不法の程度が著しく大きいものとはいえない場合であっても,受益者における不法の程度がそれ自体として軽微なものとはいえず,かつ,給付者の損失において受益者に不法な利益をそのまま保持させることが社会通念上著しく妥当性を欠くものと判断される場合には,信義誠実の原則に照らし,給付者は,民法708条ただし書に準じて,不法な利益の返還を請求できるというべきである。しかし,他方,このような場合は,給付者にも少なからず不法性が認められるのであるから,不法な利益の全部の返還を請求できるとするのは,衡平を失し,妥当でなく,給付者が不当利得の返還を請求できる範囲は,受益者と給付者の不法の程度を彼此勘案し,その割合に応じた制約を受けるものと解するのが,当事者間の信義・衡平の理念に照らして相当である。 イこれを本件についてみると,前記のとおり,第1契約及び第2契約は,いずれも被告Aが弁護士法72条本文によって禁止される行為を行うことを内容とするものであるところ,同条の規定に違反する行為は犯罪を構成するものであること(同法77条)を重視すれば,受益者である被告Aにおける不法の程度がそれ自体として軽微なものとはいえず,かつ,給付者である原告B及びEの損失において受益者である被告Aに前記1,2の不法な利益をそのまま保持させることが社会通念上著しく妥当性を欠くものであることは明らかである。 他方,原告Bは,第1契約及び第2契約を締結することによって,被告Aの同法72条に違反する行為を惹起させ,これに加担したものであり,そのこと自体は犯罪を構成するものではないものの,その不法性は明らかであって,これを軽視することはできない 締結することによって,被告Aの同法72条に違反する行為を惹起させ,これに加担したものであり,そのこと自体は犯罪を構成するものではないものの,その不法性は明らかであって,これを軽視することはできない。このような点を考慮すると,被告Aとの対比において原告Bの不法性の割合を3割と認め,原告Bが被告Aに対して返還を請求することができるのは,前記1,2の給付の7割をもって相当とし,原告Bが被告Aに対してそれを超える部分につきその返還を請求することは許されないと解するのが相当である。 なお,前記のとおり,第2契約は,原告BがEを代理して締結したものであるが,Eが被告Aに対して不当利得の返還を請求するに当たっても,Eの代理人である原告Bの不法の程度に応じた制約を受けるものと解すべきである。 ウ(ア) 第1事件についてa まず,前記認定のとおり,被告Aは,原告Bの損失において2167万円の利益を得たから,原告Bは,被告Aに対し,不当利得に基づき,その利益の7割である利得金1516万9000円及びこれに対する不当利得の日の後である平成9年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することができる(被告Aは,弁護士でないのに報酬を得る目的で反復的に原告Bの土地上の借地権整理をすることを内容とする契約を締結したことを認識していたから,悪意の受益者(民法704条1文)にあたるものと解すべきである。)。 b また,前記争いのない事実等によれば,原告Bと被告Aは,a町c番gの土地につき被告会社に対して所有権移転登記手続を行ったというのであるが,同土地の譲渡は,実体的には,原告Bと被告Aが作成した5月31日付け覚書(甲4)に基づき,被告A個人に対して行われたものとみ の土地につき被告会社に対して所有権移転登記手続を行ったというのであるが,同土地の譲渡は,実体的には,原告Bと被告Aが作成した5月31日付け覚書(甲4)に基づき,被告A個人に対して行われたものとみるべきである。そうすると,被告Aは,原告Bの損失において同土地を得たものと認められるから,原告Bは,被告Aに対し,不当利得に基づき,利得分である同土地の7割の共有持分の返還請求権を有していたものというべきである。 ところが,被告Aは,被告会社を代表して,Yに対し,平成8年7月25日,被告会社名義の同土地を売却したと認められ(甲26の1),これにより,同共有持分の原告Bに対する返還を不能にしたから,被告会社はその代表取締役である被告Aの上記行為について不法行為責任を負い,被告Aも個人として不法行為責任を負う。そして,両者の間には関連共同性があるから,共同不法行為が成立する。 したがって,原告Bは,被告A及び被告会社に対し,共同不法行為に基づき,前記認定の同土地の代金相当額1600万円(平成8年7月25日の時点において,同土地の代金相当額がこれと異なる金額であったと認めるに足りる証拠はない。)の7割である損害金1120万円及びこれに対する共同不法行為の日の後である平成9年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することができる。 (イ) 第2事件についてa 前記認定のとおり,被告Aは,Eの損失において2572万8000円の利益を得たものであるが,前記のとおり,原告らは,被告側が2562万8000円を不当に利得したと主張しているから,被告Aは,Eの損失において原告ら主張の限度の2562万8000円の利益を得たものと認めるのが相当であ あるが,前記のとおり,原告らは,被告側が2562万8000円を不当に利得したと主張しているから,被告Aは,Eの損失において原告ら主張の限度の2562万8000円の利益を得たものと認めるのが相当であるところ,Eは,被告Aに対し,不当利得に基づき,その利益の7割である利得金1793万9600円の返還請求権を有していたものというべきである。 したがって,Eの共同相続人である原告B及び原告Cは,被告Aに対し,それぞれ896万9800円及びこれに対する不当利得の日の後である平成9年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することができる。 b また,前記争いのない事実等によれば,原告Bは,被告Dに対し,平成8年5月7日,a町c番lの土地の所有権移転登記手続を行ったというのであるが,同土地の譲渡は,実体的には,原告Bと被告Aが作成した5月31日付け覚書(甲4)に基づき,被告A個人に対して行われ,更に,被告Aから被告Dに対して同土地が譲渡されたものとみるべきである(被告D(あるいは被告A)が原告Bとの間で同土地の売買契約を締結したと認めることができないことは,前記のとおりである。)。そうすると,同土地についてされた被告D名義の所有権移転登記は,いわゆる中間省略登記であるというべきである。 そして,原告Bは,被告Dに対し,同土地の所有権に基づき(平成7年5月31日当時,原告Bが同土地を所有していたことは,当事者間に争いがない。),別紙登記目録記載1の所有権移転請求権仮登記及び同目録記載2の所有権移転登記の各抹消登記手続を請求しているところ,第2契約は公序良俗に反し,無効であるから,同土地の所有権は,第2契約及びこれを書面化した5月31日付け覚書(甲4) 請求権仮登記及び同目録記載2の所有権移転登記の各抹消登記手続を請求しているところ,第2契約は公序良俗に反し,無効であるから,同土地の所有権は,第2契約及びこれを書面化した5月31日付け覚書(甲4)によっては被告Aに移転しないものと解すべきである。 しかしながら,このような場合であっても,同土地の譲渡が民法708条本文にいわゆる不法原因給付にあたるときは,同土地の所有権は被告Aに帰属するにいたったものと解するのが相当である。けだし,前記のとおり,同条は,みずから反社会的な行為をした者に対しては,その行為の結果の復旧を訴求することを許さない趣旨を規定したものと認められるから,給付者は,不当利得に基づく返還請求をすることが許されないばかりでなく,目的物の所有権が自己にあることを理由として,給付した物の返還を請求することも許されない筋合いであるというべきである。かように,給付者において給付した物の返還を請求できなくなったときは,その反射的効果として,目的物の所有権は給付者の手を離れて受益者に帰属するにいたったものと解するのが,最も事柄の実質に適合し,かつ,法律関係を明確ならしめるゆえんと考えられるからである(最高裁判所昭和41年(オ)第436号同45年10月21日大法廷判決・民集24巻11号1560頁参照)。 本件においては,同土地の譲渡は不法の原因に基づくものであるとするのが相当であるのみならず,上記中間省略登記により原告Bの被告Aに対する債務は履行を完了したものと解されるから,上記中間省略登記は同条本文にいわゆる「給付」にあたるものと解すべきである。なお,被告Dは,公序良俗に反する第2契約の締結に関与していないから,当然に同条本文が適用される。 したがって,同土 条本文にいわゆる「給付」にあたるものと解すべきである。なお,被告Dは,公序良俗に反する第2契約の締結に関与していないから,当然に同条本文が適用される。 したがって,同土地の譲渡は同条本文にいわゆる不法原因給付にあたり,同土地の所有権は被告A,ひいては被告Dに帰属するに至ったものと解されるから,原告Bは,同土地の所有権を喪失したものであり,原告Bの被告Dに対する所有権に基づく所有権移転登記等抹消登記手続請求は理由がなく,棄却を免れないものというべきである。 第4 結語よって,原告らの本訴請求は主文第1ないし第3項掲記の限度で理由があるからこれらを認容することとし,原告らの被告A及び被告保証保険損害調査株式会社に対するその余の請求並びに原告Bの被告Dに対する請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第六民事部裁判長裁判官松村雅司裁判官水野有子裁判官増田純平(別紙)物件目録所在神戸市灘区a町b丁目地番 c番l地目宅地地積 100.20平方メートル(別紙)登記目録 1 神戸地方法務局平成7年8月24日受付第21238号所有権移転請求権仮登記原因平成7年8月22日売買予約権利者 D 記目録 1 神戸地方法務局平成7年8月24日受付第21238号所有権移転請求権仮登記原因平成7年8月22日売買予約権利者 D 2 神戸地方法務局平成8年5月7日第25860号所有権移転登記原因平成8年4月30日売買所有者 D
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