平成12(行ウ)69 法人税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年11月9日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文16,550 文字)

主文 1 被告が平成10年12月18日付けでした原告の平成6年10月1日から平成7年9月30日までの事業年度の法人税の更正処分のうち納付すべき税額2億6494万2300円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 主文1項同旨(2) 主文2項同旨(3) (2)項につき仮執行宣言 2 被告(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要本件は、原告が100パーセント出資してオランダに設立した外国子会社であるOBUNSHAATLANTICB.V.(以下「アトランティック社」という。)の株主総会において、新たに発行する新株全部を原告の外国における関連会社であるASUKAFUNDB.V.(現商号はCULTURECOMMUNICATIONFUNDB.V.。以下「アスカファンド社」という。)に箸しく有利な価額で割り当てる決議を行い、原告が保有していたアトランティック社株式の資産価値を何らの対価も得ずにアスカファンド社に移転させたとして、被告が、その移転した資産価値相当額をアスカファンド社に対する寄附金と認定し、原告の平成6年10月1日から平成7年9月30日までの事業年度(以下「平成7年9月期」という。)の法人税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をしたところ、原告が、本件更正処分のうち納付すべき税額2億6494万2300円を超える部分及び本件賦課決定処分はいずれも違法であるとしてその取消しを求めている事案である。 1 法令の定め(1) 法人資産の無償譲渡に係る収益の益金算入法人税法(以下「法」という 2300円を超える部分及び本件賦課決定処分はいずれも違法であるとしてその取消しを求めている事案である。 1 法令の定め(1) 法人資産の無償譲渡に係る収益の益金算入法人税法(以下「法」という。)22条1項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。」と定めるところ、同条2項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」と規定し、法人の無償による資産の譲渡によって利益が実現したと認められる場合には、その収益が益金に算入されることを定めている。 (2) 寄附金課税制度法22条3項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。」とし、その1号において「当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額」を、2号において「前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(括弧内省略)の額」を、3号において「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」をそれぞれ損金の額に算入すべきこととしている。 そして、法37条1項は、「内国法人が、各事業年度において寄附金を支出した場合において、その寄附金の額につきその確定した決算において利益又は剰余金の処分による経理(利益積立金額をその支出した寄附金に充てる経理を含む。)をしたときは、第3項各号(括弧内省略)に規定する寄附金の額を除き、その経理をした金額は、その内国法 算において利益又は剰余金の処分による経理(利益積立金額をその支出した寄附金に充てる経理を含む。)をしたときは、第3項各号(括弧内省略)に規定する寄附金の額を除き、その経理をした金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」と定め、同条2項は、「内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(前項の規定の適用を受けた寄附金の額を除く。以下省略)の合計額のうち、その内国法人の資本等の金額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額(括弧内省略)を超える部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」と規定し、法人の金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与の金額(同条6項)が所定の損金算入限度額を超える場合には、その損金算入を否認するという寄附金課税制度を定めている。 (3) 公正処理基準法22条4項は、法人の収益・費用等の額の計算につき、「第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」と規定している。 (4) 同族会社の行為又は計算の否認法132条は、「税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。」とし、その1号において「内国法人である同族会社」を同規定適用の対象としており、法2条10号は、同族会社の意義を「株主等の3人以下並びにこれらと政令で 損金額又は法人税の額を計算することができる。」とし、その1号において「内国法人である同族会社」を同規定適用の対象としており、法2条10号は、同族会社の意義を「株主等の3人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人が有する株式の総数又は出資の金額の合計額がその会社の発行済株式の総数又は出資金額の100分の50以上に相当する会社をいう。」としている。 2 前提事実(括弧内に証拠を掲げた事実のほかは、当事者間に争いのない事実である。)(1) 原告は、財団法人センチュリー文化財団(以下「センチュリー文化財団」という。)及び財団法人日本英語協会等を主要株主とする法2条10号所定の同族会社に該当する法人である。 (2) 原告は、平成3年9月4日、次のアの現物出資及びイの現金出資により、オランダに原告の100パーセント出資の子会社としてアトランティック社を設立した。 ア現物出資 15億4400万円(ア) 全国朝日放送株式会社(以下「テレビ朝日」という。)株式3559株(受入価額11億0500万円)(イ) 株式会社文化放送(以下「文化放送」という。)株式15万株(受入価額4億3900万円)イ現金出資  1億0600万円上記出資総額は16億5000万円に対し、発行された株式は、額面金額1株当たり1000オランダギルダー(以下「ギルダー」という。)の株式が200株であり、同額面金額合計20万ギルダー(1ギルダーを75円として1500万円)を超える出資額は、アトランティック社において全額資本準備金として処理された。 (3) 原告は、法51条(ただし、平成10年法律第24号による改正(以下「平成10年改正」という。)前のもの。外国子会社設立の際の現物出資についても、いわゆる圧縮記帳による課税の繰延べを認めていた。)に基 原告は、法51条(ただし、平成10年法律第24号による改正(以下「平成10年改正」という。)前のもの。外国子会社設立の際の現物出資についても、いわゆる圧縮記帳による課税の繰延べを認めていた。)に基づき、上記(2)アの現物出資につき、帳簿価額により出資したものとして、発行された株式の額面を超える部分の出資金額を圧縮記帳した。 (4) センチュリー文化財団は、平成7年2月13日、オランダにアスカファンド社を設立し、同財団はアスカファンド社が発行する株式の全部を保有していた。 また、センチュリー文化財団は、平成7年2月15日当時、原告の発行済株式のうち25万0880株を保有する筆頭株主(保有割合49.6パーセント)であり、原告の取締役相談役aは、同財団の理事長、アトランティック社の代表取締役及びアスカファンド社の取締役を兼ねており、原告の代表取締役であったbが同財団の評議委員、アトランティック社の代表取締役及びアスカファンド社の取締役を兼ねていた。 (5) 原告は、平成7年2月13日のアトランティック社の株主総会において、アトランティック社が新たに1株当たりの額面金額1000ギルダーの新株3000株(以下「本件増資新株」という。)を発行し、その全部を、額面金額合計300万ギルダーに3万0303ギルダーを加えた303万0303ギルダー(1株当たり1010.1ギルダー)でアスカファンド社に割り当てる旨の決議をした(以下「本件決議」といい、本件決議に係る増資を「本件増資」という。)。 当時、アトランティック社の定款4条3項は、株式の発行及び株式取得権の授与に関して株主は優先権を持たないことを規定し、また、同条1項は、株主総会が株式の発行価格と発行条件を定めることを規定していた。また、同定款には、アトランティック社が発行する株式の中に異なる種類のも に関して株主は優先権を持たないことを規定し、また、同条1項は、株主総会が株式の発行価格と発行条件を定めることを規定していた。また、同定款には、アトランティック社が発行する株式の中に異なる種類のものがあることは定められておらず、株主は、1株につき1票の議決権を有しており、株主総会決議は、全議決権の絶対過半数で成立するとされていた(乙15)。 (6) アスカファンド社は、平成7年2月15日、上記303万0303ギルダーの増資払込をし、アトランティック社は、増資株式全部をアスカファンド社に割り当て、同年4月20日、増資の登記手続をし、上記払込金額のうち発行した株式の額面金額合計300万ギルダーを超える3万0303ギルダーを資本準備金として処理した。 これにより、原告のアトランティック社株式の保有割合は、従前の100パーセントから6.25パーセントとなり、アスカフアンド社が93.75パーセントの割合でアトランティック社の株式を保有することとなった。 (7) アトランティック社は、平成9年8月18日、株主総会決議により定款を変更し(以下「本件定款変更」という。)、種類株(以下「B株」といい、本件定款変更前の定款上の普通株を「A株」という。)についての定めを設けた。B株は、残余財産分配請求権がA株に優先するが、その額が額面額に限定される点がA株と異なっていた。 本件定款変更においては、株主総会決議は有効投票の95パーセント以上をもって成立することに変更された(甲3)。 (8) 原告は、被告に対し、平成7年12月27日、平成7年9月期の法人税について、所得金額を0円、納付すべき税額を2億6494万2300円とする確定申告をし、同年11月30日に同申告に係る法人税額を納付した。 (9) 被告は、本件決議当時におけるアトランティック社株式の資産価値が1 得金額を0円、納付すべき税額を2億6494万2300円とする確定申告をし、同年11月30日に同申告に係る法人税額を納付した。 (9) 被告は、本件決議当時におけるアトランティック社株式の資産価値が1株当たり234万6252.55ギルダー(1億3648万1511円)であったのに、原告が、その価値を著しく下回る1株当たり1010.1ギルダー(平成7年2月15日時点で1ギルダーは58.17円)で3000株もの新株をアスカファンド社に発行する本件決議をすることにより、原告が保有していたアトランティック社株式の資産価値272億9630万2219円を一挙に17億1703万5934円まで減少させ、その差額である255億7926万6285円相当額を、何らの対価も得ずにアスカファンド社に移転させたもの(有価証券に係る利益の計上もれ)と認め、このような行為は営利を目的とする法人の行為としては不自然・不合理であり、法人税の負担を不当に減少させる行為であるとして、法132条を適用し、上記資産価値の移転をアスカファンド社に対する寄附金と認め、原告に対し、平成10年12月18日付けで、課税所得金額を次のアのとおり249億5320万4351円、納付すべき税額を次のイのとおり96億2239万3800円とする本件更正処分及び13億8863万2500円の過少申告加算税を賦課する本件賦課決定処分をした(甲249)。 ア課税所得金額申告所得金額0円(①)に対し加算分 ② 有価証券に係る利益の計上もれ255億7926万6285円③ 寄附金の損金不算入額252億5952万5456円④ 加算金額合計(②+③)508億3879万1741円減算分 ⑤ 寄附金として損 損金不算入額252億5952万5456円④ 加算金額合計(②+③)508億3879万1741円減算分 ⑤ 寄附金として損金に算入すべき金額255億7926万6285円⑥ 繰越欠損金の当期控除額3億0632万1105円⑦ 減算金額合計(⑤+⑥)258億8558万7390円差引所得金額(①+④-⑦) 249億5320万4351円イ納付すべき法人税額(ア) 上記アの課税所得金額(ただし、国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数切捨て後のもの。)に、法66条(各事業年度の所得に対する法人税の税率)に規定する税率を乗じて算出した金額93億5745万1500円(イ) 原告が被告に提出した平成7年9月期の法人税の確定申告書に記載した納付すべき法人税額2億6494万2300円(内訳は、課税土地譲渡利益金額に対する税額2億9970万円から控除所得税額3475万7636円を差し引いた金額。ただし、国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数切捨て後のもの。)(ウ) 納付すべき法人税額((ア)+(イ))96億2239万3800円(10) 原告は、国税不服審判所長に対し、平成11年2月5日、本件更正処分及び本件賦課決定処分を不服として審査請求を行ったが、これに対する裁決は同日から3か月を経過してもされなかった。 3 争点及び争点についての各当事者の主張本件の争点は、本件更正処分及び本件賦課決定処分の 件賦課決定処分を不服として審査請求を行ったが、これに対する裁決は同日から3か月を経過してもされなかった。 3 争点及び争点についての各当事者の主張本件の争点は、本件更正処分及び本件賦課決定処分の適法性であり、被告は、本件更正処分の適法性の根拠として、主位的に法22条2項の適用を、予備的に法132条1項1号の適用を主張し、原告は、同主位的主張が時機に遅れた攻撃防御方法として却下されるべきである旨を主張するほか、被告の主位的主張及び予備的主張のいずれも争い、さらに、仮に被告の上記主張のいずれかが認められる場合につき、被告の主張する課税標準の基礎となる株式の資産価値評価を争い、かつ、本件賦課決定処分については原告には国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があったと主張している。これらの点に関する各当事者の主張は別紙のとおりである。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(被告の主位的主張が時機に遅れたものとして却下されるべきか否か)について(1) 一般に、民事訴訟における攻撃防御方法については、法律上の陳述であっても、同陳述に対する相手方当事者の防御等のために、同陳述がなければ弁論を終結できたであろう時機を超えて審理を続けざるを得なくなり、訴訟の完結を遅延させることとなると認められることもあり得ることであるから、民事訴訟法157条1項の定める「攻撃又は防御の方法」に本来的に法律上の陳述を含まないと解することはできない。 (2) 本件において、被告は、平成13年5月14日の本件第5回口頭弁論期日の後である同年7月13日、当裁判所に対して第6準備書面を提出し、同準備書面の内容を、同年7月30日の本件第6回口頭弁論期日において陳述することにより、初めて前記主位的主張を主張するとともに、従前の主張を予備的主張とし、同期日において本件の弁論が終 面を提出し、同準備書面の内容を、同年7月30日の本件第6回口頭弁論期日において陳述することにより、初めて前記主位的主張を主張するとともに、従前の主張を予備的主張とし、同期日において本件の弁論が終結に至ったことは当裁判所に顕著な事実であって、被告の主位的主張がされた客観的な時機が本件の弁論終結日に近接した日であることからすれば、当審における審理の最終局面において初めて主位的主張がされたという点において、時機に遅れたものとの嫌いは否めない。しかも、本件処分は、原告に対して新たに100億円を超える多額の税金の納付を命ずる非常に重大な処分であって、原告の状況からするとその死命を制しかねないものであるから、被告としては事前に慎重の上にも慎重を期した上でなすべきものであるにもかかわらず、既に処分から2年半余りが経過した後に、単なる予備的主張の追加にとどまらず主位的主張自体を全く新たなものに変更する形で新たな主張がされたことは、処分前の検討がはなはだ不十分であったことを示すものであって、そのこと自体は被告の職責に悖るものといわざるを得ない。 しかしながら、被告の同主張は、同年3月19日の本件第4回口頭弁論期日における当裁判所の被告に対する求釈明を契機として主張されたものであること、同主張の基礎となる事実関係については従前被告が主張していた法132条の適用に関する主張に包含されるものであって、法律構成に関する新たな主張であること、したがって、本件においては、新たな主張がされたために新たな証拠調べを必要とするものではなかったこと、これに対して原告が速やかに対応したことによって、結果的にみても、上記のとおり被告の主位的主張の記載された準備書面が陳述された本件第6回口頭弁論期日において本件の弁論が終結されており、原告代理人らに多大の負担をかけたことはと 応したことによって、結果的にみても、上記のとおり被告の主位的主張の記載された準備書面が陳述された本件第6回口頭弁論期日において本件の弁論が終結されており、原告代理人らに多大の負担をかけたことはともかくとして、本件訴訟の進行を遅延させるには至らなかったことの各事実も当裁判所に顕著な事実であり、これらの事情にかんがみれば、被告の主位的主張については、民事訴訟法157条1項が時機に遅れた攻撃防御方法の却下の要件として定める「これにより訴訟の完結を遅延させることとなる」ものとは認められないというべきである。 (3) したがって、被告の主位的主張が民事訴訟法157条1項により却下されるべきである旨の原告の主張には理由がなく、次項において同主張に基づく争点について検討する。 2 争点(2)(法22条2項の適用)について(1) 被告の主位的主張は、本件増資の実行により、原告の保有するアトランティック社株式の資産価値がアスカファンド社に移転したことを前提とするものであるから、まず、本件増資の行われた法形式について検討するに、本件増資は、アトランティック社の定款の定めに従って、株主総会決議である本件決議により決定されたものである。本件決議の当時、アトランティック社の定款4条1項は、株主総会が株式の発行価格と発行条件を定めることを規定しており、したがって、新株の発行については株主総会に決定権限があったものということができ、また、株主は、1株につき1票の議決権を有していて、株主総会決議は、全議決権の絶対過半数で成立するとされていた(同定款15条)ことから、原告は、アトランティック社の全株式を有する株主として本件決議に賛成し、その結果、本件決議が成立したことが認められる。 しかし、本件決議はアトランティック社の機関である同社の株主総会が内部的な意思決定と アトランティック社の全株式を有する株主として本件決議に賛成し、その結果、本件決議が成立したことが認められる。 しかし、本件決議はアトランティック社の機関である同社の株主総会が内部的な意思決定としてしたものにほかならず、その段階では未だ増資の効果は生じていないのであって、アスカファンド社が本件増資により資産価値を取得したとすれば、それは、法形式においては、アトランティック社の執行機関が本件決議を受けて同社の行為として増資を実行し、アスカファンド社が新株の引受人として払込行為をしたことによるものである。そうすると、本件増資は、アトランティック社自体による本件増資の実行という行為とそれに応じてアスカファンド社がアトランティック社に対して新株の払込をするという行為により構成されており、本件増資の結果、アスカファンド社の払込金額と本件増資により発行される株式の時価との差額がアスカファンド社に帰属することとなったことを取引的行為としてとらえるとすれば、本件増資をして新株の払込を受けたアトランティック社と有利な条件でアトランティック社から新株の発行を受けたアスカファンド社の間の行為にほかならず、原告はアスカファンド社に対して何らの行為もしていないというほかない。 このことは、被告自ら、本件決議が原告からアスカファンド社への経済的利益の移転の原因行為であるとしつつも、同行為だけでは同利益の移転に至らないことから、同利益の移転時期をアトランティック社からアスカファンド社への割当時若しくは遅くともアスカファンド社からアトランティック社への払込時とする不確定な主張をせざるを得なくなっていることからも裏付けられるのであり、このような事態は、被告が本件決議を上記利益移転の原因行為としてとらえること自体に無理があることを示すものである。 (2) 被告は、最 主張をせざるを得なくなっていることからも裏付けられるのであり、このような事態は、被告が本件決議を上記利益移転の原因行為としてとらえること自体に無理があることを示すものである。 (2) 被告は、最高裁昭和41年判決を引用し、同判決は、含み益部分が株式から切り離されて譲渡されたときに、その部分が相当対価によって実現したものとして益金を構成し、この場合における旧株主から新株主への経済的利益の譲渡は、増資会社に対する指名権の行使という態様によっても可能であることを明らかにしたものであるとした上で、本件において、原告は、アトランティック社に対する指名権の行使と同視することもできる本件決議という態様によって、アスカファンド社への第三者に対する新株の有利発行を行わせたのであるから、旧株主である原告から新株主であるアスカファンド社への新株プレミアム相当の経済的利益の譲渡(無償取引)があったというべきである旨主張する。 しかしながら、最高裁昭和41年判決の事案は、納税者が株式を有していた3つの会社からそれぞれ増資の決議により新株引受権を与えられ、このうち2社分については新株引受権付きの旧株式を自己の取締役に信託的に譲渡し、他の1社分についてはプレミアムが少ないため払込期間内に払込をしなかったことによりいったん新株引受権を喪失した後、増資会社から当該失権株について縁故割当をしたいから引受人を指定してほしいとの申出があったため、やはり自己の取締役を指名したというものであり、同判決は、原判決がいずれの場合にも当該納税者には新株の割当に関連する何らかの利益がいったん帰属しそれが納税者の取締役に移転したとみることができると認定したことを前提とし、その利益は、先の2社分については納税者所有の旧株式の値上がり部分そのものであって、後の1社分については増資会社から 帰属しそれが納税者の取締役に移転したとみることができると認定したことを前提とし、その利益は、先の2社分については納税者所有の旧株式の値上がり部分そのものであって、後の1社分については増資会社から与えられた第三者指名権であるが、これは旧株式の増価部分と同視して妨げないと判示しているのである。すなわち、同判決は、いったん旧株主に新株引受権が付与されることにより旧株式が具体的に増価し、それが払込期限の徒過により消滅したかにみえたにもかかわらず、増資会社からの縁故割当のための第三者指名権の付与により復活し、その復活した増価分を指名権の行使により譲渡したとみているのであり、当該指名行為を、いまだ新株引受権が有効に付着している状態の旧株式を譲渡したのと同視したに等しいのである。 これに対し、原告については本件決議以前には抽象的な含み益があったのみで(このような含み益は、最高裁昭和41年判決の事案のうち、第三者指名権が付与された株式に関する部分においても、少ないとはいえプレミアムが発生する形で新株が発行される会社の株式を有していた以上、増資決議がされる以前の時点において当該納税者も有していたものというべきである。)、原告所有の株式が具体的に増価したとみることはできないから、本件決議によって譲渡したとみるに足りる具体的な増価分は存在しないというほかない。すなわち、最高裁昭和41判決の事案における第三者指名権の行使と本件決議とは新株を引き受けるべき者を指定している点においては共通しているが、前者においては、それによって譲渡したものとみるべき具体的利益が存在したのに対し、後者においては、それが存在していない点に大きな差違が存するのである。また、双方ともに株式の割当自体は増資会社が行うものであって、旧株主は新たな引受人との間で直接的な行為をしない点にお したのに対し、後者においては、それが存在していない点に大きな差違が存するのである。また、双方ともに株式の割当自体は増資会社が行うものであって、旧株主は新たな引受人との間で直接的な行為をしない点においても共通しているが、前者においては、いったん旧株主に新株引受権が具体的に帰属し、それが付着した旧株式自体を旧株主が譲渡することが可能であったことに着目して、第三者指名権の行使をそのような譲渡行為と同視することが可能であったのに対し、後者の場合には、原告とアスカファンド社との間には直接的な行為があったと同視し得る事情は見当たらないのである。 以上によると、最高裁昭和41年判決は、本件と事案を異にするものであり、その判示は本件には当てはまらないものというべきである。 (3) また、被告の主張は、最高裁昭和41年判決の事案のようにいったん旧株主に株式の割当に関する経済的利益が帰属し、その上で旧株主と新株主との間の行為により旧株主の有する株式の含み益が具体化した場合に限定せずに、旧株主がその有する株式の含み益を喪失し、それに相当する利益を新株発行を受けた新株主が取得した場合に、これを株主間の無償取引による利益の移転ととらえるに等しいのであって、そうであるとすると、そうした利益の移転は、旧株主と新株発行をした会社が親会社・子会社の関係にあるか否かを問わずに起こり得ることとなってしまう。 この点につき、被告は、親会社が自己の思うままに株主総会決議を行うことによって新株プレミアムを具体化し、これを第三者に移転するか否かを自己の意思のみで決定できる場合であることを、第三者に対する新株の有利発行の場合に親会社から当該第三者に対する経済的利益の無償供与を認める要件としているかのようであるが、そのような場合にのみ経済的利益の無償供与を認めるべき理論的根拠は見当 を、第三者に対する新株の有利発行の場合に親会社から当該第三者に対する経済的利益の無償供与を認める要件としているかのようであるが、そのような場合にのみ経済的利益の無償供与を認めるべき理論的根拠は見当たらない。発行済株式の過半数の株式を保有する株主が存在しない会社においても、第三者に対する新株の有利発行の決議が成立した以上は、少なくともその決議に賛成した株主については自らの意思で当該決議をした点において、全株式を保有する株主と何ら異なることはないのである。このように解すると、第三者に対する新株の有利発行の場合には、少なくとも決議に賛成した株主全部につき、その株式の保有割合を問わず、含み益が顕在化したものとして収益を認定し、これに対する課税をすることにならざるを得ないが、被告自身もそうした結論を是認するものとは思われず、そのような結論が広きに失するがために上記のような要件をあえて設定したものと解され、実際にもそうした広汎な課税が行われていることはうかがわれない。結局のところ、被告の上記主張は、経済的利益の移転を生ずる「無償供与」としての行為の存在が直接的には認められず、同行為を擬制するに足りるだけの根拠がないにもかかわらず、あえて無理な擬制をして結論を導いているものといわざるを得ない。 (4) なお、被告の主位的主張は、同主張だけを捉えると、本件事案において法人格の否認の法理を適用し、原告とアトランティック社とが別個の法人格であることを否認した上で、本件増資によりアスカファンド社が資産価値を取得するにつき、原告と同一法人格であるアトランティック社がアスカファンド社に要求してしかるべき対価を要求しなかったとして、これが無償取引に係る収益に当たる旨を主張するものと解する余地があるようにみえないでもない。 そこで、当裁判所は、このような問題意識 アスカファンド社に要求してしかるべき対価を要求しなかったとして、これが無償取引に係る収益に当たる旨を主張するものと解する余地があるようにみえないでもない。 そこで、当裁判所は、このような問題意識の下に別紙(2)(被告の主張)ア(エ)のとおり釈明を求めたところ、当裁判所の意図はその際に用いた文言からして容易に理解できるものと考えられるにもかかわらず、被告は、法人格否認の主張をせず、一般論として、「新株の有利発行による旧株式の価値の新株式への移転は、増資会社の増資行為によって生じるものであるが、(中略)法人税法上、その移転は、株主相互における経済的利益の移転と観念される。そして、この移転を決するのが株主総会なのであるから、株主総会決議をもって経済的利益の移転の原因行為ということができる。このことは(最高裁昭和)41年判決からも明らかである。すなわち、(最高裁昭和)41年判決の事案においても、利益の移転は、増資会社の新株発行により初めて生じるのであるが、同判決は、指名権行使による経済的利益の移転を認めている。この指名権行使も、株主総会決議と同様に、法形式上は、増資会社が指名を受けた者に新株を発行することを承諾する行為ということができるからである。」と明示的に主張している。 これは、親会社がその意思のとおりに子会社の株主総会において決議ができる場合でありさえすれば、子会社と親会社に別個の法人格があることを否定すべき場合でなくとも、第三者に対する新株の有利発行による場合に親会社から当該第三者に対する経済的利益の無償供与がされることを一般的に肯定するものにほかならず、かつ、被告は、本件の事実関係の下で法人格否認の法理の適用を主張して本件の具体的な事実が同法理適用の要件を満たしている旨の指摘もしていないから、本件事案における原告とアトランティック にほかならず、かつ、被告は、本件の事実関係の下で法人格否認の法理の適用を主張して本件の具体的な事実が同法理適用の要件を満たしている旨の指摘もしていないから、本件事案における原告とアトランティック社との関係について被告が上記のような法人格否認の法理の適用を前提として主張しているものと解することはできない。 (5) 以上によれば、実質的にみて原告の保有するアトランティック社株式の資産価値がアスカファンド社に移転したとしても、それが原告の行為によるものとは認められないから、同資産価値の移転が原告の行為によることを前提としてこれに法22条2項を適用すべきである旨の被告の主位的主張には理由がない。 3 争点(3)(法132条の適用について)について(1) 本件更正処分の理由として法132条を適用すべき旨の被告の主張は、原告自らの行為によりその保有するアトランティック社株式の資産価値がアスカファンド社に移転したとの事実を前提として、同資産価値の移転について法132条を適用して課税しようとするものである。しかしながら、原告の保有するアトランティック社株式の資産価値がアスカファンド社に移転したことが、原告自らの行為によるものとは認められないことは、上記2に判示のとおりである。従って、被告の同主張については、その余の点について判断するまでもなく理由がないことは明らかである。 (2) また、被告は、同族会社の行為計算の否認に関して、「無償で自己の資産の減少となる本件決議を行い、対価を受領等しなかった原告の行為」が不自然、不合理な行為形態であるとして否認し、「アスカファンド社から少なくとも滅失価値相当額に見合う対価を受領するか、アスカファンド社に増資対価を払い込ませる」のが普通採ったであろう行為計算であると認めて法人税を課したと主張する。 確かに、被告が「 ファンド社から少なくとも滅失価値相当額に見合う対価を受領するか、アスカファンド社に増資対価を払い込ませる」のが普通採ったであろう行為計算であると認めて法人税を課したと主張する。 確かに、被告が「普通採ったであろう行為計算」として主張する行為計算のうち、原告がアスカファンド社から直接に滅失価値相当額に見合う対価を受領するとの行為形態を選択していたならば、その対価は原告の益金となり法人税が課税されるのであるから、現に行われた行為形態は、これに比べて原告の法人税を減少させるものと評価することが可能である。 しかしながら、被告主張の「普通採ったであろう行為計算」のうちの他方の行為、すなわち、原告が株主総会においてアスカファンド社に増資対価相当額を払い込ませる行為計算を選択した場合の課税関係を検討すると、この場合はアトランティック社に発行される新株の実質的価値に見合う価額が払い込まれているのであるから、原告については形式及び実質の両面において資産の増減がないし、アスカファンド社も支払った対価に見合う価値の新株を取得した以上は従前有していた何らかの資産が新株に形を変えたにすぎず、その資産に増減はないから、両者ともに益金は生じず法人税が課されることはない。アトランティック社については増資によって資産が増加しているが、これは資本等取引に基づくものであるから益金には当たらず(法22条2項)、やはり法人税は課されない。このように原告にはもともと法人税が課されないのであるから、他にいかなる行為計算を採るかにかかわらず、法人税の負担を不当に減少させる余地はない。また、アトランティック社及びアスカファンド社についてみると、現にされた行為では、アトランティック社についてはその資産の増減が資本等取引に基づくものとして課税されないことに変わりはないものの、アス た、アトランティック社及びアスカファンド社についてみると、現にされた行為では、アトランティック社についてはその資産の増減が資本等取引に基づくものとして課税されないことに変わりはないものの、アスカファンド社については、被告の主張を前提とすると、本来多額の価値のある新株を極めて低廉な価格で取得したのであるから、その差額は益金となり、仮に同社が内国法人であれば当然に法人税が課されるにもかかわらず、同社が外国法人であるために我が国の課税権が及ばないにすぎない。すなわち、原告を含めた3社を通じてみると、むしろ、現にされた行為の方が法人税の負担を増加する可能性があったとさえいえるのである。このように現にされた行為は、普通採ったであろう行為計算のうちのひとつと比較した場合において、何ら法人税を減少させるものではないのであるから、他に想定される普通採ったであろう行為計算との比較いかんにかかわらず、これを容認したとしても法人税の負担を不当に減少させる結果となるとは認め難く、法132条適用の前提条件を欠くものである。 4 まとめ(1) 以上によれば、本件更正処分に関する被告の主位的主張及び予備的主張はいずれも理由がなく、その余の点について判断するまでもなく本件更正処分は違法なものといわざるを得ず、したがって、本件賦課決定処分も違法なものである。 (2) なお、上記の結論によると、もともと原告が保有していた株式に関する多額の含み益については、何らの課税もされない結果が生ずることとなるが、これは、法51条がその定める特定出資についていわゆる圧縮記帳による課税の繰延べを認め、しかも平成10年改正前には外国法人の設立についても同条の適用が認められていたことに端を発するものである。すなわち、同条の圧縮記帳の方法により保有株式を簿価で現物出資して外国法人を設立した を認め、しかも平成10年改正前には外国法人の設立についても同条の適用が認められていたことに端を発するものである。すなわち、同条の圧縮記帳の方法により保有株式を簿価で現物出資して外国法人を設立した後、当該外国法人が現物出資された株式をやはり簿価によって他の外国法人に譲渡した場合、当該譲渡には我が国の課税権が及ばないことから、結局、本件と同様、圧縮記帳によって課税が繰り延べられた含み益については、我が国では課税がされないままで終わらざるを得ないのである。本件における税務上の事態は、アトランティック社がその保有するテレビ朝日等の株式を簿価でアスカファンド社に譲渡した場合にも生ずることであり、その場合には原告に益金が生じたとみる余地は全くないのであるし、また、そのような事態が生ずることは、圧縮記帳の方法により外国法人の設立を許した場合には容易に想定し得るにもかかわらず、法が何らの措置を講じていないことからすると、法自体がやむを得ないものとして放置していたといわざるを得ないのであるから、結局、本件のような事態の起こることは、当時の法人税法上やむを得なかったと考えられるのである。 第4 結論よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、仮執行の宣言を付することは相当でないからこれを付さないこととし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 なお、原告は本件において相当な分量の準備書面及び書証を提出しているところ、そのうちには、準備書面中の書証として提出済みの文献の引用部分や、書証としての当該文献の写しなどを中心として、原告の主張内容を前提としても果たして引用又は提出することが必要であったか否かに疑問のあるものも少なからず存在し、それらの書記料を被告に負担させることには疑問がない の当該文献の写しなどを中心として、原告の主張内容を前提としても果たして引用又は提出することが必要であったか否かに疑問のあるものも少なからず存在し、それらの書記料を被告に負担させることには疑問がないでもない。しかし、既に判示したように、本件各処分は原告に対して極めて重大なものであったから、原告としては本件訴訟にいわば背水の陣で臨む必要があり、客観的には不必要な主張や書証を提出することもある程度はやむを得ないものと考えられること、他方、被告は、本件の審理の最終段階に至って主位的主張を変更したことに見られるように、十分な検討もせずに処分を行ったと評価されてもやむを得ないのであり、本件訴訟はこのような不十分な検討に基づく苛酷な処分を受けた原告がやむを得ずに提起したものというべきものであることなどにかんがみ、特にこれらの書記料もすべて被告に負担させることとした次第である。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官村田斉志裁判官日暮直子

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