平成16(行ウ)12 損害賠償請求(差戻)事件

裁判年月日・裁判所
平成18年12月27日 福井地方裁判所 その他 住民訴訟
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判決文本文33,330 文字)

- -平成18年12月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(行ウ)第12号損害賠償請求(差戻)事件(口頭弁論終結日平成18年10月11日)判決主文 被告は,福井県に対し,1億0983万0907円及びこれに対する平成10年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求を棄却する。 差戻しに係る部分の訴訟の総費用はこれを2分し,その1を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,福井県に対し,2億2046万4000円及びこれに対する平成10年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,福井県(以下「県」という。)の住民である原告らが,県の平成6年4月から平成9年12月までの旅費の支出について,公務出張の事実がないのにされた違法なものがあり,これにより県が損害を被っているとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して,当時,上記旅費の支出に係る支出負担行為及び支出命令につき法令上本来的な権限を有する県知事の職にあった被告に対し,損害賠償請求として,16億9806万7220円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成10年11月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めたところ(福井地方裁判- -所平成10年(行ウ)第13号損害賠償請求事件),同裁判所が,本件訴えについては,平成7年2月の県監査委員事務局(以下「監査委員事務局」という。)職員の秋田県への出張に係る旅費(以下「秋田県出張旅費」という。)の支出を除き,その前提となる住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)が請求 の県監査委員事務局(以下「監査委員事務局」という。)職員の秋田県への出張に係る旅費(以下「秋田県出張旅費」という。)の支出を除き,その前提となる住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)が請求の対象の特定を欠くとし,秋田県出張旅費の支出については法242条2項本文所定の監査請求期間を経過しており,かつ,同項ただし書にいう正当な理由があるとはいえないとして,訴えを却下し,原告らが控訴したが(名古屋高等裁判所金沢支部平成11年(行コ)第15号),控訴審も,同様の理由により控訴を棄却し,原告らが上告したところ,最高裁判所は,本件監査請求は請求の対象の特定に欠けるところはないものの,本件各旅費(秋田県出張旅費を除く。)の支出負担行為及び支出命令のうち平成9年8月16日以前にされたものについては,法242条2項本文所定の監査請求期間が経過しており,同項ただし書にいう正当な理由があるということはできず,同日以前の支出負担行為及び支出命令についての損害賠償請求に係る部分は不適法として却下すべきであるとして上告を棄却し,秋田県出張旅費の支出負担行為及び支出命令についての損害賠償請求に関する上告については,上告受理申立て理由を記載した書面を提出しないという理由で上告を却下し,控訴審判決のうち,同月17日以降にされた旅費の支出負担行為及び支出命令についての損害賠償請求に関する部分については,原判決を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消し,当庁に差し戻したため(最高裁判所平成12年(行ヒ)第211号,以下,この最高裁判決を「本件最高裁判決」という。),同部分について,改めて第1審としての判断をすることになった事案である。 原告らは,差戻後,平成9年8月17日以降にされた旅費の支出負担行為及び支出命令についての損害賠償請求に関する部分について,同年4月 について,改めて第1審としての判断をすることになった事案である。 原告らは,差戻後,平成9年8月17日以降にされた旅費の支出負担行為及び支出命令についての損害賠償請求に関する部分について,同年4月から同年12月までに県の知事部局,出納事務局,企業庁,議会事務局,教育委員会,人事委員会事務局及び地方労働委員会事務局(以下「知事部局等」という。)- -及び監査委員事務局において支出された旅費のうち,旅費調査委員会の公表した報告書において事務処理上不適切な支出のうち公務遂行上の経費に充てられたものとされた2億2046万4000円全額が同年8月17日以降に支出された可能性があるとして,損害額を2億2046万4000円と特定した。 前提事実(各項末尾に証拠を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1)原告らは,県の住民である。 被告は,昭和62年4月から平成15年4月まで県知事の職にあった者である。(弁論の全趣旨)(2)県は,平成9年12月,秋田県出張旅費(平成7年2月の監査委員事務局職員の秋田県への出張に係る旅費)の支出が公務出張の事実がないのにされたものであることが明らかになったことを受けて,すべての県職員の旅費の支出について調査を実施することとした。この調査のため,知事部局においては総務部長及び各部次長を構成員とする旅費調査委員会が設置され,監査委員事務局においては監査委員等を構成員とする監査委員事務局旅費調査委員会(以下,旅費調査委員会と併せて「旅費調査委員会等」という。)が設置された。また,県の出納事務局,企業庁,議会事務局,教育委員会,人事委員会事務局及び地方労働委員会事務局は,旅費調査委員会による調査に加わることになった。(甲3の1,4)(3)旅費調査委員会は,平成6年度から平成8年度までの知事部局等におけ ,教育委員会,人事委員会事務局及び地方労働委員会事務局は,旅費調査委員会による調査に加わることになった。(甲3の1,4)(3)旅費調査委員会は,平成6年度から平成8年度までの知事部局等における旅費の支出並びに平成9年4月から同年12月までの知事部局等及び監査委員事務局における旅費の支出について,1件ごとに不適切なものであるかどうかを調査した上,「旅費調査結果と改善方策に関する報告書」と題する報告書(以下「旅費報告書」という。)を作成し,平成10年3月10日,これを公表した。同報告書は,公務出張がないのにされた旅費の支出を事務処理上不適切な支出とし,これを更に公務遂行上の経費に充てられたものと不適正なものとに分類して,旅費調査委員会の調査結果を集計しており,こ- -れによれば,知事部局等の平成6年度から平成8年度までの旅費の支出のうち事務処理上不適切な支出は18億9341万7062円,そのうち公務遂行上の経費に充てられたものは14億6735万4220円,知事部局等及び監査委員事務局の平成9年4月から同年12月までの旅費の支出のうち事務処理上不適切な支出は2億5836万5093円,そのうち公務遂行上の経費に充てられたものは2億2046万4000円とされている。 また,監査委員事務局旅費調査委員会は,平成6年度から平成8年度までの監査委員事務局における旅費の支出について,1件ごとに不適切なものであるかどうかを調査した上,「旅費調査結果報告書」と題する報告書(甲4)を作成し,平成10年3月10日,これを公表した。同報告書は,旅費調査委員会の上記報告書と同様の分類により,監査委員事務局旅費調査委員会の調査結果を集計しており,これによれば,監査委員事務局の平成6年度から平成8年度までの旅費の支出のうち事務処理上不適切な支出は1024 の上記報告書と同様の分類により,監査委員事務局旅費調査委員会の調査結果を集計しており,これによれば,監査委員事務局の平成6年度から平成8年度までの旅費の支出のうち事務処理上不適切な支出は1024万9000円とされている。 そして,旅費調査委員会等は,平成6年度から平成9年12月までの事務処理上不適切な支出(合計21億6203万1155円)のうち,公務遂行上の経費に充てられたものでない支出(4億6396万3935円)を「不適正な支出」であるとし,これを県へ返還するものとしたが,その余は公務遂行上の経費に充てられたものとして返還の対象としなかった。(甲3の1・2,4)(4)原告らは,平成10年8月17日,県監査委員に対し,①旅費調査委員会の調査の結果,事務処理上不適切な支出で公務遂行上の経費に充てられたものとされた知事部局等の平成6年度から平成8年度までの旅費14億6735万4220円並びに知事部局等及び監査委員事務局の平成9年4月から同年12月までの旅費2億2046万4000円,②監査委員事務局旅費調査委員会の調査の結果,事務処理上不適切な支出とされた監査委員事務局の- -平成6年度から平成8年度までの旅費1024万9000円は,公務出張の事実がないのに支出された違法なものであるとして,これによって生じた損害をてん補するために必要な措置を講ずることを求める旨を記載した監査請求書を事実を証する書面と共に提出し,住民監査請求(本件監査請求)を行った(甲1,2)。 (5)県監査委員は,平成10年10月2日,本件監査請求が対象の特定を欠くことを理由にこれを却下した(甲7)。 (6)福井県一般職の職員等の旅費に関する条例には,県の職員が出張し,または赴任した場合には,当該職員に対し,旅費を支給する旨規定している。 福井県事務決裁規程 ことを理由にこれを却下した(甲7)。 (6)福井県一般職の職員等の旅費に関する条例には,県の職員が出張し,または赴任した場合には,当該職員に対し,旅費を支給する旨規定している。 福井県事務決裁規程7条(平成10年4月改正以降は3条)は,知事の権限に属する事務で本庁において処理するもののうち,旅費の予算の執行及び旅費の支出命令に関することについては,課(室)長補佐の専決事項とする旨規定している。 福井県財務規則4条5項2号は,令達を受けた歳出予算の範囲内の支出負担行為及び支出命令に係る事務は,かい(県の予算の令達を受けて,これを執行する出先機関)の長に委任する旨規定している。 福井県出先機関事務決裁規程7条(平成10年4月改正以降は3条)は,旅費の予算の支出負担行為及び支出命令に関する事項については,嶺南振興局にあっては企画振興部長又は二州振興部長の専決事項とし,県立大学にあっては県立大学事務局総務課長及び小浜事務室長の専決事項とし,県立病院にあっては総務課長の専決事項とし,県立精神病院にあっては事務局次長とし,その他の出先機関にあっては庶務を担当する課(室)長の専決事項とする旨規定している。 福井県知事の権限に属する事務の一部を議会事務局長および委員会等の事務を補助する職員に補助執行させる規則3条は,議会,委員会及び委員の所掌する事務に係る支出負担行為に関する事務について,議会事務局長,教育- -長,監査委員事務局長,人事委員会事務局長及び地方労働委員会事務局長(以下「議会事務局長等」という。)に補助執行させる旨規定し,同規則7条は,議会事務局長等は支出負担行為に関する事務について福井県事務決裁規程に規定する専決事項の例により専決することができる旨規定している。 (乙1,4ないし7,弁論の全趣旨) 争点 (1)請求の特定の有 会事務局長等は支出負担行為に関する事務について福井県事務決裁規程に規定する専決事項の例により専決することができる旨規定している。 (乙1,4ないし7,弁論の全趣旨) 争点 (1)請求の特定の有無(原告らの主張)ア本訴の対象は,平成9年8月17日以降にされた知事部局等及び監査委員事務局の旅費支出負担行為及び支出命令のうち公務遂行上の経費に充てられたとされる事務処理上不適切な支出とされた旅費(以下「本件旅費」という。)に係るものである。 本件監査請求は,旅費調査委員会等の各調査においてそれぞれ事務処理上不適切な支出とされた各旅費の支出が違法な公金の支出であるとして措置請求をしたものであり,本件の住民訴訟も同様である。しかも,旅費調査委員会等の各調査においては,それぞれ対象とする旅費の支出について1件ごとに不適切なものかどうかを調査した結果,公務出張の事実がないのにされた旅費の支出を事務処理上不適切な支出とした。 公務出張の事実がないのにされた旅費の支出,すなわちカラ出張の旅費の支出は,違法な公金の支出であることは明らかであり,原告らは,このような旅費調査委員会等の調査において,公務出張の事実がないのにされた旅費の支出のうち公務遂行上の経費に充てられたとして県において返還措置が採られなかった部分について,違法な公金の支出であるとして,県に代位して,県知事であった被告に対して,これに係る損害賠償を請求するものであるから,請求の特定に欠けるところはない。 イ請求の特定が求められるのは,裁判所の判断及び被告の防御を可能にす- -るためである。 前示のとおり,本訴の対象となる財務会計行為が違法な公金の支出であることは明らかであるから,本訴の争点は,この違法な公金の支出について,長である被告の指揮監督義務違反の成否と損害の有無及び額で る。 前示のとおり,本訴の対象となる財務会計行為が違法な公金の支出であることは明らかであるから,本訴の争点は,この違法な公金の支出について,長である被告の指揮監督義務違反の成否と損害の有無及び額である。 そして,本件の争点のうち指揮監督義務違反の成否については,原告らは,個別具体的な旅費支出負担行為及び支出命令ごとに被告の指揮監督義務の内容が異なり,それぞれについて被告に指揮監督義務違反があると主張するわけではなく,すべてのカラ出張に関する旅費の支出負担行為及び支出命令について,被告の指揮監督義務の内容が同じであり,その指揮監督義務の違反があると主張しているから,被告としては,原告らの主張する指揮監督義務違反がないことを主張立証すれば足りるのであって,個々の旅費の支出負担行為及び支出命令の特定を要しない。 また,本件の争点のうちの損害の有無及び額についても,被告としては,本件旅費を公務遂行上の経費に充てたため県に損害が発生しなかった事実を領収書,証言等によって立証すれば足り,個々の旅費の支出負担行為及び支出命令の特定を要しない。 そもそも,カラ出張であるのに支出された旅費は,裏金として,現金ないし預金の形で保管され,各所属で支出が必要になる都度,プールされた裏金から,必要額が支出されたのであって,カラ出張の旅費として支出された金銭がそのまま公務遂行上の経費に充てられたわけではない。このような裏金の管理の実態からすると,ある個別具体的な旅費の支出負担行為及び支出命令によって支出された金銭が,どのように使用されたかを明らかにすることは不可能である。プールされた裏金がどのように使用されようとも,カラ出張の旅費の支出負担行為及び支出命令は違法であり,県に損害が生じたことは明らかである。 このように,個々の旅費の支出負担行為及び支出命令を特定し 。プールされた裏金がどのように使用されようとも,カラ出張の旅費の支出負担行為及び支出命令は違法であり,県に損害が生じたことは明らかである。 このように,個々の旅費の支出負担行為及び支出命令を特定しなくとも,- -被告の防御及び裁判所の判断が可能であるから,請求は特定されている。 ウ仮に請求が特定されていないのであれば,訴訟要件が具備されていないことには変わりがないから,最高裁判所において上告不受理となったはずである。にもかかわらず,本件最高裁判決が「本案の審理をさせるため,本件を第1審に差し戻すのが相当である。」と判示したのは,最高裁判所が,本件監査請求の対象の特定に欠けるところがないというだけでなく,本訴の請求の特定についても欠けるところがないと判断したからである。 (被告の主張)ア住民監査請求と住民訴訟は,財務会計上の違法な行為又は怠る事実の防止という点は共通する。しかし,住民監査請求は,当該普通地方公共団体の自治的,内部的処理によって予防,是正させることを目的とするから,監査委員において,住民監査請求の対象を特定して認識することができる程度にその対象が摘示されていれば足りるが,住民訴訟は,財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求するものであるから,裁判所が客観的に認識できるようその対象を個別具体的に特定する必要がある。 したがって,本訴が住民訴訟である以上,その対象は一定の個別具体的な財務会計上の行為に限定され,訴訟の場において,当該財務会計行為が個別的かつ具体的に特定されなければならない。 また,法242条の2第1項4号による当該職員に対する損害賠償請求の訴えについては,請求者が,当該公金の支出等が違法又は不当であることの立証責任を負担するから,原告らは,本件最高裁判決に基づき,平成9年8月1 2条の2第1項4号による当該職員に対する損害賠償請求の訴えについては,請求者が,当該公金の支出等が違法又は不当であることの立証責任を負担するから,原告らは,本件最高裁判決に基づき,平成9年8月17日から同年12月までの事務処理上不適切な旅費に係る支出負担行為及び支出命令を個別具体的に特定し,県に生じたと主張する損害額を明らかにする必要がある。 にもかかわらず,原告らは,個々の旅費支出に係る日時,目的,支出金- -額,行先,出張した職員の氏名等,本訴の対象となる旅費の支出負担行為及び支出命令を特定していない。 他方,被告は,平成15年4月に県知事の職を退職し,一個人の立場で本訴を追行しており,調査能力に限界があるから,本訴の請求の対象に係る旅費の支出負担行為及び支出命令を特定することは不可能である。 イ原告らが財務会計行為を個別具体的に特定しないため,被告としては,個別具体的な支出ごとに指揮監督義務違反及び損害がないことを主張できない。公務遂行上の経費に充てられたか否かの認定は,個別具体的な財務会計行為に基づいて支出された旅費がどのような目的で使用されたか,当該支出が県にとって有益であったか否か,損害に該当するか否かを個別に判断しなければ,裁判所は損害を認定できず,被告の指揮監督義務違反についても,当該支出について個別的に検討し,当該支出に関する被告の関与の状況を審理しなければ指揮監督義務違反の有無は判断できない。 ウ本件最高裁判決は,適法な監査請求を経ていない点で訴えが不適法であるとして訴えを却下した控訴審判決に不服があるとした原告らの上告に対するものであり,原告らの不服申立ての限度において審理して原判決を破棄したにすぎず,原審において何ら審理されなかった本訴の請求の特定の問題について判断を下したとはいえないから,本件最高裁 の上告に対するものであり,原告らの不服申立ての限度において審理して原判決を破棄したにすぎず,原審において何ら審理されなかった本訴の請求の特定の問題について判断を下したとはいえないから,本件最高裁判決が第1審に差し戻したことをもって,請求の特定に欠けるところがないと判断したとはいえない。 そして,本件最高裁判決が第1審に差し戻したのは,旅費報告書において事務処理上不適切な支出のうち公務遂行上の経費に充てられたものとされた平成9年度の旅費支出2億2046万4000円のうち同年8月17日以降になされた支出負担行為及び支出命令についての損害賠償請求に関する部分であるから,同日から同年12月までの事務処理上不適切な旅費に係る個々具体的な支出負担行為及び支出命令が特定されなければ,第1- -審に差し戻された損害賠償請求額は確定しない。 (2)被告の指揮監督義務違反の成否(原告らの主張)ア具体的な指揮監督義務を基礎付ける事情(ア)本件のカラ出張の実態旅費調査委員会等の報告によれば,事務処理上不適切な支出はすべての部局に及んでおり,平成9年4月から同年12月までの旅費の総支出額15億2603万円の約17%に相当する2億5836万5000円が事務処理上不適切な支出であり,平成6年度から平成8年度までの旅費の総支出額78億0835万円の約24%に相当する18億9341万7000円が事務処理上不適切な支出であった。 このような本件のカラ出張の実態を踏まえて,県の職員で構成された旅費調査委員会でさえも,カラ出張が平成6年以前から「全庁的に長い間行われてきた」ことを自認している(甲3の1の22頁)。 そして,旅費調査委員会等の報告は,本件のカラ出張について,単なる職員の意識,公務員倫理の欠如にとどまるものではなく,実態に適さない予算システ 行われてきた」ことを自認している(甲3の1の22頁)。 そして,旅費調査委員会等の報告は,本件のカラ出張について,単なる職員の意識,公務員倫理の欠如にとどまるものではなく,実態に適さない予算システム,旅費執行システムを背景に,カラ出張を容認してきた組織全体の問題から生じている旨指摘している。 このように,長期間にわたって全庁的,組織的にカラ出張が行われた実態が存在していることからすれば,組織の長である被告としては,旅費調査委員会等の報告を待つまでもなく,容易にカラ出張の問題が存在することを認識し得たというべきである。 なお,北海道監査委員は,平成8年2月23日,「不正が常態化していた状況に照らせば,知事と出納長には指揮監督上の過失責任があると考えることができる」と極めて常識的かつ正当な指摘をしている(甲11の15)。 - -(イ)各地方公共団体におけるカラ出張に関する新聞報道平成7年3月27日から平成8年12月31日までの福井新聞の記事において,宮城県,北海道,秋田県,徳島県,鹿児島県,愛知県,三重県,福岡県,群馬県,東京都,新潟県,岡山県におけるカラ出張等の事実が報じられ,平成5年6月26日から平成9年11月29日までの朝日新聞等の記事において,上記以外では,高知県,福島県,青森県,山形県,埼玉県,長野県,石川県,大阪府,和歌山県,静岡県,島根県,富山県,大分県などにおけるカラ出張等の事実が報じられ,新聞記事の中には,監査委員事務局がカラ出張をしていた旨の記事や,部局ぐるみでカラ出張が常態化していた旨の記事が多数あった。 知事であれば,当然,地方公共団体に関する報道については,熟読していたであろうし,場合によっては,部下に調査を命じて正確な事実を把握する努力をしていたものと推測されるところ,常識的な知事であれば,上記のよ れば,当然,地方公共団体に関する報道については,熟読していたであろうし,場合によっては,部下に調査を命じて正確な事実を把握する努力をしていたものと推測されるところ,常識的な知事であれば,上記のような報道に接し,県でも同様の問題,すなわち,監査委員事務局自身がカラ出張を行っているのではないかとか,部局ぐるみでのカラ出張が常態化しているのではないかと疑いを持ち,自ら調査したり,調査を命じたり,そのような事態に対応するための新たな取組を行うものと考えられる。 (ウ)市民オンブズマン全国連絡会議による指摘市民オンブズマン全国連絡会議には,平成8年1月25日,カラ出張に照準を当てて監査委員事務局の平成6年度旅費,食糧費について全国一斉に情報公開請求を行い,平成8年7月27日,調査結果を公表し,県の監査委員の出張についてもカラ出張の疑いが極めて強いと指摘し,そのことが翌28日の福井新聞に掲載された。また,読売新聞において,同月26日,県の監査委員の出張13件についてカラ出張の疑いがあるとして,事務局に調査の申入れをした旨報じられた。 - -市民オンブズマン全国連絡会議という民間組織の一斉調査によってカラ出張の疑いを把握できたということは,被告が指揮監督義務の履行によりカラ出張の実態を容易に把握できたことを意味する。また,市民オンブズマン全国連絡会議は,民間組織とはいえ,行政監視を目的とした専門家集団であるから,これによるカラ出張の疑いがあるという指摘を軽視してよいはずはなかった。 (エ)自治事務次官通知による指摘自治事務次官は,各都道府県知事等に対し,平成8年12月19日付けで「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組等について(通知)」と題する通知(甲13,以下「本件自治事務次官通知」という。)を発した。 本 知事等に対し,平成8年12月19日付けで「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組等について(通知)」と題する通知(甲13,以下「本件自治事務次官通知」という。)を発した。 本件自治事務次官通知は,事務次官会議における申合せの趣旨を踏まえて職員の綱紀粛正に適切に対処することを求めた上,「最近,地方公共団体の一部において,旅費,食糧費等の不適正な執行が問題となっていることについては,国民の間に地方公務員への不信感を惹起させ,ひいては行政に対する信頼を損ないかねないものである」として,前記(イ)のとおりの当時の報道を意識し,「公務員倫理の確立と厳正なる予算の執行を図られるよう特に留意されたい」と強く注意喚起を求めている。 (オ)以上によれば,被告としては,遅くとも平成8年度中には,県においてカラ出張の問題が組織的に存在していることを知っていたというべきであり,少なくともカラ出張が存在するのではないかとの疑いを容易に持ち得たというべきである。 イ被告の指揮監督義務の不履行(ア)前記のとおり,被告としては,遅くとも平成8年度中には,少なくとも県においてカラ出張の問題があることを予見可能であったから,指- -揮監督義務として,カラ出張の有無について全庁的な調査を行うべきであり,また,本件自治事務次官通知を受け,同通知を各所属に通知してカラ出張の対策を講ずるべきであった。また,被告は,総務部長に命じて平成9年度予算執行方針を定める際に,カラ出張が行われていないかにつき特に留意するよう指示することも容易であったし,監査委員に対して旅費の事務の執行につき抜き打ち監査等を実施するように要求することもできた。 にもかかわらず,被告は,上記のような調査等を行わなかったから,指揮監督義務を怠ったといえる。 そして,被告が 員に対して旅費の事務の執行につき抜き打ち監査等を実施するように要求することもできた。 にもかかわらず,被告は,上記のような調査等を行わなかったから,指揮監督義務を怠ったといえる。 そして,被告が前記のような指揮監督義務を果たしていれば,その後のカラ出張は,容易に防止できたはずである。 (イ)被告が総務部長に命じて出した各年度の予算の執行方針に関する通知(乙8の1ないし8の4)は,抽象的に予算の適正執行の努力と旅費等の節減努力を通知するものでしかない。 そもそも,予算の適正執行や節減の努力は,地方自治法,地方財政法,地方公務員法等によって,すべての地方公務員に課せられた義務であるから,上記のような通知は,各職員に,法律を遵守するよう注意喚起する程度の意味しか持たない。しかも,本件のカラ出張は,各部局において行われ,各部局長自らが法律違反行為を行っていたから,違法行為を行っていた当事者に対して上記程度の通知を発しても,職員によるカラ出張防止のために被告が指揮監督義務を果たしたことにはならない。 仮に,この程度の通知で被告が指揮監督義務を果たしたことになるのであれば,被告は,職員に法律の遵守を伝えれば指揮監督義務を果たしたことになってしまうのであり,知事の指揮監督義務違反というものはほとんど観念できないことになる。 また,平成7年8月22日付けの「行政運営および予算執行の適正化- -について」と題する通知(乙9)は,食糧費の適正支出に努める旨を通知したものであり,平成8年11月27日付けの「職員の服務規律の確保等について」と題する通知(乙10の1)や平成9年11月13日付けの「職員の服務規律の確保について」と題する通知(乙11)も,抽象的に綱紀粛正を通知したにすぎず,いずれも旅費支出に着目していないから,被告がカラ出張防止のため 10の1)や平成9年11月13日付けの「職員の服務規律の確保について」と題する通知(乙11)も,抽象的に綱紀粛正を通知したにすぎず,いずれも旅費支出に着目していないから,被告がカラ出張防止のために指揮監督義務を果たしたことにはならない。殊に,平成8年11月27日付けの「職員の服務規律の確保等について」と題する通知(乙10の1)は,秋田県知事が食糧費の不正支出の責任をとって辞意を表明した直後に発せられたものであるから,被告が県においても同様な問題が生じた場合に備えて綱紀粛正を通知した形式を整えることを目的とした通知にすぎないと考えられる。 したがって,被告が総務部長に命令して各通知を発したことをもって,被告が指揮監督義務を果たしたことにはならない。 (被告の主張)ア具体的な指揮監督義務を基礎付ける事情(ア)本件旅費の支出負担行為及び支出命令について,被告が県に対して損害賠償責任を負うのは,被告において,専決者又は受任者が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督義務上の義務に違反し,故意又は過失により専決者又は受任者が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限られる。そして,長の帰責事由は,上司の下部職員に対する一般的な選任監督責任ではなく,本来自己の権限に属する当該財務会計上の行為を専決者又は受任者が専決又は委任に基づく事務を執行する際の個別具体的な指揮監督の懈怠であるから,長は,自らが当該財務会計上の非違行為を行ったのと同視し得る程度の指揮監督の懈怠がある場合に限り,損害賠償責任を負うものと解される。 (イ)被告は,昭和28年3月に東京大学法学部を卒業し,同年4月に大- -蔵事務官に採用され,昭和30年4月に国家公務員上級職として旧自治庁に採用され,昭和38年12月に茨城県総務部地方課長に,昭和 告は,昭和28年3月に東京大学法学部を卒業し,同年4月に大- -蔵事務官に採用され,昭和30年4月に国家公務員上級職として旧自治庁に採用され,昭和38年12月に茨城県総務部地方課長に,昭和44年4月に宮崎県総務部次長に,昭和46年10月に宮崎県総務部長に,昭和49年7月に自治省税務局市町村税課長に,昭和51年9月に自治省税務局固定資産税課長に就任した後,昭和52年6月に県の副知事に就任し,昭和62年4月に県知事に就任し,平成15年4月に県知事を退任した。被告は庶務的な業務に従事したことがなく,旅費に係る予算の具体的執行の事務手続が具体的にどのようになされているか知らなかった。また,被告が県の職員となったのは昭和52年の副知事への就任が初めてであり,昭和62年に知事に就任して平成15年に知事を退職するまで,一貫して県の重要な施策,高度な政策的判断を伴う事項に携わってきており,県の事務的経費の執行の事務手続が具体的にどのようになされているか知らなかった。 (ウ)旅費報告書について旅費報告書の「原因と改善方策」に係る部分の記載は,あくまでも旅費の不適切な執行についての原因や背景を分析したにすぎない。また,仮に旅費の不適切な執行の原因が,予算システム及び旅費執行システムであったとしても,このことと,個別の旅費の不適切な執行に関する指揮監督義務違反とは別個の問題である。 そもそも,旅費調査委員会等の報告書によれば,県の旅費支出件数は,平成6年度に36万8187件,平成7年度に36万6831件,平成8年度に38万0556件,平成9年4月から同年12月までに24万0664件と1か月当たり2万7000件を超え,しかも,関係する所属は234である。また,これらの旅費に係る支出負担行為等について被告が決裁することは予定されておらず,旅費と 同年12月までに24万0664件と1か月当たり2万7000件を超え,しかも,関係する所属は234である。また,これらの旅費に係る支出負担行為等について被告が決裁することは予定されておらず,旅費という比較的少額かつ日常的な予算の執行であり,政策的な経費でもなく事務的な経費であるこ- -となどに照らせば,被告が個々の旅費支出について,格別の注意を払って,その一部について不適切な執行がなされていることを知り得ることは不可能であった。 (エ)各地方公共団体におけるカラ出張に関する新聞報道について各地方公共団体において予算の不適切な執行がなされていたという新聞報道は,当該地方公共団体においてそのような事実があったことを伝えるにすぎないし,原告らの主張する新聞報道は,当然,監査委員や議会の議員も見ているのであるから,監査又は決算の認定に当たって,県の旅費の支出について違法な点はないか,不適正な点はないかというような視点で監査又は決算の審査が行われていたはずである。 監査委員は,法199条8項に基づき,各所属の帳簿,書類その他の記録を閲覧し,法令に基づいて監査をしていたが,同条9項に基づく監査の結果に関する報告において,県の旅費の支出について不適正である旨の指摘はなされなかった。 また,地方公共団体の議会は,法98条1項に基づき,当該地方公共団体の事務に関する書類及び計算書を検閲し,当該地方公共団体の長その他の執行機関の報告を請求して事務の管理,議決の執行及び出納を検査することができ,同条2項に基づき,監査委員に対して,地方公共団体の事務に関する監査を求め,その結果の報告を請求することができるが,県議会も,全国の新聞報道に接しても,旅費について上記調査権を行使する必要性を認めなかった。 このような状況においては,被告は,県の旅費の不適 する監査を求め,その結果の報告を請求することができるが,県議会も,全国の新聞報道に接しても,旅費について上記調査権を行使する必要性を認めなかった。 このような状況においては,被告は,県の旅費の不適切な執行を容易には知り得なかった。 (オ)市民オンブズマン全国連絡会議の指摘について市民オンブズマン全国連絡会議の指摘は,同団体が一方的に決めたことであって,どのケースの何が疑わしいのか一切説明もなかったのであ- -り,監査委員事務局長は,監査委員としては,出張要件を記載した復命書など正式な書類も公表しており,問題はないと明確に否定していた。 このような特定の団体の何ら合理的な説明のない一方的な指摘によって,被告が県の旅費に係る不適切な執行を容易に知り得たとはいえないし,被告が,このような指摘を受けて,その都度,全庁的な調査を命じなければ,指揮監督義務に違反するものではない。 (カ)本件自治事務次官通知による指摘について本件自治事務次官通知は,全国における一部の地方公共団体の予算の不適切な執行が問題となっていることを踏まえ,公務員倫理の確立及び厳正な予算の執行について各地方公共団体の長に留意を促しているにすぎず,自治大臣の補助機関が地方公共団体に対して行った一般的な助言,勧告であるから,これによって,被告が県の旅費に係る不適切な執行を容易に知り得るものではない。 (キ)以上によれば,被告が,県においてカラ出張の問題が組織的に存在していることを知っていたとは到底いえないし,カラ出張の問題が存在するのではないかとの疑いを容易に持ち得たということもいえない。 イ指揮監督義務の履行被告は,平成6年度から平成9年度まで毎年4月1日付けで,福井県財務規則16条に基づき,総務部長に命じ,各部(局)長宛に予算執行方針(乙8の1ないし8の4) こともいえない。 イ指揮監督義務の履行被告は,平成6年度から平成9年度まで毎年4月1日付けで,福井県財務規則16条に基づき,総務部長に命じ,各部(局)長宛に予算執行方針(乙8の1ないし8の4)を通知し,予算の執行に当たっては,年度間の事業計画を立て,当該計画に従い事業を推進するとともに,厳正かつ的確で効率的な執行に努めるよう,繰り返し職員に対して十分に注意喚起を促していた。 これに対し,原告らは,不適切な旅費支出が各部局ぐるみで行われており,各部局長自身が不適切な旅費支出を行っていたから,各部局長に対して上記のような通知をしても指揮監督義務を果たしたことにはならないと- -主張する。 しかしながら,各所属において不適切な旅費支出が行われていたということは,旅費に係る一連の調査によって初めて明らかとなったもので,上記の通知が出された時点で明らかになっていたものではないし,このような旅費に係る支出負担行為等に関する事務は,本庁においては課(室)長補佐が,出先機関においては庶務担当課長等が専決しており,部(局)長自らが決裁を行っていたのではないから,原告らの前記主張は失当である。 また,原告らは,被告が総務部長に命じて発した通知が抽象的なものである旨主張するが,平成7年8月22日付けの「行政運営および予算執行の適正化について」と題する通知(乙9)は,食糧費について公文書公開条例による公開請求が行われている事実を例として,県民の意識,関心が高まっていることを特に通知しているにすぎず,全体について,適正かつ効率的な行政運営及び予算執行に努めるよう通知しており,食糧費の支出に限定したものではないし,平成8年11月27日付けの「職員の服務規律の確保等について」と題する通知(乙10の1)及び平成9年11月13日付けの「職員の服務規律の確 るよう通知しており,食糧費の支出に限定したものではないし,平成8年11月27日付けの「職員の服務規律の確保等について」と題する通知(乙10の1)及び平成9年11月13日付けの「職員の服務規律の確保について」と題する通知(乙11)は,原告らが主張するような抽象的に綱紀粛正を通知したのではなく,全国での予算の不適切な執行状況を踏まえて,県においてそのような状況が発生しないよう,適正な予算執行をすべての所属長に指示した具体的なものである。 さらに,原告らは,本件自治事務次官通知を受けて新たな取組をすべきであったと主張するが,本件自治事務次官通知は,旅費に限定して新たな取組を求めるものでもない上,県においては,本件自治事務次官通知が発せられる前の平成8年11月27日付けの通知により,既に公務員倫理の確立及び厳正なる予算の執行の徹底について通知をしていたから,改めて通知をする必要がなかった。そして,平成9年11月13日付けの「職員- -の服務規律の確保について」と題する通知(乙11)において,「これまでも公正かつ適正な予算執行の徹底を指示してきたところであるが,いま一度,チェック体制の強化,執行手続等の点検を行い,より厳正な運営に努めること」と求めたのである。 前記アのとおり,県においては,監査委員の定例監査や県議会の決算特別委員会等において,旅費の支出について違法又は不適正である旨の指摘はなく,そのような徴表ないし情況も存在しなかった。このような状況下で,被告は,上記のとおり,県における旅費を含めた予算の適正な執行について,職員に対し繰り返し留意する旨通知し,しかも,全国で予算の執行が問題になっていることを踏まえ,平成7年度以降は,概ね半年に1回の割合で職員に通知をしていたから,不適切な旅費支出の防止又は阻止のための具体的な措置 返し留意する旨通知し,しかも,全国で予算の執行が問題になっていることを踏まえ,平成7年度以降は,概ね半年に1回の割合で職員に通知をしていたから,不適切な旅費支出の防止又は阻止のための具体的な措置としては,十分であり,地方自治法に基づく監査を要求しなかったとしても,被告に過失があるとはいえない。 したがって,被告には,専決権者又は受任者が本件の旅費支出行為等の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督義務に違反していない。 (3)損害の有無及び額(原告らの主張)ア旅費報告書によれば,知事部局等及び監査委員事務局の平成9年4月から同年12月までの公務出張の事実がないのにされた旅費の支出は2億5836万5093円であり,そのうち公務遂行上の経費に充てられたものは2億2046万4000円とされたが,そのすべてが同年8月17日以降に支出されている可能性があるから,県に2億2046万4000円の損害が生じたというべきである。 イ予算の執行は,年度末に近くなればなるほど増加する傾向にある。また,旅費の月別支出の傾向は,年度ごとに大きく異なることはないと考えられる。そこで,情報公開請求によって入手可能な平成15年度の旅費の月ご- -との支出の割合を算出することによって,平成9年度の旅費支出の月ごとの傾向を推測することができる。検討対象として18の所属を無作為に抽出し,この18の所属に関する月別歳出予算差引簿に基づいて,平成15年度の月別旅費支出執行状況を検討して整理し,同年4月から同年12月までの旅費支出に対する同年8月17日から同年12月までの旅費支出の割合を算出して集計すると,同年8月17日以降の旅費支出は,ほぼすべての所属において全体の50%を超え,平均すると56.6%であった。 この数値には,統計的な合理性があると考えられるから, 旅費支出の割合を算出して集計すると,同年8月17日以降の旅費支出は,ほぼすべての所属において全体の50%を超え,平均すると56.6%であった。 この数値には,統計的な合理性があると考えられるから,平成9年4月から同年12月までの旅費支出のうち,事務処理上不適切な支出とされた2億2046万4000円につき,この数値を当てはめると,同年8月17日以降に支出された旅費支出金額は,1億2478万2624円となる。 したがって,県には,少なくとも1億2478万2624円の損害が生じたと推計される。 ウ被告の主張に対する反論(ア)被告は,違法な財務会計行為により地方公共団体が被った損害額は,これにより地方公共団体が受けた利益を差し引いて算定されるべきであり,本来予算措置されるべきものに支出した場合は,地方公共団体が利益を受けたものと判断すべきである旨主張するが,本来予算措置されるべきものか否かをどのように判断するかが明らかでない。本来予算措置されるべきものであれば,被告が県議会に対して予算措置を求めるべきであって,本来予算措置されるべきものと認められれば県議会において予算措置がされたはずである。慶弔的経費,会議等負担金,事務的経費,新聞・書籍等経費,業務依頼・折衝経費等,講師接遇等経費,来客送迎等経費及び庁舎管理等経費は,すべて予算の項目に入っており,一定額が予算として承認されているから,承認された金額を超えた金員は,県議会が無駄な支出であると判断したとみるべきである。結局,被告は,- -予算措置を求めても,認められない無駄な支出であるからこそ,予算措置を求めなかったと考えられる。このように,予算措置を求めることすらしなかった支出は,適正な監査も決算も経ておらず,それ自体が違法な支出というべきであるから,公務遂行上の経費に充てたと こそ,予算措置を求めなかったと考えられる。このように,予算措置を求めることすらしなかった支出は,適正な監査も決算も経ておらず,それ自体が違法な支出というべきであるから,公務遂行上の経費に充てたとして損益相殺をすべきという被告の主張は,抗弁として失当である。 (イ)また,本件旅費が,公務遂行上の経費に充てられたということは何ら立証されていない。 旅費報告書の基礎となった取りまとめ文書は,旅費調査委員会による調査の結果,適正な執行と確認することができないものを「事務処理上不適切な支出」とし,年度別に,支出額,公務遂行上の経費に充てられた額等を整理し,集計した書面であるところ,旅費調査委員会の調査は,自らがカラ出張を行ってきた各部各所属の責任者が実施したものであり,その内容は信用できない。 また,政策企画室,商工政策課,農林水産政策課,福井農村整備事務所,河川開発課,福井土木事務所の取りまとめ文書についてみると,いずれも,「その他」の項目のみ下3桁が端数になっており,それ以外の項目がいずれも下3桁がすべて零となっており,そのような数字が毎年続いているという特徴を有している。これは,県から支出された旅費から,実際に使用された旅費を差し引いた残額を数字合わせのために各項目に適当に割り振られたことを意味する。 したがって,取りまとめ文書やそれに基づく旅費報告書に公務遂行上の経費に充てられたと記載されているからといって,その記載によって公務遂行上の経費に充てられたと認めることはできない。 (被告の主張)ア原告らは,旅費報告書のうち公務遂行上の経費に充てられたという部分については信用できないと主張する一方で,旅費報告書に基づいて県に生- -じた損害の額を2億2046万4000円と主張しており,矛盾している。 なお,旅費調査委員会の調査に てられたという部分については信用できないと主張する一方で,旅費報告書に基づいて県に生- -じた損害の額を2億2046万4000円と主張しており,矛盾している。 なお,旅費調査委員会の調査に際しては,各部局の調査責任者(各部の次長)の指示の下,各所属において,所属長及び課長補佐(出先機関にあっては次長等)が調査実施者となり,旅行命令簿等の関係書類の調査,各年度の庶務担当者からの聞き取り調査,受命者等からの聞き取り調査等を行い,その結果を各部局において取りまとめ,旅費調査委員会に報告を行った。また,旅費調査委員会は,調査精度を高めるため,県行政改革推進委員会委員の立会いの下,25所属に対し立入調査を行い,調査を厳正に行うよう徹底した。このように,旅費報告書は,第三者の立会いの下,各部,各所属の責任者が厳正に調査を行った結果に基づいて作成されたものであり,その内容は適正であるから,旅費調査報告書において公務遂行上の経費に充てられたという部分についても信用できる。 イ原告らは,平成9年8月17日以降の支出を推計し,県に少なくとも1億2478万2624円の損害が生じたと主張するが,県が被った損害額の算定は,同日から同年12月までの事務処理上不適切な旅費に係る支出負担行為及び支出命令を個別具体的に特定した上でそれにより生じた個々の損害額の積み上げによるべきであり,推計によって損害額を算定すると,本来一つであるはずの損害額が推計方法によって異なり,妥当でない。 ウ財務会計上の行為により普通地方公共団体に損害が生じたとしても,他方で,その行為の結果,その地方公共団体が利益を得,あるいは支出を免れることによって利得をしている場合,両者の間に相当因果関係があると認められる限りは,損益相殺を行うことができる。 そもそも,予算措置がされていないこ 果,その地方公共団体が利益を得,あるいは支出を免れることによって利得をしている場合,両者の間に相当因果関係があると認められる限りは,損益相殺を行うことができる。 そもそも,予算措置がされていないことや監査及び決算を受けていないことのみをもって当該支出が県の損害であるとは断定できない。損害が発生したか否かは,当該支出の使途を踏まえ,県が利益を得,あるいは支出を免れることによって利得をしているか否かを具体的に検討して判断すべ- -きである。 本件旅費は,旅費報告書の記載のとおり,慶弔的経費,会議等負担金,事務的経費,新聞・書籍等経費,業務依頼・折衝経費等,講師接遇等経費,来客送迎等経費及び庁舎管理等経費に充てられ,いずれも県にとって有用であり,本来予算措置がされるべきものであった。 旅費報告書においては,公務遂行上の経費の多くが,流用などの正規の手続を経ていれば適切に支出できるものと認められており,公務遂行上の経費に充てられた金額については,本来予算措置されるべきものであることが明らかにされている。旅費報告書では,予算措置に係る改善方策が示され,この改善方策に基づいて,従来認められなかった会議,研修会等の参加負担金等,新聞・書籍等購入経費,名刺等印刷経費,OA機器等備品購入経費等が予算措置され,県議会において承認されているし,パソコン等については,適正な予算措置の下,順次一人一台の体制が整備された。 このことは,これらの経費が本来予算措置されるべきものであったことを示している。 また,旅費の不適切な執行により購入した備品を記載した備品管理簿を見ても,机,椅子,書庫等の事務用品,ワープロ,パソコン等のOA機器,複写機,プリンター等の印刷機器等があり,これらは公務遂行上十分にその必要性が認められ,総務部各課において使用されたから,これ を見ても,机,椅子,書庫等の事務用品,ワープロ,パソコン等のOA機器,複写機,プリンター等の印刷機器等があり,これらは公務遂行上十分にその必要性が認められ,総務部各課において使用されたから,これらの機器等の購入に充てられた経費は公務遂行上の経費である。 さらに,県議会は,平成9年度決算を認定しているが,これは,公務遂行上の経費に充てられた旅費について,県にとって有用であり,予算として提案されていれば認められたことを示すものであるし,県議会が認定の際に返還に言及しなかったのは,公務遂行上の経費に充てられた旅費が県にとって損害に当たらず,返還の必要性を認めなかったからである。 このように,県は,本件旅費が公務遂行上の経費に充てられたことによ- -って利益を得ており,県が被った損害と県が得た利益との間に相当因果関係があるから,損益相殺がされるべきである。 第3争点に対する判断 争点(1)(請求の特定の有無)について(1)法242条の2第1項4号に基づく代位請求は,同項所定の地方公共団体の執行機関又は職員による同項所定の一定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実によって地方公共団体が被った損害の回復を目的とするものである上,その代位行使される長に対する請求権は,民法上の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権であるから,判決により,既判力をもって当該損害賠償請求権の存否を確定することになる。そうすると,既判力の客観的範囲を画し,審理の対象,範囲を明らかにするために,その代位の対象となる損害賠償請求権が特定されていることが必要になる。 ところで,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求については,通常,債務不履行又は加害行為ごとに訴訟物を異にすると解されるから,財務会計上の違法行為による損害賠償請求についても,原則として,当 ところで,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求については,通常,債務不履行又は加害行為ごとに訴訟物を異にすると解されるから,財務会計上の違法行為による損害賠償請求についても,原則として,当該行為ごとに訴訟物を異にすることになり,当該行為を他の行為から区別して特定認識できるよう個別的,具体的に特定することを要し,当該行為が複数である場合には,当該行為の性質,目的等に照らしてこれらを一体とみてその違法性を判断するのを相当とする場合を除き,各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるよう個別的,具体的に特定することを要すると解される。 (2)本件の住民訴訟の代位の対象は,県の知事部局等及び監査委員事務局の平成9年8月17日から同年12月までの旅費名目による複数回の公金の支出負担行為及び支出命令という財務会計行為が,公務出張の事実がないにもかかわらずなされた違法なものであって,これにより県が損害を受けたところ,当時の県知事である被告には故意又は過失による指揮監督義務違反があるとして発生する県の被告に対する債務不履行又は不法行為に基づく損害賠- -償請求権であると理解される。このような種類の公金の支出の違法性は,通常は,個々の支出ごとに判断するほかないと考えられるから,個々の支出ごとに,日時,支出金額,支出先,支出目的等を明らかにした上で損害賠償請求権を特定する必要があるといえそうである。 しかしながら,本件の住民訴訟は,旅費調査委員会の調査において事務処理上不適切な支出とされた同年8月17日から同年12月までにされた旅費の支出が違法な公金の支出であるとして,それらの違法な公金の支出について被告に故意又は過失による指揮監督義務違反があるとする損害賠償請求権の代位行使であり,前提事実によれば,旅費調査委員会の調査においては,対 な公金の支出であるとして,それらの違法な公金の支出について被告に故意又は過失による指揮監督義務違反があるとする損害賠償請求権の代位行使であり,前提事実によれば,旅費調査委員会の調査においては,対象とする旅費の支出について1件ごとに不適切なものであるかどうか,すなわち公務出張の事実がないのに支出されたものなのか否かを調査したというのであるから,本件の住民訴訟の対象となる各旅費支出に係る財務会計上の行為が違法であることは論を俟たない。そうすると,本件の住民訴訟においては各旅費支出の違法性を判断するために各旅費の支出について個別的,具体的に特定する必要性はないものと解される。 また,本件においての被告に対する損害賠償請求の成否は,後記のとおり,被告が故意又は過失により受任者又は専決者の財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督義務を怠ったといえるか否かによるところ,これは,事柄の性質上,一定の期間における県の各部署の受任者又専決者の複数の財務会計上の違法行為を前提として,それらの違法行為を阻止する指揮監督義務違反が問題となるものであって,個々の支出負担行為及び支出命令ごとに被告の指揮監督義務の内容が異なるとは考え難いから,被告の指揮監督義務違反という債務不履行又は不法行為については,社会的には一連一体の行為と評価されるものと解される。 そして,原告らは,対象となる旅費に関する支出について平成9年8月17日から同年12月までの支出負担行為及び支出命令とし,損害額について- -は,その支出額について旅費調査委員会の調査の結果,同年4月から同年12月までの事務処理上不適切な支出で公務遂行上の経費に充てられたものとされた知事部局等及び監査委員事務局の旅費2億2046万4000円としているから,既判力の客観的範囲を画し,審理の対象, ら同年12月までの事務処理上不適切な支出で公務遂行上の経費に充てられたものとされた知事部局等及び監査委員事務局の旅費2億2046万4000円としているから,既判力の客観的範囲を画し,審理の対象,範囲を明らかにするという観点から見ても,その代位の対象となる損害賠償請求権が特定されていると解するのが相当であるし,このように解することによって,被告の防御に特段支障を来すものともいえない。 したがって,本訴の請求は特定されているといえる。 争点(2)(被告の指揮監督義務違反の成否)について(1)財務会計上の行為を行う権限を委任又は専決させた場合において,受任者又は専決者が財務会計上の違法行為を行ったときは,長は,受任者又は専決者が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により受任者又は専決者が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り,自らも財務会計上の違法行為を行ったものとして,普通地方公共団体に対し,前記違法行為により当該普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である(最高裁平成2年(行ツ)第137号同3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁参照,最高裁昭和62年(行ツ)第148号平成5年2月16日第三小法廷判決・民集47巻3号1687頁参照)。 前提事実によれば,県においては,福井県事務決裁規程,福井県財務規則及び福井県出先機関事務決裁規程により,本庁における旅費に係る支出負担行為及び支出命令に関する事務は課(室)長補佐が専決により,出先機関における旅費に係る支出負担行為及び支出命令に関する事務は,出先機関の長に委任された上で出先機関の庶務担当課長等が専決により行うものとされている。 (2)そこで,当時の県知事であった被告について における旅費に係る支出負担行為及び支出命令に関する事務は,出先機関の長に委任された上で出先機関の庶務担当課長等が専決により行うものとされている。 (2)そこで,当時の県知事であった被告について,故意又は過失により,前- -記(1)の専決権者の違法な支出負担行為及び支出命令を阻止すべき指揮監督上の義務に違反していたといえるか否かについて検討する。 ア前提事実及び証拠(甲3の1,4,11の1ないし11の49,12の1ないし12の69,13,17のうちの新聞記事,乙8の1ないし8の4,9,10の1,11)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア)平成5年ころから,各新聞は,多くの普通地方公共団体において,架空の出張旅費の支出等不適正な公金の支出があるという記事を掲載し,それは平成8年12月中旬ころまでには,宮城県,北海道,秋田県,徳島県,鹿児島県,愛知県,三重県,福岡県,群馬県,東京都,新潟県,岡山県,高知県,福島県,青森県,山形県,埼玉県,長野県,石川県,大阪府,和歌山県,静岡県などに及んでおり,部局ぐるみで旅費の不正支出が常態化していたという記事や不正をチェックすべき監査委員が架空の旅費支出等の不正な公金の支出をしていたという記事も相当数あった。 北海道については,平成7年12月29日には,不正をチェックすべき監査委員事務局においても架空の接待費の支出が行われていたことが報じられ,平成8年2月7日には不正な公金の支出が総額約19億0800万円に上ることが判明したと報じられ,同月24日には北海道監査委員が「不正が常態化していた状況に照らせば,知事と出納長には指揮監督上の過失責任があると考えることができる」と指摘した旨報じられた。 三重県については,平成8年5月19日,阪神淡路大震災のあった平成7年1月1 常態化していた状況に照らせば,知事と出納長には指揮監督上の過失責任があると考えることができる」と指摘した旨報じられた。 三重県については,平成8年5月19日,阪神淡路大震災のあった平成7年1月17日に監査委員が神戸を経由して新幹線で佐賀に出張したことなどについて架空の旅費支出との疑いがあるとして三重市民オンブズマンが知事と監査委員に近く公開質問状を提出することに対して,監- -査委員事務局長が「単なる記載ミス」にすぎないと発言したことが報じられ,平成8年5月30日には,出張先の佐賀県に対する調査で架空の旅費支出であることが濃厚になったとの指摘に対しても,監査委員事務局長が不正がないものと信じている旨発言したことが報じられたが,同年9月には,三重県知事が命じた全庁的な調査の結果,三重県職員の旅費の不正支出等により捻出された裏金の総額が約11億6600万円に上り,三重県知事が,裏金作りが全庁的に組織ぐるみで行われていた事実を認めたことが報じられた。 群馬県については,同年11月12日,同年7月に全国市民オンブズマン連絡会議から全庁的な調査を行うよう申入れがあったのを機に,関係課長らで構成する専門の検討委員会を設置し,平成6年度に執行された約60万件,総額約32億円の旅費について旅行命令と復命書,会議資料等を照合して調査したところ,3億6700万円の旅費の不正支出が判明した旨報じられた。 また,地方制度調査会の専門小委員会は,平成8年4月16日,地方自治体への「外部監査制度」の導入などの提言を盛り込んだ報告書を同調査会総会に提出し,その報告書は,架空の出張旅費の支出等自治体の公費の不正支出への批判を背景に,「身内に甘い」と指摘される現行監査制度の改善と外部監査の導入で行政チェック機能の強化を求めており,そのことは,同月17日に 報告書は,架空の出張旅費の支出等自治体の公費の不正支出への批判を背景に,「身内に甘い」と指摘される現行監査制度の改善と外部監査の導入で行政チェック機能の強化を求めており,そのことは,同月17日に新聞で報じられた。 (イ)市民オンブズマン全国連絡会議は,平成8年7月27日,全国37都道府県の監査委員や監査委員事務局職員らによる平成6年の管外出張を総点検したところ,27都道府県において,架空の出張旅費の支出や旅費を水増して請求したケースが318件あり,県についても,架空の出張旅費の支出であるとの疑いが極めて強いケースが13件,合計120万円に上るとして,監査委員事務局に調査を申し入れた。そして,同- -月26日の読売新聞や翌28日の福井新聞においてその旨が掲載された。 これに対して,監査委員事務局長は,市民オンブズマン全国連絡会議が一方的に決めたことであり,どのケースの何が疑わしいのか一切説明もない,監査委員事務局としては,出張要件を記載した復命書など正式な書類も公表しており,問題はないと考えていると述べていた。 (ウ)自治事務次官から各都道府県知事及び各政令指定都市市長に対し,平成8年12月19日付けで,「最近,地方公共団体の一部において,旅費,食糧費等の不適正な執行が問題となっていることについては,国民の間に地方公務員への不信感を惹起させ,ひいては行政に対する信頼を損ないかねないものであるので,各地方公共団体においては,公務員倫理の確立と厳正なる予算の執行を図られるよう特に留意されたい」と記載された本件自治事務次官通知が発せられた。 (エ)県の総務部長は,福井県財務規則16条に基づく被告からの命を受け,各職員に対して,次のとおり,定期的に予算の適正な執行を図るよう通知していた。 すなわち,平成6年度から平成9年度まで毎年 。 (エ)県の総務部長は,福井県財務規則16条に基づく被告からの命を受け,各職員に対して,次のとおり,定期的に予算の適正な執行を図るよう通知していた。 すなわち,平成6年度から平成9年度まで毎年4月1日付けで,各部(局)長に対し,各年度の予算の執行方針として,歳出予算の執行に当たっては,年度間の事業計画を立て,当該計画に従い事業を推進するとともに,厳正かつ的確で効率的な執行に努めること,旅費,需用費等一般事務費については,年度間計画を立て,極力節減に努めるよう留意を促していた。 また,各部局長に対し,平成7年8月22日付けの「行政運営および予算執行の適正化について」と題する通知により,食糧費等の支出について,公文書公開条例による公開請求が行われるなど行政運営及び予算執行の適正化について,県民の意識,関心が高まってきている現状にかんがみて,同年度予算執行方針に加えてより一層に,適正かつ効率的な- -行政運営及び予算執行に努めるように,職員への周知徹底を図るよう求め,各所属長に対し,平成8年11月27日付けの「職員の服務規律の確保等について」と題する通知により,全国における一部の自治体等において,綱紀の保持を疑わしめる不祥事が相次ぎ,住民の厳しい批判を受け,行政に対する信頼を著しく損なっている状況を踏まえて,県政運営が県民の負担に基づいていることを十分に認識し,公私を厳しく峻別し,社会的批判を招くことのないよう法規に則った適正な予算執行に努めるように,所属職員への周知徹底を図るよう求めた。 さらに,各所属長に対し,平成9年11月13日付けの「職員の服務規律の確保について」と題する通知により,全国的に綱紀の保持を疑わしめる事態が相次ぎ,公務員全体に対する住民からの厳しい批判がある中,一部の職員の不祥事により,県民の県政への信頼 付けの「職員の服務規律の確保について」と題する通知により,全国的に綱紀の保持を疑わしめる事態が相次ぎ,公務員全体に対する住民からの厳しい批判がある中,一部の職員の不祥事により,県民の県政への信頼を著しく損なうこととなった状況を踏まえて,これまでも公正かつ適正な予算執行の徹底を指示してきたところであるが,いま一度,チェック体制の強化,執行手続等の点検を行い,より適正な運営に努めるように,所属職員への周知徹底を図るよう求めた。 (オ)県は,平成9年12月,平成7年2月の監査委員事務局職員の秋田県への出張に係る旅費(秋田県出張旅費)の支出が公務出張の事実がないのにされたものであることが明らかになったことを受けて,すべての県職員の旅費の支出について調査を実施することとした。 なお,それ以前に,県の監査委員の定例監査や県議会において,旅費の支出について違法又は不適正であるという指摘はなく,被告は,それ以前に全庁的に旅費の支出が適正であるのか否かについて調査を命じることはなかった。 そして,旅費調査委員会等の調査の結果,対象とされたすべての部局において事務処理上不適切な支出が行われていたこと,平成6年度から- -平成8年度までの間の旅費の調査結果では,総支出額78億0835万5000円の約24%に相当する18億9341万7000円が事務処理上不適切な支出であったこと,平成9年4月から同年12月までの間の旅費の調査結果では,総支出額15億2603万円の約17%に相当する2億5836万5000円が事務処理上不適切な支出であったことが判明した。 旅費調査委員会は,旅費報告書の「原因と改善方策」において,旅費の不適切な事務処理の原因や背景として,予算は公金であり,その取扱いは厳正でなければならないという,公務員として最も必要な基本的な認識 旅費調査委員会は,旅費報告書の「原因と改善方策」において,旅費の不適切な事務処理の原因や背景として,予算は公金であり,その取扱いは厳正でなければならないという,公務員として最も必要な基本的な認識が欠如していた点を指摘し,予算の組立てやその運用及び旅費制度が長い間抜本的に見直しがされないまま硬直化し,その結果,社会経済情勢の変化に対応できず,実態に即した予算執行を困難にしていたことも大きな要因であり,そうした不合理な状況を打開するため,思い切った改革に向けての全庁的な取組に至らなかったことが今日の事態を招いたとし,会計事務のチェック機関である出納事務局の審査や監査委員による監査も,書類を基にした形式的な面が中心となっているため,チェック機能を十分発揮できなかったことも要因であったと指摘している。 そして,今回の調査で明らかになったような事務処理が全庁的に長い間行われてきたことについて,管理監督者をはじめとする組織全体に公金に対する基本的な認識と責任感が欠けていたものであり,職員個々の意識の問題だけでなく,これを容認してきた組織全体の問題であると指摘している。 イ前記ア認定事実によれば,①本件の旅費の不正支出は,全庁的に長年にわたって行われてきたものであり,それは,予算制度や運用等が社会経済情勢の変化に対応できず,実態に即した予算執行を困難にしていたにもかかわらず,その改善をしなかったという構造的組織的な問題に起因するこ- -と,②平成5年から平成8年12月中旬にかけて,他の地方公共団体において多数の架空の旅費支出等の不正な公金の支出がなされていると報じられ,しかも,それが全庁的に行われており,不正をチェックすべき機関である監査委員事務局においても不正な公金の支出がなされていたと報じられていたこと,③同年7月27日,市民オン がなされていると報じられ,しかも,それが全庁的に行われており,不正をチェックすべき機関である監査委員事務局においても不正な公金の支出がなされていたと報じられていたこと,③同年7月27日,市民オンブズマン全国連絡会議が,県の監査委員事務局において架空の出張旅費の支出との疑いが極めて強いケースが13件あるとして調査を申し入れたこと,④同年11月12日には,群馬県においては,市民オンブズマン全国連絡会議による調査の申入れを機に調査を行ったところ,3億6700万円もの不正な旅費支出が判明したと報じられていたこと,⑤同年12月19日付けの本件自治事務次官通知が発せられたことなどが指摘でき,これらの事情を総合すれば,遅くとも平成8年12月19日ころには被告が県においても架空の旅費支出等の違法な行為がなされていたと疑うべき具体的な徴表ないし状況が存在したと認めるのが相当である。 確かに,前記ア(オ)の実態は,平成9年12月に,平成7年2月の監査委員事務局職員の秋田県出張旅費の支出が公務出張の事実がないのにされたものであることが明らかになったことを受けて,旅費調査委員会が調査を行い,平成10年3月10日にその結果を公表したことにより判明したものである。また,旅費の支出が,比較的少額かつ日常的な予算の執行であることに照らすと,特段の事情がない限り,長がその適否について格別の注意を払うことは期待し難いといえる。さらに,監査委員事務局長が,市民オンブズマン全国連絡会議が架空の旅費支出という疑いが極めて強いと指摘したことに対して,不正を否定する発言をしている。 しかしながら,本件の不正な旅費支出が前記のとおり構造的組織的な問題に起因することからすれば,昭和62年4月から県知事であった被告としては,当然,そのような原因となる予算制度や運用等の問題点やそれに しかしながら,本件の不正な旅費支出が前記のとおり構造的組織的な問題に起因することからすれば,昭和62年4月から県知事であった被告としては,当然,そのような原因となる予算制度や運用等の問題点やそれに- -対する改善がなされていないことを認識していた,少なくとも認識し得たと認められ(例えば,普通地方公共団体においても,被告が知事に就任した昭和62年4月から平成9年ころまでにかけて,事務のOA化が課題であったと考えられるところ,予算としてOA化対策費が十分に計上されていなければ,県知事として,その対策を講じる必要性を感じていたはずであり,その対策がなされていないまま,職場にOA機器が整備されていれば,その費用はどこから捻出したのかと不審に思うはずである。),他の地方公共団体において全庁的な旅費の不正支出がなされている旨報じられていたことから,県における予算制度等の問題が不正な旅費支出を生じさせる土壌になっているのではないかという疑いを持つものと考えられる。 そして,他の地方公共団体において,不正をチェックすべき監査委員が不正な公金の支出をしていたというケースが何件かあり,そのこともあって外部監査の必要性が示唆されていた上,三重県の場合のように架空の旅費支出の疑いが濃厚であっても,当初は監査委員事務局長がこれを否定する発言をしていたが,全庁的な調査の結果,多額の公金の不正支出が判明したという報道がなされていたこと,県の監査委員における監査が書類を基にした形式的な面が中心であり,チェック機能を十分発揮できないという問題点を抱えており,そのことは,県知事として少なくとも認識し得たと考えられるところ,市民オンブズマン全国連絡会議から県の監査委員事務局において架空の旅費支出との疑いが極めて強いケースが13件あるとして調査の申入れがなされた は,県知事として少なくとも認識し得たと考えられるところ,市民オンブズマン全国連絡会議から県の監査委員事務局において架空の旅費支出との疑いが極めて強いケースが13件あるとして調査の申入れがなされたのであるから,被告としては,監査委員による監査には限界があることを念頭に置き,外部の民間団体による指摘を真摯に受け止めるべきであって,従前,監査委員の定例監査や議会において旅費の不正支出について指摘を受けたことがなかったことや監査委員事務局長が不正を否定する発言をしたからといって,最早それらを鵜呑みにすることが許される状況ではなかったといわざるを得ない。そして,前記の- -群馬県における報道によって,被告としては,市民オンブズマン全国連絡会議の指摘が相当程度信憑性があるものと認識できたといえるし,同会議が指摘するような監査委員事務局において不正な公金の支出がなされている場合には,全庁的に不正な公金の支出が行われていたという他の地方公共団体の例にかんがみ,県においても全庁的に旅費の不正支出がなされているということを強く危惧し,全庁的な調査を行う必要性を感じるのが通常であると考えられる。 したがって,被告としては,遅くとも平成8年12月19日ころには,県の旅費支出に関する専決権者の違法な支出行為があることについて具体的な予見可能性があり,そのころには,専決権者に対する指導監督上の義務として,各部局に対して旅費支出の実情の調査を命ずべき義務があったと認めるのが相当である。そして,前提事実によれば,旅費調査委員会等の調査結果が出るまでに約3か月間を要したことが認められるから,被告が平成9年初めころに全庁的な調査を命じていれば,同年8月17日から同年12月までの旅費の不正支出を防止できたと認めるのが相当である。 にもかかわらず,被告は,平成9 要したことが認められるから,被告が平成9年初めころに全庁的な調査を命じていれば,同年8月17日から同年12月までの旅費の不正支出を防止できたと認めるのが相当である。 にもかかわらず,被告は,平成9年12月に秋田県出張旅費の支出が公務出張の事実がないのにされたものであることが明らかになったことを受けて,すべての県職員の旅費の支出について調査を実施したにすぎず,それまでの間は,各部局に対して旅費支出の実情の調査を命ずることなく,総務部長を通じて各部局に対して,厳正かつ効率的な予算執行に努めるよう指示をしたにとどまるから,被告には,専決権者が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,少なくとも過失により専決権者の財務会計上の違法行為を阻止することなく,自ら財務会計上の違法行為を行ったと評価できるから,県に対して損害賠償責任を負う。 争点(3)(損害の有無及び額)について(1)法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟において住民が代位行使す- -る損害賠償請求権は,前示のとおり,民法その他の私法上の損害賠償請求権と異なるところはないというべきであるから,損害の有無,その額については,損益相殺が問題になる場合はこれを行った上で確定すべきものである。 したがって,財務会計上の行為により普通地方公共団体に損害が生じたとしても,他方,その行為の結果,その地方公共団体が利益を得,あるいは支出を免れることによって利得をしている場合,両者の間に相当因果関係があると認められる限りは,損益相殺を行うことができる(最高裁平成5年(行ツ)第15号同6年12月20日第三小法廷判決・民集48巻8号1676頁参照)。 (2)法232条以下の支出に関する規定及び地方財政法4条等の関係法令によって,財務会計行為は,予算の範囲内におい ツ)第15号同6年12月20日第三小法廷判決・民集48巻8号1676頁参照)。 (2)法232条以下の支出に関する規定及び地方財政法4条等の関係法令によって,財務会計行為は,予算の範囲内において正確,厳正,公正に処理されることが求められており,真実に合致した会計処理をすべきことがその前提とされているといえるから,虚偽架空の事実に基づいて会計処理が行われ,公金が支出された場合,そのような公金の支出は,それだけで当然に違法であり,地方公共団体には当該支出金額に相当する損害が発生したものというべきである。 ところで,被告は,本件の旅費支出行為等に係る旅費は,旅費報告書の記載のとおり,慶弔的経費,会議等負担金,事務的経費,新聞・書籍等経費,業務依頼・折衝経費等,講師接遇等経費,来客送迎等経費及び庁舎管理等経費に充てられ,いずれも県にとって有用であり,予算措置を講じれば,認められるべきものであったから,旅費報告書で公務遂行上の経費に充てられたという部分については,県が利益を得ており,県が被った損害と県が得た利益との間に相当因果関係があるから,損益相殺をすべきと主張する。 しかしながら,前記のとおり,地方公共団体においては,公務遂行上の経費については,その目的を達成するために必要かつ最少の限度をこえてこれを支出してはならず(地方財政法4条1項),予算に計上して議会の議決を- -経ることを要し,その予算の執行は,その定められた目的に従って行われるのが原則であり,予算の各款及び各項の間の流用は原則として許されない(法220条2項)とされ,経費の支出についても財務会計法規に従ってなされることが要求されており,そのような厳格な規制によって,地方財政の健全性を確保しているのであるから,虚偽架空の事実に基づいて会計処理を行っても,それで得た金銭 出についても財務会計法規に従ってなされることが要求されており,そのような厳格な規制によって,地方財政の健全性を確保しているのであるから,虚偽架空の事実に基づいて会計処理を行っても,それで得た金銭を公務遂行上の経費に充てれば,損害がないと解することができるとすれば,法や地方財政法等が経費の支出に関して様々な規制を設けているのにこれらを容易に潜脱できることになってしまい,地方財政の健全性の確保の要請に真っ向から反することになり不当である。 したがって,仮に旅費報告書のとおり本件旅費の支出によって県が公務遂行上の経費の支出を免れたとしても,虚偽架空の旅費の支出との間に相当因果関係があると認めることはできない。 なお,予算に基づかない公金の支出がされた場合でも,後に議会が当該支出について予算議決をしたときには,その瑕疵が治癒されると解する余地はあるものの,それは,同一年度内に予算が成立し,かつ,議会がその違法行為の内容について明確に承認したことが必要であると解されるところ,乙第16号証によれば,県議会の決算特別委員会は,旅費報告書が提出された後の,平成11年2月26日,平成9度決算を認定したことが認められるものの,それ以上に,県議会が,旅費報告書において公務遂行上の経費とされた部分について,財務会計上の違法を事後的に承認したことを認めるに足りる証拠はない。 (3)そこで,本件における損害額について検討する。 旅費報告書(甲3の1・2)によれば,知事部局等及び監査委員事務局の平成9年4月から同年12月までの公務出張の事実がないのにされた旅費の支出のうち公務遂行上の経費に充てられたとされる金額は,2億2046万3501円であることが認められる(前提事実及び原告ら主張の「2億20- -46万4000円」は,千円未満を四捨五入した額である。 ち公務遂行上の経費に充てられたとされる金額は,2億2046万3501円であることが認められる(前提事実及び原告ら主張の「2億20- -46万4000円」は,千円未満を四捨五入した額である。)。 ところで,原告らは,同年8月17日以降にこの全額が支出されている可能性があるから,県に同額の損害が生じたと主張するが,同日以降にその全額が支出されたと認めるに足りる証拠はない。 また,原告らは,県の平成15年度の旅費支出に基づいて,同年4月から同年12月までの旅費支出に対する同年8月17日から同年12月までの旅費支出の割合が約56.6%であることから,平成9年8月17日から同年12月までの事務処理上不適切な支出とされたうち公務遂行上の経費に充てられた部分を,同年4月から同年12月までの2億2046万4000円の56.6%に当たる1億2478万2624円と推計する。 しかしながら,本件は,そもそも公務出張の事実がないのにされた旅費の支出であるから,実際に公務出張がされた場合の旅費の支出傾向が,架空の出張旅費の支出にそのままあてはまるかどうかは疑問である。 そこで,民事訴訟法248条を適用して,本件の損害額を日割計算によって算出するのが相当である。 そうすると,本件の損害額は,次のとおり1億0983万0907円となる。 2億2046万3501円×137日÷275日=1億0983万0907円 よって,原告らの請求は,主文第1項の限度で理由がある。 なお,仮執行宣言については,相当でないのでこれを付さない。 福井地方裁判所民事第2部裁判長裁判官小林克美- -裁判官明石万起子裁判官林啓治郎- - 美- 裁判官 明石万起子 裁判官 林啓治郎

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