平成27(行ウ)308 所得税更正処分等取消請求事件,法人税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年4月11日 大阪地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-89374.txt

判決文本文56,120 文字)

- 1 -平成31年4月11日判決言渡平成27年(行ウ)第308号所得税更正処分等取消請求事件(甲事件)平成27年(行ウ)第314号所得税更正処分等取消請求事件(乙事件)平成27年(行ウ)第315号所得税更正処分等取消請求事件(丙事件)平成27年(行ウ)第316号所得税更正処分等取消請求事件(丁事件)平成29年(行ウ)第165号法人税更正処分等取消請求事件(戊事件) 主文 1 別紙1取消処分目録記載の各処分をいずれも取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文1項と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨原告株式会社A1(以下「原告会社」という。)は,医療法人A2(平成21年1月30日付けで医療法人A3に名称変更。以下,名称変更の前後を問わず「A2」という。)に対する出資持分を譲り受け,出資持分相当額の財産払戻請求権(以下「本件払戻請求権」という。)を行使して払戻金(以下「本件払戻金」という。)の支払(以下「本件払戻し」という。)を受けたとして,平成20年8月期(平成19年9月18日から平成20年8月31日までの事業年度をいう。),平成20年10月期(同年9月1日から同年10月31日までの事業年度をいう。)及び平成21年10月期(平成20年11月1日から平成21年10月31日までの事業年度をいう。以下,これ以後の事業年度についても同様に表記する。)から平成27年10月期までの各事業年度(以下「本件各事業年度」という。)につき,それぞれ法人税の確定申告を行った。 甲事件,乙事件及び丙事件は,原告A4,同A5(以下「原告A5」という。)- 2 -及び同A6(以下「原告A6 度(以下「本件各事業年度」という。)につき,それぞれ法人税の確定申告を行った。 甲事件,乙事件及び丙事件は,原告A4,同A5(以下「原告A5」という。)- 2 -及び同A6(以下「原告A6」といい,原告A4及び原告A5と併せて「原告A4ら」といい,原告A4らと原告会社を併せて「原告ら」という。)が,所轄税務署長から,本件払戻金は原告A4らに帰属するにもかかわらず,これを原告会社に帰属するかのように仮装し,本件払戻金に係る所得を隠蔽したなどとして,それぞれ別紙2から4までのとおり,原告A4らの平成20年分の所得税に係る更正(以下「本件各所得税更正処分」という。)及び重加算税賦課決定(以下「本件各重加算税賦課決定処分」といい,本件各所得税更正処分と併せて「本件各所得税更正処分等」という。)を受けたことから,被告を相手に,本件各所得税更正処分のうち各申告額を上回る部分及び本件各重加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。 丁事件及び戊事件は,原告会社が,所轄税務署長から,本件払戻金は原告A4らに帰属するなどとして,別紙5及び6のとおり,本件各事業年度に係る法人税及び復興特別法人税又は地方法人税の更正(以下「本件各法人税等更正処分」という。)並びに各過少申告加算税賦課決定(以下「本件各過少申告加算税賦課決定処分」といい,本件各法人税等更正処分と併せて「本件各法人税等更正処分等」という。また,本件各所得税更正処分等及び本件各法人税等更正処分等を併せて「本件各処分」という。)を受けたことから,被告を相手に,本件各法人税等更正処分のうち各申告額を超える部分及び本件各過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め⑴ 国税通則法(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)ア国税通則法68 額を超える部分及び本件各過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め⑴ 国税通則法(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)ア国税通則法68条1項は,同法65条1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合において,納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し,又は仮装し,その隠蔽し,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは,当該納税者に対し,政令で定めるところにより,過少申告加算税の額の計算の基礎- 3 -となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し,又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは,当該隠蔽し,又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え,当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定する。 イ国税通則法70条4項は,偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税についての更正決定等は,同条1項又は3項の規定にかかわらず,同条1項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ,当該各号に定める期限又は日から7年を経過する日まで,することができる旨規定する。 ウ国税通則法74条の9第1項は,税務署長等は,国税庁等の当該職員に納税義務者に対し実地の調査において同法74条の2から74条の6まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問,検査等を行わせる場合には,あらかじめ,当該納税義務者に対し,その旨及び質問検査等を行う実地の調査を開始する日時等を通知するものとする旨規定し,同法74条の10は,同法74条の9第1項の規定にかかわらず,税務署 る場合には,あらかじめ,当該納税義務者に対し,その旨及び質問検査等を行う実地の調査を開始する日時等を通知するものとする旨規定し,同法74条の10は,同法74条の9第1項の規定にかかわらず,税務署長等が調査の相手方である同条3項1号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等が保有する情報に鑑み,違法又は不当な行為を容易にし,正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には,同条1項の規定による通知を要しない旨規定する。 ⑵ 所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)ア所得税法12条は,資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって,その収益を享受せず,その者以外の者- 4 -がその収益を享受する場合には,その収益は,これを享受する者に帰属するものとして,この法律の規定を適用する旨規定する。 イ所得税法24条1項は,配当所得とは,法人から受ける剰余金の配当,利益の配当,剰余金の分配(出資に係るものに限る。),基金利息並びに投資信託及び特定受益証券発行信託の収益の分配(以下「配当等」という。)に係る所得をいう旨規定し,同条2項は,配当所得の金額は,その年中の配当等の収入金額とし,ただし,株式その他配当所得を生ずべき元本を取得するために要した負債の利子(事業所得又は雑所得の基因となった有価証券を取得するために要した負債の利子を除く。)でその年中に支払うものがある場合は,当該収入金額から,その支払う負債の利子の額のうちその年においてその元本を有していた期間に対応する部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額の合計額を控除した金額とする ものがある場合は,当該収入金額から,その支払う負債の利子の額のうちその年においてその元本を有していた期間に対応する部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額の合計額を控除した金額とする旨規定する。 ウ所得税法25条1項本文は,法人の株主等が当該法人の同項各号に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において,その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が当該法人の法人税法2条16号に規定する資本金等の額又は同条17号の2に規定する連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となった当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは,所得税法の規定の適用については,その超える部分の金額に係る金銭その他の資産は,同法24条1項に規定する剰余金の配当,利益の配当又は剰余金の分配とみなす旨規定し,同法25条1項5号は,「当該法人の出資の消却…,当該法人の出資の払戻し,当該法人からの社員その他の出資者の退社若しくは脱退による持分の払戻し又は当該法人の株式若しくは出資を当該法人が取得することなく消滅させること」を掲げている。 ⑶ 法人税法(平成21年法律第13号による改正前のもの。以下同じ。)- 5 -ア法人税法11条は,資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって,その収益を享受せず,その者以外の法人がその収益を享受する場合には,その収益は,これを享受する法人に帰属するものとして,この法律の規定を適用する旨規定する。 イ法人税法23条1項本文は,内国法人が受ける同項各号に掲げる金額のうち,関係法人株式等に係る配当等の額は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入しない旨規定し,同項1号は,「剰余金の配当…若しくは利益の配当…又は剰余金の分配(出資 る金額のうち,関係法人株式等に係る配当等の額は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入しない旨規定し,同項1号は,「剰余金の配当…若しくは利益の配当…又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)の額」を掲げている。 ウ法人税法24条1項本文は,法人の株主等である内国法人が当該法人の同項各号に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において,その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が当該法人の資本金等の額又は連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となった当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは,法人税法の規定の適用については,その超える部分の金額は,同法23条1項1号に掲げる金額とみなす旨規定し,同法24条1項5号は,「出資の消却…,出資の払戻し,社員その他法人の出資者の退社又は脱退による持分の払戻しその他株式又は出資をその発行した法人が取得することなく消滅させること」を掲げている。 ⑷ 医療法医療法54条は,医療法人は,剰余金の配当をしてはならない旨規定する。 3 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記の各証拠(枝番のあるものは特記しない限り全枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 ⑴ 当事者等- 6 -ア A7は,原告A4らの父であり,A8病院及び同病院を運営する医療法人A9の設立者である。 イ原告A5はA7の長男であり,原告A4は次男であり,原告A6は三男である。 原告A4は,平成4年に医師免許を受けた医師であり,現在,A9の理事長を務めている。原告A5は,現在,学校法人A10の理事長を務めており,原告A6は,現在,社会福祉法人A11の理事長を務めている。(以上につき,乙12,13,16~18) あり,現在,A9の理事長を務めている。原告A5は,現在,学校法人A10の理事長を務めており,原告A6は,現在,社会福祉法人A11の理事長を務めている。(以上につき,乙12,13,16~18)ウ原告会社は,平成19年9月18日,原告A4らを発起人として設立された法人である(乙19,20)。 ⑵ A9等についてア A9は,A7が昭和40年12月18日に設立した医療法人であり,A8病院のほか複数の病院を経営しており,学校法人A10及び社会福祉法人A11とグループ(以下「A12」という。)を形成している(乙12,13の1)。 イ A12は,平成19年9月17日の時点で,金融機関が主体となり,A13株式会社(平成21年10月1日付けでA13株式会社に商号変更。 以下「A13社」という。)の支援により事業再生中であった(乙14,15)。 ⑶ A2についてア A2は,昭和54年4月2日に設立された医療法人であり,医療法人A2A14病院(以下「A14病院」という。)を経営していた。A2は,その定款に出資持分に関する規定がある,いわゆる持分の定めのある社団であった。(以上につき,乙27,28,31,32)イ平成19年9月28日に新旧社員が交替するまでのA2の社員は,A15,A16及びA17(A15及びA16と併せて「A15ら」という。)- 7 -並びにA18の4名であった。また,上記交替前のA2に対する出資者は,社員であるA15ら及びA19(A15らと併せて「A15一族」という。)の4名であり,それぞれの出資額は,A15が1500万円,A16,A17及びA19の3名がそれぞれ500万円の総額3000万円であった(以下「本件出資持分」という。)。(以上につき,乙29,30)⑷ A2の定款(平成20年3 は,A15が1500万円,A16,A17及びA19の3名がそれぞれ500万円の総額3000万円であった(以下「本件出資持分」という。)。(以上につき,乙29,30)⑷ A2の定款(平成20年3月21日の改定後のもの。以下「本件定款」という。乙32)の定めア本件定款8条1項は,やむを得ない理由のあるときは,社員はその旨を理事長に届け出て,その同意を得て退社することができる旨規定し,同条2項は,退社した社員は,その払込済出資額に応じて払戻しを請求することができる旨規定する。 イ本件定款16条は,決算の結果,剰余金を生じたときは,社員総会の議決を経てその全部又は一部を基本財産に繰り入れ,又は積立金として積み立てるものとし,配当してはならない旨規定する。 ウ本件定款34条は,A2が解散した場合の残余財産は,払込済出資額に応じて分配するものとする旨規定する。 ⑸ 本件出資持分の譲受け,原告会社の設立経緯等ア A15及び原告A4は,平成19年9月15日付けで,A2の支配権及びA14病院等の経営権を原告A4に現状有姿にて引き継ぎ,本件出資持分を原告A4又は同人が指名する者に譲渡することなどを内容とする合意をし,その旨の基本契約書(以下「基本契約書1」という。)を作成した(甲4,乙40)。 イ原告A4らは,平成19年9月18日,商号を「株式会社A1」(平成24年2月1日付けで現商号に商号変更),業務目的を,不動産の売買,賃貸借及び仲介,有価証券の売買,保有,運用及び投資,経営コンサルタント等とし,発行済株式総数を180株,資本金の額を900万円として,- 8 -原告会社を設立した。設立時における原告A4らの持株数はそれぞれ60株であり,代表取締役にして唯一の取締役は,原告A4の妻であるA20であった。(以上につき, 金の額を900万円として,- 8 -原告会社を設立した。設立時における原告A4らの持株数はそれぞれ60株であり,代表取締役にして唯一の取締役は,原告A4の妻であるA20であった。(以上につき,乙19,20)ウ A15一族は,遅くとも平成19年9月28日までに,原告A4ら又は原告会社に対し,本件出資持分を代金18億4800万円で売却した(以下「本件譲受取引」という。)。なお,本件出資持分の譲受人が原告A4ら又は原告会社のいずれであったかにつき,争いがある。 エ A15及び原告A4は,平成19年9月28日付けで,本件譲受取引の具体的な条件として,本件出資持分の譲渡先が原告A4らとなることやその譲渡代金は原告会社名義の銀行口座からA15一族の指定する各銀行口座に振り込まれるものであることにつきA15が同意する(6条)ことなどを定めた覚書(以下「覚書1」という。)を作成した(甲24,乙48)。 オ原告会社は,同日,原告会社名義の銀行口座からA15一族の指定する各銀行口座に振り込む方法により,本件出資持分の対価合計額18億4800万円を支払った(乙41)。 ⑹ 本件払戻請求権の行使,本件払戻しの経緯等ア原告A4及び医療法人A21の理事長であるA22は,平成20年9月24日付けで,A2の支配権及びA14病院等の経営権をA22に現状有姿にて引き継ぎ,A22が原告会社に対し本件払戻請求権に基づく払戻しをすることなどを内容とする基本契約書(以下「基本契約書2」という。)を作成した(甲13,乙35,42)。 イ原告A4らは「私は,平成20年9月30日,医療法人A2定款第8条第1項の規定に基づき理事長の同意を得て,医療法人A2A14病院から退社したので,同条第2項に基づいて,本書をもって,払込済である出資額に応じ は「私は,平成20年9月30日,医療法人A2定款第8条第1項の規定に基づき理事長の同意を得て,医療法人A2A14病院から退社したので,同条第2項に基づいて,本書をもって,払込済である出資額に応じた払戻を請求いたします。」と記載された「出資持分払戻請求書」と題する書面をそれぞれ作成して,署名押印の上,これをA2理事長のA- 9 -22に提出した(乙44)。 ウ A2は,同日,本件出資持分につき,合計29億1000万円を払い戻すことを決定し,原告A4らが指定した原告会社名義の銀行口座に上記金額を含む30億円を振り込んだ(乙45~47)。 ⑺ 確定申告及び修正申告ア原告会社(ア) 原告会社は,北税務署長に対し,平成20年10月28日,平成20年8月期の法人税について,同年11月27日,平成20年10月期の法人税について,平成21年12月25日,平成21年10月期の法人税について,平成22年12月28日,平成22年10月期の法人税について,平成23年12月26日,平成23年10月期の法人税について,茨木税務署長に対し,平成24年12月26日,平成24年10月期の法人税について,それぞれ別紙5の上記各事業年度に係る「確定申告」欄記載のとおり,確定申告書を提出した(乙6の1~6の6)。 (イ) 原告会社は,茨木税務署長に対し,平成25年12月24日,平成25年10月期の法人税及び復興特別法人税について,平成26年12月22日,平成26年10月期の法人税及び復興特別法人税について,平成27年12月25日,平成27年10月期の法人税及び地方法人税について,それぞれ別紙6の上記各事業年度に係る「確定申告」欄記載のとおり,確定申告書を提出した(乙98の1~98の5)。 (ウ) 原告会社は,平成28年6月23日, の法人税及び地方法人税について,それぞれ別紙6の上記各事業年度に係る「確定申告」欄記載のとおり,確定申告書を提出した(乙98の1~98の5)。 (ウ) 原告会社は,平成28年6月23日,茨木税務署長に対し,本件各事業年度の法人税について,別紙6の各事業年度に係る「修正申告」欄記載のとおり,修正申告書を提出した(乙99の1~99の3)。 イ原告A4ら(ア) 原告A4は,平成21年3月16日,彦根税務署長に対し,別紙2の「確定申告」欄記載のとおり,平成20年分の確定申告書を提出した- 10 -(乙3)。 原告A4は,平成21年12月21日,阿倍野税務署長に対し,事業所得等に誤りがあったとして,別紙2の「修正申告」欄記載のとおり,平成20年分の所得税の修正申告書を提出した(乙7)。 (イ) 原告A5は,平成21年3月13日,吹田税務署長に対し,別紙3の「確定申告」欄記載のとおり,平成20年分の確定申告書を提出した(乙4)。 (ウ) 原告A6は,平成21年3月12日,茨木税務署長に対し,別紙4の「確定申告」欄記載のとおり,平成20年分の確定申告書を提出した(乙5)。 原告A6は,平成21年8月17日,茨木税務署長に対し,配当所得が漏れていたとして,別紙4の「修正申告」欄記載のとおり,平成20年分の所得税の修正申告書を提出した(乙8)。 ⑻ 甲事件,乙事件,丙事件及び丁事件(以下,併せて「先行事件」という。)に係る不服申立手続等ア原告らの所轄税務署長は,平成25年7月4日付けで,原告らに対し,それぞれ別紙2から5までの各「更正処分等」欄記載のとおり,本件各所得税更正処分等及び本件各法人税等更正処分等(ただし,平成20年8月期分から平成24年10月期分まで)をした(甲1,2)。 イ原告らは,平成25年 の各「更正処分等」欄記載のとおり,本件各所得税更正処分等及び本件各法人税等更正処分等(ただし,平成20年8月期分から平成24年10月期分まで)をした(甲1,2)。 イ原告らは,平成25年8月22日,上記アの各処分を不服として異議申立てをしたところ,大阪国税局長は,同年11月18日付けで,上記各異議申立てをいずれも棄却する旨の各異議決定をした(乙10)。 ウ原告らは,平成25年12月9日,それぞれ審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成27年3月13日付けで,上記各審査請求をいずれも棄却する旨の各裁決をした(乙1,2,11)。 ⑼ 先行事件に係る訴えの提起- 11 -原告らは,平成27年9月16日,甲事件,乙事件,丙事件及び丁事件(先行事件)に係る訴えを提起した(顕著な事実)。 ⑽ 戊事件(以下,先行事件に対し「後行事件」ということがある。)に係る不服申立手続等ア茨木税務署長は,平成28年7月7日付けで,原告会社に対し,別紙6の各「更正処分等」欄記載のとおり,本件各法人税等更正処分等(ただし,平成25年10月期分から平成27年10月期分まで)をした(甲43)。 イ原告会社は,平成28年8月30日,上記アの各処分に不服があるとして審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成29年5月17日付けで,上記審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(乙100,101)。 ⑾ 後行事件に関する訴えの提起原告会社は,平成29年9月19日,戊事件(後行事件)に係る訴えを提起し,当裁判所は,同年10月27日,後行事件に係る口頭弁論を先行事件の口頭弁論に併合した(顕著な事実)。 4 被告が主張する本件各処分の根拠被告が主張する原告A4らの平成20年分の所得税額等は,別紙2から ,同年10月27日,後行事件に係る口頭弁論を先行事件の口頭弁論に併合した(顕著な事実)。 4 被告が主張する本件各処分の根拠被告が主張する原告A4らの平成20年分の所得税額等は,別紙2から4までの各「更正処分等」欄記載のとおり,同じく原告会社の本件各事業年度の法人税等の計算は,別紙7記載のとおりであり,本件払戻金に係る所得の有無及びそれに関連する部分を除いては,当事者間に争いがない。 5 争点⑴ 本件払戻金に係る所得が原告A4ら又は原告会社のいずれに帰属するか(全事件共通の争点)⑵ 原告A4らの平成20年分の所得税の申告は,国税通則法68条1項所定の「事実の全部又は一部を隠蔽し,又は仮装し,その隠蔽し,又は仮装したところ」に基づくものであるか否か(甲事件,乙事件及び丙事件に係る争点)- 12 -⑶ 原告A4らの平成20年分の所得税の申告は,国税通則法70条4項所定の「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ」たものであるか否か(同上)⑷ 原告A4らに対する税務調査について,事前通知を欠くことにより国税通則法74条の9に反することとなるか否か(同上)⑸ 先行事件に係る各更正処分の理由の付記に違法があるか否か(先行事件に係る争点) 6 争点に関する当事者の主張出資の払戻金のうち出資金を超える部分は,法人税法においては,剰余金の配当等とみなされ(同法24条1項5号),法人の益金の額に算入されないが(いわゆる益金不算入制度。同法23条1項),所得税法においては,個人の配当所得として課税の対象となる(同法24条1項,25条1項)。そのため,本件払戻金に係る所得が原告会社に帰属する場合には,当該所得は原告会社の益金の額に算入されず,法人税等の課税の対象とならないが,当該 得として課税の対象となる(同法24条1項,25条1項)。そのため,本件払戻金に係る所得が原告会社に帰属する場合には,当該所得は原告会社の益金の額に算入されず,法人税等の課税の対象とならないが,当該所得が原告A4らに帰属する場合には,当該所得は原告A4らの配当所得となり,所得税の課税の対象となる。そこで,本件では,本件払戻金に係る所得が原告A4ら又は原告会社のいずれに帰属するかが主たる争点となっている。 ⑴ 本件払戻金に係る所得が原告A4ら又は原告会社のいずれに帰属するか(全事件共通の争点)(被告の主張)ア本件譲受取引に係る一連の文書に照らし,原告A4らがA15一族から本件出資持分を譲り受けたと認められること本件譲受取引に係る一連の文書のうち,①基本契約書1には,A15及び原告A4が,A15一族から原告A4又は同人が指名する者に対し本件出資持分を譲渡することに合意する旨記載されており,②覚書1には,原告A4らを本件出資持分の譲渡先とする旨記載されており,③出資持分払- 13 -戻請求権譲渡証書(乙49。以下「本件譲渡証書」という。)には,A15一族を譲渡人,原告A4らを譲受人とする旨記載されており,A15一族及び原告A4らのそれぞれが署名押印している。このような本件譲受取引に係る一連の文書の記載等によれば,A15一族から本件出資持分を譲り受けたのは,原告A4らであったことは明らかである。 イ A15ら及び原告A4らの認識からすれば,本件出資持分の譲受人は原告A4らであること大阪国税局職員らによる質問検査において,本件出資持分の譲渡人であるA15らは,本件出資持分を原告A4らに譲渡したと認識している旨供述し,原告A4らも,本件出資持分をA15一族から譲り受けて,本件払戻請求権を行使したのは,原告A4ら て,本件出資持分の譲渡人であるA15らは,本件出資持分を原告A4らに譲渡したと認識している旨供述し,原告A4らも,本件出資持分をA15一族から譲り受けて,本件払戻請求権を行使したのは,原告A4らであると認識している旨供述している。そうすると,本件譲受取引に関する上記関係者の認識は,原告A4らが譲受人であるという点で一致しているのであり,上記関係者の認識に照らしても,本件出資持分の譲受人は原告A4らであったといえる。 ウ本件譲受取引及び本件払戻しに係る一連のスキーム(以下「本件スキーム」という。)に照らし,原告会社が本件出資持分を譲り受けたとは考えられないこと(ア) 原告A4らの本件出資持分の譲受け及び本件払戻請求権の行使に係る一連のスキーム(本件スキーム)を考案し,一連の文書の原案を作成したのは,A13社の専務取締役経営企画室長のA23であるところ,A23は,大阪府内の50%以上の病院と取引を有する医療コンサルタントであるA13社の役員であり,病院のM&Aを100件以上手掛けた経験のある人物であるから,医療法等の法令の規定及び本件定款等の定めを理解した上で,それらの規定等に抵触しないように本件スキームを考案したことが強く推認される。そして,本件スキームは,A13社から原告会社に対し,本件出資持分の取得資金18億4800万円を含- 14 -む24億円という多額の貸付けを前提としていた一方で,原告らにその借入金に係る具体的な返済計画がなかったことからすると,A23は,A13社において上記貸付金を具体的かつ確実に回収する方法を検討していなかったはずはない。 (イ) 仮に原告会社がA15一族から本件出資持分を譲り受けるとすると,営利法人である原告会社は医療法人の社員になることはできないため,社員の地位と出資持分を分属させ ていなかったはずはない。 (イ) 仮に原告会社がA15一族から本件出資持分を譲り受けるとすると,営利法人である原告会社は医療法人の社員になることはできないため,社員の地位と出資持分を分属させるほかなく,A2の解散が予定されていたものではないから,本件定款の定めに基づく本件出資持分の払戻しを受けることができなくなる。このように,払戻しができず,投下資本の回収が困難なものとして出資持分を譲り受けることは,それ自体考え難いことである上,本件スキームにおいては本件出資持分の資金化の選択肢を残す必要があったことからすれば,原告会社がその手段となる払戻しができないものとして本件出資持分を譲り受けたとはおよそ考えられない。A23は,本件スキームを実施するに当たって,このことも当然に了知していたはずである。そうであるからこそ,A23は,本件スキーム上,本件譲渡証書や覚書1において譲受人を原告A4らとし,実質的に本件出資持分を原告A4らに帰属させたとみるべきである。 エ A2が原告A4らを出資持分を有する社員として扱っていたことA2は,臨時社員総会において,原告A4らがA2の社員となることや,A15一族から原告A4らに本件出資持分を譲渡することを承認し,大阪府知事に対し,役員が原告A4らに変更された旨の役員変更届を提出するなど,原告A4らを,対内的にも対外的にも,出資持分を有する社員として扱っている。そして,上記の社員総会や役員変更届において,A2が,原告A4らが出資持分を有しないにもかかわらず,これを有するかのように装う合理的な理由は見当たらないから,A2における原告A4らの取り扱われ方に照らしても,本件出資持分を譲り受けたのは原告A4らであっ- 15 -たとみるのが相当である。 オ原告A4らがA2を退社するに際して本件払 たらないから,A2における原告A4らの取り扱われ方に照らしても,本件出資持分を譲り受けたのは原告A4らであっ- 15 -たとみるのが相当である。 オ原告A4らがA2を退社するに際して本件払戻請求権を行使したこと本件払戻しに係る一連の文書に照らし,原告A4らは,A2の出資持分を有する社員として扱われており,A2の社員総会において退社することを承認された上で,本件定款8条2項に基づいて本件払戻請求権を行使したことは客観的に明らかである。原告らは,出資持分払戻請求書やA2臨時社員総会議事録において,本件払戻しが本件定款8条2項に基づく旨記載されているのは,A13社が記載を誤ったものであるなどと主張するが,医療施設の経営コンサルタント業務を行っている法人であるA13社が,上記各文書に本件払戻請求権を行使した主体を誤って記載することはおよそ考え難い。 また,医療法が,医療法人による出資持分の払戻しについて特段の規定を設けていないことからすれば,出資持分の払戻しについては,当該医療法人が自律的に定めるところに委ねられているものと解されるから,出資持分の払戻しの可否は,定款の解釈により決せられるというべきである。 そして,最高裁判所平成22年4月8日第一小法廷判決・民集64巻3号609頁の判示によれば,医療法人の出資者による出資持分払戻請求権は,出資者が当該医療法人の社員であるか否かにかかわらず,当該医療法人の定款により発生するものであるから,出資者が出資持分払戻請求権を行使することができるのは,当該医療法人の定款にその旨の定めがある場合に限られるというべきである。これを本件についてみるに,A2の出資持分権者が出資持分払戻請求権を行使することができるのは,A2が解散した場合を除き,本件定款8条2項に基づく場合のみであり,そ る場合に限られるというべきである。これを本件についてみるに,A2の出資持分権者が出資持分払戻請求権を行使することができるのは,A2が解散した場合を除き,本件定款8条2項に基づく場合のみであり,その要件は,①出資持分を有する社員が,②退社した後に,③出資持分の払戻しを請求することであるから,A2においては,社員以外の者が本件定款8条2項に基づいて出資持分の払戻しを受けることはできない。そして,医療の公益- 16 -性及び非営利性を担保する趣旨に照らし,株式会社は医療法人の社員となることはできない以上,株式会社である原告会社は,医療法人であるA2の社員とはなり得ず,本件定款8条2項に基づく出資持分の払戻しを受けることはできない。そうすると,本件出資持分は原告A4らに帰属しており,原告A4らがA2を退社して払戻しを請求したことによって,具体的な金銭債権としての本件払戻請求権が原告A4らのA2に対する権利として発生し,原告A4らに帰属したと解するほかなく,このことは,「医療法人A2出資持分払戻請求権譲受に関する証」(乙50。以下「本件譲受に関する証」という。)や「医療法人A2A14病院の出資持分払戻に関する覚書」(乙57。以下「覚書2」という。)によっても何ら左右されるものではない。 カ原告会社には事業実体がなく,本件スキームにおける実質的な利益帰属主体でもないこと原告会社の平成20年8月期から平成25年10月期までの損益計算書によれば,原告会社は,設立時から平成23年10月期までの間,本件スキームの実行に伴う不動産の売買や本件出資持分に係る資金決済を行ったほかには,事業実体がなかったことが明らかであり,本件譲受取引を行うことのみを目的として,A23からの指示を受けて原告A4らによって設立された法人である。そして,原 件出資持分に係る資金決済を行ったほかには,事業実体がなかったことが明らかであり,本件譲受取引を行うことのみを目的として,A23からの指示を受けて原告A4らによって設立された法人である。そして,原告会社名義の銀行口座に振り込まれた本件払戻金29億1000万円は,全て社外に流出して原告会社に残っておらず,実質的には,本件払戻金のうち原告会社に帰属し,その利益となった金額はないことからすると,原告会社は,本件出資持分の資金化の際の課税を回避するために設立されたことが強く推認される。 キ小括以上によれば,原告A4らがA15一族から本件出資持分を譲り受け,払込済出資額を有する社員となったのであり,A2は,社員である原告A- 17 -4らが退社したことを理由に,本件定款8条2項に基づいて原告A4らに本件払戻しを行ったとみるべきである。したがって,本件払戻金に係る所得は,法律上,原告A4らに帰属する。 (原告らの主張)ア本件出資持分を取得し,本件払戻請求権を行使したのは原告会社であり,本件払戻金に係る所得は原告会社に帰属すること①原告会社がA13社から借り入れた24億円の内金18億4800万円を用いて,A15一族に振込送金をし,本件出資持分の譲受代金を支払ったこと,②A2から原告会社名義の銀行口座に振込送金の方法により支払われた本件払戻金29億1000万円は,原告会社のA13社に対する借入金の返済,A13社に対する仲介手数料の支払及び原告会社のA7に対する貸付金の内金等として,原告会社が全て消費したこと,③その反面,原告A4らは本件払戻金を一切取得していないこと,④本件譲受取引に関する一連の文書上も原告会社が譲受人となる旨記載されていること,⑤本件出資持分の取得及び本件払戻しに係る本件スキームにおいても原 ,原告A4らは本件払戻金を一切取得していないこと,④本件譲受取引に関する一連の文書上も原告会社が譲受人となる旨記載されていること,⑤本件出資持分の取得及び本件払戻しに係る本件スキームにおいても原告会社が本件出資持分を取得することが予定されていたことなどからすると,本件譲受取引は,原告A4らが原告会社を代理して行ったものであり,本件出資持分及び本件払戻金に係る所得が原告会社に帰属することは明らかである。 イ本件譲受取引に係る一連の文書の記載は原告A4らが本件譲受取引の主体である理由とはならないこと確かに,覚書1及び本件譲渡証書には,原告A4らが譲受人として記載されている。しかし,このように記載したのは,本件譲受取引が行われた時点では,A14病院内においてA15一族とA14病院理事のA24の確執が表面化しており,仮にA2の理事会において,A14病院を名の知られていない新設会社である原告会社に対して譲渡するなどと説明した場- 18 -合,円滑な事業の承継を阻害するおそれがあったため,原告A4らが原告会社の代理人となった上で,理事会においては原告会社の代理人である原告A4らの個人名のみを明らかにすることとしたのである。 本件譲受に関する証は,上記経緯を踏まえ,あくまで本件出資持分を取得するのは原告会社であり,原告A4らはその代理人にすぎないことを示すために作成されたものである。なお,基本契約書1の2条2項において,本件出資持分を原告A4又は同人の指名する者に譲渡する旨記載されているのは,同契約書が作成された平成19年9月15日当時,原告会社がまだ設立されていなかったため,上記のとおり記載するほかなかったためである。したがって,基本契約書1,覚書1及び本件譲渡証書において,譲受人が原告A4らであると記載されている 15日当時,原告会社がまだ設立されていなかったため,上記のとおり記載するほかなかったためである。したがって,基本契約書1,覚書1及び本件譲渡証書において,譲受人が原告A4らであると記載されているからといって,本件出資持分及び本件払戻金に係る所得が原告A4らに帰属する理由にはならない。 ウ A15ら及び原告A4らの認識A14病院を譲渡しようとするA15らにとって重要なのは,譲受人が病院を経営する能力があるか否かという点と,いくらでA14病院を売却することができるのかという点であるから,本件出資持分を譲り受けるのが原告A4らであろうと原告会社であろうと,原告A4が理事長に就任し,原告A4が主体となって病院を経営していく以上,経営者としての資質という面において相違はなく,対価の決定に影響を及ぼすわけではない。A15一族において,本件出資持分を取得するのが原告会社であるか原告A4らであるかという点は,全く重要なことではなかったし,現に,A16も,その質問てん末書において,既に売却金額は決まっていたので本件譲渡証書の名義人が誰であるかは気にしなかった旨述べている。また,原告A4らは,本件譲受に関する証において,原告A4らが原告会社を代理して本件出資持分を譲り受ける旨明らかにしているのであり,原告A4らが本件譲受取引の譲受人が原告会社であると認識していたことは明らかであ- 19 -る。 エ原告会社が本件出資持分を取得し,メディカル・サービス法人(医業経営に関係する業務を行う法人。以下「MS法人」という。)の役割を担うものとして設立された会社であること原告会社の設立日である平成19年9月18日は,本件譲受取引に関し覚書1が作成され,同取引の対価が支払われた同月28日の10日前であることや,原告会社の のとして設立された会社であること原告会社の設立日である平成19年9月18日は,本件譲受取引に関し覚書1が作成され,同取引の対価が支払われた同月28日の10日前であることや,原告会社の事業計画案及び定款に照らしても,原告会社は,A14病院の経営権を譲り受けることを唯一の目的として設立された法人であり,かつA14病院の運営においてMS法人としての役割を担うことが想定されていたことは明らかである。しかも,税理士法人A25(以下「A25社」という。)が作成した,A14病院の経営権譲渡スキーム図においては,A15一族の出資持分の譲渡を受けるべき者として,原告A4らの個人名は一切登場しておらず,受皿会社(原告会社)がA14病院の出資持分の全てを保有し,A14病院の運営におけるMS法人としての役割を担うことが明確に示されている。したがって,本件出資持分を譲り受けたのは原告会社であることは明らかである。 オ本件払戻請求権を行使したのは原告会社であること上記アのとおり,本件出資持分を譲り受けたのは原告会社であり,本件払戻請求権を行使したのも原告会社である。原告会社が出資持分の払戻しを行う際,原告A4らの名が用いられることがあったが,本件払戻しの手続の際に原告A4らの名義が用いられた理由は,上記イに記載したとおり,A14病院内のA24をめぐる問題に対処するために本件出資持分を取得する際の社員総会議事録や本件譲渡証書に原告会社ではなく原告A4らの名前が記載されていたことから,これらの文書と記載を整合させるために,本件払戻請求権を行使する際の社員総会議事録や出資持分払戻請求書にも,原告会社ではなく原告A4らの名前を記載したにすぎない。このこと- 20 -は,基本契約書2の2条2項にも,原告A4らはあくまで原告会社のため を行使する際の社員総会議事録や出資持分払戻請求書にも,原告会社ではなく原告A4らの名前を記載したにすぎない。このこと- 20 -は,基本契約書2の2条2項にも,原告A4らはあくまで原告会社のために本件払戻請求権を行使する旨記載されていることからも明らかである。 カ原告会社が本件払戻請求権を行使することはできない旨の被告の主張に対する反論株式会社等の営利法人は医療法人の社員になることはできないが,医療法人においては,社員たる地位と出資者たる地位は切り離されているため,株式会社が出資持分を取得することはできる。仮に,被告が主張するとおり,株式会社が医療法人の出資持分払戻請求権を行使することが法律上できないとしても,それは原告会社が出資持分払戻請求権を法律上行使し得なかったことを意味するにすぎないのであって,そのことを理由に,原告A4らが出資持分を法律上取得することにはならない。 また,本件払戻しは,社員ではない原告会社による出資持分払戻請求であるから,社員である出資持分権者が退社した場合の出資持分の払戻しに関する規定である本件定款8条2項は適用されない。なお,出資持分払戻請求書やA2臨時社員総会議事録において,本件払戻しが本件定款8条2項に基づく旨記載されているのは,これらの文書の作成者であるA13社が記載を誤ったものにすぎない。したがって,本件払戻しは,本件定款8条2項に基づくものではないから,これを前提とする被告の主張は理由がない。 キ小括以上によれば,本件出資持分を取得し,本件払戻請求権を行使したのは,原告A4らではなく原告会社であるし,また,実質所得者課税の原則に照らして判断すると,本件払戻金に係る所得は原告会社に帰属する。したがって,本件各処分は,本件払戻金に係る所得の帰属の判 使したのは,原告A4らではなく原告会社であるし,また,実質所得者課税の原則に照らして判断すると,本件払戻金に係る所得は原告会社に帰属する。したがって,本件各処分は,本件払戻金に係る所得の帰属の判断を誤ったものであり,違法であることは明らかであるから,直ちに取り消されるべきである。 - 21 -⑵ 原告A4らの平成20年分の所得税の申告は,国税通則法68条1項所定の「事実の全部又は一部を隠蔽し,又は仮装し,その隠蔽し,又は仮装したところ」に基づくものであるか否か(甲事件,乙事件及び丙事件に係る争点)(被告の主張)上記⑴(被告の主張)において述べたとおり,本件譲受取引により本件出資持分を取得したのは原告A4らであり,本件払戻金に係る所得は原告A4らに帰属する。しかし,原告A4らが作成した本件譲受に関する証,基本契約書2等の文書には,本件払戻請求権の権利者が原告会社である旨が記載されており,これらは,原告A4らがA15一族から本件出資持分を譲り受けたことを隠蔽し,原告会社が本件出資持分を譲り受けたかのように仮装するものである。そして,原告A4らは,同人らが本件出資持分の譲受人であることを認識していながら,あえて上記各書面に署名押印したのであるから,原告A4らは,本件払戻金に係る所得が原告A4らに帰属することを隠蔽し,これが原告会社に帰属するかのように仮装し,平成20年分の確定申告書又は修正申告書をそれぞれ提出したといえる。 (原告A4らの主張)上記⑴(原告らの主張)のとおり,本件払戻金に係る所得は,原告会社に帰属するものである。原告A4らは,原告会社がA2に対する本件出資持分を譲り受けるという意思の下,その意思に沿う各種文書を作成し,またそれを踏まえた税理士等の専門家の判断に基づいて,本件払戻金に係る所得を原告会社の所 原告A4らは,原告会社がA2に対する本件出資持分を譲り受けるという意思の下,その意思に沿う各種文書を作成し,またそれを踏まえた税理士等の専門家の判断に基づいて,本件払戻金に係る所得を原告会社の所得として申告したのであり,結論として本件出資持分が原告A4らに帰属すると評価されたとしても,それは,処分行政庁と納税者とのいわゆる見解の相違なのであって,原告A4らが,故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠蔽したなどという事実がないことは明らかである。 ⑶ 原告A4らの平成20年分の所得税の申告は,国税通則法70条4項所定- 22 -の「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ」たものであるか否か(甲事件,乙事件及び丙事件に係る争点)(被告の主張)原告A4らは,上記⑵(被告の主張)において述べたとおり,本件払戻金に係る所得が原告A4らに帰属することを隠蔽し,これが原告会社に帰属するかのように仮装したのであって,原告A4らの行為は,国税通則法68条1項に規定する隠蔽及び仮装行為に該当するから,同法70条4項に規定する「偽りその他不正の行為」にも該当する。そして,原告A4らは,本件出資持分を譲り受けた上,自らA2に対して本件出資持分の払戻しを請求しているのであるから,本件払戻金が自らに帰属する所得であると認識していたことが明らかであり,その上で,その所得の記載がない確定申告書等を税務署長に提出しているところ,これらの行為が不正行為に該当し,租税を免れることになる認識,すなわち故意があったことも明らかである。 (原告A4らの主張)国税通則法70条4項にいう「偽りその他不正の行為」とは,ほ脱の意図をもって,その手段として税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工 らかである。 (原告A4らの主張)国税通則法70条4項にいう「偽りその他不正の行為」とは,ほ脱の意図をもって,その手段として税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を行うことである。しかし,上記⑵(原告A4らの主張)のとおり,仮に,結論として本件出資持分が原告A4らに帰属すると評価されたとしても,それは処分行政庁と納税者との見解の相違であって,原告A4らは,本件出資持分が原告会社に帰属するものと認識して,原告会社において本件払戻金に係る所得を申告しているのであるから,原告A4らが,税額を免れる意図のもとに,税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為をしたとはいえない。 ⑷ 原告A4らに対する税務調査について,事前通知を欠くことにより国税通則法74条の9に反することとなるか否か(甲事件,乙事件及び丙事件に係る争点)- 23 -(被告の主張)原告A4らに対する調査では,本件払戻金に係る所得が,原告A4らに帰属するものであるか,原告会社に帰属するものであるかが問題となっていたところ,調査を実施する前において,本件譲受取引について,原告らは,A13社とA7が中心となって実行したことであるから詳しいことは知らない旨供述し,また,本件出資持分の譲受人が誰であるかは,その取引の当事者であれば当然認識していることであるにもかかわらず,取引の当事者であると思われる原告A4ら及び原告会社の代表取締役であったA20は,本件出資持分を譲り受けたのが誰であるかについて明確な供述をしていなかった。 これに加え,本件払戻金に係る所得が原告A4らに帰属するとすれば,同人らに多額の税負担が生じるのに対し,同所得が原告会社に帰属するとすれば,原告会社には税負担が生じないことを考慮すると いなかった。 これに加え,本件払戻金に係る所得が原告A4らに帰属するとすれば,同人らに多額の税負担が生じるのに対し,同所得が原告会社に帰属するとすれば,原告会社には税負担が生じないことを考慮すると,原告A4らに対して本件払戻金に係る所得税の調査を実施することを事前に通知すれば,原告A4らやその関係者が通謀し,本件譲受取引の主体が原告会社であるかのように口裏合わせをしたり,内容虚偽の書類を作出したりすることが合理的に想定された。そうすると,本件では,国税庁が「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達」で定める「事前通知をすることにより,納税義務者において,国税通則法127条2号又は3号に掲げる行為を行うことを助長することが合理的に推認される場合」に該当し,国税通則法74条の10にいう「違法又は不当な行為を容易にし,正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれがあると認める場合」に該当するから,税務調査に当たり事前通知を行わなかったことに違法はない。 (原告A4らの主張)本件では,税務調査に先立って,原告A4らを含む多数の関係者の供述調書が作成され,本件譲受取引に関する多数の客観的資料が大阪国税局に提出されているから,原告A4らに対し税務調査の事前通知を行ったとしても,- 24 -これをきっかけに原告A4らやその関係者が口裏合わせをすることが合理的に推認されるとは到底いえない。そうすると,国税通則法74条の10所定の事前通知をすることにより,正確な課税標準等の把握を困難にするおそれがあるとはいえないから,事前通知を行わずにした原告A4らに対する税務調査は,違法である。 ⑸ 先行事件に係る各更正処分の理由の付記に違法があるか否か(先行事件に係る争点)(被告の主張)処分行政庁は,本件払戻金に係る所得が,原告A4ら又は A4らに対する税務調査は,違法である。 ⑸ 先行事件に係る各更正処分の理由の付記に違法があるか否か(先行事件に係る争点)(被告の主張)処分行政庁は,本件払戻金に係る所得が,原告A4ら又は原告会社のいずれに帰属するのかという問題点について,その所得は原告A4らに帰属すると判断したところ,本件譲受に関する証及び覚書2の内容を挙げて,本件払戻金に係る所得が原告会社に帰属するか否かについても検討し,先行事件に係る各更正処分の更正通知書において,上記判断に至る理由として,原告会社が原告A4らに対し,本件譲受取引及び本件払戻請求権の行使についての代理権を授与する意思決定をした形跡がないことなどから,原告A4らは,自ら本件譲受取引を行い,本件払戻請求権を行使したと判断した旨を記載している。そうすると,先行事件に係る各更正処分の更正通知書には,処分行政庁の恣意を抑制し,不服申立ての便宜を図るという理由付記制度の趣旨を充足する程度に具体的な理由が明示されているというべきである。したがって,理由の付記に違法はない。 (原告らの主張)先行事件に係る各更正処分に付された理由のうち,本件払戻金に係る所得の帰属に関する部分は,本件払戻請求権を行使した主体が原告A4らであることを当然の前提事実とした上で,その前提事実とは相容れない一部の証拠についての説明を記載したにすぎず,基本契約書2の2条には,本件出資持分の全ての保有者である原告会社に対し出資持分を払い戻す旨規定している- 25 -ことなどには触れていない。そうすると,上記の程度の記載をもって,処分行政庁の恣意を抑制し,不服申立ての便宜を図るという理由付記制度の趣旨を充足する程度に具体的な理由が明示されているとはいえない。したがって,理由の付記に違法がある。 第3 当裁判所の判断 行政庁の恣意を抑制し,不服申立ての便宜を図るという理由付記制度の趣旨を充足する程度に具体的な理由が明示されているとはいえない。したがって,理由の付記に違法がある。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 ⑴ 本件譲受取引に至る経緯ア A14病院は,明治25年に設立された日本における精神科医療の草分けともいえる病院であり,A15一族は,A14病院を保有するA2の出資者であったが,平成19年春頃,A2の経営から撤退することを検討し,大阪府の医療対策課にその旨の相談をした(前提事実⑶,甲5,乙15,37,83)。 A15一族がA2の経営から撤退することを検討したのは,A15一族とA24との間でA14病院の支配権をめぐる対立が深まり,A15一族においてA2の経営を維持するのが困難であると判断したためであった。 具体的には,平成11年5月15日,A26がA14病院の理事長を退任し,その長男であるA19が同理事長に就任したものの,A14病院の職員組合の強い要求により,平成18年2月5日,A19がA14病院の理事長及び理事を解任され,A16が新たに理事長に就任するなど,A14病院内部が不安定になり,さらに,そのような状況下において,当時A14病院の院長であったA24が,A14病院の乗っ取りを画策し,同病院の職員に対し,自らが理事長になると告知したため,平成19年3月,これに不安を抱いた看護師ら29名が一斉に退職して一部の病棟が閉鎖されるといった状況にあった(乙37,83,証人A23,原告A4本人,弁- 26 -論の全趣旨。なお,被告は,A15一族がA2の経営からの撤退を決めた経緯が上記のとおりであったことについては,積極的に争っていない。)。 た(乙37,83,証人A23,原告A4本人,弁- 26 -論の全趣旨。なお,被告は,A15一族がA2の経営からの撤退を決めた経緯が上記のとおりであったことについては,積極的に争っていない。)。 イ A24は,平成19年6月頃から,何度も大阪府の医療対策課に赴き,A14病院に対する監査を行うよう求め,同年7月23日,同課によりA14病院に対する監査が実施された。また,A24は,同年8月7日,神戸地方裁判所尼崎支部において,当時A2の理事長であったA16から嫌がらせを受けたなどと主張して,同人に対する損害賠償請求訴訟を提起した。(以上につき,甲19,乙16,証人A23,弁論の全趣旨)ウ A16は,大阪府の医療対策課から紹介を受けて,平成19年6月26日,医療法人の経営や運営に関するコンサルティングを行う株式会社A27(以下「A27社」という。その後,商号変更され,現在の商号は「A27株式会社」である。)の代表取締役であるA23にA2の経営権譲渡に関する相談をした。なお,A23は,医療関係の総合コンサルティング会社であるA13社の専務取締役経営企画室長でもあり,A27社はA13社の関連会社であった。(以上につき,甲29,乙37,83,証人A23)エ A23は,A16の上記相談を受けて,A9のA7にA2の譲受けを持ちかけたが,その当時,A9は,A13社のコンサルティングの下で約160億円の負債を抱えて事業再生の途上にあり,A2の譲受資金を金融機関から借り入れることが困難な状況にあった(甲35~37,証人A23,証人A28)。 オそこで,A23は,平成19年9月11日,A2を譲り受けるための受け皿となるMS法人として原告会社を新設し,原告会社において,A2を譲り受けるというスキーム(以下「本件譲受スキーム」という。)を策定し, ,A23は,平成19年9月11日,A2を譲り受けるための受け皿となるMS法人として原告会社を新設し,原告会社において,A2を譲り受けるというスキーム(以下「本件譲受スキーム」という。)を策定し,株式会社A29銀行(当時の商号。以下「A29」という。)に融資の実行を依頼した(甲3,証人A23,証人A28)。 - 27 -A13社は,上記融資依頼の際,A29に対し,A13社の会計顧問であるA25社のA28が作成した「医療法人A2 A14病院 M&Aスキーム検討」と題する資料(以下「スキーム検討資料」という。)を提出した。同資料には,「スキーム① 出資持分譲渡」として,「受皿会社」がA14病院を100%所有すること,金融機関が「受皿会社」に21億円を融資し,「受皿会社」がA15一族に本件出資持分の対価として18億4800万円を支払うことが図示されていた。(以上につき,甲3の2,証人A23,証人A28)カ A23及びA7は,平成19年9月13日,原告A4らに対し,本件譲受スキームについて説明し,原告会社の発起人になることを依頼した。原告A4らはこれを承諾し,原告会社の代表取締役にはA20が就任することとなった。(以上につき,証人A23,原告A4)キ他方,A14病院側では,A15が,平成19年9月15日,A27社に対し,A2のM&Aに係るコンサルタント,仲介,斡旋業務を委託した(乙39)。 ク A15及び原告A4は,同日付けで,A2の支配権及びA14病院等の経営権を原告A4に現状有姿にて引き継ぎ,本件出資持分を原告A4又は同人が指名する者に譲渡することなどを内容とする基本契約書1にそれぞれ署名押印した。基本契約書1は,A23が起案をしたもので,要旨,以下の記載がある(なお,「甲」はA15,「乙」は原告A4,「本件法人」はA する者に譲渡することなどを内容とする基本契約書1にそれぞれ署名押印した。基本契約書1は,A23が起案をしたもので,要旨,以下の記載がある(なお,「甲」はA15,「乙」は原告A4,「本件法人」はA2を指す。)。(以上につき,前提事実⑸ア,甲4,乙40,証人A23)(ア) 「甲は,本件法人の理事であり病院の管理医師であるA24が本件法人理事長A16個人を病院運営上の揉め事を原因として損害賠償請求を訴追するに至り,本件法人経営の混迷が深まりつつある緊急事態であるとの現状認識を持つに至った。」,「この緊急事態を収拾するために,- 28 -この際,本件法人の経営体制の刷新を図ることとし,…本件法人の支配権及び病院等の経営権を乙に現状有姿にて引き継ぐこととした。」(1条1項)(イ) 「甲は,前条の目的を達成するために本契約の規定に従い,平成19年10月20日までの甲乙が合意する日(以下支配権引継ぎ日という)をもって,本件法人の出資持分払戻請求権(額面15,000,000円)を金924,000,000円又は第4条第4項により修正が行われる場合にはその価格にて,乙又は乙の指名する者に譲渡する。」(2条1項)(ウ) 「甲は,支配権引継ぎ日をもって,本件法人の出資持分払戻請求権の残りすべてを下記に従い,A19,A16,A17が乙又は乙の指名する者に譲渡することを保証する。尚,下記譲渡対価は,第4条第4項により修正が行われる場合にはその価格にて,譲渡されるものとする。 譲渡者譲渡額面譲渡対価A19 5,000,000円 308,000,000円A16 5,000,000円 308,000,000円A17 5,000,000円 308,000,000円」(2条 5,000,000円 308,000,000円A16 5,000,000円 308,000,000円A17 5,000,000円 308,000,000円」(2条2項)(エ) 「甲乙は,支配権引継ぎ日までに最終的な譲渡価格,具体的な譲渡価格の支払い方法等の手続き,本契約締結後別途当事者間が合意したその他の事項を確認する出資持分払戻請求権譲渡契約書を取り交わすものとする。」(2条3項)ケ原告A4は,平成19年9月15日,基本契約書1に署名押印した際,A16から,A15一族とA24との間にA14病院の経営権をめぐる対立があるため,同病院の職員が同病院の経営権が譲渡されることにつき不安を感じていると聞き,同日,同病院の幹部職員に対する説明会を実施し- 29 -た(原告A4本人)。 コ A23は,平成19年9月17日,A29に対し,「医療法人A2A14病院事業再生について」と題する資料を提出し,再度,本件譲受スキームの実行のため,原告会社に対する融資を依頼した(甲5,乙15)。 サ原告A4らは,平成19年9月18日,資本金の額を900万円として,原告会社を設立した。同社設立のための出資金900万円は,A7がA9から仮払いを受け,A7から原告A4らに対し300万円ずつ支払うという方法によって調達された。(以上につき,前提事実⑸イ,甲49,原告A4本人)シ平成19年9月22日,A7が経営する私立大学法人における使途不明金に関する報道がされたことにより,原告会社が,A29から本件譲受スキームに関する融資を受けられなくなったため,A13社は,同月25日,自ら原告会社に融資することにした(乙105,証人A23)。 ス原告会社は,平成19年9月27日付けで,A から本件譲受スキームに関する融資を受けられなくなったため,A13社は,同月25日,自ら原告会社に融資することにした(乙105,証人A23)。 ス原告会社は,平成19年9月27日付けで,A13社との間で金銭消費貸借契約を締結し,弁済期を平成20年9月26日として,24億円を借り入れた(以下,この金員を「本件借入金」という。乙51,52,87)。 ⑵ 本件譲受スキームの実行及び本件譲受取引ア平成19年9月28日午前11時18分に開催されたA2臨時社員総会において,原告A4らが社員として入社し,理事に就任すること,社員であったA15及びA17が退社することが承認された(乙29)。 イまた,同日午前12時15分に開催されたA2臨時社員総会において,社員であったA16が退社すること,A15一族が保有する本件出資持分を譲渡することが承認された。上記社員総会議事録には,本件出資持分の譲渡に関し,以下のとおり記載されている。 「第4号議案…議長は,下記のとおり当会の出資持分を譲渡することにつき議場に諮り,満場一致で承認可決された。 - 30 -譲渡人譲渡口数譲受人A15 15,000,000円口 A4A19 5,000,000円口 A5A17 5,000,000円口 A6A16 2,500,000円口 A5A16 2,500,000円口 A6」(以上につき,乙30)ウ原告会社は,同日,A19から,A14病院の敷地である大阪府東大阪市(住所省略)に所在する各土地を,1億8690万9233円で購入したほか,A15が代表取締役を務める株式会社A30から,(住所省略) 原告会社は,同日,A19から,A14病院の敷地である大阪府東大阪市(住所省略)に所在する各土地を,1億8690万9233円で購入したほか,A15が代表取締役を務める株式会社A30から,(住所省略)所在の土地建物及び患者輸送車や医療用機械等のA14病院のリース資産を,7522万1367円で購入した(甲6,8,9)。 エ A15及び原告A4は,同日,基本契約書1の内容について,以下のとおりの記載のある覚書1を作成した(なお,「甲」はA15,「乙」は原告A4を指す。)。 「第6条甲は,基本契約第2条1項乃至2項に定める出資持分払戻請求権の譲渡先の乙又は乙の指名するものが乙並びにA5,A6となるが,譲渡代金の支払いは,株式会社A1の預金口座から甲並びにA19,A16,A17の指定する銀行口座に振り込まれるものであることにつき同意する。」(以上につき,前提事実⑸エ,甲24,乙48)オ A15一族は,同日,原告A4らとの間で,本件譲渡証書をそれぞれ交わした。上記各書面には,要旨,以下のとおり,本件出資持分を譲渡した旨,同譲渡は同日開催のA2臨時社員総会により承認を得た旨が記載されており,同日の確定日付が付されている。 譲渡人譲渡口数譲受人譲受代金- 31 -A15 1500万円口原告A4 9億2400万円A19 500万円口原告A5 3億0800万円A17 500万円口原告A6 3億0800万円A16 250万円口原告A5 1億5400万円A16 250万円口原告A6 1億5400万円(以上につき,乙4 円A16 250万円口原告A5 1億5400万円A16 250万円口原告A6 1億5400万円(以上につき,乙49)カ原告A4らは,同日,原告会社に対し,本件譲受に関する証を作成して差し入れた。本件譲受に関する証には,以下のとおりの記載があり,原告A4らの署名押印がされ,同日の確定日付が付されている。 「本日,…A2の全出資持分金30,000,000円の払戻請求権を金1,848,000,000円にて譲渡人A15,A16,A17,A19より譲り受けるについて,私らが貴社の依頼を受け貴社の代理人として仮に譲受人となることとし,真正なる譲受人は,貴社であることを確認するために本証を貴社へ差し入れるものとします。」,「このため,その譲渡代金は,貴社が直接各譲渡人の指定する銀行口座に振り込み支払うことといたします。」,「後日の証とするために本書を作成し,以下に,署名捺印の上,本書を貴社に差し入れます。」(以上につき,乙50)キ同日の上記アからカまでの手続は,概ね,A23が同日に先立ち作成した「実行日段取」と題する書面に従い,A23がA13社において医療法人のM&A案件で使用している基本書式等を基に起案した各文書に,関係者が署名押印するという手順によって行われた(甲50,証人A23,原- 32 -告A4本人)。 ク原告会社は,同日,原告会社名義の銀行口座からA15一族の指定する各銀行口座に振り込む方法により,本件出資持分の対価として合計18億4800万円を支払った。その他,本件譲受取引に伴う金銭の流れについては,別紙8のとおりである。(以上につき,前提事実⑸オ,弁論の全趣旨)ケ原告A4は,同日,A14病院の 対価として合計18億4800万円を支払った。その他,本件譲受取引に伴う金銭の流れについては,別紙8のとおりである。(以上につき,前提事実⑸オ,弁論の全趣旨)ケ原告A4は,同日,A14病院の理事長として,同病院の職員に対し,A2の経営陣がA15一族から原告A4らに変更されることに伴う同職員らの待遇面の変更等の有無に関し,説明会を実施した(原告A4本人)。 コ A24は,平成19年9月29日,A14病院の職員に対し,本件譲受取引に反対する旨記載した書面(「平成19年9月28日理事会第3号議案についての反対意見書資料」)を配付した(甲16)。 ⑶ 原告A4らによるA14病院の運営原告A4は,平成19年9月28日の本件譲受取引後,A14病院の幹部職員から経営上の改善点を聴取し,数千万円を投資して医局及び病棟等のアメニティーを改善するなどして,同病院の経営に当たった。これにより,一時閉鎖していた60床の病棟が開棟し,離職した職員の一部が復職するなど,同病院の経営上の問題点が一部改善された。(以上につき,原告A4本人)⑷ A21に対するA14病院の譲渡に至る経緯ア A9を含むA12は,平成19年9月22日の使途不明金に関する報道後,取引先の銀行から融資を受けられなくなり,資金繰りが悪化したため,グループ全体として再生を図ることになった(証人A23,原告A4)。 イ A9及びA7は,平成20年3月29日,A13社との間で,改めてA9の再生スキームを策定し直すことに合意した。 上記再生スキームの合意書では,A9が保有するA8病院及びA31病院,A7が保有するA32病院が譲渡対象として挙げられているが,A1- 33 -4病院は譲渡対象とされておらず,A9は,A13社に対し,A14病院の経営状態 は,A9が保有するA8病院及びA31病院,A7が保有するA32病院が譲渡対象として挙げられているが,A1- 33 -4病院は譲渡対象とされておらず,A9は,A13社に対し,A14病院の経営状態及び財務状況について継続的に報告することとされていた。また,上記合意書には,A9の資金繰りの見込みについて,「本件スキームを実行したとしても,資金繰りとしては当初4年間で20億円以上の資金不足が見込まれる。」と記載され,所有する株式の売却等によって解決し得ない場合には,A12の病院で資金不足を解消する必要があるため,同グループの病院においても資金繰りの管理を強化する必要がある旨記載されていた。(以上につき,甲12)ウ原告会社は,平成20年3月頃,A12の上記資金不足を解消するため,A13社に対し,本件借入金の返済期日の猶予及び新規融資を申し入れたが,A13社は,平成20年3月期の決算において77億円の特別損失を計上しており,その一部がA9に対する貸付金であったため,返済期日の猶予及び新規融資には応じられない状態であった(証人A23,原告A4本人)。 エ原告会社は,同月頃,A12として,上記資金不足を解消するため,A14病院がA33銀行から融資を受け,その資金を原告会社に貸し付け,これを原資として,原告会社がA13社に本件借入金を返済するという返済計画を立てたが,同銀行から融資を受けることができず,実現しなかった(原告A4本人)。 オ平成20年6月6日,A13社の取締役会において,A9の再生スキームの進捗状況が報告された。その際の報告資料には,「A14病院・A34病院を(株)A35へ一括売却し,債権回収する方向へ転換」と記載されている。(以上につき,乙106の1。なお,「A14病院」とあるのはA14病院の誤記で 。その際の報告資料には,「A14病院・A34病院を(株)A35へ一括売却し,債権回収する方向へ転換」と記載されている。(以上につき,乙106の1。なお,「A14病院」とあるのはA14病院の誤記である。)カ A13社は,平成20年6月頃,A7に対し,A12の資金不足の解消方法として,A14病院を売却するという方法を提案したところ,同人が- 34 -これを了承したことから,A13社は,その頃,原告A4らに対し,A14病院の売却を提案した。これを受けて,原告A4らは,A14病院の売却を検討することにした。(以上につき,証人A23,原告A4本人)キ A13社は,平成20年6月から同年8月頃にかけて,株式会社A35をA14病院の譲渡先として協議を行っていたが,金額面で折り合いがつかなかったため,譲渡先をA21に変更し,同年9月からA21のA22と協議を開始した(乙106の2~106の4,甲29,証人A23,原告A4本人)。 ク A23は,平成20年9月頃,A21のメインバンクであった株式会社A36銀行(以下「A36」という。)との間で,A21にA14病院を譲渡する際のスキームについて協議を行った。 A36は,返済能力や担保価値の観点からA21に対する融資は困難であるが,A2に対する融資であれば可能であることから,A23に対し,①A36がA2に対して30億円を融資し,これを原資としてA2が出資持分の払戻しを行い,②A21がA2に対して出資を行うというスキーム(以下「本件譲渡スキーム」という。)を提案した。(以上につき,甲29,証人A23,証人A28)ケ A23は,平成20年9月頃,本件譲渡スキームについてA21のA22に説明し,同人の同意が得られたため,本件譲渡スキームが実行された場合の税務上の き,甲29,証人A23,証人A28)ケ A23は,平成20年9月頃,本件譲渡スキームについてA21のA22に説明し,同人の同意が得られたため,本件譲渡スキームが実行された場合の税務上の処理について,A25社のA28に相談をしたところ,同人から,税務上,本件払戻金のうち出資金3000万円を超える部分は配当とみなされ,益金の額に算入されない旨の説明を受けた(甲29,証人A23,証人A28)。 ⑸ 本件譲渡スキームの実行,本件払戻請求権の行使及び本件払戻しア原告会社は,平成20年9月24日,A13社との間で,A14病院の譲渡に関し,アドバイザリー業務契約を締結した(甲14,乙81)。 - 35 -イ原告A4及びA22は,同日,A2の支配権及びA14病院等の経営権をA22に現状有姿にて引き継ぎ,A22が原告会社に対し本件払戻請求権に基づく払戻しをすることなどを内容とする基本契約書2に署名押印した。基本契約書2は,A23が起案をしたもので,要旨,以下の記載がある(なお,「甲」は原告A4,「乙」はA22,「本件法人」はA2を指す。)。 (ア) 「乙は,…本契約の規定に従い,平成20年9月30日までの甲乙合意する日(以下支配権引継ぎ日という。)に,本件法人の出資持分払戻請求権(額面30,000,000円)に基づく払戻を,現在の出資持分払戻請求権の全ての保有者である株式会社A1に払い戻すこととし,支払いにあたっては,支配権引継ぎ日にA1の指定する銀行預金口座に振り込み支払うものとする。」(2条1項)(イ) 「払い戻しに当たっては,現在の本件法人社員である甲並びにA5,A6のそれぞれが,本件法人臨時社員総会にて退社承認後に,A1の依頼に基づいて,A1のために払い戻し請求を行うものとし,乙並びに (イ) 「払い戻しに当たっては,現在の本件法人社員である甲並びにA5,A6のそれぞれが,本件法人臨時社員総会にて退社承認後に,A1の依頼に基づいて,A1のために払い戻し請求を行うものとし,乙並びに乙の関係者は,この請求に基づいて,かかる払戻が決議・承認されるように臨時社員総会において議決権を行使する。」(2条2項)(ウ) 「本件法人がA1に払い戻す価格は,…金2,910,000,000円とすることで甲乙合意した。」(2条3項)(以上につき,前提事実⑹ア,甲13,乙42,証人A23)ウ平成20年9月30日午前10時30分に開催されたA2臨時社員総会において,A22外2名が社員として入社し,理事に就任すること,社員であった原告A4らが退社することが承認された(乙43)。 エ同日午前11時15分に開催されたA2臨時社員総会において,本件出資持分の払戻し(本件払戻し)を行うことが承認された。上記社員総会議事録には,本件払戻しに関し,以下のとおり記載されている。 - 36 -「第1号議案社員退社に伴う出資持分払戻しの件議長は,このたび退社された旧社員について各人から出資持分払戻請求書をもって請求があった。したがって定款第8号第2項に従い払込済出資額に応じて出資金の払い戻しを行うこととし,…金額2,9100,000,000円とすることとしたいと述べ,…議場に諮ったところ満場一致で承認可決された。 旧社員払込済出資額 A4 15,000,000円A5 7,500,000円A6 7,500,000円…当該出資持分払戻金額は,2,910,000,000円とする。 出資社員別出資持 5 7,500,000円A6 7,500,000円…当該出資持分払戻金額は,2,910,000,000円とする。 出資社員別出資持分払戻金額A4:1,455,000,000円A5: 727,500,000円A6: 727,500,000円」なお,「金額2,9100,000,000円」とあるのは,誤記である。 (以上につき,乙45)オ原告A4らは,同日,上記エのA2臨時社員総会に,A13社のA23が起案した各「出資持分払戻請求書」と題する書面を提出した。これらの書面には,「私は,平成20年9月30日,医療法人A2定款第8条第1項の規定に基づき理事長の同意を得て,医療法人A2A14病院から退社したので,同条第2項に基づいて,本書をもって,払込済である出資額に応じた払戻を請求いたします。」と記載されており,原告A4ら各自の署名押印があり,同日の確定日付が付されている。(以上につき,前提事実⑹イ,乙44,証人A23)カ原告会社は,同日,原告A4ら各自との間において,A13社のA23が起案した覚書2を交わした。同覚書には,要旨,以下のとおり記載され- 37 -ており,原告会社の代表取締役であるA20の記名押印及び原告A4ら各自の署名押印があり,同日の確定日付が付されている(なお,甲は原告会社,乙は原告A4,原告A5又は原告A6を指す。)。 (ア) 原告A4ら各自が「医療法人A2A14病院に対し出資持分の払戻請求…を行うことに関し,以下の事項を相互に確認する。」(柱書き)(イ) 「甲と乙が,平成19年9月28日付「医療法人A2出資持分払戻請求権譲受に関する証」と題する書面を作成し,同書面に基づき前項の出資持 関し,以下の事項を相互に確認する。」(柱書き)(イ) 「甲と乙が,平成19年9月28日付「医療法人A2出資持分払戻請求権譲受に関する証」と題する書面を作成し,同書面に基づき前項の出資持分の実質の出資持分権者が甲であり,乙が前項記載の出資持分のほかに医療法人A2A14病院の出資持分を有していないこと。」(2条)(ウ) 「乙は,甲からの依頼に基づいて,甲のために本件払戻請求を行うこと。」(3条)(以上につき,乙57,証人A23)キ A2は,平成20年9月30日,原告A4らが指定した原告会社名義の銀行口座に,本件払戻金合計相当額29億1000万円を含めた30億円を振り込んだ(本件払戻し)(前提事実⑹ウ,乙58)。 ⑹ 本件払戻し後の事情ア原告会社は,平成20年9月30日,A13社に対し,本件借入金の返済として,24億円を支払った(乙82,116)。 イ本件払戻しに伴う金銭の流れについては,別紙9のとおりであるが,本件払戻金合計相当額29億1000万円を含めた30億円の具体的な使途は,以下のとおりである。 (ア) A13社に対する本件借入金の返済 24億0000万円(イ) A27社に対する仲介手数料の支払 9030万円(ウ) A13社に対する仲介手数料の支払 1億1550万円(エ) A7に対する貸付金 4億0000万円- 38 -(オ) (ア)から(エ)までの合計 30億0580万円(以上につき,甲33,34,乙80~82,弁論の全趣旨)⑺ 事実認定に関する補足説明本件譲受取引に関するスキームの内容について,原告らは,A2を譲り受けるための受け皿となるMS法 (以上につき,甲33,34,乙80~82,弁論の全趣旨)⑺ 事実認定に関する補足説明本件譲受取引に関するスキームの内容について,原告らは,A2を譲り受けるための受け皿となるMS法人として原告会社を新設し,原告会社において,A2を譲り受けるというスキーム(本件譲受スキーム)を策定した旨主張する。これに対し,被告は,A23は,本件譲受取引当時から,将来的にA2を譲渡することを想定していたのであるから,あえて,法律上,本件出資持分の払戻しを受けることができない原告会社を譲受人とするはずがなく,原告A4らにおいてA2を譲り受けるというスキームを策定していた旨主張する。 当裁判所は,上記のとおり,本件譲受取引に関し,A23が中心となって策定したスキームは,原告会社を受け皿とする本件譲受スキームであった旨認定するものであり,以下,その理由を補足的に説明する。 上記事実認定は,A23及びA28の供述に依拠している部分があるので,上記両名の供述の信用性について説明しておく。 ア A23の供述内容A27社の代表取締役であり,A13社の社員でもあるA23は,本件譲受スキームを策定し,本件譲受取引及び本件払戻請求権の行使に係る関係各文書を起案したものであるが,要旨,以下のとおり供述又は陳述している。 (ア) 私は,原告会社が本件出資持分の譲受人となることを前提として本件譲受スキームを作成した。本件譲受取引に当たっては,A16から,A2の理事会において新設会社である原告会社がA14病院を譲り受けると説明すると,A24が言いがかりをつけて,本件譲受取引を妨害するおそれがあるので,そのような言いがかりをつけられないように手続- 39 -をしてもらいたいとの要望が出されていた。そのため,私は,関係各文書上は,精神科 いがかりをつけて,本件譲受取引を妨害するおそれがあるので,そのような言いがかりをつけられないように手続- 39 -をしてもらいたいとの要望が出されていた。そのため,私は,関係各文書上は,精神科医療において名が知られている原告A4らが原告会社の代理人として本件出資持分を譲り受けることとし,A2の理事会では代理人である原告A4らの名前のみを明らかにすることとした。このような理由から,本件譲受取引及び本件払戻請求権の行使に係る関係各文書には原告A4らを譲受人又は本件出資持分を有する者として記載したが,真正な譲受人は原告会社であることを明らかにするため,本件譲受に関する証及び覚書2を作成した。(以上につき,甲29,証人A23・11頁)(イ) 本件譲受取引の際,原告A4らが本件出資持分を譲り受けるという話は一切出ていない。本件譲受取引の取引額は20億円を超え,非常に多額であるため,金融機関から資金を借り入れなければならないところ,個人を相手方とする融資の場合,私有財産と事業財産が混同するおそれがある。また,相続等が発生した際に貸付金の回収が難しくなるなどの難点があり,金融機関が個人に対して多額の融資をすることは通常あり得ないため,金融機関との間で,原告A4らが融資を受けて本件譲受取引の譲受人となることを前提とする交渉はしていない。(以上につき,甲29,証人A23・10頁)(ウ) 本件譲受スキームにおいては,原告会社がA14病院を継続的に経営することが前提となっているから,将来的にA14病院を第三者に譲渡することは想定していなかった。A13社内においてA14病院を譲渡するという案が出てきたのは,使途不明金に関する報道を受けて,平成20年3月頃から金融機関が原告会社に対する融資について消極的な対応を採るようになった後 なかった。A13社内においてA14病院を譲渡するという案が出てきたのは,使途不明金に関する報道を受けて,平成20年3月頃から金融機関が原告会社に対する融資について消極的な対応を採るようになった後であり,その時期は,同年6月頃である。本件譲受取引の当時は,A14病院を譲渡する際の課税関係について検討をしたことはないし,A25社のA28にそのような検討を依頼したこ- 40 -ともない。(以上につき,証人A23・24,52,72頁)イ A28の供述内容A25社のA28は,本件譲受取引に係るスキーム検討資料を作成し,その後,A23から相談され,本件譲渡スキームが実行された場合の税務上の処理について検討したものであるが,A28は,要旨,以下のとおり供述している。 (ア) 本件譲受スキームは,原告会社が本件出資持分を取得することを前提に策定されたものであるから,本件出資持分を取得するのは原告会社である。個人が20億円もの融資を受けるということは考え難く,原告A4らが融資を受けて本件出資持分を取得するということを検討したことは一度もない。また,私が,原告A4らに対し,原告A4らが本件出資持分を取得した場合の税務上の処理について説明したこともない。 (以上につき,証人A28・2,3,17,21頁)(イ) 本件譲受スキームにおいて,原告会社による21億円の借入れを予定しているところ,上記スキームを策定した当時,原告会社がA19及び株式会社A30から譲り受けた不動産の賃料収入や,A14病院において外部に委託していた業務を原告会社が行うことによって,同病院の経費を削減し,また,同病院で使用する診療材料や医薬品の仕入れをA12の病院と一括して行うことによって,A14病院の経費を抑えるといった方法により,原告会社は上 原告会社が行うことによって,同病院の経費を削減し,また,同病院で使用する診療材料や医薬品の仕入れをA12の病院と一括して行うことによって,A14病院の経費を抑えるといった方法により,原告会社は上記借入れを返済できる見込みであった(証人A28・5,6頁)。 (ウ) 私は,平成20年3月頃,A12の事業再生計画に携わったが,その時点ではA14病院を売却するという話が出たことはなく,同年9月頃,A23から,A12の資金繰りがうまくいかなくなったため,A14病院を譲渡するという話を聞いた。A14病院の譲渡の方法として,本件出資持分を払い戻すという本件譲渡スキームが採用されたのは,A- 41 -36において,与信の関係でA21に融資することはできないが,A14病院に対する融資であれば可能であるという判断がされたからである。(以上につき,証人A28・9,10,12,13頁)(エ) 私は,A23から,本件譲渡スキームを前提として,原告会社が本件払戻しを受けた後の税務上の処理について検討をしてもらいたいと依頼を受け,この点について検討したところ,税務上,本件払戻金のうち出資金3000万円を超える部分は配当とみなされ,益金の額に算入されないことが判明した(証人A28・10,11,19頁)。 ウ上記両名の供述内容の信用性の検討(ア) 本件譲受スキームの内容に関するA23及びA28の上記供述内容は,原告会社が受皿会社となるスキーム(本件譲受スキーム)が策定されたという点で一致している。そして,①A13社が,平成19年9月11日に,A29に提出したスキーム検討資料に,「スキーム① 出資持分譲渡」として,「受皿会社」がA14病院を100%所有すること,金融機関が「受皿会社」に21億円を融資し,「受皿会社」がA15一 11日に,A29に提出したスキーム検討資料に,「スキーム① 出資持分譲渡」として,「受皿会社」がA14病院を100%所有すること,金融機関が「受皿会社」に21億円を融資し,「受皿会社」がA15一族に本件出資持分の対価として18億4800万円を支払うことが図示されていること(認定事実⑴オ),②その後,A29との関係で,上記スキームの内容について,A2を譲り受ける受け皿を,原告会社から原告A4らに変更されたという事情はうかがわれないこと,③使途不明金に関する報道を受けて,A29から原告会社に対する融資は見送られたものの,現に,上記スキームのとおり,原告会社が設立され,A13社からA2の譲受資金に係る融資を受けていること(認定事実⑴サシ),④私有財産と事業資産が混同するおそれがある個人に対し,金融機関が20億円を超える多額の融資をすることは考え難い旨のA23及びA28の供述内容は合理的であることに照らせば,本件譲受取引においては,原告会社が受皿会社となるスキームが策定された旨のA23及びA28- 42 -の上記供述は,客観的事実に整合し,その内容も合理的であって,その信用性は高いというべきである。 (イ) また,A23及びA28の供述内容は,本件譲受スキーム策定時(平成19年9月11日)において,原告ら(A12)がA2を近い将来に譲渡することは予定されてなかったという点についても一致している。 そして,①A14病院は,本件譲受取引後に本格化したA12の事業再生計画において譲渡の対象となっておらず,A13社の内部資料においてA14病院を譲渡することが検討されたことが確認できるのは,平成20年6月6日以降であること(認定事実⑷オ),②A14病院は,A24との間で支配権をめぐって内部的な確執を抱えていたものの,金融機関に対する負 を譲渡することが検討されたことが確認できるのは,平成20年6月6日以降であること(認定事実⑷オ),②A14病院は,A24との間で支配権をめぐって内部的な確執を抱えていたものの,金融機関に対する負債はなく,毎年2億円程度の経常利益が見込まれるなど,その財務体質は良好であり,継続的な経営によって相当な利益が期待できる状況であったこと(甲29),③原告A4は,本件譲受取引後,A14病院の理事長として,職員に対する説明会を開き,同病院内のアメニティーを改善するなど同病院を継続的に経営することを前提として行動していたこと(認定事実⑶)などに照らせば,A12がA2を近い将来に譲渡することは予定されてなかった旨のA23及びA28の上記供述は,客観的事実に整合し,信用性が高いといえる。 (ウ) また,A28は,本件譲受スキームを策定する段階では,出資持分を原告会社が取得することについて税務上の検討はしておらず,本件払戻しの検討の際に初めて,本件払戻金のうち出資金3000万円を超える部分は配当とみなされ,益金の額に算入されないことがわかった旨供述するところ,上記供述内容も,不自然なものとまではいえない。 以上によれば,A23及びA28の上記供述内容は信用性が高いというべきであり,上記両名の供述によれば,本件譲受取引に関して策定されたスキームは,原告会社が受皿会社となるというものであり,本件譲- 43 -受取引当時において,原告ら(A12)がA2を近い将来に譲渡することは予定されていなかったことが認められる。 (エ) これに対し,被告は,A13社のA23は,病院のM&Aを100件以上手がけた経験のある人物であるから,本件譲受取引に関しスキームを策定するに当たって,あらかじめ原告会社が本件借入金を返済することが困難となった場合に備えて,そ のA23は,病院のM&Aを100件以上手がけた経験のある人物であるから,本件譲受取引に関しスキームを策定するに当たって,あらかじめ原告会社が本件借入金を返済することが困難となった場合に備えて,その貸付金を回収する方法を検討していたはずであり,その方法として本件払戻請求権の行使も念頭に置いていたはずであるから,本件定款に基づき本件払戻請求権を行使することができるよう,A23は,原告A4らを本件出資持分の譲受人とするスキームを構築していたはずであるなどと主張する。 しかし,スキーム検討資料やA13社の内部決裁資料等(乙119,120)を見ても,本件譲受取引に関与したA23,A28及びA13社等の関係者が将来的にA14病院を譲渡することを想定して何らかの検討をしていた様子はうかがわれない。すなわち,本件譲受取引前のA23からA16へのメールに添付された平成19年9月6日付け「医療法人A2M&Aスキーム(案9/5)」と題する書面(乙119)からは,A14病院の敷地等の不動産の売却に関する所得税等の検討がされていることや,A19に支払う予定の役員退職慰労金の金額の検討がされていることがうかがわれるものの,これらは本件譲受取引に伴う税務上の処理等を検討したものにすぎないから,これらをもって,A14病院の将来的な売却を見据え,売却した場合に予想される原告A4ら及び原告会社に対する課税関係を検討したものとみることはできない。 また,A13社の平成19年9月19日時点の内部決裁資料(乙120)を見ても,本件譲受スキームの構築に当たり,「税務面でのリスクを検討及び対策をする必要があります」と記載されているのみであり,どのような税務上の検討をしていたのか明確ではないから,上記記載を- 44 -もって,A14病院の将来的な売却を見据えた課税関係 クを検討及び対策をする必要があります」と記載されているのみであり,どのような税務上の検討をしていたのか明確ではないから,上記記載を- 44 -もって,A14病院の将来的な売却を見据えた課税関係の検討がされていたとみることはできない。かえって,上記認定事実によれば,①A14病院の理事である原告A4らは,平成20年6月頃,原告会社が金融機関から融資を受けられなくなったことから,A13社の提案を受けて,A14病院を譲渡することを決断したこと(認定事実⑷オカ),②A14病院を売却するに当たり出資持分の払戻しという手法が採られることとなったのは,A36が,A21に対する融資はできないが(これが可能であれば出資持分の譲渡という手法がとり得たといえる。),A2に対する融資であれば可能であると判断し,上記手法を提案したためであって,A36の融資判断によるものであること(認定事実⑷ク)が認められる。 以上によれば,A23が本件譲受取引の時点で本件譲渡スキームによってA14病院を売却することを想定していたとは認められず,被告の上記主張は採用することができない。 2 争点⑴(本件払戻金に係る所得が原告A4ら又は原告会社のいずれに帰属するか)について⑴ 判断枠組み所得税法又は法人税法の課税標準の計算上,取引から生じた収益に係る所得が誰に帰属するかについては,実質上その収益を誰が享受するかによって判断すべきであるところ(いわゆる実質所得者課税の原則。所得税法12条,法人税法11条参照),医療法人の出資者がした出資持分の払戻請求に対する払戻金は当該出資持分を有する者に帰属するから,本件払戻金に係る所得は,本件出資持分を有していた者に帰属したものと解される。しかるところ,本件出資持分が誰に帰属したかについては,本件譲受スキームの内容及び は当該出資持分を有する者に帰属するから,本件払戻金に係る所得は,本件出資持分を有していた者に帰属したものと解される。しかるところ,本件出資持分が誰に帰属したかについては,本件譲受スキームの内容及びその実行状況,本件譲受取引及び本件払戻しに関連して作成された文書における本件出資持分の譲受人等の表示,本件譲受取引における本件出資持分の譲- 45 -受人についての関係者の認識,本件出資持分の譲受資金の提供者,譲受代金及び本件払戻金の決済方法,本件スキームの実行による経済的利益の帰属先等,本件譲受取引に係る諸般の事情を総合的に考慮して検討すべきである。 本件においては,原告らは,上記各事情によれば,本件譲受取引によって本件出資持分を取得したのは原告会社であると主張し,これに対し,被告は,要旨,本件譲受取引は将来的な本件出資持分の払戻しを予定したものであるところ,営利法人である原告会社は,法律上,本件出資持分の払戻しを受けることができないから,あえて本件出資持分の譲受人となるはずがなく,本件出資持分を取得したのは原告A4らであると主張し,また,本件スキームは,益金不算入の効果を得るために,原告会社が譲受人となったように仮装したものである旨主張し,本件出資持分の帰属先について争っている。 そこで,上記判断枠組みに基づき,本件出資持分が原告A4ら又は原告会社のいずれに帰属するかについて検討する。 ⑵ 本件譲受取引に係る諸般の事情の検討ア本件譲受スキームの内容及びその実行状況上記認定事実によれば,本件譲受スキームは,A23が主導して策定したもので,A2を譲り受けるための受け皿となるMS法人として原告会社を新設し,原告会社においてA2を譲り受けるというものであったこと(認定事実⑴オ,上記1⑺),本件譲受スキームに基づき,金 て策定したもので,A2を譲り受けるための受け皿となるMS法人として原告会社を新設し,原告会社においてA2を譲り受けるというものであったこと(認定事実⑴オ,上記1⑺),本件譲受スキームに基づき,金融機関との間で「受皿会社」が融資を受ける旨の交渉がされ,実際に原告会社が設立されたこと(認定事実⑴サ)が認められる。もっとも,A2の譲受資金の調達に関しては,当初の計画とは異なり,原告会社は,A12の使途不明金報道の影響により金融機関から融資を受けることはできず,A13社から融資を受けることになったが(認定事実⑴シ),これは,資金の調達元が変わったにすぎず,本件譲受スキームの本質的な部分に関わるものではないし,その他,本件譲受スキームの内容が変更されたことをうかがわせるよ- 46 -うな事情は認められない。また,原告会社は,本件譲受スキームに基づいて,A13社から融資を受けた金員(本件借入金)を本件譲受取引の譲受代金として出捐し,A19からA14病院の敷地を,A15が代表取締役を務めるA2の関連会社からは同病院関連施設の土地建物やリース資産等を買い受けるなどして(認定事実⑵ウ),現にMS法人としての機能を果たしたことが認められ,本件譲受取引は,本件譲受スキームのとおり,その手続が進められたといえる。 イ本件譲受取引及び本件払戻しに関連して作成された文書における本件出資持分の譲受人等の表示(ア) 上記認定事実によれば,本件譲受取引の際に作成された文書のうち,①A15と原告A4の間で作成された基本契約書1には,A15一族が有する本件出資持分を「乙又は乙の指名する者」,すなわち,原告A4又は同人の指名する者に譲渡する旨記載されていること(認定事実⑴ク),②A15と原告A4との間で作成された覚書1に,基本契約書1に定める本件出資 資持分を「乙又は乙の指名する者」,すなわち,原告A4又は同人の指名する者に譲渡する旨記載されていること(認定事実⑴ク),②A15と原告A4との間で作成された覚書1に,基本契約書1に定める本件出資持分の譲渡先の「乙又は乙の指名するもの」が原告A4らとなる旨記載されていること(認定事実⑵エ),③A15一族と原告A4らとの間で交わされた本件譲渡証書及び④平成19年9月28日開催のA2臨時社員総会議事録に,本件出資持分の「譲受人」として原告A4らの名前が記載されていること(認定事実⑵イオ)が認められる。 他方,⑤原告会社と原告A4らとの間で作成された本件譲受に関する証には,本件譲受取引による「真正なる譲受人」は原告会社である旨記載されていること(認定事実⑵カ)が認められる。 (イ) また,上記認定事実によれば,本件払戻しの際に作成された文書のうち,⑥原告A4とA22の間で作成された基本契約書2には,本件出資持分の全てを保有する原告会社に対し,本件払戻請求権の行使に基づく払戻し(本件払戻し)を行う旨記載されていること(認定事実⑸イ),- 47 -⑦原告会社と原告A4らとの間で作成された覚書2には,本件出資持分の「実質の出資持分権者」が原告会社であり,原告A4らがA2の出資持分を有していないこと及び原告A4らは原告会社の依頼に基づいて,原告会社のために本件払戻請求を行うことを確認する旨記載されていること(認定事実⑸カ),⑧原告A4らがA2臨時総会に提出した出資持分払戻請求書には,原告A4ら各自が,払込み済みの出資額に応じた払戻しを請求する旨記載されていること(認定事実⑸オ),⑨平成20年9月30日開催のA2臨時社員総会議事録には,「社員退社に伴う出資持分払戻し」という議題の下で,旧社員による出資持分払戻請求があり,これを承認した旨 記載されていること(認定事実⑸オ),⑨平成20年9月30日開催のA2臨時社員総会議事録には,「社員退社に伴う出資持分払戻し」という議題の下で,旧社員による出資持分払戻請求があり,これを承認した旨記載され,旧社員として原告A4らの名前が記載されていること(認定事実⑸エ)が認められる。 (ウ) 上記のとおり,本件譲受取引及び本件払戻しに関連して作成された文書には,本件譲受取引の譲受人が原告A4らである旨の記載がある一方で,その譲受人が原告会社である旨の記載もある。これらについては,本件譲受取引に関連して作成された文書のうち,A15一族との間で作成された文書(①②③)及びA2の社員総会議事録(④)には,譲受人が原告A4らである旨の記載がされ,原告会社と原告A4らとの間で作成された文書(⑤)には,譲受人が原告会社である旨の記載がされていると整理することができる。他方,本件払戻しに関連して作成された文書のうち,A22との間で作成された文書(⑥)及び原告会社と原告A4らとの間で作成された文書(⑦)には,本件出資持分の権利者(以下,単に「持分権者」という。)が原告会社である旨の記載がされており,A2の社員総会議事録(⑨)及びそこに提出された出資持分払戻請求書(⑧)には,持分権者が原告A4らである旨の記載がされていると整理することができる。 (エ) そうであるところ,A15一族との間で作成された文書(①②③)- 48 -及びA2の社員総会議事録(④)において,譲受人が原告A4らである旨の記載がされた理由について,A23は,本件譲受取引に当たって,A16から,A2の理事会において,新設会社である原告会社がA14病院を譲り受けると説明すると,A24が言いがかりをつけて本件譲受取引を妨害するおそれがあるので,そのような事態にならな に当たって,A16から,A2の理事会において,新設会社である原告会社がA14病院を譲り受けると説明すると,A24が言いがかりをつけて本件譲受取引を妨害するおそれがあるので,そのような事態にならないよう手続をしてもらいたいという要望があったからであると供述している(証人A23・11,12,65頁)。そして,上記供述は,本件譲受取引当時のA15一族とA24の確執があったこと(認定事実⑴ア),A24が大阪府の医療対策課に対し何度も出向いてA14病院に対する監査を求め,A16に対して損害賠償請求訴訟を提起したこと(認定事実⑴イ)に加え,A24は現に本件譲受取引について反対する意思を表明し,A14病院の職員に向けてその旨の意見書を配付したというA24のこれまでの言動等(認定事実⑵コ)に照らし,相応の合理性があるといえ,信用することができる。 以上によれば,本件譲受取引に関連して作成された文書のうち譲受人及び持分権者が原告A4らである旨記載されたことについては,合理的な理由があったということができる。 (オ) これに対し,被告は,譲受人が原告A4らであると記載された文書の中には,基本契約書1(①),覚書1(②)及び本件譲渡証書(③)といった文書の性質上,必ずしもA24の目に触れないものも含まれているから,A23の上記供述は不合理であり,信用することができないなどと主張する。しかし,A23は,上記各文書の譲受人が原告A4らであると記載された理由について,本件譲受取引に関してA16が依頼した税理士にA24とつながりがあることが疑われたので,同税理士を介してA24に,本件譲受取引の譲受人が原告会社であることが伝わってしまう可能性が否定できず,上記各文書においても譲受人を原告A4- 49 -らであると記載した旨供述している れたので,同税理士を介してA24に,本件譲受取引の譲受人が原告会社であることが伝わってしまう可能性が否定できず,上記各文書においても譲受人を原告A4- 49 -らであると記載した旨供述している(証人A23・42頁)。そして,上記供述が不自然とはいえないし,また同供述が虚偽であることをうかがわせる事情も認められない。 そうすると,被告が指摘する各文書において,譲受人が原告A4らである旨記載されていることについても合理的な理由があるといえる。被告の上記主張は,採用することができない。 以上によれば,A15一族との間で作成された文書及びA2の社員総会議事録において,譲受人が原告A4らである旨の記載がされたのは,A24との関係において,A14病院の経営権の譲渡を円滑に行う必要があったことによると認められる。 (カ) 一方,原告会社と原告A4らとの間で作成された本件譲受に関する証(⑤)においては,本件出資持分の実質的な譲受人は原告会社であることが確認されており,譲受人を原告会社とする本件譲受スキームの内容に沿ったものとなっている(なお,上記各文書には,確定日付が付されているから(認定事実⑵カ),譲受人が原告会社であることを仮装し辻褄を合わせるために上記各文書が事後的に作成されたということもできない。)。 これらは,上記で認定した本件譲受取引に至る経緯に鑑みれば,本件譲受取引に係る関係各文書の上では,A24をめぐる問題があることから,原告A4らの名義が譲受人として使用されるものの,事後,原告A4らと原告会社との間において本件出資持分の帰属が争われた場合に備えて,その権利の帰属を明確にするために,上記各文書が作成されたとみるのが合理的である。 (キ) また,本件払戻しに関して作成された文書についてみると,基本契 資持分の帰属が争われた場合に備えて,その権利の帰属を明確にするために,上記各文書が作成されたとみるのが合理的である。 (キ) また,本件払戻しに関して作成された文書についてみると,基本契約書2(⑥)及び覚書2(⑦)の記載は,持分権者が原告会社であることを前提とするもので,本件譲受取引における譲受人を原告会社とする- 50 -本件譲受スキームと整合的である。特に,A22との間で作成された基本契約書2(⑥)は,取引の相手方との間で作成されたもので実質的な持分権者の認識が原告会社及び原告A4らの間にとどまらないことを示している。これに対し,本件出資持分払戻請求書(⑧)やA2臨時社員総会議事録(⑨)は,持分権者が原告A4らであることを前提とするような記載があるが,これらは起案者であるA23が本件譲受取引の際の同種の書類と整合させるためにそのような記載としたものと認められるのであり,上記のとおり,基本契約書2(⑥)において持分権者が原告会社である旨の認識が示されていることからすれば,この点を重視することはできないというべきである。 ウ本件譲受取引における本件出資持分の譲受人についての関係者の認識(ア) A23及びA28の認識A23及びA28は本件譲受スキームを策定したものであるところ,上記のとおり,本件譲受取引における本件出資持分の譲受人は原告会社であると認識していたと認められる(上記1⑺)。 (イ) 原告A4らの認識a 原告A4は,本人尋問において,本件譲受取引における本件出資持分の譲受人について,要旨,以下のとおり供述している。 (a) 私は,平成19年9月13日,A7から,A12でA14病院を買収するという話を聞いた。A7によると,A15一族と当時A14病院の院長であ いて,要旨,以下のとおり供述している。 (a) 私は,平成19年9月13日,A7から,A12でA14病院を買収するという話を聞いた。A7によると,A15一族と当時A14病院の院長であったA24とのトラブルが原因で,A15一族が同病院の経営から退くので,同病院を救済するためにA12が買収するということだった。そのスキームについては,A23から,原告A4ら3人で会社を作った上で,その会社が融資を受け,出資持分を買い取るということ,A9に対する融資は受けられないので,新たに会社を作る以外に融資を受ける方法がないということを聞い- 51 -た。父のA7が学校法人を買収して運営していたが,うまくいっている様子ではなかったので,私は,A12でA14病院を買収することについても,どうなのかなという思いがあった。しかし,A13社の勧めや,A14病院を助けたいという思いもあったため,A14病院の買収について納得した。原告A4らが個人でA14病院を買収するという話はなかった。(以上につき,原告A4本人1~3頁)(b) 私は,医者であり,M&Aのノウハウは持っていないので,本件譲受取引に係る関係各文書の起案や細かい事務手続については,専門家であるA23に任せていた(原告A4本人4頁)。 (c) 私は,本件譲受取引においては,原告会社がA14病院を買収すると考えていた(原告A4本人8頁)。 b 原告A4の平成25年3月26日付け質問てん末書には,本件譲受取引の譲受人に関し,以下のとおり,記載されている。 「A37が描いたM&Aスキームに沿って,書類を作成し,父親に言われて理事長になりましたので,詳しくは分かりませんが,個人的には父親に(株)A1は買収のために,作る法人と聞いていましたの 「A37が描いたM&Aスキームに沿って,書類を作成し,父親に言われて理事長になりましたので,詳しくは分かりませんが,個人的には父親に(株)A1は買収のために,作る法人と聞いていましたので,契約書類等は,個人でサインしていますが,実質的には(株)A1が取引きしたと認識しています。」(以上につき,乙75)c 原告A4の平成25年5月9日付け質問てん末書には,本件譲受取引の譲受人に関し,以下のとおり,記載されている。 「(医)A2の出資持分払戻請求権を取得し,この権利に基づいて出資持分払戻請求権を行使したのは,私,A4,A5,A6の3人であることを認識しています。」,「この書類(本件譲受に関する証をいう。引用者注)を作成することにより私が譲り受けた(医)A2の出資持分払戻請求権の所有者を(株)A1へと付替えました。」(以- 52 -上につき,乙64)d 原告A4の上記供述の信用性について検討するに,本人尋問における供述(上記a)及び平成25年3月26日付け質問てん末書における供述(上記b)は,上記認定事実の客観的な事実経過に符合している上,A23及びA28の各供述とも符合している。また,原告A4が医者であり,M&Aに関する知識を持ち合わせていないことに照らせば,専門家であるA23に任せていた旨の原告A4の供述は不自然ではなく,原告A4の上記供述の信用性は高いというべきである。 e これに対し,被告は,原告A4の平成25年5月9日付け質問てん末書に上記cの記載があることを理由に,原告A4は本件譲受取引の譲受人を原告A4らであると認識していた旨主張する。 しかし,上記質問てん末書の記載のうち,本件譲受に関する証を作成することによって,原告A4らが譲り受けた本件出 A4は本件譲受取引の譲受人を原告A4らであると認識していた旨主張する。 しかし,上記質問てん末書の記載のうち,本件譲受に関する証を作成することによって,原告A4らが譲り受けた本件出資持分の所有者を原告会社に付け替えたという部分については,本件譲受取引に関する税務調査を担当した大阪国税局職員であるA38自身,「付替えました」という言葉は,原告A4の口から出た言葉ではないと認めている(証人A38・12頁)。また,同日付け質問てん末書のうち原告A4ら3人が本件出資持分を取得したという部分についても,平成25年3月26日付け質問てん末書(上記b)においては,実質的に本件譲受取引を行ったのは原告会社であると認識していた旨述べていたことに照らすと,取引主体について法人であるか個人であるかにつきその法的意味合いを十分に理解した上でされた供述とはいい難い。そうすると,原告A4の平成25年5月9日付け質問てん末書の記載を理由に,原告A4が本件譲受取引の譲受人を原告A4らと認識していたということはできない。被告の上記主張は,採用することができない。 - 53 -f 以上によれば,原告A4は,本人尋問における供述及び平成25年3月26日付け質問てん末書における供述のとおり,本件譲受取引における本件出資持分の譲受人は実質的に原告会社であると認識していたと認められる。また,原告A5及び原告A6についても,原告A4と同様に認識していたものと認められる(甲27,28,乙65,66,76,77)。 (ウ) A20の認識A20は,原告A4の妻であり,本件譲受取引当時,原告会社の代表取締役の地位にあったものであるが,証拠(乙78)によれば,同人は,原告会社の代表取締役の地位にあったものの,本件譲受取引には主体的 A20は,原告A4の妻であり,本件譲受取引当時,原告会社の代表取締役の地位にあったものであるが,証拠(乙78)によれば,同人は,原告会社の代表取締役の地位にあったものの,本件譲受取引には主体的に関与しておらず,本件出資持分の譲受人が原告会社であるか原告A4らであるかについても認識していなかったと認められる。 (エ) A15一族の認識aA16は,本件譲受取引当時,A2の社員であり,A14病院の理事長であったものであるが,平成25年2月22日付け質問てん末書には,本件譲渡証書に譲受人として原告A6,原告A5と記載されている理由について,「詳しくは分かりません。私達としては,A4さんの家族内の話だと認識していましたし,既に売却金額等は決まっていたため,特に問題視しませんでした。」と述べ,「カ)A1」とは何かという質問に対しては,A23に対しA14病院の譲渡代金が振り込まれたことを確認してから譲渡契約を締結したいと言ったところ,A23から,「それなら,法人を作ります」と言われたが,なぜ法人を作るかは分からなかった,法人の名前が株式会社A1だったと思う旨述べた旨記載されている。また,「あなたは出資払戻請求権を誰に譲渡したと認識していますか。」という質問に対し,「A7さんかA5さん,A6さんに売却したと思っています。」と述べた旨記載- 54 -されている。(以上につき,乙37)b 平成25年3月18日付け質問てん末書においては,A16が,「あなたは,A4さん,A6さん,A5さんが株式会社A1の代理人として,譲受人となる旨の説明を受けたり,書面で通知されたりしましたか。」という質問に対し,「いいえ,そのようなことは覚えていません。」(なお,「そのような記憶はありません。」と記載された後に訂正されている。)と なる旨の説明を受けたり,書面で通知されたりしましたか。」という質問に対し,「いいえ,そのようなことは覚えていません。」(なお,「そのような記憶はありません。」と記載された後に訂正されている。)と述べた旨記載されている。また,本件出資持分を誰に売却したと認識しているかという質問に対し,「私はA5さん及びA6さん個人に売却したと認識してます。」と述べた旨記載されている(なお,「株式会社A1に売却したという認識はありません。」と記載された後,二重線で抹消されている。)。(以上につき,乙72)c 平成25年4月3日付け質問てん末書においては,A16が,原告会社について「譲渡代金を決済するために臨時に作った法人であるとしか説明を受けていませんがそれ以外は分かりません。」,「私は出資持分の売却先はA4さんたち個人だと認識しています。」と述べた旨記載されている(乙62)。 d 上記b,cの供述内容及びA16が作成した本件譲渡証書等の記載に照らしてみると,A16は,本件譲受取引における本件出資持分の譲受人は原告A4らであると認識していたと一応認められる。しかし,上記のとおり,当初の質問てん末書(上記a)には,A16は,A14病院の譲渡代金が決まった以上,本件譲渡証書に譲受人として誰を記載するかについては,原告A4らの家族内の話だと認識していたし,特に問題視しなかったと記載されていること,譲受人として原告A4ら及び原告会社ではなく,A7の名前も挙げていることからすると,その認識は確定的なものではなかったというべきである。 - 55 -そして,上記認定事実によれば,本件譲受取引当時,A16は,A14病院の院長であったA24と同病院の経営をめぐって対立し,A24から損害賠償請求を提起されるなど,A24との確執が深まり,同病院 -そして,上記認定事実によれば,本件譲受取引当時,A16は,A14病院の院長であったA24と同病院の経営をめぐって対立し,A24から損害賠償請求を提起されるなど,A24との確執が深まり,同病院内で混乱が生じる中,A24からの妨害を受けずに,早期にA14病院を譲渡し,同病院の経営から退きたいと考えていたことが認められ(認定事実⑴アイウクケ),また,証拠(証人A23)によれば,A16は,A23から本件譲受取引に当たってA14病院の受け皿となる新設会社を設立する旨の説明を受けたが,これについて特段の異議は述べなかったことが認められる。そうすると,A16にとっては,無事にA14病院の経営権をA12側に譲渡することが重要な関心事であり,本件譲受取引の主体が法的評価として原告会社であるか原告A4らであるかについて特段の関心はなく,仮にそれが原告会社であったとしても,A16の意思には反しないものであったと推認できる。 また,A15は,平成25年2月25日付け質問てん末書において,A16が本件譲受取引に係る交渉を担当しているから,自身は詳しく知らない旨供述した旨記載されており(乙61),その他,A16以外のA15一族が,本件出資持分の譲渡の相手方が誰であるかについて特段の関心を持っていたことをうかがわせる事情は見当たらない。 エ本件出資持分の譲受資金の提供者,譲受代金及び本件払戻金の決裁方法上記認定事実によれば,本件譲受取引において,原告会社は,実質的にはA7が出捐した出資金により設立され(認定事実⑴サ),A13社から24億円(本件借入金)を借り入れて,これを原資として,A15一族に対し本件出資持分の対価(18億4800万円)を支払ったこと(認定事実⑴ス,⑵ク),上記支払は,原告会社名義の銀行口座からA15一族の指定する各 借入金)を借り入れて,これを原資として,A15一族に対し本件出資持分の対価(18億4800万円)を支払ったこと(認定事実⑴ス,⑵ク),上記支払は,原告会社名義の銀行口座からA15一族の指定する各銀行口座に振り込む方法により支払われたことが認められる(認定事実⑵ク)。また,本件払戻しにおいて,本件払戻金(29億10- 56 -00万円)は,原告会社名義の銀行口座に振り込まれたことが認められる(認定事実⑸キ)。そして,本件スキームにおいて,原告A4らが,A15一族若しくはA2,又はA22若しくはA21との間において,何らかの金銭の授受を行い,また何らかの出捐をしたことをうかがわせる客観的証拠は見当たらない。 以上のとおり,本件出資持分の譲受資金は原告会社がすべてこれを提供したものであり,譲受代金及び本件払戻金の決裁もすべて原告A4らの口座を経由せず,直接原告会社の口座との間で行われたものである。 オ本件スキームの実行による経済的利益の帰属先等(ア) 上記認定事実によれば,原告会社は,本件借入金の返済として,本件払戻金29億1000万円のうち24億円をA13社に支払ったこと,その他,本件払戻金を原資として,A27社及びA13社に対する仲介手数料の支払として合計2億0580万円を支払ったこと,A7に対し,4億円を貸し付けたことが認められる(認定事実⑹イ)。他方,本件払戻金又はこれを原資とする金銭が,直接又は間接に,原告A4らに支払われたことをうかがわせる客観的証拠は見当たらないし,何らかの経済的利益が原告A4らに還元されたことをうかがわせる客観的証拠も見当たらない。 また,上記認定事実によれば,原告A4は,A7による学校法人の買収や運営がうまくいっていなかったことから,同人及びA23が持ちかけてきた本件譲受取引に とをうかがわせる客観的証拠も見当たらない。 また,上記認定事実によれば,原告A4は,A7による学校法人の買収や運営がうまくいっていなかったことから,同人及びA23が持ちかけてきた本件譲受取引には乗り気ではなかったことが認められ,原告A4らは,A23及びA7から本件譲受取引に関与するよう求められて承諾したにすぎないから(認定事実⑴エカ,上記ウ(イ)),原告A4らが本件譲受取引に自発的,積極的に関与したものではないし,少なくとも本件譲受取引によって個人的な利益を図ろうとしていたとも認められない。 - 57 -以上によれば,本件スキームの実行によって,本件譲渡取引によって得た経済的利益は全て原告会社に帰属したのであり,原告A4らが何らかの経済的利益を受けたとは認められない。 (イ) これに対し,被告は,本件払戻金の29億1000万円という金額は,A23においてA7に対する4億円の貸付金を回収しようと考え,25億円に4億円を上乗せしたものであり,実質的には,A7の借入金の借換えであるとして,本件譲受取引は上記貸付金の回収ありきで行われたものであり,原告A4らに利益が帰属していないとはいえないなどと主張する。 しかし,A7の借入金に係る上記事情があったからといって,なぜ本件払戻しによる利益が原告A4らに帰属するといえるのか,その論理は判然としない。また,この点を措くとしても,本件譲受取引に至る経緯は上記で認定・説示したとおりであって,A23がA7に対する4億円の貸付金を回収する目的で本件譲受取引に至ったと認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると,被告の上記主張は,前提を欠くものといわざるを得ず,採用することができない。 ⑶ 総合的判断そこで,上記において摘示した各事情を踏まえて,本件譲受取引におけ 確な証拠はない。そうすると,被告の上記主張は,前提を欠くものといわざるを得ず,採用することができない。 ⑶ 総合的判断そこで,上記において摘示した各事情を踏まえて,本件譲受取引における本件出資持分の譲受人について判断する。 本件譲受スキームは,A23が中心となり,MS法人である原告会社を設立した上で本件出資持分の譲受人となることを前提として策定されたものであり,その後,これが変更されたことはうかがわれない。現に設立された原告会社は,A13社から譲受けに必要な資金の融資を受け,譲受代金を出捐したほか,A14病院の運営に必要な不動産やリース資産等を買い受けている。 本件譲受取引に関連して作成された基本契約書1や本件譲渡証書等には,- 58 -原告A4らが本件出資持分の譲受人として表示されているが,これはA14病院内のA24をめぐる問題に対処し,A14病院の経営権の譲渡を円滑に行う必要があったためである。他方,原告会社と原告A4らとの間で作成された本件譲受に関する証においては,本件出資持分の譲受人が原告会社であることが確認されており,本件譲受スキームに沿ったものとなっている。なお,その後,本件払戻しの際に作成された基本契約書2及び覚書2には,原告会社が持分権者として記載されており,これらも原告会社が譲受人となる本件譲受スキームの延長線上にあるものとして整合的である。 そして,本件譲受取引の関係者の認識についてみると,本件譲受スキームを検討・策定したA23及びA28は,譲受人は原告会社であるとの認識の下で手続を進めており,A23の主導の下で本件譲受スキームに関与した原告A4らも同様の認識であった。これに対し,譲渡人であるA15一族は,本件譲渡証書等の書類等における記載に照らし,原告A4らが譲受人であるとの一応の認識を有 の主導の下で本件譲受スキームに関与した原告A4らも同様の認識であった。これに対し,譲渡人であるA15一族は,本件譲渡証書等の書類等における記載に照らし,原告A4らが譲受人であるとの一応の認識を有していたと認められるものの,その認識は確定的なものではなかった。A15一族の関心事は無事にA14病院の経営権をA12側に譲渡するという点にあったから,譲渡代金の支払の点に問題がなければ,本件譲受取引の主体が法的評価として原告会社であるか原告A4らであるかについて特段の関心はなく,仮に原告会社であったとしても,その意思には反しないものであった。 また,本件譲受取引において,必要な資金は原告会社がすべてこれを出捐しており,これも本件譲受スキームに沿ったものである。譲渡代金の決済は,原告会社名義の口座から譲渡人(A15一族)の口座へ直接送金された。なお,本件払戻しの際にも,本件払戻金は,A2から直接,原告会社名義の口座に送金されている。 そして,本件出資持分の譲渡によって得た経済的利益は全て原告会社に帰属しており,他方で,本件スキーム全体を通じて,原告A4らが本件譲受取- 59 -引に関して何らかの出捐をしたとか,本件払戻しの結果,何らかの経済的利益を受けたといった事実は一切認められない。 以上によれば,本件譲受取引は,基本的に原告会社を譲受人とする本件譲受スキームに沿って実行されたものといえ,A15一族との書類等一部の書類上の譲受人の名義は原告A4らとされているものの,そのような記載とされたことにはA24との関係でA14病院の経営権の譲渡を円滑に行うために特別の事情があったものと評価すべきであり,本件譲受取引の譲受人の認定に当たって,そのような記載を重視することは,本件譲受スキームの内容その他の諸事情から認められる本件譲受取引の実態に沿わ うために特別の事情があったものと評価すべきであり,本件譲受取引の譲受人の認定に当たって,そのような記載を重視することは,本件譲受スキームの内容その他の諸事情から認められる本件譲受取引の実態に沿わないものであって相当ではないというべきである。また,本件出資持分の譲渡人であるA15一族の認識も上記のようなものであって,本件譲受取引における譲受人が原告会社であると認定することについて障害となるまでのものとはいえない。 これらの点を踏まえて,上記の諸事情を総合的に考慮すれば,本件譲受取引において原告A4らは単なる名義人にすぎず,本件出資持分を譲り受けたのは原告会社であり,本件出資持分は原告会社に帰属すると認めるのが相当である。 そうすると,本件出資持分を払い戻すことによって生じた本件払戻金に係る所得は,原告A4らではなく,原告会社に帰属すると認められる。 ⑷ その余の被告の主張についてア被告は,医療法上,医療法人による出資持分の払戻しについて特段の規定がないことからすると,出資持分の払戻しは,当該医療法人の定款の定めに基づく場合のほかはこれをすることができないところ,本件定款によれば,出資持分の払戻しは,①出資持分を有する社員が退社した場合(8条2項)又は②A2が解散した場合(34条)に限られるから,原告会社が出資持分を譲り受けたとしてもこれを行使することができず,投下資本の回収が困難になるから,あえて原告会社が本件出資持分を譲り受けると- 60 -は考え難いなどと主張する。 しかし,被告の上記主張は,そもそも本件譲受取引の時点において,A12が将来的にA2を第三者に譲渡することを予定していたことを前提とするものであり,A12ないし原告らが,本件譲受取引の時点において,少なくとも近い将来,A2を譲渡す 本件譲受取引の時点において,A12が将来的にA2を第三者に譲渡することを予定していたことを前提とするものであり,A12ないし原告らが,本件譲受取引の時点において,少なくとも近い将来,A2を譲渡することを予定していたとは認められないことは,前記で認定・説示したとおりである。 また,仮に,被告が主張するとおり,営利法人が医療法人の出資持分を譲り受けた場合に,定款に定める以外の場合には出資持分の払戻しを受けることができないとの立論を前提としても,当該営利法人は新たな譲受人に出資持分を有償譲渡する方法で投下資本の回収をすることが可能である。なお,上記認定のとおり,本件において出資持分の払戻しの方法によることになったのは,A36において,与信上の問題からA21に対し融資をすることはできないが,A2に対する融資であれば可能であるとの判断をしたためであり,偶然によるところが大きいというべきである。そうすると,原告会社において本件出資持分を譲り受けたからといって,将来,投下資本の回収が困難になるということはできない。 したがって,被告の上記主張は,いずれもその前提を誤るものであって,採用することができない。 イ被告は,原告会社には事業実体がないなどと主張し,原告会社が譲受人であるとは認められない旨主張する。 しかし,上記のとおり,原告会社は,本件譲受取引に当たって,A14病院の受け皿となるMS法人として新設されたものであり,原告会社は,本件譲受取引と並行して,現に,A19からはA14病院の敷地である土地を,A2の関連会社からはA14病院のリース資産等を購入しているのであり,本件譲受取引に関連する事業については事業実体があったと認められるし(上記1⑺,2⑵ア),「受皿会社」としての性質上,その他の- 61 -事業を行っていなかったと ス資産等を購入しているのであり,本件譲受取引に関連する事業については事業実体があったと認められるし(上記1⑺,2⑵ア),「受皿会社」としての性質上,その他の- 61 -事業を行っていなかったとしても何ら不自然ではない。被告の上記主張は採用することができない。 ウまた,被告は,A2が原告A4らを出資持分を有する社員として扱っていたことからすると,原告A4らが本件譲受取引の譲受人であることがうかがわれるなどと主張する。 しかし,上記で認定・説示したとおり,本件譲受取引に当たっては,A24との関係において,その外観上,原告A4らを譲受人とする必要があったのであり,そのためにA2の臨時社員総会議事録に原告A4らが譲受人と記載されたものと認められるし,大阪府知事に提出する役員変更届(乙16)についてもそれらの議事録との記載を整合させたものにすぎないと解される。そうすると,被告が指摘する事情があるからといって,原告会社が譲受人であることと矛盾するとはいえない。 3 本件各処分の適法性上記で認定・説示したところによれば,本件出資持分は原告会社が有していたものと認められるから,これを払い戻すことによって生じた本件払戻金に係る所得は原告会社に帰属するというべきであり,本件払戻金に係る所得が原告A4らに帰属することを理由に行われた本件各処分(ただし,原告らが取消しを求めている部分に限る。)は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも違法である。 4 結論よって,原告らの請求はいずれも理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治 - 62 - 裁判官徳地淳及び裁判官横井真由美は,転補 認容することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治 - 62 - 裁判官徳地淳及び裁判官横井真由美は,転補のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官松永栄治 - 63 -(別紙1)取消処分目録第1 甲事件関係阿倍野税務署長が平成25年7月4日付けでした原告A4の平成20年分の所得税の更正のうち総所得金額1億2883万9124円,納付すべき税額1633万3900円を超える部分及び重加算税賦課決定第2 乙事件関係吹田税務署長が平成25年7月4日付けでした原告A5の平成20年分の所得税の更正のうち総所得金額4437万5000円,納付すべき税額69万3500円を超える部分及び重加算税賦課決定第3 丙事件関係茨木税務署長が平成25年7月4日付けでした原告A6の平成20年分の所得税の更正のうち総所得金額2604万3469円,納付すべき税額139万0700円を超える部分及び重加算税賦課決定第4 丁事件関係 1 茨木税務署長が平成25年7月4日付けでした原告株式会社A1の平成19年9月18日から平成20年8月31日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額マイナス1億4656万7926円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額1億4656万7926円を下回る部分 2 茨木税務署長が平成25年7月4日付けでした原告株式会社A1の平成20年9月1日から同年10月31日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額マイナス19億3413万5185円を超える部分,納付すべき税額マイナス(還付金の額に相当する税額。以下同じ。)5億7600万円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金 年度の法人税の更正のうち所得金額マイナス19億3413万5185円を超える部分,納付すべき税額マイナス(還付金の額に相当する税額。以下同じ。)5億7600万円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額20億8070万3111円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 3 茨木税務署長が平成25年7月4日付けでした原告株式会社A1の平成20- 64 -年11月1日から平成21年10月31日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額0円を超える部分,納付すべき税額マイナス573円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額20億6295万5301円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 4 茨木税務署長が平成25年7月4日付けでした原告株式会社A1の平成21年11月1日から平成22年10月31日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額0円を超える部分,納付すべき税額マイナス107円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額20億4716万5443円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定処分 5 茨木税務署長が平成25年7月4日付けでした原告株式会社A1の平成22年11月1日から平成23年10月31日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額0円を超える部分,納付すべき税額マイナス90円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額20億3137万5699円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 6 茨木税務署長が平成25年7月4日付けでした原告株式会社A1の平成23年11月1日から平成24年10月31日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額0円を超える部分,納付すべき税額マイナス455円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額19億4901万5866円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定第5 戊事件関係 1 茨木税務署長が平成28 超える部分,納付すべき税額マイナス455円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額19億4901万5866円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定第5 戊事件関係 1 茨木税務署長が平成28年7月7日付けでした原告株式会社A1の平成24年11月1日から平成25年10月31日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額0円を超える部分,納付すべき税額マイナス2208円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額18億5442万0854円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 2 茨木税務署長が平成28年7月7日付けでした原告株式会社A1の平成24- 65 -年11月1日から平成25年10月31日までの事業年度の復興特別法人税の更正のうち納付すべき税額0円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定 3 茨木税務署長が平成28年7月7日付けでした原告株式会社A1の平成25年11月1日から平成26年10月31日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額0円を超える部分,納付すべき税額マイナス3603円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額17億5698万1787円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 4 茨木税務署長が平成28年7月7日付けでした原告株式会社A1の平成25年11月1日から平成26年10月31日までの事業年度の復興特別法人税の更正のうち納付すべき税額マイナス76円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定 5 茨木税務署長が平成28年7月7日付けでした原告株式会社A1の平成26年11月1日から平成27年10月31日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額0円を超える部分,納付すべき税額マイナス2270円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額16億9234万1155円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 6 茨木税務署 税の更正のうち所得金額0円を超える部分,納付すべき税額マイナス2270円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額16億9234万1155円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 6 茨木税務署長が平成28年7月7日付けでした原告株式会社A1の平成26年11月1日から平成27年10月31日までの事業年度の地方法人税の更正のうち納付すべき税額0円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る