- 1 -平成23年10月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第1232号商標権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年8月30日判決京都市中京区<以下略>原告 A1京都市下京区<以下略>原告ひかり司法書士法人原告ら訴訟代理人弁護士伊原友己同加古尊温原告ら訴訟代理人弁理士小林良平東京都杉並区<以下略>被告司法書士法人ひかり法務事務所東京都杉並区<以下略>被告 B1被告ら訴訟代理人弁護士山本裕夫被告ら訴訟代理人弁理士小川雅也 主文 1 被告らは,金銭消費貸借取引に係る弁済金のうち利息制限法所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金の返還請求等の借入金債務の整理業務,これらに関する訴訟事件の代理若しくは自己破産申立書等の破産関係手続書類作成その他に関する法律事務,又は登記若しくは供託に関する手続の代理についての役務を提供するに当たり,別紙被告標章目録1ないし4記載の各標章を上記役務の提供を受ける者に対して交付する名刺,パンフレット,封筒,事務用紙等に付し,電車内の広告や - 2 -新聞広告等の上記役務に関する広告物に付し,又はその広告を内容とする情報に上記各標章を付して電磁的方法により提供してはならない。 2 被告B1は,原告ひかり司法書士法人に対し,675万0738円及びこれに対する平成20年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告司法書士法人ひかり法務事務所は,原告ひかり司法書士法 ,原告ひかり司法書士法人に対し,675万0738円及びこれに対する平成20年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告司法書士法人ひかり法務事務所は,原告ひかり司法書士法人に対し,353万4652円及びこれに対する平成23年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告ひかり司法書士法人の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告ひかり司法書士法人の負担とし,その余は被告らの負担とする。 6 この判決の第1項ないし第3項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 原告A1の請求主文第1項と同旨 2 原告ひかり司法書士法人の請求(1) 被告B1は,原告ひかり司法書士法人に対し,2200万円及びこれに対する平成20年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告司法書士法人ひかり法務事務所は,原告ひかり司法書士法人に対し,2750万円及びこれに対する平成23年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 - 3 -本件は,後記1(2)記載の登録商標(以下「本件商標」といい,その商標権を「本件商標権」という。)の商標権者である原告A1(以下「原告A1」という。)及び原告A1から本件商標に係る独占的通常使用権の許諾を得たと主張する原告ひかり司法書士法人(以下「原告法人」という。)が,被告らがその役務を提供するに際し使用している別紙被告標章目録1ないし5記載の各標章(以下「被告各標章」といい,同目録1記載の標章を「被告標章1」,同目録2記載の標章を「被告標章2」などという。)は,本件商標と類似の商標であって,被告らによる被告各標章の使用は原告A1の本 各標章(以下「被告各標章」といい,同目録1記載の標章を「被告標章1」,同目録2記載の標章を「被告標章2」などという。)は,本件商標と類似の商標であって,被告らによる被告各標章の使用は原告A1の本件商標権及び原告法人の本件商標に係る独占的通常使用権を侵害する旨主張して,原告A1においては,被告らに対し,商標法36条1項に基づき,被告標章1ないし4の使用の差止めを,原告法人においては,被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者等ア(ア) 原告A1は,公認会計士・税理士であるところ,昭和61年6月に京都市内に「A1公認会計士事務所」の名称で会計事務所を開業した後,平成19年6月,同事務所の監査部門を法人化して「ひかり監査法人」を設立し,その代表社員に就任した(甲3,11,乙59)。 この間の平成15年1月にA1公認会計士事務所の税理士部門が独立して法人化した「ひかり税理士法人」が設立され,更に平成18年1月にひかり税理士法人の社会保険労務士部門が独立して法人化した「ひかり社会保険労務士法人」が設立された(甲3,乙60,61)。 (イ) 原告法人は,平成18年2月2日に「C2司法書士事務所」が法人化して設立された司法書士法人である(甲3,16の1,2)。 原告法人の代表社員のC1は,法務大臣から簡裁訴訟代理等関係業務 - 4 -を行う能力を有するとの認定を受けた認定司法書士(以下,単に「認定司法書士」という。)である(甲15)。 (ウ) 平成18年2月に,ひかり税理士法人を中核組織とし,ひかり社会保険労務士法人,原告法人,ひかり経営戦略株式会社,ひかり行政書士事務所等を構成組織とする 法書士」という。)である(甲15)。 (ウ) 平成18年2月に,ひかり税理士法人を中核組織とし,ひかり社会保険労務士法人,原告法人,ひかり経営戦略株式会社,ひかり行政書士事務所等を構成組織とする「ひかりアドバイザーグループ」が結成され,原告A1がその代表に就任した(甲3,11,16の1,2,17)。 「ひかりアドバイザーグループ」は,顧客がそれぞれ抱える問題事象や経営課題につき,統括・連携された一つの専門事業者集団で対処し得る組織を構築し,顧客に対して,税務会計周辺業務のみならず,経営指導業務や登記業務などに至る幅広い分野において,いわゆるワンストップサービスを提供することを企図して結成された(甲11,12,17,18)。 その後,平成19年6月にひかり監査法人が「ひかりアドバイザーグループ」に参画し,ひかりアドバイザーグループの中核組織となった(甲3)。 イ被告B1(以下「被告B1」という。)は,認定司法書士であるところ,平成17年9月27日に東京都内において「ひかり法務司法書士事務所」(乙18,31)の名称で司法書士事務所を開業した後,平成20年7月1日に同司法書士事務所を法人化して被告司法書士法人ひかり法務事務所(以下「被告法人」という。)を設立し,その代表社員に就任した。 被告B1及び被告法人は,いずれも,金銭消費貸借取引に係る弁済金のうち利息制限法所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金の返還請求(以下「過払金返還請求」という。)の業務の専門家(専門事務所)を自認して,ウェブサイトでの宣伝広告はもとより,首都圏の私鉄,地下鉄等の公共交通機関や新聞等に宣伝広告を掲載するなどして借金問題を抱える相談者を集め,事 - 5 -業を展開してきた。 (2) 原告A ,ウェブサイトでの宣伝広告はもとより,首都圏の私鉄,地下鉄等の公共交通機関や新聞等に宣伝広告を掲載するなどして借金問題を抱える相談者を集め,事 - 5 -業を展開してきた。 (2) 原告A1の登録商標原告A1は,以下の登録商標(本件商標)の商標権者である(甲1,2)。 登録番号商標登録第4960504号出願日平成17年11月17日登録日平成18年6月9日指定役務第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務,訴訟事件その他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理,行政手続きの助言及び代理」登録商標別紙原告商標目録記載のとおり(3) 被告標章1ないし4の使用ア被告B1は,平成17年9月27日から平成20年6月30日までの間,過払金返還請求等の借入金債務の整理業務,これらに関する訴訟事件の代理についての役務(以下「本件役務」という)について,被告標章4(ただし,乙10ないし17(枝番を含む。)に表記されている白抜きの文字や陰影をつけた文字からなる「ひかり法務司法書士事務所」の標章を含む。 以下,これらを含めて「被告標章4」という。)を電車内の広告や雑誌広告等の広告物に付すなどして使用してきた(乙10ないし18,21,31(枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。),弁論の全趣旨)イ被告法人は,平成20年7月1日の設立日以降,本件役務について,被告標章1ないし4を使用している。 すなわち,被告法人のウェブサイト(甲6)には,被告標章1ないし3が随所に表記されて本件役務に関する広告が掲載され,また,消費者金融関係の情報提供を行うウェブサイト(甲7)には,被告標章4が,いずれも被告法人の提供する本件役務の出所を表示する意味合いで使用されて - されて本件役務に関する広告が掲載され,また,消費者金融関係の情報提供を行うウェブサイト(甲7)には,被告標章4が,いずれも被告法人の提供する本件役務の出所を表示する意味合いで使用されて - 6 -いる。このように,被告法人は,本件役務に関する広告を内容とする情報に被告標章1ないし4を付して電磁的方法により提供している。 また,被告法人は,本件役務の遂行に際して顧客等に交付する名刺やパンフレット,事務所封筒や事務用紙等に被告標章1ないし3を付して使用している。 さらに,被告法人は,本件役務に関する電車内の広告や新聞広告等の広告物に被告標章1ないし3を付してきた。 2 争点本件の争点は,①被告らによる原告A1の本件商標権及び原告法人の本件商標に係る独占的通常使用権の侵害の成否(争点1),②本件商標権の効力が商標法26条1項1号により被告標章4に及ばないか(争点2),③本件商標の商標登録に無効理由があり,原告A1の本件商標権の行使及び原告法人の本件商標に係る独占的通常使用権の行使が商標法39条において準用する特許法104条の3第1項により制限されるか(争点3),④被告らの被告標章4についての先使用権(商標法32条1項)の成否(争点4),⑤権利濫用の成否(争点5),⑥原告法人における損害の発生及びその額(争点6)である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件商標権及び本件商標に係る独占的通常使用権の侵害の成否)について(1) 原告らの主張ア本件商標と被告各標章との類似性(争点1-1)(ア) 被告各標章の要部被告各標章の構成は,別紙被告標章目録1ないし5記載のとおりであるところ,被告標章1における「法務事務所」の部分,被告標章2及び3における「法務」の部分,被告標章4における「法務司法書士事務所 被告各標章の構成は,別紙被告標章目録1ないし5記載のとおりであるところ,被告標章1における「法務事務所」の部分,被告標章2及び3における「法務」の部分,被告標章4における「法務司法書士事務所」の部分並びに被告標章5における「司法書士事務所」の部分は,いずれ - 7 -も司法書士事務所であることを示す普通名称あるいは慣用名称を極めて普通に記載したものにすぎないから,特段の識別力はない。 また,被告各標章の一連一体標記における冒頭3文字の「ひかり」のみが平仮名表記であって,これに続く漢字表記部分とは視覚的・外観印象的,観念的にも明確に分断されて捉えられる結果,「ひかり」の文字部分のみが強調され,本件役務,自己破産申立書等の破産関係手続書類作成等の業務,登記又は供託に関する手続の代理等の司法書士業務の需要者に対しては,「ひかり」の文字部分こそが役務の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえるから,本件商標との類否を判断するに際しての被告各標章の要部は,「ひかり」の文字部分であるというべきである。 (イ) 本件商標と被告各標章との対比a 外観本件商標は,別紙原告商標目録記載のとおり,「MSUI Gothic」様の書体によって「ひかり」の平仮名3文字を横書きして成るものである。 一方,被告各標章の要部である「ひかり」の文字部分は,通常よく見受けられる書体で平仮名3文字を横書きして成るものであり,書体の若干の差異や色彩の差異は同一性判断に影響を及ぼさないことからすると,本件商標と被告各標章の要部とは,外観において同一である。 b 称呼本件商標と被告各標章の要部は,いずれも「ヒカリ」の称呼が生じる点で同一である。 c 観念本件商標と被告各標章の要部は,いずれも「光ること」,「 は,外観において同一である。 b 称呼本件商標と被告各標章の要部は,いずれも「ヒカリ」の称呼が生じる点で同一である。 c 観念本件商標と被告各標章の要部は,いずれも「光ること」,「光るも - 8 -の」あるいは「目に感ずる明るさ」など,いわゆる「光」から通常連想するものを想起させる点で,観念において同一である。 d 取引の実情(a) 被告法人は,自身のウェブサイト上において,無償の法律相談をうたって全国津々浦々の顧客等を誘引しているものであり,原告法人と被告法人との主たる事務所の所在地がそれぞれ京都と東京であることは,重要な意味を持たない。 そもそも司法書士の職務エリアがその事務所所在地の都道府県単位,あるいは法務局単位で切り分けられているという事情もなく(法的規制や司法書士会の内規,業界慣例もない。),現在は各種登記申請手続にしても,オンラインや郵送で行い得るものであり,ましてや,被告らが主として行っている過払金返還請求の代理などは,少なくとも平成21年中ころまでは貸金業者と書面等でやり取りすることによってほとんどの案件が処理されていたものであり,なおさら事務所の所在地の地域性は意味を持たないものといえる。平成21年後半以降は,訴訟手続による請求事案も増えているが,相手方となる大手の金融事業者の本店所在地は首都圏であり,首都圏の簡易裁判所への訴訟提起が可能である。このことは,全国放送のテレビコマーシャル等で借金問題についての顧客誘引を行う法務事務所(司法書士事務所)や法律事務所が存在していることからも明らかである。 このように,借金問題を主として扱う上記法務事務所の集客対象地域は,必ずしもその事務所が所在する一地域に限定されておらず,全国に及んでいる。 (b) さらに,原告A1が代表を務め,原 である。 このように,借金問題を主として扱う上記法務事務所の集客対象地域は,必ずしもその事務所が所在する一地域に限定されておらず,全国に及んでいる。 (b) さらに,原告A1が代表を務め,原告法人もその構成組織の一つである「ひかりアドバイザーグループ」を構成する「ひかり監査 - 9 -法人」及び「ひかり税理士法人」は,東京にも事務所を有し,同グループにおいては首都圏をも含めた広域展開が現実化していることからすると,「ひかり法務」等の標章に接した顧客等は,原告法人や「ひかりアドバイザーグループ」と何らかの提携関係があるのではないかと思い,あるいはその構成組織である原告法人との組織としての同一性や関係性について誤解するのは必至であり,需要者間(顧客等)の混乱・混同は避け難い。 e 小括以上のとおり,本件商標と被告各標章の要部とは,唯一識別力を有する「ひかり」の部分において外観,称呼及び観念のいずれもが同一である上,取引の実情においても,本件商標と被告各標章の出所が相違するものと需要者において明瞭に峻別できる要素は存在しない。 むしろ,司法書士事務所の活動地域が事務所所在地周辺に限定されず,被告らがインターネットを活用した広域事業展開を行っている実情に鑑みれば,被告らによる被告各標章の使用は,「ひかり」という名称を中心に結束して事業者集団を形成している「ひかりアドバイザーグループ」との関係で,あるいは「ひかり」を要部とし,これに続けて普通名称である「司法書士法人」を接続した名称(役務商標)で司法書士業務を営む原告法人との関係で,役務の出所の誤認混同を来すものであることは明らかである。 したがって,本件商標と被告各標章とは,それぞれ類似する。 イ本件商標権の侵害(争点1-2)(ア) 本件役務を含む司法書士業務 で,役務の出所の誤認混同を来すものであることは明らかである。 したがって,本件商標と被告各標章とは,それぞれ類似する。 イ本件商標権の侵害(争点1-2)(ア) 本件役務を含む司法書士業務は,本件商標の指定役務と同一である。 被告法人は,原告A1の許諾を得ずに,本件役務を含む司法書士業務の提供に当たり,本件商標と類似する被告標章1ないし4を使用してい - 10 -るから,被告法人の上記使用行為は,原告A1の本件商標権を侵害するものである。 (イ) 被告B1は,被告法人の代表者であるというにとどまらず,被告法人の創設者であり,実質的に被告法人を経営支配している立場にある。 そして,被告法人のウェブサイトや被告B1の著書等において見受けられるとおり,被告法人の業務活動は被告B1の業務活動でもあり,その関係は截然と切り離すことができない状況にあるから,まさに被告法人の活動実態は被告B1の個人事業と実質同一の事業と評価できる。 したがって,被告標章1ないし4は,被告法人の役務商標として使用されていると同時に,被告B1の司法書士業務の役務商標としても使用されているといえるから,被告B1も,原告A1の本件商標権を侵害するものである。 ウ独占的通常使用権の侵害(争点1-3)(ア) 原告A1は,平成18年7月7日,原告法人に対し,本件商標権について,役務を登記又は供託に関する手続の代理,訴訟事件その他に関する法律事務,地域を日本国全域の範囲で,無償で,通常使用権を独占的に許諾した(甲10)。これにより原告法人は,本件商標権についての独占的通常使用権(以下「本件独占的通常使用権」という。)を取得した。 (イ) 被告B1は,平成17年9月27日,「ひかり法務司法書士事務所」の名称で司法書士事務所を開業し,同日以降,被告法 ての独占的通常使用権(以下「本件独占的通常使用権」という。)を取得した。 (イ) 被告B1は,平成17年9月27日,「ひかり法務司法書士事務所」の名称で司法書士事務所を開業し,同日以降,被告法人の設立日の前日である平成20年6月30日までの間,本件役務を含む司法書士業務の提供に当たり被告標章4及び5を使用した。 前記アのとおり,被告標章4及び5は本件商標と類似するものであるから,被告B1の上記使用行為は,原告法人の本件独占的通常使用権を侵害するものである。 - 11 -(ウ) 前記争いのない事実等(3)イのとおり,被告法人は,平成20年7月1日以降,本件役務を含む司法書士業務の提供に当たり被告標章1ないし4を使用した。 前記アのとおり,被告標章1ないし4は本件商標と類似するものであるから,被告法人の上記使用行為は,原告法人の本件独占的通常使用権を侵害するものである。 (2) 被告らの主張ア本件商標と被告各標章との類似性の主張に対し(争点1-1)(ア) 商標の類否判断においては,「その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべき」であり,商標の構成部分の一部を抽出して,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者・需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合を除き,許されない。 しかるところ,被告各標章において「ひかり」の文字部分は要部であるとはいえない。「ひかり」という文言それ自体は,普通名詞であり,古くは「たばこ」から,「新幹線」さらにはインターネットに至るまで,多くの商品や役務を指し示す言葉として使用されてきた。 本 であるとはいえない。「ひかり」という文言それ自体は,普通名詞であり,古くは「たばこ」から,「新幹線」さらにはインターネットに至るまで,多くの商品や役務を指し示す言葉として使用されてきた。 本件商標の指定役務中の「訴訟事件その他に関する法律事務」のみに限定しても,「ひかり法律事務所」,「ひかり司法書士事務所」,「ひかり総合法律事務所」等の「ひかり」の名称を使用した事務所名が日本全国に数多く存在し(乙4の1ないし7,30の1ないし9),現在では慣用名称になりつつある。 このように「ひかり」の文言が特に出所表示機能,品質保証機能及び広告宣伝機能を有してきたとはいえないし,その文言だけで,需要者が - 12 -何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができたとも考えられない。本件商標の指定役務中の「訴訟事件その他に関する法律事務」の分野においては,そもそも「ひかり」の語の識別力自体が極めて薄弱であり,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものでもない。 一方で,平成15年に司法書士に簡裁の訴訟代理権が授与されたのを受け,法務大臣の認定を受けて簡裁訴訟代理等関係業務及び債務整理を行う司法書士は,一部競合関係が生じる弁護士の法律事務所との誤認を避けるために,「法務」,「法務事務所」の名称を使用していることが多く,「法務」は,司法書士業務一般の役務の内容を示すものではなく,司法書士業務のうち,簡裁訴訟代理等関係業務及び債務整理といった特定の役務の内容を識別する機能を有している。 以上のとおり,「ひかり」の識別力は極めて薄弱であり,また,「法務」は,特定の役務の内容を識別する機能を有しているといえるから,被告各標章においては,「ひかり」は要部とはいえず,「ひかり法務」あるいは「ひかり法務事務所」全体として考察 て薄弱であり,また,「法務」は,特定の役務の内容を識別する機能を有しているといえるから,被告各標章においては,「ひかり」は要部とはいえず,「ひかり法務」あるいは「ひかり法務事務所」全体として考察をする必要がある。 (イ) 本件商標と被告各標章とは,以下のとおり,外観,観念及び称呼のいずれの点においても類似するものとはいえない。 a 「ひかり法務事務所」(被告標章1)との類否(a) 外観本件商標が平仮名表記で「ひかり」と書してなるのに対して,被告標章は左横書き一連に「ひかり法務事務所」と書してなる標章である。外観においては,被告標章1が漢字表記の「法務事務所」の文字を有する点,本件商標の構成文字数が3文字であるのに対して,被告標章1の構成文字数は8文字である点で,本件商標と被告標章1は顕著に相違する。 - 13 -(b) 観念本件商標の「ひかり」に関しては,「光ること,光るもの,目に感ずる明るさ」程の意味合いを想起させる。一方,被告標章1の「ひかり法務事務所」に関しては,既成語として一般の国語辞書に存在せず,また,「法務事務所」の文字からは,法務の「司法または広く法律関係の事務」という語義(乙28)を考慮すると,漠然と「法律関係を行っている事務所」程の意味合いは想起させるものの,取引者・需要者層においては特定の観念を生じさせない一種の造語と認識され,観念上も本件商標と被告標章1は顕著に相違する。 この点に関し,原告らは,被告標章1のうち「法務事務所」の部分は司法書士事務所であることを示す普通名称(あるいは慣用名称)に該当し,被告標章の要部は「ひかり」の部分である旨主張する。 しかし,普通名称に該当するためには「取引界において,その商品又は役務の一般的な名称であると意識されるに至ったもの」であることが )に該当し,被告標章の要部は「ひかり」の部分である旨主張する。 しかし,普通名称に該当するためには「取引界において,その商品又は役務の一般的な名称であると意識されるに至ったもの」であることが必要であり,慣用名称に該当するためには「同種類の商品又は役務に関して同業者間に普通に使われるに至った結果,自他商品又は役務の識別力を失ったもの」であることが必要である。 しかるところ,「法務事務所」の文字に関しては,インターネットで検索すると,司法書士事務所の名称のみならず,行政書士の業務を行う事務所名や社会保険労務士事務所の名称においても数多く採用されていること(乙29)を考慮すると,「法務事務所」の文字は,司法書士事務所を想起させる場合があるとしても,他士業の事務所名称としても数多く採用されていることから,司法書士事務所を直接かつ一義的には想起させず,特定の司法書士の業務を意味する普通名称や慣用名称に該当しない。 - 14 -したがって,原告らの上記主張は失当である。 (c) 称呼本件商標からは「ヒカリ」の自然的な称呼が生ずる。一方,被告標章1に関しては,平仮名と漢字表記で文字種は異なるものの,同じ文字サイズ,同じフォント,同じ色彩,文字間隔も等間隔で書されており,外観上の一体性を有していること,一連で称呼した際の音数も9音と格別冗長でないこと等を考慮すると,「ヒカリホウムジムショ」という一連の称呼のみが生じるのであるから,称呼上も本件商標と被告標章1は非類似である。 b 「ひかり法務」(被告標章2及び3)との類否(a) 外観本件商標が平仮名表記で「ひかり」と書してなるのに対し,被告標章2及び3は左横書き一連に「ひかり法務」と書してなる標章である。外観においては,被告標章2及び3が漢字表記の「法務」の文字 外観本件商標が平仮名表記で「ひかり」と書してなるのに対し,被告標章2及び3は左横書き一連に「ひかり法務」と書してなる標章である。外観においては,被告標章2及び3が漢字表記の「法務」の文字を有する点,本件商標の構成文字数が3文字であるのに対して,被告標章2及び3の構成文字数は5文字である点で,本件商標と被告標章2及び3は顕著に相違する。 (b) 観念前記a(b)のとおり,本件商標の「ひかり」に関しては,「光ること,光るもの,目に感ずる明るさ」程の意味合いを想起させる。 一方,被告標章2及び3の「ひかり法務」に関しては,既成語として一般の国語辞書に存在しない。また「法務」の文字は,「司法または広く法律関係の事務」等を意味する既成語ではあるものの,「何らかの法律関係の事務」を行っていることを漠然と想起させるものにすぎず,司法書士事務所を直接かつ一義的には想起させるものではなく,特定の司法書士の業務を意味する普通名称や慣用 - 15 -名称に該当しない。したがって,被告標章2及び3は,取引者・需要者層においては特定の観念を生じさせない一種の造語と認識され,観念上も本件商標と被告標章2及び3は顕著に相違する。 (c) 称呼前記a(c)のとおり,本件商標からは「ヒカリ」の自然的な称呼が生ずる。一方,被告標章2及び3に関しては,,平仮名と漢字表記で文字種は異なるものの,同じ文字サイズ,同じフォント,同じ色彩,文字間隔も等間隔で書されており,外観上の一体性を有していること,一連で称呼した際の音数も6音と冗長でないこと等を考慮すると,「ヒカリホウム」という一連の称呼のみが生じるのであるから,称呼上も本件商標と被告標章2及び3は非類似である。 (ウ) 被告B1は,平成17年9月に,法務大臣の認定を受けて認定司法書士とな すると,「ヒカリホウム」という一連の称呼のみが生じるのであるから,称呼上も本件商標と被告標章2及び3は非類似である。 (ウ) 被告B1は,平成17年9月に,法務大臣の認定を受けて認定司法書士となり,簡裁訴訟代理等関係業務及び債務整理を行うこととし,「ひかり法務司法書士事務所」の名称で司法書士事務所を開設し,以後,債務整理業務を継続してきた。その後,平成20年7月に,被告B1の「ひかり法務司法書士事務所」を法人化して被告法人が設立され,被告法人は,同事務所の業務の一切を承継した。 被告らは,関東及び甲信越地方で集中的な宣伝活動を展開し,主として関東甲信越地域の顧客から,債務整理業務(140万円以内の不当利得返還請求訴訟も含む。)のみの依頼を受け,その事務を遂行してきた。 被告らの活動地域をみると,平成19年9月から平成21年8月まで約3000件の依頼事件のうち,近畿地方の依頼者は,大阪府3名,奈良県1名,兵庫県3名で,京都府,滋賀県は1人もおらず(乙44),また,平成21年8月から平成22年12月まで約860件の依頼事件のうち,近畿地方の依頼者は,京都府9名,大阪府47名,奈良県6名,兵庫県17名,和歌山県3名,滋賀県3名にとどまっている(乙45)。 - 16 -一方,原告法人は,地域的には,京都を中心に,業務内容としては,債務整理ではない登記を中心とする一般の司法書士としての事務を行っていたものであり,業務内容及び活動地域の相違は明瞭である。 しかも,司法書士の業務においては,司法書士は依頼者と面談することを原則としており,一般の商品の場合とは異なり,役務の提供に至るまでに,ほとんどの場合,需要者は司法書士の事務所に赴き,司法書士と面談し,その司法書士に対する信頼に基づき依頼関係に入り,役務の提供を受けることになる。 般の商品の場合とは異なり,役務の提供に至るまでに,ほとんどの場合,需要者は司法書士の事務所に赴き,司法書士と面談し,その司法書士に対する信頼に基づき依頼関係に入り,役務の提供を受けることになる。その過程で需要者は,司法書士がどのような人物で,どのような役務をどのように提供してくれるのか,十分な注意を払い,司法書士が信頼に足る人物であることを確認したうえで依頼関係に入り,役務の提供を受けることになるのであり,業務の内容の相違及び業務を行う地域の相違は明瞭に認識し得るのであって,需要者において,役務の出所を誤認混同するおそれは全くないものと思料される。 ちなみに,これまで被告法人を原告法人と誤認してアクセスをしてきた例は一件もなく,需要者が,役務の出所において,原告法人と被告法人を誤認混同する余地は,少なくともこれまでは皆無であった。 結局,本件商標及び被告各標章は外観,称呼及び観念のいずれの点においても非類似であること,原告法人と被告らの業務内容及び活動地域の相違,需要者が依頼に至る経過等の取引の実情を総合し,全体として考察すれば,本件商標と被告各標章において,本件役務についての出所の誤認混同の余地は皆無である。 したがって,被告各標章は,本件商標と類似していない。 イ本件商標権の侵害の主張に対し(争点1-2)前記アのとおり,本件商標と被告標章1ないし4は類似していないから,被告らによる被告標章1ないし4の使用が本件商標権侵害を構成するとの原告A1の主張は,理由がない。 - 17 -ウ独占的通常使用権の侵害の主張に対し(争点1-3)(ア) 原告法人が本件独占的通常使用権を取得したとの事実は不知。 また,被告B1が本件役務を含む司法書士業務の提供に当たり被告標章5を使用したとの事実は否認する。 (イ) し(争点1-3)(ア) 原告法人が本件独占的通常使用権を取得したとの事実は不知。 また,被告B1が本件役務を含む司法書士業務の提供に当たり被告標章5を使用したとの事実は否認する。 (イ) 前記アのとおり,本件商標と被告標章1ないし4は類似していないから,被告らによる被告標章1ないし4の使用が本件独占的通常使用権侵害を構成するとの原告法人の主張は,理由がない。 2 争点2(商標法26条1項1号該当性)について(1) 被告らの主張被告標章4の「ひかり法務司法書士事務所」に関しては,本件商標の登録出願前の平成17年9月15日に,被告B1が,東京司法書士会に「事務所名称の使用に関する届出書」により事務所名称の届出をし,その使用が認められた名称である。 また,被告標章4は,その使用態様を考慮しても特殊な書体を使用した表記ではなく,普通に用いられる方法で表示する標章に該当する。 このように被告B1及び「ひかり法務司法書士事務所」を法人化した被告法人は,日本司法書士連合会に認められた自己の名称を単に使用していたものであり,「不正競争の目的」で被告標章4を使用していたものでもない。 したがって,被告標章4は,被告らが自己の名称を普通に用いられる方法で表示するものといえるから,商標法26条1項1号により,本件商標権の効力は被告標章4に及ばない。 (2) 原告らの主張被告らの主張は争う。 3 争点3(権利行使制限の抗弁の成否)について(1) 被告らの主張本件商標の商標登録には,以下のとおりの無効理由があり,商標登録 - 18 -無効審判により無効とされるべきものであるから,商標法39条において準用する特許法104条の3第1項の規定により,原告A1は,被告らに対し,本件商標権を行使することができない。また,原告 18 -無効審判により無効とされるべきものであるから,商標法39条において準用する特許法104条の3第1項の規定により,原告A1は,被告らに対し,本件商標権を行使することができない。また,原告法人も,これと同様に,被告らに対し,本件独占的通常使用権侵害の主張をすることはできない。 ア無効理由1(商標法3条1項柱書き違反)(ア) 商標法3条1項柱書きは,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」については,商標登録を受けることができると定めている。この規定の趣旨は,商標の登録は,「自己の業務」に係る商品又は役務について使用するために登録するものであり,当初から自ら使用せず,他人に使用させる意思のものは排除するというものである。 それゆえ,現に自己の業務に係る商品又は役務に使用している商標か,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標でなければ,商標登録を受けることはできないというべきである。 この使用意思は,単にその意思が表明されているということだけでは不十分であり,将来自ら使用する蓋然性のあることが必要であると解すべきである。 そして,一定の役務を行う主体に法律に基づく一定の資格が求められているときは,資格の主体と役務との間には対応関係が必須とされているのであり,商標登録に当たって,その資格がなく,その資格を取得する予定もない者には,自ら使用する意思も,将来自ら使用する蓋然性も認められないというべきである。 商標法3条1項柱書きについての具体的な運用を定めた商標審査基準(乙23)は,「1.「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をしないことが明らかであるときは,原則として,第3条第1項柱書により登録を受けることができる商標に該当しないものとする。」と - 19 -し 「1.「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をしないことが明らかであるときは,原則として,第3条第1項柱書により登録を受けることができる商標に該当しないものとする。」と - 19 -し,「(例)②」として「指定商品又は指定役務に係る業務を行うことができる者が法令上制限されているため,出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合」を挙げている。 しかるところ,本件商標の指定役務のうち,「訴訟事件その他に関する法律事務」の役務に関しては,弁護士法72条により,役務を提供できる者が弁護士又は弁護士法人に限定され,「登記又は供託に関する手続の代理」の役務に関しては,司法書士法73条,3条1項1号により,役務を提供できる者が司法書士又は司法書士法人に限定されているところ,原告A1においては,本件商標の登録出願時及び査定時において弁護士及び司法書士の国家資格を有しておらず,現在も有していないことからすると,少なくとも本件商標の指定役務中の「訴訟事件その他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理」については,上記審査基準の「(例)②」に該当し,本件商標を自ら使用する意思も,将来自ら使用する蓋然性も認められず,もともと他人に使用させる意思の下に本件商標の商標登録を受けようとしたものであるから,原告A1における本件商標の商標登録は,上記指定役務との関係では,商標法3条1項柱書きに違反するというべきである。 そもそも原告A1のように国家資格がなく自己の業務として本来司法書士業務を行うことができない者が,その役務に関する商標について権利を主張し,これを他人に使用させることによって何らかの利益を得ることを認めることになれば,訴訟事件その他に関する法律事務及び登記事務という特定の役務を提供する主体に国家資格を 関する商標について権利を主張し,これを他人に使用させることによって何らかの利益を得ることを認めることになれば,訴訟事件その他に関する法律事務及び登記事務という特定の役務を提供する主体に国家資格を要求している弁護士法及び司法書士法の趣旨を侵すものというべきであり,到底認められるべきではない。 (イ)a これに対し原告らは,後記のとおり,商標を自由に譲渡でき,自由に使用許諾できる法制の下では,商標法3条1項柱書きは,一般的 - 20 -・抽象的に現在及び将来においても,およそ自己が使用し,あるいは他者をして使用せしめることがありえないことが査定時において客観的に明らかな場合についてまで登録を認めることは適当ではないという趣旨にとどまる旨主張するが,少なくとも,審査の段階では自己の業務に係る商品又は役務に使用している商標か,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標であることが前提とされており,原告ら主張のように考えると,審査の意義が失われることになり,また,自由に商標を譲渡,使用許諾できるというのは,商標として有効に登録された後の問題であるから,原告らの主張は失当である。 b また,原告らは,後記のとおり,専門家集団である「ひかりアドバイザーグループ」の主宰者である原告A1が有資格者である原告法人に対して本件商標を使用許諾し,原告法人がこれを使用することは,自己が代表取締役となっている会社の業務に係る役務について商標を使用する目的をもって登録出願した場合と同様であるし,無資格者による業務遂行でもなければ,有資格者から不当に利益を得ることでもない旨主張する。 しかし,原告らが専門家と称するものの中にも国家資格に関するものもあれば,そうではないものもあってその限界は明瞭ではないし,仮に国家資格に関する 者から不当に利益を得ることでもない旨主張する。 しかし,原告らが専門家と称するものの中にも国家資格に関するものもあれば,そうではないものもあってその限界は明瞭ではないし,仮に国家資格に関するものに限るとしても,その資格はそれぞれの法律の趣旨に基づき付与されるものであって,当然にそれぞれの専門的知識に関して「対等」であるとはいえないし,もとより他の資格に関する業務を自由に行うことが許されるものでもない。一定の資格があれば,当然に他の資格に関する特別の権利を持つとすることには明らかに論理の飛躍がある。 また,「ひかりアドバイザーグループ」は,法人ではないし,法人 - 21 -格なき社団の要件も備えておらず,単なる連携関係の域を出ないものと思料される。原告A1が主宰者であるといっても,その権限が及ぶ範囲も明瞭でない。会社代表者個人とその指揮命令関係に服する会社との関係を,委任関係を基本として独立した判断に基づき役務を行う弁護士ないし司法書士との関係になぞらえることにも無理がある。しかも,個人と会社の関係の場合は,指定役務を個人と会社のいずれもが行うことができ,その立場に代替性があることが前提となるが,本件では,原告A1自身は本件商標の指定役務中の「訴訟事件その他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理」を行う資格がないから,自らその役務を行う蓋然性はないといわざるを得ない。 さらに,本件商標の登録出願時においては,「ひかりアドバイザーグループ」が結成されておらず,原告法人も設立すらされていないのであるから,原告A1が本件商標を「自己の業務に係る役務について使用する蓋然性」を論ずる前提すらはなはだ脆弱なものであったといわざるを得ない。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 (ウ) 以上によれば,本件商標 商標を「自己の業務に係る役務について使用する蓋然性」を論ずる前提すらはなはだ脆弱なものであったといわざるを得ない。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 (ウ) 以上によれば,本件商標の指定役務中の「訴訟事件その他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理」との関係では,本件商標は原告A1の自己の業務に係る役務について使用するものではないから,本件商標の商標登録には,商標法3条1項柱書きに違反する無効理由(同法46条1項1号)がある。 イ無効理由2(商標法3条1項6号違反)前記1(2)ア(ア)のとおり,「ひかり」は,多くの者が長年にわたり広範な業種にわたる商品や役務を指し示す標章として使用してきたものであり,「ひかり」の文言が特に出所表示機能,品質保証機能及び広告宣伝機能を有してきたとはいえないし,その文言だけで,需要者が何人かの業 - 22 -務に係る商品又は役務であることを認識することができたとも考えられない。 また,「ひかり」という文言自体にはそもそも何らの独創性もないし,原告らが「ひかり」という文言を自己の業務に関する役務について長年にわたって使用し,その結果,需要者が原告らの業務に係る役務であることを認識することができる状態にあったということもない。 このように「ひかり」から成る本件商標は,「需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標」に該当するから,本件商標の商標登録には,商標法3条1項6号に違反する無効理由(同法46条1項1号)がある。 (2) 原告らの主張ア無効理由1に対し(ア) 現行商標法は,商標権を自由に譲渡でき,あるいは自由に使用許諾できる法制であることに鑑みれば,商標法3条1項柱書きは,厳格な意味で出願人自らが直接その指定役務の提供(あ 無効理由1に対し(ア) 現行商標法は,商標権を自由に譲渡でき,あるいは自由に使用許諾できる法制であることに鑑みれば,商標法3条1項柱書きは,厳格な意味で出願人自らが直接その指定役務の提供(あるいは指定商品の製造販売等)をしなければならないとする規定ではなく,一般的・抽象的に現在及び将来においても,およそ自己が使用し,あるいは他者をして使用せしめることがあり得ないことが査定時において客観的に明らかな場合についてまで登録を認めることは適当ではないという趣旨にとどまるものである。特定業務に関する国家資格制度と商標登録制度とは,その法律(規制)目的を全く異にするのであるから,法論理的に現時点において原告A1が司法書士資格や弁護士資格を有していないことが商標法3条1項柱書き違反を構成するものでもない。 (イ) 原告A1は,ワンストップサービスを志向する専門家集団(士業グループ)である「ひかりアドバイザーグループ」の発起人,主宰者の地位にあり,その地位は,組織とその代表者という点において,あたかも - 23 -会社とその代表者に比肩し得るものである。そして,原告A1が本件商標の商標登録を得て,これを正当に自己が発起人,主宰者の地位にある「ひかりアドバイザーグループ」に属する司法書士法人である原告法人に対して使用許諾し,現に原告法人が使用していることは,無資格者による業務遂行でもなければ,有資格者から不当に利益を得るということでもないことからすると,原告A1は,自己の業務に係る役務について使用するものとして本件商標の商標登録を得たと評価し得るものといえる。商標登録出願に際して,業務記載は願書記載事項ではなく,自然人において,士業等の国家資格の有無が審査されるという審査実務でもないから,本件のように,グループを構成する士業法人が正当に ものといえる。商標登録出願に際して,業務記載は願書記載事項ではなく,自然人において,士業等の国家資格の有無が審査されるという審査実務でもないから,本件のように,グループを構成する士業法人が正当に商標を使用している場合についてまで,商標法3条1項柱書きを根拠に商標登録を排除すべき必要性は存在しない。かえって,近年の大企業における知財部門の分社化(会社分割により,グループ企業の知財管理を一元的に行う独立の法人の設立)傾向が見受けられるところ,かかる場合にはグループ内の知財管理会社が商標登録出願を行って登録を得て,これをグループに所属する別の事業会社にライセンスして使用させる場合が少なからず存在する状況にあり,このような社会状況において,仮に商標登録出願人自身(法人格として同一)において使用する意思がない場合のすべてを商標法3条1項柱書き違反であるという解釈論を採ると,かかる知財管理会社において登録を受けた商標権はすべて無効理由が存するという帰結とならざるを得ないが,その影響はあまりにも甚大であり,また,多様な企業の組織形態が許容され,かつその中での知財の保護・活用が叫ばれている昨今の状況に鑑みれば,このような解釈は不当である。 (ウ) 以上によれば,被告ら主張の無効理由1は理由がない。 イ無効理由2に対し - 24 -被告らは,「ひかり」が識別力のない普通名称であるというが,被告ら独自の見解である。本件商標の指定役務との関係において,「ひかり」の語が識別力のある文字標章であることは明らかである。被告らは,「ひかり」をその構成要素に含む法律事務所等が数件存在する旨指摘するが,そのことと識別力の有無とは無関係である。 したがって,本件商標は,商標法3条1項6号の商標に該当せず,被告ら主張の無効理由2は理由がない。 素に含む法律事務所等が数件存在する旨指摘するが,そのことと識別力の有無とは無関係である。 したがって,本件商標は,商標法3条1項6号の商標に該当せず,被告ら主張の無効理由2は理由がない。 4 争点4(被告らの先使用権の成否)について(1) 被告らの主張ア被告B1は,平成17年9月に,認定司法書士となったことを機に,「ひかり法務司法書士事務所」の名称で簡裁訴訟代理等関係業務及び債務整理を行うこととし,東京,神奈川,埼玉,千葉,茨城など関東の各都県の電車広告等で集中的な宣伝を行った。例えば,平成17年9月29日から小田急線,東急田園都市線,多摩モノレールなどの電車広告を開始し,同年10月3日から,羽村市,青梅市,西多摩市,あきるの市,福生市,八王子市,立川市,昭島市,国分寺市,国立市,日野市,多摩市,稲城市,町田市,府中市,小金井市,狛江市などで朝日新聞,読売新聞,毎日新聞,産経新聞,東京新聞に計72万枚の折込チラシ広告を実施し,さらに,同月14日には,三鷹市,調布市,府中市,国立市,立川市,日野市,多摩市,稲城市,町田市,八王子市,武蔵野市,昭島市,座間市,藤沢市で,ファミリー新聞に約10万枚の折込チラシ広告を実施し,同年11月1日以降も,上記の地域にさらに中野区,杉並区,秦野市,厚木市,伊勢原市,高座郡,海老名市,座間市,綾瀬市,大和市,藤沢市に加え,朝日新聞,読売新聞,毎日新聞,産経新聞,東京新聞に計83万枚の折込チラシ広告を実施し,同月11日以降,上記の地域にさらに川崎市も加え,ファミリー新聞に10万枚以上の折込チラシ広告を実施し,さらに「レオパレス・ - 25 -シーク」等の雑誌にも広告を掲出した。 被告B1が平成17年9月から同年11月までに広告に投じた費用は,1400万円を超えている。 これにより を実施し,さらに「レオパレス・ - 25 -シーク」等の雑誌にも広告を掲出した。 被告B1が平成17年9月から同年11月までに広告に投じた費用は,1400万円を超えている。 これにより宣伝開始直後から,毎月50件から100件を優に超える債務整理案件の相談が寄せられ,「ひかり法務司法書士事務所」の名称は債務整理を専門に扱う司法書士事務所として関東各県で一気に知れ渡った。 この時点では,原告ら主張の「ひかりアドバイザーグループ」は結成されておらず,原告法人すら設立されていなかった。 このように,原告A1が本件商標の登録出願をする前から,被告B1は日本国内において,不正競争の目的ではなく,「ひかり法務司法書士事務所」の標章(被告標章4)を使用していた結果,平成17年11月17日の本件商標の登録出願の際には,被告標章4が被告B1の営業に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。 イ以上によれば,被告B1及びその業務を承継した被告法人は,商標法32条1項に基づき,「ひかり法務司法書士事務所」の標章(被告標章4)を継続して使用する権利(先使用権)を有するというべきである。 (2) 原告らの主張被告らの主張は争う。 5 争点5(権利濫用の成否)について(1) 被告らの主張被告B1及び被告法人は,「ひかり法務司法書士事務所」の名称を原告法人の設立前から長期にわたり使用し,かつ,司法書士法及び司法書士会連合会会則にのっとって,事務所に名称を付し,被告標章1ないし4を使用してきたものであって,もとより本件商標の商標登録の事実は,ひかりアドバイザーグループ作成名義の平成21年9月18日付け通知書(乙6)を受領するころまで全く知らなかったものである。 - 26 -一方,前記通知以降の原告らの対応は, 標登録の事実は,ひかりアドバイザーグループ作成名義の平成21年9月18日付け通知書(乙6)を受領するころまで全く知らなかったものである。 - 26 -一方,前記通知以降の原告らの対応は,はなはだ一方的で強引なものであった。 被告法人が,平成21年10月1日付け回答書(乙7)において,ひかりアドバイザーグループと誤認混同のおそれがないことを指摘しながらも,業務を縮小中で,現に,雑誌広告,折り込み広告の掲載を順次終了ないし中止していたところであったため,「司法書士法人B1ひかり法務事務所」と変更する意向も提案したが,ひかりアドバイザーグループ側は,業種を異にするひかり税理士法人を既に東京に開設していることを理由に混同の可能性は高いと強弁し(同年10月7日付け通知書),「ひかり」の文言の使用を早急に全面的に停止するよう求めたのである。 そのうえ,今日に至っても,以上の経過を無視したうえで,ひかり税理士法人はそのホームページにおいて,被告らから「喧嘩を売られた」などと述べて被告らを一方的に攻撃し,誤った情報を広く提供して被告らの名誉と信用を毀損し続けている。 「ひかり」の商標(本件商標)を自らの努力で形成したわけでもない原告らが,唯一他に先んじて商標登録をしたというだけで,傍若無人の振る舞いを続けているのであって,原告らの被告らに対する本件請求は,権利の濫用に当たり,許されない。 (2) 原告らの主張被告らの主張は争う。 6 争点6(原告法人における損害の発生及びその額)について(1) 原告法人の主張被告らによる原告法人の本件独占的通常使用権の侵害行為については,商標法39条が準用する特許法103条の類推適用により,過失があったものと推定される。 したがって,被告らは,原告法人に対し,本件独占的通常使 原告法人の本件独占的通常使用権の侵害行為については,商標法39条が準用する特許法103条の類推適用により,過失があったものと推定される。 したがって,被告らは,原告法人に対し,本件独占的通常使用権侵害の不 - 27 -法行為に基づく損害賠償の義務を負う。 ア被告B1関係(ア) 逸失利益a 被告B1は,本件商標の商標公報が発行された後である平成18年8月1日から平成20年6月30日までの間,次のとおり,合計14億4704万2575円の司法書士業務に係る営業収入を得た。 (a) 平成18年8月1日から同年12月31日までの分2億1540万7780円(ただし,平成18年1月1日から同年12月31日までの1年間の営業収入5億1697万8674円の5か月分(5/12))(b) 平成19年1月1日から同年12月31日までの分8億2958万2314円(c) 平成20年1月1日から同年6月30日までの分4億0205万2481円b 被告B1が前記aの営業収入を得るために合理的に必要と認められる広告宣伝費は,せいぜい前記aの営業収入額(14億4704万2575円)の10%程度であり(甲19),限界利益額を算出するに際し,被告B1が支出した広告宣伝費全額を経費として控除することは不適切である。もとより過払金返還請求業務を行う法律事務所や司法書士事務所(法務事務所)の中には,多額の広告宣伝費を投入するところがあることは周知の事実であろうが,それは,ほんのごく一部の事務所であり,この種の業務を行う一般的な法律事務所や司法書士事務所の姿であるとはいえない。全国にこの種の業務を行う事務所は数多とあるが,その殆どがそのような多額の広告宣伝費を投入しているという事実はない。多額の広告宣伝費と売上額(営業収入額)の関連性 士事務所の姿であるとはいえない。全国にこの種の業務を行う事務所は数多とあるが,その殆どがそのような多額の広告宣伝費を投入しているという事実はない。多額の広告宣伝費と売上額(営業収入額)の関連性(広告効果,因果関係)も不透明であり,事実,被告ら自身も, - 28 -安易に長期契約をしたがゆえに,支払う意味のない広告宣伝費を支出し続けた旨を自認しており,その支出の過大さ・過剰さは明らかである。 そして,平成18年1月1日から同年12月31日までの1年間の営業収入(5億1697万8674円)に対する所得金額は1億8945万5965円であり,その利益率が36.6468%であることに鑑みても,被告B1の前記aの営業収入に対する限界利益率は50%を下らないというべきである。 そうすると,被告B1の前記aの営業収入により得た利益額(限界利益額)は,7億2352万1287円(14億4704万2575円×0.5)を下らない。 そして,商標法38条2項の類推適用により,被告B1が得た上記利益額が,原告法人の受けた損害額と推定される。原告法人は,上記損害額の内金として2000万円を請求する。 (イ) 弁護士費用被告B1による本件独占的通常使用権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用に相当する原告法人の損害額は,200万円を下らない。 イ被告法人関係(ア) 逸失利益a 被告法人は,平成20年7月1日から平成22年12月31日までの間,次のとおり,合計8億0815万8538円の司法書士業務に係る営業収入を得た。 (a) 平成20年7月1日から平成21年6月30日までの分4億2501万1506円(b) 平成21年7月1日から平成22年6月30日までの分 - 29 -2億5543万1355円(c) 平成 0年7月1日から平成21年6月30日までの分4億2501万1506円(b) 平成21年7月1日から平成22年6月30日までの分 - 29 -2億5543万1355円(c) 平成22年7月1日から同年12月31日までの分1億2771万5677円(ただし,平成22年7月1日から平成23年6月30日までの1年間の営業収入2億5543万1355円の6か月分(6/12))b 前記ア(ア)bで述べたのと同様の理由により,被告法人が前記aの営業収入を得るために合理的に必要と認められる広告宣伝費は,せいぜい前記aの営業収入額(8億0815万8538円)の10%程度であるというべきであり,被告法人の前記aの営業収入に対する限界利益率は50%を下らないというべきである。 そうすると,被告法人の前記aの営業収入により得た利益額(限界利益額)は,4億0407万9269円(8億0815万8538円×0.5)を下らない。 そして,商標法38条2項の類推適用により,被告法人が得た上記利益額が,原告法人の受けた損害額と推定される。原告法人は,上記損害額の内金として2500万円を請求する。 (イ) 弁護士費用被告法人による本件独占的通常使用権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用に相当する原告法人の損害額は,250万円を下らない。 ウ被告らの損害不発生の主張等に対し(ア) 被告らは,後記のとおり,本件商標に顧客吸引力がないことなどを理由に,被告らによる被告各標章の使用により原告法人において本件商標権につき得べかりし利益の喪失による損害が何ら発生していないか,あるいは,被告らが営業収入により得た利益に対する被告各標章の寄与度は限りなくゼロに近い旨主張する。 - 30 -しかし,本件商標を構成する「ひかり」の 失による損害が何ら発生していないか,あるいは,被告らが営業収入により得た利益に対する被告各標章の寄与度は限りなくゼロに近い旨主張する。 - 30 -しかし,本件商標を構成する「ひかり」の文字標章は,そもそも親しみがあって単純で覚えやすく,その本来の意味から,スピーディーかつ一直線に目標に到達するシャープなイメージ,そして将来に夢と希望が感じられるような前向きで明るいイメージを抱く単語であり,さらにその外観(平仮名表記)においては画数が少ない上に角がなく,全体に丸みを帯びたマイルドで温かな印象を想起させるものとなっている。多重債務を抱える者はもとより,司法書士事務所へ専門相談に行くことを志向する者は,多かれ少なかれ不安を抱いているものであるから,このような親しみのあるネーミングに惹かれて,あるいは被告各標章を付した広告宣伝が記憶や印象に残って,数ある事務所の中から被告らの事務所を選択した者も多いものと思料される。 また,被告B1は,平成17年に自らの事務所名を「ひかり法務司法書士事務所」に変更し,「ひかり法務」なる標章を使用し始めたものであるが,それも,結局のところ「B1司法書士事務所」などというような小規模・個人事務所を想像させがちな個人名をその要部とする事務所名(役務商標)よりも,「ひかり」という抽象名詞が持つ上記の洗練されたイメージ,あるいは事務所規模が大きく感じられることによってもたらされる顧客が抱く安心感といったものが,広く顧客吸引するのに好適であると判断し,事業展開上,得策であると考えたからに他ならない。 実際にも,被告らの広告宣伝活動により,それなりの顧客吸引の成果があがっているというのであるから,かかる成果も,「ひかり」を要部とする被告各標章の使用と相まって得られたものというべきである。 (イ 際にも,被告らの広告宣伝活動により,それなりの顧客吸引の成果があがっているというのであるから,かかる成果も,「ひかり」を要部とする被告各標章の使用と相まって得られたものというべきである。 (イ) 次に,本件商標は,原告法人における司法書士業務を始め,原告 - 31 -法人を構成事務所とする「ひかりアドバイザーグループ」における各種専門相談事業においても,実際に広く使用されている標章であるから,これに顧客吸引力がないなどとはいえない。 ひかりアドバイザーグループは,京都市にその中心的事務所が存在するが,滋賀県や群馬県や東京都にも事務所を有し,その活動エリアは関東にも及んでいる。ひかりアドバイザーグループの各構成事務所(士業法人)は,その顧客を相談内容に応じて適切にアドバイスや対応ができる他の構成事務所を紹介するシステムをとり,相互に緊密な連携が図られており,原告法人においても,関東方面に所在する他の構成事務所の付近に所在する顧客層からも個別相談等がされている。 他方,被告らは,全国のどこからでも閲覧可能なホームページ(甲6)の見やすい箇所に,「地方出張致します。」,「地方出張OK」などと,業務エリアが全国に及んでいることを執拗に記載・掲載して顧客吸引しているのであるから,原告法人と被告らとの活動地域は完全に重複している。このことは,被告らが近畿地域のクライアントが100名弱に上っていると主張していることからも明らかである。 もっとも,被告らの業務実態において,遠隔地に所在する相談者に対しては,地方への出張OKなどというホームページ上の顧客吸引文言とは裏腹に,自ら事件処理することなく,各地の法テラスへ相談に行くように仕向けることにより,結果的に,原告法人その他の事務所の相談者を奪取している。かかる顧客奪取によって原 ムページ上の顧客吸引文言とは裏腹に,自ら事件処理することなく,各地の法テラスへ相談に行くように仕向けることにより,結果的に,原告法人その他の事務所の相談者を奪取している。かかる顧客奪取によって原告法人が損害を被っていることは明らかである。 また,被告らは,自らの業務について,過払金返還請求業務に特化していると主張しているが(もっとも,甲8の新聞広告には,被告らの取 - 32 -り扱う業務として「その他の手続き/不動産登記・任意整理・自己破産・所有権保存登記・裁判手続き」と明記されているものであるから,このような被告らの主張は,措信できない。),原告法人においても,甲20のとおり,インターネットのホームページを用いて全国に向けて広告を行い,かつ,登記業務等のほかにも,「多重債務等の借金問題」も取り扱っていると宣伝しているのであるから,業務内容においても,被告らと原告法人とは完全に重複している。 (ウ) この点に関し,被告らは,後記のとおり,司法書士業務は,司法書士と依頼者とが個別面談をして依頼関係に入るのであって,被告各標章に誘引されて依頼に至るものではなく,また,依頼関係の形成において地域的制約もある旨指摘する。 しかし,最初に広告を見て,あるいは知人の紹介等で司法書士事務所を訪れる一般通常人(個人依頼者の多く,とりわけ過払金返還請求事案の依頼者)は,司法書士が通常の専門能力を有し,普通に対応できる者であれば,司法書士費用等に異存がなければ,その資格を信頼して委任するものであるから,最初にその事務所に相談者が足を運ぶかどうかが最も大切なことといえる。過払金返還請求業務は,貸付額と借り手側の弁済額とから所定の計算式によって算出されるものを,訴訟等の法的措置等を講ぜずに貸し手に対して返還請求するだけの作業であるのが通例 最も大切なことといえる。過払金返還請求業務は,貸付額と借り手側の弁済額とから所定の計算式によって算出されるものを,訴訟等の法的措置等を講ぜずに貸し手に対して返還請求するだけの作業であるのが通例であって,代理人の専門的能力により事件の解決手法や解決結果に差異が生じ得るようなものではないことは,周知の事実である。 また,被告らは,依頼関係の形成において地域的制約もある旨述べるが,実際に被告らは全国の顧客を獲得することができており,また,乙57の過払金返還請求事件に関する裁判管轄の解説記事に示すように,現実は,被告らのいうような「地域的制約」などはなく,逆に一部の事務所により広範に「過払い釣り」がされ,過払金返還請求業務がされて - 33 -いる。 かかる業務実態であるからこそ,被告らは多額の広告宣伝費を投じ,あるいは,全国に向けて顧客吸引しているものと思料される。 したがって,被告らの上記主張は,取引の実情を無視したものであり,広告宣伝活動を強調する自らの主張とも矛盾するものであって,失当である。 また,仮に被告らが述べるような活動の中心地の違いなどを殊更に過大に評価すると,役務商標権に全国的効力(禁止権)を認めた商標法の基本的構造や,相応の手間と費用とを投下して商標権を取得する実務的意義が問われなければならないこととなり,役務商標制度の信頼を損ねる結果を招来せしめることともなる。 (エ) 以上によれば,被告らの損害不発生の主張は理由がなく,また,被告らが営業収入により得た利益は,「ひかり」を要部とする被告各標章を使用することによってもたらされた部分が大であり,その寄与率は相当高いものと評価されるべきである。 エまとめ以上によれば,原告法人は,本件独占的通常使用権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,被告 ことによってもたらされた部分が大であり,その寄与率は相当高いものと評価されるべきである。 エまとめ以上によれば,原告法人は,本件独占的通常使用権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,被告B1に対し,2200万円(前記ア(ア)及び(イ)の合計額)及びこれに対する不法行為の後である平成20年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告法人に対し,2750万円(前記イ(ア)及び(イ)の合計額)及びこれに対する不法行為の後である平成23年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (2) 被告らの主張ア損害の不発生(ア) 原告法人の主張する「ひかりアドバイザーグループ」を構成する主 - 34 -たる法人の所在地はいずれも京都市内にあり(乙59ないし62),「ひかりアドバイザーグループ」とその構成組織の事業活動の範囲は,原告法人も含め,京都市ないし京都府を中心としたものであることは明らかであり,その範囲が,被告らが事業活動の範囲としてきた関東圏の都県に及ぶとは考えられない。 一方,被告の依頼者のほとんどは,関東甲信越在住の者であり,前記1(2)ア(ウ)のとおり,被告らの依頼者のうちで,原告法人の事務所所在地である京都府に在住する人は,平成19年9月から平成21年8月までの約3000件の依頼事件のうちには1人もなく,平成21年8月から平成22年12月までの約860件の依頼事件でみても9名にとどまる。つまり,京都府の依頼者は全体のわずか0.2%に止まるのである。さらに原告法人の事業活動のエリアを最大限拡げ,近畿地方と仮定してみても,上記期間を通じた近畿地方の依頼者は92件で全体の2.3%でしかない。 また,被告らは,大量かつ集中した広告 るのである。さらに原告法人の事業活動のエリアを最大限拡げ,近畿地方と仮定してみても,上記期間を通じた近畿地方の依頼者は92件で全体の2.3%でしかない。 また,被告らは,大量かつ集中した広告宣伝により,依頼者を得てきたのであるが,その広告宣伝の方法の軸は,東京近辺の電車・バス等の交通機関の車内広告と東京,神奈川,埼玉等の地域の新聞の折り込み広告であって,その域外に及ぶ広告宣伝の方法は,ごく一部の週刊誌など極めて限定されたものに止まる。このため,被告らの依頼者は必然的に,関東地域やせいぜいこれに隣接する甲信越地方に限られることになっている。 被告法人の時代となった後に,インターネットによる広告宣伝が比重を増し,車内広告や折り込み広告に依存していた時期に比べると,関東甲信越地方以外の依頼者も僅かながら増加したが,依頼関係の形成にあたって地域的な制約は大きく,近畿地方の依頼者は上記の程度である。 このように,事業活動の地域的範囲は,原告らと被告らとの間で,ほ - 35 -とんど重なり合うことがない。 (イ) 被告らの事業は,前記1(2)ア(ウ)のとおり,債務整理や過払金返還請求に特化している。交通機関の車内広告,新聞の折り込み広告,週刊誌等の広告宣伝が表現している事業内容も,債務整理や過払金返還請求であり,まさに,その需要のある者に対して働きかけをし,顧客を誘引してきた。 被告法人の時代となり,インターネットによる広告宣伝が比重を増し,関東地方以外の依頼者も僅かながら増加したが,そのインターネットの広告宣伝の内容が債務整理や過払金返還請求に限られていることに変わりはなく(甲6,7),その業務内容を重視して,被告らへの相談依頼に至るのである。さらにその後は,ネット上で「無料で『過払い計算機』を利用できる」ことで依頼者 過払金返還請求に限られていることに変わりはなく(甲6,7),その業務内容を重視して,被告らへの相談依頼に至るのである。さらにその後は,ネット上で「無料で『過払い計算機』を利用できる」ことで依頼者層の注意を引くといった勧誘方法が中心となっており(乙63),そこでは司法書士事務所の名称や標章に引かれて依頼関係に入ることなどおよそ考えることができない。 しかも,前記1(2)ア(ウ)のとおり,司法書士の場合,その業務の性格上,司法書士と依頼者の個別の面談をし,依頼相手である司法書士の業務内容はもとよりその人柄等も見極めて依頼関係に入るのである。 以上の依頼に至る過程を見ても,被告らの依頼者は,債務整理や過払金返還請求の必要があるがゆえに被告らにアクセスし,その人柄等も吟味のうえ依頼するに至ったもので,「ひかり」という標章に誘引されて依頼に至ったものではない。 一方,原告法人の事業内容を見ても,被告らの事業内容とは全く重なるところがない。 原告法人の平成18年2月の「ひかりアドバイザーグループ」への参加に際しての挨拶状には,「グループ傘下の税理士法人や社会保険労務士法人そしてコンサルティングファームとの連携を強化」することがう - 36 -たわれ(甲16の2),こうした動きを報道する同年3月の京都新聞の記事によると,「ひかりアドバイザーグループ」は,「企業経営などアドバイス」あるいは「企業経営や個人の資産運用など課題解決の『ワンストップサービス』を目指す」と紹介されている(甲17)。さらに,同年4月には「ひかりアドバイザーグループ」を結成したとし,発足記念講演会を開催しているが,その案内状では,グループ化の目的は「従来の税務会計周辺業務のみならず,経営指導業務や登記業務に至る幅広い分野において」「良きアドバイザーとなること を結成したとし,発足記念講演会を開催しているが,その案内状では,グループ化の目的は「従来の税務会計周辺業務のみならず,経営指導業務や登記業務に至る幅広い分野において」「良きアドバイザーとなること」であるとされ,発足記念講演会の演題も「わたしの経営論」(甲16の1)とされている。 これらから明らかなように,「ひかりアドバイザーグループ」やこれを構成する法人,個人がその依頼者として想定しているのは,企業経営者や資産を所有しその運用に関心をもつ個人であり,債務整理を必要とする多重債務者やその多重債務者から派生した過払金返還請求権者などではない。 したがって,事業内容だけではなく,顧客・依頼者の層が,原告法人と被告らとでは全く異なっている。 (ウ) 以上によれば,被告らと原告法人とでは,事業活動の範囲及び事業内容の点で大きく隔たっており,これを依頼者の立場から見れば,依頼者の地域性や需要の内容の点でそもそも大きな相違があることが明らかである。 債務整理や過払金返還請求のために司法書士を必要としていた多重債務者が,関東甲信越地方に住んでいながら,あえて原告法人に依頼をすることはもともと考え難いし,仮に京都府やその近県に住んでいたとしても,その多重債務者が,被告らが被告各標章を使用していたがために,被告らを原告法人と混同しこれに誘引されて被告らへの依頼に至ったということも考え難い。 - 37 -要するに,被告らによる被告各標章の使用により原告らが損害を受けるということはおよそ観念しがたいところであり,その間に相当因果関係を欠いている。 したがって,被告らによる被告各標章の使用により原告法人において本件独占的通常使用権につき得べかりし利益の喪失による損害は何ら発生していない。 イ被告らが受けた利益仮に百歩譲っ いる。 したがって,被告らによる被告各標章の使用により原告法人において本件独占的通常使用権につき得べかりし利益の喪失による損害は何ら発生していない。 イ被告らが受けた利益仮に百歩譲って,被告らによる被告各標章の使用により原告法人において損害の発生が認められる可能性があるとしても,商標法38条2項所定の被告らが受けた利益の算出に当たっては,少なくとも,広告宣伝費が除外されるべきである。 この点に関し,原告らは,被告らが営業収入を得るために合理的に必要と認められる広告宣伝費は,せいぜい営業収入額の10%程度であり(甲19),限界利益額を算出するに際し,被告B1が支出した広告宣伝費全額を経費として控除することは不適切である旨主張する。 しかし,被告らが業として行っている司法書士の業務は,甲19に記載されているような物の製造販売や,小売り,通信事業を行う企業とはその収支構造を著しく異にするものである。物の製造販売や,小売り,通信事業を行う者であれば,物を製造する際の多額の製造コスト(材料費,燃料費等)や流通コスト(仕入原価,販売手数料等)が発生し,全体の収益に対して変動費の占める割合は一定の割合を占めるものである。 それに対して,被告らが行ってきた業務に関しては,そもそも物の製造販売という概念が存在せず,物の製造に係る材料費,工場等の設備費等の多額の変動費を観念することができない特殊な業種である。 被告らの投じた広告宣伝費と売上げの関係については,巨額の広告宣伝費を投じたことにより,先の売上げをなし得たものであり,たとえて言え - 38 -ば,広告宣伝費がいわゆるメーカーにおける製造原価(あるいは仕入原価)に該当すると言っても過言ではなく,広告宣伝費の多寡が売上高の増減に直結しているといえる。 本件において え - 38 -ば,広告宣伝費がいわゆるメーカーにおける製造原価(あるいは仕入原価)に該当すると言っても過言ではなく,広告宣伝費の多寡が売上高の増減に直結しているといえる。 本件においても,被告らが多大な広告宣伝費を投じたことにより先の売上げを挙げることができたことは明白であることから,本件においても被告らの利益を算定するに当たり広告宣伝費全額が控除されるべきである。 そして,被告らの売上げ(営業収入)から広告宣伝費を控除した場合の利益額は,別紙被告ら主張の利益額のとおりである。 ウ寄与率本件独占的通常使用権の侵害行為により被告らが受けた利益の額を認定するに当たっては,被告らが受けた利益に対する本件商標の寄与率を考慮すべきであり,その寄与率は限りなくゼロに近い。 すなわち,商標権は,特許権,実用新案権,意匠権などの他の工業所有権とは異なり,何らかの創作的価値を製品自体に付与するものではなく,商標に化体された営業上の信用を意味するもので,商標それ自体に当然に商品価値が存在するのではなく,商品の出所たる企業等の営業上の信用等と結びつくことによって初めて一定の価値が生ずる性質を有する。したがって,一般に,商標権侵害においては,侵害者の利益が当該登録商標の顧客吸引力のみによって達成されていることはむしろまれであり,侵害者の商品自体の内容や侵害者の営業努力等の事情が相まって利益をあげているというのが通常である。 しかるところ,本件商標の「ひかり」は,それ自体に独創性や特異性に乏しく,むしろ被告B1が原告A1の出願に先行して使用し,営業上の信用を形成してきたほどである。そして,前記イのとおり被告らが顧客を吸引し,売上げを上げることが出来た理由は,その役務自体の内容(債務整理,過払金返還)や莫大な広告宣伝費の投入といっ 用し,営業上の信用を形成してきたほどである。そして,前記イのとおり被告らが顧客を吸引し,売上げを上げることが出来た理由は,その役務自体の内容(債務整理,過払金返還)や莫大な広告宣伝費の投入といった被告らの営業努力の - 39 -結果である。しかも,本件は専門性の高い役務の提供に関するものであり,自ずと依頼関係の形成において地域的制約もあることに鑑みれば,被告らが被告各標章を使用したがために利益を上げることができ,その結果原告法人が損害を被ったなどということはほとんど想定することができない。 さらに言えば,商品についての寄与率が検討される場合に代替品の有無が問題とされるのと同様に,本件のような役務の提供の場合にも類似標章を使用し競合関係に立つ他の者の存在も斟酌されるべきであるところ,「ひかり」を冠するあるいは名称の一部に含む法律事務所は多数存在し(特に,乙57の35頁の表の「ひかり法律事務所」の広告出稿金額は,被告法人をさらに上回る。),原告法人が被る損害はこれらの法律事務所等の侵害行為の結果とも解することができるのであるから,その分も差し引いて考える必要もある。 したがって,仮に被告各標章の使用による寄与があったとしても,限りなくゼロに近いというべきである。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件商標権及び本件独占的通常使用権の侵害の成否)について原告らは,被告らが平成20年7月1日以降被告標章1ないし4を本件役務について使用していること及び被告B1が平成18年8月1日から平成20年6月30日までの間被告標章4及び5を本件役務について使用していたことをもって,本件商標権又は本件独占的通常使用権(以下,これらを併せて「本件商標権等」という場合がある。)の侵害である旨を主張する。 このうち,被告法人が平成20年7月 役務について使用していたことをもって,本件商標権又は本件独占的通常使用権(以下,これらを併せて「本件商標権等」という場合がある。)の侵害である旨を主張する。 このうち,被告法人が平成20年7月1日以降被告標章1ないし4を本件役務について使用している事実及び被告B1が平成17年9月27日から平成20年6月30日までの間被告標章4を本件役務について使用していた事実が認められることは,前記争いのない事実等(3)のとおりであるが,他方で,被告B1が被告標章5を本件役務について使用していたとの事実は,これを認 - 40 -めるに足りる証拠がない。 そこで,以下では,被告標章1ないし4に限って,被告らによる本件役務についての使用が本件商標権等の侵害となるか否かにつき検討することとする。 (1) 争点1-1(本件商標と被告標章1ないし4との類似性)についてア被告標章1ないし4の要部原告らは,被告標章1ないし4における要部は,いずれも別紙被告標章目録1ないし4の各構成中の「ひかり」の文字部分であるとした上で,当該要部と本件商標とを対比し,本件商標と被告標章1ないし4が類似する旨主張するのに対し,被告らは,「ひかり」の文字部分が被告標章1ないし4の要部であることを否定し,被告標章1ないし4の構成部分全体と本件商標とを対比すれば,両者は類似しない旨主張する。 ところで,商標法37条1号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,称呼,観念等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ,その商標を使用した商品又は役務につき出所を誤認混同するおそれがあるか否かによって全体として類似するかどうかを考察すべきものであり,複数の構成部分を組み合わせ 又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ,その商標を使用した商品又は役務につき出所を誤認混同するおそれがあるか否かによって全体として類似するかどうかを考察すべきものであり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,その構成部分全体を対比して類否を判断するのを原則とすべきものであるが,取引の実際においては,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない商標は,必ずしも常にその構成部分全体によって称呼,観念されるとは限らず,その構成部分の一部だけによって称呼,観念され,一個の商標から二個以上の称呼,観念が生ずることがあることに照らすならば,結合商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の構成部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる - 41 -場合などには,当該構成部分の一部を要部として取り出し,これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものと解するのが相当である。 そこで,以下では,上記の観点から,被告標章1ないし4のうち「ひかり」の文字部分のみを要部として取り出して本件商標との対比を行うことにより商標そのものの類否を判断することの適否について検討する。 (ア) 被告標章1ないし4の各構成は,次のとおりである。 a 被告標章1は,別紙被告標章目録1のとおり,「ひかり」の平仮名と「法務事務所」の漢字が,いずれも赤色で同じ大きさの明朝体様の文字により,横一列に等間隔で連続して表記されている。 b 被告標章2は,別紙被告標章目録2のとおり,「ひかり」の平仮名と「法務」の漢字が,いずれもオレンジ色の縁取りと白抜きからなる同じ大きさのゴチ 字により,横一列に等間隔で連続して表記されている。 b 被告標章2は,別紙被告標章目録2のとおり,「ひかり」の平仮名と「法務」の漢字が,いずれもオレンジ色の縁取りと白抜きからなる同じ大きさのゴチック体様の文字により,横一列に等間隔で連続して表記されている。 c 被告標章3は,別紙被告標章目録3のとおり,「ひかり」の平仮名と「法務」の漢字が,いずれも黒色で同じ大きさのゴチック体様の文字により,横一列に等間隔で連続して表記されている。 d 被告標章4は,別紙被告標章目録4及び乙10ないし17(枝番を含む。)のとおり,「ひかり」の平仮名と「法務司法書士事務所」の漢字が,黒色で同じ大きさの明朝体様の文字(別紙被告標章目録4),青色の縁取りと白抜きからなる同じ大きさのゴチック体様の文字(乙10,12,16,17),緑色で同じ大きさのゴチック体様の文字に陰影をつけたもの(乙11の1,14の1,15の1)又は白色で同じ大きさの明朝体様の文字に陰影をつけたもの(乙13)により,いずれも横一列に等間隔で連続して表記されている。 e 以上のとおり,被告標章1ないし4は,いずれも「ひかり」の平仮 - 42 -名部分と「法務事務所」,「法務」又は「法務司法書士事務所」の漢字部分とが組み合わされて構成されているところ,これらの平仮名部分と漢字部分とは,それぞれ同一の色,大きさ及び書体の文字によって等間隔で連続して表記されてはいるものの,平仮名と漢字の相違から外観上容易に区別される上,観念的にも後記のとおり平仮名部分と漢字部分のそれぞれが別個の意味を有し,かつ,両者の観念の間に特段の結びつきがあるものでもないことからすると,これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。 (イ) 被告標章2及 つ,両者の観念の間に特段の結びつきがあるものでもないことからすると,これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。 (イ) 被告標章2及び3の「法務」の漢字部分は,「司法または広く法律関係の事務」(広辞苑第六版)を意味する一般的な用語であり,司法書士業務は法務に属する事務を取り扱う業務であるといえるから,被告標章2及び3が本件役務を含む司法書士業務の提供に関して使用された場合,これらの標章に接した需要者は,「法務」の漢字部分について,提供される役務の質(内容)を示す表記として認識するのが通常といえる。 また,被告標章1の「法務事務所」の漢字部分は,上記の意味を有する「法務」に,「事務を取り扱う所」(広辞苑第六版)を意味する一般的な用語である「事務所」を組み合わせたものであるから,被告標章1が本件役務を含む司法書士業務の提供に関して使用された場合,この標章に接した需要者は,「法務事務所」の漢字部分について,提供される役務の質(内容)又はその提供の場所を示す表記として認識するのが通常といえる。 さらに,被告標章4の「法務司法書士事務所」の漢字部分は,司法書士業を営む事務所であることを示す表記であることが明らかであるから,被告標章4が本件役務を含む司法書士業務の提供に関して使用され - 43 -た場合,この標章に接した需要者は,「法務司法書士事務所」の漢字部分について,提供される役務の質(内容)又はその提供の場所を示す表記として認識するのが通常といえる。 このように,被告標章1ないし4の各漢字部分は,いずれも需用者によって,提供される役務の質(内容)又はその提供の場所を表す表記部分として認識されるものにすぎないから,当該役務の出所を識別する標識としての機能を有す 標章1ないし4の各漢字部分は,いずれも需用者によって,提供される役務の質(内容)又はその提供の場所を表す表記部分として認識されるものにすぎないから,当該役務の出所を識別する標識としての機能を有する部分とはいえない。 (ウ) 他方,被告標章1ないし4の「ひかり」の平仮名部分は,「光ること」や「光るもの」(広辞苑第六版)などを意味する一般的な用語ではあるものの,本件役務を含む司法書士業務との関係で特段の結びつきがある用語であるものとはいえず,これが当該業務の提供に関して使用された場合,役務の出所を識別する標識としての機能を発揮し得る部分ということができる。 (エ) 以上のとおり,被告標章1ないし4は,それぞれ「ひかり」の平仮名部分と「法務事務所」,「法務」又は「法務司法書士事務所」の各漢字部分からなる結合商標であるところ,これらの各構成部分のうち,「法務事務所」等の漢字部分は,専ら提供される役務の質(内容)又はその提供の場所を表す表記部分として認識されるものであって,当該役務の出所を識別する標識としての機能は認められず,他方,「ひかり」の平仮名部分には,当該役務の出所を識別する標識としての機能が認められることからすると,被告標章1ないし4においては,「ひかり」の平仮名部分が,需要者に対して出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部に当たるものというべきであるから,当該平仮名部分のみを取り出し,これと本件商標とを比較することによって,商標の類否を判断することは許されることというべきである。 (オ) これに対し,被告らは,①「ひかり」という文言それ自体は,普通 - 44 -名詞であり,古くから多くの商品や役務を指し示す言葉として使用されてきたものである上,「訴訟事件その他に関する法律事務」の役務に関して「ひかり法律事務所」, う文言それ自体は,普通 - 44 -名詞であり,古くから多くの商品や役務を指し示す言葉として使用されてきたものである上,「訴訟事件その他に関する法律事務」の役務に関して「ひかり法律事務所」,「ひかり司法書士事務所」等の「ひかり」の名称を使用した事務所名が日本全国に数多く存在すること(乙4の1ないし7,30の1ないし9)からすれば,現在では慣用名称になりつつあり,「訴訟事件その他に関する法律事務」の分野における識別力が極めて薄弱であること,②「法務」は,司法書士業務一般の役務の内容を示すものではなく,司法書士業務のうち,簡裁訴訟代理等関係業務及び債務整理という特定の役務の内容を識別する機能を有していることによれば,被告標章1ないし4において「ひかり」の文字部分のみが要部であるとはいえない旨を主張する。 しかしながら,上記①の点については,「ひかり」という文言が普通名詞であり,古くから本件役務を含む司法書士業務以外の多くの商品や役務において使用されてきた事実があるとしても,そのことが直ちに,「ひかり」の文言が本件役務を含む司法書士業務に関して使用された場合にも当該文言部分に識別力がないとの結論に結びつくものとはいえない。また,被告らが提出する乙4の1ないし7,30の1ないし9によれば,「ひかり」の名称を事務所名に使用した司法書士事務所及び弁護士事務所が全国に合計14存在することが認められるが,この事実から直ちに「ひかり」の名称が「訴訟事件その他に関する法律事務」の役務に関する慣用名称となりつつあるものと認めることはできないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 次に,上記②の点については,「法務」や「法務事務所」の名称を事務所名に使用している司法書士の多くが法務大臣の認定を受けて簡裁訴訟代理等関係業務及び債務整理を行う れを認めるに足りる証拠はない。 次に,上記②の点については,「法務」や「法務事務所」の名称を事務所名に使用している司法書士の多くが法務大臣の認定を受けて簡裁訴訟代理等関係業務及び債務整理を行う司法書士であるとの事実が前提とされるところ,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。また, - 45 -仮にそのような事実が存在し,被告らが主張するように「法務」や「法務事務所」の名称が司法書士業務のうち,簡裁訴訟代理等関係業務及び債務整理という特定の役務を示すものであるといえるとしても,結局のところ,「法務」や「法務事務所」の名称は,提供される役務の質(内容)又はその提供の場所を表す表記部分として認識されるものにすぎず,当該役務の出所を識別する標識としての機能を有していることの根拠になるものではないというべきである。 以上のとおり,被告らの上記主張は,いずれも失当であって,採用することができない。 イ本件商標と被告標章1ないし4との対比本件商標は,別紙原告商標目録のとおり,「ひかり」の平仮名が,黒色で同じ大きさのゴチック体様の文字により,横一列に表記されているものであり,そこからは,「ひかり」の称呼,「光ること」,「光るもの」等の観念が生じる。 しかるところ,被告標章1ないし4の要部と認められる「ひかり」の各平仮名部分は,称呼及び観念において本件商標と一致しており,また,外観においても,文字の色や書体等に相違が見られるものの,本件商標と類似しているものといえるから,本件商標と被告標章1ないし4とは,全体として類似しているものと認められる。 ウ取引の実情に関する被告らの主張について被告らは,①被告らの業務内容は債務整理業務に限られ,その活動地域は関東及び甲信越地方に集中しているのに対し,本件商標を使用する原告 と認められる。 ウ取引の実情に関する被告らの主張について被告らは,①被告らの業務内容は債務整理業務に限られ,その活動地域は関東及び甲信越地方に集中しているのに対し,本件商標を使用する原告法人の業務内容は,債務整理ではない登記を中心とする一般の司法書士としての業務であり,その活動地域は京都を中心とするものであって,両者の業務内容及び活動地域に明瞭な相違があること,②司法書士の業務においては,役務の提供に至るまでに,ほとんどの場合,需要者は司法書士と - 46 -面談し,司法書士がどのような人物で,どのような役務をどのように提供してくれるのかに十分な注意を払い,司法書士が信頼に足る人物であることを確認したうえで依頼関係に入り,役務の提供を受けるものであることといった事情を指摘し,このような取引の実情を考慮すれば,本件商標と被告標章1ないし4において,本件役務についての出所の誤認混同の余地は皆無である旨を主張する。 しかしながら,まず,上記①の点は,被告らと原告法人とが業務内容及び活動地域に相違があることから,両者の需要者に競合がなく,誤認混同も生じない旨を指摘するものであるところ,本件商標と被告標章1ないし4との類否判断において問題となるのは,本件商標と被告標章1ないし4とが同一又は類似の役務に使用された場合に出所の誤認混同を生じさせるおそれがある程度に類似性があるものといえるか否かということであるから,本件商標を使用している原告法人の業務と被告標章1ないし4を使用している被告らの業務との実際の競合関係の有無を論じたところで,商標の類比判断において意味があることとはいえず,被告らが上記①で指摘する点は,本件商標と被告標章1ないし4との類否判断に当たって影響を及ぼす事情とはいえない。 次に,上記②の点は,要するに,司 商標の類比判断において意味があることとはいえず,被告らが上記①で指摘する点は,本件商標と被告標章1ないし4との類否判断に当たって影響を及ぼす事情とはいえない。 次に,上記②の点は,要するに,司法書士の業務においては,需要者が司法書士に役務の提供を依頼するに至るのは個別の面談に基づく信頼関係によるものであることに鑑みれば,使用される商標に出所識別標識としての機能が乏しい旨を指摘するものと解される。 しかしながら,一般に,司法書士業務,とりわけ本件役務の需要者の中には,まずは広告などの情報を基に特定の司法書士又は司法書士事務所を選択した後,個別の面談などを経てそのまま役務の提供を依頼するに至る者が相当数いるものと考えられるところ,このような需要者は,広告などに示された特定の司法書士又は司法書士事務所を示す標章によってその - 47 -同一性を識別するはずであるから,司法書士の業務において,使用される商標に出所識別標識としての機能が乏しいなどと直ちに断定することはできない。被告らが上記②で指摘する点は,本件商標と被告標章1ないし4とが同じく司法書士の業務に使用された場合に出所の誤認混同を生じさせるおそれがないことの根拠となるものではない。 以上のとおり,被告らの上記主張は,いずれも失当であって,採用することができない。他に前記イの結論を覆すに足りる事情は認められない。 (2) 争点1-2(本件商標権の侵害の有無)についてア被告法人による本件商標権の侵害の有無(ア) 前記争いのない事実等(3)イのとおり,被告法人は,平成20年7月1日以降,被告標章1ないし4を本件役務についての広告に付し,本件役務についての広告を内容とする情報に被告標章1ないし4を付して電磁的方法により提供するとともに,本件役務の提供に当たりその提供 月1日以降,被告標章1ないし4を本件役務についての広告に付し,本件役務についての広告を内容とする情報に被告標章1ないし4を付して電磁的方法により提供するとともに,本件役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する名刺,パンフレット,事務所封筒,事務用紙等に被告標章1ないし3を付すなどしている。 しかるところ,前記(1)のとおり,被告標章1ないし4は,本件商標に類似するものであり,また,本件役務は,本件商標の指定役務のうちの「訴訟事件その他に関する法律事務」に該当する。 したがって,被告法人による上記行為は,商標法2条3項3号,8号に当たり,同法37条1号により本件商標権を侵害するものとみなされる。 (イ) また,被告法人は,今後も司法書士法人としての活動を続けるものである以上,本件役務以外の司法書士業務として,自己破産申立書等の破産手続書類の作成その他に関する法律事務や登記又は供託に関する手続の代理の役務においても,被告標章1ないし4を上記(ア)と同様に使用するおそれがあるものと認められるところ,上記役務も本件商標の - 48 -指定役務である「訴訟事件その他に関する法律事務」又は「登記又は供託に関する手続の代理」に該当するものであるから,被告法人の上記役務における被告標章1ないし4の使用行為についても,上記(ア)と同様に本件商標権を侵害するものとみなされることとなる。 イ被告B1による本件商標権の侵害の有無(ア) 被告法人は,被告B1が,個人で開業していた司法書士事務所を法人化する形で設立したものであり,その設立以来,被告B1が代表社員の地位にあること,被告法人が本件役務についての広告で被告標章1ないし4を使用するに当たっての被告B1の関与状況をみても,自らの顔写真を広告中に掲載する(甲6,8)など,被告 来,被告B1が代表社員の地位にあること,被告法人が本件役務についての広告で被告標章1ないし4を使用するに当たっての被告B1の関与状況をみても,自らの顔写真を広告中に掲載する(甲6,8)など,被告B1が主導的に関与していることがうかがわれることなどからすれば,被告法人による被告標章1ないし4の上記使用行為は,被告B1個人による使用行為としても評価できるものというべきである。 したがって,被告B1についても,被告法人と同様に,本件商標権を侵害するものとみなされる行為を行っているものということができる。 (イ) また,被告B1についても,被告法人の場合と同様に,前記ア(イ)の役務においても,本件商標権を侵害するものとみなされる行為を行うおそれがあるものと認められる。 (3) 争点1-3(本件独占的通常使用権の侵害の有無)についてア原告法人の本件独占的通常使用権の有無甲10及び弁論の全趣旨によれば,原告A1と原告法人は,平成18年7月7日,原告A1が原告法人に対し,本件商標権について,対象役務を「登記又は供託に関する手続の代理,訴訟事件その他に関する法律事務」,対象地域を「日本国全域」,期間を「本契約有効期間中」(本件商標権の存続期間中)として,無償により通常使用権を独占的に許諾する旨の契約(以下「本件独占的通常使用権許諾契約」という。)を締結したこ - 49 -とが認められ,これに反する証拠はない。 したがって,原告法人は,平成18年7月7日以降,本件商標権についての独占的通常使用権(本件独占的通常使用権)を有している。 イ被告B1による本件独占的通常使用権の侵害の有無前記争いのない事実等(3)アのとおり,被告B1は,平成18年7月7日から平成20年6月30日までの間,被告標章4を本件役務に関する広告に付す イ被告B1による本件独占的通常使用権の侵害の有無前記争いのない事実等(3)アのとおり,被告B1は,平成18年7月7日から平成20年6月30日までの間,被告標章4を本件役務に関する広告に付すなどして使用した。 しかるところ,前記(1)のとおり,被告標章4は,本件商標に類似するものであり,また,本件役務は,本件商標の指定役務であるとともに,本件独占的通常使用権許諾契約における許諾対象役務である「訴訟事件その他に関する法律事務」に該当する。 したがって,被告B1による上記行為は,商標法2条3項8号に当たり,同法37条1号の類推適用により本件独占的通常使用権を侵害するものとみなされる。 ウ被告法人による本件独占的通常使用権の侵害の有無前記争いのない事実等(3)イのとおり,被告法人は,平成20年7月1日以降,被告標章1ないし4を本件役務に関する広告に付し,本件役務に関する広告を内容とする情報に被告標章1ないし4を付して電磁的方法により提供するとともに,本件役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する名刺,パンフレット,事務所封筒,事務用紙等に被告標章1ないし3を付すなどしている。 しかるところ,前記(1)のとおり,被告標章1ないし4は,本件商標に類似するものであり,また,本件役務は,本件商標の指定役務であるとともに,本件独占的通常使用権許諾契約における許諾対象役務である「訴訟事件その他に関する法律事務」に該当する。 したがって,被告法人による上記行為は,商標法2条3項3号,8号に - 50 -当たり,同法37条1号の類推適用により本件独占的通常使用権を侵害するものとみなされる。 2 争点2(商標法26条1項1号該当性)について被告らは,被告らによる被告標章4の使用につき,商標法26条1項1号の「自 号の類推適用により本件独占的通常使用権を侵害するものとみなされる。 2 争点2(商標法26条1項1号該当性)について被告らは,被告らによる被告標章4の使用につき,商標法26条1項1号の「自己の名称」を「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるから,本件商標権の効力は及ばない旨を主張するので,以下検討する。 (1) 被告B1による平成18年7月7日から平成20年6月30日までの被告標章4の使用についてア前記争いのない事実等(1)イと証拠(乙1,10ないし18,21,31ないし34(枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,①被告B1は,昭和56年に司法書士の資格を取得して東京司法書士会に入会し,以後,個人で司法書士事務所を開設し,司法書士業務に従事していたこと,②被告B1は,平成17年9月1日に法務大臣による簡裁訴訟代理等関係業務に係る認定を受けた後,同月15日付けで,日本司法書士会連合会に対し,自己が経営する司法書士事務所の名称を「ひかり法務司法書士事務所」とする旨の「事務所名称の使用に関する届出書」(乙31)を提出したこと,③これを受けて同連合会は,同年10月12日,「ひかり法務司法書士事務所」の名称を司法書士名簿に記載した旨の「事務所名称の記載受理通知書」(乙18)を被告B1に交付したこと,④被告B1は,同年9月27日,東京都内に「ひかり法務司法書士事務所」の名称で司法書士事務所を開設してその業務を開始し,以後,平成20年7月1日に被告法人が設立されるまで,「ひかり法務司法書士事務所」の名称を本件役務についての電車広告や雑誌広告等に付すなどして使用してきたこと,⑤平成20年7月,被告法人の設立に伴い,被告B1に係る上記③の「ひかり法務司法書士事務所」の名称の司法書士名簿の記載が削 称を本件役務についての電車広告や雑誌広告等に付すなどして使用してきたこと,⑤平成20年7月,被告法人の設立に伴い,被告B1に係る上記③の「ひかり法務司法書士事務所」の名称の司法書士名簿の記載が削除されたことが認められる。 - 51 -以上の事実によれば,平成17年9月27日から平成20年6月30日までの間において,被告B1は,個人で司法書士事務所を経営し,当該事務所の名称として,「ひかり法務司法書士事務所」の名称をその業務において継続的に使用していたものであるから,上記期間における「ひかり法務司法書士事務所」の名称は,個人事業主たる被告B1にとって,営業関係において自己を表すために用いる名称といえるものであって,商標法26条1項1号にいう「自己の名称」に該当するものということができる。 イ次に,被告B1による「ひかり法務司法書士事務所」の名称の広告における使用態様をみると,広告の最下段の箇所に,本文部分の文字とは異なる白抜きの大きな文字で表記されていたり(乙10,12,16,17の雑誌広告),文字を立体的に見せるために陰影をつけて表記されている(乙11,13ないし15(枝番を含む。)の電車広告等)など,明らかに需要者の注意を惹くような態様で表記されているものといえる。もっとも,上記各広告は,いずれも平成17年9月から11月までの時期に電車内や雑誌等に掲載されたものであるが,その後も平成20年6月30日まで,被告B1は継続的に同様の電車内や雑誌等における広告を行っており(乙32ないし34(枝番を含む。)),これらの広告の中での「ひかり法務司法書士事務所」の名称の使用態様は,乙10ないし17(枝番を含む。)の広告の場合と大きく異ならないものであることが推認される。 そして,このような被告B1の「ひかり法務司法書士事務所」 かり法務司法書士事務所」の名称の使用態様は,乙10ないし17(枝番を含む。)の広告の場合と大きく異ならないものであることが推認される。 そして,このような被告B1の「ひかり法務司法書士事務所」の名称の使用は,殊更にその部分に需要者らの注意を惹きつけることにより,広告に係る役務の出所を表示させる機能を発揮させる態様での使用というべきであって,自己の名称を「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるものとはいえない。 してみると,被告B1による平成18年7月7日から平成20年6月30日までの被告標章4の使用は,商標法26条1項1号に該当しないか - 52 -ら,上記使用について本件商標権の効力が及ばないものということはできない。 (2) 被告法人による平成20年7月1日以降の被告標章4の使用について商標法26条1項1号は,商標権の効力が及ばない商標を定めるに当たり,自己の名称とその略称とを明確に区別し,後者については,著名なもののみに限定しているのであるから,同号にいう「自己の名称」とは,略称とは異なった完全な名称を指すものと解するのが相当である。 しかるところ,被告法人にとっての完全な名称とは,その登記された名称である「司法書士法人ひかり法務事務所」であるから,「ひかり法務司法書士事務所」の名称が,被告法人にとっての「自己の名称」に当たらないことは明らかである。 してみると,被告法人による平成20年7月1日以降の被告標章4の使用は,商標法26条1項1号に該当しないから,上記使用について本件商標権の効力が及ばないものということはできない。 3 争点3(権利行使制限の抗弁の成否)について(1) 無効理由1(商標法3条1項柱書き違反)についてア被告らは,①商標法3条1項柱書きが「自己の業務に係る商品又は役務 いうことはできない。 3 争点3(権利行使制限の抗弁の成否)について(1) 無効理由1(商標法3条1項柱書き違反)についてア被告らは,①商標法3条1項柱書きが「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」について商標登録を受けることができる旨規定しているのは,現に自己の業務に係る商品又は役務に使用している商標か,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標でなければ,登録商標を受けることはできないという趣旨であり,この使用意思は,単にその意思が表明されているということだけでは不十分であり,将来自ら使用する蓋然性のあることが必要であると解すべきである,②そして,一定の役務を行う主体に法律に基づく一定の資格が求められているときは,資格の主体と役務との間には対応関係が必須とされているのであり,商標登録に当たって,その資格がなく,その資格を取得する - 53 -予定もない者には,自ら使用する意思も,将来自ら使用する蓋然性も認められないというべきであるところ,司法書士の資格を持たない原告A1においては,少なくとも本件商標の指定役務中の「訴訟事件その他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理」について本件商標を自ら使用する意思も,将来自ら使用する蓋然性も認められず,もともと他人に使用させる意思の下に本件商標の商標登録を受けようとしたものである,③原告A1のように国家資格がなく自己の業務として本来司法書士業務を行うことができない者が,その役務に関する商標について権利を主張し,これを他人に使用させることによって何らかの利益を得ることを認めることになれば,訴訟事件その他に関する法律事務及び登記・供託事務という特定の役務を提供する主体に国家資格を要求している弁護士法及び司法書士法の趣旨を侵すものという って何らかの利益を得ることを認めることになれば,訴訟事件その他に関する法律事務及び登記・供託事務という特定の役務を提供する主体に国家資格を要求している弁護士法及び司法書士法の趣旨を侵すものというべきであり,これを認めるべきではないなどとして,本件商標の指定役務中の「訴訟事件その他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理」との関係では,本件商標は原告A1の自己の業務に係る役務について使用するものではないから,本件商標の商標登録には,商標法3条1項柱書きに違反する無効理由(同法46条1項1号)がある旨主張するので,以下において検討する。 (ア) 原告A1が弁護士及び司法書士のいずれの国家資格をも有していないことは,当事者間に争いがない。 ところで,弁護士法72条本文は,弁護士又は弁護士法人でない者が,報酬を得る目的で,業として,同条本文所定の一般の法律事件に関して法律事務を取り扱い,又はこれらの周旋をすることを禁止している。また,司法書士法73条1項は,司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)が,他人の依頼を受けて,登記又は供託に関する手続の代理,裁判所に提出する書類の作成等同法3条1項1号ないし5号所定の業務を行うことを禁止し,同条2項及び同法 - 54 -29条2項は,簡裁訴訟代理等関係業務(同法3条1項6号ないし8号の業務)について,認定司法書士及び社員のうちに認定司法書士がある司法書士法人以外の者が行うことを禁止している。 これらの規定によれば,本件商標の指定役務のうち,「訴訟事件その他に関する法律事務」の役務については弁護士若しくは弁護士法人又は司法書士若しくは司法書士法人以外の者がこれを報酬を得る目的で業として行うことは許されず(更に,上記役務のうち,簡裁訴訟代理等関係 他に関する法律事務」の役務については弁護士若しくは弁護士法人又は司法書士若しくは司法書士法人以外の者がこれを報酬を得る目的で業として行うことは許されず(更に,上記役務のうち,簡裁訴訟代理等関係業務については,司法書士又は司法書士法人であっても,認定司法書士及び社員のうちに認定司法書士がある司法書士法人以外はは許されない。),また,「登記又は供託に関する手続の代理」の役務については司法書士又は司法書士法人以外の者がこれを行うことは許されないものといえる。このように上記各役務に係る業務を行うことができる者が法令上制限されている。 (イ) 次に,商標法3条1項柱書きは,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については,次に掲げる商標を除き,商標登録を受けることができる。」と規定し,登録出願に係る商標が,その出願人において「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを商標の登録要件の一つとして定めている。 他方で,商標権の移転について,大正10年制定の旧商標法(以下「旧法」という。)12条1項は,商標権はその営業と共にする場合に限り移転することをできる旨規定していたが,現行の商標法(昭和34年法律第127号・最終改正平成23年法律第74号)は,このような制限を設けずに,商標権の自由な譲渡を認めるとともに(商標法24条の2),新たに使用許諾制度を創設し,商標権者は,その商標権について,他人に専用使用権を設定し,又は通常使用権を許諾することができる旨規定し(商標法30条,31条),また,商標権者が自ら登録商標を使 - 55 -用していなくても,専用使用権者又は通常使用権者がこれを使用していれば,不使用取消の対象とはならない旨規定している(商標法50条2項)。さらに,現行の商標法は,事業者を構成員に 使 - 55 -用していなくても,専用使用権者又は通常使用権者がこれを使用していれば,不使用取消の対象とはならない旨規定している(商標法50条2項)。さらに,現行の商標法は,事業者を構成員に有する団体がその構成員に使用させる商標について,団体商標の商標登録を受けることができるものとし(商標法7条1項),この場合における商標法3条1項の適用については,同項中の「自己の」とあるのは,「自己又はその構成員の」と読み替えている(商標法7条2項)。この団体商標の規定の制定経過をみると,我が国は,工業所有権の保護に関するパリ条約7条の2に基づき,団体商標を保護すべき義務を負い,旧法27条には,「団体標章」の登録を認める旨の明文の規定が置かれていたが,昭和34年制定の商標法では,使用許諾制度が創設されたことに伴い,団体標章制度が廃止され,その後,平成8年法律第68号による改正によって改めて団体商標の登録を認める旨の明文の規定が設けられ,更に平成18年法律第55号による一部改正により,現行の規定となったものであり,平成8年改正前の商標法においては,団体商標についても,出願人たる団体が「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」(商標法3条1項柱書き)に当たるものとして商標登録を認め得るとの立場が採られていたものと解される。 以上の各規定等と商標法1条が「この法律は,商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もつて産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」と規定していること(商標法1条)を総合すると,現行の商標法は,商標の使用を通じてそれに化体された業務上の信用が保護対象であることを前提とした上で,出願人が現に商標を使用していることを登録要件としない法制(いわゆる登録主 法1条)を総合すると,現行の商標法は,商標の使用を通じてそれに化体された業務上の信用が保護対象であることを前提とした上で,出願人が現に商標を使用していることを登録要件としない法制(いわゆる登録主義)を採用したものであり,商標法3条1項柱書きが,出願人において「自己の業務に係る商品又は役務につい - 56 -て使用をする商標」であることを商標の登録要件とした趣旨は,このような法制の下において,他者からの許諾料や譲渡対価の取得のみを目的として行われる,いわゆる商標ブローカーなどによる濫用的な商標登録を排除し,登録商標制度の健全な運営を確保するという点にあるものと解される。 そして,このような法の趣旨に鑑みれば,商標法3条1項柱書きの「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは,出願人において自己の業務に現在使用しているもの又は近い将来において自己の業務に使用する意思があるものであることを要するが,この「自己の業務」に該当するかどうかについては,形式的に判断することは必ずしも相当ではないというべきであり,専ら他者に使用させることを目的とする商標の登録出願であっても,出願人と当該商標を使用する他者の業務との間に密接な関係があって,出願人に当該商標の商標登録を認めることに社会的,経済的にみて合理的な必要性が認められる事情があり,濫用的な商標登録を排除するという法の趣旨にも反せず,かつ,当該商標を使用する役務に係る業務を行うことができる者が他の法令上制限されているときはその制限の趣旨にも反しないと認められる場合には,当該他者の業務を当該出願人の「自己の業務」と同視し,当該出願人において当該商標が「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に当たると評価することができるものと解するのが相当である。 これに反 業務を当該出願人の「自己の業務」と同視し,当該出願人において当該商標が「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に当たると評価することができるものと解するのが相当である。 これに反する被告らの主張は,採用することができない。 (ウ) そこで,以下では,弁護士及び司法書士のいずれの国家資格をも有していない原告A1が行った,指定役務を「訴訟事件その他に関する法律事務」及び「登記又は供託に関する手続の代理」とする本件商標の登録出願に関して,前記(イ)で述べたような「自己の業務に係る役務について使用をする商標」の出願に当たると評価することができる事情があ - 57 -るか否かについて,検討することとする。 a 前記争いのない事実等と証拠(甲3ないし5,11ないし18(枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,原告A1が本件商標の登録出願を行うに至った経過等に関し,以下の事実が認められる。 (a) 原告A1は,公認会計士及び税理士の国家資格を有する者であり,昭和61年6月,京都市内に「A1公認会計士事務所」の名称で会計事務所を開業した後,平成15年1月,同事務所の税理士部門を独立させて法人化した「ひかり税理士法人」を設立し,その代表社員に就任した。 ⒝ その後,平成18年1月には,ひかり税理士法人の社会保険労務士部門が独立して法人化した「ひかり社会保険労務士法人」が設立されたが,それに先立つ平成17年10月ころから,ひかり税理士法人においては,ひかり社会保険労務士法人を設立することを機会に,ひかりブランドのもとに専門の士業が参画するネットワーク(以下「本件ネットワーク」という。)を構築することが計画されるようになった。 ⒞ そのような中で,平成17年11月ころには,ひかり税理士法人とC2 ランドのもとに専門の士業が参画するネットワーク(以下「本件ネットワーク」という。)を構築することが計画されるようになった。 ⒞ そのような中で,平成17年11月ころには,ひかり税理士法人とC2司法書士事務所との間で,同事務所が,法人化して「ひかり」の名称を付した司法書士法人を設立した上で,本件ネットワークに参画することが合意された。 ⒟ さらに,そのころ,ひかり税理士法人では,本件ネットワークに所属する各法人が使用する「ひかり」のブランドを防衛するという観点から,「ひかり」の名称を付した商標を登録することが検討され,平成17年11月17日,ひかり税理士法人が出願人となり,指定役務を「税務相談,税務代理」などとして,「ひかり税理士法 - 58 -人」の文字からなる商標の登録出願(商願2005-108518号)を行い,また,同日,原告A1が出願人となり,本件商標の登録出願を行った。 原告A1は,本件商標の登録出願に当たり,出願の時点ではいまだ原告法人が設立されていなかったことに加え,将来的には,弁理士や弁護士をも本件ネットワークに参加させ,「ひかり」の名称を使用させる意図があったことから,司法書士業務のみならず,弁理士業務や弁護士業務においても登録した商標が使用できるように,本件商標に「司法書士法人」の名称を付さずに「ひかり」の名称のみを商標として登録出願し,また,原告A1個人が出願人となることとした。 (e) その後,平成18年2月には,原告法人が設立されるとともに,ひかり税理士法人を中核組織とし,ひかり社会保険労務士法人,原告法人,ひかり経営戦略株式会社,ひかり行政書士事務所等を構成組織とする「ひかりアドバイザーグループ」が結成され,原告A1がその代表に就任した。 「ひかりアドバイザーグループ」は,顧客がそれぞ 告法人,ひかり経営戦略株式会社,ひかり行政書士事務所等を構成組織とする「ひかりアドバイザーグループ」が結成され,原告A1がその代表に就任した。 「ひかりアドバイザーグループ」は,顧客がそれぞれ抱える問題事象や経営課題につき,統括・連携された一つの専門事業者集団で対処し得る組織を構築し,顧客に対して,税務会計周辺業務のみならず,経営指導業務や登記業務などに至る幅広い分野において,いわゆるワンストップサービスを提供することを企図して結成されたものであり,本件ネットワークの構築構想が現実化されたものである。 さらに,平成19年6月には,「ひかり監査法人」が設立され,原告A1がその代表社員に就任した。そして,それ以降は,ひかり税理士法人に代わって,ひかり監査法人が「ひかりアドバイザーグ - 59 -ループ」の中核組織となった。 (f) 原告A1は,平成18年7月7日,原告法人との間で,本件商標について,無償で通常使用権を独占的に許諾する旨の本件独占的通常使用権許諾契約を締結した。 なお,原告法人の代表社員のC1は,認定司法書士であり,原告法人は,簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる,社員のうちに認定司法書士がある司法書士法人(司法書士法29条2項)に該当する。 b 以上の事実経過等を総合すると,原告A1が本件商標の登録出願をした平成17年11月17日の時点においては,ひかり税理士法人を中核として平成18年2月に結成された「ひかりアドバイザーグループ」の基礎となる組織がほぼ構築されつつある状況にあり,原告法人も近い将来に設立されて当該組織に参画することが確実に予定された状況にあったところ,ひかり税理士法人の代表社員として当該組織構築の中心的立場にあった原告A1は,原告法人が近い将来当該組織の一員として司法書士業務 立されて当該組織に参画することが確実に予定された状況にあったところ,ひかり税理士法人の代表社員として当該組織構築の中心的立場にあった原告A1は,原告法人が近い将来当該組織の一員として司法書士業務を行うに当たって使用する商標を当該組織の代表としての立場に基づいて管理し,更には司法書士業務のみならず,将来当該組織に参画する可能性のある弁理士や弁護士の業務においても当該商標を使用させ得るようにすることなどを企図して,原告A1個人を出願人とする本件商標の登録出願を行ったものであることが認められる。 しかるところ,①原告A1が中心となって構築を進めた「ひかりアドバイザーグループ」は,統括・連携された一つの専門事業者集団を組織することによって,顧客に対しいわゆるワンストップサービスを提供することを目的としたものであり,このような営業グループを形成することには,参加者各人にとっての営業上のメリットがあり,社 - 60 -会的,経済的にみて合理的な必要性があるものといえること,②このような営業グループを形成する場合には,グループの構成員らが共通した商標を使用し,グループとしての統一的な営業活動を行うことに合理的な必要性があること,③また,その前提として,当該グループの代表者的な立場にある者が当該商標の登録を行い,その管理業務を行うことにも合理的な必要性があること,④原告A1から無償で本件独占的通常使用権の許諾を受けた原告法人が「訴訟事件その他に関する法律事務」及び「登記又は供託に関する手続の代理」の役務に係る業務(簡裁訴訟代理等関係業務を含む。)を行うことについて司法書士法上の制約はないことなどの事情を総合すると,原告A1が,専ら原告法人に使用させる意思の下に行った,指定役務を「訴訟事件その他に関する法律事務」及び「登記又は供託に関す )を行うことについて司法書士法上の制約はないことなどの事情を総合すると,原告A1が,専ら原告法人に使用させる意思の下に行った,指定役務を「訴訟事件その他に関する法律事務」及び「登記又は供託に関する手続の代理」とする本件商標の登録出願については,出願人たる原告A1と本件商標を使用する原告法人が行う業務との間に,営業グループの代表者的な立場にある者とそのグループに属する者が行う業務という密接な関係があり,原告A1に本件商標の商標登録を認めることには社会的,経済的にみて合理的な必要性が認められ,商標ブローカーなどによる濫用的な商標登録を排除するという法の趣旨に反せず,かつ,弁護士法又は司法書士法が上記指定役務に係る業務を行うことができる者を前記(ア)のとおり制限した趣旨に反するものでもないということができる。 (エ) 以上によれば,本件商標は,「訴訟事件その他に関する法律事務」及び「登記又は供託に関する手続の代理」の各指定役務との関係においても,原告A1が「自己の業務に係る役務について使用をする商標」に当たるものと評価することができる。 イ以上の次第であるから,本件商標の商標登録に「訴訟事件その他に関す - 61 -る法律事務」及び「登記又は供託に関する手続の代理」の各指定役務との関係で商標法3条1項柱書きに違反する無効理由があるとする被告らの主張は理由がない。 (2) 無効理由2(商標法3条1項6号違反)についてア被告らは,本件商標について,①「ひかり」の文言は,多くの者が長年にわたり広範な業種において商品や役務を指し示す標章として用いられてきたものであり,当該文言が特に出所表示機能等の機能を有してきたとはいえないこと,②原告らが「ひかり」という文言を自己の業務に関する役務について長年にわたって使用し,その結果,需要 として用いられてきたものであり,当該文言が特に出所表示機能等の機能を有してきたとはいえないこと,②原告らが「ひかり」という文言を自己の業務に関する役務について長年にわたって使用し,その結果,需要者が原告らの業務に係る役務であることを認識することができる状態にあったということもないことなどを根拠に挙げ,本件商標の商標登録は,商標法3条1項6号の「需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標」に該当するから,同号に違反する無効理由(同法46条1項1号)がある旨主張する。 しかしながら,上記①の点は,本件商標の指定役務とは異なる商品や役務との関係で,「ひかり」の文言が長年にわたり商品や役務を指し示す標章として使用されてきたことを指摘するものにすぎず,仮にそのような事実があるとしても,そのことが直ちに,本件商標の具体的な指定役務との関係で,本件商標に自他役務の識別力がないとの結論に結びつくものではない。この点,被告らは,「ひかり」の名称を事務所名に使用した司法書士事務所や弁護士事務所が日本全国に複数存在するとの事実を挙げて,「ひかり」の名称が「訴訟事件その他に関する法律事務」の役務に関する慣用名称となりつつあるなどとも主張するが,このような主張に理由がないことは,前記1(1)ア(オ)で述べたとおりである。 次に,上記②の点は,原告らに「ひかり」という文言を自己の業務に長年にわたって使用してきた実績がないため,需要者が本件商標を見ても, - 62 -原告らの業務に係る役務を示す商標であることを認識できる状態にはないことを指摘するものであるところ,そもそも商標の登録出願に当たって,出願人に当該商標の長年の使用実績があることや当該商標が出願人の業務に係る商品や役務を示す商標として需要者に知られていることが商 いことを指摘するものであるところ,そもそも商標の登録出願に当たって,出願人に当該商標の長年の使用実績があることや当該商標が出願人の業務に係る商品や役務を示す商標として需要者に知られていることが商標登録の要件となるものでないことは明らかであり,結局のところ,上記指摘は,商標の登録要件としての自他商品又は役務の識別力の有無とは直接関係のない事柄を述べているにすぎないものというほかない。 以上のとおり,上記①及び②の点は,いずれも,本件商標に,その指定役務との関係で自他役務の識別力がないことを示す根拠となり得るものではなく,そのほかに,これを認めるに足りる事情も認められない。 イしたがって,本件商標の商標登録に商標法3条1項6号の無効理由があるとする被告らの主張は理由がない。 (3) 小括以上によれば,本件商標の商標登録には無効理由があり,商標登録無効審判により無効とされるべきものであるとして,商標法39条が準用する特許法104条の3第1項により本件商標権及び本件独占的通常使用権の行使は制限されるべきであるとする被告らの主張は,いずれも採用することができない。 4 争点4(被告らの先使用権の成否)について(1) 被告らは,「ひかり法務司法書士事務所」の標章(被告標章4)について,被告B1は,本件商標が登録出願(平成17年11月17日)される前の平成17年9月から,日本国内において不正競争の目的でなく本件役務について使用し,電車広告等での集中的な宣伝を行った結果,本件商標の登録出願の際には,被告標章4が被告B1の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されるに至ったものであるから,被告B1は,被告標章4についての先使用権(商標法32条1項)を有し,また,被告B1の - 63 -業務を承継した被告法人も,被 するものとして需要者の間で広く認識されるに至ったものであるから,被告B1は,被告標章4についての先使用権(商標法32条1項)を有し,また,被告B1の - 63 -業務を承継した被告法人も,被告標章4についての先使用権を有する旨主張する。 そこで,被告B1が,平成17年9月27日に東京都内に「ひかり法務司法書士事務所」の名称で司法書士事務所を開業して以降,本件商標が登録出願された同年11月17日までに,被告標章4を付して行った本件役務に関する広告宣伝の状況をみると,証拠(乙5,9ないし17,19ないし21(枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,①平成17年9月27日及び同年10月25日発売の雑誌「SPA!」(発行部数約24万部)並びに同月2日発売の雑誌「レオパレスシーク」(発行部数約15万部)に,それぞれ1頁全面を使用した広告が掲載されたこと,②同年9月29日以降,小田急線の電車内,同年10月10日以降,東急田園都市線の電車内,同月15日以降,多摩都市モノレール線の電車内の各ドア上部分に,広告が掲載されたこと,③同年10月3日から同月6日にかけて,東京都の羽村市,青梅市,西多摩郡,あきるの市,福生市,八王子市において合計25万1000部,同月12日及び13日に,東京都の立川市,昭島市において合計8万3000部,同月14日に,東京都の三鷹市,調布市,府中市,国立市,立川市,日野市,多摩市,稲城市,町田市,八王子市,武蔵野市,昭島市,神奈川県の座間市,藤沢市において合計9万8700部,同月17日から同月31日にかけて,東京都の国分寺市,国立市,日野市,多摩市,稲城市,町田市,府中市,小金井市,狛江市において合計38万6000部,同年11月1日から同月10日にかけて,東京都の調布市,三鷹市,武蔵野市 日にかけて,東京都の国分寺市,国立市,日野市,多摩市,稲城市,町田市,府中市,小金井市,狛江市において合計38万6000部,同年11月1日から同月10日にかけて,東京都の調布市,三鷹市,武蔵野市,中野区,杉並区において合計39万6000部,同月11日に,東京都の武蔵野市,三鷹市,調布市,府中市,国立市,立川市,日野市,多摩市,八王子市,町田市,昭島市,稲城市,神奈川県の川崎市多摩区,麻生区,横浜市青葉区,座間市,大和市,藤沢市において合計10万4000部,同月14日から同月17日にかけて,神奈川県の秦野市,厚木市,伊勢 - 64 -原市,高座郡,海老名市において合計18万3000部の新聞折込広告がそれぞれ配布されたことが認められる。 上記認定事実によれば,被告B1が平成17年11月17日までに被告標章4を付して行った本件役務に関する広告宣伝には,①雑誌広告,②電車広告,③新聞折込広告の三つの態様があるところ,このうち,雑誌広告は,合計の掲載回数が3回に止まるものにすぎず,また,電車広告は,対象路線が三路線に限られている上に,その期間も約1か月から50日程度にとどまるものであり,さらに,新聞折込広告も,その対象地域が東京都及び神奈川県の一部に限られている上,その回数も,地域ごとに見れば,多くて数回程度のものにすぎない。 このように,被告B1が平成17年11月17日までに被告標章4を付して行った本件役務に関する広告宣伝は,その期間,回数,対象地域等が限られたものにすぎず,他方,本件役務の需要者は,全国各地はもちろんのこと,被告B1の営業活動の中心である関東地域だけでも相当多数に及ぶと考えられることからすれば,上記程度の広告宣伝がされたからといって,被告B1による被告標章4の使用開始(同年9月27日)からわずか50日しか経過 営業活動の中心である関東地域だけでも相当多数に及ぶと考えられることからすれば,上記程度の広告宣伝がされたからといって,被告B1による被告標章4の使用開始(同年9月27日)からわずか50日しか経過していない同年11月17日の時点において,被告標章4が被告B1の業務に係る役務を表示するものであることが,本件役務の需要者の間で広く認識されるに至ったものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 (2) したがって,被告らが被告標章4について先使用権を有するとの被告らの主張は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 5 争点5(権利濫用の成否)について(1) 被告らは,①被告らが,「ひかり法務司法書士事務所」の名称を原告法人の設立(平成18年2月2日)の前から長期にわたり使用しており,しかも,ひかりアドバイザーグループ名義の平成21年9月18日付け通知 - 65 -書(乙6)を受領するまでは本件商標登録の事実を知らなかったこと,②被告法人は,ひかりアドバイザーグループに対する平成21年10月1日付け回答書(乙7)において,名称を「司法書士法人B1ひかり法務事務所」に変更する意向を提案したにもかかわらず,ひかりアドバイザーグループ側はこれを受け容れず,「ひかり」の文言の使用の全面的停止を求めたこと,③その後も,ひかり税理士法人は,そのホームページにおいて,被告らを一方的に攻撃し,被告らの名誉と信用を毀損し続けていることなどの事情を挙げ,原告らの本訴請求は権利濫用に当たる旨を主張する。 しかしながら,まず,上記①の点については,被告B1が「ひかり法務司法書士事務所」の名称を使用し始めたのは平成17年9月27日からであり(前記2(1)ア④),原告法人の設立日(平成18年2月2日),あるいは本件商標の出願日 の点については,被告B1が「ひかり法務司法書士事務所」の名称を使用し始めたのは平成17年9月27日からであり(前記2(1)ア④),原告法人の設立日(平成18年2月2日),あるいは本件商標の出願日(平成17年11月17日)の前から長期にわたって使用してきたなどといえるものではない。また,他人の商標権を侵害した者は,その侵害行為について過失があったものと推定されること(商標法39条において準用する特許法103条)からすると,被告らが本件商標登録の事実を知らなかったことが,本件商標権等の侵害について,被告らを免責すべき事情となり得るものではない。 次に,上記②の点については,本件訴訟提起前の当事者間の交渉の過程において,被告法人がその名称を「司法書士法人B1ひかり法務事務所」に変更する意向を提案したからといって,原告らがこれを受け容れることを義務づけられるものではない。むしろ上記名称が依然として「ひかり」の文言を含むものであることからすれば,上記名称の使用が本件商標権等を侵害するものであるかどうかについては,意見の相違が生じることもあり得ることというべきであるから,原告らが,上記名称について,なお本件商標権等の侵害に当たるとの見解に立って,被告法人からの名称変更の提案に応じることなく,「ひかり」の文言の使用の全面的停止を求める対応をしたとしても, - 66 -それが直ちに非難されるべき対応であると断ずることはできない。 さらに,上記③の点については,原告らの本訴請求とは直接関係のない,ひかり税理士法人によるホームページ上における被告らに対する名誉又は信用毀損行為を問題としているにすぎず,仮にそのような事実があって,被告らに対する何らかの権利侵害行為を構成するとしても,そのことは,原告らの本件商標権等に基づく権利行使とは別個の問 対する名誉又は信用毀損行為を問題としているにすぎず,仮にそのような事実があって,被告らに対する何らかの権利侵害行為を構成するとしても,そのことは,原告らの本件商標権等に基づく権利行使とは別個の問題であって,本訴請求が妨げられるべき理由とはならない。 (2) 以上のとおり,被告らが主張する上記①ないし③の各事情は,いずれも原告らの本件商標権等に基づく本訴請求が権利濫用となることを根拠づける事情となり得るものではないから,原告らの本訴請求が権利濫用に当たるとする被告らの主張は採用することができない。 6 争点6(原告法人における損害の発生及びその額)について前記1(3)イ及びウのとおり,被告B1が平成18年7月7日から平成20年6月30日までの間,被告標章4を本件役務についての広告に付すなどして使用した行為及び被告法人が平成20年7月1日以降,被告標章1ないし4を本件役務に関する広告に付し,本件役務に関する広告を内容とする情報に被告標章1ないし4を付して電磁的方法により提供するとともに,本件役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する名刺,パンフレット,事務所封筒,事務用紙等に被告標章1ないし3を付すなどして使用した行為は,原告法人の本件独占的通常使用権を侵害する行為といえるところ,商標法39条において準用する特許法103条の類推適用により,被告らには,上記侵害行為についての過失があったものと推定されるから,被告らは,原告法人に対し,民法709条により,上記侵害行為によって原告法人に生じた損害を賠償する責任がある。 しかるところ,被告らは,①被告らの上記侵害行為によって原告法人に損害が発生したこと,②原告法人が主張する商標法38条2項の類推適用に基づく - 67 -損害の額をいずれも争うので,以下,順次検討する。 ろ,被告らは,①被告らの上記侵害行為によって原告法人に損害が発生したこと,②原告法人が主張する商標法38条2項の類推適用に基づく - 67 -損害の額をいずれも争うので,以下,順次検討する。 (1) 原告法人における損害の発生の有無についてア商標法38条2項は,商標権者又は専用使用権者に損害の発生が認められる場合に,民法709条の特別規定として,当該損害の額を推定する規定と解されるから,被告らの上記侵害行為による原告法人の損害額を認定するに当たり,同項の類推適用が認められるためには,その前提として,被告らの上記侵害行為によって原告法人に損害が発生したことが認められる必要がある。そして,原告法人に損害が発生したというためには,本件独占的通常使用権の権利者たる原告法人が,本件商標を現に自己の業務において使用しており,かつ,当該業務と被告標章1ないし4の使用に係る被告らの業務との間に市場における競合関係があって,被告らがその業務において被告標章1ないし4を使用することによって,原告法人がその業務における現実又は潜在的な顧客を失う結果が生じ得る状況にあることが必要であると解される。 しかるところ,本件においては,原告法人が,平成18年7月7日に原告A1との間で本件独占的通常使用権許諾契約を締結した以降,「ひかり司法書士法人」の名称をその司法書士業務に用い,同名称を付した新聞広告を行ったり(甲18),インターネット上に同名称を付したホームページを掲載する(甲20)などして,本件商標を現に自己の司法書士業務に使用していることは,優にこれを認めることができる。 他方,原告法人の上記業務と被告標章1ないし4の使用に係る被告らの業務との間の競合関係の存在については,被告らが,両者の事業活動の地域的範囲や事業内容が重なり合わないことを 認めることができる。 他方,原告法人の上記業務と被告標章1ないし4の使用に係る被告らの業務との間の競合関係の存在については,被告らが,両者の事業活動の地域的範囲や事業内容が重なり合わないことを根拠に挙げてこれを争うので,以下検討する。 (ア) 事業活動の地域的範囲について被告らは,原告法人においては,その事業活動の範囲が京都市ないし - 68 -京都府を中心としたものであって,その範囲が関東地域に及ぶとは考えられないのに対し,被告らの依頼者のほとんどは関東甲信越在住の者であり,その広告宣伝も東京,神奈川,埼玉等の地域に限られているから,原告法人の事業活動と被告らの事業活動とでは,その地域的範囲がほとんど重なり合わない旨主張する。 a そこで検討するに,被告らの顧客名簿(乙44,45)によれば,被告らの業務に係る顧客の大部分が関東地域に在住の者であることが認められるものの,その一部には,京都府のほか,大阪府,兵庫県等の近隣府県に在住する顧客が存在することも認められるのであり,この点は,被告ら自身が,平成19年9月から平成22年12月までに依頼のあった被告らの顧客の2.3パーセントに当たる合計92名が近畿地方在住の者であることを自認するとおりである。 b 次に,原告法人の事務所の所在地が京都市及び滋賀県草津市であること(甲20)からすれば,その司法書士業務における活動の中心となる地域が京都府及びその近隣の府県であることが認められ,また,原告法人が関東地域に在住の顧客を現に有することを認めるに足りる証拠はない。 しかし,他方で,前記3(1)ア(ウ)a(e)のとおり,「ひかりアドバイザーグループ」は,統括・連携された一つの専門事業者集団を組織することにより,顧客に対していわゆるワンストップサービスを提供することを企図 で,前記3(1)ア(ウ)a(e)のとおり,「ひかりアドバイザーグループ」は,統括・連携された一つの専門事業者集団を組織することにより,顧客に対していわゆるワンストップサービスを提供することを企図して結成されたものであるから,原告法人以外のグループ構成員である法人等の顧客に司法書士業務に関わるサービスを必要とする者が生じた場合には,これらの法人等において原告法人を紹介することが考えられるところ,同グループのひかり税理士法人やひかり監査法人は,東京都内にも事務所を有しており(甲4,5),関東地域在住の顧客も有していることがうかがわれるから,これらの - 69 -法人からの紹介により原告法人の顧客となり得る潜在的な顧客の存在は否定できないものである。その際,原告法人の事務所が関東地域に存在しないことが顧客獲得の障害となることも考えられるが,司法書士業務の中には,専ら顧客と郵便等による書面のやりとりをすることで遂行し得る業務もあるというべきである(このことは,現に被告らの顧客が関東地域在住の者に限られないこと(乙44,45)からも裏付けられる。)から,原告法人が関東地域に事務所を有しないからといって,直ちに関東地域における潜在的な顧客の存在が否定されることにはならない。 c 以上を総合すれば,原告法人の司法書士業務と被告らの司法書士業務とは,活動の地域的範囲において,全く重なり合わないものとはいえず,その程度が限られてはいるものの,一定の競合関係の存在が認められるものといえる。 (イ) 事業内容について被告らは,被告らの業務が債務整理や過払金返還請求に特化しているのに対し,原告法人の業務内容はこれと全く重なるところがなく,しかも,原告法人が属する「ひかりアドバイザーグループ」において依頼者として想定されているのは,企業経営 理や過払金返還請求に特化しているのに対し,原告法人の業務内容はこれと全く重なるところがなく,しかも,原告法人が属する「ひかりアドバイザーグループ」において依頼者として想定されているのは,企業経営者や資産を有しその運用に関心を持つ個人であって,債務整理や過払金返還請求を必要とする多重債務者等ではないから,原告法人と被告らとでは,事業内容及び顧客層が全く異なっている旨主張する。 しかしながら,原告法人のホームページ(甲20)をみると,原告法人は,その「業務案内」において,①不動産登記手続,②商業・法人登記手続,③裁判所に提出する書類の作成業務,④成年後見業務等を取り扱っていることを説明し,そのうち,「裁判所に提出する書類の作成業務」の具体的内容について,「具体的には自己破産申立書や小規模個人 - 70 -再生申立書一式の作成や,民事訴訟事件の訴状や答弁書の作成,支払督促手続書類の作成等を行います。」,「簡易裁判所の管轄で,訴額が140万円以内の案件であれば,お客様の代理人として法廷に立つこともできます。例えば多重債務等の借金問題,敷金返還請求事件,悪徳商法対策(例えばクーリングオフ等)などは,個人ではやりにくい部分もあるかと思いますので,お客様の代理人として相手方と交渉します。」などと説明していることが認められるのであり,これからすると,原告法人の業務には,債務整理や過払金返還請求に係る業務が含まれるものと認められる。 したがって,被告らが主張するように,原告法人と被告らとでは事業内容及び顧客層が全く異なっているなどとはいえず,両者の業務には,事業内容及び顧客層の面から見た競合関係の存在が認められる。 イ以上を総合すれば,原告法人は,本件商標を現に自己の業務において使用しており,かつ,原告法人の当該業務と被告標章1ない 者の業務には,事業内容及び顧客層の面から見た競合関係の存在が認められる。 イ以上を総合すれば,原告法人は,本件商標を現に自己の業務において使用しており,かつ,原告法人の当該業務と被告標章1ないし4の使用に係る被告らの業務との間には市場における競合関係があるものといえるから,被告らによる本件独占的通常使用権に対する前記侵害行為は,原告法人に営業上の逸失利益に係る損害を発生させるものと認められ,その損害額の算定に当たっては,商標法38条2項の類推適用を認めるのが相当である。 (2) 原告法人に生じた損害の額についてア被告らが受けた利益の額(ア) 被告B1関係a 被告B1が,平成18年8月1日から平成20年6月30日までの間に,被告標章4を使用して本件役務に係る司法書士業務を行うことによって得た営業収入が合計14億4704万2575円であることは,当事者間に争いがない。 - 71 -b 上記営業収入のうち,被告B1の利益に当たる額について,被告B1は,上記期間中に支出した広告宣伝費合計8億3196万8725円を控除した6億1507万3850円をもって被告B1の限界利益の額である旨主張するのに対し,原告法人は,被告B1による広告宣伝費の支出は明らかに過大であるから,支出した広告宣伝費の全額を経費として控除することは不適切であるとし,上記営業収入に対する被告B1の限界利益率は50パーセントを下らないから,その限界利益の額は7億2352万1287円を下らない旨主張する。 そこで検討するに,証拠(乙5,9ないし17,32ないし34,46ないし48,64(枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。))によれば,被告B1は,平成18年8月1日から平成20年6月30日までの間に,本件役務に関して多数の雑誌広告,電車広告,新聞折 34,46ないし48,64(枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。))によれば,被告B1は,平成18年8月1日から平成20年6月30日までの間に,本件役務に関して多数の雑誌広告,電車広告,新聞折込広告,インターネット広告等を行い,そのために合計8億3196万8725円にのぼる広告宣伝費を支出したこと(別紙「被告ら主張の利益額」の平成18年ないし平成20年の各「年度」の「広告宣伝費」欄の合計額)が認められる。 しかるところ,被告B1が行う過払金返還請求を中心とした借入金債務の整理業務においては,一般の需要者にとって,業務の内容が専門的でなじみの薄い事項である上,これを取り扱う弁護士や司法書士に関して一般に提供される情報が限られていることなどからすると,一般の需要者が依頼先となる司法書士等を選択するに当たっては,これらの者が日常的に接し得る広告宣伝が重要な情報源となる場合が多いものと考えられるのであり,このことは,現に過払金返還請求に係る業務において広告宣伝に多額の費用を支出している弁護士事務所や司法書士事務所が相当数存在する事実(乙57)からも裏付けられる。 - 72 -そして,被告B1が支出した上記広告宣伝費は,年間にして2億円から5億円近くにものぼる多額なものではあるものの,他方において,広告宣伝費が高額になればなるほど,その額に見合う形で,年間4億円から8億円を超える営業収入が現に得られている事実が認められるのであり(別紙「被告ら主張の利益額」の「限界利益」欄参照),このような事実に照らせば,被告B1が支出した上記広告宣伝費がその営業収入との関係において過大であるものと直ちに断ずることはできず,また,被告B1の限界利益率が50パーセントを下らないとする原告法人の主張にも根拠がないというべきである。 c した 宣伝費がその営業収入との関係において過大であるものと直ちに断ずることはできず,また,被告B1の限界利益率が50パーセントを下らないとする原告法人の主張にも根拠がないというべきである。 c したがって,上記aの営業収入のうち,被告B1が受けた利益の額の算定においては,被告B1が上記期間中に現に支出したものと認められる広告宣伝費合計8億3196万8725円を控除することが必要というべきであり,これを前提に,被告B1の上記期間中の限界利益を6億1507万3850円とする被告B1の主張額をもって,上記利益の額と認めるのが相当である。 (イ) 被告法人関係a 被告法人が,平成20年7月1日から平成22年12月31日までの間に,被告標章1ないし4を使用して本件役務に係る司法書士業務を行うことによって得た営業収入が合計8億0815万8538円であることは,当事者間に争いがない。 b 上記営業収入のうち,被告法人の利益に当たる額について,被告法人は,上記期間中に支出した広告宣伝費合計4億8469万3278円を控除した3億2346万5260円をもって被告法人の限界利益の額である旨主張するのに対し,原告法人は,被告法人による広告宣伝費の支出は明らかに過大であるから,支出した広告宣伝費の全額を経費として控除することは不適切であるとし,上記営業収入に対す - 73 -る被告法人の限界利益率は50パーセントを下らないから,その限界利益の額は4億0407万9269円を下らない旨主張する。 しかるところ,証拠(甲6,8,乙33ないし43,49,5064(枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。))によれば,被告法人が,平成20年7月1日から平成22年12月31日までの間に,本件役務に関して多数の雑誌広告,電車広告,新聞折込広告,インターネット広 (枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。))によれば,被告法人が,平成20年7月1日から平成22年12月31日までの間に,本件役務に関して多数の雑誌広告,電車広告,新聞折込広告,インターネット広告等を行い,そのために合計4億8469万3278円にのぼる広告宣伝費を支出したこと(別紙「被告ら主張の利益額」の平成21年ないし平成22年の各「期」の「広告宣伝費」欄の合計額)が認められ,他方,被告法人が支出した上記広告宣伝費がその営業収入との関係において過大であるものと直ちに断ずることができないことは,前記(ア)bで述べたところと同様であり,また,被告法人の限界利益率が50パーセントを下らないとする原告法人の主張にも根拠がないというべきである。 c したがって,上記aの営業収入のうち,被告法人が受けた利益の額の算定においては,被告法人が上記期間中に現に支出したものと認められる広告宣伝費合計4億8469万3278円を控除することが必要というべきであり,これを前提に,被告法人の上記期間中の限界利益を3億2346万5260円とする被告法人の主張額をもって,上記利益の額と認めるのが相当である。 イ被告標章1ないし4の寄与率(ア) 被告らは,一般に,商標権侵害においては,侵害者の利益が当該登録商標の顧客吸引力のみによって達成されていることはむしろまれであり,侵害者の商品自体の内容や侵害者の営業努力等の事情が相まって利益をあげているというのが通常であるといえるところ,本件商標の「ひかり」は,それ自体に独創性や特異性に乏しく,むしろ被告B1 - 74 -が原告A1の出願に先行して使用し,営業上の信用を形成してきたものであり,被告らが顧客を吸引し,売上げを上げることが出来た理由は,その役務自体の内容(債務整理,過払金返還)や莫大な広告宣伝費 4 -が原告A1の出願に先行して使用し,営業上の信用を形成してきたものであり,被告らが顧客を吸引し,売上げを上げることが出来た理由は,その役務自体の内容(債務整理,過払金返還)や莫大な広告宣伝費の投入といった被告らの営業努力の結果であるなどとして,本件独占的通常使用権の侵害行為により被告らが受けた利益の額を認定するに当たっては,被告らが受けた利益に対する本件商標の寄与率を考慮すべきであり,その寄与率は限りなくゼロに近い旨主張する。 そこで検討するに,商標権は,特許権等の他の工業所有権とは異なり,それ自体に創作的価値があるものではなく,商品又は役務の出所である企業等の営業上の信用等と結びつくことによってはじめて一定の価値が生ずるという性質を有するため,被告らが主張するように商標権が侵害された場合に,侵害者の得た利益が当該登録商標の顧客誘引力のみによって達成されることはまれであって,むしろ当該利益の獲得には,商品又は役務の内容や侵害者自身の営業努力等といった様々な要因が寄与していることが通常といえるから,商標法38条2項に基づく損害額の算定において,商標権等の侵害者が侵害の行為により受けた利益の額を認定するに当たっては,侵害者が得た利益のうち,当該商標の寄与に係る割合(寄与率)に応じた額をもって,当該利益の額と認定するのが相当である。 (イ) そこで,被告らが受けた上記ア(ア)及び(イ)の各利益に対する被告標章1ないし4(被告B1については被告標章4,被告法人については被告標章1ないし4)の寄与率につき検討するに,その際に考慮すべき事情としては,次のような点を指摘することができる。 a 本件商標が有する信用ないし顧客誘引力本件商標は,平成17年11月17日の登録出願の後,平成18年2月2日から原告法人によりその司法書士業 情としては,次のような点を指摘することができる。 a 本件商標が有する信用ないし顧客誘引力本件商標は,平成17年11月17日の登録出願の後,平成18年2月2日から原告法人によりその司法書士業務において使用される - 75 -ようになったものであるが,原告法人が本件商標を使用して行ったものと認められる広告宣伝等は,京都の地方紙での広告(甲18)や自らのホームページ上での広告(甲20)程度のものに限られ,また,原告法人が属する「ひかりアドバイザーグループ」やこれに属する他の法人等についてみても,同様に,地方紙での広告(甲18)や自らのホームページ上での広告(甲3ないし5)が見られる程度であって,いずれも大規模あるいは頻繁な広告宣伝が行われたという事実は認められないことからすれば,本件商標が,原告法人あるいはひかりアドバイザーグループの事業活動における使用を通じて,需要者の間で広く認識されるに至ったものとはいえず,本件役務を含む司法書士業務に係る商標としての確たる顧客誘引力を獲得したものと認めることはできない。 しかも,前記(1)ア(ア)a及びbのとおり,被告らの顧客となった者の大部分は,関東地域に在住する者であるところ,原告法人の事務所は,京都市及び滋賀県草津市にしかなく,原告法人が関東地域で事業活動を現に行っていることを認めるに足りる証拠はないことからすれば,被告らの顧客となった者の中で,原告法人の存在すら認識していない者が大部分を占めることが推認される。 したがって,関東地域に在住する者が大部分を占める実際の被告らの顧客の中における本件商標の顧客吸引力は極めて乏しいものといわざるを得ない。 b 本件役務の内容本件役務の内容は,過払金返還請求や債務整理を求める需要者に対し,法律専門家としての立場からの専門性 の中における本件商標の顧客吸引力は極めて乏しいものといわざるを得ない。 b 本件役務の内容本件役務の内容は,過払金返還請求や債務整理を求める需要者に対し,法律専門家としての立場からの専門性の高いサービスを提供するというものであるから,需要者が本件役務の依頼をする司法書士等を選択,決定するに当たって重視することは,当該司法書士等の専門的 - 76 -能力の高さ,人柄,提供されるサービスの質,報酬の額,過去の業績などであると考えられるのであって,当該司法書士等がその業務において使用する商標のいかんに着目して依頼先の選択,決定がされることは,通常考え難いことといえる。 c 被告らの営業努力等前記ア(ア)b及び(イ)bで認定したとおり,被告らは,本件役務に関し,多額の広告宣伝費を支出して,多数の雑誌広告,電車広告,新聞折込広告,インターネット広告等を継続的に行っているところ,被告らが支出した広告宣伝費と本件役務における営業収入の関係をみると,広告宣伝費が高額になればなるほど,その額に見合う形で多額の営業収入が現に得られている事実が認められることからすれば,被告らによる広告宣伝がその売上げの獲得及び拡大に大きく貢献していることは明らかといえる。 この点,上記の広告中には,役務の出所表示として,被告標章1ないし4が表示されている事実が認められるが,これらの広告を見た需要者らが被告らを依頼先として選択するかどうかを判断するに当たって重視するのは,広告に記載された業務やサービスの説明などの内容面であるのが通常であって,出所表示として記載されている標章が「ひかり」を要部とする被告標章1ないし4であることが,上記判断の重要な要素となるものとはいい難い。 (ウ) 以上の諸事情等を総合勘案すれば,被告B1が前記ア(ア)の利益を受 記載されている標章が「ひかり」を要部とする被告標章1ないし4であることが,上記判断の重要な要素となるものとはいい難い。 (ウ) 以上の諸事情等を総合勘案すれば,被告B1が前記ア(ア)の利益を受けるに当たっての被告標章4の寄与及び被告法人が前記ア(イ)の利益を受けるに当たっての被告標章1ないし4の寄与は,極めて限られたものというほかなく,その寄与率は,それぞれについて1パーセントと認めるのが相当である。 ウ小括 - 77 -(ア) 被告B1関係a 上記ア及びイによれば,被告B1が平成18年8月1日から平成20年6月30日までの間に本件独占的通常使用権を侵害する行為により受けた利益の額は,615万0738円(6億1507万3850円×1%)と認められ,商標法38条2項の類推適用により,この金額が原告法人の受けた損害の額と推定される。 b また,被告B1による本件独占的通常使用権の侵害と相当因果関係のある弁護士費用の額は,本件事案の内容,審理の経過等諸般の事情を考慮し,60万円と認めるのが相当である。 c したがって,原告法人が被告B1に請求し得る損害額の合計は,675万0738円となる。 (イ) 被告法人関係a 上記ア及びイによれば,被告法人が平成20年7月1日から平成22年12月31日までの間に本件独占的通常使用権を侵害する行為により受けた利益の額は,323万4652円(3億2346万5260円×1%)と認められ,商標法38条2項の類推適用により,この金額が原告法人の受けた損害の額と推定される。 b また,被告法人による本件独占的通常使用権の侵害と相当因果関係のある弁護士費用の額は,本件事案の内容,審理の経過等諸般の事情を考慮し,30万円と認めるのが相当である。 c したがって,原告法人が被告法人に請求し得 よる本件独占的通常使用権の侵害と相当因果関係のある弁護士費用の額は,本件事案の内容,審理の経過等諸般の事情を考慮し,30万円と認めるのが相当である。 c したがって,原告法人が被告法人に請求し得る損害額の合計は,353万4652円となる。 7 結論以上によれば,原告A1が被告らに対し,商標法36条1項に基づき,主文第1項のとおりの別紙被告標章目録1ないし4記載の各標章の使用差止めを求める請求は理由があるから認容することとし,原告法人が被告らに対し,不 - 78 -法行為に基づく損害賠償を求める請求は,被告B1については675万0738円及びこれに対する不法行為の後である平成20年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,被告法人については353万4652円及びこれに対する不法行為の後である平成23年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるからその限度で認容することとし,その余は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官大西勝滋 裁判官石神有吾
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