平成13(わ)1111 (被告人A)窃盗,傷害,強盗致傷,強盗,(被告人B)強盗致傷,強盗

裁判年月日・裁判所
平成14年9月9日 神戸地方裁判所
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判決文本文6,754 文字)

判決平成14年9月9日神戸地方裁判所平成13年(わ)第1111号,平成14年(わ)第45号,第55号,第268号,第476号 Aに対する窃盗,傷害,強盗致傷,強盗,Bに対する強盗致傷,強盗各被告事件 主文 被告人Aを懲役7年に,被告人Bを懲役6年に処する。 未決勾留日数中,被告人Aに対しては220日を,被告人Bに対しては150日を,それぞれその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人両名は,共謀の上,通行人から金品を強取することを企て,平成12年1月17日午前5時12分ころ,兵庫県西宮市a町b番c号先路上において,同所を歩いて通行中のC(当時62歳)に対し,その背後から被告人Bが近づいて羽交い締めにし,被告人Aが「金を出せ。」と要求し,上記Cの顔面を手拳で数回殴打し,更に路上にしゃがみ込んだ同人の腰部及び大腿部を数回足蹴にする暴行を加え,被告人Bが「早くせい,殺すぞ。」などと申し向けて脅迫し,上記Cの反抗を抑圧した上,同人から現金4万5000円くらいを強取し,その際,上記暴行により,同人に加療約3日間を要する下口唇挫創等の傷害を負わせた第2 被告人両名は,Dほか2名と共謀の上,通行人から金品を強取することを企て,原動機付自転車3台に分乗し,同日午前5時17分ころ,同市d町e番f号先路上において,反対方向から自転車を運転して通行してきたE(当時59歳)を取り囲み,同人に対し,その前頸部に被告人Aが左腕を巻き付けながら「金を出せ。」と要求し,その態勢のまま上記Eを路上に仰向けに押し倒し,更に被告人Aが立ち上がった上記Eの顔面を手拳で殴打し,被告人Bがその腹部を手拳で数回殴打するなどの暴行を加え,上記Eの反抗を抑圧した上,同人 と要求し,その態勢のまま上記Eを路上に仰向けに押し倒し,更に被告人Aが立ち上がった上記Eの顔面を手拳で殴打し,被告人Bがその腹部を手拳で数回殴打するなどの暴行を加え,上記Eの反抗を抑圧した上,同人所有に係る現金1万5000円くらい及びテレフォンカード2枚等7点在中の財布1個(時価合計約1万510円相当)を強取し,その際,上記各暴行により,上記Eに加療約1か月間を要する左後頭部挫傷,右眼窩内側壁骨折等の傷害を負わせた第3 被告人両名は,Fが,同日午前5時30分ころ,同市g町h番i号先路上において,自転車を運転して通行中のGから金品を強取しようと企て,原動機付自転車を運転して上記G(当時23歳)の後方から近づき,その右脇腹を足蹴にして同人を自転車もろとも路上に転倒させ,顔面を手拳で殴打して「金出せ。」と要求しているのを現認するや,上記Fの意図を察知し,同人とともに上記Gから金品を強取しようと決意し,被告人両名及び上記Fは暗黙のうちに意思を相通じた上,上記Gを取り囲み,被告人Aが更に「金出せ。」と要求し,一連の暴行脅迫により上記Gの反抗を抑圧した上,同人の上着ポケットから同人所有の現金1万円及びキャッシュカード等3枚在中の財布1個(時価約1000円相当)を奪い取って強取した第4 被告人Aは,H,I,Jと共謀の上,通行人から金品をひったくり窃取することを企て,同年3月8日午後8時45分ころ,同県伊丹市j字kK川右岸堤上路上において,被告人Aが原動機付自転車を運転し,上記Hが同車後部に乗車して,同所を自転車を運転して通行中のL(当時26歳)を後方から追い越す際,被告人A及び上記Hにおいて,ひったくり窃取をする際に上記Lがバランスを崩すなどして自転車もろとも転倒するかもしれないことを認識しながら,意思を相通じた上,あえて,同女が自転車の前籠に載 い越す際,被告人A及び上記Hにおいて,ひったくり窃取をする際に上記Lがバランスを崩すなどして自転車もろとも転倒するかもしれないことを認識しながら,意思を相通じた上,あえて,同女が自転車の前籠に載せていた同女所有の手提げカバン1個の手提げ部分を上記Hが掴んで引っ張り,バランスを崩した同女を同車もろとも路上に転倒させる暴行を加え,現金約1万2000円及び財布等11点在中の手提げカバン1個(時価合計約7700円相当)を窃取するとともに,その際,上記暴行により,同女に対し加療6日間を要する両膝部擦過傷の傷害を負わせたものである。 (証拠の標目)(省略)(事実認定の補足説明) 1 判示第4の事実について,検察官は,被告人AがHと共謀の上,Hにおいて,被害者が運転する自転車の前籠を掴んで自転車もろとも転倒させる暴行を加えて傷害を負わせたものである旨主張し,被告人Aの弁護人は,被告人AがHとの間で手提げカバンをひったくり窃取することを共謀したことはあるが,傷害を負わせるまでの共謀はしていない旨主張するので,当裁判所が,前示のとおり認定した理由について補足して説明する。 2 傷害の実行行為の点について被害者であるLの検察官調書(甲9)及び警察官調書(甲4)は,Hが被害者の運転する自転車の前籠を掴んで揺すったので自転車もろとも転倒した旨いうのに対し,Hの検察官調書謄本(甲28)は,被害者が自転車の前籠に載せていた手提げカバンの手提げ部分を引っ張って取ろうとしたところ,被害者が取られまいとして,どちらかの手をそのカバンの上に置いていたことから,バランスを崩して自転車もろとも転倒した旨いうものであるところ,被害者の前記検察官調書及び警察官調書が作成されたのは,事件当日から1年以上経過した後であり,事件当日に作成された被害届(甲2)では,原動機付自 崩して自転車もろとも転倒した旨いうものであるところ,被害者の前記検察官調書及び警察官調書が作成されたのは,事件当日から1年以上経過した後であり,事件当日に作成された被害届(甲2)では,原動機付自転車が自分にぶつかってきて自転車ごと転倒した旨供述し,またその警察官調書(甲6)では,犯人とカバンを引っ張り合う形になり,その反動で乗っていた自転車が倒れ,同時に自分も倒れた旨供述をしていて,その供述が一貫していないのであるから,Hが自転車の前籠を掴んで揺すったので自転車もろとも転倒した旨いう,被害者の上記供述はそのままには信用できないのに対し,Hの上記供述内容は,不利益な事実の自認を含む相当程度具体的で迫真性のあるものであり,被害者が自転車ごと転倒した状況についていうところに不合理な点も認められないのであるから,これを虚偽であるとして排斥するわけにはいかない。 なお,Iが,その立ち会った実況見分調書謄本(甲23)において,Hが被害者の自転車を左手で引っ張って自転車ごと被害者を倒した旨指示説明したことになっているが,そのいた位置からそれが見えたかどうか疑問であり,また同人の検察官調書謄本(甲30)では,被害者が転倒した状況についてそのような供述をしていないのであるから,上記指示説明部分をそのまま採用するわけにはいかない。 してみると,Hが被害者の自転車の前籠を掴んで揺すったとまでは認定できず,その前籠に載せていた手提げカバンの手提げ部分を引っ張ったことにより,バランスを崩した被害者を自転車もろとも転倒させたと認定するのが相当である。 3 傷害の共謀の点について被告人Aの検察官調書(乙8,10)は,ひったくり窃取の際に被害者がバランスを崩すなどして自転車もろとも転倒して傷害を負うかもしれないことを予測した上で,Hにひったくり窃取を 謀の点について被告人Aの検察官調書(乙8,10)は,ひったくり窃取の際に被害者がバランスを崩すなどして自転車もろとも転倒して傷害を負うかもしれないことを予測した上で,Hにひったくり窃取をさせるため原動機付自転車を運転した旨いうのに対し,被告人Aの公判供述は,ひったくり窃取の際に被害者に傷害を負わせるかもしれないとは考えてもいなかった旨いうのである。 しかしながら,原動機付自転車で被害者運転の自転車にその後方から接近して,追い抜きざま,自転車の前籠の手提げカバンをひったくり窃取するという犯行態様は,それ自体,被害者の対応によっては自転車もろとも転倒させる危険性の小さくないものであるのに加え,本件においては,被告人Aらは,最初,被害者の自転車とすれ違いざまに自転車の前籠の手提げカバンをひったくり窃取しようとして失敗に終わったため,Hが被害者に聞こえるほどの大きさの声で,「失敗した。」などと言い,再度,被告人Aの運転する原動機付自転車で被害者の後方から接近し,追い抜きざまに,Hが手提げカバンの手提げ部分を掴んで引っ張り,ひったくり窃取しようとしたものであることが認められるのであるから,被害者がひったくりを防ごうとするであろうことや,それにもかかわらず,Hが手提げカバンを引っ張るなどして強引にひったくろうとすれば,被害者がバランスを崩すなどして自転車もろとも転倒するかもしれないことは,誰しも容易に予測できるところであって,被告人Aの前記検察官調書の供述の方がその公判供述よりも信用性の高いものであることは明らかである。 してみると,被告人A及びHは,本件ひったくり窃取の際,被害者がバランスを崩すなどして自転車もろとも転倒するかもしれないと認識しながら,あえて,Hにおいてひったくり窃取に及び,被害者を自転車もろとも転倒させて, 被告人A及びHは,本件ひったくり窃取の際,被害者がバランスを崩すなどして自転車もろとも転倒するかもしれないと認識しながら,あえて,Hにおいてひったくり窃取に及び,被害者を自転車もろとも転倒させて,被害者に傷害を負わせたものであって,ともに被害者に対する暴行の未必的な故意があり,その点について意思を相通じていたと認めるのが相当であるから,被告人Aには,判示のとおり傷害罪の成立を認めることができる。 (法令の適用) 1 被告人Aの判示第1及び第2の各所為はいずれも刑法60条,240条前段に,判示第3の所為は同法60条,236条1項に,判示第4の所為のうち,窃盗の点は同法60条,235条に,傷害の点は同法60条,204条にそれぞれ該当するところ,判示第4の窃盗と傷害は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として犯情の重い窃盗罪の刑で処断することとし,判示第1及び第2の各罪について各所定刑中いずれも有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で,被告人Aを懲役7年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中220日をその刑に算入することとする。 2 被告人Bの判示第1及び第2の各所為はいずれも刑法60条,240条前段に,判示第3の所為は同法60条,236条1項にそれぞれ該当するところ,判示第1及び第2の各罪について各所定刑中いずれも有期懲役刑を選択し,以上は,同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲 であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をし,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で,被告人Bを懲役6年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中150日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人Bに負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人両名が,共謀の上又は他の者らと共謀の上,通行中の被害者3名を襲ってその財物を強取し,その際,うち2名の被害者に傷害を負わせたという強盗致傷,強盗の事案3件のほか,被告人Aが,他の者らと共謀の上,自転車で通行中の女性から手提げカバンをひったくり窃取するとともに,その際,被害者に判示の暴行を加えて傷害を負わせたという窃盗,傷害の事案である。 判示第1ないし第3の各犯行については,被告人両名が,遊興費を得るために通行人から金品を奪おうと安易に考え,次々に累行したものであって,犯行の動機はまことに自分勝手というほかないこと,被告人らは,犯行が発覚しないように,自分たちの顔の知られていない場所を選び,襲うべき相手を探して,暗黙のうちに役割分担をしながら,わずか20分足らずの間に,3名の被害者を次々と襲っているのであって,犯行は計画的であること,被告人らは,被害者らの不意を襲い,集団の威力を背景に暴行脅迫を加えたものであり,その暴行も一方的で激しいものであって,犯行の態様は危険かつ悪質なものであること,これらの犯行により強取された金品の額は少なくない上,判示第1及び第2の各被害者に対しては傷害をも負わせており,特に判示第2の被害者の傷害の程度は軽くないこと,被害者らは早朝の通勤途中に人通りの少ない路上で多数の若い男に取り囲まれて手ひどい被害に遭っ 判示第1及び第2の各被害者に対しては傷害をも負わせており,特に判示第2の被害者の傷害の程度は軽くないこと,被害者らは早朝の通勤途中に人通りの少ない路上で多数の若い男に取り囲まれて手ひどい被害に遭ったものであって,被害者らの肉体的,精神的苦痛には大きいものがあること,判示第4の犯行については,被告人Aが,やはり遊興費を得るために共犯者によるひったくり窃盗の提案に安易に賛成して犯行に及んだものであって,その動機に酌量の余地がないこと,被害金額はそれほど少額ではない上,被害者に傷害も負わせていること,そして,被告人Aは,判示第1及び第2の各犯行においては,共犯者らの中の中心的な存在として,率先して被害者らに暴行を加えるなど重要な役割を果たしていること,判示第4の犯行においても,原動機付自転車を運転するという重要な役割を果たしていること,さらに,判示の各犯行は,同種事犯を含む非行により中等少年院送致の処分を受け,仮退院をして数か月後の保護観察期間中に累行したものであって,その反社会的な性格傾向には強いものがあること,また,被告人Bは,判示第1及び第2の各犯行において,被害者らに暴行を加えるなど重要な役割を果たしていること,判示各犯行は,窃盗等の非行により2回中等少年院送致の処分を受け,仮退院をして数か月後の保護観察期間中の犯行であって,その反社会的な性格傾向にも強いものがあることなどを考え併せると,判示各犯行の犯情は悪く,被告人両名の刑事責任はいずれも重いといわざるを得ない。 してみると,判示第1の被害者の傷害の程度は比較的軽微であること,判示第4の被害者の傷害の程度も比較的軽微であり,その被害品のうち現金と手帳以外の被害品が還付されていること,被告人両名は,判示第1の犯行の被害者にそれぞれ5万円,判示第2の犯行の被害者にそれぞれ25万円 の被害者の傷害の程度も比較的軽微であり,その被害品のうち現金と手帳以外の被害品が還付されていること,被告人両名は,判示第1の犯行の被害者にそれぞれ5万円,判示第2の犯行の被害者にそれぞれ25万円を支払って示談を成立させており,判示第1及び第2の各犯行の被害者らが被告人らに対し寛大な処分を求めていること,被告人両名の側から,判示第3の犯行の被害者に対しても被害弁償の申入れがなされたこと,被告人Aは,判示第4の犯行の被害者に10万円を支払って示談を成立させており,現在では被害者が宥恕していること,被告人両名が現在では反省していること,被告人両名は判示の各犯行当時少年であり,いまだ若年であること,被告人Aについては,母親が監督を約束していること,被告人Bについては,平成13年7月ころから定職について真面目に稼働していたものであり,社会復帰後はその雇用主が雇用する旨述べていること,被告人Bの母親が社会復帰後の監督を約束していることなどの,被告人両名のためにそれぞれ酌むべき事情を考慮しても,主文の刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見被告人両名につきいずれも懲役10年)よって,主文のとおり判決する。 平成14年9月9日神戸地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官森岡安廣 裁判官前田昌宏 裁判官伏見尚子 裁判官 伏見尚子

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